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特許7453990肌質判定システムおよび化粧料作成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】肌質判定システムおよび化粧料作成システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
G01N33/50 Q
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021553236
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2019041739
(87)【国際公開番号】W WO2021079468
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】風間 泰規
(72)【発明者】
【氏名】北村 尚美
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直輝
(72)【発明者】
【氏名】松森 孝平
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-254127(JP,A)
【文献】国際公開第2002/069215(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0188809(US,A1)
【文献】特開2011-173810(JP,A)
【文献】特開2008-224286(JP,A)
【文献】特開2002-065616(JP,A)
【文献】特開2018-175909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0071528(US,A1)
【文献】特開2012-095825(JP,A)
【文献】特開2002-177224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌質判定用の標準化粧水を被験者の所定部位に塗布する前の前記被験者の肌質を第1の肌質として評価する第1評価部と、
前記標準化粧を前記被験者の前記所定部位に塗布した後の前記被験者の肌質を第2の肌質として評価する第2評価部と、
前記第1の肌質および前記第2の肌質の双方に基づいて、前記被験者の化粧料に対する受容性も含めた総合的な肌質として総合肌質を評価する総合評価部と、を備え、
前記第1の肌質および前記第2の肌質は、肌の水分量、皮脂量および肌の感覚に関する物性データのうちの1以上により評価され、
前記第1評価部は、前記被験者の第1の肌質を複数のタイプのいずれかに分類し、
前記第2評価部は、前記第1の肌質の分類後に、前記標準化粧水の塗布後における前記被験者の第2の肌質を複数のタイプのいずれかに分類し、
前記総合評価部は、前記第2の肌質の分類後に、前記総合肌質を評価することを特徴とする肌質判定システム。
【請求項2】
前記物性データは、肌の撮影画像の画像処理結果に基づいて判別される肌状態、肌の摩擦係数、肌を接触子でなぞったときの振動のパワースペクトル密度、肌の温度、肌の粘弾性、引っ張り応力、肌の接触部分における圧力分布のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の肌質判定システム。
【請求項3】
前記第1評価部は、前記被験者の前記第1の肌質を4つのタイプのいずれかに分類し、 前記第2評価部は、前記標準化粧水の塗布後における前記被験者の前記第2の肌質を前記4つのタイプのいずれかに分類することを特徴とする請求項1に記載の肌質判定システム。
【請求項4】
前記総合評価部は、前記第1の肌質のタイプと前記第2の肌質のタイプの組み合わせにより、前記被験者の総合肌質を複数のタイプのいずれかに分類することを特徴とする請求項1に記載の肌質判定システム。
【請求項5】
総合肌質と化粧料を対応づけた化粧料テーブルを参照し、前記被験者の総合肌質に対応する化粧料を前記被験者に提案する提案部、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の肌質判定システム。
【請求項6】
総合肌質タイプと化粧料成分を対応づけた成分テーブルを参照し、前記被験者の総合肌質に対応して複数種類の化粧料成分の配合量を特定し、前記特定した配合量に基づく化粧料の作成指示書を生成する提案部、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の肌質判定システム。
【請求項7】
前記被験者の性別、起床時刻、就寝時刻、睡眠時間、食生活、生理周期および病歴のうちの1以上を含む情報として、ユーザ属性を取得するユーザ属性取得部と、
総合肌質およびユーザ属性の組み合わせに化粧料を対応づけた化粧料テーブルを参照し、前記被験者の総合肌質およびユーザ属性の組み合わせに対応する化粧料を前記被験者に提案する提案部と、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の肌質判定システム。
【請求項8】
前記被験者の居住国、化粧水の使用時間帯および季節のうちの1以上を含む情報として、環境属性を取得する環境属性取得部と、
総合肌質および環境属性の組み合わせに化粧料を対応づけた化粧料テーブルを参照し、前記被験者の総合肌質および環境属性の組み合わせに対応する化粧料を前記被験者に提案する提案部、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の肌質判定システム。
【請求項9】
総合肌質に対して、複数種類の化粧料の組み合わせである化粧料セットを対応づけたセットテーブルを参照し、前記被験者の総合肌質に対応する化粧料セットを前記被験者に提案する提案部、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の肌質判定システム。
【請求項10】
総合肌質に対応づけられる複数の第1種化粧料のうち前記被験者に選択された第1種化粧料とともに、前記選択された第1種化粧料にあらかじめ対応づけられる第2種化粧料を前記被験者に提案する提案部、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の肌質判定システム。
【請求項11】
総合肌質と被験者の化粧料嗜好の組み合わせに対して化粧料を対応づけた化粧料テーブルを参照し、前記被験者の総合肌質および化粧料嗜好の組み合わせに対応する化粧料を前記被験者に提案する提案部、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の肌質判定システム。
