(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/04 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A47K13/04
(21)【出願番号】P 2020016100
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳田 真希
(72)【発明者】
【氏名】小池 英也
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-318766(JP,A)
【文献】特開2011-172790(JP,A)
【文献】特開2001-161601(JP,A)
【文献】特開平11-318764(JP,A)
【文献】特開2012-217464(JP,A)
【文献】特開2011-172789(JP,A)
【文献】特開2004-167814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在に設けられた便座と、
前記便座に対して着脱自在に設けられ、前記便座に取り付けられた状態において着座面の少なくとも一部を構成するクッション部材と、
開閉自在に設けられた便蓋と、を備えた便座装置であって、
前記クッション部材が前記便座に取り付けられた状態で、前記便座を開閉可能であり、
前記クッション部材が前記便座に取り付けられた状態で、前記便蓋を開閉可能であ
り、
前記クッション部材は、前記便座に取り付けられた状態において、前記便座の側面における少なくとも一部を覆うとともに、前記便座の最大外形よりも内側に配置されている便座装置。
【請求項2】
前記クッション部材によって、上面の少なくとも一部が覆われた便座本体部を備えており、
前記クッション部材の重心は、前記便座本体部の前端から後端までの長さにおける後側半分に位置している請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記クッション部材の重心は、前記クッション部材の前端から後端までの長さにおける、後端から前方に1/3までの範囲に含まれる請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項4】
前記クッション部材が前記便座に取り付けられて前記便蓋が閉じた状態において、前記クッション部材の側面が前記便蓋で隠蔽されている
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項5】
前記便蓋は、便蓋本体部と、閉じた状態において前記便蓋本体部を支持する足部とを有し、
前記足部は、前記クッション部材が前記便座から取り外されて前記便蓋が閉じた状態において前記便座に接触し、前記クッション部材が前記便座に取り付けられて前記便蓋が閉じた状態において前記クッション部材に接触する構成であり、
前記クッション部材が前記便座から取り外されて前記便蓋が閉じた状態における前記便蓋の前端の位置をP1とし、
前記クッション部材が前記便座に取り付けられて前記便蓋が閉じた状態における前記便蓋の前端の位置をP2とすると、
前記P1と前記P2の間の変位量が、前記クッション部材において前記足部が接触する部分の厚みよりも小さい請求項1から
請求項4までのいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項6】
前記便座は、前記クッション部材によって少なくとも上面全体が覆われた着座部を有している請求項1から
請求項5までのいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項7】
前記クッション部材は、粘着シートによって前記便座に取り付けられる請求項1から
請求項6までのいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項8】
開閉自在に設けられた便座と、
前記便座に対して着脱自在に設けられ、前記便座に取り付けられた状態において着座面の少なくとも一部を構成するクッション部材と、
開閉自在に設けられた便蓋と、を備えた便座装置であって、
前記クッション部材が前記便座に取り付けられた状態で、前記便座を開閉可能であり、
前記クッション部材が前記便座に取り付けられた状態で、前記便蓋を開閉可能であり、
前記クッション部材は、粘着シートによって前記便座に取り付けられ、
前記クッション部材は、成形時にガスを抜くためのガス抜き部を有し、
