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  • 特許-テンショナ解除具 図1
  • 特許-テンショナ解除具 図2
  • 特許-テンショナ解除具 図3
  • 特許-テンショナ解除具 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】テンショナ解除具
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/08 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
F16H7/08 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023106819
(22)【出願日】2023-06-29
(62)【分割の表示】P 2020113142の分割
【原出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2023121820
(43)【公開日】2023-08-31
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏介
(72)【発明者】
【氏名】木本 清治
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-223792(JP,A)
【文献】特開2012-047223(JP,A)
【文献】特開2013-252569(JP,A)
【文献】実開平05-012549(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンテンショナのハウジングに形成された操作孔に螺合可能な支持筒と、前記支持筒に回動可能に内嵌される回動軸と、前記回動軸を回し操作するための回し部とを有し、
前記回動軸の先端部に、前記ハウジングに回動可能に収容されて前記操作孔に被操作部が臨んでいる操作体の前記被操作部に相対回動不能に係合可能な操作部が形成され、
前記支持筒を前記操作孔に螺合させた装着状態での前記回し部の回し操作により、前記操作部が前記被操作部に係合されている前記回動軸を介して前記操作体の回し操作が可能に構成されているテンショナ解除具。
【請求項2】
前記支持筒に、前記操作孔に螺合されている前記支持筒を前記ハウジングに係止するためのロックナットが螺装されている請求項1に記載のテンショナ解除具。
【請求項3】
前記支持筒に、前記回動軸と前記支持筒との相対回動を不能とする回動阻止機構が設けられている請求項1または2に記載のテンショナ解除具。
【請求項4】
前記回動軸の操作部は、前記被操作部として前記操作体の端面に形成された直線溝に嵌り込み可能な突条を有している請求項1~3のいずれか一項に記載のテンショナ解除具。
【請求項5】
前記回し部は、前記回動軸における前記操作部とは反対側の端部に、手指による回し操作を可能とするノブを取付けることにより構成されている請求項1~4のいずれか一項に記載のテンショナ解除具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ディーゼルエンジンや自動車用エンジンなどの各種エンジンに適用可能なチェーンテンショナによるタイミングチェーンの緊張を解除するテンショナ解除具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンにおいては、クランク軸のクランクギヤとカム軸のカムギヤとに亘ってチェーンを巻回することでカム軸を駆動させる構造、いわゆるタイミングチェーンを設けた構造のものがある。タイミングチェーンを設けるエンジンでは、タイミングチェーンの緩みを生じさせないようにするためのチェーンテンショナが装備されている。
【0003】
例えば、特許文献1(図1などを参照)において示されるように、クランクギヤ(9)と一対のカムギヤ(5),(7)とに亘ってタイミングチェーン(13)が巻回され、その戻り側チェーン部分(12a)の外側に摺接する可動式のレバー部材(17)が配置され、そのレバー部材(17)に作用するチェーンテンショナ(19)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-38077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイミングチェーンを交換すべく現存のタイミングチェーンを緩めて取り外すには、まずタイミングチェーンの緊張を解除する作業が行われる。この場合、従来のエンジンでは、タイミングチェーンの緊張を解除するにはチェーンテンショナを取り外すことになるので、ガスケットを消費するとともに、チェーンテンショナの取り外し及び再取付の作業が行い難い問題があった。
