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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ネスティング椅子用の椅子基体
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/04 20060101AFI20240402BHJP
   A47C 5/10 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A47C3/04
A47C5/10 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019217615
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021083996
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】和田 光平
(72)【発明者】
【氏名】田上 友絵
(72)【発明者】
【氏名】ムギ ヤマモト
(72)【発明者】
【氏名】松崎 元
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6527623(JP,B1)
【文献】特開2006-314421(JP,A)
【文献】特開2019-063227(JP,A)
【文献】特開2009-136370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0120406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/00-3/40
A47C 4/00
A47C 5/10
A47C 7/02
A47C 1/035
A47C 1/121
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面と背もたれを備える座体の前記座面を上面に取付ける座受カバーと、前記座受カバーが捩りバネと該捩りバネと同軸の支持軸を介して床と略平行な倒伏姿勢から所望角度の起立姿勢の間で回転可能に連結されるブラケットと、ブラケットと倒伏姿勢の前記座受カバーの支持部を中心寄りに設けた横メンバを含む脚部とを備えるネスティングできる椅子の基体であって、
前記座受カバーと前記ブラケットが、前記座受カバーの前端部及び前記横メンバの中央寄りにおいて、前記座受カバーの軸穴と前記ブラケットの軸受に通した前記支持軸と該支持軸に支持された前記捩りバネとにより連結される連結機構を備え、
前記連結機構は前記座受カバーの内部に収まり、前記支持部、倒伏姿勢における前記座受カバーの下面の下に位置することを特徴とする椅子の基体。
【請求項2】
前記横メンバは、その中央寄りに前向きの前記ブラケットと該ブラケットの反対向きに前記支持部を備え、さらに前記横メンバ又は前記支持部には、ネスティング時に前又は後ろの椅子の基体に当接する緩衝部材を設ける請求項1の椅子の基体。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記横メンバの中央寄りに設けられ、ネスティング時に前の椅子の支持部に当接する請求項2の椅子の基体。
【請求項4】
前記緩衝部材は、磁力を有する請求項2又は3の椅子の基体。
【請求項5】
前記脚部は、前記横メンバと縦メンバで形成した正面視略門型をなす脚フレームの2つを前後に並べ、前の脚フレームの左右幅を後ろの脚フレームの左右幅より大きく形成すると共に、前後の脚フレームの縦メンバが側面視略逆V状をなすように前後の横メンバで結合し、且つ前記横メンバは前記座体の座受けカバーの下面に取付けられている請求項1~4のいずれかの椅子の基体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座面と背もたれを備える座体(この座体には背もたれと座面が一体と別体のものを含むものとする。以下、同じ。)を、捩りバネの反発力(以下、バネ力ともいう。)を利用して床面に略平行な着座姿勢(使用時の姿勢)から起立姿勢(不使用時の姿勢)に姿勢を変え、床面上で前後方向において積層(以下、ネスティングという。)できる椅子を形成するための基体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、不使用時には上下方向で積層(スタッキング)したり、或は前後方向で積層(ネスティング)することにより、不使用時の占有面積を減じ、収納するときのスペース効率を高めることができるようにした椅子がある。
