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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】硬貨処理装置及び自動取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 1/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G07D1/00 Z GBL
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020088680
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021184133
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】須藤 信行
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-152945(JP,A)
【文献】特開2011-138259(JP,A)
【文献】再公表特許第2009/130774(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16,
9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を集積すると共に該硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す集積分離部と、
前記集積分離部から繰り出された前記硬貨を搬送する搬送部と
を有し、
前記集積分離部は、
法線を水平方向に対して上方へ傾斜させた円盤面を有し、該円盤面の中心軸を回転中心として回転可能に支持され、所定の回転方向に回転する傾斜円盤と、
前記傾斜円盤における前記円盤面の法線方向側に設けられ、該円盤面との間に前記硬貨を集積する硬貨集積空間を形成する集積カバーと、
前記円盤面のうち外周の一部分が前記中心軸側へ切り欠かれてなる孔周囲切欠部と、
前記孔周囲切欠部の内部に設けられ、前記傾斜円盤を貫通し、前記硬貨集積空間内の前記硬貨の残留の有無を検出するセンサの検知光を通過させる外側光通過孔と
前記円盤面のうち前記外周から前記中心軸側へ離れた位置に設けられ、該円盤面から前記法線方向に突出し、前記傾斜円盤と一体に回転して前記硬貨に当接し搬送する分離突起と
を具える硬貨処理装置。
【請求項2】
前記孔周囲切欠部は、前記傾斜円盤の内周側の端部よりも前記外周側の端部の方が、前記回転方向に沿った開口幅が広い形状である
請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記孔周囲切欠部は、前記傾斜円盤の内周側の端部から前記外周側の端部に向けて前記開口幅が広くなる形状である
請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記孔周囲切欠部は、前記円盤面の前記外周を一辺とする略三角形状である
請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記孔周囲切欠部は、前記中心軸及び前記外側光通過孔の中央を通る直線を軸として前記外周側の開口部における前記回転方向側よりも、逆回転方向側の方が、前記開口幅が広くなっている
請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記外側光通過孔は、円形状である
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記傾斜円盤は、前記円盤面が形成された表側円盤部と、前記表側円盤部に対し前記円盤面とは逆側に設けられた裏側円盤部とを有し、
前記孔周囲切欠部は、前記表側円盤部に形成され、
前記外側光通過孔は、前記裏側円盤部に形成される
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記円盤面のうち前記外周から前記外側光通過孔よりも前記中心軸側へ離れた位置に設けられ、前記傾斜円盤を貫通し、前記検知光を通過させる内側光通過孔
をさらに具える請求項1乃至請求項7の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
前記内側光通過孔は、円形状の前記中心軸側が削れたような形状である
請求項8に記載の硬貨処理装置。
【請求項10】
前記内側光通過孔は、前記中心軸側が直線であるD字形状である
請求項9に記載の硬貨処理装置。
【請求項11】
前記円盤面のうち前記外周の近傍に設けられ、該円盤面から前記法線方向に突出する攪拌突起と、
前記円盤面のうち前記外周から前記外側光通過孔よりも前記中心軸側へ離れた位置に設けられ、該円盤面から前記法線方向に突出する移動規制突起と、
前記円盤面の前記外周の外側に沿う周壁部と
をさらに有し、
前記回転方向側の前記分離突起と、逆回転方向側の前記分離突起と、前記攪拌突起と、前記移動規制突起と、前記周壁部とにより囲まれた領域に、前記硬貨が移動可能な範囲である硬貨移動可能領域が形成され、
前記外側光通過孔及び前記内側光通過孔は、前記硬貨処理装置において取り扱われる直径が最も小さい最小径硬貨が前記硬貨移動可能領域内に位置している場合、前記外側光通過孔又は前記内側光通過孔の何れか一方の少なくとも一部分が塞がれる
請求項8乃至請求項10の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項12】
前記外側光通過孔及び前記内側光通過孔は、同数設けられる
請求項8乃至請求項10の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項13】
前記外側光通過孔及び前記内側光通過孔は、前記分離突起と同数設けられる
請求項12に記載の硬貨処理装置。
【請求項14】
使用者の操作を受け付ける操作部と、
請求項1乃至請求項13の何れかに記載の硬貨処理装置と
を具えることを特徴とする自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置及び自動取引装置に関し、例えば顧客に紙幣や硬貨を投入させて所望の取引を行う現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関やスーパー等で使用される現金自動預払機等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客又は店員に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客又は店員へ現金を出金するものが広く普及している。
【0003】
この現金自動預払機等としては、例えば硬貨に関する処理を行う硬貨処理装置を内部に有するものがある。硬貨処理装置は、例えば顧客又は店員との間で硬貨の授受を行う入出金部、硬貨を集積すると共に集積した硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す集積分離部、硬貨を搬送する搬送部、硬貨の金種や真偽等を識別する識別部(認識部とも呼ぶ)、及び金種毎に硬貨を収納する収納部等を有している。
【0004】
このうち集積分離部としては、例えば中心軸を水平方向から傾斜させた傾斜円盤(回転円盤とも呼ばれる)を回転可能に構成し、円盤面に突起を設けると共に、硬貨を集積する集積空間を形成する集積カバー(ホッパとも呼ばれる)の下端を、傾斜円盤の外周における下側部分に沿うように形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この集積分離部では、傾斜円盤を回転させることにより、突起に硬貨を1枚ずつ引っかけて繰り出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-149041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような集積分離部においては、集積空間の底部に残留している硬貨の有無の検出精度を向上させることが望まれている。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、集積空間内に残留している硬貨の有無の検出精度を向上させ得る硬貨処理装置及び自動取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨処理装置においては、硬貨を集積すると共に該硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す集積分離部と、集積分離部から繰り出された硬貨を搬送する搬送部とを設け、集積分離部は、法線を水平方向に対して上方へ傾斜させた円盤面を有し、該円盤面の中心軸を回転中心として回転可能に支持され、所定の回転方向に回転する傾斜円盤と、傾斜円盤における円盤面の法線方向側に設けられ、該円盤面との間に硬貨を集積する硬貨集積空間を形成する集積カバーと、円盤面のうち外周の一部分が中心軸側へ切り欠かれてなる孔周囲切欠部と、孔周囲切欠部の内部に設けられ、傾斜円盤を貫通し、硬貨集積空間内の硬貨の残留の有無を検出するセンサの検知光を通過させる外側光通過孔と、円盤面のうち外周から中心軸側へ離れた位置に設けられ、該円盤面から法線方向に突出し、傾斜円盤と一体に回転して硬貨に当接し搬送する分離突起とを有するようにした。
