(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/00 20060101AFI20240226BHJP
A47K 13/24 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
E03D9/00 Z
A47K13/24
(21)【出願番号】P 2020083273
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2019173282
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 季朗
(72)【発明者】
【氏名】上田 江美
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太
(72)【発明者】
【氏名】滝 宣広
(72)【発明者】
【氏名】西垣 洋志
(72)【発明者】
【氏名】永田 雅昭
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-61296(JP,A)
【文献】特開2017-137708(JP,A)
【文献】特開2014-102909(JP,A)
【文献】特開2018-132861(JP,A)
【文献】特開2008-025288(JP,A)
【文献】特開2017-193838(JP,A)
【文献】特開平6-220902(JP,A)
【文献】特開2009-287213(JP,A)
【文献】特開2007-252805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00
E03D 5/10
A47K 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の上方に配置される便座と、
前記便座の裏面に設けられ、排泄時における便鉢の内部空間を撮像する画像センサと、 前記便座の開閉情報を取得する開閉取得部と、
前記開閉取得部で取得した前記便座の開閉情報に応じて前記画像センサによる撮像の可否を制御する撮像制御部と、
を備え
、
前記撮像制御部は、前記開閉取得部で取得した開閉情報で前記便座が開いた状態と判定されたときに、前記画像センサによる前記便鉢の内部空間の撮像を停止する制御と、このときに撮像した画像を削除可能な制御と、を有する、
便座装置。
【請求項2】
便器の上方に配置される便座と、
前記便座と別体で前記便座の下方に設けられ、排泄時における便鉢の内部空間を撮像する画像センサと、
前記便座の開閉情報を取得する開閉取得部と、
前記開閉取得部で取得した前記便座の開閉情報に応じて前記画像センサによる撮像の可否を制御する撮像制御部と、
を備え
、
前記撮像制御部は、前記開閉取得部で取得した開閉情報で前記便座が開いた状態と判定されたときに、前記画像センサによる前記便鉢の内部空間の撮像を停止する制御と、このときに撮像した画像を削除可能な制御と、を有する、
便座装置。
【請求項3】
前記開閉取得部は、使用者が前記便座に着座したことを検知する着座センサであり、
前記撮像制御部は、前記着座センサで着座情報を検知したときに、前記画像センサで前記便鉢の内部空間を撮像するように制御する、
請求項1又は2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記画像センサは、前記便器の溜水部から便を排出する排水路の内部方向を撮像可能で前記排水路の開口部に対向する方位に配置されている、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項5】
前記便器の溜水部底面よりも奥側を照射する照明部を備える、
請求項
4に記載の便座装置。
【請求項6】
前記画像センサは、該画像センサの視野に人体が写り込まない位置に配置されている、 請求項1から
5のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項7】
前記画像センサは、前記便座の裏面から便鉢方向に向けて離れた位置に配置されている、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項8】
前記画像センサは、前記便鉢の内側の照度に合わせた明るさに調整可能である、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項9】
前記画像センサと前記便鉢との間には、前記画像センサの画角の範囲に遮蔽部が設けられている、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項10】
