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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240213BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240213BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020055674
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021157004
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】大島 研介
(72)【発明者】
【氏名】井上 嘉亮
(72)【発明者】
【氏名】平松 宗也
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-144544(JP,A)
【文献】国際公開第2018/229961(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/004093(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03176775(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017206365(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置を備え、前記表示装置に表示される画像を表す光を、透過反射部に反射させることで、当該画像を車両の前方空間の虚像として前記透過反射部に表示させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記表示装置は、液晶パネルと、前記液晶パネルに光を照射するバックライト装置とを備え、
前記バックライト装置は、
複数の光源と、前記液晶パネルに光を照射する照射面とを備え、
前記照射面の四隅のうち前記車両の車幅方向に隣り合う2個の部分の輝度が中央部分の輝度に比べて低くなり、前記四隅のうち他の2個の部分の輝度が中央部分の輝度と同程度になるように、前記複数の光源が配置されている、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記照射面は、第1端縁と、前記第1端縁に直交する第2端縁とを備え、
前記複数の光源は、
前記第1端縁に最も近い位置に配置された第1光源と、
前記第2端縁に最も近い位置に配置された前記光源の中で前記第1端縁に最も近い第2光源と、
を含み、
前記第2光源は、前記第2端縁に平行な方向において、前記第1光源より、前記第1端縁とは反対側に配置されている、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に表示される画像を表す光を車両のウインドシールド(いわゆるフロントガラス)に反射させることで、当該画像を車両の前方空間の虚像としてウインドシールドに表示させるヘッドアップディスプレイ装置が知られている。これにより、運転者は、車両の走行に関連する情報(速度情報、カーナビゲーション情報など)を示す画像をウインドシールドの前方の景色に重ね合わせて視認することができる。
【0003】
表示装置は、液晶パネルとバックライト装置とを備えており、バックライト装置が液晶パネルに光を照射することで、画像を表示する。バックライト装置は、液晶パネルの全面に均等に光を照射するために、複数の光源(例えば発光ダイオード)がマトリクス状に配置されている。例えば、特許文献1には、10個の発光ダイオード(LED)が縦2行横5列に配置された面光源を備えるバックライト装置(照明装置)が開示されている。
【0004】
一方、液晶パネルは、液晶の特性上、黒を表示する場合でもバックライト装置の光が漏れるので、完全な黒を表示することが困難である。したがって、夜間、ヘッドアップディスプレイ装置によってウインドシールドの表示領域に表示された画像の黒と、表示領域の周囲の黒(夜間の風景)とのコントラスト差により、表示領域が浮き出て見えるポストカード効果が発生する。この場合、運転者は、表示領域の輪郭が視野に入って、煩わしく感じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-87792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポストカード効果の対策として、OLEDやMEMSレーザを用いたヘッドアップディスプレイ装置が開発されている。これらの方式の場合、液晶パネルを用いる場合との方式の違いにより、ポストカード効果が表れにくい。しかしながら、これらの方式はいずれも、液晶パネルを用いる場合と比較して、コストが高い。
