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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】画像形成ユニットおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240214BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G15/08 233
G03G15/08 390B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020012802
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021117458
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 久敏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅之
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-234164(JP,A)
【文献】特開2005-121990(JP,A)
【文献】特開2006-251145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持可能に構成された外周面を有する回転体と、
前記回転体の軸方向の少なくとも一方の端部に設けられ、前記外周面と向かい合う支持面を有するシール支持部と、
前記支持面に支持された第1シール材であって、前記外周面に沿ってその周方向に所定長さを有し、前記回転体と前記シール支持部との間に配置された第1シール材と、
前記回転体の軸方向に延在し、前記回転体をその軸方向の両端で支持可能に構成された枠体と、
前記枠体に支持された第2シール材であって、前記回転体の前記軸方向の端部の間に延在し、前記回転体の回転方向における前端で前記回転体の外周面に接触可能に配置された第2シール材と
を備え、
前記支持面は、前記回転体の回転方向における前記第1シール材の後端に達する凹状部を有し、
前記シール支持部は、前記枠体に設けられ、前記支持面として、前記回転体の前記軸方向のそれぞれの端部と向かい会う第1支持面および第2支持面を有し、
前記第1シール材として、前記第1支持面に支持された第1端部シール材と、前記第2支持面に支持された第2端部シール材と、を備え、
前記第1端部シール材および前記第2端部シール材は、前記回転体に向かう一面に、前記後端に近付くに従って当該第1および第2端部シール材の厚さを減少させるテーパ面を夫々有し、
前記第2シール材は、前記回転体の前記軸方向の端部と前記第1または第2端部シール材の前記テーパ面との間に挟持される端部を有する、
画像形成ユニット。
【請求項2】
前記凹状部は、曲面状である、
請求項1に記載の画像形成ユニット。
【請求項3】
前記凹状部は、前記回転体の回転中心軸上に曲率中心を有する、
請求項2に記載の画像形成ユニット。
【請求項4】
前記凹状部は、互いに交差する複数の面から構成される、
請求項1に記載の画像形成ユニット。
【請求項5】
前記第1シール材は、前記回転体に向かう一面に、前記後端に近付くに従って当該第1シール材の厚さを減少させるテーパ面を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成ユニット。
【請求項6】
前記テーパ面は、前記枠体から前記回転体が外れた状態で前記第1または第2端部シール材と前記第2シール材の前記端部との間に隙間が形成される角度に設定された、
請求項1~5に記載の画像形成ユニット。
【請求項7】
前記枠体は、前記第2シール材が前記前端を除く部分で支持された、前記第2シール材の支持面を有し、
前記第1シール材の支持面と前記第2シール材の支持面とが、前記回転体の軸方向に互いに重なり合って形成された、
請求項1~6のいずれか一項に記載の画像形成ユニット。
【請求項8】
前記第1端部シール材と前記第2端部シール材との間に延在し、前記回転体の回転方向における後端で前記回転体の外周面に接触して、前記回転体に担持された現像剤を前記回転体から除去可能に配置されたクリーニング材をさらに備え、
