(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】フルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤及び物品
(51)【国際特許分類】
C09D 171/00 20060101AFI20240319BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C09D171/00
C09K3/18 104
(21)【出願番号】P 2022515306
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2021014266
(87)【国際公開番号】W WO2021210420
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2020072033
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒匂 隆介
(72)【発明者】
【氏名】内田 貴司
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/039226(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/077947(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/029187(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C09K3/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
Rf-[CH(V)
2]
α (1)
(式中、Rfは-(C
3F
6O)
d-(繰り返し単位C
3F
6Oは分岐構造からなり、dは2~200の整数である。)で表される基を含む、1価又は2価のフルオロポリエーテル基であり、Vは独立に末端に水酸基含有シリル基又は加水分解性シリル基を有し、該水酸基含有シリル基及び加水分解性シリル基以外に極性基であるアミド基及び水酸基を有さない1価の基であり、αは1又は2である。)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化1】
(式中、Rfは-(C
3F
6O)
d-(繰り返し単位C
3F
6Oは分岐構造からなり、dは2~200の整数である。)で表される基を含む、1価又は2価のフルオロ
ポリエーテル基であり、Lはそれぞれ独立に単結合又は2価のヘテロ原子であり、Yはそれぞれ独立に2~6価の炭化水素基であって、ケイ素原子及び/又はシロキサン結合を有していてもよい。Rは独立に炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基であり、nは1~3の整数であり、mは1~5の整数であり、αは1又は2である。)
で表される請求項1に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
【請求項3】
前記式(2)のαが1であり、Rfが下記一般式(3)で表される基である請求項2に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
【化2】
(式中、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF
3基であるフルオロアルキル基であり、pは1~200の整数である。)
【請求項4】
前記式(2)において、α=1のとき、分子鎖の片末端に存在し、α=2のとき、分子鎖の両末端それぞれに存在する2個のLのうち、一方のLが酸素原子であり、かつ、他方のLが単結合であり、Yが、それぞれ独立に炭素数3~10のアルキレン基、炭素数6~8のアリーレン基を含むアルキレン基、アルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~4価のオルガノポリシロキサン残基の結合手に炭素数2~10のアルキレン基が結合している2~4価の基からなる群より選ばれる基である請求項2又は3に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
【請求項5】
前記式(2)において、Xがそれぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1~10のアシロキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基及びハロゲン基からなる群より選ばれる基である請求項2~4のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
【請求項6】
式(2)で表されるポリマーが、下記式で表されるポリマーから選ばれるものである請求項2~5のいずれか1項に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
【化3】
【化4】
(式中、p1、q1、r1は1~199の整数であり、q1+r1は2~200の整数である。)
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の表面処理剤で表面処理された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリエーテル基含有ポリマー(1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基を分子内に有する化合物)及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤に関し、詳細には、撥水撥油性、耐摩耗性、耐滑り性に優れた被膜を形成するフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤、並びに該表面処理剤で表面処理された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話のディスプレイをはじめ、画面のタッチパネル化が加速している。しかし、タッチパネルは画面がむき出しの状態であり、指や頬などが直接接触する機会が多く、皮脂等の汚れが付きやすいことが問題となっている。そこで、外観や視認性をよくするためにディスプレイの表面に指紋を付きにくくする技術や、汚れを落とし易くする技術の要求が年々高まってきており、これらの要求に応えることのできる材料の開発が望まれている。最近ではディスプレイ表面だけではなく、筐体においても皮脂等の汚れが付着しやすいことが問題となっており、ディスプレイ、筐体共に撥水撥油層を設けることが望まれている。しかし、従来の撥水撥油層は撥水撥油性が高く、汚れ拭取り性に優れるが、使用中に防汚性能が劣化してしまうという問題点があった。
【0003】
一般に、フルオロポリエーテル基含有化合物は、その表面自由エネルギーが非常に小さいために、撥水撥油性、耐薬品性、潤滑性、離型性、防汚性などを有する。その性質を利用して、工業的には紙・繊維などの撥水撥油防汚剤、磁気記録媒体の滑剤、精密機器の防油剤、離型剤、化粧料、保護膜など、幅広く利用されている。しかし、その性質は同時に他の基材に対する非粘着性、非密着性であることを意味しており、基材表面に塗布することはできても、その被膜を密着させることは困難であった。
【0004】
一方、ガラスや布などの基材表面と有機化合物とを結合させるものとして、シランカップリング剤がよく知られており、各種基材表面のコーティング剤として幅広く利用されている。シランカップリング剤は、1分子中に有機官能基と反応性シリル基(一般にはアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基)を有する。加水分解性シリル基が、空気中の水分などによって自己縮合反応を起こして被膜を形成する。該被膜は、加水分解性シリル基がガラスや金属などの表面と化学的・物理的に結合することにより耐久性を有する強固な被膜となる。
【0005】
そこで、フルオロポリエーテル基含有化合物に加水分解性シリル基を導入したフルオロポリエーテル基含有ポリマーを用いることによって、基材表面に密着し易く、かつ基材表面に、撥水撥油性、耐薬品性、潤滑性、離型性、防汚性等を有する被膜を形成しうる組成物が開示されている(特許文献1~6:、特表2008-534696号公報、特表2008-537557号公報、特開2012-072272号公報、特開2012-157856号公報、特開2013-136833号公報、特開2015-199906号公報)。
【0006】
該フルオロポリエーテル基含有化合物に加水分解性シリル基を導入したフルオロポリエーテル基含有ポリマーを含有する組成物で表面処理されたガラス基材表面等の硬化被膜は、スチールウールに対する摩耗耐久性に優れるものの、滑り性が高い。そのため、ディスプレイ用途では問題ないが、筐体では滑りすぎてしまい、例えばスマートフォンを使用中に落下させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2008-534696号公報
【文献】特表2008-537557号公報
【文献】特開2012-072272号公報
【文献】特開2012-157856号公報
【文献】特開2013-136833号公報
