(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】印刷方法および印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240306BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240306BHJP
B65B 57/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B41J2/165 209
B41J2/01 451
B65B57/00 A
(21)【出願番号】P 2020051337
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】加門 宏章
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-66438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0053241(US,A1)
【文献】特開2014-184597(JP,A)
【文献】特開2019-55569(JP,A)
【文献】特開2009-40002(JP,A)
【文献】特開2008-80757(JP,A)
【文献】特開2006-103279(JP,A)
【文献】国際公開第2020/250772(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B65B 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送しつつノズルからインクを前記包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷工程と、
前記包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記位置情報に基づいて前記非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング工程と、
印刷用の印刷画像情報と製袋加工用の加工画像情報とを含む印刷指令を受け取る指令受取工程と、
を備え
、
前記印刷工程は前記印刷画像情報および前記加工画像情報に基づいて前記印刷を行う工程を含み、
前記位置情報取得工程は前記加工画像情報に基づいて前記位置情報を取得する工程を含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送しつつノズルからインクを前記包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷工程と、
前記包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記位置情報に基づいて前記非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング工程と、
を備え、
前記包装用基材には予め製袋加工用画像が記録されており、
前記印刷工程は前記製袋加工用画像に対応した位置で前記印刷を行う工程を含み、
前記位置情報取得工程は前記製袋加工用画像を検知して前記位置情報を取得する工程を含む
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送しつつノズルからインクを前記包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷工程と、
前記包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記位置情報に基づいて前記非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング工程と、
を備え、
前記位置情報取得工程は、前記包装用基材に加えられる製袋加工に関する製袋加工情報を取得し、前記製袋加工情報から前記位置情報を導出する工程を含む
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の印刷方法であって、
前記製袋加工情報は、前記印刷工程後の前記包装用基材に前記製袋加工を加えることにより製造される袋の種類および製袋寸法である印刷方法。
【請求項5】
製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送しつつノズルからインクを前記包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷工程と、
前記包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記位置情報に基づいて前記非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング工程と、
を備え、
前記位置情報取得工程は、ユーザインターフェースを介してユーザから前記位置情報を受け取る工程を含む
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送しつつノズルからインクを前記包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷工程と、
前記包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記位置情報に基づいて前記非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング工程と、
を備え、
前記非視認領域は前記長尺方向において互いに離間して複数個設定され、
前記フラッシング工程は、互いに隣り合う前記非視認領域の前記長尺方向における間隔に応じて前記フラッシング処理の頻度を変更する
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部に搬送される前記包装用基材の被印刷面にノズルからインクを吐出して印刷を行うヘッド部と、
前記ヘッド部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報に基づいて前記非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング制御部と