前記枠体は、前記クリーニング材により除去された現像剤を当該画像形成ユニットの外部に向けて誘導可能に形成された、前記現像剤の排出路を有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の画像形成ユニット。
【請求項9】
前記回転体は、静電潜像担持体である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の画像形成ユニット。
【請求項10】
前記回転体は、感光体ドラムである、
請求項に記載の画像形成ユニット。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の画像形成ユニットであって、前記回転体に担持された現像剤を媒体に転写可能に構成された画像形成ユニットと、
前記媒体上の現像剤を定着可能に構成された定着装置と、
前記媒体を前記画像形成ユニットおよび前記定着装置を介して搬送可能に構成された搬送機構と、
を備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成ユニットおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に備わる画像形成ユニットとして、特許文献1には、感光体ドラムに担持された現像剤の画像形成ユニットからの漏れを抑制するための措置が講じられたものが記載されている。具体的には、感光体ドラムに対し、その軸方向の端部にシール材を接触させて配置するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-145996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現像剤に対するシール性についてはその更なる向上ないし改善に関する要請が依然として存在する。
【0005】
本開示は、現像剤に対するシール性をより簡単な構成により向上させまたは改善することが可能な画像形成ユニットおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態では、現像剤を担持可能に構成された外周面を有する回転体と、回転体の軸方向の少なくとも一方の端部に設けられ、外周面と向かい合う支持面を有するシール支持部と、支持面に支持された第1シール材であって、回転体の外周面に沿ってその周方向に所定長さを有し、回転体とシール支持部との間に配置された第1シール材と、を備える画像形成ユニットが提供される。本形態では、シール支持部に設けられる支持面は、回転体の回転方向における第1シール材の後端に達する凹状部を有する。
【0007】
本開示の他の形態では、上記画像形成ユニットと、媒体上の現像剤を定着可能に構成された定着装置と、媒体を画像形成ユニットおよび定着装置を介して搬送可能に構成された搬送機構と、を備える画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る画像形成ユニットおよび画像形成装置によれば、第1シール材を支持面に支持させた場合に、支持された第1シール材に元の形状に戻ろうとする復元力が生じることを抑制することが可能となる。これにより、簡単な構成により、現像剤に対するシール性を向上させまたは改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る画像形成装置の内部構成を概略的に示す模式図である。
図2図2は、同上画像形成装置に備わる画像形成ユニットの全体的な構成を示す断面立面図である。
図3図3は、同上画像形成ユニットのクリーニング部の全体的な構成を示す斜視図である。
図4図4は、同上クリーニング部の構成を、クリーニングブレードを取り外した状態で示す斜視図である。
図5図5は、同上クリーニング部に備わる枠体の全体的な構成を示す斜視図である。
図6図6は、図3に示すX-X線による同上クリーニング部の断面図であり、感光体ドラムの軸方向の端部における構成を示す。
図7図7は、図3に示すY-Y線による同上クリーニング部の断面図であり、感光体ドラムの軸方向の中央における構成を示す。
図8図8は、図3に示すX-X線による枠体の断面図であり、図8(a)は、同上クリーニング部に備わる枠体を、同図(b)は、変形例に係るクリーニング部に適用可能な枠体を、夫々示す。
