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特許7463285半導体ユニット、バッテリユニット、及び車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】半導体ユニット、バッテリユニット、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/02 20060101AFI20240401BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240401BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240401BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240401BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240401BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240401BHJP
【FI】
H02H9/02 E
H02J1/00 309R
H02J7/00 S
H02M7/48 M
H02M7/48 L
B60L9/18 J
B60L50/60
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020553998
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2019042652
(87)【国際公開番号】W WO2020090924
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2018207434
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163979
【弁理士】
【氏名又は名称】濱名 哲也
(72)【発明者】
【氏名】三浦 峰生
(72)【発明者】
【氏名】林口 匡司
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-222845(JP,A)
【文献】特開2011-254387(JP,A)
【文献】特開2007-143221(JP,A)
【文献】特開2005-065459(JP,A)
【文献】特開平05-111240(JP,A)
【文献】特開2003-324843(JP,A)
【文献】特開2005-137060(JP,A)
【文献】特開2017-147887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
H02H 9/02
H02H 7/16
H02M 7/48
H02M 3/00
H02M 3/155
H02M 7/06
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
G05F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリに接続される第1端子と、インバータ回路に接続される第2端子と、制御端子とを備えるトランジスタと、
前記トランジスタの前記制御端子に接続され、前記トランジスタのオンオフ動作を制御する制御電圧を制御する制御部と、
を備え、
前記制御端子には、電流制限抵抗が接続され、
前記電流制限抵抗の抵抗値は、100Ω以上であり、
前記制御部は、前記トランジスタのオン動作により前記第1端子から前記第2端子への電力供給開始時において、前記第1端子と前記第2端子との間の電圧が時間の経過とともに段階的に低下するように前記トランジスタを間欠動作させるように前記制御電圧を制御し、かつ、前記制御電圧を、前記トランジスタがフルオンするときの前記制御電圧よりも低くする
半導体ユニット。
【請求項2】
前記トランジスタが間欠動作するときの前記制御電圧は、前記トランジスタがフルオンするときの前記制御電圧の約半分である
請求項1に記載の半導体ユニット。
【請求項3】
前記トランジスタが間欠動作するときの周波数は、1000Hz以下である
請求項1又は2に記載の半導体ユニット。
【請求項4】
前記トランジスタが間欠動作するときの周波数は、200Hzである
請求項3に記載の半導体ユニット。
【請求項5】
前記トランジスタが間欠動作するときのデューティ比は、50%未満である
請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体ユニット。
【請求項6】
前記トランジスタが間欠動作するときのデューティ比は、5%である
請求項5に記載の半導体ユニット。
【請求項7】
前記制御部は、時間経過とともに段階的に変化する前記制御電圧を前記制御端子に印加する
請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体ユニット。
【請求項8】
前記トランジスタは、シリコンにより形成されたIGBTまたはMOSFETである
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ユニット。
【請求項9】
前記トランジスタは、炭化シリコンにより形成されたMOSFETである
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ユニット。
【請求項10】
前記トランジスタと逆並列に接続されたダイオードをさらに備える
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ユニット。
【請求項11】
前記トランジスタは、感温ダイオードを有し、
前記制御部は、前記感温ダイオードの出力に応じて前記制御電圧を制御する
請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体ユニット。
【請求項12】
前記感温ダイオードは、前記トランジスタの表面の中央部に形成されている
請求項11に記載の半導体ユニット。
【請求項13】
前記トランジスタと逆並列に接続されたRB-IGBTをさらに備える
請求項に記載の半導体ユニット。
【請求項14】
前記トランジスタを複数備え、
前記複数のトランジスタは、互いに並列に接続されている
請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体ユニット。
【請求項15】
前記制御部は、前記複数のトランジスタを個別に制御する
請求項14に記載の半導体ユニット。
【請求項16】
前記制御部は、前記複数のトランジスタの制御電圧の印加タイミングを互いに異ならせる
請求項15に記載の半導体ユニット。
【請求項17】
前記第1端子に接続されるバッテリと、
請求項1~16のいずれか一項に記載の半導体ユニットと、
を備えるバッテリユニット。
【請求項18】
請求項17に記載のバッテリユニットと、
前記第2端子に接続されるインバータ回路と、
前記第2端子と前記インバータ回路との間において、前記インバータ回路と並列に接続されるコンデンサと、
を有し、
前記制御部は、前記コンデンサの端子間電圧が閾値以上の場合に前記トランジスタが間欠動作するときの周波数を、前記コンデンサの端子間電圧が前記閾値未満の場合に前記トランジスタが間欠動作するときの周波数よりも高くする
駆動ユニット。
【請求項19】
前記制御部は、前記コンデンサの端子間電圧が高くなるにつれて前記トランジスタが間欠動作するときの周波数を高くする
請求項18に記載の駆動ユニット。
【請求項20】
請求項17に記載のバッテリユニットと、
前記第2端子に接続されるインバータ回路と、
前記第2端子と前記インバータ回路との間において、前記インバータ回路と並列に接続されるコンデンサと、
を有し、
前記制御部は、前記コンデンサの端子間電圧が閾値以上の場合の前記トランジスタの前記制御電圧を、前記コンデンサの端子間電圧が前記閾値未満の場合の前記トランジスタの前記制御電圧よりも高くする
駆動ユニット。
【請求項21】
前記制御部は、前記コンデンサの端子間電圧が高くなるにつれて前記トランジスタの前記制御電圧を高くする
請求項20に記載の駆動ユニット。
【請求項22】
請求項17に記載のバッテリユニットと、
前記第2端子に接続されるインバータ回路と、
前記第2端子と前記インバータ回路との間において、前記インバータ回路と並列に接続されるコンデンサと、
を有し、
前記制御部は、前記コンデンサが満充電になった場合における前記制御電圧を、前記トランジスタがフルオンするときの前記制御電圧と等しくする
駆動ユニット。
【請求項23】
請求項1822のいずれか一項に記載の駆動ユニットの前記インバータ回路により駆動されるモータを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ユニット、バッテリユニット、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両には、図53に示すように、バッテリ210の正極と、電動車両を駆動するモータ220を制御するインバータ回路230との間にリレーユニット200が設けられている。リレーユニット200は、機械接点式リレーであるメインリレー201と、メインリレー201と並列に接続されるプリチャージ用のリレー回路202とを備える(例えば、特許文献1参照)。リレーユニット200とインバータ回路230との間には、コンデンサ240が設けられている。プリチャージ用のリレー回路202は、バッテリからインバータ回路への突入電流が流れることを回避するための回路であり、機械接点式リレー203と電流制限抵抗204とが直列に接続された回路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-161009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリチャージ用のリレー回路202によりバッテリ210からコンデンサ240への突入電流の電流制限を行う場合の消費電力の大半は、電流制限抵抗204で消費される。このため、突入電流を抑制するためには抵抗値の大きい電流制限抵抗204を用いる必要があり、この抵抗での消費電力が大きくなるため、電流制限抵抗204のサイズを大きくする必要があった。その結果、リレーユニットが大型化及び重量化していた。
【0005】
本発明の目的は、リレーユニットの小型化及び軽量化を図ることができる半導体ユニット、バッテリユニット、及び車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する半導体ユニットはバッテリ側の第1端子と、インバータ回路側の第2端子と、制御端子とを備えるトランジスタと、前記トランジスタの前記制御端子に接続され、前記トランジスタのオンオフ動作を制御する制御電圧を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1端子から前記第2端子への電力供給開始時において、前記トランジスタを間欠動作させるように前記制御電圧を制御し、かつ、前記制御電圧を、前記トランジスタがフルオンするときの前記制御電圧よりも低くする。
【0007】
この構成によれば、トランジスタがプリチャージ用のリレー回路の機能を果たすことができるため、すなわちバッテリからの突入電流を抑制するための電流制限抵抗をリレーユニットから省略することができるため、リレーユニットの小型化及び軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
上記半導体ユニット、バッテリユニット、及び車両によれば、リレーユニットの小型化及び軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の半導体装置を備える車両の一部の電気的構成を模式的に示すブロック図。
図2図1のリレーユニット及びその周辺の電気的構成を模式的に示す回路図。
図3A】車両力行時における半導体装置のIGBTに流れるコレクタ電流とコレクタ-エミッタ間電圧との関係を示すグラフ。
図3B】車両回生時における半導体装置のダイオードに流れる電流と順方向電圧との関係を示すグラフ。
図4A】第1実施形態のIGBTの模式的な断面図。
図4B】比較例のIGBTの模式的な断面図。
図5】ダイオードの模式的な断面図。
図6】半導体装置を備える半導体モジュールの斜視図。
図7】半導体装置の配置構成を示す半導体モジュールの図解的な平面図。
図8図7の8-8線で切った半導体モジュールの断面図。
図9】半導体モジュールの底面図。
図10】半導体ユニットの側面図。
図11】第1比較例のプリチャージ制御におけるコレクタ-エミッタ間電圧及びコンデンサの端子間電圧の推移を示すグラフ。
図12】第1比較例のプリチャージ制御における半導体モジュールに流れる電流の推移を示すグラフ。
図13】第2比較例のプリチャージ制御におけるコレクタ-エミッタ間電圧及びコンデンサの端子間電圧の推移を示すグラフ。
図14】第2比較例のプリチャージ制御における半導体モジュールに流れる電流の推移を示すグラフ。
図15】第1実施形態のプリチャージ制御におけるコレクタ-エミッタ間電圧及びコンデンサの端子間電圧の推移を示すグラフ。
図16】第1実施形態のプリチャージ制御における半導体モジュールに流れる電流の推移を示すグラフ。
図17】比較例の半導体装置の回路図。
図18】第2実施形態の半導体ユニットの回路図。
図19】半導体モジュールの斜視図。
図20】半導体装置の配置構成を示す半導体モジュールの図解的な平面図。
図21】IGBTの電極パッドの配置構成を示すIGBTの平面図。
図22】ダイオードの電極パッドの配置構成を示すダイオードの平面図。
図23】第3実施形態の半導体装置であるRC-IGBTの斜視断面図。
図24】RC-IGBTの底面図。
図25】半導体装置の配置構成を示す半導体モジュールの図解的な平面図。
図26A】RC-IGBTのIGBT及びダイオードに流れる電流とRC-IGBTの温度の推移を示したグラフ。
図26B】IGBTとダイオードとが個別に形成された比較例において、上段はIGBTに流れる電流とIGBTの温度の推移を示したグラフ、下段はダイオードに流れる電流とダイオードの温度の推移を示したグラフ。
図27】第4実施形態の半導体ユニットの回路図。
図28】半導体装置の配置構成を示す半導体モジュールの図解的な平面図。
図29】第5実施形態の半導体ユニットの回路図。
図30】半導体装置の配置構成を示す半導体モジュールの図解的な平面図。
図31A】IGBT及びMOSFETに流れる場合の力行電流の大きさと半導体モジュールの端子間電圧との関係を示すグラフ。
図31B】車両回生時における半導体装置のダイオードに流れる電流と順方向電圧との関係を示すグラフ。
図32】第6実施形態の半導体ユニットの回路図。
図33】各IGBTのゲート駆動信号の推移を示すグラフ。
図34】変形例の半導体ユニットの回路図。
図35】変形例の半導体ユニットの回路図。
図36】変形例の半導体モジュールにおいて半導体装置の配置構成を示す図解的な平面図。
図37】変形例の半導体モジュールにおいて半導体装置の配置構成を示す図解的な平面図。
図38図37の38-38線に沿った半導体モジュールの断面図。
図39】変形例の半導体モジュールの図解的な平面図。
図40】変形例の半導体装置のRC-IGBTの底面図。
図41】変形例の半導体装置のRC-IGBTの底面図。
図42】変形例の半導体装置のRC-IGBTの底面図。
図43】変形例の半導体モジュールの図解的な平面図。
図44】変形例の半導体ユニットにおいて、(a)及び(b)はコンデンサの端子間電圧とIGBTの間欠動作時の周波数との関係を示すマップ。
図45】変形例の半導体ユニットにおいて、コンデンサの端子間電圧とIGBTの間欠動作時の周波数との関係を示すマップ。
図46】変形例の半導体ユニットにおいて、(a)及び(b)はコンデンサの端子間電圧とIGBTのゲート-エミッタ間電圧との関係を示すマップ。
図47】変形例の半導体ユニットにおいて、コンデンサの端子間電圧とIGBTのゲート-エミッタ間電圧との関係を示すマップ。
図48】変形例の半導体ユニットにおいて、(a)及び(b)はコンデンサの端子間電圧とIGBTのデューティ比との関係を示すマップ。
図49】変形例の半導体ユニットにおいて、コンデンサの端子間電圧とIGBTのデューティ比との関係を示すマップ。
図50】変形例のリレーユニット及びその周辺の模式的な回路図。
図51】変形例のリレーユニット及びその周辺の模式的な回路図。
図52】変形例の車両の一部の電気的構成を模式的に示すブロック図。
図53】従来のリレーユニット及びその周辺の模式的な回路図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、半導体装置、半導体モジュール、半導体ユニット、リレーユニット、バッテリユニット、及び車両の各実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態は、技術的思想を具体化するための構成や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに限定するものではない。以下の各実施形態は、種々の変更を加えることができる。
【0011】
本明細書において、「部材Aが部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bとが物理的に直接的に接続される場合、並びに、部材A及び部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合を含む。
【0012】
同様に、「部材Cが部材Aと部材Bとの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cとが直接的に接続される場合、並びに、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cとが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合を含む。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両としての車両1は、バッテリユニット20、モータ11、インバータ回路12、及びコンデンサ13を備える。モータ11は、インバータ回路12に接続されている。モータ11の一例は、3相交流モータである。3相交流モータとして、例えば3相誘導モータを用いることができる。インバータ回路12は、高圧側ラインHL及び低圧側ラインLLによってバッテリユニット20と電気的に接続されている。インバータ回路12は、バッテリユニット20の出力電力を、モータ11を駆動する交流電力(例えば、U相、V相、及びW相の交流電力)に変換する。コンデンサ13は、バッテリユニット20とインバータ回路12との間に設けられている。コンデンサ13は、インバータ回路12と並列に接続されている。コンデンサ13の一例は、フィルムコンデンサ又は電解コンデンサである。
【0014】
バッテリユニット20は、複数のバッテリセルからなるバッテリの一例であるバッテリモジュール21と、バッテリモジュール21からの電流の通流態様を制御するリレーユニット30とを備える。バッテリユニット20は、バッテリモジュール21及びリレーユニット30がケース(図示略)に収容されることにより一体化されている。バッテリセルの一例は、リチウムイオン電池である。バッテリモジュール21の正極及び負極は、リレーユニット30と接続されている。リレーユニット30は、バッテリモジュール21とインバータ回路12との間に設けられている。より詳細には、リレーユニット30は、高圧側ラインHL及び低圧側ラインLLにおけるバッテリモジュール21とコンデンサ13との間の部分に設けられている。なお、リレーユニット30とコンデンサ13との間には、昇圧回路が設けられてもよい。
【0015】
