IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大真空の特許一覧

<>
  • 特許-圧電発振器 図1
  • 特許-圧電発振器 図2
  • 特許-圧電発振器 図3
  • 特許-圧電発振器 図4
  • 特許-圧電発振器 図5
  • 特許-圧電発振器 図6
  • 特許-圧電発振器 図7
  • 特許-圧電発振器 図8
  • 特許-圧電発振器 図9
  • 特許-圧電発振器 図10
  • 特許-圧電発振器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】圧電発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20240214BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 A
H03H9/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020058472
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021158585
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】森脇 徹
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186128(JP,A)
【文献】特開平09-321184(JP,A)
【文献】特開2013-145932(JP,A)
【文献】特開2015-139053(JP,A)
【文献】特開2011-180146(JP,A)
【文献】特開平11-340351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30- 5/42
H03H 9/00- 9/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックに比べて平坦度が良好であって、かつ、配線パターンが形成された絶縁性の基板と、
圧電振動子と、
前記絶縁性の基板に搭載された集積回路素子と、
前記圧電振動子を加熱する発熱体と、
前記集積回路素子が搭載された前記絶縁性の基板を収容して気密封止する容器とを備え、
前記集積回路素子は、複数の電極パッドを有すると共に、前記電極パッドがバンプを介して前記絶縁性の基板の前記配線パターンにフリップチップ接続され、
前記容器は、収容凹部を有するセラミックからなる容器本体と、前記収容凹部を覆って気密封止する蓋体とを備え、
前記絶縁性の基板は、前記容器本体の前記収容凹部の内底面にダイボンディングされている、
ことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記絶縁性の基板が、水晶基板又はガラス基板である、
請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記圧電振動子は、前記絶縁性の基板に搭載された前記集積回路素子に搭載されて、前記絶縁性の基板と共に、前記容器に収容されて気密封止される、
請求項1または2に記載の圧電発振器。
【請求項4】
前記発熱体は、前記集積回路素子に搭載された前記圧電振動子に搭載されたヒータ基板であり、該ヒータ基板は、前記絶縁性の基板と共に、前記容器に収容されて気密封止される、
請求項3に記載の圧電発振器。
【請求項5】
前記ヒータ基板の抵抗パターンと前記絶縁性の基板の前記配線パターンとが、ボンディングワイヤーによって電気的に接続されている、
請求項4に記載の圧電発振器。
【請求項6】
前記絶縁性の基板には、受動部品が搭載され、該受動部品は、前記絶縁性の基板と共に、前記容器に収容されて気密封止される、
請求項3ないし5のいずれか一項に記載の圧電発振器。
【請求項7】
前記圧電振動子は、両主面に励振電極がそれぞれ形成された圧電振動板と、該圧電振動板の一方の主面の励振電極を覆って封止する第1封止部材と、前記圧電振動板の他方の主面の励振電極を覆って封止する第2封止部材とを備え、
前記圧電振動板は、前記両主面に、接合用金属膜をそれぞれ有し、前記第1封止部材は、前記圧電振動板の前記一方の主面の前記接合用金属膜に対応する接合用金属膜を有し、前記第2封止部材は、前記圧電振動板の前記他方の主面の前記接合用金属膜に対応する接合用金属膜を有し、
前記第1封止部材と前記圧電振動板とが、前記接合用金属膜によって接合され、前記第2封止部材と前記圧電振動板とが、前記接合用金属膜によって接合され、前記圧電振動板の前記両主面の前記励振電極を含む振動部が、前記第1封止部材及び前記第2封止部材によって気密封止される、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の圧電発振器。
