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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】蒸着マスクの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
C23C14/04 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020065787
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021161510
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲行
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-052073(JP,A)
【文献】特開2005-105328(JP,A)
【文献】特開平01-049224(JP,A)
【文献】特開平05-078818(JP,A)
【文献】特開昭53-131929(JP,A)
【文献】特開平03-166357(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00415206(EP,A2)
【文献】特開2005-175253(JP,A)
【文献】特開2019-117926(JP,A)
【文献】実開昭60-169264(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
H05B 33/10
C25D 1/10
B65H 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着マスクと、前記蒸着マスクに接して金属層と、が設けられた構造体を設置するステージと、
前記蒸着マスクから前記金属層を剥離して巻き取る回転ローラーと、を含み、
前記回転ローラーは、前記金属層の被剥離面を内側にして巻き取るように回転する蒸着マスクの製造装置。
【請求項2】
前記回転ローラーは、前記ステージの一辺に略平行な第1方向に、前記ステージに対して相対的に移動して前記金属層を巻き取る請求項1に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項3】
さらに、前記蒸着マスクから剥離された前記金属層を押さえる押さえローラーを含む請求項1または請求項に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項4】
前記回転ローラーと前記押さえローラーとの互いの軸距離を可変とするように構成される請求項に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項5】
前記押さえローラーは、中心角が180°以上の円弧を形成して湾曲するように、剥離された前記金属層を押さえる請求項に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項6】
さらに、前記ステージと剥離された前記金属層の湾曲面との距離を測定するセンサを含む請求項に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項7】
前記押さえローラーは、前記回転ローラーに合わせて、前記ステージに対して相対的に移動する請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項8】
前記押さえローラーの中心軸は、前記回転ローラーの中心軸よりも下方に位置する請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項9】
さらに、前記金属層の巻き取りの浮き上がりを防止するための第1固定ローラーを含む請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項10】
前記第1固定ローラーの中心軸は、前記回転ローラーの中心軸より上方に位置する請求項に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項11】
さらに、前記金属層の剥離の跳ね上がりを防止するための第2固定ローラーを含む請求項乃至請求項10のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項12】
前記第2固定ローラーの中心軸は、前記押さえローラーの中心軸よりも下方に位置する請求項11に記載の蒸着マスクの製造装置。
【請求項13】
蒸着マスクと、前記蒸着マスクに接して金属層と、が設けられた構造体において、回転ローラーで前記金属層を巻き取りながら、前記回転ローラーを前記構造体の一辺に略平行な第1方向に移動させ、前記蒸着マスクから前記金属層を剥離することを含み、
前記回転ローラーは、前記金属層の被剥離面を内側にして巻き取るように回転する蒸着マスクの製造方法。
【請求項14】
中心角が180°以上の円弧を形成して湾曲するように剥離された前記金属層を押さえる押さえローラーを前記第1方向に移動させる請求項13に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項15】
さらに、前記金属層を押さえる押さえローラーを含む、請求項13に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項16】
