(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240327BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B65H20/02 Z
B65H20/02 A
(21)【出願番号】P 2020053341
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 稔
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184163(JP,A)
【文献】特開2008-238671(JP,A)
【文献】特開2018-118432(JP,A)
【文献】特開2019-142005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B65H 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ローラと、前記駆動ローラの表面に向けて基材を押圧する押圧ローラとを含む基材搬送部と、前記基材搬送部により搬送される基材に対して、画像データに応じてインク滴を吐出することにより画像を記録する画像記録部と、を備えたインクジェット印刷装置において、
前記押圧ローラを前記駆動ローラの回転軸と平行な方向に移動させる押圧ローラ移動部材と、前記画像データを参照して前記押圧ローラ移動部材を制御する押圧ローラ制御部と、を備え、
前記駆動ローラに供給される基材の幅サイズごとに前記押圧ローラの標準位置が予め設定されており、前記押圧ローラ制御部は、前記画像データを参照して前記押圧ローラを前記標準位置から移動させるか否かを決定し、
前記押圧ローラ制御部は、前記画像データを参照して前記押圧ローラの前記標準位置からの移動量が閾値以上である場合には前記押圧ローラを前記標準位置から移動させないと決定する、インクジェット印刷装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のインクジェット印刷装置であって、使用される基材の厚みに応じて前記押圧ローラによる前記基材の押圧力を変更する押圧力可変手段をさらに備える、インクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置は基材を搬送する搬送機構と、搬送される基材に対して画像データに応じて画像を記録する画像記録部とを備えている。
【0003】
搬送機構は能動的に回転する駆動ローラを備えている。駆動ローラには基材を駆動ローラに向けて押圧する押圧ローラが付設されている(例えば、特許文献1)。押圧ローラが基材を押圧した状態で駆動ローラが回転することで、基材を安定的に搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット印刷装置は様々な画像データに基づいて印刷を行う。ところが、搬送装置は画像データの変化に対応して基材を搬送するようにはなっていなかった。このため、基材を安定的に搬送できないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、基材を安定的に搬送することのできるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、つぎのような構成をとる。
【0008】
すなわち、この発明の一実施形態は、駆動ローラと、前記駆動ローラの表面に向けて基材を押圧する押圧ローラとを含む基材搬送部と、前記基材搬送部により搬送される基材に対して、画像データに応じてインク滴を吐出することにより画像を記録する画像記録部と、を備えたインクジェット印刷装置において、前記押圧ローラを前記駆動ローラの回転軸と平行な方向に移動させる押圧ローラ移動部材と、前記画像データを参照して前記押圧ローラ移動部材を制御する押圧ローラ制御部と、を備えたインクジェット印刷装置を提供する。
【0009】
一つの実施形態においては、前記駆動ローラに供給される基材の幅サイズごとに前記押圧ローラの標準位置が予め設定されており、前記押圧ローラ制御部は、前記画像データを参照して前記押圧ローラを前記標準位置から移動させるか否かを決定する。
【0010】
一つの実施形態においては、前記押圧ローラ制御部は、前記画像データを参照して前記押圧ローラの前記標準位置からの移動量が閾値以上である場合には前記押圧ローラを前記標準位置から移動させないと決定する。
一つの実施形態においては、前記押圧ローラ制御部は、前記画像に含まれる複数の画像部品のいずれかと前記押圧ローラとの重なりを回避できない場合は、前記複数の画像部品のうちでインク濃度が最も低い画像部品と重なる位置に前記押圧ローラが移動するように前記押圧ローラ移動部材を制御する。
