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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20240304BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
H01L21/26 T
H01L21/68 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020050798
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021150566
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】大森 麻央
(72)【発明者】
【氏名】布施 和彦
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-535542(JP,A)
【文献】特開2020-035811(JP,A)
【文献】特開2017-092102(JP,A)
【文献】特開平08-037158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法であって、
先行する基板の処理が終了して当該先行する基板がチャンバーから搬出された後に、後続の基板に対する処理開始要求がなされた時点での前記チャンバー内の温度を測定する温度測定工程と、
前記先行する基板が前記チャンバーから搬出されたときの前記チャンバー内の温度である搬出時温度と前記温度測定工程にて測定された測定温度との差分である降下温度を算定する算定工程と、
前記算定工程にて算定された前記降下温度と所定の閾値とを比較する比較工程と、
を備え、
前記降下温度が前記閾値よりも大きいときには、連続点灯ランプおよびフラッシュランプからの光照射によって前記チャンバー内の構造物を予熱するダミー処理を実行するとともに、前記降下温度が前記閾値以下のときには、前記ダミー処理を実行することなく前記後続の基板を前記チャンバー内に搬入して当該後続の基板に対する処理を開始することを特徴とする熱処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理方法において、
前記ダミー処理では、前記チャンバー内にダミーウェハーを搬入し、前記連続点灯ランプおよび前記フラッシュランプから前記ダミーウェハーに光照射を行って前記チャンバー内の構造物を予熱することを特徴とする熱処理方法。
【請求項3】
請求項1記載の熱処理方法において、
前記ダミー処理では、前記チャンバー内にダミーウェハーを搬入することなく、前記連続点灯ランプおよび前記フラッシュランプからの光照射によって前記チャンバー内の構造物を予熱することを特徴とする熱処理方法。
【請求項4】
請求項3記載の熱処理方法において、
前記連続点灯ランプおよび前記フラッシュランプからダミーウェハーに光照射を行うときのそれぞれの条件を第1条件および第2条件とし、
前記ダミー処理では、前記連続点灯ランプから前記第1条件にて光照射を行うとともに、前記フラッシュランプから前記第2条件にて光照射を行うことを特徴とする熱処理方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱処理方法において、
前記温度測定工程では、サセプタ用温度計によって基板を保持するサセプタの温度を測定することを特徴とする熱処理方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱処理方法において、
前記温度測定工程では、雰囲気温度計によって前記チャンバー内の雰囲気の温度を測定することを特徴とする熱処理方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱処理方法において、
前記温度測定工程では、基板の下面の温度を測定する放射温度計によって前記チャンバー内の温度を測定することを特徴とする熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
典型的には、熱処理に限らず半導体ウェハーの処理はロット(同一条件にて同一内容の処理を行う対象となる1組の半導体ウェハー)単位で行われる。枚葉式の基板処理装置では、ロットを構成する複数枚の半導体ウェハーに対して連続して順次に処理が行われる。フラッシュランプアニール装置においても、ロットを構成する複数の半導体ウェハーが1枚ずつチャンバーに搬入されて順次に熱処理が行われる。
【0006】
ところが、ロットを構成する複数の半導体ウェハーを順次に処理する過程で半導体ウェハーを保持するサセプタ等のチャンバー内構造物の温度が変化することがある。このような現象は、暫く稼働停止状態にあったフラッシュランプアニール装置にて新たに処理を開始する場合や半導体ウェハーの処理温度等の処理条件を変化させた場合に生じる。ロットの複数の半導体ウェハーを処理する過程でサセプタ等のチャンバー内構造物の温度が変化すると、ロットの初期の半導体ウェハーと後半の半導体ウェハーとで処理時の温度履歴が異なるという問題が生じる。
【0007】
このような問題を解決するために、ロットを構成するプロダクトウェハーの処理を開始する前に、処理対象ではないダミーウェハーをチャンバー内に搬入してサセプタに支持し、処理対象のロットと同一条件にて加熱処理を行うことにより、事前にサセプタ等のチャンバー内構造物を安定温度にまで昇温しておくことが行われていた(ダミーランニング)。特許文献1には、10枚程度のダミーウェハーに加熱処理を行ってサセプタ等のチャンバー内構造物の温度を処理時の安定温度に到達させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-092102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