前記金属層に応じて、前記回転ローラーと前記押さえローラーとの互いの軸距離を変化させる請求項14または請求項15に記載の蒸着マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスクの製造装置および製造方法に関する。特に、本発明は、マスクフレームに薄膜状のマスク本体を備えた蒸着マスクの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル型表示装置の一例として、液晶表示装置や有機EL(Electroluminescence)表示装置が挙げられる。これらの表示装置は、絶縁体、半導体、導電体などの様々な材料を含む薄膜が基板上に積層された構造体である。これらの薄膜が適宜パターニングされ、接続されることで、表示装置としての機能が実現される。
【0003】
薄膜を形成する方法は、大別すると気相法、液相法、固相法に分類される。気相法は物理的気相法と化学的気相法に分類される。物理的気相法の代表的な例として蒸着法が知られている。蒸着法のうち最も簡便な方法が真空蒸着法である。真空蒸着法は、高真空下において材料を加熱することで、材料を昇華又は蒸発させて材料の蒸気を生成する(以下、これらを総じて気化という)。この材料を堆積させるための領域(以下、蒸着領域)において、気化していた材料が固化し、堆積することで材料の薄膜が得られる。蒸着領域に対して選択的に薄膜が形成され、それ以外の領域(以下、非蒸着領域)には材料が堆積しないようにするために、マスク(蒸着マスク)を用いて真空蒸着が行われる(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-87840号公報
【文献】特開2013-209710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蒸着マスクは、蒸着パターンが形成されたマスク本体に、マスク本体を固定するためのマスクフレームが接合されている。マスク本体は、金属層上にメッキ処理を用いて形成されるが、マスク本体とマスクフレームとを接合した後に、マスク本体から金属層を剥離する必要がある。金属層の剥離は、作業者による手作業で行われることが多く、作業者の熟練度によって蒸着マスクの品質にばらつきが生じていた。具体的には、金属層の不均一な剥離によって、薄膜状のマスク本体に歪みが生じ、蒸着マスクの蒸着パターンの位置がずれてしまう問題が生じていた。また、作業者によって作業時間が異なるものの、手作業による金属層の剥離は、比較的作業時間が長いという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、品質の安定した蒸着マスクの製造装置を提供することを課題の1つとする。また、作業者の作業効率を向上することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造装置は、蒸着マスクと、蒸着マスクに接して金属層と、が設けられた構造体を設置するステージと、蒸着マスクから金属層を剥離して巻き取る回転ローラーと、を含む。
【0008】
本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法は、蒸着マスクと、蒸着マスクに接して金属層と、が設けられた構造体において、回転ローラーで金属層を巻き取りながら、回転ローラーを構造体の一辺に略平行な第1方向に移動させ、蒸着マスクから金属層を剥離することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの平面図である。
図1B】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの断面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
図2C】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
図2D】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
図2E】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
図2F】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
図2G】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
図2H】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造装置の上面模式図である。
図3B】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造装置の断面上面模式図である。
図3C】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造装置の使用態様を示す断面模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造装置の使用態様を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0011】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし図面に示す例は、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の構成には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
本発明において、ある一つの膜に対してエッチングや光照射を行うことで複数の膜を形成した場合、これら複数の膜は異なる機能、役割を有することがある。しかしながら、これら複数の膜は同一の工程で同一層として形成された膜に由来し、同一の層構造、同一の材料を有する。したがって、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0013】
