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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240327BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L21/306 J
H01L21/304 642F
H01L21/304 642A
H01L21/304 648B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020171104
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062909
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】武知 圭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 光敏
(72)【発明者】
【氏名】秋山 剛志
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-136679(JP,A)
【文献】特開2020-136537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0131254(US,A1)
【文献】特開2017-168612(JP,A)
【文献】特開2017-069529(JP,A)
【文献】特開2010-040758(JP,A)
【文献】特開2020-047885(JP,A)
【文献】特開2004-327826(JP,A)
【文献】特開2005-244162(JP,A)
【文献】特開2005-211718(JP,A)
【文献】特開2003-188140(JP,A)
【文献】特開2007-300118(JP,A)
【文献】特開2019-197814(JP,A)
【文献】特開平8-195372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を浸漬して処理する処理液を貯留する処理槽と、
前記処理槽内で、前記基板を水平方向に互いに離間しながら配列して起立姿勢で保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の下方から前記基板に沿って上方に向かう前記処理液の流れを形成する処理液吐出部と、
前記処理液吐出部と前記基板保持部との間に配置され、前記処理槽に貯留された前記処理液内に気泡を供給する気泡供給部と、を備え、
前記気泡供給部は、内部に気体が供給される気体供給管と、前記気体供給管に設けられ前記基板の配列方向に気泡を吐出する気泡吐出口を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記気体供給管は、上方から見て前記基板の主面に沿って延設され、側壁に気泡吐出口を複数個有し、
前記気泡吐出口は、前記基板保持部に保持され互いに隣接する前記基板の間隙に気泡を供給できるように位置することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記処理液吐出部は、内部に処理液が供給される処理液供給管と、前記処理液供給管の側壁に処理液吐出口を複数個有し、
前記処理液吐出口は、互いに隣接する前記基板の間隙の下方に位置することを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の基板処理装置であって、
前記気泡供給部は、前記気体供給管を複数有し、
前記気体供給管は、他の気体供給管と水平方向に隣接し、前記気泡吐出口が前記基板の間隙の下方で略水平方向に開口することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記気泡吐出口が、前記気体供給管から突設される中空状の突設部位の先端に有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記突設部位は柱状形状またはテーパ形状であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記気泡吐出口が、円形形状または楕円形状であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項2ないし7のいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記基板は、隣接する基板と表面同士または裏面同士を対向させた状態で前記基板保持部に保持されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記基板は、隣接する基板と裏面同士を対向させた状態で、前記基板の裏面と隣接する基板の裏面の間に仕切板を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9いずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記気泡供給部は樹脂材料で構成され、
前記樹脂材料は、ポリエーテルエーテルケトン、パーフルオロアルコキシアルカン、およびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択された少なくとも1つから構成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の基板処理装置であって、
前記気泡吐出口は親水化処理を受けていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記気体供給管の下方に整流板を備えることを特徴とする基板処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理槽に貯留された薬液や純水などの処理液に基板を浸漬するとともに処理液内で上記基板に気泡を供給して処理する基板処理装置に関するものである。なお、基板には、半導体ウェハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、磁気または光ディスク用のガラスまたはセラミック基板、有機EL用ガラス基板、太陽電池用ガラス基板またはシリコン基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造分野においては、半導体装置の高密度化と大容量化に対応するために高アスペクト比の凹部を形成する技術が要望されている。例えば三次元NAND型不揮発性半導体装置(以下「3D-NANDメモリ」という)の製造過程においては、シリコン酸化膜(SiO2膜)とシリコン窒化膜(SiN膜)を多数積層した積層体に対して積層方向に凹部を形成した後、凹部に処理液を供給してSiN膜をウエットエッチングにより除去する工程が含まれる。この工程を実行するために、例えば特許文献1に記載の基板処理装置を用いることが検討されている。
