(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】収縮率推定装置、収縮率推定方法、プログラム、記録媒体および押出成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/44 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G01N33/44
(21)【出願番号】P 2020216933
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加賀 雅文
(72)【発明者】
【氏名】大賀 裕太
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044695(JP,A)
【文献】特開2016-049630(JP,A)
【文献】特開2007-283676(JP,A)
【文献】特開2014-189623(JP,A)
【文献】特開平06-201563(JP,A)
【文献】特開2015-105541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0015655(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00-33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から押し出される樹脂を構成材料として含む押出成形品の収縮率を推定する収縮率推定装置であって、
前記収縮率推定装置は、前記押出機に備わるモータのトルク電流と前記押出機の押出条件に基づいて、前記押出成形品の前記収縮率を推定する収縮率推定部を備える、収縮率推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の収縮率推定装置において、
前記収縮率推定部は、以下に示す数式1に基づいて、前記押出成形品の前記収縮率を推定する、収縮率推定装置。
【数10】
ここで、
t:時間
ε(t):収縮率
A
0:定数
τ(t):トルク電流
B
0:定数
α:温度係数
T:樹脂の温度
dγ/dt:歪み速度
n:粘度指数
C:定数
【請求項3】
請求項2に記載の収縮率推定装置において、
前記歪み速度は、以下に示す数式2で表される、収縮率推定装置。
【数11】
ここで、
dγ/dt:歪み速度
v
d:ダイの出口での溶融樹脂の平均流速
v
f:線速
L:ダイの出口から水槽までの距離
【請求項4】
請求項3に記載の収縮率推定装置において、
前記数式1に含まれる前記温度係数と前記粘度指数は、以下に示す数式3に含まれている、収縮率推定装置。
【数12】
ここで、
t:時間
η:粘度
η
0:粘度定数
α:温度係数
T:樹脂の温度
dγ/dt:歪み速度
n:粘度指数
【請求項5】
請求項4に記載の収縮率推定装置において、
前記収縮率推定装置は、
前記温度と前記歪み速度との組み合わせと前記粘度とを関連付けた第1既知データ群を入力する第1既知データ群入力部と、
前記第1既知データ群入力部から入力された前記第1既知データ群と前記数式3に基づいて、前記粘度の温度係数と前記粘度指数を決定する第1定数決定部と、
前記トルク電流と前記温度と前記歪み速度との組み合わせと前記押出成形品の前記収縮率とを関連付けた第2既知データ群を入力する第2既知データ群入力部と、
前記第2既知データ群入力部から入力された前記第2既知データ群と、前記第1定数決定部で決定された前記粘度の温度係数と前記粘度指数を代入した前記数式1に基づいて、前記数式1に含まれる定数A
0、定数B
0および定数Cを決定する第2定数決定部と、
を有し、
前記収縮率推定部は、前記第1定数決定部で決定された前記温度係数と前記粘度指数と、前記第2定数決定部で決定された前記定数A
0、前記定数B
0および前記定数Cとを代入した前記数式1に基づいて、前記温度と前記歪み速度からなる前記押出条件と前記トルク電流から前記押出成形品の前記収縮率を推定する、収縮率推定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の収縮率推定装置において、
前記第1定数決定部は、前記第1既知データ群を教師データとして、入力を前記温度と前記歪み速度とするとともに出力を前記粘度とするニューラルネットワークを学習させることにより、前記温度係数と前記粘度指数を決定する、収縮率推定装置。
【請求項7】
請求項5に記載の収縮率推定装置において、
前記第2定数決定部は、前記第2既知データ群に対して、最小二乗法を適用することにより、前記定数A
0、前記定数B
0および前記定数Cを決定する、収縮率推定装置。
【請求項8】
請求項5に記載の収縮率推定装置において、
前記第2定数決定部は、前記第2既知データ群を教師データとして、入力を前記押出条件と前記トルク電流とするとともに出力を前記押出成形品の前記収縮率とするニューラルネットワークを学習させることにより、前記定数A
0、前記定数B
0および前記定数Cを決定する、収縮率推定装置。
【請求項9】
押出機から押し出される樹脂を構成材料として含む押出成形品の収縮率を推定する収縮率推定装置であって、
前記収縮率推定装置は、前記押出機に備わるモータのトルク電流に基づいて、前記押出成形品の前記収縮率を推定する収縮率推定部を備える、収縮率推定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の収縮率推定装置において、
前記収縮率推定部は、以下に示す数式4に基づいて、前記押出成形品の前記収縮率を推定する、収縮率推定装置。
【数13】
ここで、
t:時間
ε:収縮率
A
1:定数
τ:トルク電流
B
1:定数
【請求項11】
押出機から押し出される樹脂を構成材料として含む押出成形品の収縮率を推定する収縮率推定方法であって、
前記収縮率推定方法は、前記押出機に備わるモータのトルク電流と前記押出機の押出条件に基づいて、前記押出成形品の前記収縮率を推定する収縮率推定工程を備える、収縮率推定方法。
【請求項12】
押出機から押し出される樹脂を構成材料として含む押出成形品の収縮率を推定する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記プログラムは、前記押出機に備わるモータのトルク電流と前記押出機の押出条件に基づいて、前記押出成形品の前記収縮率を推定する収縮率推定処理を備える、プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項14】
押出機から押し出される樹脂を構成材料として含む押出成形品の製造方法であって、
前記押出成形品の製造方法は、前記押出機に備わるモータのトルク電流に基づいて前記押出成形品の収縮率をリアルタイムに監視する収縮率監視工程を備える、押出成形品の製造方法。
【請求項15】
押出機から押し出される樹脂を構成材料として含む押出成形品の製造方法であって、
前記押出機に備わるモータのトルク電流と前記押出機の押出条件に基づいて前記押出成形品の収縮率をリアルタイムに推定する収縮率推定工程と、
推定された前記収縮率に基づいて前記押出条件を調整する押出条件調整工程と、
調整された前記押出条件で前記樹脂を押出成形する成形工程と、