【0006】
即ち、エンジンがボンネットやシート下などに搭載されている車積状態においては、エンジンの周囲空間が狭いので、シリンダブロックなどのエンジンケースに装着されているチェーンテンショナの着脱作業性が悪く、やり難い面がある。加えて、チェーンテンショナのハウジングとエンジンケースとの間にはガスケットが挟まれているので、チェーンテンショナの取り外しには、そのほとんどの場合にはガスケットの交換も余儀なくされ、コストが余計に掛る問題もあった。
【0007】
本発明の目的は、チェーンテンショナによるタイミングチェーンの緊張を解除するテンショナ解除具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主要な構成は、次の通りである。
【0009】
チェーンテンショナのハウジングに形成された操作孔に螺合可能な支持筒と、前記支持筒に回動可能に内嵌される回動軸と、前記回動軸を回し操作するための回し部とを有し、
前記回動軸の先端部に、前記ハウジングに回動可能に収容されて前記操作孔に被操作部が臨んでいる操作体の前記被操作部に相対回動不能に係合可能な操作部が形成され、
前記支持筒を前記操作孔に螺合させた装着状態での前記回し部の回し操作により、前記操作部が前記被操作部に係合されている前記回動軸を介して前記操作体の回し操作が可能に構成されているテンショナ解除具
【0010】
その他の本発明については、特許請求の範囲における請求項2~5を参照のこと。
【発明の効果】
【0011】
【0012】
【0013】
本発明によれば、チェーンテンショナをエンジンから外すことなくタイミングチェーンの緊張具合の調節や緊張解除といったメンテナンスを、簡単で便利に行うことができる。そして、プランジャを退入させての緊張解除が簡単・便利に行えるので、タイミングチェーン交換などのメンテナンス作業に取り掛かる準備作業(チェーンテンショナの機能解除作業)の効率化が図れる効果がある。
【0014】
その結果、チェーンテンショナをエンジンから外すことなくその緊張を解く作業が、簡単で便利に行えて使い勝手に優れるテンショナ解除具によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】テンショナ解除具の構造を示す断面図
図2】テンショナの構造を示す断面図
図3】テンショナ解除具をテンショナに装着した操作可能状態を示す断面図
図4】テンショナが装備されたエンジンの断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明によるエンジンのチェーンテンショナテンショナ解除具の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図4に示されるように、自動車、農機、建機、などの走行車両の駆動原として好適な傾斜型のエンジンEが示されており、11はシリンダブロック、12はシリンダヘッド、13はヘッドカバー、14はオイルパンであり、シリンダブロック11は、クランクケース部11Aとシリンダ部11Bとを有している。
【0018】
シリンダブロック11のクランク軸1に取付けられたクランクギヤ1Gと、一対のカムシャフト2,3のそれぞれに取付けられたカムギヤ2G,3Gとに亘ってタイミングチェーン(チェーンの一例)4が巻回されている。タイミングチェーン4における被緊張部4aには、その外側(チェーン巻回ループの外側)に接触するチェーンスライダ5が、下部支点Q回りに揺動可能に支持されている。そして、チェーンスライダ5をタイミングチェーン4の緊張方向(チェーン巻回ループの内側方向)に押圧付勢するチェーンテンショナTがボルト止めなどにより設けられている。
【0019】
本発明の実施形態であるテンショナ解除具を使用するチェーンテンショナTについて説明する。図2図3に示されるように、チェーンテンショナ(テンショナASSY)Tは、ハウジング6内に、プランジャ7と操作体8と緩衝スプリング9とねじりコイルばね(コイルバネ)10とを有している。チェーンテンショナTは、例えば、図4に示されるように、シリンダ部11Bを貫通する状態でエンジンEに設けられている。
【0020】