【請求項12】
前記提案部は、化粧水、乳液、ファンデーション、美容液、クリームのうちの1種以上を提案することを特徴とする請求項5から11のいずれかに記載の肌質判定システム。
【請求項13】
肌質判定装置と化粧料調合装置を含み、
前記肌質判定装置は、
肌質判定用の標準化粧水を被験者の所定部位に塗布する前の前記被験者の肌質を第1の肌質として評価する第1評価部と、
前記標準化粧水を前記被験者の前記所定部位に塗布した後の前記被験者の肌質を第2の肌質として評価する第2評価部と、
前記第1の肌質および前記第2の肌質の双方に基づいて、前記被験者の化粧料に対する受容性も含めた総合的な肌質として総合肌質を評価する総合評価部と、
前記被験者のユーザIDとともに総合肌質を示す肌質情報を送信する送信部と、を備え、
前記第1の肌質および前記第2の肌質は、肌の水分量、皮脂量および肌の感覚に関する物性データのうちの1以上により評価され、
前記第1評価部は、前記被験者の第1の肌質を複数のタイプのいずれかに分類し、
前記第2評価部は、前記第1の肌質の分類後に、前記標準化粧水の塗布後における前記被験者の第2の肌質を複数のタイプのいずれかに分類し、
前記総合評価部は、前記第2の肌質の分類後に、前記総合肌質を評価し、
前記化粧料調合装置は、
前記被験者のユーザIDと肌質情報を受信する受信部と、
前記被験者の総合肌質に対応して複数種類の化粧料成分の配合量を特定し、前記特定した配合量に基づく化粧料の作成する化粧料作成部と、
前記被験者のユーザIDと前記作成を指示した化粧料のIDを対応づけて登録する化粧料管理部と、を備えることを特徴とする化粧料作成システム。
【請求項14】
肌質判定用の標準化粧水を被験者の所定部位に塗布する前の前記被験者の肌質を第1の肌質として評価する機能と、
前記標準化粧水を前記被験者の前記所定部位に塗布した後の前記被験者の肌質を第2の肌質として評価する機能と、
前記第1の肌質および前記第2の肌質の双方に基づいて、前記被験者の化粧料に対する受容性も含めた総合的な肌質として総合肌質を評価する機能と、をコンピュータに発揮させ、
前記第1の肌質および前記第2の肌質は、肌の水分量、皮脂量および肌の感覚に関する物性データのうちの1以上により評価され、
前記被験者の第1の肌質を複数のタイプのいずれかに分類し、
前記第1の肌質の分類後に、前記標準化粧水の塗布後における前記被験者の第2の肌質を複数のタイプのいずれかに分類し、
前記第2の肌質の分類後に、前記総合肌質を評価することを特徴とする肌質判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌質を診断する技術、に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧は、自己評価を高め、社会的積極性を高めるといわれる。20世紀以降、個人の好みやニーズに応じて、化粧水、乳液、美容液、ファンデーション、口紅などさまざまな化粧料(化粧品)が開発されてきた。また、同一カテゴリの化粧料であっても多種多様な商品が提供されている。たとえば、化粧水の場合、一般化粧水、柔軟化粧水、収斂化粧水、美白化粧水など、一口に化粧水といっても機能や目的に応じて配合成分はさまざまである。
【0003】
女性は、実効感(肌がよくなった感じ)や触り心地など自分の感性に基づいて化粧料を選ぶことが多い。また、化粧品店では、店員が専用装置によって女性の肌質を診断し、肌質に合った化粧料を提案することもある。たとえば、水分量の少ない肌質の女性には、セラミドやアミノ酸などの保湿効果の高い化粧水が効果的であるといわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-9489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、肌質診断に基づいて薦められた化粧料であっても、女性本人はその化粧料によって自分の肌が良くなっていると感じにくい場合もあり、人間の肌質とその実感の仕方は単純なものではない。
【0006】
本発明は、上記課題認識に基づいて完成された発明であり、その主たる目的は、化粧料の受容性を考慮した肌質診断方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様における肌質判定システムは、肌質判定用の標準化粧料を被験者の所定部位に塗布する前の被験者の肌質を第1の肌質として評価する第1評価部と、標準化粧料を被験者の所定部位に塗布した後の被験者の肌質を第2の肌質として評価する第2評価部と、第1の肌質および第2の肌質の双方に基づいて、被験者の化粧料に対する受容性も含めた総合的な肌質として総合肌質を評価する総合評価部と、を備える。
【0008】
本発明のある態様における化粧料作成システムは、肌質判定装置と化粧料調合装置を含む。
肌質判定装置は、肌質判定用の標準化粧料を被験者の所定部位に塗布する前の被験者の肌質を第1の肌質として評価する第1評価部と、標準化粧料を被験者の所定部位に塗布した後の被験者の肌質を第2の肌質として評価する第2評価部と、第1の肌質および第2の肌質の双方に基づいて、被験者の化粧料に対する受容性も含めた総合的な肌質として総合肌質を評価する総合評価部と、被験者のユーザIDとともに総合肌質を示す肌質情報を送信する送信部と、を備える。
化粧料調合装置は、被験者のユーザIDと肌質情報を受信する受信部と、被験者の総合肌質に対応して複数種類の化粧料成分の配合量を判定し、特定した配合量に基づく化粧料の作成する化粧料作成部と、被験者のユーザIDと作成を指示した化粧料のIDを対応づけて登録する化粧料管理部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、化粧料の受容性を考慮した肌質の診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】肌質の分類を示す模式図である。
図2】第1実施形態における肌質判定システムのハードウェア構成図である。
図3】肌質判定システムの機能ブロック図である。
図4】本実施形態における肌質分類を示す模式図である。
図5】例1における化粧料テーブルのデータ構造図である。
図6】肌質判定の処理過程を示すシーケンス図である。
図7】診断提案画面の画面図である。
図8】例2におけるセットテーブルのデータ構造図である。
図9】例3における化粧料テーブルのデータ構造図である。
図10】例4における化粧料テーブルのデータ構造図である。
図11】例5における成分テーブルのデータ構造図である。
図12】第2実施形態における化粧料作成システムのハードウェア構成図である。
図13】化粧料調合装置の機能ブロック図である。