【0007】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、簡易な構成で、ポストカード効果を軽減できるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明によって提供されるヘッドアップディスプレイ装置は、表示装置を備え、前記表示装置に表示される画像を表す光を、透過反射部に反射させることで、当該画像を車両の前方空間の虚像として前記透過反射部に表示させるヘッドアップディスプレイ装置であって、前記表示装置は、液晶パネルと、前記液晶パネルに光を照射するバックライト装置とを備え、前記バックライト装置は、複数の光源と、前記液晶パネルに光を照射する照射面とを備え、前記照射面の四隅のいずれかの部分の輝度が中央部分の輝度に比べて低くなるように、前記複数の光源が配置されている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記照射面は、第1端縁と、前記第1端縁に直交する第2端縁とを備え、前記複数の光源は、前記第1端縁に最も近い位置に配置された第1光源と、前記第2端縁に最も近い位置に配置された前記光源の中で前記第1端縁に最も近い第2光源とを含み、前記第2光源は、前記第2端縁に平行な方向において、前記第1光源より、前記第1端縁とは反対側に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、バックライト装置は、照射面の四隅のいずれかの部分の輝度が中央部分の輝度に比べて低くなるように、複数の光源が配置されている。したがって、照射面から照射される光は、四隅のいずれかの部分が中央部分より暗くなる。よって、透過反射部の表示領域に表示される画像の四隅のいずれかの部分の黒色部分は、中央部分の黒色部分に比べて暗くなり、表示領域の周囲の黒とのコントラスト差が小さくなる。これにより、ポストカード効果が軽減される。また、本発明によると、複数の光源の配置を工夫しただけなので、簡易な構成で実現でき、OLEDやMEMSレーザを用いる場合に比べて、製造コストを抑制できる。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略を示す模式図である。
図2図1に示すヘッドアップディスプレイ装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係るバックライト装置における発光ダイオードDの配置を示す概略平面図である。
図4図3に示すバックライト装置の内部構成を示すブロック図である。
図5】ウインドシールドに表示された画像の一例を示す図である。
図6】第1実施形態に係るバックライト装置の変形例を示す概略平面図である。
図7】第1実施形態に係るバックライト装置の変形例を示す概略平面図である。
図8】第1実施形態に係るバックライト装置の変形例を示す概略平面図である。
図9】第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置のバックライト装置を示す概略平面図である。
図10】ウインドシールドに表示された画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1図5は、第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置A1を説明するための図である。図1は、ヘッドアップディスプレイ装置A1の概略を示す模式図である。図2は、ヘッドアップディスプレイ装置A1の機能構成を示すブロック図である。図3は、バックライト装置を示す平面図である。図4は、図3に示すバックライト装置の内部構成を示すブロック図である。図5は、ウインドシールドに表示された画像の一例を示す図であり、夜間の走行時のものである。
【0016】