【0011】
一つの実施形態においては、前記インクジェット印刷装置は、使用される基材の厚みに応じて前記押圧ローラによる前記基材の押圧力を変更する押圧力可変手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、押圧ローラ制御部は画像データを参照して押圧ローラ移動部材を制御し、押圧ローラを駆動ローラの回転軸に平行な方向に移動させる。これにより、押圧ローラをインクが付着しにくい位置に移動させ、基材から押圧ローラへのインク転写を抑制することができる。この結果、駆動ローラと押圧ローラは協働して基材を安定的に搬送することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るインクジェット印刷装置1の概略構成図である。
【
図4】印刷用紙9の紙幅に応じて押圧ローラ15aおよび15bの位置を変更する制御を説明する模式図である。
【
図5】印刷用紙9に印刷される画像に応じて押圧ローラ15aおよび15bの位置を変更する制御を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、印刷用紙9が搬送される方向を「搬送方向」、搬送方向に直交する水平方向を「紙幅方向」とそれぞれ称する。
<1.印刷装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置1の概略構成図である。この印刷装置1は、長尺帯状の基材である印刷用紙9をその長手方向に搬送しつつ、印刷用紙9の表面にインクジェット方式で画像を記録するインクジェット印刷装置である。
図1に示すように、印刷装置1は、搬送機構10、画像記録部20、乾燥部30、および制御部40を備えている。
【0015】
搬送機構10は、所定の搬送経路に沿って印刷用紙9を搬送するための機構である。本実施形態の搬送機構10は、巻き出し部11、巻き取り部12、複数の駆動ローラ13,および従動ローラ14を有する。巻き出し部11および巻き取り部12には、動力源となるモータ(図示省略)が連結されている。
【0016】
巻き出し部11は印刷用紙9のロール(印刷用紙ロールRo)を保持する部材である。巻き出し部11は、1個の印刷用紙ロールRoを保持することができる。
【0017】
駆動ローラ13は不図示のモータの動力によって自発的に回転する駆動ローラ13である。駆動ローラ13は押圧ローラ15と協働して印刷用紙9をニップして印刷用紙9を搬送する。一方、従動ローラ14はモータに連結されず、印刷用紙9の動きに従って回転する。
【0018】
複数の駆動ローラ13および従動ローラ14は、印刷用紙9の搬送経路を構成する。各駆動ローラ13および従動ローラ14は、水平軸を中心として回転することによって、印刷用紙9を搬送経路の下流側へ案内する。また、各駆動ローラ13および従動ローラ14に印刷用紙9が接触することで、印刷用紙9に張力が与えられる。
【0019】
制御部40が巻き出し部11、巻き取り部12、および駆動ローラ13に連結されたモータを駆動させると、巻き出し部11、巻き取り部12および駆動ローラ13が、それぞれ回転する。これにより、印刷用紙9は、巻き出し部11から繰り出され、複数の搬送ローラ13,14を経て、巻き取り部12まで搬送される。
【0020】
画像記録部20は、搬送機構10により搬送される印刷用紙9に対して、インク滴dを吐出して画像を記録する。
【0021】
本実施形態の画像記録部20は、4つの記録ヘッド21を有する。4つの記録ヘッド21は、印刷用紙9の搬送経路の上方に、搬送方向に間隔をあけて配列されている。各記録ヘッド21は、印刷用紙9の紙幅方向と平行に配列された複数の吐出口を有する。4つの記録ヘッド21は、複数の吐出口から印刷用紙9の上面へ向けて、カラー画像の色成分となるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のインク滴を、それぞれ吐出する。これにより、印刷用紙9の上面にカラー画像が記録される。なお、記録ヘッド21の数は4に限定されず、4未満でも4を超えてもよい。4を超える場合、オレンジやブルーなどのいわゆる特色のインク、磁気インク、またはインビジブルインクのインク滴を吐出する記録ヘッド21を備えてもよい。
【0022】
本実施形態の画像記録部20は、いわゆるワンパス方式の記録部である。すなわち、4つの記録ヘッド21は、紙幅方向に往復移動せず固定されている。画像記録部20は、印刷用紙9が各記録ヘッド21の下方を1回だけ通過する間に、各記録ヘッド21からインク滴を吐出することにより、印刷用紙9の上面に画像を記録する。
【0023】