【請求項8】
前記収容凹部に収容された前記絶縁性の基板の前記配線パターンと前記容器本体の内面に形成された接続電極とが、ボンディングワイヤーによって電気的に接続されている、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の圧電発振器。
【請求項9】
温度センサを備え、
前記集積回路素子は、前記温度センサの検出温度に基づいて、前記発熱体の発熱を制御する、
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶発振器などの圧電発振器では、パッケージ内に圧電振動子及び発振回路を構成するICチップを気密に封止している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の圧電発振器では、ICチップは、パッケージの底面にフリップチップ実装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-354587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、高機能化に伴って集積回路素子であるICチップは、その電極パッドの数が増えると共に、サイズが大きくなっている。
【0006】
一方、ICチップが搭載されるパッケージは、一般にセラミックから構成されており、かかるセラミックパッケージでは、サイズが大きくなると、ICチップが実装される底面に反りを生じ、平坦度が悪くなる。
【0007】
このため、ICチップを、パッケージの底面にバンプによってフリップチップ実装する際に、複数の電極パッドの中には、バンプの未接続が生じたり、あるいは、バンプの未接続が生じないように、実装時に全体に印加する荷重を大きくすると、底面の平坦度が悪いために、電極パッド間で印加される荷重に差が生じ、大きな荷重が印加された電極パッドでは、クラックが生じることがある。
【0008】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであって、圧電発振器において、集積回路素子の接続の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0010】
すなわち、本発明の圧電発振器は、セラミックに比べて平坦度が良好であって、かつ、配線パターンが形成された絶縁性の基板と、圧電振動子と、前記絶縁性の基板に搭載された集積回路素子と、前記圧電振動子を加熱する発熱体と、
前記集積回路素子が搭載された前記絶縁性の基板を収容して気密封止する容器とを備え、前記集積回路素子は、複数の電極パッドを有すると共に、前記電極パッドがバンプを介して前記絶縁性の基板の前記配線パターンにフリップチップ接続され、前記容器は、収容凹部を有するセラミックからなる容器本体と、前記収容凹部を覆って気密封止する蓋体とを備え、前記絶縁性の基板は、前記容器本体の前記収容凹部の内底面にダイボンディングされている。
【0011】
本発明によれば、複数の電極パッドを有する集積回路素子は、絶縁性の基板の形成された配線パターンにバンプを介してフリップチップ接続されるが、この絶縁性の基板は、セラミックに比べて平坦度が良好なので、実装時に印加される荷重が、複数の電極パッド間でばらつくのが抑制されて、安定な接続が可能となり、集積回路素子の接続の信頼性が向上する。
また、セラミックからなる容器本体の収容凹部の底面の平坦度が悪くても、収容凹部の底面に、平坦度が良好な絶縁性の基板を搭載し、この絶縁性の基板の配線パターンに、集積回路素子の電極パッドをフリップチップ接続するので、接続の際に印加する荷重が、複数の電極パッド間でばらつくのが抑制されて、安定な接続が可能となる。
【0012】
本発明の圧電発振器の好ましい実施態様では、前記絶縁性の基板が、水晶基板又はガラス基板である。
【0013】
この実施態様によると、水晶基板又はガラス基板からなる絶縁性の基板は、セラミック基板やセラミックパッケージの内底面のようにセラミックからなる平面に比べて平坦度が良好である。このため、絶縁性の基板に形成された配線パターンに、集積回路素子をフリップチップ接続する際に、印加される荷重が、複数の電極パッド間でばらつくのが抑制されて、安定な接続が可能となる。
【0014】
本発明の圧電発振器の他の実施態様では、前記圧電振動子は、前記絶縁性の基板に搭載された前記集積回路素子に搭載されて、前記絶縁性の基板と共に、前記容器に収容されて気密封止される。
【0015】