図9図9は、同上クリーニング部に用いられるシール材の構成を示し、図9(a)は、斜視図により、同図(b)は、平面図および側面図により、夫々示す。
図10図10は、他の変形例に係るクリーニング部の構成を部分的に示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(印刷装置101の全体構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る画像形成装置である、印刷装置1の内部構成を概略的に示す模式図である。本実施形態に係る印刷装置1は、特定の種類のものに限定されず、プリンタ(例えば、電子写真プリンタ)のほか、複写機、複合機(MFP)またはファクシミリ等、外周面に現像剤を担持可能に構成された回転体を備える、いかなる種類のものであってもよい。さらに、本実施形態では、印刷装置1によりカラー画像を形成する場合を例に説明するが、印刷装置1は、画像形成部(具体的には、画像形成ユニット121)の構成に変更を加えることにより、単色の画像を形成することも可能である。
【0012】
印刷装置1は、大きく、媒体貯蔵部11、画像形成部12、画像定着部13および排紙積載部14に区画することが可能である。本実施形態では、印刷装置1により画像が形成される被記録媒体として、紙(以下「記録紙」という)Pが採用される。記録紙Pは、媒体貯蔵部11から用紙搬送路を介して上記各部を巡回する。
【0013】
媒体貯蔵部11は、給紙カセット111を備え、被記録媒体である記録紙Pは、給紙カセット111に保持される。
【0014】
記録紙Pは、使用者からの印刷指示等に基づき、給紙カセット111から1枚ずつ分離され、用紙搬送路に送り出される。媒体貯蔵部11は、給紙搬送ローラ112を備え、給紙搬送ローラ112により、給紙カセット111に積み重ねられた記録紙Pを、1枚ずつ用紙搬送路へ送り出す。
【0015】
給紙カセット111から送り出された記録紙Pは、記録紙Pのスキュー(つまり、傾斜または歪み)を矯正するレジストローラ113と、レジストローラ113に対して記録紙Pを押し付けるプレッシャローラ114と、の間を通過し、現像のタイミングに合わせて画像形成部12へ供給される。レジストローラ113、プレッシャローラ114、さらに、後に述べる排出ローラ115a、115bおよび従属ローラ116a、116bは、本実施形態に係る「搬送機構」に相当する。
【0016】
画像形成部12は、画像形成ユニット121(121a~121d)と、転写装置122と、を備える。
【0017】
本実施形態では、画像形成ユニット121は、原色の種類に応じた複数の単色のユニット121a~121dからなる。画像形成ユニット121aは、第1の色(例えば、シアン)の現像を行い、画像形成ユニット121bは、第2の色(例えば、マゼンタ)の現像を行い、画像形成ユニット121cは、第3の色(例えば、黄)の現像を行い、画像形成ユニット121dは、第4の色(例えば、黒)の現像を行う。第1から第4の各色の画像形成ユニット121a~121dは、現像する色の違いを除いていずれも同様の構成であり、以下の説明では、シアンの画像形成ユニット121a(便宜上、符号は、121とする)に代表させて説明する。
【0018】
図2は、印刷装置1に備わる画像形成ユニット121の全体的な構成を示す断面立面図である。
【0019】
画像形成ユニット121は、静電潜像担持体である感光体ドラム1211を備えるとともに、現像部Aおよびクリーニング部Bを備える。感光体ドラム1211は、本実施形態に係る「回転体」に相当するものであり、その外周面に、画像情報に応じた露光光の照射により静電潜像が形成される。静電潜像担持体は、ドラム状のものに限らず、ベルト状のものであってもよい。つまり、静電潜像担持体として、感光体ドラム1211に代えて感光体ベルトを採用することが可能であり、この場合の感光体ベルトは、本実施形態の変形例に係る「回転体」に相当する。
【0020】
現像部Aは、現像剤ローラ1212および供給ローラ1213を備える。現像剤ローラ1212は、感光体ドラム1211に対し、互いの外周面を接触させた状態で配置され、感光体ドラム1211に形成された静電潜像を、現像剤であるトナーにより現像する。供給ローラ1213は、トナー容器1214と現像剤ローラ1212との間に、現像剤ローラ1213に対して互いの外周面を接触させた状態で配置され、トナー容器1214からトナーの供給を受け、供給されたトナーを現像剤ローラ1212の外周面に付着させる。現像部Aは、さらに、現像剤ローラ1212の外周面に付着させたトナーを薄く均すための規制ブレード1215を備える。