を備える、押出成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形品の収縮率を推定する収縮率推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-44695号公報(特許文献1)には、ゴム押出機の回転しているスクリュに生じるトルクを検出して、この検出したトルクデータに基づいて、ゴム材料の粘度を推定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、代表的な押出成形品であるケーブルは、絶縁性を確保するために導線を樹脂で被覆した構造を有しており、導線を被覆する樹脂は、例えば、押出成形技術によって形成される。その後、押出成形技術によって形成された樹脂に対して、アニール処理が行われるが、アニール処理後にケーブルが収縮することが知られている。例えば、ケーブルの長手方向に樹脂が収縮すると、ケーブルの外径が太くなる外径変動が生じたり、ケーブルの端部から導線(心線)が露出する不具合が生じるおそれがある。このことから、ケーブルの収縮率を小さくすることが望まれている。
【0005】
この点に関し、現状では、押出機から押し出される樹脂を構成材料として含む押出成形品の収縮率(アニール処理後の寸法)を押出時に把握できていない。このことから、アニール処理後に不良が発生して、製造歩留まりの低下やリードタイムの増加を招いている。したがって、押出成形品の生産性を向上する観点から、押出時に収縮率を推定することができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態における収縮率推定装置は、押出機に備わるモータのトルク電流と押出機の押出条件に基づいて、押出成形品の収縮率を推定する収縮率推定部を備える。
【0007】
一実施の形態における収縮率推定方法は、押出機に備わるモータのトルク電流と押出機の押出条件に基づいて、押出成形品の収縮率を推定する収縮率推定工程を備える。
【0008】
この収縮率推定方法は、プログラムを用いて、押出成形品の収縮率を推定する処理をコンピュータに実行させることにより実現できる。例えば、このプログラムは、押出機に備わるモータのトルク電流と押出機の押出条件に基づいて、押出成形品の収縮率を推定する収縮率推定処理を備える。一実施の形態におけるプログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することができる。
【0009】
一実施の形態における押出成形品の製造方法は、押出機に備わるモータのトルク電流と押出機の押出条件に基づいて押出成形品の収縮率をリアルタイムに監視する収縮率監視工程を備える。また、一実施の形態における押出成形品の製造方法は、押出機に備わるモータのトルク電流と押出機の押出条件に基づいて押出成形品の収縮率をリアルタイムに推定する収縮率推定工程と、推定された収縮率に基づいて押出条件を調整する押出条件調整工程と、調整された押出条件で樹脂を押出成形する成形工程とを備える。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、押出時に押出成形品の収縮率を推定できる。また、これにより、押出成形品の生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】導線の外周を樹脂で被覆する押出成形工程を説明する模式図である。
【
図2】ダイから押し出された樹脂で導線を被覆する様子を示す模式図である。
【
図3】樹脂の温度を測定した測定結果(実験データ)を示すグラフである。
【
図4】実験データに基づき算出された粘度の時間依存性と、押出機から出力されるトルク電流の時間依存性とを合わせて示すグラフである。
【
図5】「トルク電流」と押出成形品の収縮率との間に相関関係が存在することの妥当性を説明する図である。
【
図6】「トルク電流」と収縮率との相関関係の定式化を行う手順を示す図である。
【
図9】収縮率推定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図10】収縮率推定装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図11】温度係数と粘度指数を決定する機械学習を説明する図である。
【
図12】(数式VIII)の定数を決定する機械学習を説明する図である。
【
図13】収縮率推定装置の基本動作を説明するフローチャートである。
【
図14】収縮率推定装置の基本動作を説明するフローチャートである。
【
図15】収縮率推定装置の応用動作を説明するフローチャートである。
【
図16】押出成形品の製造工程の一部を説明するフローチャートである。
【
図17】押出成形品の製造工程の一部を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0013】
<ケーブルの製造方法>
本実施の形態では、導線を樹脂で被覆するケーブルの製造方法の中で、押出成形技術を使用して導線の外周を樹脂で被覆する工程について説明する。
【0014】
図1は、導線の外周を樹脂で被覆する押出成形工程を説明する模式図である。
【0015】
図1において、被覆材料の原料となる原料ペレット10を押出機11に投入して混練すると、クロスヘッド12を介してダイ13から溶融した樹脂が押し出される。押し出された樹脂は、走行ラインに沿って移動する導線14の表面に被覆される。そして、導線14の表面に被覆された樹脂は、ダイ13から押し出された直後から空冷された後、水槽15で水冷される。このようにして、ダイ13から押し出された樹脂は、空冷および水冷による冷却過程で固化する。ここで、導線14は、銅の撚線などから構成される。また、原料ペレット(プラスチック材料)10は、熱可塑性ポリウレタン樹脂などから構成される。
【0016】
その後、押出成形技術によって形成された樹脂を構成材料として含む押出成形品に対して、アニール処理が行われるが、アニール処理後に押出成形品が収縮することが知られている。押出成形品の収縮は、押出成形品の品質に悪影響を及ぼすことから、押出成形品の収縮率を小さくすることが望ましい。
【0017】
この点に関し、例えば、押出成形品の押出成形時にリアルタイムで押出成形品の収縮率(アニール処理後の寸法)を把握することができれば、製造歩留まりの向上やリードタイムの低減を実現できると考えられる。すなわち、押出成形品の生産性を向上する観点から、リアルタイムに収縮率を推定できる技術が望まれている。
【0018】
<実施の形態における基本思想>
本実施の形態における基本思想は、押出成形品の収縮率をリアルタイムに推定するために、収縮率自体を直接推定するのではなく、収縮率と相関関係のある物理量に着目して、この物理量を推定することによって収縮率を間接的に推定する思想である。特に、収縮率と相関関係のある物理量としてリアルタイムに把握することができる物理量を見出すことができれば、この物理量に基づいて、リアルタイムに収縮率を推定できると考えられる。
【0019】
この基本思想は、例えば、以下に示す利点を有する。
【0020】
例えば、収縮率自体を高精度に推定するには、押出条件と樹脂の材料特性の両方を考慮する必要がある。しかしながら、収縮率自体を定式化する収縮率推定技術では、押出条件と樹脂の材料特性の両方を考慮して収縮率自体を定式化することが難しいだけでなく、「結晶化度」という測定が必要なパラメータも含まれる。この結果、収縮率自体を定式化する技術では、押出成形品の製造工程においてリアルタイムに導入することが困難である。
【0021】
これに対し、基本思想によれば、収縮率自体を定式化する必要はなく、収縮率と相関関係のある物理量を定式化できれば、定式化された物理量から収縮率を間接的に推定することができる。このとき、物理量の定式化において、押出条件と樹脂の材料特性の両方を考慮することが容易であるとともに、「結晶化度」という測定が必要なパラメータを含まずに定式化できれば、収縮率を高精度に推定できるとともに、押出成形品の製造工程においてリアルタイムに導入することも可能となる。つまり、収縮率と相関関係のある物理量として、リアルタイムに把握することができるとともに、押出条件と材料特性を考慮した定式化が実現できる物理量が見出されれば、収縮率を高精度に推定できるとともに、押出成形品の製造工程においてリアルタイムに導入することも可能となる。