【文献】特開2015-199906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、撥水撥油性、耐摩耗性に優れ、高動摩擦係数を有する硬化被膜を形成することができるフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤、並びに該表面処理剤で表面処理された物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討した結果、上記フルオロポリエーテル基含有ポリマーにおいて、後述する一般式(1)で表される水酸基含有シリル基又は加水分解性シリル基を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー、特には後述する一般式(2)で表される水酸基含有シリル基又は加水分解性シリル基を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤が、撥水撥油性、耐スチールウール摩耗性に優れ、かつ動摩擦係数の高い硬化被膜を形成し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記フルオロポリエーテル基含有ポリマー(1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基を分子内に有する化合物)及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤及び物品を提供する。
〔1〕
下記一般式(1)
Rf-[CH(V)
2]
α (1)
(式中、Rfは-(C
3F
6О)
d-(繰り返し単位C
3F
6Оは分岐構造からなり、dは2~200の整数である。)で表される基を含む、1価又は2価のフルオロポリエーテル基であり、Vは独立に末端に水酸基含有シリル基又は加水分解性シリル基を有し、該水酸基含有シリル基及び加水分解性シリル基以外に極性基であるアミド基及び水酸基を有さない1価の基であり、αは1又は2である。)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
〔2〕
下記一般式(2)
【化1】
(式中、Rfは-(C
3F
6О)
d-(繰り返し単位C
3F
6Оは分岐構造からなり、dは2~200の整数である。)で表される基を含む、1価又は2価のフルオロ
ポリエーテル基であり、Lはそれぞれ独立に単結合又は2価のヘテロ原子であり、Yはそれぞれ独立に2~6価の炭化水素基であって、ケイ素原子及び/又はシロキサン結合を有していてもよい。Rは独立に炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは独立に水酸基又は加水分解性基であり、nは1~3の整数であり、mは1~5の整数であり、αは1又は2である。)
で表される請求項1に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
〔3〕
前記式(2)のαが1であり、Rfが下記一般式(3)で表される基である〔2〕に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
【化2】
(式中、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF
3基であるフルオロアルキル基であり、pは1~200の整数である。)
〔4〕
前記式(2)において、α=1のとき、分子鎖の片末端に存在し、α=2のとき、分子鎖の両末端それぞれに存在する2個のLのうち、一方のLが酸素原子であり、かつ、他方のLが単結合であり、Yが、それぞれ独立に炭素数3~10のアルキレン基、炭素数6~8のアリーレン基を含むアルキレン基、アルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、及びケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~4価のオルガノポリシロキサン残基の結合手に炭素数2~10のアルキレン基が結合している2~4価の基からなる群より選ばれる基である〔2〕又は〔3〕に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
〔5〕
前記式(2)において、Xがそれぞれ独立に、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1~10のアシロキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基及びハロゲン基からなる群より選ばれる基である〔2〕~〔4〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
〔6〕
式(2)で表されるポリマーが、下記式で表されるポリマーから選ばれるものである〔2〕~〔5〕のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤。
【化3】
【化4】
(式中、p1、q1、r1は1~199の整数であり、q1+r1は2~200の整数である。)
〔7〕
〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の表面処理剤で表面処理された物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含む表面処理剤によれば、撥水撥油性に優れ、動摩擦係数が高いにもかかわらず、高摩耗耐久性を示す硬化被膜を与えることができ、該表面処理剤にて表面処理された物品は、滑りにくいが摩耗耐久性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の表面処理剤は、後述するフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物を含むものである。
【0013】
本発明に用いられるフルオロポリエーテル基含有ポリマーは、分子内にフルオロポリエーテル基及び反応性官能基を有するものであり、下記一般式(1)で表されるものである。本発明に用いられるフルオロポリエーテル基含有ポリマーは、1種単独でも2種以上の混合物でもよい。
Rf-[CH(V)2]α (1)
(式中、Rfは-(C3F6О)d-(繰り返し単位C3F6Оは分岐構造からなり、dは2~200の整数である。)で表される基を含む、1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基であり、Vは独立に末端に水酸基含有シリル基又は加水分解性シリル基を有し、該水酸基含有シリル基及び加水分解性シリル基以外に極性基を有さない1価の基であり、αは1又は2である。)
【0014】
なお、本明細書において「約(数値)」とは、四捨五入されて表される数値(概数)のことであり、その表示される数値の一番下の桁が「0」でない場合、さらにその下の桁が四捨五入されてその表示される数値となる数値範囲までを含む。例えば、「約3当量」とは、2.5当量以上3.4当量以下のことをいい、「約0.02当量」とは0.015当量以上0.024当量以下のことをいう。また、その表示される数値の一番下の桁が「0」である場合、その一番下の桁が四捨五入されてその表示される数値となる数値範囲までを含む。例えば、「約50℃」とは、45℃以上54℃以下のことをいう。
【0015】
本発明に用いられるフルオロポリエーテル基含有ポリマーは、1価のフルオロオキシアルキル基又は2価のフルオロオキシアルキレン基(即ち、1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基)と、アルコキシシリル基等の加水分解性シリル基あるいは水酸基含有シリル基が、極性基を有さない連結基を介して結合した構造であり、アルコキシシリル基等の加水分解性シリル基あるいは水酸基含有シリル基が分子内に2つ以上存在し、かつ、該加水分解性シリル基あるいは水酸基含有シリル基以外には分子内に極性基、具体的にはアミド基や水酸基などがなく、より簡素な結合様式になっている。それにより基材密着性が向上し、撥水撥油性、耐スチールウール摩耗性に優れる。また、主鎖構造が-(C3F6О)d-(繰り返し単位C3F6Оは分岐構造からなり、dは2~200の整数である。)で表される基から構成されることで動摩擦係数が高い(滑りにくい)ことを特徴としている。
【0016】
上記式(1)において、Rfは-(C3F6О)d-(繰り返し単位C3F6Оは、-CF(CF3)CF2О-で示される分岐構造(即ち、ヘキサフルオロプロピレンオキシドが開環した繰り返し単位構造)からなり、dは2~200の整数、好ましくは8~60の整数である。)で表される基(ヘキサフルオロプロピレンオキシドの繰り返し構造)を主要構造として含む、1価又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基であり、αが1の場合(即ち、Rfが1価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基の場合)は下記一般式(3)で表される1価のフルオロポリエーテル基であることが好ましく、αが2の場合(即ち、Rfが2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基の場合)は下記一般式(4)で表される2価のフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
【0017】
【化5】
【化6】
(上記各式中、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF
3基であるフルオロアルキル基であり、pは1~200の整数であり、q、rはそれぞれ1~199の整数で、q+rは2~200である。)
【0018】
上記式(3)において、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF3基であるフルオロアルキル基であり、末端が-CF3基であるフルオロアルキル基としては、CF3CF2CF2CF2-、CF3CF2CF2-、CF3CF2-、CF3-、CF3ОCF2CFH-、CF3CF2CF2ОCF2CFH-、CF3ОCF2CF2CF2ОCF2CFH-等が挙げられ、好ましくはCF3CF2CF2-である。
