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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】複合コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/38 20060101AFI20240327BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20240327BHJP
   H01G 2/02 20060101ALI20240327BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01G4/38 A
H01G4/228 J
H01G2/02 101E
H01G2/10 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023045503
(22)【出願日】2023-03-22
(62)【分割の表示】P 2021118713の分割
【原出願日】2021-07-19
(65)【公開番号】P2023078368
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】森 隆志
(72)【発明者】
【氏名】能勢 卓志
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-347561(JP,A)
【文献】特開2008-130641(JP,A)
【文献】特開2016-197676(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067576(WO,A1)
【文献】実開平01-153627(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/38
H01G 4/228
H01G 2/02
H01G 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量が相対的に大きいメインコンデンサと静電容量が相対的に小さいサブコンデンサとの組み合わせからなり、
前記メインコンデンサは、誘電体フィルムに電極が被着された金属化フィルムが巻回または積層され軸方向両端に第1および第2の金属電極が形成されたコンデンサ素子と、前記両金属電極のそれぞれに接続された第1および第2の板状導体本体部とを備えて、メインコンデンサ主要部を構成し、
前記メインコンデンサ主要部における前記第1および第2の板状導体本体部は、それぞれ第1および第2の板状導体延出部を介して遊端側に第1および第2の板状導体端子部を有し、
前記サブコンデンサは、所定の微小間隔を隔てた平行姿勢で対向配置された第1および第2の電極板本体部と、前記両電極板本体部の対向間隙内に挿入されてその両電極板本体部に挟持されたシート状誘電体とを備えて、平行平板式のサブコンデンサ主要部を構成するとともに、
前記サブコンデンサ主要部における前記第1および第2の電極板本体部は、前記メインコンデンサにおける前記第1および第2の板状導体本体部と同等の材質で構成され、それぞれ第1および第2の電極板延出部を介して遊端側に第1および第2の電極板端子部を有し、
前記メインコンデンサにおける前記第1および第2の板状導体端子部と前記サブコンデンサにおける前記第1および第2の電極板端子部とは、同極どうしが接続可能とされ、
前記メインコンデンサ主要部と前記サブコンデンサ主要部は外装ケースに収容されるとともに、前記外装ケース内に充填されたモールド樹脂によって被覆され、
前記サブコンデンサ主要部は、前記メインコンデンサ主要部の外周側面に沿わせた近接姿勢で前記メインコンデンサ主要部と前記外装ケースの内壁面との間に配置されていることを特徴とする複合コンデンサ。
【請求項2】
前記メインコンデンサにおける前記第1および第2の板状導体延出部どうしは互いに近接かつ非接触の面対向・絶縁状態で平行する姿勢に配置され、前記サブコンデンサにおける前記第1および第2の電極板延出部どうしは互いに近接かつ非接触の面対向・絶縁状態で平行する姿勢に配置されている請求項1に記載の複合コンデンサ。
【請求項3】
前記平行する状態の第1および第2の板状導体延出部のペアと前記平行する状態の第1および第2の電極板延出部のペアどうしは互いに近接かつ非接触の面対向・絶縁状態で平行する姿勢に配置されている請求項2に記載の複合コンデンサ。
【請求項4】
前記第1および第2の板状導体端子部はそれぞれ複数に分岐した状態で突出する舌片状に形成され、前記複数の第1の舌片状の板状導体端子部のそれぞれは前記複数の第2の舌片状の板状導体端子部の隣接するものどうしの中間位置に配置され、
前記第1および第2の電極板端子部はそれぞれ複数に分岐した状態で突出する舌片状に形成され、前記複数の第1の舌片状の電極板端子部のそれぞれは、前記複数の第2の舌片状の電極板端子部の隣接するものどうしの中間位置に配置され、
前記第1の舌片状の板状導体端子部とこれと同極をなす前記第1の舌片状の電極板端子部とは重ね合わされた状態に配置され、前記第2の舌片状の板状導体端子部とこれと同極をなす前記第2の舌片状の電極板端子部とは重ね合わされた状態に配置されている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の複合コンデンサ。
【請求項5】