本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体が配置された態様を表現する際に、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、その構造体の直上に他の構造体が配置される場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体が配置される場合と、の両方を含むものと定義される。
【0014】
<第1実施形態>
図1Aおよび図1Bを参照して、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク10の構成について説明する。
【0015】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク10の平面図である。また、図1Bは、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク10の断面図である。具体的には、図1Bは、図1に示すA-A’線に沿って切断した蒸着マスク10の断面図である。
【0016】
蒸着マスク10は、マスク本体110、マスクフレーム120、および接続部材130を含む。マスク本体110は、接続部材130を介して、マスクフレーム120に接続されている。
【0017】
マスクフレーム120は開口部を有し、マスクフレーム120の開口部と重畳するようにマスク本体110が設けられている。図1Aでは、マスクフレーム120は、12個の開口部を有し、各開口部と重畳してマスク本体110が設けられている。なお、マスクフレーム120に設けられる開口部の数は、これに限られない。マスクフレーム120に設けられる開口部の数は、被蒸着基板の大きさや蒸着パターンに合わせて適宜決定することができる。
【0018】
マスク本体110には、マスク本体110を貫通する複数の開口113が設けられている。以下では、便宜上、マスク本体110に開口113が設けられている領域を開口領域111とし、マスク本体に開口113が設けられていない領域を非開口領域112として説明する。開口領域111と非開口領域112との境界は必ずしも明確ではないが、少なくとも非開口領域112には開口113が設けられていない点で区別をすることができる。
【0019】
蒸着時には、蒸着対象の被蒸着基板における蒸着領域と開口領域111が重なり、被蒸着基板における非蒸着領域と非開口領域112が重なるように、蒸着マスク10と被蒸着基板が位置合わせされる。蒸着材料の蒸気が開口領域111の開口113を通過し、被蒸着基板の蒸着領域に蒸着材料が堆積する。
【0020】
被蒸着基板が表示装置の基板である場合、表示装置の画素の配列と対応して開口領域111の開口113を配列することができる。開口113の配列は、例えば、マトリクス状である。
【0021】
マスクフレーム120は、マスク本体110を支持することができる。上述したように、マスクフレーム120は開口部を含むが、言い換えると、マスクフレーム120は、外側に位置する枠部と内側に位置する桟部とを含むということもできる。桟部は、枠部に剛性を与え、枠部が反ることを防止することができる。桟部は、複数の部材が組み合わされて構成されていてもよい。例えば、桟部の1つの部材は、枠部の一方の辺から対向する他方の辺に向かって延伸している。また、桟部の部材は、縦方向(蒸着マスク10の短辺方向)および横方向(蒸着マスク10の長辺方向)に設けられることが好ましい。すなわち、桟部は、縦方向に延伸する部材と横方向に延伸する部材とが交差している井桁構造であることが好ましい。ただし、桟部の構成は、これに限られない。桟部の部材は、縦方向または横方向にのみ設けられていてもよい。また、枠部の幅および桟部(または桟部の部材)の幅は、蒸着マスク10の大きさに合わせて適宜決定することができる。なお、蒸着パターンの領域をできる限り広くするためには、桟部の幅が枠部の幅よりも小さいことが好ましい。
【0022】
図1Bに示すように、接続部材130は、マスク本体110とマスクフレーム120の開口部の間隙に設けられ、マスク本体110の側面およびマスクフレーム120の開口部の側面に接する。すなわち、平面視において、マスク本体110とマスクフレーム120とは重畳していない。なお、平面視において、マスク本体110とマスクフレーム120とが重畳することもできる。
【0023】
接続部材130は、マスク本体110とマスクフレーム120とを接続すればよいため、接続部材130は、マスクフレーム120の開口部の側面の全面に設けられなくてもよい。接続部材130は、マスクフレーム120の開口部の側面の少なくとも一部に設けられていればよい。一方、マスク本体110の厚さは、マスクフレームの厚さに比べて非常に小さい。例えば、マスク本体110の厚さは1μm以上20μm以下であり、マスクフレーム120の厚さは10μm以上2000μm以下である。そのため、マスク本体110とマスクフレーム120との接着強度を大きくするため、接続部材130は、マスク本体110の側面の全面に設けられていることが好ましい。
【0024】
また、接続部材130は、マスク本体110とマスクフレーム120との間で階段状に形成されていてもよい。
【0025】
接続部材130の間にあって、マスク本体110が設けられていない領域、すなわち、マスクフレーム120の桟部と重畳する領域には、溝部140が設けられている。言い換えると、溝部140は、溝部140の側面が接続部材130で形成され、溝部140の底面がマスクフレーム120で形成されているということもできる。
【0026】
