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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 9/04 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A46B9/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018157484
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020028643
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-07-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 友美
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】関口 哲生
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-42958(JP,A)
【文献】特開2003-9953(JP,A)
【文献】特開2016-209016(JP,A)
【文献】特開2004-202021(JP,A)
【文献】米国特許第5419001(US,A)
【文献】特開2006-230982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のハンドル部と、
前記ハンドル部の軸方向の先端部に連結された板状のヘッド部と、
前記ヘッド部の一方の面に設けられた複数の毛束と、
を備え、
前記複数の毛束は、
前記軸方向に並ぶ、少なくとも一列の複数の第1毛束と、
前記軸方向と直交する幅方向において、少なくとも一部が、前記複数の第1毛束を挟むように配置され、前記軸方向に沿って並ぶ、少なくとも二列の複数の第2毛束と、
前記幅方向において、少なくとも一部が、前記複数の第2毛束を挟んで、前記複数の第1毛束とは反対側に配置され、前記軸方向に沿って並ぶ、少なくとも二列の複数の第3毛束と、
を備え、
前記第3毛束、第2毛束、及び第1毛束の順に、前記ヘッド部から先端部までの先端部高さが高くなるように形成され、
前記第1毛束の各毛の先端部が、テーパ状に細くなるように形成され、
前記第2及び第3毛束の少なくとも一部の毛の先端部が、平坦状または半球状に形成されており、
前記各第1毛束の各毛は、一端部がテーパ状に形成され、他端部が平坦状または半球状に形成されており、
当該毛が二つ折りにされ、折り目部分が前記ヘッド部に固定されるように構成され、
前記各第1毛束においては、前記各毛の前記一端部の前記ヘッド部からの高さが、前記他端部の前記ヘッド部からの高さよりも高くなるように構成され、
前記各毛の一端部が、前記第1毛束の毛の先端部を構成し、
前記各第1毛束における、前記各毛の前記他端部の前記ヘッド部からの高さが、前記各第2毛束の毛の前記ヘッド部からの高さよりも低くなるように構成されており、
前記各第2毛束及び前記各第3毛束の各毛は、両端部が平坦状または半球状に形成され、当該毛が二つ折りにされ、折り目部分が前記ヘッド部に固定されるように構成され、
前記各第2毛束及び前記各第3毛束においては、前記各毛の前記両端部の前記ヘッド部からの高さが略同じである、歯ブラシ
【請求項2】
すべての前記第2及び第3毛束の各毛の先端部が、平坦状または半球状に形成されている、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記軸方向の先端側においては、当該先端側から前記ハンドル部側に向かって、側面視で、前記第1毛束に続いて、前記第3毛束が並ぶように配置されている、請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記各第1毛束の毛の前記他端部の前記ヘッド部からの高さと、前記各第2毛束の毛の前記ヘッド部からの高さとの差が、2.0mm以内である、請求項1から3のいずれかに記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記第1毛束の先端部高さと、前記第2毛束の先端部高さとの差が、1.0mm以上である、請求項1からのいずれかに記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記ヘッド部の先端部は、