前記シート状誘電体は、その誘電率が2~4の範囲に設定されている請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の複合コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量が異なる2種類のコンデンサ、すなわち静電容量が相対的に大きいメインコンデンサと静電容量が相対的に小さいサブコンデンサを組み合わせてなる複合コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インバータ用の平滑コンデンサについて、スイッチング素子の高速化に伴いノイズ低減の要請が強くなってきている。インバータにおいては、直列接続されて交互にオン/オフする相補型のハイサイドおよびローサイドの一対のスイッチング素子からなるレグが3組または2組設けられる。レグにおけるスイッチング素子の動作速度は近年ますます高速化しており、それに伴って誘発されるノイズの強度も増大化している。
【0003】
モータなどの交流負荷に供給する電源として、インバータのレグを並列に接続するハイサイドの電源ラインとローサイドの電源ラインに対して、平滑用のコンデンサ(メインコンデンサ)が差し渡し接続される。インバータにおけるPWM制御のためには、平滑用のコンデンサの直流電圧レベルが安定していることが重要である。
【0004】
しかし、スイッチング動作の高速化に伴う高周波ノイズの影響によって直流電圧レベルが変動すると、負荷であるモータなどの電気機器の制御が高精度に行えなくなる問題がある。
【0005】
そこで、近年そのような不都合を解消すべく、静電容量が小さなノイズ除去用のコンデンサであるサブコンデンサをメインコンデンサに対して並列に接続する複合コンデンサが開発されている。
【0006】
従来の複合コンデンサにあっては、ノイズ除去用のサブコンデンサも平滑用のメインコンデンサと同様に金属化フィルムコンデンサを用いる方式となっている。
【0007】
以下、そのような従来例を図10図12を参照しながら説明する。図において、50はメインコンデンサ、51はメインコンデンサ50における静電容量の大きなコンデンサ素子、52a(図12)はメインコンデンサ50における陰極(N極)側の板状導体(バスバー)、52bは陽極(P極)側の板状導体、60はサブコンデンサ、61はサブコンデンサ60における静電容量の小さなコンデンサ素子である。つまり、この従来例では陰極が下面側、陽極が上面側となっている。静電容量の大きなコンデンサ素子51は平滑用であり、静電容量の小さなコンデンサ素子61はノイズ除去用である。
【0008】
平滑用のメインコンデンサ50における静電容量の大きな複数のコンデンサ素子51のそれぞれは金属化フィルムを巻回したもので、フィルム面に蒸着電極が形成された誘電体フィルムからなる金属化フィルムが巻回または積層されているとともに、その軸方向両端に金属電極(メタリコン)が形成された構造を有している。このような静電容量の大きな平滑用のコンデンサ素子51が複数個互いに平行姿勢で接触して配置され、複数個の静電容量の大きな平滑用のコンデンサ素子51それぞれの軸方向下端の金属電極に陰極(N極)側の板状導体52aが電気的かつ機械的に接続され、またそれぞれの軸方向上端の金属電極に陽極(P極)側の板状導体52bが電気的かつ機械的に接続されている。
【0009】
図12に示すように、軸方向上側の陽極の板状導体52bは水平姿勢の板状導体本体部52b1とそれから立ち上がりさらに折れ曲がって水平に伸びる板状導体延出部52b2と板状導体延出部の遊端部から3つに分かれて逆L字状に延出される板状導体端子部52b3を有している。軸方向下側の陰極の板状導体52aは軸方向上側の陽極の板状導体52bと類似の形状を有し、水平姿勢の板状導体本体部52a1、板状導体延出部52a2および3つの逆L字状の板状導体端子部52a3を有している。
【0010】
陽極の板状導体52bにおける遊端側の板状導体端子部52b3と陰極の板状導体52aにおける遊端側の板状導体端子部52a3とは、それぞれ一対のものが横方向で交互に配置される位置関係となっている。
【0011】
以上のように、平滑用のコンデンサ素子51と一対の板状導体52a,52bとから静電容量の相対的に大きなメインコンデンサ50が構成されている。
【0012】
静電容量の相対的に小さなサブコンデンサ60におけるノイズ除去用のコンデンサ素子61も金属化フィルムを巻回したもので、容量(横寸法、奥行寸法、軸方向寸法)が小さい点以外はメインコンデンサ50における平滑用のコンデンサ素子51と同様の構造を有している。ノイズ除去用のコンデンサ素子61はその1個がコンデンサ素子51の1個の静電容量よりも小さく、容積の面でも(縦寸法も横寸法も高さ寸法もすべて)小さくなっている。この従来例では、ノイズ除去用のコンデンサ素子61の個数は2個であり、平滑用のコンデンサ素子51の個数は4個であり、全体としてサブコンデンサ60の静電容量はメインコンデンサ50の静電容量に比べて充分に小さなものとなっている。
【0013】
サブコンデンサ60を構成する2個のノイズ除去用のコンデンサ素子61はその軸方向下端の金属電極どうしが板状導体を介して接続され、一方のコンデンサ素子61はメインコンデンサ50に接続された板状導体52bの板状導体本体部52b1に接続されている。62bはグランド端子である。
【0014】
図11は上記のように構成された複数のコンデンサ素子に板状導体(バスバー)を接続してなる端子付きコンデンサユニットを外装ケース70内に収容した状態を示している。その後、外装ケース70内にモールド樹脂を注入充填し、コンデンサユニットを保護被覆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】再表2016/067576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