前記ガス抜き部は、前記粘着シートによって覆われている便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、便座本体と、便座本体の座面上に取り付けられた便座カバーと、便蓋と、を備えたトイレ装置が開示されている。便座カバーは、便座に対して自在に着脱させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のトイレ装置は、便座カバーを便座本体に取り付けた場合に、便座カバーがトイレ装置の各部の動きに及ぼす影響についてなんら検討されてない。例えば、便座カバーの有無によって、便座の開閉のために必要となる駆動力に差が生じ得る。さらに、クッション性を高めるために便座カバーを嵩高に構成した場合、便蓋を閉じた状態において便蓋が便座カバーと干渉し、便蓋の閉動作を妨げるおそれがある。便座及び便蓋を備える便座装置の各部の動きが、便座カバー等のクッション部材によって妨げられると、便座装置の使用に不都合を生じるおそれがある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、クッション部材が便座に取り付けられた状態であっても、使用性が確保された便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の便座装置は、開閉自在に設けられた便座と、前記便座に対して着脱自在に設けられ、前記便座に取り付けられた状態において着座面の少なくとも一部を構成するクッション部材と、開閉自在に設けられた便蓋と、を備えた便座装置であって、前記クッション部材が前記便座に取り付けられた状態で、前記便座を開閉可能であり、前記クッション部材が前記便座に取り付けられた状態で、前記便蓋を開閉可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る便器装置を示す側面図である。
【
図2】便座及び便蓋が閉じた状態を、便蓋を破断して示す側面図である。
【
図3】便座及び便蓋が開いた状態を、便蓋を破断して示す側面図である。
【
図4】クッション部材及び便座を示す分解斜視図である。
【
図5】クッション部材が便座に取り付けられた状態を示す平面図である。
【
図11A】クッション部材が便座から取り外されて便蓋が閉じた状態を示す断面図である。
【
図11B】クッション部材が便座に取り付けられて便蓋が開いた状態を示す断面図である。
【
図11C】クッション部材が便座に取り付けられて便蓋が閉じた状態を示す断面図である。
【
図12】実施形態2に係るクッション部材が便座に取り付けられた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
便器装置10は、
図1に示すように、便器本体11と、便座装置20とを備えている。以下、各構成部材において、前後方向、左右方向、上下方向は、便器装置10に着座した状態の着座者から見て前後方向、左右方向、上下方向を夫々示すものとする。
【0009】
便器本体11は、便鉢部を有している。便鉢部の上端にはリム12が形成されている。便器本体11の上方には、便座装置20が設置されている。
【0010】
便座装置20は、
図2及び
図3に示すように、装置本体21、便座30、便蓋50を備えている。装置本体21は、便器本体11の後部に配置され、便器本体11に固定されている。装置本体21は、便座30を回転自在に支持する便座軸部22と、便蓋50を回転自在に支持する便蓋軸部23とを有している。装置本体21は、その内部に局部洗浄装置、便器洗浄装置、便座30を自動開閉する便座開閉装置、便蓋50を自動開閉する便蓋開閉装置、便座30を温める便座暖房装置等の機能部品や各種センサを制御する制御部24(
図1参照)等を収納している。
【0011】
便座30は、開閉自在に設けられている。便座30は、
図2に示す閉じた状態において、便器本体11の上面に沿った倒伏姿勢で配置される。便座30は、
図3に示す開いた状態において、便器本体11の上方に向けてわずかに後方に傾斜した起立姿勢で配置される。便座30は、便座軸部22を中心として、閉じた状態と開いた状態に回転する。例えば、便座30は、リモートコントローラから入力された信号や、人体検知センサの検知信号に基づいて装置本体21内に組み込まれた便座開閉装置が駆動することによって、閉じた状態と開いた状態に自動的に回転する。
【0012】
便座30は、
図4に示すように、着座部(便座本体部)31、便座ヒンジ部36を有している。着座部31及び便座ヒンジ部36は、硬質な樹脂材料によって一体に設けられている。
【0013】
着座部31は、中心部が開口した環状をなし、便座30が閉じた状態において、リム12(
図2参照)に沿って配置されている。着座部31は、便座30が閉じた状態において、上方を向く上面32と、内周側を向く内側面33と、外周側を向く外側面34と、下方を向く下面と、内側面33と下面の間に形成された切削面と、外側面34と下面の間に形成された切削面と、を有している。内側面33及び外側面34は、便座30の側面に対応する。外側面34の下端は、外側面34の上端よりも外周側に位置している(
図9参照)。外側面34の下端は、便座30の最大外形を構成する。
【0014】