【0009】
また本発明の自動取引装置においては、使用者の操作を受け付ける操作部と、上述した硬貨処理装置とを設けるようにした。
【0010】
本発明は、孔周囲切欠部により異物の引っ掛かりを防ぎつつ、孔周囲切欠部よりも小さく形成された外側光通過孔を硬貨により塞がれやすくし硬貨の検出性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、集積空間内に残留している硬貨の有無の検出精度を向上させ得る硬貨処理装置及び自動取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】現金自動預払機の構成を示す斜視図である。
図2】硬貨処理装置の構成を示す右側面図である。
図3】上分離部の構成(1)を示し、(A)は正面図、(B)は右側面図である。
図4】上分離部の構成(2)を示し、図3(A)におけるA1-A2矢視断面図である。
図5】上分離部の構成(3)を示し、図4におけるB1-B2矢視断面図である。
図6】残留攪拌突起の構成及び硬貨の繰出を示す右側面図である。
図7】上分離部における硬貨の繰出を示し、図6におけるC1-C2矢視断面図である。
図8】集積分離部から分離搬送部への硬貨の引き渡しを示す右側面図である。
図9】上分離部の構成(4)を示す斜視図であり、(A)は本実施の形態、(B)は比較例である。
図10】外側光通過孔及び内側光通過孔の配置を示す右側面図である。
図11】外側通過切欠部の構成を示す右側面図である。
図12】内側光通過孔の構成を示す右側面図である。
図13】内側光通過孔の構成を示す右側面図であり、(A)は本実施の形態、(B)は比較例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0014】
[1.実施の形態]
[1-1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、自動取引装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客、行員、保守員等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
【0015】
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、通帳入出口4、カード入出口5、硬貨入出金口6、紙幣入出金口7及び操作表示部8等が設けられており、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行う。
【0016】
通帳入出口4は、通帳が挿入され、また排出する部分である。通帳入出口4の奥側には、通帳の裏表紙等に設けられた磁気記録部から磁気情報を読み取り、また該通帳に取引の内容を記録する通帳処理部(図示せず)が設けられている。カード入出口5は、キャッシュカード等の各種カードが挿入又は排出される部分である。カード入出口5の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
【0017】
硬貨入出金口6は、使用者によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。紙幣入出金口7は、使用者によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される部分である。この硬貨入出金口6及び紙幣入出金口7は、それぞれシャッタを駆動することにより開放又は閉塞する。操作部としての操作表示部8は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。
【0018】
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0019】
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10、及び紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0020】
硬貨処理装置10は、全体として直方体に類似した形状に構成されており、図示しないスライドレールを介して筐体2に取り付けられている。また筐体2の前面側又は後面側には、開閉可能な扉(図示せず)が設けられている。このため現金自動預払機1は、保守作業等が行われる場合、筐体2の前面側又は後面側の扉を開放した上で、硬貨処理装置10を前方又は後方へスライドさせることにより、該硬貨処理装置10を該筐体2の外部に位置させ、また該筐体2の内部に収納させる。
【0021】
[1-2.硬貨処理装置の構成]
図2に示すように硬貨処理装置10は、硬貨処理装置筐体11の内部に、硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する非磁性体の材料でなり、薄い板状に形成されている。因みに硬貨処理装置10では、直径や厚さが異なる複数種類の硬貨を取り扱うことが想定されている。以下では、硬貨処理装置10において取り扱われる中で最も直径が大きい硬貨を最大径硬貨と呼び、また最も直径が小さい硬貨を最小径硬貨と呼ぶ。日本国内に設置される硬貨処理装置10においては、最大径硬貨は500円硬貨であり、最小径硬貨は1円硬貨となっている。ちなみに1円硬貨の厚さは約1.5[mm]となっている。
【0022】
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、6個のスタッカ部21、出金搬送部22及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、硬貨制御部12、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
【0023】
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0024】
入出金部13は、使用者との間で硬貨を受け渡すことにより、該使用者に硬貨を入金させ、又は該使用者に硬貨を出金する。該入出金部13は、上側に開口部を有し硬貨を収容する収容器13A、該開口部を開閉するシャッタ13B等、及び収容器13A内における硬貨の有無等を検知するセンサ(図示せず)を有している。
【0025】
入出金部13は、シャッタ13Bを開放した状態で顧客により硬貨が収容器13Aに投入されると、該シャッタ13Bを閉塞し、硬貨を収容器13A内からシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、上分離部15内に到達させる。また入出金部13は、シャッタ13Bを閉塞した状態で、後述するピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を収容器13A内に収容した後、シャッタ13Bを開放して顧客に受け取らせる。
【0026】
上分離部15は、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。この上分離部15は、集積分離部15Aに硬貨を集積すると共に、この硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部15Bにより上方向へ搬送し、さらに搬送路に沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。
【0027】