この実施態様によると、圧電振動子は、絶縁性の基板に搭載された集積回路素子に搭載される、すなわち、絶縁性の基板上に、集積回路素子及び圧電振動子が積層されて搭載されるので、絶縁性の基板上に、集積回路素子及び圧電振動子を個別に搭載するのに比べて、絶縁性の基板上における集積回路素子及び圧電振動子の占有面積を小さくすることができる。
【0016】
これによって、占有面積が小さくなった分、絶縁性の基板の平面サイズを小さくして小型化を図ることができる、あるいは、絶縁性の基板上の占有されていない領域に、他の部品を搭載することができる。
【0017】
本発明の圧電発振器の更に他の実施態様では、前記発熱体は、前記集積回路素子に搭載された前記圧電振動子に搭載されたヒータ基板であり、該ヒータ基板は、前記絶縁性の基板と共に、前記容器に収容されて気密封止される。
【0018】
この実施態様によると、集積回路素子、水晶振動子、及び、発熱体を、同一の容器内に収容して気密に封止することができるので、外部の温度変化等の影響を抑制することができ、外部の温度等が変化しても、圧電発振器の特性変動を抑制して発振周波数の安定化を図ることができる。また、発熱体としてのヒータ基板は、圧電振動子に搭載されるので、圧電振動子を効率的に加熱することができる。
【0019】
本発明の圧電発振器の好ましい実施態様では、前記ヒータ基板の抵抗パターンと前記絶縁性の基板の前記配線パターンとが、ボンディングワイヤーによって電気的に接続されている。
【0020】
この実施態様によると、絶縁性の基板上の集積回路素子に搭載された圧電振動子上に搭載されたヒータ基板を、絶縁性の基板の配線パターンに、ワイヤーボンディングによって容易に接続することができる。
【0021】
本発明の圧電発振器の他の実施態様では、前記絶縁性の基板には、受動部品が搭載され、該受動部品は、前記絶縁性の基板と共に、前記容器に収容されて気密封止される。
【0022】
この実施態様によると、絶縁性の基板上に、集積回路素子及び水晶振動子を積層して搭載することによって、絶縁性の基板上に、受動部品の搭載スペースを確保して受動部品を搭載すると共に、絶縁性の基板に搭載された集積回路素子、水晶振動子及び、受動部品を同一の容器に収容して気密に封止することができる。これによって、外部の温度変化等の影響を抑制することができ、外部の温度等が変化しても、圧電発振器の特性変動を抑制して発振周波数の安定化を図ることができる。
【0023】
本発明の圧電発振器の一実施態様では、前記圧電振動子は、両主面に励振電極がそれぞれ形成された圧電振動板と、該圧電振動板の一方の主面の励振電極を覆って封止する第1封止部材と、前記圧電振動板の他方の主面の励振電極を覆って封止する第2封止部材とを備え、前記圧電振動板は、前記両主面に、接合用金属膜をそれぞれ有し、前記第1封止部材は、前記圧電振動板の前記一方の主面の前記接合用金属膜に対応する接合用金属膜を有し、前記第2封止部材は、前記圧電振動板の前記他方の主面の前記接合用金属膜に対応する接合用金属膜を有し、前記第1封止部材と前記圧電振動板とが、前記接合用金属膜によって接合され、前記第2封止部材と前記圧電振動板とが、前記接合用金属膜によって接合され、前記圧電振動板の前記両主面の前記励振電極を含む前記振動部が、前記第1封止部材及び前記第2封止部材によって気密封止される。
【0024】
この実施態様によると、振動部が気密封止された圧電振動子を、容器に気密封止することによって、圧電振動子の振動部は、二重に気密封止されることになる。これによって、圧電振動子の振動部に対する外部の温度変化等の影響を効果的に抑制することができ、外部の温度等が変化しても、圧電発振器の特性変動を抑制して発振周波数の安定化を図ることができる。
【0025】
また、圧電振動子は、両主面に励振電極が形成された圧電振動板と、一方の主面の励振電極を覆って封止する第1封止部材と、他方の主面の励振電極を覆って封止する第2封止部材とを、互いの接合用金属膜を接合させて積層する。したがって、圧電振動片を、収容凹部を有する容器内に収容し、導電性接着剤によって、容器内の電極に接合して気密封止するパッケージ構造のように、導電性接着剤を使用する必要がない。これによって、導電性接着剤から発生するガスの影響を受けることがなくなり、周波数特性が安定する。
【0026】
更に、圧電振動子は、圧電振動板及び第1,第2封止部材の三層の積層構造であるので、上記パッケージ構造に比べて、薄型化(低背化)を図ることができる。
【0029】
本発明の圧電発振器の更に他の実施態様では、前記収容凹部に収容された前記絶縁性の基板の前記配線パターンと前記容器本体の内面に形成された接続電極とが、ボンディングワイヤーによって電気的に接続されている。
【0030】