、を有し、
印刷用の印刷画像情報と製袋加工用の加工画像情報とを含む印刷指令を受け取り、前記印刷画像情報および前記加工画像情報に基づいて前記印刷を行うように前記ヘッド部を制御し、
前記位置情報取得部は、前記加工画像情報に基づいて前記位置情報を取得することを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部に搬送される前記包装用基材の被印刷面にノズルからインクを吐出して印刷を行うヘッド部と、
前記ヘッド部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報に基づいて前記非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング制御部と
、を有し、
前記包装用基材には予め記録されている製袋加工用画像に対応した位置で前記印刷を行うように
前記ヘッド部を制御し、
前記位置情報取得部は、前記製袋加工用画像を検知して前記位置情報を取得する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部に搬送される前記包装用基材の被印刷面にノズルからインクを吐出して印刷を行うヘッド部と、
前記ヘッド部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報に基づいて前記非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング制御部と
、を有し、
前記位置情報取得部は、前記包装用基材に加えられる製袋加工に関する製袋加工情報を取得し、前記製袋加工情報から前記位置情報を導出する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部に搬送される前記包装用基材の被印刷面にノズルからインクを吐出して印刷を行うヘッド部と、
前記ヘッド部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報に基づいて前記非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング制御部と
、を有し、
前記位置情報取得部は、ユーザインターフェースを介してユーザから前記位置情報を受け取る
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部に搬送される前記包装用基材の被印刷面にノズルからインクを吐出して印刷を行うヘッド部と、
前記ヘッド部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報に基づいて前記非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング制御部と
、を有し、
前記非視認領域は前記長尺方向において互いに離間して複数設定され、
前記フラッシング制御部は、互いにとなり合う前記非視認領域の前記長尺方向における間隔に応じて前記フラッシング処理の頻度を変更する
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズルからインクを包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷方法および印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺帯状の基材を長尺方向に搬送しつつヘッド部からインクジェット方式で水性や油性などのインクを基材の被印刷面に吐出して画像を印刷する印刷装置が知られている(特許文献1参照)。この印刷装置において、ヘッド部からのインク吐出が一定時間以上行われない場合、ノズルの吐出口近傍のインク粘度が増大する。この増粘が要因となってノズルからのインクの飛翔性が悪化することがある。これを回避するべく、基材の捨てエリアへのラインフラッシングや絵柄部分にスターフラッシングを行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、お菓子の包装材のような包装業界では、印刷領域が長尺方向に沿って連続しており、そもそも捨てエリアが存在しない。また、印刷装置により所望の画像が印刷された基材を製袋装置に供給して製袋加工するが、その製袋加工後の最終製品、つまり包装袋の外観を考慮せずに印刷装置でラインフラッシングを行うと、顧客から見える包装袋の部位にライン状の吐出パターンが表れて包装袋のデザイン性を損なってしまう。したがって、製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送しつつノズルからインクを包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷技術においては製袋加工後を考慮したフラッシング処理が望まれるが、そのような技術は現状のところ存在していない。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、包装用基材に対して製袋加工を加えて製造される包装袋のデザイン性を損なうことなく、包装用基材に対する包装袋用の印刷を良好に行うことができる印刷技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、印刷方法であって、製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送しつつノズルからインクを包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷工程と、包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得工程と、位置情報に基づいて非視認領域に向けてノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング工程と、印刷用の印刷画像情報と製袋加工用の加工画像情報とを含む印刷指令を受け取る指令受取工程と、を備え、印刷工程は印刷画像情報および加工画像情報に基づいて印刷を行う工程を含み、位置情報取得工程は加工画像情報に基づいて位置情報を取得する工程を含むことを特徴としている。