認識搬送部16は、シュート部14の右側に位置しており、硬貨を搬送しながら撮像し、得られた画像信号を基に該硬貨の金種や真偽、或いは損傷の程度等を基に該硬貨が取扱可能であるか否かを判定する。そのうえで認識搬送部16は、得られた判定結果を該硬貨の認識結果として硬貨制御部12に通知すると共に、該硬貨を受渡部17に引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0028】
ピンベルト搬送部18は、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L、後ピンベルト搬送部18R及び上ピンベルト搬送部18Uにより取り囲み、硬貨を搬送する経路である搬送経路を形成している。ピンベルト搬送部18は、硬貨の盤面と当接し搬送経路に沿って進行するよう案内する搬送ガイドと、概ね該搬送経路に沿って走行するピンベルトとにより構成されている。このピンベルトには、硬貨の末尾側と当接し、搬送方向へ押動するためのピンが設けられている。ピンベルト搬送部18は、ピンベルトを走行させることにより、受渡部17から受け取った硬貨を搬送経路に沿って搬送し、入出金部13の収容器13A内へ放出する。
【0029】
またピンベルト搬送部18には、スタッカ部21の前側下部及び下側に配置された部分における複数箇所に、硬貨の搬送経路を分岐させる分岐部19がそれぞれ設けられている。各分岐部19の左側には、硬貨を案内する案内部30がそれぞれ設けられている。
【0030】
各分岐部19は、それぞれ回動可能な案内板及びアクチュエータ等(何れも図示せず)を有しており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各案内部30へ分岐させるかを切り替える。各案内部30は、それぞれ補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25又は第2補充リジェクト庫26、一時保留部23、リジェクト庫27及び取忘取込庫28等へ硬貨を進行させる。
【0031】
さらにピンベルト搬送部18には、6個のスタッカ部21のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部20が設けられている。各スタッカ分岐部20の左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部31が設けられている。各スタッカ分岐部20は、各分岐部19と同様に構成されており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各スタッカ部21へ分岐させるかを切り替える。
【0032】
スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられており、上側に設けられた案内部31と、該案内部31の下側において硬貨を上下方向に沿って積み重ねるように集積する集積部32と、該集積部32の下側から硬貨を繰り出す繰出部33とを有している。このスタッカ部21は、ピンベルト搬送部18により搬送された硬貨をスタッカ分岐部20から受け取ると、該硬貨を案内部31により集積部32へ案内して集積させる。またスタッカ部21は、硬貨制御部12の制御に基づき、集積部32に集積している硬貨を繰出部33により1枚ずつ繰り出し、下方の出金搬送部22又は一時保留部23へ落下させる。
【0033】
出金搬送部22は、ピンベルト搬送部18の右側に位置しており、上側及び前側が開放された中空の直方体のように構成され、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。また出金搬送部22は、底部にベルトやプーリ等でなるベルト搬送機構が組み込まれており、スタッカ部21から繰り出された硬貨をベルト上に載置若しくは集積する。この出金搬送部22は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の一時保留部23へ落下させる。
【0034】
一時保留部23は、出金搬送部22の後端を下げると共に前端を持ち上げ、さらに左右の側板を三角形状としたような構成となっており、その内部に硬貨を収容する空間を形成すると共に、底部にベルト搬送機構が組み込まれている。このため一時保留部23は、スタッカ部21から繰り出された硬貨や出金搬送部22から搬送されてきた硬貨を、内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。また一時保留部23は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前斜め上方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の上分離部15へ繰り出し、その内部へ落下させる。
【0035】
補充回収庫24は、内部に硬貨を集積する集積部や、該集積部に集積されている硬貨を搬送する搬送機構等を有している。この補充回収庫24は、案内部30により案内されてきた硬貨を集積し、また内部に集積している硬貨を前方へ繰り出して下分離部29に引き渡す。第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨を集積する。リジェクト庫27及び取忘取込庫28は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨をそれぞれ集積する。
【0036】
下分離部29は、補充回収庫24の後側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっているものの、硬貨処理装置筐体11に対する取付方向が、該上分離部15とは相違している。この下分離部29は、集積分離部15A及び分離搬送部15Bとそれぞれ対応する集積分離部29A及び分離搬送部29Bにより構成されている。下分離部29は、補充回収庫24から硬貨を受け取って内部に集積し、また集積されている硬貨を1枚ずつに分離して1枚ずつ上方へ搬送し、一時保留部23内へ放出する。
【0037】
[1-3.各種処理における硬貨の搬送]
次に、硬貨処理装置10において硬貨の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等における硬貨の搬送や集積等について説明する。ここでは、現金自動預払機1と使用者との間で入金取引及び出金取引を行う場合における硬貨処理装置10での各処理についてそれぞれ説明する。
【0038】
現金自動預払機1(図1)において使用者との間で入金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理により、使用者に入金された硬貨の金種等を認識しながら枚数を計数し、これに続く後段の入金収納処理により、各硬貨を適切な収納箇所へ搬送して収納する。具体的に硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理において、使用者に入出金部13に硬貨を投入させると、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次介して一時保留部23に収容する。
【0039】
このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に入金額を集計して操作表示部8(図1)に表示し、使用者に入金取引を継続するか、又は中止するかを選択させる。硬貨処理装置10は、使用者により継続が選択されると、後段の入金収納処理を行う一方、中止が選択されると、入金取引を中止し、後述する出金処理の場合と同様に硬貨を入出金部13へ搬送して返却する。
【0040】
硬貨処理装置10は、後段の入金収納処理において、硬貨を一時保留部23から上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18及びスタッカ分岐部20を順次介してスタッカ部21へ搬送して集積させる。このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に、該硬貨の金種に応じたスタッカ部21へ搬送する。
【0041】
また、現金自動預払機1(図1)において使用者との間で出金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、出金処理により、使用者に指示された金額の硬貨を入出金部13へ搬送して出金する。具体的に硬貨処理装置10は、操作表示部8(図1)を介して使用者から出金取引を開始する旨や出金額の操作入力を受け付けると、出金処理を開始し、出金額に応じた硬貨の金種及び枚数を各スタッカ部21から出金させ、出金搬送部22を介して一時保留部23内に集積させる。続いて硬貨処理装置10は、一時保留部23、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次経由して硬貨を入出金部13へ搬送して収容させ、使用者に受け取らせる。