先端にいくにしたがって、幅が狭くなるような一対の側辺を有するように形成されている、請求項1からのいずれかに記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は日本人の国民病とも言われており、30代の約8割に歯周病の所見が見られることが報告されている。そして、歯周病は、歯を喪失する原因として最も多いことが知られている。歯周病を予防するためには、セルフケアとして、歯ブラシを使ったプラークコントロールが重要である。
【0003】
このような背景を受けて、歯周ポケットの清掃効果を高めるための種々の歯ブラシが提案されている。例えば、特許文献1の歯ブラシは、歯周ポケットへの挿入がしやすい、先端が細い毛を採用しており、このような細い毛が、歯周ポケットの清掃には有効であることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-346630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先端が細い毛は、先端が平坦状や半球状の毛と比べて、歯垢のかき取り力が弱く、歯面や咬合面における清掃効率が低いという問題がある。本発明は、このような課題を解決できるものであり、歯周ポケットへ毛の挿入がしやすく、同時に、歯面と咬合面の清掃効果が十分に得られる歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歯ブラシは、棒状のハンドル部と、前記ハンドル部の軸方向の先端部に連結された板状のヘッド部と、前記ヘッド部の一方の面に設けられた複数の毛束と、を備え、前記複数の毛束は、前記軸方向に並ぶ、少なくとも一列の複数の第1毛束と、前記軸方向と直交する幅方向において、少なくとも一部が、前記複数の第1毛束を挟むように配置され、前記軸方向に沿って並ぶ、少なくとも二列の複数の第2毛束と、前記幅方向において、少なくとも一部が、前記複数の第2毛束を挟んで、前記複数の第1毛束とは反対側に配置され、前記軸方向に沿って並ぶ、少なくとも二列の複数の第3毛束と、を備え、前記第3毛束、第2毛束、及び第1毛束の順に、前記ヘッド部から先端部までの先端部高さが高くなるように形成され、前記第1毛束の各毛の先端部が、テーパ状に細くなるように形成され、前記第2及び第3毛束の少なくとも一部の毛の先端部が、平坦状または半球状に形成されている。
【0007】
この構成によれば、最も先端部が高い、複数の第1毛束の先端部がテーパ状に形成されているため、この部分を歯周ポケットに挿入しやすくすることができ、歯垢を掻き取りやすくすることができる。また、第2毛束及び第3毛束は、第1毛束を挟み、全体として山型になるように先端部高さが調整されているため、第1毛束が歯周ポケットに挿入された状態で、ハンドル部を軸周りに傾けると、第2毛束及び第3毛束を歯面や歯茎に容易に当接させることができる。この状態で、ブラッシングを行うと、第2毛束及び第3毛束の少なくとも一部の先端部は、平坦状または半球状に形成されているため、歯面や歯茎に力を伝達しやすい。したがって、歯周ポケットのみならず、歯面や歯茎に対する清掃力を高めることができる。
【0008】
上記歯ブラシにおいては、すべての前記第2及び第3毛束の各毛の先端部を、平坦状または半球状に形成することができる。
【0009】
この構成によれば、第2及び第3毛束の全体から、歯面や歯茎に対して力を伝達しやすくなる。したがって、歯面や歯茎に対する清掃力をさらに向上させることができる。
【0010】
上記歯ブラシにおいて、前記軸方向の先端側においては、当該先端側からハンドル部側に向かって、前記第1毛束に続いて、前記第3毛束が並ぶように配置することができる。
【0011】
この構成によれば、歯ブラシの先端側において、第1毛束に続いて、第2毛束よりも低い第3毛束が配置されているため、この部分において、第1毛束のうち、他の毛束よりも高い部分の長さを長くすることができる。これにより、第1毛束の動きの自由度が大きくなり、例えば、奥歯の歯周ポケットに、先端側の第1毛束を挿入させやすくなる。したがって、奥歯などブラッシングが容易でない部分の歯周ポケットに対する清掃力を高めることができる。