【0003】
ネスティングできる椅子には、座面と背もたれが一体の座体を起伏させるタイプと、背もたれと別体の座面だけを起伏させるタイプがあるが、座面と背もたれ一体に備える座体を起伏させる椅子は特許文献1~3などにより公知である。
【0004】
背もたれと座面が一体の座体を持つネスティングできる椅子では、座体と脚部が連結機構を介して連結され、座体を倒伏姿勢から起立姿勢の間で回転可能に支持している。前記連結機構が座体下面の左右両側部や座体の左右側部などに設けられると、連結機構をカバーするカバー部材が設けられるが、カバー部材は外から目立つ位置に設けられることになるため目障りに感じることがある。また従来のネスティング椅子では、使用時の座体の倒伏姿勢を下から支える支持部が脚部の目立つ位置に設けられたものがある。さらにネスティングする椅子同士が衝突的に並べられて椅子の構成部材が損傷することを防ぐと同時に椅子を整然と並べるための緩衝部材も前記脚部に設けられている場合には、前記支持部とともに目障り感が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3321727号公報
【文献】特開2007-130478公報
【文献】特許第6527623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、座面と背もたれを備える座体と脚部が連結機構を介して起伏自在に連結されるネスティング椅子において、前記連結機構を、座体の下面でその座体を支持する座受カバーの内部に収めてしまうこと、また倒伏姿勢の座体の支持部とネスティング時の傷防止と整列を担保する緩衝部材を、前記座受カバーの内部に配置することにより、前記支持部や緩衝部材が使用時の椅子においては外部から殆ど見えないスマートなデザイン性を発揮できるようにしたネスティングできる椅子の基体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明基体の構成は、座面と背もたれを備える座体の前記座面を上面に取付ける座受カバーと、前記座受カバーが捩りバネと該捩りバネと同軸の支持軸を介して床と略平行な倒伏姿勢から所望角度の起立姿勢の間で回転可能に連結されるブラケットと、ブラケットと倒伏姿勢の前記座受カバーを支える支持部中心寄りに設けた横メンバを含む前記脚部とを備えるネスティングできる椅子の基体であって、前記座受カバーと前記ブラケットが、前記座受カバーの中央寄りと前記横メンバの中央寄りにおいて、前記座受カバーの軸穴と前記ブラケットの軸受に通した前記支持軸と該支持軸に支持された前記捩りバネとより連結される連結機構を備え、前記連結機構及び前記支持部、倒伏姿勢における前記座受カバーの先端部の内部に配置されたことを特徴とする椅子の基体。
【0008】
本発明において前記脚の横メンバは、座受カバー前部の下面側にあってその横メンバの中央寄りに前向きの前記ブラケットとこのブラケットの反対側に前記支持部を備えている。さらに前記横メンバ又は前記支持部に、ネスティング時に前又は後ろの椅子の基体又は座体に当接する緩衝部材を設ける。この構成により、座体の倒伏姿勢を支持する支持部とネスティング時の傷防止と整列のための緩衝部材が、椅子の使用時には外部からほとんど見えないからスマートなデザイン性を発揮する。
【0009】
前記横メンバの中央寄りに設けられた緩衝部材は、ネスティング時に前の椅子の支持部に当接する。前記緩衝部材は、前記横メンバに設けることに代えて前記支持部又は当該支持部近傍の前記座受カバーの下面に当該座受カバーと一体成型で設けることもできる。前記支持部や座受カバーと一体の緩衝部材には、後ろの椅子の座面の先端部が緩衝されつつ当接する。前記横メンバに設ける緩衝部材には、磁石を埋設して磁力を持たせると磁石がスチール等の磁性体製の支持体を吸着するからネスティングする椅子の整列を支持する。
【0010】
