(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】化粧料容器
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20240402BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A45D34/04 550
B65D83/00 K
(21)【出願番号】P 2020073859
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中平 悠
(72)【発明者】
【氏名】袴田 征一
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 智愛
(72)【発明者】
【氏名】岩井 滋
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-320639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を収容する有底の遮光性材料からなる容器、および前記容器に底と反対側から挿入された化粧料吸引用のディップチューブを有する化粧料容器において、
前記容器の底が、第1部分とこの第1部分よりも低い位置にある第2部分とから構成され、
前記ディップチューブの下端部は斜め下方に延びるように折り曲げられた形状であり、前記ディップチューブの先端部が前記容器の底の第1部分と向き合う位置から化粧料を吸引する形とされて
おり、
前記化粧料容器を傾斜させると、前記第2部分の上にある前記化粧料が、前記第1部分の上に流出し、
前記ディップチューブが、前記先端部に上側から連続して前記容器の深さ方向に延びる基端部を有し、
前記基端部の上方に、前記ディップチューブを通して吸引した化粧料を1つのスプレー口から噴射させるスプレーボタンが、前記基端部に対して該基端部の管軸周りに相対回転に配置されている、
化粧料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料を収容する化粧料容器、特に詳細には、化粧料が紫外線によって劣化することを防止可能な容器において、その残量が少ないことが確認された後も化粧料を引き続き所定量使用可能とした化粧料容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液体状やクリーム状等の化粧料が種々知られており、そのような化粧料は有底の容器に収容して使用されることが多い。その種の容器に収容される化粧料は一般に、化粧用容器の上側、つまり底と反対側に設けられた開口から取り出して使用される。また、化粧用容器からそのようにして化粧料を取り出すためには、例えば特許文献1に示されているようなディスペンサー(定量吐出装置)が適用されることが多い。このディスペンサーは基本的に、容器内に収容された化粧料に浸漬されるディップチューブ(吸い上げ管)と、このディップチューブを通して吸い上げた化粧料を例えばスプレー状に噴射させる噴出装置とを備えて構成される。
【0003】
上述のように吸い上げて使用される化粧料は、化粧用容器に収められている全量が使い切られることが望ましい。特許文献1には、上記ディスペンサーを用いる際に、多量の化粧料を残してしまうことを防止可能にした化粧料容器が提案されている。この特許文献1に示された化粧料容器は、横断面形状が楕円形である化粧料容器において、容器の底部に湾曲状態で届くように吸い上げ管を延設し、この吸い上げ管を容器の周方向に回転自在とすることにより、吸い上げ管先端が容器底上の隅部のどの位置にも向き合えるようにして、上記隅部上に化粧料が多量に残ってしまうことを回避できるようにしたものである。
【0004】
ところで、特許文献1に示されるような化粧料容器を使っていても、化粧料の残量が、1回の化粧を完了できないほど僅少になっている、という事態が突然生じる可能性がある。そのような事態を招かないためには、化粧料容器の中の化粧料残量を随時確認しながら化粧料を使用すればよいが、化粧料特有の事情から、そのような残量確認は不可能あるいは困難であることが多い。すなわち、液体状やクリーム状等の化粧料には、紫外線が照射されると劣化するものが多いので、その種の化粧料を収容する容器は遮光性材料から形成するのが一般的である。そのような材料から形成された化粧料容器を使用する場合は、容器内部の化粧料の残量を確かめることが不可能あるいは困難となる。
【0005】
そのような事情に鑑みて特許文献2には、不透明容器の側壁に中味残量を判断するための透明体からなる残量視認窓を形成し、この残量視認窓を遮光性部材で被覆するようにした化粧料容器が提案されている。上記遮光性部材はより詳細には、裏面に備えた粘着剤によって残量視認窓の外側に剥離自在に取り付けられるレーベル片とされたり、あるいは不透明容器の側壁外周に回転自在に配設されたフィルム状の巻き体に形成された印刷部とされる。この化粧料容器によれば、上記レーベル片を残量視認窓から剥離させたり、あるいは上記巻き体を回転させて印刷部を残量視認窓の位置からずらすことにより、残量視認窓を通して中味残量を確認することができる。
【0006】
しかし化粧料の使用中に、あるいは使用していない時に、上述のような残量視認窓を随時開閉する操作は煩雑なものである。そこで特許文献3には、化粧料等の中味液体の残量が完全に0(ゼロ)となる前に残量が少ないことを確認可能とし、この確認がなされた後も中味液体を引き続き所定量使用可能とした容器が提案されている。
【0007】
この特許文献3に示された容器は、外層体の内面に内層体を剥離可能に積層配置してなる積層剥離容器(デラミ容器)内に前述のような噴出装置を配設した容器において、内層体の下部に折り返し部を形成してそれを予備室とし、この予備室の上の主納室内の中味液体が無くなるとデラミ容器からの液体噴出が不可能となって中味液体の残量が少なくなっていることを確認可能としたものである。そしてこの確認がなされたならば上記予備室を構成している折り返し部を下方に引き下げて、この予備室内に残っている中味液体を噴出装置によって噴出可能としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-276969号公報
【文献】特開2005-119691号公報
【文献】特許第4193987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献3に示された容器は、構造が複雑であってコストが高くなるという問題が認められる。そこで本発明は、収容している化粧料が紫外線によって劣化することを防止可能な容器において、化粧料の残量が少くなったことを確認でき、その確認の後にも化粧料を引き続き所定量だけ使用できるようにした、構造が簡単な化粧料容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の化粧料容器は、