便座ヒンジ部36は、便座30を装置本体21に対して回転自在に支持している。便座ヒンジ部36は、便座軸部22に対して組み付けられている。便座ヒンジ部36は、着座部31の左右方向における両端部に一対設けられている。便座ヒンジ部36は、着座部31の後端部から後方に突出した形態である。
【0015】
便座30は、
図1に示す静電容量式着座センサ38を備えている。静電容量式着座センサ38は、人が便座30に接触したことを検知して、着座の有無を判断するためのセンサである。便座装置20は、着座の有無の判断結果に基づいて、各種機能部品の機能が適宜発揮される。便座30は、
図7に示す発熱部材39を有する暖房便座である。発熱部材39は、中空状の着座部31の内部に設けられ、上面32を所定の温度に加熱する。
【0016】
便蓋50は、
図2及び
図3に示すように、便座30の上方において、開閉自在に設けられている。便蓋50は、閉じた状態において、便器本体11の上面に沿った倒伏姿勢で配置される。便蓋50は、開いた状態において、便器本体11の上方に向けてわずかに後方に傾斜した起立姿勢で配置される。便蓋50は、便蓋軸部23を中心として、閉じた状態と開いた状態に回転する。例えば、便蓋50は、リモートコントローラから入力された信号や、人体検知センサの検知信号に基づいて装置本体21内に組み込まれた便蓋開閉装置が駆動することによって、閉じた状態と開いた状態に自動的に回転する。
【0017】
便蓋50は、便蓋本体部51、便蓋ヒンジ部55、足部56、接触部57を有している。便蓋本体部51及び便蓋ヒンジ部55は、硬質な樹脂材料によって一体に設けられている。
【0018】
便蓋本体部51は、便蓋50が閉じた状態において、着座部31の上面32及び開口全域を覆うと共に外側面34を覆っている。便蓋本体部51は、便座30の上面32よりも一回り大きい平板状の上板部52と、上板部52の縁部から下方に延びた垂下片部53とを有している。
【0019】
便蓋ヒンジ部55は、便蓋50を装置本体21に対して回転自在に支持している。便蓋ヒンジ部55は、便蓋軸部23に対して組み付けられている。便蓋ヒンジ部55は、便蓋本体部51の左右方向における両端部に一対設けられている。便蓋ヒンジ部55は、便蓋本体部51の後端部から後方に突出した形態である。便蓋ヒンジ部55は、便座ヒンジ部36の上面及び外側面を覆っている。
【0020】
足部56は、
図2に示すように、便蓋50が閉じた状態において便蓋本体部51を支持している。足部56の先端部は、合成ゴムなどの弾性を有する樹脂材料によって形成されている。接触部57は、便蓋50及び便座30の双方が開いた状態において、着座面60に接触する部分である。
【0021】
便座装置20は、
図4及び
図5に示すように、便座30に対して着脱自在に設けられたクッション部材40を備えている。クッション部材40は、着座部31及び便座ヒンジ部36とは別体に設けられている。クッション部材40は、
図5に示す便座30に取り付けられた状態において着座面60を構成するクッション部の一例である。着座面60は、例えば、便蓋50が開いて便座30が閉じた状態において、上方に露出して、着座者に接触する面である(
図1参照)。
【0022】
クッション部材40は、全体としては、着座部31と同様に中心部が開口した環状をなしている。クッション部材40は、着座部31及び便座ヒンジ部36よりも軟質な材料によって形成され、厚みが大きくなる程、クッション性がよくなる。クッション部材40の厚みは、便座30に取り付けられた状態において、着座部31と接触する面に対して垂直な方向を厚さ方向として測定する。
図6から
図8に示すように、クッション部材40における前側半分は、薄く形成された薄肉部41を備えて構成されている。薄肉部41は、シート状をなしている。薄肉部41の厚みは、2mm以上7mm以下が好ましい。クッション部材40における後側半分は、厚く形成された厚肉部42を備えて構成されている。厚肉部42の厚みは、10mm以上30mm以下が好ましい。厚肉部42の厚みは、薄肉部41の厚みに比べて1.5倍以上15倍以下であることが好ましく、2倍以上5倍以下であることがより好ましい。厚肉部42の厚さは、10mm以上30mm以下が好ましい。後述する側面部45,46の厚さは、2mm以上7mm以下が好ましい。
【0023】
図5から
図8に示すように、クッション部材40は前端領域RFに薄肉部41を有している。詳細には、前端領域RFの全域が薄肉部41によって構成されている。前端領域RFは、例えば、クッション部材40の前端から後端までの長さにおいて、前端から後に1/3の領域である。
図5に示すように、本実施形態では、クッション部材40の前端及び後端の位置は、着座部31の前端31A及び後端31Bの位置と略同じである。
【0024】