リレーユニット30は、第1のリレー部31、第2のリレー部32、及び制御部の一例である制御回路33を備える。第1のリレー部31は、バッテリモジュール21の正極とインバータ回路12との間の高圧側ラインHLに設けられ、第2のリレー部32は、バッテリモジュール21の負極とインバータ回路12との間の低圧側ラインLLに設けられている。
【0016】
制御回路33は、第1のリレー部31及び第2のリレー部32のそれぞれを制御する。例えば、制御回路33は、車両1の始動スイッチ(メインスイッチ)がオン操作された場合、第1のリレー部31及び第2のリレー部32をオンし、始動スイッチがオフ操作された場合、第1のリレー部31及び第2のリレー部32をオフする。第1のリレー部31及び第2のリレー部32のオンオフにより、バッテリモジュール21からインバータ回路12への電流の供給及び遮断、並びにインバータ回路12からバッテリモジュール21への電流の供給及び遮断を制御する。
【0017】
車両1では、バッテリモジュール21からインバータ回路12を介してモータ11に電力を供給する力行時において、バッテリモジュール21からインバータ回路12に供給される電流の大きさの一例は、400Aである。一方、ブレーキ時などのモータ11の運動エネルギーをインバータ回路12を介してバッテリモジュール21に電力として供給する回生時において、インバータ回路12からバッテリモジュール21に供給される電流の大きさの一例は、400Aである。このように、第1のリレー部31は、バッテリモジュール21からインバータ回路12への電流の流れと、インバータ回路12からバッテリモジュール21への電流の流れとの両方を許容する。
【0018】
図2は、リレーユニット30の回路図である。
高圧側ラインHLに設けられた第1のリレー部31は、半導体モジュール40を含んで構成されている。低圧側ラインLLに設けられた第2のリレー部32は、機械接点式のリレーである。リレーユニット30においては、半導体モジュール40とゲート制御回路34とから半導体ユニット41が構成されている。
【0019】
半導体モジュール40は、半導体装置40Aを備える。半導体装置40Aは、バッテリモジュール21(図1参照)の正極と、バッテリモジュール21と電気的に接続されたインバータ回路12(図1参照)との間に設けられている。
【0020】
半導体装置40Aは、トランジスタの一例であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)42と、IGBT42に逆並列に接続されたダイオード43とを備える。詳述すると、IGBT42のエミッタはダイオード43のアノードに接続され、IGBT42のコレクタはダイオード43のカソードに接続されている。
【0021】
IGBT42のコレクタはバッテリモジュール21の正極に接続されている。すなわち、IGBT42のコレクタは、半導体装置40Aにおけるバッテリモジュール21の正極に接続される第1端子の一例である。IGBT42のエミッタはインバータ回路12の上段側のスイッチング素子に接続されている。すなわち、IGBT42のエミッタは、半導体装置40Aにおけるインバータ回路12に接続される第2端子の一例である。またIGBT42のエミッタはコンデンサ13の第1端子に接続されている。なお、コンデンサ13の第2端子は第2のリレー部32に接続されている。
【0022】
IGBT42は、シリコン(Si)デバイスから形成され、オフ状態のときのコレクタ-エミッタ間の耐圧が600Vとなるように構成されている。またダイオード43は、シリコン(Si)デバイスから形成され、耐圧(逆方向電圧VR)が600Vとなるように構成されている。つまり、本実施形態では、IGBT42のコレクタ-エミッタ間の耐圧は、ダイオード43の耐圧と等しい。
【0023】
制御回路33は、ゲート制御回路34及びリレー制御回路35を有する。
ゲート制御回路34は、IGBT42のゲートに電気的に接続されている。ゲート制御回路34は、IGBT42のゲートに印加する電圧信号であるゲート駆動信号Sgを生成し、IGBT42のゲートに出力する。IGBT42は、ゲート駆動信号Sgに基づいて動作する。
【0024】
リレー制御回路35は、第2のリレー部32に電気的に接続されている。リレー制御回路35は、第2のリレー部32のオンオフを制御する制御信号Srを生成し、第2のリレー部32に出力する。第2のリレー部32は、制御信号Srに基づいてオンオフ動作を行う。
【0025】
ゲート制御回路34と半導体モジュール40との間には、電流制限抵抗36が設けられている。詳述すると、電流制限抵抗36は、ゲート制御回路34とIGBT42のゲートとの間に設けられている。電流制限抵抗36は、100Ω以上であることが好ましい。本実施形態の電流制限抵抗36は、500Ωである。
【0026】
このような構成の半導体モジュール40では、車両1の力行時には、IGBT42を介して電流が流れ、車両1の回生時には、ダイオード43を介して電流が流れる。図3Aは、車両1の力行時におけるIGBT42のコレクタに流れる合計のコレクタ電流Icと、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧Vceとの関係の一例を示している。図3Bは、車両1の回生時におけるダイオード43に流れる電流Ifと、ダイオード43の順方向電圧Vfとの関係の一例を示している。
【0027】
〔IGBTの構造〕
図4A及び図4Bを参照して、IGBT42の構造について説明する。
図4Aに示すように、IGBT42は、トレンチゲート型のIGBTである。IGBT42は、n型の半導体基板50を含む。半導体基板50は、例えばシリコン基板であり、表面50A及びその反対側の裏面50Bを有する。この半導体基板50の表面領域に、IGBT42の一部を構成する単位セル51が作り込まれている。
【0028】
半導体基板50は、その裏面50B側から順に、p型のコレクタ領域52、n型のバッファ領域53、及びn型のドリフト領域54を含む。コレクタ領域52及びバッファ領域53は、半導体基板50の裏面領域に形成されている。コレクタ領域52は、半導体基板50の裏面50Bから露出している。コレクタ領域52は、p型不純物としてB(ホウ素)を含む。バッファ領域53は、コレクタ領域52に接するようにコレクタ領域52上に形成されている。ドリフト領域54は、半導体基板50の一部を利用して形成されている。ドリフト領域54の一部は、半導体基板50の表面50Aから露出している(図示略)。バッファ領域53及びドリフト領域54のそれぞれは、n型不純物としてP(燐)、As(砒素)、Sb(アンチモン)のいずれかを含む。
【0029】
半導体基板50の表面領域には、複数のゲートトレンチ55が間隔を空けて形成されている。各ゲートトレンチ55は、ベース領域59を貫通しており、ドリフト領域54内に位置する底部を有する。各ゲートトレンチ55内には、ゲート絶縁膜56を介してゲート電極57が埋め込まれている。複数のゲートトレンチ55の側方には、半導体基板50の表面50A側から裏面50B側に向けて順に、n型のエミッタ領域58、p型のベース領域59、及びドリフト領域54が形成されている。
【0030】
ベース領域59は、一方のゲートトレンチ55と他方のゲートトレンチ55とによって共有されている。エミッタ領域58は、半導体基板50の表面50Aから露出するように、ゲートトレンチ55の一方側の側面及び他方側の側面に沿って形成されている。エミッタ領域58は、n型不純物としてP(燐)、As(砒素)、Sb(アンチモン)のいずれかを含む。ベース領域59の表面領域には、エミッタ領域58に挟まれるようにp型のコンタクト領域60が形成されている。ベース領域59及びコンタクト領域60は、p型不純物としてB(ホウ素)を含む。
【0031】
ベース領域59におけるエミッタ領域58とドリフト領域54との間の領域がチャネル領域61とされており、これによって、IGBT42の一部を構成する単位セル51が複数個形成されている。単位セル51は、図4Aの断面視において、一方のゲートトレンチ55の中心線と他方のゲートトレンチ55の中心線とによって挟まれた領域として規定される。
【0032】
半導体基板50の表面50Aには、ゲートトレンチ55を被覆するように、例えば酸化シリコン(SiO)からなる絶縁膜62が形成されている。絶縁膜62には、エミッタ領域58の一部及びコンタクト領域60を露出させるコンタクト孔62aが形成されている。絶縁膜62上には、例えばアルミニウム(AlSiCu、AlCu等)からなるエミッタ電極63が形成されている。エミッタ電極63は、絶縁膜62上からコンタクト孔62aに入り込み、コンタクト孔62a内でエミッタ領域58及びコンタクト領域60に電気的に接続されている。
【0033】
半導体基板50の裏面50Bには、例えばアルミニウム(AlSiCu、AlCu等)からなるコレクタ電極64が形成されている。コレクタ電極64は、コレクタ領域52に電気的に接続されている。
【0034】
上述のように始動スイッチのオン操作されたときにIGBT42がオンされるように動作するため、例えばインバータ回路12のスイッチング素子のスイッチング回数に比べ、IGBT42のスイッチング回数が少ない。このような用途のIGBT42では、動作速度が速くなくてもよい。一方、車両1の始動スイッチ(メインスイッチ)がオン操作されてからオフ操作されるまでの期間に亘りIGBT42がオン状態となるため、IGBT42の導通損失が小さいことが好ましい。
【0035】
この点に鑑みて、IGBT42は、動作速度を低下させる構造を採用することにより導通損失を低減している。図4A及び図4Bを用いて、IGBT42の導通損失の低減構造について説明する。
【0036】
図4Bは、IGBT42の構成と比較するための比較IGBTの構成を示している。比較IGBTは、格子欠陥層65が形成された点及びコレクタ領域52の不純物濃度が異なる。
【0037】
格子欠陥層65は、ドリフト領域54とバッファ領域53との間に介在している。格子欠陥層65は、ドリフト領域54及びバッファ領域53に接している。格子欠陥層65は、荷電粒子により格子欠陥が導入されることにより、比抵抗(抵抗値)が、コレクタ領域52及びバッファ領域53よりも高くされた高抵抗層である。荷電粒子としては、例えばn型不純物及びアルゴン(Ar)である。
【0038】
荷電粒子がn型不純物である場合、格子欠陥層65は、n型不純物がドナー化せずに存在する領域である。つまり、格子欠陥層65は、n型不純物が注入されたままの状態で未活性とされることによって格子欠陥が回復されず、結果として比抵抗(抵抗値)が高くされた高抵抗層である。また、荷電粒子がアルゴン(Ar)である場合、格子欠陥層65は、格子欠陥濃度がバッファ領域53の格子欠陥濃度よりも高くされることによって、比抵抗(抵抗値)が高くされた高抵抗層である。荷電粒子として、アルゴン(Ar)に代えて、プロトン(H)又はヘリウム(He)が採用されてもよい。
【0039】
比較IGBTは、格子欠陥層65により少数キャリアのライフタイムの制御を行うことができるため、高速スイッチングが可能となる一方、格子欠陥層65が半導体基板50に存在するため、導通損失が増大する。この点、本実施形態のIGBT42は、格子欠陥層65が存在しないため、高速スイッチングを実現できないが、導通損失を低下させることができる。
【0040】
また、IGBT42のコレクタ領域52の不純物濃度は、比較IGBTのコレクタ領域52の不純物濃度よりも高い。比較IGBTのコレクタ領域52の不純物濃度の一例は、1E+16cm-3である。IGBT42のコレクタ領域52の不純物濃度は、1E+18cm-3以上であることが好ましく、本実施形態では、IGBT42のコレクタ領域52の不純物濃度は、1E+18cm-3である。
【0041】
〔ダイオードの構造〕
次に、ダイオード43の構成について説明する。図5は、ダイオード43の断面構造を示している。
【0042】
ダイオード43は、n型の半導体基板70を含む。半導体基板70は、例えばシリコン基板であり、表面70A及びその反対側の裏面70Bを有する。半導体基板70は、ベース基板としてのn型領域71及びn型領域72を含む。半導体基板70は、例えばn型領域71上に、n型領域72をエピタキシャル成長させることによって構成されている。n型領域71及びn型領域72は、n型不純物を含有する半導体領域である。含有されるn型不純物としては、例えば窒素(N)、燐(P)、砒素(As)等を用いることができる。n型領域71の不純物濃度は、n型領域72の不純物濃度よりも高い。また本実施形態では、n型領域71の厚さは、n型領域72の厚さよりも薄い。なお、n型領域71の厚さは、n型領域72の厚さ以上であってもよい。
【0043】
型領域72の表面領域には、p型領域73が形成されている。p型領域73は、p型不純物を含有する半導体領域である。含有されるp型不純物としては、例えばホウ素(B)を用いることができる。本実施形態では、p型領域73の不純物濃度を濃くすることにより、ダイオード43の導通損失を低減している。一例では、p型領域73の不純物濃度は、1E+17cm-3以上であることが好ましい。本実施形態のp型領域73の不純物濃度は、1E+17cm-3である。半導体基板70には、p型領域73とn型領域72との間にpn接合が形成されている。
【0044】
半導体基板70の表面70Aには、アノード電極パッド76が形成されている。アノード電極パッド76は、p型領域73に接続されている。半導体基板70の裏面70B上には、カソード電極77が形成されている。カソード電極77は、半導体基板70の裏面70Bにおいてn型領域71に接続されている。
【0045】
〔半導体モジュール40の構成〕
図6図10を参照して、半導体モジュール40の構成について説明する。
図6及び図7に示すように、半導体モジュール40は、外部端子として封止樹脂48から突出する制御端子45、バッテリユニット20(図1参照)側の接続端子46、及びインバータ回路12(図1参照)側の接続端子47を有する。図7に示すように、半導体モジュール40は、IGBT42及びダイオード43を1パッケージでモジュール化したものである。半導体モジュール40は、金属基板44を備える。半導体モジュール40は、平面視において長方形となるように形成されている。以下の説明において、平面視における半導体モジュール40の長手方向を「第1方向X」と規定し、平面視において第1方向Xと直交する方向を「第2方向Y」と規定し、第1方向X及び第2方向Yの両方と直交する方向を「第3方向Z」と規定する。
【0046】
図8に示すように、金属基板44は、放熱板44aと、絶縁基板44bと、第1配線部44c及び第2配線部44dとが積層された構成である。
放熱板44aは、銅(Cu)からなる。図8及び図9に示すように、放熱板44aは、封止樹脂48の底面48Aから露出している。放熱板44aの平面視における形状は、第1方向Xが長手となる長方形である。なお、放熱板44aは、例えばアルミニウム(Al)から形成されてもよいし、放熱板44aを省略し、絶縁基板44bが直接露出してもよい。
【0047】
絶縁基板44bは、放熱板44aに固定されている。絶縁基板44bは、例えばSiにより構成されている。図8及び図9に示すように、絶縁基板44bの平面視における形状は、第1方向Xが長手となる長方形である。絶縁基板44bの平面視における面積は、放熱板44aの平面視における面積よりも大きい。すなわち絶縁基板44bは、放熱板44aに対して第1方向X及び第2方向Yの少なくとも一方から突出している。本実施形態では、絶縁基板44bは、放熱板44aに対して第1方向X及び第2方向Yの両方向から突出している。
【0048】
図8に示すように、第1配線部44c及び第2配線部44dは、絶縁基板44bに固定されている。第1配線部44c及び第2配線部44dは、銅(Cu)からなる。第1配線部44cと第2配線部44dとは、電気的に絶縁されている。図7に示すように、第1配線部44cの平面視における形状は、第1方向Xが長手となる長方形である。
【0049】
第1方向Xにおいて、第1配線部44cにおける第2配線部44dとは反対側の端部には、接続端子46が接続されている。接続端子46は、バッテリモジュール21側の高圧側ラインHLに接続される。すなわち接続端子46は、バッテリモジュール21の正極と電気的に接続される。接続端子46は、例えば銅(Cu)からなる。接続端子46の平面視における形状は、第1方向Xが長手となる長方形である。
【0050】
第2配線部44dには、接続端子47が接続されている。接続端子47は、インバータ回路12側の高圧側ラインHLに接続される。すなわち接続端子47は、インバータ回路12と電気的に接続される。接続端子47は、例えば銅(Cu)からなる。第2方向Yにおける接続端子47の位置は、第2方向Yにおける接続端子46の位置と等しい。接続端子47の平面視における形状は、第1方向Xが長手となる長方形であり、接続端子46の形状と同じである。
【0051】
金属基板44の第1配線部44cには、IGBT42及びダイオード43が実装されている。IGBT42及びダイオード43は、個別の半導体チップとして設けられている。第2方向Yにおいてダイオード43はIGBT42に対して第2配線部44d側に配置されている。IGBT42のコレクタ電極64(図4A参照)は、半田等の導電材料によって第1配線部44cに電気的に接続されている。ダイオード43のカソード電極77は、半田等の導電材料によって第1配線部44cに電気的に接続されている。
【0052】
IGBT42の表面には、エミッタ電極パッド66及びゲート電極パッド67が形成されている。ダイオード43の表面には、アノード電極パッド76aが形成されている。IGBT42のエミッタ電極パッド66、ダイオード43のアノード電極パッド76a、及び第2配線部44dは、複数(図7では6本)の電力用ワイヤ49aにより電気的に接続されている。平面視において電力用ワイヤ49aは、第2方向Yに沿って延びている。電力用ワイヤ49aは、例えばアルミニウム(Al)からなるボンディングワイヤである。
【0053】
エミッタ電極パッド66、ゲート電極パッド67、及びアノード電極パッド76aは、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)等で構成されている。
エミッタ電極パッド66には第1金属電極層(図示略)が形成され、ゲート電極パッド67には第2金属電極層(図示略)が形成されている。またアノード電極パッド76aには第3金属電極層(図示略)が形成されている。
【0054】
本実施形態の制御端子45は、ゲート端子である。制御端子45は、第2方向YにおいてIGBT42に対してダイオード43とは反対側に配置されている。制御端子45は、第2方向Yにおいて第1配線部44cから離間して配置されている。制御端子45は、ゲート制御回路34(図2参照)と電気的に接続される。
【0055】
ゲート電極パッド67は、IGBT42の表面において制御端子45側に形成されている。IGBT42のゲート電極パッド67及び制御端子45は、制御用ワイヤ49bにより電気的に接続されている。制御用ワイヤ49bは、例えばアルミニウム(Al)からなるボンディングワイヤである。
【0056】
図6及び図10に示すように、制御端子45のそれぞれは、L字状に形成されている。図10に示すように、制御回路33は、少なくともゲート制御回路34(図2参照)が形成された制御基板33aを備える。なお、制御基板33aは、リレー制御回路35(図2参照)が形成されてもよい。制御基板33aは、制御端子45に接続されている。制御基板33aは、第3方向Zにおいて半導体モジュール40と隙間を介して対向している。詳述すると、制御基板33aは、半導体モジュール40の封止樹脂48の底面48Aとは反対側の上面48Bと対向している。このように、半導体モジュール40と制御回路33(制御基板33a)とが組み付けられることにより、半導体ユニット41が構成されている。
【0057】
〔プリチャージ〕
図1図2、及び図11図16を参照して、始動スイッチがオン操作されたときの半導体モジュール40の制御について説明する。
【0058】