近年においては、インバータ機器のスイッチングの高速化(高周波化)により、従来よりも高周波帯域でのノイズが増加し、機器性能への影響やEMC(電磁環境適合性)規格からの規制を受けるようになってきた。
【0017】
ノイズ除去用のコンデンサとして従来はセラミックコンデンサか低静電容量の金属化フィルムコンデンサを用いていた。しかし、高耐電圧化が要求される中でセラミックコンデンサでは不十分な場合があった。一方、スイッチングの高速化に伴う高周波化で求められている高周波ノイズ対応に最適な微小静電容量([pF]オーダー)に対応した金属化フィルムコンデンサを形成することが困難であった。
【0018】
ノイズ除去用のコンデンサも本体の平滑用のコンデンサと同じ構造すなわち金属化フィルムコンデンサの軸方向両端の金属電極のそれぞれに対して外部引き出し端子(バスバー)が電気的に接続された構造を有するものである。その静電容量は基本的に例えば0.001~10[μF]と大きなものとなっている。
【0019】
本発明が抑制対象としている高周波ノイズに対応したノイズ除去用のサブコンデンサは、その静電容量が大きくても50~200[pF]オーダーさらに望ましくは10~50[pF]オーダーのコンデンサである。
【0020】
このような静電容量が小さなコンデンサとして従来ではセラミックコンデンサが用いられている。セラミックコンデンサの場合、ともに極薄の誘電体層と内部電極とが多層積層された構造であり、高電圧に対する耐性をもたせること(高耐電圧化)が難しい。
【0021】
一方、金属化フィルムコンデンサの場合、要請に応えることができる程度の小さな静電容量を実現することは非常に難しい。再掲すると、せいぜい下限1[nF](1000[pF])程度が限界であり、抑制したい高周波ノイズに対応した微小静電容量の金属化フィルムコンデンサの作製はきわめて難しい。金属化フィルムを1巻き増やすだけでも1[nF]程度も増加してしまうため、結局、1[nF]を超える静電容量の比較的大きなコンデンサを使用せざるを得ず、高周波ノイズの抑制が不充分なものとならざるを得ない。
【0022】
以上のような理由により、相補型のハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子のスイッチング高速化の波に伴って必要とされるノイズ除去用のコンデンサの小静電容量化が非常に厳しくなってきている。ノイズ除去用のコンデンサについて小静電容量化を極力進めても、近年要求されているスイッチングの高速化には応えることができないものとなっている。加えて、高耐電圧化の要求にも応えることができないものとなっている。
【0023】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、複合コンデンサに関して、高耐電圧化を図りながらスイッチング素子の動作高周波化に対応でき、併せて、生産性を向上し、形態面においてコンパクト構造を実現可能な複合コンデンサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0025】
本発明による複合コンデンサは、
静電容量が相対的に大きいメインコンデンサと静電容量が相対的に小さいサブコンデンサとの組み合わせからなり、
前記メインコンデンサは、誘電体フィルムに電極が被着された金属化フィルムが巻回または積層され軸方向両端に第1および第2の金属電極が形成されたコンデンサ素子と、前記両金属電極のそれぞれに接続された第1および第2の板状導体本体部とを備えて、メインコンデンサ主要部を構成し、
前記メインコンデンサ主要部における前記第1および第2の板状導体本体部は、それぞれ第1および第2の板状導体延出部を介して遊端側に第1および第2の板状導体端子部を有し、
前記サブコンデンサは、所定の微小間隔を隔てた平行姿勢で対向配置された第1および第2の電極板本体部と、前記両電極板本体部の対向間隙内に挿入されてその両電極板本体部に挟持されたシート状誘電体とを備えて、平行平板式のサブコンデンサ主要部を構成するとともに、
前記サブコンデンサ主要部における前記第1および第2の電極板本体部は、前記第1および第2の板状導体本体部と同等の材質から構成され、それぞれ第1および第2の電極板延出部を介して遊端側に第1および第2の電極板端子部を有し、
前記メインコンデンサにおける前記第1および第2の板状導体端子部と前記サブコンデンサにおける前記第1および第2の電極板端子部とは、同極どうしが接続可能とされ、
前記メインコンデンサ主要部と前記サブコンデンサ主要部は外装ケースに収容されるとともに、前記外装ケース内に充填されたモールド樹脂によって被覆され、
前記サブコンデンサ主要部は、前記メインコンデンサ主要部の外周側面に沿わせた近接姿勢で前記メインコンデンサ主要部と前記外装ケースの内壁面との間に配置されていることを特徴とする。
【0026】
ここで、この〔課題を解決するための手段〕の欄及び特許請求の範囲の記載において、「平行」について注記しておく。ここでの「平行」とは、一般的に言われているところの「同一平面上の二直線(あるいは空間の二平面または一直線と一平面)がどこまで延長しても交わらないこと」を意味する狭義の『平行』とは異なる定義となっている。すなわち、その一般的な狭義の『平行』は直線性や平面性の限定を受けるものであるが、本願における「平行」は、直線性や平面性の限定を受けることのない、より広義の定義となっている。平面どうしが互いに所定の間隔をおいて対向配置されている状態も「平行」に含まれるが、それだけに限定するのではなく、曲面どうしについても互いに所定の間隔をおいて対向配置されている状態をも含むものである。後者の場合においては、双方の曲面の態様としては、[1]滑らかに湾曲する状態(屈曲状態)、[2]ある角度をもって方向が変化する状態(屈折状態)、あるいは[3]この2つの状態[1],[2]がいろいろな条件の下に複合化された多様な曲折状態をも含むものとする。