【0019】
pは1~200の整数であり、好ましくは3~100の整数、より好ましくは5~50の整数である。pが上記上限値より小さければ密着性や硬化性が良好であり、また、取り扱いやすく、上記下限値より大きければフルオロポリエーテル基の特徴を十分に発揮することができるので好ましい。
【0020】
また、q、rはそれぞれ1~199の整数であり、qは好ましくは3~100の整数、より好ましくは5~80の整数であり、rは好ましくは3~100の整数、より好ましくは5~80の整数であり、q+r=2~200、好ましくは6~200、より好ましくは10~160である。q+rが上記上限値より小さければ密着性や硬化性が良好であり、また、取り扱いやすく、上記下限値より大きければフルオロポリエーテル基の特徴を十分に発揮することができるので好ましい。
【0021】
Rfとして、具体的には、下記のものを例示することができる。
【化7】
(式中、p1は1~199の整数、好ましくは3~100の整数であり、q、r、q+rは上記と同じである。)
【0022】
上記式(1)において、Vは独立に末端に水酸基含有シリル基又は加水分解性シリル基を有し、極性基を有さない1価の基であり、好ましくは、末端に水酸基含有シリル基又は加水分解性シリル基、及びこのシリル基とCH基とを連結する極性基を有さない連結基からなる1価の基であり、末端にケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基が複数個導入された1価の有機基がより好ましく、このようなVとしては、例えば、下記式(5a)~(5e)で示される基が挙げられる。
【化8】
(式中、Lは単結合又は2価のヘテロ原子であり、Dは炭素数1~20のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xはそれぞれ独立に水酸基又は加水分解性基であり、nは1~3の整数であり、aは2~6の整数であり、bは独立に1~10の整数であり、cは1~50の整数である。)
【0023】
上記式(5a)~(5e)において、Lは単結合又は2価のヘテロ原子であり、2価のヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられる。好ましくは、式(1)における炭素原子に結合する2つのVのうち、一方のLが単結合で、他方のLが2価のヘテロ原子であることが望ましい。
【0024】
上記式(5a)~(5e)において、Dは炭素数1~20、好ましくは炭素数2~8のフッ素置換されていてもよい2価の有機基であり、好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数2~8のフッ素置換されていてもよい2価炭化水素基であり、2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)などや、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたもの等が挙げられる。Dとしては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基が好ましい。
【0025】
上記式(5a)~(5e)において、Rは炭素数1~4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、又はフェニル基であり、中でもメチル基が好適である。
Xは互いに異なっていてもよい水酸基又は加水分解性基である。このようなXとしては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2~10のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1~10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2~10のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好適である。
【0026】
上記式(5a)~(5e)において、nは1~3の整数、好ましくは2又は3であり、反応性、基材に対する密着性の観点から3がより好ましい。aは2~6、好ましくは2~4の整数であり、bは独立に1~10、好ましくは3~6の整数であり、cは1~50、好ましくは1~9の整数である。
【0027】
このようなVとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化9】
【化10】
【0028】
上記式(1)において、αは1又は2であり、好ましくは1である。
【0029】
本発明に用いられるフルオロポリエーテル基含有ポリマーとして、更に好ましくは下記一般式(2)で表されるものである。
【化11】
(式中、Rf、L、R、X、n、αは上記と同じであり、Yはそれぞれ独立に2~6価の炭化水素基であって、ケイ素原子及び/又はシロキサン結合を有していてもよい。mは1~5の整数である。)
【0030】
上記式(2)において、Lは上述したLと同様に、それぞれ独立に単結合又は2価のヘテロ原子であり、2価のヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられるが、好ましくは、分子鎖の各末端(即ち、α=1の場合、分子鎖の片末端、α=2の場合、分子鎖の両末端それぞれ)に存在する2個のLのうち、一方のLが酸素原子であり、かつ、他方のLが単結合であることが望ましい。
【0031】
上記式(2)において、Yは、それぞれ独立に2~6価、好ましくは2~4価、より好ましくは2価の炭化水素基であり、ケイ素原子及び/又はシロキサン結合を有していてもよく、分子中に極性基を含まないことで撥水撥油性に優れたコーティング膜を与えることができる。
【0032】
Yとして、具体的には、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数3~10のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6~8のアリーレン基を含むアルキレン基(例えば、炭素数8~16のアルキレン・アリーレン基等)、アルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、ケイ素原子数2~10個、好ましくは2~5個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個、好ましくは3~5個の分岐状もしくは環状の2~6価のオルガノポリシロキサン残基の結合手に炭素数2~10のアルキレン基が結合している2~6価の基などが挙げられ、好ましくは炭素数3~10のアルキレン基、フェニレン基を含むアルキレン基、アルキレン基相互がシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を介して結合している2価の基、ケイ素原子数2~10個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個の分岐状もしくは環状の2~4価のオルガノポリシロキサン残基の結合手に炭素数2~10のアルキレン基が結合している2~4価の基であり、更に好ましくは炭素数3~6のアルキレン基である。
【0033】
ここで、シルアルキレン構造、シルアリーレン構造としては、下記に示すものが例示できる。
【化12】
(式中、R
1はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、フェニル基等の炭素数6~10のアリール基であり、R
1は同一でも異なっていてもよい。R
2はメチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)等の炭素数1~4のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6~10のアリーレン基である。)
【0034】
また、ケイ素原子数2~10個、好ましくは2~5個の直鎖状又はケイ素原子数3~10個、好ましくは3~5個の分岐状もしくは環状の2~6価のオルガノポリシロキサン残基としては、下記に示すものが例示できる。
【化13】
【化14】
(式中、R
1は上記と同じである。gは1~9、好ましくは1~4の整数であり、hは2~6、好ましくは2~4の整数、jは0~8の整数、好ましくは0又は1で、h+jは3~10、好ましくは3~5の整数であり、kは1~3の整数、好ましくは2又は3である。)
【0035】
Yとしては、下記式で示される基が挙げられる。
【化15】
(式中、Eは炭素数3~10のアルキレン基又は炭素数8~16のアルキレン・アリーレン基であり、eは1~4の整数であり、fは2~10、好ましくは2~8の整数であり、gは上記と同じである。)
【0036】
Yの具体例としては、例えば、下記の基が挙げられる。
【化16】
【化17】
【0037】
上記式(2)において、mは1~5の整数であり、1未満だと基材への密着性が低下し、6以上だと末端アルコキシ価が高すぎて性能に悪影響を与えるため、好ましくは1~3の整数であり、特に1が好ましい。
【0038】
上記式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーとしては、下記式で表されるものが例示できる。
【0039】
【0040】
【化19】
(式中、p1は上記と同じであり、q1、r1は1~199の整数、好ましくは1~100の整数であり、q1+r1は2~200の整数である。)
【0041】
上記式(2)で表され、αが1の場合(即ち、Rfが1価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基の場合)又はαが2の場合(即ち、Rfが2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基の場合)のフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製方法としては、例えば、下記のような方法が挙げられる。
