(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両用モータ
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20240214BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20240214BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B60K1/00
B60K17/04 K
B60K17/12
(21)【出願番号】P 2022158648
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海老原 大貴
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-114786(JP,A)
【文献】特開2020-78995(JP,A)
【文献】特開2020-37951(JP,A)
【文献】特開平6-64452(JP,A)
【文献】特開2008-81010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0032787(US,A1)
【文献】中国実用新案第207842633(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
B60K 17/04
B60K 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジングと、
前記モータハウジングの一端部の両側面から夫々突出して回転自在に設けられ、前記モータハウジング内のロータの回転力を出力する回転軸と、
前記モータハウジングの他端部の両側面に夫々設けられ、前記モータハウジングを両側方で車両フレームに固定する複数のマウント部と、
を備え、
前記マウント部は、前記車両フレーム側に止着部材を介して固定される複数のマウントボスを有し、
前記複数のマウントボスは、第1及び第2マウントボスを上下方向で互いに離間して配置し、
前記第1及び第2マウントボスを結ぶ仮想線から左右方向に離間して設けられる第3及び第4マウントボスを、前記第1及び第2マウントボスの間で上下方向に離間して設ける、
車両用モータ。
【請求項2】
前記第3マウントボス及び第4マウントボスは、前記仮想線を挟むように配置される、
請求項1記載の車両用モータ。
【請求項3】
前記第3マウントボス及び第4マウントボスは、夫々の一部が同一水平線上に配置されている、
請求項1記載の車両用モータ。
【請求項4】
前記仮想線は、前記回転軸を中心とする仮想円の接線である、
請求項1記載の車両用モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、電気自動車(EV)の需要が高まっている。電気自動車としては、例えば、特許文献1に開示のように、モータの他、バッテリ、インバータ、トランスアクスルを一体化し、回転力を出力する出力軸を有するイーアクスルと呼ばれる電動パワートレイン(車両用モータ)を搭載するものが知られている。
【0003】
車両用モータは、車両のフレームに取り付け電気自動車を製造することができ、スペース効率の向上、車両開発期間の短縮化を図り、同一のパワートレインを有する電気自動車の量産化が実現可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、4輪駆動のトラック等の大型車両を電気自動車化する場合、電動パワートレインとしての車両用モータは、回転軸が大型車両の前輪を回転駆動するように前輪側に搭載される。
【0006】
この場合、車両用モータは、車両の前後方向に延在する2本のメインフレーム間に配置され、車輪に回転力を付与する回転軸の両端部が、左右方向に夫々突出するように、車両に搭載される。
【0007】
車両用モータを強固に取り付けるためには、車両用モータの前端側及び両側面に夫々設けたマウントボスを介して、フレーム間に掛け渡したマウントブラケット及び両側方に配置され夫々フレームに固定されたブラケットに固定する必要がある。
【0008】
しかしながら、回転軸を前輪軸として車両に搭載する場合、車両用モータを車両フレーム側のブラケットに固定するマウントボスの位置が、前輪軸近傍に配置されるフロントサスペンションを支持するブラケットに干渉し、車両用モータを好適に搭載できないという問題があった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、回転軸を有していても、車体フレームに安定して搭載され好適に駆動する車両用モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両用モータの一つの態様は、
モータハウジングと、
前記モータハウジングの一端部の両側面から夫々突出して回転自在に設けられ、前記モータハウジング内のロータの回転力を出力する回転軸と、
前記モータハウジングの他端部の両側面に夫々設けられ、前記モータハウジングを両側方で車両フレームに固定する複数のマウント部と、
を備え、
前記マウント部は、前記車両フレーム側に止着部材を介して固定される複数のマウントボスを有し、
前記複数のマウントボスは、第1及び第2マウントボスを上下方向で互いに離間して配置し、
前記第1及び第2マウントボスを結ぶ仮想線から左右方向に離間して設けられる第3及び第4マウントボスを、前記第1及び第2マウントボスの間で上下方向に離間して設ける構成を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転軸を有していても、車体フレームに安定して搭載され好適に駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る一実施の形態の車両用モータの右側面図。
