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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
E03C1/042 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020034721
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021139104
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿
(72)【発明者】
【氏名】堂本 直揮
(72)【発明者】
【氏名】大西 直和
(72)【発明者】
【氏名】前山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大北 達也
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-062728(JP,A)
【文献】特開平05-148867(JP,A)
【文献】特表2012-530858(JP,A)
【文献】実開昭62-114955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/04-1/06
A47K 3/02-4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路を形成するとともに、前記流路を開閉する開閉弁を有した水栓本体と、
基端部において前記流路に連通するとともに先端部に吐出口を形成した吐出管と、
前記吐出管を前記水栓本体に対して所定の軸周りに回転自在に接続する接続部と、を備え、
前記吐出管の前記所定の軸周りの回転によって変化する前記吐出口の位置の違いに応じて、異なる流量で前記吐出口から吐水し、
前記吐出口の位置の違いによって異なる用途で使用され、
前記用途は、浴槽へ吐水する第1の用途と、洗面ボウルへ吐水する第2の用途とを含む、水栓装置。
【請求項2】
前記接続部は、前記水栓本体に固定された第1弁体、及び前記吐出管に固定されて前記吐出管の回転に伴って前記第1弁体に対して相対回転する第2弁体を有している請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記第1弁体及び前記第2弁体の少なくとも一方は、前記所定の軸周りの向きを反転自在に設けられている請求項に記載の水栓装置。
【請求項4】
前記接続部は、前記第1弁体及び前記第2弁体と、前記吐出管と前記水栓本体の間に着脱自在に設けられて前記第1弁体及び前記第2弁体を収納したソケットと、を有した弁体ユニットである請求項及び請求項のいずれか一項に記載の水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の水栓装置としての湯水混合水栓を開示している。この湯水混合水栓は、スパウト先端の吐出口が洗い場側の空間と浴槽に選択的に臨むように設けられている。湯水混合水栓は、吐出口を浴槽内に向けて浴槽に湯水を溜めたり、洗い場側に向けて洗い場側に置いた洗面器などに湯水を流したり等、異なる用途で使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-24154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浴槽に湯を溜める場合には、通常、可能な限りの大流量で湯を吐出し、速やかに溜めることが求められる。洗面器に溜める場合には、浴槽に湯を溜める場合と同じような流量で吐水すると、水跳ね等の不具合が生じてしまう。このため、浴槽及び洗面器の一方への吐水中に他方への吐水を一時的に行う場合等においては、その都度流量調整操作を行う必要があり煩雑であった。
【0005】
本開示は、吐水口の位置に応じて適切な流量で吐水できる水栓装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る水栓装置は、内部に流路を形成するとともに、前記流路を開閉する開閉弁を有した水栓本体と、基端部において前記流路に連通するとともに先端部に吐出口を形成した吐出管と、前記吐出管を前記水栓本体に対して所定の軸周りに回転自在に接続する接続部と、を備え、前記吐出管の前記所定の軸周りの回転によって変化する前記吐出口の位置の違いに応じて、異なる流量で前記吐出口から吐水する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る水栓装置の設置状態を概略的に示す斜視図である。
図2】実施形態1に係る水栓装置において、第1の用途で使用される状態を示す平面図である。
図3】実施形態1に係る水栓装置において、第2の用途で使用される状態を示す平面図である。
図4】実施形態1に係る水栓装置を示す斜視図である。
図5】実施形態1に係る水栓装置を示す要部拡大断面斜視図である。
図6】実施形態1に係る水栓装置を示す要部拡大側面断面図である。
図7】実施形態1に係る水栓装置において、第1の用途で使用される状態の第1弁体及び第2弁体を模式的に示す図である。
図8】実施形態1に係る水栓装置において、第2の用途で使用される状態の第1弁体及び第2弁体を模式的に示す図である。
図9】実施形態2に係る水栓装置の設置状態を概略的に示す斜視図である。
図10】実施形態2に係る水栓装置において、第1の用途で使用される状態を示す平面図である。
図11】実施形態2に係る水栓装置において、第2の用途で使用される状態を示す平面図である。
図12】実施形態2に係る水栓装置を示す斜視図である。
図13】実施形態2に係る水栓装置を示す要部拡大断面斜視図である。
図14】実施形態2に係る水栓装置を示す要部拡大側面断面図である。
図15】実施形態2に係る水栓装置において、第1の用途で使用される状態の第1弁体及び第2弁体を模式的に示す図である。
図16】実施形態2に係る水栓装置において、第2の用途で使用される状態の第1弁体及び第2弁体を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本開示の水栓装置を具体化した実施形態1について、図1から図8を参照しつつ説明する。
