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▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240227BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240227BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240227BHJP
   B05C 11/08 20060101ALN20240227BHJP
   B05C 11/10 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
H01L21/30 564D
H01L21/30 564C
H01L21/30 569C
H01L21/30 572B
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/306 B
B05C11/08
B05C11/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020092559
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021190511
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】沖田 有史
(72)【発明者】
【氏名】猶原 英司
(72)【発明者】
【氏名】角間 央章
(72)【発明者】
【氏名】増井 達哉
(72)【発明者】
【氏名】出羽 裕一
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/095612(WO,A1)
【文献】特開2008-135679(JP,A)
【文献】特開2015-173148(JP,A)
【文献】特開2013-214279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
21/30
G03F 7/16
7/26
B05C 11/00
B05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理方法であって、
チャンバーの内部に基板を搬入して前記基板を保持する保持工程と、
前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給する供給工程と、
カメラが前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得する撮像工程と、
監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更する条件設定工程と、
前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う監視工程と、
を備え、
前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、
前記条件設定工程において、
前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、
前記チャンバー内のノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件、ならびに、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方、および、前記処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第3期間における前記画像データの前記画像条件の各々として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定する、基板処理方法。
【請求項2】
基板処理方法であって、
チャンバーの内部に基板を搬入して前記基板を保持する保持工程と、
前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給する供給工程と、
カメラが前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得する撮像工程と、
監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更する条件設定工程と、
前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う監視工程と、
を備え、
前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、
前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記解像度を第1解像度に設定し、
前記チャンバー内のノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件として、前記解像度を前記第1解像度よりも低い第2解像度に設定する、基板処理方法。
【請求項3】
請求項に記載の基板処理方法であって、
前記条件設定工程において、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方、および、前記処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第3期間における前記画像データの前記画像条件として、前記解像度を前記第1解像度に設定する、基板処理方法。
【請求項4】
基板処理方法であって、
チャンバーの内部に基板を搬入して前記基板を保持する保持工程と、
前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給する供給工程と、
カメラが前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得する撮像工程と、
監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更する条件設定工程と、
前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う監視工程と、
を備え、
前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、
前記条件設定工程において、
前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、
前記チャンバー内のノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定し、
前記物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を含む前記監視対象は、前記基板の形状および位置の少なくともいずれか一方、前記ノズルの形状および位置の少なくともいずれか一方、および、前記基板の周縁から飛散する前記流体を受け止める処理カップの形状および位置の少なくともいずれか一方、の少なくともいずれか一つを含む、基板処理方法。
【請求項5】
請求項から請求項のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記処理液の経時的な状態変化を含む前記監視対象は、前記処理液の吐出開始タイミング、吐出停止タイミング、前記処理液の前記基板上での液はね、ならびに、前記ノズルからの前記処理液のぼた落ちおよび出流れの少なくともいずれか一つを含む、基板処理方法。
【請求項6】
基板処理方法であって、
チャンバーの内部に基板を搬入して前記基板を保持する保持工程と、
前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給する供給工程と、
カメラが前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得する撮像工程と、
監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更する条件設定工程と、
前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う監視工程と、
を備え、
前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、
前記条件設定工程において、
前記チャンバー内において第1発生期間で生じる第1異常の有無を前記監視対象とする第4期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、
前記チャンバー内において前記第1発生期間よりも短い第2発生期間で生じる第2異常の有無を前記監視対象とする第5期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定する、基板処理方法。
【請求項7】
請求項から請求項および請求項のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記撮像工程において、前記カメラは、所定の撮像条件で前記画像データを取得し、
前記カメラが取得した前記画像データに対して画像処理を行って、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データを取得する、基板処理方法。
【請求項8】
基板処理装置であって、
チャンバーの内部において基板を保持する基板保持部と、
前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給するノズルと、
前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得するカメラと、
監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更し、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う制御部と、
を備え、
前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、
前記制御部は、
前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、
前記チャンバー内のノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定し、
前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方、および、前記処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第3期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第2フレームレートに設定する、基板処理装置。
【請求項9】
基板処理装置であって、
チャンバーの内部において基板を保持する基板保持部と、
前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給するノズルと、
前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得するカメラと、
監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更し、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う制御部と、
を備え、
前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、
前記制御部は、
前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記解像度を第1解像度に設定し、
前記チャンバー内のノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件として、前記解像度を前記第1解像度よりも低い第2解像度に設定する、基板処理装置。
【請求項10】
基板処理装置であって、
チャンバーの内部において基板を保持する基板保持部と、
前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給するノズルと、
前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得するカメラと、
監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更し、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う制御部と、
を備え、
前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、
前記制御部は、
前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、
前記チャンバー内の前記ノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定し、
前記物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を含む前記監視対象は、前記基板の形状および位置の少なくともいずれか一方、前記ノズルの形状および位置の少なくともいずれか一方、および、前記基板の周縁から飛散する前記流体を受け止める処理カップの形状および位置の少なくともいずれか一方、の少なくともいずれか一つを含む、基板処理装置。
【請求項11】
基板処理装置であって、
チャンバーの内部において基板を保持する基板保持部と、
前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給するノズルと、
前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得するカメラと、
監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更し、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う制御部と、
を備え、
前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、
前記制御部は、
前記チャンバー内において第1発生期間で生じる第1異常の有無を前記監視対象とする第4期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、前記チャンバー内において前記第1発生期間よりも短い第2発生期間で生じる第2異常の有無を前記監視対象とする第5期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定する、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体デバイスなどの製造工程においては、基板に対して純水、フォトレジスト液およびエッチング液などの種々の処理液を供給して、洗浄処理およびレジスト塗布処理などの種々の基板処理を行っている。これらの処理液を使用した基板処理を行う装置としては、基板を水平姿勢で回転させつつ、その基板の表面にノズルから処理液を吐出する基板処理装置が広く用いられている。
【0003】
このような基板処理装置においては、ノズルから処理液が吐出されているか否かの確認が行われる。より確実に吐出の有無を判定する手法として、例えば特許文献1,2にはカメラなどの撮像手段を設けてノズルからの処理液吐出を直接的に監視することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-135679号公報
【文献】特開2015-173148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板の処理を適切に行うためには、処理液のみならず、より多くの監視対象を監視することが望ましい。しかしながら、監視対象は、例えば基板の処理の進行状況によって変化する。具体的な一例として、ノズルが基板の上方の処理位置に移動して停止する移動期間では、ノズルの停止位置を監視対象として監視する。続いて行われる処理液の吐出期間では、ノズルから吐出された処理液の吐出状態を監視対象として監視する。
【0006】
このような種々の監視対象に対して共通の画像条件で画像データを取得すると、必ずしも、全ての監視対象に対して適した画像条件で画像データを取得できるとは限らない。例えば、広い視野範囲、高解像度および高フレームレートで画像データを取得すると、監視対象によっては画像データのデータ量が不要に大きくなるので、監視工程における処理負荷が不要に大きくなる。
【0007】
そこで、本願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の監視対象の各々に対する監視処理をより適切な画像データに基づいて行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基板処理方法の第1の態様は、基板処理方法であって、チャンバーの内部に基板を搬入して前記基板を保持する保持工程と、前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給する供給工程と、カメラが前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得する撮像工程と、監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更する条件設定工程と、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う監視工程と、を備え、前記条件設定工程において、解像度およびフレームレートの少なくともいずれか一つを含む前記画像条件を撮像条件として設定する工程を含み、前記撮像工程において、前記カメラは、前記監視対象に応じた前記画像条件を撮像条件として前記画像データを取得する
【0009】
基板処理方法の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含む。
【0010】
基板処理方法の第3の態様は、第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記条件設定工程において、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、前記チャンバー内のノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定する。
【0011】
基板処理方法の第4の態様は、基板処理方法であって、チャンバーの内部に基板を搬入して前記基板を保持する保持工程と、前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給する供給工程と、カメラが前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得する撮像工程と、監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更する条件設定工程と、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う監視工程と、を備え、前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、前記条件設定工程において、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、前記チャンバー内のノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件、ならびに、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方、および、前記処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第3期間における前記画像データの前記画像条件の各々として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定する。