コンデンサ13の充電容量が0又は0に近い状態で始動スイッチがオン操作された場合、バッテリモジュール21からインバータ回路12に電力を供給するときにバッテリモジュール21とコンデンサ13との電位差に起因した突入電流が半導体モジュール40に流れるおそれがある。そこで、突入電流が半導体モジュール40に流れることを抑制することを目的として、プリチャージ制御が実行される。プリチャージ制御では、バッテリモジュール21からインバータ回路12への電力供給開始時において、ゲート制御回路34によってバッテリモジュール21から半導体モジュール40に流れる電流を制限してコンデンサ13を徐々に充電する制御である。車両1の始動スイッチ(メインスイッチ)がオン操作されたときにプリチャージ制御が開始され、コンデンサ13の端子間電圧が閾値以上となった場合に終了する。閾値は、コンデンサ13が満充電と判定するための電圧値である。閾値の一例は、バッテリモジュール21の電圧(以下、「バッテリ電圧VB」)の80%以上の電圧である。
【0059】
車両1の始動スイッチ(メインスイッチ)がオン操作された場合、制御回路33は、ゲート制御回路34によってゲート駆動信号Sgを生成し、IGBT42に出力する。
プリチャージ制御において、ゲート制御回路34は、コンデンサ13が徐々に充電されるようにIGBT42を制御する。具体的には、ゲート制御回路34は、IGBT42のゲートに印加される電圧を、IGBT42がフルオンする場合にゲートに印加される電圧よりも低くする。プリチャージ制御においてIGBT42のゲートに印加される電圧は、IGBT42の閾値電圧Vthよりも少し高い電圧であることが好ましい。すなわち、プリチャージ制御において、IGBT42に電流が流れるものの、IGBT42がフルオンした場合にIGBT42に流れる電流よりも十分に小さい電流となるようにIGBT42のゲートに印加される電圧が設定される。本実施形態では、IGBT42がフルオンする場合にゲートに印加される電圧は20Vであり、プリチャージ制御においてIGBT42のゲートに印加される電圧は8~10Vである。また、ゲート制御回路34は、間欠制御によってIGBT42を間欠動作させる。IGBT42の間欠動作の周波数は、1000Hz以下であることが好ましい。本実施形態のIGBT42の間欠動作の周波数は200Hzである。そしてIGBT42のデューティ比は、50%未満であることが好ましい。本実施形態では、IGBT42のデューティ比は、5%である。
【0060】
プリチャージ制御の終了後、コンデンサ13の端子間電圧が閾値以上と十分に高い電圧となるため、ゲート制御回路34は、IGBT42がフルオンするようなゲート駆動信号Sgを生成し、IGBT42に出力する。
【0061】
なお、プリチャージ制御の終了条件は任意に変更可能である。例えば、プリチャージ制御の実行開始時から所定時間経過した場合、プリチャージ制御を終了してもよい。ここで、所定時間は、プリチャージ制御によってコンデンサ13の充電容量が0から満充電になるまで充電するのに要する時間であり、試験等により予め設定される。
【0062】
次に、プリチャージ制御におけるコンデンサ13の端子間電圧、並びにIGBT42の電圧及び半導体モジュール40に流れる電流の推移について説明する。なお、第1比較例である第1比較プリチャージ制御は、IGBT42のゲートに印加する電圧を10Vとする一方、IGBT42を常時オン状態に維持する制御である。第2比較例である第2比較プリチャージ制御は、IGBT42のゲートに印加する電圧を20Vとし、IGBT42を間欠動作させる制御である。第2比較プリチャージ制御では、IGBT42を間欠制御によって間欠動作させる。IGBT42を間欠動作させる周波数は、10kHzであり、デューティ比は50%である。なお、第1比較プリチャージ制御及び第2比較プリチャージ制御の場合、ゲート制御回路34と半導体モジュール40との間に設けられた電流制限抵抗36は50Ωである。
【0063】
図11に示すように、第1比較プリチャージ制御では、その制御開始から時間の経過とともにIGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧VCEは徐々に低下する一方、コンデンサ13の端子間電圧VCが上昇する。コレクタ-エミッタ間電圧VCE及びコンデンサ13の端子間電圧VCは一次関数のように推移する。
【0064】
図12に示すように、第1比較プリチャージ制御では、その制御開始からコンデンサ13が満充電になるまでの期間に亘り常に高い電流が半導体モジュール40に流れる。図11では、半導体モジュール40に400Vで約70Aの電流が3msecの間にわたり流れることにより、IGBT42の温度が過度に高くなってしまう。
【0065】
また図13に示すように、第2比較プリチャージ制御では、IGBT42を高速に間欠動作させるため、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧VCEにサージ電圧を発生させる。コレクタ-エミッタ間電圧VCEのピークは、第2比較プリチャージ制御の開始から時間の経過とともに徐々に低下する。一方、コンデンサ13の端子間電圧VCは、第2比較プリチャージ制御の開始から時間の経過とともに上昇する。
【0066】
図14に示すように、第2比較プリチャージ制御では、その制御開始からコンデンサ13が満充電になるまでの期間に亘り間欠的に大電流が半導体モジュール40に流れる。第2比較プリチャージ制御における電流のピークは、時間の経過とともに徐々に低下する。第2比較プリチャージ制御の制御開始時には、高圧側ラインHLに800Aを超える電流が流れる。このような大電流が半導体モジュール40に間欠的に流れ、高速に電流変化するため、回路上の寄生インダクタンスと電流変化に伴い発生するサージ電圧が大きくなる。またIGBT42に電流が流れない期間が短いため、IGBT42の温度が過度に高くなる。
【0067】
このような問題に鑑み、本実施形態では、IGBT42のゲートに印加する電圧を低くし、かつIGBT42を第2比較プリチャージ制御よりも遅く間欠動作させる。この場合、図15に示すように、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧VCEは、プリチャージ制御の開始から時間の経過とともに段階的に低下する。一方、コンデンサ13の端子間電圧VCは、本実施形態のプリチャージ制御の開始から時間の経過とともに段階的に上昇する。
【0068】
図16に示すように、本実施形態のプリチャージ制御では、その制御開始からコンデンサ13が満充電になるまでの期間に亘り間欠的に電流が半導体モジュール40に流れる。半導体モジュール40に流れる電流は、80A~100A程度である。すなわち、本実施形態のプリチャージ制御において半導体モジュール40に流れる電流の大きさは、第2比較プリチャージ制御において半導体モジュール40に流れる電流の大きさに比べ、十分に小さい。またIGBT42に電流が流れない期間が長いため、この電流が流れない期間でIGBT42が冷却される。したがって、IGBT42の温度が過度に高くなることが抑制される。
【0069】
本実施形態の第1の作用について説明する。なお、図17は、本実施形態の半導体装置40Aに対する比較対象の例としての第1のリレー部である半導体装置40Xである。まず、比較例である半導体装置40Xの構成について説明する。
【0070】
半導体装置40Xは、互いに直列に接続されたMOSFET42x,42yを備える。詳述すると、MOSFET42xのドレインはバッテリモジュール21に接続され、MOSFET42xのソースはMOSFET42yのソースに接続されている。MOSFET42yのドレインはインバータ回路12に接続されている。MOSFET42xはボディダイオード43xを有し、MOSFET42yはボディダイオード43yを有する。ボディダイオード43xは、MOSFET42xのソース側がアノードとなり、MOSFET42xのドレイン側がカソードとなる。ボディダイオード43yは、MOSFET42yのソース側がアノードとなり、MOSFET42yのドレイン側がカソードとなる。バッテリモジュール21からインバータ回路12に電流が流れる場合又はインバータ回路12からバッテリモジュール21に電流が流れる場合、MOSFET42x及びMOSFET42yが同時にオンすることにより、電流はMOSFET42x及びMOSFET42yを流れる。すなわち、半導体装置40Xは双方向に導通可能である。
【0071】
また、MOSFET42x,42yはそれぞれ、炭化シリコン(SiC)デバイスにより形成されることにより、高い耐圧と低いオン抵抗とを同時に実現できる。しかし、半導体装置40Xは、MOSFET42xとMOSFET42yとの2つを直列に接続された構成であるため、オン抵抗が高くなるうえに、半導体装置40Xのコストが高くなってしまう。
【0072】
このような実情に鑑みて、本実施形態では、半導体装置40Aは、IGBT42と、IGBT42に逆接続されたダイオード43とから構成されるため、半導体装置40Xと比較して、トランジスタの素子数を減らすことができる。したがって、コストを低減することができる。
【0073】
次に、本実施形態の第2の作用について説明する。
インバータ回路12が短絡した場合、バッテリモジュール21からインバータ回路12に向けて大電流が流れる。このため、バッテリモジュール21とインバータ回路12との間に設けられた半導体モジュール40にも大電流が流れる。
【0074】
そこで、バッテリモジュール21からインバータ回路12に大電流が流れることを抑制するため、バッテリモジュール21からインバータ回路12に大電流が流れる場合に、半導体モジュール40のIGBT42をオフ状態にする。IGBT42をオフ状態にする場合、IGBT42のオン状態からオフ状態に変更する速度が速いと、IGBT42に流れる電流の大きさが急峻に変化するため、サージ電圧が発生してしまう。
【0075】
そこで、本実施形態では、IGBT42のゲートとゲート制御回路34との間に設けられた電流制限抵抗36を、例えばインバータ回路12のスイッチング素子(例えばIGBT)のゲートと、スイッチング素子を制御するゲート制御回路との間に設けられた電流制限抵抗よりも大きい抵抗値のものを用いている。具体的には、電流制限抵抗36は100Ω以上、本実施形態では500Ωの電流制限抵抗36が用いられている。これにより、IGBT42がオン状態からオフ状態に変更する速度が遅くなる。これにより、IGBT42に流れる電流の変化速度が遅くなるため、サージ電圧の発生を抑制することができる。
【0076】
本実施形態によれば、さらに以下の効果が得られる。
(1-1)半導体装置40Aは、バッテリモジュール21とインバータ回路12との間に設けられ、IGBT42及びIGBT42に逆接続されたダイオード43を有する。IGBT42のコレクタはバッテリモジュール21の正極に接続され、IGBT42のエミッタはインバータ回路12に接続されている。半導体装置40Aの耐圧は、バッテリ電圧VB以上である。この構成によれば、半導体装置40Aがメインリレー及びプリチャージ用のリレー回路の機能を果たすことができる。すなわちバッテリモジュール21からの突入電流を抑制するための電流制限抵抗、プレチャージ用のリレー回路の機械接点式のリレー、及び機械接点式のメインリレーをリレーユニットから省略することができる。このため、機械接点式のメインリレーの接点部分が溶着して電流の遮断ができないこと、アーク放電すること、及び開閉回数に制限があることからリレーとしての信頼性が低くなる問題と、メインリレー及びプリチャージ用のリレー回路が開閉時に音が鳴る問題とが発生することを抑制することができる。したがって、信頼性の低下と騒音の発生とをそれぞれ抑制するとともにリレーユニット30の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0077】
ところで、バッテリモジュール21からインバータ回路12に流れる電流が400Aである高圧側ラインHLに機械接点式のリレーが設けられた場合、リレーの体格は、リレーの平面視において横寸法が100mm以上、縦寸法が60mmよりも大きく、及び高さ寸法が70mmよりも大きい。リレーの一例では、横寸法が111mm、縦寸法が63mm、及び高さ寸法が75mmである。
【0078】
その点、半導体装置40Aを備える半導体モジュール40は、第1方向Xの寸法が60mm以下であり、第2方向Yの寸法が60mm以下であり、高さ寸法が12mm以下である。したがって、機械接点式のリレーと比較して、第1のリレー部31の小型化を図ることができる。
【0079】
(1-2)半導体装置40Aは、プリチャージ制御において、IGBT42は間欠動作し、かつ、IGBT42のゲートに印加される電圧が、IGBT42がフルオンするときにゲートに印加される電圧よりも低い。この構成によれば、バッテリモジュール21からコンデンサ13に向けて流れる電流を制限することができるため、バッテリモジュール21からコンデンサ13に大電流が流れることを抑制することができる。
【0080】
(1-3)半導体装置40Aでは、プリチャージ制御において、IGBT42が間欠動作するときの周波数が1000Hz以下であり、IGBT42が間欠動作するときのデューティ比が50%未満である。この構成によれば、バッテリモジュール21からコンデンサ13に向けて流れる電流を一層制限することができるため、バッテリモジュール21からコンデンサ13に向けて大電流が流れることを一層抑制することができる。したがって、IGBT42の温度上昇を抑制することができる。また、本実施形態の半導体装置40Aでは、プリチャージ制御において、IGBT42が間欠動作するときのデューティ比が5%である。このため、バッテリモジュール21からコンデンサ13に向けて大電流が流れることをより一層抑制することができる。
【0081】
(1-4)半導体装置40AのIGBT42のゲートとゲート制御回路34との間に設けられた電流制限抵抗36は、100Ω以上である。この構成によれば、IGBT42がターンオフするときにオン状態からオフ状態に変更する速度が遅くなる。したがって、サージ電圧の発生を抑制することができる。また、本実施形態の電流制限抵抗36は、500Ωである。このため、サージ電圧の発生を一層抑制することができる。
【0082】
(1-5)半導体装置40AのIGBT42は、バッファ領域53とドリフト領域54との間に格子欠陥層65が介在していない構造である。したがって、IGBT42に格子欠陥層65が形成された構成と比較して、IGBT42の導通損失を低減することができる。
【0083】
(1-6)IGBT42のコレクタ領域52の不純物濃度を高くすることにより、IGBT42の導通損失を低減している。これにより、バッテリモジュール21からインバータ回路12又はコンデンサ13に力行電流が流れるときにIGBT42における損失を低減することができる。
【0084】
(1-7)ダイオード43のアノード領域となるp型領域73の不純物濃度を高くすることにより、ダイオード43の導通損失を低減している。これにより、インバータ回路12からバッテリモジュール21に回生電流が流れるときにダイオード43における損失を低減することができる。
【0085】
(第2実施形態)
図18図22を参照して、第2実施形態の半導体ユニット41について説明する。本実施形態の半導体ユニット41は、第1実施形態の半導体ユニット41と比較して、IGBT42の温度及び過電流を検出する点が異なる。なお、以下の説明において、第1実施形態の半導体ユニット41の構成と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0086】
図18に示すように、IGBT42には、IGBT42の温度を検出するための感温ダイオード80と、IGBT42に流れる電流を検出するための電流センス81とが設けられている。電流センス81は、IGBT42のエミッタから流れる電流に対して電流センス81から流れる電流の比である電流センス比が例えば1/1000となるように設けられている。ゲート制御回路34と電流センス81との間には、センス抵抗83が設けられている。ゲート制御回路34は、センス抵抗83の両端に接続され、センス抵抗83に流れる電流に基づいて、IGBT42のエミッタから流れる電流を検出する。ゲート制御回路34は、センス抵抗83に流れる電流が閾値以上の場合にIGBT42をオフ状態にする。
【0087】
制御回路33は、温度検出回路37を備える。温度検出回路37は、感温ダイオード80のアノード及びカソードに接続されている。詳述すると、温度検出回路37は、感温ダイオード80に予め設定された電流を供給し、そのときの感温ダイオード80の両端の電圧を測定する。感温ダイオード80は、温度が上がるにつれて閾値電圧が下がる特性を有する。このため、例えば、温度検出回路37は、感温ダイオード80の両端の電圧が、IGBT42の温度が温度閾値に相当する閾値以上になるとゲート制御回路34に信号を出力する。ここで、温度閾値は、IGBT42が故障するおそれがある温度であり、試験等により予め設定される。
【0088】
図19及び図20に示すように、半導体モジュール40は、IGBT42に接続する5本の制御端子45を備える。図19に示すように、各制御端子45は、L字状に折り曲げられて形成されている。各制御端子45は、制御回路33(図18参照)に電気的に接続される。
【0089】
図20に示すように、IGBT42及びダイオード43は、6本の電力用ワイヤ49aにより接続されている。電力用ワイヤ49aは、第2配線部44dに接続されている。IGBT42は、5本の制御用ワイヤ49bにより5本の制御端子45と接続されている。
【0090】
図21は、IGBT42の電極の構成を示している。
IGBT42における金属基板44(図20参照)側とは反対側の表面の外周部分には、ガードリング90が形成されている。ガードリング90内の領域Rg1には、一対のエミッタ電極パッド91A,91B、ゲート電極パッド92、感温ダイオード80、アノード電極パッド93、カソード電極パッド94、電流センス81、電流センスパッド95、及びエミッタ電位パッド96が形成されている。またIGBT42における金属基板44側となる裏面には、コレクタ電極(図示略)が形成されている。エミッタ電極パッド91A,91B、ゲート電極パッド92、アノード電極パッド93、カソード電極パッド94、電流センスパッド95、及びエミッタ電位パッド96には、第1実施形態のエミッタ電極パッド66の第1金属電極層やゲート電極パッド67の第2金属電極層と同様の金属電極層が設けられている。
【0091】
一対のエミッタ電極パッド91A,91Bは、エミッタ電極63(図4A参照)に電気的に接続されている。エミッタ電極パッド91A,91Bのそれぞれには、電力用ワイヤ49a(図20参照)が接続されている。エミッタ電極パッド91A,91Bは、第1方向Xに僅かに隙間を空けて配置されている。エミッタ電極パッド91A,91Bにおける第2方向Yの一方側、すなわちIGBT42に対して制御端子45(図20参照)が配置される側の部分には、エミッタ電極パッド91A,91Bが第2方向Yに切り欠かれる切欠部97が形成されている。これら切欠部97によって、配列方向と直交する方向(第2方向Y)に凹む凹部となる領域が形成されている。この領域とガードリング90とにより囲まれた領域には、ゲート電極パッド92、アノード電極パッド93、カソード電極パッド94、電流センスパッド95、及びエミッタ電位パッド96が第1方向Xに沿って配置されている。ゲート電極パッド92、アノード電極パッド93、カソード電極パッド94、及び電流センスパッド95のそれぞれは、制御用ワイヤ49b(図20参照)によって制御端子45に接続されている。
【0092】
ゲート電極パッド92は、ゲート電極57(図4A参照)に電気的に接続され、制御端子45(図20参照)を介してゲート制御回路(図18参照)に電気的に接続されている。アノード電極パッド93及びカソード電極パッド94は、制御端子45を介して温度検出回路37(図18参照)に電気的に接続されている。電流センス81は、エミッタ電極パッド91A,91Bが接続されたエミッタ電極63(図4A参照)から分離されたパターンにより形成され、電流センスパッド95に電気的に接続されている。電流センスパッド95は、制御端子45を介してゲート制御回路34に電気的に接続されている。エミッタ電位パッド96は、ゲート駆動信号Sgを生成するときの基準電圧となる。エミッタ電位パッド96は、制御端子45を介してゲート制御回路34に電気的に接続されている。
