(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/245 20060101AFI20240402BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240402BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20240402BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240402BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240402BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240402BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240402BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240402BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240402BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240402BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240402BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240402BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240402BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240402BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20240402BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240402BHJP
【FI】
A61K31/245
A61K8/34
A61K8/42
A61K8/41
A61K8/06
A61Q19/00
A61P17/16
A61P29/00
A61K9/107
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/06
A61K47/34
A61K47/44
A61K31/05
A61K47/18
(21)【出願番号】P 2019112050
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直子
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100239(JP,A)
【文献】特開2012-136491(JP,A)
【文献】特開2018-197203(JP,A)
【文献】特開2001-097859(JP,A)
【文献】特開2019-156772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/327
A61K31/33-31/80
A61K33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウフェナマート、(B)イソプロピルメチルフェノール
、(C)リドカイン及び/又はその塩
、並びにノニオン性界面活性剤を含有する、乳化組成物(但し、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩を含むものを除く)。
【請求項2】
前記(C)成分を総量で0.1~5重量%含む、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記(A)成分1重量部当たり、前記(C)成分が総量で0.005~5重量部の比率で含まれる、請求項1又は2に記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記(B)成分1重量部当たり、前記(C)成分が総量で0.03~500重量部の比率で含まれる、請求項1~3のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項5】
高級アルコール、エステル油、液状炭化水素油、及びシリコーン油からなる群より選択される油分を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項6】
前記ノニオン性界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルからなる群より選択され
る、請求項1~5のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項7】
(A)ウフェナマート
、(B)イソプロピルメチルフェノール
及びノニオン性界面活性剤を含む乳化組成物(但し、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩を含むものを除く)中に、前記(A)成分
、前記(B)成分
及びノニオン性界面活性剤と共に、(C)リドカイン及び/又はその塩を配合する、乳化安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含有する乳化組成物でありながら、性状の安定性に優れた乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化組成物は、水性成分と油性成分を配合でき、様々な製剤処方に対応できると共に、皮膚に適用した際の使用感も優れている。このため、乳化組成物は、外用医薬品や化粧料の分野において汎用されている。
【0003】
ウフェナマートは、非ステロイド系抗炎症剤として、医薬品又は医薬部外品の皮膚外用剤に配合して用いられている。ウフェナマートは水難溶性成分であり、乳化組成物として製剤化することができる。例えば、特許文献1には、ウフェナマート等の非ステロイド系抗炎症剤と、特定のアミド誘導体とを含み、乳化型の剤型とすることができる皮膚外用剤が、薬効の持続性に優れるだけでなく、肌自身にうるおいを与え、皮膚刺激性が低く、肌荒れ改善効果に優れ、しかも使用感が良好であることが記載されている。
