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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】腐食防止装置及び腐食防止方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/33 20060101AFI20240214BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01N21/33
F23J15/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020569526
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020001853
(87)【国際公開番号】W WO2020158497
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019016804
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 和也
(72)【発明者】
【氏名】中條 晃伸
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/144507(WO,A1)
【文献】特表2003-511692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01B 11/00-G01B 11/30
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
C03B 5/42-C03B 5/44
F23J 13/00-F23J 99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼対象物の燃焼によって生じた第1の測定対象の吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を出射する発光ダイオードを備えた第1の光源部と、
前記燃焼対象物の燃焼によって生じた第2の測定対象の吸収スペクトルであり且つ前記第1の測定対象の吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を出射する発光ダイオードを備えた第2の光源部と、
腐食抑制剤から生成した第3の測定対象の吸収スペクトルであり且つ第1及び第2の測定対象の吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を出射する発光ダイオードを備えた第3の光源部と、
前記第1の光源部から出射された照射光を受光する第1の受光部と、
前記第2の光源部から出射された照射光を受光する第2の受光部と、
前記第3の光源部から出射された照射光を受光する第3の受光部と、
前記腐食抑制剤を供給する腐食抑制剤供給部と、
前記第1の受光部で受光した照射光の透過光強度I1及び前記第2の受光部で受光した照射光の透過光強度I2に基づいて、前記燃焼対象物を燃焼した燃焼ガス中の前記第1の測定対象の吸光度及び/又は透過率を算出するとともに、前記第3の受光部で受光した照射光の透過光強度I3及び前記第2の受光部で受光した照射光の透過光強度I2に基づいて、前記燃焼ガス中の前記第3の測定対象の吸光度及び/又は透過率を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記第1及び第3の測定対象の吸光度及び/又は透過率に基づいて前記腐食抑制剤供給部から供給される前記腐食抑制剤の供給量を制御する供給量制御部と、
を備えた腐食防止装置。
【請求項2】
前記腐食抑制剤供給部は、前記第1の測定対象と反応する前記腐食抑制剤を前記燃焼ガスに供給する、請求項1に記載の腐食防止装置。
【請求項3】
前記第3の測定対象は前記腐食抑制剤から生成し、前記第3の光源部から出射される照射光は、前記腐食抑制剤から生成した前記第3の測定対象の吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光である、請求項1又は2に記載の腐食防止装置。
【請求項4】
燃焼対象物の燃焼によって生じた第1の測定対象の吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光、前記燃焼対象物の燃焼によって生じた第2の測定対象の吸収スペクトルであり且つ前記第1の測定対象の吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光、及び、腐食抑制剤から生成した第3の測定対象の吸収スペクトルであり且つ第1及び第2の測定対象の吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を、前記燃焼対象物を燃焼した燃焼ガスに向けて、各々発光ダイオードを備えた第1の光源部、第2の光源部、及び、第3の光源部から照射し、
前記第1の光源部から出射された照射光、前記第2の光源部から出射された照射光、及び、第3の光源部から出射された照射光を、各々第1の受光部、第2の受光部、及び、第3の受光部で受光し、
前記第1の受光部で受光した照射光の透過光強度I1及び前記第2の受光部で受光した照射光の透過光強度I2に基づいて前記第1の測定対象の、吸光度及び/又は透過率を算出するとともに、前記第3の受光部で受光した照射光の透過光強度I3及び前記第2の受光部で受光した照射光の透過光強度I2に基づいて、前記燃焼ガス中の前記第3の測定対象の吸光度及び/又は透過率を算出部によって算出し、
前記算出部によって算出された前記第1及び第3の測定対象の吸光度及び/又は透過率に基づいて前記第1の測定対象と反応する前記腐食抑制剤の供給量を制御し、前記腐食抑制剤を供給する、腐食防止方法。