前記便座の厚さは、着座した人の臀部や太ももが前記便座の裏面より下方に下がらない寸法に設定されている、
請求項1から
9のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項11】
前記便座の開口部は、着座した人の臀部や太ももが前記便座の裏面より下方に下がらない形状に設定されている、
請求項1から
10のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項12】
前記画像センサで取得した対象画像を画像処理する画像処理部が設けられ、
前記画像処理部では、前記対象画像のうち人体が写り込む領域をマスクする画像処理が行われる、
請求項1から
11のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項13】
前記画像処理部は、前記画像センサのカメラレンズの汚れを該画像センサで撮像した画像から検知し、要清掃の信号を出力する機能を有する、
請求項
12に記載の便座装置。
【請求項14】
前記便座を閉じた状態で前記便座の裏面から突出して前記便鉢の上面に当接する支持部が設けられ、
前記画像センサは、前記便鉢の上面に接触しないように設けられている、
請求項1から
13のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項15】
前記画像センサは、該画像センサの位置から見る方向で、便鉢内の溜水面の半分より向こう側に前記画像センサの視野中心を向けて配置されている、
請求項1から
14のいずれか1項に記載の便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1のような便器では、排泄物が位置する便鉢の溜水部を撮影するために、便器にカメラを配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の便座装置では、人体を写してしまうことを防ぐような対策が不十分であった。つまり、人の映り込みを防ぐことを物理的に実現し、安心して使用できる便座装置が求められており、その点で改善の余地があった。
【0005】
本開示は、使用者のプライバシーの配慮をして対象画像を撮像することで安心して使用できる便座装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の便座装置は、便器の上方に配置される便座と、前記便座の裏面に設けられ、排泄時における便鉢の内部空間を撮像する画像センサと、前記便座の開閉情報を取得する開閉取得部と、前記開閉取得部で取得した前記便座の開閉情報に応じて前記画像センサによる撮像の可否を制御する撮像制御部と、を備え、
前記撮像制御部は、前記開閉取得部で取得した開閉情報で前記便座が開いた状態と判定されたときに、前記画像センサによる前記便鉢の内部空間の撮像を停止する制御と、このときに撮像した画像を削除可能な制御と、を有する。
【0007】
本開示の他の一態様の便座装置は、便器の上方に配置される便座と、前記便座と別体で前記便座の下方に設けられ、排泄時における便鉢の内部空間を撮像する画像センサと、前記便座の開閉情報を取得する開閉取得部と、前記開閉取得部で取得した前記便座の開閉情報に応じて前記画像センサによる撮像の可否を制御する撮像制御部と、を備え、
前記撮像制御部は、前記開閉取得部で取得した開閉情報で前記便座が開いた状態と判定されたときに、前記画像センサによる前記便鉢の内部空間の撮像を停止する制御と、このときに撮像した画像を削除可能な制御と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態による便座装置を斜め上方から見た斜視図であって、便座の一部を破断した図である。
【
図2】
図1に示す便座装置を上方から見た平面図である。
【
図4】
図1に示す便座装置で開状態とした便座の裏面を示す図である。
【
図6】便座装置の便器を上方から見た平面図であって、便座を省略した図である。
【
図8】マスキング印刷されたカメラカバーを下方から見た平面図である。
【
図10】マスキング印刷されたカメラカバーを備えた画像センサで撮像した画像の一例を示す図である。
【
図11】第2実施形態による便座装置を正面から見た縦断面図である。
【
図12】第3実施形態による便座装置を正面から見た縦断面図である。
【
図13】第4実施形態による便座装置を正面から見た縦断面図である。
【
図14】第5実施形態による便座装置の左右方向の中央で前後方向に沿って切断した断面図である。
【
図15】第6実施形態による便座装置を正面から見た縦断面図である。
【
図16】第1変形例による便座装置の一部を正面から見た縦断面図である。
【
図17】第2変形例による便座装置の一部を正面から見た縦断面図である。
