(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06V 30/244 20220101AFI20240214BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240214BHJP
G06V 30/14 20220101ALI20240214BHJP
【FI】
G06V30/244
G06T7/00 510A
G06V30/14
(21)【出願番号】P 2020028632
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 利博
【審査官】新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-003504(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104464075(CN,A)
【文献】特開2008-204212(JP,A)
【文献】特開2019-003421(JP,A)
【文献】特開2008-310481(JP,A)
【文献】特開平04-175894(JP,A)
【文献】特許第6578080(JP,B1)
【文献】特開2020-144437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 30/244
G06V 30/14
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本人を確認するための公文書から、前記公文書の真贋判定に使用される数字を抽出する抽出部と、
前記数字の特定部位の寸法に関する特徴情報を記憶する記憶部と、
前記抽出部で抽出した数字の前記特定部位の寸法を計測する計測部と、
前記計測部で計測した計測値と、前記記憶部に記憶された特徴情報とを照合する照合部と、
照合部の照合結果に基づいて、前記公文書の真贋を判定する判定部と
を有し、
前記本人を確認するための公文書が、個人情報が記載された運転免許証であり、かつ、数字のみが羅列されている免許証番号項目欄から、前記数字が抽出され、
前記記憶部が、前記運転免許証に適用される限定された書体毎に、前記特徴情報を記憶しており、
前記照合部が、当該運転免許証の書体を特定し、特定した書体に基づき読み出した前記特徴情報と、前記計測値とを照合する、
情報処理装置。
【請求項2】
本人を確認するための公文書から、整合性を判定するための記載項目であるデータ項目に対してOCR処理を行うOCR処理部と、
前記OCR処理を行ったデータ項目の整合性を判定する整合性確認部と、
前記整合性確認部で整合性有りと判定された場合、前記データ項目の一部に対してフォントパターンを特定するフォントパターン特定部と、
前記公文書の真贋判定に使用される数字を抽出する抽出部と、
前記数字の特定部位の寸法に関する特徴情報を記憶する記憶部と、
前記抽出部で抽出した数字の前記特定部位の寸法を計測する計測部と、
前記計測部で計測した計測値と、前記記憶部に記憶された特徴情報とを照合する照合部と、
前記フォントパターン特定部での特定結果、及び、前記照合部の照合結果に基づいて、前記公文書の真贋を判定する判定部と、
を有する情報処理装置。
【請求項3】
前記記憶部に記憶された特徴情報が、前記公文書の交付時期及び交付場所を含む、適用数字が変更される可能性のある条件毎に、別々に記憶されている、請求項1又は請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
本人を確認するための公文書から、前記公文書の真贋判定に使用される数字を抽出し、
抽出した数字の特定部位の寸法を計測し、
計測した計測値と、予め記憶された前記数字の特定部位の寸法に関する特徴情報とを照合し、
照合結果に基づいて、前記公文書の真贋を判定する場合に、
前記本人を確認するための公文書が、個人情報が記載された運転免許証であり、かつ、数字のみが羅列されている免許証番号項目欄から、前記数字が抽出され、
前記運転免許証に適用される限定された書体毎に、前記特徴情報を記憶しており、
当該運転免許証の書体を特定し、特定した書体に基づき読み出した前記特徴情報と、前記計測値とを照合する、
情報処理方法。
【請求項5】
コンピュータを、
