(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/05 20060101AFI20240208BHJP
H01L 31/12 20060101ALI20240208BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E03C1/05
H01L31/12 E
G01B11/00 A
(21)【出願番号】P 2020025363
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 琴子
(72)【発明者】
【氏名】白井 雄喜
(72)【発明者】
【氏名】滝 宣広
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-070380(JP,A)
【文献】特開2014-235057(JP,A)
【文献】特開2005-207012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検知して吐水する給水装置であって、
水栓と、
吐水領域に向けて光を照射する発光部と、
所定方向に配置された複数の受光素子を有し、前記吐水領域に位置する物体から反射した反射光を受光する受光部と、
前記発光部が発光した発光状態における前記受光部から出力されるデータが閾値未満である場合、前記データに基づいて、前記反射光の重心が移動したか否かを判定する演算部と、
前記反射光の重心が移動したと前記演算部が判別する場合、前記発光部が発光する光の強さを強くする制御部と、
を備えて
おり、
前記データが前記閾値以上の場合、前記演算部は、前記反射光の重心が所定範囲内に属するか否かを判定する給水装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記反射光の重心が移動したか否かの判定を複数回における前記反射光の重心の位置の平均値を用いて行う請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記
水栓は、前記制御部によって開閉が制御され、
前記データが前記閾値以上の場合、前記制御部は、前記水栓を開いた後、前記発光部が発光する光の強さを強くする請求項1から請求項2までのいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項4】
前記
制御部は、前記水栓を閉じて所定時間が経過した後、前記発光部が発光する光の強さを小さくする請求項3に記載の給水装置。
【請求項5】
前記
演算部は、前記反射光の重心が前記所定範囲内に属するか否かを判定し、
前記演算部が、前記反射光の重心が前記所定範囲内に属すると判別した回数が連続して所定回数に達しなかった場合、
前記制御部は、前記発光部が発光する光の強さを強くした高発光状態にする請求項
1から請求項3までのいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記
高発光状態になる前において、前記反射光の重心が前記所定範囲に属すると判別した回数が連続した回数と、前記高発光状態になった後において、前記反射光の重心が前記所定範囲に属すると判別した回数が連続した回数と、を加えた回数が前記所定回数に達したかを判定する請求項
5に記載の給水装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記
反射光の重心の移動の判定を行う前に、前記データからノイズを除去する請求項
1から請求項6までのいずれか一項に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は給水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つのラインセンサによって複数の液体の吐出を制御する自動水栓装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような構成を有する自動水栓装置は、物体の接近に備えて常にセンサに電力を供給する必要がある。このため、特許文献1のような構成において、物体が接近していない場合における消費電力を抑える手法の確立が望まれている。
【0005】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、待機中の消費電力を抑え、且つ物体の検知を良好にすることができる給水装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の給水装置は、物体を検知して吐水する給水装置であって、水栓と、吐水領域に向けて光を照射する発光部と、所定方向に配置された複数の受光素子を有し、前記吐水領域に位置する物体から反射した反射光を受光する受光部と、前記発光部が発光した発光状態における前記受光部から出力されるデータが閾値未満である場合、前記データに基づいて、前記反射光の重心が移動したか否かを判定する演算部と、前記反射光の重心が移動したと前記演算部が判別する場合、前記発光部が発光する光の強さを強くする制御部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態1の給水装置を備えた洗面台を示す斜視断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1における、ラインセンサを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1撮像動作に応じた受光波形の一例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、第2撮像動作に応じた受光波形の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、重心位置の計算方法を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、距離を利用した検知原理を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、第1撮像動作に応じた受光波形の一例を示すグラフであって、受光量が閾値未満である状態で画素の重心が移動した状態を示す。
【
図9】
図9は、物体からの反射光ではない受光波形の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、物体からの反射光ではない受光波形の一例を示すグラフである。