【0009】
図1から図3に示すように、水栓装置1は浴室100に設置される。浴室100は、浴槽部101と、この浴槽部101に隣接する洗面デッキ102とを備えている。洗面デッキ102は、床面Fの上方において浴室100の壁面Wから庇状にせり出して設けられている。洗面デッキ102には洗面ボウル103が設けられている。水栓装置1は、平面視において浴槽部101及び洗面ボウル103のそれぞれに隣接するように、洗面デッキ102の上面に設置されている。
【0010】
水栓装置1は、浴槽部101への吐水用途と、洗面ボウル103への吐水用途と、の異なる用途で使用される。浴槽部101への吐水用途では、主に湯張り等の目的で使用され、比較的大流量の吐水が求められる。洗面ボウル103への吐水用途では、洗面や手洗い等の目的で使用される。通常、洗面ボウル103は、浴槽部101と比較して、吐出された水を受ける底面の位置が高く、水跳ねが生じ易い。したがって、洗面ボウル103への吐水用途では、浴槽部101への湯張り時の流量に比べて極めて少ない流量で吐水することが求められる。
【0011】
以下の説明では、鉛直方向を上方、下方とする。水栓装置1における上方、下方とは、洗面デッキ102上に設置した状態における水栓装置1の上方、下方を意味する。水栓装置1における前方、後方とは、洗面デッキ102上に設置した状態の水栓装置1からみた洗面ボウル103の正面方向が前方、その反対方向が後方である。
【0012】
図4に示すように、水栓装置1は、水栓本体10、吐出管20、及び接続部30を備えている。水栓本体10は、給湯部11、給水部12、混合弁13、切替弁14、第1流出部15、及び第2流出部16を有している。水栓本体10は、内部に流路P(図5参照)を形成してこれらを接続している。給湯部11及び給水部12は、それぞれ水栓本体10の下面から下方に延びて設けられている。給湯部11及び給水部12は、洗面デッキ102内の図示しない給湯配管からの湯及び給水配管からの水を水栓本体10の内部に供給する。混合弁13は、温調操作部13Aの操作に応じた混合割合で、給湯部11及び給水部12から供給される湯と水を混合する。混合弁13は、湯及び水の一方の混合割合を0にすることもできる。以下の説明では、水栓装置1からの吐水されるものについては、混合弁13による混合割合に関わらず単に水と表記する。
【0013】
切替弁14は開閉弁の例示である。切替弁14は、切替操作部14Aの操作に応じて、混合弁13からの水を第1流出部15及び第2流出部16のいずれか一方への吐出と止水とを切り替えるとともに水の吐出量を調節する。第1流出部15は、水栓本体10の上部に設けられた流出部である。第1流出部15には接続部30を介して吐出管20が接続されている。第2流出部16は、水栓本体10の後方に設けられた流出部である。第2流出部16にはシャワーホース(図示せず)が接続される。
【0014】
図4に示すように、吐出管20は、上下方向に延びて形成された基端部21と、この基端部21の上端から斜め上方に延びる先端部22とによって略L字状をなしている。吐出管20は、基端部21において水栓本体10の流路Pに連通している。吐出管20は、基端部21において、水栓本体10の第1流出部15に接続されて水栓本体10内の流路Pに連通している。吐出管20は、先端部22に吐出口20Aを形成している。吐出管20は、流路Pを経由した水を基端部21から流入させて吐出口20Aから吐出する。吐出管20は、基端部21において、後述する接続部30によって水栓本体10に回転自在に接続されている。吐出管20は、基端部21の中心軸周りに回転する。吐出口20Aは、吐出管20の回転によって、基端部21の中心軸周りに円弧状の軌跡で変位する。
【0015】
図5に示すように、吐出管20の基端部21には、第2位置決め凹部21A、被係止部21B、及び溝部21Cが形成されている。第2位置決め凹部21Aは、後述する第2弁体60の第2位置決め凸部62と係合する。第2位置決め凹部21Aは、基端部21の下端から軸方向上方に凹状に切り欠いて形成されている。第2位置決め凹部21Aは一対形成されている。一対の第2位置決め凹部21Aは、基端部21の中心軸に対称な位置であり、基端部21の周方向において約180°の間隔(2等配)で形成されている(図6参照)。一対の第2位置決め凹部21Aは、平面視における基端部21の中心部からみて、一方は先端部22の延伸方向と略同様な方向に形成され、他方は反対方向に形成されている。
【0016】
被係止部21Bには、後述する第2弁体60の係止部63が係合する。被係止部21Bは、第2位置決め凹部21Aよりも僅かに上方に角孔状に形成されている(図6参照)。被係止部21Bは一対形成されている。一対の被係止部21Bは、基端部21の中心軸に対称な位置であり、基端部21の周方向において約180°の間隔且つ一対の第2位置決め凹部21Aの位置からそれぞれ約90°ずれた位置に形成されている。溝部21Cは、後述する抜け止めリング35が係合する溝である。溝部21Cは、基端部21の下端から軸方向上方に離れた位置において、基端部21の外周面の周方向全周に亘って断面円弧状に陥没して形成されている。
【0017】
接続部30は、吐出管20を、水栓本体10に対して、所定の軸としての軸A周りに回転自在に接続する。この軸Aとは、円筒状をなす第1流出部15の中心軸であり、洗面デッキ102に設置された状態の水栓装置1において上下方向に延びる略鉛直な軸である。接続部30は、基端部21の中心軸を軸Aに沿って配置する形態で、吐出管20を水栓本体10に接続している。接続部30は、吐出管20の基端部21と、水栓本体10の第1流出部15とを接続する。
【0018】
水栓本体10の第1流出部15の詳細について説明する。図5に示すように、第1流出部15は、水栓本体10の上面から上方に延びる筒状に形成されている。筒状をなす第1流出部15の中心軸は、設置状態の水栓装置1において鉛直方向に延びる軸である。この第1流出部15の中心軸を軸Aとして説明する。第1流出部15は、底面15Aにおいて開口して水栓本体10内部の流路Pに連通している。第1流出部15の上端面15Bは、後述するソケット40のフランジ部44の下面44Aが当接する。第1流出部15の外周面にはおねじ部15Cが形成されている。筒状をなす第1流出部15の中心軸は、軸Aに沿った鉛直方向に延びる軸である。