【
図2】本発明に係る一実施の形態の車両用モータの左側面図。
【
図3】本発明に係る一実施の形態の車両用モータが搭載された車両の要部構成を模式的に示す平面図。
【
図4】本発明に係る一実施の形態の車両用モータの右側面においてマウントボスが受ける荷重を模式的に示す図。
【
図5】本発明に係る一実施の形態の車両用モータの左側面においてマウントボスが受ける荷重を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る一実施の形態の車両用モータの右側面図であり、
図2は、同車両用モータの左側面図であり、
図3は、同車両用モータが搭載された車両の要部構成を模式的に示す平面図である。なお、本実施の形態において前,後、左,右とは、上記車両に搭載された際の前,後、左,右を意味する。
【0015】
車両用モータ10は、ステータとステータに回転自在に支持されたロータと、ロータの回転力を外部に出力する出軸とを有し、搭載される車両の駆動源として機能する。
【0016】
車両用モータ10は、モータハウジング20と、出力軸である回転軸30と、複数のマウント部40,50とを有し、マウント部40、50を介して車両フレームに固定され、車両に搭載される。なお、車両フレームは車両用モータ10が搭載される車両のフレーム全体を示し、例えば、後述する本体フレーム2a、2bの他に、
図3に示すブラケット3、モータブラケット4a、4b等を含む。車両用モータは、例えば、モータ、インバータ、減速機を含むトランスアクスルが三位一体となったEV用トラクションユニット、所謂、イーアクスルであってもよい。
【0017】
モータハウジング20は、内部に、図示しないステータ及びロータを有するモータ部(図示省略)、モータ部と電力を制御するインバータ、前輪に動力を伝達するトランスアクスルを有する。更にモータに電力を供給するバッテリを有してもよい。
【0018】
モータハウジング20の内部において一端部である先端部26側には、トランスアクスルが配設されている。
【0019】
モータハウジング20の両側面部22、24において先端部26には、それぞれモータハウジング20の延在方向と直交する方向に回転軸30が突出して設けられている。
【0020】
回転軸30は、トランスアクスルの一部であり出力軸とも称する。回転軸30には、モータハウジング20内において、モータ部(図示省略)の回転力がギア(図示省略)等を介して伝達され、外部に出力する。回転軸30は、例えば、前輪(図示省略)に接続され、回転力を伝達する。
【0021】
モータハウジング20において両側面部22、24の後端部28には、夫々車両用モータ10を固定する、具体的には、モータブラケット4a、4b(
図3~
図5参照)に固定するための、マウント部40、50が夫々設けられている。
【0022】
マウント部40は、
図1に示すように、モータハウジング20の右側面部22の後端部28側に設けられた複数のマウントボス(第1マウントボス~第4マウントボス)41~44を有する。
【0023】
マウント部50は、
図2に示すように、モータハウジング20の左側面部24の後端部28側に設けられた複数のマウントボス(第1マウントボス~第4マウントボス)51~54を有する。
【0024】
複数のマウントボス41~44、51~54には、それぞれボルト等の止着部材を介して、モータブラケット4a、4b(
図3~
図5参照)が装着される。車両用モータ10は、モータブラケット4a、4bを介して車両に搭載される。
【0025】
なお、以下では、マウントボス41~44、51~54を、第1マウントボス41、51、第2マウントボス42、52、第3マウントボス43、53、第4マウントボス44、54とも称する。モータハウジング20の両側面22、24に配置されるマウントボス41~44、51~54は、夫々同様に配置されている。
【0026】
モータハウジング20の両側面部22、24の夫々において、第1マウントボス41、51及び第2マウントボス42、52は、上下方向で互いに離間して配置されている。
【0027】
第3マウントボス43、53及び第4マウントボス44、54は、第1マウントボス41、51及び第2マウントボス42、52の間に配置される。第3マウントボス43、53及び第4マウントボス44、54は、第1マウントボス41、51及び第2マウントボス42、52を夫々結ぶ仮想線V1、V2に沿いつつ、且つ、仮想線V1、V2からずれた位置で上下に離間して設けられている。
【0028】
第3マウントボス43、53及び第4マウントボス44、54は、
図1及び
図2に示すように、仮想線V1、V2を夫々挟むように配置される。
【0029】
仮想線V1、V2は、夫々回転軸30を中心とする仮想円V3、V4の接線であってもよい。これにより、両側面部(左右側面部)22、24の夫々において、仮想線V1、V2上或いは仮想線V1、V2に沿いつつ仮想線V1、V2からズレた位置に配意されるマウントボス41~4は4、51~54は、接線に沿って配置されている。また、マウントボス41~44、51~54は、仮想線の円弧に沿って配置されているともいえる。
【0030】
図2に示す右側面部24の第3マウントボス53及び第4マウントボス54は、夫々の一部が同一水平線上に配置されている。
【0031】
車両用モータ10が搭載された車両として、例えば、
図3に示す四輪駆動のトラック等の大型の車両1では、車両用モータ10は、車両1において前後方向に平行に延在する2本の本体フレーム2a、2bに対して前輪が配設される部位の上部に配置される。
【0032】
車両用モータ10は、回転軸30が前輪の回転軸を構成するように、本体フレーム2a、2bの間に搭載されている。なお、回転軸30は、本体フレーム2a、2bよりも下方に配置されてもよく、上方に配置されてもよい。
【0033】
例えば、車両用モータ10は、先端部26のマウント部6を介して、本体フレーム2a、2b間に架設されたブラケット3に固定されている。