【0003】
特許文献1に記載の基板処理装置は、基板を処理するための処理液を貯留する処理槽と、処理槽の処理液内で基板を保持する基板保持部と、処理槽に流体を供給する流体供給部と、流体供給部を制御する制御部とを備え、制御部は、基板を浸漬させた処理液を貯留した処理槽に対して流体の供給を開始してから流体の供給を終了するまでの間に流体供給部が流体の供給を変更するように流体供給部を制御する。当該基板処理装置では、流体供給部として基板の主面の法線方向と平行に気体または液体を供給する第1流体供給管と第2流体供給管が処理槽の底部で延びている。そして制御部によって、第1流体供給管と第2流体供給管から気体または液体を供給する期間を切り換え、処理槽内での基板の処理の偏りを抑制しようとしている。
【0004】
ここで、流体供給管から気体が供給される場合、供給された気体は気泡として処理液内を浮上する。処理液の上昇流の速度は気泡の浮力により速くなると考えられ、気泡は、基板の表面を通過する際、基板の表面に接触することにより、基板の表面に存在するシリコン濃度の濃い処理液層(高濃度層)を攪拌することができる。これにより、基板の表面の処理液は、気泡が通過した後に新鮮な処理液へ置換が促進される。その結果、処理液によるウエットエッチングで形成されたパターン上部付近のシリコン濃度が低くなり、パターンの狭くかつ深い溝の奥深くまで、迅速で均一な基板処理が可能となると考えられる。ここで、気泡による処理液の撹拌の程度は、基板の表面を通過する気泡の直径(気泡径)が小さいほうが大きいと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-47885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、流体供給管の管径は、例えば約8.0mmで、吐出口の直径が約0.3mmであり、吐出口から吐出される気泡径は約2.0mm~約3.5mmの範囲である。しかしながら、さらに気泡径を小さくすることが望まれる。気泡は吐出口から発生直後に吐出口の周囲に密着し、吐出時間経過に伴って密着領域が吐出口を中心として放射状に広がる。その後、気泡は密着領域から離脱して処理液内に供給される。吐出口を小さく加工するのには限界があるため、気泡径を更に小さくするのは困難であった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、処理槽に貯留される処理液に基板を浸漬して気泡を基板の表面に供給して処理する基板処理装置において、基板の表面に供給される気泡の気泡径を小さくして基板の処理品質を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、基板を浸漬して処理する処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽内で、前記基板を水平方向に互いに離間しながら配列して起立姿勢で保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された前記基板の下方から前記基板に沿って上方に向かう前記処理液の流れを形成する処理液吐出部と、前記処理液吐出部と前記基板保持部との間に配置され、前記処理槽に貯留された前記処理液内に気泡を供給する気泡供給部と、を備え、前記気泡供給部は、内部に気体が供給される気体供給管と、前記気体供給管に設けられ前記基板の配列方向に気泡を吐出する気泡吐出口を有することを特徴とする基板処理装置である。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、気泡供給部の気泡吐出口は、処理液吐出部と基板保持部に保持された基板の表面との間に設けられ、基板の配列方向に気泡を吐出するため、処理液の流れを利用して気泡吐出口から気泡を離脱させることができる。それによって、気体供給管の気泡吐出口から処理液の流れを利用せずに気泡を離脱させる場合よりも気泡径の小さい気泡を基板の表面に供給することができる。また、処理液の上昇を利用して気泡を基板の表面に供給することで気泡の上昇速度を上げることもでき、基板の表面の処理液を迅速かつ連続して新鮮な処理液に置換することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に記載の基板処理装置であって、前記気体供給管は、上方から見て前記基板の主面に沿って延設され、側壁に気泡吐出口を複数個有し、前記気泡吐出口は、前記基板保持部に保持され互いに隣接する前記基板の間隙に気泡を供給できるように位置することを特徴とする基板処理装置である。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、気泡吐出口は基板の間隙の下方に位置するため、気泡径の小さい気泡を処理液の流れを利用して基板の表面に供給することができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様に記載の基板処理装置であって、前記処理液吐出部は、内部に処理液が供給される処理液供給管と、前記処理液供給管の側壁に処理液吐出口を複数個有し、前記処理液吐出口は、互いに隣接する前記基板の間隙の下方に位置することを特徴とする基板処理装置である。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、処理液吐出口は基板の間隙の下方に位置するため、配列した複数の基板と基板の間隙に気泡径の小さい気泡を供給することができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様または第3の態様に記載の基板処理装置であって、前記気泡供給部は、前記気体供給管を複数有し、前記気体供給管は、他の気体供給管と水平方向に隣接し、前記気泡吐出口が前記基板の間隙の下方で略水平方向に開口することを特徴とする基板処理装置である。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、気泡径が更に小さい気泡を配列した複数の基板の表面に供給することができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様に記載の基板処理装置であって、前記気泡吐出口が、前記気体供給管から突設される中空状の突設部位の先端に有することを特徴とする基板処理装置である。
【0017】
本発明の第5の態様によれば、気泡径が更に小さい気泡を配列した複数の基板の表面に供給することができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、本発明の第5の態様に記載の基板処理装置であって、前記突設部位は柱状形状またはテーパ形状であることを特徴とする基板処理装置である。
【0019】
本発明の第6の態様によれば、気泡径が更に小さい気泡を配列した複数の基板の表面に供給することができる。
【0020】