【0012】
基板処理方法の第5の態様は、基板処理方法であって、チャンバーの内部に基板を搬入して前記基板を保持する保持工程と、前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給する供給工程と、カメラが前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得する撮像工程と、監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更する条件設定工程と、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う監視工程と、を備え、前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記解像度を第1解像度に設定し、前記チャンバー内のノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件として、前記解像度を前記第1解像度よりも低い第2解像度に設定する。
【0013】
基板処理方法の第6の態様は、第5の態様にかかる基板処理方法であって、前記条件設定工程において、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方、および、前記処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第3期間における前記画像データの前記画像条件として、前記解像度を前記第1解像度に設定する。
【0014】
基板処理方法の第7の態様は、基板処理方法であって、チャンバーの内部に基板を搬入して前記基板を保持する保持工程と、前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給する供給工程と、カメラが前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得する撮像工程と、監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更する条件設定工程と、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う監視工程と、を備え、前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、前記条件設定工程において、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、前記チャンバー内のノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定し、前記物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を含む前記監視対象は、前記基板の形状および位置の少なくともいずれか一方、前記ノズルの形状および位置の少なくともいずれか一方、および、前記基板の周縁から飛散する前記流体を受け止める処理カップの形状および位置の少なくともいずれか一方、の少なくともいずれか一つを含む。
【0015】
基板処理方法の第8の態様は、第3から第7のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記処理液の経時的な状態変化を含む前記監視対象は、前記処理液の吐出開始タイミング、吐出停止タイミング、前記処理液の前記基板上での液はね、ならびに、前記ノズルからの前記処理液のぼた落ちおよび出流れの少なくともいずれか一つを含む。
【0016】
基板処理方法の第9の態様は、基板処理方法であって、チャンバーの内部に基板を搬入して前記基板を保持する保持工程と、前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給する供給工程と、カメラが前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得する撮像工程と、監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更する条件設定工程と、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う監視工程と、を備え、前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、前記条件設定工程において、前記チャンバー内において第1発生期間で生じる第1異常の有無を前記監視対象とする第4期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、前記チャンバー内において前記第1発生期間よりも短い第2発生期間で生じる第2異常の有無を前記監視対象とする第5期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定する。
【0018】
基板処理方法の第10の態様は、第から第7および第9のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記撮像工程において、前記カメラは、所定の撮像条件で前記画像データを取得し、前記カメラが取得した前記画像データに対して画像処理を行って、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データを取得する。
【0019】
基板処理装置の第1態様は、基板処理装置であって、チャンバーの内部において基板を保持する基板保持部と前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給するノズルと、前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得するカメラと、監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて解像度およびフレームレートの少なくともいずれか一つを含む画像条件を撮像条件として設定し、当該撮像条件で前記カメラが取得した前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う制御部とを備える。
基板処理装置の第2態様は、チャンバーの内部において基板を保持する基板保持部と、前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給するノズルと、前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得するカメラと、監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更し、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う制御部と、を備え、前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、前記制御部は、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、前記チャンバー内のノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定し、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方、および、前記処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第3期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第2フレームレートに設定する。
基板処理装置の第3態様は、チャンバーの内部において基板を保持する基板保持部と、前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給するノズルと、前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得するカメラと、監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更し、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う制御部と、を備え、前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、前記制御部は、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記解像度を第1解像度に設定し、前記チャンバー内のノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件として、前記解像度を前記第1解像度よりも低い第2解像度に設定する。
基板処理装置の第4態様は、チャンバーの内部において基板を保持する基板保持部と、前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給するノズルと、前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得するカメラと、監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更し、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う制御部と、を備え、前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、前記制御部は、前記チャンバー内の物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を前記監視対象とする第1期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、前記チャンバー内の前記ノズルから前記流体として吐出される処理液の経時的な状態変化を前記監視対象とする第2期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定し、前記物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を含む前記監視対象は、前記基板の形状および位置の少なくともいずれか一方、前記ノズルの形状および位置の少なくともいずれか一方、および、前記基板の周縁から飛散する前記流体を受け止める処理カップの形状および位置の少なくともいずれか一方、の少なくともいずれか一つを含む。
基板処理装置の第5態様は、チャンバーの内部において基板を保持する基板保持部と、前記チャンバーの内部において前記基板に流体を供給するノズルと、前記チャンバーの内部を順次に撮像して画像データを取得するカメラと、監視対象を特定し、前記監視対象に基づいて画像条件を変更し、前記監視対象に応じた前記画像条件を有する前記画像データに基づいて、前記監視対象に対する監視処理を行う制御部と、を備え、前記画像条件は、前記画像データの解像度、フレームレートおよび前記画像データに映される視野範囲の大きさの少なくともいずれか一つを含み、前記制御部は、前記チャンバー内において第1発生期間で生じる第1異常の有無を前記監視対象とする第4期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを第1フレームレートに設定し、前記チャンバー内において前記第1発生期間よりも短い第2発生期間で生じる第2異常の有無を前記監視対象とする第5期間における前記画像データの前記画像条件として、前記フレームレートを前記第1フレームレートよりも高い第2フレームレートに設定する。
【発明の効果】
【0020】
基板処理方法の第1、第2、第7および第8の態様ならびに基板処理装置の第1および第4の態様によれば、複数の監視対象の各々に対する監視処理をより適切な画像データに基づいて行うことができる。しかも、基板処理方法の第1の態様によれば、カメラが監視対象に応じた撮像条件で画像データを取得するので、監視対象に応じた画像データを用いて監視処理を行うことができる。
【0021】
基板処理方法の第3の態様によれば、物体の位置および形状の少なくともいずれか一方が監視対象であるときには、フレームレートが低い第1フレームレートに設定される。よって、処理負荷を低減させることができる。一方で、処理液の経時的な状態変化が監視対象であるときには、フレームレートが高い第2フレームレートに設定される。よって、処理液の状態変化をより高い精度で監視することができる。
【0022】
基板処理方法の第4の態様および基板処理装置の第2の態様によれば、フレームレートが高い第2フレームレートに設定されるので、処理液の状態変化を適切に監視することができる。
【0023】
基板処理方法の第5の態様および基板処理装置の第3の態様によれば、処理液の経時的な状態変化が監視対象である第2期間では、解像度が低い第2解像度に設定される。よって、処理負荷を低減させることができる。一方で、物体の位置および形状の少なくともいずれか一方が監視対象である第1期間では、解像度が高い第1解像度に設定される。よって、物体の位置および形状の少なくともいずれか一方をより高い精度で監視することができる。
【0024】
基板処理方法の第6の態様によれば、解像度が高い第1解像度に設定されるので、物体の形状および位置の少なくともいずれか一方を適切に監視することができる。
【0025】
基板処理方法の第9の態様および基板処理装置の第5の態様によれば、発生期間の長い第1異常では、フレームレートを低い第1フレームレートに設定するので、低い処理負荷で第1異常の有無を監視することができる。また、発生期間の短い第2異常では、フレームレートを高い第2フレームレートに設定するので、第2異常の有無を監視することができる。
【0027】
基板処理方法の第10の態様によれば、カメラが撮像条件を変更できなくても、監視対象に応じた画像条件を有する画像データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】基板処理装置の全体構成の一例を概略的に示す図である。
図2】処理ユニットの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図3】処理ユニットの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
図4】各ノズルの移動経路の一例を概略的に示す図である。
図5】制御部の内部構成の一例を示す機能ブロック図である。
図6】処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図7】処理液工程の具体的な工程の一例を示す表である。
図8】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図9】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図10】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図11】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図12】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図13】処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図14】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図15】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図16】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図17】エッジ画像データの一例を概略的に示す図である。
図18】エッジ画像データの一例を概略的に示す図である。
図19】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図20】基板の位置と回転角度との関係の一例を概略的に示すグラフである。
図21】監視対象と撮像条件との一例を示す表である。
図22】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図23】輝度値の時間変化の一例を概略的に示すグラフである。
図24】処理ユニットの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
図25】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図26】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図27】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図28】差分画像の一例を概略的に示す図である。
図29】処理ユニットの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
図30】撮像画像データの一例を概略的に示す図である。
図31】視野範囲を説明するための図である。
図32】監視対象と撮像条件との一例を示す表である。
図33】制御部の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0030】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0031】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0032】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0033】
<基板処理装置の全体構成>
図1は、本実施の形態に関する基板処理装置100の内部のレイアウトの一例を説明するための図解的な平面図である。図1に例が示されるように、基板処理装置100は、処理対象である基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。
【0034】
本実施の形態に関する基板処理装置100は、円形薄板状であるシリコン基板である基板Wに対して、薬液および純水などのリンス液を用いて洗浄処理を行った後、乾燥処理を行う。
【0035】
上記の薬液としては、たとえば、アンモニアと過酸化水素水との混合液(SC1)、塩酸と過酸化水素水との混合水溶液(SC2)、または、DHF液(希フッ酸)などが用いられる。
【0036】
以下の説明では、薬液、リンス液および有機溶剤などを総称して「処理液」とする。なお、洗浄処理のみならず、不要な膜を除去するための薬液、または、エッチングのための薬液なども「処理液」に含まれるものとする。
【0037】
基板処理装置100は、複数の処理ユニット1と、ロードポートLPと、インデクサロボット102と、主搬送ロボット103と、制御部9とを備える。
【0038】
キャリアとしては、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、または、基板Wを外気にさらすOC(Open Cassette)が採用されてもよい。また、移送ロボットは、キャリアと主搬送ロボット103との間で基板Wを移送する。
【0039】
処理ユニット1は、1枚の基板Wに対して液処理および乾燥処理を行う。本実施の形態に関する基板処理装置100には、同様の構成である12個の処理ユニット1が配置されている。