【0042】
因みに硬貨処理装置10は、入金処理及び出金処理の他、補充回収庫24からスタッカ部21へ硬貨を補充する補充処理や、該スタッカ部21から補充回収庫24へ硬貨を回収する回収処理等も行い得るようになっている。
【0043】
[1-4.上分離部の構成]
図3(A)及び図3(B)に示すように、上分離部15は、左側に位置する分離部筐体40を中心に構成されており、該分離部筐体40の右側における中央ないし下側の部分を集積カバー41により覆われている。因みに上分離部15は、上下方向に関し、集積カバー41に相当する部分が集積分離部15Aとなっており、その上側が分離搬送部15Bとなっている。
【0044】
分離部筐体40には、左側にモータ42が取り付けられ、内部に複数のギア(図示せず)が組み込まれ、右側に傾斜円盤43が取り付けられている。モータ42は、右側に出力軸42Sが設けられており、この出力軸42Sを回転させることにより、内部のギアを介して傾斜円盤43に駆動力を伝達する。
【0045】
傾斜円盤43は、図4に示すように、硬貨と比較して十分に大きい直径でなる円盤状に形成されている。この傾斜円盤43は、互いに薄いほぼ同様の円盤状に形成された図9(A)に示す裏側円盤部76と表側円盤部78とにより構成されている。表側円盤部78は、裏側円盤部76の右側に位置し、裏側円盤部76とねじ止めされることにより、裏側円盤部76に固定されている。
【0046】
表側円盤部78(図4)は、右側の盤面である円盤面43Sが概ね平坦に形成されている。因みに傾斜円盤43は、例えば硬度が比較的高い金属板を切削加工することにより製造されている。この傾斜円盤43は、中心軸43Cが水平方向に対して上方へ、具体的には右斜め上方を向くようにして、傾斜している。このため円盤面43Sは、上側部分を鉛直方向に対して左方向へやや倒したように傾いている。さらに傾斜円盤43は、中心軸43Cを回転中心として回転可能に支持されており、モータ42からギアを介して駆動力が伝達されると、矢印R1方向(図4の時計回り、以下これを回転方向とも呼ぶ)に回転する。
【0047】
傾斜円盤43の円盤面43Sには、法線方向である右斜め上方向に突出する複数の分離突起44が設けられている。分離突起44は、傾斜円盤43の外周を7等分するそれぞれの箇所において、円盤面43Sにおける外周からやや内側に離れた箇所に取り付けられている。この分離突起44は、全体として直方体が傾斜円盤43の中心(すなわち中心軸43C)側へ延長されたような形状となっている。すなわち分離突起44は、円盤面43Sにおける中心軸43Cと外周43Tとを結ぶ放射方向に関して比較的長く、周方向に関して比較的短く、左右方向に十分に短く(すなわち薄く)なっている。また分離突起44における左右方向の長さ(すなわち厚さ)は、1枚の硬貨の厚さと同等以下である約1.5[mm]となっている。
【0048】
さらに傾斜円盤43は、裏側円盤部76及び表側円盤部78の外周のうち7個の各分離突起44の近傍となる7箇所に、外周43Tから中心方向(中心軸43C)へ向かってえぐられるように切り欠かれたピン用切欠部45が形成されている。ピン用切欠部45は、右方向から見て、傾斜円盤43の外周43Tを一辺とする三角形に類似した形状となっており、該傾斜円盤43の中心軸43Cに近い頂点の近傍において、分離突起44とほぼ隣接している。
【0049】
これに加えて傾斜円盤43には、円盤面43Sにおける各ピン用切欠部45の周縁、すなわち外周43Tの近傍部分となる7箇所に、該円盤面43Sから法線方向に向けて突出する残留攪拌突起46が取り付けられている。残留攪拌突起46には、標準残留攪拌突起46Sと、該標準残留攪拌突起46Sよりも大型の大型残留攪拌突起46Lとがある。以下では、標準残留攪拌突起46Sと大型残留攪拌突起46Lとをまとめて攪拌突起としての残留攪拌突起46とも呼ぶ。
【0050】
この残留攪拌突起46は、ピン用切欠部45の矢印R2方向(図4の反時計回り、以下これを逆回転方向とも呼ぶ)側、すなわち傾斜円盤43が矢印R1方向に回転する際にピン用切欠部45の下流側となる領域に設置されている。
【0051】
標準残留攪拌突起46Sは、全体として円錐形状でその頂点近傍が曲面状に丸められており、その中心軸を傾斜円盤43の表面から右斜め上方に向け、円盤面43Sの法線方向に沿わせている。この標準残留攪拌突起46Sは、高さ(すなわち円盤面43Sから頂点までの距離)が1.5[mm]となっている。上分離部15では、図6(A)に示すように、最大径硬貨CNaを標準残留攪拌突起46S及び分離突起44の間に位置させて該分離突起44に引っかけた場合、該硬貨CN及び標準残留攪拌突起46Sの間にある程度の隙間が形成される。
【0052】
一方、大型残留攪拌突起46Lは、標準残留攪拌突起46Sと同様、全体として、中心軸を円盤面43Sの法線方向に沿わせた円錐形状に形成されており、その頂点近傍が曲面状に丸められている。その一方で大型残留攪拌突起46Lは、直径及び高さが何れも標準残留攪拌突起46Sよりも大きくなっている。具体的には、大型残留攪拌突起46Lの高さが、標準残留攪拌突起46Sの高さよりも大きい、すなわち円盤面43Sからの分離突起44やピン66の突出距離よりも大きい、高さ3[mm]となっている。上分離部15では、図6(B)に示すように、最大径硬貨CNaを大型残留攪拌突起46L及び分離突起44の間に位置させて該分離突起44に引っ掛けた場合、該最大径硬貨CNa及び大型残留攪拌突起46Lの間に隙間が殆ど形成されず、互いに隣接したような状態となる。
【0053】
一方、分離部筐体40には、硬貨ガイド50(図4)が取り付けられている。硬貨ガイド50は、傾斜円盤43における下側部分の外周側に隣接する円弧状の収納ガイド51と、該収納ガイド51の前端から上方向に向けて直線状に伸びる前搬送ガイド52とにより構成されている。
【0054】
収納ガイド51は、その内周面である周壁部としての収納ガイド内周面51Sと傾斜円盤43の外周面との間に僅かな隙間を形成している。前搬送ガイド52は、後側面が平面状に形成されており、その下端において、収納ガイド内周面51Sと連続している。説明の都合上、以下では前搬送ガイド52の後側面を搬送基準面FSとも呼ぶ。この前搬送ガイド52の上端は、傾斜円盤43の上端よりも高い位置に到達している。また前搬送ガイド52は、下側の約半分が集積分離部15Aに含まれており、上側の約半分が分離搬送部15Bに含まれている。
【0055】
図5に示すように、前搬送ガイド52の後側における左寄りには、左搬送ガイド53及び54が設けられている。左搬送ガイド53の右側面は、平面状に形成されており、傾斜円盤43の円盤面43Sとほぼ同一の平面内に位置している。また左搬送ガイド53は、前側部分を前搬送ガイド52に当接させており、下後側部分を傾斜円盤43の外周面に沿わせた緩やかな円弧状に傾斜させている。さらに左搬送ガイド53の後側部分は、法線を概ね後方向に向けた平面状に形成されており、右方向から見て概ね上下方向に沿った直線状となっている。
【0056】
左搬送ガイド54は、左搬送ガイド53の後側において、該左搬送ガイド53からやや離れた位置に設けられている。左搬送ガイド54の右側面は、左搬送ガイド53の右側面と同様、平面状に形成されており、傾斜円盤43の円盤面43Sとほぼ同一の平面内に位置している。以下では、左搬送ガイド53及び54の右側面を搬送面FCとも呼ぶ。左搬送ガイド54の前側部分は、法線を概ね前方向に向けた平面状に形成されており、右方向から見て概ね上下方向に沿った直線状となっている。これにより分離部筐体40では、左搬送ガイド53及び54の間に、上下方向に沿った溝形状が形成されている。また左搬送ガイド54の下後側部分は、傾斜円盤43の外周面に沿わせた緩やかな円弧状に傾斜されている。因みに分離部筐体40では、前搬送ガイド52、左搬送ガイド53及び左搬送ガイド54がまとめて1個の部品として一体に構成されている。
【0057】
さらに分離部筐体40には、左搬送ガイド54の後側に、後搬送ガイド55が設けられている。この後搬送ガイド55の前側面は、法線を概ね前方向に向けた平面状に形成されており、右方向から見て概ね上下方向に沿った直線状となっている。説明の都合上、以下では、前搬送ガイド52、左搬送ガイド53及び54及び後搬送ガイド55により囲まれた空間を、搬送空間SCとも呼ぶ。この搬送空間SCは、搬送面FCよりも右側であり、且つ搬送基準面FSよりも後側の空間となっている。