本発明の第7の態様は、本発明の第4の態様ないし第6の態様に記載の基板処理装置であって、前記気泡吐出口が、円形形状または楕円形状であることを特徴とする基板処理装置である。
【0021】
本発明の第7の態様によれば、気泡径が更に小さい気泡を配列した複数の基板の表面に供給することができる。
【0022】
本発明の第8の態様は、本発明の第2の態様ないし第7の態様に記載の基板処理装置であって、前記基板は、隣接する基板と表面同士または裏面同士を対向させた状態で前記基板保持部に保持されることを特徴とする基板処理装置である。
【0023】
本発明の第8の態様によれば、基板処理装置の専有面積(フットプリント)を小さくし、基板の処理を効率よく行うことができる。
【0024】
本発明の第9の態様は、本発明の第8の態様に記載の基板処理装置であって、前記基板は、隣接する基板と裏面同士を対向させた状態で、前記基板の裏面と隣接する基板の裏面の間に仕切板を備えることを特徴とする基板処理装置である。
【0025】
本発明の第9の態様によれば、仕切り板がないときよりも多くの気泡径の小さい気泡を基板の表面に供給することができる。
【0026】
本発明の第10の態様は、本発明の第1の態様ないし第9の態様に記載の基板処理装置であって、前記気泡供給部は樹脂材料で構成され、前記樹脂材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択された少なくとも1つから構成されていることを特徴とする基板処理装置である。
【0027】
本発明の第10の態様によれば、気泡径が更に小さい気泡を配列した複数の基板の表面に供給することができる。
【0028】
本発明の第11の態様は、本発明の第10の態様に記載の基板処理装置であって、前記気泡吐出口は親水化処理を受けていることを特徴とする基板処理装置である。
【0029】
本発明の第11の態様によれば、気泡径が更に小さい気泡を配列した複数の基板の表面に供給することができる。
【0030】
本発明の第12の態様は、本発明の第1の態様ないし第11の態様に記載の基板処理装置であって、前記気体供給管の下方に整流板を備えることを特徴とする基板処理装置である。
【0031】
本発明の第12の態様によれば、気泡径が更に小さい気泡を配列した複数の基板の表面に供給することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、気泡径の小さい気泡を基板の表面に供給することができるため、パターン上部付近のシリコン濃度の高い処理液を新しい処理液に置換してシリコン濃度を下げることができる。そして、基板の表面のパターンの狭くかつ深い溝の奥深くの処理液まで、シリコン濃度の濃度勾配により新鮮な処理液に置換することができる。その結果、基板処理を迅速で均一に行うことができ、基板の処理品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を備える基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
図2】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の概略構成を示す模式図である。
図3図2に示す基板処理装置の主要構成を模式的に示す分解組立斜視図である。
図4図2の部分断面図である。
図5】リフタに保持される複数の基板と気泡吐出口と処理液吐出口の配置関係を示す模式図である。
図6図2に示す基板処理装置の主要構成の上視図である。
図7図5に示す気体供給管842を(-X)方向から見た一部を示す拡大部分図である。
図8】第1実施形態に係る基板処理装置の比較例を示す模式図である。
図9】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態の部分断面図である。
図10】リフタに保持される複数の基板と気泡吐出口と処理液吐出口と仕切板の配置関係を示す模式図である。
図11】リフタに保持される複数の基板と気泡吐出口と処理液吐出口と仕切板の配置関係を示す模式図である。
図12】別の形態の気泡吐出口を示す拡大部分図である。
図13】別の形態の気体供給管を示す拡大部分図である。
図14】別の形態の気体供給管を示す拡大部分図である。
図15】別の形態の気体供給管を示す拡大部分図である。
図16】別の形態の気体供給管を示す拡大部分図である。
図17】別の形態の気体供給管を示す拡大部分図である。
図18】別の形態の気体供給管を示す拡大部分図である。
図19】別の形態の気体供給管を示す拡大部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は本発明に係る第1実施形態を備える基板処理システムの概略構成を示す平面図である。基板処理システム1は、収納器載置部2と、シャッタ駆動機構3と、基板移載ロボット4と、姿勢変換機構5と、プッシャ6と、基板搬送機構7と、処理ユニット8と、制御部9とを備えている。以下の各図における方向を統一的に示すために、図1に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面を表す。また、Z軸が鉛直軸を表し、より詳しくはZ方向が鉛直方向である。
【0035】
収納器載置部2では、基板Wを収納した収納器が載置される。本実施形態では、収納器の一例として、水平姿勢の複数枚(たとえば25枚)の基板WをZ方向に積層した状態で収納可能に構成されたフープFが用いられている。フープFは、未処理の基板Wを収納した状態で収納器載置部2に載置されたり、処理済の基板Wを収納するために、空の状態で収納器載置部2に載置されたりする。フープFに収納される基板Wは、この実施形態では、3D-NANDメモリを形成する半導体ウェハであり、高アスペクト比の凹部を有している。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。
【0036】
収納器載置部2に対して(+Y)方向側で隣接するプロセス空間内には、シャッタ駆動機構3、基板移載ロボット4、姿勢変換機構5、プッシャ6、基板搬送機構7および処理ユニット8が配置されている。収納器載置部2とプロセス空間とは、開閉自在なシャッタ31を備える隔壁(図示省略)により区画されている。シャッタ31はシャッタ駆動機構3に接続されている。シャッタ駆動機構3は制御部9からの閉指令に応じてシャッタ31を閉成して収納器載置部2とプロセス空間とを空間的に分離する。また、シャッタ駆動機構3は制御部9からの開指令に応じてシャッタ31を開放し、収納器載置部2とプロセス空間とを連通させる。これにより、フープFからプロセス空間への未処理基板Wの搬入および処理済基板WのフープFへの搬出が可能となる。
【0037】
上記した基板Wの搬入出処理は基板移載ロボット4によって行われる。基板移載ロボット4は水平面内で旋回自在に構成されている。基板移載ロボット4は、シャッタ31が開放された状態で、姿勢変換機構5とフープFとの間で複数枚の基板Wを受け渡しする。また、姿勢変換機構5は、基板移載ロボット4を介してフープFから基板Wを受け取った後やフープFに基板Wを受け渡す前に、複数枚の基板Wの姿勢を起立姿勢と水平姿勢との間で変換する。