【0093】
エミッタ電極パッド91Bにおいて、IGBT42の表面の中央部に対応する部分には、第1方向Xにおいてエミッタ電極パッド91Aから離れるように凹む凹部98が形成されている。凹部98には、感温ダイオード80が形成されている。すなわち感温ダイオード80は、IGBT42の表面の中央部に形成されている。また感温ダイオード80は、2つのエミッタ電極パッド91A,91Bの間に配置されている。感温ダイオード80の面積は、ゲート電極パッド92、アノード電極パッド93、カソード電極パッド94、電流センスパッド95、及びエミッタ電位パッド96のそれぞれの面積よりも小さい。感温ダイオード80は、アノード電極パッド93及びカソード電極パッド94と電気的に接続されている。詳述すると、IGBT42の表面には、配線パターンが形成されている。感温ダイオード80とアノード電極パッド93及びカソード電極パッド94とは配線パターンにより直列に接続されている。これにより、感温ダイオード80が温度検出回路37(図18参照)に電気的に接続される。
【0094】
図22は、ダイオード43の電極の構成を示している。
ダイオード43における金属基板44(図20参照)側とは反対側の表面の外周部分には、ガードリング100が形成されている。ガードリング100内の領域Rg2には、アノード電極パッド101が形成されている。またダイオード43における金属基板44側となる裏面には、カソード電極(図示略)が形成されている。アノード電極パッド101には、第1実施形態のアノード電極パッド76と同様に、第3金属電極層が形成されている。
【0095】
ところで、インバータ回路12が短絡した場合、バッテリモジュール21からインバータ回路12に向けて大電流が流れる。このため、バッテリモジュール21とインバータ回路12との間に設けられた半導体モジュール40にも大電流が流れるおそれがある。
【0096】
そこで、バッテリモジュール21からインバータ回路12に大電流が流れることを抑制するため、制御回路33は、バッテリモジュール21からインバータ回路12に大電流が流れる場合に、半導体モジュール40のIGBT42をオン状態からオフ状態にする。一例では、制御回路33は、IGBT42の温度が温度閾値以上になると、すなわち温度検出回路37からの信号を受信すると、IGBT42をオン状態からオフ状態にする。詳述すると、制御回路33は、ゲート制御回路34を通じてIGBT42をオフ状態にするゲート駆動信号Sg(電流低下信号)をIGBT42のゲートに出力する。
【0097】
ところで、IGBT42をオフ状態にする場合、IGBT42のオン状態からオフ状態に変更する速度が速いと、IGBT42に流れる電流の大きさが急峻に変化するため、サージ電圧が発生してしまう。そこで、本実施形態では、IGBT42のゲートとゲート制御回路34との間に設けられた電流制限抵抗36を、例えばインバータ回路12のスイッチング素子(例えばIGBT)のゲートと、スイッチング素子のオンオフを制御するゲート制御回路との間に設けられた電流制限抵抗よりも大きい抵抗値のものを用いている。具体的には、スイッチング素子とゲート制御回路との間に設けられた電流制限抵抗の抵抗値は数Ω~数十Ωである一方、電流制限抵抗36の抵抗値は100Ω以上である。本実施形態では500Ωの電流制限抵抗36が用いられている。これにより、IGBT42がオン状態からオフ状態に変更する速度が遅くなる。これにより、IGBT42に流れる電流の変化速度が遅くなるため、サージ電圧の発生を抑制することができる。
【0098】
本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2-1)IGBT42には、IGBT42のエミッタから流れる電流に比例した電流が流れる電流センス81が設けられている。ゲート制御回路34は、電流センス81に接続されたセンス抵抗83に流れる電流に基づいて、IGBT42に流れる電流を検出する。そして、その電流が閾値以上の場合にIGBT42をオフ状態にする。この構成によれば、IGBT42に過電流が流れる場合にそのIGBT42をオフ状態として電流を遮断できる。このため、機械接点式のリレーと比較して、短時間で確実に電流を遮断できるため、ヒューズを省略できる。また、機械接点式のリレーと比較して、小型化できる。
【0099】
(2-2)IGBT42の温度が温度閾値以上の場合にIGBT42をオフ状態にしている。この構成によれば、IGBT42に大電流が流れることに起因してIGBT42の温度が上昇した場合にIGBT42に流れる電流を遮断することができる。
【0100】
(第3実施形態)
図23図26Bを参照して、第3実施形態の半導体ユニット41について説明する。本実施形態の半導体ユニット41は、第2実施形態の半導体ユニット41と比較して、半導体モジュール40の構成が異なる。なお、以下の説明において、第2実施形態の半導体ユニット41の構成と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0101】
図25に示す本実施形態の半導体モジュール40は、IGBT42及びダイオード43を含む半導体装置40AとしてのRC(Reverse Conduction)-IGBT(逆導電絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を備える。なお、RC-IGBTの電極パッドの配置は、第2実施形態のIGBT42の電極パッドの配置と同じである。このため、半導体装置40Aの電極パッドの符号は、IGBT42の電極パッドの符号と同一のものを用いる。
【0102】
図23は、半導体モジュール40におけるIGBT42及びダイオード43を含むRC-IGBTの断面構造の一例を示している。図23に示すとおり、IGBT42及びダイオード43は、同一の半導体基板110に形成されている。すなわちIGBT42及びダイオード43は1チップ化されている。
【0103】
図23に示すように、半導体基板110の表面110A側の表層部には、p型のチャネル領域111が形成されている。チャネル領域111に対して半導体基板110の裏面110B側には、チャネル領域111と電気的に接続されるようにn型のドリフト領域112が形成されている。本実施形態では、n型の半導体基板が半導体基板110として用いられており、ドリフト領域112は半導体基板110の一部を利用して形成されている。
【0104】
半導体基板110の裏面110B側の表層部には、ドリフト領域112と電気的に接続されるように、p型のコレクタ領域113及びn型のカソード領域114が形成されている。本実施形態では、ドリフト領域112とコレクタ領域113との間、及びドリフト領域112とカソード領域114との間を延びるようにn型のバッファ領域115が形成されている。コレクタ領域113及びカソード領域114は、バッファ領域115を介してドリフト領域112と電気的に接続されている。コレクタ領域113及びカソード領域114は、半導体基板110の裏面110B側から露出するように形成されている。
【0105】
カソード領域114は、コレクタ領域113及びバッファ領域115の境界を横切るように形成されている。カソード領域114における半導体基板110の表面110A側の端部は、バッファ領域115内に位置している。
【0106】
半導体基板110の表面110A側の表層部には、平面視帯状に延びる複数のトレンチゲート構造116が形成されている。各トレンチゲート構造116は、半導体基板110を掘り下げて形成されたゲートトレンチ117にゲート絶縁膜118を挟んで埋め込まれたゲート電極119を含む。ゲートトレンチ117は、チャネル領域111を貫通しており、ドリフト領域112内に位置する底部を有する。ゲート絶縁膜118は、本実施形態では、半導体基板110の表面110Aにも被覆している。
【0107】
各トレンチゲート構造116の側方におけるチャネル領域111の表層部には、半導体基板110の表面110Aから露出するようにn型のエミッタ領域120が形成されている。これにより、各トレンチゲート構造116の側方には、半導体基板110の表面110A側から裏面110B側に向かって順に、n型のエミッタ領域120、p型のチャネル領域111、及びn型のドリフト領域112が形成されている。チャネル領域111は、互いに隣り合う複数のトレンチゲート構造116に共有されている。ゲート電極119は、ゲートトレンチ117内にゲート絶縁膜118を挟んで、エミッタ領域120、チャネル領域111、及びドリフト領域112と対向している。
【0108】
チャネル領域111の表層部における複数のトレンチゲート構造116間には、複数のコンタクト凹部121が形成されている。各コンタクト凹部121は、複数のトレンチゲート構造116と同一の方向に沿って延びる平面視帯状に形成されている。各コンタクト凹部121は、その底部がチャネル領域111内に位置するように半導体基板110の表面110A側の表層部を掘り下げて形成されている。半導体基板110の厚さ方向において、コンタクト凹部121の深さは、トレンチゲート構造116(ゲートトレンチ117)の深さよりも小さい。
【0109】
各コンタクト凹部121の側部からはエミッタ領域120が露出している。本実施形態では、チャネル領域111内には、エミッタ領域120の下方からコンタクト凹部121の側部及び底部に沿うように、チャネル領域111のp型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度を有するp型のコンタクト領域122が形成されている。なお、コンタクト凹部121の側部の全域にエミッタ領域120が露出しており、コンタクト凹部121の底部のみに沿うコンタクト領域122が形成されてもよい。
【0110】
半導体基板110の表面110A上には、トレンチゲート構造116を覆うように絶縁層123が形成されている。絶縁層123は、複数の絶縁膜が積層された積層構造を有してもよいし、1つの絶縁膜からなる単層構造を有してもよい。絶縁層123は、例えば酸化膜(SiO)又は窒化膜(SiN)を含んでもよい。絶縁層123には、半導体基板110に形成された各コンタクト凹部121を露出させるコンタクト孔124が形成されている。
【0111】
コンタクト孔124は、コンタクト凹部121と同一の方向に沿って平面視帯状に延びており、半導体基板110の表面110A側の表層部に形成されたコンタクト凹部121と連通している。コンタクト孔124の内壁は、コンタクト凹部121の内壁と面一に形成されている。
【0112】
絶縁層123上には、バリアメタル層125を介して、エミッタ電極126が形成されている。バリアメタル層125は、エミッタ電極126がコンタクト孔124及びコンタクト凹部121の外側に拡散することを抑制するための金属層である。本実施形態では、半導体基板110側から順に積層されたチタン層及び窒化チタン層を含む積層構造を有する。バリアメタル層125における半導体基板110側の表面及びその反対側の裏面は、コンタクト凹部121の内壁、コンタクト孔124の内壁、及びコンタクト孔124外の絶縁層123の表面に沿って形成されている。
【0113】
エミッタ電極126は、コンタクト凹部121及びコンタクト孔124を埋めて絶縁層123の表面全域を被覆するように、バリアメタル層125上に形成されている。エミッタ電極126は、コンタクト凹部121内においてバリアメタル層125を介して、チャネル領域111、エミッタ領域120、コンタクト領域122等と電気的に接続されている。
【0114】
半導体基板110の裏面110B側には、コレクタ領域113及びカソード領域114と電気的に接続されるようにコレクタ電極127が形成されている。
ダイオード43は、チャネル領域111及びドリフト領域112間のpn接合部によって形成されている。ダイオード43は、チャネル領域111をアノード領域として含む。ダイオード43は、チャネル領域111を介してエミッタ電極126に電気的に接続され、かつカソード領域114を介してコレクタ電極127に電気的に接続されている。このように本実施形態のRC-IGBTは、ダイオード43のアノードがIGBT42のエミッタ電極126に電気的に接続され、ダイオード43のカソードがIGBT42のコレクタ電極127に電気的に接続された構成を有する。
【0115】
図24は、半導体基板110の裏面110Bを示している。以下の説明において、便宜上、裏面110Bの一方向を「W方向」と規定し、半導体基板110を裏面110Bから見てW方向と直交する方向を「V方向」と規定する。
【0116】
図24に示すように、半導体基板110の裏面110B側の表層部には、カソード領域114(クロスハッチング部分)及びコレクタ領域113が形成されている。本実施形態では、カソード領域114は、コレクタ領域113のp型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有し、コレクタ領域113のp型不純物がn型不純物によって相殺されるように形成されている。
【0117】
カソード領域114は、所定のパターンで形成されている。詳述すると、カソード領域114は、連続的に引き回されたライン状のパターンを有する。具体的には、カソード領域114は、複数の第1ライン114aと複数の第2ライン114bとを含む。複数の第1ライン114aは、W方向に沿って延び、かつV方向に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第2ライン114bは、V方向に沿って延び、かつW方向に隣り合う第1ライン114a同士を接続している。複数の第1ライン114aのうちの一部のW方向の長さは、複数の第1ライン114aのうちの残りのW方向の長さよりも短い。複数の第1ライン114aの一部は、半導体基板110の裏面110BにおいてV方向の中央に位置している。第2ライン114bは、V方向に隣り合う第1ライン114aのW方向の一方の端部を接続する第2ライン114bと、V方向に隣り合う第1ライン114aのW方向の他方の端部を接続する第2ライン114bとがV方向に交互に形成されている。なお、本実施形態では、ゲート電極パッド92、アノード電極パッド93、カソード電極パッド94、電流センスパッド95、及びエミッタ電位パッド96(ともに図21参照)が配置される領域Rpに対応する領域にカソード領域114が形成されていない。
【0118】
第1ライン114aのV方向の幅及び第2ライン114bのW方向の幅により規定されるカソード領域114のライン幅は、例えば1μm以上かつ100μm以下、より好ましくは10μm以上かつ50μm以下である。カソード領域114は、図24に示すような一様なライン幅を有してもよいし、図示はしないが一様ではないライン幅を有してもよい。一様ではないライン幅として、例えばカソード領域114は、複数の第1ライン114aの一部のライン幅が複数の第1ライン114aの残りのライン幅と異なってもよい。またカソード領域114は、複数の第2ライン114bの一部のライン幅が複数の第2ライン114bの残りのライン幅と異なってもよい。
【0119】
図25は、本実施形態の半導体モジュール40のレイアウトを示している。
金属基板44において絶縁基板44b上に形成された第1配線部44cには、RC-IGBTとしての半導体装置40Aが実装されている。詳述すると、半導体装置40Aのコレクタ電極127(図23参照)が第1配線部44cに半田等により電気的に接続されている。
【0120】
半導体装置40Aのエミッタ電極パッド91A,91B及び第2配線部44dは、電力用ワイヤ49aにより接続されている。一例では、電力用ワイヤ49aの本数は6本である。
【0121】
半導体装置40Aは、5本の制御用ワイヤ49bにより5本の制御端子45と接続されている。詳述すると、半導体装置40Aのゲート電極パッド92、電流センスパッド95、アノード電極パッド93、カソード電極パッド94、及びエミッタ電位パッド96(ともに図21参照)と5本の制御端子45とがそれぞれ制御用ワイヤ49bにより接続されている。
【0122】
図26A及び図26Bを参照して、本実施形態の作用について説明する。図26Aの上段のグラフは、RC-IGBTを構成するIGBT42及びダイオード43からなるRC-IGBTの温度を模式的に示している。図26Aの下段の棒グラフは、RC-IGBTに流れる電流の絶対値の推移を示している。なお、図26Aの下段においてハッチングが付された棒グラフはRC-IGBTにおいてダイオード43に流れる電流を示し、白抜きの棒グラフはRC-IGBTにおいてIGBT42に流れる電流を示す。図26Bの上段のグラフは、IGBT42とダイオード43とが個別の半導体チップで構成された場合のIGBT42の温度の推移を示し、図26Bの上段の棒グラフは、IGBT42に流れる電流の推移を示している。図26Bの下段のグラフは、IGBT42とダイオード43とが個別の半導体チップで構成された場合のダイオード43の温度の推移を示し、図26Bの下段の棒グラフは、ダイオード43に流れる電流の推移を示している。
【0123】
IGBT及びダイオード等の半導体素子とボンディングワイヤとが接合された構成においては、半導体素子とボンディングワイヤとの接合部分の温度変化に起因して、半導体素子とボンディングワイヤとが剥離しようとする。半導体素子とボンディングワイヤとの剥離の可能性は、半導体素子とボンディングワイヤとの接合部分の温度変化の繰り返し回数が多くなるにつれて高くなる。半導体素子とボンディングワイヤとの接合部分の温度変化の繰り返し回数と、半導体素子とボンディングワイヤとの剥離との関係は、パワーサイクル耐量として示される。半導体素子とボンディングワイヤとの接合部分の温度変化量が大きくなるにつれて、半導体素子とボンディングワイヤとが剥離してしまうまでの半導体素子とボンディングワイヤとの接合部分の温度変化の繰り返し回数が少なくなる。すなわち、半導体素子とボンディングワイヤとの接合部分の温度変化量が大きくなるにつれてパワーサイクル耐量が低下する。
【0124】
図26Bに示すように、バッテリモジュール21からインバータ回路12に力行電流が流れる場合、IGBT42に力行電流が流れるため、IGBT42の温度が高くなる一方、ダイオード43には力行電流が流れないため、ダイオード43の温度は高くならない。またインバータ回路12からバッテリモジュール21に回生電流が流れる場合、ダイオード43に回生電流が流れるため、ダイオード43の温度が高くなる一方、IGBT42に回生電流が流れないため、IGBT42の温度は高くならない。
【0125】
このように、力行電流が流れた場合及び回生電流が流れた場合でIGBT42の温度変化が繰り返され、ダイオード43の温度変化が繰り返される。また回生電流が流れた場合にIGBT42の温度が低下するため、IGBT42の温度変化量が大きくなってしまう。また力行電流が流れた場合にダイオード43の温度が低下するため、ダイオード43の温度変化量が大きくなってしまう。その結果、パワーサイクル耐量が低下する。
【0126】
その点、本実施形態では、IGBT42及びダイオード43が同一の半導体チップであるため、IGBT42の温度が高くなること、及びダイオード43の温度が高くなることの両方でRC-IGBTの温度が高くなる。したがって、図26Aに示すように、力行電流が流れた場合及び回生電流が流れた場合でRC-IGBTの温度変化が小さい。加えて、力行電流及び回生電流が流れている限り、パワーサイクル耐量に影響するIGBT42及びダイオード43の温度変化が生じ難いため、IGBT42及びダイオード43の温度変化の繰り返し回数が少なくなる。したがって、長期間に亘りRC-IGBTを用いることができる。
【0127】