【
図11】
図11は、物体からの反射光ではない受光波形の一例を示すグラフである。
【
図12】
図12は、物体からの反射光として判別すべき受光波形の一例を示すグラフである。
【
図13】
図13は、物体からの反射光として判別すべき受光波形の一例を示すグラフである。
【
図14】
図14は、物体からの反射光として判別すべき受光波形の一例を示すグラフである。
【
図15】
図15は、物体からの反射光として判別すべき受光波形の一例を示すグラフである。
【
図16】
図16は、物体からの反射光として判別すべき受光波形の一例を示すグラフである。
【
図17】
図17は、実施形態1の給水装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、第1撮像動作によって取得された受光波形において、受光量が閾値未満の反射光の重心が移動した場合における、発光部、反射光の重心の移動、物体、受光量、及び吐水の状態を示すタイムチャートである。
【
図19】
図19は、第1撮像動作によって取得された受光波形において、受光量が閾値以上である状態を所定回数連続して検知した場合における、発光部、反射光の重心の移動、物体、受光量、及び吐水の状態を示すタイムチャートである。
【
図20】
図20は、第1撮像動作によって取得された受光波形において、受光量が閾値以上である状態を連続して検知できなくなった場合における、発光部、反射光の重心の移動、物体、受光量、及び吐水の状態を示すタイムチャートである。
【
図21】
図21は、所定回数、連続して物体を検知している最中において、受光量が閾値未満になった場合の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
図1に、実施形態1に係る給水装置が設けられた洗面台15を示す。洗面台15は、カウンタ155に、下方に向けて窪んで形成された鉢151が設けられている。鉢151の底部には、排水口152が開口して形成されている。
【0009】
[給水装置の構成]
給水装置は、
図1、2に示すように、吐水管16、水栓である電磁弁11、発光部25、受光部26、制御部3、及び演算部4を備えている。吐水管16は、カウンタ155の上面156に立設された略円柱状の胴部160と、この胴部160の台座をなす基部161と、を有している。胴部160は、鉢151側に傾けた状態で基部161に支持されている。鉢151側に面する胴部160の側面には、略円筒形の吐水部162が取り付けられ、その先端には、吐水口168が開口している。この吐水部162の上側に当たる胴部160の側面には、後述するセンサユニット2の検知面を形成するフィルタ板165が設けられている。フィルタ板165は、例えば、赤外領域の光を選択的に透過する合成樹脂で形成されている。電磁弁11は、吐水管16に給水する給水路12に設けられている。電磁弁11は、後述する制御部3によって開閉の制御がなされる。
【0010】
センサユニット2は、
図2に示すように、吐水管16に組み込まれている。センサユニット2は、発光部25であるLED素子251及び受光部26であるラインセンサ261を筐体21に収容された形態とされ、制御部3から供給される電力に基づいて動作する。発光部25は、赤外光を発するLED素子251と投光レンズ255とを有している。受光部26は、ラインセンサ261と集光レンズ265とを有している。発光部25と受光部26とは、遮光性を有した隔壁211を挟んで水平方向に並んで配置されている。
【0011】
LED素子251は、発光素子本体250が透明な合成樹脂254によって封止されている。発光部25は、遮光性を有するケース252によってLED素子251が覆われている。ケース252には、縦方向(鉛直方向)のスリット253が形成されている。スリット253は、発光素子本体250から発する光の水平方向への拡がりが抑制された縦方向に延びるスリット光を吐水領域に向けて照射することができる。ここでいう吐水領域とは、吐水管16から吐水された水が通過し得る空間である。
【0012】
ラインセンサ261は、
図3に示すように、受光した量を電気的な物理量(例えば、電圧値)に変換する受光素子である画素260が直線状(すなわち、一次元)に配列されて形成されている。ラインセンサ261は、有効画素として64個の画素260を含んでいる。ラインセンサ261では、これら64個の画素260によって受光エリア263が形成されている。ラインセンサ261は、図示しない電子シャッターを備えており、電子シャッターによって各画素260の受光(露光)時間を調整することができる。ラインセンサ261は、受光する動作を実行する毎に撮像データを出力する。本実施形態における撮像データは、例えば、受光量を表す256階調の画素値(電圧値)が各画素260の並ぶ順に配列された1次元のデジタルデータである。
【0013】
受光エリア263の長手方向は、発光部25と受光部26とが並ぶ方向(
図2における左右方向)に一致するようにされている。つまり、受光部26は、所定方向に配置された複数の画素260を有している。センサユニット2は、ラインセンサ261の受光エリア263によって鉢151の内周面である鉢面150(
図1参照)が位置する領域からの光が受光できるように、吐水管16に組み込まれている。つまり、ラインセンサ261が撮像できる範囲内に鉢面150が位置する。ラインセンサ261と鉢面150との間に手等の物体がない状態であれば、ラインセンサ261は物体からの反射光を受光することはない。ラインセンサ261と鉢面150との間に手等の物体がある状態であれば、ラインセンサ261は物体からの反射光を受光する。つまり、受光部26は、画素260が吐水領域に位置する物体から反射した反射光を受光するのである。
【0014】
制御部3は、商用電源(図示せず)から電力が供給されることによって動作する。制御部3は、センサユニット2のLED素子251及びラインセンサ261や、電磁弁11の開閉の動作を制御する。制御部3は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などのメモリ、A/D変換器等を有して電気基板に実装された形態にされている(図示せず。)。
【0015】