【0019】
図5及び図6に示すように、接続部30は、ソケット40、第1弁体50、及び第2弁体60を有した弁体ユニットを構成している。ソケット40は、第1弁体50及び第2弁体60を収納する。ソケット40は、縮径部41、弁体収納部42、拡径部43、及びフランジ部44を有している。縮径部41、弁体収納部42、及び拡径部43は、ソケット40の軸方向に連なって形成されている。ソケット40は、縮径部41、弁体収納部42、拡径部43の順に径が段差状に大きくなる筒状をなしている。ソケット40は、縮径部41及び弁体収納部42の外周において水栓本体10の第1流出部15に嵌め込まれ、弁体収納部42及び拡径部43の内周において吐出管20の基端部21を嵌め込んでいる。
【0020】
フランジ部44は、弁体収納部42の外周に形成されている。フランジ部44は、弁体収納部42の上下方向の中心部から外側方向に鍔状に拡がって形成されている。フランジ部44の下面は、ソケット40の中心軸に略直交する方向に拡がる面である。フランジ部44の下面は、ソケット40が第1流出部15に取り付けられた状態において、第1流出部15の上端面15Bに当接する。フランジ部44の上面は上方に向かうにつれて縮径するテーパ状に形成されている。フランジ部44の上面には後述するリング部材33が当接する。
【0021】
図5及び図6に示すように、弁体収納部42の内周面には第1位置決め凹部42Aが形成されている。第1位置決め凹部42Aは、第1弁体50の後述する第1位置決め凸部53と係合する。第1位置決め凹部42Aは、弁体収納部42の内周面において軸方向に延びる断面略半円状の溝状に形成されている。第1位置決め凹部42Aは一対形成されている。一対の第1位置決め凹部42Aは、ソケット40の中心軸に対称に、周方向において約180°の間隔で形成されている。拡径部43の上端側の外周面にはおねじ部43Aが形成されている。おねじ部43Aは、後述する袋ナット36のめねじ部36Aと螺合する。
【0022】
図13及び図14に示すように、具体的には、接続部30には、第1シール部材31、固定ナット32、リング部材33、第2シール部材34、抜け止めリング35、及び袋ナット36が設けられている。ソケット40は、これらのうちの固定ナット32及びリング部材33によって、水栓本体10に着脱自在に接続されるとともに、抜け止めリング35及び袋ナット36によって、吐出管20を着脱自在に接続する。すなわち、ソケット40は、水栓本体10及び吐出管20の間に着脱自在に設けられている。
【0023】
第1シール部材31は、ソケット40と第1流出部15との間を水密に保持するリップシールである。第1シール部材31は、縮径部41の外周面と第1流出部15の内周面との間に配置されている。固定ナット32及びリング部材33は、ソケット40を第1流出部15に固定する固定部材である。固定ナット32は、軸方向両端が開口した略円筒状に形成されている。固定ナット32の内周面には、めねじ部32A及び溝部32Bが形成されている。めねじ部32Aは、固定ナット32の内周面の下端側に形成されている。溝部32Bは、固定ナット32の内周面の上端側において、周方向に沿って断面略半円状に窪んだ溝状に形成されている。リング部材33は、この溝部32Bに嵌め込まれている。
【0024】
固定ナット32は、めねじ部32Aを第1流出部15のおねじ部15Cに螺合することによって、溝部32Bに嵌め込まれたリング部材33と第1流出部15の上端面15Bとの間にソケット40のフランジ部44を挟み込んで固定する。固定ナット32を締め込む前の状態において、ソケット40は軸A周りに回転可能であり、軸A周りの位置を調整可能である。第2シール部材34は、ソケット40と吐出管20との間を水密に保持する。第2シール部材34は、第1シール部材31と同様のリップシールである。第2シール部材34は、拡径部43の内周面と、吐出管20の基端部21の外周面との間に配置されている。
【0025】
抜け止めリング35及び袋ナット36は、吐出管20の基端部21をソケット40に対して回転自在に連結する。抜け止めリング35は硬質な樹脂製である。抜け止めリング35は、拡径部43の内周面と、吐出管20の基端部21の外周面との間に配置されている。抜け止めリング35は略円筒状に形成され、一端に溝部21Cと係合する係合部35Aを形成している。係合部35Aは、抜け止めリング35の内周面において、他の部分と比べて縮径して形成されている。抜け止めリング35は、係合部35Aにおいて溝部21Cに嵌め込まれ、他の部分において基端部21の外周面に当接する。
【0026】
図5に示すように、袋ナット36は、軸方向両端が開口した略円筒状に形成されている。袋ナット36の内周面には、めねじ部36A、段部36B、及び押さえ部36Cが形成されている。めねじ部36Aは、袋ナット36の下端部に形成されており、ソケット40のおねじ部43Aと螺合する。段部36Bは、めねじ部36Aの上側に形成されており、袋ナット36の内周面がめねじ部36Aのねじ山の頂部よりも内周方向に張り出した段差状に形成されている。段部36Bは、めねじ部36Aがおねじ部43Aに螺合した状態においてソケット40の上端面に当接する。押さえ部36Cは、段部36Bの上側に形成されており、段部36Bよりも更に内周方向に張り出して形成されている。押さえ部36Cは、抜け止めリング35の上端面に当接して抜け止めリング35を押さえる。
【0027】
抜け止めリング35は、周方向の所定位置において軸方向に切断された切断部(図示せず)を形成しており、径方向の弾性的な拡縮が許容されている。抜け止めリング35は、拡径させた状態で基端部21を挿通させ、その後弾性復帰させて係合部35Aを溝部21Cに嵌め込むことによって、基端部21に取り付けられる。抜け止めリング35は、外周面に図示しない圧入突起を形成している。抜け止めリング35は、内周に基端部21を挿通して基端部21に取り付けられた状態で袋ナット36をソケット40に螺合することによって、ソケット40の拡径部43内周面に圧入される。抜け止めリング35は、内周面において基端部21の外周面に摺動自在に当接し、外周面においてソケット40の拡径部43の内周面に摺動不能に当接する。抜け止めリング35は、吐出管20が軸A周りに回転する際に吐出管20の基端部21外周面に摺接することで、吐出管20の回転をガイドするガイド部材としても機能する。