本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3-1)IGBT42とダイオード43とは同一の半導体基板110で形成されている。この構成によれば、IGBT42とダイオード43とを個別の半導体基板で形成する場合に比べ、IGBT42とダイオード43とを電気的に接続する電力用ワイヤが不要となる。したがって、半導体モジュール40の構成を簡素化することができる。加えて、各半導体素子の温度変化が小さくなるため、パワーサイクルの信頼性が向上する。
【0128】
(第4実施形態)
図27及び図28を参照して、第4実施形態の半導体ユニット41について説明する。本実施形態の半導体ユニット41は、第2実施形態の半導体ユニット41と比較して、半導体モジュール40及び制御回路33の構成が異なる。なお、以下の説明において、第2実施形態の半導体ユニット41の構成と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0129】
図27に示すように、半導体モジュール40の半導体装置40Aは、IGBT42と、IGBT42に並列に接続されたRB(Reverse Blocking)-IGBT42rb(逆阻止絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)とを備える。一例では、RB-IGBT42rbのエミッタはIGBT42のコレクタに接続され、RB-IGBT42rbのコレクタはIGBT42のエミッタに接続されている。
【0130】
IGBT42のゲートは、電流制限抵抗36に接続されている。IGBT42rbのゲートは、電流制限抵抗36rbに接続されている。一例では、電流制限抵抗36の抵抗値と電流制限抵抗36rbの抵抗値とは等しい。ゲート制御回路34からのゲート駆動信号Sgは、電流制限抵抗36,36rbを介して、IGBT42のゲート及びRB-IGBT42rbのゲートに同時に供給される。このため、IGBT42及びRB-IGBT42rbは、同時にオンし、同時にオフするといったように同期して動作する。RB-IGBT42rbは、順方向及び逆方向の双方向に耐圧特性を有する。なお、電流制限抵抗36の抵抗値は、電流制限抵抗36rbの抵抗値と異なってもよい。
【0131】
図27に示すとおり、RB-IGBT42rbには、RB-IGBT42rbの温度を検出するための感温ダイオード80rbと、RB-IGBT42rbに流れる電流を検出するための電流センス81rbとが設けられている。電流センス81rbは、RB-IGBT42rbのエミッタから流れる電流に対して電流センス81rbから流れる電流の比である電流センス比が例えば1/1000となるように設けられている。ゲート制御回路34と電流センス81rbとの間には、センス抵抗83rbが設けられている。ゲート制御回路34は、センス抵抗83rbの両端に接続され、センス抵抗83rbの両端の電圧に基づいて、RB-IGBT42rbのエミッタから流れる電流を検出する。ゲート制御回路34は、センス抵抗83rbの両端の電圧が第1閾値以上の場合にRB-IGBT42rbをオフ状態にする。
【0132】
制御回路33は、温度検出回路37rbを備える。温度検出回路37rbは、感温ダイオード80rbのアノード及びカソードに接続されている。温度検出回路37rbは、感温ダイオード80rbに予め設定された電流を供給し、そのときの感温ダイオード80rbの両端の電圧を測定する。温度検出回路37rbは、測定した感温ダイオード80rbの電圧をゲート制御回路34に出力する。感温ダイオード80rbは、温度が上がるにつれて閾値電圧が下がる特性を有する。このため、感温ダイオード80rbの両端の電圧から感温ダイオード80rbの温度、すなわちRB-IGBT42rbの温度が分かる。このため、例えば、温度検出回路37rbは、感温ダイオード80rbの両端の電圧が、IGBT42rbの温度が温度閾値に相当する閾値以上になるとゲート制御回路34に信号を出力する。ここで、温度閾値は、IGBT42rbが故障するおそれがある温度であり、試験等により予め設定される。
【0133】
一例では、制御回路33は、感温ダイオード80rbの両端の電圧が閾値以上になると、RB-IGBT42rbをオン状態からオフ状態にする。詳述すると、制御回路33は、ゲート制御回路34を通じてRB-IGBT42rbをオフ状態にするゲート駆動信号Sg(電流低下信号)をRB-IGBT42rbのゲートに出力する。このように、本実施形態では、IGBT42及びRB-IGBT42rbの少なくとも一方の温度が温度閾値以上になると、IGBT42及びRB-IGBTrbがオフ状態になる。
【0134】
図28は、本実施形態の半導体モジュール40のレイアウトを示している。なお、以下の説明において、第2実施形態の半導体モジュール40と共通の構成については同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0135】
図28に示すとおり、金属基板44において絶縁基板44b上に形成された第1配線部44c及び第2配線部44dの形状が、第2実施形態の第1配線部44c及び第2配線部44dと異なる。本実施形態の第1配線部44c及び第2配線部44dは、同一形状である。平面視において、第1配線部44c及び第2配線部44dはそれぞれ、第1方向Xが長手となる長方形を含む。
【0136】
第1配線部44cには、IGBT42が実装されている。第2配線部44dには、RB-IGBT42rbが実装されている。第1方向Xにおいて、IGBT42の配置位置と、RB-IGBT42rbの配置位置とは互いに異なっている。一例では、図28に示すとおり、第1方向Xにおいて、IGBT42は、RB-IGBT42rbよりも接続端子46側に配置されている。
【0137】
IGBT42のエミッタ電極パッド91A,91B及び第2配線部44dは、電力用ワイヤ49aにより接続されている。一例では、電力用ワイヤ49aの本数は6本である。
一例では、RB-IGBT42rbは、IGBT42と同様に、第3方向Zにおいて第1配線部44c側の面(裏面)にコレクタ電極(図示略)が形成され、上記裏面とは第3方向Zに反対側の表面にエミッタ電極パッド91rbA,91rbBが形成されている。またRB-IGBT42rbの表面には、IGBT42と同様に、ゲート電極パッド92、感温ダイオード80rb、アノード電極パッド93rb、カソード電極パッド94rb、電流センス81rb、電流センスパッド95rb、及びエミッタ電位パッド96rbが形成されている。
【0138】
RB-IGBT42rbのエミッタ電極パッド91rbA,91rbB及び第1配線部44cは、電力用ワイヤ49cにより接続されている。一例では、電力用ワイヤ49cの本数は6本である。
【0139】
半導体モジュール40は、制御端子45A,45Bを有する。制御端子45A,45Bのそれぞれは、5本設けられている。制御端子45AはIGBT42に電気的に接続され、制御端子45BはRB-IGBT42rbに電気的に接続されている。第1方向Xにおいて、5本の制御端子45Aの配置位置と、5本の制御端子45Bの配置位置とは互いに異なっている。一例では、図28に示すとおり、第1方向Xにおいて、5本の制御端子45Aは、5本の制御端子45Bよりも接続端子46側に配置されている。制御端子45Aは、第2方向Yにおいて、第1配線部44cに対して第2配線部44dが配置される側とは反対側に配置されている。制御端子45Bは、第2方向Yにおいて、第2配線部44dに対して第1配線部44cが配置される側とは反対側に配置されている。5本の制御端子45Bは、第1方向Xから見て、RB-IGBT42rbと重なるように配置されている。
【0140】
IGBT42では、第2実施形態と同様に、ゲート電極パッド92、電流センスパッド95、アノード電極パッド93、カソード電極パッド94、及びエミッタ電位パッド96と5本の制御端子45Aとがそれぞれ制御用ワイヤ49bにより接続されている。
【0141】
RB-IGBT42rbは、IGBT42と同様に、ゲート電極パッド92rb、電流センスパッド95rb、アノード電極パッド93rb、カソード電極パッド94rb、及びエミッタ電位パッド96rbと5本の制御端子45Bとがそれぞれ制御用ワイヤ49dにより接続されている。
【0142】
本実施形態によれば、第2実施形態の効果に加え、以下の効果が得られる。
(4-1)RB-IGBT42rbには、RB-IGBT42rbのエミッタから流れる電流に比例した電流が流れる電流センス81rbが設けられている。ゲート制御回路34は、電流センス81rbに接続されたセンス抵抗83rbに流れる電流に基づいて、RB-IGBT42rbに流れる電流を検出する。そして、その電流が閾値以上の場合にRB-IGBT42rbをオフ状態にする。この構成によれば、RB-IGBT42rbに過電流が流れる場合にそのRB-IGBT42rbをオフ状態として電流を遮断できる。そして、機械接点式のリレーと比較して、小型化でき、短時間で確実に電流を遮断できる。
【0143】
(4-2)RB-IGBT42rbの温度が温度閾値以上の場合にRB-IGBT42rbをオフ状態にしている。この構成によれば、RB-IGBT42rbに大電流が流れることに起因してRB-IGBT42rbの温度が上昇した場合にRB-IGBT42rbに流れる電流を遮断することができる。つまり、RB-IGBT42rbによって回生電流に対しても過電流及び過度に温度が高くなる場合に電流を遮断できる。
【0144】
(第5実施形態)
図29図31Bを参照して、第5実施形態の半導体ユニット41について説明する。本実施形態の半導体ユニット41は、第1実施形態の半導体ユニット41と比較して、半導体モジュール40の構成が異なる。なお、以下の説明において、第1実施形態の半導体ユニット41の構成と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0145】
図29に示すように、本実施形態の半導体モジュール40の半導体装置40Aは、IGBT42、ダイオード43、及びMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)140を備える。MOSFET140の一例は、炭化シリコン(SiC)の半導体基板により形成されたMOSFET、所謂ワイドギャップ半導体である。本実施形態のMOSFET140は、Nチャネル型MOSFETが用いられている。MOSFET140はボディダイオード140aを有する。なお、MOSFET140は、窒化ガリウム(GaN)等の窒化物半導体により形成されたMOSFETであってもよい。
【0146】
半導体装置40Aでは、IGBT42にダイオード43が逆並列に接続され、MOSFET140が並列に接続されている。詳述すると、IGBT42のエミッタには、ダイオード43のアノード及びMOSFET140のソースが接続されている。IGBT42のコレクタには、ダイオード43のカソード及びMOSFET140のドレインが接続されている。
【0147】
IGBT42のゲート及びMOSFET140のゲートは、ゲート制御回路34に接続されている。IGBT42のゲートとゲート制御回路34との間には、電流制限抵抗36が設けられ、MOSFET140のゲートとゲート制御回路34との間には、電流制限抵抗36mが設けられている。ゲート制御回路34は、ゲート駆動信号SgをIGBT42のゲート及びMOSFET140のゲートにそれぞれ出力する。ゲート駆動信号Sgは、IGBT42及びMOSFET140に対して共通の信号である。このため、IGBT42及びMOSFET140は、ゲート駆動信号Sgに基づいて同期して動作する。
【0148】
図30は、本実施形態の半導体モジュール40のレイアウトを示している。
図30に示すように、金属基板44の絶縁基板44b上には、第1配線部143、第2配線部144、及び2つの第3配線部170,171が設けられている。一例では、第1方向Xにおいて第1配線部143と第2配線部144とが間隔をあけて対向するように配置されている。第1配線部143には接続端子46が接続され、第2配線部144には接続端子47が接続されている。一例では、第3配線部170,171は、第2方向Yから見て、接続端子46と重なる位置に配置されている。
【0149】
第1配線部143には、IGBT42、ダイオード43、及びMOSFET140が第2方向Yに隙間を空けて配置されている。IGBT42のコレクタ電極64、ダイオード43のカソード電極77、及びMOSFET140のドレイン電極が第1配線部143に半田等により電気的に接続されている。
【0150】
IGBT42は、エミッタ電極パッド66及びゲート電極パッド67を有する。本実施形態では、IGBT42は、アノード電極パッド93、カソード電極パッド94、電流センスパッド95、及びエミッタ電位パッド96を有していないが、これらパッドを有していてもよい。ダイオード43は、アノード電極パッド76aを有する。MOSFET140は、ソース電極パッド145及びゲート電極パッド146を有する。IGBT42のエミッタ電極パッド66と第2配線部144とは、電力用ワイヤ147aにより接続され、ダイオード43のアノード電極パッド76aと第2配線部144とは、電力用ワイヤ147bにより接続され、MOSFET140のソース電極パッド145と第2配線部144とは、電力用ワイヤ147cにより接続されている。一例では、電力用ワイヤ147aの本数は4本であり、電力用ワイヤ147bの本数は2本であり、電力用ワイヤ147cの本数は2本である。
【0151】
半導体モジュール40は、制御端子149a,149bを有する。IGBT42のゲート及びエミッタとMOSFET140のゲート及びソースは、制御端子149a,149bに電気的に接続されている。具体的には、IGBT42のゲート電極パッド67は、制御用ワイヤ148aにより第3配線部170に電気的に接続され、MOSFET140のゲート電極パッド146は、制御用ワイヤ148bにより第3配線部170に電気的に接続されている。IGBT42のエミッタ電極パッド66は、制御用ワイヤ148cにより第3配線部171に電気的に接続され、MOSFET140のソース電極パッド145は、制御用ワイヤ148dにより第3配線部171に電気的に接続されている。第3配線部170は、制御用ワイヤ148eにより制御端子149aに接続され、第3配線部171は、制御用ワイヤ148fにより制御端子149bに接続されている。
【0152】
ところで、MOSFET140の特性として、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧がオフセット電圧よりも低い電圧領域において電流を流すことができる。一方、MOSFET140に流れる電流は、IGBT42に流れる電流よりも小さい。加えて、MOSFET140のドレイン-ソース間電圧の増加に対するMOSFET140に流れる電流の増加量は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧の増加に対するIGBT42に流れる電流の増加量よりも小さい。
【0153】
また、MOSFET140は、そのゲートオン時にソースからドレインに回生電流を流す経路となる。MOSFET140の逆導通特性として、ダイオード43の立ち上り電圧よりも低い電圧で電流を流すことができる。一方、MOSFET140において逆方向に流れる電流は、ダイオード43に流れる電流よりも小さい。加えて、MOSFET140のソース-ドレイン間電圧の増加に対するMOSFET140において逆方向に流れる電流の増加量は、ダイオード43の両端子間電圧の増加に対するダイオード43に流れる電流の増加量よりも小さい。
【0154】
バッテリモジュール21からインバータ回路12に力行電流が供給される場合、IGBT42及びMOSFET140にそれぞれ力行電流が流れる。図31Aは、力行電流がIGBT42及びMOSFET140に流れる場合の力行電流の大きさと半導体モジュール40の端子間電圧との関係を示している。図31Aの破線のグラフは、MOSFET140に流れる電流の推移を示し、図31Aの一点鎖線のグラフは、IGBT42に流れる電流の推移を示し、図31Aの実線のグラフは、MOSFET140及びIGBT42の合計の電流(力行電流)の推移を示している。
【0155】
図31Aに示すように、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧がオフセット電圧(図31Aでは、0.7V)未満の場合、MOSFET140に力行電流が流れ、IGBT42に力行電流が流れない。そしてIGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧がオフセット電圧以上になった場合、MOSFET140に力行電流が流れることに加え、IGBT42に力行電流が流れる。
【0156】
インバータ回路12からバッテリモジュール21に回生電流が供給される場合、ダイオード43に回生電流が流れ、かつMOSFET140に回生電流が流れる。図31Bは、回生電流がダイオード43及びMOSFET140において逆方向に流れる場合の回生電流の大きさと半導体モジュール40の端子間電圧との関係を示している。図31Bの破線のグラフは、MOSFET140において逆方向に流れる電流の推移を示し、図31Bの一点鎖線のグラフは、ダイオード43aに流れる電流の推移を示し、図31Bの実線のグラフは、ダイオード43a及びMOSFET140の合計の電流(回生電流)の推移を示している。
【0157】
図31Bに示すように、ダイオード43aの両端子間電圧が立ち上り電圧(図31Bでは、0.7V)未満の場合、MOSFET140に回生電流が流れ、ダイオード43aに回生電流が流れない。そしてダイオード43aの両端子間電圧が立ち上り電圧以上になった場合、MOSFET140に回生電流が流れることに加え、ダイオード43aに回生電流が流れる。このように、半導体装置40AにMOSFET140が追加されることにより、力行電流及び回生電流の低電流時の導通損失を低減することができる。
【0158】
本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(5-1)半導体装置40Aは、IGBT42と、IGBT42に逆並列に接続されたダイオード43と、IGBT42に並列に接続されたMOSFET140とを備える。この構成によれば、バッテリモジュール21からインバータ回路12に力行電流が供給される場合、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧がオフセット電圧未満の電圧領域においてMOSFET140を通じて力行電流が流れる。またインバータ回路12からバッテリモジュール21に回生電流が供給される場合、ダイオード43aの立ち上がり電圧未満の電圧領域においてMOSFET140に回生電流が流れる。このため、バッテリモジュール21からインバータ回路12により速やかに力行電流を供給することができ、インバータ回路12からバッテリモジュール21により速やかに回生電流を供給することができる。
【0159】
(第6実施形態)
図32及び図33を参照して、第6実施形態の半導体ユニット41について説明する。本実施形態の半導体ユニット41は、第1実施形態の半導体ユニット41と比較して、制御回路33の構成及び半導体ユニット41の制御が異なる。なお、以下の説明において、第1実施形態の半導体ユニット41の構成と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0160】
図32に示すように、本実施形態の半導体ユニット41は、第1半導体装置40A、第2半導体装置40B、及び第3半導体装置40Cを有する。第1半導体装置40Aは、IGBT42a及びダイオード43aを備え、第2半導体装置40Bは、IGBT42b及びダイオード43bを備え、第3半導体装置40Cは、IGBT42c及びダイオード43cを備える。IGBT42a~42cは並列に接続されている。ダイオード43a~43cは並列に接続されている。
【0161】
第1半導体装置40Aでは、IGBT42aにダイオード43aが逆並列に接続されている。詳述すると、IGBT42aのエミッタには、ダイオード43aのアノードが接続され、IGBT42aのコレクタには、ダイオード43aのカソードが接続されている。