【0021】
図1に戻り、転写装置122は、画像形成ユニット121と対向して配置され、記録紙Pに対して定められる転写領域において、画像形成ユニット121により形成された現像剤像を、記録紙Pに転写する。
【0022】
転写装置122は、一対の案内ローラ1221、1222を備えるとともに、これら一対の案内ローラ1221、1222の間に掛け渡された、無端の転写ベルト1223を備える。ここで、画像形成ユニット121の感光体ドラム1211と転写装置122の転写ベルト1223とが互いに向かい合う範囲が、転写領域となる。
【0023】
画像形成部12に記録紙Pが供給されると、画像形成ユニット121は、帯電ローラ1216(図2)により、感光体ドラム1211の外周面を帯電させる。感光体ドラム1211は、帯電後、図示しない露光装置からの光が外周面に照射され、その外周面に、画像情報に応じた静電潜像が形成される。そして、この静電潜像が現像剤により現像され、現像剤像(トナー画像と呼ばれることもある)が形成される。感光体ドラム1211に形成された現像剤像は、転写ベルト1233上を搬送される記録紙Pに転写される。転写後、感光体ドラム1211上に残る現像剤が、後により詳しく述べるクリーニング部Bにおいて除去され、感光体ドラム1211は、その後、次の現像および転写に用いられる。以上の工程がシアン以外の色、つまり、マゼンタ、黄および黒のそれぞれについて行われ、目的とする画像の形成に必要な全ての現像剤の転写が完了した後、記録紙Pは、転写装置122を出て、画像定着部13へ搬送される。
【0024】
画像定着部13は、定着装置131を備え、記録紙Pに転写された現像剤像の、高温高圧定着処理による定着を行う。
【0025】
定着後の記録紙Pは、第1排出ローラ115aおよびこれと対をなす第1従属ローラ116aを介してさらに搬送され、第2排出ローラ115bおよび第2従属ローラ116bにより、排出口117から上部カバーに形成された排紙積載部14へ排出される。排紙積載部14は、目的とする画像が形成された記録紙Pを一時的に積載させる箇所である。
【0026】
先に述べたように、画像形成ユニット121は、クリーニング部Bにおいて、記録紙Pへの転写後の感光体ドラム1211上に残るトナーを感光体ドラム1211から除去し、除去されたトナー(以下「廃トナー」という場合がある)を回収するための構成を有する。
【0027】
図3から図8を適宜に参照して、本実施形態に係るクリーニング部Bの構成について以下に説明する。
【0028】
図3は、クリーニング部Bの全体的な構成を示す斜視図であり、図4は、クリーニング部Bの構成を、クリーニングブレード1218を取り外した状態で示す斜視図であり、図5は、クリーニング部Bに備わる枠体1217の全体的な構成を示す斜視図である。さらに、図6は、図3に示すX-X線によるクリーニング部Bの断面図であり、図7は、図3に示すY-Y線によるクリーニング部Bの断面図である。図6は、感光体ドラム1211の軸方向の端部におけるクリーニング部Bの構成を示し、図7は、感光体ドラム1211の軸方向の中央におけるクリーニング部Bの構成を示す。図8は、図3に示すX-X線による枠体1217の断面図であり、図8(a)は、本実施形態に係るクリーニング部Bに備わる枠体を、同図(b)は、変形例に係るクリーニング部Bに適用可能な枠体を、夫々示す。
【0029】
クリーニング部Bは、基本的な構成として、枠体1217と、クリーニングブレード1218と、排出スパイラル1219と、を備える。
【0030】
枠体1217は、感光体ドラム1211を印刷装置1の装置本体に対して支持するものであり、感光体ドラム1211の軸方向の全体に亘って延在し、図3に示されるように、その軸方向の両端に、感光体ドラム1211を回転可能に支持する支持アーム1217aを有する。
【0031】