【0040】
具体的には、それぞれが鉛直方向に積層された3個の処理ユニット1を含む4つのタワーが、主搬送ロボット103の周囲を取り囲むようにして配置されている。
【0041】
図1では、3段に重ねられた処理ユニット1の1つが概略的に示されている。なお、基板処理装置100における処理ユニット1の数量は、12個に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0042】
主搬送ロボット103は、処理ユニット1が積層された4個のタワーの中央に設置されている。主搬送ロボット103は、インデクサロボット102から受け取る処理対象の基板Wをそれぞれの処理ユニット内に搬入する。また、主搬送ロボット103は、それぞれの処理ユニット1から処理済みの基板Wを搬出してインデクサロボット102に渡す。制御部9は、基板処理装置100のそれぞれの構成要素の動作を制御する。
【0043】
以下、基板処理装置100に搭載された12個の処理ユニット1のうちの1つについて説明するが、他の処理ユニット1についても、ノズルの配置関係が異なること以外は、同一の構成を有する。
【0044】
<処理ユニット>
次に、処理ユニット1について説明する。以下、基板処理装置100に搭載された12個の処理ユニット1のうちの1つを説明する。図2は、処理ユニット1の平面図である。また、図3は、処理ユニット1の縦断面図である。
【0045】
処理ユニット1は、チャンバー10内に、基板保持部の一例であるスピンチャック20と、第1ノズル30と、第2ノズル60と、第3ノズル65と、固定ノズル80と、処理カップ40と、カメラ70とを含む。
【0046】
チャンバー10は、鉛直方向に沿う側壁11、側壁11によって囲まれた空間の上側を閉塞する天井壁12および下側を閉塞する床壁13を含む。側壁11、天井壁12および床壁13によって囲まれた空間が処理空間となる。また、チャンバー10の側壁11の一部には、主搬送ロボット103が基板Wを搬出入するための搬出入口およびその搬出入口を開閉するシャッターが設けられている(いずれも図示省略)。
【0047】
チャンバー10の天井壁12には、基板処理装置100が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバー10内の処理空間に供給するためのファンフィルタユニット(FFU)14が取り付けられている。ファンフィルタユニット14は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバー10内に送り出すためのファンおよびフィルタ(例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ)を備えており、チャンバー10内の処理空間に清浄空気のダウンフローを形成する。ファンフィルタユニット14から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレートを天井壁12の直下に設けるようにしても良い。
【0048】
スピンチャック20は、基板Wを水平姿勢(法線が鉛直方向に沿う姿勢)に保持する。スピンチャック20は、鉛直方向に沿って延びる回転軸24の上端に水平姿勢で固定された円板形状のスピンベース21を備える。スピンベース21の下方には回転軸24を回転させるスピンモータ22が設けられる。スピンモータ22は、回転軸24を介してスピンベース21を水平面内にて回転させる。また、スピンモータ22および回転軸24の周囲を取り囲むように筒状のカバー部材23が設けられている。
【0049】
円板形状のスピンベース21の外径は、スピンチャック20に保持される円形の基板Wの径よりも若干大きい。よって、スピンベース21は、保持すべき基板Wの下面の全面と対向する上面21aを有している。
【0050】
スピンベース21の上面21aの周縁部には複数(本実施形態では4本)のチャックピン26が立設されている。複数のチャックピン26は、円形の基板Wの周縁に対応する円周上に沿って均等な間隔をあけて(本実施形態のように4個のチャックピン26であれば90°間隔にて)配置されている。各チャックピン26は、基板Wの周縁に当接する保持位置と、基板Wの周縁から離れた開放位置と間で駆動可能に設けられている。複数のチャックピン26は、スピンベース21内に収容された図示省略のリンク機構によって連動して駆動される。スピンチャック20は、複数のチャックピン26をそれぞれの当接位置で停止させることにより、当該基板Wをスピンベース21の上方で上面21aに近接した水平姿勢にて保持することができるとともに(図3参照)、複数のチャックピン26をそれぞれの開放位置で停止させることにより、基板Wの保持を解除することができる。
【0051】
スピンモータ22を覆うカバー部材23は、その下端がチャンバー10の床壁13に固定され、上端がスピンベース21の直下にまで到達している。カバー部材23の上端部には、カバー部材23から外方へほぼ水平に張り出し、さらに下方に屈曲して延びる鍔状部材25が設けられている。複数のチャックピン26による把持によってスピンチャック20が基板Wを保持した状態にて、スピンモータ22が回転軸24を回転させることにより、基板Wの中心を通る鉛直方向に沿った回転軸線CXまわりに基板Wを回転させることができる。なお、スピンモータ22の駆動は制御部9によって制御される。
【0052】
第1ノズル30は、ノズルアーム32の先端に吐出ヘッド31を取り付けて構成されている。ノズルアーム32の基端側はノズル基台33に固定して連結されている。ノズル基台33は図示を省略するモータによって鉛直方向に沿った軸のまわりで回動可能とされている。ノズル基台33が回動することにより、図2中の矢印AR34にて示すように、第1ノズル30はスピンチャック20の上方の空間内で円弧状に移動する。
【0053】
図4は、第1ノズル30の移動経路の一例を概略的に示す平面図である。図4に例示されるように、第1ノズル30の吐出ヘッド31は、ノズル基台33の回転により、ノズル基台33を中心とした周方向に沿って移動する。第1ノズル30は適宜の位置で停止することができる。図4の例では、第1ノズル30は中央位置P31、周縁位置P32および待機位置P33の各々で停止可能である。
【0054】
中央位置P31は、吐出ヘッド31が、スピンチャック20に保持された基板Wの中央部と鉛直方向において対向する位置である。中央位置P31に位置する第1ノズル30が回転中の基板Wの上面に処理液を吐出することにより、基板Wの上面の全面に処理液を供給できる。これにより、基板Wの上面の全面に対して処理を施すことができる。
【0055】
周縁位置P32は、吐出ヘッド31が、スピンチャック20に保持された基板Wの周縁部と鉛直方向において対向する位置である。第1ノズル30は、周縁位置P32に位置した状態において、回転中の基板Wの上面に処理液を吐出してもよい。これにより、基板Wの上面の周縁部のみに処理液を吐出でき、基板Wの周縁部のみを処理できる(いわゆるベベル処理)。
【0056】
また、第1ノズル30は中央位置P31と周縁位置P32との間で揺動しながら、回転中の基板Wの上面に処理液を吐出することも可能である。この場合にも、基板Wの上面の全面を処理することができる。
【0057】
一方で、第1ノズル30は周縁位置P32において処理液を吐出しなくてもよい。例えば、周縁位置P32は、第1ノズル30が中央位置P31から待機位置P33へ移動する際に、一旦待機する中継位置であってもよい。
【0058】
待機位置P33は、吐出ヘッド31が、スピンチャック20に保持された基板Wと鉛直方向において対向しない位置である。待機位置P33には、第1ノズル30の吐出ヘッド31を収容する待機ポッドが設けられていても良い。
【0059】
図3に例示されるように、第1ノズル30は供給管34を介して処理液供給源36に接続される。供給管34にはバルブ35が設けられている。バルブ35は供給管34の流路を開閉する。バルブ35が開くことにより、処理液供給源36は供給管34を通じて処理液を第1ノズル30に供給する。なお、第1ノズル30は、複数種の処理液(少なくとも純水を含む)が供給されるように構成されてもよい。
【0060】
また、本実施形態の処理ユニット1には、上記第1ノズル30に加えてさらに第2ノズル60および第3ノズル65が設けられている。本実施形態の第2ノズル60および第3ノズル65は、上記の第1ノズル30と同じ構成を有する。すなわち、第2ノズル60は、ノズルアーム62の先端に吐出ヘッド61を取り付けて構成される。第2ノズル60は、ノズルアーム62の基端側に連結されたノズル基台63によって、矢印AR64にて示すように、スピンチャック20の上方の空間を円弧状に移動する。第2ノズル60の移動経路上に位置する中央位置P61、周縁位置P62および待機位置P63の相対的な位置関係は、それぞれ、中央位置P31、周縁位置P32および待機位置P33の相対的な位置関係と同様である。
【0061】
同様に、第3ノズル65は、ノズルアーム67の先端に吐出ヘッド66を取り付けて構成される。第3ノズル65は、ノズルアーム67の基端側に連結されたノズル基台68によって、矢印AR69にて示すように、スピンチャック20の上方の空間を円弧状に移動する。処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で円弧状に移動する。第3ノズル65の移動経路上に位置する中央位置P66、周縁位置P67および待機位置P68の相対的な位置関係は、それぞれ、中央位置P31、周縁位置P32および待機位置P33の相対的な位置関係と同様である。
【0062】
また、第3ノズル65は昇降可能であってもよい。例えばノズル基台68に内蔵された不図示のノズル昇降機構によって第3ノズル65が昇降する。この場合、第3ノズル65は、中央位置P66よりも鉛直上方に位置する中央上位置P69にも停止可能である。なお、第1ノズル30および第2ノズル60の少なくともいずれか一方も昇降可能に設けられてもよい。
【0063】
第2ノズル60および第3ノズル65の各々も、第1ノズル30と同様に供給管(図示省略)を介して処理液供給源(図示省略)に接続される。各供給管にはバルブが設けられ、バルブが開閉することで処理液の供給/停止が切り替えられる。なお、第2ノズル60および第3ノズル65の各々は、少なくとも純水を含む複数種の処理液が供給されるように構成されてもよい。また、第1ノズル30、第2ノズル60および第3ノズル65の少なくともいずれか一つは、純水などの洗浄液と加圧した気体とを混合して液滴を生成し、その液滴と気体との混合流体を基板Wに噴射する二流体ノズルであっても良い。また、処理ユニット1に設けられるノズルの数は3本に限定されるものではなく、1本以上であれば良い。
【0064】
図2および図3の例では、処理ユニット1には、固定ノズル80も設けられている。固定ノズル80は、スピンチャック20よりも上方、且つ、スピンチャック20の外周縁よりも径方向外側に位置している。より具体的な一例として、固定ノズル80は後述の処理カップ40と鉛直方向において向かい合う位置に設けられている。固定ノズル80の吐出口は基板W側を向いており、その開口軸は例えば水平方向に沿っている。固定ノズル80も、スピンチャック20に保持された基板Wの上面に処理液を吐出する。固定ノズル80から吐出された処理液は、例えば、基板Wの上面の中央部に着液する。
【0065】
図3に例示されるように、固定ノズル80は供給管81を介して処理液供給源83に接続される。供給管81にはバルブ82が設けられている。バルブ82は供給管81の流路を開閉する。バルブ82が開くことにより、処理液供給源83は供給管81を通じて処理液(例えば純水)を固定ノズル80に供給し、固定ノズル80の吐出口から処理液が吐出される。
【0066】
スピンチャック20を取り囲む処理カップ40は、互いに独立して昇降可能な内カップ41、中カップ42および外カップ43を含む。内カップ41は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この内カップ41は、平面視円環状の底部44と、底部44の内周縁から上方に立ち上がる円筒状の内壁部45と、底部44の外周縁から上方に立ち上がる円筒状の外壁部46と、内壁部45と外壁部46との間から立ち上がり、上端部が滑らかな円弧を描きつつ中心側(スピンチャック20に保持される基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる第1案内部47と、第1案内部47と外壁部46との間から上方に立ち上がる円筒状の中壁部48とを一体的に含んでいる。
【0067】
内壁部45は、内カップ41が最も上昇された状態で、カバー部材23と鍔状部材25との間に適当な隙間を保って収容されるような長さに形成されている。中壁部48は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中カップ42の後述する第2案内部52と処理液分離壁53との間に適当な隙間を保って収容されるような長さに形成されている。
【0068】
第1案内部47は、滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部47bを有している。また、内壁部45と第1案内部47との間は、使用済みの処理液を集めて廃棄するための廃棄溝49とされている。第1案内部47と中壁部48との間は、使用済みの処理液を集めて回収するための円環状の内側回収溝50とされている。さらに、中壁部48と外壁部46との間は、内側回収溝50とは種類の異なる処理液を集めて回収するための円環状の外側回収溝51とされている。
【0069】
廃棄溝49には、この廃棄溝49に集められた処理液を排出するとともに、廃棄溝49内を強制的に排気するための図示省略の排気液機構が接続されている。排気液機構は、例えば、廃棄溝49の周方向に沿って等間隔で4つ設けられている。また、内側回収溝50および外側回収溝51には、内側回収溝50および外側回収溝51にそれぞれ集められた処理液を処理ユニット1の外部に設けられた回収タンクに回収するための回収機構(いずれも図示省略)が接続されている。なお、内側回収溝50および外側回収溝51の底部は、水平方向に対して微少角度だけ傾斜しており、その最も低くなる位置に回収機構が接続されている。これにより、内側回収溝50および外側回収溝51に流れ込んだ処理液が円滑に回収される。
【0070】
中カップ42は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この中カップ42は、第2案内部52と、この第2案内部52に連結された円筒状の処理液分離壁53とを一体的に含んでいる。
【0071】
第2案内部52は、内カップ41の第1案内部47の外側において、第1案内部47の下端部と同軸円筒状をなす下端部52aと、下端部52aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部52bと、上端部52bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部52cとを有している。下端部52aは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、第1案内部47と中壁部48との間に適当な隙間を保って内側回収溝50内に収容される。また、上端部52bは、内カップ41の第1案内部47の上端部47bと上下方向に重なるように設けられ、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、第1案内部47の上端部47bに対してごく微小な間隔を保って近接する。さらに、上端部52bの先端を下方に折り返して形成される折返し部52cは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、折返し部52cが第1案内部47の上端部47bの先端と水平方向に重なるような長さとされている。
【0072】
また、第2案内部52の上端部52bは、下方ほど肉厚が厚くなるように形成されており、処理液分離壁53は上端部52bの下端外周縁部から下方に延びるように設けられた円筒形状を有している。処理液分離壁53は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中壁部48と外カップ43との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。
【0073】
外カップ43は、中カップ42の第2案内部52の外側において、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この外カップ43は、第3案内部としての機能を有する。外カップ43は、第2案内部52の下端部52aと同軸円筒状をなす下端部43aと、下端部43aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部43bと、上端部43bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部43cとを有している。
【0074】
下端部43aは、内カップ41と外カップ43とが最も近接した状態で、中カップ42の処理液分離壁53と内カップ41の外壁部46との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。また、上端部43bは、中カップ42の第2案内部52と上下方向に重なるように設けられ、中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、第2案内部52の上端部52bに対してごく微小な間隔を保って近接する。さらに、上端部43bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部43cは、中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、折返し部43cが第2案内部52の折返し部52cと水平方向に重なるように形成されている。
【0075】
また、内カップ41、中カップ42および外カップ43は互いに独立して昇降可能とされている。すなわち、内カップ41、中カップ42および外カップ43のそれぞれには個別にカップ昇降機構(図示省略)が設けられており、それによって別個独立して昇降される。このようなカップ昇降機構としては、例えばボールネジ機構やエアシリンダなどの公知の種々の機構を採用することができる。
【0076】
仕切板15は、処理カップ40の周囲においてチャンバー10の内側空間を上下に仕切るように設けられている。仕切板15は、処理カップ40を取り囲む1枚の板状部材であっても良いし、複数の板状部材をつなぎ合わせたものであっても良い。また、仕切板15には、厚さ方向に貫通する貫通孔や切り欠きが形成されていても良く、本実施形態では第1ノズル30のノズル基台33、第2ノズル60のノズル基台63および第3ノズル65のノズル基台68を支持するための支持軸を通すための貫通穴が形成されている。
【0077】
仕切板15の外周端はチャンバー10の側壁11に連結されている。また、仕切板15の処理カップ40を取り囲む端縁部は外カップ43の外径よりも大きな径の円形形状となるように形成されている。よって、仕切板15が外カップ43の昇降の障害となることはない。
【0078】
また、チャンバー10の側壁11の一部であって、床壁13の近傍には排気ダクト18が設けられている。排気ダクト18は図示省略の排気機構に連通接続されている。ファンフィルタユニット14から供給されてチャンバー10内を流下した清浄空気のうち、処理カップ40と仕切板15と間を通過した空気は排気ダクト18から装置外に排出される。
【0079】
カメラ70は、チャンバー10内であって仕切板15よりも上方に設置されている。カメラ70は、例えば固体撮像素子のひとつであるCCD(Charge Coupled Device)と、レンズなどの光学系とを含む。カメラ70は、後述するチャンバー10内の種々の監視対象を監視するために設けられる。監視対象の具体例については後に詳述する。カメラ70は、種々の監視対象を撮像視野に含む位置に配置されている。カメラ70はフレームレートごとに撮像視野を撮像して撮像画像データを取得し、取得した撮像画像データを順次に制御部9に出力する。