【0034】
そして、車両用モータ10では、両側面部22、24の後端部28が、マウント部40、50に装着されたモータブラケット4a、4bを介して本体フレーム2a、2bに固定され、車両用モータ10は本体フレーム2a、2bに装着された状態となっている。
【0035】
車両用モータ10は、本体フレーム2a、2bに対して、先端部26では、マウント部6で固定されるとともに、両側面部22、24では、第1~第4マウントボス41~44、51~54により固定されている。
【0036】
第1~第4マウントボス41~44、51~54は、両側面部22、24の夫々で上述したように上下方向に沿ってジクザグ状に配置され、本体フレーム2a、2b(詳細にはモータブラケット4a、4b)に固定されている。
【0037】
また、車両用モータ10において両側面部22、24の前後方向の中央部に対向して、前輪の回転軸30に近接して設けられるフロントサスペンションを支持するサスペンションブラケット5a、5bが配設されている。
【0038】
<効果>
車両用モータ10は、フロントサスペンションよりも後方で、第1~第4マウントボス41~44,51~54を含む複数のマウントボスにより本体フレーム2a、2bに固定される。車両用モータ10は、サスペンションブラケット5a、5bが干渉することなく本体フレーム2a、2bに搭載される。
【0039】
また、車両用モータ10は、先端部26側に配置される回転軸30から前後方向で離間する後端部28で、第1~第4マウントボス41~44、51~54により本体フレーム2a、2b側に固定されている。先端部26及び後端部28は、サスペンションブラケット5a、5bを挟む位置に配置されている。
【0040】
これにより、
図4、
図5に示すように回転軸30が回転する際に回転方向で発生する力を、回転軸30に近いサスペンションブラケット5a、5bの位置よりも遠位の後端部28で受けることができ、駆動時の振動等を好適に受けることができる。
【0041】
更に、車両用モータ10によれば、モータハウジング20の両側面部22、24の夫々において、後端部28側に、第1~第4マウントボス41~44を有するマウント部40と、第1~第4マウントボス51~54を有するマウント部50が配設されている。マウント部40、50は、夫々、上下方向で離間する第1マウントボス41、51及び第2マウントボス42、52を有する。加えて、マウント部40、50は、第1マウントボス41、51及び第2マウントボス42、52を結ぶ仮想線V1、V2から左右方向に離間して設けられる第3マウントボス43、53及び第4マウントボス44、54を有する。第3マウントボス43、53及び第4マウントボス44、54は、第1マウントボス41、51及び第2マウントボス42、52の間で上下方向に離間して設けられている。
【0042】
第1~第4マウントボス41~44、51~54は、回転軸30の駆動により回転軸30周りで発生する力の方向に沿う位置で、本体フレーム2a、2bに固定された状態となっている。これにより、車両用モータ10は、回転軸30の駆動等により生じる振動の影響を受けにくい状態で安定して車両に搭載される。
【0043】
また、第1~第4マウントボス41~44、51~54は、接線、または回転軸30の回転方向に沿って配置され、これらの位置で車両用モータ10を本体フレーム2a、2b側に固定している。これにより、第1~第4マウントボス41~44、51~54は、回転軸30の回転による振動等の影響を受けにくく安定して確実に車両用モータ10を搭載できる。
【0044】
このように車両用モータ10によれば、回転軸30を有していても、本体フレーム2a、2bにモータブラケット4a、4bを介して、車体フレームに安定して搭載され好適に駆動することができる。
【0045】
なお、車両用モータ10は、回転軸30を前輪の駆動軸として説明したが、これに限らず、後輪の駆動軸としてもよい。また、仮想線V1、V2は、鉛直線としてもよい。
【0046】
なお、マウント部40、50を構成する複数のマウントボスは、第1~第4マウントボス41~44、51~54を含めば、いくつのマウントボスであってもよい。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る車両用モータは、車体フレームに安定して搭載され好適に駆動する効果を有し、電力により駆動する車両、例えば、ハブリッド車、電気自動車などに適用して有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 車両
2a、2a 本体フレーム
3 ブラケット
4a、4b モータブラケット
5a、5b サスペンションブラケット
6 マウント部
10 車両用モータ
20 モータハウジング
22 右側面部
24 左側面部
26 先端部
28 後端部
30 回転軸
40、50 マウント部
41、51 第1マウントボス
42、52 第2マウントボス
43、53 第3マウントボス
44、54 第4マウントボス
V1、V2 仮想線
V3、V4 仮想円
【要約】
【課題】回転軸を有していても、車体フレームに安定して搭載され好適に駆動することができる車両用モータを提供する。
【解決手段】モータハウジングと、モータハウジングの一端部の両側面から夫々突出して回転自在に設けられ、モータハウジング内のロータの回転力を出力する回転軸と、モータハウジングの他端部の両側面に夫々設けられ、モータハウジングを両側方で車両フレームに固定する複数のマウント部と、を備え、マウント部は、車両フレーム側に止着部材を介して固定される複数のマウントボスを有し、複数のマウントボスは、第1及び第2マウントボスを上下方向で互いに離間して配置し、第1及び第2マウントボスを結ぶ仮想線から左右方向に離間して設けられる第3及び第4マウントボスを、第1及び第2マウントボスの間で上下方向に離間して設ける。
【選択図】
図1