【請求項5】
前記腐食抑制剤を前記燃焼ガスに供給する、請求項4に記載の腐食防止方法。
【請求項6】
前記第3の測定対象は前記腐食抑制剤から生成し、前記第3の光源部から出射される照射光は、前記腐食抑制剤から生成した前記第3の測定対象の吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光である、請求項4又は5に記載の腐食防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二以上の物質を含む混合物中の物質の濃度を測定可能な腐食防止装置及び腐食防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料確保のため、建設廃材系木質材料及び木質系材料以外のバイオマス燃料や、廃タイヤや廃プラスチック等の廃棄物燃料を用いた発電需要が高まっている。このような発電機構においては、例えば、燃焼対象物を燃焼すると共に飽和蒸気を生成する燃焼炉と、燃焼炉に接続され当該燃焼炉で生じる飽和蒸気を、燃焼炉で生成した燃焼ガスを用いて過熱し発電に利用するための過熱器と、を備えるボイラーを用いた技術が一例に挙げられる。
【0003】
一方、今後石油資源やバイオマス燃料自体の枯渇により、低品位なバイオマス燃料等を用いる事態が多いに予測される。しかし、低品位なバイオマス燃料や廃棄物燃料には、例えば、Na、K等のアルカリ成分などの不純物が多く含まれている。このように、アルカリ成分等の不純物を含む低品位な燃料を用いると、循環材の流動不良や発電設備内における熱交換機などの装置内にて灰付着によって熱交換効率が低下したり、燃料の燃焼によって生じたアルカリ塩によって装置内が腐食するおそれがある。このような問題を改善するための技術としては、例えば、煙道ガス内の有毒ガスの濃度を分光測光により測定するための方法及び装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2003-511692号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術のように、一般的な紫外吸光光度分析では、キセノンランプや水銀ランプなどの高圧ランプが白色光源として使用されている。しかし、これら高圧ランプは寿命が短く、また、高圧ランプは発光強度の安定性が低いという問題がある。このため、光源寿命が長く、また、発光強度に優れた発光ダイオード(light emitting diode: LED)を用いることが考えられる。ここで、LEDは発光スペクトルの波長幅が狭く、単色光であるため、測定対象の吸収スペクトルに応じた波長の光源を選択することとなる。しかし、測定対象の吸収波長帯と同様の吸収波長帯をもつ物質が混在していると、単色のLEDを用いた技術では、測定対象による光吸収と混在物による光吸収との分離ができないため、測定対象の濃度を正確に測定することができない。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決すべく、光源寿命が長く、且つ、同様の吸収波長を有する二以上の物質を含む混合物中の物質の吸光度及び/又は透過率を測定することが可能な腐食防止装置及び腐食防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下に示す通りである。
<1> 燃焼対象物の燃焼によって生じた第1の測定対象の吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を出射する発光ダイオードを備えた第1の光源部と、
前記燃焼対象物の燃焼によって生じた第2の測定対象の吸収スペクトルであり且つ前記第1の測定対象の吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を出射する発光ダイオードを備えた第2の光源部と、
前記第1の光源部から出射された照射光を受光する第1の受光部と、
前記第2の光源部から出射された照射光を受光する第2の受光部と、
前記第1の受光部で受光した照射光の透過光強度I及び前記第2の受光部で受光した照射光の透過光強度Iに基づいて、前記燃焼対象物を燃焼した燃焼ガス中の前記第1の測定対象の吸光度及び/又は透過率を算出する算出部と、
を備えた腐食防止装置。
<2> 前記第1の測定対象と反応する腐食抑制剤を前記燃焼ガスに供給する腐食抑制剤供給部と、前記腐食抑制剤供給部から供給される前記腐食抑制剤の供給量を制御する供給量制御部と、を備えた前記<1>に記載の腐食防止装置。
<3> 前記供給量制御部は、前記算出部によって算出された前記第1の測定対象の吸光度及び/又は透過率に基づいて前記腐食抑制剤の供給量を制御する前記<2>に記載の腐食防止装置。
<4> さらに、前記腐食抑制剤から生成した第3の測定対象の吸収スペクトルであり且つ第1及び第2の測定対象の吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を出射する発光ダイオードを備えた第3の光源部と、前記第3の光源部から出射された照射光を受光する第3の受光部と、を備え、
前記算出部は、前記第3の受光部で受光した照射光の透過光強度I及び前記第2の受光部で受光した照射光の透過光強度Iに基づいて、前記燃焼ガス中の前記第3の測定対象の吸光度及び/又は透過率を算出し、
前記供給量制御部は、前記算出部によって算出された前記第1及び第3の測定対象の吸光度及び/又は透過率に基づいて前記腐食抑制剤の供給量を制御する前記<2>に記載の腐食防止装置。