クッション部材40において着座面60を構成する所定部位R1,R2,R3の厚みは、クッション部材40における薄肉部41の厚みよりも大きい。所定部位R1,R2,R3は、着座面60における後側半分の領域に含まれる。所定部位R1,R2は、着座面60において左右後側に位置する領域の少なくとも一部である。詳細には、クッション部材40が便座30に取り付けられた状態において、所定部位R1,R2は、着座部31の開口に対して左側及び右側に設けられている。本実施形態では、着座部31の開口は、例えば、着座部31の前端31Aから後端31Bまでの長さにおいて、後端31Bからの位置が1/10から9/10の範囲に亘って形成されている。所定部位R1,R2は、例えば、着座部31の前端31Aから後端31Bまでの長さにおいて、後端31Bからの位置が1/10から3/5までの範囲に含まれている。所定部位R1,R2は、着座部31の幅方向において着座部31の内周側に設けられている(
図9参照)。所定部位R1,R2は、着座者の座骨を支持する座骨支持部位である。所定部位R3は、着座面60において左右中央部に位置する領域の少なくとも一部である。詳細には、クッション部材40が便座30に取り付けられた状態において、所定部位R3は、着座部31の開口に対して後側に設けられている。所定部位R3は、着座部31の開口に面する位置に設けられている(
図6参照)。所定部位R3は、着座者の尾骨を支持する尾骨支持部位である。
【0025】
クッション部材40の重心C1は、
図5に示すように、着座部31の前端31Aから後端31Bまでの長さにおける後側半分に位置している。詳細には、クッション部材40の重心C1は、クッション部材40の前端から後端までの長さにおける、後端から前方に1/3までの範囲に含まれる。クッション部材40の重心C1は、クッション部材40を便座30に取り付けた状態において、前後方向について、着座部31の前端31Aよりも便座軸部22に近い位置に配置されている(
図2及び
図3参照)。
【0026】
クッション部材40は、
図7に示すように、薄肉部41から後方に向けて厚みが徐々に大きくなっている。所定部位R1,R2の前部及び所定部位R1,R2の前側に隣接する領域は、厚みが徐々に大きくなり、上面が緩やかなスロープ形状を有している。所定部位R1,R2の後部及び所定部位R1,R2の後側に隣接する領域は、クッション部材40において厚みが最大になっている。クッション部材40の後端部は、端側に向かうにつれて先細る形状をなす。
【0027】
クッション部材40は、
図9に示すように、幅方向における断面形状がU字状をなす。クッション部材40は、着座面60を構成する上面部44と、上面部44における幅方向両端から下方に延びた側面部45,46とを有している。クッション部材40における後側半分において、厚肉部42は上面部44に設けられている。クッション部材40における後側半分において、側面部45,46全体の厚みが上面部44の厚みよりも小さくなっている。側面部45,46は、先端側に向かうにつれて厚みが小さくなっている。側面部45,46の高さは、着座部31の側面33,34の高さに比して小さい。このような構成では、クッション部材40を便座30に装着し易く、且つ、クッション部材40を小型化できる。
【0028】
クッション部材40は、
図10に示すように、粘着シート47によって便座30に取り付けられる。粘着シート47は、クッション部材40の裏面全体にクッション部材40と一体に設けられている。粘着シート47は、便座30に対して貼付と剥離を繰り返し行うことができる粘着面を有する。粘着シート47は、クッション部材40が便座30に取り付けられて便座30が開いた状態において、クッション部材40の取り付け状態が保持される粘着力を有している。なお、
図6~
図9においては、粘着シート47を省略してクッション部材40を描いている。
【0029】
クッション部材40は、使用者が着座した場合に弾性変形する材料によって形成されている。クッション部材40は、例えば、ウレタンフォーム等の低反発弾性フォームによって形成されている。クッション部材40は、成形時にガスを抜くためのガス抜き部48を有している。具体的には、クッション部材40は、ガス抜き孔を有する成形型を用いて発泡成形され、発泡層49Bの表面に未発泡若しくは微発泡のスキン層49Aが形成されている。スキン層49Aの表面は、撥水性及び抗菌性を有する。ガス抜き部48は、ガス抜き孔によってスキン層49Aが形成されない部分であり、発泡層49Bが表面に露出している。ガス抜き部48の表面は、スキン層49Aの表面に比して粗面状であり、凹凸形状を有している。ガス抜き部48は、クッション部材40の裏面に点在して複数設けられている。ガス抜き部48は、粘着シート47によって覆われている。詳細には、複数のガス抜き部48とクッション部材40の裏面側に位置するスキン層49Aは、粘着シート47によって一括して覆われている。
【0030】