製品となるプロダクトウェハーの処理を行う前に、複数枚のダミーウェハーを消費してダミーランニングを行うことは、ランニングコストを上昇させるとともに、生産効率を低下させることにも繋がる。このため、可能な限りダミーランニングにて消費するダミーウェハーの枚数を低減することが強く求められている。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、消費するダミーウェハーの枚数を低減することができる熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法において、先行する基板の処理が終了して当該先行する基板がチャンバーから搬出された後に、後続の基板に対する処理開始要求がなされた時点での前記チャンバー内の温度を測定する温度測定工程と、前記先行する基板が前記チャンバーから搬出されたときの前記チャンバー内の温度である搬出時温度と前記温度測定工程にて測定された測定温度との差分である降下温度を算定する算定工程と、前記算定工程にて算定された前記降下温度と所定の閾値とを比較する比較工程と、を備え、前記降下温度が前記閾値よりも大きいときには、連続点灯ランプおよびフラッシュランプからの光照射によって前記チャンバー内の構造物を予熱するダミー処理を実行するとともに、前記降下温度が前記閾値以下のときには、前記ダミー処理を実行することなく前記後続の基板を前記チャンバー内に搬入して当該後続の基板に対する処理を開始することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理方法において、前記ダミー処理では、前記チャンバー内にダミーウェハーを搬入し、前記連続点灯ランプおよび前記フラッシュランプから前記ダミーウェハーに光照射を行って前記チャンバー内の構造物を予熱することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明に係る熱処理方法において、前記ダミー処理では、前記チャンバー内にダミーウェハーを搬入することなく、前記連続点灯ランプおよび前記フラッシュランプからの光照射によって前記チャンバー内の構造物を予熱することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る熱処理方法において、前記連続点灯ランプおよび前記フラッシュランプからダミーウェハーに光照射を行うときのそれぞれの条件を第1条件および第2条件とし、前記ダミー処理では、前記連続点灯ランプから前記第1条件にて光照射を行うとともに、前記フラッシュランプから前記第2条件にて光照射を行うことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る熱処理方法において、前記温度測定工程では、サセプタ用温度計によって基板を保持するサセプタの温度を測定することを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る熱処理方法において、前記温度測定工程では、雰囲気温度計によって前記チャンバー内の雰囲気の温度を測定することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る熱処理方法において、前記温度測定工程では、基板の下面の温度を測定する放射温度計によって前記チャンバー内の温度を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1から請求項7の発明によれば、降下温度が閾値よりも大きいときには、連続点灯ランプおよびフラッシュランプからの光照射によってチャンバー内の構造物を予熱するダミー処理を実行するとともに、降下温度が前記閾値以下のときには、前記ダミー処理を実行することなく後続の基板を前記チャンバー内に搬入して当該後続の基板に対する処理を開始するため、降下温度が比較的小さいときにはダミー処理が行われず、消費するダミーウェハーの枚数を低減することができる。
【0019】
特に、請求項3の発明によれば、チャンバー内にダミーウェハーを搬入することなく、連続点灯ランプおよびフラッシュランプからの光照射によってチャンバー内の構造物を予熱するため、ダミーウェハーを用いることなくダミー処理を実行することとなり、消費するダミーウェハーの枚数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る熱処理方法を実施する熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
図2】保持部の全体外観を示す斜視図である。
図3】サセプタの平面図である。
図4】サセプタの断面図である。
図5】移載機構の平面図である。
図6】移載機構の側面図である。
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図8】制御部の構成を示すブロック図である。
図9】半導体ウェハーの処理後の手順を示すフローチャートである。
図10】熱処理装置にて半導体ウェハーが処理されるときの下部放射温度計の測定温度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理方法を実施する熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである(本実施形態ではφ300mm)。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0023】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0024】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0025】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0026】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0027】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0028】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aおよび貫通孔61bが穿設されている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を上部放射温度計25の赤外線センサー29に導くための円筒状の孔である。一方、貫通孔61bは、半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を下部放射温度計20の赤外線センサー24に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aおよび貫通孔61bは、それらの貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、上部放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化カルシウム材料からなる透明窓26が装着されている。また、貫通孔61bの熱処理空間65に臨む側の端部には、下部放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0029】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、例えば窒素(N)等の不活性ガス、または、水素(H)、アンモニア(NH)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる(本実施形態では窒素ガス)。