図1および図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、表示装置1、第1ミラー51、第2ミラー52、および制御装置4を備えている。ヘッドアップディスプレイ装置A1は、車両Bのインストルメントパネルの内部空間を利用して、運転席に対応する車幅方向位置に配置される。図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、表示装置1に表示される画像を表す光を、ウインドシールド7(いわゆるフロントガラス)に反射させることで、当該画像を車両Bの前方空間の虚像Vとしてウインドシールド7に表示させる。ウインドシールド7は、例えばガラスなどの透明板であり、入射される光の角度によって、光を透過、または、反射させる透過反射部として機能する。表示装置1に表示される画像としては、速度情報やナビゲーション情報など、車両Bの走行に関連する各種の情報(以下では、「走行情報」とする)を示す画像が含まれる。表示装置1に表示される画像は、画像生成部60によって生成される。走行情報を含む画像が虚像Vとして、ウインドシールド7の前方の景色に重ね合わせて表示されるので、運転者は、インストルメントパネルに配置されているメータユニットや、カーナビゲーション用のモニタなどに視線を移動させることなく、走行情報を認識できる。
【0017】
例えば、図5に示すように、ウインドシールド7の表示領域71には、時刻、車速、燃料ゲージ、および道路情報を示す画像が、前方の景色に重ね合わせて表示されている。なお、ウインドシールド7に表示される走行情報は、限定されない。図5においては、表示領域71の範囲を示すために、便宜上、表示領域71を二点鎖線で示しているが、実際には、表示領域71はウインドシールド7に表示されない。本実施形態では、表示領域71はウインドシールド7の下方に配置されている。
【0018】
表示装置1は、走行情報を示す画像を表示して、当該画像を表す光を出射する。本実施形態では、図1に示すように、表示装置1は、画像を表示する表示面1aを、やや後方斜め上方に向けるようにして、ヘッドアップディスプレイ装置A1の筐体に配置されている。表示装置1の内部構成の詳細については後述する。
【0019】
第1ミラー51は、表示装置1からの光を第2ミラー52に向けて反射させるための鏡である。本実施形態では、第1ミラー51は、側方視において、表示装置1からの光の反射光を前方に向けて反射させるように、ヘッドアップディスプレイ装置A1の筐体に配置されている。本実施形態では、第1ミラー51は、平面鏡である。
【0020】
第2ミラー52は、第1ミラー51からの反射光を、ウインドシールド7に向けて反射させるための鏡である。本実施形態では、第2ミラー52は、側方視において、第1ミラー51からの反射光を、後方斜め上方に向けて延びるウインドシールド7の下方領域に向けて、上方斜め後方に反射させるように、ヘッドアップディスプレイ装置A1の筐体に配置されている。ウインドシールド7は、第2ミラー52からの反射光を運転者の視点Eに向けて反射させる。ウインドシールド7は通常、室内側に凹形状に湾曲しており、第2ミラー52は凹面鏡とされている。これにより、表示装置1に表示される画像は、ウインドシールド7から視点Eに至る光路Lの先に、拡大された虚像Vとして表示される。第2ミラー52の表面形状は、ウインドシールド7の湾曲の態様、および、画像の拡大率に応じて、適宜設計される。
【0021】
次に、表示装置1の内部構成の詳細について説明する。
【0022】
表示装置1は、図2に示すように、液晶パネル2およびバックライト装置3を備えている。表示装置1は、透過型の表示装置であって、バックライト装置3が液晶パネル2に光を照射し、液晶パネル2を通過した光によって画像を表示する。
【0023】
液晶パネル2は、一般的な液晶ディスプレイに使用されるものと同様であり、型や形式は限定されない。液晶パネル2は、制御装置4によって、各画素の駆動(光の通過と遮断の切り替え)を制御される。
【0024】
バックライト装置3は、複数の発光ダイオードDを備えており、液晶パネル2の裏側(第1ミラー51が配置されている側とは反対側)に、配置されている(図1参照)。バックライト装置3は、複数の発光ダイオードDが発する光を、液晶パネル2に向けて照射する照射面3aを備えている。照射面3aの形状は、液晶パネル2の形状に合わせた矩形状である。なお、バックライト装置3は、各発光ダイオードDから発せられて拡散する光を集光したり拡散させるレンズと拡散用のフィルムとを備えているが、詳細な説明は省略する。表示装置1は、バックライト装置3が照射面3aから照射した光のうち、液晶パネル2を通過した光によって、表示面1aに画像を形成する。
【0025】