【0027】
本発明の上記の構成によれば、次のような作用が発揮される。
【0028】
サブコンデンサの構造につき、メインコンデンサが有する構成(誘電体フィルムに電極が被着された金属化フィルムを巻回または積層したコンデンサ)とは異なり、対向配置される2枚の電極板本体部間にシート状誘電体を挟み込む平行平板式の構成を採用した点に特徴がある。
【0029】
誘電体フィルムに電極が被着された金属化フィルムを巻回または積層したコンデンサの構造では、金属化フィルムを1巻き増やすだけでも1[nF]程度も増加してしまうため、結局、1[nF]を超えるような静電容量の比較的大きなノイズ除去用のコンデンサを使用せざるを得ず、高周波ノイズの抑制が不充分なものとならざるを得ない。
【0030】
これに対して、平行平板式のコンデンサ構造は、求められている高周波ノイズ対応に最適な微小容量のコンデンサを作製する上で非常に好都合である。
【0031】
さらに、メインコンデンサとサブコンデンサとをアセンブルして並列接続した複合コンデンサを構築するに際して、メインコンデンサにおける板状導体のうちの端部に相当する第1および第2の板状導体端子部とサブコンデンサにおける電極板のうち第1および第2の電極板端子部との同極どうしを接続可能としている。
【0032】
サブコンデンサ主要部は第1および第2の電極板本体部間にシート状誘電体を挟持した平行平板式に構成されたものであり、サブコンデンサ主要部をメインコンデンサ主要部に対し、無駄なデッドスペースを生じさせないで近接配置することが可能である。
【0033】
平行平板式のサブコンデンサは金属化フィルム構成のメインコンデンサに比べて占有体積が小さく、またその主要部(一対の電極板本体部間にシート状誘電体を挟持した構成)は肉厚の薄い平板状のものであるため、立体的なメインコンデンサ主要部の側面に沿わせた状態に容易に近接配置することができ、全体としてコンパクトに集約することができる。
【0034】
電源と外部機器とをつなぐ母線に対して接続を行うべきメインコンデンサ側の板状導体端子部は板状導体延出部を介してメインコンデンサ主要部における板状導体本体部に連接されている。一方、前記母線に対して接続を行うべきサブコンデンサ側の電極板端子部は電極板延出部を介してサブコンデンサ主要部における電極板本体部に連接されている。板状導体本体部、板状導体延出部および板状導体端子部からなる板状導体(バスバー)も電極板本体部、電極板延出部および電極板端子部からなる電極板(バスバー)もともに薄肉の金属板で構成される。
【0035】
これら個々の板状導体・電極板(バスバー)は金属の変形容易性に富むものであり、所望形状に容易に変形加工することができる。メインコンデンサ側において陽極の板状導体と陰極の板状導体とを互いに沿わせて配置すること、サブコンデンサ側において陽極の電極板と陰極の電極板とを互いに沿わせて配置すること、さらには、メインコンデンサ側の陰陽両極の板状導体ペアに対してサブコンデンサ側の陰陽両極の電極板ペアを沿わせて配置することはいずれも容易に実現可能である(なお、ここでは本体部と延出部と端子部との全体がいわゆる板状導体や電極板であり、これらはそれぞれ一連につながっている)。
【0036】
金属化フィルム構成のコンデンサ素子と板状導体(本体部・延出部・端子部)とからなるメインコンデンサは、メインコンデンサ自体を作製するときにはそれ単独で取り扱い可能なアッセンブリ(半製品)として構成することができる。同様に、シート状誘電体とそれを挟持する一対の電極板(本体部・延出部・端子部)とからなるサブコンデンサも、サブコンデンサ自体を作製するときにはそれ単独で取り扱い可能なアッセンブリ(半製品)として構成することができる。すなわち、メインコンデンサもサブコンデンサもともに独立したかたちで取り扱うことができる。
【0037】
メインコンデンサ側とサブコンデンサ側とであらかじめ形状・寸法関係をマッチングさせておけば、メインコンデンサ主要部とサブコンデンサ主要部との相対位置関係の合わせ込みをもってメインコンデンサ側の板状導体とサブコンデンサ側の電極板との位置合わせが迅速・容易に行える。特に重要な同極どうしの端子部の位置の合わせ込みを容易かつ正確なものにすることができる。
【0038】
以上の結果として、本発明による複合コンデンサは、金属化フィルム構成のメインコンデンサと平行平板式のサブコンデンサという互いに異種の構造をもつ2つのアッセンブリであるにもかかわらず、その2つのアッセンブリの個別作製、組み合わせする際の工程作業の作業性がすぐれたものになる。しかも、形状的にシンプルかつコンパクトにまとまった状態に構成することができ、高いスペース効率を発揮するものとなる。
【0039】
さらには、メインコンデンサ主要部とサブコンデンサ主要部が外装ケースに収容され、外装ケース内に注入充填したモールド樹脂によって被覆保護されていることで、次のような利点がある。サブコンデンサ主要部がモールド樹脂内に埋没することにより、すなわちサブコンデンサの容量形成部がモールド樹脂内に位置することにより、発現する静電容量値を安定させることができる。すなわち、サブコンデンサの容量形成部をモールド樹脂外で形成する場合に比較して板状導体間(電極間)に空気が入り込むのを防止し、製品品質の安定化を図ることができる。
【0040】
上記構成の本発明の複合コンデンサには、次のようないくつかの好ましい態様ないし変化・変形の態様がある。
【0041】
〔1〕前記サブコンデンサ主要部は、前記メインコンデンサ主要部の外周側面の1つの平面側面部に対して平行姿勢に沿った近接姿勢で配置されていること。