【0058】
一方、分離部筐体40の内部における傾斜円盤43の左側には、ベルトプーリ61が配置されている。ベルトプーリ61は、全体として扁平な円盤状に形成されており、その直径が傾斜円盤43の直径よりも僅かに小さくなっている。またベルトプーリ61は、中心軸を傾斜円盤43の中心軸と一致させ、円盤面を傾斜円盤43とほぼ平行に揃えるようにして、該傾斜円盤43に取り付けられている。このためベルトプーリ61は、傾斜円盤43と一体に回転することができる。
【0059】
さらに分離部筐体40は、ベルトプーリ61の上側に、該ベルトプーリ61よりも十分に小さい円盤状の前プーリ62、上プーリ63及び後プーリ64を有している。前プーリ62は、ベルトプーリ61の前上側に位置している。上プーリ63は、前プーリ62の後上側に位置している。後プーリ64は、上プーリ63の後下側であり、ベルトプーリ61の上側に位置している。前プーリ62、上プーリ63及び後プーリ64は、それぞれ分離部筐体40により回転可能に支持されており、またそれぞれの右側の表面が、ベルトプーリ61における右側の表面と同一の平面上若しくはその近傍に位置している。
【0060】
これに加えて分離部筐体40には、ベルト65が設けられている。ベルト65は、樹脂やゴム等の可撓性を有する材料で構成された無端ベルトであり、ベルトプーリ61及び上プーリ63の周囲を周回すると共に、前プーリ62及び後プーリ64の周側面にも当接するように張架されている。
【0061】
具体的にベルト65は、ベルトプーリ61の外周面に対して上端近傍から矢印R1方向に回転するように(すなわち図4の時計回りに)後側、下側、前側及び前上側までの部分に渡って当接する。さらにベルト65は、ベルトプーリ61の前上側部分に当接したまま前プーリ62の後下部分ないし後端近傍に当接し、該ベルトプーリ61の周側面から離れて該前プーリ62の後端近傍から上方へ張架され、やがて上プーリ63の前端近傍に当接する。続いてベルト65は、上プーリ63の外周面に対して前端近傍から上側及び後側に渡って当接し、該上プーリ63の後端近傍から僅かに下方向へ張架されて後プーリ64の前端近傍に当接する。さらにベルト65は、後プーリ64の外周面に対して前端近傍から下端近傍に渡って当接し、該後プーリ64の外周面を離れて間もなくベルトプーリ61の上端近傍に再び当接する。
【0062】
またベルト65には、所定間隔毎にピン66が取り付けられている。ピン66は、ベルト65に取り付けられた取付部と、該取付部から右方向に突出した突出部とにより構成されている。このうち突出部は、中心軸を傾斜円盤43における円盤面43Sとほぼ直交する方向に向けた円柱状に形成されており、その右端(すなわち先端)が該円盤面43Sよりも右側に突出し、分離突起44の上面とほぼ同等の位置に到達している。
【0063】
分離部筐体40では、ベルト65におけるピン66の取付間隔や取付位置が、傾斜円盤43におけるピン用切欠部45の位置に合わせて設定されている。このため分離部筐体40では、ベルト65がベルトプーリ61の外周面に当接している場合、ピン66の突出部が傾斜円盤43のピン用切欠部45に入り込み、該ピン用切欠部45内で中心軸43Cに近い箇所、すなわち分離突起44に近接した箇所に位置する。
【0064】
ピン66は、傾斜円盤43が中心軸43Cを中心に回転すると、ピン用切欠部45に入り込んだ状態を維持したまま、該傾斜円盤43及びベルトプーリ61と一体に回転する。すなわちピン66は、傾斜円盤43の外周部分と同期して、回転軌道に沿って円弧状に走行する。また分離部筐体40では、ベルト65が前プーリ62の後端近傍から上プーリ63の前端近傍にかけて張架された部分において、左搬送ガイド53及び54の間にピン66の突出部を通過させる。このときピン66は、右端近傍を搬送面FCよりも右側に突出させている。
【0065】
一方、集積カバー41(図3)は、下側部分が傾斜円盤43の外周に極めて近接した円弧状でなり、上側へ進むに連れて該傾斜円盤43から離れるような曲面を形成しており、該傾斜円盤43との間に硬貨集積空間48を形成している。
【0066】
[1-5.上分離部による硬貨の繰出]
上分離部15は、シュート部14(図2)から硬貨CNが落下してくると、この硬貨CNを硬貨集積空間48内に、すなわち傾斜円盤43及び集積カバー41により挟まれる空間に収納する。その後、上分離部15は、硬貨制御部12の制御に基づいて硬貨CNを繰り出す繰出処理と、この硬貨CNを搬送して後段の認識搬送部16(図2)に引き渡す搬送処理とを行う。
【0067】
具体的に上分離部15は、まずモータ42(図3)からの駆動力によって傾斜円盤43を矢印R1方向(すなわち図4の時計回り)に回転させる。これにより上分離部15は、硬貨集積空間48内に集積された硬貨CNを分離突起44により適宜攪拌しながら、図6及び図7(A)に示すように、該分離突起44に硬貨CNを1枚ずつ引っ掛ける。このとき硬貨CNは、左側の盤面を傾斜円盤43の円盤面43Sに当接させると共に、周側面のうち後側の一部を分離突起44に当接させ、下側の一部を収納ガイド内周面51Sに当接させる。
【0068】
さらに上分離部15は、傾斜円盤43を引き続き回転させることにより、硬貨CNにおける左側の盤面を該傾斜円盤43に当接させ、且つ該硬貨CNの周側面を分離突起44及び収納ガイド51に当接させた状態を維持しながら、収納ガイド内周面51Sに沿って摺動させ、前上方へ持ち上げていく。
【0069】
やがて上分離部15は、図8(A)に示すように、硬貨CNが傾斜円盤43の前端付近に到達すると、該硬貨CNの前端部分が前搬送ガイド52の後側面、すなわち搬送基準面FSに当接し、分離突起44が該硬貨CNの後下側から前上方向へ力を加えるように、換言すれば駆動力を供給するようになる。これにより上分離部15は、この硬貨CNの前端を搬送基準面FSに摺動させる。
【0070】
上分離部15は、引き続き傾斜円盤43を回転させ、ベルト65が前プーリ62の近傍に到達すると、図8(B)に示すように、分離突起44から引き継いでピン66が硬貨CNの後下側に、すなわち該硬貨CNの重心よりも後側に当接するようになる。これに加えて上分離部15では、この硬貨CNを上流側の集積分離部15Aから下流側の分離搬送部15Bに引き渡し、該硬貨CNの左側面を傾斜円盤43の円盤面43Sに当接させた状態から、左搬送ガイド53及び54の右側面、すなわち搬送面FCに当接させた状態となる。
【0071】
続いて上分離部15は、傾斜円盤43の回転に伴ってベルト65を走行させることにより、分離突起44に隣接していたピン66を該分離突起44から徐々に引き離し、左搬送ガイド53及び54の隙間に沿って上昇させる。これにより上分離部15は、図8(C)に示すように、硬貨CNの前端近傍を搬送基準面FSに摺動させ、且つ左側面を搬送面FCに摺動させながら、搬送空間SC(図5)内でこの硬貨CNを上方向へ搬送することができる。その後、上分離部15は、ベルト65をさらに走行させることにより、硬貨CNを上搬送ガイド57等に沿って後方向へ搬送した後、認識搬送部16(図2)に引き渡す。
【0072】
ここで再び図6を参照すると、傾斜円盤43では、分離突起44が該傾斜円盤43の外周43Tからやや内側に離れた箇所に位置しており、該分離突起44の外周側にピン用切欠部45が形成されている。傾斜円盤43は、このように構成されているため、硬貨集積空間48内においてピン用切欠部45内にピン66を位置させておくことにより、集積分離部15A側から分離搬送部15B側に硬貨CNを引き渡す際に(図8)、該ピン66を該硬貨CNの後下側に当接させたまま繰り出す、といった動作を行い得る。
【0073】
実際上、上分離部15では、図7(A)に示したように、硬貨集積空間48内の底部付近において、硬貨CNが鉛直方向に対して上側部分をやや左側に倒し、左側の盤面を傾斜円盤43の円盤面43Sとほぼ平行に向けた姿勢(以下これを分離姿勢と呼ぶ)となる場合が多い。この場合、上分離部15は、この分離姿勢の硬貨CNに対し、分離突起44又はピン66により、後方から力を加えることができる(図6)。
【0074】
また上分離部15では、硬貨集積空間48の底部近傍において硬貨CNの上端近傍が傾斜円盤43の円盤面43Sから離れた非分離姿勢であり、且つ下端近傍が該円盤面43Sに近接した状態となる(図示せず)可能性がある。このとき上分離部15では、標準残留攪拌突起46Sを硬貨集積空間48内の底部付近に到達させて硬貨CNの下端近傍に当接させ、その姿勢を崩して分離姿勢に遷移させることができる。
