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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
H01L21/26 T
H01L21/26 J
H01L21/26 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020087351
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021182582
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎一
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-084756(JP,A)
【文献】特表2015-536048(JP,A)
【文献】特開2019-165157(JP,A)
【文献】特表2012-524400(JP,A)
【文献】特開2007-141896(JP,A)
【文献】特開2018-044915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英からなり、かつ、基板を第1の側から支持するための支持部と、
前記基板に対して前記第1の側とは反対側の第2の側に配置され、かつ、フラッシュ光を照射することによって前記基板を加熱するためのフラッシュランプと、
前記基板の前記第1の側に配置され、かつ、前記基板を連続加熱するための少なくとも1つのLEDランプと、
石英からなり、かつ、前記フラッシュランプと前記基板との間、および、前記LEDランプと前記支持部との間にそれぞれ配置される石英窓と、
前記基板の前記第1の側に配置され、かつ、前記基板の温度を測定するための少なくとも1つの放射温度計とを備え、
前記放射温度計は、前記支持部を透過可能な波長の光を受光して、前記基板の温度を測定し、
前記基板の前記第2の側に配置され、かつ、前記基板を連続加熱するための連続点灯ランプをさらに備え、
前記LEDランプは、前記フラッシュランプの最大発光強度を示す波長以下、かつ、前記連続点灯ランプの最大発光強度を示す波長以上の波長を除く範囲の波長で前記基板に指向性の光を照射することによって、前記基板を連続加熱する、
熱処理装置。
【請求項2】
請求項に記載の熱処理装置であり、
前記放射温度計は、前記LEDランプの発光波長を受光する前記波長から除外する、
熱処理装置。
【請求項3】
請求項またはに記載の熱処理装置であり、
前記LEDランプは、前記基板の前記第1の側の面に対向して複数配置される、
熱処理装置。
【請求項4】
請求項1からのうちのいずれか1つに記載の熱処理装置であり、
前記放射温度計の光軸が、前記基板の主面と直交する、
熱処理装置。
【請求項5】
請求項1からのうちのいずれか1つに記載の熱処理装置であり、
前記放射温度計の測定可能な波長領域が、3μm以下である、
熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書に開示される技術は、熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、不純物導入は半導体ウエハなどの薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する場合がある)内にpn接合などを形成するための必要となる工程である。不純物導入は、イオン注入とその後のアニール法によってなされるものが一般的である。
【0003】
注入された不純物をアニール処理によって活性化させる際に、アニール時間が数秒程度以上であると、打ち込まれた不純物が熱によって深く拡散し、その結果接合深さが要求よりも深くなり過ぎてしまうため、良好なデバイス形成に支障が生じるおそれがある。
【0004】
そこで、極めて短時間で半導体ウエハを加熱するアニール技術として、フラッシュランプアニール(flash lamp anneal、すなわち、FLA)が注目されている。FLAは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」と記載する場合には、キセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウエハの上面にフラッシュ光を照射することによって、不純物が注入された半導体ウエハの上面のみを極めて短時間(たとえば、数ミリ秒以下)で昇温させる熱処理技術である。
【0005】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、また、シリコンの半導体ウエハの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウエハにフラッシュ光を照射した場合には、透過光が少ないため、半導体ウエハを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウエハの表面近傍のみを選択的に昇温することができることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、不純物を深く拡散させずに、不純物活性化を実行することができる。
【0006】
たとえば特許文献1には、チャンバーの下方に石英窓を隔てて配置されたハロゲンランプによって半導体ウエハを予備加熱した後、チャンバーの上方に石英窓を隔てて配置されたフラッシュランプから半導体ウエハの上面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプアニール装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-148201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1では、加熱された半導体ウエハの温度を測定する放射温度計が基板の下方に配置されている。当該放射温度計は、チャンバーの下方に配置されているハロゲンランプから照射される光の波長領域を避けつつ、半導体ウエハの下面から放射される光を受光する必要があるため、測定可能な波長領域および放射温度計の配置に制限があった。そして、当該制限は、放射温度計の測定精度を低下させる要因ともなっていた。
【0009】
本願明細書に開示される技術は、以上に記載されたような問題を鑑みてなされたものであり、熱処理装置において、基板の温度の測定精度を高めるための技術である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、石英からなり、かつ、基板を第1の側から支持するための支持部と、前記基板に対して前記第1の側とは反対側の第2の側に配置され、かつ、フラッシュ光を照射することによって前記基板を加熱するためのフラッシュランプと、前記基板の前記第1の側に配置され、かつ、前記基板を連続加熱するための少なくとも1つのLEDランプと、石英からなり、かつ、前記フラッシュランプと前記基板との間、および、前記LEDランプと前記支持部との間にそれぞれ配置される石英窓と、前記基板の前記第1の側に配置され、かつ、前記基板の温度を測定するための少なくとも1つの放射温度計とを備え、前記放射温度計は、前記支持部を透過可能な波長の光を受光して、前記基板の温度を測定し、前記基板の前記第2の側に配置され、かつ、前記基板を連続加熱するための連続点灯ランプをさらに備え、前記LEDランプは、前記フラッシュランプの最大発光強度を示す波長以下、かつ、前記連続点灯ランプの最大発光強度を示す波長以上の波長を除く範囲の波長で前記基板に指向性の光を照射することによって、前記基板を連続加熱する
【0012】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、第の態様に関連し、前記放射温度計は、前記LEDランプの発光波長を受光する前記波長から除外する。
【0013】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、第またはの態様に関連し、前記LEDランプは、前記基板の前記第1の側の面に対向して複数配置される。
【0018】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、第1からのうちのいずれか1つの態様に関連し、前記放射温度計の光軸が、前記基板の主面と直交する。
【0019】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、第1からのうちのいずれか1つの態様に関連し、前記放射温度計の測定可能な波長領域が、3μm以下である。
【発明の効果】
【0021】
本願明細書に開示される技術の第1からの態様によれば、放射温度計が基板から放射された光を十分に受光することができるため、基板の温度の測定精度を高めることができる。
【0022】
また、本願明細書に開示される技術に関連する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態に関する、熱処理装置の構成の例を概略的に示す平面図である。
図2】本実施の形態に関する、熱処理装置の構成の例を概略的に示す正面図である。
図3】本実施の形態に関する、熱処理装置における熱処理部の構成を概略的に示す断面図である。
図4】保持部の全体外観を示す斜視図である。
図5】サセプタの平面図である。
図6】サセプタの断面図である。
図7】移載機構の平面図である。
図8】移載機構の側面図である。
図9】加熱部における複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図10】下部放射温度計、上部放射温度計および制御部の関係性を示す図である。
図11】半導体ウエハの処理手順を示すフローチャートである。
図12】半導体ウエハの上面の温度の変化を示す図である。
図13】実施の形態に関する、熱処理部の構成を概略的に示す断面図である。
図14】フラッシュランプの発光波長、ハロゲンランプの発光波長、および、半導体ウエハの吸収係数の例を示す図である。
図15】実施の形態に関する、熱処理部の構成を概略的に示す断面図である。
図16】実施の形態に関する、熱処理部の構成を概略的に示す断面図である。
図17】保持部の全体外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0025】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化が図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0026】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0027】
また、以下に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0028】
また、以下に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0029】
また、以下に記載される説明における、相対的または絶対的な位置関係を示す表現、たとえば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」または「同軸」などは、特に断らない限りは、その位置関係を厳密に示す場合、および、公差または同程度の機能が得られる範囲において角度または距離が変位している場合を含むものとする。
【0030】
また、以下に記載される説明において、等しい状態であることを示す表現、たとえば、「同一」、「等しい」、「均一」または「均質」などは、特に断らない限りは、厳密に等しい状態であることを示す場合、および、公差または同程度の機能が得られる範囲において差が生じている場合を含むものとする。
【0031】