本実施形態では、バックライト装置3は、図3および図4に示すように、直列光源群30および駆動回路31を備えている。直列光源群30は、図4に示すように、直列接続された7個の発光ダイオードDを備えている。なお、7個の発光ダイオードDの接続の順番は限定されない。また、7個の発光ダイオードDの接続方法も限定されない。例えば、7個の発光ダイオードDのすべてが並列接続されてもよいし、発光ダイオードDが3個直列接続されたものと、4個直列接続されたものとが並列接続されてもよい。各発光ダイオードDは、通電されることで白色光を発する発光ダイオードである。7個の発光ダイオードDは、図3に示すように、発光面Daを液晶パネル2側(図3においては紙面の手前側)に向けて、配置されている。なお、図3においては、各発光ダイオードDの配置を表すために、レンズおよびフィルムを透過している。フィルムの外面が、光を照射する照射面3aに相当する。
【0026】
7個の発光ダイオードDは、発光ダイオードD1~D7を含んでいる。発光ダイオードD1~D4は、照射面3aの長手方向であり、車両Bの車幅方向であるx方向に、等間隔で並んで配置されている。発光ダイオードD5~D7は、x方向に等間隔で並んで配置されており、発光ダイオードD1~D4に対して、x方向に直交する方向であるy方向の一方側(図3においては上側)に配置されている。発光ダイオードD5は、x方向において、発光ダイオードD1と発光ダイオードD2との間に配置されている。発光ダイオードD6は、x方向において、発光ダイオードD2と発光ダイオードD3との間に配置されている。発光ダイオードD7は、x方向において、発光ダイオードD3と発光ダイオードD4との間に配置されている。発光ダイオードD1~D4は、ウインドシールド7の表示領域71のうち、下側に位置する領域に対応する、液晶パネル2の領域に光を照射する。発光ダイオードD5~D7は、ウインドシールド7の表示領域71のうち、上側に位置する領域に対応する、液晶パネル2の領域に光を照射する。
【0027】
照射面3aは、x方向の一方端側(図3においては左端側)の端縁3b、y方向の一方端側(図3においては上端側)の端縁3c、x方向の他方端側(図3においては右端側)の端縁3d、および、y方向の他方端側(図3においては下端側)の端縁3eを備えている。発光ダイオードD1は、端縁3bに最も近い位置に配置されている。発光ダイオードD4は、端縁3dに最も近い位置に配置されている。発光ダイオードD5~D7は、端縁3cに最も近い位置に配置されている。発光ダイオードD5は、発光ダイオードD5~D7の中で、端縁3bに最も近い位置に配置されており、x方向において、発光ダイオードD1より、端縁3d側に配置されている。発光ダイオードD7は、発光ダイオードD5~D7の中で、端縁3dに最も近い位置に配置されており、x方向において、発光ダイオードD4より、端縁3b側に配置されている。
【0028】
駆動回路31は、直列光源群30の各発光ダイオードDを駆動する駆動回路である。駆動回路31は、直列光源群30のアノード側の端子に接続されている。直列光源群30のカソード側の端子は、グランド接続されている。なお、バックライト装置3における、駆動回路31の配置位置は限定されず、各発光ダイオードDが発する光を妨げない位置であればよい。
【0029】
制御装置4は、液晶パネル2およびバックライト装置3を制御するものであり、例えば、CPUおよびメモリを備えたマイクロコンピュータによって実現されている。
【0030】
制御装置4は、画像生成部60から入力される表示画像情報に基づいて、液晶パネル2の各画素の駆動を制御する。画像生成部60は、各種センサや各種ECU(Electronic Control Unit)などから入力される走行情報に基づいて、表示装置1に表示するための画像を生成する。当該画像の生成のために画像生成部60に入力される走行情報の例としては、車両Bの車速、エンジン回転数、燃料の残量、シフトポジション、ナビゲーション情報、積算走行距離、時刻、外気温、方向指示情報、パーキングブレーキ情報、ライトの点灯や状態を示す情報、シートベルトの着脱情報、冷却水の水温、故障診断に関する情報、セキュリティ情報などがある。なお、画像の生成に使用される走行情報は限定されない。画像生成部60は、生成した画像の画像データを、表示画像情報として、制御装置4に出力する。なお、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、画像生成部60を備えてもよい。
【0031】