また、本発明の第2態様は、製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送しつつノズルからインクを包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷工程と、包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得工程と、位置情報に基づいて非視認領域に向けてノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング工程と、を備え、包装用基材には予め製袋加工用画像が記録されており、印刷工程は製袋加工用画像に対応した位置で印刷を行う工程を含み、位置情報取得工程は製袋加工用画像を検知して位置情報を取得する工程を含むことを特徴としている。
また、本発明の第3態様は、製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送しつつノズルからインクを包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷工程と、包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得工程と、位置情報に基づいて非視認領域に向けてノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング工程と、を備え、位置情報取得工程は、包装用基材に加えられる製袋加工に関する製袋加工情報を取得し、製袋加工情報から位置情報を導出する工程を含むことを特徴としている。
また、本発明の第4態様は、製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送しつつノズルからインクを包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷工程と、包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得工程と、位置情報に基づいて非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング工程と、を備え、位置情報取得工程は、ユーザインターフェースを介してユーザから位置情報を受け取る工程を含むことを特徴としている。
また、本発明の第5態様は、製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送しつつノズルからインクを包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷工程と、包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得工程と、位置情報に基づいて非視認領域に向けて前記ノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング工程と、を備え、非視認領域は長尺方向において互いに離間して複数個設定され、フラッシング工程は、互いに隣り合う非視認領域の長尺方向における間隔に応じてフラッシング処理の頻度を変更することを特徴としている。
【0007】
また、本発明の第6態様は、印刷装置であって、製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送する搬送部と、搬送部に搬送される包装用基材の被印刷面にノズルからインクを吐出して印刷を行うヘッド部と、ヘッド部を制御する制御部と、を備え、制御部は、包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得部と、位置情報に基づいて非視認領域に向けてノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング制御部と、を有し、印刷用の印刷画像情報と製袋加工用の加工画像情報とを含む印刷指令を受け取り、印刷画像情報および加工画像情報に基づいて印刷を行うようにヘッド部を制御し、位置情報取得部は、加工画像情報に基づいて位置情報を取得することを特徴としている。
本発明の第7態様は、印刷装置であって、製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送する搬送部と、搬送部に搬送される包装用基材の被印刷面にノズルからインクを吐出して印刷を行うヘッド部と、ヘッド部を制御する制御部と、を備え、制御部は、包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得部と、位置情報に基づいて非視認領域に向けてノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング制御部と、を有し、包装用基材には予め記録されている製袋加工用画像に対応した位置で前記印刷を行うようにヘッド部を制御し、位置情報取得部は、製袋加工用画像を検知して位置情報を取得することを特徴としている。
本発明の第8態様は、印刷装置であって、製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送する搬送部と、搬送部に搬送される包装用基材の被印刷面にノズルからインクを吐出して印刷を行うヘッド部と、ヘッド部を制御する制御部と、を備え、制御部は、包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得部と、位置情報に基づいて非視認領域に向けてノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング制御部と、を有し、位置情報取得部は、包装用基材に加えられる製袋加工に関する製袋加工情報を取得し、製袋加工情報から位置情報を導出することを特徴としている。
本発明の第9態様は、印刷装置であって、製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送する搬送部と、搬送部に搬送される包装用基材の被印刷面にノズルからインクを吐出して印刷を行うヘッド部と、ヘッド部を制御する制御部と、を備え、制御部は、包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得部と、位置情報に基づいて非視認領域に向けてノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング制御部と、を有し、位置情報取得部は、ユーザインターフェースを介してユーザから位置情報を受け取ることを特徴としている。