また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
【0032】
また、以下に記載される説明において、「…の上面」または「…の下面」などと記載される場合、対象となる構成要素の上面自体または下面自体に加えて、対象となる構成要素の上面または下面に他の構成要素が形成された状態も含むものとする。すなわち、たとえば、「甲の上面に設けられる乙」と記載される場合、甲と乙との間に別の構成要素「丙」が介在することを妨げるものではない。
【0033】
<第1の実施の形態>
以下、本実施の形態に関する熱処理装置および熱処理方法について説明する。
【0034】
<熱処理装置の構成について>
図1は、本実施の形態に関する熱処理装置100の構成の例を概略的に示す平面図である。また、図2は、本実施の形態に関する熱処理装置100の構成の例を概略的に示す正面図である。
【0035】
図1に例が示されるように、熱処理装置100は、基板として円板形状の半導体ウエハWにフラッシュ光を照射して当該半導体ウエハWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
【0036】
処理対象となる半導体ウエハWのサイズは特に限定されるものではないが、たとえばφ300mmまたはφ450mmの円形である。
【0037】
図1および図2に示されるように、熱処理装置100は、未処理の半導体ウエハWを外部から装置内に搬入するとともに、処理済みの半導体ウエハWを装置外に搬出するためのインデクサ部101と、未処理の半導体ウエハWの位置決めを行うアライメント部230と、加熱処理後の半導体ウエハWの冷却を行う2つの冷却部130および冷却部140と、半導体ウエハWにフラッシュ加熱処理を施す熱処理部160と、冷却部130、冷却部140および熱処理部160に対して半導体ウエハWの受け渡しを行う搬送ロボット150とを備える。
【0038】
また、熱処理装置100は、上記の各処理部に設けられた動作機構および搬送ロボット150を制御して、半導体ウエハWのフラッシュ加熱処理を進行させる制御部3を備える。
【0039】
インデクサ部101は、複数のキャリアC(本実施の形態では2個)を並べて載置するロードポート110と、各キャリアCから未処理の半導体ウエハWを取り出すとともに、各キャリアCに処理済みの半導体ウエハWを収納する受渡ロボット120とを備えている。
【0040】
未処理の半導体ウエハWを収容するキャリアCは、無人搬送車(AGV、OHT)などによって搬送されてロードポート110に載置されるとともに、処理済みの半導体ウエハWを収容するキャリアCは、無人搬送車によってロードポート110から持ち去られる。
【0041】
また、ロードポート110においては、受渡ロボット120がキャリアCに対して任意の半導体ウエハWの出し入れを行うことができるように、キャリアCが図2の矢印CUで示されるように昇降移動可能に構成されている。
【0042】
なお、キャリアCの形態としては、半導体ウエハWを密閉空間に収納するfront opening unified pod(FOUP)の他に、standard mechanical inter face(SMIF)ポッド、または、収納された半導体ウエハWを外気に曝すopen cassette(OC)であってもよい。
【0043】
また、受渡ロボット120は、図1の矢印120Sによって示されるようなスライド移動、矢印120Rによって示されるような旋回動作および昇降動作が可能とされている。これによって、受渡ロボット120は、2つのキャリアCに対して半導体ウエハWの出し入れを行うとともに、アライメント部230および2つの冷却部130および冷却部140に対して半導体ウエハWの受け渡しを行う。
【0044】
受渡ロボット120によるキャリアCに対する半導体ウエハWの出し入れは、ハンド121のスライド移動、および、キャリアCの昇降移動によって行われる。また、受渡ロボット120と、アライメント部230または冷却部130(冷却部140)との半導体ウエハWの受け渡しは、ハンド121のスライド移動、および、受渡ロボット120の昇降動作によって行われる。
【0045】
アライメント部230は、Y軸方向に沿ったインデクサ部101の側方に接続されて設けられている。アライメント部230は、半導体ウエハWを水平面内で回転させてフラッシュ加熱に適切な向きに向ける処理部である。アライメント部230は、アルミニウム合金製の筐体であるアライメントチャンバー231の内部に、半導体ウエハWを水平姿勢に支持して回転させる機構、および、半導体ウエハWの周縁部に形成されたノッチまたはオリフラなどを光学的に検出する機構などを設けて構成される。
【0046】
アライメント部230への半導体ウエハWの受け渡しは、受渡ロボット120によって行われる。受渡ロボット120からアライメントチャンバー231へは、ウエハ中心が所定の位置に位置するように半導体ウエハWが渡される。
【0047】
アライメント部230では、インデクサ部101から受け取った半導体ウエハWの中心部を回転中心として鉛直方向軸まわりで半導体ウエハWを回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウエハWの向きを調整する。向き調整の終了した半導体ウエハWは、受渡ロボット120によってアライメントチャンバー231から取り出される。
【0048】
搬送ロボット150による半導体ウエハWの搬送空間として、搬送ロボット150を収容する搬送チャンバー170が設けられている。その搬送チャンバー170の三方に熱処理部160のチャンバー6、冷却部130の第1クールチャンバー131および冷却部140の第2クールチャンバー141が連通接続されている。
【0049】
熱処理装置100の主要部である熱処理部160は、予備加熱(アシスト加熱)を行った半導体ウエハWにキセノンフラッシュランプFLからの閃光(フラッシュ光)を照射してフラッシュ加熱処理を行う基板処理部である。この熱処理部160の構成についてはさらに後述する。
【0050】
2つの冷却部130および冷却部140は、概ね同様の構成を備える。冷却部130および冷却部140はそれぞれ、アルミニウム合金製の筐体である第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141の内部に、金属製の冷却プレートと、その上面に載置された石英板とを備える(いずれも図示省略)。当該冷却プレートは、ペルチェ素子または恒温水循環によって常温(約23℃)に温調されている。
【0051】
熱処理部160においてフラッシュ加熱処理が施された半導体ウエハWは、第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に搬入されて、当該石英板に載置されて冷却される。
【0052】
第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141はともに、インデクサ部101と搬送チャンバー170との間において、それらの双方に接続されている。
【0053】
第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141には、半導体ウエハWを搬入出するための2つの開口が形設されている。第1クールチャンバー131の2つの開口のうちインデクサ部101に接続される開口は、ゲートバルブ181によって開閉可能とされている。
【0054】
一方、第1クールチャンバー131の搬送チャンバー170に接続される開口は、ゲートバルブ183によって開閉可能とされている。すなわち、第1クールチャンバー131とインデクサ部101とはゲートバルブ181を介して接続され、第1クールチャンバー131と搬送チャンバー170とはゲートバルブ183を介して接続されている。
【0055】
インデクサ部101と第1クールチャンバー131との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ181が開放される。また、第1クールチャンバー131と搬送チャンバー170との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ183が開放される。ゲートバルブ181およびゲートバルブ183が閉鎖されているときには、第1クールチャンバー131の内部が密閉空間となる。
【0056】
また、第2クールチャンバー141の2つの開口のうちインデクサ部101に接続される開口はゲートバルブ182によって開閉可能とされている。一方、第2クールチャンバー141の搬送チャンバー170に接続される開口はゲートバルブ184によって開閉可能とされている。すなわち、第2クールチャンバー141とインデクサ部101とはゲートバルブ182を介して接続され、第2クールチャンバー141と搬送チャンバー170とはゲートバルブ184を介して接続されている。
【0057】
インデクサ部101と第2クールチャンバー141との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ182が開放される。また、第2クールチャンバー141と搬送チャンバー170との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ184が開放される。ゲートバルブ182およびゲートバルブ184が閉鎖されているときには、第2クールチャンバー141の内部が密閉空間となる。
【0058】
チャンバー6に隣接して設置された搬送チャンバー170に設けられた搬送ロボット150は、鉛直方向に沿った軸を中心に矢印150Rで示すように旋回可能とされる。搬送ロボット150は、複数のアームセグメントからなる2つのリンク機構を有し、それら2つのリンク機構の先端にはそれぞれ半導体ウエハWを保持する搬送ハンド151aおよび搬送ハンド151bが設けられている。これらの搬送ハンド151aおよび搬送ハンド151bは上下に所定のピッチだけ隔てて配置され、リンク機構によってそれぞれ独立して同一水平方向に直線的にスライド移動可能とされている。
【0059】
また、搬送ロボット150は、2つのリンク機構が設けられるベースを昇降移動することによって、所定のピッチだけ離れた状態のまま2つの搬送ハンド151aおよび搬送ハンド151bを昇降移動させる。
【0060】
搬送ロボット150が第1クールチャンバー131、第2クールチャンバー141または熱処理部160のチャンバー6を受け渡し相手として半導体ウエハWの受け渡し(出し入れ)を行う際には、まず、両搬送ハンド151aおよび搬送ハンド151bが受け渡し相手と対向するように旋回し、その後(または旋回している間に)昇降移動していずれかの搬送ハンドが受け渡し相手と半導体ウエハWを受け渡しする高さに位置する。そして、搬送ハンド151a(151b)を水平方向に直線的にスライド移動させて受け渡し相手と半導体ウエハWの受け渡しを行う。
【0061】
搬送ロボット150と受渡ロボット120との半導体ウエハWの受け渡しは冷却部130および冷却部140を介して行うことができる。すなわち、冷却部130の第1クールチャンバー131および冷却部140の第2クールチャンバー141は、搬送ロボット150と受渡ロボット120との間で半導体ウエハWを受け渡すためのパスとしても機能するものである。具体的には、搬送ロボット150または受渡ロボット120のうちの一方が第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に渡した半導体ウエハWを他方が受け取ることによって半導体ウエハWの受け渡しが行われる。搬送ロボット150および受渡ロボット120によって半導体ウエハWをキャリアCから熱処理部160にまで搬送する搬送機構が構成される。
【0062】