制御部3は、LED素子251及びラインセンサ261の制御や、ラインセンサ261から撮像データ(各画素260の受光量の分布を表す受光波形)を読み出す機能を備えている。制御部3は、LED素子251の発光及びラインセンサ261の受光が行われる撮像動作を制御する。制御部3は、動作期間と非動作期間が交互に現れる間欠動作が行われるようにラインセンサ261の動作を制御する。制御部3は、前回の動作期間が終了してから所定時間(例えば、500ms。)が経過するまでラインセンサ261への電源供給を停止して非動作期間を設け、所定時間が経過したときに電源供給を再開して動作期間を設定する。制御部3による撮像動作としては、LED素子251の発光時間が40μsの第1撮像動作と、160μsの第2撮像動作と、がある。LED素子251が発光する時間は、第1撮像動作よりも第2撮像動作の方が長く(すなわち、電圧を印加する時間が長い)LED素子251における消費電力が大きい。第1撮像動作よりも第2撮像動作におけるLED素子251の発光する強さが強い。ここでいうLED素子251が発光する光の強さは、発光時間を長くしたり、LED素子251に流す電流や印加する電圧を大きくしたりすることによって強くなり、発光時間を短くしたり、LED素子251に流す電流や印加する電圧を小さくしたりすることによって弱くなる。LED素子251の発光する強さは、LED素子251における消費電力の大きさに対応している。
【0016】
本実施形態では、1回の撮像動作の中で、LED素子251が発光した発光状態に同期したラインセンサ261の露光(受光)と、LED素子251が発光しない無発光状態に同期したラインセンサ261の露光(受光)と、が連続的に実行される。これら2度のラインセンサ261における受光時の撮像データの差分が、演算部4によって画素260毎の受光量L(x)として求められる。つまり、受光量L(x)は撮像データに基づくデータである。画素260毎の受光量L(x)が分布する受光波形は、周囲からの光(すなわち、LED素子251による発光以外の光)の影響が除かれて、主としてLED素子251において生じた光に起因した物体からの反射光の成分によって構成されたものである。
【0017】
演算部4は、第1判定処理、第2判定処理、エリア判定処理、及び重心移動判定処理等を実行し得る機能を備えている。演算部4は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPUなどの演算装置、ROM又はRAMなどのメモリ、A/D変換器等を有して電気基板に実装された形態にされている。演算部4は、制御部3と信号線Sを介して接続されており、制御部3を介してラインセンサ261からの撮像データを得て、この撮像データに基づいて第1判定処理、第2判定処理、エリア判定処理、及び重心移動判定処理を行う。演算部4において第1判定処理、第2判定処理、エリア判定処理、及び重心移動判定処理が実行された結果に基づいて、物体を検知したことを示す検知信号が信号線Sを介して制御部3に向けて出力される。
【0018】
第1判定処理は、LED素子251の発光時間が40μsの第1撮像動作によって取得される受光波形を利用して実行される(
図4参照。)。
図4において、横軸xは、画素番号(所定方向に配置された各画素260の位置)を示し、縦軸yは、画素番号xの画素260における受光量L(x)(画素値)を示している。第1判定処理では、この受光波形をなす各画素260の受光量L(x)と、閾値Tとの比較が行われる。第1判定処理において、いずれかの画素260の受光量が閾値T以上であると判別されることは、物体を検知したことと同義である。
【0019】
第2判定処理は、LED素子251の発光時間が160μsの第2撮像動作によって取得される受光波形を利用して実行される(
図5参照。)。第2撮像動作におけるLED素子251の発光時間は、第1撮像動作のときに比べて長い。このため、第2撮像動作において所定の場所に位置する物体について得られた撮像データにおける、この物体からの反射光の重心の位置における画素の受光量L(x)は、第1撮像動作においてこの物体から得られた撮像データのものよりも大きくなる(
図4、5参照。)。第2判定処理では、この受光波形をなす各画素260の受光量L(x)と、閾値Tとの比較が行われる。第2判定処理において、いずれかの画素260の受光量L(x)が閾値T以上であると判別されることは、物体を検知したことと同義である。
【0020】
[物体からの反射光の重心の位置を特定する方法について]
図6に示す受光波形は、
図5の受光波形に対応したものであり、各画素260の受光量L(x)を明示したものである。先ず、
図6に示す受光波形を構成する画素260毎の受光量L(x)を積算して、すべての画素260(すなわち、64画素)の受光量L(x)の総和SLを求める。次に、受光エリア263の左端の画素(すなわち画素番号x=1)から順番に各画素260の受光量L(x)を積算して、積算された積算値が総和SLの半分の大きさに到達したかを判定する。そして、積算された積算値が総和SLの半分の大きさに到達したときの画素番号x=n(
図6における黒丸が示す位置)の画素260の位置を物体からの反射光の重心として定義する。
【0021】
第1判定処理、及び第2判定処理では、こうして得られた物体からの反射光の重心の位置に対応する画素260の受光量L(x)(以下、重心の受光量L(x)ともいう)が閾値T以上か否かを判定する。
【0022】
[検知エリアについて]
検知エリアDは、センサユニット2を利用した三角測量の原理に基づいて設定されている。具体的には、洗面台15におけるセンサユニット2、鉢面150、物体である使用者の手の位置関係は、
図7に示すように模式的に表現できる。LED素子251で生じた光のうち、物体Bによって反射した反射光がラインセンサ261に入射する際、ラインセンサ261から物体Bまでの距離Hに応じてその入射位置が変化する。具体的には、距離Hが短くなるほどラインセンサ261に入射する物体からの反射光の入射位置が
図7における上側に向い、距離Hが長くなるほど下側に向かうことになる。物体からの反射光の入射位置に対応する受光量L(x)の重心の位置は、距離Hが短くなるほど画素番号xが小さくなる方向に移動し、距離Hが長くなるほど画素番号xが大きくなる方向に移動する。このように、ラインセンサ261に対する物体からの反射光の入射位置は、ラインセンサ261から物体Bまでの距離Hに対応しており、距離Hの大きさを表す指標として用いることができる。