【0028】
第1弁体50及び第2弁体60はそれぞれ円板状をなしている。第1弁体50及び第2弁体60は、ソケット40の弁体収納部42内に収納されている。弁体収納部42に収納された状態において、第1弁体50及び第2弁体60のそれぞれの中心軸は軸Aに沿っている。第1弁体50及び第2弁体60は、弁体収納部42内に収納された状態で互いに上下方向で当接している。第1弁体50は、弁体収納部42に対して固定的に配置される。第2弁体60は、弁体収納部42に対して軸A周りに相対回転自在に配置される。すなわち、第2弁体60は、第1弁体50に対して軸A周りに相対回転自在に配置される。第2弁体60は、吐出管20の基端部21に取り付けられており、吐出管20の回転に伴って回転する。したがって、第2弁体60は、吐出管20の基端部21に対しては固定的であり、基端部21の軸A周りの回転に伴って回転し、第1弁体50及びソケット40に対して相対回転する。
【0029】
図5及び図6に示すように、第1弁体50は、環状部51、平板状部52、及び第1位置決め凸部53を有している。環状部51は円環状をなしている。環状部51の外径の大きさは、弁体収納部42の内径と略同等である。平板状部52は、環状部51の内周面から内周方向に拡がる平板状をなしている。平板状部52の平面視における外形形状は略半月状である。具体的には、平板状部52の外形形状は、環状部51の内周面に沿った円弧状部分52Aと、この円弧状部分52Aの両端を接続した直線状部分52Bとを有する略半月状をなしている。直線状部分52Bは、円弧状部分52Aの中間部からみて、環状部51の中心よりも離れた位置にある。
【0030】
平板状部52の上面は、環状部51の上面よりも下方(詳細には、環状部51の上面と下面の間の略中央)に位置している。換言すると、第1弁体50の上面は、凹状に窪んで形成されている。平板状部52の下面は、平板状部52の下面と略面一に形成されている。換言すると、第1弁体50の下面は、環状部51の下面と平板状部52の下面とが略面一に連なった平坦状である。
【0031】
第1位置決め凸部53は、環状部51の外周面から外周方向に断面半円状の凸状に突出して形成されている。第1位置決め凸部53は、弁体収納部42の第1位置決め凹部42Aと係合する。第1位置決め凸部53は一対設けられている。一対の第1位置決め凸部53は、円板状をなす第1弁体50の中心軸に対称に、周方向において約180°の間隔で形成されている。一対の第1位置決め凸部53は、以下のような位置にそれぞれ設けられている。すなわち、一対の第1位置決め凸部53は、平面視において第1弁体50の中心を通る直線のうち、平板状部52の外形における直線状部分52Bと略平行となる直線上にそれぞれ設けられている。
【0032】
第1弁体50は、第1開口部50A及び凹部50Bを形成している。第1開口部50Aは第1弁体50の弁孔である。第1開口部50Aは、第1弁体50を上下に貫通して形成されている。第1開口部50Aは、平板状部52の直線状部分52Bと環状部51の内周面とを周壁として形成されている。第1開口部50Aは、略半月状の開口形状である。凹部50Bは、平板状部52の上面を底面とし、平板状部52の環状部51の内周面を立面とする形態で、第1弁体50の上面側に形成されている。
【0033】
第1弁体50は、軸A周りの向きを反転自在に設けられている。第1弁体50は、180°等配で設けられた一対の第1位置決め凸部53を、同じく180°等配で設けられた一対の第1位置決め凹部42Aに対してどの組み合わせで係合させるかによって、軸A周りの向きを180°変更することができる。
【0034】
第2弁体60は、第1弁体50と同様、円板状をなしている。第2弁体60の外径の大きさは、第1弁体50の外径の大きさと略同等であり、弁体収納部42の内径と略同等である。第2弁体60は、下面中央部が下方に凸状に突出した凸部61を有している。凸部61は第1弁体50の凹部50Bに嵌め込まれる部分である。
【0035】
第2弁体60は、凸部61の下面において第1弁体50の平板状部52の上面に摺動自在である。第2弁体60は、凸部61の外周面において第1弁体50の環状部51の内周面に摺動自在である。
【0036】
第1弁体50は、上述の抜け止めリング35とともに、吐出管20の軸A周りの回転をガイドするガイド部材として機能する。具体的には、吐出管20が軸A周りに回転する際、第2弁体60は、吐出管20に伴って回転する。このとき、第1弁体50は、第2弁体60の凸部61の下面に対して平板状部52の上面を摺動させ、凸部61の外周面に対して環状部51の内周面を摺動させることによって、第2弁体60を介して吐出管20の回転を間接的にガイドする。上述のように、抜け止めリング35も同様にガイド部材として機能する。抜け止めリング35及び第1弁体50は、回転軸である軸Aの延伸方向に所定の間隔をあけた位置で、それぞれ吐出管20をガイドする。
【0037】
図5及び図6に示すように、第2弁体60は、第2位置決め凸部62、及び一対の係止部63を有している。第2位置決め凸部62は、第2弁体60の周縁部の上面のから上方に凸状に突出して形成されている。第2位置決め凸部62は、吐出管20の基端部21の上述した一対の第2位置決め凹部21Aのいずれか一方に係合する。第2弁体60は、軸A周りの向きを反転自在に設けられている。第2弁体60は、第2位置決め凸部62をいずれの第2位置決め凹部21Aに係合させるかによって、軸A周りの向きを180°変更することができる。例えば、第2弁体60は、第2位置決め凸部62を一対の第2位置決め凹部21Aの一方に係合した状態から他方に係合した状態に変更することで、軸A周りの向きが反転する。
【0038】