【0042】
メインコンデンサ主要部の外周側面は相対的に薄肉な平行平板式のサブコンデンサ主要部を平行に沿わせるのに好適であり、複合コンデンサをコンパクトに構成することが可能となる。
【0043】
〔2〕前記メインコンデンサにおける前記第1および第2の板状導体延出部どうしは互いに近接かつ非接触の面対向・絶縁状態で平行する姿勢に配置され、前記サブコンデンサにおける前記第1および第2の電極板延出部どうしは互いに近接かつ非接触の面対向・絶縁状態で平行する姿勢に配置されていること。ここで「面対向」というのは「平行」についての形態を限定するものであり、その意義は、一方の板状導体延出部あるいは電極板延出部の板面に対して垂直な方向に離間して他方の板状導体延出部あるいは電極板延出部が平行的に対向しているということである。
【0044】
板状導体も電極板も薄肉平板状の良導電性の金属板であり、容易に所望の形状に変形加工することができる。メインコンデンサ側の第1の板状導体延出部と第2の板状導体延出部とを平行姿勢にして配置するとともに、サブコンデンサ側の第1の電極板延出部と第2の電極板延出部とを平行姿勢にして配置しておけば、複合コンデンサの全体をコンパクトにまとめることができる。
【0045】
〔3〕前記平行する状態の第1および第2の板状導体延出部のペアと前記平行する状態の第1および第2の電極板延出部のペアどうしは互いに近接かつ非接触の面対向・絶縁状態で平行する姿勢に配置されていること。
【0046】
上記〔2〕の構造では、メインコンデンサ側の板状導体延出部の平行ペアとサブコンデンサ側の電極板延出部の平行ペアとの異種2個の平行ペアが形成されるが、本態様ではその異種2つの平行ペアどうしをさらに平行姿勢で近接配置するものである。このように構成すれば、複合コンデンサをすぐれたデザイン性の下で一層コンパクトにまとめることができる。
【0047】
〔4〕前記第1および第2の板状導体端子部はそれぞれ複数に分岐した状態で突出する舌片状に形成され、前記複数の第1の舌片状の板状導体端子部のそれぞれは前記複数の第2の舌片状の板状導体端子部の隣接するものどうしの中間位置に配置され、
前記第1および第2の電極板端子部はそれぞれ複数に分岐した状態で突出する舌片状に形成され、前記複数の第1の舌片状の電極板端子部のそれぞれは、前記複数の第2の舌片状の電極板端子部の隣接するものどうしの中間位置に配置され、
前記第1の舌片状の板状導体端子部とこれと同極をなす前記第1の舌片状の電極板端子部とは重ね合わされた状態に配置され、前記第2の舌片状の板状導体端子部とこれと同極をなす前記第2の舌片状の電極板端子部とは重ね合わされた状態に配置されていること。
【0048】
本態様は、メインコンデンサ側とサブコンデンサ側の同極の舌片状の板状導体端子部どうしを重ね合わせ、かつ、メインコンデンサ側とサブコンデンサ側の同極の舌片状の電極板端子部どうしを重ね合わせた構成となっている。
【0049】
本態様においては、第1および第2の板状導体と第1および第2の電極板とが板面の垂直方向で対向する状態に重なっている。そして、その重なりの順序については、
[1]第1の板状導体と第1の電極板とが板面対向で隣接する状態で内側に位置しかつ第2の板状導体と第2の電極板とが両外側にあって前記内側の第1の板状導体・電極板を挟み込む態様、
[2]第2の板状導体と第2の電極板とが板面対向で隣接する状態で内側に位置しかつ第1の板状導体と第1の電極板とが両外側にあって前記内側の第2の板状導体・電極板を挟み込む態様
の2つの態様がある。
【0050】
〔5〕また、前記シート状誘電体は、その誘電率が2~4の範囲に設定されていること。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、静電容量がより小さい平行平板式のコンデンサでサブコンデンサを構成しているので、高耐電圧化を図りながらも近年のスイッチング動作の高周波化に所期通りに対応可能な微小静電容量を実現でき、ひいては、高周波ノイズの低減において効果的に対応することができるようになった。併せて、製造面ではメインコンデンサとサブコンデンサの双方を単独で取り扱い可能なアッセンブリ(半製品)とすることが可能となり、また、メインコンデンサ側の板状導体とサブコンデンサ側の電極板との位置合わせ、特に重要な同極どうしの端子部の位置の合わせ込みを容易かつ正確化して、生産性を向上することも期待できる。さらには、形態面においてデッドスペースを抑えたコンパクト構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の実施例における複合コンデンサの構造を示す縦方向断面図
図2】実施例の複合コンデンサにおける構成要素の構造を示す側面図
図3】実施例のメインコンデンサにおけるコンデンサユニット、第1の板状導体および第2の板状導体の分解状態斜視図
図4】実施例のメインコンデンサにおけるコンデンサユニット、第1の板状導体および第2の板状導体の組み付け状態斜視図
図5】実施例のサブコンデンサにおけるシート状誘電体、第1の電極板および第2の電極板の分解状態斜視図
図6】実施例のメインコンデンサにおけるシート状誘電体、第1の電極板および第2の電極板の組み付け状態斜視図
図7】実施例の複合コンデンサにおける背面側から見た斜視図
図8】本発明の実施例においてコンデンサ主要部を外装ケースに収容した状態を示す斜視図(図1対応)
図9】ペアをなす陰陽両極2種類の陰極どうしの第1の板状導体端子部と第1の電極板端子部、陽極どうしの第2の板状導体端子部と第2の電極板端子部の重ね合わせ状態での電気的かつ機械的接続状態を示す斜視図(図7対応)
図10】従来の複合コンデンサの主要部の構造を示す斜視図