本発明の第10態様は、印刷装置であって、製袋加工前の長尺帯状の包装用基材を長尺方向に搬送する搬送部と、搬送部に搬送される包装用基材の被印刷面にノズルからインクを吐出して印刷を行うヘッド部と、ヘッド部を制御する制御部と、を備え、制御部は、包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域の位置情報を取得する位置情報取得部と、位置情報に基づいて非視認領域に向けてノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うフラッシング制御部と、を有し、非視認領域は長尺方向において互いに離間して複数設定され、フラッシング制御部は、互いにとなり合う非視認領域の長尺方向における間隔に応じてフラッシング処理の頻度を変更することを特徴としている。
【0008】
なお、ここで「製袋加工後に外部から視認されない非視認領域」は、後で説明する
図4A、
図4Bおよび
図5に示すように製袋加工により製造される包装袋において露出していないために視認されない領域のみならず、包装袋を用いてパッケージした包装商品を陳列した際に隠れて視認できない領域も含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、包装用基材の被印刷面のうち製袋加工後に外部から視認されない非視認領域に向けてノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うため、包装用基材に対して製袋加工を加えて製造される包装袋のデザイン性を損なうことなく、包装用基材に対する包装袋用の印刷を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る印刷装置の第1実施形態と製袋装置とを用いて包装袋を製造する製造システムの一例を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る印刷装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【
図3】
図2に示す印刷装置により実行される印刷方法を示すフローチャートである。
【
図4A】本発明に係る印刷方法の適用に好適な包装袋の一例を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る印刷方法の適用に好適な包装袋の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係る印刷装置の第1実施形態と製袋装置とを用いて包装袋を製造する製造システムの一例を示す模式図である。この製造システム1は、インクジェット方式の印刷装置100と、製袋装置200とを有し、いわゆるスタンド袋300を製造する。スタンド袋300は、所望画像が印刷装置100により印刷された包装用の基材BMを半分に折り、両側をシールするとともに底部を船底状にして自立する袋である。なお、基材BMとしては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)やCPP(無軸延伸ポリプロピレン)等のフィルムあるいはそれらをラミネートしたもの、セロファン等の軟包装材を用いることができる。
【0012】
印刷装置100は、長尺帯状の透明基材を巻き取ったロール150から透明の基材BMを繰り出し、長尺方向に搬送しながらスタンド袋用の印刷画像IM(同図では、表面側に「Fr」、裏面側に「Bk」)および製袋加工用のマーク画像(図示省略)を印刷する。そして、印刷された基材BMは巻き取られてロール160となる。このロール160は印刷装置100から製袋装置200に搬送される。ロール160を受け取った製袋装置200はロール160から基材BMを繰り出して製袋加工を施してスタンド袋300を製造する。
【0013】
この製造システム1では、同図の最下段に示すように、1つのスタンド袋300を製造するために印刷装置100により印刷されるスタンド袋用の印刷画像IMは基材BMの長尺方向LDに連続している。つまり、上記したように基材BMに捨てエリアは存在していない。その一方で、インクジェット方式で良好な印刷を行うためには定期的にフラッシング処理を実行する必要がある。そこで、本実施形態に係る印刷装置100では、スタンド袋300の底部に相当する基材BMの部位はスタンド袋300にパックされた商品を顧客が購入する際に顧客から視認されない領域であることに着目し、当該部位を非視認領域BMaとし、当該非視認領域BMaでフラッシング処理を実行する。以下、印刷装置100の構成および動作について詳述する。
【0014】
図2は本発明に係る印刷装置の第1実施形態を模式的に示す図であり、上記製造システム1に装備可能な印刷装置100の一例である。この印刷装置100は長尺帯状の基材BMをロール・トゥ・ロール方式で搬送しつつ、基材BMの被印刷面にインクを吐出して印刷する装置である。なお、以下の各図において装置各部の配置関係を明確にするために、基材BMの幅方向を「Y方向」とし、Y方向と直交する水平方向を「X方向」としている。さらに、鉛直方向を「Z方向」としている。
【0015】
印刷装置100では、
図2に示すように、前段印刷部110、前段乾燥部120、後段印刷部130および後段乾燥部140が互いに同一の高さで水平方向Xにこの順で配列されている。また、この印刷装置100では、ロール150からロール160へロール・トゥ・ロールで包装用の基材BMが搬送される。印刷装置100は、前段印刷部110で印刷した基材BMを前段乾燥部120で乾燥させ、さらに後段印刷部130で印刷した基材BMを後段乾燥部140で乾燥させる。
【0016】
前段印刷部110は、