【0012】
上記歯ブラシにおいて、前記各第1毛束の各毛は、一端部がテーパ状に形成され、他端部が平坦状または半球状に形成されており、当該毛が二つ折りにされ、折り目部分が前記ヘッド部に固定されるように構成され、前記各第1毛束においては、前記各毛の前記一端部の前記ヘッド部からの高さが、前記他端部の前記ヘッド部からの高さよりも高くなるように構成され、前記各毛の一端部が、前記第1毛束の毛の先端部を構成しているものとすることができる。
【0013】
この構成によれば、第1毛束を構成する各毛が2つ折りにされ、一方の端部にのみがテーパ状に形成されている。そのため、各第1毛束においてテーパ状に形成されている部分の数を少なくすることができ、これによって、歯周ポケットに毛を挿入しやすくすることができる。
【0014】
上記歯ブラシにおいては、前記各第1毛束における、前記各毛の前記他端部の前記ヘッド部からの高さが、前記各第2毛束の毛の前記ヘッド部からの高さよりも低くなるように構成することができる。
【0015】
これにより、第1毛束において他端部の高さが第2毛束の毛の高さよりも低いため、他端部が一端部の動きを阻害するのを抑制することができ、一端部の動きの自由度を高めることができる。したがって、テーパ状の一端部を歯周ポケットに挿入しやすくすることができる。
【0016】
上記歯ブラシにおいては、前記各第1毛束の毛の前記他端部の前記ヘッド部からの高さと、前記各第2毛束の毛の前記ヘッド部からの高さとの差を、2.0mm以内とすることができる。
【0017】
これにより、第1毛束において他端部の高さと、第2毛束の毛の高さとが同等の高さになるため、歯面や歯茎において、第2毛束と概ね同じ部分に、第1毛束の他端部も当接させることができ、この部分の清掃効果をより高めることができる。
【0018】
上記歯ブラシにおいては、前記第1毛束の先端部高さと、前記第2毛束の先端部高さと差を、1.0mm以上とすることができる。
【0019】
これにより、第1毛束において第2毛束よりも高い部分の長さが長くなるため、第1毛束の先端部側の動きの自由度をより高めることができる。したがって、第1毛束を歯周ポケットに対してより挿入させやすくすることができる。
【0020】
上記歯ブラシにおいては、前記ヘッド部の前記幅方向の長さを13mm以上とすることができる。
【0021】
これにより、ヘッド部に配置できる毛束の幅方向の列を増やすことができ、広い面積を一度にブラッシングすることができる。
【0022】
上記歯ブラシにおいては、前記ヘッド部の先端部を、先端にいくにしたがって、幅が狭くなるような一対の側辺を有する三角形状に形成することができる。
【0023】
これにより、奥歯等の口腔の奥へ、ヘッドの先端部を挿入しやすくなり、奥歯のブラッシングを容易に行うことができる。
【0024】
上記歯ブラシにおいては、前記第1,第2,及び第3毛束の束径を、同一にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る歯ブラシによれば、歯周ポケットへ毛の挿入がしやすく、同時に、歯面と咬合面の清掃効果を十分に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る歯ブラシの平面図である。
図2図1の側面図である。
図3図1の拡大図である。
図4図3の側面図である。
図5図3の正面図である。
図6】各毛束を構成する毛を説明するための概略図である。
図7図1の歯ブラシの使用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る歯ブラシの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る歯ブラシの平面図、図2図1の側面図である。なお、以下では、説明の便宜上、各図の図面内での方向を基準に説明を行う。但し、本発明はこの方向の規定により限定されるものではない。
【0028】
<1.歯ブラシの概要>
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る歯ブラシは、棒状に延びるハンドル部1と、このハンドル部1の軸方向の先端部に一体的に取り付けられた板状のヘッド部2と、ヘッド部2の上面に取り付けられた複数の毛束3と、を備えている。以下、各部材について、詳細に説明する。
【0029】