一対の係止部63は、それぞれ第2弁体60の周縁部の上面から上方に立ち上がって形成されている。一対の係止部63は、円板状をなす第2弁体60の中心軸に対称に、周方向において約180°の間隔且つ第2位置決め凸部62に対してそれぞれ約90°ずれた位置となるように設けられている。一対の係止部63はスナップフィット構造の係止部であり、上述した一対の被係止部21Bに対して基端部21の内周側から係合している。一対の係止部63は、第2弁体60の軸A周りの向きを反転させた場合でも、それぞれの位置が入れ替わって一対の被係止部21Bと係合可能である。
【0039】
第2弁体60は、第2開口部60A及び貫通孔60Bを形成している。第2開口部60A及び貫通孔60Bは、第2弁体60を上下に貫通して形成されている。第2開口部60A及び貫通孔60Bは、それぞれ第2弁体60の弁孔である。第2開口部60Aは、平面視における第2弁体60の中心からみて、第2位置決め凸部62の反対側に形成されている。第2開口部60Aは扇状の開口形状をなしている。第2開口部60Aは、第1弁体50の第1開口部50Aのなす略半月状の開口形状において両角を切り落としたような開口形状である。第2開口部60Aの開口面積は、切り落とした部分の面積分、第1開口部50Aよりも小さい。
【0040】
貫通孔60Bは、平面視における第2弁体60の中心からみて、第2開口部60Aの反対側に形成されている。貫通孔60Bは断面円形状をなしている。貫通孔60Bは、第2開口部60Aの開口面積よりも十分に小さい開口面積で形成されている。貫通孔60Bは2つ形成されている。2つの貫通孔60Bは、第2弁体60の中心軸に対して60°の間隔で形成されている。2つの貫通孔60Bは、一対の係止部63の並び方向に平行に並んで形成されている。
【0041】
第2弁体60は、第2開口部60A及び2つの貫通孔60Bのいずれかが第1弁体50の第1開口部50Aに重なるように、第2開口部60A及び2つの貫通孔60Bの位置及び大きさが設定されている。第2弁体60は、第2開口部60Aの開口面積の全体が第1弁体50の第1開口部50Aに重なっている状態(第2開口部60Aの全開状態)から、開口面積の全体が第1開口部50Aに重なっていない状態(第2開口部60Aの全閉状態)までの回転角度が約140°に設定されている。第2弁体60は、2つの貫通孔60Bの少なくとも一方が第1弁体50の第1開口部50Aに重なっている状態と、第2開口部60Aの少なくとも一部が第1開口部50Aに重なっている状態とが成立している角度範囲が約30°に設定されている。
【0042】
上記構成の水栓装置1の動作について説明する。水栓装置1は、切替操作部14Aによって切替弁14を吐出管20側の吐水に操作すると、吐出管20先端の吐出口20Aから水が吐出される。この時、水栓装置1は、吐出口20Aの位置に応じた流量で、吐出口20Aから吐水する。
【0043】
吐出口20Aが浴槽部101の上方に位置している場合(図2参照)には、図7に示すように、第1弁体50の第1開口部50Aと第2弁体60の第2開口部60Aとが重なった状態となっている。このため、湯張りに好適な比較的大流量の水を吐出口20Aから吐出することができる。浴槽部101は、吐出口20Aから底面までの高さや容積が比較的大きいため、水跳ね等の影響は小さい。したがって、切替操作部14Aの操作量に応じた流量で速やかに湯張りを実行可能な比較的大流量の水を吐出口20Aから吐出できる意義は大きい。
【0044】
吐出口20Aが洗面ボウル103の上方に位置している場合(図3参照)には、図8に示すように、第2弁体60の第2開口部60Aは第1弁体50の第1開口部50Aに重なっておらず、第2弁体60の貫通孔60Bが重なった状態となっている。上述のように、貫通孔60Bの開口面積は、第2開口部60Aの開口面積と比較して十分に小さい。このため、吐出口20Aを洗面ボウル103上に移動させた場合には、手洗いや洗面に適した吐出流量に自動的に制限される。洗面ボウル103は、浴槽部101と比較して、吐出口20Aから底面までの高さや容積が極めて小さい。このため、浴槽部101において求められる流量と同様の流量で吐水した場合には水跳ね等が懸念される。洗面ボウル103における吐水用途は、手洗いや洗面等であることから、そもそも大流量の吐水は求められない。したがって、切替操作部14Aを浴槽部101への吐水と同様の操作量で操作したとしても、洗面ボウル103への吐水に適した流量に自動的に制限されることの意義は極めて大きい。
【0045】
第1弁体50及び第2弁体60は、いずれも軸A周りの向きを反転させることができる。水栓装置1は、第1弁体50及び第2弁体60のいずれか一方の向きを反転させることによって、吐出口20Aの位置に応じた流量の特性を、軸A周りに180°変更することができる。例えば、浴槽部の位置が本実施形態の浴槽部101とは反対側にある浴室に水栓装置1を設置する場合等においては、第1弁体50及び第2弁体60のいずれか一方の向きを変更することによって簡単に対応させることができる。
【0046】
弁体の向きを変えて流量特性を変更する場合には、最初に、袋ナット36のめねじ部36Aとソケット40のおねじ部43Aの螺合を解除して吐出管20を取り外す。この時、第2弁体60は、吐出管20の基端部21に取り付けられていることから、吐出管20とともに取り外される。第1弁体50は、第1流出部15の上方から視認可能に露出する。例えば、第1弁体50の向きを反転させる場合には、第1弁体50を弁体収納部42から取り出し、向きを反転させて再び取り付ける。第1弁体50は、180°等配で形成されているソケット40側の一対の第1位置決め凹部42Aに対して、同じく180°等配の一対の第1位置決め凸部53を係合させて位置決めされているため、自在に向きを反転可能である。第1弁体50は、向きを反転させたことによって、第1開口部50Aの位置が180°変更される。
【0047】
第2弁体60の向きを反転させる場合には、吐出管20を取り外したのち、第2弁体60側の一対の係止部63と、吐出管20側の一対の被係止部21Bとの係合を解除して第2弁体60を取り外す。そして、第2弁体60の向きを軸周りに反転させ、今まで係合していた第2位置決め凹部21Aとは異なる第2位置決め凹部21Aに第2位置決め凸部62を係合させるとともに、一対の係止部63を一対の被係止部21Bに再び係合させる。第2位置決め凹部21Aは、吐出管20の基端部21の中心軸周りに等配で2箇所に形成されていることから、異なる第2位置決め凹部21Aに係合させることで、第2開口部60Aと貫通孔60Bの位置が入れ替わる。一対の係止部63は、円板状をなす第2弁体60において約180°の間隔且つ第2位置決め凸部62に対してそれぞれ約90°ずれた位置となるように設けられていることから、第2位置決め凸部62と第2位置決め凹部21Aとを係合させることによって、一対の被係止部21Bに適切に係合して第2弁体60が固定される。