マスクフレーム120の枠部と重畳する領域では、一方の側面が接続部材130で形成され、他方の側面は解放されており、構造上厳密に区別すると溝ではないということもできる。しかしながら、突起141の形成においては、上述した溝部140と同様である。そのため、以下では、便宜上、マスクフレーム120の枠部と重畳する領域に形成された突起141が溝部140に形成されているとして説明する場合がある。
【0027】
マスク本体110の形成方法については後述するが、蒸着マスク10は、メッキ処理によって形成されたマスク本体から金属層を均一に剥離することができるため、マスク本体110の蒸着パターンの位置ずれが抑制されている。
【0028】
以上、本実施形態に係る蒸着マスク10によれば、マスク本体110とマスクフレーム120とが、接続部材130を介して接続されている。また、マスク本体110から金属層が均一に剥離されているため、蒸着マスク10の蒸着パターンの位置ずれが抑制されている。したがって、蒸着マスク10を用いて蒸着した製品の品質が安定する。
【0029】
<第2実施形態>
図2A図2Hを参照して、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク10の製造方法について説明する。
【0030】
図2A図2Gは、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク10の製造方法を示す断面図である。
【0031】
まず、図2Aに示すように、支持基板210上に金属層220を形成し、金属層220上に所定のパターンを有するフォトレジスト層230を形成する。
【0032】
支持基板210は、蒸着マスク10の製造工程において、各層を支持する基板である。そのため、支持基板210は剛性基板であることが好ましい。また、蒸着マスク10は、熱膨張係数が小さいことが好ましい。蒸着マスク10の製造工程では、支持基板210が加熱される。加熱処理によって支持基板210が膨張または縮小すると、蒸着マスク10の蒸着パターンにズレが生じることになる。そのため、蒸着マスク10の製造工程を安定化させるためにも、支持基板210は、熱膨張係数が小さい剛性基板であることが好ましい。支持基板210の材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS304またはSUS430など)、42アロイ、インバー、スーパーインバー、またはステンレスインバーなどである。
【0033】
金属層220は、後述する電鋳(または電解メッキ)の下地金属として機能することができる。金属層220の材料としては、例えば、ニッケル(Ni)またはニッケル合金である。金属層220は、スパッタリングなどによって形成することができる。
【0034】
蒸着マスク10は、電鋳ではなく、無電解メッキを用いて製造することもできる。この場合、金属層220の代わりに、絶縁層を用いることもできる。
【0035】
フォトレジスト層230は、後述する電鋳の母型として機能することができる。一例として、フォトレジスト層230は、所定の膜厚を有するように、金属層220上に1つまたは複数の感光性ドライフィルムレジストを配置し、熱圧着によって形成される。感光性ドライフィルムレジストは、ポジ型またはネガ型のいずれであってもよい。なお、以下では、感光性ドライフィルムがネガ型であるとして説明する。
【0036】
フォトレジスト層230は、蒸着マスク10の蒸着パターンが形成されるための所定のパターンを有する。フォトレジスト層230の所定のパターンは、フォトリソグラフィーにより形成することができる。すなわち、所定のパターンは、ドライフィルムレジストにマスクを密着させ、紫外線を照射してドライフィルムを露光し、未露光部分を溶解除去することによって形成することができる。
【0037】
なお、図示しないが、支持基板210と金属層220との間、または金属層220とフォトレジスト層230との間には、離型剤を塗布して離型層を形成してもよい。離型層を形成することで、支持基板210と金属層220、または金属層220と後述する第1メッキ層240とが剥離しやすくなる。
【0038】
次に、図2Bに示すように、フォトレジスト層230をマスクとして、第1メッキ層240を形成する。第1メッキ層240は、蒸着マスク10のマスク本体110に対応するものである。第1メッキ層240は、電鋳により形成することができる。具体的には、金属層220およびフォトレジスト層230を所定の条件に建浴した電鋳漕に入れ、フォトレジスト層230に覆われていない金属層220の表面から、フォトレジスト層230の高さまで金属メッキを形成する。第1メッキ層240の材料としては、例えば、ニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)-コバルト(Co)合金などである。
【0039】
次に、図2Cに示すように、フォトレジスト層230を剥離(除去)する。フォトレジスト層230は、例えば、アミン系の剥離液によって剥離することができる。フォトレジスト層230を剥離することによって、蒸着パターンを有する第1メッキ層240が形成される。
【0040】
なお、フォトレジスト層230を剥離する前に、電鋳によって形成された第1メッキ層240を研磨してよい。第1メッキ層240を研磨することにより、第1メッキ層240の表面を平坦化することができる。
【0041】
次に、図2Dに示すように、第1メッキ層240上に、接着層250が設けられたマスクフレーム260を配置する。すなわち、接着層250を介して、第1メッキ層240とマスクフレーム260とが接着される。なお、ここでの工程では、第1メッキ層240とマスクフレーム260とを完全に接着する必要はない。そのため、接着層250は、完全に硬化されていなくてもよい。
【0042】
マスクフレーム260は開口を有する。マスクフレーム260は、第1メッキ層240の蒸着パターンの開口と重畳しないように位置を合わせて接着される。言い換えると、マスクフレーム260の開口は、第1メッキ層240の蒸着パターンの開口と重畳する。