【
図18】第7実施形態による便座装置を正面から見た縦断面図である。
【
図19】第8実施形態による便座装置の一部を正面から見た縦断面図である。
【
図20】第9実施形態による便座装置の一部を正面から見た縦断面図である。
【
図21】第10実施形態による便座装置の一部を正面から見た縦断面図である。
【
図22】第10実施形態による便座装置の一部を正面から見た縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態による便座装置について、図面に基づいて説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1及び
図2に示すように、本第1実施形態による便座装置1は、便鉢11を有する便器10と、便器10に対して開閉可能に設けられた便座12と、便座12に対して開閉可能に設けられた便蓋(図示省略)と、使用者が排泄した便Gの画像を取得してその画像より便Gの状態等を判定するための画像判定装置2と、を備えている。
【0011】
図1では、閉状態の便座12が示されており、閉状態の便蓋は便座12を介して便鉢11の開口部11a(
図4参照)を上側から覆う。
【0012】
以下の説明において、便座装置1の使用者が便座12に着座した状態で使用者の前方を前側とし、同状態で使用者の背後側を後側とし、前側と後側とを結ぶ方向を前後方向X1という。便座12に着座した使用者から見て左側を「左側」とし、右側を「右側」とし、左側と右側とを結ぶ方向を左右方向X2という。便座装置1が設置されている床面から離れている側を「上側」とし、床面に近い側を「下側」とし、上側と下側とを結ぶ方向を上下方向X3という。
【0013】
図3に示すように、便鉢11の開口部11aの上面11bには、便鉢11の内側空間に向かって突出するリムが設けられている。便鉢11の底部には溜水部11cが配置され、この溜水部11cが便Gを便鉢11から排出する便器排水路14に接続されている。
【0014】
便座12は、便器10の後部に設けられ左右方向X2に延びる回転軸O1を中心に回動自在に構成されている。便座12は、前述のように回動することによって、便鉢11の上側端部に接して左右方向X2及び前後方向X1に拡がっている閉状態と、便鉢11の上面11bから離れて少なくとも上下方向X3に拡がっている開状態の何れの状態にもなり得る。便座12は、周方向に連続して延在する環状をなし、閉状態で便鉢11の上面11bに接している。便座12の開口部12bの開口は、上方から見て便鉢11の開口部11aの開口よりも僅かに小さく設定されている。便座12は、閉状態のとき、便鉢11の上面11bより内側空間に向かって突出している。
【0015】
図4及び
図5に示すように、便座12の裏面12aには、周方向の4箇所において下方に向けて突出した支持部材13が設けられている。4箇所の支持部材13は、便座12を閉状態としたときに便鉢11の上面11bに対して便座12が4点支持される。
【0016】
不図示の便蓋は、左右方向X2に延びる回転軸を中心に回動自在に構成され、閉状態の便座12を覆って左右方向X2及び前後方向X1に拡がり且つ便鉢11及び便座12のそれぞれの開口を塞ぐ閉状態と、少なくとも上下方向X3に拡がっている開状態の何れの状態にもなり得る。即ち、便蓋は、便鉢11及び便座12の開口を開閉可能に設けられている。
【0017】
便座12の裏面12aには、画像判定装置2が設けられている。画像判定装置2は、便座12の裏面12aに設けられた画像センサ20と、便座12の開閉情報を取得する傾きセンサ21(開閉取得部)と、傾きセンサ21で取得した便座12の開閉情報に応じて画像センサ20による撮像の可否を制御する撮像制御部22と、便器10の溜水部11cの底面から便器排水路14の奥側方向に移動した便Gが撮像可能になるように便器排水路14の奥側を照射する照明部23と、を備えている。
【0018】
傾きセンサ21は、便座12内に収容され、一定の角度以上に便座12が開きかけたときに開いたことを検出するように設定されている。傾きセンサ21の一例としては、内部にボールが収容され、このボールの動きによって傾きを検知するものを採用できる。そして、傾きセンサ21は、便座12の僅かなガタツキや浮き上がり程度では検知しないように設定され、設定されている角度以上に便座12が開いたときに傾きセンサ21が反応するように設定されている。なお、開閉取得部は、傾きセンサ21の他に便座12の自動開閉装置を開閉センサとして用いてもよい。
【0019】