【0048】
水栓装置1において、吐出口20Aが浴槽部101上にある場合には、浴槽部101上の吐出口20Aの位置に応じて、吐出口20Aからの吐水流量を更に変化させることができる。吐出口20Aが浴槽部101上にある場合とは、第1弁体50の第1開口部50Aと第2弁体60の第2開口部60Aとが重なった状態にある場合である。この場合、吐出管20を回転させて吐出口20Aの位置を変化させると、第1弁体50の第1開口部50Aに対する第2弁体60の第2開口部60Aの重なり方が変化して、接続部30における流路面積の大きさが変化する。
【0049】
例えば、図7に示す状態において、吐出管20を軸A周りに回転させると第2弁体60も回転する。第2弁体60が図7に示す位置から時計回りに回転すると、第2開口部60Aの第1開口部50Aに対する重なり量が大きくなり、接続部30における流路面積が拡開されて吐出口20Aからの吐水流量が増加する。反対に、第2弁体60が図7に示す位置から反時計回りに回転すると、第2開口部60Aの第1開口部50Aに対する重なり量が小さくなり、接続部30における流路面積が縮小されて吐出口20Aからの吐水流量が制限される。
【0050】
第1弁体50と第2弁体60の間には厳密な水密性は不要である。これは、水栓装置1において、水栓本体10には開閉弁としての切替弁14が別途備えられているためである。第1弁体50及び第2弁体60は、第1弁体50の第1開口部50Aと、第2弁体60の第2開口部60A及び貫通孔60Bのいずれか一方とが常時連通した状態で設けられている。すなわち、ソケット40、第1弁体50、及び第2弁体60を有して弁体ユニットを構成する接続部30は、水栓本体10内の流路Pと吐出管20とを常時連通している。接続部30において、止水機能は必須でなく、水栓本体10内の流路Pと吐出管20とを常時連通した状態とすることが許容されている。この場合、第1弁体50と第2弁体60の間には水密性を確保するための厳密な寸法精度も不要となることから、製造が容易である。
【0051】
上記構成の水栓装置1の効果について説明する。水栓装置1は、水栓本体10と、吐出管20と、接続部30とを備えている。水栓本体10は、内部に流路Pを形成するとともに、流路Pを開閉する開閉弁としての切替弁14を有している。吐出管20は、基端部21において流路Pに連通するとともに先端部22に吐出口20Aを形成している。接続部30は、吐出管20を水栓本体10に対して所定の軸としての軸A周りに回転自在に接続している。水栓装置1は、吐出管20の軸A周りの回転によって変化する吐出口20Aの位置の違いに応じて、異なる流量で吐出口20Aから吐水する。このように、水栓装置1は、吐出口20Aの位置に応じて適切な流量で吐水できる。
【0052】
水栓装置1は、吐出口20Aの位置の違いによって異なる用途で使用される。その用途とは、浴槽部101への吐水と、洗面ボウル103への吐水である。この場合、浴槽部101の湯張りに好適な大流量吐水、洗面ボウル103に吐水する際の水跳ねや排水能力を勘案した少流量吐水、のように、用途に応じて求められる吐水流量の大きさが異なる。このため、吐出管20を回転させ、吐出口20Aの位置を変化させることによって吐出流量の調整を実行できる、という利点を、有効に発揮できる。
【0053】
接続部30は、水栓本体10に固定された第1弁体50、及び吐出管20に固定されて吐出管20の回転に伴って第1弁体50に対して相対回転する第2弁体60を有している。このため、水栓装置1は、吐出管20の軸A周りの回転によって変化する吐出口20Aの位置の違いに応じて、異なる流量で吐出口から吐水する構成を簡易に実現することができる。
【0054】
第1弁体50及び第2弁体60は、軸A周りの向きを反転自在に設けられている。このため、例えば、水栓装置1を浴槽部と洗面ボウルの設置位置が本実施形態とは左右対称な浴室に設置する場合でも、第1弁体50及び第2弁体60の軸A周りの向きを反転させることで流量特性を左右反転させて適用することができる。
【0055】
接続部30は、第1弁体50、第2弁体60、及びソケット40を有した弁体ユニットである。ソケット40は、吐出管20と水栓本体10の間に着脱自在に設けられて第1弁体50及び第2弁体60を収納している。このため、例えば、弁体を交換して異なる流量特性に変更したり、弁体ユニットを取り外して流量制限機能をキャンセルしたり等、汎用性に優れた水栓装置を実現できる。
【0056】
<実施形態2>
実施形態2に係る水栓装置について、図9から図16等を参照しつつ説明する。実施形態2において、上記実施形態1と略同じ構成部位には同符号をつけて、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0057】
実施形態2の水栓装置201は、図9から図11に示すように、浴室200に設置される。浴室200は、実施形態1と同様の浴槽部101及び洗面デッキ102を備えている。水栓装置201は、平面視において浴槽部101及び洗面ボウル103のそれぞれに隣接するように、洗面デッキ102の上方において壁面Wに取り付けられた壁面取付型の水栓装置である。
【0058】
図12に示すように、水栓装置201は、水栓本体210、吐出管220、及び接続部230を備えている。水栓装置201は、吐出管220を水栓本体210に対して回転させ、その回転位置によって、浴槽部101へ吐水する用途と、洗面ボウル103へ吐水する用途と、の異なる用途で使用される。以下の説明では、鉛直方向を上方、下方とする。水栓装置201における上方、下方とは、壁面Wに取り付けた状態における水栓装置201の上方、下方を意味する。水栓装置201における前方、後方とは、取り付け状態の水栓装置201からみた洗面ボウル103の正面方向が前方、その反対方向が後方である。