図5、6、8に示す検知エリアDは、吐水領域に対応するように受光エリア263内に設定されたエリアである。つまり、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内にあるときは、物体Bが吐水領域に位置することに対応し、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアDよりも大きい画素番号xの位置にあるときは、物体Bが非吐水領域に位置することに対応している。
【0023】
エリア判定処理は、第1撮像動作、及び第2撮像動作によって取得される受光波形を利用して実行される。物体からの反射光の重心の位置が検知エリアD(
図5、6参照)(所定範囲)内に属するか否かの判定を行う。具体的には、重心の受光量L(x)の位置が受光エリア263内に設定された検知エリアD内にあるか否かの判定を行う。
【0024】
重心移動判定処理は、LED素子251の発光時間が40μsの第1撮像動作によって取得される受光波形を利用して実行される(
図8参照。)。重心移動判定処理は、受光量L(x)が閾値T未満であるときに行われる。重心移動判定処理は、物体からの反射光の重心の位置の移動量Mが、所定の移動量以上(例えば、5画素以上)移動したか否かを判定する処理である。つまり、演算部4は、発光部25が発光した発光状態における受光部26から出力される撮像データに基づく受光量L(x)が閾値T未満である場合、撮像データに基づく受光量L(x)に基づいて物体からの反射光の重心が移動したか否かを判定するのである。演算部4は、複数回(例えば、連続する過去5回)における物体からの反射光の重心の位置の平均値を演算し得る構成とされている。重心移動判定処理において、演算部4は、複数回における物体からの反射光の重心の位置の平均値と、最も新しい(すなわち、現在の)物体からの反射光の重心の位置とによって移動量Mを算出し、こうして得られた移動量Mが所定の移動量以上であるか否かを判定するのである。つまり、演算部4は、物体からの反射光の重心が移動したか否かの判定を複数回における反射光の重心の位置の平均値を用いて行う。
【0025】
重心移動判定処理は、受光量L(x)が閾値T未満と判別されたときに行われる。このため、重心移動判定処理は、物体からの反射光ではない受光波形(所謂、ノイズ)によって、良好に移動量Mを算出できなくなるおそれがある。このため、重心移動判定処理を行う前に、ノイズを除去するノイズフィルタリングを行うことが考えらえる。
【0026】
図9から11に、物体からの反射光ではない受光波形を例示する。各図において、上向きの矢印の位置は、受光波形における重心の画素の位置を示している。
図9に示す受光波形は、受光量L(x)が0でない画素260が受光エリア263内に幅広く分布している。
図10に示す受光波形は、受光量L(x)が0でない画素260が受光エリア263内に狭い幅で急峻に立ち上がっている。
図11に示す受光波形は、受光量L(x)が0でない画素260が受光エリア263内に狭い幅で分布し、且つ連続しておらず、重心の画素260がいずれの分布にも属していない。
【0027】
図12から16に、物体からの反射光として判別すべき受光波形を例示する。
図12に示す受光波形は、上方向に湾曲しており、受光量L(x)が0でない画素260が受光エリア263内に所定の幅をもって分布している。
図13に示す受光波形は、一方が急峻に立ち上がった三角形状をなしており、受光量L(x)が0でない画素260が受光エリア263内に所定の幅をもって分布している。
図14に示す受光波形は、重心の画素260を挟み2つのピークが現れており受光量L(x)が0でない画素260が受光エリア263内に所定の幅をもって分布している。
図15に示す受光波形は、2つに分かれており連続していない。
図15に示す受光波形の一方の受光量L(x)は、0でない画素260の分布が急峻に立ち上がっている。
図15に示す受光波形の他方の受光量L(x)は、0でない画素260の分布が上方向に湾曲しており、所定の幅をもって分布している。重心の画素260は他方の受光量L(x)が0でない画素260の分布に属している。
図16に示す受光波形は、受光エリア263の全体にわたって受光量L(x)が0でない画素260が分布しており、中央部よりも画素番号が小さい側の受光量L(x)が大きく、中央部よりも画素番号が大きい側の受光量L(x)が小さい。
【0028】
ノイズフィルタリングを行うために、例えば、演算部4内のROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリに、
図12から16についての特徴を記憶しておき、受光部26において取得した撮像データや、撮像データに基づく受光量L(x)がこの特徴を有しているか否かを判定することが考えられる。つまり、受光部26において取得した撮像データに基づく受光量L(x)対して物体からの反射光の重心の移動の判定を行う前に、ノイズを除去するノイズフィルタリングを行うのである。例えば、
図12から16について、以下の特徴があげられる。受光量L(x)の大きさが一定以上である。波形の幅が狭すぎない、すなわち、重心の画素260の受光量L(x)に対して一定以上の受光量L(x)を持つ画素260が、重心の画素260を含めて所定の第1の幅以上連続している。波形の幅が広すぎない、すなわち、重心の画素260の受光量L(x)に対して一定以上の受光量L(x)を持つ画素260が、重心の画素260を含めて第1の幅よりも大きい所定の第2の幅以上連続していない。重心の画素260の受光量L(x)に対して一定以上の受光量L(x)を持つ画素260は重心の画素260に対して左右対称でなくても良い等である。
【0029】
[給水装置の動作について]
給水装置の動作の一例について、
図17から21等を参照しつつ説明する。
【0030】
[第1撮像動作において各画素の受光量が閾値未満の場合]
図17に示すように、給水装置は、非検知状態、すなわち止水中の検知処理において、発光時間及び露光時間が40μsの第1撮像動作(ステップS1)、及び第1判定処理(ステップS2)が、500msの周期(ステップS15)で繰り返し実行される。
【0031】
具体的には、500msの周期の間欠動作で演算部4及び制御部3が動作する間欠動作期間(
図18から20参照)においては、LED素子251の発光パターンに同期してステップS1の第1撮像動作が実行された後、ステップS2において、第1判定処理を実行する。詳しくは、ステップS2において、重心の受光量L(x)が閾値T未満である(ステップS2におけるNo)と判別されると、ステップS9に移行して重心移動判定処理が実行される。重心移動判定処理において、物体からの反射光の重心の移動量M(