図14】化粧水管理テーブルのデータ構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、肌質の分類を示す模式図である。
以下においては、「化粧料」の一例として、「化粧水」を対象として説明する。また、「肌質」とは、色味やキメの細かさなどさまざまな評価項目に基づいて定義されてもよいが、本実施形態においては「水分量(含水量)」と「皮脂量」の二軸評価に基づくものとして説明する。
【0012】
皮膚最外層の角層は、角層細胞と細胞間を埋める角層細胞間脂質によって緻密な組織となり、バリア機能や保湿機能を発揮する。化粧水は、角層に水分を補給するとともに、これを柔らかくし、次に使うスキンケアアイテムのなじみをよくする。乳液は細胞間脂質を整え、保湿バリア機能を保ち、なめらかな角層に導く。乳液を塗布した後、下地やファンデーションなどで美観を整える。
【0013】
水分量と皮脂量に基づいて、人間の肌質は以下の4種類に分類できる。
(1)普通肌(タイプT1):水分量が多く皮脂量が少ないバランスがよい肌。キメが細かく、やわらかく、しっとりとした理想的な肌である。
(2)脂性肌(タイプT2):水分量も皮脂量も多い肌。うるおいはあるがべたつきやすい。皮脂分泌が過剰であり、ニキビなどのトラブルが起こりやすい。
(3)乾燥肌(タイプT3):水分量も皮脂量も少ない肌。うるおいが少なく、カサカサしやすい。
(4)混合肌(タイプT4):水分量は少ないが皮脂量は多い肌。脂っぽいのにカサつく肌であり、日本人に一番多いともいわれる。
【0014】
たとえば、乾燥肌(タイプT3)の場合、一般的には、セラミドやアミノ酸などの保湿成分を多く含む化粧水が適切であると考えられる。しかし、乾燥肌(タイプT3)のユーザであっても、化粧水が浸透しやすい肌質の人もいれば浸透しにくい肌質の人もいる。
【0015】
本実施形態においては、ユーザに標準化粧水(標準化粧料)を頬などの所定部位に塗布してもらい、塗布前と塗布後それぞれの肌質を評価する。標準化粧水は、アルコールと水だけを含むシンプルな化粧水であってもよい。本実施形態においては、標準化粧水塗布後の肌質として、乾燥肌(タイプT3)は、更に、タイプT3A~T3Dの4種類のサブタイプに分類される。タイプT3Aは、標準化粧水の塗布後に皮脂量が多くなっており、乾燥肌だけれども化粧水でべとつきやすい肌質である。このため、タイプT3Aのユーザに対しては、油性成分の少ないさっぱりとした化粧水の方が効果的であると考えられる。タイプT3Cは、標準化粧水によって水分量が大幅に改善している。タイプT3Cの場合、標準化粧水のようなシンプルな化粧水が適切であると考えられる。このように本実施形態においては、化粧水をつける前の素肌の肌質(タイプT1~T4)だけではなく、標準化粧水による肌質の変化、いいかえれば、標準化粧水の受容性や反応性も考慮して肌質を判定する。ここでいう「受容性」とは、化粧水等が人の肌になじむこと、あるいは、なじんでいると被験者本人が実感できることの程度、いいかえれば、肌質と化粧水等の適合性に関する客観的評価と主観的評価の双方または一方を意味する。なお、乾燥肌以外の他の肌質についても同様にしてサブタイプ分類を行う。
【0016】
以下においては、ユーザの肌質を診断し、診断結果に基づいて最適な化粧水(以下、「推薦化粧水(推薦化粧料)」とよぶ)を提案する方法を第1実施形態、化粧水を提案するだけでなく実際に診断結果に基づく推薦化粧水を作成する方法を第2実施形態として説明する。また、第1実施形態および第2実施形態を特に区別しないときには、単に「本実施形態」とよぶ。
【0017】
[第1実施形態]
第1実施形態においては、ユーザはユーザ端末100(肌質判定装置)において肌質を診断し、診断結果をサーバ200に送信する。サーバ200は、診断結果に基づいて推薦化粧料を選択し、これをユーザ端末100に通知する。
【0018】
図2は、第1実施形態における肌質判定システム104のハードウェア構成図である。
肌質判定システム104は、サーバ200とユーザ端末100を含む。肌質判定システム104においては、サーバ200に対して、複数のユーザ端末100a、ユーザ端末100b・・・ユーザ端末100nがインターネット102を介して接続される。
【0019】
本実施形態におけるユーザ端末100は、肌質の測定デバイス(不図示)と接続され、および専用ソフトウェアをインストールされたスマートフォンを想定している。ユーザ端末100は、タブレット端末やラップトップPCであってもよい。また、ユーザ端末100は、化粧品店において設置される肌質判定のための専用装置であってもよい。ユーザ端末100とインターネット102は無線接続されるが、有線接続されてもよい。
【0020】
ユーザは、あらかじめサーバ200に対してユーザ登録をしておく。ユーザは、ユーザIDにより一意に識別される。サーバ200は、ユーザIDと、ユーザ属性(後述)、環境属性(後述)などのユーザ情報を対応づけて管理する。サーバ200は決済機能を備えてもよい。ユーザは、推薦化粧料の購入をユーザ端末100からサーバ200に指示し、サーバ200はメーカーに推薦化粧料を発注し、銀行システムにアクセスして決済を実行してもよい。
【0021】
ユーザ端末100に接続される測定デバイスは、肌の水分量と皮脂量を測定する既知のデバイスであればよい。ユーザ端末100は、肌の撮像画像を画像処理することで肌質を判定してもよい。このほかにも、測定デバイスは肌の摩擦係数を計測してもよい。摩擦係数のほかには、肌を接触子でなぞったときの振動、肌の温度等を計測してもよい。振動計測に際しては加速度センサを用いてもよい。たとえば、肌の「滑らかさ」や「べたつき」は、肌を接触子でなぞったときの振動、肌の摩擦係数により指標化できる。また、肌の「柔らかさ」や「ハリ」は、肌の粘弾性、引張応力、接触部(接触範囲)の圧力分布により指標化できる。このほかにも、肌の温度も触覚を評価する上で効果的なパラメータとなる。このように、「肌の触覚に関する物性データ」を測定することにより、肌質を定量的に評価できる。ここでいう「肌の触覚に関わる物性データ」とは、肌触りを定義する所定の項目(「滑らかさ」「べたつき」など)を定量的評価するための測定値(肌を接触子でなぞったときの振動のパワースペクトル密度、摩擦係数など)であればよい。カウンセラーあるいはユーザ本人による主観的評価により肌のうるおいとべたつき感をそれぞれ5段階評価してもよい。触覚に関する物性データについても同様に主観的評価をしてもよい。あるいは、化粧水塗布前後の外観をカウンセラーまたはユーザ本人が主観的評価してもよい。このように、肌質の測定方法自体は既知技術の応用により可能である。
【0022】