クッション部材40が便座30に取り付けられた状態における各部の構成について説明する。以下の説明では、特に断りがない限り、クッション部材40が便座30に取り付けられた状態について説明する。
【0031】
クッション部材40は、
図5に示すように、着座部31の上面32全体を覆っている。これに対して、クッション部材40は、便座ヒンジ部36の上面を覆っておらず、クッション部材40の有無に関わらず、便座ヒンジ部36と便蓋ヒンジ部55の間に空間が確保されている(
図2参照)。クッション部材40は、
図9に示すように、便座30の側面33,34の上部を覆っている。詳細には、クッション部材40における側面部45が内側面33の上部を覆い、側面部46が外側面34の上部を覆っている。クッション部材40は、便座30の最大外形よりも内側に配置されている。つまり、クッション部材40の最大外形をなす外周端部が便座30の外周端部よりも内側に位置している。本実施形態において、クッション部材40の最大外形をなす外周端部は、側面部46の先端部である。
【0032】
図1に示す静電容量式着座センサ38は、使用者が薄肉部41に接触したことを検知する。換言すれば、薄肉部41の厚さは、クッション部材40の有無によって静電容量式着座センサ38の検出に与える影響を抑制するように設定されている。薄肉部41の厚さは、発熱部材39からの熱を、薄肉部41を介して着座者に伝え得るように設定されている。
【0033】
図2及び
図3に示すように、便座装置20は、クッション部材40が便座30に取り付けられた状態で、装置本体21内に組み込まれた便座開閉装置によって自動的に便座30を開閉可能である。例えば、クッション部材40は、便座軸部22に作用するトルクが便座開閉装置による開閉を許容し得るように構成されている。便座軸部22に作用するトルクを低減するという観点から、クッション部材40の質量は400g以下であることが好ましい。クッション部材40は、便座30が開いた状態において、クッション部材40が便蓋50と接触することに起因して、便座30の起立姿勢が前傾しないように構成されている。つまり、クッション部材40が取り付けられて便座30が開いた状態において、便座30は垂直若しくは後傾した起立姿勢に保持される。
【0034】
便座装置20は、クッション部材40が便座30に取り付けられた状態で、装置本体21内に組み込まれた便蓋開閉装置によって自動的に便蓋50を開閉可能である。例えば、クッション部材40は、便蓋50が閉じた状態において、薄肉部41が足部56と接触する以外には、クッション部材40と便蓋50が接触しないように構成されている。例えば、本実施形態では、クッション部材40における足部56が接触する部分41A以外において、クッション部材40の厚みは、クッション部材40が取り付けられていない状態における便座30と便蓋50との間の隙間よりも小さく設定されている。
【0035】
便座装置20は、
図9に示すように、クッション部材40が便座30に取り付けられて便蓋50が閉じた状態において、クッション部材40の側面46Aが便蓋50で隠蔽されている。詳細には、便蓋50が閉じた状態において、クッション部材40の側面部46が便蓋50の垂下片部53によって外周側から覆われている。
【0036】
図11A、
図11B、
図11Cを参照して、クッション部材40が便座30から取り外された場合と、クッション部材40が便座30に取り付けられた場合を比較しつつ、便蓋50が閉じた状態について説明する。足部56は、クッション部材40が便座30から取り外されて便蓋50が閉じた状態において便座30に接触し、クッション部材40が便座30に取り付けられて便蓋50が閉じた状態においてクッション部材40に接触する。
図11Aに示すように、クッション部材40が便座30から取り外されて便蓋50が閉じた状態における便蓋50の前端の位置をP1とする。
図11Cに示すように、クッション部材40が便座30に取り付けられて便蓋50が閉じた状態における便蓋50の前端の位置をP2とする。P2はクッション部材40の分だけ、P1よりも上方に変位する。P1とP2の間の変位量は、クッション部材40において足部56が接触する部分41Aの厚みよりも小さい。つまり、クッション部材40は、便蓋50が閉じた状態において、足部56と接触した部分41Aが弾性変形して、
図11Bに示す自然状態よりも厚みが小さくなっている。本実施形態では、クッション部材40は足部56よりも弾性変形しやすい。この構成によれば、クッション部材が足部よりも剛性が高い構成に比して、P1とP2の間の変位量が小さく抑えられている。
【0037】
本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態の便座装置20は、開閉自在に設けられた便座30と、便座30に対して着脱自在に設けられ、便座30に取り付けられた状態において着座面60を構成するクッション部材40と、開閉自在に設けられた便蓋50と、を備えている。便座装置20は、クッション部材40が便座30に取り付けられた状態で、便座30を開閉可能であり、クッション部材40が便座30に取り付けられた状態で、便蓋50を開閉可能である。