請求項1~請求項3の何れか1項記載の情報処理装置の各部として動作させる、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本人確認のために使用される情報が記録された書類の真贋を判定するための情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、契約の際に、本人を確認するための公文書を提示し、本人確認がとれることで、契約を実行することがある。
【0003】
特許文献1には、証明書の交付地域及び交付期間に関連付けて、証明書に含まれる文字の登録文字パターンを記録しておき、画像に含まれる文字に基づき証明書の交付地域及び交付時期に関連付けられた登録文字パターンを取得し、画像に含まれる文字と登録文字パターンが一致するか否かを判定する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、本人を確認するための公文書として運転免許証が例示されており、文字フォント色情報等の運転免許証の特徴データを発行機関、発行日とともにデータベースで管理し、提示された運転免許証の真偽判定を行う際には当該運転免許証の画像データに基づき発行機関、発行日を文字認識し、データベースから特徴データを抽出する技術が記載されている。
【0005】
特許文献3には、同一種類の硬貨の画像を複数合成した平均画像をテンプレートが画像として、照合対象物である硬貨が偽造硬貨であるか否かを判断する技術が記載されている。
【0006】
特許文献4には、本人を確認するための公文書として運転免許証が例示されており、複数の運転免許証の外観的特徴(レイアウト:表面に印刷された文字、画像、印章、記号等の配列、位置、文字フォント)を抽出し、真贋判定ロジックテンプレートとして保持し、真贋判定ロジックテンプレートを用いて、スキャニングされた運転免許証が本物であるか偽造されたものであるかの判定をする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-003504号公報
【文献】特開2004-118643号公報
【文献】WO2006/006356号公報
【文献】特開2011-178075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本人を確認するための公文書として利用頻度が高い運転免許証は、採用されているフォントが、都道府県の各公安委員会や、公安委員会の発行場所、交付時期によって様々であり、例えばテンプレートとの比較による真贋チェックが難しい。
【0009】
また、運転免許証の文字フォント仕様については、公安委員会から正式に開示されておらず、全国各地の運転免許証のレイアウトやの文字特徴を、一律チェックすることは困難である。
【0010】
本発明は、本人を確認するための公文書に採用される文字フォントのテンプレートとの比較による基本チェックに加え、限られた種類である数字の形態チェックを実行することで、真贋チェックの精度を向上することができる情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る情報処理装置は、本人を確認するための公文書から、前記公文書の真贋判定に使用される数字を抽出する抽出部と、前記数字の特定部位の寸法に関する特徴情報を記憶する記憶部と、前記抽出部で抽出した数字の前記特定部位の寸法を計測する計測部と、前記計測部で計測した計測値と、前記記憶部に記憶された特徴情報とを照合する照合部と、照合部の照合結果に基づいて、前記公文書の真贋を判定する判定部とを有し、前記本人を確認するための公文書が、個人情報が記載された運転免許証であり、かつ、数字のみが羅列されている免許証番号項目欄から、前記数字が抽出され、前記記憶部が、前記運転免許証に適用される限定された書体毎に、前記特徴情報を記憶しており、前記照合部が、当該運転免許証の書体を特定し、特定した書体に基づき読み出した前記特徴情報と、前記計測値とを照合する、ことを特徴としている。
また、本発明に係る情報処理装置は、本人を確認するための公文書から、整合性を判定するための記載項目であるデータ項目に対してOCR処理を行うOCR処理部と、前記OCR処理を行ったデータ項目の整合性を判定する整合性確認部と、前記整合性確認部で整合性有りと判定された場合、前記データ項目の一部に対してフォントパターンを特定するフォントパターン特定部と、前記公文書の真贋判定に使用される数字を抽出する抽出部と、前記数字の特定部位の寸法に関する特徴情報を記憶する記憶部と、前記抽出部で抽出した数字の前記特定部位の寸法を計測する計測部と、前記計測部で計測した計測値と、前記記憶部に記憶された特徴情報とを照合する照合部と、前記フォントパターン特定部での特定結果、及び、前記照合部の照合結果に基づいて、前記公文書の真贋を判定する判定部と、を有している。