図2中の部分拡大図面に示すように、基材BMを右手側から左手側に搬送する搬送部10を有している。搬送部10は、ロール150から繰出された基材BMを前段印刷部110のハウジング内に搬入する搬入ローラ11と、基材BMを前段乾燥部120に向けて搬出する搬出ローラ12とを有する。搬入ローラ11および搬出ローラ12は、基材BMの裏面を下方から巻き掛けて基材BMを駆動する。また、搬入ローラ11と搬出ローラ12との間には、複数のバックアップローラ13を有する。これらバックアップローラ13のそれぞれは基材BMの裏面を下方から巻き掛けることで基材BMを下方より支持する。
【0017】
複数のバックアップローラ13のうち搬送方向において最上流のバックアップローラ13と最下流のバックアップローラ13とは同一高さ位置を有しており、この間で前段印刷が実行される。つまり、両バックアップローラ13、13の間が前段印刷経路として設定されている。そして、前段印刷経路に沿って複数のバックアップローラ13が一定間隔だけ離間して配置されている。これら複数のバックアップローラ13は前段印刷経路の中央部に近づくにしたがって高い位置に配置され、基材BMを支持している。その結果、基材BMの搬送方向は一定ではなく、前段印刷経路の前半では基材BMの搬送方向は水平方向Xに対して斜め上方となり、中央部分で水平方向Xとほぼ平行となり、さらに後半では水平方向Xに対して斜め下方となっている。つまり、搬送部10は、上方に突出した略円弧状の搬送経路で長尺帯状の基材BMを連続的に搬送可能となっている。
【0018】
このように搬送される基材BMの被印刷面に対してインクを吐出して印刷するヘッド部2が複数台、搬送経路に沿って配置されている。より具体的には、互いに隣接する2個のバックアップローラ13の間を進む基材BMの被印刷面の上方位置にヘッド部2が配置されている。各ヘッド部2は、こうして両側が2個のバックアップローラ13によって支持された基材BMの被印刷面にインクジェット方式でインクを吐出する。ここで示す例では、4色のプロセスカラー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のインクを吐出する4個のヘッド部2と、2色の特色インク(オレンジ、バイオレット、グリーン等)を吐出する2個のヘッド部2とを含む6個のヘッド部2が設けられている。各ヘッド部2は下面にインクを吐出するノズル面を有しており、当該ノズル面からインクを略円弧状の搬送経路に沿って搬送される基材BMの被印刷面に吐出する。
【0019】
また、各ヘッド部2は、いわゆるインクジェット方式でインクをノズル面から吐出する。一方、一定時間以上ノズルからのインク吐出を行わない場合、増粘などの影響でノズルからのインクの飛翔性が悪化する。そこで、本実施形態では、制御部170が印刷装置100の各部を制御して印刷指令に基づく印刷処理を実行するとともに適当なタイミングでフラッシング処理を実行する。
【0020】
制御部170は論理演算を実行する周知のCPU(Central Processing Unit)、初期設定等を記憶しているROM(Read
Only Memory)、印刷装置100の動作中の様々なデータを一時的に記憶するRAM(Random
Access Memory)等から構成されている。すなわち、制御部170は上記したハードウェアを備えた専用装置であってもよく、またパーソナルコンピュータやワークステーション等の汎用処理装置に、後述する処理機能を実現するための制御プログラムを組み込んだものであってもよく、汎用のコンピュータを利用することが可能である。
【0021】
制御部170は、機能的には、演算処理部171、記憶部172、ユーザインターフェース173などを備えている。これらのうち記憶部172は制御プログラムのほかに印刷指令に含まれるデータを変換して得られる印刷画像データおよび加工画像データを記憶するとともに、フラッシング画像を予め記憶している。また、ユーザインターフェース173はユーザに対する情報の出力およびユーザからの入力を受け付けるためのインターフェースであり、入力部173aおよび表示部173bを備えている。入力部173aはユーザからの入力を受け付けて演算処理部171に出力する。表示部173bは演算処理部171からの指示に従い、種々の情報を表示する。
【0022】
演算処理部171は、記憶部172に予め記憶されている制御プログラムを読み出し、次に
図3を参照しつつ詳述するように制御プログラムにしたがって装置各部を制御する。これによって、外部装置から与えられる印刷指令を受け取り、当該印刷指令に基づいて非視認領域BMaの位置情報を取得するとともに当該位置情報に基づいてフラッシング処理を実行する。すなわち、演算処理部171は本発明の「位置情報取得部」および「フラッシング制御部」として機能する。
【0023】
図3は
図2に示す印刷装置により実行される印刷方法を示すフローチャートである。演算処理部171は外部装置から印刷指令を受け取る(ステップS1)。ここでいう「印刷指令」は、透明フィルムなどの包装用の基材BMの被印刷面に対して印刷すべき画像に関する情報、つまりスタンド袋用印刷画像に関する情報(以下「印刷画像情報」という)および製袋加工用画像に関する情報(以下「加工画像情報」という)などを含んでいる。加工画像情報とは、製袋装置200が上記印刷指令に対応して印刷した基材BMを製袋加工してスタンド袋300を製造する際に使用する各種情報を意味しており、そのうちの一つが底部に関する情報である。
【0024】
演算処理部171は印刷指令をヘッド部2による印刷に適合したデータに変換する。すなわち、印刷画像情報が印刷画像データに変換されるとともに加工画像情報が加工画像データに変換されて記憶部172に記憶される(ステップS2)。また、演算処理部171は上記加工画像データに基づいて基材BMにおいて底部に対応する非視認領域BMaの位置情報を取得する(ステップS3)。基材BMの被印刷面には、スタンド袋300を製造するための印刷画像(例えば
図1に示すように「Fr」と「Bk」を一対とする画像IM)を複数個、連続して印刷する必要があるため、それに対応した数の非視認領域BMaも基材BMの被印刷面に含まれる。
【0025】