図11】従来例においてコンデンサ主要部を外装ケースに収容した状態の斜視図
図12】従来の複合コンデンサの縦方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、上記構成の本発明の複合コンデンサにつき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0054】
図1図9において、10は静電容量が相対的に大きいメインコンデンサ、20は静電容量が相対的に小さいノイズ除去用のサブコンデンサである。11はコンデンサ素子、11aはコンデンサ素子11の下面における第1の金属電極、11bは上面における第2の金属電極、12は第1の板状導体(バスバー)、13は第2の板状導体、21はシート状誘電体、22は第1の電極板、23は第2の電極板である。
【0055】
図2(a)に示すように、下側に位置する第1の板状導体12の構成要素として、12aは第1の板状導体本体部、12bは第1の板状導体延出部、12cは第1の板状導体端子部である。上側に位置する第2の板状導体13の構成要素として、13aは第2の板状導体本体部、13bは第2の板状導体延出部、13cは第2の板状導体端子部である。
【0056】
図2(b)に示すように、内側に位置する第1の電極板22の構成要素として、22aは第1の電極板本体部、22bは第1の電極板延出部、22cは第1の電極板端子部である。外側に位置する第2の電極板23の構成要素として、23aは第2の電極板本体部、23bは第2の電極板延出部、23cは第2の電極板端子部である。
【0057】
メインコンデンサ10の主な構成要素はコンデンサ素子11と一対の板状導体12,13とである。コンデンサ素子11は一般的な金属化フィルムの巻回体である。その金属化フィルムは、誘電体フィルムのフィルム面に蒸着金属が形成されて構成されている。メインコンデンサ10としては上記巻回体に代えて積層体としてもよい。コンデンサ素子11は平面視小判形の柱状体である。コンデンサ素子11の軸方向下端面には陰極をなす第1の金属電極11aが形成され、上端面には陽極をなす第2の金属電極11bが形成されている。
【0058】
このようなコンデンサ素子11が縦横とも複数個並列に配置されて、コンデンサ素子の集合体であるコンデンサユニットUを構成している。コンデンサユニットUを構成する複数のコンデンサ素子11はそれぞれの軸方向が互いに平行であり、側面(周面)どうしが当接した状態でマトリックス状に規則的に配列されている。コンデンサユニットUは全体としてほぼ直方体形状を呈している。
【0059】
下側に位置する第1の板状導体12は、図2(a)に示すように、第1の板状導体本体部12aと第1の板状導体延出部12bと第1の板状導体端子部12cとからなり、全体が1枚物の導電性金属の薄板(例えば銅板)で構成されている。第1の板状導体本体部12aは、コンデンサユニットUを構成するコンデンサ素子群11‥の下端面の第1の金属電極11a‥に共通にハンダ付け等により電気的かつ機械的に接続されている。第1の板状導体延出部12bは、第1の板状導体本体部12aの端縁部分で逆L字状に折り曲げられる状態に一連一体に延出されている。さらに第1の板状導体端子部12cは、第1の板状導体延出部12bの端縁部分で逆L字状に折り曲げられる状態に一連一体に延出されている。第1の板状導体本体部12aに対して第1の板状導体延出部12bが折り曲げられるラインL1は、コンデンサユニットUにおける第1の金属電極11aの端縁に対応する部位となっている。
【0060】
同様に、上側に位置する第2の板状導体13は、第2の板状導体本体部13aと第2の板状導体延出部13bと第2の板状導体端子部13cとからなり、全体が1枚物の導電性金属の薄板(例えば銅板)で構成されている。第2の板状導体本体部13aは、コンデンサ素子群11‥の上端面の第2の金属電極11b‥に共通にハンダ付け等により電気的かつ機械的に接続されている。第2の板状導体延出部13bは、第2の板状導体本体部13aの端縁部分で逆L字状に折り曲げられる状態に一連一体に延出されている。さらに第2の板状導体端子部13cは、第2の板状導体延出部13bの端縁部分で逆L字状に折り曲げられる状態に一連一体に延出されている。第2の板状導体本体部13aに対して第2の板状導体延出部13bが折り曲げられるラインL2は、ラインL1の直上でコンデンサユニットUにおける第2の金属電極11bの端縁に対応する部位となっている。
【0061】
メインコンデンサ10のうちコンデンサユニットUと第1および第2の板状導体本体部12a,12bからなる部分をメインコンデンサ主要部10Aとする。
【0062】
コンデンサユニットUの下側に位置する第1の本体板状導体12aから延出された第1の板状導体延出部12bの垂直部分は、第2の板状導体延出部13bの垂直部分に接近させるべく鉛直上方に折り曲げられた上で、ほぼ直方体形状のコンデンサユニットUの外周側面の1つの平面側面部に対して平行姿勢に沿った近接姿勢で配置されている。
【0063】
図2(a)に示すように、第1の板状導体延出部12bと第2の板状導体延出部13bとは微小間隔を隔ててかつその微小間隔を一定に保ちつつ逆L字状の形を保ちながら対向配置されている。
【0064】
逆L字状の両板状導体延出部12b,13bはコンデンサユニットUの長辺方向に沿って細長く展開されている。それはアングル材に似た形を呈している。
【0065】
メインコンデンサ主要部10Aにおける第1および第2の板状導体本体部12a,13aは、それぞれ第1および第2の板状導体延出部12b,13bを介して遊端側に陰極・陽極のペアをなす第1および第2の板状導体端子部12c,13cを有している。