【0030】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0031】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
【0032】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0033】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0034】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。図3は、サセプタ74の平面図である。また、図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0035】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0036】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0037】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0038】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0039】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0040】
また、図2および図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、下部放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、下部放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61bに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0041】
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0042】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0043】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0044】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0045】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0046】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0047】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0048】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0049】
また、図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0050】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0051】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0052】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0053】
図1に示すように、チャンバー6には、上部放射温度計25および下部放射温度計20が設けられている。上部放射温度計25は、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの斜め上方に設置され、その半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を受光して上面の温度を測定する。上部放射温度計25の赤外線センサー29は、フラッシュ光が照射された瞬間の半導体ウェハーWの上面の急激な温度変化に対応できるように、InSb(インジウムアンチモン)の光学素子を備えている。一方、下部放射温度計20は、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの斜め下方に設けられ、その半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を受光して下面の温度を測定する。
【0054】
さらに、チャンバー6には、サセプタ温度計91および雰囲気温度計95が設けられている。サセプタ温度計91は、放射温度計であり、サセプタ74から放射された赤外光を受光して当該サセプタ74の温度を測定する。雰囲気温度計95は、熱電対を備えており、チャンバー6内の熱処理空間65の雰囲気温度を測定する。なお、図1では図示の便宜上、サセプタ温度計91および雰囲気温度計95をチャンバー6内に記載しているが、これらは上部放射温度計25および下部放射温度計20と同様に、チャンバー側部61に取り付けられていても良い。
【0055】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。図8は、制御部3の構成を示すブロック図である。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク35を備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0056】
図8に示すように、制御部3は算定部31および比較部32を備える。算定部31および比較部32は、制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。算定部31および比較部32の処理内容についてはさらに後述する。