詳しくは、タイミングチェーン4を張る方向に押圧可能なプランジャ7と、プランジャ7を相対回動不能かつ出退移動可能に支持するハウジング6と、プランジャ7の出退移動方向に沿う軸心Pを有してプランジャ7に螺合された状態でハウジング6に回動可能に収容される操作体8と、操作体8をハウジング6の外部から回動操作するためにハウジング6に形成される操作孔6aと、を有してチェーンテンショナTが構成されている。
【0021】
ハウジング6は、図2図3に示されるように、そのフランジ部6Fを用いてシリンダブロック11(シリンダ部11B)の側壁部11bにガスケット15を介してボルト止めされており、筒状の内部空間6Sと、内部空間6Sより小径で続いて基端面6bに開口する操作孔6aとを備えている。操作孔6aの基端部には内ねじ6nが形成されている。ハウジング6は、例えば、図2に示されるように、ハウジング本体6Aとその先端側に螺合されるハウジング蓋6Bとからなる構成でもよい。
【0022】
プランジャ7は、図2図3に示されるように、軸心P方向に伸びるナット部7nを中心部に有する外嵌部7Aと、スライド軸部7Bと、押圧部7Cとからなり、スライド軸部7Bが、ハウジング6(ハウジング蓋6B)の挿通孔6cに相対回動不能で、かつ、軸心P方向に出退移動(往復スライド移動)可能に内嵌されている。スライド軸部7Bと挿通孔6cとは、断面形状が四角やD形など、軸心Pの回りに相対回動不能となる形状で嵌合されているとよい。また、押圧部7Cとスライド軸部7Bとが、着脱可能に螺合されていると好都合である。
【0023】
操作体8は、図2図3に示されるように、操作孔6aに相対回動(相対回転)可能に内嵌される被操作部8Aと、プランジャ7のナット部7nに螺合するねじ軸部8Bと、ハウジング6の基端側内側壁6dに当接されるフランジ部8fを有する本体部8Cとを有する回転体形状の部品として構成されている。被操作部8Aの基端部には、この円柱状の被操作部8Aを径方向に貫通して基端側に開口する直線溝(被操作部の一例)16が形成されている。また、フランジ部8fには、ねじりコイルばね10の基端フック部10aに係合する切欠き8kが形成されている。
【0024】
図2図3に示されるように、ねじりコイルばね10は、ハウジング6に対して操作体8を軸心P廻りの所定方向に回動(捩り)付勢する巻きバネである。ねじりコイルばね10の先端フック部10bは、ハウジング6の端壁(ハウジング蓋6B)に形成された挿入穴6eに差し込まれ、基端フック部10aは、前述の通り操作体8の切欠き8kに差し込まれている。
【0025】
つまり、ねじりコイルばね10は、プランジャ7がハウジング6から突出しようとする方向に操作体8を回動付勢する弾性機構である。また、コイルばねでなる緩衝スプリング9は、ねじ軸部8Bを囲繞する状態でプランジャ7の外嵌部7Aと操作体8の本体部8Cとの間に設けられている。緩衝スプリング9により、プランジャ7と操作体8とのガタつきの抑制効果や共振防止効果などが期待できる。即ち、操作体8とプランジャ7との摺動面(ねじ軸部8Bとナット部7nとの螺合部)、及び操作体8とハウジング6との摺動面(フランジ部8fと基端側内側壁6dとの接合面)にフリクションを与え、テンショナ挙動(チェーン挙動)を減衰させる機能が発揮される。
【0026】
図2図3に示されるように、このチェーンテンショナTにおいては、外嵌部7Aとねじ軸部8Bとが螺合されているので、操作体8を右に回すと、操作体8とプランジャ7との螺合長さが増え、プランジャ7がハウジング6に対して引っ込み移動(矢印X方向)する。操作体8を左に回すと、操作体8とプランジャ7との螺合長さが減り、プランジャ7がハウジング6に対して突出移動(矢印Y方向)する。
【0027】
操作体8は、操作孔6aから直線溝16に差し込まれたマイナスドライバ(図示省略)などにより回し操作可能である。なお、図4に示されるように、チェーンテンショナTのエンジンEへの組付け状態では、ハウジング6の操作孔6aは封止ボルト17により閉塞されている。封止ボルト17は、操作孔6aを閉塞する蓋部材として機能する〔エンジンEへの組付け時にはストッパ(図示省略)が操作孔6aに挿入されており、組付け後にワッシャを介して封止ボルト17が螺着される〕。
【0028】
ねじりコイルばね10は、操作体8を左回転させる方向に弾性付勢するようにあらかじめ捩じられた状態で内部空間6Sに収容されており、そのねじりコイルばね10が捩じられている状態では操作体8を左に回そうとする力、即ち、プランジャ7を突出方向に移動させようとする力が作用している。換言すれば、プランジャ7にその引っ込み方向(矢印X方向)への力(使用状態ではタイミングチェーン4で押される力)が無い場合、ねじりコイルばね10によりプランジャ7が勝手に突出移動される。