<5> 燃焼対象物の燃焼によって生じた第1の測定対象の吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光、及び、前記燃焼対象物の燃焼によって生じた第2の測定対象の吸収スペクトルであり且つ前記第1の測定対象の吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を、前記燃焼対象物を燃焼した燃焼ガスに向けて、各々発光ダイオードを備えた第1の光源部又は第2の光源部から照射し、
前記第1の光源部から出射された照射光、及び、前記第2の光源部から出射された照射光を、各々第1の受光部又は第2の受光部で受光し、
前記第1の受光部で受光した照射光の透過光強度I及び前記第2の受光部で受光した照射光の透過光強度Iに基づいて前記第1の測定対象の、吸光度及び/又は透過率を算出部によって算出する、腐食防止方法。
<6> 前記算出部によって算出された前記第1の測定対象の吸光度及び/又は透過率に基づいて前記第1の測定対象と反応する腐食抑制剤の供給量を制御し、前記腐食抑制剤を前記燃焼ガスに供給する、前記<5>に記載の腐食防止方法。
<7> さらに、前記腐食抑制剤から生成した第3の測定対象の吸収スペクトルであり且つ第1及び第2の測定対象の吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を、前記燃焼ガスに向けて、発光ダイオードを備えた第3の光源部から出射し、
前記第3の光源部から出射された照射光を第3の受光部で受光し、
前記第3の受光部で受光した照射光の透過光強度I及び前記第2の受光部で受光した照射光の透過光強度Iに基づいて前記第3の測定対象の吸光度及び/又は透過率を前記算出部によって算出し、
前記算出部によって算出された前記第1及び第3の測定対象の吸光度及び/又は透過率に基づいて前記第1の測定対象と反応する腐食抑制剤の供給量を制御し、前記腐食抑制剤を前記燃焼ガスに供給する前記<6>に記載の腐食防止方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光源寿命が長く、且つ、同様の吸収波長を有する二以上の物質を含む混合物中の物質の吸光度及び/又は透過率を測定することが可能な腐食防止装置及び腐食防止方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す概略図である。
図2】第1の実施の形態における計測ユニットの構成を説明するための概略図である。
図3】本発明の第2の実施の形態を示す概略図である。
図4】第2の実施の形態における計測ユニットの一態様を示す概略図である。
図5】第2の実施の形態における計測ユニットの他の態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態における腐食防止装置を備えた燃焼設備について図1を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態を示す概略図である。
【0012】
図1に示すように、燃焼設備10は、燃焼対象物が供給され、炉内にて前記燃焼対象物を燃焼する燃焼炉20と、燃焼対象物を燃焼した燃焼ガス中の各成分を測定する計測ユニット30と、燃焼炉20で生じた燃焼ガスとの熱交換によって過熱される過熱器40と、を備えている。また、燃焼炉20には、炉内に燃焼対象物を供給する燃焼対象物供給器22が備えられている。計測ユニット30には、燃焼ガスに腐食抑制剤を供給する腐食抑制剤供給装置31が備えられ、さらに、燃焼設備10には計測ユニット30及び腐食抑制剤供給装置31のそれぞれに電気的に接続された制御ユニット50が備えられている。本実施形態においては、計測ユニット30と腐食抑制剤供給装置31と制御ユニット50とが腐食防止装置としての役割を果たす。なお、図1において、太矢印は燃焼ガスの流れ方向を示す。また、以下の各図において一点鎖線は電気信号の経路を示す。
【0013】
燃焼設備10は、特に限定されるものではないが、燃焼炉20で生成した燃焼ガスと過熱器40との熱交換によって蒸気を過熱し発電に利用する所謂ボイラーを例に挙げることができる。また、燃焼設備10は、特に限定されるものではないが、主に火力発電事業用に使用される、貫流ボイラー、循環ボイラー、排熱回収ボイラーのほか、産業用で使用される循環流動層ボイラー(CFB)、流動床ボイラー(BFB)、などいずれであってもよい。
【0014】
図1に示すように燃焼炉20は、例えば縦長の筒状に構成され、燃焼対象物供給器22から供給される燃焼対象物を炉内にて燃焼する。燃焼対象物としては、可燃物であれば特に限定はないが、例えば、Na、K等のアルカリ塩を含むバイオマス燃料や、鉛や亜鉛等の重金属を含む廃棄物燃料を用いることができる。
【0015】
燃焼対象物供給器22から燃焼炉20に供給された燃焼対象物が燃焼されると、炉内に燃焼ガスが生成される。また、図示を省略するが、燃焼炉20の炉壁には水管を設置することができ、水管を燃焼炉20内の燃焼ガスに曝すことで飽和蒸気を生成することができる。燃焼ガスには、燃焼対象物の燃焼によって生成した第1の測定対象と第2の測定対象とが含まれる。第1の測定対象と第2の測定対象は異なる物質であり、第2の測定対象は、第1の測定対象と同様の波長帯に吸収スペクトルを有すると共に、第1の測定対象とは異なる波長帯に独自の吸収スペクトルを有する。例えば、第1の測定対象としては、バイオマス燃料の燃焼によって生じるKCl、NaClや、廃棄物燃料の燃焼によって生じるZnCl等の低融点の溶融塩が挙げられる。第2の測定対象は、例えば、燃焼によって生じる炭燃焼灰(フライアッシュ(飛灰)、ボトムアッシュ(炉底灰))などの固形粒子が挙げられる。燃焼炉20にて生成した燃焼ガスは、第1の測定対象と第2の測定対象とを含んだまま計測ユニット30に送られる。
【0016】