撮像制御部22は、本実施形態では便器10に配置され、画像センサ20及び傾きセンサ21に対して無線又は有線で通信可能に設けられている。撮像制御部22は、傾きセンサ21で取得した開閉情報で便座12が開いた状態と判定されたときに、画像センサ20による便鉢11の内部空間(溜水部11c)の撮像を停止する制御と、このときに撮像した画像を削除可能な制御と、を有する。なお、撮像制御部22は、便座12に着座したときを検出する荷重センサ等の着座センサ(図示省略)と連動し、着座が検出されたときに便鉢11の内部空間を画像センサ20で撮像するように制御するようにしてもよい。
【0020】
画像センサ20は、カメラレンズを有している。画像センサ20は、便座12の裏面12aに設置され、便鉢11の溜水部11cから便Gを排出する便器排水路14の内部方向を撮像可能で便器排水路14の便器排水路開口部14aに対向する方位に配置されている。
【0021】
画像センサ20は、
図6及び
図7に示すように、溜水部11cの前方であって、便器排水路14の入口(便器排水路開口部14a)より奥側(後方)を写すことが可能な位置に配置されている。本実施形態による形状の便座装置1の画像センサ20のセンサ配置領域Rは、左右方向X2の中心を挟む左右対称の範囲において便座前方領域から左右の便座側方領域とされる。便座前方領域は、便鉢11の便器排水路開口部14aに入り込んだ便Gが見え易い領域である。便座側方領域は、便鉢11の便器排水路開口部14aをのぞきこめる領域であり、かつ心理的な点や、画像センサ20の画角(視野20A)に人体の写り込みが避けられる位置に配置される領域である。
【0022】
画像センサ20は、カメラ中心と便器排水路開口部14aの開口下端面11dとを結んだ線が画像センサ20の視野中心20Cとなるように配置される。このときの画像センサ20の視野中心20Cは便鉢11の内面に遮られないことが好ましい。例えば、
図7に示すように、便座12の前方に位置する画像センサ20は、視野中心20Cが便鉢11の前側内面に形成される凸曲面11eに当たらないように配置される。ここで、便器排水路開口部14aの開口下端面11dは、
図5に示す正面視で左右方向X2に延びる所定の領域(符号11A)である。
【0023】
画像センサ20の配置として好ましくは、
図5に示すように、画像センサ20の位置に対して正面視で溜水部11cの左右方向X2の中心線Cを挟んだ反対側の位置に画像センサ20の視野中心20C(20Ca、20Cb)を向けた位置とされる。画像センサ20の配置としては、
図5に示す符号20Cbの視野中心とする方が、符号20Caの視野中心とした場合よりも便鉢11内の水面Waに反射した人体の写りこみのリスクが低減される。なお、画像センサ20としては、画像センサ20の位置から見る方向で、便鉢11内の溜水部11cの水面の半分より向こう側に画像センサ20の視野中心20Cを向けて配置されていればよい。
【0024】
画像センサ20は、その他の機能を有している。例えば、便鉢11の内側の照度に合わせた明るさに調整可能に設けられている。
【0025】
撮像制御部22では、画像センサ20のカメラレンズの汚れを画像から検知し、その検知した検知情報から使用者にカメラレンズの清掃を促す機能をもたせてもよい。
【0026】
画像センサ20には、
図8及び
図9に示すように、カメラレンズから撮像方向に所定間隔d(
図9参照)をあけた位置に配置され、人体の一部(臀部や太ももや男性器)が写り込む部分(後述するマスキング印刷24Aの部分)を物理的にマスキングする透明なカメラカバー24が設けられている。カメラカバー24は、画像センサ20と便鉢11との間で画像センサ20の画角の範囲に配置されている。カメラカバー24は、便座12の裏面12aに固定される治具25を介して取り付けられている。カメラカバー24には、人体の一部が写り込む部分の所定領域に不透過性のマスキング印刷24A(遮蔽部)が印刷もしくは塗装されている。
【0027】
図10は、画像センサ20で撮像した画像26であって、マスキング印刷24Aによってマスキングされたものである。このように画像の一部で、写り込ませたくない領域を物理的にマスキングすることができる。
【0028】
図4に示すように、照明部23は、例えばLEDが使用され、便座12の裏面12aにおいて、画像センサ20の前方に配置されている。照明部23により照射される照明Lの範囲は、
図1、
図2、
図3及び
図5に示すように、照射中心が便鉢11の溜水部11cに位置するよう照明部23から拡散する。照明部23は、画像センサ20の視野中心20C(
図5参照)が対象物(溜水部11c)に当たる位置とほぼ一致するように設けられている。このように照明部23と画像センサ20との位置関係は、本実施形態では一例を示したものであって、照明部23が画像センサ20の近傍で、かつ画像センサ20で便器排水路開口部14aよりも奥側を照射できる位置であればよい。
【0029】