【0004】
また、イソプロピルメチルフェノールは、広範な殺菌力と高い安全性を有し、抗菌剤として洗浄料及び皮膚外用剤に配合して用いられている。イソプロピルメチルフェノールも水難溶性成分であり、乳化組成物として製剤化することができる。例えば、特許文献2には、ポリエーテル変性シリコーンと、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーと、パルミチン酸2-エチルヘキシルと、制汗剤と、殺菌剤と、水とを含む乳化デオドラント組成物において、殺菌剤としてイソプロピルメチルフェノールが配合され、当該組成物が、塗布後に殺菌剤の塗布対象物への残存性を飛躍的に高めることが記載されている。
【0005】
一方、リドカインは、局所麻酔剤又は解熱消炎剤として、医薬品又は医薬部外品の皮膚外用剤に配合して用いられている。例えば、特許文献3には、トラネキサム酸またはその塩、および局所麻酔剤を含有する抗炎症用医薬組成物が記載されており、局所麻酔剤としてリドカインが用いられることが記載されている。特許文献4には、メントールと媒体成分と経皮吸収性薬効成分とを含む清涼感付与外用組成物であって、が記載されており、経皮吸収性薬効成分としてリドカイン等の解熱消炎剤が用いられることが記載されている。特許文献5には、所定量の抗ヒスタミン薬の塩酸塩及び局所麻酔薬の塩酸塩の少なくともいずれか、所定量のエタノール、所定量のホウ砂及び/又はホウ酸、並びに有機酸及び/又は有機塩基を含有する外用組成物が記載されており、局所麻酔薬の塩酸塩としてリドカイン塩酸塩が用いられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-302198号公報
【文献】国際公開第2016/052277号
【文献】特開2007-277222号公報
【文献】特開2014-152172号公報
【文献】特開2017-190314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載の乳化組成物は、薬効、刺激性、使用感等については検討されているものの、性状安定性については検討されていない。本発明者は、乳化組成物に、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールの両方を配合する処方に着眼し、これらの成分を含む乳化組成物を調製したが、保存後において乳化組成物から分離する等、性状が不安定となる課題に直面した。
【0008】
そこで、本発明は、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含む乳化組成物であって、優れた乳化安定性を備える乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含む乳化組成物について鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、これまで乳化安定化効果が知られていなかったリドカイン及び/又はその塩を配合することで、優れた乳化安定性が備わることを見出した。本発明は、この知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ウフェナマート、(B)イソプロピルメチルフェノール、並びに(C)リドカイン及び/又はその塩を含有する、乳化組成物。
項2. 前記(C)成分を総量で0.1~5重量%含む、項1に記載の乳化組成物。
項3. 前記(A)成分1重量部当たり、前記(C)成分が総量で0.005~5重量部の比率で含まれる、項1又は2に記載の乳化組成物。
項4. 前記(B)成分1重量部当たり、前記(C)成分が総量で0.03~500重量部の比率で含まれる、項1~3のいずれかに記載の乳化組成物。
項5. 高級アルコール、エステル油、液状炭化水素油、及びシリコーン油からなる群より選択される油分を含有する、項1~4のいずれかに記載の乳化組成物。
項6. グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルからなる群より選択されるノニオン性界面活性剤を含有する、項1~5のいずれかに記載の乳化組成物。
項7. (A)ウフェナマート及び(B)イソプロピルメチルフェノールを含む乳化組成物中に、前記(A)成分及び前記(B)成分と共に、(C)リドカイン及び/又はその塩を配合する、乳化安定化方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含む乳化組成物に、優れた乳化安定性を備えさせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.乳化組成物
本発明の乳化組成物は、(A)ウフェナマート(以下、「(A)成分」とも記載する)、(B)イソプロピルメチルフェノール(以下、「(B)成分」とも記載する)、並びに(C)リドカイン及び/又はその塩(以下、「(C)成分」とも記載する)を含有することを特徴とする。以下、本発明の乳化組成物について詳述する。
【0013】
(A)ウフェナマート
本発明の乳化組成物は、(A)成分としてウフェナマートを含有する。ウフェナマートは、フルフェナム酸ブチルとも称され、水難溶性の非ステロイド性抗炎症薬として公知の成分である。
【0014】
本発明の乳化組成物において、(A)成分の含有量については、付与すべき薬効等に応じて適宜設定されるが、例えば1~20重量%、好ましくは2~10重量%、更に好ましくは3~7重量%が挙げられる。
【0015】
(B)イソプロピルメチルフェノール
本発明の乳化組成物は、(B)成分としてイソプロピルメチルフェノールを含有する。イソプロピルメチルフェノールは、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、又はシメン-5-オールとも称され、水難溶性の殺菌剤として公知の成分である。
【0016】
本発明の乳化組成物における(B)成分の配合量は特に限定されず、付与すべき薬効に応じて適宜決定することができるが、例えば0.01~3重量%、好ましくは0.02~2.0重量%、より好ましくは0.02~1.5重量%、さらに好ましくは0.01~1重量%、一層好ましくは0.05~0.5重量%、特に好ましくは0.07~0.3重量%が挙げられる。