【0029】
図4に示されるチェーンテンショナTの使用時(組付け時)においては、プランジャ7がチェーンスライダ5を介してタイミングチェーン4を(被緊張部4aを)そのループ内側に押圧して、タイミングチェーン4を弛みがないように緊張させることができる。操作体8はねじりコイルばね10によって左回り方向に回動付勢されて、常にプランジャ7をより押出そうとする力が作用しているので、チェーンテンショナTは、弾性緊張力を常時タイミングチェーン4に与えるオートテンショナの機能を有している。
【0030】
なお、封止ボルト17(図4参照)を外して、マイナスドライバなどの先端に突条19a(図1参照)を有する回し工具を、ハウジング6の操作孔6aに挿入して直線溝16に係合させ、回し工具を左に回せばプランジャ7を突出移動させることが可能であり、右に回せばプランジャ7を退入移動させることが可能である。従って、マイナスドライバなどの回し工具を用いて、チェーンテンショナTを緊張解除状態にさせることは可能であり、その緊張解除状態でタイミングチェーン4の交換作業を行うことも可能である。
【0031】
次に、テンショナ解除具Aについて説明する。図1図3に示されるように、テンショナ解除具Aは、支持筒18と、回動軸19と、回し部20とを有しており、図2,3に示されるチェーンテンショナTによるタイミングチェーン4の緊張を解くための専用工具に構成されている。支持筒18には、回動軸19の軸心Z方向への相対移動を阻止する規制板21がボルト止めされるとともに、テンショナ解除具Aをハウジング6に固定するためのロックナット22が螺装されている。
【0032】
テンショナ解除具Aの構造について詳しく説明する。図1図3に示されるように、チェーンテンショナTのハウジング6に形成された操作孔6aに螺合可能な外ねじ部18aを有する支持筒18と、支持筒18に回動可能に内嵌される回動軸19と、回動軸19を回し操作するために回動軸19の基端側に取付けられたノブ(回し部の一例)20とを有している。ノブ20は、手指により回し操作されるノブ部20Aと、回動軸19の基端ナット部19cに螺合されるボルト部20Bとを備えている。
【0033】
図1図3に示されるように、回動軸19の支持筒18からの突出端部に、ハウジング6に回動可能に収容されて操作孔6aに被操作部8Aが臨んでいる操作体8の被操作部8Aに相対回動不能に係合可能な操作部19Aが形成され、支持筒18を操作孔6aに螺合させた装着状態(図3を参照)での回し部20の回し操作により、操作部19Aが被操作部8Aに係合されている回動軸19を介して操作体8の回し操作が可能に構成されている。なお、図1図3においては、規制板21を支持筒18に取付けるボルトは省略されている。
【0034】
支持筒18は、図1図3に示されるように、回動軸19を通す内孔18b及び前述の外ねじ部18aが形成される筒軸部18Bと、大径の支持本体部18Aとを備えて軸心Zに対する回転体となる形状の部品に構成されている。支持本体部18Aには、内孔18bに続く大径の回動孔18cが形成されるとともに、軸心Zに直交する方向のネジ孔18dが形成されている。規制板21をボルト止めするための雌ねじ部18eが、軸心Zの向きに沿う方向に延びる状態で支持本体部18Aに形成されている。
【0035】
図示は省略するが、ネジ孔18dには、軸本体部19C(後述)に作用して回動軸19を支持筒18に対して回り止めさせるための係止ボルト(蝶ボルトなど)が螺装されている。つまり、支持筒18におけるネジ孔18dと係止ボルト(不図示)とにより、回動軸19と支持筒18との相対回動を不能とする回動阻止機構sが構成されている。なお、筒軸部18Bには、外ねじ部18aに螺合される状態でロックナット22が設けられている。
【0036】
回動軸19は、図1図3に示されるように、内孔18bに相対回動可能に内嵌されるシャフト部19Bと、回動孔18cに相対回動可能に内嵌される軸本体部19Cとを有してなる部品である。シャフト部19Bの先端側(チェーンテンショナT側)には、マイナスドライバの回し部のように先細り加工されて扁平形状とされた操作部19Aが形成されている。
【0037】
操作部19Aの端(先端)は、操作体8の基端面に形成された直線溝16に嵌り込み可能な突条19aに形成されている。軸本体部19Cには、規制板21が嵌り込む環状溝23が形成されるとともに、基端側(ノブ20側)には基端ナット部19cを中心に備えた大径軸端部19dが形成されている。
【0038】