【0066】
メインコンデンサ10における陰極・陽極のペアをなす第1および第2の板状導体延出部12b,13bどうしは互いに近接かつ非接触の面対向・絶縁状態で平行する姿勢に配置されている。これら両板状導体延出部12b,13bの対向間隙には絶縁シート(図示せず)が介在している。
【0067】
ペアをなす第1および第2の板状導体端子部12c,13cはそれぞれ複数に分岐した状態で突出する舌片状・逆L字状に形成されている。第1の板状導体端子部12cと第2の板状導体端子部13cとはほぼ同一高さ位置で水平方向に間隔を隔てて配置されている。複数の第1の舌片状の板状導体端子部12cのそれぞれは、複数の第2の舌片状の板状導体端子部13cの隣接するものどうしの中間位置に配置されている。同じことだが、複数の第2の舌片状の板状導体端子部13cのそれぞれは、複数の第1の舌片状の板状導体端子部12cの隣接するものどうしの中間位置に配置されている。
【0068】
第1および第2の両板状導体端子部12c,13cを舌片状にしているのは、第1の板状導体端子部12cの複数個と第2の板状導体端子部13cの複数個とをほぼ同一高さ位置、同一突出位置で互い違いに配列させる必要条件となっている。
【0069】
サブコンデンサ20の主要部であるサブコンデンサ主要部20Aは平行平板式で静電容量が小さい高周波ノイズ除去用である。陰極・陽極のペアをなす第1および第2の電極板本体部22a,23aは小間隔を隔てた平行姿勢で対向配置され、その両電極板本体部22a,23aの対向間隙内にはシート状誘電体21がサンドイッチ状に挿入・挟持されて、サブコンデンサ主要部20Aが構成される。
【0070】
第1および第2の電極板本体部22a,23aは、それぞれ第1および第2の電極板延出部22b,23bを介して遊端側に陰極・陽極のペアをなす第1および第2の電極板端子部22c,23cを有している。
【0071】
陰極・陽極のペアをなす第1および第2の電極板延出部22b,23bどうしは互いに近接かつ非接触の面対向・絶縁状態で平行する姿勢に配置されている。これら両板状導体延出部22b,23bの対向間隙には絶縁シート(図示せず)が介在している。
【0072】
ペアをなす第1および第2の電極板延出部22b,23bはそれぞれ複数に分岐した状態で突出する舌片状・逆L字状に形成されている。そして、ペアをなす第1および第2の電極板延出部22b,23bからそれぞれペアをなす第1および第2の電極板端子部22c,23cがそれぞれ複数に分岐した状態で突出する舌片状・逆L字状に形成されている。
【0073】
第1の電極板延出部22bと第2の電極板延出部23bとはほぼ同一高さ位置で水平方向に間隔を隔てて配置されている。複数の第1の舌片状の電極板延出部22bのそれぞれは、複数の第2の舌片状の電極板延出部23bの隣接するものどうしの中間位置に配置されている。同じことだが、複数の第2の舌片状の電極板延出部23bのそれぞれは、複数の第1の舌片状の電極板延出部22bの隣接するものどうしの中間位置に配置されている。
【0074】
第1の電極板端子部22cと第2の電極板端子部23cとはほぼ同一高さ位置で水平方向に間隔を隔てて配置されている。複数の第1の舌片状の電極板端子部22cのそれぞれは、複数の第2の舌片状の電極板端子部23cの隣接するものどうしの中間位置に配置されている。同じことだが、複数の第2の舌片状の電極板端子部23cのそれぞれは、複数の第1の舌片状の電極板端子部22cの隣接するものどうしの中間位置に配置されている。
【0075】
金属化フィルム構成のメインコンデンサ主要部10Aと平行平板式のサブコンデンサ主要部20Aとは近接して配置されている。サブコンデンサ主要部20Aは、メインコンデンサ主要部10Aのほぼ直方体形状における外周側面の1つの平面側面部に対して平行姿勢に沿った近接姿勢で配置されている。
【0076】
ほぼ直方体形状のメインコンデンサ主要部10Aの外周側面の1つの平面側面部に対して平行姿勢に沿った近接姿勢にあるときのサブコンデンサ主要部20Aの姿勢は鉛直姿勢となっている。この鉛直の方向に対して直角をなす方向すなわち水平方向に沿って、4組の延出部が対向する状態に重なっている(図2(c)参照)。その4組とは、第2の板状導体延出部13b、第1の板状導体延出部12b、第1の電極板延出部22b、第2の電極板延出部23bとであるが、その重なりの順序については、次のようにする。
【0077】
第1の板状導体延出部12bと第1の電極板延出部22bとが板面対向で隣接する状態で内側に位置しかつ第2の板状導体延出部13bと第2の電極板延出部23bとが両外側にあって前記内側の第1の板状導体延出部12bと第2の電極板延出部23bを挟み込む態様である。これは、板状導体側と電極板側とで同極の延出部どうしが同じ位置にくるようにし、同極の延出部どうしを電気的かつ機械的に接続できるようにするためである。
【0078】
第1および第2の板状導体延出部12b,13bのペアは互いに対向しながら平行する状態にある。第1および第2の電極板延出部22b,23bのペアは互いに対向しながら平行する状態にあり、これら2組のペアどうしは、互いに近接かつ非接触の面対向・絶縁状態で平行する姿勢に配置されている。
【0079】
第1の舌片状の板状導体端子部12cとこれと同極(陰極)をなす第1の舌片状の電極板端子部22cとは重ね合わされた状態に配置され、第2の舌片状の板状導体端子部13cとこれと同極(陽極)をなす第2の舌片状の電極板端子部23cとは重ね合わされた状態に配置されている。
【0080】