【0017】
(C)リドカイン及び/又はその塩
本発明の乳化組成物は、(C)成分としてリドカイン及び/又はその塩を含有する。リドカインは、2-(ジエチルアミノ)-N-(2,6-ジメチルフェニル)アセタミドとも称され、局所麻酔効果を有することが知られている公知の薬剤である。(A)成分及び(B)成分を含む乳化組成物は乳化安定性が悪いが、本発明の乳化組成物では、(C)成分を配合することによって、優れた乳化安定性が奏される。
【0018】
リドカインの塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、塩酸塩等の無機酸塩が挙げられる。
【0019】
本発明の乳化組成物において、リドカイン及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。リドカイン及びその塩の中でも、好ましくはリドカイン及び塩酸リドカイン(キシロカイン)が挙げられ、さらに好ましくはリドカインが挙げられる。
【0020】
本発明の乳化組成物における(C)成分の含有量については特に限定されないが、リドカイン及びその塩の総量で、例えば0.1~5重量%が挙げられる。より一層優れた乳化安定性を得る観点から、(C)成分の含有量は、好ましくは0.2~5.0重量%、より好ましくは0.5~5.0重量%、0.5~4.0重量%、又は0.5~3.0重量%が挙げられる。
【0021】
また、本発明の乳化組成物は乳化安定性に優れているため、(C)成分が本来の局所麻酔剤又は解熱消炎剤としての有効量より少ない場合であっても、効果的に乳化安定化効果を得ることができる。このような観点から、本発明の乳化組成物における(C)成分の含有量は、リドカイン及びその塩の総量で、例えば0.1~0.4重量%、0.1~0.3重量%、0.1~0.2重量%、又は0.2~0.3重量%であってもよい。
【0022】
本発明の乳化組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、(A)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、より一層優れた乳化安定性を得る観点から、例えば、(A)成分の1重量部当たりの(C)成分の含有量として、リドカイン及びその塩の総量で、0.005~5重量部、好ましくは0.02~2重量部、より好ましくは0.1~0.7重量部、0.1~0.6重量部、又は0.1~0.5重量部が挙げられる。
【0023】
本発明の乳化組成物において、(B)成分に対する(C)成分の比率については、(B)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、より一層優れた乳化安定性を得る観点から、例えば、(B)成分の1重量部当たりの(C)成分の含有量として、リドカイン及びその塩の総量で、0.03~500重量部、好ましくは0.1~200重量部、より好ましくは2~50重量部、更に好ましくは5~30重量部、又は5~25重量部が挙げられる。
【0024】
本発明の乳化組成物において、(A)成分及び(B)成分の総和に対する(C)成分の比率については、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の上記各含有量に応じて定まるが、より一層優れた乳化安定性を得る観点から、例えば、(A)成分及び(B)成分の総和1重量部当たりの(C)成分の含有量として、例えばリドカイン及びその塩の総量で、0.004~5重量部、好ましくは0.01~2重量部、より好ましくは0.04~0.7重量部、更に好ましくは0.09~0.6重量部、又は0.09~0.5重量部が挙げられる。
【0025】
油分
本発明の乳化組成物は、油相の基剤成分として油分を含む。油分としては薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、液状油、固形油、高級アルコール等が挙げられる。これらの油分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本発明の乳化組成物における油分の含有量については、乳化組成物の乳化タイプ、形態、用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、5~60重量%、好ましくは7~30重量%、より好ましくは10~15重量%が挙げられる。
【0027】
(液状油)
液状油とは、25℃において液状の形態を保つ油である。本発明で使用される液状油としては、化粧料や外用医薬品等に通常用いられるものであればよく、例えば、;オレイン酸、インステアリン酸等の脂肪酸;エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ2-エチルへキサン酸グリセリル、オレイン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジバラメトキシケイヒ酸-モノエチルへキサン酸グリセリル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のシリコーン油;流動パラフィン、スクワレン、スクワラン等の液状炭化水素油等が挙げられる。
【0028】
これらの液状油の中でも、より優れた乳化安定性を観点から、好ましくは、エステル油、シリコーン油、液状炭化水素油が挙げられ
、より好ましくはミリスチン酸イソプロピル、ジメチルポリシロキサン、流動パラフィンが挙げられる。
【0029】
これらの液状油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明の乳化安定化剤に液状油を含有させる場合、その含有量については、特に制限されず、乳化組成物の乳化タイプ、形態、用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01~30重量%、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは1~15重量%、さらに好ましくは5~10重量%が挙げられる。
【0031】