乾燥部30は、画像記録部20によりインクが塗布された印刷用紙9を加熱して乾燥させる。
【0024】
制御部40は、印刷装置1内の各部を動作制御する。
図1中に概念的に示したように、制御部40は、CPU等の演算処理部401、RAM等のメモリ402、および、ハードディスクドライブ等の記憶部403を有するコンピュータにより構成される。
【0025】
図2は、駆動ローラ13、駆動ローラ13に付設された押圧ローラ15、および押圧ローラ15を駆動する押圧ローラ駆動部50の上面図である。駆動ローラ13は回転軸131を中心に回転自在なローラであって、シャフト132を介してモータ133によって回転する。
【0026】
駆動ローラ13は、矢印134方向(搬送方向)に進入する印刷用紙9を巻付可能なローラ表面135を備えている。ローラ表面135に対しては紙幅方向Xに関する座標が設定されている。すなわち、紙幅方向X関する中心位置をPcとし、中心位置Pcから+X方向に離れるにしたがって、位置P20、P21、P22が設定され、中心位置Pcから-X方向に離れるにしたがってP10、P11、P12が設定されている。
【0027】
駆動ローラ13には2個の押圧ローラ15aおよび15bが付設されている。押圧ローラ15aおよび15bはケースCとケースCの内部に回転可能に支持された回転体Rとを有している。回転体Rの表面が印刷用紙9を駆動ローラ13のローラ表面135に向けて押圧することで、駆動ローラ13が印刷用紙9を安定して搬送できるようにする。
【0028】
押圧ローラ15aおよび15bは押圧ローラ駆動部50によって個別に駆動ローラ13の回転軸131と平行な方向に移動可能とされている。押圧ローラ駆動部50は、紙幅方向Xに長尺なガイド51と、ガイド51の両端をローラ表面135に向けて付勢するソレノイド52と、ガイド51に軸支されたシャフト53aおよび53bと、ガイド51に平行にローラ表面135上に延長する一対のベルト54aおよび54bと、ベルト54aおよび54bがかけ渡されたローラ55aおよび55bと、ローラ55aおよび55bを回転させてベルト54aおよび54bを移動させるモータ56aおよび56bと、ベルト54aをシャフト53aに連結する連結部57aと、ベルト54bをローラ15bのケースCに連結する連結部57bとを備えている。
【0029】
ソレノイド52はガイド51の両端をローラ表面135に向けて付勢する力を可変することが可能であり、これにより押圧ローラ15aおよび15bの印刷用紙9に対する押圧力を調整することができる。
【0030】
また、モータ56aおよび56bはベルト54aおよび54bを移動することにより、押圧ローラ15aおよび15bのローラ表面135における紙幅方向Xの位置を変更する。
【0031】
図3は、制御部40と印刷装置1各部との接続を示した制御ブロック図である。
図3に示すように、制御部40は、上述した搬送機構10、画像記録部20、押圧ローラ駆動部50、および作業者とのインターフェースとして機能する入力部60と、それぞれ通信可能に接続されている。
【0032】
制御部40は、記憶部403に記憶されたコンピュータプログラムPやデータDを、メモリ402(
図1参照)に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPおよびデータDに基づいて、演算処理部401(
図1参照)が演算処理を行うことにより、印刷装置1各部の動作を制御する。これにより、印刷装置1における印刷処理や、後述する押圧ローラ15aおよび15bの駆動制御が進行する。
【0033】
また、
図3中に概念的に示したように、制御部40は、搬送制御部41、ヘッド制御部42、および押圧ローラ制御部43を有する。これらの各部の機能は、制御部40としてのコンピュータが、コンピュータプログラムPに従って動作することにより、実現される。
【0034】
搬送制御部41は、搬送機構10による印刷用紙9の搬送動作を制御する。具体的には、搬送制御部41は、巻き出し部11、巻き取り部12、および各駆動ローラ13に接続されたモータに対して、駆動指令信号Saを出力する。これにより、各モータを、それぞれ指定された回転数で駆動させる。各モータが駆動すると、巻き出し部11、巻き取り部12、および複数の駆動ローラ13の回転によって、印刷用紙9が搬送経路に沿って搬送される。
【0035】
ヘッド制御部42は、4つの記録ヘッド21の各々におけるインク滴の吐出動作を制御する。ヘッド制御部42は、入稿された画像データに基づいて、4つの記録ヘッド21に吐出指令信号Sbを出力する。吐出指令信号Sbには、インク滴を吐出すべきノズル、インク滴のサイズ、およびインク滴の吐出タイミングを示す情報が含まれる。各記録ヘッド21は、吐出指令信号Sbにより指定されたノズルから、指定されたタイミングで、指定されたサイズのインク滴を吐出する。これにより、印刷用紙9の上面に、画像データに対応する画像が記録される。