化粧料を収容する有底の遮光性材料からなる容器、および上記容器に底と反対側から挿入された化粧料吸引用のディップチューブを有する化粧料容器において、
容器の底が、第1部分とこの第1部分よりも低い位置にある第2部分とから構成され、
ディップチューブの先端部が容器の底の第1部分と向き合う位置から化粧料を吸引する形とされている、
ことを特徴とするものである。
【0011】
なお、この第1の化粧料容器においては、
ディップチューブが、上記先端部に上側から連続して容器の深さ方向に延びる基端部を有し、
上記基端部の上方に、ディップチューブを通して吸引した化粧料を1つのスプレー口から噴射させるスプレーボタンが、上記基端部に対して該基端部の管軸周りに相対回転に配置されている、
ことが望ましい。
【0012】
また、本発明による第2の化粧料容器は、
化粧料を収容する有底の遮光性材料からなる容器、および上記容器に底と反対側から挿入された化粧料吸引用のディップチューブを有する化粧料容器において、
容器の中に、開放された上端からディップチューブを受け入れる中筒が、該容器との間に間隙を置いて設けられ、
上記中筒は、上記間隙に化粧料を収容可能で、かつ該中筒内に有る化粧料がディップチューブによって吸引され得ない量まで減少した状態では該中筒の内部と上記間隙とを連通させないように構成され、
中筒内に有る化粧料が、ディップチューブによって吸引され得ない量まで減少した状態下で、容器を上下逆にしてから元の位置に戻すことにより、上記間隙に収容されている化粧料が中筒の内部に流入するように構成されている、
ことを特徴とするものである。
【0013】
なお、この第2の化粧料容器においては、
上記中筒の周壁に、容器の深さ方向に延びる開口が形成され、
容器内の化粧料の液面が上記開口の下端よりも上にある場合は該開口によって中筒の内部と外部とが連通され、
容器内の化粧料の液面が上記開口の下端よりも下にある場合は上記連通がなされない、
ように構成されるのが望ましい。
【0014】
また、この第2の化粧料容器は、
上記中筒の周壁に、該中筒の内部と上記間隙とを連通させる開口が形成されていない、ものとされてもよい。
【0015】
また、本発明による第3の化粧料容器は、
化粧料を収容する有底の遮光性材料からなる容器、および上記容器に底と反対側から挿入された化粧料吸引用のディップチューブを有する化粧料容器において、
容器の中に、開放された上端からディップチューブを受け入れ、下端が閉じられた中筒が形成され、
上記中筒は、互いに容器の深さ方向に延びる回転軸の周りに相対回転可能とされた外側中筒と内側中筒とからなる二重筒構造とされ、
上記外側中筒と内側中筒とにはそれぞれ、
該外側中筒と内側中筒との相対回転位置に応じて互いに連通可能な第1開口と、
この第1開口よりも下に離れた位置に形成されて、外側中筒の第1開口と内側中筒の第1開口とが連通する場合は互いに連通しないで、外側中筒の第1開口と内側中筒の第1開口とが連通しない場合に互いに連通する第2開口と、
が形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明による第4の化粧料容器は、
化粧料を収容する有底の遮光性材料からなる容器、および上記容器に底と反対側から挿入された化粧料吸引用のディップチューブを有する化粧料容器において、
ディップチューブの高さ位置を、化粧料の吸引を可能にする初期位置と、この初期位置よりも低い位置との間で変更させるディップチューブ移動手段が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明による第5の化粧料容器は、
化粧料を収容する有底の遮光性材料からなる容器、および上記容器に底と反対側から挿入された化粧料吸引用のディップチューブを有する化粧料容器において、
化粧料を保持して該化粧料の液面の高さ位置を、ディップチューブによる化粧料吸引を可能にする初期位置と、この初期位置よりも高い位置との間で変更させる化粧料移動手段が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明による第6の化粧料容器は、
化粧料を収容する有底の遮光性材料からなる容器、および上記容器に底と反対側から挿入された化粧料吸引用のディップチューブを有する化粧料容器において、
容器の内部に、外層および該外層の内面に剥離可能に一体化された袋状の可撓性内層からなる二重構造体が設けられて、化粧料は上記袋状の内層内に収容され、
ディップチューブの下向きとされた先端部の下方に、上端が開放されて上記内層内の化粧料を収容する化粧料受け具が配設され、
ディップチューブは上記化粧料受け具に上方から進入して化粧料を吸引可能とされ、
上記化粧料受け具内の化粧料残量がディップチューブによる吸引が不可能となる程度まで少なくなった後に、ディップチューブを下降させ得る手段が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明による第7の化粧料容器は、
化粧料を収容する有底の遮光性材料からなる容器、および上記容器に底と反対側から挿入された化粧料吸引用のディップチューブを有する化粧料容器において、
容器の内部に、外層および該外層の内面に剥離可能に一体化された袋状の可撓性内層からなる二重構造体が設けられて、化粧料は上記袋状の内層内に収容され、
ディップチューブの下向きとされた先端部に、化粧料流入用開口を有して内部に化粧料を保持する小室が、該先端部に対して上下方向に相対移動可能に取り付けられ、
ディップチューブは上記小室ごと内層内に上方から進入して化粧料を吸引可能とされ、
上記小室内の化粧料残量がディップチューブによる吸引が不可能となる程度まで少なくなった後に、上記小室を押し上げてディップチューブの先端部に対して上方に相対移動させ得る押し上げ手段が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明による第8の化粧料容器は、
化粧料を収容する有底の遮光性材料からなる容器、および化粧料吸引手段を有する化粧料容器において、
容器の内部に、外層および該外層の内面に剥離可能に一体化された袋状の可撓性内層からなる二重構造体が設けられて、化粧料は上記袋状の内層内に収容され、
上記内層の容積を、第1の容積と、この第1の容積よりも大きい第2の容積との間で変更させる内層容積変更手段が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0021】
なお上記第8の化粧料容器において、
化粧料吸引手段は、内層内から化粧料を上方に吸引可能とされ、
内層容積変更手段は、容器の底と平行な横断面内で該内層の拡がりを所定の第1方向に規定する第1規定部材と、上記横断面内で該内層の拡がりを上記第1方向と交わる第2方向に規定すると共に、上記第1方向と略平行な方向にも規定する移動可能な第2規定部材とから構成されている、