【0022】
そこで、本発明者は、このような物理量を見出すために鋭意検討した結果、「トルク電流」という物理量に着目したので、以下では、「トルク電流」について説明する。
【0023】
<「トルク電流」>
押出成形工程では、押出機が使用される。押出機では、被覆材料の原料となる原料ペレットを回転するスクリュで混練する。そして、混練された溶融樹脂をダイの出口から押し出すことによって、導線の外周を樹脂で被覆する。ここで、スクリュは、押出機に備わるモータによって回転される。このとき、スクリュを回転させるモータに流れる負荷電流が「トルク電流」である。本発明者は、この「トルク電流」が押出成形品の収縮率と相関関係のある物理量であることを新規に見出している。特に、「トルク電流」は、樹脂を混練するスクリュを回転させるモータに流れる電流であり、押出機においては、この「トルク電流」を常時監視することにより、スクリュの回転異常を検出できるように構成されている。このことから、「トルク電流」は、押出成形工程においてリアルタイムに把握できる物理量である。したがって、「トルク電流」が押出成形品の収縮率と相関関係があれば、「トルク電流」からリアルタイムに押出成形品の収縮率を推定することが可能となる。
【0024】
ここで、「トルク電流」と押出成形品の収縮率との間に相関関係があることは明らかではない。そこで、以下では、まず、「トルク電流」と押出成形品の収縮率との間に相関関係が存在することを定性的に説明する。
【0025】
<相関関係の定性的理解>
<<「引落応力」の説明>>
「トルク電流」と押出成形品の収縮率との間に相関関係が存在することを説明するためには、「引落応力」が重要な役割を有する。このため、「引落応力」について説明する。
【0026】
図2は、ダイから押し出された樹脂で導線を被覆する様子を示す模式図である。
【0027】
図2において、ダイ13の出口から押し出された溶融樹脂20は、一定の線速で移動する導線14の表面に被覆される。そして、導線14の表面に被覆された溶融樹脂20は、水槽15で冷却されて結晶化する。このとき、
図2に示すように、ダイ13の出口から押し出された溶融樹脂20は、走行ラインに沿って移動する導線14に引っ張られる。この結果、ダイ13の出口から押し出されてから導線14に被覆されるまでに溶融樹脂20に斜め方向に加わる応力が「引落応力σ」である。
【0028】
本発明者は、この「引落応力」が押出成形品の収縮率と相関関係を有していると推測している。この点に関し、本発明者が「引落応力」と収縮率との間に相関関係があると推測するに至った理由について説明する。本発明者が「引落応力」と収縮率との間に相関関係があると推測したのは、以下に示す収縮メカニズムを把握した結果である。
【0029】
そこで、本発明者が把握した収縮メカニズムについて説明する。
【0030】
押出成形技術では、ダイから押し出された溶融樹脂を延伸させて所望の寸法の製品(押出成形品)を製造することが行われる。このとき、押し出された溶融樹脂に加わる「引落応力」により、溶融樹脂の構成材料である高分子の高分子鎖が伸長し、高分子鎖が伸長した状態で溶融樹脂が水冷される。その後、アニール処理によって再び高温状態に曝されたとき、樹脂に加わっている「引落応力」が解消される結果、樹脂に収縮が発生する。以上のようなメカニズムによって樹脂に収縮が発生する。したがって、このメカニズムによると、「引落応力」が樹脂を構成材料として含む押出成形品の収縮の一因となっていることがわかる。このことを考慮して、本発明者は、「引落応力」と収縮率との間に相関関係があると推測するに至ったのである。
【0031】
<<「引落応力」と粘度との関係>>
次に、「引落応力」は、粘度と相関関係があることを説明する。上述したメカニズムによると、押し出された溶融樹脂に加わる「引落応力」により、溶融樹脂の構成材料である高分子の高分子鎖が伸長する。したがって、「引落応力」は、樹脂の材料特性に影響を受けると考えることができる。特に、「引落応力」は、樹脂の流動性に大きく影響を受けると考えられることから、「引落応力」は、樹脂の流動性を表す粘度と相関関係があると推測される。例えば、定性的に粘度が大きくなると「引落応力」も大きくなると理解されることから、「引落応力」と粘度との間に相関関係が存在すると推測することは妥当である。
【0032】
<<粘度と「トルク電流」との関係>>
続いて、粘度は、「トルク電流」と相関関係があることを説明する。例えば、樹脂の混練は、スクリュをモータで回転させることにより行われる。このとき、樹脂の粘度が大きいと、この樹脂を混練するためにスクリュを回転させるエネルギーは大きくなる。このことは、スクリュを回転させるモータに大きな負荷がかかることを意味し、これによって、モータを回転させるための「トルク電流」は大きくなる。一方、樹脂の粘度が小さいと、この樹脂を混練するためにモータにかかる負荷は小さくなる。このことは、「トルク電流」が小さくなることを意味する。したがって、粘度と「トルク電流」との間に相関関係が存在することは妥当であると考えることができる。
【0033】
以下では、粘度と「トルク電流」との間に相関関係があることを示す実験結果について説明する。まず、粘度を算出する。具体的には、粘度は、後述する(数式I)で表すことができることから、この(数式I)に基づいて粘度を算出することができる。例えば、実験に使用した樹脂および押出機の押出条件に基づき、(数式I)に含まれる「粘度定数η0」は、9.11×1011(Pa・sn)であり、「温度係数α」は、8.42×102(1/℃)であり、「粘度指数n」は、0.225である。
【0034】
ここで、押出機から外部に押し出されて引き延ばされる樹脂の粘度の場合は、(数式I)に含まれる(dγ/dt)は、「歪み速度」が使用される。これに対し、押出機の内部で混練されている樹脂の粘度の場合は、(数式I)に含まれる(dγ/dt)は、「せん断速度」が使用される。
【0035】
そして、「せん断速度」は、押出機の内部では一定であると仮定して定数とみなすと、(数式I)に基づいて、樹脂の温度Tから粘度ηを算出することができる。
【0036】
そこで、押出機から押し出される樹脂の温度を測定する。具体的には、押出機の先端部に開けた穴に熱電対を挿入して樹脂の温度を測定した。
図3は、樹脂の温度を測定した測定結果(実験データ)を示すグラフである。
【0037】
続いて、(数式I)に
図3に示す実験データを代入することにより粘度を算出する。
図4は、実験データに基づき算出された粘度の時間依存性(黒で表示)と、押出機から出力されるトルク電流の時間依存性(グレーで表示)とを合わせて示すグラフである。
【0038】
図4に示すように、丸印で囲んだピーク位置に着目すると、粘度計算値とトルク電流値との間に相関関係があることが読み取れる。以上の実験結果からも、粘度と「トルク電流」との間に相関関係が存在することは妥当であると考えられる。
【0039】
以上のことをまとめると、
図5に示すようになる。
図5は、「トルク電流」と押出成形品の収縮率との間に相関関係が存在することの妥当性を説明する図である。