上記で4組の延出部が対向する状態に重なっていると説明したが、4組のうち内側で対向して重なり合う陰極どうし(あるいは陽極どうし)の第1の舌片状の板状導体端子部12cと第1の舌片状の電極板端子部22cが下位にあり、残りの外側で対向して重なり合う陽極どうし(あるいは陰極どうし)の第2の舌片状の板状導体端子部13cと第2の舌片状の電極板端子部23cが上位にくる。
【0081】
メインコンデンサ10における複数の舌片状の第1および第2の板状導体端子部12c,13cとサブコンデンサ20における複数の舌片状の第1および第2の電極板端子部22c,23cとは、それぞれ同極どうしが互いに接触した状態で配置されている。各舌片状の端子部にはボルトなどの締結具を挿入するための締結孔が貫通形成されている。互いに接触する端子部の締結孔は同心状に重なり合っている。この重なり合う端子部どうしは、未締結の段階においてあらかじめはんだ付け等により電気的かつ機械的に接続していてもよいし、あるいは締結によって強固に圧接されて電気的かつ機械的に接続されるのでもよい。
【0082】
以上のように構成されたコンデンサ主要部は図1に示すように、樹脂製の外装ケース30に収容され、外装ケース30内に注入充填したモールド樹脂40によって、コンデンサ素子11の集合体であるコンデンサユニットUの全体と第1および第2の板状導体本体部12a,13aの全体と両板状導体延出部12b,13bにおける下位の垂直部分を保護被覆している。これらそれぞれ一対の本体部で挟まれた部分は静電容量形成部であるのでモールド樹脂40内に埋め込んで被覆保護しておくことが必要である。
【0083】
第1および第2の板状導体延出部12b,13bの下位の垂直部分は外装ケース30の側板30aの内面に沿って配置されているとともに、上位の水平部分は側板30aの上端面に沿って配置されている(図8)。両板状導体延出部12b,13bの上位の水平部分は両板状導体端子部12c,13cとともに外装ケース30の外側に位置している。
【0084】
以上のようにして、静電容量が相対的に大きいメインコンデンサ10と静電容量が相対的に小さいサブコンデンサ20との組み合わせからなる複合コンデンサが構成されている。サブコンデンサ20は、第1および第2の電極板端子部22c,23cから第1および第2の板状導体端子部12c,13cを介してメインコンデンサ10と並列に接続されている。
【0085】
サブコンデンサ20は第1および第2の電極板本体部22a,23aの対向間隙にシート状誘電体21を挟持する平行平板式のコンデンサであるので、求められている高周波ノイズ対応に最適な微小容量を得ることができる。構造的にも配置スペース的にも非常に簡素に構成することができる。すなわち、高周波ノイズの低減効果が大きい上にスペース面およびコスト面の負担も軽減することができる。
【0086】
本発明による複合コンデンサは形状的にもシンプルにまとまっており、コンパクトに構成することができる。
【0087】
本発明によれば、サブコンデンサ20をメインコンデンサ10と同種タイプの金属化フィルムコンデンサで構成する従来例に比べて静電容量がより小さい平行平板式のコンデンサでサブコンデンサ20を構成することにより、近年のスイッチング動作の高周波化に対応できる静電容量の微小容量化を実現することができる。そしてそのことにより高周波ノイズの低減に効果的実用的に対応できる。
【0088】
しかも、平行平板方式のサブコンデンサの電極板は板状導体と同等の材質のものを用いてもよいことから、セラミックコンデンサとは異なり高耐電圧化の要求にも充分に応えることができる。
【0089】
上記において、シート状誘電体21の仕様としては、厚さ0.1~5mm、面積1~20cm2として、構成素材を例示すると、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)などを挙げることができる。この場合、得られた誘電率εは2~4であり、静電容量は0.1~500[pF]であり、除去できる高周波ノイズの周波数は50MHz以上であった。
【0090】
なお、上記実施形態ではケースモールド型について例示しているが、本発明はケースレス型のものも含むものである。
【0091】
ノイズ除去用のサブコンデンサ20の配置については、外装ケース30の内部のみに限定してもよいし、外部のみに限定してもよいし、あるいは内外にわたってもかまわない。
【0092】
コンデンサユニットUについては縦横に並設した複数のコンデンサ素子11の集合で説明したが、横1列の複数個の場合や縦1列の複数個の場合、さらには単数の場合でも含み得るものとする。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、複合コンデンサのサブコンデンサに関して、近年のスイッチング動作の高周波化に対応して高周波ノイズ低減に有利な微小容量を実現するとともに、生産性を向上し、形態面においてコンパクト構造を実現する技術として有用である。
【符号の説明】
【0094】
10 メインコンデンサ
10A メインコンデンサ主要部
11 コンデンサ素子
11a 第1の金属電極
11b 第2の金属電極
12 第1の板状導体
13 第2の板状導体
12a 第1の板状導体本体部
12b 第1の板状導体延出部
12c 第1の板状導体端子部
13a 第2の板状導体本体部
13b 第2の板状導体延出部
13c 第2の板状導体端子部
14 シート状誘電体
20 サブコンデンサ(ノイズ除去用)
20A サブコンデンサ主要部
21 シート状誘電体
22a 第1の電極板本体部
22b 第1の電極板延出部
22c 第1の電極板端子部
23a 第2の電極板本体部
23b 第2の電極板延出部
23c 第2の電極板端子部
30 外装ケース
40 モールド樹脂
U コンデンサユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12