【0042】
まず、下記一般式(6)
【化20】
(式中、Rf、αは上記と同じであり、Mは脱離可能な1価の基である。)
で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、末端に脂肪族不飽和二重結合(オレフィン部位)を有し、かつ、β水素(即ち、金属原子のβ位の炭素原子に結合した水素原子)を有する有機金属試薬とを、好ましくは溶剤の存在下に反応させる。
【0043】
上記式(6)において、Mは脱離可能な1価の基であり、例えば、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アシル基などが挙げられる。
このようなMとしては、例えば下記の基が挙げられる。
【化21】
【0044】
上記式(6)で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化22】
(式中、p1、q1、r1、q1+r1は上記と同じである。)
【0045】
上記末端に脂肪族不飽和二重結合を有し、かつ、β水素を有する有機金属試薬として、具体的には、有機リチウム試薬、グリニャール試薬、有機亜鉛試薬、有機ホウ素試薬、有機スズ試薬などが挙げられ、特に扱い易さの点から、グリニャール試薬、有機亜鉛試薬を用いることが好ましい。このような有機金属試薬としては、特に以下のものが好適に使用できる。
【化23】
【0046】
末端に脂肪族不飽和二重結合を有し、かつ、β水素を有する有機金属試薬の使用量は、上記式(6)で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(脱離可能な1価の基)1当量に対して、2~5当量、より好ましくは2.5~3.5当量、更に好ましくは約3当量用いることが好ましい。
【0047】
上記式(6)で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、末端に脂肪族不飽和二重結合を有し、かつ、β水素を有する有機金属試薬との反応には、溶剤を用いることができる。このとき用いる溶剤は、特に限定されないが、反応化合物がフッ素化合物である点からフッ素系溶剤を用いることが好ましい。フッ素系溶剤としては、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、AGC社から販売されているパーフルオロ系溶剤(アサヒクリンAC2000、アサヒクリンAC6000など)、3M社から販売されているハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(NOVEC7100:C4F9OCH3、NOVEC7200:C4F9OC2H5、NOVEC7300:C2F5-CF(OCH3)-CF(CF3)2など)、同じく3M社から販売されているパーフルオロ系溶剤(PF5080、PF5070、PF5060など)等が挙げられる。フッ素系溶剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。
また、溶剤としては、上記フッ素系溶剤以外に有機溶剤を用いることができる。有機溶剤として、テトラヒドロフラン(THF)、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤を用いることができる。有機溶剤は単独で使用してもフッ素系溶剤と混合して使用してもよい。
溶剤の使用量は、上記式(6)で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー100質量部に対して、10~600質量部、好ましくは50~400質量部、更に好ましくは200~350質量部用いることができる。
【0048】
上記式(6)で表されるカルボニル基を末端に有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、末端に脂肪族不飽和二重結合を有し、かつ、β水素を有する有機金属試薬との反応条件としては、0~80℃、好ましくは45~70℃、より好ましくは約50℃で、1~12時間、好ましくは5~7時間とすることができる。
上記条件により反応を行った後、反応を停止し、分液操作により水層とフッ素溶剤層を分離する。得られたフッ素溶剤層を更に有機溶剤で洗浄し、溶剤を留去することで、下記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーが得られる。
【化24】
(式中、Rf、αは上記と同じであり、Zは独立に2価炭化水素基であり、該炭化水素基はケイ素原子及び/又はシロキサン結合を含んでいてもよい。)
【0049】
ここで、上記式(7)において、Zは独立に2価炭化水素基であり、炭素数1~20、特に2~12の2価炭化水素基であることが好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6~8のアリーレン基を含むアルキレン基(例えば、炭素数7~10のアルキレン・アリーレン基等)などが挙げられる。Zとして、好ましくは炭素数1~4の直鎖アルキレン基である。
【0050】
このようなZとしては、例えば、下記の基が挙げられる。
【化25】
【0051】
式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化26】
【化27】
(式中、p1、q1、r1、q1+r1は上記と同じである。)
【0052】
次に、上記で得られた式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、オレフィン導入剤とを、塩基の存在下、必要により反応性を向上させる添加剤や溶剤を用い、0~90℃、好ましくは40~60℃、より好ましくは約50℃の温度で、1~48時間、好ましくは10~40時間、より好ましくは約24時間熟成する。
【0053】
ここで、上記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと反応させるオレフィン導入剤としては、例えば、ハロゲン化物などを用いることができ、具体的には、アリルブロミド、アリルクロリド、3-ブテニルブロミドなどが挙げられる。
オレフィン導入剤の使用量は、式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(水酸基)1当量に対して、1~15当量、より好ましくは3~6当量、更に好ましくは約4当量用いることができる。
【0054】
上記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとオレフィン導入剤との反応に用いる塩基としては、例えば、アミン類やアルカリ金属系塩基などを用いることができ、具体的には、アミン類では、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、DBU、イミダゾールなどが挙げられる。アルカリ金属系塩基では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、アルキルリチウム、t-ブトキシカリウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどが挙げられる。
塩基の使用量は、式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(水酸基)1当量に対して、1~20当量、より好ましくは4~8当量、更に好ましくは約6当量用いることができる。
【0055】
上記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとオレフィン導入剤との反応には、反応性を向上させる添加剤として、テトラブチルアンモニウムハライド、アルカリ金属系ハライドなどを用いてもよい。添加剤として、具体的には、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、クラウンエーテルなどが挙げられる。これら添加剤は、反応系中でオレフィン導入剤と触媒的にハロゲン交換することで反応性を向上させ、またクラウンエーテルは金属に配位することで反応性を向上させる。
添加剤の使用量は、式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(水酸基)1当量に対して、0.005~0.1当量、より好ましくは0.01~0.05当量、更に好ましくは約0.02当量用いることができる。
【0056】
上記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとオレフィン導入剤との反応には、溶剤を用いてもよい。溶剤は必ずしも用いる必要はないが、用いられる溶剤としては、フッ素系溶剤として、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどの含フッ素芳香族炭化水素系溶剤、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。更に、有機溶剤として、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、THFなどを用いることができる。
溶剤を用いる場合の使用量は、式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー100質量部に対して、10~300質量部、好ましくは30~150質量部、更に好ましくは約50質量部用いることができる。
【0057】
上記式(7)で表される分子鎖末端に水酸基とオレフィン部位を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとオレフィン導入剤との反応により、下記式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーが得られる。