【0012】
本発明に係る情報処理方法は、本人を確認するための公文書から、前記公文書の真贋判定に使用される数字を抽出し、抽出した数字の特定部位の寸法を計測し、計測した計測値と、予め記憶された前記数字の特定部位の寸法に関する特徴情報とを照合し、照合結果に基づいて、前記公文書の真贋を判定する場合に、前記本人を確認するための公文書が、個人情報が記載された運転免許証であり、かつ、数字のみが羅列されている免許証番号項目欄から、前記数字が抽出され、前記運転免許証に適用される限定された書体毎に、前記特徴情報を記憶しており、当該運転免許証の書体を特定し、特定した書体に基づき読み出した前記特徴情報と、前記計測値とを照合する、ことを特徴としている。
【0013】
本発明に係る情報処理プログラムは、コンピュータを、情報処理装置の各部として動作させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した如く本発明では、本人を確認するための公文書に採用される文字フォントのテンプレートとの比較による基本チェックに加え、所定条件に合致した特徴文字の形態チェックを実行することで、真贋チェックの精度を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)は本実施の形態に係る手続審査システムの概略図、(B)は審査端末装置の出力デバイス(モニタ)に表示される運転免許証チェック結果画像の正面図である。
【
図2】本実施の形態に係る偽造判別支援サーバー(制御部)で実行される偽造判定チェックのための処理を機能別に分類した機能ブロック図である。
【
図3】(A)は運転免許証画像の正面図、(B)は項目毎に分類したときの区画枠を重ねた運転免許証画像の正面図である。
【
図4】審査端末装置、審査管理制御装置、及び偽造判別支援サーバーの間で実行される通信プロトコル図である。
【
図5】本実施の形態の実施例に係り、(A)は本実施例で選択される項目(免許証番号)の区画枠を重ねて表示した運転免許証画像の正面図、(B)は
図5(A)で選択した区画枠(免許証番号)の拡大図である。
【
図6】運転免許証に適用される書体A、書体B、及び書体C毎に、真贋判別対象の数字を分類した一覧図である。
【
図7】(A)は(C)は
図5(B)から抽出した免許証番号(数字)の真贋判別手順の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本実施の形態に係る手続審査システム10の概略図が示されている。
【0017】
手続審査システム10は、例えば、金融機関における手続きを行う前段階において、依頼者が本人であるか否かの審査を行うためのシステムである。
【0018】
依頼者12は、携帯している通信端末装置(スマートフォン、PC「パーソナルコンピュータ」等)14から、例えば、専用アプリケーションプログラムを立ち上げて、手続きを依頼すると、当該手続のための審査に関する情報がネットワーク16の無線基地局16Aを介して、審査端末装置18へ通知されるようになっている。
【0019】
審査端末装置18は、入力デバイス(キーボード、マウス等)18A、出力デバイス(モニタ、プリンタ等)18B、及び制御部18Cで構成されている。なお、入力デバイス18Aと出力デバイス18Bの機能を兼ね備えたタッチパネルを用いてもよい。また、図示は省略したが、制御部18Cは、CPU、RAM、ROM、入出力ポート、及びこれらを接続するバスを備えたマイクロコンピュータが主体として構成されている。
【0020】
審査端末装置18は、複数台設置されて、それぞれオペレータ(図示省略)が対峙しており、複数の依頼者12からの手続きに対応する。オペレータは、通知を受けた情報の内、本人を確認するための公文書を含む審査対象データを、ネットワーク16を介して、審査管理制御装置20に対して、審査を依頼する。
【0021】
本実施の形態では、本人を確認するための公文書として、依頼者12から送信された運転免許証画像情報が適用される。運転免許証画像情報は、