図8参照)が所定の移動量以上でない(ステップS9におけるNo)と判別されると、ステップS15に移行して500msの待機の後、ステップS1が再び実行される。ステップS2において、重心の受光量L(x)が閾値T以上である(すなわち、物体が有る)(ステップS2におけるYes)と判別されると、ステップS3に移行する。
【0032】
[重心移動判定処理において物体からの反射光の重心が所定の移動量移動した場合]
ステップS9の重心移動判定処理において、物体からの反射光の重心の移動量Mが所定の移動量以上である(ステップS9におけるYes)と判別されると、発光時間及び受光時間が160μsの第2撮像動作(ステップS10)と、第2撮像動作により取得される受光波形(
図5参照)を利用したエリア判定処理(ステップS11)、第2判定処理(ステップS12)とが実行される。つまり、センサユニット2における発光時間及び受光時間を長くし、LED素子251の強い発光によって物体を照らすことによって、物体が吐水領域に有るにも関わらず、物体を検知することができない状況が生じることを防止し、物体の有無を確実に判定するのである。
【0033】
第2撮像動作(ステップS10)、エリア判定処理(ステップS11)、及び第2判定処理(ステップS12)は、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に属さない(ステップS11におけるNo)、及び重心の受光量L(x)が閾値T未満(ステップS12におけるNo)のいずれかと判別されない限り、2.51msの周期(ステップS14)で連続して繰り返されて、回数が6回に達する(ステップS13におけるYes)まで、ステップS10、ステップS11、ステップS12、ステップS13、及びステップS14が反復して実行される。ステップS11(エリア判定処理)、及びステップS12(第2判定処理)が6回連続して実行されて、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に属し(ステップS11におけるYes)、且つ重心の受光量L(x)が閾値T以上(ステップS12におけるYes)の状態が6回連続(ステップS13におけるYes)していると判別された場合、演算部4は、物体を検知したことを示す検知信号を制御部3に向けて出力する(ステップS8)。制御部3は、検知信号が入力されると電磁弁11を開弁する。こうして給水装置は吐水する。ステップS10、ステップS11、ステップS12、ステップS13、及びステップS14が6回繰り返される途中で、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に属さない(ステップS11におけるNo)、及び重心の受光量L(x)が閾値T未満(ステップS11におけるNo)のいずれかであると判別された場合、ステップS15に移行した後、ステップS1が再び実行される。
【0034】
このときの発光部25、物体からの反射光の重心の位置の移動、物体の有無、受光量L(x)、及び吐水の状態の変化を
図18に示す。
図18に示すように、間欠動作期間における時刻T1に、物体が吐水領域に進入する。すると、時刻T2において、重心の受光量L(x)の位置の移動量Mが所定の移動量以上であると判別される。すると、時刻T3において、第2反復動作期間が開始する。つまり、制御部3は、物体からの反射光の重心が移動したと演算部4が判別する場合、LED素子251(発光部25)が発光する光の強さを強くするのである。この動作は、ステップS2においてNoと判別され、ステップS9においてYesと判別され、ステップS10に移行することに対応している。そして、時刻T3以降、エリア判定処理、及び第2判定処理が反復して実行される。この動作は、ステップS10、ステップS11、ステップS12、ステップS13、及びステップS14を繰り返して実行することに対応している。次に、時刻T4において、6回目のステップS11(エリア判定処理)及びステップS12(第2判定処理)が実行され、給水装置は吐水を開始する。この動作は、ステップS13においてYesと判別され、ステップS8が実行されることに対応している。
【0035】
次に、時刻T5において、物体が吐水領域から離れると、受光量L(x)が閾値T未満になる。このとき、演算部4は、受光量L(x)が閾値T未満であると判別する。その後、LED素子251(発光部25)における発光は、発光時間が160μsの状態を維持して時刻T6まで継続し、給水装置は、時刻T6において吐水が終了する。そして、時刻T7において、LED素子251(発光部25)における発光時間は、40μsになる。つまり、制御部3は、電磁弁11を閉じて所定の時間が経過した後、発光部25が発光する光の強さを小さくするのである。
【0036】
[第1撮像動作において重心の受光量が閾値以上であり、重心の受光量L(x)の位置が検知エリア内に属している場合]
ステップS1の第1撮像動作を実行した後、ステップS2の第1判定処理において、重心の受光量L(x)が閾値T以上(ステップS2におけるYes)と判別されると、ステップS1と同じ仕様の第1撮像動作(ステップS3)、エリア判定処理(ステップS4)、及びステップS2と同じ仕様の第1判定処理(ステップS5)が連続的に繰り返し実行される。具体的には、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に属する(ステップS4におけるNo)、及び重心の受光量L(x)が閾値T未満(ステップS5におけるNo)のいずれかであると判別されない限り、ステップS3、ステップS4、ステップS5、ステップS6、及びステップS7が連続して繰り返されて、連続して繰り返された回数が6回に達する(ステップS6におけるYes)まで、例えば2.5msの周期(ステップS7)で実行される。
【0037】
ステップS4(エリア判定処理)、及びステップS5(第1判定処理)が6回連続して実行されて、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に属する(ステップS4におけるYes)、且つ重心の受光量L(x)が閾値T以上(ステップS5におけるYes)の状態が6回連続(ステップS6におけるYes)していると判別された場合、演算部4は、物体を検知したことを示す検知信号を制御部3に向けて出力する(ステップS8)。制御部3は、検知信号が入力されると電磁弁11を開弁する。こうして給水装置は吐水する。第1反復動作期間を実行中に、エリア判定処理(ステップS4)において、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に属さない(ステップS4におけるNo)と判別されると、ステップS15に移行した後、ステップS1が再び実行される。