クリーニングブレード1218は、感光体ドラム1211からその外周面上に残るトナーを除去するものであり、弾性材1218aと、弾性材1218aを感光体ドラム1211に対して接触させた状態で支持する板金部1218bと、を備える。そして、クリーニングブレード1218は、弾性材1218aが板金部1218bに形成された支持面に粘着剤により貼り付けられるとともに、板金部1218bが枠体1217にネジ止めされることで、枠体1217に取り付けられている。本実施形態では、クリーニングブレード1218は、感光体ドラム1211の外周面に対し、感光体ドラム1211の軸方向の全体に亘って接触することにより、トナーを除去する。クリーニングブレード1218は、本実施形態に係る「クリーニング材」に相当する。
【0032】
排出スパイラル1219は、クリーニングブレード1218により除去されたトナーを、廃トナーとして枠体1217、つまり、画像形成ユニット121の外部に送り出すものである。図4に示されるように、排出スパイラル1219は、螺旋状に形成された線材により構成され、枠体1217に形成された第1廃トナー排出路Hに収容される(図5)。そして、排出スパイラル1219は、図示しない駆動源(例えば、電気モータ)により回転させられることで、廃トナーを外部に向けて付勢し、これを順次送り出す。画像形成ユニット121の外部に送り出された廃トナーは、第2廃トナー搬送路Rを介して搬送され、装置本体の内部に設けられた廃トナー容器15に回収される。
【0033】
本実施形態では、トナー(感光体ドラム1211から除去された廃トナーを含む)の画像形成ユニット121からの漏れを、複数のシール材201~204により抑制する。
【0034】
本実施形態では、そのようなシール材として、第1シール材201、第2シール材202、第3シール材203および第4シール材204を備える。これらのシール材201~204は、いずれも枠体1217に形成された支持面または接合面に、粘着剤により貼り付けられまたは接合される。第1シール材201は、本実施形態に係る「第1シール材」、「第1端部シール材」および「第2端部シール材」に相当し、第2シール材202は、本実施形態に係る「第2シール材」に相当する。
【0035】
図4に示されるように、第3シール材203は、感光体ドラム1211の軸方向の両端において、クリーニングブレード1218の弾性材1218aと枠体1217との間に介装され、弾性材1218aと枠体1217との間を介するトナーの漏れを抑制するものである。他方で、図7に示されるように、第4シール材204は、感光体ドラム1211の軸方向の全体に亘って設けられ、弾性材1218aを保持するクリーニングブレード1218の板金部1218bと枠体1217との間に介装され、板金部1218bと枠体1217との間を介するトナーの漏れを抑制するものである。
【0036】
第3シール材203および第4シール材204は、トナーに対するシール性の確保のために枠体に一般的に備わるものと同様のものとすることが可能である。
【0037】
第1シール材201は、感光体ドラム1211の軸方向の中心に対し、近付く方向を内方とし、離れる方向を外方として表す場合に、感光体ドラム1211の軸方向の外方へのトナーの漏れを主に抑制するものである。本実施形態では、枠体1217は、図5に示されるように、感光体ドラム1211の軸方向のそれぞれの端部と向かい合うように形成された支持面SF1、SF1を有し、第1シール材201は、これらの支持面SF1、SF1に夫々貼り付けられる。つまり、本実施形態では、「第1シール材」が支持される「シール支持体」が、枠体1217の部分として構成される。第1シール材201に適用可能な材料として、発泡材を例示することができる。さらに、本実施形態では、上記一対の支持面SF1、SF1のうち、例えば、図5の紙面に向けて右側の支持面SF1が「第1支持面」に相当し、反対の左側の支持面SF1が「第2支持面」に相当する。そして、第1支持面SF1に支持される第1シール材が「第1端部シール材」に相当し、第2支持面SF1に支持される第1シール材が「第2端部シール材」に相当する。本実施形態では、第1および第2端部シール材201の呼称を、第1シール材で統一する。
【0038】
第2シール材202は、感光体ドラム1211の回転方向を前方とし、その反対方向を後方として表す場合に、感光体ドラム1211の周方向の後方へのトナーの漏れを主に抑制するものである。本実施形態では、枠体1217は、感光体ドラム1211の軸方向の全体に亘って形成された支持面SF2を有し(図5)、第2シール材202は、シート状をなし、この支持面SF2に貼り付けられる。第2シール材202に適用可能な材料として、弾性材を例示することができる。