<1-1.ハンドル部>
ハンドル部1は、手で握られる棒状の基部11と、この基部11とヘッド部2とを連結する連結部12とを備えており、これらが一体的に形成されている。基部11の先端部の上面及び下面には、指を載せるための載置部13が形成されており、この載置部13には、滑り止めのための凹凸や樹脂、ゴムなどを配置することができる。
【0030】
連結部12は、基部11よりも細い棒状に形成されている。
【0031】
<1-2.ヘッド部>
次に、ヘッド部2について図3も参照しつつ説明する。図3図1の拡大図である。図3に示すように、ヘッド部2は板状に形成され、平面視において、軸方向に長い八角形状に形成されている。ここでは、説明の便宜上、ヘッド部2の平面視の輪郭が、先端辺21、第1右側辺22、第1左側辺23、第2右側辺24、第2左側辺25、第3右側辺26、第3左側辺27で構成されていることとする。
【0032】
先端辺21は、ヘッド部2の最も先端の短い辺であり、左右方向に延びている。先端辺21の両側には、第1右側辺22及び第1左側辺23がそれぞれ連結されており、これらは、先端辺21から後方にいくにしたがって互いに離れるように延びている。第2右側辺24及び第2左側辺25は、それぞれ、第1右側辺22及び第1左側辺23の後端に連結されており、互いに平行に、前後方向に延びている。第3右側辺26及び第3左側辺27は、それぞれ、第2右側辺24及び第2左側辺25の後端に連結されている。そして、これらは、後方にいくにしたがって互いに近接するように延び、ハンドル部1の連結部12の両側に連結されている。
【0033】
ヘッド部2の幅Wは、口腔内の取り回しにおいて不具合が生じない範囲において特には限定されないが、例えば、10mm以上20mm以下が好ましく、13mm以上17mm以下がさらに好ましく、14mm以上16mm以下が特に好ましい。ヘッド部2の幅Wが大きくなるほど、植毛できる毛束の列が多くなり、これによって一度に大きい面積の清掃を行うことができる。例えば、ヘッド部2の上面に、5列以上、好ましくは6列以上の毛束を配置することができる。
【0034】
また、ヘッド部2の上面には、後述する各毛束3が植毛される複数の植毛穴28が形成されている(図6参照)。
【0035】
ハンドル部1及びヘッド部2は、プラスチックなどの樹脂材料で一体的に形成されている。
【0036】
<1-3.毛束>
次に、毛束3について、図4図6も参照しつつ説明する。図4図3の側面図、図5図3の正面図、図6は各毛束を構成する毛を説明するための概略図である。本実施形態においては、3種類の毛束、すなわち、第1毛束31、第2毛束32、及び第3毛束33が、それぞれ複数設けられ、前後方向に並んで列を形成するように配置されている。図3図5においては、説明の便宜のため、毛束の種類ごとに着色等しているが、説明のためであり、全ての毛束を白などの同じ色にすることができる。なお、図3図5図7に記載の毛束は、あくまでも模式図であり、複数の毛が束になっている状態を矩形状の毛束として示している。
【0037】
<1-3-1.第1毛束>
図3図5に示すように、第1毛束31により構成される列は、ヘッド部2の幅方向の中心において概ね2列設けられており、各列は、先端辺21付近からハンドル部1の連結部12付近まで延びている。但し、先端から3番目の毛束31a、及び最後部及び最後部から2番目の毛束31b,31cのみ、一列になっている。
【0038】
図5の拡大図及び図6に示すように、各第1毛束31を構成する複数の毛310は、一端部311が先端にいくにしたがって細くなるテーパ状に形成され、他端部312は、平坦状あるいは半球上に形成されている。このように形成された複数の毛310は束ねられ、二つ折りにされる。そして、折り目の部分に平板状の公知の平線4が取り付けられ、この折り目部分が平線4とともにヘッド部2の植毛穴28に打ち込まれる。これにより、第1毛束31がヘッド部2に固定される。
【0039】