前記脚部は、前記横メンバと縦メンバで形成した正面視略門型をなす脚フレームの2つを前後に並べ、前の脚フレームの縦メンバの左右幅を後ろの脚フレームの縦メンバの左右幅より大きく形成する。また、前後の脚フレームの縦メンバは、側面視略逆V状をなすように前後の横メンバ結合し、且つ結合した横メンバは前記座体の下面に配置され、平面視において前記横メンバが倒伏姿勢の前記座体の下に略隠れて見えない。これにより本発明基体を使用したネスティング椅子では、その使用時を立姿勢で眺めると座面の下には脚部しか見えないというネスティング椅子では斬新な印象を与えることができる。
【0011】
前記椅子基体の連結機構は、座受カバーの回転規制機構を備え前記座受カバーが倒伏姿勢から起立側の回転するとき、前記ストッパ壁が前記ブラケットに当接して前記座受カバーの起立回転を前記座体に設定した起立角度に規制する。
【0012】
前記座受カバーは、略皿状体の上面前端部に、前記ブラケットの前端側が下から入る挿入穴と、この挿入穴の両側に立設した支持壁と、この支持壁の脇に立設した当該座受カバーの起立角度をブラケットとの協働作用で規制するストッパ壁とを備え、前記挿入穴に入るブラケットは、先端部に前記支持壁とストッパ壁の軸穴と同軸上に軸受を備えている。
【0013】
前記回転規制機構は、連結される座受カバーと一体のストッパ壁とブラケット自体の構成によって形成しているから、個別独立した専用部品を必要とせず構造が簡潔で組立やすく故障も生じにくい。
【0014】
前記捩りバネは、その反発力を、前記座受カバーを含む座体又は座面の不使用時の起立角度と使用時の倒伏角度の間の中間とその前後を含む位置(以下、中間位置という)における前記座体又は座面が前記捩りバネに作用する荷重に略平衡するように調整したものを用いている。
【0015】
前記捩りバネの反発力を上記のように調整したから、座体を載せた前記座受カバーは、起立角度と倒伏角度の間の中間位置において、前記座体に手を添えて起立方向に押すと起立し、倒伏方向に押すと前記捩りバネの反発力に打ち勝つ前記座体の自重で倒伏し、起立終端、及び倒伏終端で衝撃を伴うことがなく緩やかな動作をする。
【0016】
また、前記捩りバネは、そのコイル部に挿入した支持軸を、前記座受カバーの前端側の中央寄りに設けた支持壁及びストッパ壁の軸穴と前記横メンバの中央寄りに設けたブラケットの軸受とに貫通して設けているから高い支持安定度で座受カバーの内部に設置される。またこの捩りバネは、その一端側を前記ブラケットを含む前記脚部の固定系に着脱可能に固定し、他端側を前記座受カバーの可動系に着脱可能に固定している。捩りバネのバネ力(反発力)は、前記固定系の固定位置を支持軸の回りに関して変更し座体に対し作用するバネ力を調整できる。前記捩りバネの支持軸は、座受カバーの中央寄りと横メンバの中央寄りにおいて、複数組の軸穴と軸受に支持されるから、座受カバーの中央寄りとブラケットの中央寄りでの連結を、高強度で安定度の高いものにしている。
【0017】
前記座受カバーと前記支持部は、当該座受カバー又はその座受カバーが当接する前記支持部に当接保持部材を設けて、前記座受カバーを含む座体の倒伏回転の終端において前記座受カバーが前記支持部に当接した状態の維持を、前記当接保持部材に補助することができる。
【0018】
本発明基体では、前記支持部をスチール等の磁性体で形成し、前記座受カバーは前記支持部に当接する部位に磁石を当接保持部材として備えた構成にできる。前記磁石は、前記支持部に非接触状態で前記座受カバーに設け、当接時に金属音がしたり支持部に磁石が当たって塗膜を傷つけたりしないようにできる。
【0019】
座受カバー又はその座受カバーが当接する前記支持部には、当接支持部材を設け、前記座受カバーを含む座体の倒伏回転の終端において前記座受カバーが前記支持部に当接した状態を、前記当接保持部材が維持するようにできる。
【0020】
前記座体の起立回転の終端における前記受座カバーのストッパ壁が前記ブラケットに当接した状態は、座受カバーに弾発的に係合するクリック部材を前記ブラケットに設けると、前記クリック部材が座受カバーに弾発的に係合して前記当接をクリック感で知得でき、座受カバーを当接位置に保持できる。
【0021】