上述したように、第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141とインデクサ部101との間にはそれぞれゲートバルブ181またはゲートバルブ182が設けられている。また、搬送チャンバー170と第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141との間にはそれぞれゲートバルブ183またはゲートバルブ184が設けられている。さらに、搬送チャンバー170と熱処理部160のチャンバー6との間にはゲートバルブ185が設けられている。熱処理装置100内において半導体ウエハWが搬送される際には、適宜これらのゲートバルブが開閉される。
【0063】
図3は、本実施の形態に関する熱処理装置100における熱処理部160の構成を概略的に示す断面図である。
【0064】
図3に例が示されるように、熱処理部160は、基板としての円板形状の半導体ウエハWに対してフラッシュ光照射を行うことによって、その半導体ウエハWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
【0065】
処理対象となる半導体ウエハWのサイズは特に限定されるものではないが、たとえばφ300mmまたはφ450mmである(本実施の形態ではφ300mm)。
【0066】
熱処理部160は、半導体ウエハWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLおよび複数のハロゲンランプHLを内蔵する加熱部5とを備える。加熱部5は、チャンバー6の上側に設けられる。なお、図3に示される例では、複数のフラッシュランプFLが複数のハロゲンランプHLの下方に配置されているが、このような配置に限られるものではなく、たとえば、その逆の配置であってもよい。また、平面視において、複数のフラッシュランプFLと複数のハロゲンランプHLとは、少なくとも一部が重なっていてもよいし、互いの重なりを可能な限り避けて配置されてもよい。また、本実施の形態では、加熱部5は、複数のフラッシュランプFLおよび複数のハロゲンランプHLを備えているが、ハロゲンランプHLの代わりにアークランプまたは発光ダイオード(Light Emitting Diode、すなわち、LED)が備えられていてもよい。
【0067】
複数のフラッシュランプFLは、フラッシュ光を照射することによって半導体ウエハWを加熱する。また、複数のハロゲンランプHLは、半導体ウエハWを連続加熱する。
【0068】
また、熱処理部160は、チャンバー6の内部に、半導体ウエハWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う移載機構10とを備える。
【0069】
さらに、熱処理部160は、加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウエハWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0070】
チャンバー6は、チャンバー筐体61の上面に石英製の上側チャンバー窓63が装着されて閉塞されている。
【0071】
チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英によって形成された円板形状部材であり、加熱部5から出射された光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0072】
また、チャンバー筐体61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着されている。反射リング68は円環状に形成されている。反射リング68は、チャンバー筐体61の上側から嵌め込むことによって装着される。すなわち、反射リング68は、着脱自在にチャンバー筐体61に装着されるものである。
【0073】
チャンバー6の内側空間、すなわち、上側チャンバー窓63、チャンバー筐体61、反射リング68によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0074】
チャンバー筐体61に反射リング68が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウエハWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー筐体61および反射リング68は、強度と耐熱性に優れた金属材料(たとえば、ステンレススチール)で形成されている。
【0075】
また、チャンバー筐体61には、チャンバー6に対して半導体ウエハWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は、凹部62の外周面に連通接続されている。
【0076】
このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウエハWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウエハWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0077】
さらに、チャンバー筐体61には、貫通孔61aおよび少なくとも1つの貫通孔61b(本実施の形態では複数設けられる)が穿設されている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウエハWの上面から放射された赤外光を上部放射温度計25の赤外線センサー29に導くための円筒状の孔である。一方、複数の貫通孔61bは、半導体ウエハWの下面から放射された赤外光を下部放射温度計20の赤外線センサー24に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aは、チャンバー筐体61の側部に形成され、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウエハWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。一方で、それぞれの貫通孔61bは、チャンバー筐体61の底部に形成され、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウエハWの主面と略直交するように、水平方向に対して略垂直に設けられている。なお、それぞれの貫通孔61bの貫通方向は、半導体ウエハWの主面と略直交する場合に限られるものではなく、半導体ウエハWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられていてもよい。
【0078】
赤外線センサー29および少なくとも1つの赤外線センサー24(本実施の形態では複数設けられる)は、たとえば、焦電効果を利用する焦電センサー、ゼーベック効果を利用するサーモパイル、または、熱による半導体の抵抗変化を利用するボロメータなどの熱型赤外線センサー、または、量子型赤外線センサーなどである。
【0079】
赤外線センサー29の測定可能な波長領域は、たとえば、5μm以上、かつ、6.5μm以下である。一方で、赤外線センサー24の測定可能な波長領域は、たとえば、0.2μm以上、かつ、3μm以下であり、望ましくは0.9μm以下である。
【0080】
赤外線センサー29は、サセプタ74に保持された半導体ウエハWの主面に対して傾斜する光軸を有し、半導体ウエハWの上面から放射された赤外光を受光する。一方で、半導体ウエハWの下側に配置された赤外線センサー24は、サセプタ74に保持された半導体ウエハWの主面と略直交する光軸を有し、半導体ウエハWの下面から放射された赤外光を受光する。
【0081】
貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、上部放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化カルシウム材料からなる透明窓26が装着されている。また、それぞれの貫通孔61bの熱処理空間65に臨む側の端部には、下部放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。なお、透明窓21は、たとえば、石英で形成されていてもよい。
【0082】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていてもよい。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。
【0083】
ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。
【0084】
緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、たとえば窒素(N)等の不活性ガス、または、水素(H)、アンモニア(NH)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる(本実施の形態では窒素ガス)。
【0085】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が設けられている。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。
【0086】
なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていてもよいし、スリット状のものであってもよい。また、処理ガス供給源85および排気部190は、熱処理部160に設けられた機構であってもよいし、熱処理部160が設置される工場のユーティリティであってもよい。
【0087】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
【0088】
また、チャンバー6の内部の保持部7の上方において、遮光部材201が配置される。遮光部材201は、平面視において、サセプタ74に保持された半導体ウエハWを囲んで配置される。遮光部材201が、平面視で半導体ウエハWの外縁から連続するように配置されることによって、半導体ウエハWの上方と下方とが区切られ、加熱部5から半導体ウエハWよりも下方へ向かう光を遮断することができる。なお、遮光部材201は、保持部7の下方に配置されていてもよい。
【0089】
図4は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英で形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英で形成されている。
【0090】
基台リング71は、円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図3を参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施の形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0091】
サセプタ74は、基台リング71に設けられた4個の連結部72によって下側から支持される。図5は、サセプタ74の平面図である。また、図6は、サセプタ74の断面図である。
【0092】
サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英で形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は、半導体ウエハWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウエハWよりも大きな平面サイズを有する。
【0093】