【0039】
ここで、一般的な枠体では、トナーの漏れの抑制を目的としたシール材の支持面について、その形状に関する考慮は、特になされていない。軸方向の端部に設けられるシール材(つまり、端部シール材)の支持面に対し、感光体ドラムの外周面に向けて凸となる形状を付したとすると、シール材を実際に貼り付けた場合に、貼付後のシール材に元の形状に戻ろうとする復元力が生じる結果、シール材の端部が枠体から離れて、シール材の端部と枠体との間に隙間が生じることが懸念される。この隙間は、トナー、特にクリーニングブレードにより感光体ドラムから除去された廃トナーの通路となり、トナーの漏れの原因となり得ることから、トナーの漏れを有効に防止するため、シール材と枠体との間に、隙間を塞ぐための特別な部材ないし要素を付加することが必要となる。このことは、部品点数の増加を招き、部品点数の増加は、製造工程を煩雑にするとともに、費用を増大させる懸念があることから、回避されることが望ましい。本実施形態では、このような問題を考慮する。
【0040】
図9は、第1シール材201の構成を示し、図9(a)は、第1シール材201の斜視図であり、同図(b)は、第1シール材201の平面図(紙面右)および側面図(紙面左)である。
【0041】
第1シール材201は、枠体1217に貼り付けられる前の自然な(つまり、無負荷)状態において、図9(b)の平面視で長方形をなし、全体として、概略長方形をなす(同図(a))。そして、側面視において、第1シール材201は、一方の短辺から所定距離dだけ離れた位置を起点とするテーパ面201aを有し、起点からその短辺に近付くに従って第1シール材201の厚みが徐々に減少されている。
【0042】
ここで、図6に最もよく示されるように、第1シール材201が貼り付けられる枠体1217の支持面(以下「端部シール材の支持面」という)SF1に、感光体ドラム1211の径方向の外側に深さを増す部分、つまり、凹状部Cが形成される。本実施形態では、凹状部Cは、感光体ドラム1211の回転方向(図6に矢印により示す)における第1シール材201の後端201eに達する位置にまで延設され、第1シール材201の後端201eに対応する部分を境として、第2シール材202の支持面SF2に繋がっている。さらに、本実施形態では、凹状部Cは、曲面状であり、感光体ドラム1211の外周面の中心軸上、換言すれば、感光体ドラム1211の回転中心軸AX上に、その曲率中心を有する。図6は、凹状部Cにおける支持面SF1の曲率半径を、符号rにより示す。
【0043】
第1シール材201は、テーパ面201aを有する一面(つまり、上面)201bを感光体ドラム1211の外周面と向かい合わせた状態で支持面SF1に貼り付けられ、貼付後の状態において、クリーニングブレード1218の弾性材1218aに対し、感光体ドラム1211の軸方向におけるそれぞれの端部で当接する(図3)。
【0044】
これに対し、第2シール材202は、平面視で細長い長方形をなし、全体として均一な厚さを有する。第2シール材202は、支持面SF2に貼り付けられることにより枠体1217に取り付けられ、貼付後の状態では、図6に示されるように、感光体ドラム1211の回転方向における前端で、軸方向の全体に亘って感光体ドラム1211の外周面に接触する。つまり、第2シール材202は、感光体ドラム1211の回転方向における後方の端部で、支持面SF2に貼り付けられる。
【0045】
さらに、本実施形態では、第1シール材201および第2シール材202を枠体1217に取り付けた状態で、感光体ドラム1211の軸方向の端部において、第2シール材202が、その前端付近の部分で第1シール材201、具体的には、第1シール材201のうち、テーパ面201aが形成された部分と重なり合う。そして、感光体ドラム1211が枠体1217に取り付けられることで、第1シール材201と第2シール材202とが感光体ドラム1211によりともに圧縮され、感光体ドラム1211の外周面に対し、第1シール材201の圧縮による反発力が、第2シール材202を介して作用する。図6は、第2シール材202の一部(二点鎖線により示す)を第1シール材201に埋もれた状態で示すが、これは、第1シール材201と第2シール材202との弾性力の差によるものである。
【0046】