この実施態様によると、集積回路素子等が搭載された絶縁性の基板の配線パターンと、容器本体の内面に接続された接続電極とが、ボンディングワイヤ-によって電気的に接続されるので、絶縁性の基板上に搭載された集積回路素子等と、容器本体の内面の接続電極とを、ボンディングワイヤ-を介して電気的に接続することができ、更に、容器本体の内部配線等を介して容器本体の外底面の外部接続端子、すなわち、当該圧電発振器の実装用の外部接続端子に電気的に接続することができる。
【0031】
本発明の圧電発振器の一実施態様では、温度センサを備え、前記集積回路素子は、前記温度センサの検出温度に基づいて、前記発熱体の発熱を制御する。
【0032】
この実施態様によると、温度センサで検出される温度に基づいて、発熱体の発熱を制御することによって、圧電振動子の温度を一定に制御することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、複数の電極パッドを有する集積回路素子は、絶縁性の基板に形成された配線パターンにバンプを介してフリップチップ接続されるが、この絶縁性の基板は、セラミックに比べて平坦度が良好なので、実装時に印加される荷重が、複数の電極パッド間でばらつくのが抑制されて、安定な接続が可能となり、集積回路素子の接続の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る水晶発振器の概略構成図である。
図2図2は水晶基板が搭載されたベースの平面図である。
図3図3はICチップ及びコンデンサが搭載されたベースの平面図である。
図4図4は、図1の水晶振動子の上下を反転させて、その側方から見た拡大断面図である。
図5図5図4の水晶振動板の両主面の概略平面図である。
図6図6図4の第1封止部材の両主面の概略平面図である。
図7図7図4の第2封止部材の両面の概略平面図である。
図8図8は水晶振動子が搭載されたベースの平面図である。
図9図9は水晶振動子に搭載されるヒータ基板の平面図である。
図10図10はヒータ基板が搭載され、ワイヤーボンディングされた状態を示すベースの平面図である。
図11図11は本発明の他の実施形態の図1に対応する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、圧電発振器として、外部の温度変化に影響されることなく高安定な周波数を出力する恒温槽型の水晶発振器に適用して説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係る恒温槽型の水晶発振器の概略構成図である。
【0037】
この実施形態の水晶発振器1は、配線パターンが形成された絶縁性の基板としての水晶基板4と、この水晶基板4上にフリップチップ実装された集積回路素子としてのICチップ3と、水晶基板4上に搭載された受動部品であるコンデンサ7と、ICチップ3上に搭載された水晶振動子2と、この水晶振動子2上に搭載されて、水晶振動子2を加熱する発熱体としてのヒータ基板5と、それらを気密封止する容器6とを備えている。水晶振動子2は、後述のように、水晶振動板14及びこの水晶振動板14の振動部を気密に封止する第1,第2封止部材15,16を備えている。
【0038】
この実施形態では、ICチップ3、水晶振動子2及びヒータ基板5は、その平面サイズが略等しく、図1に示されるように、水晶基板4上に積層されて搭載される。
【0039】
容器6は、上部が開口し、水晶振動子2等が搭載された水晶基板4を収容する収容凹部8aを有する容器本体としてのベース8と、シールリング9を介してベース8に接合されて上部の開口を閉塞して収容凹部8aを気密に封止する蓋体としてのリッド10とを備えている。
【0040】
ベース8は、平板状の底板部8bと、その外周上に形成された第1側壁部8cと、この第1側壁部8cの外周上に形成された第2側壁部8dとを備えており、内周壁に段部を有する収容凹部8aが構成される。
【0041】
気密封止は、真空雰囲気中または窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行われ、容器6の内部の空間は、真空または不活性ガス雰囲気とされる。
【0042】
ベース8は、アルミナ等のセラミック材料からなり、例えば、3枚のセラミックグリーンシートを積層して上部が開口した段部を有する凹状に一体焼成して構成される。
【0043】
水晶振動子2等が搭載される水晶基板4は、上面に配線パターンが形成されており、その下面が、ベース8の内底面に接着剤を介してダイボンディングされる。
【0044】
図2は、ベース8の内底面にダイボンディングされた水晶基板4の平面図である。水晶基板4の上面には、複数の配線パターン11が形成されている。
【0045】
この水晶基板4は、セラミックからなる平板、例えば、セラミック基板やセラミックパッケージの底板部に比べて、その平面の平坦度が良好である。
