(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】便座
(51)【国際特許分類】
A47K 13/30 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A47K13/30 A
(21)【出願番号】P 2020010210
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】佃 和磨
(72)【発明者】
【氏名】新美 智一
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮介
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-299645(JP,A)
【文献】特開2001-231718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する着座面を有する座表部材と、
前記座表部材の前記着座面と反対側に配置される座裏部材と、
前記座表部材の前記座裏部材側の面に設けられるとともに、前記座表部材と前記座裏部材によって収容されるヒータ線と、を有する便座であって、
前記便座は環状に形成されるとともに、前方側に、上面視における前記便座の幅が前方側における前記便座の幅の平均よりも大きい一対の幅広部を有し、
前記座裏部材は、前記座表部材側に延びて前記座表部材を支持する複数のボスからなる支持部を有し、
前記支持部は、前記幅広部に配置され、
前記ヒータ線は、
前記幅広部に配置された前記複数のボスの間を通って配設される、便座。
【請求項2】
前記ボスの数が3以上である、請求項1に記載の便座。
【請求項3】
前記便座はさらに、前記ヒータ線と接触して構成され、前記ヒータ線の熱を前記座表部材に伝える伝熱シートを有し、
前記伝熱シートは、前記ボスが接触するヒータ線非配設部を複数有し、
前記ヒータ線は、複数の前記ヒータ線非配設部に沿って配設される、請求項1または2に記載の便座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便座の内部に便座ヒータを配置した暖房便座が広く使用されている。例えば特許文献1に記載されている暖房便座は、ヒータ線を接触して配設したアルミ等の金属箔を便座の座面裏側に貼り付けることによって、ヒータ線からの熱が座面に広がって伝わり、座面を温めることが可能である。
【0003】
上述のように金属箔を配置したとしても、座面の温度分布には偏りが生じる。ヒータ線が接触している部分が高温になり、ヒータ線から遠い部分は十分に温まらないことがある。そのため、ヒータ線は座面全体に均一に配設されることが理想である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
座面の中でもヒータ線を配置しにくい箇所が存在する。特に、ユーザの着座時に係る荷重を分散させるために便座内に設けられるボス部分は避けて配設される必要がある。そのため、ボスが設けられる箇所については温度が比較的低く、十分に温まらないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、使用者が着座する着座面を有する座表部材と、前記座表部材の前記着座面と反対側に配置される座裏部材と、前記座表部材の前記座裏部材側の面に設けられるとともに、前記座表部材と前記座裏部材によって収容されるヒータ線と、を有する便座であって、前記座裏部材は、前記座表部材側に延びて前記座表部材を支持する複数のボスからなる支持部を有し、前記ヒータ線は、前記複数のボスの間を通って配設される、便座を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】便座ヒータの便座の支持部に対応する部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態に係る便器装置100について、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、便座4について便器15の上部に水平に配置された場合に、一対のヒンジ部45側を後方といい、一対のヒンジ部45と反対側を前方という。後方を向いた際の左右の向きを左右方向または側方という。
【0009】
図1に示すように、便器装置100は、トイレ本体10と、機能部1と、使用頻度の高い機能を集約した第1リモコン装置20と、第1リモコン装置20よりも多くの機能を操作可能な第2リモコン装置21と、制御部3と、を備える一体型便器装置である。第1リモコン装置20および第2リモコン装置21は便器装置100が設けられるトイレルームの壁面に配置され、第2リモコン装置21はトイレ本体10の内部の収容部14に収容可能である。
【0010】
トイレ本体10は、便座4と、便蓋12と、トップカバー13と、収容部14と、便器15と、を備える。トイレ本体10は、上記以外にタンク等を備えている(不図示)。
【0011】