図5において、上述した定性的な説明より、まず、「引落応力」と収縮率との間には、相関関係(第1相関関係)があることが推測される。そして、「引落応力」と粘度との間にも相関関係(第2相関関係)が存在することが推測されるとともに、粘度と「トルク電流」との間にも相関関係(第3相関関係)が存在することが推測される。したがって、これらの第1相関関係と第2相関関係と第3相関関係とを総合的に考慮すると、「トルク電流」と押出成形品の収縮率との間には、相関関係が存在することが推測される。すなわち、第1相関関係、第2相関関係および第3相関関係を考慮すると、「トルク電流」と収縮率とは、粘度および「引落応力」を通じて、互いに相関関係を有していると推測することができる。このようにして、「トルク電流」と押出成形品の収縮率との間には相関関係が存在することが定性的に理解される。
【0040】
<相関関係の定式化>
さらに、本発明者は、「トルク電流」と押出成形品の収縮率と相関関係についての定性的理解から一歩進んで相関関係の定式化を試みているので、この点について説明する。
【0041】
図6は、「トルク電流」と収縮率との相関関係の定式化を行う手順を示す図である。
【0042】
図6に示すように、まず、第1段階として、粘度と「トルク電流」との相関関係の定式化を行う。そして、第2段階として、「引落応力」と「トルク電流」との相関関係の定式化を行った後、第3段階として、収縮率と「トルク電流」との相関関係の定式化を行う。
【0043】
以下では、
図6に示す手順にしたがって、最終的に、収縮率と「トルク電流」との相関関係を定式化できることについて説明する。
【0044】
<<第1段階:粘度と「トルク電流」との相関関係の定式化>>
一般的に、粘度は、以下に示す数式(I)で表される。
【0045】
【0046】
ここで、
t:時間
η:粘度
η0:粘度定数
α:温度係数
T:樹脂の温度
dγ/dt:歪み速度
n:粘度指数
【0047】
<<<歪み速度の説明>>>
ここで、(数式I)に含まれる「歪み速度」について説明する。
【0048】
【0049】
図7において、ダイ13の出口の断面積が「S
d」で示されている。このダイ13の出口から溶融樹脂20が押し出される。このとき、ダイ13の出口から押し出される溶融樹脂20の平均流速が「v
d」である。ダイ13の出口から平均流速「v
d」で押し出された溶融樹脂20は、線速「v
f」が加わることによって引き延ばされる。ここで、
図7に示される「S
f」は、溶融樹脂20で被覆された導線からなる成形物の断面積である。また、
図7に示される「L」は、ダイ13の出口から水槽15までの距離である。
【0050】
このような構成において、「歪み速度」は、以下に示す(数式II)で表される。
【0051】
【0052】
ここで、
dγ/dt:歪み速度
vd:ダイの出口での溶融樹脂の平均流速
vf:線速
L:ダイの出口から水槽までの距離
【0053】
すなわち、「歪み速度」は、平均流速「vd」と線速「vf」との差分をダイ13の出口から水槽15までの距離「L」で割った物理量として定義される。このように定義される「歪み速度」は、例えば、平均流速「vd」と線速「vf」とが等しければゼロとなる。つまり、平均流速「vd」と線速「vf」とが等しいということは、定性的に溶融樹脂20に歪みが加わらないと考えることができることから、溶融樹脂20の歪みに関する物理量である「歪み速度」がゼロとなることは理解できる。また、平均流速「vd」と線速「vf」との差分が大きくなればなるほど溶融樹脂に加わる歪みは大きくなると考えることができることから、「歪み速度」が(数式II)で表されることは妥当である。
【0054】
<<<線形性の仮定>>>
次に、上述した(数式I)で表される粘度と「トルク電流」との相関関係の定式化を行うにあたって、粘度と「トルク電流」との線形性を仮定する。この仮定は、例えば、粘度が大きくなれば、「トルク電流」も増加するという定性的理解に合致することから妥当といえる。この仮定に基づくと、粘度は、以下に示す(数式III)で表される。
【0055】
【0056】
ここで、
t:時間
η:粘度
a:定数
τ:トルク電流
b:定数
【0057】
本発明者の検討によると、「トルク電流」を変化させたとき、ダイの出口での溶融樹脂の平均流速(vd)、線速(vf)、ダイの出口から水槽までの距離(L)、樹脂の温度(T)、温度係数(α)、粘度指数(n)は、ほぼ一定である一方、樹脂の粘度定数(η0)が主に変化することを新規な知見として見出している。
【0058】
この知見に基づくと、粘度と「トルク電流」との(数式III)で表される線形性は、粘度定数(η0)を以下に示す(数式IV)で表すこととほぼ等価となる。
【0059】
【0060】
ここで、
t:時間
η0:粘度定数
a0:定数
τ:トルク電流
b0:定数
【0061】
以上のようにして、粘度と「トルク電流」との相関関係を定式化できる。
【0062】
<<第2段階:「引落応力」と「トルク電流」との相関関係の定式化>>
続いて、「引落応力」と「トルク電流」との相関関係の定式化について説明する。
【0063】
「引落応力」と粘度との相関関係は、以下の(数式V)で表される。
【0064】
【0065】
ここで、
t:時間
σ:引落応力
η:粘度
dγ/dt:歪み速度
η0:粘度定数
α:温度係数
T:樹脂の温度
n:粘度指数
【0066】
例えば、「引落応力σ」を定式化した(数式V)には、「粘度η」が含まれており、「引落応力σ」∝「粘度η」の関係を表している。このように、「引落応力」を定式化した(数式V)は、樹脂の粘度という材料特性と温度と歪み速度を含む押出条件とが考慮されており、定性的に粘度が大きくなると「引落応力」も大きくなると考えられることから、(数式V)による定式化は定性的理解に合致しているといえる。
【0067】
「引落応力」を定式化した(数式V)は、以下に示す有用性を有する。
【0068】
(1)(数式V)は、樹脂の粘度という材料特性と、樹脂の温度および歪み速度という押出条件の両方を考慮した関係式となっている。これにより、材料特性だけを考慮した定式化や押出条件だけを考慮した定式化と比較して、高精度に「引落応力」を推定することができる。そして、このことは、「引落応力」と押出成形品の「収縮率」とが高い相関関係にあれば、材料特性と押出条件の両方を考慮して高精度に「収縮率」を推定できることを意味する。このことから、(数式V)による定式化の意義は大きい。
【0069】
(2)次に、「引落応力」を定式化した(数式V)には、「結晶化度」が含まれていない。なぜなら、
図2に示すように、ダイ13から押し出される樹脂(例えば、樹脂の温度は、180℃~200℃)は、溶融樹脂20であり、この溶融樹脂20は、水槽15で冷却されて結晶化する。したがって、水槽15に到達する前段階では、樹脂は溶融状態にあり「結晶化度」を考慮する必要はない。すなわち、「引落応力」は、パラメータとして「結晶化度」が含まれない点で大きな意義を有する。すなわち、「引落応力」に着目して、この「引落応力」を定式化した(数式V)には、「結晶化度」という測定が必要なパラメータが含まれないことから、押出成形品の製造工程においてリアルタイムに容易に導入することが可能となる点で大きな意義を有しているといえる。
【0070】
次に、「引落応力」を表す(数式V)に含まれる粘度定数(η0)に対して、(数式IV)の関係を代入すると、以下に示す(数式VI)が得られる。
【0071】
【0072】
ここで、
t:時間
σ:引落応力
a0:定数
τ:トルク電流
b0:定数
α:温度係数
T:樹脂の温度
dγ/dt:歪み速度
n:粘度指数
【0073】
以上のようにして、「引落応力」と「トルク電流」との相関関係を定式化できる。
【0074】
<<第3段階:収縮率と「トルク電流」との相関関係の定式化>>
次に、収縮率と「トルク電流」との相関関係の定式化について説明する。
【0075】