図4に示すように、便座12の裏面12aには、画像センサ20の近傍に配置され、便座12を閉じた状態で便鉢11の上面11bに当接する複数(ここでは3つ)の保護脚5(支持部)が設けられている。保護脚5は、
図3及び
図5に示すように、例えばゴム製の部材から形成され、便座12を閉じた状態で便座12の裏面12aから下方に向けて突出し、その突出端5aが便鉢11の上面11bに当接する。便座12は、閉じた状態で、4箇所の支持部材13と保護脚5とによって下方の便鉢11から支持されている。3つの保護脚5は、内外周方向で内周側に位置する画像センサ20に対して外周側に周方向に間隔をあけて配置されている。
【0030】
保護脚5は、便座12を閉じた状態において、便座12の裏面12aに配置される画像センサ20が便鉢11の上面11bに接触しないような高さで突出されている。保護脚5は、画像センサ収納部における便座12の裏面12aより突出する部分がある場合には、その画像センサ収納部が便鉢11の上面11bに当たらないように突出させて設置される。あるいは保護脚5を置かずに便座12の支持部材13により形成される便鉢11の上面11bとのクリアランスを画像センサ収納部が便座裏より突出する高さ以上に確保して設置させてもよい。
【0031】
これにより画像センサ20は、近傍に配置される保護脚5あるいは便座12の支持部材13によって例えば便座12が閉状態のときには便座12の変形に伴って便鉢11の上面11bに対する接触が防止され、開状態のときにも外的な接触を予防することができる。
【0032】
次に、本実施形態による便座装置1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図3及び
図4に示すように、本実施形態による便座装置1では、傾きセンサ21で取得した便座12の開閉情報に応じて撮像制御部22によって撮像可能と判定されたときにのみ、画像センサ20で便鉢11の内部空間を撮像することができる。つまり、撮像制御部22で撮像不可と判定されたときには、画像センサ20による撮像を物理的に停止されるので、例えば便座12の開閉時において撮像が不可な状態なときに、便座12の裏面12aに設けられる画像センサ20によって人体を写してしまうことを確実に防ぐことができる。したがって、本実施形態の便座装置1では、使用者のプライバシーの配慮をして対象画像を撮像することで安心して使用することができる。
【0033】
本実施形態では、撮像制御部22は、傾きセンサ21で取得した開閉情報で便座12が閉じた状態と判定されたときに、画像センサ20で便鉢11の内部空間を撮像するように制御する。この場合には、例えば便座12が所定の角度で開くと画像センサ20による撮像が停止されるので、使用者が便座12に着座して排泄する際にのみ撮像される制御となる。そのため、着座前後において撮像されることがなく、使用者は安心して便座装置1を使用することができる。傾きセンサ21の開閉角度に応じて画像センサ20の撮像の可否を設定することができるので、例えば撮像した画像に人体が写り込まない範囲の僅かな便座12の開きやずれでは便座12が開いた状態と判定しないような制御を行うことができる。
【0034】
本実施形態では、画像センサ20が便座12の裏面12aに設置され、便鉢11の溜水部11cから便Gを排出する便器排水路14の内部方向を撮像可能で便器排水路開口部14aに対向する方位に配置されている。この場合には、便鉢11内の便器排水路開口部14aの奥側に転がり込んだ便Gが死角になることがなく、排泄された便G全体を確実に撮像することができる。
【0035】
本実施形態では、照明部23によって便器排水路14のうち便鉢11の溜水部11cの底面よりも奥側を照射することができるので、画像センサ20によって便Gをより鮮明に撮像することができる。
【0036】
本実施形態では、画像センサ20の視野20Aに人体が写り込まない位置に画像センサ20が配置されている。この場合には、上述したように撮像制御部22によって撮像可能と判定されたときにおいて画像センサ20で撮像される視野20Aに人体が写り込むことを防止することができる。
【0037】
本実施形態では、画像センサ20が便鉢11の内側の照度に合わせた明るさに調整可能に設けられているので、画像センサ20によって撮像した便Gの画像をより鮮明に写すことができる。
【0038】
本実施形態では、画像センサ20と便鉢11との間にカメラカバー24を配置し、カメラカバー24における画像センサ20の画角の範囲(視野20A)で人体が写り込む領域にマスキング印刷24Aが印刷された構成となっている。この場合には、画像センサ20の画角を調整することなく、撮像される画像において人体の写り込みを物理的になくすことができる。画像センサ20の位置や便器10の形状に応じてマスキング印刷24Aの領域を容易に変更できる利点がある。
【0039】