図3(A)に示される如く、運転免許証画像22(表側)である。
【0022】
審査管理制御装置20は、制御部20A及びデータベース20Bを備えている。図示は省略したが、制御部20Aは、CPU、RAM、ROM、入出力ポート、及びこれらを接続するバスを備えたマイクロコンピュータが主体として構成されている。
【0023】
データベース20Bには、審査手続きを実行するための情報が予め格納されている。
【0024】
審査管理制御装置20では、提示された運転免許証画像22が本物であることを前提に審査を行うが、当該審査の前に、提示された運転免許証画像22の内容(情報)が偽造されたものか否かを、ネットワーク16を介して、偽造判別支援サーバー24へ依頼するようになっている。
【0025】
すなわち、審査管理制御装置20から偽造判別支援サーバー24へ、運転免許証画像情報(運転免許証画像22)が送信される。
【0026】
偽造判別支援サーバー24は、制御部24A及びデータベース24Bを備えている。
【0027】
データベース24Bには、運転免許証画像22に基づき偽造の有無を判定(真贋判定)するためのチェック項目を格納する各種格納部が設けられている(詳細後述)。
【0028】
偽造判別支援サーバー24では、受け付けた運転免許証画像22に基づいて、大きく分類して、2種類の事項(整合性、画像識別)を実行する。
【0029】
偽造判別支援サーバー24では、整合性及び画像識別における偽造の有無の統括チェック結果を審査管理制御装置20へ返信する。
【0030】
審査管理制御装置20では、審査端末装置18から受けた審査対象データの真贋判定情報を返信する。
【0031】
審査端末装置18では、審査管理制御装置20から送られた真贋判定情報が出力デバイス18B(モニタ)に表示されるようになっている。
【0032】
この出力デバイス18B(モニタ)に表示される情報は、真贋を特定するものではなく、
図1(B)に示される如く、偽造判別支援サーバー24で実行したチェック項目毎の偽造の可能性度合いが表示されるようになっている。
【0033】
例えば、
図1(B)では、審査端末装置18の出力デバイス18B(モニタ)にチェック項目とそれぞれのチェック項目の結果を「○」又は「×」で表示している。従って、チェック項目毎に「○」又は「×」が表示されるため、最終的な真贋判定は、審査端末装置18に対峙して操作しているオペレータに委ねられることになる。言い換えれば、偽造判別支援サーバー24が、審査端末装置18に対峙して操作しているオペレータが真贋判定するための情報を提供することで、当該オペレータの熟練度に関わらず、複数のオペレータの真贋判定を平均化することが可能となる。
【0034】
なお、表示する結果は、「○」及び「×」に限らず、3段階以上に分類してもよいし、さらに、数値(パーセンテージ)で偽造の可能性を表示するようにしてもよい。
【0035】
また、
図1(B)の表示画面の他、複数頁に亘り、真贋判定の詳細度合いを変えて、オペレータの熟練度合いによって、画面を切り替えるようにしてもよい。
【0036】
(偽造判別支援サーバー24によるチェックの詳細)
【0037】
図2は、偽造判別支援サーバー24の制御部24Aで実行される偽造判定チェックのための処理を機能別に分類した機能ブロック図である。
【0038】
なお、各ブロックは、偽造判別支援サーバー24の制御部24Aのハード構成を限定するものではなく、マイクロコンピュータのCPUで実行される処理プログラムにより、ソフトウェアとして各機能が実行されものであってもよい。
【0039】
また、マイクロコピュータのように統括してプログラムを処理するのではなく、制御部24Aを適宜分割した機能毎に構成されたASIC等のICチップで構成し、当該ICチップが相互に連携して真贋判定動作を実行する構成であってもよい。
【0040】
図2に示される如く、偽造判別支援サーバー24(制御部24A)は、画像情報受付部50を備えており、審査管理制御装置20からイメージデータとして、運転免許証画像22(
図3(A)参照)を受け付ける。
【0041】
画像情報受付部50で受け付けた運転免許証画像22は、受付画像情報格納部52に一時的に格納されるようになっている。
【0042】
受付画像情報格納部52は、OCR処理部54及び画像識別処理部56に接続されている。
【0043】
OCR処理部54では、受付画像情報格納部52に格納されている運転免許証画像22の各項目(後述する、(a)から(j)の10項目)の文字画像をOCR処理によって文字データを取得する。