上述したように、収縮率は、「引落応力」と相関関係があると推定される。そこで、本発明者は、収縮率と「引落応力」との相関関係に線形性を仮定することを提案する。例えば、収縮メカニズムによると、「引落応力」によって、溶融樹脂の構成材料である高分子の高分子鎖が伸長する。この伸長の度合いは、「引落応力」が大きくなると大きくなると考えられる。そして、アニール処理によって樹脂が高温状態に曝されたとき、樹脂に加わっている「引落応力」が解消される結果、樹脂に収縮が発生することを考慮すると、伸長の度合いが大きくなるほど収縮率が大きくなると理解される。つまり、「引落応力」が大きいほど樹脂を構成材料として含む押出成形品の収縮率が大きくなると考えられることから、「引落応力」と押出成形品の収縮率の間に線形性を仮定することは理にかなっているといえる。
【0076】
そこで、この線形性を仮定すると、「引落応力」と収縮率との相関関係は、以下に示す(数式VII)で表されることになる。
【0077】
【0078】
ここで、
t:時間
ε:収縮率
A:定数
σ:引落応力
C:定数
【0079】
そして、(数式VI)で表される「引落応力」を(数式VII)に代入すると、以下に示す(数式VIII)が得られる。
【0080】
【0081】
ここで、
t:時間
ε:収縮率
A0=Aa0:定数
τ:引落応力
B0=Ab0:定数
α:温度係数
T:樹脂の温度
dγ/dt:歪み速度
n:粘度定数
C:定数
【0082】
以上のようにして、収縮率と「トルク電流」との相関関係を定式化できる。このように定式化された(数式VIII)によれば、定数A0、定数B0、定数C、温度係数αおよび粘度定数nがわかっていれば、樹脂の温度(T)と歪み速度(dγ/dt)からなる押出条件と「トルク電流」に基づいて、押出成形品の収縮率(ε)を推定することができる。
【0083】
<相関関係の検証結果>
以下では、押出成形品の収縮率と「トルク電流」とが相関関係を有するという本発明者の洞察が正しいことを裏付ける検証結果について説明する。つまり、収縮率と「トルク電流」との間には、高い相関関係が存在することを裏付ける検証結果について説明する。
【0084】
収縮率と「トルク電流」との相関関係を検証するため、例えば、
図1に示す構成を有する押出成形システムを使用して押出実験を実施する。具体的に、押出実験では、熱可塑性ポリウレタン樹脂を使用し、押出条件として樹脂の温度と歪み速度を採用する。
【0085】
具体的に、スクリュ外径が40mmのフルフライトスクリュを備える押出機にクロスヘッドを取り付けるとともに、穴径が2.25mmのダイを使用して、外径が1.5mmの押出成形物(ケーブル)からなるひも状サンプルを線速20m/minで製作した。このとき、クロスヘッドとダイの温度(樹脂の温度に相当)を185℃、190℃、195℃に変化させて、押出時の「トルク電流」をデータロガーで1秒ごとに記録した。これにより、樹脂の温度を変化させることにより粘度を変化させたひも状サンプルのデータを得ることができる。このようにして得られたひも状サンプルを使用して収縮率を実測した。
【0086】
具体的には、押出時にひも状サンプルを600秒ごとに採取し、それを約500mmにカットした。そして、カットされたひも状サンプルに対して、130℃で3時間のアニール処理を施した後の長さを測定し、アニール処理後の長さを初期の長さで割ることにより収縮率を測定した。以上のようにして、収縮率と「トルク電流」との関係を示す実測データを得ることができる。
【0087】
【0088】
図8において、横軸は「トルク電流」(A)を示している一方、縦軸は収縮率(%)を示している。
図8に示される〇印は樹脂の温度が185℃のデータであり、菱形印は樹脂の温度が190℃のデータであり、×印は樹脂の温度が195℃のデータである。
【0089】
図8に示すように、「トルク電流」と収縮率の相関係数(R)は、「0.89」であり、相関係数が1に近いほど相関関係が高くなることを考慮すると、「トルク電流」と収縮率の間には、高い相関関係が存在することがわかる。特に、実測データは、概ね破線で示される線形関係を有していることがわかることから、(数式VIII)による収縮率と「トルク電流」との相関関係の定式化は妥当であることがわかる。
【0090】
上述した実験結果から、「トルク電流」と収縮率との間には、高い相関関係が存在することが裏付けられており、「トルク電流」と収縮率との間に高い相関関係が存在するであろうという本発明者の推測が正しいことが確認されたことになる。したがって、(数式VIII)で定式化された「トルク電流」に基づいて、押出成形品の収縮率を推定する技術的思想は、材料特性と押出条件の両方を考慮している点と、押出成形品の製造工程においてリアルタイムに導入することが可能となる点で非常に有用であることがわかる。
【0091】
なお、例えば、押出成形品として導線を被覆する絶縁樹脂を例に挙げると、絶縁樹脂の収縮率をリアルタイムに推定できるということは、押出機から押し出される絶縁樹脂の長手方向における収縮率を逐次把握できることを意味する。
【0092】
<収縮率推定装置の構成>
以下では、上述した技術的思想を具現化する収縮率推定装置について説明する。
【0093】
<<ハードウェア構成>>
まず、本実施の形態おける収縮率推定装置のハードウェア構成について説明する。
【0094】
図9は、本実施の形態における収縮率推定装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。なお、
図9に示す構成は、あくまでも収縮率推定装置100のハードウェア構成の一例を示すものであり、収縮率推定装置100のハードウェア構成は、
図9に記載されている構成に限らず、他の構成であってもよい。
【0095】
図9において、収縮率推定装置100は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)101を備えている。このCPU101は、バス113を介して、例えば、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、および、ハードディスク装置112と電気的に接続されており、これらのハードウェアデバイスを制御するように構成されている。
【0096】
また、CPU101は、バス113を介して入力装置や出力装置とも接続されている。入力装置の一例としては、キーボード105、マウス106、通信ボード107、および、スキャナ111などを挙げることができる。一方、出力装置の一例としては、ディスプレイ104、通信ボード107、および、プリンタ110などを挙げることができる。さらに、CPU101は、例えば、リムーバルディスク装置108やCD/DVD-ROM装置109と接続されていてもよい。
【0097】
収縮率推定装置100は、例えば、ネットワークと接続されていてもよい。例えば、収縮率推定装置100がネットワークを介して他の外部機器と接続されている場合、収縮率推定装置100の一部を構成する通信ボード107は、LAN(ローカルエリアネットワーク)、WAN(ワイドエリアネットワーク)やインターネットに接続されている。
【0098】
RAM103は、揮発性メモリの一例であり、ROM102、リムーバルディスク装置108、CD/DVD-ROM装置109、ハードディスク装置112の記録媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらの揮発性メモリや不揮発性メモリによって、収縮率推定装置100の記憶装置が構成される。
【0099】
ハードディスク装置112には、例えば、オペレーティングシステム(OS)201、プログラム群202、および、ファイル群203が記憶されている。プログラム群202に含まれるプログラムは、CPU101がオペレーティングシステム201を利用しながら実行する。また、RAM103には、CPU101に実行させるオペレーティングシステム201のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一次的に格納されるとともに、CPU101による処理に必要な各種データが格納される。