【0046】
このため、セラミックからなるベース8の内底面に反りがあっても、このベース8の内底面に、接着剤を介してダイボンディングされた水晶基板4の上面の平坦度は良好である。
【0047】
ICチップ3は、複数、例えば、10個以上の多数の電極パッドを備えており、水晶基板4の上面の配線パターン11に、図1に示されるように、金属バンプ13を介してフリップチップ接続される。
【0048】
上記のように水晶基板4は、平坦度が良好であるので、ICチップ3をフリップチップ実装する際に印加される荷重が、ICチップ3の複数の電極パッド間でばらつくのが抑制されて、安定な接続が可能となる。
【0049】
ベース8の第1側壁部8cの上面、すなわち、内周壁の段部の上面には、導体配線パターンからなる複数の接続電極12が形成されている。この接続電極12は、後述のようにボンディングワイヤー39によって、水晶基板4の配線パターン11に電気的に接続される。
【0050】
図3は、ベース8の内底面に接合された水晶基板4の上面に、フリップチップ実装されたICチップ3を示す図2に対応する平面図である。水晶基板4の上面の配線パターン11には、複数のコンデンサ7も半田等の接合材によって実装される。
【0051】
ICチップ3は、平面視矩形であって、発振回路、温度センサ、及び、温度センサの検出温度に基づいて、ヒータ基板5の発熱を制御する温度制御回路を内蔵している。
【0052】
水晶振動子2は、図1に示されるように、ICチップ3上に搭載される。水晶振動子2は、後述の外部接続端子が上方に臨むように、上下を反転させた状態で搭載される。
【0053】
図4は、図1の水晶振動子2を側方から見た拡大断面図であって、図1の水晶振動子2の上下を反転させた拡大断面図である。水晶振動子2は、圧電振動板である水晶振動板14と、水晶振動板14の一方の主面側を覆って気密に封止する第1封止部材15と、水晶振動板14の他方の主面側を覆って気密に封止する第2封止部材16とを備えている。
【0054】
この水晶振動子2では、水晶振動板14の両主面側に、第1,第2封止部材15,16がそれぞれ接合されて、いわゆるサンドイッチ構造のパッケージが構成される。この水晶振動子2のパッケージは、直方体であって、平面視矩形である。
【0055】
次に、水晶振動子2を構成する水晶振動板14及び第1,第2封止部材15,16の各構成について説明する。
【0056】
図5(a)は図4の水晶振動板14の一方の主面(図4では上面)側を示す概略平面図であり、図5(b)は水晶振動板14の一方の主面側から透視した他方の主面(図4では下面)側を示す概略平面図である。
【0057】
この実施形態の水晶振動板14は、ATカット水晶板であり、その両主面が、XZ´平面である。
【0058】
水晶振動板14は、略矩形の振動部20と、この振動部20の周囲を、空間(隙間)21を挟んで囲む外枠部22と、振動部20と外枠部22とを連結する連結部23とを備えている。振動部20、外枠部22及び連結部23は、一体的に形成されている。図示していないが、振動部20及び連結部23は、外枠部22に比べて薄く形成されている。
【0059】
振動部20の両主面には、一対の第1,第2励振電極24,25がそれぞれ形成されている。第1,第2励振電極24,25からは、第1,第2引出し電極26,27がそれぞれ引出されている。一方の主面側の第1引出し電極26は、連結部23を経て外枠部22に形成された接続用接合パターン28まで引出されている。他方の主面側の第2引出し電極27は、連結部23を経て外枠部22に形成された接続用接合パターン30まで引出されている。
【0060】
水晶振動板14の一方の主面には、水晶振動板14を第1封止部材15に接合するための接合用金属膜としての第1封止用接合パターン31が、外枠部22の全周に亘って、水晶振動板14の外周縁に略沿うように環状に形成されている。水晶振動板14の他方の主面には、水晶振動板14を第2封止部材16に接合するための接合用金属膜としての第2封止用接合パターン32が、外枠部22の全周に亘って、水晶振動板14の外周縁に略沿うように環状に形成されている。
【0061】
水晶振動板14には、両主面間を貫通する第1貫通電極29が形成されている。第1貫通電極29は、貫通孔の内壁面に金属膜が被着されて構成されている。第1貫通電極29は、環状の第1,第2封止用接合パターン31,32の内側であって、平面視矩形の水晶振動板14の一方の短辺寄りの外枠部22に形成されている。水晶振動板14の一方の主面側の第1貫通電極29の周囲には、第1励振電極24から引出された第1引出し電極26に連なる上記接続用接合パターン28が延びている。第1貫通電極29は、接続用接合パターン28に電気的に接続されており、したがって、第1貫通電極29は、第1励振電極24に電気的に接続されている。