便座4はユーザが着座する部分であり、便器15の環状の開口上に配置され、環状の形状を有する。便蓋12は、便座4および便器15の開口を開閉可能に覆う蓋である。トップカバー13は、機能部1の上部を覆う部材である。収容部14は、トイレ本体10の内部に形成され、第2リモコン装置21を収容可能な凹部である。使用頻度の低い第2リモコン装置21は、使用時以外は収容部14に収容されることができる。便器15は、上方に開口し、底部に排水口が構成される。便器15は、例えば陶器からなる部材である。
【0012】
機能部1は便器15の後方上部に載置され、便器洗浄装置や人体局部洗浄装置を内部に備える。機能部1は後述する制御部3によって制御され、例えば便器洗浄機能や人体局部洗浄機能のほか、便座4や便蓋12の開閉等の各種機能を実行する。機能部1はこれらの機能を全て備えていてもよいし、これらの機能のうち少なくとも1つを備えていてもよい。
【0013】
多機能を備える便器装置100は機能部1の内部に多数の機能部材を備えているため、機能部1の容積を大きく設計することが好ましい。相反する要求として、便器装置100をコンパクトに設計することも望まれている。機能部1の容積と便器装置のコンパクトな設計を両立するために、機能部1の一部は便座4のヒンジ部45の下方にも位置している。
【0014】
リモコン装置2は、便器装置100の各種機能を遠隔操作可能な装置である。機能部1や他のリモコン装置に向けて赤外線通信やBLE(登録商標)等の通信方式で信号を発信し、各種機能を遠隔操作する。リモコン装置2は、外面に操作部を有するほか、制御部や通信部を有する。リモコン装置2は乾電池式であってもよいし、充電池式であってもよい。ブラケット30を介した壁掛け状態や、収容部14に収容された状態で充電可能であってもよい。
【0015】
便器装置100の制御部3は、機能部1とトイレ本体10との何れかの内部に収容される(不図示)。制御部3は第1リモコン装置20および第2リモコン装置21から発信される信号を受信し、受信した信号に基づいて機能部1の操作を制御する。
【0016】
図2に示すように便座4は、座表部材4Aと、座裏部材4Bと、から形成され、さらに両者の間には便座ヒータ5が収容される。便座ヒータ5は、座表部材4Aの裏側に接触して配置される。座表部材4Aに効率的に熱を伝え、便座4の暖房効率を向上させるためである。
【0017】
座表部材4Aは、開口を有する部材であり、便器装置100のユーザの着座時において略水平に形成される環状の座面と、環状の座面の内外周端から下方に延びて形成される側壁部と、を有して構成される。側壁部の下端に環状の座裏部材4Bが蓋をするように接合されることによって、中空の便座4が形成される。
【0018】
座裏部材4Bは、略平面環状の部材であり、上述のように座表部材4Aと接合されて便座4を形成する。座裏部材4Bは、座表部材4A側に延びる3つのボスを有する支持部6を複数有する。支持部6は便座4内部の中空部で下方から上方に延びて、便座4を上下方向に支持する部分である。
【0019】
支持部6により、ユーザの着座によって便座4にかかる荷重が分散するため、便座4の強度が向上する。ボスの数は特に限定されるものではなく、3つ以上備えていることが好ましい。ボスの数が多ければより便座4の強度が向上する。一方でボスの数が多すぎると、後述のヒータ線非配設部53A,53Bが増え、便座4の暖房温度分布に偏りが生じることがある。
【0020】
ボスを多数備える支持部6は、個々のボスの大きさを小さくし、ボス同士の間隔を広く設計してもよい。支持箇所を分散させることで、ボスが小さくても十分な耐荷重が得られるためである。ボスの大きさを小さくして複数箇所に分散させることで、ヒータ線非配設部53A,53Bを分散配置することができる。これにより、ボス間にもヒータ線52を配設することができ、座表部材4Aの座面全体に万遍なくヒータ線52を配設できるため、座表部材4Aを均一に温めることができる。
【0021】
図3に示すように、便座4は、一対の幅広部41と、中間部42と、一対の側方部43と、後部44と、ヒンジ部45と、から構成される。
【0022】
一対の幅広部41は、一対の幅広部41と、中間部42と、一対の側方部43と、からなる前方側において、便座4の幅W1が平均よりも大きい部分である。便座4の幅W1とは、環状の便座4の上面視における内周と外周を結ぶ直線距離W1をいう。
【0023】
幅広部41は水平方向の幅が大きい分上下方向に対する耐荷重が小さく、ユーザの着座等に由来する荷重による破損や変形が生じやすい。そのため、幅広部41に支持部6を配置して便座4の耐荷重を向上させることが有効である。幅広部41においては便座4の幅W1が広いため複数のボスの間隔を広げて配置しやすく、ヒータ線52をボス間に配置しやすい。
【0024】
中間部42は、一対の幅広部41の間に介在する部分である。一対の側方部43は、一対の幅広部41の中間部42と反対側に位置する部分である。後部44は、側方部43よりも後方に位置する部分である。
【0025】