【0059】
水栓本体210は、給湯部211、給水部212、混合弁213、切替弁214、第1流出部215、及び第2流出部216を有している。これらは、機能的には、実施形態1における給湯部11、給水部12、混合弁13、切替弁14、第1流出部15、及び第2流出部16のそれぞれと略同等である。水栓本体210は、内部に流路P(図13参照)を形成してこれら給湯部211、給水部212、混合弁213、切替弁214、第1流出部215、及び第2流出部216を接続している。
【0060】
給湯部211及び給水部212は、それぞれ水栓本体210の後面から後方斜め下方にクランク状に延びて壁面W内の図示しない給湯配管及び給水配管にそれぞれ接続されている。混合弁213は、温調操作部213Aの操作に応じた混合割合で給湯部211及び給水部212から供給される湯と水を混合する。切替弁214は、開閉弁の例示であり、切替操作部214Aの操作に応じて混合弁213からの水を第1流出部215及び第2流出部216のいずれか一方への吐出と止水とを切り替える。第1流出部215は、実施形態1の第1流出部15とは異なり、水栓本体210の下部に設けられている。第1流出部215及び第2流出部216は、それぞれ内部の流路Pに連通している。第1流出部215には接続部230を介して吐出管20が接続され、第2流出部16にはシャワーホース(図示せず)が接続される。第1流出部215は水栓本体210の下面から下方に延びる筒状(環状)に形成されている。第2流出部216は、第1流出部215の後方に設けられている。
【0061】
図12及び図13に示すように、吐出管220は、上下方向に延びて形成された基端部221と、この基端部221の下端から水平方向に延びる先端部222とによって略L字状をなしている。吐出管220は、基端部221において水栓本体210の流路Pに連通している。吐出管220は、基端部221において、水栓本体210の第1流出部215に接続されて水栓本体210内の流路Pに連通している。吐出管220は、先端部222に吐出口220Aを形成している。吐出管220は、流路Pを経由した水を基端部221から流入させて吐出口220Aから吐出する。吐出管220は、基端部221において、後述する接続部230によって水栓本体210に回転自在に接続されている。吐出管220は、基端部221の中心軸周りに回転する。吐出口220Aは、吐出管220の回転によって、基端部221の中心軸周りに円弧状の軌跡で変位する。
【0062】
図13及び図14に示すように、吐出管220の基端部221には、被係止部221B、及び溝部221Cが形成されている。被係止部221Bは、後述する第2弁体260の係止部263と係合する。被係止部221Bは、基端部221の上端から僅かに下方に角孔状に形成されている。被係止部221Bは一対形成されている。一対の被係止部221Bは、基端部221の中心軸に対称な位置であり、基端部221の周方向において約180°の間隔で形成されている。実施形態2の被係止部221Bは、後述する第2弁体260の位置決め機能も兼ねている。溝部221Cには抜け止めリング35が係合する。溝部221Cは、基端部221の上端から軸方向下方に離れた位置において、基端部221の外周面の周方向全周に亘って断面円弧状に陥没して形成されている。
【0063】
接続部230は、吐出管220を、水栓本体210に対して、所定の軸としての軸A周りに回転自在に接続する。軸Aは、第1流出部215の中心軸であり、壁面Wに取り付けられた状態の水栓装置201において上下方向に延びる略鉛直な軸である。接続部230は、基端部221の中心軸を軸Aに沿って配置する形態で、吐出管220を水栓本体210に接続している。接続部230は、吐出管220の基端部221と、水栓本体210の第1流出部215とを接続する。
【0064】
図13及び図14に示すように、接続部230は、ソケット240、第1弁体250、及び第2弁体260を有した弁体ユニットを構成している。ソケット240は、縮径部241、弁体収納部242、拡径部243、及びフランジ部244を有して第1弁体250及び第2弁体260を収納する点は、実施形態1のソケット240と同様であり、水栓本体210及び吐出管220の間に着脱自在である。
【0065】
ソケット240は、弁体収納部242の外周面に形成されたおねじ部242Aを第1流出部215内面のめねじ部215Cに直接的に螺合させて水栓本体210に取り付けられる。ソケット240は、おねじ部242Aをめねじ部215Cに螺合させることによってフランジ部244が第1流出部215の下端面に当接して固定される。縮径部241の外周面には第1シール部材231が配置されており、ソケット240と第1流出部215との間を水密に保持している。第1シール部材231はOリングを採用している。Oリングである第1シール部材231は、リップシールとは異なり、縮径部241の外周面を内側方向に陥没させた溝に嵌め込まれている。
【0066】
図13及び図14に示すように、弁体収納部242は、実施形態1とは異なり、第1弁体250を位置決めするための第1位置決め凹部に相当するものは形成されていない。これは、本実施形態の第1弁体250が、水栓本体210に直接係合するためである。したがって、ソケット240は、実施形態1のソケット40と比較して、位置決め用の係合部の形成が不要な分、構成が簡素化されている。拡径部243の上端側の外周面にはおねじ部243Aが形成され、袋ナット236のめねじ部236Aと螺合する。拡径部243の内周面は、第2シール部材34及び抜け止めリング35を介して基端部221の外周面と対向している。
【0067】
図13及び図14に示すように、第1弁体250及び第2弁体260はそれぞれ円板状をなしている。第1弁体250及び第2弁体260は、弁体収納部242の内径と略同等の外径をそれぞれ有し、ソケット240の弁体収納部242内に収納されている。弁体収納部242に収納された状態において、第1弁体250及び第2弁体260のそれぞれの中心軸は軸Aに沿っている。第1弁体250及び第2弁体260は、弁体収納部242内に収納された状態で互いに上下方向で当接している。第1弁体250及び第2弁体260は、実施形態1と同様に、第1弁体250の凹部250Bに対して第2弁体260の凸部261が嵌め込まれて回転自在に係合している。