【化28】
(式中、Rf、Z、αは上記と同じである。)
【0058】
式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとして、好ましくは下記に示すものが例示できる。
【化29】
【0059】
【化30】
(式中、p1、q1、r1、q1+r1は上記と同じである。)
【0060】
次いで、上記で得られた式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーを、溶剤、例えば1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤に溶解させ、トリメトキシシラン等の分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物を混合し、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1~72時間、好ましくは20~36時間、より好ましくは約24時間熟成させることにより、上記式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーが得られる。
【0061】
また、上記式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製方法の別法としては、例えば下記のような方法が挙げられる。
上記で得られた式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーを、溶剤、例えば1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤に溶解させ、トリクロロシラン等の分子中にSiH基及び加水分解性末端基(ハロゲン原子)を有する有機ケイ素化合物を混合し、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1~72時間、好ましくは20~36時間、より好ましくは約24時間熟成させる。なお、熟成させた後、シリル基上の置換基(ハロゲン原子)を例えばメトキシ基などに変換してもよい。
【0062】
なお、上記分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物に代えて、加水分解性末端基を有さないSiH基含有有機ケイ素化合物を用いることもでき、この場合、有機ケイ素化合物として、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物を使用する。その際、上記の方法と同様にして上記式(8)で表される分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを反応させた後、該反応物のポリマー末端のSiH基とアリルトリメトキシシラン等の分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とを混合し、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは約80℃の温度で、1~72時間、好ましくは20~36時間、より好ましくは約24時間熟成させる。
【0063】
ここで、式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(9a)~(9d)で表される化合物が好ましい。
【化31】
(式中、R、X、n、R
1、R
2、g、jは上記と同じである。iは1~5、好ましくは1~3の整数で、i+jは2~9、好ましくは2~4の整数であり、R
3は炭素数2~8の2価炭化水素基である。)
【0064】
ここで、R3の炭素数2~8、好ましくは2~4の2価炭化水素基としては、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)などが挙げられ、これらの中でもエチレン基、トリメチレン基が好ましい。
【0065】
このような分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリイソプロペノキシシラン、トリアセトキシシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリヨードシラン、また以下のようなシラン化合物が挙げられる。
【化32】
【0066】
式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とを付加反応させる際の、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物の使用量は、分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(末端オレフィン部位)1当量に対して、該有機ケイ素化合物中のSiH基が1.5~4当量、より好ましくは2~2.5当量となる量を用いることができる。
【0067】
また、式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(10a)~(10c)で表される化合物が好ましい。
【化33】
(式中、R
1、R
2、g、h、j、h+jは上記と同じである。)
【0068】
このような分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物としては、例えば、下記に示すものなどが挙げられる。
【化34】
【0069】
式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物とを付加反応させる際の、分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物の使用量は、分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーの反応性末端基(末端オレフィン部位)1当量に対して、該有機ケイ素化合物中のSiH基が、5~30当量、より好ましくは7~20当量用いることができる。
【0070】
式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との付加反応物としては、例えば、下記に示すものが例示できる。
【化35】
【化36】
(式中、p1、q1、r1、q1+r1は上記と同じである。)
【0071】
また、式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、上記付加反応物のポリマー末端のSiH基と反応させる分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(11)で表される化合物が好ましい。
【化37】
(式中、R、X、nは上記と同じである。Uは単結合、又は炭素数1~6の2価炭化水素基である。)
【0072】
上記式(11)中、Uは単結合、又は炭素数1~6の2価炭化水素基であり、炭素数1~6の2価炭化水素基として、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基などが挙げられる。Uとして、好ましくは単結合、メチレン基である。
【0073】
このような分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、下記に示すものなどが挙げられる。
【化38】
【0074】
式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との付加反応物と、分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物とを反応させる際の、分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物の使用量は、分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との付加反応物の反応性末端基(分子末端のSiH基)1当量に対して、前記分子中にオレフィン部位と加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物中のオレフィン部位が、1.5~4当量、より好ましくは2~2.5当量となる量を用いることができる。
【0075】
上記式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、用いられる溶剤としてはフッ素系溶剤が好ましく、フッ素系溶剤としては、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤(3M社製、商品名:Novecシリーズ)、完全フッ素化された化合物で構成されているパーフルオロ系溶剤(3M社製、商品名:フロリナートシリーズ)などが挙げられる。
溶剤の使用量は、分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー100質量部に対して、10~300質量部、好ましくは50~150質量部、更に好ましくは約100質量部用いることができる。
【0076】
式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマーの調製において、ヒドロシリル化反応触媒としては、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール類等との錯体等、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒が挙げられる。好ましくはビニルシロキサン配位化合物等の白金系化合物である。