【0038】
姿勢変換機構5の基板搬送機構7側(図1中の+X方向側)にプッシャ6が配置される。姿勢変換機構5と基板搬送機構7との間で起立姿勢の複数枚の基板Wを受け渡し、他の起立姿勢の複数の基板Wを挿入する。隣接する各一対の基板Wは、表面同士または裏面同士を一定の距離を離間して対向させた状態(すなわち、フェース・ツー・フェース状態またはバック・ツー・バック状態)であるバッチ組みを行うこともできる。また、隣接する各一対の基板Wが表面と裏面とを対向させた状態(すなわち、フェース・ツー・バック状態)であるバッチ組みを行うこともできる。本実施形態では、50枚の基板WをX方向にフェース・ツー・フェース状態で配置される。基板Wの表面とは、例えば回路パターンが形成される主面であり、基板Wの裏面とは、当該表面とは反対側の面である。なお、回路パターンが基板Wの裏面に形成されることを妨げない。
【0039】
基板搬送機構7は、図1に示すようにプッシャ6に対向した位置(以下「待機位置」という)から処理ユニット8を構成する処理部81~85が配列された配列方向(図1中のY方向)に沿って水平方向に移動する。基板搬送機構7は一対の懸垂アーム71を備えている。この一対の懸垂アーム71の揺動によって複数の基板Wを一括保持と保持解除を切替可能となっている。より具体的には、各アーム71の下縁が互いに離れる方向に水平軸周りで揺動して複数枚の基板Wを開放し、各アーム71の下縁を互いに接近させる方向に水平軸周りに揺動して複数枚の基板Wを挟持して保持する。また、図1への図示を省略しているが、基板搬送機構7はアーム移動部とアーム揺動部とを有している。これらのうちアーム移動部は、処理部81~85が配列された配列方向Yに沿って一対の懸垂アーム71を水平移動させる機能を有している。このため、この水平移動によって一対の懸垂アーム71は処理部81~85の各々に対向した位置(以下「処理位置」という)および待機位置に位置決めされる。
【0040】
アーム揺動部は上記アーム揺動動作を実行する機能を有しており、基板Wを挟持して保持する保持状態と、基板Wの挟持を解除する解除状態とを切り替える。このため、この切替動作と、処理部81、82の基板保持部として機能する第1リフタ810aや処理部83、84の基板保持部として機能する第2リフタ810bの上下動とによって、第1リフタ810aと懸垂アーム71、または第2リフタ810bと懸垂アーム71との間での基板Wの受け渡しを行うことが可能となっている。また、処理部85に対向する処理位置では、処理部85に備えられた保持部と懸垂アーム71との間での基板Wの受け渡しを行うことが可能となっている。さらに、待機位置では、プッシャ6を介して姿勢変換機構5と懸垂アーム71との間での基板Wの受け渡しを行うことが可能となっている。
【0041】
処理ユニット8には、上記したように5つの処理部81~85が設けられているが、それぞれ第1薬液処理部81、第1リンス処理部82、第2薬液処理部83、第2リンス処理部84および乾燥処理部85として機能する。これらのうち第1薬液処理部81および第2薬液処理部83は、それぞれ、同種または異種の薬液を処理槽821に貯留し、その薬液中に複数枚の基板Wを一括して浸漬させて薬液処理を施す。第1リンス処理部82および第2リンス処理部84は、それぞれ、リンス液(たとえば純水)を処理槽821に貯留し、そのリンス液中に複数枚の基板Wを一括して浸漬させて、表面にリンス処理を施すものである。これら第1薬液処理部81、第1リンス処理部82、第2薬液処理部83および第2リンス処理部84は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当しており、処理液の種類が相違するが基本構成は同一である。なお、装置構成および動作については後で図2ないし図7を参照しつつ詳述する。
【0042】
図1に示すように、第1薬液処理部81と、これに隣接する第1リンス処理部82とが対になっており、第2薬液処理部83と、これに隣接する第2リンス処理部84とが対になっている。そして、第1リフタ810aは第1薬液処理部81および第1リンス処理部82において本発明の「基板保持部」として機能するのみならず、第1薬液処理部81で薬液処理された基板Wを第1リンス処理部82に移すための専用搬送機構としても機能する。また、第2リフタ810bは第2薬液処理部83および第2リンス処理部84において本発明の「基板保持部」として機能するのみならず、第2薬液処理部83で薬液処理された基板Wを第2リンス処理部84に移すための専用搬送機構としても機能する。
【0043】
このように構成された処理ユニット8では、第1リフタ810aの3本の支持部材812が基板搬送機構7の一対の懸垂アーム71から複数枚の基板Wを一括して受け取り、後で詳述するように、処理槽821から処理液をオーバーフローさせるオーバーフロー工程と処理槽821に貯留された処理液内に気泡Vを供給する気泡供給工程とを実行しながら、第1薬液処理部81の処理槽中に下降させて薬液中に浸漬させる(浸漬工程)。さらに、所定の薬液処理時間だけ待機した後に、第1リフタ810aは複数枚の基板Wを保持する支持部材812を薬液中から引き上げ、第1リンス処理部82へと横行させ、さらに、薬液処理済の基板Wを保持したまま支持部材812を第1リンス処理部82の処理槽821内へと下降させてリンス液中に浸漬させる。所定のリンス処理時間だけ待機した後、第1リフタ810aは、リンス処理済の基板Wを保持したまま支持部材812を上昇させてリンス液中から基板Wを引き上げる。この後、第1リフタ810aの支持部材から基板搬送機構7の一対の懸垂アーム71に複数枚の基板Wが一括して渡される。
【0044】
第2リフタ810bも同様に、基板搬送機構7の一対の懸垂アーム71から複数枚の基板Wを一括して受け取り、この複数枚の基板Wを第2薬液処理部83の処理槽821中に下降させて薬液中に浸漬させる。さらに、所定の薬液処理時間だけ待機した後に、第2リフタ810bは、支持部材812を上昇させて薬液中から薬液処理済の複数枚の基板Wを引き上げ、第2リンス処理部84の処理槽へと支持部材812を横行させ、さらに、この支持部材812を第2リンス処理部84の処理槽821内へと下降させてリンス液中に浸漬させる。所定のリンス処理時間だけ待機した後、第2リフタ810bは、支持部材812を上昇させてリンス液中から基板Wを引き上げる。この後、第2リフタ810bの支持部材から基板搬送機構7の一対の懸垂アーム71に複数枚の基板Wが一括して渡される。なお、第1薬液処理部81、第1リンス処理部82、第2薬液処理部83および第2リンス処理部84の各々に本発明の「基板保持部」として機能するリフタを設け、処理部81~84に対する基板Wの搬入出を基板搬送機構7や専用の搬送機構で行うように構成してもよい。
【0045】