ことが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明による第1の化粧料容器は、容器の底を特定の形状とする一方、ディップチューブを2つの位置の間で移動自在にしただけのものであるので、構造が極めて簡単であって低コストで作成可能である。本発明による第2~第8の化粧料容器も、同様に構造が極めて簡単であって低コストで作成可能である。また、本発明の化粧料容器によれば、化粧料の残量を正確に確認でき、その確認の後に化粧料を引き続き所定量使用可能である。その点については、具体的な実施形態に沿って詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態による化粧料容器の全体形状を示す斜視図
【
図3】
図2とは異なる状態にある第1実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図4】本発明の第2実施形態による化粧料容器を示す縦断面図
【
図5】
図4とは異なる状態にある第2実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図6】
図4とはさらに異なる状態にある第2実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図7】
図4とはさらに異なる状態にある第2実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図8】本発明の第3実施形態による化粧料容器を示す縦断面図
【
図9】
図8とは異なる状態にある第3実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図10】
図8とはさらに異なる状態にある第3実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図11】本発明の第4実施形態による化粧料容器を示す縦断面図
【
図12】
図11とは異なる状態にある第4実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図13】本発明の第5実施形態による化粧料容器を示す縦断面図
【
図14】
図13とは異なる状態にある第5実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図15】本発明の第6実施形態による化粧料容器の全体形状を示す斜視図
【
図17】
図16とは異なる状態にある上記化粧料容器の要部を示す縦断面図
【
図18】本発明の第7実施形態による化粧料容器を示す斜視図
【
図21】
図19とは異なる状態にある上記化粧料容器を一部透視状態にして示す斜視図
【
図22】
図20とは異なる状態にある上記化粧料容器を一部破断して示す斜視図
【
図23】本発明の第8実施形態による化粧料容器を示す縦断面図
【
図24】
図23とは異なる状態にある第8実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図25】
図23とはさらに異なる状態にある第8実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図26】本発明の第9実施形態による化粧料容器を示す縦断面図
【
図27】
図26とは異なる状態にある第9実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図28】
図26とはさらに異なる状態にある第9実施形態の化粧料容器を示す縦断面図
【
図29】本発明の第10実施形態による化粧料容器を示す横断面図
【
図30】
図29とは別の状態にある第10実施形態の化粧料容器を示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態による化粧料容器1の全体形状を示すものであり、また
図2および
図3は、この化粧料容器1が使用状態にあるところを示す縦断面図である。これらの図に示される通り化粧料容器1は、例えば無底の円筒状に形成された外筒11と、この外筒11の上に配置された蓋部12と、この蓋部12の上端に一体的に形成された、該蓋部12よりも小径の円筒状の凸部13とを有している。
【0025】
外筒11は上端部が縮径され、この縮径部の外周面と蓋部12の内周面とがねじ結合されて、両者が一体化されている。上記凸部13の中には、横方向を向いたスプレー口14を備えたスプレーボタン15が配されている。スプレー口14は、スプレーボタン15内の通路を介してスプレーユニット16に連通され、このスプレーユニット16は化粧料吸い上げ用のディップチューブ17に連通されている。スプレーユニット16およびディップチューブ17は共に、外筒11内に固定されている。スプレーユニット16は、噴霧装置あるいはエアゾール装置等とも称されるスプレー装置に適用されている公知のユニットであって、定量室およびバルブ機構等を備えている。ディップチューブ17は、スプレーユニット16に連通している基端部は外筒11と同じ方向に延びる直管状であるが、下端部17aは斜め下方に延びるように折り曲げられた形状とされている。なおスプレーユニット16の上部には、上向きに延びて上記スプレーボタン15内の通路に連通する図示外のステムが設けられている。スプレーボタン15はこのステムに対してステム軸周りに(つまりはディップチューブ17の基端部に対して管軸周りに)相対回転可能とされている。
【0026】
外筒11の下端は、概略有底円筒状の底部18によって閉じられている。以上述べた外筒11、蓋部12、凸部13および底部18により、内部に例えば液体状の化粧料Cを収容する無底の容器が構成されている。これらの外筒11、蓋部12、凸部13および底部18は、外部から紫外線が照射されて化粧料Cが劣化することを防止するために、不透明な合成樹脂等の遮光性材料、より詳しくは、外観も考慮して好ましい色に適宜着色された部材を用いて形成されている。
【0027】
底部18の内部には、底板19が固定されている。この底板19は、比較的高く、つまり蓋部12に近く形成された第1部分19aと、この第1部分19aよりも低く形成されて底部18の上面に接合した第2部分19bとを有している。この第2部分19bと第1部分19aとの間は、緩く傾斜した部分によって連絡されている。ディップチューブ17は、その下端部17aが底板19の第1部分19aと向き合う位置から化粧料Cを吸引するように配設されている。
【0028】
化粧料Cを収容した化粧料容器1は、通常は
図1に示すような直立状態あるいは、スプレー口14が斜め下方を向くように傾斜させた
図2の状態で使用される。この使用時のスプレーユニット16の作用を説明する。まずスプレーボタン15がある程度押下されると、スプレーユニット16内の定量室とディップチューブ17との間が遮断され、さらにスプレーボタン15が押下されると定量室に貯えられていた化粧料Cがスプレー口14からスプレー(噴霧)状に噴射される。その後スプレーボタン15が解放されると該スプレーボタン15は、図示外の付勢手段によって高位置である原位置に復帰する。このとき、上記定量室とディップチューブ17との間が開かれ、外筒11内の化粧料Cがディップチューブ17を通して吸い上げられ、上記定量室に一定量貯えられる。