【0044】
OCR処理部54は、整合性確認部58に接続されており、取得した文字データを整合性確認部58へ送出する。
【0045】
整合性確認部58には、データベース24Bの単一データチェック項目格納部60から単一データチェック項目に関する情報が読み出されると共に、データ間相関チェック項目格納部62からデータ間相関チェック項目に関する情報が読み出される。
【0046】
整合性確認部58では、以下のような整合性処理を実行し、整合性を確認する。
【0047】
(1) 整合性処理
【0048】
図3(B)に示される如く、運転免許証画像22を以下の11項目(a)~(k)に分類する。
(a) 氏名
(b) 住所
(c) 生年月日
(d) 交付年月日
(e) 有効期限日
(f) 免許証番号
(g) 公安委員会種
(h) 免許の条件等
(i) 免許取得年月日
(j) 免許の種類欄
(k) 写真(画像)
【0049】
なお、『(h) 免許の条件』において、一例として、「眼鏡等」等が記載される場合があるが、空欄となる場合もある。
【0050】
整合性を判定する項目として、項目(k)を除く(a)から(j)までの10項目について、OCR処理部54でOCR処理を施すことでデータ化し、単一のデータ項目によるチェックと、2つ以上のデータ項目での相関チェックを実行する。
【0051】
例えば、単一のデータ項目によるチェックとは、項目(c)の生年月日において、日付の存在チェック、未来日チェック、16歳未満チェック等が実行される。
【0052】
また、例えば、2つのデータでの相関チェックとは、項目(c)の生年月日と項目(i)の免許取得年月日との相関で、生年月日から最も早い取得年月日まで16年経過しているか否かのチェック等が実行される。
【0053】
整合性のチェックは、上記10項目の全てを用いて、合計20種類程度実行することが好ましい。
【0054】
整合性確認部58は、結果統括部64に接続され、整合性チェック結果情報を送出する。
【0055】
また、整合性確認部58は、画像識別処理部56に接続されている。整合性確認部58は、整合性チェック結果に基づいて、画像識別処理部56に対して、画像識別処理の実行の要否に関する情報を出力する。
【0056】
すなわち、整合性のチェックの時点で、偽造はなく正常と判断された場合は、さらに、厳密に偽造判別するべく、画像識別処理を必要とする情報を出力する。
【0057】
なお、整合性チェック結果によらず、画像識別処理を実行するようにしてもよい。
【0058】
画像識別処理部56は、整合性確認部58から画像識別処理を必要とする情報を受けると、受付画像情報格納部52から運転免許証画像22を読み出し、以下に示す画像識別処理を実行する。
【0059】
(2) 画像識別処理
【0060】
前述した(1)の整合性において、整合性がとれていると判定された場合に、画像識別を実行する。なお、整合性の有無に関わらず、画像識別を実行することを否定するものではない。
【0061】
画像識別処理部56では、まず、データベース24Bのフォントパターンテンプレート格納部66から、フォントパターンテンプレート情報を読み出し、運転免許証画像22の全体として、採用されるフォントパターンのテンプレート判定が実行される。
【0062】
本出願人は、運転免許証に採用されるフォントパターンが、数種類のフォントパターンに集約されることを見出した。このため、当該フォントパターンのテンプレートを用いて、偽造判定する運転免許証画像22に採用されているフォントを特定する。
【0063】
図3(B)に示される如く、画像識別に基づく判定の対象項目としては、運転免許証画像22を上記10項目の内、(a) 氏名、(b) 住所、及び、(f) 免許証番号、及び、(k) 写真(画像)を適用する。
【0064】
画像識別処理部56では、データベース24Bのチェック項目格納部68から、イメージデータチェック情報が読み出され、それぞれのチェックが実行される。
【0065】
(No.1) 単一文字におけるスペース間隔チェック
【0066】
本発明の特徴として採用するチェック項目であり、項目(b)に表示される住所の文字の中から、データベース24Bの特徴文字情報格納部74に格納されている特徴文字を抽出して、当該特徴文字を形成する線と線の間隔等を測定し(「pixel」)、計測した値は、偽造確認部70へ送出される。
【0067】