また、制御装置4は、照度センサ62から入力される照度に基づいて、バックライト装置3の駆動回路31を制御する。照度センサ62は、例えば車両Bの前方に配置され、周囲の照度を検出するセンサである。照度センサ62によって検出された照度は、例えば、ライトの点灯および消灯の切り替えの判断に用いられる。照度センサ62は、検出した照度を、制御装置4に出力する。
【0032】
制御装置4は、照度センサ62から入力される照度に基づいて、直列光源群30の輝度を設定する。照度センサ62から入力される照度が大きく、車両Bの周囲が明るいほど、ウインドシールド7の表示領域71の背景が明るくなる。したがって、制御装置4は、表示領域71に表示される画像の輝度を大きくして視認性を高めるために、直列光源群30の輝度を大きい値に設定する。なお、照度センサ62から入力される照度に対して、設定する輝度をどのような値に設定するかは、実験によって、できるだけ最適になるように決定される。
【0033】
制御装置4は、いわゆるPWM調光によって、各発光ダイオードDの輝度を調整する。PWM調光は、発光ダイオードに駆動電流を流して点灯させる点灯期間と、駆動電流を遮断して消灯させる消灯期間とを、一定の短い周期で交互に切り替え、1周期における点灯期間の占める割合(デューティ比)を変化させることで、発光ダイオードの輝度を変化させる技術である。切り替えの周期を短くする(周波数を高くする)ことで、人の目には点灯と消灯によるちらつきが認識できなくなる。デューティ比が高くなると、点灯期間が長くなるので、発光ダイオードの輝度は大きくなり、デューティ比が低くなると、点灯期間が短くなるので、発光ダイオードの輝度は小さくなる。デューティ比が「0」の場合、発光ダイオードは消灯される。
【0034】
制御装置4は、設定された輝度に応じたパルス信号を、駆動回路31に出力する。駆動回路31は、制御装置4から入力されるパルス信号に応じて、直列光源群30に流す駆動電流を切り替えることで、各発光ダイオードDの輝度を設定された輝度に調整する。直列光源群30の各発光ダイオードDは、直列接続されているので、同じ駆動電流が流れ、同じ輝度で発光する。なお、制御装置4は、表示装置1に含まれてもよい。
【0035】
次に、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置A1の作用および効果について説明する。
【0036】
本実施形態によると、直列光源群30の各発光ダイオードDは同じ輝度で発光するが、発光ダイオードD1~D7が図3に示すように偏って配置(マトリクス状ではない)されているので、照射面3aは、全面で同じ輝度の光を照射しない。具体的には、照射面3aの四隅のうち、端縁3bと端縁3cとが交わる角部分と、端縁3dと端縁3cとが交わる角部分とが、いずれの発光ダイオードDからも離れているので、他の部分、例えば中央部分に比べて輝度が低い光を照射する。したがって、図5に示すウインドシールド7の表示領域71のうち、上側の両側の角部分の領域711,712の黒色部分は、表示領域71の中央部分の黒色部分に比べて暗くなり、表示領域71の周囲の黒とのコントラスト差が小さくなる。これにより、表示領域71の輪郭のうち、上側の両側の角部分が目立たなくなる。一般的に、人の目は輪郭を認識するときに、角の部分によって認識することが多い。したがって、角の部分の輪郭が目立たなければ、全体の輪郭はあまり目立たない。これにより、ポストカード効果が軽減され、運転者の煩わしさが軽減されて、走行安全性の向上と見た目の品質向上につながる。また、本実施形態によると、発光ダイオードDの配置を工夫しただけなので、簡易な構成で実現でき、OLEDやMEMSレーザを用いる場合に比べて、製造コストを抑制できる。
【0037】
なお、本実施形態では、表示領域71のうち、上側の両側の角部分の領域711,712の輝度が低くなるので、これらの領域に画像が表示される場合、視認性が悪くなる。しかし、ヘッドアップディスプレイ装置A1においては、表示される画像の各パーツの配置は固定されており、領域711,712には画像が表示されないように設定できる。また、本実施形態では、表示領域71のうち、下側の両側の角部分の領域の黒色部分は、表示領域71の中央部分の黒色部分と同程度なので、表示領域71の下側の輪郭においては、ポストカード効果が生じうる。しかし、ポストカード効果が生じる夜間などでは、表示領域71の下側の領域の背景となる道路がヘッドライトに照らされて明るくなるので、ポストカード効果はあまり生じない。
【0038】