ヒドロシリル化反応触媒の使用量は、分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー、又はこのポリマーと分子中に加水分解性末端基を有さず、SiH基を2個以上有する有機ケイ素化合物との反応物の質量に対して、遷移金属換算(質量)で好ましくは0.01~100ppm、より好ましくは0.1~50ppmとなる量で使用する。
【0077】
その後、溶剤及び未反応物を減圧留去することで目的の化合物を得ることができる。
例えば、分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとして、下記式で表される化合物
【化39】
を使用し、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物として、トリメトキシシランを使用した場合には、下記式で表される化合物が得られる。
【化40】
【0078】
また、例えば、分子鎖末端にオレフィン部位を2つ有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーとして、下記式で表される化合物
【化41】
を使用し、分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物として、トリメトキシシランを使用した場合には、下記式で表される化合物が得られる。
【化42】
【0079】
本発明は、上記式(1)で表される水酸基含有シリル基又は加水分解性シリル基を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマー、特には式(2)で表される水酸基含有シリル基又は加水分解性シリル基を有するフルオロポリエーテル基含有ポリマーを含有する表面処理剤を提供する。該表面処理剤は、該フルオロポリエーテル基含有ポリマーの水酸基、又は該フルオロポリエーテル基含有ポリマーの末端加水分解性基を予め公知の方法により部分的に加水分解した水酸基を縮合させて得られる部分(加水分解)縮合物を含んでいてもよい。
【0080】
表面処理剤には、必要に応じて、加水分解縮合触媒、例えば、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫など)、有機チタン化合物(テトラn-ブチルチタネートなど)、有機酸(酢酸、メタンスルホン酸、フッ素変性カルボン酸など)、無機酸(塩酸、硫酸など)を添加してもよい。これらの中では、特に酢酸、テトラn-ブチルチタネート、ジラウリン酸ジブチル錫、フッ素変性カルボン酸などが望ましい。
加水分解縮合触媒の添加量は触媒量であり、通常、フルオロポリエーテル基含有ポリマー及び/又はその部分(加水分解)縮合物100質量部に対して0.01~5質量部、特に0.1~1質量部である。
【0081】
該表面処理剤は、適当な溶剤を含んでもよい。このような溶剤としては、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタンなど)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなど)、フッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)など)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)を例示することができる。これらの中では、溶解性、濡れ性などの点で、フッ素変性された溶剤が望ましく、特には、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリブチルアミン、エチルパーフルオロブチルエーテルが好ましい。
【0082】
上記溶剤はその2種以上を混合してもよく、フルオロポリエーテル基含有ポリマー及びその部分(加水分解)縮合物を均一に溶解させることが好ましい。なお、溶剤に溶解させるフルオロポリエーテル基含有ポリマー及びその部分(加水分解)縮合物の最適濃度は、処理方法により異なり、秤量しやすい量であればよいが、直接塗工する場合は、溶剤及びフルオロポリエーテル基含有ポリマー(及びその部分(加水分解)縮合物)の合計100質量部に対して0.01~10質量部、特に0.05~5質量部であることが好ましく、蒸着処理をする場合は、溶剤及びフルオロポリエーテル基含有ポリマー(及びその部分(加水分解)縮合物)の合計100質量部に対して1~100質量部、特に3~30質量部であることが好ましい。
【0083】
本発明の表面処理剤は、刷毛塗り、ディッピング、スプレー、蒸着処理など公知の方法で基材に施与することができる。蒸着処理時の加熱方法は、抵抗加熱方式でも、電子ビーム加熱方式のどちらでもよく、特に限定されるものではない。また、硬化温度は、硬化方法によって異なるが、例えば、直接塗工(刷毛塗り、ディッピング、スプレー等)の場合は、25~200℃、特に25~80℃にて30分~36時間、特に1~24時間とすることが好ましい。また、蒸着処理で施与する場合は、20~200℃の範囲が望ましい。また、加湿下で硬化させてもよい。硬化被膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1~100nm、特に1~20nmである。また、例えばスプレー塗工では予め水分を添加したフッ素系溶剤に希釈し、加水分解、つまりSi-OHを生成させた後にスプレー塗工すると塗工後の硬化が速い。
【0084】
本発明の表面処理剤で処理される基材は特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英など各種材質のものであってよい。本発明の表面処理剤は、前記基材に撥水撥油性、耐スチールウール摩耗性を付与することができる。特に、SiO2処理されたガラスやフイルムの表面処理剤として好適に使用することができる。
【0085】
本発明の表面処理剤で処理される物品としては、カーナビゲーション、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、カーオーディオ、ゲーム機器、眼鏡レンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機、複写機、PC、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、保護フイルム、反射防止フイルムなどの光学物品が挙げられる。また、滑りにくい観点から携帯電話、スマートフォン、PCなどの筐体にも処理することができる。本発明の表面処理剤は、前記物品に指紋及び皮脂が付着するのを防止し、更に傷つき防止性(耐摩耗性)を付与することができるため、特に携帯電話、スマートフォン、PCの筐体などの撥水撥油層として有用である。
【0086】
また、本発明の表面処理剤は、浴槽、洗面台のようなサニタリー製品の防汚コーティング、自動車、電車、航空機などの窓ガラス又は強化ガラス、ヘッドランプカバー等の防汚コーティング、外壁用建材の撥水撥油コーティング、台所用建材の油汚れ防止用コーティング、電話ボックスの防汚及び貼り紙・落書き防止コーティング、美術品などの指紋付着防止付与のコーティング、コンパクトディスク、DVDなどの指紋付着防止コーティング、金型用に離型剤あるいは塗料添加剤、樹脂改質剤、無機質充填剤の流動性改質剤又は分散性改質剤、テープ、フイルムなどの撥水撥油剤としても有用である。更に滑りにくい観点より建築資材、特に床材や壁材の汚れ防止コーティングにも有用である。
【実施例】
【0087】
以下、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0088】
[調製例1]
反応容器に、3-ブテニルマグネシウムブロミド288ml(0.5M THF溶液:1.4×10
-1mol)を入れ、撹拌した。続いて、下記式(A)
【化43】
(A)
で表される化合物200g(4.8×10
-2mol)、アサヒクリンAC6000 400g、PF5060 200gの混合液を反応容器内に滴下した後、50℃で6時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(B)
【化44】
(B)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー(数平均分子量;約4,190)190gを得た。
【0089】
1H-NMR
δ1.4-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ1.9-2.2(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ2.4-2.6(-CF-CH(OH)-CH2-)1H
δ3.9-4.0(-CF-CH(OH)-CH2-)1H
δ4.7-4.9(-CH2CH=CH
2
)2H
δ5.5-5.7(-CH2CH=CH2)1H
【0090】
反応容器に、上記で得られた下記式(B)
【化45】
(B)
で表される化合物100g(2.4×10
-2mol)、アリルブロミド11.6g(9.6×10
-2mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド0.18g(4.8×10
-4mol)を混合した。続いて、30質量%水酸化ナトリウム水溶液19g(1.4×10
-1mol)を添加した後、50℃で24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(C)
【化46】
(C)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー(数平均分子量;約4,230)92gを得た。
【0091】
1H-NMR
δ1.4-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ1.8-2.2(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ3.6-4.1(CF-CH-O-CH