【0038】
この構成によれば、クッション部材40が便座30に取り付けられた状態であっても、使用性が確保された便座装置20を提供できる。詳細には、便座装置20は、便座30に着座して使用する際に、使用者がクッション部材40を便座30に取り付け、使用後にクッション部材40を便座30から取り外す必要がない。また、クッション部材40の有無に関わらず、便座30及び便蓋50が自動開閉可能である場合や、便座30及び便蓋50を閉じる速度がゆっくりになるように調整されている場合等には、クッション部材40が便座30に取り付けられた状態であっても、便座装置20を快適に使用することができる。
【0039】
本実施形態では、クッション部材40によって、上面32が覆われた着座部(便座本体部)31を備えている。クッション部材40の重心は、着座部31の前端31Aから後端31Bまでの長さにおける後側半分に位置している。この構成によれば、クッション部材40を便座30に取り付けたことに起因して、便座軸部22に作用するトルクを低減でき、便座30を開閉する際の負荷を小さくできる。着座部31の前端31Aから後端31Bまでの長さにおける後側半分に重心C1が位置しているクッション部材40によれば、前端領域RFが軽量化されることによって、便座30を手動で開閉する際に重みを感じにくい。
【0040】
本実施形態では、クッション部材40が便座30に取り付けられて便蓋50が閉じた状態において、クッション部材40の側面46Aが便蓋50で隠蔽されている。この構成によれば、便蓋50が閉じた状態において、正面視及び側面視にてクッション部材40が見えにくいから、便座装置20の意匠性を向上できる。
【0041】
本実施形態では、クッション部材40が便座30から取り外されて便蓋50が閉じた状態における便蓋50の前端の位置をP1と、クッション部材40が便座30に取り付けられて便蓋50が閉じた状態における便蓋50の前端の位置をP2の間の変位量が、クッション部材40において足部56が接触する部分41Aの厚みよりも小さい。この構成によれば、P1とP2の間の変位量がクッション部材40において足部56が接触する部分41Aの厚みと同等である場合に比して、クッション部材40を便座30に取り付けた状態であっても、便蓋50を十分に閉じることができる。
【0042】
本実施形態では、便座30は、クッション部材40によって上面32全体が覆われた着座部31を有している。この構成によれば、クッション部材40によって着座部31の上面32の一部のみが覆われる構成に比して、便座30の座り心地をよくできる。例えば、各種の便座の形状に対応するために、左右に分割された後付けの便座シート等では、着座部31の上面32において尾骨を支持する部位がクッション部材40によって覆われない。これに対して、本実施形態では、クッション部材40は、着座部31の上面32全体を覆うから、所定部位R3によって尾骨を支持でき、座り心地をよくできる。上記構成によれば、クッション部材40が便座30に取り付けられた状態において、クッション部材40と便座30との一体感があり、意匠性を向上できる。
【0043】
本実施形態では、クッション部材40は、便座30に取り付けられた状態において、便座30の最大外形よりも内側に配置されている。この構成によれば、クッション部材40と便蓋50が干渉しにくく、クッション部材40を便座30に取り付けた状態であっても、便蓋50を十分に閉じることができる。上記構成によれば、便器本体11から飛び跳ねた汚れを着座部31で受けることができ、汚れがクッション部材40に付くことを抑制できる。
【0044】
本実施形態では、クッション部材40は、便座30に取り付けられた状態において、便座30の側面33,34の上部を覆っている。この構成によれば、クッション部材40が便座30に取り付けられた状態において、クッション部材40と便座30との一体感があり、意匠性を向上できる。また、クッション部材40が便座30の幅方向にズレにくくなり、クッション部材40を位置決めしやすい。
【0045】
本実施形態では、クッション部材40は、粘着シート47によって便座30に取り付けられる。この構成によれば、クッション部材40が便座30からズレにくくなり、クッション部材40を位置決めしやすい。この構成によれば、クッション部材40の取り付け及び取り外しが容易である。
【0046】
本実施形態では、ガス抜き部48は、粘着シート47によって覆われている。この構成によれば、ガス抜き部48における凹凸形状を隠すことができる。この構成によれば、ガス抜き部48にスキン層49Bが形成されないことに起因して、クッション部材40の内部に液体や汚れが侵入することを抑制できる。
【0047】