【0162】
第2半導体装置40Bでは、IGBT42bにダイオード43bが逆並列に接続されている。詳述すると、IGBT42bのエミッタには、ダイオード43bのアノードが接続され、IGBT42bのコレクタには、ダイオード43bのカソードが接続されている。
【0163】
第3半導体装置40Cでは、IGBT42cにダイオード43cが逆並列に接続されている。詳述すると、IGBT42cのエミッタには、ダイオード43cのアノードが接続され、IGBT42cのコレクタには、ダイオード43cのカソードが接続されている。
【0164】
制御回路33は、第1ゲート制御回路34A、第2ゲート制御回路34B、及び第3ゲート制御回路34Cを備える。第1ゲート制御回路34AはIGBT42aのゲートに電気的に接続され、第2ゲート制御回路34BはIGBT42bのゲートに接続され、第3ゲート制御回路34CはIGBT42cのゲートに接続されている。第1ゲート制御回路34AとIGBT42aのゲートとの間、第2ゲート制御回路34BとIGBT42bのゲートとの間、及び第3ゲート制御回路34CとIGBT42cのゲートとの間のそれぞれには、電流制限抵抗36が設けられている。これら3個の電流制限抵抗36の抵抗値は互いに等しい。電流制限抵抗36の抵抗値は、100Ω以上であることが好ましい。本実施形態の電流制限抵抗36の抵抗値は、500Ωである。
【0165】
第1ゲート制御回路34AはIGBT42aのゲートにゲート駆動信号Sgaを出力し、第2ゲート制御回路34BはIGBT42bのゲートにゲート駆動信号Sgbを出力し、第3ゲート制御回路34CはIGBT42cのゲートにゲート駆動信号Sgcを出力する。このように、各ゲート制御回路34A~34Cにより各IGBT42a~42cを個別に制御することができる。
【0166】
図33に示すように、本実施形態のプリチャージ制御では、IGBT42aのゲートにゲート駆動信号Sgaが入力されるタイミングと、IGBT42bのゲートにゲート駆動信号Sgbが入力されるタイミングと、IGBT42cのゲートにゲート駆動信号Sgcが入力されるタイミングとが互いに異なる。詳述すると、まずIGBT42aのゲートにゲート駆動信号Sgaが入力される。そして再びIGBT42aがオフ状態になった後、IGBT42bのゲートにゲート駆動信号Sgbが入力される。そして再びIGBT42bがオフ状態になった後、IGBT42cのゲートにゲート駆動信号Sgcが入力される。そして再びIGBT42cがオフ状態になった後、IGBT42aのゲートにゲート駆動信号Sgaが入力される。このサイクルを繰り返すことにより、プリチャージ制御が実行される。
【0167】
本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(6-1)制御回路33は、プリチャージ制御において各IGBT42a~42cを個別に制御する。詳述すると、制御回路33は、プリチャージ制御において各IGBT42a~42cのゲートに印加される電圧の印加タイミングを互いに異ならせる。この構成によれば、各IGBT42a~42cに電流が流れるタイミングが互いに異なるため、各IGBT42a~42cに電流が流れることに起因して発熱するタイミングが互いに異なる。したがって、プリチャージ制御において各IGBT42a~42cの温度が過度に高くなることを抑制することができる。加えて、各IGBT42a~42cを1つのゲート駆動回路によって駆動させないため、すなわち各IGBT42a~42cを同時にオンオフしないため、各IGBT42a~42cのうちの1つのIGBTに集中して電流が流れてしまうことを抑制できる。さらに、1つのIGBT42によって構成される半導体ユニット41と比較して、各IGBT42a~42cが遮断する電流量が約1/3になり、各IGBT42a~42cが同時にオンオフしないことにより、サージ電圧が互いに重畳されないため、各IGBT42a~42cのコレクタのサージ電圧を小さくすることができる。
【0168】
(変形例)
上記各実施形態に関する説明は、本発明に従う半導体装置、半導体モジュール、半導体ユニット、リレーユニット、バッテリユニット、及び車両が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う半導体装置、半導体モジュール、半導体ユニット、リレーユニット、バッテリユニット、及び車両は、上記各実施形態以外に例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合せられた形態を取り得る。
【0169】
・第1~第5実施形態において、半導体装置40AのIGBT42の個数は任意に変更可能である。例えば、半導体装置40Aは、並列に接続された複数のIGBT42を有してもよい。この変形例において、制御回路33の構成を第6実施形態の制御回路33の構成に変更してもよい。
【0170】
・半導体装置40Aの構成は、上記各実施形態の構成に限られず、例えば図34又は図35に示す構成であってもよい。
図34に示すように、半導体装置40Aは、MOSFET140と、MOSFET140に逆並列に接続されたダイオード43とを有する。詳述すると、MOSFET140のソースにダイオード43のアノードが接続され、MOSFET140のドレインにダイオード43のカソードが接続されている。MOSFET140のソース及びドレインは、高圧側ラインHLに接続されている。MOSFET140は、例えばNチャネル型MOSFETが用いられている。MOSFET140のドレインがバッテリモジュール21の正極に接続される半導体装置40Aの第1端子となり、MOSFET140のソースがインバータ回路12に接続される半導体装置40Aの第2端子となる。MOSFET140のゲートは、ゲート制御回路34に接続されている。MOSFET140は、シリコン(Si)の半導体基板により形成されたMOSFETであってもよいし、炭化シリコン(SiC)や窒化ガリウム(GaN)の半導体基板により形成されたMOSFETであってもよい。シリコン(Si)のMOSFETでは、スーパージャンクション構造のものが用いられてもよい。また、窒化ガリウム(GaN)のMOSFETでは、HEMT構造のものが用いられてもよい。
【0171】
バッテリモジュール21からインバータ回路12に向けて電流が流れる場合、MOSFET140に電流が流れる。一方、インバータ回路12からバッテリモジュール21に向けて電流が流れる場合、ダイオード43及び各MOSFET140の逆方向やボディダイオード140aに電流が流れる。
【0172】
図35に示すように、半導体装置40Aは、ボディダイオード140aを有するMOSFET140を有する。MOSFET140のソース及びドレインは、高圧側ラインHLに接続されている。MOSFET140のゲートは、ゲート制御回路34に接続されている。MOSFET140は、例えばNチャネル型MOSFETが用いられている。MOSFET140のドレインがバッテリモジュール21の正極に接続される半導体装置40Aの第1端子となり、MOSFET140のソースがインバータ回路12に接続される半導体装置40Aの第2端子となる。
【0173】
バッテリモジュール21からインバータ回路12に向けて電流が流れる場合、MOSFET140に電流が流れる。一方、インバータ回路12からバッテリモジュール21に向けて電流が流れる場合、MOSFET140の逆方向やボディダイオード140aに電流が流れる。
【0174】
図34又は図35に示す変形例において、MOSFET140は、MOSFETに流れる電流を検出するための電流センスを有していてもよい。この電流センスには、MOSFETに流れる電流に比例した電流が流れる。この場合、電流センスを有するMOSFETには、電流センスパッド95が設けられることが好ましい。
【0175】
図34又は図35に示す変形例において、MOSFET140は、MOSFETの温度を検出するための感温ダイオードを有してもよい。この場合、感温ダイオードを有するMOSFETには、アノード電極パッド93及びカソード電極パッド94が設けられることが好ましい。
【0176】
図34又は図35に示す変形例において、ゲート制御回路34の構成を、第6実施形態のゲート制御回路34の構成に変更してもよい。
・半導体モジュール40における半導体装置の個数は任意に変更可能である。一例では、半導体モジュール40は、複数の半導体装置を有する。この場合、複数の半導体装置は、互いに並列に接続される。
【0177】
図36は、半導体モジュール40が2個の半導体装置40A,40Bからなる構成を示している。
金属基板44の絶縁基板44b上には、第1配線部150及び第2配線部151が設けられている。第1配線部150及び第2配線部151は、第1方向Xに沿って配置されている。第1方向Xにおいて、第1配線部150における第2配線部151が配置される側とは反対側の端部には、接続端子46が接続されている。第2配線部151には接続端子47が接続されている。
【0178】
第1配線部150には、半導体装置40AのIGBT42a及びダイオード43aと、半導体装置40BのIGBT42b及びダイオード43bとが実装されている。IGBT42a及びダイオード43aは第1方向Xに沿って互いに間隔を空けて配置されている。IGBT42b及びダイオード43bは第1方向Xに沿って互いに間隔を空けて配置されている。IGBT42a及びIGBT42bは、第2方向Yにおいて間隔を空けて配置されている。ダイオード43a及びダイオード43bは、第2方向Yにおいて間隔を空けて配置されている。
【0179】
IGBT42aのエミッタ電極パッド66a、ダイオード43aのアノード電極パッド76a、及び第2配線部151は、複数の電力用ワイヤ49a(図36では6本の電力用ワイヤ49a)により接続されている。IGBT42bのエミッタ電極パッド66b、ダイオード43bのアノード電極パッド76b、及び第2配線部151は、複数の電力用ワイヤ49e(図36では6本の電力用ワイヤ49e)により接続されている。
【0180】
半導体モジュール40は、2つの制御端子45a,45bを有する。制御端子45aは、制御用ワイヤ49bによってIGBT42aのゲート電極パッド67aに電気的に接続されている。制御端子45bは、制御用ワイヤ49fによってIGBT42bのゲート電極パッド67bに電気的に接続されている。
【0181】
・半導体装置40Aにおいて、IGBT42とダイオード43と第2配線部44dとの接続に、電力用ワイヤに代えて、平板状のクリップを用いてもよい。具体的には、図37に示すように、クリップ152は、IGBT42のエミッタ電極パッド66と、ダイオード43のアノード電極パッド76aと、第2配線部44dとに接続されている。一例では、クリップ152は、銅(Cu)で構成されている。図38に示すように、クリップ152は、エミッタ電極パッド66に接触するための第1接触部153、アノード電極パッド76aに接触するための第2接触部154、及び第2配線部44dに接触するための第3接触部155を有する。
【0182】
・第1実施形態において、半導体モジュール40は、例えば図39に示すように、IGBT42のゲートと電気的に接続される制御端子45に加えて、IGBT42のエミッタと電気的に接続されるエミッタ端子45xを有してもよい。エミッタ端子45xは、ワイヤ49xによってIGBT42のエミッタ電極パッド66に接続されている。エミッタ端子45xの形状は、例えば制御端子45と同じである。
【0183】
・第1実施形態において、制御端子45の配置構成は任意に変更可能である。一例では、半導体モジュール40の平面視において、接続端子46及び接続端子47のいずれかと第2方向Yに隣り合うように配置されてもよい。なお、第2~第6実施形態の制御端子45(45A,45B)についても同様に変更できる。
【0184】
・第3実施形態において、半導体装置40AのRC-IGBTにおけるカソード領域114のレイアウトは任意に変更可能である。一例では、図40図42に示すようなカソード領域114のレイアウトであってもよい。
【0185】
図40に示すように、第1変形例のカソード領域114は、第3実施形態と同様に、W方向に沿って延び、かつV方向に沿って間隔を空けて形成された複数の第1ライン114aと、V方向に沿って延び、かつV方向に隣り合う複数の第1ライン114a同士を接続する複数の第2ライン114bとを含む。図40に示すカソード領域114では、複数の第1ライン114aのW方向の長さは互いに等しい。また複数の第2ライン114bのV方向の長さが互いに等しい。図40に示すとおり、カソード領域114は、半導体基板110の裏面110Bにおいて、領域RpよりもW方向の一方寄りに偏在して形成されている。
【0186】
図41に示すように、第2変形例のカソード領域114は、第3実施形態と同様に、W方向に沿って延び、かつV方向に沿って間隔を空けて形成された複数の第1ライン114aと、V方向に沿って延び、かつV方向に隣り合う複数の第1ライン114a同士を接続する複数の第2ライン114bとを含む。第2変形例のカソード領域114では、第2ライン114bは、V方向に隣り合う複数の第1ライン114aのW方向の一方側端部同士を接続している。
【0187】
図42に示すように、第3変形例では、領域Rpが半導体基板110の中央に位置している。第3変形例のカソード領域114は、領域Rpを取り囲むように平面視四角環状に形成されている。第3変形例のカソード領域114は、W方向に沿って延び、かつV方向に沿って間隔を空けて形成された複数の第1ライン114aと、V方向に沿って延び、かつV方向に隣り合う複数の第1ライン114a同士を接続する複数の第2ライン114bとを含む。
【0188】
・第2~第4実施形態において、IGBT42のゲート電極パッド92、アノード電極パッド93、カソード電極パッド94、電流センスパッド95、及びエミッタ電位パッド96の第1方向Xに配置される順番は任意に変更可能である。
【0189】
・第2~第4実施形態において、IGBT42の感温ダイオード80の配置位置は任意に変更可能である。
・第2~第4実施形態において、IGBT42から感温ダイオード80及び電流センス81のいずれかを省略してもよい。また感温ダイオード80が省略されたIGBTからアノード電極パッド93及びカソード電極パッド94を省略することもできる。また電流センス81が省略されたIGBTから電流センスパッド95を省略することもできる。
【0190】
・第5実施形態において、半導体モジュール40におけるIGBT42、ダイオード43、及びMOSFET140の配置構成は任意に変更可能である。一例では、図43に示すように、第1方向Xから見てIGBT42及びダイオード43が重なるようにIGBT42及びダイオード43が配置されてもよい。この場合、IGBT42のエミッタ電極パッド66、ダイオード43のアノード電極パッド76a、及び第2配線部144は、電力用ワイヤ147aにより接続されている。
【0191】
・第6実施形態において、第1半導体装置40Aは、IGBT42a及びダイオード43aを第3実施形態のようなRC-IGBTで構成してもよい。第2半導体装置40Bは、IGBT42b及びダイオード43bを第3実施形態のようなRC-IGBTで構成してもよい。第3半導体装置40Cは、IGBT42c及びダイオード43cを第3実施形態のようなRC-IGBTで構成してもよい。
【0192】
・各実施形態において、IGBT42,42a~42cは、トレンチゲート型に代えてプレーナゲート型のIGBTであってもよい。
・第6実施形態において、制御回路33は、IGBT42a~42cのゲートに電圧を印加する印加タイミングのうちの1つのみを異ならせてもよい。例えば、IGBT42bのゲートに電圧を印加する印加タイミングをIGBT42a,42cのゲートに電圧を印加する印加タイミングと異ならせてもよい。IGBT42aとIGBT42cとは、IGBT42bを挟んで配置されているため、すなわちIGBT42aとIGBT42cとは互いに離間して配置されているため、IGBT42aとIGBT42cとが互いに及ぼす熱影響が小さい。このため、IGBT42bの上記印加タイミングを異ならせることにより、各IGBT42a~42cの温度が過度に高くなることを抑制することができる。
【0193】
・IGBT42に流れる電流が閾値以上又はIGBT42の温度が温度閾値以上になると、制御回路33がIGBT42をオフ状態にしていたが、IGBT42をオフ状態にする方法を次の(A1)又は(A2)のように変更してもよい。
【0194】
(A1)IGBT42に流れる電流が閾値以上のときに電力用ワイヤ49aが断線するように、電力用ワイヤ49aのそれぞれの本数及びワイヤ径を設定する。一方、電力用ワイヤ49aは、半導体モジュール40の導通損失が過度に大きくならない範囲でそれぞれの本数及びワイヤ径を設定する。電力用ワイヤ49aは、駆動電流及び回生電流について定格電流以上かつ定格電流の2倍未満の場合に一定時間以上に亘り電流が流れても断線しないように本数及びワイヤ径を設定する。閾値は、定格電流の2倍以上かつ4倍以下であることが好ましい。定格電流の一例では、バッテリモジュール21が満充電であり、コンデンサ13の容量が0のときにバッテリモジュール21からコンデンサ13に流れる電流である。一例では、電力用ワイヤ49aは、閾値として、予め設定された定格電流の2倍の電流が一定時間に亘り流れたときに断線するように本数及びワイヤ径を設定する。また例えば、電力用ワイヤ49aは、閾値として定格電流の3倍の電流が一定時間に亘り流れたときに断線するように本数及びワイヤ径を設定してもよい。
【0195】
この構成によれば、バッテリモジュール21からインバータ回路12に向けて大電流が流れるときに半導体モジュール40にその大電流が流れる場合に電力用ワイヤ49aが断線することによりインバータ回路12への大電流の供給が遮断される。これにより、IGBT42がオフ状態となる。このように電力用ワイヤ49aがヒューズの機能を果たすため、ヒューズを省略することができる。
【0196】
なお、上記(A1)の変形例を、図34図35に示す半導体ユニット41の構成にも適用することができる。この場合、IGBT42に代えて、MOSFET140に流れる電流が閾値以上のときにMOSFET140に接続された電力用ワイヤが断線するように、電力用ワイヤの本数及びワイヤ径を設定する。電力用ワイヤの本数及びワイヤ径の設定は、上記(A1)の電力用ワイヤ49aの本数及びワイヤ径の設定と同様である。
【0197】
(A2)IGBT42のゲートに印加する電圧を、ゲートに電圧を印加した場合のコレクタ電流Icが所定の電流で飽和するときの電圧以下となるように設定する。すなわち、制御回路33は、IGBT42のエミッタとゲートとの間の電圧を、IGBT42に流れる電流が所定の電流で飽和する電圧以下となるように制御する。コレクタ電流Icが所定の電流で飽和するようなIGBT42のゲートに印加する電圧の一例は、10Vである。
【0198】
この構成によれば、バッテリモジュール21からインバータ回路12に向けて大電流が流れたとしても半導体モジュール40からインバータ回路12へは、上記のように設定したIGBT42のゲートに印加する電圧に応じた電流までしか流れない。このため、インバータ回路12に大電流が流れてインバータ回路12が故障することを抑制できるため、ヒューズを省略することができる。
【0199】
なお、上記(A2)の変形例を、図34図35に示す半導体ユニット41の構成にも適用することができる。この場合、IGBT42に代えて、MOSFET140のゲートに印加する電圧を、ゲートに電圧を印加した場合のドレイン電流が所定の電流で飽和するときの電圧以下となるように設定する。
【0200】
・上記(A1)及び(A2)の変形例において、IGBT42の個数(各MOSFET140の個数)は任意に変更可能である。一例では、半導体モジュール40は、複数のIGBT(複数のMOSFET)を備える。
【0201】
・各実施形態において、プリチャージ制御を以下の(B1)~(B6)のように変更することもできる。また、(B1)~(B6)は、技術的な矛盾がない限り、互いに組み合せることもできる。
【0202】