【0062】
水晶振動板14の第1,第2励振電極24,25、第1,第2引出し電極26,27、第1,第2封止用接合パターン31,32、及び、接続用接合パターン28,30は、例えば、TiまたはCrからなる下地層上に、例えば、Auが積層形成されて構成されている。
【0063】
図6(a)は図4の第1封止部材15の一方の主面(図4では上面)側を示す概略平面図であり、図6(b)は第1封止部材15の一方の主面側から透視した他方の主面(図4では下面)側を示す概略平面図である。
【0064】
第1封止部材15は、水晶振動板14と同様のATカット水晶板からなる直方体の基板である。この第1封止部材15の一方の主面には、図6(a)に示すように、外周縁を除いて全面に熱伝導用の配線パターン48が形成されている。第1封止部材15の他方の主面には、図6(b)に示すように、水晶振動板14の一方の主面の第1封止用接合パターン31に接合して封止するための接合用金属膜としての第1封止用接合パターン33が、第1封止部材15の全周に亘って、第1封止部材15の外周縁に略沿うように環状に形成されている。
【0065】
第1封止部材15には、その両主面間を貫通して、一方の主面の配線パターン48と他方の主面の第1封止用接合パターン33とを繋ぐ貫通電極49が形成されている。この貫通電極49は、貫通孔の内壁面に金属膜が被着されて構成されている。
【0066】
配線パターン48及び第1封止用接合パターン33は、例えば、TiまたはCrからなる下地層上に、例えば、Auが積層形成されて構成されている。
【0067】
図7(a)は図4の第2封止部材16の一方の主面(図4では上面)側を示す概略平面図であり、図7(b)は第2封止部材16の一方の主面側から透視した他方の主面(図4では下面)側を示す概略平面図である。
【0068】
第2封止部材16は、水晶振動板14や第1封止部材15と同様のATカット水晶板からなる直方体の基板である。
【0069】
第2封止部材16の一方の主面には、図7(a)に示すように、水晶振動板14の他方の主面の第2封止用接合パターン32に接合して封止するための接合用金属膜としての第2封止用接合パターン34が、第2封止部材16の全周に亘って、第2封止部材16の外周縁に略沿うように環状にそれぞれ形成されている。
【0070】
第2封止部材16には、その両主面間を貫通する2つの第2,第3貫通電極42,43が、環状の第2封止用接合パターン34の内側に形成されている。各貫通電極42,43は、貫通孔の内壁面に金属膜が被着されて構成されている。
【0071】
第2封止部材16の環状の第2封止用接合パターン34の内側の一方の短辺寄りには、接続用接合パターン37が、水晶振動板14の他方の主面の第1貫通電極29に対応するように形成されている。水晶振動板14と第2封止部材16とが後述のように接合されることによって、第1貫通電極29は、接続用接合パターン37に接合されて電気的に接続される。第1貫通電極29は、図5(a)に示すように、水晶振動板14の第1励振電極24に電気的に接続されている。したがって、第2封止部材16の一方の主面の接続用接合パターン37は、水晶振動板14と第2封止部材16との接合によって、第1励振電極24に電気的に接続される。
【0072】
この接続用接合パターン37は、図7(a)に示すように、接続用配線パターン36を介して、他方の短辺寄りの第2貫通電極42に電気的に接続されている。したがって、第2貫通電極42は、水晶振動板14と第2封止部材16との接合によって、接続用配線パターン36、接続用接合パターン37、水晶振動板14の第1貫通電極29、接続用接合パターン28及び第1引出し電極26を介して第1励振電極24に電気的に接続される。
【0073】
第2封止部材16の一方の主面の第3貫通電極43は、水晶振動板14の他方の主面の接続用接合パターン30に対応するように形成されている。水晶振動板14の他方の主面の接続用接合パターン30は、図5(b)に示されるように、第2励振電極25に電気的に接続されている。したがって、水晶振動板14と第2封止部材16とが後述のように接合されることによって、第2封止部材16の第3貫通電極43は、水晶振動板14の接続用接合パターン30、第2引出し電極27を介して第2励振電極25に電気的に接続される。
【0074】
第2封止部材16の他方の主面には、図7(b)に示すように、外部に電気的に接続するための一対の第1,第2外部接続端子40,41が設けられている。第1,第2外部接続端子40,41は、第2封止部材16の長辺方向の両端側において、それぞれ短辺方向に沿って延びている。
【0075】