テンショナ解除具Aは、ASSY時(組付け時)は、図1図3に示されるように、回動軸19が規制板21により軸心Zに位置決めされた状態で支持筒18に回動可能に内嵌され、基端側のノブ20により回動軸19及び操作部19Aの回し操作が自在に行える状態になっている。
このテンショナ解除具Aは、チェーンテンショナTによるタイミングチェーン4の緊張作用を解除するためのメンテナンス工具であり、次のその使い方を説明する。
【0039】
まず、チェーンテンショナTに装着されている封止ボルト17(図4を参照)をハウジング6から外す。そして、図3に示されるように、支持筒18をハウジング6の操作孔6aに捻じ込み、ゆっくり締め込みながらノブ20をゆっくり回し、操作部19Aを操作体8の直線溝16に挿入してフィットさせ、それから少し支持筒18を回してからロックナット22を回し、支持筒18をハウジング6に固定状態で装着する。
【0040】
そして、ノブ20を手指で操作して回動軸19を回し、ねじりコイルばね10の弾性付勢力に抗して操作体8を右方向に回動させ、プランジャ7を引っ込み移動(矢印X方向に移動)させる。そして、プランジャ7がさらに引っ込み移動されてタイミングチェーン4の緊張が解除された状態になると、ネジ孔18dに螺合されている蝶ボルト(図示省略)を締め込んで回動軸19をロックさせる、という作業手順である。
【0041】
テンショナ解除具Aにより、チェーンテンショナTの緊張が解除されてタイミングチェーン4は弛んだ状態になり、3つのギヤ1G,2G,3Gからタイミングチェーン4を外しての交換作業などのメンテナンス作業が行える。即ち、専用のテンショナ解除具Aを用いることにより、プランジャ7を引っ込めて退入させ、かつ、その退入状態を維持させることが簡単・便利に行えるので、タイミングチェーン4などのメンテナンス作業に取り掛かる準備作業(チェーンテンショナTの機能解除作業)の効率化が図れる利点がある。
【0042】
チェーンテンショナTの機能を元通りにするには、先ほど説明した一連の作業手順を逆に行えば良い。即ち、ネジ孔18dの蝶ボルト(図示省略)を緩めてから、ノブ20を左に回してプランジャ7を元の位置まで突出させ、それからロックナット22を緩めて支持筒18を緩み方向に回してハウジング6から取り外し、最後に封止ボルト17を操作孔6aに螺着するのである。
【0043】
以上説明したように、本発明の実施形態であるテンショナ解除具を使用するチェーンテンショナTによれば、工具などを用いて操作孔6aから操作体8を回し、人為的にプランジャ7を突出移動させたり退入移動させたりすることができる。従って、プランジャ7を強制的に退入移動させての緊張解除状態としてタイミングチェーン4を緩め、チェーンテンショナTを外すことなくタイミングチェーンの交換など、種々のメンテナンス作業が行える便利さがある。
【0044】
そして、ハウジングに内蔵されたねじりコイルばね10によってプランジャ7が常にハウジング6から突出移動する方向に弾性付勢されているので、定期的に緊張力を人為調整する必要の無いオートテンショナの機能が発揮される利点もある。また、タイミングチェーン4などのメンテナンス作業時にチェーンテンショナTを取り外さなくても良いから、新たなガスケットは不要であり、作業性向上も図られる。
【0045】
そして、テンショナ解除具Aを用いれば、チェーンテンショナTを取り外すことなくプランジャ7を退入移動させての緊張解除状態を、簡単で便利、かつ、迅速に行える効果が得られる。しかも、ノブ20を回すだけの片手でもできる簡単な操作でプランジャ7の突出及び退入移動が行え、かつ、蝶ボルトなどによって任意の位置でプランジャ7の係止固定が行える便利さもある。
【0046】
従って、本発明の実施形態であるテンショナ解除具Aを用いれば、チェーンテンショナTをエンジンから外すことなくタイミングチェーン4の緊張具合の調節や緊張解除といったメンテナンス作業が行えることは勿論、前述のとおり、メンテナンス作業に取り掛かる準備作業を簡単で便利、そして迅速に行える効果が得られる。
【0047】
本発明の実施形態であるテンショナ解除具Aでは、操作体8の被操作部16は、プラスドライバーで回せる十字形溝としても良く、またその他の構造でもよい。ロックナット22に代えて蝶ナットを支持筒18に螺装しても良く、そうすればスパナなどの工具が一切不要になり、より便利にテンショナ解除具Aを取り扱うことができる。
【符号の説明】
【0048】
4 タイミングチェーン
6 ハウジング
6a 操作孔
16 被操作部(直線溝)
18 支持筒
19 回動軸
19A 操作部
19a 突条
20 回し部
22 ロックナット
A テンショナ解除具
T チェーンテンショナ
図1
図2
図3
図4