【0029】
以上のようにして化粧料Cの使用が重ねられると、底板19の第1部分19aの上に存在する化粧料Cの量が少なくなるので、ついには、スプレーボタン15が押下されても化粧料Cがスプレー口14から噴射されなくなる。この状態になったとき、化粧料容器1が傾斜している場合は
図2の状態となっている。なお、
図2中のLは、化粧料Cの液面を示している。使用者は、スプレー口14から化粧料Cが噴射されなくなったことにより、化粧料Cの残量が僅かであることを知ることができる。
【0030】
その状態となったとき使用者は、例えば化粧品の使用説明書に記載されていた既知の案内等から、化粧料容器1を長手軸周りに180度回転させて傾斜させれば僅かな残量の化粧料Cを使い切れることが分かっている。使用者がそのように化粧料容器1を180度回転させ傾斜させると、化粧料容器1の内部の状態は
図3に示す通りとなる。つまり、比較的深い第2部分19bの上に残っていた化粧料Cが第1部分19aの上に流出して、ディップチューブ17の下端部17aの周りに拡がるので、それ以後も所定量、例えばスプレーボタン15を数回押下して使用できる程度の量の化粧料Cを使用することができる。
【0031】
以上の通りにして使用者は、化粧料Cが突然残量0(ゼロ)となって化粧不可能になることを避けることができ、所定量の化粧料Cが使用できるうちに、その化粧料Cを収容した化粧料容器1を新たに買い求める等の対応を取ることができる。なお本実施形態では前述した通り、スプレーボタン15はディップチューブ17の基端部に対して管軸周りに相対回転可能とされているので、
図3の状態にしたときにスプレーボタン15も180度回転させている。それにより、スプレー口14からの化粧料Cの噴射の向きを、
図2の状態のときの噴射の向きと同じに揃えることができる。この化粧料Cの噴射の向きを揃える必要が無ければ、スプレーボタン15を回転させなくて、あるいは180度以外の角度回転させても構わない。
【0032】
次に
図4~
図7を参照して、本発明の第2実施形態による化粧料容器2について説明する。なおこれらの
図4~
図7において、先に説明した
図1~
図3中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。本実施形態の化粧料容器2おいては、有底の外筒11の中に、丸底状で上端が開放した中筒20が配設されている。この中筒20は、その底部が外筒11の底面上にあり、上端部が外筒11と蓋部12との間に保持され、また周りの外筒11との間に間隙を置いた状態にして設けられている。また中筒20は底部の近くにおいて周壁に、例えばスリット状の開口20aを複数、互いに周方向に離れた状態にして有している。ディップチューブ17は、その先端(下端)が中筒20の底の上面に接する状態に配置されている。
【0033】
この化粧料容器2において、化粧料Cの残量が普通に使用を続けられる程度に多い場合は、その液面Lは
図4に示す状態となっている。つまり、中筒20の内部と外部(上記間隙)とは開口20aを通じて連通しているので、中筒20の内部と外部の化粧料液面Lは同じとなっている。それから化粧料Cの使用が重ねられて、化粧料Cの液面Lが開口20aの下端以下となるまで化粧料Cの残量が減ると、中筒20の内部と外部とが開口20aを通じて連通することはなくなる。したがってそれ以降は、中筒20の内部の化粧料Cのみがディップチューブ17から吸い上げられ、中筒20の外部つまり上記間隙内に有る化粧料Cは吸い上げられることがない。こうして、中筒20の内部の化粧料Cの残量が少なくなると、ついには
図5に示すように中筒20が空の状態となって、ディップチューブ17から化粧料Cを吸い上げることが不可能になる。なお
図5では、中筒20の外部の化粧料液面をL1として示す。
【0034】
使用者は、ディップチューブ17から化粧料Cが吸い上げられない、つまりスプレーボタン15を押下してもスプレー口14から化粧料Cが噴射されなくなったことにより、化粧料Cの残量が僅かであることを知ることができる。その状態となったとき使用者は、例えば化粧品の使用説明書に記載されていた既知の案内等から、外筒11を上下逆さにしてから元に戻せば、僅かな残量の化粧料Cを使い切れることが分かっている。使用者が、まず外筒11を上下逆さにすると、
図6の状態となる。つまり、中筒20の外部に残っていた化粧料Cが、開口20bを通じて中筒20とスプレーユニット16との間の間隙に入って、そこに受け止められる。
【0035】
それから使用者が、外筒11を元の状態に戻すと
図7の状態となる。つまり、上述のように中筒20とスプレーユニット16との間の間隙に受け止められていた化粧料Cが落下して、中筒20の内部の化粧料Cが増量する。それにより、ディップチューブ17の下端が化粧料Cの中に入って吸い上げが可能になるので、それ以後も所定量の化粧料Cを使用することができる。
【0036】
以上説明した化粧料容器2において、中筒20の内部と外部とは周壁の開口20aを通じて連通するように構成されているが、このような開口20aは特に設けなくてもよい。そのようにした場合、中筒20の内部と外部の化粧料液面Lは、ディップチューブ17から化粧料Cが吸い上げられなくなるまでずっと同じ高さを保つ。そこで、外筒11を上下逆さにしてから元に戻したとき中筒20の中に入る化粧料Cの量は、一般に、上記実施形態におけるのと比べてより多くなる。こうして中筒20の中に入る化粧料Cの量は、中筒20と外筒11との間の間隙が大であるほど多量となるので、この間隙の設定次第で適切な所定量に制御することができる。
【0037】
次に
図8~
図10を参照して、本発明の第3実施形態による化粧料容器3について説明する。
図8に示すように本実施形態の化粧料容器3においては、有底の外筒11の中に、それぞれ有底の外側中筒31と無底の内側中筒32とからなる二重筒構造が配設されている。内側中筒32は外側中筒31の中で、該外側中筒31と液密状態を保ちながら筒軸の周りに回転可能とされている。外側中筒31の上端は外筒11に固定されている。一方、内側中筒32の上端は、蓋部12に固定されている。この場合も蓋部12は外筒11にねじ結合されており、蓋部12がこのねじ結合を閉めるかあるいは緩める方向に外筒11に対して相対回転されると、それに伴って内側中筒32が外側中筒31内で回転する。
【0038】
外側中筒31はその周壁の、底部から近い位置に、例えばスリット状の第1開口31aを複数(
図8では1つだけ表示)、互いに周方向に離れた状態にして有している。これらの第1開口31aは、例えば10度程度の配置角度ピッチで設けられている。また内側中筒32もその周壁の、底部から近い位置に、例えばスリット状の第1開口32aを複数(