【0100】
ROM102には、BIOS(Basic Input Output System)プログラムが記憶され、ハードディスク装置112には、ブートプログラムが記憶されている。収縮率推定装置100の起動時には、ROM102に記憶されているBIOSプログラムおよびハードディスク装置112に記憶されているブートプログラムが実行され、BIOSプログラムおよびブートプログラムにより、オペレーティングシステム201が起動される。
【0101】
プログラム群202には、収縮率推定装置100の機能を実現するプログラムが記憶されており、このプログラムは、CPU101により読み出されて実行される。また、ファイル群203には、CPU101による処理の結果を示す情報、データ、信号値、変数値やパラメータがファイルの各項目として記憶されている。
【0102】
ファイルは、ハードディスク装置112やメモリなどの記録媒体に記録される。ハードディスク装置112やメモリなどの記録媒体に記録された情報、データ、信号値、変数値やパラメータは、CPU101によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・処理・編集・出力・印刷・表示に代表されるCPU101の動作に使用される。例えば、上述したCPU101の動作の間、情報、データ、信号値、変数値やパラメータは、メインメモリ、レジスタ、キャッシュメモリ、バッファメモリなどに一次的に記憶される。
【0103】
収縮率推定装置100の機能は、ROM102に記憶されたファームウェアで実現されていてもよいし、あるいは、ソフトウェアのみ、素子・デバイス・基板・配線に代表されるハードウェアのみ、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実現されていてもよい。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、ハードディスク装置112、リムーバルディスク、CD-ROM、DVD-ROMなどに代表される記録媒体に記録される。プログラムは、CPU101により読み出されて実行される。すなわち、プログラムは、コンピュータを収縮率推定装置100として機能させるものである。
【0104】
このように、収縮率推定装置100は、処理装置であるCPU101、記憶装置であるハードディスク装置112やメモリ、入力装置であるキーボード105、マウス106、通信ボード107、出力装置であるディスプレイ104、プリンタ110、通信ボード107を備えるコンピュータである。そして、収縮率推定装置100の機能は、処理装置、記憶装置、入力装置、および、出力装置を利用して実現される。
【0105】
<<機能ブロック構成>>
次に、収縮率推定装置100の機能ブロック構成について説明する。
【0106】
図10は、収縮率推定装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0107】
図10において、本実施の形態における収縮率推定装置100は、第1既知データ群入力部301と、第2既知データ群入力部302と、第1定数決定部303と、第2定数決定部304と、収縮率推定部305と、判定部306と、適合条件探索部307と、出力部308と、データ記憶部309を有している。
【0108】
第1既知データ群入力部301は、例えば、第1既知データ群を入力するように構成されている。ここで、「第1既知データ群」とは、樹脂の温度と歪み速度との組み合わせと粘度とを関連付けたデータ群であって、樹脂の温度と歪み速度と粘度がわかっているデータ群として定義される。これらの「第1既知データ群」は、第1既知データ群入力部301に入力された後、データ記憶部309に記憶される。
【0109】
第2既知データ群入力部302は、例えば、第2既知データ群を入力するように構成されている。ここで、「第2既知データ群」とは、トルク電流と押出条件との組み合わせと押出成形品の収縮率とを関連付けたデータ群であって、トルク電流と押出条件と押出成形品の収縮率がわかっているデータ群として定義される。具体的に、本実施の形態では、押出条件は、樹脂の温度と歪み速度の組み合わせから構成されていることから、「第2既知データ群」とは、トルク電流と樹脂の温度と歪み速度の組み合わせと押出成形品の収縮率とを関連付けたデータ群であって、トルク電流と樹脂の温度と歪み速度と押出成形品の収縮率がわかっているデータ群として定義される。これらの「第2既知データ群」は、第2既知データ群入力部302に入力された後、データ記憶部309に記憶される。
【0110】
次に、第1定数決定部303は、データ記憶部309に記憶されている第1既知データ群と(数式I)に基づいて、(数式I)に含まれる「温度係数α」と「粘度指数n」を決定するように構成されている。具体的に、第1定数決定部303は、例えば、
図11に示すように、第1既知データ群を教師データとして、入力を樹脂の温度と歪み速度とするとともに出力を粘度とするニューラルネットワークを学習させることにより、温度係数と粘度指数を決定するように構成されている。このとき、歪み速度は、例えば、(数式II)を使用して、ダイの出口での溶融樹脂の平均流速(v
d)と線速(v
f)とダイの出口から水槽までの距離(L)から求めることができる。なお、第1定数決定部303は、上述した機械学習を使用して温度係数と粘度指数を決定するように構成されているだけでなく、例えば、第1既知データ群に対して最小二乗法に代表される統計解析技術を適用することにより温度係数と粘度指数を決定するように構成されていてもよい。このようにして決定された温度係数と粘度指数は、データ記憶部309に記憶される。
【0111】
続いて、第2定数決定部304は、データ記憶部309に記憶されている第2既知データ群と、第1定数決定部303で決定された温度係数と粘度指数を代入した(数式VIII)に基づいて、(数式VIII)に含まれる定数A
0、定数B
0および定数Cを決定するように構成されている。具体的に、第2定数決定部304は、例えば、
図12に示すように、第2既知データ群を教師データとして、入力を押出条件(樹脂の温度と歪み速度)と「トルク電流」とするとともに出力を押出成形品の収縮率とするニューラルネットワークを学習させることにより、定数A
0、定数B
0および定数Cを決定するように構成されている。このとき、歪み速度は、例えば、(数式II)を使用して、ダイの出口での溶融樹脂の平均流速(v
d)と線速(v
f)とダイの出口から水槽までの距離(L)から求められる。
【0112】
なお、第2定数決定部304は、上述した機械学習を使用して定数A0、定数B0および定数Cを決定するように構成されているだけでなく、例えば、第2既知データ群に対して最小二乗法に代表される統計解析技術を適用することにより定数A0、定数B0および定数Cを決定するように構成されていてもよい。このようにして決定された定数A0、定数B0および定数Cは、データ記憶部309に記憶される。
【0113】
上記では、(数式VIII)に含まれる5つの定数のうち、温度係数と粘度指数とを第1既知データ群に基づく第1定数決定部303で決定し、定数A0、定数B0および定数Cを第2既知データ群に基づく第2定数決定部304で決定する構成を説明している。
【0114】