計測ユニット30は、燃焼ガス内における第1の測定対象の濃度を計測するための装置である。計測ユニット30において、燃焼ガス中の第1及び第2の測定対象に対応する透過光強度I及びIが計測される。計測ユニット30における測定対象の濃度の計測には、吸光光度分析法が用いられ、例えば紫外吸光光度分析法が利用される。本実施形態の計測ユニット30について図2を用いて説明する。図2は、第1の実施の形態における計測ユニットの構成を説明するための概略図である。図2において、細矢印は発光ダイオードから照射される光の軌道を示し、太矢印は燃焼ガスの流れ方向を示す。
【0017】
図2に示すように計測ユニット30には、発光器32と、分光計34と、が備えられている。また、計測ユニット30には、燃焼炉20から送られた燃焼ガスの流路39が設けられており、流路39を流れる燃焼ガス中の第1及び第2の測定対象の濃度が測定可能なように構成されている。なお、図1においては、計測ユニット30に対し紙面左方から右方に向けて燃焼ガスが送られるように示されているが、図2においては、説明のため、燃焼ガスの流れ方向が紙面下方から上方となるように計測ユニット30を示す。
【0018】
発光器32には、第1の測定対象の吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を出射する発光ダイオードを備えた光源部32Aと、第2の測定対象の吸収スペクトルであり且つ前記第1の測定対象の吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を出射する発光ダイオードを備えた光源部32Bとが備えられる。計測ユニット30は、流路39を流れる燃焼ガスに向けて、各光源部から吸収波長帯の異なる照射光を出射する。
【0019】
上述のように光源部32A及び32Bには発光ダイオードが備えられる。本実施形態においては、燃焼ガス中の第1及び第2の測定対象の測定において、従来から用いられているキセノンランプや水銀ランプなどの高圧ランプに代えて発光ダイオードを用いるため、高圧ランプを用いた場合に比して、光源寿命が長い。また、光源強度の安定性に優れるため、より正確に測定対象の濃度を測定することができる。本実施形態に用いられる発光ダイオードは、測定対象の吸収スペクトルに応じた波長のものを適宜選定することができる。なお、例えば、燃焼ガスに第1及び第2の測定対象以外のその他の物質が含まれる場合、光源部32Bから出射される光36Bの吸収波長帯は、その他の物質の吸収スペクトルを避けて設定されることが好ましい。
【0020】
分光計34には、光源部32Aから出射された照射光を受光する受光部34Aと、光源部32Bから出射された照射光を受光する受光部34Bと、が備えられる。分光計34は、発光器32から照射され燃焼ガスを透過した光を受光するフォトダイオードを備えた装置であり、透過光強度モニタとして機能する。図2に示すように、各光源部から出射された光36A及び光36Bは、流路39にて燃焼ガスを透過し、それぞれに対応する受光部34A及び受光部34Bにて受光される。このため、分光計34では、各光源部に応じた吸収波長域の光の透過光強度を測定することができる。
【0021】
図2に示すように、計測ユニット30にはビームスプリッター37が備えられており、発光器32から出射された光36A及び光36Bの一部が紙面下方に向けて反射するように構成されている。ビームスプリッター37にて反射した光37A及び光37Bは、光源強度監視用のフォトダイオード38に受光される。フォトダイオード38は、各光源部から出射された光を受光できるように複数の受光部(図示省略)を有する。計測ユニット30において、ビームスプリッター37は発光器32から照射される光が燃焼ガスに到達する前に反射されるように設置されており、フォトダイオード38によって発光器32に備えられた各光源部の光源強度をモニタリングできるように構成されている。なお、発光器32の光源強度のモニタリングは、フォトダイオード38で受光した光の強度に基づいて光源強度のふらつきや各光源部の劣化による強度低下を測定し、これらの測定値に基づいてあらかじめ設定された各発光ダイオードに対応する光源強度を補正するように構成してもよい。
【0022】
図2に示されるように、発光器32、分光計34及びフォトダイオード38は、制御ユニット50と電気的に接続されている。発光器32から出射された光が分光計34によって受光されると、電気信号が制御ユニット50に送信され、制御ユニット50において、受光部34Aで受光した照射光の透過光強度I及び受光部34Bで受光した照射光の透過光強度Iが検出される。さらに、発光器32から出射された光がフォトダイオード38によって受光されることで、電気信号が制御ユニット50に送信され、光源部32A及び光源部32Bの各光源強度I01及び光源強度I02が検出される。
【0023】
次に、図1に示すように、制御ユニット50は、算出部52と供給量制御部54とを備えるCPU等の装置である。算出部52は、計測ユニット30によって計測された透過光強度や光源強度、すなわち、受光部34Aで受光した照射光の透過光強度I及び受光部34Bで受光した照射光の透過光強度Iに基づいて第1の測定対象及び第2の測定対象の吸光度及び透過率を算出する。本実施形態においては、当該値に基づいて第1の測定対象の濃度が算出される。なお、図1等においては、制御ユニット50内に算出部52と供給量制御部54とが示されているが、これら独立した装置である必要はなく、一つのCPUにおいて各役割を果たすように構成することができる。
【0024】