本実施形態による便座装置1では、画像センサ20のカメラレンズ20aの汚れを画像センサ20で撮像した画像から検知し、要清掃の信号を出力する機能を有する。この場合には、要清掃の信号を受信した際にカメラレンズ20aを清掃できるので、常に見え易い画像を取得でき、画像センサ20のカメラレンズ20aの汚れにより画像に移る便Gが判定しにくくなる不具合を防止できる。
【0040】
本実施形態では、便座12の裏面12aにおいて便座12を閉じた状態で便鉢11の上面11bに当接する保護脚5が設けられているので、着座時の使用者の重みによる便座12のたわみで画像センサ20の撮像範囲がズレたり、画像センサ20に便座12からの応力がかかって破損することを防止できる。
【0041】
このように本実施形態による便座装置1では、使用者のプライバシーの配慮をして対象画像を撮像することで安心して使用できる。
【0042】
(第2実施形態)
図11に示すように、第2実施形態による便座装置1Aは、画像センサ20が便座12の裏面12aから便鉢11の方向(下方)に向けて離れた位置に配置された構成となっている。例えば、画像センサ20は、便座12の裏面12aに設けられた適宜な形状のセンサ固定部(写り込み防止部)をなすスペーサ(図示省略)を介して取り付けられたり、便座12として下方に張り出した形状で便座12と一体成型された構成であってもよい。
【0043】
第2実施形態では、画像センサ20が便鉢11の内側下方に張り出した状態となるので、便座12に着座した人体のうちとくに臀部Mが便座12の裏面12aよりも下方に位置してしまう場合であっても、画像センサ20を臀部Mの下面Maよりも下方に位置させることができ、物理的に画像センサ20の視野に人体が入らないように構成とすることができる。このように第2実施形態では、画像センサ20で撮像した画像に人体が写り込むことを防止することができ、使用者のプライバシーの配慮をして対象画像を撮像することで安心して使用することができる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、
図12に示す第3実施形態による便座装置1Bは、便座12の厚さを厚くした部位(写り込み防止部)を有し、着座した人の臀部Mが便座12の裏面12aより下方に下がらない寸法に設定した構成となっている。この場合の画像センサ20の位置は、上述した第1実施形態と同様で、便座12の裏面12aに直接設けられている。
【0045】
第3実施形態では、便座12自体の厚みが大きくなるので、便座12に着座した人体のうちとくに臀部Mが便座12の裏面12aよりも下方に位置することを物理的に防止できる構造となる。第3実施形態では、画像センサ20で撮像した画像に人体が写り込むことを防止することができ、使用者のプライバシーの配慮をして対象画像を撮像することで安心して使用することができる。
【0046】
(第4実施形態)
次に、
図13に示す第4実施形態による便座装置1Cは、便座12の開口部12bの径寸法(とくに左右方向X2の長さ寸法)を小さくした開口縮小部(写り込み防止部)を有し、着座した人の臀部Mが便座12の裏面12aより下方に下がらない形状に設定した構成となっている。この場合の画像センサ20の位置は、上述した第1実施形態と同様で、便座12の裏面12aに直接設けられている。
【0047】
第4実施形態では、便座12の開口部12bが小さくなるので、便座12に着座した人体のうちとくに臀部Mが便座12の裏面12aよりも下方に位置することを物理的に防止できる構造となる。第4実施形態では、画像センサ20で撮像した画像に人体が写り込むことを防止することができ、使用者のプライバシーの配慮をして対象画像を撮像することで安心して使用することができる。
【0048】
(第5実施形態)
上述した実施形態では、便座12の開閉を検知する開閉取得部として便座12に収容した傾きセンサ21を採用し、便座12の傾き角度で開閉情報を得る構成としているが、これ限定されることはなく、
図14に示す第5実施形態において開閉取得部を採用したものである。第5実施形態は、便座12の他の開閉取得部として、便座12に着座したときを検出する着座センサ(図示省略)を設け、着座が検出されたときにのみ便鉢11の内部空間を画像センサ20で撮像するように制御するようにしてもよい。着座センサとしては、荷重センサ等を採用できる。
【0049】
(第6実施形態)