【0043】
接着層250は、後の工程において除去されるため、除去しやすい材料であることが好ましい。接着層250の材料としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シアノアクリレート樹脂、またはアクリル樹脂などを用いることができる。また、接着層250の材料としては、ドライフィルムレジストを用いることもできる。接着層250の材料としてドライフィルムレジストを用いる場合、ドライフィルムレジストを、その表面に弱粘着性が残る程度に弱く露光しておいてもよい。ドライフィルムレジストを露光しておくことで、後の工程においてドライフィルムレジストを除去しやすくなる。
【0044】
なお、この後の工程において、第1メッキ層240の蒸着パターンを保護する(例えば、工程によって発生するパーティクルによって蒸着パターンの開口が塞がれないように保護する)ため、第1メッキ層240の蒸着パターンの領域にドライフィルムレジストを設けてもよい。
【0045】
次に、図2Eに示すように、支持基板210、金属層220、第1メッキ層240、接着層250、およびマスクフレーム260を覆うように、マスクフレーム260の上方にフィルム280を配置する。続いて、支持基板210とフィルム280との間の空気を排気(真空排気)し、フィルム280の下方側の圧力を下げる。フィルム280の上方側と下方側との圧力差により、フィルム280は支持基板210側に引き付けられる。フィルム280の下方側の圧力をさらに下げると、フィルム280がマスクフレーム260を押圧する。フィルム280からの押圧を受けて、マスクフレーム260は、接着層250を介して、第1メッキ層240とより強く接着する。この工程は、いわゆる真空圧着と呼ばれる工程である。
【0046】
フィルム280の下方側の真空度は、大気圧を0kPaとしたゲージ圧において、-50kPa以下であり、好ましくは-70kPa以下であり、さらに好ましくは-90kPaである。
【0047】
真空圧着後は、フィルム280を除去する。
【0048】
次に、図2Fに示すように、第1メッキ層240とマスクフレーム260とを接続する第2メッキ層290を形成する。第2メッキ層290は、金属層220または第1メッキ層240に通電する電鋳によって形成することができる。第2メッキ層290は、蒸着マスク10の接続部材130に対応するものである。第2メッキ層290は、金属層220、第1メッキ層240、接着層250、およびマスクフレーム260と接している。具体的には、第2メッキ層290は、第1メッキ層240の溝部の一部およびマスクフレーム260の側面(蒸着マスク10の枠部および桟部の側面)と接するように形成されている。
【0049】
第2メッキ層290は、第1メッキ層240と同様の方法で形成することができる。
【0050】
第2メッキ層290は、第1メッキ層240の開口領域111に対応する領域には設けられていない。第1メッキ層240の開口領域111に対応する領域上に、例えば、ドライフィルムレジストを形成し、第1メッキ層240の開口領域111に対応する領域にメッキされることを防止することができる。ドライフィルムレジストは、第2メッキ層290の形成後に剥離することができる。
【0051】
次に、図2Gに示すように、金属層220から支持基板210を剥離する。
【0052】
次に、図2Hに示すように、金属層220、および接着層250を剥離することにより、マスク本体110、マスクフレーム120、および接続部材130が形成される。接着層250を剥離することで、接着層250と接着していた第1メッキ層240の一部(第1メッキ層240内のマスクフレーム260と重畳する領域)も剥離され、溝部140が形成される。また、溝部140の側面および底面は、それぞれ、第2メッキ層290およびマスクフレーム260で構成される。すなわち、図2Hに示すように、マスクフレーム120の下方には、マスク本体110が設けられず、溝部140が形成される。
【0053】
第1メッキ層240から金属層220を剥離する方法については、後述する製造装置の構成と併せて説明するが、第1メッキ層240から金属層220を均一に剥離することができるため、マスク本体110の蒸着パターンの位置ずれが抑制されている。
【0054】
以上、本実施形態に係る蒸着マスク10の製造方法によれば、第1メッキ層240から金属層220が均一に剥離されているため、蒸着マスク10の蒸着パターンの位置ずれが抑制されている。したがって、蒸着マスク10の品質が安定する。また、蒸着マスク10を用いて蒸着した製品の品質も安定したものとなる。
【0055】
<第3実施形態>
図3A図3Cを参照して、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク10の製造装置20の構成について説明する。
【0056】
図3Aおよび図3Bは、それぞれ、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク10の製造装置20の上面模式図および断面模式図である。具体的には、図3Aおよび図3Bは、第2実施形態で説明した第1メッキ層240から金属層220を剥離する装置の模式図である。なお、図3Bは、図3Aに示すB-B’線で切断した製造装置20の断面模式図である。また、図3Cは、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク10の製造装置20の使用態様を示す断面模式図である。
【0057】