保持プレート75の上面周縁部には、ガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウエハWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。たとえば、半導体ウエハWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。
【0094】
ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英で形成される。
【0095】
ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしてもよいし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしてもよい。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしてもよい。
【0096】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウエハWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の支持ピン77が設けられている。本実施の形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に合計12個の支持ピン77が環状に立設されている。
【0097】
12個の支持ピン77を配置した円の径(対向する支持ピン77間の距離)は半導体ウエハWの径よりも小さく、半導体ウエハWの径がφ300mmであればφ210mm~φ280mmである。支持ピン77は、3本以上設けられる。それぞれの支持ピン77は石英で形成されている。
【0098】
複数の支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしてもよいし、保持プレート75と一体に加工するようにしてもよい。
【0099】
図4に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0100】
チャンバー6に搬入された半導体ウエハWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上側に水平姿勢で載置されて保持される。このとき、半導体ウエハWは保持プレート75上に立設された12個の支持ピン77によって支持されて、下側からサセプタ74に支持される。より厳密には、12個の支持ピン77の上端部が半導体ウエハWの下面に接触して当該半導体ウエハWを支持する。
【0101】
12個の支持ピン77の高さ(支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の支持ピン77によって半導体ウエハWを水平姿勢に支持することができる。
【0102】
また、半導体ウエハWは複数の支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の支持ピン77によって支持された半導体ウエハWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0103】
また、図4および図5に示されるように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、下部放射温度計20が半導体ウエハWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、下部放射温度計20が開口部78およびチャンバー筐体61の貫通孔61bに装着された透明窓21を介して半導体ウエハWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウエハWの温度を測定する。
【0104】
さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウエハWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0105】
図7は、移載機構10の平面図である。また、図8は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。
【0106】
それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英で形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウエハWの移載を行う移載動作位置(図7の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウエハWと平面視で重ならない退避位置(図7の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。
【0107】
水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであってもよいし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであってもよい。
【0108】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置において上昇させると、合計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(図4および図5参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置において下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。
【0109】
一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0110】
図3に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5Aは、筐体51の内側に、複数本(本実施の形態では30本)のフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52とを備えて構成される。
【0111】
また、フラッシュ加熱部5Aの筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5Aの床部を構成するランプ光放射窓53は、石英によって形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5Aがチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。
【0112】
フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0113】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウエハWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0114】
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。
【0115】
キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
【0116】
このようなフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。
【0117】
なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0118】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板で形成されており、その上面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0119】
チャンバー6の上方に設けられた加熱部は、筐体1の内側に複数本(本実施の形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。加熱部は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の上方から側チャンバー窓6を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウエハWを加熱する。
【0120】
図9は、加熱部5における複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、段よりも保持部7から遠い段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0121】
各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウエハWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0122】
また、図9に示されるように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウエハWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、加熱部からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウエハWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0123】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように合計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0124】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。
【0125】
したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより方の半導体ウエハWへの放射効率が優れたものとなる。
【0127】
図3に示されるように、チャンバー6には、上部放射温度計25および下部放射温度計20の2つの放射温度計(本実施の形態ではパイロメーター)が設けられている。上部放射温度計25はサセプタ74に保持された半導体ウエハWの斜め上方に設置されるとともに、下部放射温度計20はサセプタ74に保持された半導体ウエハWの斜め下方に設けられている。
【0128】
図10は、下部放射温度計20、上部放射温度計25および制御部3の関係性を示す図である。
【0129】
半導体ウエハWの下方に設けられて半導体ウエハWの下面の温度を測定する下部放射温度計20は、赤外線センサー24および温度測定ユニット22を備える。
【0130】
赤外線センサー24は、サセプタ74に保持された半導体ウエハWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を受光する。赤外線センサー24は、温度測定ユニット22と電気的に接続されており、受光に応答して生じた信号を温度測定ユニット22に伝達する。
【0131】
温度測定ユニット22は、図示を省略する増幅回路、A/Dコンバータおよび温度変換回路などを備えており、赤外線センサー24から出力された赤外光の強度を示す信号を温度に変換する。温度測定ユニット22によって求められた温度が半導体ウエハWの下面の温度である。
【0132】
一方、半導体ウエハWの斜め上方に設けられて半導体ウエハWの上面の温度を測定する上部放射温度計25は、赤外線センサー29および温度測定ユニット27を備える。赤外線センサー29は、サセプタ74に保持された半導体ウエハWの上面から放射された赤外光を受光する。赤外線センサー29は、フラッシュ光が照射された瞬間の半導体ウエハWの上面の急激な温度変化に対応できるように、InSb(インジウムアンチモン)の光学素子を備えている。赤外線センサー29は、温度測定ユニット27と電気的に接続されており、受光に応答して生じた信号を温度測定ユニット27に伝達する。