【0057】
また、制御部3には上部放射温度計25、下部放射温度計20、サセプタ温度計91および雰囲気温度計95が接続されている。上部放射温度計25、下部放射温度計20、サセプタ温度計91および雰囲気温度計95による温度測定結果は制御部3に伝達される。さらに、制御部3には表示部39および入力部38が接続されている。制御部3は、表示部39に種々の情報を表示する。熱処理装置1のオペレータは、表示部39に表示された情報を確認しつつ、入力部38から種々のコマンドやパラメータを入力することができる。入力部38としては、例えばキーボードやマウスを用いることができる。表示部39としては、例えば液晶ディスプレイを用いることができる。本実施形態においては、表示部39および入力部38として、熱処理装置1の外壁に設けられた液晶のタッチパネルを採用して双方の機能を併せ持たせるようにしている。
【0058】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0059】
次に、熱処理装置1における処理動作について説明する。ここではまず、製品となる通常の半導体ウェハー(プロダクトウェハー)Wに対する熱処理動作について説明する。以下に説明する半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0060】
まず、半導体ウェハーWの処理に先立って給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0061】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0062】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。このときには、半導体ウェハーWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0063】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0064】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、被処理面である表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0065】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0066】
ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度は下部放射温度計20によって測定される。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、下部放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。
【0067】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、下部放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0068】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0069】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点でフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0070】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇した後、急速に下降する。
【0071】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は下部放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、下部放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー6から搬出され、半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0072】
ところで、典型的には、半導体ウェハーWの処理はロット単位で行われる。ロットとは、同一条件にて同一内容の処理を行う対象となる1組の半導体ウェハーWである。本実施形態の熱処理装置1においても、ロットを構成する複数枚の半導体ウェハーWが1枚ずつ順次にチャンバー6に搬入されて加熱処理が行われる。
【0073】
ここで、しばらく処理を行っていなかった熱処理装置1にてロットの処理を開始する場合、概ね室温のチャンバー6にロットの最初の半導体ウェハーWが搬入されて加熱処理が行われることとなる。このよう場合は、例えばメンテナンス後に熱処理装置1が起動されてから最初のロットを処理する場合や先のロットを処理した後に長時間が経過した場合などである。加熱処理時には、昇温した半導体ウェハーWからサセプタ74に熱伝導が生じるため、初期には室温であったサセプタ74が半導体ウェハーWの処理枚数が増えるにつれて徐々に蓄熱により昇温することとなる。
【0074】
そして、約10枚の半導体ウェハーWの加熱処理が行われたときにサセプタ74等のチャンバー内構造物の温度が一定の安定温度に到達する。サセプタ74の温度が安定温度に到達するまでは、半導体ウェハーWからのサセプタ74への伝熱量がサセプタ74からの放熱量よりも多いため、半導体ウェハーWの処理枚数が増えるにつれてサセプタ74の温度が徐々に蓄熱により上昇する。これに対して、サセプタ74の温度が安定温度に到達した後は、半導体ウェハーWからサセプタ74への伝熱量とサセプタ74からの放熱量とが均衡するため、サセプタ74の温度は一定の安定温度に維持されることとなる。なお、サセプタ74等のチャンバー内構造物の安定温度とは、当該構造物を予熱することなく、チャンバー6内にてロットの複数の半導体ウェハーWに連続して加熱処理を行うことにより、サセプタ74等のチャンバー内構造物の温度が上昇して一定となったときの当該構造物の温度である。
【0075】