本実施形態では、クッション部材40の側面部45,46が便座30の内側面33と外側面34に接触するから、クッション部材40が便座30の幅方向にズレにくくなり、クッション部材40を位置決めしやすい。本実施形態では、クッション部材40の断面形状がU字状をなすから、平板状のクッションシートに比して、着座面60の形状を安定化できる。
【0048】
<実施形態2>
実施形態2の便座30は、クッション部材140によって着座部31が覆われた範囲が実施形態1とは相違する。実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0049】
クッション部材140は、
図12に示すように、幅方向における断面形状がU字状をなす。クッション部材140は、着座面60を構成する上面部44と、上面部44における幅方向両端から下方に延びた側面部145,146とを有している。側面部145,146は、先端側に向かうにつれて厚みが小さくなっている。側面部145,146の高さは、着座部31の側面33,34の高さと略同等である。
【0050】
クッション部材140は、便座30の側面33,34全体を覆っている。詳細には、クッション部材140における側面部145が内側面33全体を覆い、側面部146が外側面34全体を覆っている。クッション部材140は、便座30の側面33,34よりも下側に位置する幅方向両側の切削面は覆っていない。
【0051】
便座装置20は、クッション部材140が便座30に取り付けられて便蓋50が閉じた状態において、クッション部材140の側面146Aが便蓋50で隠蔽されている。詳細には、便蓋50が閉じた状態において、クッション部材140の側面部146が便蓋50の垂下片部53によって外周側から覆われている。
【0052】
本実施形態では、クッション部材140が着座部31の上面32と側面33,34全体を覆うから、クッション部材140と便座30との一体感があり、便座30の意匠性を向上できる。
【0053】
本実施形態では、クッション部材140が便座30の側面33,34の上部のみを覆う構成に比して、クッション部材140と便座30との間の隙間が便座30の裏面側に位置する。このため、クッション部材140と便座30との間の隙間に上方からの汚れが侵入しにくく、清掃性がよい。
【0054】
本実施形態では、クッション部材140の側面部145,146が便座30の内側面33と外側面34に接触するから、クッション部材140が便座30の幅方向にズレにくくなり、クッション部材140を位置決めしやすい。本実施形態では、クッション部材140の断面形状がU字状をなすから、平板状のクッションシートに比して、着座面60の形状を安定化できる。
【0055】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)便座の構成は適宜変更可能である。例えば、便座は自動ではなく、手動で開閉可能であってもよい。便座は静電容量式着座センサを備えていなくてもよい。便座は暖房便座でなくてもよい。着座部の形状は、上記した形状に限られず、例えば、切削面を有していなくてもよい。着座部において最大外形を構成する部位は、外側面の下端ではなくてもよく、例えば、下面の外端であってもよい。着座部は中空状ではなく、板状に形成されてもよい。
(2)便蓋の構成は適宜変更可能である。例えば、便蓋は自動ではなく、手動で開閉可能であってもよい。便蓋が、便座及びクッション部材を覆う範囲は変更可能である。便蓋が閉じた状態における便蓋の前端の位置P1,P2は、便蓋軸部の位置や、便座及びクッション部材の形状及び位置に応じて変更可能である。
(3)所定部位は上記所定部位R1,R2,R3のいずれか1つであってもよい。所定部位は、上記所定部位R1,R2,R3とは異なる部位であってもよい。ただし、前端領域以外の部位が好ましい。
(4)クッション部の重心の位置は、上記した位置に限られない。
(5)クッション部の形状、材質、配置、着座部を覆う範囲は適宜変更可能である。例えば、着座部や着座部に近接した位置に光電式の人体検知センサが配置される構成においては、着座部の上面において赤外線等の進路と重なる部分を覆わない構成としてもよい。クッション部は、便座の内側面と外側面のうち一方のみを覆っていてもよい。
(6)上記実施形態では、クッション部が着座面全体を構成した。クッション部は、着座面の一部のみを構成してもよい。例えば、着座面はクッション部と着座部の上面の一部によって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
20…便座装置、30…便座、31…着座部(便座本体部)、31A…前端、31B…後端、32…上面、33,34…側面、40,140…クッション部材、41A…部分、46A,146A…側面、47…粘着シート、48…ガス抜き部、50…便蓋、51…便蓋本体部、56…足部、60…着座面、C1…重心