そこで、本実施形態では、演算処理部171は非視認領域BMaの間隔を算出し(ステップS4)、その間隔に対応してフラッシング処理の頻度を設定する(ステップS5)。これらの工程を実行する理由は以下のとおりである。スタンド袋300のサイズが小さい場合には、非視認領域BMaの間隔は狭くなる。非視認領域BMaは後で説明するようにフラッシング処理を受ける領域であるため、非視認領域BMa毎にフラッシング処理を実行すると、インクが過剰に消費されてしまう。そこで、袋サイズが小さくなるにしたがってフラッシング処理の頻度を抑える。例えばヘッド部2の下方位置に非視認領域BMaが複数回到達する毎に、当該ヘッド部2のノズルから非視認領域BMaに向けてインクを吐出してフラッシング処理を行うことでインク消費量を抑制することができる。また、本実施形態では、フラッシング処理の頻度以外に、インクとヘッド部2の組み合わせによって決まるオープンタイム、つまりヘッド部2のノズル面からキャップ(図示省略)が外れている時間を事前に評価した上でフラッシング強度(ノズルからのインクの単位時間当たりの吐出量)を設定している。
【0026】
このように印刷画像IMの印刷処理およびフラッシング処理の準備が完了すると、演算処理部171は搬送部10を制御して基材BMの搬送を開始する(ステップS6)。そして、演算処理部171は各ヘッド部2を制御して印刷処理およびフラッシング処理を並行して行う。より具体的には、基材BMが長尺方向(
図1の符号LD)に搬送されながら各ヘッド部2から吐出されるインクが基材BMの被印刷面に吐出されて印刷画像IMが印刷される。また、ステップS5で設定された頻度で各ヘッド部2の下方に位置した非視認領域BMaに向けてインクが吐出されてフラッシング処理が実行される。フラッシング処理の種類については、ラインフラッシングでもよいし、スターフラッシングでもよい。
【0027】
そして、演算処理部171は、印刷処理およびフラッシング処理が完了したことを確認する(ステップS8で「YES」)と、基材BMの搬送を停止させ(ステップS9)、一連の処理を終了する。
【0028】
以上のように、本実施形態では、非視認領域BMaに向けてノズルからインクを吐出させてフラッシング処理を行うため、基材BMに対して製袋加工を加えて製造されるスタンド袋300のデザイン性を損なうことなく、基材BMに対するスタンド袋用画像IMの印刷を良好に行うことができる。
【0029】
また、フラッシング処理を行う頻度を非視認領域BMaの間隔(あるいは袋サイズ)に応じて調整しているため、フラッシング処理により消費されるインク量を抑制してラインニングコストを低下させることができる。
【0030】
上記したように、本実施形態では、ステップS7が本発明の「印刷工程」および「フラッシング工程」の一例に相当している。また、基材BMにおける底部に対応する位置が本発明の「非視認領域の位置情報」の一例に相当し、これを取得する工程(ステップS3)が本発明の「位置情報取得工程」の一例に相当している。また、ステップS1が「指令受取工程」の一例に相当している。また、印刷画像データおよび加工画像データがそれぞれ本発明の「印刷画像情報」および「加工画像情報」の一例に相当している。
【0031】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、パッケージした包装商品を陳列した際に隠れて顧客が視認できない領域を本発明の「製袋加工後に外部から視認されない非視認領域」としているが、次に説明するように製袋加工により製造された包装袋において本来的に露出していないために視認できない領域も本発明の「製袋加工後に外部から視認されない非視認領域」に含まれる。
【0032】
図4Aは本発明に係る印刷方法の適用に好適な包装袋の一例を示す斜視図である。また、
図4Bは
図4Bに示す包装袋のA-A線断面図である。これらの図面に示す包装袋は、クッキーなどのお菓子を包む合掌袋310である。この合掌袋310は1枚の基材BMを背中と底で貼り合わせ、端部を溶着した端部溶着部311、312と、背貼り部313とが設けられている。特に、背貼り部313のうち袋側(
図4Bの右下側)に折り返された部位314および当該部位314で覆われる部位は露出されず、外部から非視認となる。したがって、基材BMの被印刷面のうち当該折り返し部位314に対応する領域を非視認領域とし、ここにフラッシングしてもよい。
【0033】
図5は本発明に係る印刷方法の適用に好適な包装袋の他の例を示す斜視図であり、冷凍食品などを包装する加熱処理包装袋320が図示されている。加熱処理包装袋320は、上記と同じ合掌袋であっても、背貼り部323よりも端部溶着部321、322の封緘強度を高めるために
同図の部分拡大図に示すように端部溶着部321、322を折り返した状態で溶着されている(例えば特開2020-1819号公報参照)。この場合、折り返された部位324は非視認となる。したがって、基材BMの被印刷面のうち当該折り返し部位324に対応する領域を非視認領域とし、ここにフラッシングしてもよい。
【0034】
また、上記したスタンド袋300、合掌袋310および加熱処理包装袋320以外の袋、例えばスタンドチャック袋や底ガゼット袋などを製造するための基材に印刷する印刷技術にも本発明を適用することができる。
【0035】
また、上記実施形態では、非視認領域BMaの位置情報を加工画像データ(加工画像情報)に基づいて取得しているが、上記位置情報の取得方法はこれに限定されない。例えば、基材BMに予め製袋加工用画像、例えばトンボマークなどが記録されており、その製袋加工用画像を基準として印刷処理を行う場合には、製袋加工用画像を検知して非視認領域BMaの位置情報を取得してもよい。
【0036】
また、製袋装置200により基材BMに加えられる製袋加工に関する製袋加工情報、例えば袋の種類および製袋寸法などを取得し、当該製袋加工情報から位置情報を導出してもよい。また、ユーザインターフェースを介してユーザから位置情報を受け取るように構成してもよい。
【0037】
さらに、上記実施形態では、印刷装置100で印刷した基材BMを巻き取ったロール160を製袋装置200に供給して製袋加工を実行しているが、印刷装置100で印刷された基材BMをそのまま製袋装置200に供給してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明は、ノズルからインクを包装用基材の被印刷面に吐出して印刷を行う印刷技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
2…ヘッド部
10…搬送部
171…演算処理部(位置情報取得部、フラッシング制御部)
173…ユーザインターフェース
BM…(包装用)基材
BMa…非視認領域