ただし、(数式VIII)に含まれる5つの定数を決定する構成としては、これに限らず、以下に示す構成によっても実現することができる。すなわち、第2既知データ群に基づいて、第2定数決定部304で(数式VIII)に含まれる5つの定数のすべてを決定する構成も考えられる。この場合、第1既知データ群に含まれる粘度自体をレオメータなどで測定する必要がなくなる利点を得ることができる。ここで、この構成によって5つの定数を決定する場合、フィッティング精度を高める観点から、最小二乗法によるフィッティングよりも非線形関数のフィッティングに優れた機械学習を使用することが望ましい。
【0115】
次に、収縮率推定部305は、押出機に備わるモータの「トルク電流」と押出機の押出条件に基づいて、押出成形品の収縮率を推定するように構成されている。具体的に、収縮率推定部305は、第1定数決定部303で決定された温度係数と粘度指数と、第2定数決定部で決定された定数A0、定数B0および定数Cとを代入した(数式VIII)に基づいて、温度と歪み速度からなる押出条件と「トルク電流」から押出成形品の収縮率を推定するように構成されている。
【0116】
続いて、判定部306は、収縮率推定部305で推定された収縮率が、予め設定されている「しきい値」以下であるか否かを判定するように構成されている。
【0117】
適合条件探索部307は、収縮率推定部305で推定された収縮率が予め設定されている「しきい値」以下ではないと判定部306で判定された場合に、(数式VIII)に含まれる押出条件(樹脂の温度と歪み速度)を変更して押出成形品の収縮率を再推定し、再推定した収縮率が「しきい値」以下となる押出条件(適合条件)を探索するように構成されている。
【0118】
出力部308は、例えば、収縮率推定部305で推定された収縮率や、適合条件探索部307で探索された押出条件を出力するように構成されている。
【0119】
以上のようにして、本実施の形態における収縮率推定装置100が構成されている。
【0120】
<収縮率推定装置の動作(収縮率推定方法)>
続いて、本実施の形態における収縮率推定装置100の動作について説明する。
【0121】
<<基本動作>>
図13および
図14は、収縮率推定装置の基本動作を説明するフローチャートである。
【0122】
図13において、まず、第1既知データ入力部301に第1既知データ群が入力されると(S101)、入力された第1既知データ群は、データ記憶部309に記憶される。
【0123】
次に、第1定数決定部303は、データ記憶部309に記憶されている第1既知データ群に基づいて、(数式I)に含まれる材料特性(粘度)に関する温度係数と粘度指数を決定する(S102)。
【0124】
一方、第2既知データ群入力部302に第2既知データ群が入力されると(S103)、入力された第2既知データ群は、データ記憶部309に記憶される。次に、第2定数決定部304は、データ記憶部309に記憶されている第2既知データ群と、第1定数決定部303で決定された温度係数と粘度指数を代入した(数式VIII)に基づいて、(数式VIII)に含まれる定数A0、定数B0および定数Cを決定する(S104)。このようにして、「トルク電流」と収縮率との関係式を取得することができる。
【0125】
図14において、収縮率推定部305は、押出条件(樹脂の温度と歪み速度)と「トルク電流」が入力されると(S201)、第1定数決定部303で決定された温度係数および粘度指数と、第2定数決定部304で決定された定数A
0、定数B
0および定数Cを代入した(数式VIII)に基づいて、押出成形品の収縮率を推定する(S202)。そして、収縮率推定部305で推定された収縮率は、出力部308から出力される。このようにして、収縮率推定装置100での基本動作が実施される。これにより、収縮率推定装置100によれば、「トルク電流」に基づいて、リアルタイムに収縮率を推定できる。
【0126】
<<応用動作>>
さらに、収縮率推定装置100では、上述した基本動作に加えて、以下に示す応用動作も実施することができる。
図15は、収縮率推定装置の応用動作を説明するフローチャートである。
図15において、上述した基本動作を実施することにより、押出成形品の収縮率が推定されると(S301)、その後、判定部306は、収縮率推定部305で推定された収縮率が予め設定された「しきい値」以下であるか否かを判定する(S302)。収縮率推定部305で推定された収縮率が「しきい値」以下である場合、収縮率が「しきい値」以下である旨が出力部308から出力される(S305)。一方、収縮率推定部305で推定された収縮率が「しきい値」以下ではない場合、適合条件探索部307は、(数式VIII)に含まれる押出条件(樹脂の温度と歪み速度)を変更して押出成形品の収縮率を再推定し、再推定した収縮率が「しきい値」以下となる押出条件(適合条件)を探索する(S303)。そして、適合条件探索部307で探索された押出条件が出力部308から出力される(S304)。このようにして、収縮率推定装置100での応用動作が実施される。これにより、収縮率推定装置100によれば、収縮率推定部305で推定された収縮率が所定の条件を満たさない場合であっても、収縮率が所定の条件を満たすための押出条件を提示できる。
【0127】
以上のようにして、収縮率推定装置100を動作させることにより、本実施の形態における収縮率推定方法が実現される。
【0128】
<変形例>
収縮率推定装置100で基本動作だけでなく応用動作も実施する場合、収縮率推定部305は、(数式VIII)に基づいて収縮率を推定するように構成されている必要がある。なぜなら、(数式VIII)には、収縮率を推定する変数として、「トルク電流」と押出条件(樹脂の温度と歪み速度)を含んでいるため、押出条件を変更して収縮率を推定することが可能となるからである。
【0129】
ここで、例えば、押出機の押出条件を固定して、この固定された押出条件のもとで押出成形品の収縮率を推定する動作だけを実施することも考えられる。つまり、収縮率推定装置100において基本動作だけを実施することも考えられる。この場合、収縮率推定部305は、(数式VIII)を簡略化した関係式に基づいて、収縮率を推定するように構成できる。なぜなら、押出条件が固定されている場合、(e-αT|dγ/dt|n)の項は定数項となるからである。この関係式は、以下に示す(数式IX)で表される。
【0130】
【0131】
ここで、
t:時間
ε:収縮率
A1:定数
τ:トルク電流
B1:定数
【0132】
この場合、第1既知データ群および第1定数決定部は不要になる。さらに、第2既知データ群は、押出条件が固定された条件で「トルク電流」が変化するデータ群を取得すればよく、データの取得が容易となる。そして、第2定数決定部304は、例えば、第2既知データ群に対して、最小二乗法を適用することにより、定数A1および定数B1を決定するように構成することができる。このように、本変形例によれば、収縮率推定装置100の構成を簡素化しながらも、「トルク電流」から押出成形品の収縮率を推定できる。
【0133】
<収縮率推定プログラム>
上述した収縮率推定装置100で実施される収縮率推定方法は、収縮率推定処理をコンピュータに実行させる収縮率推定プログラムにより実現することができる。
【0134】
例えば、
図9に示すコンピュータからなる収縮率推定装置100において、ハードディスク装置112に記憶されているプログラム群202の1つとして、本実施の形態における収縮率推定プログラムを導入することができる。そして、この収縮率推定プログラムを収縮率推定装置100であるコンピュータに実行させることにより、本実施の形態における収縮率推定方法を実現することができる。
【0135】
収縮率推定処理に関するデータを作成するための各処理をコンピュータに実行させる収縮率推定プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して頒布することができる。記録媒体には、例えば、ハードディスクやフレキシブルディスクに代表される磁気記憶媒体、CD-ROMやDVD-ROMに代表される光学記憶媒体、ROMやEEPROMなどの不揮発性メモリに代表されるハードウェアデバイスなどが含まれる。