【0133】
温度測定ユニット27は、赤外線センサー29から出力された赤外光の強度を示す信号を温度に変換する。温度測定ユニット27によって求められた温度が半導体ウエハWの上面の温度である。
【0134】
下部放射温度計20および上部放射温度計25は、熱処理部160全体のコントローラである制御部3と電気的に接続されており、下部放射温度計20および上部放射温度計25によってそれぞれ測定された半導体ウエハWの下面および上面の温度は制御部3に伝達される。
【0135】
制御部3は、熱処理部160に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理部160における処理が進行する。
【0136】
また、制御部3には表示部33および入力部34が接続されている。制御部3は、表示部33に種々の情報を表示する。入力部34は、熱処理装置100のオペレータが制御部3に種々のコマンドまたはパラメータを入力するための機器である。オペレータは、表示部33の表示内容を確認しつつ、入力部34から半導体ウエハWの処理手順および処理条件を記述した処理レシピの条件設定を行うこともできる。
【0137】
表示部33および入力部34としては、双方の機能を兼ね備えたタッチパネルを用いることもでき、本実施の形態では熱処理装置100の外壁に設けられた液晶のタッチパネルを採用している。
【0138】
上記の構成以外にも熱処理装置100は、半導体ウエハWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによる加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。
【0139】
たとえば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0140】
<熱処理装置の動作について>
次に、熱処理装置100における半導体ウエハWの処理手順について説明する。図11は、半導体ウエハWの処理手順を示すフローチャートである。以下に説明する熱処理装置100の処理手順は、制御部3が熱処理装置100の各動作機構を制御することにより進行する。
【0141】
まず、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89およびバルブ192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0142】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置100における半導体ウエハWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0143】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウエハWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される(ステップST1)。このときには、半導体ウエハWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0144】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウエハWは、保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウエハWを受け取る。このとき、リフトピン12は支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0145】
半導体ウエハWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウエハWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウエハWは、保持プレート75上に立設された複数の支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウエハWは、被処理面を上面として保持部7に保持される。複数の支持ピン77によって支持された半導体ウエハWの下面(上面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0146】
図12は、半導体ウエハWの上面の温度の変化を示す図である。半導体ウエハWがチャンバー6内に搬入されてサセプタ74に保持された後、時刻t1に加熱部5の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される(ステップST2)。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成されたランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を透過して半導体ウエハWの上面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウエハWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることはない。
【0147】
ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウエハWの温度は上部放射温度計25または下部放射温度計20によって測定される(ステップST3)。なお、ハロゲンランプHLによる予備加熱を開始する前から上部放射温度計25または下部放射温度計20による温度測定を開始するようにしてもよい。
【0148】
上部放射温度計25または下部放射温度計20によって半導体ウエハWの温度を非接触で測定する際には、半導体ウエハWの放射率を測定に用いる放射温度計に設定する必要がある。半導体ウエハWの主面に膜が形成されていなければウエハ基材であるシリコンの放射率を対応する放射温度計に設定すればよいところ、半導体ウエハWの主面に膜が形成されていると、放射率は当該膜によって変動することとなる。
【0149】
ここで、下部放射温度計20における赤外線センサー24の測定可能な波長領域は、たとえば、0.2μm以上、かつ、3μm以下であり、望ましくは0.9μm以下であるため、ハロゲンランプHLから照射される光の波長領域(たとえば、0.8μm以上、かつ、2μm以下)と少なくとも一部において重なっている。
【0150】
しかしながら、保持部7の上方には遮光部材201が設けられているため、平面視において半導体ウエハWと重ならない領域においては、ハロゲンランプHLから照射される光は遮光部材201に遮断されて保持部7の下方にはほとんど到達しない。また、平面視において半導体ウエハWと重なる領域においては、赤外線センサー24の測定可能な波長領域に属する波長の光は半導体ウエハWによって十分に吸収されてやはり保持部7の下方にはほとんど到達しない。よって、赤外線センサー24において、ハロゲンランプHLから照射される光が直接受光されることは十分に抑制される。
【0151】
また、赤外線センサー24において半導体ウエハWの下面から放射された赤外光を受光するためには、当該光が、半導体ウエハWの下方に位置する保持プレート75を透過する必要がある。本実施の形態では、赤外線センサー24の測定可能な波長領域は、たとえば、0.2μm以上、かつ、3μm以下であり、望ましくは0.9μm以下であるため、赤外線センサー24によれば、石英からなる保持プレート75を十分に透過可能な波長領域の光を測定可能である。
【0152】
上部放射温度計25または下部放射温度計20によって測定された半導体ウエハWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウエハWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、上部放射温度計25または下部放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウエハWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。なお、予備加熱温度T1は、半導体ウエハWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、たとえば、200℃以上、かつ、800℃以下であり、好ましくは350℃以上、かつ、600℃以下である(本実施の形態では600℃)。
【0153】
半導体ウエハWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウエハWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、上部放射温度計25または下部放射温度計20によって測定される半導体ウエハWの温度が予備加熱温度T1に到達した時刻t2に制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウエハWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0154】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウエハWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウエハWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、加熱部5におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウエハWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウエハWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウエハWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0155】
半導体ウエハWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時刻t3に加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウエハWの上面にフラッシュ光照射を行う(ステップST4)。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウエハWのフラッシュ加熱が行われる。
【0156】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウエハWの上面の温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射により、半導体ウエハWの上面の温度は極めて短時間のうちに急激に上昇する。
【0157】
半導体ウエハWの温度は上部放射温度計25または下部放射温度計20によって監視されている。ここで、上部放射温度計25は、半導体ウエハWの上面の絶対温度を測定するものではなく、当該上面の温度変化を測定する(ステップST5)。すなわち、上部放射温度計25は、フラッシュ光照射時の予備加熱温度T1からの半導体ウエハWの上面の上昇温度(ジャンプ温度)ΔTを測定する。なお、フラッシュ光照射時にも半導体ウエハWの下面の温度が下部放射温度計20によって測定されているものの、照射時間が極めて短く強度の強いフラッシュ光を照射したときには、半導体ウエハWの表面近傍のみが急激に加熱されるため、半導体ウエハWの上下面で温度差が生じ、下部放射温度計20によっては半導体ウエハWの上面の温度を測定することはできない。