図15に示す第6実施形態による便座装置1Dは、便座12下方に別体で画像センサ20を設けた構成である。第6実施形態において画像センサ20が設けられる領域、すなわち便座12とは別体で便座12の下方の領域は、便座12の裏面に含まれる。つまり、便座12の裏面は、便座12の下方領域も含むものと定義する。便座装置1Dには、便器10の上面(便器上面10a)を便器内と便器外との間で架け渡すように例えば金属製の部材により形成された連結バー3が設けられている。連結バー3の便器内端部3aの下面3cには、便器10の内部空間を撮像できるように画像センサ20が取り付けられている。連結バー3の便器外端部3bは、便器10の外周面に対して貼り付けや吸着により装着されている。画像センサ20は、便座12の下方であって、便器10のリム10Aの側方に配置されている。具体的に画像センサ20は、リム10Aの側方において、便器上面10aと同じ高さの位置からリム10Aのリム上部10c及び立ち面10dの側方にわたって配置されている。画像センサ20は、画像センサ20を有するセンサユニットであってもよい。
【0050】
連結バー3は、一方向に延在する帯形状で便器上面10aから外周面の外形に沿ってL字状に屈曲されている。連結バー3の便器内端部3aは、便器上面10aから便器10の内側に向けて突出している。便器外端部3bは、接着剤によって便器10に固着されている。連結バー3の便器10に対する固着手段としては、接着剤でなく吸盤であってもよい。吸盤の場合には、便器10に対する着脱が容易なので掃除やメンテナンスがし易い効果があり、さらに画像センサ20の位置を容易に調整することができる。
【0051】
(第1変形例)
図16に示すように、上述した第6実施形態の第1変形例では、連結バー3の便器外端部3bに他方の便器内端部3aに設けられる画像センサ20との荷重バランスをもたせるための錘31が設けられている。錘31は、便器外端部3bの便器10側とは反対の外方側を向く面に例えば接着剤等により固着されている。錘31は、例えば金属製の部材であってもよいし、例えば画像センサ20のデータを処理する画像処理部等と機能するカメラ機能部であってもよい。第1変形例では、連結バー3によって錘31の自重によって画像センサ20がバランスよく位置決めされた状態で便器10に取り付けられ、画像センサ20が傾いたり、ずれることを抑制できる。
【0052】
(第2変形例)
図17に示す第2変形例による連結バー3は、金属製のワイヤーや板金等によって形成され、略コ型状に折り曲げられている。連結バー3は、長さ方向の中央部分3dが便器上面10aに載置され、互いに対向する便器内端部3aと便器外端部3bとが互いに近接する方向(
図17の矢印F1、F2)に向けて弾性力が生じるように付勢した状態となっている。便器内端部3aには画像センサ20が取り付けられている。連結バー3は、便器内端部3a及び便器外端部3bが付勢に抗して開いた状態で便器10の上部に外嵌して挟み込まれて取り付けられている。第1変形例では、連結バー3によって錘31の自重によって画像センサ20がバランスよく位置決めされた状態で便器10に取り付けられ、画像センサ20が傾いたり、ずれることを抑制できる。画像センサ20は便座12の裏面12aよりも下方でリム10Aの側方に配置される。具体的に画像センサ20は、リム10Aの側方において、リム上部10cよりも下方となる高さの位置で、リム10Aの立ち面10dの側方に配置されている。ここで、便座12の裏面12aの定義として、便座12の下方領域も含む領域であってもよい。
【0053】
(第7実施形態)
図18に示すように、第7実施形態による便座装置1Eは、画像センサ20を便座12の裏面12aに対して直接、接着等の固着部32を介して固定した構成となっている。画像センサ20の便座12に対する取り付け位置は、便座12の内周寄りの位置であり、便座12を閉じた状態(
図18の状態)で取り付けられた画像センサ20が便器10の上部に干渉しない位置とされる。第7実施形態では、単に画像センサ20を便座12に固定するだけの構造であるので、上述した第6実施形態の連結バー3(
図15参照)のような別部材が不要であり、取り付けが容易であり、部材費も低減できる利点がある。
【0054】
(第8実施形態)
図19に示す第8実施形態による便座装置1Fは、第2連結バー3Aを介して画像センサ20を便座12に取り付けたものである。第2連結バー3Aは、例えば金属製のワイヤーや板金等によって形成され、便座12の裏面12aと便座12の外方との間にわたって延在している。第2連結バー3Aの便器内端部3aの下面3cには、便器10の内部空間を撮像できるように画像センサ20が取り付けられている。第2連結バー3Aの便器外端部3bは、便座12の外方に突出している。その便器外端部30bには、画像センサ20に電気的に接続されるカメラ機能部26が設けられている。カメラ機能部26は、便座12の外側面12cに沿わせた状態で配設されている。第2連結バー3Aの中央部分3dは、便座12の裏面12aに接着剤や吸盤等の固定手段によって固定されている。カメラ機能部26は、例えば画像センサ20のデータを処理する画像処理部等の機能を有している。