前記ブラケットの設置位置は、前記横メンバの中央寄りの2箇所に設ける。これにより座受カバーとブラケットの連結機構が横メンバの中央部に位置する。また前記ブラケットは、先端部が離間した2枚立壁を有する管体によって形成され、前記2枚立壁に前記支持軸の軸受が設けられている。前記ブラケットは、管体の上壁が起立回転するストッパ壁の規制壁として作用する。
【0022】
前記座受カバーに設ける支持壁は、前記座受カバーに設けたブラケットの挿入穴の左右に立設し、前記挿入穴に下から挿入されるブラケットの先端部を挟む位置にある。また、前記座受カバーのストッパ壁は、前記ブラケットの先端部の2枚立壁に挟まれた位置に設けられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ネスティングできる椅子の基体において、座受カバーとブラケットが、両者の中央寄りにおいて捩りバネを支持して前記座受カバーの軸穴と前記ブラケットの軸受に通した前記支持軸により連結される連結機構を備え、前記連結機構及び倒伏姿勢の座体を支持する支持部が、倒伏姿勢における前記座受カバーの下面に収まるようにし、さらに前記支持部とネスティング時に傷つき防止と整列を担保する緩衝部材も前記座受カバーの下面内に収まるように配置しているから、ネスティング椅子に適用すると使用時に人の立姿勢では椅子の座体と脚部しか目に入らないというネスティング椅子らしからぬスマートなデザイン性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明基体を用いたネスティング椅子の一例の斜視図。
図2図1の椅子の正面図。
図3図1の椅子の背面図。
図4図1の椅子の底面図
図5図1の椅子の底面図。
図6図1図5の椅子の座体を起立させた側面図。
図7】ネスティング時の座受カバーの支持部と緩衝部材の関係を示す側面図。
図8図6のA部を拡大した断面図。
図9図1図5の椅子の座体を取り外して座受カバーを見せた拡大平面図。
図10図9の座受カバーの底面図。
図11】座体を取り外し座受カバーの拡大斜視図。
図12図11の座受けカバーと脚体を分解した斜視図。
図13】座受カバーとブラケットの連結機構のストッパ壁とブラケットの関係を模式的に示す拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明基体に座体を載せたネスティングできる椅子の実施の形態例について図を参照して説明する。
図において、1は座面1aと背もたれ1bを備えた座体で、図の側では座面1aと背もたれ1bが合成樹脂成形体により一体に構成されている。座体1の構成は座面1aと背もたれ1bが一体化されているものであれば、図の例に限られず他の形態のものであってもよい。座体1には座面1aと背もたれ1bが別体のものもある。本実施例では座体1には背もたれと別体の座面も含むものとする。
【0026】
2は、前記座体1を上面に着脱可能に設置できる略皿状を呈する浅底の皿状体により形成した座受カバーである。座受カバー2は、図に平面状態を、図10に底面状態を示すように、前端部の中央寄りに後述するブラケット3が下から入る平面視略長方形の2つの挿入穴2aが設けられている。この座受けカバー2の上面には、夫々の挿入穴2aを左右から挟む2枚の支持壁2bと、前記2枚の支持壁2bに挟まれて2枚のストッパ壁2cとが設けられている。前記支持壁2bとストッパ壁2cは、座受カバー2と一体成形されたものである。この支持壁2bとストッパ壁2cには、後述する支持軸7が通る軸穴Shが設けられ、この軸穴Shの同軸上にはブラケット3の先端部に設ける軸受Sbが対応している。2eは座体1又は背もたれとは別体の座面(図示せず)の通付用のボルト穴などによる取付部で座受カバーの外周近くの4箇所に設けられている。これにより異なるデザイン違いの複数種の座体1を座受カバー2に取付けることができる。なお、椅子の座体1を外して座受カバー2の内部の回転機構等のメンテナンスをするとき、ボルト穴2eを利用する必要があるため、座受カバー2は倒伏姿勢に保持する必要がある。そこで座受カバー2を倒伏姿勢に保持するため2つのジグ穴2fを座カバー2の前部に設けている。このジグ穴2fにピン状のジグ部材(図示せず)を差し込むと、座カバー2が起立しようとしても前記ジグ部材が後述する横メンバ4bに設けた緩衝部材9に当って座受カバー2の起立回転を阻止するから、座カバー2を略水平姿勢に保持してメンテナンス作業を行える。
【0027】