【0036】
また、制御部40には入力部60が接続されている。作業者は入力部60を介して、巻き出し部11にセットされた印刷用紙ロールRoの厚みや幅サイズを含む用紙情報Sfを制御部40(押圧ローラ制御部43)の記憶部403に格納することができる。
【0037】
押圧ローラ制御部43は、印刷用紙9の厚みに応じた押圧力で印刷用紙9を押圧するように、記憶部403に格納された用紙情報Sfを参照して、ソレノイド52に向けて制御信号Scを送出する。これにより、ソレノイド52は厚紙の場合は比較的強い押圧力で印刷用紙9を押圧し、薄紙の場合は比較的弱い押圧力で印刷用紙9を押圧できるようになる。
<2.押圧ローラの制御について>
続いて、印刷装置1における押圧ローラ15aおよび15bの制御について、
図4および
図5を参照してより詳細に説明する。
【0038】
図4は駆動ローラ13のローラ表面135に巻き付けられる印刷用紙9の紙幅と押圧ローラ15aおよび15bの位置との対応付けを説明するための模式図である。
【0039】
図4(a)は、X方向中心位置PCよりも-X方向側のローラ表面135に1枚の印刷用紙9が巻き付けられた状態を示している。
【0040】
図4(b)は、X方向中心位置PCを中心にしてローラ表面135に1枚の印刷用紙9が巻き付けられた状態を示している。
【0041】
記憶部403は印刷装置1の巻き出し部11に取り付けられる印刷用紙9のロールRの紙幅ごとに押圧ローラ15aおよび15bのX方向位置を予め記憶している。作業者が入力部60から印刷用紙9の紙幅を用紙情報Sfとして入力する。すると、押圧制御部43は入力された用紙情報Sfに対応する押圧ローラ15aおよび15bのX方向位置を記憶部403から読み出して、モータ56aおよび56bに制御信号SdおよびSeを送信する。モータ56aおよび56bは制御信号SdおよびSeにより駆動されて押圧ローラ15aおよび15bを、駆動ローラ15との間で印刷用紙9を安定的に搬送することのできる位置に向けて移動する。
【0042】
すなわち、X方向中心位置PCよりも-X方向側のローラ表面135に1枚の印刷用紙9が巻き付けられた場合には、
図4(a)に示すように、押圧ローラ15aを位置P12へ、押圧ローラ15bを位置P10に移動する。これにより、1枚の印刷用紙9が押圧ローラ15aおよび15bによりX軸方向に異なる2か所で押圧されるようになる。
【0043】
また、X方向中心位置PCを中心にしてローラ表面135に1枚の印刷用紙9が巻き付けられた場合には、
図4(b)に示すように、押圧ローラ15aを位置P11に移動させ、押圧ローラ15bを位置P21に移動させる。これにより、1枚の印刷用紙9が中心位置PCを中心に振り分けた異なる2か所で押圧ローラ15aおよび15bによって押圧されるようになる。
【0044】
図5は駆動ローラ13のローラ表面135に1枚の印刷用紙9を巻き付けた際に、印刷用紙9の上に印刷される画像の位置に応じて押圧ローラ15aおよび15bの位置を変更する制御を説明するための模式図である。
【0045】
図5(a)はローラ表面135に1枚の印刷用紙9を巻き付けた場合の押圧ローラ15aおよび15bの標準的な位置を示している。すなわち、押圧ローラ15aを標準位置P11に、押圧ローラ15bを標準位置P21に位置付けて印刷用紙9を押圧させる。
【0046】
図5(b)は印刷用紙9の上に、複数のページPa1およびPa2を面付した場合の押圧ローラ15aおよび15bのX方向位置を示している。すなわち、印刷用紙9上のページPa1と重ならない位置(標準位置P11よりも-X方向側位置)に押圧ローラ15aを位置させる。同様に、印刷用紙9上のページPa2と重ならない位置(標準位置P21よりも+X方向側位置)に押圧ローラ15bを位置させる。
【0047】
印刷用紙9上のページPa1の位置等に関する情報は、画像データとして記憶部403に保持されている。押圧ローラ制御部43はこの画像データを参照することにより印刷用紙9上のページPa1の位置を特定し、ページPa1の位置に重ならない位置に押圧ローラ15aおよび15bが移動するように、モータ56aおよび56bを制御することができる。
【0048】
ページPa1およびPa2には記録ヘッド21から吐出したインクが付着している。このため、押圧ローラ15aおよび15bがページPa1およびPa2を押圧すると、ページPa1およびPa2に付着しているインクが押圧ローラ15aおよび15bに転写するおそれがある。これに対し、