算出部52における第1の測定対象の濃度の算出方法について具体的に説明する。まず、算出部52は、ランベルト・ベールの法則(A=-log10(I/I0x)=ECl=εcl[A:吸光度、I0x:第xの光源部の光源強度、I:第xの受光部が受光した透過光強度、E:比吸光度、C:第xの光源部が出射した光の吸収スペクトルを有する物質の質量対容量パーセント濃度、ε:モル吸光係数、x:第xの光源部が出射した光の吸収スペクトルを有する物質のモル濃度、l:光が透過する長さ(光路長))]等を用いて、燃焼ガス中の光源部32Aが出射した光の吸収スペクトルを有する物質の濃度X1を算出する。ここで、第1の測定対象のみならず、フライアッシュ等の第2の測定対象は、光源部32Aから出射される光の吸収波長帯に吸収スペクトルを有する。このため、濃度X1には第2の測定対象の濃度が影響しており、濃度X1は燃焼ガス中における第1の測定対象と第2の測定対象との総濃度となる。次に、燃焼ガス中の光源部32Bが出射した光の吸収スペクトルを有する物質の濃度X2を算出する。ここで、燃焼ガス中において光源部32Bが出射した光の吸収スペクトルを有する物質はフライアッシュ等の第2の測定対象となるため、濃度X2は燃焼ガス中における第2の測定対象の濃度となる。このため、濃度X1から濃度X2を除することで、第2の測定対象の影響を排除して、第1の測定対象の濃度を算出することができる。なお、上述のように、I0xとしては、フォトダイオード38によってモニタリングされた光源強度I01及び光源強度I02が用いられ、Iとしては、分光計24によってモニタリングされた透過光強度I及び透過光強度Iが用いられる。ただし、算出部52における濃度の算出方法は上述の例に限定されるものではない。
【0025】
次に、図1に示すように、計測ユニット30には、燃焼ガスに腐食抑制剤を供給する腐食抑制剤供給装置31が備えられている。腐食抑制剤は、第1の測定対象と反応することによって、第1の測定対象の濃度を低下させる物質である。腐食抑制剤は、第1の測定対象と化学的に反応して酸化還元反応等により第1の測定対象を別の化合物とする働きを有する物質を用いることができる。このような腐食抑制剤としては、例えば、燃焼対象物がKCl等を含むバイオマス燃料の場合には、硫安((NH)SO)、硫酸アルミ(Al(SO)、硫黄(Elemental Sulphur)等の硫黄成分が挙げられる。また、腐食抑制剤としては、第1の測定対象に物理的に吸着して第1の測定対象自体の濃度を低下させることができる微粒子などを用いてもよい。
【0026】
腐食抑制剤供給装置31は制御ユニット50における供給量制御部54と電気的に結合されている。腐食抑制剤供給装置31は制御ユニット50によってコントロールされており、制御ユニット50の供給量制御部54によって供給のタイミングや腐食抑制剤の供給量が制御されている。本実施形態において制御ユニット50は、算出部52によって算出された燃焼ガス中の第1の測定対象の濃度に基づき、供給量制御部54によって腐食抑制剤供給装置31から供給される腐食抑制剤の供給量が第1の測定対象の存在量に対して適切になるように制御する。特に限定されるものではないが、制御ユニット50は、第1の測定対象の存在量に対して腐食抑制剤の存在量が過不足ないように、燃焼ガス中の腐食抑制剤の供給量を制御することができる。
【0027】
計測ユニット30において燃焼ガス中に腐食抑制剤が供給されると、燃焼ガス中の第1の測定対象の濃度が低下する。本実施形態においては、第1の測定対象の濃度が低下された燃焼ガスを、計測ユニット30から過熱器40に送るように構成されている。過熱器40内には図示を省略する蒸気管が設置される。蒸気管内には燃焼炉20の熱によって生成された飽和蒸気が流通しており、燃焼ガスと過熱器40との熱交換により飽和蒸気が過熱される。過熱器40から排出された燃焼ガスは、過熱器40の下段に設置された各設備(下流側装置)に送られる。また、過熱器40により過熱された飽和蒸気は、例えば、発電タービンの駆動などに用いることができる。
【0028】
以上のように、本実施形態においては、燃焼対象物を燃焼炉20で燃焼し、前記燃焼対象物の燃焼によって生じた第1の測定対象の吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光、及び、前記燃焼対象物の燃焼によって生じた第2の測定対象の吸収スペクトルであり且つ第1の測定対象の吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を、燃焼対象物を燃焼した燃焼ガスに向けて、各々発光ダイオードを備えた光源部32A及び光源部32Bから照射し、各光源部から出射された照射光を、各々受光部34A又は受光部34Bで受光し、これら各受光部で受光した照射光の透過光強度I及び透過光強度Iに基づいて、第1の測定対象及び第2の測定対象の吸光度及び/又は透過率を算出部によって算出することができ、当該値に基づいて第1の測定対象の濃度を算出することができる。このように、本実施の形態においては、複数の光源部に発光ダイオードを用いることで、光源寿命が長く、且つ、同様の吸収波長を有する二以上の物質を含む混合物中の物質の吸光度、透過率や濃度を測定することが可能な腐食防止装置及び腐食防止方法を提供することができる。また、発光ダイオードは、光源強度の安定性に優れるため、第1の測定対象の吸光度、透過率や濃度をより正確に算出することができる。
【0029】
また、本実施形態においては、算出部52によって算出された第1の測定対象の濃度に基づいて腐食抑制剤の供給量を制御し、腐食抑制剤を燃焼ガスに供給する。このため、燃焼ガス中の第1の測定対象の存在量に対して適切な量の腐食抑制剤を供給することができるため、第1の測定対象の濃度を効果的に低減し、第1の測定対象による燃焼設備10内の各装置内の腐食を効果的に抑制することができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、第1の測定対象及び第2の測定対象の吸光度及び/又は透過率を算出し、当該値から第1の測定対象の濃度を算出する態様について説明したが、本発明は当該態様に限定されるものではなく、第1の測定対象の濃度を算出することなく、算出部52において第1の測定対象の吸光度及び/又は透過率のみを算出し、当該値に基づいて後の工程を施す態様であってもよい。