摩擦感などの触覚に関する評価に際しては、ユーザ本人が実際に自分の肌を触って感じた感覚を数値表現してもよい。たとえば、「滑らかさ」について5段階評価をしてもよい。ユーザ本人ではなくカウンセラーがユーザ(被験者)の肌を触った感覚を数値表現してもよい。人の肌に触り慣れた専門家が評価した場合には、ユーザ本人よりも高い精度で客観的な判断がなされやすい。また、上述したようにさまざまなセンサにより摩擦係数等を測定することで触覚評価をしてもよい。この場合には、たとえば、「摩擦係数(測定値)」の範囲と「滑らかさ(評価項目)」の相関性をあらかじめ調査しておくことにより、測定値から肌質の触覚的評価を行ってもよい。
【0023】
図3は、肌質判定システム104の機能ブロック図である。
肌質判定システム104(ユーザ端末100とサーバ200)の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
図13に示す化粧料作成システム300の機能ブロックについても同様である。
【0024】
(ユーザ端末100)
ユーザ端末100は、ユーザインタフェース処理部110、肌測定部112、通信部114、データ処理部116およびデータ格納部118を含む。
ユーザインタフェース処理部110は、タッチパネルを介してユーザからの操作を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。肌測定部112は、ユーザ端末100に接続される測定デバイスにより、肌の水分量および皮脂量を測定する。測定デバイスは、肌測定部112の機能の一部としてユーザ端末100に搭載されてもよい。通信部114は、インターネット102を介してサーバ200等との通信処理を担当する。データ格納部118は測定プログラム等の各種データを格納する。データ格納部118は、ユーザインタフェース処理部110、肌測定部112および通信部114により取得されたデータ、データ格納部118に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部116は、ユーザインタフェース処理部110、肌測定部112、通信部114およびデータ格納部118のインタフェースとしても機能する。
【0025】
ユーザインタフェース処理部110は、入力部120と出力部122を含む。
入力部120は、ユーザからの各種入力を受け付ける。出力部122は、音声および画像等の各種情報を出力する。
【0026】
入力部120は、ユーザ属性取得部124と環境属性取得部126を含む。
ユーザ属性取得部124は、ユーザからの入力により、性別、年齢、生活習慣(起床時刻、就寝時刻、睡眠時間、食生活など)、生理周期、病歴(たとえば、アレルギーの有無)など「ユーザ属性」を示す情報を取得する。ここでいう「ユーザ属性」とは、ユーザの生活習慣および身体的・心理的傾向を示す情報であればよい。環境属性取得部126は、ユーザからの入力により、居住国、季節、化粧水の使用時間帯など「環境属性」を示す情報を取得する。ここでいう「環境属性」とは、ユーザの生活環境および化粧水の使用環境を示す情報であればよい。
【0027】
通信部114は、サーバ200等の外部装置にデータを送信する送信部130と、データを受信する受信部132を含む。
【0028】
データ処理部116は、第1評価部140、第2評価部142および総合評価部144を含む。
第1評価部140は、標準化粧水を塗布する前の肌質を「第1肌質」として評価する。具体的には、第1評価部140は、ユーザの肌質を図1に関連して説明したいずれかのタイプに分類する。第1肌質は、ユーザの素肌の基本的性質を示す。第2評価部142は、標準化粧水を塗布した後の肌質を「第2肌質」として評価する。具体的には、第2評価部142は、図1に関連して説明したようにユーザの肌質をサブカテゴリに分類する。第2肌質は、標準化粧水に対する受容性や反応性(改善性)を示す。総合評価部144は、第1肌質および第2肌質に基づいて、ユーザの「総合肌質」を判定する。
【0029】
(サーバ200)
サーバ200は、通信部202、データ処理部204およびデータ格納部206を含む。
通信部202は、インターネット102を介してユーザ端末100等との通信処理を担当する。データ格納部206はプログラムのほか各種データを格納する。データ処理部204は、通信部202により取得されたデータ、データ格納部206に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部204は、通信部202およびデータ格納部206のインタフェースとしても機能する。
【0030】
通信部202は、ユーザ端末100等の外部装置に対してデータを送信する送信部210と、データを受信する受信部212を含む。
【0031】
データ処理部204は、提案部220を含む。提案部220は、ユーザ端末100の総合評価部144による総合肌質の判定結果等に基づいて、後述の方法により推薦化粧料を選択する。
【0032】
図4は、本実施形態における肌質分類を示す模式図である。
ユーザは、標準化粧水の塗布前に肌の水分量等を測定する。第1評価部140は測定結果に基づいて第1肌質を判定する(以下、「第1評価」とよぶ)。本実施形態においては、ユーザはタイプT1~T4の4種類の肌質のいずれかに分類される。次に、ユーザは標準化粧水を頬に塗布し測定デバイスにより肌の水分量等を再測定する。第2評価部142は測定結果に基づいて第2肌質を判定する(以下、「第2評価」とよぶ)。
【0033】
たとえば、タイプT1(普通肌)のユーザは、標準化粧水の受容性と反応性に基づいてタイプT1A~T1Dのいずれかに細かく分類される。本実施形態においては素肌だけではなく、標準化粧水の塗布後の肌についても測定することにより、ユーザの肌質をきめ細かく分類する。
【0034】
(例1:化粧水の提案)
図5は、例1における化粧料テーブル250のデータ構造図である。
化粧料テーブル250は、サーバ200のデータ格納部206に格納される。ユーザ端末100は、総合肌質(タイプ)を示す肌質情報のほか、ユーザ属性と環境属性もサーバ200に通知し、サーバ200の提案部220はこれらの情報に基づいて化粧料テーブル250を参照することにより推薦化粧水を選択する。たとえば、タイプT1A、ユーザ属性U1、環境属性E1のユーザに対しては、提案部220は化粧水ID=F1の化粧水(以下、「化粧水(F1)」のように表記する)を推薦化粧水として選択し、これをユーザに提案する。
【0035】
一例として、ユーザ属性U1は10~19歳、U2は20~39歳、U3は40歳以上の年齢層を示すとしてもよい。また、環境属性はユーザの居住地の気候帯を示すとしてもよい。たとえば、環境属性E1は熱帯または亜熱帯、E2は温帯、E3は寒帯または亜寒帯であるとする。この場合、たとえば、温帯(E2)に居住する25歳(U2)のタイプT1Aのユーザに対しては、提案部220は化粧水(F5)を推薦化粧水として選択する。