ここで、第1シール材201のうち、支持面SF1に貼り付けられる底面201cに対して平行な上面201bと、テーパ面201aと、のなす角度をαとし(図9(b))、第1シール材201の支持面SF1のうち、凹状部Cの終端における接線と、第2シール材202の支持面SF2と、のなす角度をβとして表す場合に(図8(a))、角度αおよびβの間には、次式(1)の関係が成立する。
α>β …(1)
【0047】
これにより、枠体1217から感光体ドラム1211が外れた状態で、第1シール材201のテーパ面201aと、これと向かい合う第2シール材202の下面と、の間に、隙間が形成される。そして、感光体ドラム1211が枠体1217に取り付けられることで、感光体ドラム1211の外周面が第2シール材202と接触し、第2シール材202を撓ませ、第2シール材202を第1シール材201とともに枠体1217に押し付けることで、この隙間が解消され、シール性が発揮されることとなる。
【0048】
(作用および効果の説明)
本実施形態に係る印刷装置1およびこれに備わる画像形成ユニット121は、以上のように構成され、本実施形態により得られる主な効果について以下に纏める。
【0049】
第1に、枠体1217に第1シール材201が支持される支持面SF1を形成し、この支持面SF1に、感光体ドラム1211の回転方向における第1シール材201の後端201eに達する凹状部Cを設けたことで、支持面SF1に第1シール材201を実際に支持(本実施形態では、接合)させた場合に、支持後の第1シール材201に元の形状に戻ろうとする復元力が生じることを抑制することが可能となる。これにより、第1シール材201の端部(後端201e)が枠体1217から離れることにより、第1シール材201の端部と枠体1217との間に隙間が生じることを抑制し、隙間を塞ぐための特別な部材または要素を付加することを必要とせず(つまり、部品点数の増加を抑えながら)、簡単な構成により、トナーに対するシール性を向上させまたは改善することができる。
【0050】
第2に、支持面SF1の凹状部Cを曲面状としたことで、支持面SF1に対する第1シール材201の支持強度、つまり、粘着剤による接合強度を確保しながら、支持後の第1シール材201に生じる復元力を適度に抑制することが可能である。
【0051】
第3に、支持面SF1の凹状部Cを曲面状とした場合に、凹状部Cの曲率中心を感光体ドラム1211の回転中心軸AX上に設定したことで、支持後の第1シール材201が、感光体ドラム1211の回転方向に、感光体ドラム1211の外周面に沿って延在することになるので、凹状部Cの全体に亘って第1シール材201にほぼ均一なシール性を発揮させ、トナーの漏れを抑制することが可能である。
【0052】
第4に、第1シール材201の感光体ドラム1211の外周面に向かう一面に、後端201eに近付くに従って第1シール材201の厚さを減少させるテーパ面201aを形成したことで、第1シール材201が感光体ドラム1211に及ぼす反発力を適度な大きさとし、感光体ドラム1211の回転が過度に妨げられることを防止することが可能である。
【0053】
第5に、第2シール材202により、画像形成ユニット121からのトナーの漏れをより確実に抑制することが可能である。
【0054】
第6に、感光体ドラム1211の軸方向の端部と、第1シール材201のテーパ面201aの部分と、の間に、第2シール材202の端部を挟持させたことで、第1シール材201により、感光体ドラム1211の軸方向(特にその外方)へのトナーの漏れを抑制しながら、第2シール材202により、感光体ドラム1211の周方向(特にその後方)へのトナーの漏れを抑制することが可能である。
【0055】
第7に、第1シール材201のテーパ面201aの角度αを設定し、これを、枠体1217から感光体ドラム1211が外れた状態で第1シール材201と第2シール材202との間に隙間が形成される角度としたことで、感光体ドラム1211を枠体1217に取り付けた場合に、感光体ドラム1211に対して第1シール材201が及ぼす反発力を適度に抑えながら、感光体ドラム1211と第1シール材201とにより挟持される第2シール材202が感光体ドラム1211の回転に対して及ぼす抵抗力(主に摩擦力による)を抑制し、感光体ドラム1211の円滑な回転を促すことが可能である。
【0056】