このように室温のチャンバー6にてロットの処理を開始すると、初期段階では室温近傍のサセプタ74に半導体ウェハーWが保持されるのに対して、後半では安定温度に昇温したサセプタ74に半導体ウェハーWが保持されることとなる。すなわち、ロットの初期の半導体ウェハーWと途中からの半導体ウェハーWとでサセプタ74等のチャンバー内構造物の温度が異なることに起因して温度履歴が不均一になるという問題があった。そこで、従来より、ロットの処理を開始する前に、処理対象ではない複数枚のダミーウェハーをチャンバー6内に搬入して加熱処理を行ってサセプタ74等のチャンバー内構造物を安定温度にまで昇温するダミーランニングが実施されている。しかし、既述したように、複数枚のダミーウェハーを消費してダミーランニングを行うことは、ランニングコストを上昇させるとともに、生産効率を低下させることにも繋がる。そこで、本実施形態においては、可能な限り消費するダミーウェハーの枚数を低減することができるように、以下のような処理を行っている。
【0076】
図9は、半導体ウェハーWの処理後の手順を示すフローチャートである。熱処理装置1では、先行する半導体ウェハーW(以下、先行ウェハーとする)の処理が実行される。図10は、熱処理装置1にて半導体ウェハーWが処理されるときの下部放射温度計20の測定温度を示す図である。先行ウェハーに対する処理は上述した通りである。すなわち、サセプタ74に保持された先行ウェハーにはハロゲンランプHLから光照射が行われて当該先行ウェハーが予備加熱温度T1に予備加熱される。その後、先行ウェハーの表面にフラッシュランプFLからフラッシュ光が照射されてフラッシュ加熱が行われる。フラッシュ加熱が終了してフラッシュランプFLが消灯するのと同時にハロゲンランプHLも消灯することにより、先行ウェハーに対する処理が完了する(ステップS1)。
【0077】
時刻t1に先行ウェハーの処理が完了してフラッシュランプFLおよびハロゲンランプHLの双方が消灯することにより、半導体ウェハーWの温度が降温する。また、サセプタ74等のチャンバー内構造物の温度も降温する。時刻t1以降に降温する半導体ウェハーWの温度は下部放射温度計20によって測定される。そして、時刻t2に当該先行ウェハーがチャンバー6から搬出される(ステップS2)。時刻t2に先行ウェハーがチャンバー6から搬出されるときに下部放射温度計20によって測定されるチャンバー6内の温度を搬出時温度T3とする。
【0078】
先行ウェハーがチャンバー6から搬出された後も、下部放射温度計20による温度測定は継続して行われる。先行ウェハーがチャンバー6から搬出された以降は、サセプタ74に半導体ウェハーWが保持されていないため、下部放射温度計20はチャンバー6内の温度を測定することとなる。
【0079】
次に、時刻t3に上記先行ウェハーの次に処理対象となる半導体ウェハーW(以下、後続ウェハーとする)に対する処理開始要求が制御部3によってなされる(ステップS3)。後続ウェハーに対する処理開始要求がなされた時刻t3の時点で下部放射温度計20によって測定されるチャンバー6内の温度が測定温度T4である。そして、制御部3の算定部31が時刻t2から時刻t3までの降下温度を算定する(ステップS4)。具体的には、算定部31が時刻t2の搬出時温度T3と時刻t3の測定温度T4との差分ΔTを算出する。なお、例えば先行ウェハーと後続ウェハーとが同じロットである場合には時刻t2から時刻t3までは比較的短く、先行ウェハーが先のロットの最後の半導体ウェハーWで後続ウェハーが後のロットの最初の半導体ウェハーWであるような場合は時刻t2から時刻t3までが長くなることが多い。
【0080】
続いて、制御部3の比較部32が時刻t2から時刻t3までの降下温度である上記の差分ΔTと所定の閾値とを比較する(ステップS5)。所定の閾値はパラメータとして予め設定されて制御部3の記憶部に格納されている。所定の閾値としては適宜の値を設定することができるが例えば5℃に設定される。
【0081】
比較部32による比較の結果、降下温度である差分ΔTが所定の閾値よりも大きいときには、ステップS5からステップS6に進み、ダミー処理が実行される。本実施形態のダミー処理は、ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLからの光照射によってサセプタ74等のチャンバー内構造物を安定温度に予熱する安定化処理である。ダミー処理はダミーウェハーの存在の有無に関わらず行われるものであるが、第1実施形態ではダミーウェハーを用いてダミー処理を実行している。ダミーウェハーは、製品となる半導体ウェハーWと同様の円板形状のシリコンウェハーであり、半導体ウェハーWと同様のサイズおよび形状を有する。但し、ダミーウェハーには、パターン形成やイオン注入はなされていない。すなわち、ダミーウェハーはいわゆるベアウェハーである。第1実施形態のダミー処理は、サセプタ74にダミーウェハーを保持した状態でハロゲンランプHLからの光照射によってダミーウェハーを加熱した後に、フラッシュランプFLからフラッシュ光を照射してダミーウェハーをフラッシュ加熱することによって行われる。ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLからの光照射によって加熱されて昇温したダミーウェハーからの熱伝導および熱輻射により、サセプタ74等のチャンバー内構造物が安定温度に予熱されることとなる。なお、ダミー処理では、複数枚のダミーウェハーに対してハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLからの光照射を順次に繰り返してサセプタ74等のチャンバー内構造物を加熱するようにしても良い。
【0082】
ダミー処理が終了した後、後続ウェハーの処理が開始される(ステップS7)。後続ウェハーに対する処理も上述した通りである。すなわち、チャンバー6に搬入されてサセプタ74に保持された後続ウェハーにはハロゲンランプHLから光照射が行われて当該後続ウェハーが予備加熱温度T1に予備加熱される。その後、後続ウェハーの表面にフラッシュランプFLからフラッシュ光が照射されてフラッシュ加熱が行われる。
【0083】
一方、降下温度である差分ΔTが所定の閾値以下のときには、ステップS5から直接ステップS7に進み、ステップS6のダミー処理を実行することなく後続ウェハーがチャンバー6に搬入されて当該後続ウェハーに対する処理が開始される。
【0084】
第1実施形態においては、先行ウェハーがチャンバー6から搬出された時刻t2に下部放射温度計20によって測定された搬出時温度T3と時刻t3に下部放射温度計20によって測定された測定温度T4との差分ΔTを先行ウェハー搬出後の降下温度として算出している。そして、降下温度である差分ΔTと所定の閾値との比較を行っている。
【0085】