【0031】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態における腐食防止装置を備えた燃焼設備について図3を参照して説明する。図3は、本発明の第2の実施の形態を示す概略図である。本実施形態においては、燃焼対象物として第1の測定対象としてKClを含むバイオマス燃料を用い、また、腐食抑制剤として硫黄成分を用い、且つ、燃焼炉として循環流動層ボイラー(CFB)を備えた燃焼設備を例に説明する。
【0032】
図3に示すように、燃焼設備100は、バイオマス燃料が供給され、炉内にてバイオマス燃料を燃焼する燃焼炉120と、バイオマス燃料を燃焼した燃焼ガスから固形分を分離するサイクロン130と、燃焼ガス中の各成分を測定する計測ユニット140と、燃焼ガスとの熱交換によって過熱される過熱器150と、を備えている。また、燃焼炉120には、炉内にバイオマス燃料を供給する燃料供給器122が備えられている。計測ユニット140には、燃焼ガスに硫黄成分を供給する腐食抑制剤供給装置148が備えられており、燃焼設備100には、さらに、計測ユニット140及び腐食抑制剤供給装置148のそれぞれに電気的に接続された制御ユニット50が備えられている。本実施形態においては、計測ユニット140と制御ユニット50とが腐食防止装置としての役割を果たす。
【0033】
燃焼炉120は、縦長の筒状に構成され、燃料供給器122から供給されるバイオマス燃料を炉内にて燃焼する。燃焼炉120は、バイオマス燃料を流動層で流動させながら燃焼する流動層炉である。また、燃焼炉120は、後述するようにサイクロン130によって所定粒径以上の固形分が戻される循環流動層炉である。燃焼炉120内の温度は特に限定されないが、燃焼ガスの温度を800~1000℃程度となるように設定することができる。
【0034】
燃料供給器122から燃焼炉120に供給されたバイオマス燃料が燃焼されると、燃焼ガスが生成される。また、図示を省略するが、燃焼炉120の炉壁には水管を設置することができ、水管を燃焼炉120内の燃焼ガスに曝すことで飽和蒸気を生成することができる。また、バイオマス燃料の燃焼により、燃焼ガスには第1の測定対象であるKClが含まれると共に、当該燃焼によって生成した飛灰(フライアッシュ)が含まれる。本実施形態では、フライアッシュが第2の測定対象となる。また、本実施形態においては、燃焼ガス中には、KCl及びフラッシュアッシュの他に、NaClや、後述する硫黄成分に含まれるSOが含まれている。燃焼炉120にて生成した燃焼ガスは、これらKClやフライアッシュ等の成分を含んだままサイクロン130に送られる。
【0035】
サイクロン130は、燃焼炉120から排出される所定の粒径以上の固形分を、燃焼ガスから分離して燃焼炉120に戻す固気分離装置である。サイクロン130は、燃焼ガスから所定の粒径以上の固形分を分離して燃焼炉120内に戻すと共に、これら固形分が分離された燃焼ガスを後段の計測ユニット140に送る。サイクロン130による固形分の選別粒径は、特に限定されないが、例えば、約20μmに設定することができる。
【0036】
計測ユニット140は、燃焼ガス内におけるKClの吸光度及び透過率を算出し、当該値に基づいてその濃度を計測するための装置である。計測ユニット140において、燃焼ガス中のKCl(第1の測定対象)及びフライアッシュ(第2の測定対象)に対応する透過光強度I及びIが計測される。本実施形態において、計測ユニット140における測定対象の濃度の計測には、紫外吸光光度分析法が利用される。本実施形態の計測ユニット140について図4を用いて説明する。図4は、第2の実施の形態における計測ユニットの一態様を示す概略図である。
【0037】
図4に示すように計測ユニット140には、サイクロン130から供給され燃焼ガスが流通する本管141と外部計測部142とが備えられており、本管141内を流通する燃焼ガスの一部がガス管141Aを介して外部計測部142に流通するように構成されている。外部計測部142内には、発光器144と分光計146とが備えられており、発光器144と分光計146との間を紙面左方から右方に向かって燃焼ガスが流通する。外部計測部142から排出された燃焼ガスは、ガス管141Bを介して本管141に戻される。
【0038】
外部計測部142の紙面上方には発光器144が設置される。図示を省略するが、発光器144には、KClの吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を出射する発光ダイオードを備えた第1の光源部と、フライアッシュの吸収スペクトルであり且つ前記KClの吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を出射する発光ダイオードを備えた第2の光源部とが備えられている。ここで、燃焼ガスに含まれる各成分の吸収スペクトルのピークは、KClが250nm付近、NaClが240nm付近、SOが220nm付近及び290nm付近となる。一方、フライアッシュは吸収スペクトルの波長帯は広く、KCl等の吸収スペクトルの波長帯にも吸収を有する。このため、本実施形態では、第1の光源部においてはKClの吸収スペクトルに対応する約250nmの波長を有する発光ダイオードを用い、また第2の光源部においては約400nmの波長を有する発光ダイオードを用いている。このように、第2の光源部の発光ダイオードの波長を第2の測定対象であるフライアッシュ以外の成分から影響を受けにくい400nm付近に設定することで、より正確に燃焼ガス中のフラッシュアッシュの吸光度及び透過率、並びに、濃度を算出することができる。
【0039】