【0036】
東南アジアなどの温度の高い地域では清涼成分(メントール、ユーカリ油など)を含む化粧水が好まれるかもしれない。一方、欧州のように乾燥しやすい地域では保湿成分(グリセリン、ヒアルロン酸ナトリウムなど)を多く含む化粧水が適切かもしれない。また、年齢層によって、化粧水のブランドも異なる。このように、総合肌質だけでなく、ユーザ属性および環境属性を考慮することにより、ユーザに対してより適切で効果が高い推薦化粧水を選択できる。
【0037】
化粧料テーブル250においては、総合肌質(肌タイプ)とユーザ属性、環境属性の組み合わせに対して複数の推薦化粧水を対応づけてもよい。たとえば、夏(環境属性)において、男性(ユーザ属性)のタイプT2Bのユーザに対して、推薦化粧水(F1)および推薦化粧水(F2)を対応づけてもよい。提案部220は、このユーザに対して推薦化粧水(F1)および推薦化粧水(F2)の双方を提案してもよい。ユーザは、2つの推薦化粧水からいずれかを購入対象として選択すればよい。
【0038】
図6は、肌質判定の処理過程を示すシーケンス図である。
ユーザは、あらかじめユーザ属性および環境属性をユーザ端末100に入力しておく。また、送信部130はユーザ属性および環境属性が新規入力または更新入力されるごとにユーザIDとともにこれらの情報をサーバ200に送信し、サーバ200のデータ処理部204はユーザIDとユーザ属性および環境属性を対応づけてデータ格納部206に登録する。
【0039】
以上の初期設定を前提として、ユーザは、まず、標準化粧水を塗布する前の第1肌質を測定する(S10)。肌測定部112は、ユーザの肌の水分量と皮脂量を測定し、第1評価部140は第1肌質を判定する。ユーザは、次に、標準化粧水を塗布したあとの第2肌質を測定する(S12)。肌測定部112はユーザの肌の水分量と皮脂量を再度測定し、第2評価部142は標準化粧水の受容性・反応性を示す第2肌質を判定する(S12)。
【0040】
総合評価部144は、第1肌質および第2肌質に基づいてユーザの肌質を分類し、総合肌質を評価する(S14)。通信部114は、総合肌質(肌質のタイプ)を示す肌質情報をユーザIDとともにサーバ200に送信する(S16)。
【0041】
サーバ200の提案部220は、化粧料テーブル250を参照し、肌質情報等に適合する推薦化粧水を選択する(S18)。サーバ200の送信部210は、推薦化粧水を指定する提案情報をユーザ端末100に送信する(S20)。提案情報には、推薦化粧水の画像、機能、メーカー、価格などの情報が含まれる。サーバ200のデータ格納部206は、あらかじめ化粧水IDと化粧水に関連する各種情報を対応づけて記憶している。ユーザ端末100の出力部122は、総合肌質および推薦化粧水をユーザに提示する(S24)。
【0042】
図7は、診断提案画面260の画面図である。
ユーザ端末100の出力部122は、サーバ200から提案情報を受信したとき診断提案画面260を表示させる。乾燥肌でありながら標準化粧水をしっかりと受容しやすいユーザ(タイプT3C:図1参照)について、診断提案画面260では「オルレル」という名前の化粧水を推薦化粧水として提案されている。ユーザは、2回の肌質測定をすることで、肌質診断だけではなく、サーバ200から推奨化粧水の提案を受けることができる。
【0043】
サーバ200は、ユーザの素肌の基本的性質としての第1肌質だけでなく、標準化粧水の受容性や反応性、親和性を示す第2肌質も考慮した上で、推薦化粧水を提案するため、ユーザは多種多様の化粧水の中から自分にとって最適な化粧水を簡単に見つけ出すことができる。また、ユーザは、推薦化粧水は自分の肌質に基づいて提案されるため、推薦化粧水は自分に最適な、自分のために選び抜かれた化粧水であると確信しやすい。このような信頼感も、ユーザの推薦化粧水に対する満足度を高めることに寄与すると考えられ、ひいては、自己評価を高めることで社会的積極性を高めるという化粧本来の目的にも貢献すると考えられる。
【0044】
(例2:化粧料セットの提案)
以下、例1を基本としつつさまざまな応用例について説明する。例2においては、化粧水だけでなく乳液もまとめて提案する。
【0045】
図8は、例2におけるセットテーブル252のデータ構造図である。
セットテーブル252は、サーバ200のデータ格納部206に格納される。提案部220は、化粧水だけでなく、乳液やファンデーションなど複数種類の化粧料の組み合わせ(以下、「化粧料セット」とよぶ)をまとめて提案してもよい。セットテーブル252においては、肌タイプ、ユーザ属性および環境属性の組み合わせに対して、化粧水および乳液の組み合わせである化粧料セットがあらかじめ対応づけられる。
【0046】
たとえば、タイプT1A、ユーザ属性U1、環境属性E1のユーザに対しては、提案部220は化粧水(F1)と乳液(H1)を選択し、これらをユーザに提案する。化粧料セットとして複数種類の化粧料を提案すれば、ユーザは自分に最適な化粧料の組み合わせをまとめて知ることができる。スタイリストが自分に合った服をコーディネイトしてくれるのと同じように、ユーザは自分の肌質にあった化粧料セットをコーディネイトしてもらうことができる。
【0047】
(例3:化粧水に合った乳液の提案)
例3においては、ユーザが選んだ化粧料に基づいて、別種の化粧料を提案する。
【0048】
図9は、例3における化粧料テーブル254のデータ構造図である。
化粧料テーブル254は、サーバ200のデータ格納部206に格納される。たとえば、あるユーザに対して化粧水(F3)が適切であるとしても、アレルギーなどの身体的理由によりこのユーザが化粧水(F3)を利用できない場合がある。あるいは、ユーザは、化粧水(F3)よりも化粧水(F2)に強い愛着をもっているが、肌質診断を踏まえて化粧料を選びたいとも思う場合もある。例3においては、ユーザが自ら選んだ化粧水(第1種化粧料)を前提とした上で、最適な乳液(第2種化粧料)を提案する。
【0049】
たとえば、ユーザ属性U1、環境属性E1、タイプT1Aのユーザは、化粧水(F1)を使いたいとする。この場合、提案部220は、第2種化粧料として乳液(H1)を推薦化粧料として選択し、これを提案する。乳液(H1)は、総合肌質、ユーザ属性および環境属性に加えてユーザが選んだ化粧水(F1)も考慮に入れた上での推薦化粧料である。同様にして、ユーザ属性U1、環境属性E1、タイプT1Aのユーザが化粧水(F3)を選ぶときには、提案部220は乳液(H3)を推薦化粧料として選択し、これを提案する。
【0050】
例3の場合、ユーザ端末100の入力部120は、ユーザ属性および環境属性に加えて、ユーザが使いたい化粧水(第1種化粧料)の指定も受け付ける。送信部130は、肌質情報の送信に際して、ユーザが指定した化粧水の化粧水IDもサーバ200に送信する。サーバ200は、ユーザが指定した化粧水IDも含めて化粧料テーブル254を参照し、ユーザに推薦すべき乳液を選択する。