図8では1つだけ表示)、互いに周方向に離れた状態にして有している。これらの第1開口32aの配置角度ピッチは、上記第1開口31aの配置角度ピッチと同じとされている。また外側中筒31は、上記複数の第1開口31aよりも下の位置において、1つの第2開口31bを有している。また内側中筒32も、上記複数の第1開口32aよりも下の位置において、1つの第2開口32b(
図8では不図示。
図10参照)を有している。
【0039】
上記構成の化粧料容器3は、通常は外側中筒31の第1開口31aに、内側中筒32の第1開口32aが整合した状態にして使用される。この場合、化粧料Cの残量が多ければ、外側中筒31と内側中筒32とからなる二重筒構造の内部と外部とは、互いに整合している第1開口31aおよび第1開口32aを通して連通している。したがって、化粧料Cの液面Lが第1開口31aおよび第1開口32aの各下端よりも上にある
図8のような場合、上記二重筒構造の内部と外部とで液面Lは同じとなっている。
【0040】
それから化粧料Cの使用が重ねられて、化粧料Cの液面Lが第1開口31aおよび第1開口32aの下端以下となるまで化粧料Cの残量が減ると、上記二重筒構造の内部と外部が第1開口31aおよび第1開口32aを通じて連通することはなくなる。したがってそれ以降は、上記二重筒構造の内部の化粧料Cのみがディップチューブ17から吸い上げられ、上記二重筒構造の外部の化粧料Cは吸い上げられることがない。こうして、上記二重筒構造の内部の化粧料Cの残量が少なくなると、ついには
図9に示す状態となって、内側中筒32が空の状態になる。このとき、上記二重筒構造の外部に残っている化粧料Cの液面をL1として示す。
【0041】
使用者は、ディップチューブ17から化粧料Cが吸い上げられない、つまりスプレーボタン15を押下してもスプレー口14から化粧料Cが噴射されなくなったことにより、化粧料Cの残量が僅かであることを知ることができる。その状態となったとき使用者は、例えば化粧品の使用説明書に記載されていた既知の案内等から、蓋部12を10度程度の所定角度回せば、僅かな残量の化粧料Cを使い切れることが分かっている。使用者が、そうして蓋部12を上記の所定角度、外筒11に対してねじ結合を締める方向あるいは緩める方向に回転させると、
図10の状態となる。つまりこの状態では、外側中筒31の第2開口31bに対して、内側中筒32の第2開口32bが整合する。
【0042】
すると、上記二重筒構造の(より詳しくは外側中筒31の)外部に残っていた化粧料Cが、整合した第2開口31bおよび第2開口32bを通って、上記二重筒構造の(より詳しくは内側中筒32の)内部に入り、この内部の化粧料Cが増量する。それにより、ディップチューブ17の下端が化粧料Cの中に入って吸い上げが可能になるので、それ以後も所定量の化粧料Cを使用することができる。
【0043】
次に
図11および
図12を参照して、本発明の第4実施形態による化粧料容器4について説明する。
図11に示すように本実施形態の化粧料容器4においては、有底の外筒11と蓋部12との間、つまり外筒11の縮径部の外側に、円環状のスペーサ40が配設されている。また外筒11と凸部13との間には、外筒11の内部と外部間の機密を確保する中栓41が配設されている。なお
図12には、スペーサ40および中栓41の全体形状が示されている。スペーサ40が
図11に示す位置にあるとき、ディップチューブ17の高さ位置は、化粧料Cの吸引を可能にする初期位置に設定される。
【0044】
化粧料Cの使用が重ねられて、化粧料Cの液面Lが
図11に示す位置まで下がると、化粧料Cはディップチューブ17から吸い上げられなくなる。使用者は、ディップチューブ17から化粧料Cが吸い上げられない、つまりスプレーボタン15を押下してもスプレー口14から化粧料Cが噴射されなくなったことにより、化粧料Cの残量が僅かであることを知ることができる。その状態となったとき使用者は、例えば化粧品の使用説明書に記載されていた既知の案内等から、スペーサ40と中栓41を外せば、僅かな残量の化粧料Cを使い切れることが分かっている。そこで使用者は、外筒11にねじ結合されている蓋部12を一旦取り外し、スペーサ40を抜き取ってから、蓋部12を元通り、スプレーボタン15、スプレーユニット16およびディップチューブ17と共に外筒11に締め付ける。
【0045】
それにより化粧料容器4は、
図12に示す状態となる。つまり、ディップチューブ17はスペーサ40の厚さ分だけ下降して、その下端が、残っている少量の化粧料Cの中に入る。そこでディップチューブ17から化粧料Cの吸い上げが可能になるので、それ以後も所定量の化粧料Cを使用することができる。以上の通り本実施形態では、スペーサ40および蓋部12により、ディップチューブ17の高さ位置を変更させるディップチューブ移動手段が構成されている。
【0046】
次に
図13および
図14を参照して、本発明の第5実施形態による化粧料容器5について説明する。本実施形態の化粧料容器5は、第4実施形態による化粧料容器4と同様に、有底の外筒11と蓋部12との間にスペーサ50と、外筒11の内部と外部間の気密を確保するための中栓51とが配設されたものである。なお
図14には、このスペーサ50の全体形状が示されている。ただし本実施形態のスペーサ50は、第4実施形態における円環状のスペーサ40とは異なって、円環が概略半分に切断されたような形状、つまり平面視状態で概略「C」字状の形状とされたものである。
【0047】
上記形状のスペーサ50も、第4実施形態における円環状のスペーサ40と同様の作用を奏する。つまり、化粧料Cの残量が僅かであることを使用者が確認したとき、このスペーサ50を取り除き、ついで蓋部12を元通り外筒11に締め付ける。すると、ディップチューブ17はスペーサ50の厚さ分だけ下降して、残っている少量の化粧料Cの吸い上げが可能になる。ただしこの場合、スペーサ50は上述した通りの形状であるので、蓋部12を外筒11から取り外さなくても、外筒11に対するねじ結合を少し緩めるだけで、スペーサ50を横方向に引き抜くことができる。以上の通り本実施形態では、スペーサ50および蓋部12により、ディップチューブ17の高さ位置を変更させるディップチューブ移動手段が構成されている。
【0048】
次に
図15~
図17を参照して、本発明の第6実施形態による化粧料容器6について説明する。本実施形態の化粧料容器6は、上述した第3実施形態の化粧料容器3や第4実施形態の化粧料容器4と同様に、化粧料Cの残量が僅かであることを使用者が確認したとき、ディップチューブ17を下降させるものであるが、この下降のための構造が実施形態3や実施形態4の構造とは異なるものである。そこで以下では、ディップチューブ17を下降させる構造について説明する。
【0049】
図15は、本実施形態による化粧料容器6の全体外形を示している。本実施形態では図示の通り、有底円筒状の外筒11の上端に薄い円環状の押え部材60が固定され、この押え部材60の円孔から突出している回転部材61が、押え部材60から抜け出ることなく自身の周方向に回転可能とされている。