以上の説明では、第1シール材201の支持面SF1の凹状部Cを、曲率中心を定めることが可能な程度に一様な曲面により形成した。しかし、凹状部Cに適用可能な形状は、これに限定されるものではない。例えば、1つの曲率中心を定めることができない曲面、具体的には、異なる曲率半径を有する複数の連続した曲面により、凹状部Cを形成することも可能である。さらに、凹状部Cに適用可能な形状として、互いに交差する複数の面から構成されるものを例示することができる。
【0057】
図8(b)は、本実施形態の変形例に係る枠体1217として、互いに交差する複数の面から構成される凹状部Cを有する枠体1217の構成を、図6と同様のX-X線による断面により示す。この変形例では、互いに交差する2つの面により凹状部Cを構成し、これら2つの面の、感光体ドラム1211と向かい合う側に形成される角度γを、次の条件を満たすように設定する。
90°<γ<180° …(2)
【0058】
このように、支持面SF1の凹状部Cを互いに交差する複数の面から構成したことで、凹状部Cの形状に関する選択肢が増え、設計上の自由度が増大するだけでなく、支持面SF1に支持される第1シール材201が感光体ドラム1211に及ぼす反発力を、感光体ドラム1211の回転方向に変化させ、シール性の好適化を図ることが容易となる。例えば、この変形例では、感光体ドラム1211の回転方向に、第1シール材201の両端では、比較的強い反発力を生じさせる一方、その間の中間では、支持面SF1と感光体ドラム1211の外周面とが離れることから、比較的弱い反発力を生じさせることができる。
【0059】
さらに、以上の説明では、枠体1217を感光体ドラム1211の軸方向にみた状態で、第1シール材201の支持面SF1と第2シール材202の支持面SF2とを、互いに連続させて形成したが、これに限らず、両者を互いに重なり合うように形成することも可能である。図10は、そのような場合の例として、本実施形態の他の変形例に係るクリーニング部の構成を、拡大平面図により部分的に示す。図10(a)は、先の例によるものを、同図(b)は、他の変形例によるものを、夫々示す。
【0060】
図10(b)に示されるように、第1シート材201の支持面SF1を、同図(a)に示される例よりも第2シール材202の支持面SF2に近付くように張り出させ、両者の支持面SF1およびSF2を、感光体ドラム1211の軸方向に互いに重なり合わせるのである。図10(b)は、第1シート材201の支持面SF1を張り出させたことにより枠体1217ないし第2シール材202の支持面SF2に形成される凹み部を、符号Dにより示す。
【0061】
これにより、第1廃トナー排出路Hを画定する枠体1217の縁部1217eを伝うトナーを、第1シール材201により有効に堰き止め、第1シール材201を介するトナーの漏れをより確実に抑制することが可能である。
【0062】
さらに、回転体として適用可能なものは、感光体ドラム1211等の静電潜像担持体に限定されるものではなく、トナー等の現像剤を担持可能に構成された外周面を有することにより、現像剤の漏れが懸念される部位に配置されるいかなる回転体であってもよい。感光体ドラム1211以外に回転体として適用可能なものとして、現像剤ローラを例示することが可能である。
【0063】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、これらの実施形態は、本開示が適用される例の一部を示したものに過ぎず、本開示の技術的範囲を、具体例として示した構成に限定する趣旨ではない。開示された実施形態に対し、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で、様々な変更および修正を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…印刷装置、11…媒体貯蔵部、111…給紙カセット、112…分離ローラ、12…画像形成部、121…画像形成ユニット、1211…感光体ドラム、1217…枠体、1218…クリーニングブレード、13…画像定着部、131…定着装置、14…排紙積載部、201…第1シール材、第1端部シール材、第2端部シール材、201a…テーパ面、202…第2シール材、C…凹状部、H…第1廃トナー非出路、P…記録紙、SF1、SF2…支持面。
図1
図2
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図10