外部計測部142の紙面下方には分光計146が設置される。図示を省略するが、分光計146には、第1の光源部から出射された波長250nmの照射光を受光する第1の受光部と、第2の光源部から出射された波長400nmの照射光を受光する受光部とが備えられている。第1の実施形態と同様に、各光源部から出射された照射光は、燃焼ガスを透過し、それぞれに対応する受光部にて受光される。
【0040】
また、図示を省略するが、外部計測部142には、発光器144から照射される光が燃焼ガスに到達する前に反射されるようにビームスプリッターが備えられており、発光器144から出射された照射光一部を反射させて、光源強度監視用のフォトダイオードにより受光するように構成されている。本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、当該フォトダイオードによって発光器144の光源強度が検出される。
【0041】
図3に示すように外部計測部142は、制御ユニット50と電気的に接続されている。発光器144から出射された光が分光計146によって受光されると、電気信号が制御ユニット50に送信され、制御ユニット50において、第1の受光部で受光した波長250nmの照射光の透過光強度I及び第2の受光部で受光した波長400nmの照射光の透過光強度Iが検出される。さらに、発光器144から出射された光がフォトダイオードによって受光されることで、電気信号が制御ユニット50に送信され、第1及び第2の光源部の各光源強度I01及び光源強度I02が検出される。
【0042】
なお、本実施形態においては、外部計測部142を過熱器150の前段に位置する本管141に外部計測部142を設置して燃焼ガス中の成分の濃度を測定する方式を採用しているが、外部計測部142に設置箇所はこれに限定されることなく、例えば、燃焼炉120等所望に応じて適宜選定することができる。ランベルト・ベールの法則で示されるように、光路長が長くなるとそれに応じて透過率が低下する。このため、本実施形態のように外部計測部142を用いると、外部計測部142のサイズに応じて光路長(発光器144と分光計146との距離)を一定にできるため、当該計測部が設置される炉や管のサイズに影響されることなく同条件で透過光強度Iや透過光強度Iを検出することができる。
【0043】
本実施形態において制御ユニット50は、算出部52と供給量制御部54とを備えており、第1の実施形態と同様に、計測ユニット140によって計測された透過光強度I及び透過光強度Iに基づいて第1の測定対象であるKClの吸光度及び透過率を算出し、当該値に基づいてその濃度を算出する。
【0044】
計測ユニット140には、燃焼ガスに硫黄成分を供給する腐食抑制剤供給装置148が備えられている。硫黄成分には、例えば、硫安((NH)SO)、硫酸アルミ(Al(SO)、硫黄(Elemental Sulphur)等から選択される少なくとも一種が含まれる。下記式に示すように、硫黄成分は、KClと反応して無害なKSOを生成し、KClの濃度を低下させることができる。
2KCl+SO+HO+1/2O → KSO+2HCl
2KCl+SO+HO→ KSO+2HCl
【0045】
図3に示すように、腐食抑制剤供給装置148は制御ユニット50における供給量制御部54と電気的に結合されている。腐食抑制剤供給装置148は制御ユニット50によってコントロールされており、腐食抑制剤供給装置148から供給される硫黄成分の供給量は供給量制御部54によって制御される。制御ユニット50は、算出部52によって算出された燃焼ガス中のKClの濃度に基づき、供給量制御部54によって腐食抑制剤供給装置148から供給される硫黄成分の供給量がKClの存在量に対して適切になるように制御する。特に限定されるものではないが、制御ユニット50は、KClの存在量に対して硫黄成分の存在量が過不足ないように、燃焼ガス中の硫黄成分の供給量を制御することができる。
【0046】
腐食抑制剤供給装置148によって燃焼ガス中に硫黄成分が供給されると、燃焼ガス中のKClの濃度を低下させることができる。本実施形態においては、KClの濃度が低下された燃焼ガスが、計測ユニット140から過熱器150に送られるように構成されている。過熱器150内には、第1の実施形態と同様に、図示を省略する配管が設置されており、管内に燃焼炉120の熱によって生成された飽和蒸気が流通しており、燃焼ガスと過熱器150との熱交換により飽和蒸気が過熱される。過熱器150から排出された燃焼ガスは、過熱器150の下流に設置された各設備(下流側装置)に送られる。また、過熱器150により過熱された飽和蒸気は、例えば、発電タービンの駆動などに用いることができる。
【0047】
ここで、KClは融点が約780℃であるため、過熱器150と燃焼ガスとの熱交換の際に、KCl自体が過熱器150の内壁等に付着し、これら装置の腐食の原因となる。さらにKClガスの付着は、フライアッシュの付着を促す。フライアッシュの付着は過熱器150において熱交換効率の低減の原因になる。燃焼設備100は、このような低品位なバイオマス燃料に含まれる成分による影響を低減させるために、硫黄成分の供給によって燃焼ガス中のKClの濃度を低下させる。これにより、腐食抑制剤供給装置148よりも後段に位置する過熱器150等がKClによって腐食したり、KClの存在によってフライアッシュが過熱器150内で付着して熱交換効率が低下するのを抑制することができる。特に過熱器150内においては燃焼ガスの温度が熱交換によって低下するため、KClが凝集しやすいことから、腐食抑制剤をサイクロン130と過熱器150との間の段階で供給することが好ましい。
【0048】