図3Aおよび図3Bに示すように、製造装置20は、ステージ310、回転ローラー320、押さえローラー330、第1固定ローラー340、第2固定ローラー350、およびセンサ360を含む。回転ローラー320、押さえローラー330、第1固定ローラー340、第2固定ローラー350、およびセンサ360は、ステージ310上に設置されている。第1固定ローラー340は、回転ローラー320近傍に設置され、第2固定ローラー350は、押さえローラー330近傍に設置されている。なお、図3Bおよび後述する図3Cにおいては、回転ローラー320、押さえローラー330、第1固定ローラー340、第2固定ローラー350、およびセンサ360のそれぞれの位置関係を理解できるように記載されており、各々の支持部材が省略されている。
【0058】
また、図3Cに示すように、製造装置20では、構造体30の第1メッキ層240から金属層220が剥離され、剥離領域近傍で押さえローラー330によって剥離された金属層220が押さえられ、回転ローラー320によって剥離された金属層220が巻き取られる。また、回転ローラー320および押さえローラー330は、ステージ310の一辺に略平行な第1方向に移動しながら、金属層220を剥離する。
【0059】
ステージ310は、金属層220上に第1メッキ層240、マスクフレーム260、および第1メッキ層240とマスクフレーム260とを接続する第2メッキ層290が形成された構造体30を設置することができる。図3Cに示すように、構造体30は、金属層220が上方となるようにステージ310に設置される。そのため、ステージ310の上面は平坦であることが好ましい。
【0060】
ステージ310は、構造体30を固定することができる。ステージ310は、構造体30の側面に固定ピンを押し当て、構造体30の位置を固定することができる。この場合、固定ピンは、ステージ310に設けられていてもよく、ステージ310以外に設けられていてもよい。ステージ310は、真空吸着によって構造体30を固定してもよい。この場合、ステージ310には、マスクフレーム260を吸着できる吸着孔を設けられる。吸着孔は、マスクフレーム260の枠部の四隅近傍を真空吸着できることが好ましい。マスクフレーム260の枠部は、幅を大きくすることができ、剛性が高いため、マスクフレーム260の固定が安定する。
【0061】
ステージ310の材質は、例えば、炭素鋼またはステンレス鋼などを用いることができる。
【0062】
図示しないが、ステージ310は、昇降機構を設けて、ステージ310の面と垂直方向に移動可能にしてもよい。昇降機構により、構造体30と、回転ローラー320または押さえローラー330との距離を調整することができる。
【0063】
回転ローラー320は、構造体30の第1メッキ層240から金属層220を剥離し、剥離された金属層220を巻き取ることができる。回転ローラー320は、回転部および軸部を含む。回転部は軸部の中心を中心軸として回転し、金属層220を巻き取ることができる。図示しないが、軸部の少なくとも一方の端部には、移動機構が取り付けられている。移動機構は、ステージ310の一辺(または構造体30の一辺)に略平行な第1方向に軸部を移動させることができる。言い換えると、回転ローラー320は、第1方向に、ステージ310に対して相対的に移動することができる。したがって、回転ローラー320は、金属層220を巻き取りながら、第1方向に移動することができる。
【0064】
回転ローラー320は、回転部のみが回転してもよく(すなわち、軸部は回転しない)、軸部と回転部とが一体化され、軸部を回転させることによって回転部が回転するようにしてもよい。回転ローラー320の回転速度は、回転ローラー320の第1方向への移動に合わせて制御することができる。例えば、構造体30の端部において回転ローラー320の移動速度を遅くすることができる。回転ローラー320の移動速度を遅くすることで、構造体30の端部において、金属層220の跳ね上がりを防止することができる。
【0065】
回転ローラー320の回転方向は特に限定されないが、金属層220の被剥離面(第1メッキ層240が設けられていた側の面)を内側にして巻き取るように回転することが好ましい。金属層220を巻き取る位置が回転ローラー320の下方となり、回転ローラー320が移動するときであっても、金属層220の剥離領域で形成される湾曲部370を安定させることができる。
【0066】
回転ローラー320の材質は、例えば、炭素鋼またはステンレス鋼などを用いることができる。また、回転ローラー320の回転部は、研磨処理またはメッキ処理などが施され、表面粗さが小さいことが好ましい。回転部の表面粗さを小さくすることで、巻き取られる金属層220が回転部に引っ掛かることがなくなり、回転ローラー320による巻き取りが安定する。
【0067】
なお、回転ローラー320で金属層220を巻き取る前に、回転ローラー320に金属層220の端部を取り付けておくことができる。回転ローラー320への金属層220の端部の取り付けは、作業者による手作業で行ってもよく、自動で行ってもよい。例えば、回転ローラー320と金属層220とをテープで接続してもよい。この場合、回転ローラー320が回転すると、始めにテープが巻き取られ、続いて剥離された金属層220が巻き取られる。金属層220が剥離しやすいように、端部において、第1メッキ層240と金属層との間に切り込みを予め入れておくこともできる。
【0068】
製造装置20では、回転ローラー320近傍に、第1固定ローラー340を設置することができる。第1固定ローラー340は、回転ローラー320による金属層220の巻き取りの浮き上がりを防止することができる。すなわち、第1固定ローラー340を設置することで、金属層220の巻き取りをさらに安定化することができる。第1固定ローラー340は、第1固定ローラー340と回転ローラー320との間に所定のギャップを有して設置される。所定のギャップは、金属層220の巻き取る厚さを考慮して決定することができる。さらに、第1固定ローラー340の中心軸は、回転ローラー320の中心軸よりも上方に位置することが好ましい。このような構成とすることで、金属層220の巻き取りの浮き上がりの防止効果が高くなる。