【0080】
図3に示されるように、チャンバー10内であって仕切板15よりも上方の位置に、照明部71が設けられている。チャンバー10内が暗室である場合、カメラ70が撮像を行う際に照明部71が光を照射するように、制御部9が照明部71を制御してもよい。
【0081】
基板処理装置100に設けられた制御部9のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同一である。すなわち、制御部9は、各種演算処理を行うCPUなどの処理部と、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM(Read Only Memory)などの一時的な記憶媒体と、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM(Random Access Memory)および制御用ソフトウェアまたはデータなどを記憶しておく磁気ディスクなどである非一時的な記憶媒体とを備えて構成される。制御部9のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって、基板処理装置100の各動作機構が制御部9に制御され、基板処理装置100における処理が進行する。なお、制御部9はその機能の実現にソフトウェアが不要な専用のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0082】
図5は、制御部9の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。制御部9は、監視処理部91と、条件設定部92と、処理制御部93とを含んでいる。
【0083】
処理制御部93はチャンバー10内の各構成を制御する。具体的には、処理制御部93は、スピンモータ22、バルブ35,82等の各種バルブ、ノズル基台33,63,68のモータおよびノズル昇降機構、カップ昇降機構ならびにファンフィルタユニット14を制御する。処理制御部93がこれらの構成を所定の手順に沿って制御することにより、処理ユニット1は基板Wに対する処理を行うことができる。基板Wに対する処理の具体的な流れの一例については後に詳述する。
【0084】
監視処理部91は、カメラ70がチャンバー10内を撮像して取得した撮像画像データに基づいて監視処理を行う。これにより、監視処理部91はチャンバー10内の種々の監視対象を監視することができる。監視処理の具体例については後に詳述する。
【0085】
条件設定部92は、監視すべき監視対象を特定し、当該監視対象に応じてカメラ70の撮像条件を変更する。そして、条件設定部92は当該撮像条件をカメラ70に通知する。撮像条件は、例えば、解像度、フレームレートおよび視野範囲の少なくともいずれか一つを含む。カメラ70は、条件設定部92から通知された撮像条件で撮像画像データを取得し、当該撮像画像データを制御部9に出力する。監視対象に応じた撮像条件の具体的な一例については後に詳述する。
【0086】
<基板処理の流れの一例>
<全体の流れ>
図6は、基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、主搬送ロボット103が未処理の基板Wを処理ユニット1に搬入する(ステップS1:搬入工程)。次に、スピンチャック20が基板Wを水平姿勢にて保持する(ステップS2:保持工程)。具体的には、複数のチャックピン26がそれぞれの当接位置に移動することにより、複数のチャックピン26が基板Wを保持する。
【0087】
次に、スピンモータ22が基板Wの回転を開始する(ステップS3:回転工程)。具体的には、スピンモータ22がスピンチャック20を回転させることにより、スピンチャック20に保持された基板Wを回転させる。次に、カップ昇降機構が処理カップ40を上昇させる(ステップS4:カップ上昇工程)。これにより、処理カップ40が上位置で停止する。
【0088】
次に、基板Wに対して処理液を順次に供給する(ステップS5:処理液工程)。なお、この処理液工程(ステップS5)において、カップ昇降機構は、基板Wに供給される処理液の種類に応じて、適宜に上昇させるカップを切り替えるものの、この点は、本実施の形態の本質とは異なるので、以下では、その説明を省略する。
【0089】
図7は、処理液工程(ステップS5)の具体的な手順の一例を示す表である。図7の例では、処理液工程は工程ST1から工程ST12によって規定される。当該表は、各工程における所要時間と、第1ノズル30、第2ノズル60、第3ノズル65および固定ノズル80から吐出される処理液の流量(吐出流量)と、第1ノズル30、第2ノズル60および第3ノズル65の位置とを示している。なお図7の例は、各工程において実行され得る監視処理および撮像条件の例も示されているが、これらについては後に詳述する。
【0090】
図7の例では、工程ST1では所要時間t1に亘って、第1ノズル30、第2ノズル60、第3ノズル65および固定ノズル80からの処理液の吐出流量はゼロであり、第1ノズル30、第2ノズル60および第3ノズル65はそれぞれの待機位置P33,P63,P68で停止している。所要時間t1は例えばゼロでもよい。この場合、工程ST1は初期状態を示しているに過ぎない。
【0091】
次の工程ST2では、ノズル基台33は所要時間t2において、第1ノズル30を待機位置P33から中央位置P31に移動させる。所要時間t2は例えば数秒程度である。
【0092】
次の工程ST3では、第1ノズル30は所要時間t3において、流量F30で処理液を基板Wの上面に吐出する。基板Wの上面に着液した処理液は、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの上面で広がり、基板Wの周縁から飛散する。基板Wの周縁から飛散した処理液は処理カップ40で受け止められて回収される。所要時間t3は例えば数十秒程度であり、流量F30は例えば数千cc/min程度である。この工程ST3により、基板Wに対して処理液に応じた処理を行うことができる。
【0093】
次の工程ST4では、所要時間t4において、固定ノズル80は流量F80で処理液(例えばリンス液)を吐出しつつ、ノズル基台33は第1ノズル30を中央位置P31から周縁位置P32に移動させる。固定ノズル80からの処理液は基板Wの上面の中央部に着液し、遠心力を受けて基板Wの上面で広がり、基板Wの周縁から飛散する。基板Wの周縁から飛散した処理液は処理カップ40で受け止められて回収される。所要時間t4は例えば数十秒程度であり、流量F80は例えば数千cc/min程度である。
【0094】
次の工程ST5では、引き続き、固定ノズル80は流量F80で処理液(例えばリンス液)を吐出しつつ、ノズル基台33は所要時間t5において、第1ノズル30を周縁位置P32から待機位置P33に移動させる。所要時間t5は例えば数秒程度である。
【0095】
次の工程ST6では、引き続き、固定ノズル80は流量F80で処理液(例えばリンス液)を吐出しつつ、ノズル基台63は所要時間t6において、第2ノズル60を待機位置P63から周縁位置P62に移動させる。所要時間t6は例えば数秒程度である。
【0096】
固定ノズル80は工程ST4から工程ST6において処理液を吐出する。固定ノズル80が吐出する処理液がリンス液である場合、工程ST3の終了時点で基板Wの上面に残留した処理液をリンス液に置換することができる。
【0097】
次の工程ST7では、所要時間t7において、ノズル基台63は第2ノズル60を周縁位置P62から中央位置P61に移動させ、第2ノズル60は流量F60で処理液を基板Wの上面に吐出する。所要時間t7は例えば数十秒程度であり、流量F60は例えば数千cc/min程度である。この工程ST7により、基板Wの上面を処理できる。
【0098】
次の工程ST8では、ノズル基台63は所要時間t8において、第2ノズル60を中央位置P61から待機位置P63に移動させる。所要時間t8は例えば数秒程度である。
【0099】
次の工程ST9では、ノズル基台68は所要時間t9において、第3ノズル65を待機位置P68から中央上位置P69に移動させる。所要時間t9は例えば数秒程度である。
【0100】
次の工程ST10では、第3ノズル65は所要時間t10において、流量F65で処理液を基板Wの上面に吐出する。所要時間t10は例えば数十秒程度であり、流量F65は例えば数千cc/minである。第3ノズル65が吐出する処理液がリンス液である場合、工程ST7の終了時点で基板Wの上面に残留した処理液をリンス液に置換することができる。
【0101】
次の工程ST11では、ノズル基台63は所要時間t11において、第3ノズル65を中央上位置P69から中央位置P66に下降させる。所要時間t11は例えば数十秒程度である。
【0102】
次の工程ST12では、ノズル基台63は所要時間t12において、第3ノズル65を中央位置P66から待機位置P68に移動させる。所要時間t12は例えば数秒程度である。
【0103】
再び図6を参照して、処理液工程(ステップS5)の終了後に、処理ユニット1は、基板Wを乾燥させる(ステップS6:乾燥工程)。例えば、スピンモータ22が基板Wの回転速度を増加させて、基板Wを乾燥させる(いわゆるスピンドライ)。
【0104】
次に、カップ昇降機構は処理カップ40を下降させる(ステップS7:カップ下降工程)。
【0105】
次に、スピンモータ22はスピンチャック20および基板Wの回転を終了し、スピンチャック20は基板Wの保持を解除する(ステップS8:保持解除工程)。具体的には、複数のチャックピン26がそれぞれの開放位置に移動することで、保持を解除する。
【0106】
次に、主搬送ロボット103は、処理済みの基板Wを処理ユニット1から搬出する(ステップS9:搬出工程)。
【0107】
以上のようにして、基板Wに対する処理が行われる。
【0108】
<監視>
監視処理部91はカメラ70を用いてチャンバー10内を監視し、基板Wに対する処理が適切に進行しているか否かを判断する。監視処理部91が監視する監視対象は、以下の説明から理解できるように、処理の進行状況に応じて順次に変化する。以下、チャンバー10内の監視対象の例を説明する。
【0109】
<監視対象>
<ノズルの位置>
上述の処理液工程(図7参照)において、第1ノズル30、第2ノズル60および第3ノズル65は適宜に移動する。例えば、第1ノズル30は工程ST2において待機位置P33から中央位置P31に移動する。このとき、ノズル基台33のモータ異常等により、第1ノズル30が中央位置P31からずれて停止する場合もある。この場合、工程ST3おける処理が不適切に終了し得る。
【0110】
そこで、ノズルが移動する工程(期間)における監視対象として、ノズルの位置を採用してもよい。図7の例では、ノズルの位置を監視する位置監視処理を行う工程を斜線のハッチングで模式的に示している。以下、位置監視処理の具体的な一例について述べる。
【0111】
図8は、位置監視処理を行う工程において取得される撮像画像データの一例を概略的に示す図である。図8は、工程ST2において取得される撮像画像データの一例を示している。図8の撮像画像データには、中央位置P31で停止する第1ノズル30の吐出ヘッド31が含まれている。つまり、図8は、第1ノズル30が工程ST2において待機位置P33から中央位置P31に移動した後に取得された撮像画像データを示している。この撮像画像データには、第1ノズル30の他、上位置に位置する処理カップ40、処理カップ40の開口内に位置する基板W、および、固定ノズル80も含まれている。
【0112】
監視処理部91は、工程ST2において取得された撮像画像データを解析して、第1ノズル30の位置を検出する。例えば、監視処理部91は、予め記憶媒体に記憶された第1ノズル30(具体的には、吐出ヘッド31)を含む参照画像データRI1と、撮像画像データとのパターンマッチングにより、撮像画像データ内の第1ノズル30の位置を特定する。なお、図8の例では、参照画像データRI1を模式的に仮想線で、撮像画像データに重ね合わせて示している。
【0113】
次に、監視処理部91は、検出した第1ノズル30の位置の適否を判断する。例えば、監視処理部91は、第1ノズル30の位置と、予め設定された中央位置P31との差が所定のノズル位置許容値以下であるか否かを判断する。監視処理部91は、当該差がノズル位置許容値以下であるときに、第1ノズル30が中央位置P31に位置していると判断する。一方で、監視処理部91は当該差がノズル位置許容値よりも大きいときに、第1ノズル30が中央位置P31に位置していないと判断する。つまり、監視処理部91はノズル位置異常が生じたと判断する。
【0114】
異常が生じたときには、監視処理部91は不図示の報知部(例えばディスプレイまたはスピーカなど)にその異常を報知させてもよい。また、制御部9は処理ユニット1の動作を停止させて、基板Wに対する処理を中断してもよい。なお、この点は、以下の種々の監視処理においても同様であるので、以下では、繰り返しの説明を避ける。
【0115】
ところで、第1ノズル30は工程ST2において待機位置P33から中央位置P31に移動する。監視処理部91はこの第1ノズル30の移動中にその位置の適否判断を行う必要はない。そこで、監視処理部91は、連続する複数枚の撮像画像データにおける第1ノズル30の位置が一定となったときに、第1ノズル30が停止したと判断してもよい。そして、監視処理部91は、停止後の第1ノズル30の位置と中央位置P31との差がノズル位置許容値以下であるか否かを判断してもよい。つまり、監視処理部91は、第1ノズル30の位置が安定してから、第1ノズル30の位置の適否を判断するとよい。
【0116】
図7の例では、工程ST3では、工程ST2に引き続き、第1ノズル30が中央位置P31で停止する。このように連続する工程ST2および工程ST3において第1ノズル30の位置が変化していない場合には、監視処理部91は工程ST3において位置監視処理を行う必要はない。図7の例では、監視処理部91は工程ST3では位置監視処理を行っていない。これによれば、不要な位置監視処理の実行を低減させることができ、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。
【0117】
また、図7の例では、工程ST4において、第1ノズル30は中央位置P31から周縁位置P32に移動する。よって、監視処理部91は工程ST4においても位置監視処理を行ってもよい。具体的には、監視処理部91は撮像画像データに基づいて停止後の第1ノズル30の位置を検出し、第1ノズル30が周縁位置P32に適切に停止しているか否かを判断してもよい。この適否判断も、上述と同様に行うことができる。
【0118】
また、図7の例では、工程ST5において、第1ノズル30は周縁位置P32から待機位置P33に移動している。しかしながら、図7の例では、監視処理部91は工程ST5においては位置監視処理を行っていない。つまり、監視処理部91は待機位置P33に関して第1ノズル30の位置を監視していない。これは、第1ノズル30が待機位置P33からずれて停止しても、基板Wの処理に対する影響は少ないからである。もちろん、監視処理部91は待機位置P33に関しても位置監視処理を行ってもよい。
【0119】
監視処理部91は、第2ノズル60および第3ノズル65に対しても、少なくとも、その位置が変化する工程において位置監視処理を行うとよい。図7の例では、工程ST6および工程ST7において第2ノズル60が移動するので、監視処理部91は工程ST6および工程ST7において、第2ノズル60の位置を監視する位置監視処理を行う。また、図7の例では、工程ST9および工程ST11において第3ノズル65が移動するので、監視処理部91は工程ST9および工程ST11において、第3ノズル65の位置を監視する位置監視処理を行う。
【0120】
なお、図7の例では、第2ノズル60が待機位置P63に移動する工程ST8、および、第3ノズル65が待機位置P68に移動する工程ST12では、監視処理部91は位置監視処理を行っていない。もちろん、これらの工程でも位置監視処理を行ってもよい。
【0121】
<処理液>
上述の処理液工程(図7参照)において、第1ノズル30、第2ノズル60、第3ノズル65および固定ノズル80は適宜に処理液を吐出する。例えば、第1ノズル30は工程ST3の所要時間t3において、基板Wの上面に処理液を吐出する。このとき、第1ノズル30が適切に処理液を吐出することで、基板Wに対する処理を行うことができる。
【0122】
そこで、各ノズルが処理液を吐出する工程における監視対象として、処理液の状態を採用してもよい。図7の例では、処理液に関する処理液監視処理を行う工程を、砂地のハッチングで模式的に示している。以下、処理液監視処理の具体的な一例について述べる。
【0123】
<吐出時間>
例えば、工程ST3において第1ノズル30が実際に処理液を吐出する吐出時間が規定時間からずれると、工程ST3の処理が不適切に終了し得る。具体的には、吐出時間が短すぎると基板Wに対する処理が不足し、吐出時間が長すぎると基板Wに対する処理が過剰となる。
【0124】
そこで、各ノズルが処理液を吐出する工程における監視対象として、処理液の吐出開始タイミングおよび吐出停止タイミング、ひいては、吐出時間を採用してもよい。以下、処理液の吐出時間を監視する吐出時間監視処理の具体的な一例について述べる。
【0125】
図9は、吐出時間監視処理を行う工程において取得される撮像画像データの一例を概略的に示す図である。図9は、工程ST3において取得される撮像画像データの一例を示している。図9の撮像画像データには、処理液を吐出している第1ノズル30が含まれている。つまり、図9は、第1ノズル30が工程ST3において処理液の吐出を開始した後に取得された撮像画像データを示している。
【0126】
工程ST3において第1ノズル30が処理液の吐出を開始する前では、カメラ70は、処理液を吐出していない第1ノズル30を含んだ撮像画像データ(例えば図8)を順次に取得する。第1ノズル30から処理液が吐出され始めると、カメラ70は、処理液を吐出した第1ノズル30を含んだ撮像画像データ(例えば図9)を順次に取得する。よって、順次に取得される撮像画像データごとに、第1ノズル30が処理液を吐出しているか否かを特定できれば、その特定結果に基づいて、第1ノズル30が処理液を開始する吐出開始タイミングを特定することができる。
【0127】
そこで、監視処理部91は撮像画像データごとに、第1ノズル30が処理液を吐出しているか否かを判断する。図8および図9の例では、撮像画像データには吐出判定領域R1が設定されている。吐出判定領域R1は、第1ノズル30の先端(つまり、吐出ヘッド31の先端)から吐出方向に延びる領域を含む。吐出判定領域R1は、例えば、第1ノズル30の先端から吐出方向(ここでは下側)に延在する矩形状の形状を有している。
【0128】
図8および図9の比較から理解できるように、吐出判定領域R1内の画素値は、第1ノズル30が処理液を吐出したときと、第1ノズル30が処理液を吐出していないときとで相違する。例えば、第1ノズル30が処理液を吐出しているときの吐出判定領域R1内の画素値の総和は、第1ノズル30が処理液を吐出していないときの吐出判定領域R1内の画素値の総和よりも大きくなる。
【0129】
そこで、監視処理部91は、工程ST3で取得された撮像画像データごとに、第1ノズル30が処理液を吐出しているか否かを吐出判定領域R1の画素値に基づいて判断する。具体的な一例として、監視処理部91は、吐出判定領域R1内の画素値の総和が所定の吐出基準値以上であるか否かを判断し、当該総和が吐出基準値以上であるときに第1ノズル30が処理液を吐出していると判断する。また、監視処理部91は当該総和が吐出基準値未満であるときに、第1ノズル30が処理液を吐出していないと判断する。
【0130】