(B1)制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc以上の場合のIGBT42が間欠動作するときの周波数を、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc未満の場合のIGBT42が間欠動作するときの周波数よりも高くする。ここで、閾値Xcは、バッテリモジュール21とコンデンサ13との電位差に起因した大電流が流れないと判定できる値であり、試験等により予め設定される。制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42が間欠動作するときの周波数との関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、コンデンサ13の端子間電圧からIGBT42が間欠動作するときの周波数を設定する。図44(a)は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42が間欠動作するときの周波数との関係を示す情報の第1の例であるマップである。図44(a)に示すように、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc未満の領域では、IGBT42が間欠動作するときの周波数が第1周波数f1に設定され、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc以上の領域では、IGBT42が間欠動作するときの周波数が第1周波数f1よりも高い第2周波数f2に設定される。図44(b)は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42が間欠動作するときの周波数との関係を示す情報の第2の例であるマップである。図44(b)に示すように、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc未満の領域では、IGBT42が間欠動作するときの周波数が第1周波数f1に設定されている。コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc以上かつ閾値Xcよりも大きい上限値Xd以下の領域では、コンデンサ13の端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42が間欠動作するときの周波数が高くなる。コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xd以上の領域では、IGBT42が間欠動作するときの周波数が第2周波数f2に設定される。なお、閾値Xdは、閾値Xcよりも大きくかつコンデンサ13が満充電のときの端子間電圧以下の範囲で任意に変更可能である。
【0203】
図44(a)のマップを用いる構成によれば、第2周波数f2でIGBT42を間欠動作することによりコンデンサ13の充電速度が速くなる。また図44(b)のマップを用いる構成によれば、閾値Xc以上においてIGBT42を間欠動作が速くなることによりコンデンサ13の充電速度が速くなる。したがって、プリチャージ制御において第1周波数f1を常に維持してコンデンサ13を充電する場合と比較して、コンデンサ13を速やかに満充電にすることができる。
【0204】
(B2)制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42が間欠動作するときの周波数を高くする。制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42が間欠動作するときの周波数との関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、コンデンサ13の端子間電圧からIGBT42が間欠動作するときの周波数を設定する。図45は、(B2)におけるコンデンサ13の端子間電圧とIGBT42が間欠動作するときの周波数との関係を示す情報であるマップである。第1の例では、図45の実線で示すように、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42が間欠動作するときの周波数との関係が1次関数で示される。第2の例では、図45の一点鎖線で示すように、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42が間欠動作するときの周波数との関係が2次関数で示される。第2の例では、コンデンサ13の端子間電圧が低い領域では、IGBT42が間欠動作するときの周波数が概ね第1周波数f1であり、コンデンサ13の端子間電圧が高い領域では、端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42が間欠動作するときの周波数が急激に高くなる。
【0205】
この構成によれば、コンデンサ13の端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42を間欠動作が速くなることによりコンデンサ13の充電速度が速くなる。したがって、プリチャージ制御において第1周波数f1を常に維持してコンデンサ13を充電する場合と比較して、コンデンサ13を速やかに満充電にすることができる。
【0206】
(B3)制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc以上の場合のIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeを、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc未満の場合のIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeよりも高くする。制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeとの関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、コンデンサ13の端子間電圧からIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeを設定する。図46(a)は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeとの関係を示す情報の第1の例であるマップである。図46(a)に示すように、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc未満の領域では、IGBT42のゲートに印加される電圧Vgeが第1電圧Vge1に設定される。一方、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc以上の領域では、IGBT42のゲートに印加される電圧Vgeが第1電圧Vge1よりも高い第2電圧Vge2に設定される。図46(b)は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeとの関係を示す情報の第2の例であるマップである。図46(b)に示すように、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc未満の領域では、IGBT42のゲートに印加される電圧Vgeが第1電圧Vge1に設定されている。コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc以上かつ上限値Xd以下の領域では、コンデンサ13の端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42のゲートに印加する電圧Vgeが高くなる。コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xd以上の領域では、IGBT42のゲートに印加される電圧Vgeが第2電圧Vge2に設定される。
【0207】
図46(a)のマップを用いる構成によれば、IGBT42のゲートに第2電圧Vge2を印加することによりIGBT42に流れる電流が大きくなるため、コンデンサ13の充電速度が速くなる。また図46(b)のマップを用いる構成によれば、閾値Xc以上においてIGBT42に流れる電流が大きくなることによりコンデンサ13の充電速度が速くなる。したがって、プリチャージ制御においてIGBT42のゲートに印加する電圧を第1電圧Vge1に常に維持してコンデンサ13を充電する場合と比較して、コンデンサ13を速やかに満充電にすることができる。
【0208】
(B4)制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeを高くする。制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeとの関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、コンデンサ13の端子間電圧からIGBT42に印加される電圧Vgeを設定する。図47は、(B4)におけるコンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeとの関係を示す情報であるマップである。第1の例では、図47の実線で示すように、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeとの関係が1次関数で示される。第2の例では、図47の一点鎖線で示すように、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeとの関係が2次関数で示される。第2の例では、コンデンサ13の端子間電圧が低い領域では、IGBT42のゲートに印加される電圧Vgeが概ね第1電圧Vge1であり、コンデンサ13の端子間電圧が高い領域では、端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeが急激に高くなる。
【0209】
この構成によれば、コンデンサ13の端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42のゲートに印加する電圧を高くすることによりコンデンサ13の充電速度が速くなる。したがって、プリチャージ制御においてIGBT42のゲートに印加する電圧を第1電圧Vge1に常に維持してコンデンサ13を充電する場合と比較して、コンデンサ13を速やかに満充電にすることができる。
【0210】
(B5)制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc以上の場合のIGBT42のデューティ比を、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc未満の場合のIGBT42のデューティ比よりも高くする。制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のデューティ比との関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、コンデンサ13の端子間電圧からIGBT42のデューティ比を設定する。図48(a)は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のデューティ比との関係を示す情報の第1の例であるマップである。図48(a)に示すように、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc未満の領域では、IGBT42のデューティ比が第1デューティ比D1に設定され、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc以上の領域では、IGBT42のデューティ比が第1デューティ比D1よりも高い第2デューティ比D2に設定される。図48(b)は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のデューティ比との関係を示す情報の第2の例であるマップである。図48(b)に示すように、コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc未満の領域では、IGBT42のデューティ比が第1デューティ比D1に設定されている。コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xc以上かつ閾値Xcよりも大きい上限値Xd以下の領域では、コンデンサ13の端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42のデューティ比が高くなる。コンデンサ13の端子間電圧が閾値Xd以上の領域では、IGBT42のデューティ比が第2デューティ比D2に設定される。
【0211】
図48(a)のマップを用いる構成によれば、IGBT42のデューティ比を第2デューティ比D2に設定することによりIGBT42に流れる電流が大きくなるため、コンデンサ13の充電速度が速くなる。また図48(b)のマップを用いる構成によれば、閾値Xc以上においてIGBT42のデューティ比が大きくなることによりコンデンサ13の充電速度が速くなる。したがって、プリチャージ制御においてIGBT42のデューティ比を第1デューティ比D1に常に維持してコンデンサ13を充電する場合と比較して、コンデンサ13を速やかに満充電にすることができる。
【0212】
(B6)制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42のデューティ比を高くする。制御回路33は、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のデューティ比との関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、コンデンサ13の端子間電圧からIGBT42のデューティ比を設定する。図49は、(B6)におけるコンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のデューティ比との関係を示す情報であるマップである。第1の例では、図49の実線で示すように、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のデューティ比との関係が1次関数で示される。第2の例では、図49の一点鎖線で示すように、コンデンサ13の端子間電圧とIGBT42のデューティ比との関係が2次関数で示される。第2の例では、コンデンサ13の端子間電圧が低い領域では、IGBT42のデューティ比が概ね第1デューティ比D1であり、コンデンサ13の端子間電圧が高い領域では、端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42のデューティ比が急激に高くなる。
【0213】
この構成によれば、コンデンサ13の端子間電圧が高くなるにつれてIGBT42のデューティ比を大きくすることによりコンデンサ13の充電速度が速くなる。したがって、プリチャージ制御においてIGBT42のデューティ比を第1デューティ比D1に常に維持してコンデンサ13を充電する場合と比較して、コンデンサ13を速やかに満充電にすることができる。
【0214】
なお、上記(B1)~(B6)において、コンデンサ13の端子間電圧を監視して、IGBT42を制御したが、これに限られず、例えばIGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧に基づいて制御してもよい。この場合、上記(B1)~(B6)の制御を、以下の(C1)~(C6)のように変更することができる。上記(B1)~(B6)の制御を(C1)~(C6)のように変更しても(B1)~(B6)と同様の効果が得られる。
【0215】
(C1)制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧が閾値未満の場合のIGBT42が間欠動作するときの周波数を、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧が閾値以上の場合のIGBT42が間欠動作するときの周波数よりも高くする。制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧とIGBT42が間欠動作するときの周波数との関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧からIGBT42が間欠動作するときの周波数を設定する。
【0216】
(C2)制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧が低くなるにつれてIGBT42が間欠動作するときの周波数を高くする。制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧とIGBT42が間欠動作するときの周波数との関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧からIGBT42が間欠動作するときの周波数を設定する。
【0217】
(C3)制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧が閾値未満の場合のIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeを、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧が閾値以上の場合のIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeよりも高くする。制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧とIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeとの関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧からIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeを設定する。
【0218】
(C4)制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧が低くなるにつれてIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeを高くする。制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧とIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeとの関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧からIGBT42のゲートに印加される電圧Vgeを設定する。
【0219】
(C5)制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧が閾値未満の場合のIGBT42のデューティ比を、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧が閾値以上の場合のIGBT42のデューティ比よりも高くする。制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧とIGBT42のデューティ比との関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧からIGBT42のデューティ比を設定する。
【0220】