また、本実施形態によると、複数の発光ダイオードDをマトリクス状に配置する場合に比べて、配置される発光ダイオードDの数を削減できる。例えば、図3に示すバックライト装置3の場合、発光ダイオードDをマトリクス状に配置すると8個の発光ダイオードDが必要になるが、本実施形態では、7個の発光ダイオードDで構成されている。これにより、部品点数の削減が可能である。よって、製造コストを抑制できる。また、使用される発光ダイオードDの数が削減されることで、発光ダイオードDから放出される熱の総量が低減される。これにより、ヒートシンクを小型化できるので、ヘッドアップディスプレイ装置A1の小型軽量化が可能である。
【0039】
なお、本実施形態では、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、ウインドシールド7に画像を表示する場合について説明したが、これに限られない。ヘッドアップディスプレイ装置A1は、ウインドシールド7と運転者との間に配置される、透明な板状部品であるコンバイナに画像を表示してもよい。この場合、「コンバイナ」が本発明の「透過反射部」に相当する。
【0040】
本実施形態では、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、表示装置1に表示された画像を、第1ミラー51および第2ミラー52に反射させて、ウインドシールド7に投影する場合について説明したが、表示装置1とウインドシールド7との間に配置される鏡の数は限定されない。例えば、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、第1ミラー51および第2ミラー52のいずれか一方のみを備えてもよいし、さらに鏡が追加されてもよい。また、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、第1ミラー51および第2ミラー52を備えず、表示装置1に表示された画像を、直接、ウインドシールド7に投影してもよい。表示装置1の表示面1aの向きや、表示される画像の向き、および、各鏡の配置位置や形状、向きなどは、画像がウインドシールド7の表示領域71に適切に表示されるように、適宜設計される。
【0041】
本実施形態では、制御装置4がPWM調光によって各発光ダイオードDの輝度を調整する場合について説明したが、これに限られない。例えば、制御装置4は、各発光ダイオードDに流す駆動電流の大きさを、駆動回路31に変更させることで、各発光ダイオードDの輝度を調整してもよい。
【0042】
本実施形態では、光源として発光ダイオードDが用いられているが、これに限られない。その他の光源を用いてもよい。
【0043】
バックライト装置3における発光ダイオードDの配置方法は、図3に示すものに限定されない。図6は、バックライト装置3の変形例を示す概略平面図である。当該変形例に係るバックライト装置3は、y方向の一方側(図6においては上側)に配置されている発光ダイオードDが、発光ダイオードD5および発光ダイオードD6の2個だけである。発光ダイオードD5は、x方向において、発光ダイオードD2と同じ位置に配置されている。発光ダイオードD6は、x方向において、発光ダイオードD3と同じ位置に配置されている。つまり、本変形例に係るバックライト装置3は、縦2行横4列のマトリクス状に配置された複数の発光ダイオードDのうち、y方向の一方端側の、x方向両端にそれぞれ配置される発光ダイオードDを配置していないものである。
【0044】
発光ダイオードD1は、端縁3bに最も近い位置に配置されている。発光ダイオードD4は、端縁3dに最も近い位置に配置されている。発光ダイオードD5~D6は、端縁3cに最も近い位置に配置されている。発光ダイオードD5は、発光ダイオードD5~D6の中で、端縁3bに最も近い位置に配置されており、x方向において、発光ダイオードD1より、端縁3d側に配置されている。発光ダイオードD6は、発光ダイオードD5~D6の中で、端縁3dに最も近い位置に配置されており、x方向において、発光ダイオードD4より、端縁3b側に配置されている。
【0045】
本変形例においても、照射面3aの四隅のうち、端縁3bと端縁3cとが交わる角部分と、端縁3dと端縁3cとが交わる角部分とが、いずれの発光ダイオードDからも離れているので、他の部分、例えば中央部分に比べて輝度が低い光を照射する。したがって、本変形例においても、ポストカード効果が軽減される。また、本変形例によると、配置される発光ダイオードDの数を、さらに削減できる。したがって、製造コストをさらに抑制でき、また、さらなる小型軽量化が可能である。
【0046】