【0051】
あるいは、提案部220は、総合肌質、ユーザ属性および環境属性に基づいて、複数の推薦化粧水を提案してもよい。たとえば、タイプT1A、ユーザ属性U1、環境属性E1のユーザに対して、サーバ200は化粧水(F1)、化粧水(F3)および化粧水(F4)を選択可能に提案してもよい。ユーザが化粧水(F1)を選択したとき、ユーザ端末100の送信部130は化粧水ID=F1をサーバ200に通知する。このとき、提案部220は化粧料テーブル254を参照し、化粧水(F1)に対応づけられる乳液(H1)を提案してもよい。
【0052】
提案部220は、保湿が必要なタイプのユーザにより保湿成分の少ない化粧水が選ばれたときには、特に保湿性の高い乳液を提案してもよい。ユーザは、自分の化粧水に対する好みも踏まえて、乳液など他の化粧料を提案してもらうことにより、より満足度の高い提案を受けることができる。なお、化粧水の好みを考慮した乳液の提案に限らず、乳液の好みを考慮した化粧水の提案、あるいは、化粧水と乳液それぞれに対する好みを考慮したファンデーションの提案など、さまざまな組み合わせが考えられる。
【0053】
(例4:好みに合った化粧水の提案)
例4においては、ユーザの嗜好も考慮して化粧水を提案する。
【0054】
図10は、例4における化粧料テーブル256のデータ構造図である。
化粧料テーブル256は、サーバ200のデータ格納部206に格納される。一般的には普通肌(タイプT3)が理想と考えられている。とはいえ、ユーザは、うるおいがたっぷり欲しい、べたついてもいいのでうるおいが長続きして欲しい、美白にこだわりたい、天然素材のものがいい、高額な化粧水は敬遠したい、アルカリ性化粧水は避けたい、などさまざまな嗜好(要望)をもっていることも多い。例4においては、ユーザは、嗜好K1、K2、K3のいずれかを選択して、これを100に入力する。たとえば、嗜好K1は「べたつきたくない」、嗜好K2は「清涼さが欲しい」、嗜好K3は「制汗重視」であるとする。送信部130は、ユーザが選択した嗜好IDをサーバ200に通知する。提案部220は、化粧料テーブル256を参照し、ユーザの嗜好も踏まえて推薦化粧水を選択する。
【0055】
たとえば、タイプT1A、ユーザ属性U1、環境属性E1のユーザが「清涼さが欲しい(K2)」という嗜好を示しているときには、提案部220は清涼成分を比較的多く含む化粧水(F4)を提案する。
【0056】
(例5:オリジナル化粧水の提案)。
現在、化粧水に含まれる配合成分(化粧料成分)を調整することでオリジナルな化粧水(以下、「パーソナル化粧水(パーソナル化粧料)」とよぶ)を作成することも可能である。例5においては、ユーザの肌質を考慮したパーソナル化粧水の作成方法を提案する。
【0057】
図11は、例5における成分テーブル258のデータ構造図である。
成分テーブル258は、サーバ200のデータ格納部206に格納される。化粧水には、水分とアルコールのほか、保湿成分、乳化剤、香料、防腐剤などのさまざまな成分が配合される。保湿成分としては、アミノ酸やヒアルロン酸、コラーゲンなどさまざまなものがある。また、アルコール刺激に敏感な人のためにノンアルコールの化粧水もある。アルブチンなどの美白成分を含むものもあれば、アロエなどの自然成分、クエン酸やレモン水などの収斂成分、メントールなどの清涼成分など、化粧水に含まれる成分とその配合量はその機能性に応じてさまざまである。
【0058】
例5においては、ユーザの総合肌質に基づいて、提案部220はパーソナル化粧水に含まれるべき成分の配合量を決定する。たとえば、タイプT1A、ユーザ属性U1、環境属性E1のユーザに対して、提案部220は「P1成分を0.1(%)」「P2成分を0.3(%)」等含む化粧水を選択する。提案部220は、このような配合を記載した作成指示書を生成し、ユーザ端末100に送信する。ユーザ端末100は作成指示書を受信し、ユーザはパーソナル化粧水をつくることのできる化粧品店に作成指示書を提示する。化粧品店は、処方箋薬局のように、作成指示書にしたがってパーソナル化粧水を作成する。
【0059】
[第2実施形態]
第2実施形態においては、ユーザはユーザ端末100において肌質を診断し、診断結果を化粧料調合装置300に送信する。化粧料調合装置300は、診断結果にしたがって化粧水の配合成分を第1実施形態の例5と同様の方法により決定し、パーソナル化粧水を生成する。化粧料調合装置300は、化粧品メーカーの直営店などに設置されることを想定した化粧水の製造装置である。
【0060】
図12は、第2実施形態における化粧料作成システム270のハードウェア構成図である。
化粧料作成システム270は、化粧料調合装置300とユーザ端末100を含む。化粧料作成システム270においては、化粧料調合装置300に対して、複数のユーザ端末100がインターネット102を介して接続される。第1実施形態のサーバ200は推薦化粧水(推薦化粧料)を提案する装置であるが、第2実施形態の化粧料調合装置300はパーソナル化粧水(パーソナル化粧料)を実際に生成する点において相違する。
【0061】
図13は、化粧料調合装置300の機能ブロック図である。
化粧料調合装置300は、通信部310、データ処理部312、データ格納部314および駆動機構316を含む。
通信部310は、インターネット102を介してユーザ端末100等との通信処理を担当する。駆動機構316は、データ処理部312からの指示にしたがって化粧水成分を配合することによりパーソナル化粧水を生成する。データ格納部314はプログラムのほか各種データを格納する。データ処理部312は、通信部310により取得されたデータ、データ格納部314に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部312は、通信部310、駆動機構316およびデータ格納部314のインタフェースとしても機能する。
【0062】
通信部310は、ユーザ端末100等の外部装置に対してデータを送信する送信部320と、データを受信する受信部322を含む。
【0063】
データ処理部312は、化粧料作成部324と化粧料管理部326を含む。化粧料作成部324は、総合肌質の判定結果等に基づいて、図11に関連して説明したのと同様の方法によりパーソナル化粧水における化粧水成分の配合量を決定し、作成指示書を生成する。データ格納部314には成分テーブル258(図11参照)が格納される。化粧料管理部326は、ユーザIDとパーソナル化粧水の化粧水IDを対応づけて管理する。
【0064】
図14は、化粧水管理テーブル280のデータ構造図である。