(C6)制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧が低くなるにつれてIGBT42のデューティ比を高くする。制御回路33は、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧とIGBT42のデューティ比との関係を示す情報であるマップ、関数等を用いて、IGBT42のコレクタ-エミッタ間電圧からIGBT42のデューティ比を設定する。
【0221】
・各実施形態において、リレーユニット30の構成を以下の(D1)及び(D2)のように変更することもできる。
(D1)図50に示すように、リレーユニット30から第2のリレー部32を省略する。すなわち低圧側ラインLLは、バッテリモジュール21の負極とインバータ回路12の下段側のスイッチング素子とを直接的に接続している。
【0222】
(D2)図51に示すように、第2のリレー部32は、機械接点式のリレーに代えて、IGBT及びMOSFET等のトランジスタを有する半導体装置を備えた半導体モジュール40を有する。この変形例のリレーユニット30は、バッテリモジュール21の正極とインバータ回路12との間に設けられた正極側半導体モジュールと、バッテリモジュール21の負極とインバータ回路12との間に設けられた負極側半導体モジュールとを備えるリレーユニットである。また、この変形例のリレーユニット30を、バッテリモジュール21の正極とインバータ回路12との間に設けられた正極側半導体装置と、バッテリモジュール21の負極とインバータ回路12との間に設けられた負極側半導体装置とを備えるリレーユニット、ということもできる。なお、第2のリレー部32の半導体モジュール40は、第1のリレー部31の半導体モジュール40と同じ構成であってもよいし、半導体モジュール40と異なる構成であってもよい。第2のリレー部32の半導体装置は、半導体装置40Aと同じ構成であってもよいし、半導体装置40Aとは異なる構成を用いてもよい。第2のリレー部32の半導体モジュールにおける半導体装置の個数は、第1のリレー部31の半導体モジュール40における半導体装置の個数と異なってもよい。
【0223】
・各実施形態では、半導体装置、半導体モジュール、及び半導体ユニットを、バッテリモジュール21とインバータ回路12との間に設けられるリレーユニット30に適用した構成について説明したが、半導体装置、半導体モジュール、及び半導体ユニットの適用箇所はこれに限られない。例えば、図52に示すように、車両1に搭載された複数のリレー部に対して、各実施形態の半導体装置、半導体モジュール、及び半導体ユニットを適用してもよい。
【0224】
詳述すると、図52に示す車両1は、外部の電源である急速充電用ステーションSQCからバッテリモジュール21を充電可能な構成である。また車両1は、通常充電用プラグ4と、通常充電用プラグ4に電気的に接続された直流交流変換装置5とを備える。例えば商用交流電源に通常充電用プラグ4が接続されることにより、通常充電用プラグ4に供給された交流電力が直流交流変換装置5によって直流電力に変換されてバッテリモジュール21に充電される。このような構成の車両1において、急速充電用ステーションSQCの充電用プラグ(図示略)の接続口160とバッテリモジュール21との間に設けられたリレー部161,162に、各実施形態の半導体装置、半導体モジュール、及び半導体ユニットを適用することもできる。また、直流交流変換装置5とバッテリモジュール21との間に設けられたリレー部163,164に、各実施形態の半導体装置、半導体モジュール、及び半導体ユニットを適用することもできる。また、バッテリモジュール21と、バッテリモジュール21から電力が供給される車載機器(例えばアクセサリー機器6)との間に設けられたリレー部165に、各実施形態の半導体装置、半導体モジュール、及び半導体ユニットを適用することもできる。なお、アクセサリー機器6の一例は、オーディオ機器やカーナビゲーション装置である。また、図52に示す変形例において、各リレー部161~164に各実施形態の半導体装置を適用することにより、各リレー部161~164を1パッケージ化することもできる。
【0225】
(付記)
次に、上記各実施形態及び変形例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(付記A1)バッテリ側の第1端子と、インバータ回路側の第2端子とを有し、トランジスタを含む半導体装置であって、当該半導体装置は、前記トランジスタの制御端子に印加する電圧を制御することにより前記第1端子から前記第2端子への電流の供給を許容し、かつ前記第2端子から前記第1端子への電流の供給を許容するように構成され、前記第1端子と前記第2端子との間の耐圧は、前記バッテリと前記インバータ回路との間の電圧以上である、半導体装置。
【0226】
(付記A2)前記トランジスタは、IGBTであり、前記IGBTに逆並列に接続されたダイオードを備え、前記IGBTのコレクタが前記第1端子となり、前記IGBTのエミッタが前記第2端子となる、付記A1に記載の半導体装置。
【0227】
(付記A3)前記IGBT及び前記ダイオードは、個別の半導体チップとして設けられている、付記A2に記載の半導体装置。
(付記A4)前記IGBTと前記ダイオードとは同一の半導体基板で形成されている、付記A2に記載の半導体装置。
【0228】
(付記A5)前前記IGBTと並列に接続されたMOSFETをさらに備え、前記MOSFETは、還流ダイオードとしてのボディダイオードを含む、付記A2~A4のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0229】
(付記A6)前記IGBT及び前記MOSFETは、同時にオンし、同時にオフする、付記A5に記載の半導体装置。
(付記A7)前記トランジスタは、IGBTであり、前記IGBTに並列に接続されたMOSFETを備え、前記MOSFETは、還流ダイオードとしてのボディダイオードを含む圧が前記閾値未満の場合に前記トランジスタが間欠動作するときの周波数よりも高くする、付記A1に記載の半導体装置。
【0230】
(付記A8)前記IGBT及び前記MOSFETは、同時にオンし、同時にオフする、付記A7に記載の半導体装置。
(付記A9)前記トランジスタは、MOSFETであり、前記MOSFETと逆並列に接続されたダイオードとを備える、付記A1に記載の半導体ユニット。
【0231】
(付記A10)前記MOSFET及び前記ダイオードは、個別の半導体チップとして設けられている、付記A9に記載の半導体ユニット。
(付記A11)前記MOSFETは、還流ダイオードとしてのボディダイオードを含む、付記A9又はA10に記載の半導体ユニット。
【0232】
(付記A12)前記トランジスタは、還流ダイオードとしてのボディダイオードを含むMOSFETである、付記A1に記載の半導体ユニット。
(付記A13)バッテリの正極と、前記バッテリと電気的に接続されるインバータ回路との間に設けられるIGBTと、前記IGBTに逆並列に接続されたRB-IGBTとを備える、半導体装置。
【0233】
(付記A14)前記IGBT及び前記RB-IGBTは、同時にオンし、同時にオフする、付記A13に記載の半導体ユニット。
(付記A15)複数の半導体装置が並列に接続されて構成される半導体モジュールであって、前記複数の半導体装置は、付記A1~A14のいずれか一つに記載の半導体装置である、半導体モジュール。
【0234】
(付記A16)付記A15に記載の半導体モジュールを備えるリレーユニット。
(付記A17)付記A1~A14のいずれか一つに記載の半導体装置を備えるリレーユニット。
【0235】
(付記A18)前記バッテリの負極と前記インバータ回路との間に設けられる機械式接点のリレーをさらに備える、付記A16又はA17に記載のリレーユニット。
(付記A19)前記バッテリの正極と前記インバータ回路との間に設けられる正極側半導体装置と、前記バッテリの負極と前記インバータ回路との間に設けられる負極側半導体装置と、を備え、前記正極側半導体装置は、付記A1~A14のいずれか一つに記載の半導体装置である、リレーユニット。
【0236】
(付記A20)前記バッテリの正極と前記インバータ回路との間に設けられる正極側半導体モジュールと、前記バッテリの負極と前記インバータ回路との間に設けられる負極側半導体モジュールと、を備え、前記正極側半導体モジュールは、付記A15に記載の半導体モジュールである、リレーユニット。
【0237】
(付記A21)前記バッテリと、付記A16~A20のいずれか一つに記載のリレーユニットと、を備えるバッテリユニット。
(付記A22)付記A21に記載のバッテリユニットと、前記インバータ回路と、前記インバータ回路によって駆動するモータと、を備える車両。
【0238】
(付記B1)バッテリの正極と、前記バッテリと電気的に接続されるインバータ回路との間に設けられるトランジスタを有する半導体装置と、前記トランジスタの制御端子に接続され、前記トランジスタを制御する制御部と、前記制御端子と前記制御部との間に設けられる抵抗部と、を備え、前記制御部は、前記トランジスタに流れる電流が閾値以上の場合に前記トランジスタをオフするように前記トランジスタを制御し、前記抵抗部の抵抗値は、100Ω以上である、半導体ユニット。
【0239】
(付記B2)前記トランジスタは、前記トランジスタに流れる電流に比例した電流が流れる電流センスを有する、付記B1に記載の半導体ユニット。
(付記B3)前記トランジスタは、感温ダイオードをさらに備える、付記B1又はB2に記載の半導体ユニット。
【0240】
(付記B4)前記制御部は、前記感温ダイオードから前記トランジスタの温度を検出する温度検出回路をさらに備え、前記制御部は、前記温度検出回路によって検出される温度が温度閾値以上となる場合、前記トランジスタの前記制御端子に電流低下信号を供給する、付記B3に記載の半導体ユニット。
【0241】
(付記B5)前記トランジスタは、半導体チップとして設けられ、前記感温ダイオードは、前記半導体チップの中央に位置している、付記B3又はB4に記載の半導体ユニット。
【0242】
(付記B6)前記トランジスタは、IGBTであり、前記半導体チップの表面には、エミッタ電極パッドが設けられ、前記半導体チップの裏面には、コレクタ電極が設けられ、前記エミッタ電極パッドは、前記半導体チップの表面の中央で2つに分離され、前記感温ダイオードは、前記2つのエミッタ電極パッドの間に配置されている、付記B5に記載の半導体ユニット。
【0243】
(付記B7)前記トランジスタは、前記トランジスタに流れる電流に比例した電流が流れる電流センスを有し、前記半導体チップの表面には、ゲート電極パッド、前記電流センスに電気的に接続された電流センスパッド、前記感温ダイオードのアノードに電気的に接続されたアノード電極パッド、及び前記感温ダイオードのカソードに電気的に接続されたカソード電極パッドが設けられ、前記2つのエミッタ電極パッドは、前記トランジスタの平面視において前記2つのエミッタ電極パッドの配列方向と直交する方向に切り欠かれる切欠部を有し、前記切欠部によって前記配列方向と直交する方向に凹む領域が形成され、前記領域において、前記ゲート電極パッド、前記電流センスパッド、前記アノード電極パッド、及び前記カソード電極パッドが前記配列方向に平行する方向に沿って配置されている、付記B6に記載の半導体ユニット。
【0244】
(付記B8)前記半導体ユニットは、複数の前記半導体装置を備え、前記複数の半導体装置のトランジスタは、互いに並列に接続されている、付記B1~B7のいずれか一つに記載の半導体ユニット。
【0245】
(付記B9)前記複数の半導体装置のトランジスタはそれぞれ、感温ダイオードを備える、付記B8に記載の半導体ユニット。
(付記B10)前記制御部は、複数の温度検出回路を備え、前記複数の温度検出回路は、前記複数の半導体装置の感温ダイオードのそれぞれから前記複数の半導体装置のトランジスタの温度を検出し、前記制御部は、前記複数の温度検出回路によって検出される温度の少なくとも1つが温度閾値以上となる場合、前記複数の半導体装置のトランジスタの前記制御端子のそれぞれに電流低下信号を供給する、付記B9に記載の半導体ユニット。
【0246】
(付記B11)前記バッテリと、付記B1~B10のいずれか一つに記載の半導体ユニットと、を備えるバッテリユニット。
(付記B12)付記B11に記載のバッテリユニットと、前記インバータ回路と、前記インバータ回路によって駆動するモータと、を備える車両。
【0247】
(付記C1)バッテリの正極と、前記バッテリと電気的に接続されるインバータ回路との間に設けられるトランジスタを有する半導体装置と、前記トランジスタの制御端子に接続され、前記トランジスタを制御する制御部と、を備え、前記トランジスタはIGBT又はMOSFETであり、前記制御部は、前記トランジスタのエミッタ又はソースとゲートとの間の電圧を、前記トランジスタに流れる電流が飽和電流以下となるように制御する、半導体ユニット。
【0248】
(付記C2)前記半導体ユニットは、複数の前記半導体装置を備え、前記複数の半導体装置のトランジスタは、互いに並列に接続されている、付記C1に記載の半導体ユニット。
【0249】
(付記C3)前記制御部は、前記複数の半導体装置のトランジスタのそれぞれのエミッタ又はソースとゲートとの間の電圧を、前記複数のトランジスタのそれぞれに流れる電流が前記飽和電流以下となるように制御する、付記C2に記載の半導体ユニット。
【0250】
(付記C4)前記バッテリと、付記C1~C3のいずれか一つに記載の半導体ユニットと、を備えるバッテリユニット。
(付記C5)付記C4に記載のバッテリユニットと、前記インバータ回路と、前記インバータ回路によって駆動するモータと、を備える車両。
【0251】
(付記D1)バッテリの正極と、前記バッテリと電気的に接続されるインバータ回路との間に設けられるトランジスタと、前記トランジスタに接続される少なくとも1つのボンディングワイヤと、を備え、前記トランジスタに流れる電流が閾値以上の場合に前記ボンディングワイヤが断線するように、前記ボンディングワイヤの本数及び前記ボンディングワイヤの径が設定されている、半導体装置。
【0252】
(付記D2)前記閾値は、前記トランジスタの定格電流の2倍以上かつ4倍以下である、付記D1に記載の半導体装置。
(付記D3)付記D1又はD2に記載の半導体装置と、前記半導体装置を制御する制御部と、を備える半導体ユニット。
【0253】
(付記D4)前記半導体ユニットは、複数の前記半導体装置を備え、前記複数の半導体装置のトランジスタは、互いに並列に接続されている、付記D3に記載の半導体ユニット。
【0254】
(付記D5)前記バッテリと、付記D3又はD4に記載の半導体ユニットと、を備えるバッテリユニット。
(付記D6)付記D5に記載のバッテリユニットと、前記インバータ回路と、前記インバータ回路によって駆動するモータと、を備える車両。
(付記E1)
モータと前記モータを制御するインバータ回路との間に設けられる半導体ユニットであって、
前記インバータ回路に電力を供給するバッテリの正極と前記インバータ回路との間に設けられ、前記バッテリから前記インバータ回路への電力の供給を制御するためのトランジスタと、
前記トランジスタの制御端子に接続され、前記制御端子に印加される電圧である制御電圧を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記バッテリから前記インバータ回路への電力供給開始時において、前記トランジスタを間欠動作させるように前記制御電圧を制御し、かつ、前記トランジスタの制御端子に印加される制御電圧を、前記トランジスタがフルオンするときの前記制御電圧よりも低くする
半導体ユニット。
(付記E2)
前記トランジスタが間欠動作するときの前記制御電圧は、前記トランジスタがフルオンするときの前記制御電圧の約半分である
付記E1に記載の半導体ユニット。
(付記E3)
前記トランジスタが間欠動作するときの周波数は、1000Hz以下である
付記E1又はE2に記載の半導体ユニット。
(付記E4)
前記トランジスタが間欠動作するときの周波数は、200Hzである
付記E3に記載の半導体ユニット。
(付記E5)
前記トランジスタが間欠動作するときのデューティ比は、50%未満である
付記E1~E4のいずれか1つに記載の半導体ユニット。
(付記E6)
前記トランジスタが間欠動作するときのデューティ比は、5%である
付記E5に記載の半導体ユニット。
(付記E7)
前記バッテリと前記インバータ回路との間には、前記インバータ回路と並列に接続されるコンデンサが設けられ、
前記制御部は、前記コンデンサの端子間電圧が閾値以上の場合に前記トランジスタが間欠動作するときの周波数を、前記コンデンサの端子間電圧が前記閾値未満の場合に前記トランジスタが間欠動作するときの周波数よりも高くする
付記E1~E6のいずれか1つに記載の半導体ユニット。
(付記E8)
前記制御部は、前記コンデンサの端子間電圧が高くなるにつれて前記トランジスタが間欠動作するときの周波数を高くする
付記E7に記載の半導体ユニット。
(付記E9)
前記バッテリと前記インバータ回路との間には、前記インバータ回路と並列に接続されるコンデンサが設けられ、
前記制御部は、前記コンデンサの端子間電圧が閾値以上の場合の前記トランジスタの前記制御電圧を、前記コンデンサの端子間電圧が前記閾値未満の場合の前記トランジスタの前記制御電圧よりも高くする
付記E1~E8のいずれか1つに記載の半導体ユニット。
(付記E10)
前記制御部は、前記コンデンサの端子間電圧が高くなるにつれて前記トランジスタの前記制御電圧を高くする
付記E9に記載の半導体ユニット。
(付記E11)
前記バッテリと前記インバータ回路との間には、前記インバータ回路と並列に接続されるコンデンサが設けられ、
前記制御部は、前記コンデンサが満充電になった場合における前記制御電圧を、前記トランジスタがフルオンするときの前記制御電圧と等しくする
付記E1~E10のいずれか1つに記載の半導体ユニット。
(付記E12)
前記トランジスタを複数備え、
前記複数のトランジスタは、互いに並列に接続されている
付記E1~E11のいずれか1つに記載の半導体ユニット。
(付記E13)
前記制御部は、前記複数のトランジスタを個別に制御する
付記E12に記載の半導体ユニット。
(付記E14)
前記制御部は、前記複数のトランジスタの制御電圧の印加タイミングを互いに異ならせる
付記E13に記載の半導体ユニット。
(付記E15)
前記バッテリと、
付記E1~E14のいずれか1つに記載の半導体ユニットと、
を備えるバッテリユニット。
(付記E16)
付記E15に記載のバッテリユニットと、
前記インバータ回路と、
前記インバータ回路と並列に接続されたコンデンサと、
前記モータと、
を備える車両。
【符号の説明】
【0255】
1 車両11 モータ12 インバータ回路13 コンデンサ20 バッテリユニット21 バッテリモジュール(バッテリ)30 リレーユニット32 第2のリレー部(機械接点式のリレー)33 制御回路(制御部)34 ゲート制御回路36 電流制限抵抗37 温度検出回路40 半導体モジュール40A 第1半導体装置(半導体装置)40B 第2半導体装置(半導体装置)40C 第3半導体装置(半導体装置)41 半導体ユニット42,42rb,42a,42b,42c IGBT43,43a,43b,43c ダイオード49a 電力用ワイヤ50,110 半導体基板64 コレクタ電極66 エミッタ電極パッド67 ゲート電極パッド76a アノード電極パッド80 感温ダイオード81 電流センス91A,91B エミッタ電極パッド92 ゲート電極パッド93 アノード電極パッド94 カソード電極パッド95 電流センスパッド97 切欠部101 アノード電極パッド102 電流センスパッド140 MOSFET140a ボディダイオードX 第1方向(配列方向)Y 第2方向(配列方向と直交する方向)
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図27
図28
図29
図30
図31A
図31B
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53