このとき、第1毛束31は、各毛310の一端部311が他端部312よりも高くなるように固定されている。したがって、第1毛束31において最も高い位置にある先端部は、テーパ状の一端部311により形成されており、平坦状の他端部312は、それよりも低い位置に配置されている。ここで、第1毛束31の高さL1(先端部高さ)は、ヘッド部2の上面から、各毛310のテーパ状の一端部311の先端までの高さとする。第1毛束31の高さL1は、例えば、10~15mmとすることができ、12~15mmとすることが好ましく、13~14mmとすることが最も好ましい。なお、各第1毛束31に含まれる毛310の高さにばらつきがある場合には、毛310の高さの平均を第1毛束31の高さL1とする。この点は、後述する第2毛束32及び第3毛束33においても同様である。また、各第1毛束31に含まれる毛310の数は特に限定はされないが、例えば、20~60本であることが好ましく、30本~50本であることがより好ましい。第2毛束32及び第3毛束33に含まれる毛の数においても特に限定はされないが、例えば、10~50本であることが好ましく、20~40本であることがより好ましい。なお、ここでいう毛の数とは、上記のように毛を折り曲げ、ヘッド部2に植毛した後の毛の数、つまりヘッド部2から突出する毛の数である。この点は、本明細書における他の説明でも同様である。
【0040】
<1-3-2.第2毛束>
次に、第2毛束32について説明する。図3に示すように、第2毛束32により構成される列は、第1毛束31の両側に、それぞれ一列ずつ配置されている。すなわち、第1毛束31を挟むように配置されている。最も先端側の第2毛束32は、前から3番目の一列の第1毛束31aを挟むように配置されている。そして、最後尾の第1毛束31cの両側まで配置されている。上記のように、第1毛束31は、3番目31aと最後尾の2つ31b,31cとが1列であるため、これを挟む第2毛束32は、前後方向の中央付近が、幅方向の外側に膨れるように配置されている。
【0041】
図6に示すように、第2毛束32を構成する複数の毛320は、両端部が平坦状あるいは半球上に形成されている。このように形成された複数の毛320は束ねられ、二つ折りにされる。そして、第1毛束31と同様に平線4とともに、ヘッド部2の植毛穴28に打ち込まれる。但し、第2毛束32を構成する各毛320は、均等に二つ折りにされ、両端部が同じ高さになるように、ヘッド部2に固定される。ここで、第2毛束32の高さL2(先端部高さ)は、ヘッド部2の上面から、各毛320の両端部の先端までの高さとする。
【0042】
第2毛束32の高さL2は、第1毛束31よりも低く、例えば、8~13mmとすることができ、10~13mmとすることが好ましく、11~12mmとすることが最も好ましい。第1毛束31との高さの差(L1とL2の差)は、1~4mmとすることが好ましく、2~3mmとすることがより好ましく、1.5~2.5mmとすることが最も好ましい。
【0043】
また、第1毛束31の各毛310の他端部312の高さL4は、第2毛束32の高さL2から2.0mm以内の高さであることが好ましく、1.5mm以内であることがさらに好ましく、1.2mm以内であることが特に好ましい。特に、第2毛束32の高さL2から2.0mm以内の高さの範囲内で第2毛束32よりも低いことが好ましい。
【0044】
<1-3-3.第3毛束>
次に、第3毛束33について説明する。図3に示すように、第3毛束33により構成される列は、概ね第2毛束32の両側に、それぞれ一列ずつ配置されている。すなわち、第2毛束32を挟むように配置されている。但し、最も先端側の第3毛束33aは、前から2番目の2列の第1毛束31を挟むように配置されている。したがって、図4に示すように、側面視においては、先端から、第1毛束31に続いて、第3毛束33aが配置され、これに続いて、第2毛束32が配置されるようになっている。
【0045】
そして、第3毛束33は、そこからさらに第2毛束32の両側に配置され、最後尾からの2番目の第2毛束32の両側まで配置されている。したがって、第3毛束33は、第2毛束32と同様に、前後方向の中央付近が、幅方向の外側に膨らむように配置されている。
【0046】
以上より、第1~第3毛束31~33は、最先端が第1毛束31による2列になっており、図3に示すように、ヘッド部2の先端付近の形状に合わせ、平面視で、概ね三角形状に配置されている。また、ヘッド部2の後端付近においては、最後端の毛束3が3列になっている。つまり、第1毛束31とそれを挟む2つの第2毛束32の3つの毛束が配置されている。そして、後端部に配置される複数の毛束3は、ヘッド部2の先端付近の形状に合わせ、平面視で、概ね台形状に配置されている。
【0047】