なお、吐出判定領域R1内の画素値に基づく処理液の吐出の有無判定はこれに限らず、種々の手法を採用できる。例えば、第1ノズル30が処理液を吐出しているときの吐出判定領域R1内の画素値の分散は、第1ノズル30が処理液を吐出していないときの分散よりも大きい。よって、監視処理部91は当該分散を算出し、その分散の大小に基づいて処理液の吐出の有無を判断してもよい。また、分散に替えて標準偏差を採用することも可能である。
【0131】
監視処理部91は、例えば、第1ノズル30が処理液を吐出していない撮像画像データの取得タイミングと、第1ノズル30が処理液を吐出している撮像画像データの取得タイミングに基づいて、開始タイミングを特定する。
【0132】
同様にして、監視処理部91は、第1ノズル30が処理液の吐出を終了する終了タイミングも特定することもできる。
【0133】
そして、監視処理部91は、吐出停止タイミングと吐出開始タイミングとの差を吐出時間として算出する。次に、監視処理部91は吐出時間の適否を判断する。例えば、監視処理部91は、当該吐出時間と規定時間との差が所定の時間許容値以下であるか否かを判断する。監視処理部91は当該差が時間許容値以下であるときに、吐出時間が適切であると判断する。また、監視処理部91は当該差が時間許容値よりも大きいときに、吐出時間が不適切であると判断する。つまり、監視処理部91は吐出時間異常が生じていると判断する。
【0134】
また、上述の処理液工程(図7参照)において、第2ノズル60および第3ノズル65も処理液を吐出するので、処理液を吐出する各工程において、吐出時間監視処理を行ってもよい。第2ノズル60および第3ノズル65についての吐出時間監視処理も第1ノズル30と同様である。
【0135】
なお、固定ノズル80は工程ST4から工程ST6において処理液を吐出する。図7の例では、監視処理部91は工程ST4において処理液監視処理を行うものの、この処理液監視処理は、後述する液はね監視処理を含んでおり、固定ノズル80についての吐出時間監視処理を含んでいない。また図7の例では、監視処理部91は、工程ST5および工程ST6では処理液監視処理を行っていない。しかしながらこれに限らず、監視処理部91は、工程ST4から工程ST6において、固定ノズル80についての吐出時間監視処理を行ってもよい。
【0136】
図10は、工程ST4から工程ST6において取得される撮像画像データの一例を概略的に示す図である。図10の撮像画像データには、処理液を吐出している固定ノズル80が含まれている。つまり、図10は、固定ノズル80が処理液を吐出した後に取得された撮像画像データを示している。
【0137】
図8から図10の例では、固定ノズル80からの処理液の吐出の有無を判定するための吐出判定領域R11が設定されている。固定ノズル80は処理液を水平に沿って吐出するので、吐出判定領域R11は、例えば、固定ノズル80の先端から横方向に延在する矩形状の形状を有する。吐出判定領域R11を用いた吐出時間監視処理は、吐出判定領域R1を用いた吐出時間監視処理と同様である。
【0138】
<液はね>
第1ノズル30が工程ST3において、例えば流量F30よりも大きな流量で基板Wの上面に処理液を吐出する等の諸要因により、処理液が基板Wの上面で跳ねることがある(いわゆる液はね)。このような液はねが生じると、処理ユニット1は基板Wを適切に処理することができない。
【0139】
そこで、各ノズルが処理液を吐出する工程における監視対象として、処理液の液はねの有無を採用してもよい。以下、液はねの有無を監視する液はね監視処理の具体的な一例について述べる。
【0140】
図11は、工程ST3において取得される撮像画像データの一例を概略的に示す図である。図11の撮像画像データでは、液はねが生じている。図11に例示するように、第1ノズル30から流下した処理液が基板Wの上面で跳ね返ることにより、処理液はその着液位置を囲む王冠状に跳ねる。
【0141】
図8から図11の例では、撮像画像データには液はね判定領域R2が設定されている。液はね判定領域R2は、基板Wの上面から跳ねる処理液の一部を含む領域に設定されればよい。処理液は着液位置の周囲で跳ねるので、液はね判定領域R2は、例えば、吐出判定領域R1の隣に設定されるとよい。図示の例では、液はね判定領域R2は吐出判定領域R1と離れており、例えば吐出判定領域R1よりも左側に位置している。図示の例では、液はね判定領域R2は矩形状の形状を有している。
【0142】
液はね判定領域R2内の画素値は、液はねが生じていないとき(例えば図9)と、液はねが生じたとき(例えば図11)とで相違する。例えば、基板Wの上面から跳ねた処理液に光が当たると光が乱反射するので、液はねが生じたときの液はね判定領域R2の画素値の総和は、液はねが生じていないときの液はね判定領域R2内の画素値の総和よりも大きくなる。
【0143】
そこで、監視処理部91は工程ST3において取得された撮像画像データごとに、液はねが生じているか否かを、液はね判定領域R2内の画素値に基づいて判断する。具体的な一例として、監視処理部91は、液はね判定領域R2内の画素値の総和が所定の液はね基準値以上であるか否かを判断し、当該総和が液はね基準値未満であるときに、液はねが生じていないと判断する。一方で、監視処理部91は当該総和が液はね基準値以上であるときに、液はねが生じていると判断する。つまり、監視処理部91は、液はね異常が生じていると判断する。
【0144】
なお、液はね判定領域R2内の画素値に基づく液はねの有無判定はこれに限らず、種々の手法を採用できる。例えば、基板Wの上面から跳ねた処理液に光が当たると光が乱反射するので、液はねが生じているときの液はね判定領域R2内の画素値の分散は、液はねが生じていないときの分散よりも大きい。よって、監視処理部91は当該分散を算出し、その分散の大小に基づいて液はねの有無を判断してもよい。なお、分散に替えて標準偏差を採用することも可能である。
【0145】
第2ノズル60、第3ノズル65および固定ノズル80も処理液を吐出するので、監視処理部91は各ノズルが処理液を吐出する工程において、液はね監視処理を行う。なお、固定ノズル80は、その先端から水平方向に沿って処理液を吐出するので、液はねは、その着液位置に対して固定ノズル80とは反対側に生じやすい。図11の例では、液はね判定領域R2は、着液位置に対して固定ノズル80とは反対側に位置しているので、固定ノズル80からの処理液の吐出に伴う液はね検出にも用いることができる。
【0146】
図7の例では、固定ノズル80について、工程ST4において液はね監視処理が行われるものの、工程ST5および工程ST6でも液はね監視処理が行われてもよい。
【0147】
<ぼた落ち>
第1ノズル30、第2ノズル60および第3ノズル65の処理液の吐出停止時に、各吐出口から液滴状の処理液が落下する場合がある(いわゆるぼた落ち)。このような液滴が基板Wの上面に落下すると、不具合が生じ得る。
【0148】
そこで、各ノズルが処理液を吐出する工程における監視対象として、ぼた落ちの有無を採用してもよい。以下、ぼた落ちの有無を監視するぼた落ち監視処理の具体的な一例について述べる。
【0149】
図12は、工程ST3において取得される撮像画像データの一例を概略的に示す図である。図12は、第1ノズル30が処理液の吐出を停止した直後に取得される撮像画像データを示しており、図12の例では、ぼた落ちが生じている。
【0150】
図8図9および図12の比較から理解できるように、吐出判定領域R1内の画素値は、第1ノズル30が処理液を吐出していないとき(図8)と、第1ノズル30が処理液を吐出しているとき(図9)と、ぼた落ちが生じたとき(図12)とで相違する。例えば、ぼた落ちが生じたときの吐出判定領域R1内の画素値の総和は、第1ノズル30が処理液を吐出しているときの吐出判定領域R1内の画素値の総和よりも小さく、第1ノズル30が処理液を吐出していないときの吐出判定領域R1内の画素値の総和よりも大きくなる。
【0151】
そこで、監視処理部91は、工程ST3において取得された撮像画像データごとに、ぼた落ちが生じたか否かを吐出判定領域R1の画素値に基づいて判断する。具体的な一例として、監視処理部91は、吐出判定領域R1内の画素値の総和が所定の第1基準値以上であるときに、第1ノズル30が処理液を吐出していると判断し、吐出判定領域R1内の画素値の総和が第1基準値未満かつ所定の第2基準値以上であるときに、ぼた落ち異常が生じたと判断し、吐出判定領域R1内の画素値の総和が第2基準値未満であるときに、第1ノズル30が処理液を吐出していないと判断してもよい。
【0152】
なお、吐出判定領域R1内の画素値に基づくぼた落ちの有無判定はこれに限らず、種々の手法を採用できる。例えば、吐出判定領域R1内の分散または標準偏差に基づいて、ぼた落ちの有無を判定してもよい。
【0153】
<出流れ>
処理制御部93が、各バルブに閉信号を出力しているにもかかわらず、各バルブの異常により、各バルブがわずかに開く場合がある。この場合、処理液の吐出を適切に停止できず、ノズルから処理液が流出し続ける(いわゆる出流れ)。この場合、基板Wの上面に処理液が吐出し続けるので、処理の不具合が生じ得る。
【0154】
そこで、各ノズルが処理液を吐出する工程における監視対象として、出流れの有無を採用してもよい。以下、出流れの有無を監視する出流れ監視処理の具体的な一例について述べる。
【0155】
上述のように、出流れは、バルブに閉信号が出力された状態でノズルから処理液が吐出する異常である。バルブは処理制御部93によって制御されるので、監視処理部91は、バルブに閉信号が出力されているか否かを認識できる。また、監視処理部91は、ノズルから処理液が吐出されているか否かを、吐出時間監視処理で述べたように、撮像画像データに基づいて判断できる。
【0156】
監視処理部91は、例えば、処理制御部93がバルブ35に閉信号を出力しているにもかかわらず、第1ノズル30が処理液を吐出していると判断したときに、第1ノズル30に出流れ異常が生じたと判断する。第2ノズル60および第3ノズル65も同様である。
【0157】
<撮像条件>
以上のように、処理液工程(ステップS5)を規定する各工程に応じて、監視対象が変化する。図7では、監視対象は、例えば、工程ST2の実行期間において、第1ノズル30の位置であり、工程ST3の実行期間において、第1ノズル30から吐出された処理液の状態(形状)変化(例えば吐出開始、吐出停止、液はね、ぼた落ちおよび出流れ)となる。つまり、工程ST2の実行期間では、処理液の状態変化は監視対象にならず、ノズルの位置が監視対象となり、工程ST3の実行期間では、ノズルの位置は監視対象にならず、処理液の吐出状態が監視対象となる。また、工程ST7の実行期間のように、ノズルの位置および処理液の状態変化の両方が監視対象になることもある。
【0158】
本実施の形態では、条件設定部92は、各実行期間における監視対象に応じて撮像条件を設定する。以下では、具体的な一例として、まず、ノズルの位置を監視対象とする実行期間(例えば工程ST2)における撮像条件と、処理液の状態変化を監視対象とする実行期間(例えば工程ST3)における撮像条件とについて説明し、その後、ノズルの位置および処理液の状態変化の両方を監視対象とする実行期間(例えば工程ST7)における撮像条件について説明する。
【0159】
<ノズルの位置監視処理>
撮像画像データの解像度が高いほど、撮像画像データ内における各ノズルの形状が精細かつ明瞭に映る。よって、カメラ70が高解像度で位置監視処理用の撮像画像データを取得すれば、監視処理部91は当該撮像画像データに基づいて、より高い精度でノズルの位置を検出できる。
【0160】
そこで、条件設定部92は、カメラ70が位置監視処理用の撮像画像データを取得する際の撮像条件として、解像度を高解像度に設定する。具体的には、条件設定部92は、工程ST2、工程ST4、工程ST6、工程ST7、工程ST9および工程ST11における撮像条件として、解像度をより高解像度に設定する(図7も参照)。
【0161】
一方、撮像画像データのフレームレートが低くても、位置監視処理には問題が生じにくい。つまり、位置監視処理ではノズルの停止位置を監視するので、フレームレートが低くても、位置監視処理には問題が生じない。また、もしノズルの位置の経時的な変化を監視する場合であっても、ノズルの位置を短い時間間隔で検出する必要性が高くなければ、フレームレートを低くしても構わない。
【0162】
ただし、処理液監視処理が行われるときにはフレームレートは高い方がよい。この点については後に詳述する。
【0163】
そこで、条件設定部92は、工程ST2、工程ST6、工程ST9および工程ST11の実行期間における撮像条件として、解像度を高解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定する。要するに、条件設定部92は、処理液監視処理には用いられずに位置監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、解像度を高解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定する。言い換えれば、条件設定部92は、処理液の状態変化を監視対象とせずにノズルの位置を監視対象とする期間における撮像条件として、解像度を高解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定する。
【0164】
条件設定部92は、設定した撮像条件をカメラ70に通知する。カメラ70は受け取った撮像条件にしたがって撮像画像データを取得する。つまり、カメラ70は、工程ST2、工程ST6、工程ST9および工程ST11において、高解像度および低フレームレートで撮像画像データを取得する。
【0165】
解像度の変更は、例えばカメラ70のビニング機能によって実現できる。ビニング機能とは、カメラ70の複数の受光素子のうち一画素として読み出す受光素子の数を変更する機能である。例えばカメラ70の受光面が縦Nx(例えば2448)個×横Ny(例えば2048)個の受光素子から構成される場合を考慮する。カメラ70が各受光素子のデータを一画素として読み出すことにより、縦Nx個×横Ny個の画素を有する撮像画像データを取得できる。また、カメラ70が例えば縦2個×横2個の計4個の受光素子のデータを一画素として読み出すことにより、縦Nx/2(例えば1224)個×横Ny/2(例えば1024)個の画素を有する撮像画像データを取得できる。撮像画像データの視野範囲は変わらないので、撮像画像データの解像度を低下させることができる。
【0166】
フレームレートの変更は、例えばカメラ70のシャッター(電子シャッターまたはメカニカルシャッター)を開く周期を変更することによって実現できる。高フレームレートは例えば100fpsであり、低フレームレートは例えば30fpsである。
【0167】
工程ST2、工程ST6、工程ST9および工程ST11の各々において、カメラ70が高解像度および低フレームレートで撮像画像を取得するので、監視処理部91は、高解像度および低フレームレートの撮像画像データに基づいて位置監視処理を行う。高解像度の撮像画像データを用いるので、監視処理部91はノズルの位置を高い精度で検出することができる。一方で、低フレームレートの撮像画像データを用いるので、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。よって、消費電力を低減させることができる。
【0168】
<処理液監視処理>
撮像画像データのフレームレートが高いほど、カメラ70はより短い時間間隔で撮像画像データを取得できる。よって、その複数の撮像画像データにおいて、各ノズルから吐出される処理液の状態変化を映しやすい。例えば、フレームレートが高いほど、処理液が吐出していない状態から処理液が吐出した状態の変化を捉えやすい。よって、フレームレートが高いほど、監視処理部91は処理液の吐出開始タイミングをより高い精度で監視することができる。処理液の吐出停止タイミングも同様である。ひいては、監視処理部91は処理時間をより高い精度で算出することができる。
【0169】
また、フレームレートが高いほど、より短い時間間隔で撮像画像データが取得されるので、発生期間の短い現象であっても、当該現象を撮像画像データ内に映すことができる。例えば、流量変動によって生じる処理液の吐出流量の瞬間的な増加により、瞬間的に液はねが生じた場合であっても、フレームレートが高ければ、カメラ70は、当該液はねを含んだ撮像画像データを取得することができる。
【0170】
また、ぼた落ちは処理液の吐出停止時において生じ、その発生期間はさほど長くない。また、出流れが生じる発生期間も、バルブの異常の程度によっては、短い場合がある。フレームレートが高ければ、たとえ瞬間的にぼた落ちまたは出流れが生じたとしても、カメラ70は、当該ぼた落ちまたは当該出流れを含んだ撮像画像データを取得することができる。
【0171】
そこで、条件設定部92は、工程ST3、工程ST4、工程ST7および工程ST10における撮像条件として、フレームレートを高フレームレートに設定する。要するに、条件設定部92は、カメラ70が処理液監視処理用の撮像画像データを取得する際の撮像条件として、フレームレートを高フレームレートに設定する。
【0172】
一方で、処理液の状態変化は、低解像度で取得された撮像画像データでも検出可能である。そこで、条件設定部92は、工程ST3および工程ST10における撮像条件として、解像度を低解像度に設定し、フレームレートを高フレームレートに設定する。要するに、条件設定部92は、位置監視処理には用いられずに処理液監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、解像度を低解像度に設定し、フレームレートを高フレームに設定する。言い換えれば、条件設定部92は、ノズルの位置を監視対象とせずに処理液の状態変化を監視対象とする期間における撮像条件として、解像度を低解像度に設定し、フレームレートを高フレームに設定する。
【0173】
条件設定部92は、設定した撮像条件をカメラ70に通知する。カメラ70は受け取った撮像条件にしたがって撮像画像データを取得する。よって、監視処理部91は、工程ST3および工程ST10の各々において低解像度および高フレームレートで取得された撮像画像データに基づいて、処理液監視処理を行う。これによれば、高フレームレートの撮像画像データを用いるので、監視処理部91は、吐出開始タイミング、吐出停止タイミング、液はね、ぼた落ち、および、出流れをより高い精度で監視することができる。また、低解像度の撮像画像データを用いるので、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。よって、消費電力を低減させることができる。
【0174】
<位置監視処理および処理液監視処理の並行実施>
条件設定部92は工程ST4および工程ST7における撮像条件として、解像度を高解像度に設定し、フレームレートをより高フレームレートに設定する。要するに、条件設定部92は、位置監視処理および処理液監視処理の両方に用いられる撮像画像データの撮像条件として、解像度を高解像度に設定し、フレームレートを高フレームレートに設定する。言い換えれば、条件設定部92は、ノズルの位置および処理液の状態変化の両方を監視対象とする期間における撮像条件として、解像度を高解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定する。
【0175】
条件設定部92は、設定した撮像条件をカメラ70に通知する。カメラ70は受け取った撮像条件にしたがって撮像画像データを取得する。よって、監視処理部91は、工程ST4および工程ST7の各々において高解像度および高フレームレートで取得された撮像画像データに基づいて、位置監視処理および処理液監視処理の両方を行う。これによれば、より高い精度で位置監視処理および処理液監視処理を行うことができる。
【0176】
<レシピ情報>
制御部9には、例えば、より上流側の装置または作業員から、基板処理の手順(各工程および各工程における各種条件を含む)を示したレシピ情報が入力される。処理制御部93は当該レシピ情報に基づいて処理ユニット1を制御することにより、基板Wに対する処理を行うことができる。レシピ情報は、例えば図7の「工程」、「時間」、「吐出流量」および「位置」の情報を含んでいてもよい。この場合、条件設定部92は当該レシピ情報に基づいて各工程における監視対象を特定し、その監視対象に応じて上述のように撮像条件を設定し、当該撮像条件をカメラ70に通知する。