【0069】
第1固定ローラー340は、自由に回転することができてもよく、回転しないように固定されていてもよい。なお、第1固定ローラー340は、回転ローラー320の移動に合わせて移動することができるように、移動機構に取り付けられていることが好ましい。
【0070】
第1固定ローラー340の材質は、例えば、炭素鋼またはステンレス鋼などを用いることができる。また、第1固定ローラー340の回転部は、研磨処理またはメッキ処理などが施され、表面粗さが小さいことが好ましい。
【0071】
押さえローラー330は、構造体30の第1メッキ層240から金属層220を剥離し、剥離された金属層220を押さえることができる。押さえローラー330は、回転部および軸部を含む。回転部は軸部の中心を中心軸として自由に回転することができる。図示しないが、押さえローラー330の軸部の少なくとも一方の端部も、移動機構に取り付けられている。すなわち、押さえローラー330の軸部は、移動機構の移動によって、回転ローラー320に合わせて、第1方向に移動することができる。したがって、押さえローラー330は、金属層220を押さえながら、第1方向に移動することができる。
【0072】
押さえローラー330は、回転部のみが回転してもよく(すなわち、軸部は移動機構に固定されている)、軸部と回転部とが一体化され、軸部の回転に合わせて回転部が回転するようにしてもよい。押さえローラー330の回転は、回転ローラー320の巻き取りおよび移動機構の移動によって剥離された金属層220の移動に合わせて自由に回転することができる。
【0073】
また、押さえローラー330は、金属層220の剥離領域において、剥離された金属層220が円弧状の湾曲部370を形成するように、金属層220を押さえることができる。そのため、押さえローラー330は、金属層220の剥離領域近傍に設置される。なお、押さえローラー330は、剥離された金属層220の湾曲部370は、中心角θが180°以上の円弧を形成するように、金属層220を押さえることが好ましい。金属層220の湾曲部370が略円形または略楕円形に近くなることで、回転ローラー320による巻き取り、または移動機構による移動によって剥離された金属層220が移動するときであっても、金属層220の湾曲部370が安定する。
【0074】
なお、湾曲部370の中心角θは、金属層220が第1メッキ層240から剥離される部分から、剥離された金属層220が押さえローラー330に接するまでの角度をいう。中心角θは、例えば、180°以上300°以下であり、好ましくは210°以上290°以下であり、特に好ましくは240°以上280°以下である。
【0075】
押さえローラー330は、回転ローラー320よりも下方に位置することが好ましい。言い換えると、押さえローラー330の中心軸は、回転ローラー320の中心軸よりも下方に位置することが好ましい。すなわち、押さえローラー330は、回転ローラー320よりもステージに近いことが好ましい。押さえローラー330が回転ローラー320よりも下方に位置することで、金属層220の湾曲部370がさらに安定化する。
【0076】
押さえローラー330の材質は、例えば、炭素鋼またはステンレス鋼などを用いることができる。また、押さえローラー330の回転部は、研磨処理またはメッキ処理などが施され、表面粗さが小さいことが好ましい。回転部の表面粗さを小さくすることで、剥離された金属層220が回転部に引っ掛かることがなくなり、押さえローラー330による押さえが安定する。
【0077】
図示しないが、押さえローラー330は、昇降機構を設けて、ステージ310の面と垂直方向に移動可能にしてもよい。昇降機構により、ステージ310と押さえローラー330との距離を調整することができる。
【0078】
製造装置20では、押さえローラー330近傍に、第2固定ローラー350を設置することができる。第2固定ローラー350は、剥離領域において、金属層220の剥離の跳ね上がりを防止することができる。すなわち、第2固定ローラー350を設置することで、金属層220の湾曲部370をさらに安定化することができる。第2固定ローラー350は、金属層220の湾曲部370を挟んで、押さえローラー330と反対側に設置される。さらに、第2固定ローラー350の中心軸は、押さえローラー330の中心軸よりも下方に位置することが好ましい。このような構成とすることで、金属層220の剥離の跳ね上がりの防止効果が高くなる。
【0079】
第2固定ローラー350は、自由に回転することができてもよく、回転しないように固定されていてもよい。なお、第2固定ローラー350は、押さえローラー330の移動に合わせて移動することができるように、移動機構に取り付けられていることが好ましい。
【0080】
第2固定ローラー350の材質は、例えば、炭素鋼またはステンレス鋼などを用いることができる。また、第2固定ローラー350の回転部は、研磨処理またはメッキ処理などが施され、表面粗さが小さいことが好ましい。
【0081】
押さえローラー330と第2固定ローラー350との位置関係によって、金属層の湾曲部370の曲率半径Rが決定する。この半径Rは、金属層220の材質、膜厚、膜応力等に応じて決定される。この曲率半径Rを大きくすると、金属層220がメッキ層240から剥離する箇所Pからの金属層220の立ち上がりが緩やかになり、剥離ストレスを小さくすることができる。金属層220の膜厚が小さい場合は、半径Rを大きくすると、湾曲部370において金属層220が円弧状の断面を保てず、弛みの原因となるため、半径Rを小さくすると良い。
【0082】