座受カバー2とブラケット3の上記構成により、座体1を起伏させる座受カバー2とブラケット3の連結部を構成する部材は、すべて座受カバー2の上面と座体1の下面が形成する座受カバー2の前端部の中央寄り内部空間内に収まり、前記連結部や回転規制機構を外部に露出させない。
【0028】
4,5は、床に略平行な横メンバ4a、5aを左右の縦メンバ4b,5bの上に有する正面視略門型をなす2つの脚フレームで、ネスティングのために手前側(前方)の脚フレーム4の左右の縦メンバ4bを正面から見た左右幅が、向こう側(後方)の脚フレーム5の左右の縦メンバ5bの左右幅よりも大きく形成されている。2つの脚フレーム4,5は、夫々の横メンバ4a、5aが前後方向で重複する形で一体化されて脚部を形成する。
【0029】
合体された前後の脚フレーム4,5は、その縦メンバ4b、5bが側面視略逆V状に形成されている。この構成により使用時の本発明椅子を人の立姿勢の視点で見ると、前後の脚フレーム4,5のみが、座受カバー2の下面の一箇所から斜め下方に延出しているように見えこれがデザイン上の特徴になる。
【0030】
図12に示すように、前記脚フレーム4,5の一体化された横メンバ4a,5aの中央寄りには、座受カバー2の前方に向けて2つのブラケット3,3が平行姿勢で前方へ向け突出して設けられていると共に、前記ブラケット3と反対方向に向けて平面視略U状の支持部6が設けられている。支持部6は座体1の倒伏姿勢を下から支える部材である。前記横メンバ4a,5aには、ネスティング時に、前の椅子の支持部6に当接する緩衝部材9が設けられている。この緩衝部材9の設置位置は、横メンバ4a,5aに代え、支持部6の中央部又は座受カバー2の下面に配置することができる。緩衝部材9が支持部6や座受カバー2に設けられたときは、ネスティングされる後ろの椅子の先端部が緩衝される。座受カバー2の緩衝部材9は座受カバー2が樹脂成型品の場合一体成型される。4c、5cは前記脚フレーム4,5の縦メンバ4b、5bの下端部に設けたキャスタである。
【0031】
前記座受カバー2とブラケット3は、座受カバー2の上に一体成型された前記支持壁2bとストッパ壁2cに同軸上の軸穴Shを有し、また座受けカバー2の2つの挿入穴2aから座受カバー2の上面側に露出した左右のブラケット3には前記軸穴Shと同軸上に軸受Sbを有する。前記軸穴Shと軸受Sbを貫通して支持軸7が配置されると、座受カバー2とブラケット3が回転自在に連結される図9図12参照)。
【0032】
前記支持軸7は捩りバネ8のコイル部に嵌挿されるから捩りバネ8は支持軸7と一緒に座受カバー2の前端部に配置される。配置された捩りバネ8は、その一端8aが座受カバー2による可動系に固定され、他端8bがブラケット3を含む脚フレーム4,5の固定系に固定される。81aは前記一端8aを座受カバー2に固定するための固定部材である図11図12参照)。なお、固定部材81aは、捩りバネ8の一端8aを座受カバー2の下面に押付けてネジ81bで取り付けられるため、固定部材81aの押え込みとネジ81bの締込みを一人で行うことは事実上不可能である。しかし固定部材81aの前端辺を、座面カバー2に設けた係止部(図示せず)に引掛けて支持できるようにすると、固定部材81aの前端辺を係止部に引掛けて片方の手で固定部材81aを押え込み、もう一方の手でネジ81bの締込みを行うことができるため、より組立てが容易になる。支持軸7によって回転可能に連結されたブラケット3と座受カバー2に対し、前記捩りバネ8が座受カバー2を起立させる側に付勢する。
【0033】
本発明基体では、座受カバー2に載せた座体1の起立角度を、一例として60度~30度、好ましくは45度~35度程度の範囲で設定する。この設定において前記捩りバネ8の反撥力(バネ力)は、座体1の倒伏角度と起立角度の間の中間位置における座体1が、前記捩りバネ8に作用する荷重と略平衡するように調整している。バネ力を前記座体1の前記中間位置での荷重と略平衡させると、座体1が倒伏姿勢(床と略平行)になるとき、捩りバネ8のバネ力は、この捩りバネ8に作用する座体1の荷重よりも小さくなる(倒伏側に回転する座体1の荷重とバネ力の平衡が崩れる)ため、座体1は自重で倒伏側に回転し倒伏終端に至るから、ロック機構を要せず倒伏姿勢を保持できる。
【0034】