第1,第2外部接続端子40,41は、第2,第3貫通電極42,43にそれぞれ電気的に接続されている。第2,第3貫通電極42,43は、上記のように、水晶振動板14の第1,第2励振電極24,25にそれぞれ電気的に接続されるので、第1,第2外部接続端子40,41は、第1,第2励振電極24,25にそれぞれ電気的に接続される。
【0076】
第2封止部材16の第2封止用接合パターン34、接続用接合パターン37、接続用配線パターン36、及び、第1,第2外部接続端子40,41は、例えば、TiまたはCrからなる下地層上に、例えば、Auが積層形成されて構成されている。
【0077】
この実施形態の水晶振動子2は、水晶振動板14と第1封止部材15とが、それぞれの第1封止用接合パターン31,33を重ね合わせた状態で拡散接合されると共に、水晶振動板14と第2封止部材16とが、それぞれの第2封止用接合パターン32,34を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図4に示すサンドイッチ構造のパッケージが製造される。これによって、水晶振動板14の振動部20が収容された収容空間が、両封止部材15,16によって気密に封止される。
【0078】
このように水晶振動板14及び第1,2封止部材15,16の3枚の水晶板を積層して、振動部20を収容したパッケージ構造の水晶振動子2が得られる。これによって、収容空間となる凹部を有する箱状のセラミック容器内に、水晶振動片を収容して蓋を接合して封止するパッケージ構造の水晶振動子に比べて、薄型化(低背化)を図ることができる。
【0079】
図4に示される水晶振動子2は、第1封止部材15が下面、第2封止部材16が上面となるように上下が反転されて、ICチップ3の非能動面である上面に、接着剤を介して接合される。
【0080】
図8は、図3に示されるICチップ3の上面に接合された水晶振動子2を示すベース8の平面図である。ICチップ3上に搭載された水晶振動子2は、その第1,第2外部接続端子40,41が上方に露出している。
【0081】
図9は、この水晶振動子2上に搭載されるヒータ基板5を示す平面図である。
【0082】
ヒータ基板5は、水晶等の基板17に、蛇行したパターンの抵抗配線18が形成されている。この基板17は、平面視略矩形の4つの角部の内の一つの角部が矩形に切欠かれた第1切欠き部17aと、一方の長辺の短辺寄りの部分が矩形に切欠かれた第2切欠き部17bとを有している。これら切欠き部17a,17bは、ヒータ基板5を、水晶振動子2上に搭載した状態で、水晶振動子2の第1,第2外部接続端子40,41の一部を、上方へ露出させるための切欠きである。
【0083】
抵抗配線18の両端部18a,18bは、一方の短辺側へ引出されており、この抵抗配線59には、例えば、ニクロム、クロム、タングステン等が使用される。
【0084】
図10は、図8の水晶振動子2上に、ヒータ基板5を搭載し、ワイヤーボンディングを行った状態を示す平面図である。
【0085】
ヒータ基板5は、抵抗配線18が形成されていない下面側を、接着剤によって、水晶振動子2に接合する。この状態では、ヒータ基板5の第1,第2切欠き部17a,17bから水晶振動子2の第2封止部材16の第1,第2外部接続端子40,41の一部が上方へ露出している。
【0086】
この水晶振動子2の第1,第2外部接続端子40,41、及び、ヒータ基板5の抵抗配線18の両端部18a,18bが、ボンディングワイヤ-38によって、水晶基板4の所要の配線パターン11にそれぞれ電気的に接続される。
【0087】
これによって、水晶基板4にフリップチップ実装されたICチップ3は、水晶基板4の配線パターン11を介して水晶振動子2及びヒータ基板5に電気的にそれぞれ接続される。
【0088】
また、水晶基板4の所要の配線パターン11が、ボンディングワイヤ-39によって、ベース8の第1側壁部8cの上面の所要の接続電極12にそれぞれ電気的に接続される。
【0089】
これによって、ICチップ3は、水晶基板4の配線パターン11、ボンディングワイヤー39、ベース8の接続電極12及びベース8の内部配線を介してベース8の外底面の図示しない電源端子、出力端子、制御端子、GND端子等の複数の外部接続端子、すなわち、当該水晶発振器1の実装用の複数の外部接続端子に電気的に接続される。
【0090】
ボンディングワイヤー38,39の素材としては、信頼性の観点からAuが好ましいが、Cuなどであってもよい。
【0091】
この実施形態の水晶発振器1では、ICチップ3によって、ヒータ基板5の発熱量が制御されて、水晶振動子2の温度が制御される。
【0092】