【0075】
しかしながら上分離部15では、図7(B)に示すように、硬貨CNの上端近傍が傾斜円盤43の円盤面43Sから離れた非分離姿勢であり、且つ下端近傍も該円盤面43Sからやや離隔していた場合、標準残留攪拌突起46Sを硬貨CNの下端近傍に当接させ得ない可能性がある。具体的には、硬貨CNの下端と傾斜円盤43の円盤面43Sとの間に、標準残留攪拌突起46Sの高さ(1.5[mm])よりも大きい距離の隙間を形成していた場合が該当する。
【0076】
この場合、上分離部15では、傾斜円盤43を暫く回転させることにより、図7(C)に示すように、やがて大型残留攪拌突起46Lが硬貨集積空間48内の底部付近に到達する。このとき上分離部15では、大型残留攪拌突起46Lの高さが標準残留攪拌突起46Sの高さよりも大きいため、該大型残留攪拌突起46Lを該硬貨CNに当接させてその姿勢を崩し、非分離姿勢から分離姿勢(図7(A))に遷移させることができる。
【0077】
[1-6.移動規制突起の構成]
図4及び図9(A)に示すように、傾斜円盤43は、円盤面43Sにおける各分離突起44同士の間となる7箇所に、移動規制突起80が形成されている。移動規制突起80は、回転方向側移動規制突起80a及び逆回転方向側移動規制突起80bにより構成されている。以下では、回転方向側移動規制突起80a及び逆回転方向側移動規制突起80bをまとめて移動規制突起80とも呼ぶ。移動規制突起80は、全体として円錐形状でその頂点近傍が曲面状に丸められており、その中心軸を傾斜円盤43の表面から右斜め上方に向け、円盤面43Sの法線方向に沿わせている。この移動規制突起80は、高さ(すなわち円盤面43Sから頂点までの距離)が1.5[mm]となっている。
【0078】
回転方向側移動規制突起80aは、回転方向に関し回転方向側の分離突起44よりもやや逆回転方向側において、径方向に関し回転方向側の分離突起44における長手方向のほぼ中央部に位置している。
【0079】
逆回転方向側移動規制突起80bは、回転方向に関し逆回転方向側の分離突起44よりもやや回転方向側において、径方向に関し逆回転方向側の分離突起44における、傾斜円盤43の最内周部近傍に位置している。このため逆回転方向側移動規制突起80bは、径方向に関し、回転方向側移動規制突起80aよりも傾斜円盤43の中心軸43C側に位置している。
【0080】
[1-7.硬貨移動可能領域の構成]
図10に示すように、上分離部15は、回転方向側の分離突起44と、回転方向側移動規制突起80aと、逆回転方向側移動規制突起80bと、逆回転方向側の分離突起44と、収納ガイド内周面51Sと、標準残留攪拌突起46Sとを、円盤面43Sよりも法線方向側に向かって、1枚の硬貨の厚さよりも突出させている。このため上分離部15は、回転方向側の分離突起44と、回転方向側移動規制突起80aと、逆回転方向側移動規制突起80bと、逆回転方向側の分離突起44と、収納ガイド内周面51Sと、標準残留攪拌突起46Sとにより囲まれた空間に、硬貨の移動範囲を規制する硬貨移動可能領域ARを形成している。このように硬貨は、硬貨集積空間48内の底部付近に位置している際、この硬貨移動可能領域AR内で移動可能となり、硬貨移動可能領域ARの外部へは移動し得なくなっている。
【0081】
以上は標準残留攪拌突起46Sを含む硬貨移動可能領域ARについて説明したが、大型残留攪拌突起46Lを含む硬貨移動可能領域ARについても同様に構成されているものの、大型残留攪拌突起46Lの方が標準残留攪拌突起46Sよりも直径が大きいため、標準残留攪拌突起46Sを含む硬貨移動可能領域ARよりも大型残留攪拌突起46Lを含む硬貨移動可能領域ARの方が、僅かに狭い領域となっている。
【0082】
[1-8.硬貨残留検知センサの構成]
図3(A)に示すように、上分離部15には、硬貨集積空間48内に残留している硬貨の有無を検出する硬貨残留検知センサ70が設けられている。この硬貨残留検知センサ70は、光学式のセンサであり、発光部70e、受光部70r及びプリズム70pにより構成されている。
【0083】
発光部70eは、傾斜円盤43よりも左側において分離部筐体40に取り付けられており、硬貨集積空間48に向けてセンサ光軸Lxに沿って右斜め上方向へ検知光を発光する。プリズム70pは、傾斜円盤43よりも右側において集積カバー41に取り付けられており、発光部70eから照射された検知光の進行方向を上斜め左方向へ90[°]屈曲させ傾斜円盤43と平行になるように進行させてから、さらに検知光の進行方向を左斜め下方向へ90[°]屈曲させ受光部70rへ向けて進行させる。受光部70rは、傾斜円盤43よりも左側における発光部70eよりも左斜め上側において分離部筐体40に取り付けられており、プリズム70pにより反射された検知光を受光する。
【0084】
この硬貨残留検知センサ70は、検知光の受光結果を硬貨制御部12(図2)に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、硬貨集積空間48内に硬貨が残留しているか否かを判断する。具体的に硬貨残留検知センサ70は、硬貨集積空間48内の特に下端部近辺に位置する硬貨が硬貨残留検知センサ70の検知光を横切ると、検知光が硬貨によって遮られ検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態)を硬貨制御部12に通知する。一方、硬貨残留検知センサ70は、硬貨が硬貨残留検知センサ70の検知光を横切っていない場合、検知光を受光していることを示す受光結果(すなわちOFF状態)を硬貨制御部12に通知する。
【0085】
[1-9.外側通過切欠部の構成]
図4に示すように傾斜円盤43は、外周のうち7個の各ピン用切欠部45同士の間となる7箇所に、外側通過切欠部71が形成されている。この外側通過切欠部71は、孔周囲切欠部74と外側光通過孔72oとにより構成されている。このように外側通過切欠部71は、ピン用切欠部45及び分離突起44と同数の7個設けられている。
【0086】
[1-9-1.孔周囲切欠部の構成]
図9及び図11に示すように孔周囲切欠部74は、表側円盤部78に形成されており、外周43Tから中心方向(中心軸43C)へ向かってえぐられるように切り欠かれている。この孔周囲切欠部74は、ピン用切欠部45とほぼ相似形であり、右方向から見て、傾斜円盤43の外周43Tを一辺とする三角形に類似した山型の形状となっており、ピン用切欠部45よりも小型になっている。
【0087】
孔周囲切欠部74は、中心軸43Cを通り傾斜円盤43の径方向に沿い外側光通過孔72oの中心を通る直線である半径線Lrを軸として、ほぼ線対称に構成されているものの、外周43T側の開口部における回転方向側よりも逆回転方向側が、山型の形状の斜面が寝るように大きく開口している。すなわち孔周囲切欠部74は、半径線Lrを軸として外周43T側の開口部における回転方向側よりも逆回転方向側が、傾斜円盤43の回転方向(周方向)の長さである開口幅が広くなっている。これにより上分離部15は、傾斜円盤43を回転方向へ回転させた際に、孔周囲切欠部74にクリップ等の異物を入りにくくすると共に、仮に入り込んだ場合、異物を孔周囲切欠部74から排出しやすくしている。
【0088】
[1-9-2.外側光通過孔の構成]
外側光通過孔72oは、円形状であり、裏側円盤部76に形成されており、孔周囲切欠部74の内側において、回転方向側、逆回転方向側及び傾斜円盤43の中心軸43C側を孔周囲切欠部74に囲まれるように、孔周囲切欠部74の内側のほぼ中央部に位置している。この外側光通過孔72oは、裏側円盤部76の右側面から左側面までに亘って貫通するよう穿設されており、硬貨残留検知センサ70(図3)の発光部70eから出射された検知光を傾斜円盤43の左側面側から円盤面43S側まで通過させる。
【0089】
[1-10.内側光通過孔の構成]
また図4に示すように、傾斜円盤43は、中心軸43Cから径方向に沿った距離が分離突起44とほぼ等しい箇所のうち7個の各分離突起44同士の間となる7箇所に、傾斜円盤43の円盤面43Sから左側面までに亘って貫通するよう穿設された内側光通過孔72iが形成されている。このように内側光通過孔72iは、外側光通過孔72o、ピン用切欠部45及び分離突起44と同数の7個設けられている。この内側光通過孔72iは、裏側円盤部76と表側円盤部78との両方を貫通しており、硬貨残留検知センサ70(図3)のプリズム70pにより反射された検知光を傾斜円盤43の円盤面43S側から左側面側まで通過させる。