【0068】
第1弁体250には、実施形態1と同様の第1開口部50Aが形成されている。第2弁体260には、実施形態1と同様の第2開口部60A及び一対の貫通孔60Bが形成されている。第1弁体250及び第2弁体260は、第1開口部50Aに対して第2開口部60A及び貫通孔60Bの少なくとも一方が常時重なり合っている。第1弁体250及び第2弁体260は、水栓本体210と吐出管220とを常時連通させつつ、相対回転による開口面積の変化によって流量を変化させる。
【0069】
第1弁体250は第1位置決め凸部253を有している。第1位置決め凸部253は、断面略T字状をなして第1弁体250の上面の中心近傍から上方に立ち上がって形成されている。第1位置決め凸部253は、第1弁体250が弁体収納部242に収納された状態で水栓本体210の流路P内に挿入される。この状態において、第1位置決め凸部253は、長孔状に形成された流路Pの内周面P0に当接し、軸A周りに回転不能とされる。第1弁体250は、軸A周りに180°毎の2方向の方向性をもって流路Pに挿入可能とされている。これにより、第1弁体250は、軸A周りの向きを反転自在とされている。
【0070】
図13及び図14に示すように、第2弁体260は、実施形態1と同様の一対の係止部263を有している。一対の係止部263は、それぞれ第2弁体260の周縁部の下面から下方に突出して形成されている。一対の係止部263は、円板状をなす第2弁体260の中心軸に対称に、周方向において約180°の間隔で設けられている。一対の係止部263はスナップフィット構造の係止部であり、上述した一対の被係止部221Bに対して基端部221の内周側から係合している。一対の係止部263は、基端部221との係合に加えて、基端部221に対する位置決め機能も有している。一対の係止部263は、第2弁体260の軸A周りの向きを反転させた場合でも、それぞれの位置が入れ替わって一対の被係止部221Bと係合可能である。第2弁体260は、一対の係止部263をいずれの向きで一対の被係止部221Bに係合させるかによって、軸A周りの向きを反転自在である。
【0071】
上記構成の水栓装置201もまた、実施形態1の水栓装置1と同様に動作可能である。すなわち、水栓装置201は、切替操作部214Aによって切替弁214を吐出管220側の吐水に操作すると、吐出管220先端の吐出口220Aから、吐出口220Aの位置に応じた流量で吐水する。
【0072】
吐出口20Aが浴槽部101の上方に位置している場合(図10参照)には、図15に示すように、第1弁体250の第1開口部50Aと第2弁体260の第2開口部60Aとが重なった状態となっている。この場合、水栓装置201は、切替操作部214Aの操作量に応じた流量で、湯張りに適した流量の水を吐出口220Aから吐出することができる。
【0073】
吐出口220Aが洗面ボウル103の上方に位置している場合(図11参照)、図16に示すように、第1弁体250の第1開口部50Aには、第2弁体260の貫通孔60Bが重なった状態となっている。このため、切替操作部214Aを浴槽部101への吐水と同様の操作量で操作したとしても、第1開口部50Aと第2開口部60Aとが重なった状態にある場合よりも少ない、洗面ボウル103への吐水に適した流量に自動的に制限される。
【0074】
第1弁体250及び第2弁体260は、いずれも軸A周りの向きを反転させることができる。水栓装置201は、第1弁体250及び第2弁体260のいずれか一方の向きを反転させることによって、吐出口220Aの位置に応じた流量の特性を、軸A周りに180°変更することができる。例えば、浴槽部の位置が本実施形態の浴槽部101とは反対側にある浴室に水栓装置201を設置する場合であっても、第1弁体250及び第2弁体260のいずれか一方の向きを変更することによって簡単に対応させることができる。
【0075】
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態1及び実施形態2の開示に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も含まれる。
【0076】
(1)水栓装置の用途は、浴槽へ吐水する用途や洗面ボウルへ吐水する用途に限定されない。水栓装置は、例えば、1種類の用途で使用されてもよい。水栓装置が異なる用途で使用される場合、その用途は3種類以上であってもよい。
【0077】
(2)接続部の構成は上述した各実施形態の構成に限定されない。例えば、内外面において摺動自在な円筒状の2つの弁体等であってもよい。
【0078】
(3)吐水管の断面形状や外形形状は、上述した各実施形態に示した形状に限定されない。吐水管は、例えば、円筒状や角筒状等の断面形状であってもよいし、基端側から先端側に向かって略同様の断面形状で形成された外形形状をなしていてもよい。
【0079】
(4)接続部が第1弁体及び第2弁体を有する場合、これら第1弁体及び第2弁体のうちのいずれか一方のみが所定軸周りに反転自在に設けられていてもよい。
【0080】
(5)接続部が弁体ユニットを構成することは必須でない。接続部は、例えば、ソケットを有さず、第1弁体及び第2弁体が水栓本体及び吐出管のいずれかに予め組み込まれた形態であってもよい。
【0081】
(6)第1弁体及び第2弁体は、例えば、所定軸周りの向きを、30°、45°、60°、90°、120°等の間隔で変更自在に設けられていてもよい。
【0082】
(7)吐出管の回転軸は、鉛直方向に延びる軸に限定されない。
【符号の説明】
【0083】
1,201…水栓装置、10,210…吐水管、14,214…切替弁(開閉弁)、20,220…吐出部、20A,220A…吐出口、21,221…吐出口の基端部、22,222…吐出口の先端部、30,230…接続部、40,240…ソケット、50,250…第1弁体、60,260…第2弁体、101…浴槽部(浴槽)、103…洗面ボウル、A…軸(所定の軸)、P…流路
図1
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