降下温度である差分ΔTが所定の閾値よりも大きいときには、サセプタ74等のチャンバー内構造物の温度が安定温度から大きく低下していることを意味しており、そのまま後続ウェハーの処理を行うとそれ以降の温度履歴が不均一になるおそれがある。このため、降下温度が所定の閾値よりも大きいときには、ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLからダミーウェハーに光照射を行うことによってサセプタ74等のチャンバー内構造物を予熱するダミー処理を実行している。ダミー処理によってサセプタ74等のチャンバー内構造物が安定温度に予熱されることにより、後続ウェハー以降の温度履歴を均一にすることができる。
【0086】
一方、降下温度である差分ΔTが所定の閾値以下のときには、サセプタ74等のチャンバー内構造物の温度が安定温度からさほどには低下していないことを意味している。この場合、そのまま後続ウェハーの処理を行ったとしても、当該後続ウェハー以降の温度履歴が不均一となるのは防がれる。このため、降下温度が所定の閾値以下のときには、ダミー処理を実行することなく後続ウェハーをチャンバー6内に搬入して当該後続ウェハーに対する処理を開始している。このようにすれば、降下温度が閾値以下の比較的小さいときには、ダミー処理を実行しないため、消費するダミーウェハーの枚数を低減することができるとともに、ダミー処理に要する時間を削減することが可能となる。
【0087】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置1の構成は第1実施形態と同様である。また、第2実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。さらに、第2実施形態における半導体ウェハーWの処理後の手順も第1実施形態(図9)と概ね同様である。第1実施形態ではダミーウェハーを用いてステップS6のダミー処理を行っていたのに対して、第2実施形態ではダミーウェハーを用いることなくダミー処理を実行する。
【0088】
上記の第1実施形態においては、ステップS6のダミー処理を実行するときに、サセプタ74にダミーウェハーを保持した状態でハロゲンランプHLからの光照射によってダミーウェハーを加熱した後に、フラッシュランプFLからフラッシュ光を照射してダミーウェハーをフラッシュ加熱していた。そして、ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLからの光照射によって加熱されて昇温したダミーウェハーからの熱伝導および熱輻射により、サセプタ74等のチャンバー内構造物を予熱していた。このようにダミーウェハーを用いてダミー処理を行うときのハロゲンランプHLのプロセス条件(ランプ出力および発光時間等)はハロゲン加熱条件(第1条件)として例えば制御部3の磁気ディスク35に格納されている(図8)。同様に、ダミーウェハーを用いてダミー処理を行うときのフラッシュランプFLのプロセス条件(ランプ出力および発光パルス幅等)はフラッシュ加熱条件(第2条件)として磁気ディスク35に格納されている。
【0089】
第2実施形態においては、降下温度である差分ΔTが所定の閾値よりも大きく、ステップS6のダミー処理を行うときに、ダミーウェハーを用いることなくダミー処理を実行している。具体的には、チャンバー6内にダミーウェハーを搬入することなく、サセプタ74に何も保持しない状態でハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLからの光照射を行う。このときのハロゲンランプHLのプロセス条件およびフラッシュランプFLのプロセス条件としては、それぞれ磁気ディスク35に格納されているハロゲン加熱条件およびフラッシュ加熱条件が用いられる。すなわち、ダミーウェハーを用いてダミー処理を行うときと同じプロセス条件にてダミーウェハー無しのダミー処理を実行するのである。
【0090】
ダミーウェハーを用いることなく、サセプタ74に何も保持しない状態でハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから光照射を行ったとしても、サセプタ74等が直接光を吸収して当該サセプタ74等のチャンバー内構造物が予熱される。これにより、第1実施形態と同様に、後続ウェハー以降の温度履歴を均一にすることができる。また、第2実施形態においては、ダミーウェハーを用いることなくダミー処理を実行しているため、消費するダミーウェハーの枚数を低減することができる。
【0091】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、下部放射温度計20の測定温度に基づいて降下温度を算出していたが、これに限定されるものではなく、サセプタ温度計91または雰囲気温度計95の測定温度に基づいて降下温度を算出するようにしても良い。すなわち、先行ウェハーをチャンバー6から搬出した後にサセプタ温度計91によってサセプタ74の温度を測定し、そのサセプタ74の温度が時刻t2から時刻t3までに降下した差分を降下温度としても良い。或いは、先行ウェハーをチャンバー6から搬出した後に雰囲気温度計95によってチャンバー6内の雰囲気温度を測定し、その雰囲気温度が時刻t2から時刻t3までに降下した差分を降下温度としても良い。いずれの場合であっても、降下温度が所定の閾値よりも大きいときには、ダミー処理を実行し、降下温度が所定の閾値以下のときには、ダミー処理を行うことなく後続ウェハーに対する処理を開始する。これにより、第1実施形態と同じく、後続ウェハー以降の温度履歴が不均一となるのを防ぎつつ消費するダミーウェハーの枚数を低減することができる。
【0092】
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0093】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)を連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。
【0094】
また、熱処理装置1によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。
【符号の説明】
【0095】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
20 下部放射温度計
25 上部放射温度計
63 上側チャンバー窓
64 下側チャンバー窓
65 熱処理空間
74 サセプタ
91 サセプタ温度計
95 雰囲気温度計
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10