また、本発明の乳化安定化剤にエステル油を含有させる場合、その含有量としては、より優れた乳化安定性を得る観点から、0.2~3.5重量%、好ましくは0.3~2重量%、さらに好ましくは0.5~1重量%が挙げられる。
【0032】
また、本発明の乳化安定化剤にシリコーン油を含有させる場合、その含有量としては、より優れた乳化安定性を得る観点から、0.3~2重量%、好ましくは0.5~1.5重量%、より好ましくは0.7~1重量%が挙げられる。
【0033】
(固形油)
固形油とは、25℃において固形の形態を保つ油である。本発明で使用される固形油としては、通常化粧料や外用医薬品等に用いられるものであればよく、例えば、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ミツロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ラノリン、セラックロウ、オゾケライト、セレシン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸イヌリン、水素添加ホホバ油、セレシンワックス、固形パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、シリコーンワックス等の固形油が挙げられる。
【0034】
これらの固形油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明の乳化組成物に固形油を含有させる場合、その含有量については、特に制限されず、乳化組成物の乳化タイプ、形態、用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~50重量%、好ましくは1~30重量%、更に好ましくは5~15重量%が挙げられる。
【0036】
(高級アルコール)
高級アルコールとは、1分子中の炭素原子数が6個以上の1価アルコールである。本発明で使用される高級アルコールにおける1分子中の炭素原子数について、6以上であればよいが、好ましくは6~34、更に好ましくは14~22が挙げられる。
【0037】
本発明で使用される高級アルコールとしては、通常化粧料や外用医薬品等に用いられるものであればよく、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0038】
これらの高級アルコールの中でも、より優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは、セチルアルコール(セタノール)、ラノリンアルコールが挙げられる。
【0039】
これらの高級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
本発明の乳化組成物に高級アルコールを含有させる場合、その含有量については、特に制限されず、乳化組成物の乳化タイプ、形態、用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~50重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~15重量%、更に好ましくは3~10重量%が挙げられる。
【0041】
また、本発明の乳化組成物において、液状油と高級アルコールを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、液状油100重量部当たりの高級アルコールの含有量として、1~200重量部、好ましくは10~150重量部、より好ましくは20~100重量部、更に好ましくは30~60重量部が挙げられる。
【0042】
水
本発明の乳化組成物は、乳化組成物の水相の基剤成分として水を含む。本発明の乳化組成物における水の含有量について、乳化組成物の乳化タイプ、形態、用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、30~95重量%、好ましくは30~90重量%、より好ましくは30~80重量%、更に好ましくは30~75重量%が挙げられる。
【0043】
また、本発明の乳化組成物は保存後の分離を抑制する優れた乳化安定性を備えているため、本来的に水相分離がより一層生じやすい、水を多く含む場合であっても、優れた乳化安定性を得ることが可能になる。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の乳化組成物の好適な態様として、水の含有量が比較的多い乳化組成物が挙げられる。より具体的には、本発明の乳化組成物における水の含有量の好適な例として、50~90重量%、好ましくは60~80重量%、更に好ましくは65~75重量%が挙げられる。
【0044】
界面活性剤
界面活性剤としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤の中でも、より優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくはノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0045】
ノニオン性界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル(ステアリン酸グリセリン)、α,α’-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);グリセリンアルキルエーテル;ステアレス-2;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレエート等);ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビットモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビットモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビットペンタオレエート、ポリオキシエチレンソルビットモノステアレート等);ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリンモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセリントリイソステアレート等);ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノステアレート(ステアリン酸ポリオキシル)、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンモノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);ポリオキシエチレンアルキルエーテル類(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン2-オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル等);プルロニック型類(例えば、プルロニック等);ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類(例えば、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン-セチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン-2-デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン水添ラノリン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリセリンエーテル等);ステアレス-21等が挙げられる。
【0046】
これらのノニオン性界面活性剤の中でも、より優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリンポリグリセリン脂肪酸類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類が挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリル(ステアリン酸グリセリン)、ポリオキシエチレンモノステアレート(ステアリン酸ポリオキシル)が挙げられる。
【0047】
これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
本発明の乳化組成物において、界面活性剤の含有量については、使用する界面活性剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.5~7重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは2~5重量%、更に好ましくは3~5重量%が挙げられる。
【0049】
その他の成分
本発明の乳化組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、多価アルコール、増粘剤、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、キレート剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、着色料等が挙げられる。
【0050】
多価アルコールとしては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール(BG)、エチレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコール、マクロゴール4000、マクロゴール6000等のポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの多価アルコールの中でも、より優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは2価アルコール、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは1,3-ブチレングリコール(BG)、グリセリンが挙げられる。本発明の乳化組成物において、多価アルコールを含有させる場合、その含有量については、使用する多価アルコールの種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば1~20重量%、好ましくは5~15重量%、より好ましくは7~13重量%が挙げられる。また、本発明の乳化組成物において、グリセリンを含有させる場合、その含有量は、より優れた乳化安定性を得る観点から、例えば0.5~10重量%、好ましくは1~7重量%、より好ましくは1~5重量%が挙げられる。
【0051】
増粘剤は、本発明の乳化安定化剤による乳化安定化効果をより一層向上させるという観点から配合することが好ましい。増粘剤としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン等が挙げられ、好ましくは、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムが挙げられる。本発明の乳化安定化剤が配合される乳化組成物において、増粘剤を含有させる場合、その含有量については、使用する増粘剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、より優れた乳化安定性を得る観点から、例えば0.1~2重量%、好ましくは0.1~1.8重量%、より好ましくは0.2~1.5重量%、更に好ましくは0.4~1重量%、一層好ましくは0.5~0.8重量%が挙げられる。
【0052】