図6に示すように、第3毛束33を構成する複数の毛330は、第2毛束32と同様に、両端部が平坦状あるいは半球状に形成されている。そして、第2毛束32と同様に、均等に二つ折りにされ、両端部が同じ高さになるように、ヘッド部2に固定される。ここで、第3毛束33の高さL3(先端部高さ)は、ヘッド部2の上面から、各毛330の両端部の先端までの高さとする。
【0048】
第3毛束33の高さL3は、第2毛束32よりも低く、例えば、7~12mmとすることができ、8~11mmとすることが好ましく、9~10mmとすることが最も好ましい。第1毛束31との高さの差(L1とL3の差)は、例えば、3mm以上とすることが好ましく、4~6mmとすることが最も好ましい。
【0049】
以上のように、第1毛束31、第2毛束32、及び第3毛束33は、この順で高さが低くなるように形成されており、これによって、図5に示すように、正面視においては、これら毛束3が、山型を形成するように配置されている。以下の表1に各毛束31~33の高さの例を2つ示すが、あくまでも例であり、これ以外の種々の高さにすることができる。
【表1】
【0050】
また、各毛束31の毛を構成する材料は、特には限定されず、例えば、飽和ポリエステル樹脂、ナイロン等にすることができる。また、各毛束31~33の毛310,320,330の径、及び各毛束31~33の束径は概ね同じにすることができる。各毛310,320,330の径は、例えば、0.12~0.25mmとすることができる。一方、各毛束31~33の束径は、例えば、0.5~2mmとすることがでる。また各毛束の植毛穴28の形状は特に限定されず、例えば真円型、楕円型、多角型などが上げられる。
【0051】
<2.歯ブラシの使用方法>
次に、上記のように形成された歯ブラシの使用方法について、図7を参照しつつ説明する。第1毛束31の高さL1は、最も高く、且つ幅方向の中心に配置されている。そして、第1毛束31の先端部は、テーパ状に形成されているため、この部分が歯周ポケット51に挿入されるように、毛束3を歯に当接させる。そのためには、図7に示すように、ハンドル部1を軸周りに回転させ、毛束3を傾けた状態にした上で、歯に当接させてブラッシングを行う。このとき、正面視で、毛束3は山型に配置されているため、第1毛束31を歯周ポケット51に挿入させるように配置すると、幅方向の一方の第2及び第3毛束32,33は歯面に当接する。したがって、歯周ポケット51の清掃とともに、歯面52の清掃を行うことができる。また、咬合面53を清掃する場合には、ヘッド部2を咬合面53と平行にして、毛束3を押しつけつつブラッシングすればよい。
【0052】
<3.特徴>
上記実施形態に係る歯ブラシによれば、次の効果を得ることができる。
(1) 最も高い第1毛束31の先端部がテーパ状に形成されているため、この部分を歯周ポケット51に挿入しやすくすることができ、歯垢や汚れを掻き出しやすくすることができる。また、第2毛束32及び第3毛束33は、第1毛束31を挟み、全体として山型になるように高さが調整されているため、第1毛束31が歯周ポケット51に挿入された状態で、ハンドル部1を軸周りに傾けると、第2毛束32及び第3毛束33を歯面52に容易に当接させることができる。この状態で、ブラッシングを行うと、第2毛束32及び第3毛束33の先端部は、平坦状または半球状に形成されているため、歯面52に力を伝達しやすい。また、咬合面53をブラッシングする際にも、第2毛束32及び第3毛束33により力を伝達しやすくなる。したがって、歯周ポケット51のみならず、歯面52や咬合面53に対する清掃力を高めることができる。
【0053】
(2) ヘッド部2の先端側において、先端側からハンドル部1側に向かっては、第1毛束31に続いて、第3毛束33aが並ぶように配置されている。すなわち、第1毛束31に続いて、第2毛束32よりも低い第3毛束33が配置されているため、この部分において、第1毛束31のうち、他の毛束よりも高い部分の長さを長くすることができる。これにより、第1毛束31の動きの自由度が大きくなり、例えば、奥歯の歯周ポケット51に、先端側(前側)の第1毛束31を挿入させやすくなる。したがって、奥歯などブラッシングが容易でない部分の歯周ポケット51に対する清掃力を高めることができる。
【0054】