図7は、バックライト装置3の他の変形例を示す概略平面図である。図7(a)の変形例に係るバックライト装置3は、図3および図6の場合より、照射面3aの面積が小さい場合のものである。当該変形例では、y方向の一方側(図7においては上側)に2個の発光ダイオードDが配置され、y方向の他方側(図7においては下側)に3個の発光ダイオードDが配置されている。図7(b)の変形例に係るバックライト装置3は、図7(a)の変形例の場合より、照射面3aの面積がさらに小さい場合のものである。当該変形例では、y方向の一方側(図7においては上側)に1個の発光ダイオードDが配置され、y方向の他方側(図7においては下側)に2個の発光ダイオードDが配置されている。これらの変形例においても、ポストカード効果が軽減される。また、複数の発光ダイオードDをマトリクス状に配置する場合に比べて、配置される発光ダイオードDの数を削減できるので、製造コストを抑制でき、また、小型軽量化が可能である。
【0047】
図8は、バックライト装置3の他の変形例を示す概略平面図である。図8の変形例に係るバックライト装置3は、図3および図6の場合より、照射面3aの面積が大きい場合のものである。当該変形例では、y方向の一方側(図7においては上側)に3個の発光ダイオードDが配置され、y方向の他方側(図7においては下側)に4個の発光ダイオードDが配置され、y方向の中央にも4個の発光ダイオードDが配置されている。本変形例においても、ポストカード効果が軽減される。また、複数の発光ダイオードDをマトリクス状に配置する場合に比べて、配置される発光ダイオードDの数を削減できるので、製造コストを抑制でき、また、小型軽量化が可能である。
【0048】
図7および図8に示すように、バックライト装置3に配置される発光ダイオードDの数および配置は、照射面3aの面積および形状に応じて、適宜設計される。つまり、バックライト装置3における、発光ダイオードDのx方向の配置数、および、y方向の配置数は限定されない。また、図6に示すように、バックライト装置3における発光ダイオードDの配置方法にも自由度がある。バックライト装置3は、端縁3cに最も近い位置に配置されている発光ダイオードDの中で端縁3bに最も近い発光ダイオードDが、端縁3bに最も近い位置に配置されている発光ダイオードDより、x方向において端縁3d側に配置されているか、端縁3cに最も近い位置に配置されている発光ダイオードDの中で端縁3dに最も近い発光ダイオードDが、端縁3dに最も近い位置に配置されている発光ダイオードDより、x方向において端縁3b側に配置されていればよい。
【0049】
<第2実施形態>
図9および図10は、本開示の第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置A2を説明するための図である。図9は、ヘッドアップディスプレイ装置A2のバックライト装置3を示す概略平面図であり、図3に相当する図である。図10は、ウインドシールド7に表示された画像の一例を示す図であり、図5に相当する図である。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置A2は、ウインドシールド7における表示領域71の位置が、第1実施形態と異なっている。
【0050】
図示を省略するが、ヘッドアップディスプレイ装置A2の第2ミラー52(図1参照)は、第1ミラー51からの反射光をウインドシールド7の上方領域に向けて反射させるように、ヘッドアップディスプレイ装置A2の筐体に配置されている。これにより、図10に示すように、表示領域71がウインドシールド7の上方に配置されている。
【0051】
第2実施形態に係るバックライト装置3は、図9に示すように、第1実施形態に係るバックライト装置3における発光ダイオードD1~D4の配置位置と、発光ダイオードD5~D7の配置位置とを、y方向において反対にしたものである。すなわち、発光ダイオードD5~D7が、発光ダイオードD1~D4に対して、y方向の他方側(図9においては下側)に配置されている。発光ダイオードD1~D4は、ウインドシールド7の表示領域71のうち、上側に位置する領域に対応する、液晶パネル2の領域に光を照射する。発光ダイオードD5~D7は、ウインドシールド7の表示領域71のうち、下側に位置する領域に対応する、液晶パネル2の領域に光を照射する。
【0052】
発光ダイオードD1は、端縁3bに最も近い位置に配置されている。発光ダイオードD4は、端縁3dに最も近い位置に配置されている。発光ダイオードD5~D7は、端縁3eに最も近い位置に配置されている。発光ダイオードD5は、発光ダイオードD5~D7の中で、端縁3bに最も近い位置に配置されており、x方向において、発光ダイオードD1より、端縁3d側に配置されている。発光ダイオードD7は、発光ダイオードD5~D7の中で、端縁3dに最も近い位置に配置されており、x方向において、発光ダイオードD4より、端縁3b側に配置されている。