乾燥処理部85は、複数枚(たとえば50枚)の基板Wを起立姿勢で配列した状態で保持することができる基板保持部材(図示省略)を有しており、減圧雰囲気中で有機溶剤(イソプロピルアルコール等)を基板Wに供給したり、遠心力によって基板W表面の液成分を振り切ったりすることにより、基板Wを乾燥させるものである。この乾燥処理部85は、処理部84などの処理槽821より深い処理槽824があり、処理槽824の上部に(-X)方向にスライドする蓋がついていて密閉にできる(不図示)。処理槽824の下側に水層があり、その上側で有機溶剤の蒸気で乾燥できるようになっている。乾燥処理部85のリフタは(-X)方向にスライドする蓋より下側にあり、基板搬送機構7の一対の懸垂アーム71との間で基板Wの受渡可能に構成されている。そして、リンス処理後の複数枚の基板Wを一括して基板搬送機構7から受け取り、この複数枚の基板Wに対して乾燥処理を施す。また、乾燥処理後においては、基板保持部材から基板搬送機構7に複数枚の基板Wが一括して渡される。
【0046】
次に、本発明に係る基板処理装置について説明する。図1に示す基板処理システム1に備えられた第1薬液処理部81、第1リンス処理部82、第2薬液処理部83および第2リンス処理部84では、使用される処理液が薬液とリンス液で一部相違しているが、装置構成および動作は基本的に同一である。そこで、以下においては、本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当する第1薬液処理部81の構成および動作について説明し、第1リンス処理部82、第2薬液処理部83および第2リンス処理部84に関する説明を省略する。
【0047】
図2は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の概略構成を示す模式図である。図3図2に示す基板処理装置の主要構成を模式的に示す分解組立斜視図である。図4図2の部分断面図である。図5はリフタに保持される複数の基板Wと気泡吐出口845と処理液吐出口834との配置関係を示す模式図である。図6図2に示す基板処理装置の主要構成の上視図である。図7図5に示す気体供給管842を(-X)方向から見た一部を示す拡大部分図である。
【0048】
第1薬液処理部81は例えばリン酸を含む薬液を処理液として用いて基板Wの表面に形成されたシリコン窒化膜をエッチング除去する装置である。この第1薬液処理部81は、図2および図3に示すように、基板Wに対して第1薬液処理を行うための処理槽821を備えている。この処理槽821は、平面視で長方形をなす底壁821aと、底壁821aの周囲から立ち上がる4つの側壁821b~821eとで構成された上方開口のボックス構造を有する。このため、処理槽821は底壁821aと側壁821b~821eとで囲まれた貯留空間821f内で処理液を貯留しながら第1リフタ810aに保持される複数の基板Wを一括して浸漬可能となっている。また、処理槽821は(+Z)方向に開口された上方開口821gを有し、当該貯留空間821fから処理液をオーバーフローさせることが可能となっている。
【0049】
処理槽821の周囲にオーバーフロー槽822が設けられ、当該オーバーフロー槽822と処理槽821の側壁821b~821eとでオーバーフローした処理液を回収する回収空間822aが形成されている。また、処理槽821およびオーバーフロー槽822の下方と側方とを囲うように外容器823が設けられている。
【0050】
オーバーフロー槽822の回収空間822aの一部、より具体的には、側壁821dの(-X)方向側の空間にフロー配管系839が配置されている。フロー配管系839のインレットは処理液供給部832に接続され、アウトレットは処理液吐出部830の処理液供給管831に接続されている。このため、制御部9からの処理液供給指令に応じて処理液供給部832が作動すると、処理液がフロー配管系839を介して複数の処理液供給管831に同時供給される。その結果、処理液供給管831から処理液が吐出され、貯留空間821fに貯留される。なお、処理液供給管831の詳しい構成などについては後で詳述する。
【0051】
また、処理槽821からオーバーフローした処理液はオーバーフロー槽822に回収される。このオーバーフロー槽822には処理液回収部833が接続されている。制御部9からの処理液回収指令に応じて処理液回収部833が作動すると、オーバーフロー槽822に回収された処理液が処理液回収部833を経由して処理液供給部832に送液されて再利用に供せられる。このように本実施形態では、処理槽821に対して処理液を循環供給しながら処理液を貯留空間821fに貯留可能となっている。
【0052】
処理液が貯留された貯留空間821fに対して複数の基板Wを一括して保持しながら浸漬させるために、図2に示すように、第1リフタ810aが設けられている。この第1リフタ810aは、複数枚の基板Wを基板搬送機構7(図1)との間で受け渡しを行う「受渡位置」と、貯留空間821fとの間で昇降可能に構成されている。第1リフタ810aは、背板811と、3本の支持部材812と、延出部材813とを備えている。背板811は、処理槽821の側壁821bに沿って底壁821aに向けて延出されている。支持部材812は、背板811の下端部側面から(-X)方向に延出されている。本実施形態では、3本の支持部材812が設けられている。各支持部材812の上面には、複数のV字状の溝812aが一定のピッチでX方向に配設されている。溝812aは基板Wの厚さより若干幅広のV字状の溝812aが(+Z)方向に開口して形成され、基板Wを係止可能となっている。このため、3本の支持部材812によって基板搬送機構7により搬送されてくる複数の基板Wを一定の基板ピッチPT(図5)で一括して保持可能となっている。また、延出部材813は、背板811の上端部背面から(+X)方向に延出されている。第1リフタ810aは、図2に示すように全体としてL字状を呈している。なお、第1リフタ810aの最上昇位置は、基板搬送機構7が複数枚の基板Wを保持した状態であっても支持部材812の上方を通過できる高さに設定され、複数枚の基板Wを基板搬送機構7との間で受渡しを行うことができる高さである。
【0053】
処理槽821の(+X)方向側には、リフタ駆動機構814が設けられている。リフタ駆動機構814は、昇降モータ815と、ボールネジ816と、昇降ベース817と、昇降支柱818と、モータ駆動部819とを備えている。昇降モータ815は、回転軸を縦置きにした状態で基板処理システム1のフレーム(図示省略)に取り付けられている。ボールネジ816は、昇降モータ815の回転軸に連結されている。昇降ベース817は、ボールネジ816に一方側が螺合されている。昇降支柱818は、下端部側が昇降ベース817に取り付けられ、上端部側が延出部材813の下面に取り付けられている。制御部9からの上昇指令に応じてモータ駆動部819が昇降モータ815を駆動させると、ボールネジ816が回転し、昇降ベース817とともに昇降支柱818が上昇する。これによって支持部材812が受渡位置に位置決めされる。また、制御部9からの下降指令に応じてモータ駆動部819が昇降モータ815を逆方向に駆動させると、ボールネジ816が逆回転し、昇降ベース817とともに昇降支柱818が下降する。これによって、支持部材812に保持される複数の基板Wが一括して貯留空間821fに貯留された処理液に浸漬される。