図5(b)に示す位置に押圧ローラ15aおよび15bを移動させるとページPa1およびPa2から押圧ローラ15aおよび15bへのインク転写が回避でき、印刷用紙9を安定して搬送することができるようになる。
【0049】
図5(c)は複数の画像部品IM1、IM2およびIM3を含む1のページPa1を印刷用紙9に面付した場合の押圧ローラ15aおよび15bのX方向位置を示している。すなわち、ページPa1上の画像部品IM1およびIM2の隙間位置(標準位置P11よりも+X方向側位置)に押圧ローラ15aを位置させる。同様に、印刷用紙9上の画像部品IM2およびIM3の隙間位置(標準位置P21よりも-X方向側位置)に押圧ローラ15bを位置させる。
【0050】
印刷用紙9上の画像部品IM1~IM3の位置等に関する情報は、画像データとして記憶部403に保持されている。押圧ローラ制御部43はこの画像データを参照することにより印刷用紙9上の画像部品IM1~IM3の位置を特定し、画像部品IM1~IM3の位置に重ならない位置に押圧ローラ15aおよび15bが移動するように、モータ56aおよび56bを制御することができる。
【0051】
画像部品IM1~IM3には記録ヘッド21から吐出したインクが付着しているため、押圧ローラ15aおよび15bが画像部品IM1~IM3を押圧すると、画像部品IM1~IM3のインクが押圧ローラ15aおよび15bに転写するおそれがある。これに対し、
図5(c)に示す位置に押圧ローラ15aおよび15bを移動させると押圧ローラ15aおよび15bへのインク転写が回避でき、印刷用紙9を安定して搬送することができるようになる。
【0052】
図5(b)および
図5(c)では、押圧ローラ15aおよび15bへのインク転写を回避するために、各押圧ローラ15aおよび15bを標準位置P11およびP21からずれた位置に移動させた。しかし、あまりに大きくずらすと押圧力のバランスが崩れ、印刷用紙9を安定的に搬送できなくなるおそれがある。そこで、標準位置P11およびP21から移動可能な量の上限閾値を予め設定しておき、当該上限を超えない範囲で押圧ローラ15aおよび15bを移動するようにしてもよい。
【0053】
また、ページPaや画像部品IMと重ならない移動候補位置が複数存在する場合は、インク濃度が最も低い移動候補位置に向けて押圧ローラ15aおよび15bを移動させるようにしてもよい。たとえば、
図5(c)の例では、押圧ローラ15bを標準位置P21の+X方向側または-X方向側のいずれに移動させても押圧ローラ15bと画像部品IM3との重なりを防止することが可能である。しかし、押圧ローラ15bを+X方向側に移動させた場合には、
図5(c)中の仮想線で示すように、押圧ローラ15bの一部分が画像部品IM3に重なってしまう。このため、押圧ローラ制御部43は、画像部品IM3との重なりがより少ない位置(
図5(c)中の実線で示す位置)に押圧ローラ15bを移動させることが望ましい。
【0054】
さらに、画像データによっては、画像部品IMの間に隙間が存在しないことがある。例えば、
図5(d)の例では、ページPa1の上に4個の画像部品IM1~IM4が印刷されるが、各画像部品IMの間に隙間がない。この場合、隣接する画像部品IMのうちインク濃度がより低い画像部品IMに重なるように、押圧ローラ15を移動させることが望ましい。すなわち、画像部品IM1とこれに隣接する画像部品IM2とでは、後者の方がインク濃度がより低いため、画像部品IM2に重なる位置に押圧ローラ15aを移動させている。押圧ローラ15bについては、画像部品IM3とIM4のうち、前者の方がインク濃度がより低いため、画像部品IM3に重なる位置に押圧ローラ15bを移動させている。すなわち、押圧ローラ制御部43は画像データに基づいて印刷用紙9に印刷される高濃度の画像部品IM(ここでは画像部品IM4)を特定し、この画像部品IM4が存在する位置を回避できる位置に、押圧ローラ15bが移動するよう、モータ56bを制御する。
<3.変形例について>
上記実施形態では、2個の押圧ローラ15を配置したが、押圧ローラ15の数は1でもよい。
【0055】
上記実施の形態では、搬送経路に駆動ローラ13が3個存在し、これら3個の駆動ローラ13に付設された全ての押圧ローラ15の位置を画像データに応じて変更していた。しかし、画像記録部20よりも搬送方向下流側に配設された2個の駆動ローラ13についてのみ、押圧ローラ15の位置を画像データに応じて変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 印刷装置
9 印刷用紙
10 搬送機構
11 巻き出し部
12 巻取部
13 駆動ローラ
14 従動ローラ
15 押圧ローラ
20 画像記録部
30 乾燥部
40 制御部
50 押圧ローラ駆動部
60 入力部