【0158】
また、制御部3がフラッシュ光照射時に半導体ウエハWの上面が到達した最高温度を算定する(ステップST6)。半導体ウエハWの下面の温度は、少なくとも予備加熱時に半導体ウエハWが一定温度に到達した時刻t2からフラッシュ光が照射される時刻t3までの間は、継続して上部放射温度計25または下部放射温度計20によって測定されている。フラッシュ光照射前の予備加熱の段階では半導体ウエハWの上下面に温度差が生じておらず、フラッシュ光照射前に上部放射温度計25または下部放射温度計20によって測定された半導体ウエハWの下面の温度は上面の温度でもある。制御部3は、フラッシュ光を照射する直前の時刻t2から時刻t3までの間に上部放射温度計25または下部放射温度計20によって測定された半導体ウエハWの下面の温度(予備加熱温度T1)に上部放射温度計25によって測定されたフラッシュ光照射時の半導体ウエハWの上面の上昇温度ΔTを加算して当該上面の最高到達温度T2を算定する。制御部3は、算定した最高到達温度T2を表示部33に表示するようにしてもよい。最高到達温度T2は、たとえば、800℃以上、かつ、1100℃以下となることが想定され、好ましくは1000℃以上、かつ、1100℃以下となることが想定される(本実施の形態では1000℃)。
【0159】
上部放射温度計25または下部放射温度計20によって正確に測定された半導体ウエハWの下面の温度(=上面の温度)に上部放射温度計25によって測定された半導体ウエハWの上面の上昇温度ΔTを加算することによって、フラッシュ光照射時の半導体ウエハWの上面の最高到達温度T2を正確に算定することができる。
【0160】
フラッシュ光照射が終了した後、所定時間経過後の時刻t4にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウエハWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウエハWの温度は上部放射温度計25または下部放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、上部放射温度計25または下部放射温度計20の測定結果より半導体ウエハWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウエハWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウエハWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウエハWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー6から搬出され、半導体ウエハWの加熱処理が完了する(ステップST5)。
【0161】
上記のような構成によれば、遮光部材201によってハロゲンランプHLから照射される光が赤外線センサー24に受光されることを避けつつ、赤外線センサー24によって半導体ウエハWの温度を測定することができる。
【0162】
また、赤外線センサー24の測定可能な波長領域が石英からなる保持プレート75を十分に透過可能な波長領域であるため、半導体ウエハWの主面に略垂直な方向においても、半導体ウエハWの下面から放射された後に保持プレート75を透過した光を受光することができる。よって、十分な受光量に加えて、1つの赤外線センサー24によって半導体ウエハWの温度を測定する範囲を小さくすることができるため、温度測定の精度を向上させることができる。
【0163】
また、複数の赤外線センサー24を配置してそれぞれの赤外線センサー24で半導体ウエハWの温度を測定することによって、半導体ウエハWの温度の面内均一性を評価し、さらには、半導体ウエハWの複数箇所における温度が均一となるようにハロゲンランプHLの出力を制御部3で制御することによって、半導体ウエハWの温度の面内均一性を向上させることができる。
【0164】
<第2の実施の形態>
本実施の形態に関する熱処理装置、および、について説明する。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態で説明された構成要素と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、その詳細な説明については適宜省略するものとする。
【0165】
<熱処理装置の構成について>
図13は、本実施の形態に関する熱処理部160Aの構成を概略的に示す断面図である。
【0166】
図13に例が示されるように、熱処理部160Aは、熱処理装置において、半導体ウエハWに対してフラッシュ光照射を行うことによって、その半導体ウエハWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
【0167】
熱処理部160Aは、半導体ウエハWを収容するチャンバー6Aと、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5Aと、半導体ウエハWを連続加熱する1または複数のLEDランプ210を内蔵するLED加熱部4Aとを備える。チャンバー6Aの上側にフラッシュ加熱部5Aが設けられるとともに、下側にLED加熱部4Aが設けられている。
【0168】
LED加熱部4Aは、複数のLEDランプ210によってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65Aへの光照射を行って半導体ウエハWを加熱する。すなわち、複数のLEDランプ210によって、LEDランプ210に対向する半導体ウエハWの下側の面を加熱する。LEDランプ210は、たとえば、赤色LEDであり、波長範囲はピークが380nm以上、かつ、780nm以下にピーク波長を有する(半値幅は、たとえば、50nm程度)。
【0169】
また、熱処理部160Aは、チャンバー6Aの内部に、半導体ウエハWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う移載機構10とを備える。
【0170】
さらに、熱処理部160Aは、LED加熱部4A、フラッシュ加熱部5Aおよびチャンバー6Aに設けられた各動作機構を制御して半導体ウエハWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0171】
チャンバー6Aは、筒状のチャンバー側部261の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部261は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。上側チャンバー窓63は、フラッシュランプFLと半導体ウエハWとの間に配置される。下側チャンバー窓64は、LEDランプ210とサセプタ74との間に配置される。
【0172】
チャンバー6Aの床部を構成する下側チャンバー窓64は、石英によって形成された円板形状部材であり、LED加熱部4Aからの光をチャンバー6A内に透過する石英窓として機能する。
【0173】
また、チャンバー側部261の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68および反射リング69は、ともに円環状に形成されている。
【0174】
下側の反射リング69は、チャンバー側部261の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング69は、着脱自在にチャンバー側部261に装着されるものである。
【0175】
チャンバー6Aの内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部261、反射リング68および反射リング69によって囲まれる空間が熱処理空間65Aとして規定される。
【0176】
チャンバー側部261に反射リング68および反射リング69が装着されることによって、チャンバー6Aの内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部261の内壁面のうち反射リング68および反射リング69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。
【0177】
凹部62は、チャンバー6Aの内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウエハWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部261および反射リング68および反射リング69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(たとえば、ステンレススチール)で形成されている。
【0178】
また、チャンバー側部261には、チャンバー6Aに対して半導体ウエハWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は、凹部62の外周面に連通接続されている。
【0179】
さらに、チャンバー側部261には、貫通孔61aが穿設されている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウエハWの上面から放射された赤外光を上部放射温度計25の赤外線センサー29に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウエハWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。
【0180】
また、LED加熱部4Aの筐体41の底部には、下部放射温度計20Aの赤外線センサー24Aが少なくとも1つ設けられている。
【0181】
赤外線センサー24Aの測定可能な波長領域は、たとえば、0.2μm以上、かつ、3μm以下であり、望ましくは0.90μm以下である。また、赤外線センサー24Aは、サセプタ74に保持された半導体ウエハWの主面と略直交する光軸を有し、半導体ウエハWの下面から放射された赤外光を受光する。赤外線センサー24Aが半導体ウエハWの下面から放射された赤外光を受光すると、当該受光に応答して生じた信号が、赤外線センサー24の場合と同様に、温度測定ユニット22(図1)に伝達される。

【0182】
少なくとも1つの赤外線センサー24Aは、たとえば、焦電効果を利用する焦電センサー、ゼーベック効果を利用するサーモパイル、または、熱による半導体の抵抗変化を利用するボロメータなどの熱型赤外線センサー、または、量子型赤外線センサーなどである。
【0183】
貫通孔61aの熱処理空間65Aに臨む側の端部には、上部放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化カルシウム材料からなる透明窓26が装着されている。
【0184】
ここで、下部放射温度計20における赤外線センサー24Aの測定可能な波長領域は、たとえば、0.2μm以上、かつ、3μm以下であり、望ましくは0.9μm以下であるため、LEDランプ210から照射される光の波長領域と少なくとも一部において重なり得る。
【0185】
しかしながら、LEDランプ210から照射される光の波長領域は、ハロゲンランプなどから照射される光の波長領域とは異なり、比較的狭い波長領域に限定して設定することが可能である。そのため、赤外線センサー24AにおいてLEDランプ210から照射される光の波長領域をフィルター除去することによって、LEDランプ210から照射される光が赤外線センサー24Aにおいて検出されることを避けることができる。
【0186】
図14は、フラッシュランプFLの発光波長、ハロゲンランプHLの発光波長、および、半導体ウエハWの吸収係数の例を示す図である。フラッシュランプFLの発光波長(実線)、および、ハロゲンランプHLの発光波長(太線)は、左側の縦軸(強度a.u.)に従い、半導体ウエハWの吸収波長(点線)は、右側の縦軸(吸収係数cm-1)に従う。横軸は、波長[nm]である。