図16は、これらの押え部材60および回転部材61の近辺の構造を、外筒11の筒軸を通る面で切断して示している。ここに示される通り押え部材60は、ねじ結合によって外筒11に一体化されている。回転部材61はその下端において周外方に飛び出た鍔部が、押え部材60によって、回転可能に押えられている。
【0050】
また回転部材61の筒状部分、つまり上記鍔部の上の部分の内周面には、雌ねじが切られている。そして円筒状の凸部13の外周面には雄ねじが形成され、この雄ねじが上記雌ねじと螺合している。そこで、回転部材61が上述のように回転されると凸部13が、自身の軸方向に移動(螺進退)する。こうして凸部13が移動すると、該凸部13とねじ結合している下部の円筒部62や、該円筒部62と凸部13とによって保持されているスプレーボタン15、スプレーユニット16およびディップチューブ17も共に移動する。
【0051】
つまり回転部材61が回転されると、スプレーボタン15、凸部13、円筒部52、スプレーユニット16およびディップチューブ17が一体的に、回転部材61およびその下に保持されているスリーブ63に対して、
図15中で上下方向に相対移動する。
図17は、回転部材61の回転操作によってディップチューブ17が、
図16に表示の状態から下降した状態を示している。
【0052】
以上述べた通り化粧料容器4~6では、化粧料Cが吸引不可能となってその残量が僅かであることが確認された後、ディップチューブ17を下降させることにより、化粧料Cをさらに所定量吸引、スプレーすることができる。しかしディップチューブ17を下降させる代わりに、僅かな残量となっている化粧料Cを上方に押し上げても同じ作用が得られることは、例えば
図11から明らかである。
【0053】
次に
図18~
図22を参照して、上述のように化粧料Cを上方に押し上げるようにした第7実施形態の化粧料容器7について説明する。
図18はこの化粧料容器7の外形形状を示している。図示の通りこの化粧料容器7において、無底円筒状の外筒11の内部には、同じく無底円筒状の中筒70が配されており、この外筒11の下端は、有底円筒状の袴パーツ71によって閉じられている。
図19および
図21はこの化粧料容器7を、外筒11を透明化して示している。
図20および
図22はこの化粧料容器7を、外筒11の筒軸を含む面で破断して示している。なおこれらの図では、煩雑化を避けるために断面にハッチングは付していない。
【0054】
外筒11の周壁内面には、螺旋溝11fが刻設されている。袴パーツ71は外筒11に対して、筒軸方向に離脱することなく周方向に相対回転可能に組み付けられている。この袴パーツ71の上部には、筒状部材72が固定されている。筒状部材72は周壁部に、筒軸方向に延びるスリット72aを有している。この筒状部材72の中には、蛇腹状の有底の化粧料受け具73が配されている。化粧料受け具73は上記中筒70の下端を閉じて、この中筒70と共に、内部に化粧料Cを収容する容器を構成している。この化粧料受け具73の周壁外面には、径外方へ突出した凸部(図示せず)が設けられており、この凸部は筒状部材72のスリット72aを通して、外筒11の螺旋溝11f内に収められている。
【0055】
以上の構成を有する化粧料容器7は通常、
図19および
図20に示す状態、つまり化粧料受け具73が袴パーツ71の底面上に載っている状態で使用される。その状態下でディップチューブ17の先端は、化粧料受け具73の底面から上方に少し離れた位置にある。このときディップチューブ17は、化粧料受け具73の底面上の化粧料Cを吸引可能な初期位置にある。この状態で化粧料Cの使用が重ねられると、化粧料Cの液面L(図示せず)はディップチューブ17の先端よりやや下の位置まで下降する。この状態になると、ディップチューブ17から化粧料Cを吸い上げることができないので、スプレーボタン15を押下してもスプレー口14から化粧料Cが噴射されない。使用者はそれにより、化粧料Cの残量が僅かであることを知ることができる。
【0056】
その状態となったとき使用者は、例えば化粧品の使用説明書に記載されていた既知の案内等から、袴パーツ71を所定方向に回転させれば僅かな残量の化粧料Cを使い切れることが分かっている。使用者がそのように袴パーツ71を回転させると、化粧料容器7の内部の状態は
図21および
図22に示す通りとなる。つまり、袴パーツ71と共に筒状部材72が回転すると、そのスリット72aを通して外筒11の螺旋溝11f内に収められている前記凸部が螺旋溝11fに沿って上昇する。それにより、蛇腹状の化粧料受け具73が底部を上げるように縮むので、化粧料受け具73の底部上に残っている化粧料Cの中にディップチューブ17の先端が入り、この化粧料Cを吸い上げ可能となる。
【0057】
以上説明した通り本実施形態では、螺旋溝11fを有する外筒11、袴パーツ71、筒状部材72、および化粧料受け具73により、化粧料Cの液面Lの高さ位置を変更させる化粧料移動手段が構成されている。
【0058】
次に
図23~
図25を参照して、本発明の第8実施形態による化粧料容器8について説明する。
図23の(A)、(B)はそれぞれ、本実施形態の化粧料容器8の全体形状を示す斜視図、縦断面図である。なお、この縦断面図および以下に示す
図24、25の縦断面図は、円筒状の外層80の中心軸を含む断面についての断面形状を示している。
図23に示される通りこの化粧料容器8においては、外層80および内層81からなる、一般にデラミボトルと称される二重構造体が設けられている。外層80は高剛性の材料を用いて有底筒状に形成されている。一方内層81は可撓性の高い材料を用いて袋状に形成され、外層80から剥離可能にして該外層80と一体化されている。
【0059】
化粧料Cは、この袋状に形成された内層81内に収容されている。つまり本実施形態では内層81が、化粧料Cを収容する容器を構成している。ディップチューブ17はこの内層81内に上方から進入して、化粧料Cを吸い上げ可能となっている。ディップチューブ17は、
図15~
図17に示した第6実施形態の化粧料容器6におけるのと同様の機構により、
図23の(B)に示す位置から下降可能とされている。内層81は化粧料Cが吸い上げられるにつれ、次第に縮小するように、つまり容積を減じるように変形しながら外層80から剥離する。
【0060】
内層81の中には、外層80と同様に高剛性の材料を用いて形成された化粧料受け具82が配設されている。この化粧料受け具82は底部82aを有する有底の円筒状とされ、上端部が内層81の上端部と共に外層80に固定されている。化粧料受け具82は上端部と下端部との間に、互いに向かい合う同形状の2つの開口82bを有している。つまり化粧料受け具82の上端部と下端部とは、これらの開口82bの間で上下に延びる細い2つの周壁部分によって連絡されている。これらの細い2つの周壁部分も、互いに向かい合う同形状のものとである。
図23の(B)は、上述のように外層80の中心軸を含む断面のうち、これらの細い2つの周壁部分が重なって見える方向に対して垂直な断面についての断面形状を示している。それに対して