側方部43は、幅広部41側において幅W1が最も広く、便座4の後方側に向かうにつれて幅W1が狭くなる。最も狭くなった位置が後部44との境界位置である。後部44は、便座4の開口の側方において、側方部43との境界から後方側に向かうにつれて幅W1が広くなる。
【0026】
ヒンジ部45は、後部44の左右両端部から後方に向けて突出して構成される。便座4は、一対のヒンジ部45に挿通される電動モータの回転軸部材等を介して、例えば機能部1に連結される。これにより、便座4は機能部1に対して回転可能に取り付けられる。便座4の内部には、暖房便座機能用の便座ヒータ等の機能部材が収容されてもよい。
【0027】
図4に示すように、便座ヒータ5は、伝熱シート51と、ヒータ線52と、を有して構成される。便座ヒータ5は、座表部材4Aの裏側に接触して配置され、便座4の座面を温める。伝熱シート51はヒータ線52と接触して構成され、ヒータ線52からの熱を受け取り座表部材4Aに伝えるために用いられる。
【0028】
伝熱シート51は高い熱伝導率を有する材質で構成されることが好ましく、例えばアルミ箔等の金属で構成される。ヒータ線52は暖房便座の熱源となる部分であり、伝熱シート51全体に万遍なく配置されることが好ましい。ヒータ線52は一般に市販されるニッケルクロム線や鉄クロム線等の電熱線を用いることができ、径や材質は特に限定されない。径が小さい方がボスの間を通しやすいため、伝熱シート51全体に均一に配置しやすい。
【0029】
伝熱シート51は、
図4に斜線で示すヒータ線非配設部53A,53Bを有する。ヒータ線非配設部53A,53Bには、座表部材4Aと便座ヒータ5と座裏部材4Bとを組付けた状態においてボスが接触されるため、ヒータ線52を配設することができない。実際には、便座4製造時の寸法ばらつきを考慮して、ヒータ線非配設部53A,53Bはボスよりも若干大きく形成される。
【0030】
便座4においては、ヒータ線52は複数のヒータ線非配設部53A,53Bに沿って、間を通すように配置される。すなわち、座表部材4Aと便座ヒータ5と座裏部材4Bとを組付けた状態において、ヒータ線52はボス間を通って配設される。これにより、ボス部分においても便座4を温めることができる。
【0031】
図5に示す直線Aと直線A´の間の領域は、便座ヒータ5の便座4の幅広部41に対応する位置を示す。すなわち、ヒータ線非配設部53A,53Bおよび支持部6は、便座4の幅W1が大きい幅広部41に配置される。これにより、支持部6により幅広部41の耐荷重を向上させつつ、便座4の上面視で支持部6が位置する部分においても座面を温めることができる。特に幅広部41はユーザの身体が広く接触する部分であるため、万遍なく座面を温めることで、ユーザが快適に便座4を使用することができる。
【0032】
ヒータ線非配設部53Aは、中心に孔部を有する。孔部は便座ヒータ5を座表部材4Aに貼り付ける際の位置合わせ用の穴であり、すべてのヒータ線非配設部になくともよい。便座ヒータ5全体で4箇所あれば十分であり、万遍なく位置していることで位置合わせの精度および作業性が向上する。
【0033】
以上、本開示の一実施形態に係る便座4について説明した。便座4によれば、以下のような効果を奏する。
【0034】
本実施形態の便座4は、使用者が着座する着座面を有する座表部材4Aと、座表部材4Aの前記着座面と反対側に配置される座裏部材4Bと、座表部材4Aの座裏部材4B側の面に設けられるとともに、座表部材4Aと座裏部材4Bによって収容されるヒータ線52と、を有する便座であって、座裏部材4Bは、座表部材4A側に延びて座表部材4Aを支持する複数のボスからなる支持部6を有し、ヒータ線52は、前記複数のボスの間を通って配設される。これにより、暖房便座機能の使用時に支持部6においても便座4を温めることができ、座面の温度分布を均一にすることができる。
【0035】
前記ボスの数は、3以上である。これにより、ボスを小さく設計しても十分に耐荷重を有し、ヒータ線52をボスの間に通しやすくなる。
【0036】
便座4は環状に形成されるとともに、前方側に、上面視における便座4の幅W1が前方側における便座4の幅W1の平均よりも大きい一対の幅広部41を有し、支持部6は、少なくとも一部が幅広部41に配置される。これにより、複数のボスの間隔を広げて配置しやすくボスの間にヒータ線52を配置しやすくなる。さらに支持部6により幅広部41の耐荷重を向上させつつ、便座4の上面視で支持部6が位置する部分においても座面を温めることができるため、ユーザの快適性が向上する。
【0037】
以上、本開示の好ましい一実施形態について説明した。本開示は上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
100…便器装置、1…機能部、10…トイレ本体、12…便蓋、13…トップカバー、14…収容部、15…便器、2…リモコン装置、20…第1リモコン装置、21…第2リモコン装置、30…ブラケット、3…制御部、4…便座、41…幅広部、42…中間部、43…側方部、44…後部、45…ヒンジ部、4A…座表部材、4B…座裏部材、5…便座ヒータ、51…伝熱シート、52…ヒータ線、53A,53B…ヒータ線非配設部、6…支持部