【0038】
このときの発光部25、物体からの反射光の重心の位置の移動、物体の有無、受光量L(x)、及び吐水の状態の変化を
図19に示す。
図19に示すように、間欠動作期間における時刻T11に、物体が吐水領域に進入する。すると、時刻T12において、重心の受光量L(x)が閾値T以上になると、第1反復動作期間が開始する。この動作は、ステップS2においてYesと判別された後、ステップS3に移行することに対応する。そして、時刻T12以降、第1撮像動作、エリア判定処理、及び第1判定処理が反復して実行される。この動作はステップS3、ステップS4、ステップS5、ステップS6、及びステップS7を繰り返して実行することに対応している。こうして、演算部4は、ステップS1において、第1判定処理を実行し、第1判定処理において、撮像データに基づく受光量L(x)が閾値T以上である場合、ステップS4において、エリア判定処理を実行し、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内(所定範囲内)に属するか否かを判定するのである。
【0039】
次に、時刻T13において、6回目のエリア判定処理、及び第1判定処理が実行され、吐水が開始する。この動作は、ステップS6においてYesと判別され、ステップS8が実行されることに対応している。時刻T13において、吐水が開始された後、LED素子251(発光部25)における発光時間が40μsから160μsに変化する。つまり、制御部3は、電磁弁11から吐水を開始した後、発光部25が発光する光の強さを強くする。
【0040】
次に、時刻T14において、物体が吐水領域から離れると、演算部4は、受光量L(x)が閾値T未満であると判別する。その後、LED素子251(発光部25)における発光は、発光時間が160μsの状態を維持して時刻T15までの所定時間継続し、時刻T15において、吐水が終了する。
【0041】
[第1判定処理が繰り返される途中で受光量が閾値未満になった場合]
ステップS3、ステップS4、ステップS5、ステップS6、及びステップS7が6回繰り返される途中で、受光量L(x)が閾値T未満(ステップS5におけるNo)と判別された場合、発光時間及び受光時間が160μsの第2撮像動作(ステップS10)、エリア判定処理(ステップS11)、及び第2判定処理(ステップS11)が実行される。つまり、発光時間及び受光時間を長くし、LED素子251の発光の強さを強くすることによって、物体が吐水領域に有るにも関わらず、物体を検知することができない状況が生じることを防止し、物体の有無を確実に判定するのである。
【0042】
ステップS10、ステップS11、ステップS12、ステップS13、及びステップS14は、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に属さない(ステップS11におけるNo)、及び重心の受光量L(x)が閾値T未満(ステップS12におけるNo)のいずれかと判別されない限り、2.51msの周期(ステップS14)で連続して繰り返され、回数が6回に達する(ステップS13におけるYes)まで反復して実行される。ステップS11(エリア判定処理)、及びステップS12(第2判定処理)が6回連続して実行されて、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に属し(ステップS11におけるYes)、且つ重心の受光量L(x)が閾値T以上(ステップS12におけるYes)の状態が6回連続(ステップS13におけるYes)していると判別された場合、演算部4は、物体を検知したことを示す検知信号を制御部3に向けて出力する(ステップS8)。制御部3は、検知信号が入力されると電磁弁11を開弁する。こうして給水装置は物体を検知して吐水する。
【0043】
このときの発光部25、反射光の重心の位置の移動、物体の有無、受光量L(x)、及び吐水の状態の変化を
図20に示す。
図20に示すように、間欠動作期間における時刻T21に、物体が吐水領域に進入する。すると、時刻T22において、重心の受光量L(x)が閾値T以上になり、第1反復動作期間が開始する。この動作は、ステップS2においてYesと判別された後、ステップS3に移行することに対応している。そして、時刻T22以降、第1撮像動作、エリア判定処理、及び第1判定処理が反復して実行される。
【0044】
次に、時刻T23において、重心の受光量L(x)が閾値T未満になる(
図20における点線円内参照。)。時刻T22から時刻T23までの間には、6回連続して重心の受光量L(x)が閾値T以上であると判別されていない。すると、時刻T24において、第1反復動作期間が終了して第2反復動作期間が開始する。この動作は、ステップS5においてNoと判別され、ステップS10に移行した後、ステップS10、ステップS11、ステップS12、ステップS13、及びステップS14を繰り返して実行することに対応している。
【0045】
次に、時刻T25において、6回目のステップS11(エリア判定処理)、及びステップS12(第2判定処理)が実行され、吐水が開始する。この動作は、ステップS13においてYesと判別され、ステップS8が実行されることに対応している。
【0046】
本実施形態では、ステップS3(第1撮像動作)、ステップS4(エリア判定処理)、ステップS5(第1判定処理)が繰り返し実行される第1反復動作期間と、ステップS10(第2撮像動作)、ステップS11(エリア判定処理)、及びステップS12(第2判定処理)が繰り返し実行される第2反復動作期間とで、その繰り返し周期が相違している。第1反復動作期間の周期が2.50msに設定されている一方、第2の反復動作期間の周期が2.51msに設定されている。このため、50Hzあるいは60Hz周期で点灯消灯を繰り返す蛍光灯の下でも良好に検知をすることができる。
【0047】
[検知信号を出力するまでの、連続して物体を検知する回数について]
検知信号を出力するまでの、連続して物体を検知する回数を変更する動作の一例について説明する。具体的には、