【0177】
具体的な一例として、条件設定部92は、ノズルが移動している工程を、レシピ情報に含まれる「位置」の情報に基づいて特定し、当該工程における監視対象としてノズルの位置を採用する。また条件設定部92は、ノズルが処理液を吐出している工程を、レシピ情報に含まれる「吐出流量」の情報に基づいて特定し、当該工程における監視対象として処理液の状態変化を採用する。そして、条件設定部92は上述のように、各工程の実行期間における撮像条件を各工程における監視対象に応じて設定する。
【0178】
なお、条件設定部92は必ずしもレシピ情報に基づいて各工程における監視対象を特定する必要はない。処理の手順および監視対象を規定した情報が上流側の装置または作業員によって制御部9に入力されてもよい。これによれば、条件設定部92は当該情報の読み取りにより、各工程における監視対象を特定することができ、当該監視対象に応じた撮像条件を設定できる。
【0179】
<監視処理の全体の流れ>
図13は、上述の監視処理の全体の流れの一例を示すフローチャートである。条件設定部92は処理の手順(例えばレシピ情報等)に基づいて複数の監視対象候補から、各工程における監視対象を特定し、当該監視対象に基づいて各工程での撮像条件を設定する(ステップS11:条件設定工程)。ここでいう監視対象候補とは、特定する前の監視対象であって、例えば、ノズルの位置、処理液の吐出開始タイミング、吐出停止タイミング、液はね、ぼた落ち、出流れ、などを含む。
【0180】
カメラ70は、条件設定部92によって設定された撮像条件に基づいて、順次に撮像画像データを取得する(ステップS12:撮像工程)。これにより、カメラ70は、各工程における監視対象に応じた撮像条件で撮像画像データを取得する。
【0181】
監視処理部91は、監視対象に応じた撮像条件で撮像された撮像画像データに基づいて、各工程における監視対象に対する監視処理を行う(ステップS13:監視工程)。
【0182】
なお、撮像工程および監視工程は基板Wに対する処理と並行して実行されるとよい。これにより、基板Wに対する処理中に監視処理を行うことができる。条件設定工程は、基板Wに対する処理の前に予め全工程における撮像条件を設定してもよく、あるいは、基板Wの処理の進行に応じて順次に各工程における撮像条件を設定してもよい。
【0183】
<実施の形態の効果>
以上のように、条件設定部92は、監視対象に応じた撮像条件を設定し、当該撮像条件をカメラ70に通知する。カメラ70は、通知された撮像条件で撮像画像データを取得するので、監視対象に応じた撮像条件で撮像画像データを取得することができる。
【0184】
例えば、処理液の状態変化を監視対象とせずにノズルの位置を監視対象とする工程の実行期間においては、カメラ70は高解像度および低フレームレートで撮像画像データを取得する。よって、監視処理部91は高解像度および低フレームレートの撮像画像データに基づいて位置監視処理を行う。これによれば、高解像度の撮像画像データに基づいて高い精度でノズルの位置を監視しつつも、低フレームレートにより処理負荷を低減させることができる。
【0185】
また、例えば、ノズルの位置を監視対象とせずに処理液の状態変化を監視対象とする工程の実行期間においては、カメラ70は低解像度および高フレームレートで撮像画像データを取得する。よって、監視処理部91は低解像度および高フレームレートの撮像画像データに基づいて処理液監視処理を行う。これによれば、高フレームレートの撮像画像データに基づいて高い精度で処理液の状態変化を監視しつつも、低解像度により、処理負荷を低減させることができる。
【0186】
また、ノズルの位置および処理液の状態変化の両方を監視対象とする工程の実行期間においては、カメラ70は高解像度および高フレームレートで撮像画像データを取得する。よって、監視処理部91は高い精度で位置監視処理および処理液監視処理を行うことができる。
【0187】
<監視対象の他の例>
なお、監視対象は上述の具体例に限らず、チャンバー10内の他の種々の監視対象を採用できる。要するに、条件設定部92は、その監視対象の種類によらず、監視対象の変化に応じて順次に撮像条件を変更するとよい。以下では、監視対象の他の具体例について述べる。
【0188】
<保持異常および基板の形状異常>
保持工程(ステップS2)において、スピンチャック20は基板Wを保持する。このとき、スピンチャック20が適切な姿勢で基板Wを保持できない場合がある。例えば、スピンチャック20が基板Wを保持した状態で、チャックピン26のいずれか一つと基板Wの周縁との接触位置が鉛直方向にずれる場合がある。この場合、基板Wが傾斜姿勢で保持されることになる。ずれ量が大きくなると、基板Wがチャックピン26の上に乗り上げる場合もあり得る。以下では、スピンチャック20が基板Wを水平姿勢で保持できていない異常を保持異常と呼ぶ。このような保持異常が生じると、基板Wに対して適切に処理を行うことができない。
【0189】
また、基板Wの形状に異常が生じる場合もある。例えば、基板Wの周縁から割れが生じている場合には、基板Wの周縁の割れている部分で段差が生じ、基板Wの周縁は円形状にならない。また、基板Wの周縁の一部に欠けが生じている場合も、基板Wの周縁は円形状にならない。このような場合も、スピンチャック20は基板Wを水平姿勢で保持できなくなる可能性が高い。以下では、基板Wの割れ等の異常を形状異常と呼ぶ。このような形状異常が生じても、基板Wに対して適切に処理を行うことができない。
【0190】
そこで、監視対象として、保持異常および基板の形状異常の有無を採用してもよい。以下、保持異常および基板の形状異常の有無を監視する基板監視処理の一例について説明する。
【0191】
図14から図16は、回転工程中に取得された撮像画像データの一例を概略的に示す図である。図14から図16は、処理カップ40が上昇する前に取得された撮像画像データを示している。つまり、図14から図16は、回転工程(ステップS3)の開始からカップ上昇工程(ステップS4)までの工程における撮像画像データを示している。図14は、スピンチャック20が水平姿勢で基板Wを保持している状態を示しており、図15は、スピンチャック20が傾斜姿勢で基板Wを保持している状態を示しており、図16は、基板Wに割れが生じた状態を示している。なお、基板Wを保持するチャックピン26は撮像画像データに含まれ得るものの、図14から図16では、図示の煩雑を避けるために省略されている。
【0192】
スピンチャック20が水平姿勢で基板Wを保持しており、基板Wを回転させた場合、理想的には、基板Wの周縁(輪郭)形状は常に一定である。なお、図示の例では、カメラ70が基板Wを斜めから撮像するので、撮像画像データにおける基板Wの周縁は楕円形状を有する。理想的には、基板Wの回転中に順次に取得される複数の撮像画像データにおいて、基板Wの周縁形状は常に一定である。ただし、実際には、基板Wの回転中に基板Wの周縁の位置はわずかに揺らぐ。
【0193】
一方、スピンチャック20が基板Wを傾斜姿勢で保持している場合、スピンチャック20の回転軸線CXが基板Wに対して直交しない。よって、スピンチャック20が基板Wを回転させると、その基板Wの周縁形状は複数の撮像画像データにおいて比較的に大きく相違する。つまり、基板Wの周縁が大きく揺らぐ。図15の例では、異なるタイミングで取得された基板Wの周縁を仮想線で模式的に示している。
【0194】
また、基板Wの周縁に割れが生じている場合には、基板Wの周縁の形状が楕円形状から遠ざかる。図16の例では、基板Wの周縁に割れによる段差が生じている。この場合も、スピンチャック20が基板Wを回転させると、その基板Wの周縁の位置は複数の撮像画像データにおいて比較的に大きく相違する。つまり、基板Wの周縁は大きく揺らぐ。
【0195】
そこで、監視処理部91は、カメラ70によって順次に取得された複数の撮像画像データ間における基板Wの周縁形状の差を求め、当該差が所定の基板許容値以下であるか否かを判断する。監視処理部91は、当該差が基板許容値以下であるときに、スピンチャック20が正常な基板Wを水平姿勢で保持していると判断し、当該差が基板許容値より大きいときに、保持異常または基板の形状異常が生じていると判断する。
【0196】
なお、監視処理部91は、基板Wの周縁形状の全部を撮像画像データ間で比較する必要はなく、例えば、基板Wの周縁のうち手前側の一部または奥側の一部の形状を撮像画像データ間で比較すればよい。図14から図16の例では、撮像画像データには、基板判定領域R3が設定されている。図14から図16の例では、基板判定領域R3は、基板Wの周縁のうち手前側の一部を含む領域であり、基板Wの周縁に沿って延在する形状を有している。
【0197】
監視処理部91は、例えば、撮像画像データのうち基板判定領域R3を切り出し、2つの撮像画像データの基板判定領域R3の差分を算出して、差分画像を取得する。具体的には、監視処理部91は、基板判定領域R3内の同じ位置の画素の画素値を減算して、差分画像を取得する。当該減算により、基板判定領域R3のうち互いに同じ第1領域内の画素値が相殺され、互いに相違する第2領域内の画素値が強調される。つまり、第2領域内の画素の画素値の絶対値が第1領域内の画素の画素値の絶対値に比べてより大きくなる。よって、差分画像において、2つの基板判定領域R3内の基板Wの周縁で挟まれた領域(以下、周縁差分と呼ぶ)が強調される。
【0198】
次に監視処理部91は差分画像に対して、例えばキャニー法等のエッジ抽出処理を行って、エッジ画像を取得する。図17および図18は、エッジ画像の一例を概略的に示す図である。図17は、スピンチャック20が正常な基板Wを水平姿勢で保持したときのエッジ画像を示し、図18は、スピンチャック20が正常な基板Wを傾斜姿勢で保持したときのエッジ画像を示している。図17および図18の例では、エッジ201が周縁差分に相当する。なお、図17および図18から理解できるように、エッジ画像には複数のエッジが含まれるものの、円弧状に延在する最も長いエッジ201が、周縁差分に相当する。
【0199】
図17および図18から理解できるように、正常な基板Wを水平姿勢で保持しているときのエッジ201の周方向の長さは、保持異常時のエッジ201の周方向の長さよりも短くなる。これは、保持異常時における基板Wの周縁の鉛直方向の揺らぎが大きいために、より周方向に広い範囲で、基板Wの周縁の位置が鉛直方向に変動するからと考えられる。基板Wに割れが生じているときにも、基板Wの周縁の鉛直方向の変動は大きくなるので、エッジ201の周方向の長さは長くなる。
【0200】
そこで、監視処理部91は、エッジ画像からエッジ201の周方向の長さを算出し、当該長さが所定の基板基準値以下であるか否かを判断し、当該長さが基板基準値以下であるときに、スピンチャック20が正常な基板Wを水平姿勢で保持していると判断する。一方で、監視処理部91は、当該長さが基板基準値よりも長いときに、保持異常または基板の形状異常が生じていると判断する。
【0201】
このように、保持異常および基板の形状異常の有無を監視する基板監視処理では、基板Wの周縁の位置を検出する必要がある。よって、条件設定部92は、基板監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、解像度を高解像度に設定することが望ましい。言い換えれば、条件設定部92は、処理カップ40の上昇前の基板Wの回転期間における撮像条件として、解像度を高解像度に設定する。これにより、監視処理部91は保持異常または基板の形状異常をより高い精度で検出することができる。
【0202】
一方、基板監視処理では、複数の撮像画像データ間の差分画像を取得するものの、フレームレートを高くしなくても、保持異常または基板の形状異常を検出することができる。そこで、条件設定部92は、基板監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。言い換えれば、条件設定部92は、処理カップ40の上昇前の基板Wの回転期間における撮像条件として、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。これによれば、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。
【0203】
なお、基板の形状異常が生じている場合には、基板Wの周縁の揺らぎが大きくなるので、解像度を低解像度にしても、基板の形状異常を検出することができる可能性がある。そこで、保持異常を監視対象とせずに基板の形状異常を監視対象とする場合には、条件設定部92は、解像度を低解像度に設定してもよい。
【0204】
また、保持異常または基板の形状異常の有無は、必ずしも処理カップ40の上昇前の基板の回転期間において監視される必要はない。カメラ70が回転中の基板Wの周縁を撮像できる工程であれば、保持異常または基板の形状異常を監視することが可能である。
【0205】
<偏芯異常>
保持工程(ステップS2)において、スピンチャック20が基板Wを保持する際に、平面視において、基板Wがスピンチャック20に対してずれる場合がある。基板Wの中心がスピンチャック20の回転軸線CXから所定の偏芯許容値を超えてずれると、回転工程(ステップS3)において、基板Wが適切に回転しない。以下では、基板Wの中心が回転軸線CXから偏芯許容値を超えてずれている異常を偏芯異常と呼ぶ。このような偏芯異常が生じると、基板Wを適切に処理できなくなる場合がある。
【0206】
そこで、監視対象として基板Wの偏芯異常を採用してもよい。以下、基板Wの偏芯異常の有無を監視する偏芯監視処理の具体的な一例について述べる。
【0207】
図19は、回転工程中に取得された撮像画像データの一例を概略的に示す図である。図19は、処理カップ40が上昇する前に取得された撮像画像データを示している。つまり、図19は、回転工程の開始(ステップS3)からカップ上昇工程(ステップS4)までの工程における撮像画像データを示している。図19は、偏芯異常が生じた状態を示している。基板Wが偏芯していると、基板Wの周縁の位置は基板Wの回転位置に応じて変動する。例えば、撮像画像データにおいて、基板Wの周縁は楕円形状を有しており、その長軸と基板Wの周縁とが交差する点P1は、基板Wの回転位置に応じて横方向に変動する。図19の例では、異なるタイミングで取得された基板Wを仮想線で模式的に示している。
【0208】
図20は、点P1と基板Wの回転角度θとの関係の一例を示すグラフである。図20に示すように、点P1は回転角度θを変数とした正弦波状に変動する。図20の点P1の横方向の位置は、図19において右側に位置するほど大きく示されている。点P1が最も大きくなるときの回転角度θ1が基板Wの偏芯方向を示しており、点P1の振幅A1が基板Wと回転軸線CXとの間の偏芯量を示している。
【0209】
そこでまず、監視処理部91は複数の撮像画像データの各々において、点P1の位置を検出する。例えば、監視処理部91は、各撮像画像データにおいてエッジ抽出処理を行ってエッジ画像を取得し、エッジ画像から楕円形状を有する楕円エッジを特定し、その楕円エッジの最右点を点P1として特定してもよい。あるいは、監視処理部91は楕円エッジに最も近い楕円近似線を、例えば最小二乗法等により算出し、その楕円近似線の長軸と楕円近似線との交点を点P1として算出してもよい。
【0210】
次に、監視処理部91は、カメラ70が撮像画像データを取得した各取得タイミングにおける基板Wの回転角度θと、各撮像画像データにおける点P1とに対して、例えばスプライン補間処理等の曲線補間処理を行って、点P1の正弦波VL1を算出する。次に、監視処理部91は、正弦波VL1に基づいて振幅A1(偏芯量)および回転角度θ1(偏芯方向)を算出する。
【0211】
監視処理部91は偏芯量が偏芯許容値以下であるか否かを判断し、偏芯量が偏芯許容値以下であると判断したときには、偏芯異常が生じていないと判断する。一方、監視処理部91は偏芯量が偏芯許容値よりも大きいときに、偏芯異常が生じていると判断する。
【0212】
このような偏芯監視処理において、撮像画像データの解像度が高いほど、点P1の位置をより高い精度で検出することができる。よって、条件設定部92は、偏芯監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、解像度を高解像度に設定する。言い換えれば、条件設定部92は、処理カップ40の上昇前の基板Wの回転期間における撮像条件として、解像度を高解像度に設定する。これにより、監視処理部91は偏芯異常をより高い精度で検出することができる。
【0213】
一方、偏芯監視処理には、基板Wの1回転中に点P1についての複数のプロット点があればよく、フレームレートは必ずしも高い必要はない。また、プロット点の数を多くする場合であっても、基板Wの回転速度を低くすれば、フレームレートを高める必要はない。よって、条件設定部92は、偏芯監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。言い換えれば、条件設定部92は、処理カップ40の上昇前の基板Wの回転期間における撮像条件として、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。これによれば、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。
【0214】
<基板Wの搬入位置>
搬入工程(ステップS1)においては、主搬送ロボット103が基板Wを処理ユニット1内に搬入する。例えば主搬送ロボット103は、まず、基板Wをスピンチャック20の上方の空間に移動させる。次に主搬送ロボット103は基板Wを下降させてスピンチャック20に基板Wを受け渡す。その受渡位置(搬入位置)が平面視においてずれていると、基板Wの偏芯異常を招き得る。以下では、搬入位置が所定の搬入許容値を超えてずれていることを搬入異常と呼ぶ。
【0215】
そこで、監視対象として基板Wの搬入異常の有無を採用してもよい。以下、基板Wの搬入位置異常の有無を監視する搬入監視処理の具体的な一例について述べる。
【0216】
カメラ70は搬入工程において撮像画像を順次に取得する。監視処理部91は撮像画像データに基づいて、基板Wの中心の位置を搬入位置として検出する。例えば、監視処理部91は、既述のように、撮像画像データからエッジ画像を取得し、エッジ画像から楕円エッジを特定し、楕円エッジから楕円近似線を算出してもよい。監視処理部91はこの楕円近似線の中心を基板Wの中心の位置として算出する。例えば、監視処理部91は、基板Wの中心の位置が複数の撮像画像データにおいて一定となったときに、基板Wがスピンチャック20に受け渡されたと判断し、当該基板Wの中心の位置を搬入位置として特定してもよい。監視処理部91は、当該搬入位置と所定の基準搬入位置との間の差が所定の搬入許容値以下であるか否かを判断し、当該差が搬入許容値以下であるときには、搬入異常が生じていないと判断する。一方で、監視処理部91は当該差が搬入許容値よりも大きいときに、搬入異常が生じていると判断する。
【0217】
撮像画像データの解像度が高いほど、監視処理部91は基板Wの中心の位置をより高い精度で検出できる。よって、条件設定部92は、搬入監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、解像度を高解像度に設定する。言い換えれば、条件設定部92は、搬入工程の実行期間における撮像条件として、解像度を高解像度に設定する。これにより、監視処理部91は搬入異常をより高い精度で検出することができる。
【0218】
一方、搬入監視処理は高フレームレートを必要としない。よって、条件設定部92は、搬入監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。言い換えれば、条件設定部92は、搬入工程の実行期間における撮像条件として、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。これによれば、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。