以上のように、本実施形態においては、KClを含むバイオマス燃料を燃焼炉120で燃焼し、KClの吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光、及び、前記バイオマス燃料の燃焼によって生じたフライアッシュの吸収スペクトルであり且つKClの吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を、バイオマス燃料を燃焼した燃焼ガスに向けて、各々発光ダイオードを備えた光源部から照射し、各光源部から出射された照射光を、各々受光部で受光し、これら各受光部で受光した照射光の透過光強度I及び透過光強度Iに基づいて、KClの吸光度及び透過率を算出し、当該値に基づいてその濃度を算出部によって算出することができる。このように、本実施の形態においては、複数の光源部に発光ダイオードを用いることで、光源寿命が長く、且つ、同様の吸収波長を有する二以上の物質を含む混合物中の物質の濃度を測定することが可能な腐食防止装置及び腐食防止方法を提供することができる。また、発光ダイオードは、光源強度の安定性に優れるため、KClの吸光度、透過率、及び、濃度をより正確に算出することができる。
【0049】
また、本実施形態においては、算出部52によって算出されたKClの濃度に基づいて硫黄成分の供給量を制御し、硫黄成分を燃焼ガスに供給する。このため、燃焼ガス中のKClの存在量に対して適切な量の硫黄成分を供給することができるため、KClの濃度を効果的に低減し、KClによる燃焼設備100内の各装置内の腐食を効果的に抑制することができる。
【0050】
なお、本実施形態においても、KCl及びフライアッシュの吸光度及び/又は透過率を算出し、当該値からKClの濃度を算出する態様について説明したが、本発明は当該態様に限定されるものではなく、KClの濃度を算出することなく、算出部52においてKClの吸光度及び/又は透過率のみを算出し、当該値に基づいて後の工程を施す態様であってもよい。
【0051】
(その他の態様)
第2の実施の形態においては、外部計測部142を備えた計測ユニット140を用いた態様について説明したが、計測ユニットとして、図5に示すような構造を有する計測ユニット160を用いてもよい。図5は、第2の実施の形態における計測ユニットの他の態様を示す概略図である。
【0052】
図5に示すように計測ユニット160は、サイクロン130から供給され燃焼ガスが流通する本管141を備えており、本管141内に発光器162と分光計164とが設置されている。本管141内においては、紙面左方から右方に向かって燃焼ガスが流通する。また、本管141の管内は、発光器162と分光計164とによって燃焼ガスの流路がせばめられている。このように発光器162と分光計164との間を狭めることで、簡便な構成で計測ユニット160における光路長(発光器144と分光計146との距離)を短くすることができる。このように、計測ユニット160における光路長を測定対象となるボイラー中のガスの種類や濃度に適した長さに適宜調整することで燃焼ガス中の各成分の濃度の測定精度を高めることができる。
【0053】
また、上述の各実施形態においては、第1及び第2の光源部を用い、算出部によって算出された第1の測定対象の濃度に基づいて腐食抑制剤を供給する構成としたが、本発明はこれら態様に限定されず、例えば、3種の光源部を用いることも可能である。例えば、第1及び2の光源部等に加えて、さらに、腐食抑制剤から生成した第3の測定対象の吸収スペクトルであり且つ第1及び第2の測定対象の吸収スペクトルとは異なる吸収スペクトルを含む吸収波長帯の照射光を出射する発光ダイオードを備えた第3の光源部と、第3の光源部から出射された照射光を受光する第3の受光部と、設置することができる。このような態様においては、算出部が、第3の受光部で受光した照射光の透過光強度I及び第2の受光部で受光した照射光の透過光強度Iに基づいて燃焼ガス中の第3の測定対象の吸光度及び透過率を算出し、当該値に基づいてその濃度を算出し、供給量制御部が、算出部によって算出された第1及び第3の測定対象の吸光度又は透過率、或いは、当該値に基づいて算出された濃度に基づいて前記腐食抑制剤の供給量を制御するように構成することができる。
【0054】
このような例としては、例えば、燃焼対象物としてバイオマス燃料を用い、第1の測定対象をKCl、第2の測定対象をフライアッシュ、第3の測定対象を硫黄成分から生成されるSOとし、第1の光源部においてはKClの吸収スペクトルに対応する約250nmの波長を有する発光ダイオードを用い、また第2の光源部においては約400nmの波長を有する発光ダイオードを用い、第3の光源部においてはSOの吸収スペクトルに対応する約290nmの波長を有する発光ダイオードを用いる態様が挙げられる。当該態様によると、腐食抑制剤として供給される硫黄成分から発生するSOの吸光度及び透過率を算出し、当該値に基づいてその濃度を算出することができるため、SOの濃度に基づいて供給量制御部において硫黄成分が過剰に供給されたと判断した場合に硫黄成分の供給量を低下させ、より適正な量の腐食抑制剤を提供することができる。
【0055】
上述の発明の実施形態を通じて説明された実施の態様は、用途に応じて適宜組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができる。また、本発明は上述の実施形態の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
10,100…燃焼設備、20,120…燃焼炉、22…燃焼対象物供給器、30,140…計測ユニット、31,148…腐食抑制剤供給装置、32,144,162…発光器、32A,32B…光源部、34,146,164…分光計、34A,34B…受光部、37…ビームスプリッター、38…フォトダイオード、40,150…過熱器、50…制御ユニット、52…算出部、54…供給量制御部、122…燃料供給器、130…サイクロン、141…本管、142…外部計測部
図1
図2
図3
図4
図5