図21に示すように、演算部4は、ステップS30において、所定回数、連続して物体を検知している最中か判定する。具体的には、所定回数、連続して重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に属するか否かを判別している最中であるか判定する。これは、第1反復動作期間中、すなわち、
図17におけるステップS4(エリア判定処理)が繰り返し実行されているか否かを判定することと同義である。
【0048】
ステップS30において所定回数、連続して物体を検知している最中でない(ステップS30におけるNo)(すなわち、第1反復動作期間中でなく、ステップS4(エリア判定処理)が繰り返し実行されていない状態)と判別すると、ステップS37に移行して、物体が吐水領域に無いと判別して処理を終了する。この場合、例えば、間欠動作期間に移行することが考えられる(
図18から20参照。)。
【0049】
ステップS30において所定回数、連続して物体を検知している最中(ステップS30におけるYes)(第1反復動作期間中、すなわち、ステップS4(エリア判定処理)が繰り返し実行されている状態)であると判別すると、ステップS31に移行して、重心の受光量L(x)が閾値T以上であるかを判定する。これは第1反復動作期間における、
図17におけるステップS5(第1判定処理)を実行することに対応している。ステップS31において、重心の受光量L(x)が閾値T未満(ステップS31におけるNo)であると判別すると、ステップS33に移行して、吐水を優先するか否かを判定する。ここでいう吐水の優先とは、吐水を開始するまでの時間をより短縮させることである。吐水を優先するか否かは、例えば、予め演算部4のROM等のメモリに吐水を優先するか否かの情報を記憶しておき、この情報に基づいて判定したり、給水装置に吐水を優先するか否かを切り替えるスイッチを設け、このスイッチの状態(例えば、オンオフの状態)に基づいて判定したりすることが考えられる。ステップS33において、吐水を優先しない(ステップS33におけるNo)と判別すると、ステップS37に移行して、物体が吐水領域に無いと判別して処理を終了する。
【0050】
ステップS33において、吐水を優先する(ステップS33におけるYes)と判別すると、ステップS34に移行して、精度を優先させるか否かを判定する。ここでいう精度とは、物体の有無の判定に対して正確に対応するように吐水を開始することである。精度を優先させるか否かは、例えば、予め演算部4のROM等のメモリに精度を優先するか否かの情報を記憶しておき、この情報に基づいて判定したり、給水装置に精度を優先するか否かを切り替えるスイッチを設け、このスイッチの状態(例えば、オンオフの状態)に基づいて判定したりすることが考えられる。ステップS34において、精度を優先しない(ステップS34におけるNo)と判別すると、ステップS36に移行して、LED素子251の発光の強さを強くして高発光状態として物体をより強く照らし、引き続き連続して所定回数に達するまで撮像動作を繰り返すのである。具体的には、第1反復動作期間において、発光時間が40μsの第1撮像動作を実行して3回連続して物体の検知を継続した後、重心の受光量L(x)が閾値T未満になった場合、発光時間が160μsの第2撮像動作を実行して、引き続き連続して後3回物体を検知して、所定回数に達するまで撮像動作を繰り返すのである。つまり、演算部4が、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に属すると判別した回数が連続して所定回数に達しなかった場合、制御部3は、発光部25が発光する光の強さを強くした高発光状態にする。演算部4は、高発光状態になる前において、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアDに属すると判別した回数が連続した回数と、高発光状態になった後において、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアDに属すると判別した回数が連続した回数と、を加えた回数が所定回数に達したかを判定するのである。
【0051】
ステップS34において、精度を優先する(ステップS34におけるYes)と判別すると、ステップS35に移行して、LED素子251の発光の強さを強くして、改めて所定回数に達するまで撮像動作を繰り返す。具体的には、第1反復動作期間において、発光時間が40μsの第1撮像動作を実行して3回連続して物体の検知を継続した後、重心の受光量L(x)が閾値T未満になった場合、発光時間が160μsの第2撮像動作を実行する第2動作反復期間を実行し、改めて6回(所定回数)に達するまで撮像動作を繰り返すのである。
【0052】
ステップS31において、重心の受光量L(x)が閾値T以上(ステップS31におけるYes)であると判別すると、ステップS32に移行して、発光時間が40μsの第1撮像動作にて引き続き、所定回数に達するまで撮像動作を繰り返す。具体的には、発光時間が40μsの第1撮像動作を実行する第1反復動作期間を引き続き実行し、6回(所定回数)に達するまで撮像動作を繰り返すのである。これは、
図17におけるステップS3からステップS7までを6回反復して実行することに対応している。
【0053】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0054】
給水装置は物体を検知して吐水する。給水装置は、電磁弁11と、発光部25と、受光部26と、演算部4と、制御部3とを備えている。発光部25は、吐水領域に向けて光を照射する。受光部26は、所定方向に配置された複数の画素260を有し、吐水領域に位置する物体から反射した反射光を受光する。演算部4は、発光部25が発光した発光状態における受光部26から出力される撮像データに基づく受光量L(x)が閾値T未満である場合、撮像データに基づく受光量L(x)に基づいて、重心の受光量L(x)の位置(反射光の重心)が移動したか否かを判定する。制御部3は、重心の受光量L(x)の位置が移動したと演算部4が判別する場合、発光部25が発光する光の強さを強くする。
【0055】