更に、本発明の乳化組成物は、前述する成分の他に、薬学的又は香粧学的な生理機能を発揮できる薬効成分が、必要に応じて含まれていてもよい。このような薬効成分としては、例えば、ステロイド剤(デキサメタゾン、塩酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、塩酸ヒドロコルチゾン、吉草酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、ブピバカイン、メピバカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩)、安息香酸アルキルエステル(例えばアミノ安息香酸エチル、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル)、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等)、抗炎症剤(アラントイン、サリチル酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム等)、殺菌剤(塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アンモニア水、スルファジアジン、乳酸、フェノール等)、鎮痒剤(クロタミトン、チアントール等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)、血行促進成分(ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等)、ビタミン類(ビタミンA,B,C,D,E等)、ムコ多糖類(コンドロイチン硫酸ナトリウム、グルコサミン、ヒアルロン酸等)等が挙げられる。これらの薬効成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の乳化安定化剤が配合される乳化組成物において、これらの薬効成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬効成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0053】
製剤形態・用途
本発明の乳化タイプは、油中水型又は水中油型のいずれであってもよい。本発明の乳化組成物は、保存後の分離を抑制する優れた乳化安定性を奏するため、本来的に水相分離がより一層生じやすい、水中油型のような水を多く含むものであっても、優れた乳化安定性を備えさせることが可能になる。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の乳化組成物の好ましい乳化タイプは、水の含有量が比較的多い水中油型である。
【0054】
本発明の乳化組成物は、化粧料、外用医薬部外品、外用医薬品等の外用剤として使用することができる。本発明の乳化組成物の製品形態については、特に制限されないが、例えば、クリーム剤、軟膏剤、乳液剤、ゲル剤、油剤、ローション剤、リニメント剤、エアゾール剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、クリーム剤、軟膏剤、乳液剤、ローション剤が挙げられ、より好ましくは、クリーム剤、乳液剤、ローション剤が挙げられる。
【0055】
製造方法
本発明の乳化組成物は、乳化タイプに応じて、公知の乳化製剤の製剤化手法に従って製造することができる。例えば、本発明の乳化組成物の製造方法としては、含有させる成分を水溶性成分と油性成分に分けて、水溶性成分を含む水相と、油性成分を含む油相とを調製し、これらを公知の手法に従って乳化させる方法が挙げられる。
【0056】
2.乳化安定化方法
上述するように、リドカイン及び/又はその塩は、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含む乳化組成物において優れた乳化安定性を発現させる。従って、本発明は、更に、(A)ウフェナマート及び(B)イソプロピルメチルフェノールを含む乳化組成物中に、前記(A)成分及び前記(B)成分と共に、(C)リドカイン及び/又はその塩を配合する、乳化安定化方法を提供する。
【0057】
本発明の乳化安定化方法において、乳化安定化とは、保存後において乳化組成物の分離を抑制することをいう。分離とは、乳化組成物から、水相及び/又は油相が分離することをいう。乳化安定化のより好ましい態様としては、保存後において乳化組成物からの水相の分離を抑制することが挙げられ、より好ましい態様としては、保存後において乳化組成物の乳化状態が均一であること、つまりエマルジョン中の液滴が分散媒中に均一に分散した状態が保たれることが挙げられる。
【0058】
本発明の乳化安定化方法において、使用する各成分の種類や含有量、乳化組成物に配合される成分の種類や含有量、及び製剤形態等については、前記「1.乳化組成物」の場合と同様である。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
試験例
表1に示す乳化組成物を調製した。具体的には、表1に示す(I)の各成分を65~75℃で加熱混合し固形分を溶解させ、更に(A)~(C)成分を混合し溶解させて得た油相に、表1に示す(II)の各成分を65~75℃で加熱混合し固形分を溶解させて得た水相を加えて、ホモミキサーを用いて乳化し、35℃まで冷却撹拌することにより、クリーム状の水中油型乳化組成物を製造した。
【0061】
得られた各乳化組成物10gを、ガラス瓶(スクリュー管瓶No.4、容量13.5mL、マルエム社製、透明)に充填し、密封して、60℃で3週間保存した。保存後の各乳化組成物を目視にて観察し、以下の基準に基づいて乳化安定性を評価した。結果を表1に示す。
×:水相の分離が明確に認められる。
△:水相の分離がやや認められる。
○:クリーミング傾向があるが、分離は認められない。
◎:乳化状態が均一で、分離は認められない。
なお、クリーミング傾向とは、乳化状態の不均一状態をいい、具体的には、生成したエマルジョン中の液滴が、分散媒との比重差によって浮上又は沈降する過程にある状態をいう。
【0062】
【0063】
表1から明らかなように、ウフェナマートとリドカインとを含む乳化組成物(比較例1)は保存後において水相が分離したため、乳化状態に顕著な不安定性が認められた。これに対し、ウフェナマートとリドカインとを含む乳化組成物に対して更にリドカインを配合した場合(実施例1~4)には、優れた乳化安定性が得られたことが分かった。この乳化安定性の向上効果は、特に実施例2~4において顕著であった。なお、イソプロピルメチルフェノールを含まないことを除いて比較例1と同様に調製した乳化組成物、及びウフェナマートを含まないことを除いて比較例1と同様に調製した乳化組成物は、いずれも、水相の分離が認められ乳化状態が不安定であったが、その程度は比較例1ほど顕著ではなかった。
【0064】
処方例
表2に示す処方の乳化組成物を、上記試験例と同様にして調製した。いずれの処方の乳化組成物も、優れた乳化安定性が得られていた。
【0065】