偽造確認部70は、データベース24Bの度数分布格納部72から予めデータベース化された、フォントパターンの度数分布が読み出され、計測値が許容範囲か否かを判断する。特徴文字は、各公安委員会で頻出する文字から選択される。
【0068】
(No.2) 免許証番号のフォントチェック
【0069】
項目(f)に表示されている免許証番号の各数字を、運転免許証に採用される3種類のフォントパターンの何れに属するかを判断する。
【0070】
数字は、「0」から「9」の10種類であり、また、免許証番号は、他の項目に採用される数字と異なるフォントが採用されており、文字(漢字)に比べて、フォントの違いを照合しやすい。なお、『(No.2) 免許証番号のフォントチェック』におけるチェック手順についての詳細は後述する。
【0071】
偽造確認部70は、結果統括部64に接続されており、画像識別処理部56で実行された画像認識処理に基づく偽造確認結果を結果統括部64へ送出する。
【0072】
結果統括部64では、整合性確認部58と偽造確認部70との結果を統括して、チェック結果送出部78を介して、審査管理制御装置20へ送出する。
【0073】
これにより、審査管理制御装置20から審査端末装置18へチェック結果が送出され、
図1(B)に示されるように出力デバイス18B(モニタ)にチェック結果が表示される。
【0074】
以下に、本実施の形態の作用を、
図4に示す、審査端末装置18、審査管理制御装置20、及び偽造判別支援サーバー24の間で実行される通信プロトコルに基づき、説明する。なお、以下の処理手順は、整合性確認及び画像識別処理を実行する一例であり、この処理手順は限定されるものではない。
【0075】
依頼者12から審査手続きの依頼があると、審査端末装置18では、まず、未審査データを照合し(ステップ100)、次いで、審査対象データを選択する(ステップ102)。
【0076】
審査対象データが存在した場合、審査端末装置18は、審査管理制御装置20に対して、審査対象データを送信する(ステップ104)。この送信を受けた審査管理制御装置20は、審査対象データに含まれる、本人を確認するための公文書である運転免許証画像22を偽造判別支援サーバー24へ送信する(ステップ106)。
【0077】
偽造判別支援サーバー24では、受け付けた運転免許証画像22の各項目に基づいて、整合性チェック(単一データチェック及びデータ間相関チェック)が実行され(ステップ108)、画像識別処理の要否を判断し、判断結果を結果統括部64へ送出する(ステップ110)。
【0078】
画像識別処理が必要と判断された場合は(ステップ112)、画像識別処理を実行する(ステップ114)。画像識別処理では、文字間スペースチェック、単一文字形状チェック、番号フォントチェック、登録済画像照合チェック、及び加工有無チェックを実行される。
【0079】
また、画像識別処理が不要と判断された場合は(ステップ116)、画像識別処理をスキップする(ステップ118)。
【0080】
結果統括部64では、整合性確認におけるチェック結果のみ、又は整合性確認と画像識別処理のチェック結果を統括する(ステップ118)。
【0081】
偽造判別支援サーバー24では、チェック結果を審査管理制御装置20へ返信し(ステップ120)、次いで、審査管理制御装置20が、審査端末装置18へ審査対象データの真贋判定情報を返信する(ステップ122)。
【0082】
審査端末装置18では、チェック結果が出力デバイス18B(モニタ)に表示され、オペレータは、この表示を確認し(ステップ124)、チェック結果情報に基づいて、最終的な真贋を判定する(ステップ126)。
【0083】
以上説明したように本実施の形態では、審査端末装置18に対峙するオペレータ毎の判断に、ばらつきが生じていた本人確認のための運転免許証の真贋判定に必要な情報を、偽造判別支援サーバー24で作成するようにした。すなわち、偽造判別支援サーバー24では、本人を確認するための公文書としての運転免許証に記憶された文字データの整合性、及び画像の形態を、データベース化されたフォントパターン、チェック項目に基づく計測値の度数分布等に基づいて、偽造の有無を確認し、そのチェック結果を審査端末装置18に出力デバイス18Bに表示する。これにより、複数のオペレータの真贋判定を熟練度合いに関わらず平均化することができる。
【0084】
(実施例)
【0085】