この構成によれば、給水装置は、発光部25が発光する光の強さが、画素260から出力される撮像データに基づく受光量L(x)が閾値T未満になる強さであっても重心の受光量L(x)の位置が移動したと演算部4が判別する場合、発光部25が発光する光の強さを強くすることができる。このため、給水装置は、重心の受光量L(x)の位置が移動していない場合には、発光部25が発光する光の強さを小さく(すなわち、発光部25の消費電力を小さく)しておくことができ、演算部4における消費電力を抑えることに寄与することができる。さらに、撮像データに基づく受光量L(x)が閾値T未満であっても重心の受光量L(x)の位置が移動した場合、発光部25が発光する光の強さを強くすることによって、物体を検知する精度を向上させることができ、物体を良好に検知することができる。ここでいう反射光の重心とは、反射光の最も明るい部分(重心の受光量L(x)の位置)を含む領域である。
【0056】
演算部4は、重心の受光量L(x)の位置が移動したか否かの判定を複数回における重心の受光量L(x)の位置の平均値を用いて行う。この構成によれば、給水装置は、重心の受光量L(x)の位置の移動を過剰に検知することを抑えることができ、より適切に重心の受光量L(x)の位置の移動を検知することができる。具体的には、発光部25が発光する光の強さを過剰に大きくすることを抑えることができ、これによって、演算部4における消費電力を抑えることができる。
【0057】
給水装置は、撮像データに基づく受光量L(x)が閾値T以上の場合、演算部4は、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD(所定範囲)内に属するか否かを判定する。この構成によれば、給水装置は、発光部25が発光する光の強さが小さくても(すなわち、発光部25の消費電力が小さくても)、撮像データに基づく受光量L(x)が閾値T以上の場合、演算部4によって物体の検知を行うことができる。
【0058】
給水装置の電磁弁11は、制御部3によって開閉が制御され、撮像データに基づく受光量L(x)が閾値T以上の場合、制御部3は、電磁弁11を開いた後、発光部25が発光する光の強さを強くする。この構成によれば、濡れた手が動いた場合、手の表面において光が乱反射され、これによって受光量が減少し、この現象に起因して、給水装置からの吐水が意図せずに終了することを防ぐことができる。
【0059】
給水装置の制御部3は、電磁弁11を閉じて所定時間が経過した後、発光部25が発光する光の強さを小さくする。この構成によれば、給水装置は、所定時間が経過するまでの間、発光部25が発光する光の強さを弱くしないようにすることによって、再び吐水を開始し易くすることができる。
【0060】
給水装置の演算部4は、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD(所定範囲)内に属するか否かを判定し、演算部4が、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に属すると判別した回数が連続して所定回数に達しなかった場合、制御部3は、発光部25が発光する光の強さを強くした高発光状態にする。この構成によれば、給水装置は、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に所定回数連続して属するかを判定することによって、例えば、蛍光灯などの他の光源から物体から反射した光と、発光部25が発光した光とを区別することができる。さらに、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に連続して所定回数に達しなかった場合、発光部25が発光する光の強さを強くすることによって、物体を検知する精度を高めることができる。
【0061】
本開示の給水装置の演算部4は、高発光状態になる前において、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアDに属すると判別した回数が連続した回数と、高発光状態になった後において、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアDに属すると判別した回数が連続した回数と、を加えた回数が所定回数に達したかを判定する。この構成によれば、給水装置は、重心の受光量L(x)の位置が検知エリアD内に所定回数連続して属するかを継続して判定することによって、吐水の応答性を高めることができる。
【0062】
給水装置の演算部4は、重心の受光量L(x)の位置の移動の判定を行う前に、撮像データからノイズを除去する。この構成によれば、給水装置は、ノイズによって物体の検知が良好にできなくなることを避けることができる。
【0063】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1では、重心の受光量L(x)の位置を各画素の値を積算することによって求めている。これに限らず、各画素における最も画素値が大きい画素を反射光の重心として用いてもよい。この場合、積算して重心の位置を求める方法に比べて演算部における消費電力を抑えることができる。
(2)実施形態1では、第1反復動作期間、及び第2反復動作期間の各々において、連続して6回実行した後に検知信号を出力している。しかし、連続して実行する回数はこれに限らない。
(3)実施形態1では、第1撮像動作においてLED素子の発光時間が40μsであり、第2撮像動作においてLED素子の発光時間が160μsとされている。しかし、LED素子の発光時間はこれに限られない。
(4)実施形態1では、重心移動判定処理において、重心の受光量L(x)の位置の移動量が、5画素以上移動したか否かを判定することを例示している。しかし、判定に用いる画素の数はこれに限られない。
(5)実施形態1では、受光部としてラインセンサが用いられている。これに限らず、受光部として、所定方向に並べられた複数のフォトダイオードを用いてもよい。
(6)実施形態1では、発光部としてLED素子が用いられている。これに限らず、発光部として、半導体レーザー素子を用いてもよい。
(7)実施形態1では、LED素子の発光時間を変更することによって発光する光の強さを変更している。これに限らず、LED素子に流す電流の大きさを変更することによって発光する光の強さを変更してもよい。
(8)実施形態1では、演算部が、連続する過去5回における物体からの反射光の重心の位置の平均値を演算し得る構成とされている。しかし、平均値を演算する際に用いる過去のデータの数はこれに限らない。
【0064】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0065】
3…制御部、4…演算部、11…電磁弁(水栓)、25…発光部、26…受光部、T…閾値