【0054】
貯留空間821fでは、支持部材812に保持される複数の基板Wの下方側、つまり(-Z)方向側に処理液吐出部830と気泡供給部840とが配設されている。処理液吐出部830は処理液供給部832からフロー配管系839を介して供給される処理液を貯留空間821fに吐出するものであり、気泡供給部840は貯留空間821fに貯留された処理液内に窒素ガスの気泡V(図5)を供給するものであり、それぞれ以下のように構成されている。
【0055】
処理液吐出部830は、図3ないし図6に示すように、X方向に延設された処理液供給管831を有している。本実施形態では4本の処理液供給管831がY方向に互いに離間して配置されている。各処理液供給管831の(-X)方向端部はフロー配管系839のアウトレットと接続され、(+X)方向端部は封止されている。また、各処理液供給管831は、(+Z)方向の側壁に複数の処理液吐出口834(本実施形態では50個)が穿設されている。複数の処理液吐出口834は、X方向の側壁に一定の間隔(本実施形態では基板ピッチPT)で配列するように穿設されている。本実施形態では、図4に示すように、各処理液吐出口834は(+Z)方向に向けて設けられている。このため、処理液供給管831に供給されてきた処理液は配管内部を(+X)方向に流れ、各処理液吐出口834から上方に流れ、処理槽821の上方開口821g、つまりオーバーフロー面に向う処理液の流れLを形成する。こうして、処理液の(+Z)方向に流れる流れLが基板Wの下方側に形成される。なお、発明内容の理解を容易とするため、4本の処理液供給管831のうち最も(-Y)方向側に配置されたものを「処理液供給管831a」と称し、(+Y)方向側に順次配置されるものをそれぞれ「処理液供給管831b」、「処理液供給管831c」および「処理液供給管831d」と称する。また、これらを区別しない場合には、上記のように単に「処理液供給管831」と称する。
【0056】
処理液供給管831は、石英またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの耐腐食性のある樹脂材料から構成されている。処理液吐出口834は、処理液供給管831の表面に対して切削加工と穿設加工を施すことで処理液供給管831と一体的に形成されている。
【0057】
気泡供給部840は、図3ないし図6に示すように、Y方向に延設されたバブラー841を有している。本実施形態では25本のバブラー841がX方向に互いに離間して配置されている。各バブラー841は、Y方向に長手方向が延設された内部を気体が流通する気体供給管842と、気体供給管842の(-X)方向の側壁に穿設される複数の気泡吐出口845(本実施形態では20個)を有している。各気体供給管842の一方端部は窒素ガスを供給するガス供給部844(図2参照)に接続されるガス導入管846と接続され、他方端部は封止されている。ガス導入管846は、処理槽821の側壁821cおよび821eに沿って設けられる。気体供給管842は(+Y)方向または(-Y)方向に交互に延設され、側壁821cまたは821eに沿って設けられたガス導入管846と接続される。図5に示すように複数の気泡吐出口845はX方向に一定の基板ピッチPTの2倍のピッチ2PTで気体供給管842の側壁に設けられている。各気泡吐出口845は図7に示すように円形形状を有して設けられている。
気体供給管842は、気体の流通方向に直交する断面が円形である円筒部材より構成される。この円形の中心を通る水平線上に気泡吐出口845の開口の中心が位置するように気体供給管842の側壁に気泡吐出口845が形成される。気体供給管842は、基板Wの下方で、上方から見て基板Wの主面に沿って気体供給管842の気体が流通する方向の長手が延設される。気体供給管842の気泡吐出口845の各々は水平方向に隣接する基板Wと基板Wとの間に位置する。よって、気泡吐出口845から吐出される気泡Vは、隣接する気体供給管842との間を上昇する処理液の流れLに対して供給される。なお、気体供給管842の管径は、例えば約8.0mmで、気泡吐出口845の直径は約0.3mmである。
【0058】
気体供給管842は、石英またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの耐腐食性のある樹脂材料から構成されている。気泡吐出口845は、気体供給管842の表面に対して切削加工と穿設加工を施すことで気体供給管842と一体的に形成されている。
【0059】
気泡吐出口845の穿設を(-X)方向の側壁に穿設と記載したが、(+X)方向の側壁に穿設させてもよい。複数のバブラー841の気泡吐出口845は一定の方向に穿設しているのが好ましいが、例えば、隣接して配置されたバブラー841の気泡吐出口845が対向して設けられていてもよい。また、バブラー841の気泡吐出口845をバブラー841の一方向に設けているが、例えば、バブラー841の(+X)方向と(-X)方向の二方向に気泡吐出口845を設け、バブラー841の(+X)方向と(-X)方向の二方向から気泡Vを供給してもよい。また、気泡吐出口845は、気泡Vを基板の表面に供給することができればよく、(+Z)方向または(-Z)方向より(―X)方向または(+X)方向の水平方向に傾いた略水平方向の側壁に穿設させてもよい。
【0060】
このように構成された気泡供給部840では、制御部9からの気泡供給指令に応じてガス供給部844が窒素ガスを気泡供給部840に供給すると、気体供給管842を流れる窒素ガスが気体供給管842の側壁に設けられた気泡吐出口845から複数の気体供給管842どうしの間から上昇する処理液の流れLに向けて吐出される。これによって、貯留空間821fに貯留された処理液に、窒素ガスの気泡Vが気体供給管842の側壁から(+Z)方向のオーバーフロー面に向かう方向に供給される。
【0061】
これらの気泡Vは、処理液吐出口834から、上方開口821gに向かう処理液の流れLにより、小さい状態で気泡吐出口845から離脱しやすくなり、その後処理液中を上昇する。処理液の流れLにより上昇した気泡Vは、基板Wの表面の処理液を新鮮な処理液に置換することを促進する。なお、ガス供給部844としては、例えば窒素ガスが充填されたボンベから窒素ガスを供給する構成であってもよいし、基板処理システム1が設置される工場に設けられたユーティリティを用いてもよい。
【0062】