以上の構成を有する本実施形態の水晶発振器1によれば、セラミック製のベース8の収容凹部8aには、セラミック基板やセラミックパッケージに比べて平坦度が良好な水晶基板4を収容し、この水晶基板4の配線パターン11に、ICチップ3をフリップチップ実装しているので、セラミック基板やセラミックパッケージにICチップをフリップチップ実装する場合に比べて、実装時に印加される荷重が、ICチップ3の複数の電極パッド間でばらつくのが抑制されて、安定な接続が可能となり、ICチップ3の接続の信頼性が向上する。
【0093】
また、水晶振動板14の振動部20が、第1,第2封止部材15,16によって気密封止されると共に、水晶振動板2が、容器6によって気密封止されているので、水晶振動板14の振動部20の周囲を、外部に対して極めて効果的に断熱した構造とすることができる。これによって、外部の温度変化等の影響を低減して、安定した発振周波数を得ることができる。
【0094】
また、ICチップ3上に水晶振動子2が搭載されているので、水晶振動子2の温度を、ICチップ3の内蔵の温度センサによって正確に検出することができ、水晶振動子2の温度制御を高精度に行うことができる。水晶振動子2は、熱伝導用の配線パターン48が全面に形成された第1封止部材15の一方の主面が、ICチップ3に接合されているので、ICチップ3の発熱が、第1封止部材15の配線パターン48、貫通電極49、及び、第1封止用接合パターン33を介して水晶振動板14の第1封止用接合パターン31に伝導する。これによって、ICチップ3の発熱で水晶振動板14を効率的に加熱することができる。
【0095】
更に、水晶振動子2は、両主面に第1,第2励振電極24,25が形成された水晶振動板14と、第1励振電極24を覆って封止する第1封止部材15と、第2励振電極25を覆って封止する第2封止部材16とを、互いの接合用金属膜を接合させて積層されるので、水晶振動片を、収容凹部を有する容器内に、収容して導電性接着剤を用いて容器内の電極に接合し、蓋体で気密封止するパッケージ構造のように、導電性接着剤を使用する必要がない。これによって、導電性接着剤から発生するガスの影響を受けることがなく、周波数特性が安定する。
【0096】
図11は、本発明の他の実施形態の図1に対応する概略構成図である。
【0097】
上記実施形態では、水晶基板4にフリップチップ実装されたICチップ3上に、水晶振動子2及びヒータ基板5を積層して搭載したが、この実施形態の水晶発振器1では、水晶基板4にフリップチップ実装されたICチップ3上には、水晶振動子2及びヒータ基板5を搭載することなく、水晶基板4上に、水晶振動子2を搭載し、この水晶振動子2上にヒータ基板5を搭載している。
【0098】
水晶基板4には、図示しないコンデンサ等の受動部品が搭載されている。
【0099】
その他の構成は、上記図1の実施形態と同様である。
【0100】
上記各実施形態では、ヒータ基板5に第1,第2切欠き部17a,17bを形成して、水晶振動子2の第1,第2外部接続端子40,41の一部を露出させたが、ヒータ基板5に切欠きを形成することなく、その平面サイズを小さくして、第1,第2外部接続端子40,41の一部を露出させるようにしてもよい。あるいは、水晶振動子2の平面サイズを、ヒータ基板5に比べて大きくして、第1,第2外部接続端子40,41を露出させてもよい。
【0101】
上記各実施形態では、平坦度が良好な絶縁性の基板として、水晶基板を使用したが、水晶基板に限らず、ガラス基板等を使用してもよい。
【0102】
水晶振動子2を加熱する発熱体としては、ヒータ基板5に代えて、例えば、ポリイミドフィルム等に金属箔の抵抗パターンを形成したフィルム抵抗を用いてもよく、チップ抵抗体を、水晶基板4に搭載してもよい。
【0103】
上記各実施形態では、第1,第2封止部材15,16には、水晶を用いたが、これに限定されるものではなく、ガラス等の他の絶縁性材料を用いてもよい。
【0104】
上記各実施形態では、水晶振動板14にATカット水晶を用いたが、これに限定されるものではなく、ATカット水晶以外の水晶を用いてもよい。
【0105】
上記実施形態では、各貫通電極29,42,43は、貫通孔の内壁面に金属膜が被着されて構成されているが、これに限らず、貫通孔を導電材料によって埋めてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1,1 水晶発振器
2 水晶振動子
3 ICチップ(集積回路素子)
4,4 水晶基板(絶縁性の基板)
5 ヒータ基板
6 容器
7 コンデンサ(受動部品)
8 ベース(容器本体)
10 リッド(蓋体)
11 配線パターン
12 接続電極
13 金属バンプ
14 水晶振動板
15 第1封止部材
16 第2封止部材
38,39 ボンディングワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11