【0090】
図12に示すように内側光通過孔72iは、右方向から見て、英大文字の「D」のような形状である。具体的に内側光通過孔72iは、円形状の中心よりも傾斜円盤43の中心軸43C側が直線状に削られたような形状となっている。このように内側光通過孔72iの外形は、一点鎖線で示す円形状部72icの一部分である円弧部分72iaと、該円弧部分72iaの一端側と他端側とを直線で結んだ直線部分72ilとにより構成されている。
【0091】
この内側光通過孔72iの直径、すなわち円形状部72icの直径は、外側光通過孔72oよりも大きくなっている。以下では、内側光通過孔72iにおける円弧部分72iaに重なる円形状部72icの内部の領域のうち、直線部分72ilよりも傾斜円盤43の中心軸43C側の領域を、光封鎖領域72imとも呼ぶ。換言すれば、内側光通過孔72iは、検知光が通過する円形状部72icの光路のうち、光封鎖領域72imを塞いでいるとも言える。
【0092】
[1-11.外側光通過孔及び内側光通過孔の配置及び大きさ]
図10に示すように、上述した外側光通過孔72oは、硬貨移動可能領域AR内における硬貨集積空間48内の底部である収納ガイド内周面51Sの何れの場所に最小径硬貨CNiが位置していた場合であっても、外側光通過孔72oが最小径硬貨CNiによって塞がれるような配置及び大きさに設定されている。
【0093】
このため、外側光通過孔72oは、硬貨移動可能領域AR内における硬貨集積空間48内の底部である収納ガイド内周面51Sの何れの場所に最小径硬貨CNiよりも直径が大きい最大径硬貨CNaが位置していた場合であっても、外側光通過孔72oが最大径硬貨CNaによって塞がれるような配置及び大きさに設定されている。
【0094】
また内側光通過孔72iは、硬貨移動可能領域ARにおける最小径硬貨CNiが湿気等により円盤面43Sに貼り付き、傾斜円盤43の遠心力に打ち勝って、収納ガイド内周面51Sよりも傾斜円盤43の中心軸43C側、すなわち収納ガイド内周面51Sよりも上方に残留した場合に、内側光通過孔72iが硬貨によって塞がれるような配置及び大きさに設定されている。
【0095】
このように、外側光通過孔72o及び内側光通過孔72iは、硬貨移動可能領域AR内の何れの場所に最小径硬貨CNiが位置していた場合であっても、少なくとも外側光通過孔72o又は内側光通過孔72iの何れか一方が最小径硬貨CNiによって塞がれるような配置及び大きさに設定されている。
【0096】
このため外側光通過孔72o及び内側光通過孔72iは、硬貨移動可能領域AR内の何れの場所に、最小径硬貨CNiよりも直径が大きい最大径硬貨CNaが位置していた場合であっても、少なくとも外側光通過孔72o又は内側光通過孔72iの何れか一方が最大径硬貨CNaによって塞がれるような配置及び大きさに設定されている。
【0097】
[1-12.効果等]
ここで、仮に、図9(B)に示すように、裏側円盤部76において、外側光通過孔72oに代えて、孔周囲切欠部74と同様の形状及び大きさの切り欠きである裏側円盤部切欠部82を形成することも考えられる。
【0098】
その場合、硬貨集積空間48内に硬貨が残留しているにもかかわらず、裏側円盤部切欠部82及び孔周囲切欠部74が硬貨によって塞がれず大きく開口してしまい、検知光を十分に塞ぎきれず、硬貨残留検知センサ70が、検知光を受光していることを示す受光結果(すなわちOFF状態)を硬貨制御部12に通知してしまいやすくなる。その場合、硬貨制御部12は、この受光結果を基に、硬貨集積空間48内に硬貨が残留していないと誤判断してしまう可能性が高まってしまう。
【0099】
これに対し、裏側円盤部切欠部82及び孔周囲切欠部74を、両方とも外側光通過孔72oと同じ円形状にすることにより、硬貨集積空間48に残留した硬貨が、裏側円盤部切欠部82及び孔周囲切欠部74を通過した検知光を遮る、すなわち硬貨で裏側円盤部切欠部82及び孔周囲切欠部74を十分に塞ぐようにすることも考えられる。しかしながらそのような場合、円形状の孔周囲切欠部74に異物が引っかかりやすくなってしまう。
【0100】
これに対し上分離部15は、硬貨や異物と直接当接する表側円盤部78の円盤面43Sに形成された、傾斜円盤43の外周43Tが開口する山型形状の孔周囲切欠部74と、硬貨や異物と直接当接する可能性が低い裏側円盤部76において、表側円盤部78の孔周囲切欠部74の内側に位置するよう形成された円形状の外側光通過孔72oとを設けるようにした。このため上分離部15は、孔周囲切欠部74を山型形状とすることにより異物の引っかかりを防ぎつつ、外側光通過孔72oを孔周囲切欠部74よりも小さい円形状とすることより、硬貨で外側光通過孔72oを塞ぎやすくできる。これにより上分離部15は、異物の引っ掛かりを防ぎつつ、硬貨により外側光通過孔72oを塞ぎやすくし、硬貨集積空間48内に残留した硬貨の有無の検出性能を向上できる。
【0101】
また仮に、図13(B)に示すように、内側光通過孔72iに代えて、円形状部72icと円形状の内側光通過孔172iを形成することも考えられる。
【0102】
そのような場合において、硬貨CNが円盤面43Sに貼り付き、内側光通過孔172iの下半分程度を塞ぐ箇所に位置することがある。そのような場合、硬貨集積空間48内に硬貨CNが残留しているにもかかわらず、内側光通過孔172iの上半分程度が硬貨CNによって塞がれず大きく開口してしまい、検知光を十分に遮きれないため、硬貨残留検知センサ70が、検知光を受光していることを示す受光結果(すなわちOFF状態)を硬貨制御部12に通知してしまいやすくなる。その場合、硬貨制御部12は、この受光結果を基に、硬貨集積空間48内に硬貨が残留していないと誤判断してしまう可能性が高まってしまう。
【0103】
これに対し、内側光通過孔172iの円形状を保ったまま小型化することにより、硬貨集積空間48に残留した硬貨CNが、内側光通過孔172iを通過した検知光を遮る、すなわち小型化した内側光通過孔172iを硬貨CNで十分に塞ぐようにすることも考えられる。
【0104】
しかしながらそのような場合、内側光通過孔172iを小型化したため、内側光通過孔172iを通過可能な検知光が減少する。その場合、硬貨集積空間48内に硬貨CNが残留していないにもかかわらず、受光部70rが受光する検知光の光量が減少するため、硬貨残留検知センサ70は、硬貨CNが検知光を遮っていない場合であっても、検知光が硬貨CNによって遮られ検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態)を硬貨制御部12に通知してしまいやすくなる。その場合、硬貨制御部12は、この受光結果を基に、硬貨集積空間48内に硬貨CNが残留していると誤判断してしまう可能性が高まってしまう。
【0105】
それに対し、硬貨残留検知センサ70に流す電流を増加させ、受光部70rの受光感度を上げることにより、硬貨集積空間48内に硬貨CNが残留していないにもかかわらず硬貨CNが残留していると誤検出しないようにすることも考えられる。
【0106】
しかしながら、受光部70rの受光感度を上げると、硬貨残留検知センサ70は、硬貨CNが検知光を遮っている場合であっても、検知光が硬貨CNによって十分に遮られておらず検知光を受光していることを示す受光結果(すなわちOFF状態)を硬貨制御部12に通知してしまいやすくなる。その場合、硬貨制御部12は、この受光結果を基に、硬貨集積空間48内に硬貨が残留していないと誤判断してしまう可能性が高まってしまう。また、受光部70rの受光感度を上げるために硬貨残留検知センサ70に流す電流を増加させると、硬貨残留検知センサ70の回路が破損しやすくなってしまう。
【0107】
これに対し上分離部15は、分離突起44で硬貨CNを引っ掛けている際に硬貨CNが円盤面43Sに貼り付いたとしても、硬貨CNが移動してくる可能性が極めて低い光封鎖領域72im(図12)の部分を塞ぐように、内側光通過孔72iを英大文字の「D」のような形状とした。このため上分離部15は、内側光通過孔72iを通過する検知光の光量は十分に確保しつつ、硬貨が位置する可能性が極めて低い光封鎖領域72imの部分を塞ぐことにより、硬貨集積空間48内に残留した硬貨CNで内側光通過孔72iを塞ぎやすくできる。これにより上分離部15は、硬貨集積空間48内に残留した硬貨CNの有無の検出性能を向上できる。
【0108】