【0187】
図14に示される場合では、フラッシュランプFLの最大発光強度を示す波長は480nm程度であり、ハロゲンランプHLの最大発光強度を示す波長は1100nm程度である。
【0188】
このような場合、LEDランプ210から照射される光の波長領域は、たとえば、480nm以上、かつ、1100nm以下とすることができる。このような波長領域であれば、半導体ウエハWの吸収波長とも対応するため、効果的に半導体ウエハWを連続加熱することができる。
【0189】
さらに、赤外線センサー24AにおいてLEDランプ210からの光が検出されないように、LEDランプ210から照射される光の波長領域を、たとえば、900nm以上、かつ、1100nm以下とすることもできる。
【0190】
また、赤外線センサー24Aにおいて半導体ウエハWの下面から放射された赤外光を受光するためには、当該光が、半導体ウエハWの下方に位置する保持プレート75を透過する必要がある。本実施の形態では、赤外線センサー24Aの測定可能な波長領域は、たとえば、0.2μm以上、かつ、3μm以下であり、望ましくは0.9μm以下であるため、赤外線センサー24Aによれば、石英からなる保持プレート75を十分に透過可能な波長領域の光を測定可能である。
【0191】
上記のような構成によれば、図11に例が示されたような半導体ウエハWの温度を測定する動作を赤外線センサー29および赤外線センサー24Aを用いて行うことができる。この際、LEDランプ210から照射される光が検出されることを避けつつ、赤外線センサー24Aによって半導体ウエハWの温度を測定することができる。
【0192】
また、LEDランプ210を用いることによって、たとえば、200℃以上、かつ、500℃以下の比較的低温での予備加熱も可能となる。よって、金属膜を成膜した後にシリサイドまたはゲルマナイドなどを生成することを想定するフラッシュ加熱処理も可能となる。
【0193】
図15は、本実施の形態に関する熱処理部160Bの構成を概略的に示す断面図である。
【0194】
図15に例が示されるように、熱処理部160Bは、熱処理装置において、半導体ウエハWに対してフラッシュ光照射を行うことによって、その半導体ウエハWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
【0195】
熱処理部160Bは、半導体ウエハWを収容するチャンバー6Aと、複数のフラッシュランプFLおよび複数のハロゲンランプHLを内蔵する加熱部5と、複数のLEDランプ210を内蔵するLED加熱部4Aとを備える。チャンバー6Aの上側に加熱部5が設けられるとともに、下側にLED加熱部4Aが設けられている。
【0196】
上記のような構成によれば、図11に例が示されたような半導体ウエハWの温度を測定する動作を赤外線センサー29および赤外線センサー24Aを用いて行うことができる。また、加熱部5が複数のフラッシュランプFLおよび複数のハロゲンランプHLを備えることによって、半導体ウエハWの昇温レートを上昇させ、また、半導体ウエハWの温度の面内均一性を向上させるための制御が容易となる。
【0197】
なお、図15に示された構造に図3に示された遮光部材201が備えられる場合には、ハロゲンランプHLから照射される光が遮光部材201に遮断されて保持部7の下方にはほとんど到達しない。よって、赤外線センサー24Aにおいて、ハロゲンランプHLから照射される光が直接受光されることは十分に抑制される。
【0198】
<第3の実施の形態>
本実施の形態に関する熱処理装置、および、について説明する。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態で説明された構成要素と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、その詳細な説明については適宜省略するものとする。
【0199】
<熱処理装置の構成について>
図16は、本実施の形態に関する熱処理部160Cの構成を概略的に示す断面図である。
【0200】
図16に例が示されるように、熱処理部160Cは、半導体ウエハWに対してフラッシュ光照射を行うことによって、その半導体ウエハWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
【0201】
熱処理部160Cは、半導体ウエハWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLおよび複数のハロゲンランプHLを内蔵する加熱部5とを備える。チャンバー6の上側に加熱部5が設けられる。
【0202】
また、熱処理部160Cは、チャンバー6の内部に、半導体ウエハWを水平姿勢に保持する保持部7Cと、保持部7Cと装置外部との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う移載機構10とを備える。
【0203】
さらに、熱処理部160Cは、加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウエハWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0204】
チャンバー6は、チャンバー筐体61の上面に石英製の上側チャンバー窓63が装着されて閉塞されている。また、チャンバー筐体61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着されている。
【0205】
チャンバー6の内側空間、すなわち、上側チャンバー窓63、チャンバー筐体61、反射リング68によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0206】
チャンバー筐体61に反射リング68が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウエハWを保持する保持部7Cを囲繞する。
【0207】
また、チャンバー筐体61には、チャンバー6に対して半導体ウエハWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。
【0208】
さらに、チャンバー筐体61には、貫通孔61aおよび少なくとも1つの貫通孔61b(本実施の形態では複数設けられる)が穿設されている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74Cに保持された半導体ウエハWの上面から放射された赤外光を上部放射温度計25の赤外線センサー29に導くための円筒状の孔である。一方、複数の貫通孔61bは、半導体ウエハWの下面から放射された赤外光を下部放射温度計20の赤外線センサー24Cに導くための円筒状の孔である。少なくとも1つの赤外線センサー24C(本実施の形態では複数設けられる)は、たとえば、焦電効果を利用する焦電センサー、ゼーベック効果を利用するサーモパイル、または、熱による半導体の抵抗変化を利用するボロメータなどの熱型赤外線センサー、または、量子型赤外線センサーなどである。
【0209】
赤外線センサー24Cの測定可能な波長領域は、たとえば、5μm以上、かつ、6.5μm以下である。また、半導体ウエハWの下側に配置される赤外線センサー24Cは、石英からなるサセプタ74Cに保持された半導体ウエハWの主面と略直交する光軸を有し、半導体ウエハWの下面から放射された赤外光を受光する。
【0210】
貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、上部放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化カルシウム材料からなる透明窓26が装着されている。また、それぞれの貫通孔61bの熱処理空間65に臨む側の端部には、下部放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0211】
図17は、保持部7Cの全体外観を示す斜視図である。保持部7Cは、基台リング71、連結部72およびサセプタ74Cを備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74Cはいずれも石英で形成されている。すなわち、保持部7Cの全体が石英で形成されている。
【0212】
サセプタ74Cは、保持プレート75C、ガイドリング76および複数の支持ピン77を備える。また、サセプタ74Cの保持プレート75Cには、上下に貫通して貫通孔220が形成されている。貫通孔220の形状は、たとえば、丸穴形状であるが、当該形状に限られるものではない。また、貫通孔220の数は任意であるが、保持部7Cの下方に配置される赤外線センサー24Cの数に対応する数とすることが望ましい。また、貫通孔220が形成される位置は、平面視において赤外線センサー24Cと重なる位置(すなわち、赤外線センサー24Cの光軸と交わる位置およびその周辺)である。
【0213】
なお、本実施の形態におけるサセプタ74Cは、半導体ウエハWを下方から支持する態様であるが、半導体ウエハWを保持可能であり、かつ、赤外線センサー24Cの光軸と交わる位置(およびその周辺)が中空である態様であれば、他の態様(たとえば、半導体ウエハWを側方から挟持する態様など)であってもよい。
【0214】
上記のような構成によれば、図11に例が示されたような半導体ウエハWの温度を測定する動作を赤外線センサー29および赤外線センサー24Cを用いて行うことができる。この際、赤外線センサー24Cの光軸と交わる位置の保持プレート75Cには貫通孔220が形成されているため、赤外線センサー24Cの測定可能な波長領域が石英からなる保持プレート75Cを透過する領域でなくとも、赤外線センサー24Cは、半導体ウエハWの主面に略垂直な方向において、半導体ウエハWの下面から放射された光を受光することができる。
【0215】
<以上に記載された実施の形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された実施の形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。
【0216】
また、当該置き換えは、複数の実施の形態に跨ってなされてもよい。すなわち、異なる実施の形態において例が示されたそれぞれの構成が組み合わされて、同様の効果が生じる場合であってもよい。
【0217】
以上に記載された実施の形態によれば、熱処理装置は、チャンバー6と、支持部と、フラッシュランプFLと、連続点灯ランプと、遮光部材201と、少なくとも1つの放射温度計とを備える。ここで、支持部は、たとえば、サセプタ74などに対応するものである。また、連続点灯ランプは、たとえば、ハロゲンランプHLなどに対応するものである。また、放射温度計は、たとえば、赤外線センサー24などに対応するものである。チャンバー6は、基板を収容する。ここで、基板は、たとえば、半導体ウエハWなどに対応するものである。サセプタ74は、石英からなる。また、サセプタ74は、チャンバー6内において半導体ウエハWを第1の側から支持する。ここで、第1の側は、たとえば、下側に対応する。フラッシュランプFLは、半導体ウエハWに対して下側とは反対側の第2の側に配置される。ここで、第2の側は、たとえば、上側に対応する。また、フラッシュランプFLは、フラッシュ光を照射することによって半導体ウエハWを加熱する。ハロゲンランプHLは、半導体ウエハWの上側に配置される。また、ハロゲンランプHLは、半導体ウエハWを連続加熱する。遮光部材201は、チャンバー6内において半導体ウエハWの下側と上側とを区切り、かつ、平面視で半導体ウエハWを囲んで配置される。赤外線センサー24は、半導体ウエハWの下側に配置される。また、赤外線センサー24は、半導体ウエハWの温度を測定する。また、赤外線センサー24は、サセプタ74を透過可能な波長の光を受光して、半導体ウエハWの温度を測定する。