上記実施の形態では、偽造判別支援サーバー24における、全般的な真贋判定処理(整合性確認及び画像識別処理)を説明した。特に、画像識別処理においては、5種類のイメージデータチェック情報を読み出し、それぞれのチェックを実行した。
【0086】
本実施例では、画像識別処理のチェック項目内、本発明の特徴的チェック要件である、『(No.2) 免許証番号のフォントチェック』についての詳細のチェック手順を
図5~
図7に従い説明する。
【0087】
図5(A)に示される如く、『(No.2) 免許証番号のフォントチェック』では、「(f) 運転免許証」項目を選択している。
【0088】
「(f) 運転免許証」を選択した理由は、運転免許証を発行する各公安委員会は、数字のみの記載であり、最大で10種類(「0」~「9」まで)の数字の羅列であり、当該10パターンの数字の真贋を判別すればよいことにある。
【0089】
また、運転免許証は、公安委員会毎に適用される書体(フォント)が異なるが、
図6に示す例のような書体に分類できることがわかった。そこで、本実施例では、
図5(B)に示される如く、特定の公安委員会における「(f) 免許証番号」を選択し、免許証番号の真贋判別手順に基づき、画像識別処理の内、『(No.2) 免許証番号のフォントチェック』を実行した。
【0090】
図7(A)に示される如く、『(No.2) 免許証番号のフォントチェック』のための最初のステップ150では、データベース24Bのフォントパターンテンプレート格納部66から、テンプレートを読み出し、抽出された免許証番号全体(
図5(B)参照)から、書体を特定する(ステップ152)。
【0091】
次のステップ154では、数字毎、すなわち、「0」から「9」までの10種類の数字に対して、それぞれ真贋判別を実行する。
この真贋判別は、
図6に示される如く、書体毎に分類した複数の数字の平均画像に基づいてチェックする。
【0092】
一例として、偽造判別支援サーバー24のデータベース24Bには、度数分布格納部72が設けられており、この度数分布格納部72に格納されている、各書体の数字の特定部位の各計測値の度数分布特性図(ビッグデータ)を読み出す(
図7(B)参照)。
図7(B)に示される如く、正規分布であれば、特性図のピーク値が平均値となる場合が多い。
【0093】
次に、真贋判定対象の数字の特定部位の計測値が、
図7(B)の度数分布の特性図の何処に属するかによって真贋を判別する(ステップ154)。例えば、
図7(B)に予め許容範囲を設定しておき、許容範囲か否かによって、偽造の有無を判定する(ステップ156)。
【0094】
ここで、
図6に示される如く、書体毎に分類された数字の中で、点線丸印で囲まれた部位は、
図7(A)の度数分布の許容範囲から逸脱していることを示している。言い換えれば当該数字は、細工された可能性があると判断でき、真贋判別では、「贋物」と判別する。その後の偽造判定では、そのまま偽造(「×」)としてもよいが、許容範囲からの逸脱度合いによって、「△」や、偽造度合い60%等としてもよい。また、免許証番号の全数字の真贋比率によって、偽造を判別してもよい。
【0095】
なお、本実施例では、免許証番号の全ての桁の数字を対象としたが、背景に斜線が付けられている数字については、真贋判別に誤差を生じやすいため、除外してもよい。
【0096】
また、偽造判別支援サーバー24のデータベース24Bに格納される照合のためのデータは、運転免許証の交付時期により、各公安委員会で適用するフォントが変更される場合があるため、運転免許証に記載されている交付日に基づいて、読み出す照合データを選択してもよい。
【符号の説明】
【0097】
10 手続審査システム
12 依頼者
14 通信端末装置
16 ネットワーク
16A 無線基地局
18 審査端末装置
18A 入力デバイス
18B 出力デバイス
18C 制御部
20 審査管理制御装置
22 運転免許証画像
20A 制御部
20B データベース
24 偽造判別支援サーバー
24A 制御部
24B データベース
50 画像情報受付部
52 受付画像情報格納部
54 OCR処理部
56 画像識別処理部
58 整合性確認部
60 単一データチェック項目格納部
62 データ間相関チェック項目格納部
64 結果統括部
66 フォントパターンテンプレート格納部
68 チェック項目格納部
70 偽造確認部
72 度数分布格納部
74 特徴文字情報格納部
76 登録済画像格納部
78 チェック結果送出部