【0053】
本実施形態によると、発光ダイオードD1~D7が図9に示すように偏って配置(マトリクス状ではない)されているので、照射面3aは、全面で同じ輝度の光を照射しない。具体的には、照射面3aの四隅のうち、端縁3bと端縁3eとが交わる角部分と、端縁3dと端縁3eとが交わる角部分とが、いずれの発光ダイオードDからも離れているので、他の部分、例えば中央部分に比べて輝度が低い光を照射する。したがって、図10に示すウインドシールド7の表示領域71のうち、下側の両側の角部分の領域713,714の黒色部分は、表示領域71の中央部分の黒色部分に比べて暗くなり、表示領域71の周囲の黒とのコントラスト差が小さくなる。これにより、表示領域71の輪郭のうち、下側の両側の角部分が目立たなくなる。これにより、ポストカード効果が軽減され、運転者の煩わしさが軽減されて、走行安全性の向上と見た目の品質向上につながる。また、本実施形態によると、発光ダイオードDの配置を工夫しただけなので、簡易な構成で実現でき、OLEDやMEMSレーザを用いる場合に比べて、製造コストを抑制できる。
【0054】
なお、本実施形態では、表示領域71のうち、下側の両側の角部分の領域713,714の輝度が低くなるので、これらの領域に画像が表示される場合、視認性が悪くなる。しかし、ヘッドアップディスプレイ装置A2においては、表示される画像の各パーツの配置は固定されており、領域713,714には画像が表示されないように設定できる。また、本実施形態では、表示領域71のうち、上側の両側の角部分の領域の黒色部分は、表示領域71の中央部分の黒色部分と同程度なので、表示領域71の上側の輪郭においては、ポストカード効果が生じる。しかし、表示領域71の上側部分は、運転時の運転者の視線から離れているので、運転者は、あまりわずらわしさを感じない。
【0055】
また、本実施形態においても、複数の発光ダイオードDをマトリクス状に配置する場合に比べて、配置される発光ダイオードDの数を削減できるので、製造コストを抑制でき、また、小型軽量化が可能である。
【0056】
本実施形態においても、第1実施形態に係るバックライト装置3の変形例(図6図8参照)と同様に、バックライト装置3に配置される発光ダイオードDの数および配置には、自由度がある。バックライト装置3は、端縁3eに最も近い位置に配置されている発光ダイオードDの中で端縁3bに最も近い発光ダイオードDが、端縁3bに最も近い位置に配置されている発光ダイオードDより、x方向において端縁3d側に配置されているか、端縁3eに最も近い位置に配置されている発光ダイオードDの中で端縁3dに最も近い発光ダイオードDが、端縁3dに最も近い位置に配置されている発光ダイオードDより、x方向において端縁3b側に配置されていればよい。
【0057】
なお、例えば図8に示すバックライト装置3において、端縁3eに最も近い位置に配置されている4個の発光ダイオードD1~D4に代えて、3個の発光ダイオードDを、発光ダイオードD5~D7とx方向においてそれぞれ同じ位置に配置することで、表示領域71のすべての四隅(図5における領域711,712、および、図10における領域713,714)の黒色部分を、表示領域71の中央部分の黒色部分より暗くしてもよい。
【0058】
第1および第2実施形態においては、ヘッドアップディスプレイ装置A1,A2が車両Bに取り付けられる場合について説明したが、これに限られない。ヘッドアップディスプレイ装置A1,A2は、例えば飛行機や船などの他の乗り物に取り付けられてもよい。
【0059】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0060】
A1~A2:ヘッドアップディスプレイ装置
1 :表示装置
1a :表示面
2 :液晶パネル
3 :バックライト装置
3a :照射面
3b~3e:端縁
D,D1~D7:発光ダイオード
Da :発光面
30 :直列光源群
31 :駆動回路
4 :制御装置
51 :第1ミラー
52 :第2ミラー
60 :画像生成部
62 :照度センサ
7 :ウインドシールド
71 :表示領域
711~714:領域
B :車両
E :視点
L :光路
V :虚像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10