【0218】
このような構成によれば、赤外線センサー24が半導体ウエハWの下面から放射された光を十分に受光することができるため、半導体ウエハWの温度の測定精度を高めることができる。具体的には、赤外線センサー24の測定可能な波長領域が石英からなるサセプタ74を十分に透過可能な波長領域であるため、半導体ウエハWの主面に略垂直な方向においても、半導体ウエハWの下面から放射された後にサセプタ74を透過した光を受光することができる。よって、十分な受光量に加えて、1つの赤外線センサー24によって半導体ウエハWの温度を測定する範囲を小さくすることができるため、温度測定の精度を向上させることができる。また、遮光部材201によってハロゲンランプHLから照射される光が赤外線センサー24に受光されることを避けることができる。さらに、0.9μm以下などの波長領域では、半導体ウエハWの温度に起因する放射率の変化が低くなるため、温度の測定精度を向上させることができる。半導体ウエハWの温度の測定精度が向上することによって、半導体ウエハWの温度制御の精度も向上させることができ、結果として、半導体ウエハWの割れなどの発生を抑制することができる。
【0219】
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0220】
また、以上に記載された実施の形態によれば、石英からなり、かつ、半導体ウエハWを下側から支持するためのサセプタ74と、半導体ウエハWに対して下側とは反対側の上側に配置され、かつ、フラッシュ光を照射することによって半導体ウエハWを加熱するためのフラッシュランプFLと、半導体ウエハWの下側に配置され、かつ、半導体ウエハWを連続加熱するための少なくとも1つのLEDランプ210と、石英からなり、かつ、フラッシュランプFLと半導体ウエハWとの間、および、LEDランプ210とサセプタ74との間にそれぞれ配置される石英窓と、半導体ウエハWの下側に配置され、かつ、半導体ウエハWの温度を測定するための少なくとも1つの放射温度計とを備える。ここで、石英窓は、たとえば、上側チャンバー窓63および下側チャンバー窓64に対応する。また、放射温度計は、たとえば、赤外線センサー24Aなどに対応するものである。そして、赤外線センサー24Aは、サセプタ74を透過可能な波長の光を受光して、半導体ウエハWの温度を測定する。
【0221】
このような構成によれば、赤外線センサー24Aが半導体ウエハWの下面から放射された光を十分に受光することができるため、半導体ウエハWの温度の測定精度を高めることができる。具体的には、赤外線センサー24Aの測定可能な波長領域が石英からなるサセプタ74を十分に透過可能な波長領域であるため、半導体ウエハWの主面に略垂直な方向においても、半導体ウエハWの下面から放射された後にサセプタ74を透過した光を受光することができる。よって、十分な受光量に加えて、1つの赤外線センサー24Aによって半導体ウエハWの温度を測定する範囲を小さくすることができるため、温度測定の精度を向上させることができる。また、赤外線センサー24AにおいてLEDランプ210から照射される光の波長領域をフィルター除去することによって、LEDランプ210から照射される光が赤外線センサー24Aにおいて検出されることを避けることができる。さらに、0.9μm以下などの波長領域では、半導体ウエハWの温度に起因する放射率の変化が低くなるため、温度の測定精度を向上させることができる。
【0222】
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0223】
また、以上に記載された実施の形態によれば、赤外線センサー24Aは、LEDランプ210の発光波長を受光する波長から除外する。このような構成によれば、LEDランプ210から照射される光が赤外線センサー24Aにおいて検出されることを避けることができる。
【0224】
また、以上に記載された実施の形態によれば、LEDランプ210は、半導体ウエハWの下側の面に対向して複数配置される。このような構成によれば、複数のLEDランプ210を用いて半導体ウエハWの下面全体を均一に加熱することができる。
【0225】
また、以上に記載された実施の形態によれば、熱処理装置は、半導体ウエハWの上側に配置され、かつ、半導体ウエハWを連続加熱するためのハロゲンランプHLを備える。このような構成によれば、加熱部5が複数のフラッシュランプFLおよび複数のハロゲンランプHLを備えることによって、半導体ウエハWの昇温レートを上昇させ、また、半導体ウエハWの温度の面内均一性を向上させるための制御が容易となる。
【0226】
また、以上に記載された実施の形態によれば、LEDランプ210は、フラッシュランプFLの最大発光強度を示す波長以上、かつ、ハロゲンランプHLの最大発光強度を示す波長以下の波長で半導体ウエハWに指向性の光を照射することによって、半導体ウエハWを連続加熱する。このような構成によれば、効果的に半導体ウエハWを連続加熱することができる。
【0227】
また、以上に記載された実施の形態によれば、石英からなり、かつ、半導体ウエハWを支持するための支持部と、半導体ウエハWに対して下側とは反対側の上側に配置され、かつ、フラッシュ光を照射することによって半導体ウエハWを加熱するためのフラッシュランプFLと、半導体ウエハWの上側に配置され、かつ、半導体ウエハWを連続加熱するためのハロゲンランプHLと、半導体ウエハWの下側に配置され、かつ、半導体ウエハWの温度を測定するための少なくとも1つの放射温度計とを備える。ここで、支持部は、たとえば、サセプタ74Cなどに対応するものである。また、放射温度計は、たとえば、赤外線センサー24Cなどに対応するものである。また、サセプタ74Cは、少なくとも、赤外線センサー24の光軸と交わる位置を除いて配置される。
【0228】
このような構成によれば、赤外線センサー24Cが半導体ウエハWの下面から放射された光を十分に受光することができるため、半導体ウエハWの温度の測定精度を高めることができる。具体的には、赤外線センサー24Cの光軸と交わる位置の保持プレート75Cには貫通孔220が形成されているため、半導体ウエハWの主面に略垂直な方向においても、半導体ウエハWの下面から放射された光を受光することができる。よって、十分な受光量に加えて、1つの赤外線センサー24Cによって半導体ウエハWの温度を測定する範囲を小さくすることができるため、温度測定の精度を向上させることができる。
【0229】
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0230】
また、以上に記載された実施の形態によれば、サセプタ74Cの赤外線センサー24の光軸と交わる位置には、貫通孔220が形成される。このような構成によれば赤外線センサー24Cの測定可能な波長領域が石英からなる保持プレート75Cを透過する領域でなくとも、赤外線センサー24Cは、半導体ウエハWの主面に略垂直な方向において、半導体ウエハWの下面から放射された光を受光することができる。
【0231】
また、以上に記載された実施の形態によれば、赤外線センサー24(または赤外線センサー24A)の光軸が、半導体ウエハWの主面と直交する。このような構成によれば、1つの赤外線センサーによって半導体ウエハWの温度を測定する範囲を小さくすることができるため、温度測定の精度を向上させることができる。また、複数の赤外線センサーを配置してそれぞれの赤外線センサーで半導体ウエハWの温度を測定することによって、半導体ウエハWの温度の面内均一性を評価し、さらには、半導体ウエハWの複数箇所における温度が均一となるようにハロゲンランプHLの出力を制御部3で制御することによって、半導体ウエハWの温度の面内均一性を向上させることができる。
【0232】
また、以上に記載された実施の形態によれば、赤外線センサー24(または赤外線センサー24A)の測定可能な波長領域が、3μm以下である。このような構成によれば、赤外線センサーの測定可能な波長領域が石英からなるサセプタを十分に透過可能な波長領域であるため、半導体ウエハWの主面に略垂直な方向においても、半導体ウエハWの下面から放射された後にサセプタを透過した光を受光することができる。よって、十分な受光量に加えて、1つの赤外線センサー24によって半導体ウエハWの温度を測定する範囲を小さくすることができるため、温度測定の精度を向上させることができる。また、0.9μm以下などの波長領域では、半導体ウエハWの温度に起因する放射率の変化が低くなるため、温度の測定精度を向上させることができる。
【0233】
また、以上に記載された実施の形態によれば、連続点灯ランプは、ハロゲンランプである。このような構成によれば、ハロゲンランプHLが半導体ウエハWの上方に配置されることによって、半導体ウエハWの下方から半導体ウエハWの温度を測定する赤外線センサー24がハロゲンランプHLから照射された光を直接受光することが抑制される。
【0234】
<以上に記載された実施の形態の変形例について>
以上に記載された実施の形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、本願明細書に記載されたものに限られることはないものとする。
【0235】
したがって、例が示されていない無数の変形例、および、均等物が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの実施の形態における少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態における構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0236】
また、以上に記載された実施の形態において、特に指定されずに材料名などが記載された場合は、矛盾が生じない限り、当該材料に他の添加物が含まれた、たとえば、合金などが含まれるものとする。
【符号の説明】
【0237】
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
4A LED加熱部
5 加熱部
5A フラッシュ加熱部
6,6A チャンバー
7,7C 保持部
10 移載機構
11 移載アーム
12 リフトピン
13 水平移動機構
14 昇降機構
20,20A 下部放射温度計
21,26 透明窓
22,27 温度測定ユニット
24,24A,24C,29 赤外線センサー
25 上部放射温度計
33 表示部
34 入力部
41,51 筐体
43,52 リフレクタ
53 ランプ光放射窓
61a,61b,79,220 貫通孔
61 チャンバー筐体
62 凹部
63 上側チャンバー窓
64 下側チャンバー窓
65,65A 熱処理空間
66 搬送開口部
68,69 反射リング
71 基台リング
72 連結部
74,74C サセプタ
75,75C 保持プレート
75a 保持面
76 ガイドリング
77 支持ピン
78 開口部
81 ガス供給孔
82,87 緩衝空間
83 ガス供給管
84,89,192 バルブ
85 処理ガス供給源
86 ガス排気孔
88,191 ガス排気管
100 熱処理装置
101 インデクサ部
110 ロードポート
120 受渡ロボット
121 ハンド
130,140 冷却部
131 第1クールチャンバー
141 第2クールチャンバー
150 搬送ロボット
151a,151b 搬送ハンド
160,160A,160B,160C 熱処理部
170 搬送チャンバー
181,182,183,184,185 ゲートバルブ
190 排気部
201 遮光部材
210 LEDランプ
230 アライメント部
231 アライメントチャンバー
261 チャンバー側部
図1
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