【0055】
第8実施形態では、便座12側に第2連結バー3Aを介して画像センサ20を後付けすることが可能であるので、便器10に取り付ける場合よりも簡単な構造とすることができる。
【0056】
(第9実施形態)
図20に示す第9実施形態による便座装置1Gは、第3連結バー3Bを介して画像センサ20を便座12に取り付けたものである。第3連結バー3Bは、例えば金属製のワイヤーや板金等によって形成され、便座12の上方を架け渡すように略コ型状に折り曲げられている。連結バー3は、長さ方向の中央部分3dが便座12に載置されている。第3連結バー3Aの便器内端部3aには、便器10の内部空間を撮像できるように画像センサ20が取り付けられている。第3連結バー3Aに取り付けられた画像センサ20は、便座12の裏面12aに位置するように設けられている。
【0057】
第3連結バー3Aの便器外端部3bには、画像センサ20に電気的に接続されるカメラ機能部26が便座12の外側面12cに沿わせた状態で設けられている。第3連結バー3Bは、便器外端部3bの外側からねじ等の押圧部材33で押圧することにより、便器外端部3bを便座12の外側面12cに押し付けることで固定される。第3連結バー3の便座12に対する固定方法として、上述した押圧部材33に限定されることはなく、他の固定方法であってもよい。例えば、第3連結バー3Bの中央部分3dを便座12の上面12dに例えば接着剤や吸盤等の固定手段により固定するようにしてもよい。あるいは、互いに対向する便器内端部3aと便器外端部3bとが互いに近接する方向に向けて弾性力が生じるように付勢して便座12の両側から挟み込むことで取り付けるようにしてもよい。
【0058】
(第10実施形態)
図21及び
図22に示す第10実施形態による便座装置1H、1Iは、便座12と便器上面10aとの間に別体の便座ユニット4A、4Bを挟み込む構造となっている。
図21に示す第1便座ユニット4Aは、画像センサ20が便座型介挿部材41の下面41aに固定されたものである。
図22に示す第2便座ユニット4Bは、画像センサ20が便座型介挿部材41に内蔵されたものである。便座型介挿部材41は、平面視で便座12と略同形状に形成され、便座12と一体的に又は別で便器上面10aに対して開閉するように設けられている。便座型介挿部材41は、閉じた状態において、下面41aが便器上面10aに載置され、上面41bが便座12の裏面12aに当接している。画像センサ20は、便器10の内部空間を撮像できるように取り付けられている。
【0059】
以上、本開示による便座装置の実施形態について説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0060】
例えば、上記実施形態において、画像判定装置2には、画像センサ20で取得した対象画像を画像処理する画像処理部(図示省略)が設けられていてもよい。この場合には、画像処理部において、対象画像のうち人体が写り込む領域をマスク(隠す、或いは消去する)する画像処理を行うことができる。
【0061】
上記実施形態では、便鉢11の溜水部11cから便器10の後方に向けて排水する便器排水路14を備え、便座12の前方に画像センサ20を配置した形態の便座装置1の一例を示したが、このような便器構造のものに限定されることはなく、他の構造の便座装置であってもよい。例えば、
図14の第5実施形態による便座装置1Dのように、溜水部11cから便器10の前方に向けて排水する便器排水路14を備え、便器の後方に画像センサ20を配置する構成とすることも可能である。
【0062】
本実施形態では、画像センサ20を保護するために、便座12の裏面12aにおいて便座12を閉じた状態で便鉢11の上面11bに当接する支持部として保護脚5が設けた構成としているが、このような保護脚5を設けることに限定されることはなく、省略することも可能である。支持部としては、上述した実施形態の保護脚5の形状や数量等の構成であることに限定されることはなく、適宜設定することができる。
【0063】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0064】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I…便座装置、2…画像判定装置、5…保護脚(支持部)、10…便器、10A…リム、11…便鉢、11d…開口下端面、12…便座、12a…裏面、13…支持部材、14…便器排水路、14a…便器排水路開口部、20…画像センサ、20A…視野、20C…視野中心、21…傾きセンサ(開閉取得部)、22…撮像制御部、23…照明部、24…カメラカバー、24A…マスキング印刷(遮蔽部)、G…便、X1…前後方向、X2…左右方向、X3…上下方向