以上の構成によれば、現金自動預払機1の硬貨処理装置10の上分離部15は、硬貨を集積すると共に該硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す集積分離部15Aと、集積分離部15Aから繰り出された硬貨を搬送する分離搬送部15Bとを設け、集積分離部15Aは、法線を水平方向に対して上方へ傾斜させた円盤面43Sを有し、該円盤面43Sの中心軸43Cを回転中心として回転可能に支持され、所定の回転方向である矢印R1方向に回転する傾斜円盤43と、傾斜円盤43における円盤面43Sの法線方向側に設けられ、該円盤面43Sとの間に硬貨を集積する硬貨集積空間48を形成する集積カバー41と、円盤面43Sのうち外周43Tの一部分が中心軸43C側へ切り欠かれてなる孔周囲切欠部74と、孔周囲切欠部74の内部に設けられ、傾斜円盤43を貫通し、硬貨集積空間48内の硬貨の残留の有無を検出するセンサとしての硬貨残留検知センサ70の検知光を通過させる外側光通過孔72oとを設けるようにした。
【0109】
これにより上分離部15は、孔周囲切欠部74により異物の引っ掛かりを防ぎつつ、孔周囲切欠部74よりも小さく形成された外側光通過孔72oを硬貨により塞がれやすくし硬貨の検出性能を向上させることができる。
【0110】
[2.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、孔周囲切欠部74を傾斜円盤43の外周43Tを一辺とする三角形に類似した山型の形状にする場合について述べた。本発明はこれに限らず、孔周囲切欠部74を、傾斜円盤43の内周側から外周43T側に向かって開口幅が広くなるような形状とすれば良い。要は、孔周囲切欠部74を、傾斜円盤43の内周側端部よりも外周43T側端部の方が、開口幅が広い形状とすれば良い。
【0111】
また上述した実施の形態においては、孔周囲切欠部74を、半径線Lrを軸として、外周43T側の開口部における回転方向側よりも逆回転方向側が山型の形状の斜面が寝るように大きく開口させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、孔周囲切欠部74に異物が引っかからなければ、孔周囲切欠部74を、半径線Lrを軸として線対称に構成しても良い。
【0112】
さらに上述した実施の形態においては、外側光通過孔72oを円形状とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨が引っかからないように角部に面取りを施した円形状に近い多角形の形状でも良い。
【0113】
さらに上述した実施の形態においては、傾斜円盤43に表側円盤部78及び裏側円盤部76を設け、それぞれ表側円盤部78に孔周囲切欠部74を、裏側円盤部76に外側光通過孔72oを形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、表側円盤部78と裏側円盤部76とを一体化し、一体化させた部材に孔周囲切欠部74及び外側光通過孔72oを形成しても良い。
【0114】
また上述した実施の形態においては、内側光通過孔72iを英大文字の「D」のような形状とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨が引っかからないように角部に面取りを施した円形状に近い多角形の形状に対し中心軸43C側が削れ、多角形状の光路の一部分を塞ぐような形状であれば、他の種々の形状であっても良い。
【0115】
さらに上述した実施の形態においては、傾斜円盤43における周方向に沿ってほぼ等間隔となる7箇所に、外側光通過孔72oを設ける場合について述べた(図4)。本発明はこれに限らず、硬貨の検出性能を確保できれば、傾斜円盤43における周方向に沿って6箇所以下又は8箇所以上に、外側光通過孔72oを設けても良い。また、傾斜円盤43における周方向に沿った外側光通過孔72oの間隔は、互いに同等でなくても良い。
【0116】
さらに上述した実施の形態においては、傾斜円盤43における周方向に沿ってほぼ等間隔となる7箇所に、内側光通過孔72iを設ける場合について述べた(図4)。本発明はこれに限らず、硬貨の検出性能を確保できれば、傾斜円盤43における周方向に沿って6箇所以下又は8箇所以上に、内側光通過孔72iを設けても良い。また、傾斜円盤43における周方向に沿った内側光通過孔72iの間隔は、互いに同等でなくても良い。
【0117】
さらに上述した実施の形態においては、外側光通過孔72o及び内側光通過孔72iを、分離突起44、ピン用切欠部45及び残留攪拌突起46と同数だけ設ける場合について述べた(図4)。本発明はこれに限らず、外側光通過孔72o及び内側光通過孔72iを、分離突起44、ピン用切欠部45及び残留攪拌突起46とは異なる数だけ設けても良い。
【0118】
さらに上述した実施の形態においては、本発明を上分離部15に適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば下分離部29に適用しても良い。
【0119】
さらに上述した実施の形態においては、自動取引装置としての現金自動預払機1に組み込まれる硬貨処理装置10に本発明を適用する場合について述べた。本発明は前記自動取引装置としての現金自動預払機1に限らず、例えば自動券売機等のように顧客との間で硬貨に関する取引を行う種々の装置や、金融機関の職員や小売店の店員等が現金を管理するために使用する現金管理装置や、釣り銭を出金する釣り銭機等に本発明を適用しても良い。
【0120】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0121】
さらに上述した実施の形態においては、集積分離部としての集積分離部15Aと、搬送部としての分離搬送部15Bとによって硬貨処理装置としての硬貨処理装置10を構成する場合について述べた。さらに、傾斜円盤としての傾斜円盤43と、集積カバーとしての集積カバー41と、孔周囲切欠部としての孔周囲切欠部74と、外側光通過孔としての外側光通過孔72oとによって集積分離部を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる集積分離部と、搬送部とによって硬貨処理装置を構成し、その他種々の構成でなる傾斜円盤と、集積カバーと、孔周囲切欠部と、外側光通過孔とによって集積分離部を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、例えば顧客又は店員との間で硬貨に関する取引処理を行う現金自動預払機等で利用できる。
【符号の説明】
【0123】
1……現金自動預払機、2……筐体、3……応対部、4……通帳入出口、5……カード入出口、6……硬貨入出金口、7……紙幣入出金口、8……操作表示部、9……主制御部、10……硬貨処理装置、11……硬貨処理装置筐体、12……硬貨制御部、13……入出金部、13A……収容器、13B……シャッタ、14……シュート部、15……上分離部、15A……集積分離部、15B……分離搬送部、16……認識搬送部、17……受渡部、18……ピンベルト搬送部、19……分岐部、20……スタッカ分岐部、21……スタッカ部、22……出金搬送部、23……一時保留部、24……補充回収庫、25……第1補充リジェクト庫、26……第2補充リジェクト庫、27……リジェクト庫、28……取忘取込庫、29……下分離部、29A……集積分離部、29B……分離搬送部、30、31……案内部、32……集積部、33……繰出部、40……分離部筐体、41……集積カバー、43……傾斜円盤、43C……中心軸、43S……円盤面、43T……外周、44……分離突起、45……ピン用切欠部、46……残留攪拌突起、46S……標準残留攪拌突起、46L……大型残留攪拌突起、48……硬貨集積空間、50……硬貨ガイド、51……収納ガイド、51S……収納ガイド内周面、52……前搬送ガイド、53、54……左搬送ガイド、65……ベルト、66……ピン、70……硬貨残留検知センサ、70e……発光部、70r……受光部、70p……プリズム、Lx……センサ光軸、71……外側通過切欠部、72o……外側光通過孔、72i、172i……内側光通過孔、72im……光封鎖領域、72ic……円形状部、72ia……円弧部分、72il……直線部分、74……孔周囲切欠部、76……裏側円盤部、78……表側円盤部、80a……回転方向側移動規制突起、80b……逆回転方向側移動規制突起、82……裏側円盤部切欠部、AR……硬貨移動可能領域、CN……硬貨、CNa……最大径硬貨、CNi……最小径硬貨、Lr……半径線、SC……搬送空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13