【0136】
<実施の形態における効果>
本実施の形態における技術的思想によれば、直接的に押出成形品の収縮率を推定するのではなく、収縮率と相関関係があることを新規に見出した「トルク電流」に着目して、この「トルク電流」に基づいて間接的に収縮率を推定している。これにより、材料特性と押出条件の両方を容易に考慮して高精度に収縮率を推定できるだけでなく、「結晶化度」という測定が必要なパラメータを考慮する必要がない一方で、リアルタイムに把握可能な「トルク電流」を使用していることから、押出成形品の製造工程においてリアルタイムに導入可能な収縮率推定技術を提供することができる点で大きな技術的意義を有する。
【0137】
<押出成形品の製造方法>
例えば、これまでは、押出成形品の製造工程においてリアルタイムに導入可能な収縮率推定技術が存在しなかったことから、作業員の経験に基づいて押出条件を調整することにより収縮率を低減することが行われていた。この点に関し、本実施の形態における技術的思想によれば、作業員の経験に頼ることなく、客観的に正確な収縮率推定技術を押出成形品の製造工程(製造ライン)に導入することができる。この結果、本実施の形態によれば、樹脂材料や押出成形品(例えば、ケーブル)の廃棄量の削減および生産効率の向上を図ることができる。つまり、本実施の形態における技術的思想は、収縮率推定技術を押出成形品の製造ラインにリアルタイムに導入することを可能とする結果、押出成形品の製造歩留まりの向上できるという顕著な効果を得ることができる。そこで、以下では、本実施の形態における技術的思想を利用した押出成形品の製造工程について説明することにする。
【0138】
<<具体例1>>
例えば、具体例1では、押出機に備わるモータのトルク電流に基づいて押出成形品の収縮率をリアルタイムに監視する収縮率監視工程を含む押出成形品の製造方法を説明する。
【0139】
図16は、押出成形品の製造工程の一部を説明するフローチャートである。
【0140】
図16において、まず、押出機における押出条件の初期設定を行い(S401)、初期設定した押出条件で樹脂を混練してダイの出口から溶融樹脂を押し出す。このときの樹脂の混練は、押出機に備わるモータでスクリュを回転させることにより行われる。
【0141】
ここで、スクリュの回転異常を把握するために、モータを駆動するための「トルク電流」が常時監視されている。具体例1では、この「トルク電流」に基づいて、押出成形品の収縮率をリアルタイムに推定して、推定した押出成形品の収縮率が予め定められたしきい値の範囲内にあるか否かを監視する(S402)そして、推定した押出成形品の収縮率がしきい値の範囲である場合には、収縮率が「OK」であると判断して(S403)、押出機の稼働を継続しながら押出成形品の収縮率の監視を続ける。一方、推定した押出成形品の収縮率がしきい値の範囲から外れている場合には、収縮率が「NG」であると判断して(S403)、押出機の稼働を停止する(S404)。これにより、不良品の作り込みを防止することができる。
【0142】
<<具体例2>>
具体例2では、押出機に備わるモータのトルク電流に基づいて押出成形品の収縮率をリアルタイムに推定した結果に基づいて、押出条件を調整し、調整した押出条件で押出成形品を製造する押出成形品の製造方法について説明する。
【0143】
図17は、押出成形品の製造工程の一部を説明するフローチャートである。
【0144】
図17において、まず、押出条件の初期設定をする(S501)。次に、本実施の形態における収縮率推定技術を使用する。具体的には、例えば、「温度係数α」、「粘度指数n」、「定数A
0」、「定数B
0」および「定数C」からなる5つの定数を決定した(数式VIII)を用意して、この(数式VIII)に対して、リアルタイムに監視している「トルク電流」と初期設定された押出条件とを代入することにより、押出成形品の収縮率を推定する(S502)。このとき、上述した基本動作と応用動作が実施される。
【0145】
この結果、推定された収縮率が「しきい値」以下である場合は、初期設定された押出条件が維持される。一方、推定された収縮率がしきい値以下ではない場合、応用動作で提示された適合条件(押出条件)に条件変更する(S503)。
【0146】
そして、維持された押出条件あるいは変更された押出条件で樹脂の押出成形が行われる(S504)。その後、樹脂に対してアニール処理が行われて(S505)、所定期間経過後(1日後~2日後)、収縮率の測定が行われる(S506)。このとき、収縮率が所定値以下である場合(OK)(S507)、良品としての押出成形品が製造される。一方、収縮率が所定値以下ではない場合(NG)、このNGデータも考慮して、(数式VIII)に含まれる定数を再決定する(S508)。例えば、上述したNGデータも付け加えてニューラルネットワークを再学習させることにより、(数式VIII)に含まれる定数を再決定する。このようにして、本実施の形態における押出成形品の製造方法が実現される。
【0147】
本実施の形態における押出成形品の製造方法によれば、収縮率推定技術を製造ラインに導入してリアルタイムに押出成形品の収縮率を推定していることから、押出成形品の製造歩留まりを向上させることができる。さらに、推定した収縮率では「OK」であっても最終的に実測した収縮率が「NG」であった場合、このNGデータに基づいて、(数式VIII)に含まれる定数を再決定することにより、収縮率の推定精度を向上することができる。
【0148】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0149】
例えば、押出機に備わるモータの「トルク電流」は、モータの種類やスクリュの形状によって異なるが、基準となる押出条件(成形条件)における値を決めておけば、その相対値から押出成形品の収縮率の増減を把握することが可能である。このことから、押出機の基準条件さえ把握していれば、どのような種類の押出機にも前記実施の形態における技術的思想を適用することが可能である。ただし、フルフライトスクリュでは、スクリュの構造が単純であることから、前記実施の形態における技術的思想の適用が容易である。
【0150】
前記実施の形態における技術的思想は、プラスチックやゴムを含む幅広い種類の樹脂に適用可能であり、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂に限定されるものではない。また、前記実施の形態における技術的思想は、チューブ押出や電線押出あるいはダイ形状に関わらず幅広い押出形態に適用可能である。さらには、前記実施の形態における技術的思想を適用した押出成形品の製造方法で製造される押出成形品(製品)は、シート状、異形、ケーブル(電線)などの形状や種類を問わない。
【符号の説明】
【0151】
10 原料ペレット
11 押出機
12 クロスヘッド
13 ダイ
14 導線
15 水槽
20 溶融樹脂
100 収縮率推定装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 ディスプレイ
105 キーボード
106 マウス
107 通信ボード
108 リムーバルディスク装置
109 CD/DVD-ROM装置
110 プリンタ
111 スキャナ
112 ハードディスク装置
201 オペレーティングシステム
202 プログラム群
203 ファイル群
301 第1既知データ群入力部
302 第2既知データ群入力部
303 第1定数決定部
304 第2定数決定部
305 収縮率推定部
306 判定部
307 適合条件探索部
308 出力部
309 データ記憶部