図24および
図25は、上記細い2つの周壁部分が重なって見える方向に対して平行な断面についての断面形状を示している。
【0061】
ディップチューブ17の先端つまり下端には、押え部材83が固定されている。この押え部材83は、上記化粧料受け具82の底部82a上の円筒状部分内に入って、該円筒状部分の内周面と緩く嵌合する形状とされている。またこの押え部材83には、ディップチューブ17の管内と整合する位置において、貫通した吸込み用孔83aが設けられている。ディップチューブ17は、化粧料受け具82の底部82aの上に残っている化粧料Cを、上記吸込み用孔83aを通して吸引する。内層81は化粧料Cが吸い上げられるにつれ、次第に縮小するように変形しながら外層80から剥離する。
図23~
図25では内層81の変形は示していないが、この変形が進行するにつれて内層81は、化粧料受け具82の2つの開口82bを通って該化粧料受け具82の内側に引かれるように変形する。
【0062】
化粧料容器8において、化粧料Cの残量が普通に使用を続けられる程度に多い場合、その液面Lは
図23の(B)および
図24に示す状態となっている。この状態から化粧料Cの使用が重ねられて、化粧料受け具82の底部82a上に残っている化粧料Cの液面Lが、押え部材83の下面と同じ高さ程度まで低下すると、化粧料Cはディップチューブ17から吸い上げられなくなる。使用者は、ディップチューブ17から化粧料Cが吸い上げられない、つまりスプレーボタン15を押下してもスプレー口14から化粧料Cが噴射されなくなったことにより、化粧料Cの残量が僅かであることを知ることができる。
【0063】
その状態となったとき使用者は、例えば化粧品の使用説明書に記載されていた既知の案内等から、回転部材61を所定方向に回す操作をすれば、僅かな残量の化粧料Cを使い切れることが分かっている。そこで使用者は回転部材61を回転操作して、押え部材83が化粧料受け具82の底部82aと接する程度までディップチューブ17を下降させる。それにより、化粧料受け具82の底部82aの上に残っている化粧料Cがディップチューブ17から吸い上げ可能となり、所定量の化粧料Cを引き続き使用することができる。
【0064】
なおディップチューブ17が下降する際、押え部材83は化粧料受け具82の内周面と摺動しながら下降して、化粧料受け具82の底部82aの上に残っている化粧料Cが散逸することを防止する。また、このように化粧料Cを、化粧料受け具82に受けた上でディップチューブ17から吸い上げるようにしているので、化粧料Cの吸い上げに伴って内層81が縮小するように変形しても、残量が僅かであることが確認された後に吸い上げる化粧料Cを、所定量確実に確保可能となる。それに対して、化粧料受け具82を配設しないで、内層81内の化粧料Cを直接ディップチューブ17によって吸い上げるようにした場合は、内層81の変形状況によっては、吸い上げ可能な化粧料Cを所定量確保できない事態も起こり得る。
【0065】
以上説明した通り本実施形態では、回転部材61および該回転部材61と螺合した凸部13により、ディップチューブ17による化粧料Cの吸引が不可能になった後に、該ディップチューブ17を下降させ得る手段が構成されている。
【0066】
次に
図26~
図28を参照して、本発明の第9実施形態による化粧料容器9について説明する。
図26は本実施形態の化粧料容器9の縦断面形状を示すものであり、ここに示される通り外筒11の中には、外層91および内層92からなる二重構造体が設けられている。前述した通りこの二重構造体は、一般にデラミボトルと称されるものである。外層91は高剛性の材料を用いて下端が開いた筒状に形成され、外筒11に固着されている。一方内層92は可撓性の高い材料を用いて袋状に形成され、外層91から剥離可能にして該外層91と一体化されている。化粧料Cはこの内層92内に収容されている。ディップチューブ17はこの内層92内に上方から進入して、化粧料Cを吸い上げ可能となっている。内層92は化粧料Cが吸い上げられるにつれ、次第に縮小するように変形しながら外層91から剥離する。
【0067】
ディップチューブ17の先端部には、小室93が取り付けられている。この小室93は、下部が閉じられ側部に開口93aが形成されたものである。内層92内の化粧料Cは、開口93aを通って小室93内に流入してから、ディップチューブ17によって吸い上げられる。ディップチューブ17の先端部に対して小室93は、下方に離脱することはない状態で、上下方向に相対移動可能に取り付けられている。小室93は、特に持ち上げるような外力が作用しない限り、下限位置に有る状態でディップチューブ17の先端部に保持されている。
【0068】
一方、外筒11の内部には、該外筒11に対して上下方向に相対移動可能な押し上げ部材94が設けられ、この押し上げ部材94の上面には、内層92越しに小室93と向き合う押し上げ凸部95が固定されている。押し上げ部材94は図示外の操作手段からの操作力を受けると、上方に、つまり小室93に近付く方向に移動可能とされている。このように押し上げ部材94を移動させる手段としては、例えば
図20および
図22に示した化粧料受け具73を上昇させる機構等が適用可能である。
【0069】
化粧料Cの使用が重ねられると、小室93内に残っている化粧料Cの量が、ディップチューブ17から吸い上げ不可能となる程度まで少なくなる。
図27はこのときの状態を示している。使用者は、ディップチューブ17から化粧料Cが吸い上げられない、つまりスプレーボタン15を押下してもスプレー口14から化粧料Cが噴射されなくなったことにより、化粧料Cの残量が僅かであることを知ることができる。
【0070】
その状態となったとき使用者は、例えば化粧品の使用説明書に記載されていた既知の案内等から、押し上げ部材94を上方に移動させれば、僅かな残量の化粧料Cを使い切れることが分かっている。そこで使用者は、押し上げ部材94を上方に移動させる操作を行う。それにより、押し上げ凸部95が内層82を介して小室93を押し上げて、ディップチューブ17に対して上方に相対移動させる。このように小室93が移動することにより、下向きになっているディップチューブ17の先端部が、小室93内のより深い位置まで相対移動する。そこで、小室93内の内部に残っている化粧料Cがディップチューブ17から吸い上げ可能となり、所定量の化粧料Cを引き続き使用することができる。
【0071】
次に
図29および
図30を参照して、本発明の第10実施形態による化粧料容器10について説明する。
図29と
図30はそれぞれ本実施形態の化粧料容器10を、外筒11の中心軸に対して垂直な横断面(外筒11の底と平行な面)で切断して示す断面図であり、各図の手前側が化粧料容器10の上方で、奥側が化粧料容器10の下方である。この化粧料容器10は、上述した化粧料容器8や化粧料容器9と同様に、有底円筒状の外筒11の内側に外層101および内層102からなる、一般にデラミボトルと称される二重構造体を有している。