化粧水管理テーブル280は、化粧料調合装置300のデータ格納部314に含まれる。ユーザは、第1実施形態と同様の方法により、ユーザ端末100において肌質を測定する。ユーザ端末100の総合評価部144は、ユーザの総合肌質を判定し、送信部130はユーザ属性および環境属性のほか、肌質情報をユーザIDとともに化粧料調合装置300に送信する。化粧料調合装置300は、ユーザIDとユーザ属性および環境属性を対応づけておく。化粧料調合装置300の化粧料作成部324は、データ格納部118に格納される成分テーブル258を参照し、パーソナル化粧水の化粧水成分の配合量を決め、作成指示書を生成する。パーソナル化粧水には化粧水IDが付与される。駆動機構316は、作成指示書にしたがって順次、パーソナル化粧水を作成する。
【0065】
化粧料管理部326は、化粧水IDとユーザIDを対応づけて化粧水管理テーブル280に登録する。化粧料作成部324は、作成指示書を駆動機構316に順次送信し、駆動機構316は作成指示書にしたがってパーソナル化粧水を生成する。化粧水管理テーブル280においては、ユーザ(P01)のパーソナル化粧水(F24)は2009年7月2日に作成済みであり、ユーザ(P01)による受取りを待っている状態にある。化粧料管理部326は、パーソナル化粧水の作成が完了したとき、化粧水管理テーブル280に作成日時を登録する。ユーザ(P01)が化粧水(F24)を受け取ったとき、化粧料管理部326は化粧水管理テーブル280から該当レコードを削除する。
【0066】
ユーザ(P03)のパーソナル化粧水(F44)は作成中である。化粧料管理部326は、駆動機構316によりパーソナル化粧水が作成開始されたとき、化粧水管理テーブル280に「作成中」と登録する。ユーザ(P05)のパーソナル化粧水(F37)は待機中である。これは、化粧料作成部324が作成指示書を送信したものの、駆動機構316が順番待ちのため化粧水の作成を開始していないことを意味する。
【0067】
第2実施形態においては、ユーザはユーザ端末100により肌質測定を行い、肌質情報を化粧料調合装置300に送信しておく。化粧料調合装置300は多数のユーザのリクエストに応じて順次、パーソナル化粧水を生成する。また、化粧料管理部326はユーザIDと化粧水IDを対応づけて化粧水管理テーブル280に登録しておく。ユーザは、化粧料調合装置300が設置されている店舗に立ち寄り、生成されたパーソナル化粧水を受け取る。
【0068】
以上、第1実施形態に基づいて肌質判定システム104、第2実施形態に基づいて化粧料作成システム270を説明した。
多くの女性は、自分に合った化粧料、特に、自分の魅力を引き出してくれる自分のための化粧料を求めている。素肌の内部状態(含水量、皮脂量など)、外観(キメやシワ、色など)、触覚(摩擦係数や振動などにともなう、滑らかさやべたつき)、主観的な自己評価に基づいて、適切な化粧料を提案することは多くの化粧品店でも行われている。しかし、乾燥肌と診断されたので保湿性の高い化粧水を薦められたがべとつき感がある、普通肌と診断されたけれども化粧水の保湿性が長持ちしない、というミスマッチも多い。本実施形態においては、素肌の基本的特性としての第1肌質に限らず、標準化粧水に対する肌の受容性や反応性である第2肌質も考慮してユーザの肌質を総合的に評価する。この結果として、ユーザの肌質により適合した化粧料を提案しやすくなる。
【0069】
また、ユーザも、標準化粧料の塗布前の第1肌質だけでなく、標準化粧料の塗布後の第2肌質に基づいて推薦化粧料を提案されることにより、いいかえれば、よりきめ細かな提案がなされることにより、推薦化粧料に対する信頼感や安心感をもつことができる。推薦化粧料に対する肯定的感情は、ユーザの納得感や満足感にも好影響を及ぼすと考えられる。また、働く女性が増えてきている中、忙しい女性ユーザにとって、多種多様な化粧料の中から自分の肌に合った化粧料を簡易かつ適切に提案してもらうことは利便性が高いと考えられる。
【0070】
総合肌質に応じて、化粧料セットを提案することは、化粧料選びに時間をかけたくないユーザにとっては特に利便性が高い。また、第2肌質に基づいてユーザの肌質をきめ細かく分類することにより、化粧料成分の配合量を調整したオリジナルのパーソナル化粧水を提案できる。このような化粧料の個性化(パーソナライゼーション)は、ユーザの魅力を引き出し、満足度を高める上でもいっそう効果的であると考えられる。
【0071】
更に、ユーザ属性や環境属性、ユーザの嗜好性なども考慮し、ユーザの状況やニーズをきめ細かく汲み上げることでより適切な化粧料を提案しやすくなる。ユーザは、定期的な肌質診断を習慣とすることにより、肌質の変化、環境の変化、好みの変化なども踏まえてそのときに最適な化粧料を提案してもらうことができる。
【0072】
第2実施形態においては、ユーザはユーザ端末100によって肌質診断を行い、化粧料調合装置300は診断結果に基づいてパーソナル化粧料を作成する。パーソナル化粧料の作成には時間がかかる。化粧料調合装置300の送信部320は、パーソナル化粧料の調合が完了したとき、ユーザ端末100に完了通知を送信してもよい。たとえば、ユーザは百貨店に出かける前にユーザ端末100で肌質診断を行い、百貨店の化粧品店に設置される化粧料調合装置300にパーソナル化粧料の作成を依頼する。百貨店で買い物をしているときに完了通知を受け取ったユーザは、化粧品店からパーソナル化粧料を受け取る。このような制御方法によれば、ユーザは化粧品店でパーソナル化粧料の作成を待たされることなく、完成時に化粧品店を訪れることでパーソナル化粧料をタイミングよく受け取ることができる。化粧料調合装置300は、完成した化粧水を、ユーザの自宅まで配送してもよい。
【0073】
なお、本発明は上記実施例や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施例や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施例や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0074】
[変形例]
第1実施形態においては、ユーザ端末100において肌質を診断し、サーバ200において推奨化粧料を選択するとして説明した。ユーザ端末100の第1評価部140、第2評価部142および総合評価部144は、サーバ200において実装されてもよい。すなわち、肌測定部112は、水分量および皮脂量を測定し、送信部130は測定値をユーザIDとともにサーバ200に送信してもよい。サーバ200はこれらの測定値に基づいて第1肌質、第2肌質および総合肌質を評価してもよい。第2実施形態の化粧料調合装置300も同様に肌質の診断機能を備えてもよい。
【0075】