センサ360は、前記ステージ310と剥離された金属層220の湾曲部370の湾曲面との距離を測定することができる。センサ360は、ステージ310から最も離れた湾曲部370の湾曲面の距離を測定することができることが好ましい。最も離れた湾曲部370の湾曲面の距離を測定することで、剥離された金属層220の湾曲部370の曲率半径Rを算出することができる。
【0083】
また、剥離された金属層220の湾曲部370の曲率半径Rは、ステージ310と押さえローラー330との距離Hにも依存する。そのため、センサ360を設置することで、センサ360の測定から算出された曲率半径Rに応じて、ステージ310と押さえローラー330との距離Hを調整することができる。逆に、ステージ310と押さえローラー330との距離Hを基に、金属層220の湾曲部370の曲率半径Rを調整することもできる。また、回転ローラー320の回転速度と回転ローラー320の第1方向への移動速度が一致していない場合、金属層220の湾曲部370が安定しない。その場合、センサ360の測定から算出された曲率半径Rに応じて、回転ローラー320の回転速度または移動機構の移動速度を調整することができる。なお、この調整は、制御機構を用いて自動で行うことができるようにしてもよい。
【0084】
ステージ310と押さえローラー330との距離Hは、例えば、0.5mm以上50mm以下であり、好ましくは0.8mm以上20mm以下であり、特に好ましくは1mm以上15mm以下である。湾曲部370の曲率半径Rは、例えば、1mm以上であり、好ましくは3mm以上50mm以下であり、特に好ましくは5mm以上20mm以下である。
【0085】
また、金属層220の湾曲部370の調整は、金属層220の膜厚を考慮することができる。例えば、金属層220の膜厚が60μmの場合では、ステージ310と押さえローラー330との距離Hを15mmとし、金属層220の湾曲部370の曲率半径Rを10mmと調整することができる。
【0086】
センサ360は、例えば、レーザセンサなどを用いることができる。センサ360は、レーザの出射光と金属層220からの反射光との光量を利用したものであってもよく、レーザの出射から金属層220からの反射の時間差を利用したものであってもよい。センサ360は、これらに限られることなく、距離を測定することができるセンサを用いることができる。
【0087】
以上、本実施形態に係る蒸着マスク10の製造装置20によれば、構造体30の第1メッキ層240から金属層220を均一に剥離することができるため、蒸着マスクの10の品質が安定する。そのため、蒸着マスク10を用いて蒸着した製品の品質も安定したものとなる。さらに、自動化された製造装置20を用いることにより、作業者の負担が軽減するため、作業効率が向上する。
【0088】
<変形例>
図4を参照して、蒸着マスク10の製造装置20の変形例である製造装置20Aの構成について説明する。なお、以下では、製造装置20Aにおいて、製造装置20と同様の構成については説明を省略する場合がある。
【0089】
図4は、本発明の一実施形態に係る蒸着マスク10の製造装置20Aの使用態様を示す断面模式図である。
【0090】
図4に示すように、製造装置20Aは、ステージ310、回転ローラー320A、第1固定ローラー340、第2固定ローラー350、およびセンサ360を含む。回転ローラー320A、およびセンサ360は、ステージ310上に設置されている。
【0091】
回転ローラー320Aは、構造体30の第1メッキ層240から金属層220を剥離し、剥離された金属層220を巻き取ることができる。また、回転ローラー320Aは、構造体30の第1メッキ層240から金属層220を剥離し、剥離された金属層220を押さえることができる。さらに、回転ローラー320Aは、金属層220の剥離領域において、剥離された金属層220が円弧状の湾曲部を形成するように、金属層220を押さえることができる。そのため、回転ローラー320Aは、金属層220の剥離領域近傍に設置される。
【0092】
回転ローラー320Aは、回転部および軸部を含む。回転部は軸部の中心を中心軸として回転し、金属層220を押さえながら巻き取ることができる。図示しないが、軸部の少なくとも一方の端部には、移動機構が取り付けられている。移動機構は、ステージ310の一辺に略平行な第1方向に軸部を移動させることができる。言い換えると、回転ローラー320Aは、第1方向に、ステージ310に対して相対的に移動することができる。したがって、回転ローラー320Aは、金属層220を押さえつつ、巻き取りながら、第1方向に移動することができる。
【0093】
以上、本変形例に係る蒸着マスク10の製造装置20Aによれば、回転ローラー320Aが剥離された金属層220を押さえながら巻き取ることができる。そのため、押さえローラーを別に設置する必要がない。したがって、製造装置20Aは、移動機構を簡易化することができるため、製造装置20Aの製造コストを抑制することができる。
【0094】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0095】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0096】
10:蒸着マスク、 20、20A:製造装置、 30:構造体、 110:マスク本体、 111:開口領域、 112:非開口領域、 113:開口、 120:マスクフレーム、 130:接続部材、 210:支持基板、 220:金属層、 230:フォトレジスト層、 240:第1メッキ層、 250:接着層、 260:マスクフレーム、 260:マスクフレーム、 280:フィルム、 290:第2メッキ層、 310:ステージ、 320、320A:回転ローラー、 330:押さえローラー、 340:第1固定ローラー、 350:第2固定ローラー、 360:センサ、 370:湾曲部
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図3C
図4