2
CH=CH2)3H
δ4.7-5.1(CF-CH-O-CH2CH=CH
2、C-CH2CH2CH=CH
2
)4H
δ5.6-5.8(CF-CH-O-CH2CH=CH2、C-CH2CH2CH=CH2)2H
【0092】
反応容器に、上記で得られた下記式(C)
【化47】
(C)
で表される化合物80g(1.9×10
-2mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン80g、トリメトキシシラン9.3g(7.6×10
-2mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液8.5×10
-2g(Pt単体として2.6×10
-7molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物80gを得た。
【0093】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(D)で表される構造であることが確認された。
【化48】
(D)
【0094】
1H-NMR
δ0.4-0.6(-O-CH2CH2CH
2
-Si、C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)4H
δ1.2-1.7(-O-CH2CH
2
CH2-Si、C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)8H
δ3.3-3.7(CF-CH(-O-CH2CH2CH2-Si)、-O-CH
2
CH2CH2-Si、-Si(OCH
3
)3)21H
【0095】
[調製例2]
反応容器に、3-ブテニルマグネシウムブロミド396ml(0.5M THF溶液:1.9×10
-1mol)を入れ、撹拌した。続いて、下記式(E)
【化49】
(E)
で表される化合物(数平均分子量;約1,506)100g(6.6×10
-2mol)、アサヒクリンAC6000 200g、PF5060 100gの混合液を反応容器内に滴下した後、50℃で6時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(F)
【化50】
(F)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー(数平均分子量;約1,532)86gを得た。
【0096】
1H-NMR
δ1.4-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ1.9-2.2(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ2.4-2.6(-CF-CH(OH)-CH2-)1H
δ3.9-4.0(-CF-CH(OH)-CH2-)1H
δ4.7-4.9(-CH2CH=CH
2
)2H
δ5.5-5.7(-CH2CH=CH2)1H
【0097】
反応容器に、上記で得られた下記式(F)
【化51】
(F)
で表される化合物80g(5.2×10
-2mol)、アリルブロミド25g(2.1×10
-1mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド0.38g(1.0×10
-3mol)を混合した。続いて、30質量%水酸化ナトリウム水溶液42g(3.1×10
-1mol)を添加した後、50℃で24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(G)
【化52】
(G)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー(数平均分子量;約1,572)77gを得た。
【0098】
1H-NMR
δ1.4-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ1.8-2.2(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ3.6-4.1(CF-CH-O-CH
2
CH=CH2)3H
δ4.7-5.1(CF-CH-O-CH2CH=CH
2、C-CH2CH2CH=CH
2
)4H
δ5.6-5.8(CF-CH-O-CH2CH=CH2、C-CH2CH2CH=CH2)2H
【0099】
反応容器に、上記で得られた下記式(G)
【化53】
(G)
で表される化合物50g(3.2×10
-2mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン50g、トリメトキシシラン15.6g(1.3×10
-1mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.4×10
-1g(Pt単体として4.4×10
-7molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物54gを得た。
【0100】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(H)で表される構造であることが確認された。
【化54】
(H)
【0101】
1H-NMR
δ0.4-0.6(-O-CH2CH2CH
2
-Si、C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)4H
δ1.2-1.7(-O-CH2CH
2
CH2-Si、C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)8H
δ3.3-3.7(CF-CH(-O-CH2CH2CH2-Si)、-O-CH
2
CH2CH2-Si、-Si(OCH
3
)3)21H
【0102】
[調製例3]
反応容器に、3-ブテニルマグネシウムブロミド72ml(0.5M THF溶液:3.6×10
-2mol)を入れ、撹拌した。続いて、下記式(I)
【化55】
(I)
で表される化合物100g(1.2×10
-2mol)、アサヒクリンAC6000 200g、PF5060 100gの混合液を反応容器内に滴下した後、50℃で6時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(J)
【化56】
(J)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー(数平均分子量;約8,340)93gを得た。
【0103】
1H-NMR
δ1.4-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ1.9-2.3(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ2.4-2.6(-CF-CH(OH)-CH2-)1H
δ3.9-4.0(-CF-CH(OH)-CH2-)1H
δ4.7-4.9(-CH2CH=CH
2
)2H
δ5.5-5.7(-CH2CH=CH2)1H
【0104】
反応容器に、上記で得られた下記式(J)
【化57】
(J)
で表される化合物80g(9.6×10
-3mol)、アリルブロミド4.6g(3.8×10
-2mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド0.07g(1.9×10
-4mol)を混合した。続いて、30質量%水酸化ナトリウム水溶液7.7g(5.8×10
-2mol)を添加した後、50℃で24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(K)
【化58】
(K)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー(数平均分子量;約8,380)73gを得た。
【0105】
1H-NMR
δ1.4-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)2H
δ1.8-2.3(C-CH2CH
2
CH=CH2)2H
δ3.6-4.1(CF-CH-O-CH
2
CH=CH2)3H
δ4.7-5.1(CF-CH-O-CH2CH=CH
2、C-CH2CH2CH=CH
2
)4H
δ5.6-5.8(CF-CH-O-CH2CH=CH2、C-CH2CH2CH=CH2)2H
【0106】
反応容器に、上記で得られた下記式(K)
【化59】
(K)
で表される化合物50g(6.0×10
-3mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン50g、トリメトキシシラン2.9g(2.4×10
-2mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液2.6×10
-2g(Pt単体として8.2×10
-8molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物48gを得た。
【0107】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(L)で表される構造であることが確認された。
【化60】
(L)
【0108】
1H-NMR
δ0.4-0.6(-O-CH2CH2CH
2
-Si、C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)4H
δ1.2-1.8(-O-CH2CH
2
CH2-Si、C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)8H
δ3.3-3.7(CF-CH(-O-CH2CH2CH2-Si)、-O-CH
2
CH2CH2-Si、-Si(OCH
3
)3)21H
【0109】
[調製例4]