同様にして、提案部220の機能をサーバ200ではなくユーザ端末100が備えるとしてもよい。この場合には、ユーザ端末100は化粧料テーブル250等のデータをサーバ200からダウンロードし、ユーザ端末100は診断結果に基づいて化粧料を選択してもよい。
【0076】
本実施形態においては、総合肌質に加えてユーザ属性および環境属性も考慮して推薦化粧料を選ぶとして説明したが、ユーザ属性および環境属性は考慮対象としなくてもよい。すなわち、提案部220は総合肌質のみに基づいて推薦化粧料を選択してもよい。また、化粧料作成部324は総合肌質のみに基づいてパーソナル化粧料における配合を決めてもよい。
【0077】
本実施形態においては、主として、化粧水を対象として説明したが、化粧水以外の化粧料についても本発明は応用可能である。たとえば、テスターとなる乳液(標準化粧料)に基づいて、第1肌質と第2肌質を評価し、総合肌質を評価してもよい。総合評価部144は、乳液に基づく第2評価に基づいて総合肌質を評価する。提案部220は、この総合肌質に基づいて推薦乳液(推薦化粧料)を選択してもよい。乳液のほかにも美容液(標準美容液)、クリーム、ファンデーションに基づいて第1肌質と第2肌質を評価してもよい。ファンデーションの粉体を塗布する場合においても、人によって受容性に違いがあることがわかっている。
【0078】
ファンデーションの場合には、肌質の評価に際して、肌の色を評価対象としてもよい。夏季は日差しが強いので、提案部220は、夏季においては冬季よりも美白効果が控えめで日焼け止め効果の高いファンデーションを提案してもよい。
【0079】
肌質の評価に際しては、肌の静電容量および電気抵抗の双方または一方を計測することで肌の含水量をチェックしてもよい。このほか、肌の撮影画像から表皮の状態(毛穴、乾燥、にきび、しみ、肌荒れ、くま、くすみ、透明感、皮脂、赤み)を評価してもよいし、光干渉断層計検査により血流やリンパの状態を評価してもよい。また、カウンセラーやユーザ本人がアンケートに答えることで肌質を評価してもよい。肌質の評価技術についてはさまざまな手法が確立・提案されており、肌質判定システム104および化粧料作成システム270においても既知の肌質評価技術を応用可能である。たとえば、肌の含水量の評価に際しては、静電容量測定に基づく評価値と本人の主観的評価(うるおい感)に基づく評価値の双方に基づいて含水量を評価してもよい。皮脂量等についても同様である。このように、客観評価と主観評価の双方に基づいて、第1肌質および第2肌質を評価してもよい。
【0080】
触覚に関する物性データに基づいて肌質評価をするときも同様である。たとえば、摩擦係数に基づく肌質評価(肌の滑らかさの評価)の場合、化粧水塗布前の摩擦係数a1、化粧水塗布後の摩擦係数a2を計測する。総合評価に際しては、たとえば、a1とa2の平均値、a1からa2への変化率、a1とa2の最小値、最大値、レンジなど2つの摩擦係数a1、a2を変数とする任意の関数により総合評価値a3を計算してもよい。提案部220は、総合評価値a3に対応づけられる化粧料を提案してもよい。あるいは、提案部220は、総合評価値a1に基づいて複数の化粧料候補から1以上の化粧料を選択し、総合評価値a2に基づいて更に提案すべき化粧料を絞込んでもよい。
粘弾性など他の物性データについても同様である。このように触覚に関する物性データに基づく肌質評価に際しても、化粧水塗布前および塗布後の測定値に対応づけられる化粧料を提案することができる。
【0081】
化粧料を塗布したあとの時間経過を考慮してもよい。第2評価部142は、標準化粧料を塗布した直後の肌質だけでなく、標準化粧料を塗布してから所定時間、たとえば、1時間が経過したときの肌質を計測してもよい。総合評価部144は、化粧料塗布前、塗布直後、塗布から1時間経過後それぞれの肌質に基づいてユーザの肌質を総合評価してもよい。
【0082】
ユーザ属性の一部として予算を設定してもよい。たとえば、ユーザが化粧水に対する予算として「2,000円」を設定しているとき、提案部220はユーザの総合肌質に適合する複数種類の化粧水のうち、ユーザが指定する予算内に収まる化粧水を推薦化粧水として選択してもよい。また、化粧料セットを提案するときには(第1実施形態の例2)、提案部220はユーザが指定する合計予算の範囲内に収まるように複数の化粧料を選択してもよい。
【0083】
サーバ200のデータ処理部204は、肌質診断の結果をユーザIDと対応づけてデータ格納部206に登録するユーザ管理部(不図示)を備えてもよい。たとえば、ユーザP1に化粧水X1を提案していたとする。ここで、化粧水X1の後継製品として化粧水X2が新たに発売されたとする。メーカーは、化粧水X1の後継製品として化粧水X2をサーバ200に登録する。このとき、提案部220は、ユーザP1に対して化粧水X2の広告情報をユーザ端末100に送信してもよい。このような制御方法によれば、ユーザの肌質に合った化粧料として新規製品を効果的にユーザに認知させることができる。ユーザの肌質情報を集めることは、マーケティングの面においても効果が高いと考えられる。
【0084】
また、タイプT2AのユーザP2について、ユーザP2が10代のときには(ユーザ属性U1)化粧水X3を提案し、このユーザが20代になったときには化粧水X3と同系列にあって20代をターゲットにした別の化粧水X3を提案してもよい。このような制御方法によれば、ユーザの年齢も考慮しながら、ユーザの肌質にあった化粧料を効果的に提案できる。
【0085】
本実施形態においては、標準化粧水塗布前の肌質を4分類し、塗布後の肌質を4分類ことで合計16分類をすることを前提として説明したが、4分類を前提とするものではない。たとえば、乾燥肌(タイプT3)のユーザについて、標準化粧水を塗布したあと「水分が保たれ続ける」「再度乾燥する」の2分類に細分化してもよい。あるいは、乾燥肌(タイプT3)のユーザについて、標準化粧水を塗布したあと「摩擦係数の変化量が所定値以上」「摩擦係数の変化量が所定値未満」のように2分類してもよい。
【0086】
継続的に化粧品を使用することによる肌改善効果により、ユーザの肌質が変化していくことがある。したがって、図6に示した肌質判定は、1回だけではなく、定期的に実行することが望ましい。ユーザ端末100の総合評価部144は測定管理部(図示せず)を備えてもよい。測定管理部は、前回の肌質測定から所定時間、たとえば、10日以上が経過したときにはユーザに対して肌質の再測定を通知してもよい。このような制御方法によれば、ユーザは肌質の変化に合わせて、適宜、最適な化粧品を選びやすくなる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
図11
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