図2ないし図6を参照しつつ本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当する第1薬液処理部81の構成について説明したが、第2薬液処理部83も処理液の種類が同種または異種である点を除き、第1薬液処理部81と同一の構成を有し、本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当している。また、第1リンス処理部82および第2リンス処理部84は、処理液がDIW(deionized water)などのリンス液である点を除き、第1薬液処理部81と同一の構成を有し、本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当している。
【0063】
以上のように、本発明の第1実施形態では、気体供給管842において複数の気泡吐出口845を上方の(+Z)方向から(―X)方向または(+X)方向の水平方向に傾けて設けている。そのため、各気泡吐出口845から吐出した窒素ガスは、処理液吐出口834から供給された処理液の上昇流により、気泡吐出口845から気泡Vが離脱され、処理液内に気泡Vをそのサイズを小さくして供給することができる。その詳しい理由を、図8に示す比較例と本実施形態(図5)とを対比しながら説明する。
【0064】
図8は第1実施形態に係る基板処理装置の比較例を示す模式図である。この比較例では、処理液供給管831の処理液吐出口834の上側、すなわち(+Z)方向に、気体供給管842を設け、気泡吐出口845を上側、すなわち(+Z)方向に有している。処理液吐出口834から(+Z)方向に処理液が吐出され、気泡吐出口845から(+Z)方向に窒素ガスが吐出されて、処理槽821の貯留空間821fに処理液と気泡Vが供給される。この場合、処理液は気体供給管842にぶつかり、気泡Vの気泡吐出口845からの離脱を直接誘引することはできない。また、処理液は気体供給管842にぶつかり、直接的に気泡Vの上昇に寄与はしない。その結果、気泡Vは、気体供給管842の表面のうち気泡吐出口845の周囲に密着し、気体供給管842の表面から離脱することなく、時間経過に伴って気泡吐出口845の開口を中心として球状に大きくなる。大きくなった気泡Vの浮力が密着力を超え、離脱できる大きさとなった時、気泡吐出口845および密着領域から離脱して処理液内に供給される。大きくなった気泡Vの直径は、基板ピッチPTより大きくなることもあるため、基板W間に入り込むことができず、基板Wの表面の処理液を新鮮な処理液への置換を十分に促進できない。
【0065】
これに対し、第1実施形態では、気泡吐出口845から吐出された気泡Vは、発生直後に上昇する処理液によって直接的に気泡吐出口845から切り離される。切り離された気泡Vは処理液と共に上昇し、その上昇速度は気泡Vの浮力に加え、処理液の上昇速度も加わるため速くなる。その結果、第1実施形態では気泡Vのサイズは比較例(図8)に比べて小さく、基板と基板の間の基板の表面にも比較例よりも気泡径の小さい気泡を供給でき、基板の表面の処理液を新鮮な処理液への置換を迅速かつ十分に促進できる。
【0066】
特に、第1薬液処理部81は高アスペクト比の凹部を介してSiN膜をウエットエッチングするため、本発明を第1薬液処理部81に適用することは3D-NANDメモリの製造に重要である。すなわち、ウエットエッチング性能を高めるためには凹部の内部と外部との間で処理液の置換を良好に行う必要がある。また、凹部の底付近にエッチング反応に伴うシリコン析出が発生するが、処理液の置換により上記シリコンを凹部から排出することが可能となる。この液置換を安定的かつ継続して発現させるためには、凹部の内部と外部との濃度差、つまり濃度勾配を大きくする必要がある。さらに言えば、これらを満足させるためには、気泡径を小さくすることが基板Wの表面に新鮮な処理液を効率的に供給するために重要な技術事項となる。この点について、気泡Vのサイズを小さくすることができる第1薬液処理部81によれば、当該気泡Vにより新鮮な処理液の供給を促し、SiN膜のウエットエッチングを良好に行うことができる。
【0067】
なお、本発明は上記した第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば第1実施形態では、気体供給管842から中空円柱状の気泡吐出口845を設けたバブラー841を用いて気泡Vを供給しているが、バブラー841の構成はこれに限定されるものではない。
【0068】
次に、第2実施形態として、図9および図10を用いて説明する。なお、第1実施形態と同じ構成については説明を省略する。図9および図10では、基板WがX方向にフェース・ツー・フェース状態で配置され、気体供給管842の上方で、基板Wの裏面と隣接する基板Wの裏面との間に仕切板851を設置される。仕切板851の形状は、例えば四角柱である。仕切板851を設けることで、気体供給管842を回り込んで基板Wの裏面と隣接する基板Wの裏面との間を上昇しようとする処理液の流れの発生を抑制でき、気泡吐出口845から吐出された気泡Vを、基板Wの表面と隣接する基板Wの表面との間にX方向の処理液の流れの影響を小さくして供給することができる。その結果、フェース・ツー・フェース状態の基板の表面に気泡Vを集めることができ、新鮮な処理液への置換速度が上がり基板処理をさらに高品質で実行することができる。なお、仕切板851は、気体供給管842と別々で記載したが、気体供給管842と一体として形成されていてもよい。
【0069】
次に、第3実施形態として、図11を用いて説明する。なお、第1実施形態および第2実施形態と同じ構成については説明を省略する。処理液吐出口834は、上記第2実施形態では、第1実施形態と同様50個が基板ピッチPTの間隔でX方向に配列するように穿設されているが、第3実施形態では、図11のように一定の基板ピッチPTの2倍のピッチ2PTで処理液供給管831の(+Z)方向の側壁に設けられていてよい(本実施形態では25個)。この場合、第1実施形態または第2実施形態と同一の流量であっても、1つの処理液吐出口834から供給された処理液の流量が大きくなり、気体供給管842の上方より側方に設けられた気泡吐出口845、つまり(-X)方向に穿設される複数の気泡吐出口845から吐出される気泡Vを更に小さい状態で気体供給管842から離脱させ、上昇させることができる。
【0070】
第1実施形態ないし第3実施形態では、樹脂材料で構成された長尺樹脂管の表面に対して切削加工と穿設加工を施すことで気体供給管842と複数の気泡吐出口845とを一体的に形成している。
【0071】
また、気泡吐出口845は円形であるが、当該形状はこれに限定されるものではなく、任意である。例えば図12に示すように先端面が楕円形状を有する気泡吐出口845を用いて気泡Vを供給してもよい。
【0072】
また、気泡吐出口845は穿設であるが、気泡吐出口845を水平方向において隣接する基板Wの間に位置すればよく、形状はこれに限定されるものではなく、任意である。例えば、気泡吐出口845は、図13に示すように柱状形状である中空円柱状の突設部位843aや図14に示すように先端に向かうにしたがって外形寸法が小さくなる先細り形状(テーパ形状)である中空円錐台形状の突設部位843bの先端に設けられている。
【0073】