本発明基体を用いたネスティング椅子では、座体1の起立角度と倒伏角度の中間位置の角度において捩りバネ8に作用する座体1の荷重と捩りバネ8の反発力を平衡させている。このため座体1には中間位置から起立終端に至る起立動作中に前記バネ力に対する荷重が徐々に小さくなって座体1は緩やかに起立する。起立終端は座受カバー2に設けたストッパ壁2cの上面22cがブラケット3の内面の上壁3aに当接することにより知得でき、その位置にバネ力で保持される。一方、座体1の倒伏は、前記中間位置以降の座体1のバネ力に対する荷重が徐々に大きくなるから座体1は緩やかに倒伏動作をする。倒伏終端は、座受カバー2の下面2dに設けた当接部21が脚フレーム4,5に設けた支持部6の上面6aに当接することにより知得でき、その位置に座体1の自重で保持される。
【0035】
また前記椅子では、捩りバネ8のバネ力が、起立姿勢(起立角度)と倒伏姿勢(倒伏角度)の中間姿勢(起立角度と倒伏角度の間の中間位置における角度)で捩りバネ8に作用する座体1の荷重と平衡するように調整されている。これにより座体1は、中間姿勢から起立終端側に向けては、起立するに連れて姿勢が変わる座体1のバネ力に対する荷重が徐々に小さくなるから、前記バネ力で起立終端に到達する。一方、バネ力と座耐1の荷重が平衡している中間点から倒伏終端に向けては、座体1が水平側に倒れてバネ力に対する荷重が徐々に大きくなるから座体1は前記バネ力の緩衝作用を受けつつ自重により倒伏終端に至る。このように座体1は、その起伏範囲の中間位置における座体の荷重と平衡するようにバネ力を調整しているから緩やかな起伏動作をする。
【0036】
上記のように緩やかに起立する座体1の起立終端は、ストッパ壁2cとブラケット3の当接(ストッパ壁2cの上面22cがブラケット3の上壁3aに当接すること)によって知得できる。一例として図13に模式的に示すように前記ブラケット3に、起立終端姿勢の座受カバー2に弾発的に係合する凸部33bを有するクリック部材3bを配置しておくと、前記凸部33bが座体1の起立終端に座受カバー2の下面2dにおける挿入穴2aの前端部と弾発的に係合するから、これによってクリック感を伴って前記当接を知得できる。図13では、ブラケット3に弾発性の凸部33bを有する駒状のクリック部材3bを配置し、座受カバー2が起立終端側に回転すると、起立する座受カバー2の凹みの縁23cが凸部33bを弾いてクリック部材3bと係合するから、この一連の動作で座体1の起立終端のクリック感を伴う知得と起立終端の姿勢の保持ができる。
【0037】
座体1の倒伏終端は、座受カバー2の下面2dが支持部6の上面6aに当接することによって知得でき、座受カバー2を含む座体1の自重で当接状態を保持できる。この倒伏終端を、クリック感を伴って知得するには、例えば、図8に示す支持部6の上面6aに対面する座受カバー2の下面2dに、当接保持部材として磁石21aを有する合成樹脂製の当接部21を設けておくとよい。そうすると座体1の倒伏終端を座受カバー2の当接部21が支持部6に当接するとき、磁石21aが支持部6を吸着するから、磁力の吸着感で倒伏終端を、クリック感を伴って知ることができ、座体1をその位置に保持できる。なお、磁石21aは、当接部21の表面や内部に設けるほか、当接部21自体を磁石で形成してもよい。また前記磁石21aは支持部6の側に設けることもできる。また支持部6と座受カバー2の間に、摩擦による係合力で両部材2,6の当接を保持する部材を、前記磁石に代えて設けることもできる。なお、磁石21aは吸着する相手側に非接触で設けることが望ましい。このため図8に示す例では、磁石21aの表面を露出させて当接部21に埋設している。
【0038】
本発明のネスティング椅子用の基体では、倒伏姿勢の座体の支持部やネスティング時の緩衝部材を使用時の椅子においては外部から見えないように設けたから、スマートなデザイン性を発揮できるネスティング椅子を形成できる。またデザイン違いなど異なる種類の座体を同一仕様の本発明基体の座受カバーに取り換えて装着できるから、デザイン違いの複数種類のネスティング椅子を単一の椅子基体を用いて形成できる。
【符号の説明】
【0039】
1 座体
2 座受カバー
3 ブラケット
4,5 脚フレーム
6 支持部
7 支持軸
8 捩りバネ
9 緩衝部材


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13