反応容器に、調製例1と同様にして得られた下記式(C)
【化61】
(C)
で表される化合物40g(9.5×10
-3mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン40g、下記式(M)
【化62】
(M)
で表される化合物14g(3.8×10
-2mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液4.3×10
-2g(Pt単体として1.3×10
-7molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物43gを得た。
【0110】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(N)で表される構造であることが確認された。
【化63】
(N)
【0111】
1H-NMR
δ0.0-0.2(-O-CH2CH2CH2-Si(CH
3
)2-C6H4-Si(CH
3
)2-、C-CH2CH2CH2CH2-Si(CH
3
)2-C6H4-Si(CH
3
)2-)24H
δ0.4-0.7(-O-CH2CH2CH
2
-Si-C6H4-Si-CH
2
CH2CH
2
-Si、C-CH2CH2CH2CH
2
-Si-C6H4-Si-CH
2
CH2CH
2
-Si)12H
δ1.2-1.8(-O-CH2CH
2
CH2-Si-C6H4-Si-CH2CH
2
CH2-Si、C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si-C6H4-Si-CH2CH
2
CH2-Si)12H
δ3.3-3.7(CF-CH(-O-CH2CH2CH2-Si)、-O-CH
2
CH2CH2-Si、-Si(OCH
3
)3)21H
δ7.0-7.5(-O-CH2CH2CH2-Si-C6
H
4
-Si-CH2CH2CH2-Si、C-CH2CH2CH2CH2-Si-C6
H
4
-Si-CH2CH2CH2-Si)8H
【0112】
[調製例5]
反応容器に、3-ブテニルマグネシウムブロミド420ml(0.5M THF溶液:2.1×10
-1mol)を入れ、撹拌した。続いて、下記式(O)
【化64】
(O)
で表される化合物(数平均分子量;約5,700)200g(3.5×10
-2mol)、アサヒクリンAC6000 400g、PF5060 200gの混合液を反応容器内に滴下した後、50℃で6時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(P)
【化65】
(P)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー(数平均分子量;約5,760)184gを得た。
【0113】
1H-NMR
δ1.3-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)4H
δ1.9-2.2(C-CH2CH
2
CH=CH2)4H
δ2.4-2.6(-CF-CH(OH)-CH2-)2H
δ3.9-4.0(-CF-CH(OH)-CH2-)2H
δ4.7-5.0(-CH2CH=CH
2
)4H
δ5.5-5.7(-CH2CH=CH2)2H
【0114】
反応容器に、上記で得られた下記式(P)
【化66】
(P)
で表される化合物100g(1.7×10
-2mol)、アリルブロミド17g(1.4×10
-1mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド0.25g(6.8×10
-4mol)を混合した。続いて、30質量%水酸化ナトリウム水溶液27g(2.0×10
-1mol)を添加した後、50℃で24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、塩酸水溶液を滴下した。分液操作により、下層であるフッ素化合物層を回収後、アセトンで洗浄した。洗浄後の下層であるフッ素化合物層を再び回収し、減圧下、残存溶剤を留去することで、下記式(Q)
【化67】
(Q)
で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー(数平均分子量;約5,840)89gを得た。
【0115】
1H-NMR
δ1.3-1.7(C-CH
2
CH2CH=CH2)4H
δ1.8-2.2(C-CH2CH
2
CH=CH2)4H
δ3.6-4.1(CF-CH-O-CH
2
CH=CH2)6H
δ4.7-5.2(CF-CH-O-CH2CH=CH
2、C-CH2CH2CH=CH
2
)8H
δ5.6-5.8(CF-CH-O-CH2CH=CH2、C-CH2CH2CH=CH2)4H
【0116】
反応容器に、上記で得られた下記式(Q)
【化68】
(Q)
で表される化合物70g(1.2×10
-2mol)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン70g、トリメトキシシラン12g(9.6×10
-2mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液1.0×10
-1g(Pt単体として3.2×10
-7molを含有)を混合し、80℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去し、液状の生成物72gを得た。
【0117】
得られた化合物は、
1H-NMRにより下記式(R)で表される構造であることが確認された。
【化69】
(R)
【0118】
1H-NMR
δ0.3-0.6(-O-CH2CH2CH
2
-Si、C-CH2CH2CH2CH
2
-Si)8H
δ1.2-1.6(-O-CH2CH
2
CH2-Si、C-CH
2
CH
2
CH
2
CH2-Si)16H
δ3.3-3.8(CF-CH(-O-CH2CH2CH2-Si)、-O-CH
2
CH2CH2-Si、-Si(OCH
3
)3)42H
【0119】
比較例には、以下のポリマーを使用した。
比較例1:
【化70】
(S)
【0120】
【0121】
【0122】
[実施例1~5、比較例1~3]
表面処理剤の調製及び硬化被膜の形成
調製例1~5で得られた式(D)、(H)、(L)、(N)、(R)で表される構造のフルオロポリエーテル基含有ポリマー及び上記(比較例1~3)の式(S)、(T)、(U)で表されるポリマーを、濃度20質量%になるようにNovec 7200(3M社製、エチルパーフルオロブチルエーテル)に溶解させて表面処理剤を調製した。最表面にSiO2を10nm処理したガラス(コーニング社製 Gorilla)に、各表面処理剤5μlを真空蒸着し(処理条件は、圧力:3.0×10-3Pa、加熱温度:500℃)、25℃、湿度50%の雰囲気下で12時間硬化させて膜厚10nmの硬化被膜を形成した。
【0123】
撥水撥油性の評価
[初期撥水撥油性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスについて、接触角計Drop Master(協和界面科学社製)を用いて、硬化被膜の水に対する接触角(撥水性)を測定した(液滴:2μl、温度:25℃、湿度:50%)。結果(初期水接触角)を表1に示す。
初期においては、実施例、比較例共に良好な撥水性を示した。
【0124】
[滑り性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスについて、滑り性の評価として、下記に示す方法で不織布に対する動摩擦係数を評価した。硬化被膜を形成したガラスの不織布に対する動摩擦係数は、ASTM D1894に準拠して、表面性測定機TYPE:14FW(新東科学(株)製)を用い、荷重100gf、引張速度500mm/分の条件で測定した。結果(動摩擦係数)を表1に示す。
滑り性
荷重:100gf
ストローク:100mm
接触面積:1×3cm2
不織布:BEMCOT(旭化成社製)
【0125】
[耐摩耗性の評価]
上記にて作製した硬化被膜を形成したガラスについて、ラビングテスター(新東科学社製)を用いて、下記条件で擦った後の硬化被膜の水に対する接触角(撥水性)を上記と同様にして測定し、水接触角が100°未満となった回数を耐摩耗性の評価とした(最大10,000回)。試験環境条件は25℃、湿度50%である。結果(スチールウール摩耗回数、消しゴム摩耗回数)を表1に示す。
耐スチールウール摩耗性
スチールウール:BONSTER#0000
接触面積:1cm2
移動距離(片道):40mm
移動速度:4,800mm/分
荷重:1kg/1cm2
耐消しゴム摩耗性
消しゴム:MINOAN
接触面積:6mm2φ
移動距離(片道):40mm
移動速度:3,200mm/分
荷重:1kg/6mm2φ
【0126】
【0127】
実施例1~5、比較例1、2のポリマーは、主鎖が-CF(CF3)CF2O-ユニットで構成されているため、動摩擦係数が高く滑りにくい。一方、比較例3のポリマーは主鎖が-(CF2)p1(CF2CF2O)q1-で構成されており、その柔軟性のため動摩擦係数が低く滑りやすい。また、比較例1、2のポリマーは、分子内に極性基であるアミド基を有しているため、耐スチールウール摩耗性、耐消しゴム摩耗性に劣るものとなった。実施例1~5、比較例3のポリマーは、分子内に極性基を有さず、基材に密着する反応性基が2つ以上あるため、強固に基材に密着し、耐スチールウール摩耗性は良好であった。しかし、比較例3のポリマーは、耐スチールウール摩耗性には優れるものの、主鎖が-(CF2)p1(CF2CF2O)q1-で構成されているため、その柔軟性により耐消しゴム摩耗性に劣る。一方、実施例1~5の末端構造を有するポリマーの場合、比較例3のポリマーに比べ耐スチールウール性に加え、更に、耐消しゴム摩耗性も良好であり、動摩擦係数が高いにもかかわらず、耐スチールウール摩耗性、耐消しゴム摩耗性をも同時に併せ持つことがわかった。