(3) 各毛束に含まれる毛の数は特に限定はされないが、例えば、第1毛束31は20~60本の毛が含まれており、第2毛束32及び第3毛束33には10~50本の毛が含まれている。そして、第2毛束32及び第3毛束33においては、各毛320,330を均等に2つ折りし、両端が揃うようにしている。したがって、例えば、各毛束32,33に10本の毛が含まれているとすると、これらは2つ折りにされているため、20本の毛の端部が、第2及び第3毛束32,33の先端部を構成する。
【0055】
一方、第1毛束31の毛310も2つ折りにされるが、テーパ状に形成された一端部311の高さを高くし、この一端部311が第1毛束31の先端部を構成するようにしている。そのため、第1毛束31の先端部を構成する毛の数は、第2及び第3毛束32,33より少なくなっている。したがって、テーパ状に形成された毛の数が少ないため、歯周ポケット51に毛を挿入しやすくすることができる。
【0056】
(4) そして、第1毛束31において、他端部312の高さL4は、第2毛束32と概ね同じ高さになるように調整されているため、歯面52において、第2毛束32が当接する部分と概ね同じ部分に、第1毛束31の他端部312も当接させることができる。特に、第1毛束31の一端部311はテーパー状に形成されており、柔らかいため、歯面52をブラッシングする際には、他端部312及び第2毛束32によるブラッシングの妨げにはならない。また、他端部312及び少なくとも2列の第2毛束32によって、広い幅でブラッシングを行うことができるため、通常の歯ブラシと同様の範囲でしっかりと歯面52をブラッシングすることができる。したがって、清掃効果をより高めることができる。
【0057】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組合せ可能である。
【0058】
<4-1>
上記実施形態では、3種類の高さの毛束31~33を用いたが、これに限定されるものではなく、4種類以上の高さの異なる毛束を用いることもできる。この場合も、正面視で全体として山型になるように、幅方向に外側に行くにしたがって毛束の高さが低くなるように調整することが好ましい。但し、上記実施形態でも説明したように、第1毛束31に隣接して、第2毛束32の代わりに第3毛束33、あるいはそれよりも低い毛束を配置することもできる。すなわち、一部であれば、幅方向に高さの順に毛束が並んでいなくてもよい。
【0059】
<4-2>
毛束3の数は特には限定されない。上記実施形態では、第1毛束を2列、その両側に第2毛束32を1列ずつ、さらにその両側に第3毛束33を1列ずつ設けているが、これは一例であり、各毛束31~33の列の数は適宜変更することができる。
【0060】
<4-3>
各毛束31~33を構成する毛の数、毛の径、毛束の束径は特には限定されず、上記実施形態のように全て同じにしてもよいし、相違するようにすることもできる。特に、全ての毛束の束径を同じにすると、ブラッシング時に各毛束に均一に力を作用させることができ、さらには、製造時の束径の調整が容易になり、コストの低減に寄与する。また、各毛束31~33の少なくとも1つを着色し、高さの違いが分かるようにしてもよい。
【0061】
<4-4>
各毛束31~33の植毛の方法も特には限定されない。上記実施形態では、第1毛束31の毛310を、テーパ状の一端部が高くなるように折り曲げているが、テーパ状の部分を阻害しなければ、折り目の位置は特には限定されない。また、他端部312を、平坦状または半球状以外の形状、例えば、テーパ状に形成することもできる。
【0062】
第2及び第3毛束32,33についても、折り目の位置は特には限定されず、両端部の高さが相違するようにしてもよい。また、第2及び第3毛束32,33の毛の一部の端部を、平坦状または半球状以外の形状、例えば、テーパ状に形成することもできる。
【0063】
<4-5>
ハンドル部1及びヘッド部2の形状は特には限定されず、適宜変更することができる。例えば、ヘッド部2の形状(特に、平面形状)については、所望の毛束の配置にしたがって適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ハンドル部
2 ヘッド部
3 毛束
31 第1毛束
310 毛
311 一端部
312 他端部
32 第2毛束
320 毛
33 第3毛束
330 毛
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7