【0072】
外層101は高剛性の材料を用いて下端が開いた筒状に形成され、外筒11に固着されている。一方内層102は可撓性の高い材料を用いて袋状に形成され、外層101から剥離可能にして該外層101と一体化されている。例えば液体状の化粧料(図示せず)は、この内層102内に収容されている。本実施形態でも、この内層102内から化粧料を上方に吸い上げる例えば
図26に示すディップチューブ17と同様のディップチューブが設けられているが、そのディップチューブも図中では省いている。内層102は、ディップチューブによって化粧料が吸い上げられるにつれ、次第に縮小するように、つまり容積を減じるように変形しながら外層101から剥離する。
【0073】
図29は、内層102内から化粧料が吸い上げ可能となっている場合の状態を示している。図示の通り内層102の中には、外筒11と同軸に延びる例えば円柱状の保持部材103が配設され、この保持部材103には2つの第1規定部材104が固定されている。これらの第1規定部材104はそれぞれ板状に形成されて、内層102の全長よりもやや短い範囲に亘って上下方向に、つまり図中で紙面と直交する方向に延びている。そして2つの第1規定部材104は、保持部材103の径外方に突出して、上記横断面内では互いに略平行に延びる状態に配されている。なお保持部材103は、第1規定部材104の全長よりも短い長さとされている。
【0074】
また上記円柱状の保持部材103の内部には、この保持部材103と同軸で、この軸周りに相対回転可能とされた回転部材120が配設されている。この回転部材120には、2つの第2規定部材111が固定されている。これらの第2規定部材111はそれぞれ板状に形成されて、内層102の全長よりもやや短い範囲に亘って上下方向に、つまり図中で紙面と直交する方向に延びている。そして2つの第2規定部材111は、回転部材120の径外方に突出して、上記横断面内では互いに略平行に延びる状態に配されている。回転部材120は、例えばスプレーボタン15(
図26等参照)と連結されており、このスプレーボタン15を回転させることにより上述のように保持部材103に対して相対回転とされている。
【0075】
内層102内の化粧料が、ディップチューブによって吸引可能な程度残っている場合、回転部材120は
図29に示す回転位置に設定されて、化粧料が吸い上げられる。化粧料の使用が重ねられると、内層102内に残っている化粧料の量が、上記ディップチューブから吸い上げ不可能となる程度まで少なくなる。使用者は、ディップチューブから化粧料が吸い上げられない、つまりスプレーボタンを押下しても化粧料が噴射されなくなったことにより、化粧料の残量が僅かであることを知ることができる。
【0076】
その状態となったとき使用者は、例えば化粧品の使用説明書に記載されていた既知の案内等から、スプレーボタン15を90度回転させれば、僅かな残量の化粧料を使い切れることが分かっている。そこで使用者は、スプレーボタン15を上述のように90度回転させる操作を行う。それに伴って回転部材120が回転することより、2つの第2規定部材111は
図30に示すように、2つの第1規定部材104と略平行に延びる状態となる。
【0077】
2つの第2規定部材111が
図30に示す位置に有る場合の内層102の容積(第1の容積)と、2つの第2規定部材111が
図29に示す位置に有る場合の内層102の容積(第2の容積)とを比較すると、第2の容積よりも第1の容積の方が小となっている。つまり
図30の状態では、第2規定部材111が第1規定部材104と略平行に延びているので、上記横断面内における内層102の拡がりはこれらの規定部材111、104が延びている方向と略同じ方向(第1方向)となる。それに対して
図29の状態では、第2規定部材111が第1規定部材104と略直角な方向に延びているので、上記横断面内における内層102の拡がりは、上記第1方向に加えて、それと略直角な方向(第2方向)にも延びている。
【0078】
なお、保持部材103が上下方向に延びている範囲内では、内層102の内面はこの保持部材103の外周面110に接する状態となり、保持部材103が上下方向に延びていない範囲内では、内層102の内面が保持部材103の外周面110に接することはない。
【0079】
以上の通り、回転部材120を回転させることより内層102の容積(第1の容積)は、回転部材120を回転させる前の容積(第2の容積)よりも小さくなるので、内層102内の化粧料の液面は、回転部材120を回転させる前の化粧料の液面よりも高くなる。そこで、内層102の内部に残っている化粧料がディップチューブから吸い上げ可能となり、所定量の化粧料を引き続き使用することができる。
【0080】
本実施形態では、内層102の容積を、第1の容積と、この第1の容積よりも大きい第2の容積との間で変更させる内層容積変更手段が、第1規定部材104および第2規定部材111によって構成されているが、内層容積変更手段はそれ以外の構成とされてもよい。例えば、固定の第1規定部材と回転される第2規定部材を、それぞれ120度の角度ピッチで外方に延びる3つの突出部分を有するものとし、第2規定部材を、双方の3つの突出部分が略同方向に延びるようになる回転位置と、双方の3つの突出部分が互いに略60度ずれて延びるようになる回転位置との間で回転移動させることにより、前者における内層102の容積を、後者における内層102の容積よりも小さく設定することも可能である。
【0081】
さらには、内層102の内部に、コウモリ傘の骨組みと同様の骨組みを配設し、この骨組みを、コウモリ傘を開いたときと同様の状態と、コウモリ傘を閉じたときと同様の状態のいずれかに設定できるように構成して、内層102の容積を変更させることも可能である。
【符号の説明】
【0082】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10 化粧料容器
11 外筒
12 蓋部
13 凸部
14 スプレー口
15 スプレーボタン
16 スプレーユニット
17 ディップチューブ
17a ディップチューブの先端部
18 底部
19 底板
19a 底板の第1部分
19b 底板の第2部分
20、70 中筒
20a 中筒の開口
31 外側中筒
31a 外側中筒の第1開口
31b 外側中筒の第2開口
32 内側中筒
32a 内側中筒の第1開口
32b 内側中筒の第2開口
40、50 スペーサ
41、51 中栓
60 押え部材
61 回転部材
62 円筒部
63 スリーブ
71 袴パーツ
72 筒状部材
72a 筒状部材のスリット
73、82 化粧料受け具
80、91、101 外層
81、92、102 内層
82a 化粧料受け具の底部
82b 化粧料受け具の開口
83 押え部材
83a 押え部材の吸込み用孔
93 小室
93a 小室の開口
94 押し上げ部材
95 押し上げ凸部
103 保持部材
104 第1規定部材
111 第2規定部材
120 回転部材
C 化粧料
L 化粧料の液面