【0219】
<処理カップ異常>
カップ上昇工程(ステップS4)において、例えば、カップ昇降機構の異常等により、処理カップ40が適切に上昇しない場合もある。つまり、処理カップ40が所定の上位置からずれた状態で停止する場合がある。この場合、基板Wの周縁から飛散する処理液を適切に回収できない可能性がある。以下では、処理カップ40が所定のカップ基準位置から所定のカップ許容値を超えてずれる異常をカップ位置異常と呼ぶ。
【0220】
また、処理カップ40に形状上の異常が生じる場合もある。例えば処理カップ40が変形する場合もある。このように処理カップ40に形状上の異常が生じた場合、処理液の回収に不備が生じる可能性がある。以下では、処理カップ40の形状上の異常をカップ形状異常と呼ぶ。
【0221】
そこで、監視対象として、カップ位置異常およびカップ形状異常の有無を採用してもよい。以下、カップ位置異常およびカップ形状異常の有無を監視するカップ監視処理の具体的な一例について述べる。
【0222】
カメラ70はカップ上昇工程(ステップS4)において撮像画像データを取得する。監視処理部91は撮像画像データに基づいて処理カップ40の位置を検出する。例えば、監視処理部91は、正常な処理カップ40を撮像して得られた参照画像データと、撮像画像データとのパターンマッチングにより、処理カップ40の位置を検出する。
【0223】
カップ上昇工程(ステップS4)において処理カップ40が移動するので、監視処理部91は処理カップ40の停止後に、処理カップ40の位置の適否を判断する。より具体的には、監視処理部91は、処理カップ40の位置が複数の撮像画像データにおいて所定範囲内になると、処理カップ40が停止していると判断し、処理カップ40の位置の適否を判断する。例えば、監視処理部91は処理カップ40の位置とカップ基準位置との差が所定のカップ位置許容値以下であるかを判断し、当該差がカップ位置許容値以下であるときに、カップ位置異常が生じていないと判断する。一方、監視処理部91は当該差がカップ位置許容値よりも大きいときに、カップ位置異常が生じていると判断する。
【0224】
次に、カップ形状異常について述べる。カップ形状異常が生じている場合には、撮像画像データのうち処理カップ40が含まれた領域と、正常な位置で停止した正常な処理カップ40が含まれた参照画像データとの差分が大きくなる。そこで、例えば、監視処理部91は、当該参照画像データと撮像画像データとの差分を算出し、差分画像を取得する。次に、監視処理部91は差分画像に対して二値化処理を行って、二値化画像を取得する。二値化画像では、撮像画像データと参照画像データとが差異する部分の画素値の絶対値が大きくなる。監視処理部91は、例えば、大きい画素値を有する部分の面積を求め、当該面積が所定のカップ形状許容値以下であるか否かを判断する。監視処理部91は当該面積がカップ形状許容値以下であるときに、カップ形状異常が生じていないと判断し、当該面積がカップ形状許容値よりも大きいときに、処理カップ40にカップ形状異常が生じていると判断する。
【0225】
撮像画像データの解像度が高いほど、処理カップ40の位置および上記差異をより高い精度で検出できる。よって、条件設定部92は、処理カップ監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、解像度を高解像度に設定する。言い換えれば、条件設定部92は、カップ上昇工程の実行期間における撮像条件として、解像度を高解像度に設定する。これによれば、監視処理部91は高い精度でカップ位置異常およびカップ形状異常の有無を監視することができる。
【0226】
一方で、処理カップ40の監視には、フレームレートは必ずしも高い必要はない。よって、条件設定部92は、処理カップ監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。言い換えれば、条件設定部92は、カップ上昇工程の実行期間における撮像条件として、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。これによれば、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。
【0227】
なお、カップ監視処理は、カップ上昇工程(ステップS4)のみならず、カップ下降工程(ステップS7)において行われてもよい。
【0228】
また、処理カップ40については位置のみならず形状も監視している。ノズルについてもその位置のみならず、形状も監視してもよい。つまり、監視処理部91はノズルの形状上の異常の有無を監視してもよい。
【0229】
<位置形状監視と経時変化監視に応じた撮像条件>
図21は、上述の監視対象に応じた撮像条件を示す表である。図21に例示されるように、ノズルの位置異常および形状異常、基板の保持異常、形状異常、搬入異常および偏芯異常、ならびに、処理カップの位置異常および形状異常に関する監視処理に用いられる撮像画像データについては、解像度を高解像度に設定する。要するに、条件設定部92は、チャンバー10内の物体の位置または形状が監視対象であるときには、解像度を高解像度に設定する。
【0230】
これにより、監視処理部91は物体の位置または形状を高い精度で監視することができる。一方で、条件設定部92は、チャンバー10内の物体の位置または形状が監視対象であるときには、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。この場合、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。
【0231】
これに対して、ノズルからの処理液の吐出開始、吐出停止、処理液の液はね、ぼた落ち、出流れ等に関する処理液監視処理に用いられる撮像画像データについては、フレームレートを高フレームレートに設定する。つまり、チャンバー10内の処理液の経時的な状態変化が監視対象であるときには、条件設定部92はフレームレートを高フレームレートに設定する。これにより、監視処理部91は処理液の経時的な状態変化を高い精度で監視することができる。一方で、条件設定部92は、チャンバー10内の経時的な状態変化が監視対象であるときには、解像度を低解像度に設定してもよい。この場合、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。
【0232】
ただし、物体の位置または形状に関する監視処理と、処理液の経時的な状態変化に関する監視処理との両方に用いられる撮像画像データについては、解像度を高解像度に設定しつつ、フレームレートを高フレームレートに設定する。これにより、監視処理部91は高い精度で、物体の位置または形状、ならびに、処理液の経時的な状態変化を監視できる。
【0233】
<監視対象のさらなる他の例>
<エッチングエンドポイント>
例えば、第1ノズル30が工程ST3において処理液としてエッチング液を吐出する場合、基板Wの上面のエッチング対象が処理液によってエッチングされる。具体的には、処理液の吐出開始から時間が経過するにつれて、エッチング対象が除去され、いずれエッチング対象の直下に位置する下地層が露出する。このエッチング処理時間(処理液の吐出時間)が規定時間よりもずれると、エッチングが不足または過大となる。
【0234】
ところで、基板Wの上面のエッチング対象が除去されると、下地層が露出するので、その変化が撮像画像データに現れる。つまり、エッチング対象と下地層の光の反射率は互いに相違するので、撮像画像データにおいて基板Wに対応する画素の画素値は、エッチング対象が露出した状態と、下地層が露出した状態との間で相違する。よって、その画素値の時間変化により、基板Wのエッチング対象の除去が実質的に完了するタイミング(エッチングエンドポイント)を検出することができる。
【0235】
そこで、監視対象としてエッチングエンドポイントを採用してもよい。以下、エッチングエンドポイントを監視するエッチング監視処理の具体的な一例について述べる。
【0236】
図22は、工程ST3において取得される撮像画像データの一例を示している。図22の撮像画像データには、エッチング液を吐出している第1ノズル30が含まれている。つまり、図22は、第1ノズル30がエッチング液を吐出し始めた以後に取得された撮像画像データを示している。
【0237】
図22の例では、撮像画像データには、複数のエッチング判定領域R4が設定されている。図22の例では、3つのエッチング判定領域R4が、基板Wの中央部から周縁側に向かって並んで配置されている。つまり、3つのエッチング判定領域R4は、基板Wについての径方向において、互いに異なる位置に設定される。
【0238】
エッチングが進行するにつれて、エッチング判定領域R4内の画素値は時間の経過とともに徐々に変化し、エッチング判定領域R4内のエッチングが完了すると、画素値の時間変化は小さくなる。図23は、1つのエッチング判定領域R4内の輝度値の時間変化の一例を示すグラフである。ここでは、エッチング判定領域R4内の輝度値として、エッチング判定領域R4内の画素値の総和または平均値を採用する。
【0239】
図23に示されるように、輝度値は初期的には時間に対してほぼ横ばいである。図23の例では、エッチング液の吐出が開始する時点T1以後において、輝度値は時間の経過とともに低下し、時点T2以後において輝度値は再び時間に対して横ばいとなる。これは、時点T1から時点T2の間の期間においてエッチング対象が徐々に除去されるので、輝度値がエッチング対象の除去に応じて変化するのに対して、時点T2においてエッチング対象が完全に除去されるためである。
【0240】
そこで、監視処理部91は、例えば、エッチング判定領域R4内の画素値の総和または平均値を輝度値として算出し、当該輝度値の単位時間に対する変化量である微分値を算出する。そして、監視処理部91は、当該微分値が所定の微分基準値を下回った時点を時点T1として検出し、当該微分値が微分基準値を超えた時点を時点T2として検出する。時点T2がそのエッチング判定領域R4におけるエッチングエンドポイントである。
【0241】
各エッチング判定領域R4のエッチングエンドポイントは互いに相違し得る。例えば第1ノズル30が基板Wの中央部にエッチング液を吐出する場合には、中央側のエッチング判定領域R4ほどエッチングエンドポイントは早くなり得る。
【0242】
また、第1ノズル30が中央位置P31と周縁位置P32との間を揺動しながらエッチング液を吐出する場合、各エッチングエンドポイントは、第1ノズル30の移動速度の変化および揺動経路上の各位置におけるエッチング液の流量などに応じて、変化し得る。例えば、3つのエッチング判定領域R4のうち中央のエッチング判定領域R4のエッチングエンドポイントが最も早くなる場合もある。
【0243】
処理制御部93は、監視処理部91が全てのエッチング判定領域R4のエッチングエンドポイントを検出できたときに、バルブ35を閉じて第1ノズル30からのエッチング液の吐出を終了してもよい。これによれば、全てのエッチング判定領域R4でエッチング不足が生じる可能性を低減できる。
【0244】
このようなエッチング監視処理において、エッチング判定領域R4内の総和または平均である輝度値は、解像度の高低にあまり依存しない。よって、条件設定部92は、エッチング監視処理に用いる撮像画像データの撮像条件として、解像度を低解像度に設定してもよい。言い換えれば、条件設定部92は、工程ST3の実行期間における撮像条件として解像度を低解像度に設定してもよい。これにより、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。
【0245】
また、エッチングが進行する速度はさほど高くないので、高フレームレートも必要とされない。よって、条件設定部92は、エッチング監視処理に用いる撮像画像データの撮像条件として、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。言い換えれば、条件設定部92は、工程ST3の実行期間における撮像条件としてフレームレートを低フレームレートに設定してもよい。これにより、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。
【0246】
なお、工程ST3において処理液の状態変化も監視対象として採用する場合には、条件設定部92は、工程ST3における撮像条件として、フレームレートを低フレームレートに設定する。
【0247】
<乾燥異常>
図24は、処理ユニット1の他の一例である処理ユニット1Aの構成の一例を概略的に示す図である。処理ユニット1Aは加熱部29の有無を除いて、処理ユニット1と同様の構成を有している。
【0248】
加熱部29は、基板Wを加熱する加熱手段である。加熱部29は、円板状のホットプレート291と、発熱源となるヒータ292とを含む。ホットプレート291は、スピンベース21の上面21aと、チャックピン26に保持される基板Wの下面との間に、配置されている。ヒータ292は、ホットプレート291の内部に埋め込まれている。ヒータ292には、例えば、通電により発熱するニクロム線等の電熱線が用いられる。ヒータ292に通電すると、ホットプレート291が、環境温度よりも高い温度に加熱される。
【0249】
また処理ユニット1Aにおいては、第3ノズル65は処理液(例えばリンス液)のみならず、不活性ガスも吐出する。不活性ガスは、基板Wとの反応性が低いガスであり、例えばアルゴンガス等の希ガスまたは窒素を含む。例えば第3ノズル65の吐出ヘッドには、処理液用の第1内部流路および第1吐出口と、気体用の第2内部流路および第2吐出口が設けられ、第1内部流路は第1供給管を通じて処理液供給源に接続され、第2内部流路は第2供給管を通じて気体供給源に接続される。第1供給管には第1バルブが設けられ、第2供給管には第2バルブが設けられる。
【0250】
この処理ユニット1Aによる基板処理の流れは、図6と同様であるものの、乾燥工程(ステップS6)が上述の具体例と相違する。以下では、処理ユニット1Aにおける乾燥工程の一例について述べる。なお、ここでは、カメラ70は乾燥工程において撮像画像データを取得する。図25から図27は、乾燥工程において取得された撮像画像データの一例を概略的に示す図である。以下では、これらの撮像画像データも参照する。
【0251】
まず、第3ノズル65が待機位置P68から中央位置P66に移動する。次に第3ノズル65が回転中の基板Wの上面に、例えば純水よりも揮発性の高いリンス液を供給する。当該リンス液は例えばIPA(イソプロピルアルコール)である。これにより、基板Wの上面の全面にリンス液が広がり、基板Wの上面に残留していた処理液がリンス液に置換される。
【0252】
次に、スピンモータ22は基板Wの回転を停止しつつ、第3ノズル65はリンス液の吐出を停止する。これにより、基板Wの上面のリンス液が静止する。つまり、基板Wの上面にはリンス液の液膜LF1が形成される(図25参照)。続いて、加熱部29のヒータ292に通電する。これにより、加熱部29を昇温させて、加熱部29の熱により基板Wを加熱する。これにより、リンス液の液膜LF1のうち、基板Wの上面に接触する下層部分も加熱される。そして、液膜LF1の当該下層部分が気化する。その結果、基板Wの上面と液膜LF1との間に、IPAの蒸気層が形成される。つまり、液膜LF1が基板Wの上面から浮いた状態となる。
【0253】
次に、第3ノズル65は不活性ガスを吐出する。不活性ガスは液膜LF1の中央部に向かって吐出される。不活性ガスが液膜LF1に吹き付けられることにより、液膜LF1は径方向外側に向かって移動し、基板Wの周縁から外側に流れ出る。これに伴って、液膜LF1の中央部に、平面視において円形の開口が形成される(図26参照)。この開口には、リンス液等の処理液が存在していないので、当該開口は乾燥領域DR1である。液膜LF1は不活性ガスに押圧されて順次に径方向外側に移動して基板Wの周縁から流れ落ちるので、乾燥領域DR1は時間の経過とともに等方的に広がる。つまり、乾燥領域DR1は平面視において円形を維持したまま拡大する。図26の例では、異なるタイミングで取得された撮像画像データにおける乾燥領域DR1を仮想線で模式的に示している。
【0254】
基板Wの上面の液膜LF1が除去されると、第3ノズル65は不活性ガスの吐出を停止し、待機位置P68に移動する。加熱部29のヒータ292に対する通電も停止する。
【0255】
上述した乾燥工程では、乾燥領域DR1の形成および拡大を、意図した通りに安定して行うことが難しい。すなわち、多数の基板Wを順次に処理すると、一部の基板Wの乾燥処理時に、乾燥領域DR1の位置、形状または数が、意図した状態とならない場合がある。
【0256】
例えば、基板Wを加熱して、基板Wの上面と液膜LF1との間にリンス液の蒸気層を形成する。このとき、液膜LF1に微細な気泡が発生し、それにより、液膜LF1の一部に開口DR2が発生してしまう場合がある(図27参照)。不活性ガスの吹き付けよりも前に液膜LF1の一部に開口DR2が発生すると、基板Wの上面と液膜LF1とのリンス液の蒸気が、当該開口DR2から漏れる。そうすると、蒸気層を維持できず、適切に乾燥工程を行うことができない。
【0257】
また、不活性ガスの吹き付けにより、上述のように乾燥領域DR1を徐々に拡大する。このとき、乾燥領域DR1の形状が崩れたり、複数の乾燥領域DR1が発生したりする場合もある。この場合も、適切に乾燥工程を行うことができない。
【0258】
以下では、このような開口に関する異常を纏めて乾燥異常と呼ぶ。ここでは、監視対象として乾燥異常を採用する。以下、乾燥異常の有無を監視する乾燥監視処理の具体的な一例について述べる。
【0259】
まず、不活性ガスの吐出前に生じる乾燥異常の監視(図27)について説明する。図25は、リンス液の液膜LF1が基板Wの上面に適切に形成されている状態を示しており、図27は、リンス液の液膜LF1に意図しない開口DR2が形成されている状態を示している。
【0260】
監視処理部91は、正常な状態を撮像して得られた参照画像データ(例えば図27)と、撮像画像データとの差分を算出して差分画像を取得する。開口DR2が形成されていれば、当該差分画像には、開口DR2に対応する部分の画素値の絶対値は高くなる。当該部分の面積が大きいと開口DR2が形成されていると言える。そこで、監視処理部91は、画素値の絶対値の高い部分の面積が所定の乾燥許容値以下であるか否かを判断し、当該面積が乾燥許容値以下であるときには、乾燥異常が生じていないと判断する。一方、監視処理部91は、当該面積が乾燥許容値よりも大きいときに、乾燥異常が生じていると判断する。
【0261】
次に、不活性ガスの吐出後に生じる乾燥異常の監視の一例について説明する。監視処理部91は、不活性ガスの吐出後に順次に取得される2つの撮像画像データの差分を算出して差分画像データを取得する。図28は、差分画像データの一例を概略的に示す図である。この差分画像データには、乾燥領域DR1の周縁部に相当する閉曲線Cが含まれる。乾燥領域DR1が円形を維持したまま拡大すれば、閉曲線Cは楕円形状を形成する。乾燥領域DR1の形状が崩れると、閉曲線Cは楕円形状からゆがむ。
【0262】
このゆがみを検出するために、円形度Rを導入する。円形度Rは、閉曲線Cが真円にどの程度近いかを示す指標である。円形度Rは、閉曲線Cの長さLと閉曲線Cの面積Sを用いて以下の式で表される。
【0263】
R=2πS/L ・・・(1)
閉曲線Cが楕円形状を有するときの閉曲線Cの円形度Rは、閉曲線Cが楕円形状からゆがんだときの円形度Rよりも高い。そこで、監視処理部91は、閉曲線Cの円形度Rが所定の乾燥基準値以上であるか否かを判断し、円形度Rが乾燥基準値以上であるときに、乾燥異常が生じていないと判断する。一方、監視処理部91は、円形度Rが乾燥基準値未満であるときに、乾燥異常が生じていると判断する。
【0264】
乾燥監視処理において、乾燥領域DR1の正確な形状、ならびに、開口DR2の正確な発生位置およびその形状を知る必要性は高くないので、撮像画像データの解像度は低くてもよい。また、上述の乾燥異常の発生期間はさほど短くないので、フレームレートも低くてもよい。
【0265】