気泡吐出口845aまたは気泡吐出口845bは、それぞれ、気体供給管842から突設された突設部位843aまたは突設部位843bの先端に設けられている。このため、気泡供給部840のうち気泡Vが気泡吐出口845a、845bから離脱して処理液に供給される直前まで密着している密着領域は突設部位843a、843bの先端面に限定され、配管の側壁に気泡吐出口845を設けたときよりも狭小化することができる。その結果、気泡径を小さくして処理品質を高めることができる。
【0074】
突設部位843aまたは843bは、気体供給管842の表面に対して切削加工と穿設加工を施すことで気体供給管842と複数の突設部位843aまたは843bとを一体的に形成している。ここで、気体供給管842と、複数の突設部位843aや843bとを個別に準備し、気体供給管842に対して複数の突設部位843aや843bを取り付けて一体化させてもよいことは言うまでもない。
【0075】
また、気体供給管842の断面は円形であるが、気泡吐出口845を水平方向において隣接する基板Wの間に位置すればよく、形状はこれに限定されるものではなく、任意である。例えば、図15図17に示すように四角形などの角筒部材の気体供給管842bであってもよい。例えば、図15では、気泡吐出口845cは、気体供給管842bに穿設される。図16では、気泡吐出口845dは柱状形状である中空円柱状の突設部位843dの先端に穿設される。図17では、気泡吐出口845eは先端に向かうにしたがって外形寸法が小さくなる先細り形状である中空円錐台形状の突設部位843eの先端に穿設される。気泡吐出口845a、845b、845d、845eのように気泡吐出口845が中空円柱状の先端にある場合、処理液吐出口834から供給された処理液の上昇流により、気泡吐出口から気泡Vの離脱が促進される。その結果、気泡Vのサイズをさらに小さくすることができる。
【0076】
また、気体供給管842は、図18に示すように、それぞれ流量調節器847を介してガス供給部844に接続される。流量調整器847として開閉弁または流量調整弁が設けられる。流量調節器847は制御部9に接続されており、制御部9で流量調節器847を開閉制御及び流量制御し、気体供給管842を流れる気体の流量が制御される。それにより、複数の気体供給管842のそれぞれに流れる気体の流量を別々に調整することができ、気泡吐出口845から吐出される気泡Vの量を調整できる。このように流量調節器847を有することで、例えば、X方向に配列された複数の基板間で目標エッチング量に対してエッチング量の差があるような場合にX方向の各位置で気泡Vの供給量を調整することができる。その結果、バッチ組の状態で一度に処理される全ての基板のそれぞれに対するエッチング量について基板間における均一性を高めることができる。また、基板間でエッチング量を変更したいような場合に、エッチング量を変更したい基板の表面に供給する気泡Vの量を増減したりして適宜調整することができる。また、複数の気体供給管842を流れる気体の流量を別々に調整することで、処理槽821内に供給される気泡Vの量を調整でき、処理液の上昇流の速度を処理槽821内の位置によって部分的に調整することもできる。
【0077】
また、気泡吐出口845の内面に対して親水化処理を施してもよい。親水化処理は例えば、プラズマ処理である。このプラズマ処理により当該先端、つまり気泡吐出口845の内面が親水化されて気泡Vの離脱が促進される。その結果、気泡Vのサイズをさらに小さくすることができる。
【0078】
また、図19に示すように、気体供給管842の下方に整流板861を設けてもよい。整流板861としては、例えば、気体供給管842の管径より幅広い整流板を用いることができる。このような整流板を用いることで、隣接する気体供給管842の間隔より狭くなった整流板と整流板の間隔から処理液吐出部830から吐出された処理液の上昇流を、X方向に配列する基板Wの表面に供給することができる。この場合、処理液の上昇流の速度が大きくなり、気泡吐出口845から気泡Vの離脱が促進されるとともに、離脱した気泡Vを基板Wの表面に適切に供給することができる。なお、整流板861は、気体供給管842と同様、上方から見て基板の主面に沿って延設されていてよい。そして、処理液供給管831の処理液吐出口834は処理槽821の底壁821aや側壁821cに向きに開口して処理液を吐出し、吐出された処理液が整流板と整流板の間隔からの上昇流を形成することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、処理液吐出部830は4本の処理液供給管831を含んでいるが、処理液供給管831の本数はこれに限定されるものではなく、貯留空間821fや基板Wのサイズ等に応じて設けてよい。また、気泡供給部840に含まれるバブラー841の本数は25本であるが、バブラー841の本数はこれらに限定されるものではなく、貯留空間821fや基板Wの表面の向き、基板Wの枚数等に応じて設けてよい。
【0080】
また、上記実施形態では、窒素ガスをバブラー841に送り込んで窒素ガスの気泡Vを処理液内に供給しているが、窒素ガス以外のガスを本発明の「気体」として用いてよい。
【0081】
また、上記実施形態では、処理液供給管831から処理液を貯留空間821fの上方に向けて吐出する基板処理装置に本発明を適用しているが、本発明の処理液の供給態様はこれに限定されるものではない。例えば基板Wの下方側から処理槽821の底壁821aに向けて吐出してよい。
【0082】
さらに、上記実施形態では、リン酸を含む薬液により薬液処理を行う基板処理装置やリンス処理を行う基板処理装置に対して本発明を適用しているが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、上記薬液やリンス液以外の処理液に基板を浸漬させるとともに処理液内で上記基板に気泡Vを供給して基板処理を行う基板処理技術全般に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
この発明は、処理槽に貯留される貯留された薬液や純水などの処理液に基板を浸漬するとともに処理液中で上記基板に気泡を供給して処理する基板処理装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
81…第1薬液処理部(基板処理装置)
82…第1リンス処理部(基板処理装置)
83…第2薬液処理部(基板処理装置)
84…第2リンス処理部(基板処理装置)
810…リフタ(基板保持部)
810a…第1リフタ(基板保持部)
810b…第2リフタ(基板保持部)
821…処理槽
821f…貯留空間
821g…上方開口
830…処理液吐出部
831…処理液供給管
832…処理液供給部
834…処理液吐出口
840…気泡供給部
841,841a~841d…バブラー
842,842b…気体供給管
843,843a,843b,843d,843e…穿設部位
845,845a~845e…気泡吐出口
V…気泡
W…基板



図1
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