そこで、条件設定部92は、乾燥監視処理に用いられる撮像画像データの解像度を低解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。言い換えれば、条件設定部92は乾燥工程の実行期間における撮像条件として、解像度を低解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。これによれば、監視処理部91は低い処理負荷で乾燥異常を監視することができる。
【0266】
<ヒューム異常>
図29は、処理ユニット1の他の一例である処理ユニット1Bの構成の一例を概略的に示す図である。処理ユニット1Bは、遮断板85の有無を除いて処理ユニット1と同様の構成を有している。
【0267】
遮断板85は、基板Wの上面付近における気体の拡散を抑制するための部材である。遮断板85は、円板状の外形を有し、スピンチャック20よりも上方に、水平に配置される。遮断板85は、遮断板昇降機構86に接続されている。遮断板昇降機構86を動作させると、遮断板85は、スピンチャック20に保持される基板Wの上面から上方へ離れた上位置と、上位置よりも基板Wの上面に接近した下位置との間で、昇降移動する。遮断板昇降機構86には、例えば、モータの回転運動をボールねじにより直進運動に変換する機構が用いられる。
【0268】
また、遮断板85の下面の中央には、窒素ガス等の不活性ガスを吹き出す吹出口87が設けられている。吹出口87は、乾燥工程において基板Wに対して吹き付けられる乾燥用の気体を供給する給気部(図示省略)と接続されている。
【0269】
第1ノズル30、第2ノズル60または第3ノズル65の各々から、基板Wに対して処理液を供給するときには、遮断板85は上位置に退避する。処理液による処理液工程(ステップS4)の終了後、基板Wの乾燥工程(ステップS6)を行うときには、遮断板昇降機構86により、遮断板85が下位置に降下する。そして、吹出口87から基板Wの上面に向けて、乾燥用の気体(例えば、加熱された窒素ガス)が吹き付けられる。このとき、遮断板85により、気体の拡散が防止される。その結果、基板Wの上面に乾燥用の気体が効率よく供給される。
【0270】
また、処理ユニット1Bでは、第1ノズル30は供給管34を介して硫酸供給源36aおよび過酸化水素水供給源36bが接続される。供給管34は、例えば、合流供給管341と、第1供給管342aと、第2供給管342bとを含む。合流供給管341の下流端は第1ノズル30に接続され、合流供給管341の上流端は第1供給管342aの下流端および第2供給管342bの下流端に接続される。第1供給管342aの上流端は硫酸供給源36aに接続され、第2供給管342bの上流端は過酸化水素水供給源36bに接続される。第1供給管342aには第1バルブ35aが設けられ、第2供給管342bには第2バルブ35bが設けられる。
【0271】
第1ノズル30を中央位置P31に移動させた状態で、第1バルブ35aおよび第2バルブ35bが開くと、硫酸供給源36aから第1供給管342aへ供給される硫酸と、過酸化水素水供給源36bから第2供給管342bへ供給される過酸化水素水とが、合流供給管341で合流して、SPM液となる。そして、そのSPM液が第1ノズル30から、スピンチャック20に保持された基板Wの上面に向けて吐出される。
【0272】
<基板処理の流れ>
この処理ユニット1Bによる基板処理の流れは、図6と同様であるものの、処理液工程(ステップS5)において、第1ノズル30は、硫酸と過酸化水素水との混合液(SPM液)を処理液として吐出する。具体的には、処理制御部93が第1バルブ35aおよび第2バルブ35bを開くことにより、硫酸および過酸化水素が第1ノズル30に供給され、第1ノズル30はその混合液を基板Wに向けて吐出する。SPM液の温度は例えば150℃~200℃とされる。これにより、例えば、基板Wの上面に形成されたレジストを除去することができる。
【0273】
レジストが十分に除去されると、第1バルブ35aを閉じて硫酸の供給を停止する。過酸化水素水は供給されるので、過酸化水素水が合流供給管341および第1ノズル30内の硫酸を押し出して排出する(押し出し工程)。これにより、以後の工程において、第1ノズル30から硫酸が意図せずに落下する可能性を低減させることができる。
【0274】
この押し出し工程では、硫酸の供給が停止するので、基板Wの上面の上の過酸化水素水の割合が多くなる。よって、多くの過酸化水素水が硫酸と反応し、ヒュームと称される多数の微粒子からなる雰囲気が発生する場合がある。ヒュームは、通常の発生量であれば、チャンバー10内のダウンフローによって拡散が抑えられる。しかしながら、ヒュームの発生量が過度に多くなって、例えば遮断板85にヒュームが付着すると、付着したヒュームは、やがて固化してパーティクルとなる。そして、当該パーティクルが再び遮断板85から飛散して、基板Wの表面に異物として付着するおそれがある。以下では、ヒュームがより高い位置まで拡散する異常を、ヒューム異常と呼ぶ。
【0275】
そこで、監視対象としてヒューム異常を採用してもよい。以下、ヒューム異常の有無を監視するヒューム監視処理の具体的な一例について説明する。
【0276】
図30は、押し出し工程において取得された撮像画像データの一例を概略的に示す図である。図30の撮像画像データには、ヒュームが含まれている。図30の例では、ヒュームは、遮断板85の下面の近傍まで広がっている。つまり、図30は、ヒューム異常が生じた状態を示している。
【0277】
図30の例では、撮像画像データにはヒューム判定領域R5が設定される。ヒューム判定領域R5は基板Wよりも上側の領域であり、正常な押し出し工程においてヒュームが到達しない領域である。ヒューム判定領域R5内の画素値は、ヒュームが存在しているときと、ヒュームが存在していないときとで相違する。
【0278】
そこで、監視処理部91はヒューム異常が生じているか否かをヒューム判定領域R5の画素値に基づいて判断する。例えば、監視処理部91は、ヒュームの発生前に取得した撮像画像データと、押し出し工程中に取得した撮像画像データの差分を算出して、差分画像を取得する。次に監視処理部91は差分画像のうちヒューム判定領域R5内の画素値の平均値を算出する。ヒューム判定領域R5内にヒュームが存在していれば、当該平均値は大きくなる。
【0279】
そこで、監視処理部91は、当該平均値が所定の第1ヒューム基準値以上であるか否かを判断し、当該平均値が第1ヒューム基準値以上であるときには、当該平均値を積算対象値とする。次に監視処理部91は平均値の第1ヒューム基準値に対する超過値(=積算対象値-第1ヒューム基準値)を算出し、当該超過値を、撮像画像データごとに順次に積算して積算値を算出する。次に監視処理部91は当該積算値が所定の第2ヒューム基準値以上であるか否かを判断し、当該積算値が第2ヒューム基準値以上であるときに、ヒューム異常が生じていると判断する。
【0280】
このようなヒューム監視処理において、ヒュームの発生領域の正確な位置を知る必要性は高くないので、撮像画像データの解像度は低くてもよい。また、ヒューム異常の発生期間はさほど短くないので、フレームレートも低くてもよい。
【0281】
そこで、条件設定部92は、ヒューム監視処理に用いられる撮像画像データの解像条件として、解像度を低解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。言い換えれば、条件設定部92は押し出し工程の実行期間における撮像条件として、解像度を低解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。これによれば、監視処理部91は低い処理負荷でヒューム異常を監視することができる。
【0282】
<チャンバー10内の結晶化>
例えば、処理液の揮発成分等がチャンバー10内の各構成に付着したりして、チャンバー10内の構成が結晶化する場合がある。以下、このような異常を、結晶異常と呼ぶ。
【0283】
そこで、監視対象として結晶異常を採用してもよい。以下、結晶異常の有無を監視する結晶監視処理の具体的な一例について説明する。
【0284】
結晶監視処理は、例えば、処理ユニット1に基板Wが搬入されておらず、処理ユニット1内の各構成が初期位置で停止した状態で行われる。つまり、結晶監視処理は基板Wに対する処理が行われていない待機状態で行われる。またこの結晶監視処理は、基板Wの処理ごとに行われる必要はなく、例えば、基板Wの処理枚数が所定枚数以上になるたびに、あるいは、前回の結晶監視処理から所定期間が経過したときに行われる。
【0285】
監視処理部91は、待機状態での正常なチャンバー10内を撮像して取得された参照画像データと、カメラ70によって取得された撮像画像データとの比較により、結晶異常の有無を判断してもよい。例えば、結晶化の対象となる結晶判定領域を予め設定し、結晶判定領域における参照画像と撮像画像データとの差分画像内の画素値の総和が大きいときに、結晶異常が生じていると判定してもよい。
【0286】
結晶異常の位置および形状を正確に検出する必要性はさほど高くないので、高解像度は必要ではない。また、結晶異常は一度発生すると継続して発生するので、高フレームレートも必要ではない。そこで、条件設定部92は、結晶監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、解像度を低解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。言い換えれば、条件設定部92は、処理ユニット1が停止中の待機期間における撮像条件として、解像度を低解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。これによれば、監視処理部91は低い処理負荷で結晶異常の有無を監視することができる。
【0287】
<異常の発生期間の長短とフレームレートの高低>
以上のように、条件設定部92は、第1発生期間で生じる第1異常(例えば乾燥異常、ヒューム異常および結晶異常など)を監視対象とする工程の実行期間では、フレームレートを低フレームレートに設定する。一方で、条件設定部92は、第1発生期間よりも短い第2発生期間で生じ得る第2異常(例えば液はね、ぼた落ちおよび出流れなど)を監視対象とする工程の実行期間では、フレームレートを高フレームレートに設定する。
【0288】
これにより、発生期間の長い第1異常では、フレームレートを低い第1フレームレートに設定するので、監視処理部91の処理負荷を低減させることができる。また、発生期間の短い第2異常では、フレームレートを高い第2フレームレートに設定するので、監視処理部91は適切に第2異常の有無を監視することができる。
【0289】
<チャンバー10内の洗浄>
処理ユニット1には、チャンバー10内を洗浄するチャンバー用ノズル(図示省略)が設けられている場合がある。このチャンバー用ノズルは、チャンバー10内で洗浄液(例えば純水)を放出してチャンバー10内の各種構成を洗浄する(チャンバー洗浄工程)。このチャンバー洗浄工程は、処理ユニット1内に基板Wが搬入されていない状態で実行される。つまり、チャンバー洗浄工程は基板Wに対する処理が行われていない待機状態で行われる。例えば、処理制御部93は基板Wの搬入ごとにチャンバー用ノズルから洗浄液)を放出させて、チャンバー洗浄工程を行ってもよく、あるいは、基板Wの処理枚数が所定枚数以上となるたびに、チャンバー洗浄工程を行ってもよく、あるいは、前回のチャンバー洗浄工程から所定期間が経過したときにチャンバー洗浄工程を行ってもよい。
【0290】
監視対象として、チャンバー用ノズルの先端から吐出される洗浄液の吐出異常を採用してもよい。以下、チャンバー洗浄監視処理の具体的な一例について説明する。
【0291】
カメラ70はチャンバー洗浄工程において撮像画像データを順次に取得する。撮像画像データには、このチャンバー用ノズルの先端が含まれている。また撮像画像データには、チャンバー用ノズルの先端から吐出方向に延びる領域を含む吐出判定領域が設定される。監視処理部91は、撮像画像データのうち当該吐出判定領域内の画素値に基づいて、吐出異常が生じているか否かを判断する。例えば、正常に処理液が吐出されたときの参照画像データの吐出判定領域と、撮像画像データの吐出判定領域との比較により、吐出異常を判定してもよい。
【0292】
このような吐出異常は、基板Wの処理に直接影響するものではないので、高解像度および高フレームレートは必要ない。よって、条件設定部92は、このチャンバー洗浄監視処理に用いられる撮像画像データの撮像条件として、解像度を低解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。言い換えれば、条件設定部92は、チャンバー洗浄工程の実行期間における撮像条件として、解像度を低解像度に設定し、フレームレートを低フレームレートに設定してもよい。これによれば、監視処理部91は低い処理負荷で吐出異常の有無を監視することができる。
【0293】
<撮像条件の他の例>
上述の例では、撮像条件の例として、解像度およびフレームレートを採用した。しかしながら、必ずしもこれに限らない。例えば撮像条件として、撮像画像データに映る視野範囲の大きさを採用してもよい。例えば、カメラ70は視野範囲V1(図2参照)でチャンバー10の内部を撮像することができ、また、視野範囲V2でチャンバー10の内部を撮像することができる。視野範囲V1は視野範囲V2よりも広い。平面視における視野範囲V1の視野角は例えば120度であり、視野範囲V2の視野角は例えば60度である。
【0294】
視野範囲V2で取得された撮像画像データには、処理カップ40の開口の全体が含まれるものの、その開口の近傍のみが含まれる。視野範囲V1で取得された撮像画像データには、処理カップ40の開口の全体および当該開口よりも離れた領域も含まれる。
【0295】
図31は、視野範囲の異なる撮像画像データの一例を概略的に示す図である。図31の例では、広い視野範囲V1で取得された撮像画像データのうち、所定領域を視野範囲V2として切り出した撮像画像データが、視野範囲V2で取得された撮像画像データに相当する。よって、視野範囲V2の撮像画像データのデータ量は視野範囲V1の撮像画像データのデータ量よりも少ない。
【0296】
カメラ70は、例えば、全ての受光素子から読み出した画像データの一部の領域を切り出すことにより、視野範囲を調整することが可能である。あるいは、カメラ70は、視野範囲として指定された領域内の受光素子のみのデータを読み出してもよい。これによっても、カメラ70は視野範囲を変更することができる。
【0297】
ところで、上述の監視対象の監視処理の全てにおいて、必ずしも最も広い視野範囲V1で取得された撮像画像データを用いる必要はない。例えば、ノズルの位置を監視する位置監視処理では、各ノズルの先端が撮像画像データに含まれていればよく、視野範囲V2で足りる。
【0298】
そこで、条件設定部92は監視対象に応じて視野範囲を設定してもよい。図32は、監視対象と撮像条件の一例を示す表である。なお、図32の例では、基板Wの形状異常に対しては、解像度は高解像度および低解像度のいずれに設定してもよい。上述の例では、基板Wの形状異常および保持異常を監視するアルゴリズムは互いに同一であるので、保持異常の監視も行う場合には、解像度を高解像度に設定するとよい。
【0299】
また、条件設定部92は、複数の監視対象に対する監視処理を並行して行う期間における撮像条件として、データ量が高い方の撮像条件を採用するとよい。例えば、大きな視野範囲を必要とする監視処理と大きな視野範囲を必要としない監視処理の両方を並行して行うときには、条件設定部92は、その工程における撮像条件として、視野範囲を大きな視野範囲に設定する。例えば、過酸化水素水で硫酸を押し出して第1ノズル30から吐出させる押し出し工程において、ヒューム異常および処理液の吐出状態の両方に対する監視処理を行うことが考えられる。この場合、条件設定部92は、押し出し工程における撮像条件として、視野範囲を大きい範囲に設定し、解像度を低解像度に設定し、フレームレートを高フレームレートに設定する。
【0300】
<画像条件>
上述の例では、条件設定部92は、カメラ70の撮像条件を設定した。しかしながら、必ずしもこれに限らない。例えば、カメラ70が所定の撮像条件で撮像画像データを取得してもよい。所定の撮像条件としては、例えば、視野範囲が大きい視野範囲に設定され、解像度が高解像度に設定され、フレームレートが高フレームレートに設定される。制御部9は、カメラ70から受け取った撮像画像データに対して画像処理を行うことにより、撮像画像データの画像条件を変更してもよい。ここでいう画像条件は、撮像条件と同じである。ただし、画像条件はカメラ70の制御に直接用いられるものではない。画像条件は、例えば、撮像画像データの視野範囲、解像度およびフレームレートである。
【0301】
図33は、制御部9の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。制御部9は、監視処理部91と、条件設定部92と、処理制御部93と、前処理部94とを含んでいる。
【0302】
前処理部94は、カメラ70から受け取った撮像画像データの画像条件を変更する。例えば、前処理部94は、撮像画像データの一部の領域を切り出すことで、小さい視野範囲V2を有する撮像画像データを取得する。また、前処理部94は、例えば、撮像画像データ内の隣り合う縦nx個×横ny個の画素の画素値を平均して、これらを一画素にすることにより、低解像度を有する撮像画像データを取得する。また、前処理部94は、例えば、順次に取得される撮像画像データを少なくとも1枚飛ばしで、少なくとも1枚の撮像画像データを削除することにより、低フレームレートを有する撮像画像データを取得する。
【0303】
条件設定部92は、既述のように、チャンバー10内の監視対象候補から監視対象を特定し、その監視対象に応じた画像条件を設定する。
【0304】
前処理部94は、カメラ70から受け取った撮像画像データの画像条件が、条件設定部92によって設定された画像条件に一致するように、撮像画像データに対して上述の処理を行う。
【0305】
監視処理部91は、前処理部94によって処理された撮像画像データに基づいて、監視対象に対する監視処理を実行する。
【0306】
これによっても、監視処理部91は、監視対象に応じた画像条件を有する撮像画像データに基づいて監視対象を監視することができる。よって、撮像条件を変更できないカメラ70であっても、監視処理部91は、監視対象に応じた画像条件を有する撮像画像データに基づいて監視対象を監視することができる。これによれば、既述のように、監視対象を高い精度で監視することができる。また、監視処理部91の処理負荷を適宜に低減させることもできる。
【0307】
以上のように、基板処理方法および基板処理装置100は詳細に説明されたが、上記の説明は、全ての局面において、例示であって、この基板処理装置がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施の形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【0308】
例えば、上述の例では、画像条件として視野範囲、解像度およびフレームレートを採用しているものの、必ずしもこれに限らない。例えば、カメラ70の露光時間、ホワイトバランスなどの画像条件を監視対象に応じて変更してもよい。
【0309】
また、上述の例では、条件設定部92は画像条件を二値で変更している。例えば、条件設定部92は監視対象に応じて、解像度を高解像度および低解像度のいずれかに設定している。しかしながら、条件設定部92は監視対象に応じて、より細かく画像条件(例えば解像度)を変更してもよい。
【符号の説明】
【0310】
1 処理ユニット
10 チャンバー
20 スピンチャック
30 ノズル(第1ノズル)
40 処理カップ
60 ノズル(第2ノズル)
65 ノズル(第3ノズル)
80 ノズル(固定ノズル)
9 制御部
70 カメラ
100 基板処理装置
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
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