IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特許-吐出装置 図1
  • 特許-吐出装置 図2
  • 特許-吐出装置 図3
  • 特許-吐出装置 図4
  • 特許-吐出装置 図5
  • 特許-吐出装置 図6
  • 特許-吐出装置 図7
  • 特許-吐出装置 図8
  • 特許-吐出装置 図9
  • 特許-吐出装置 図10
  • 特許-吐出装置 図11
  • 特許-吐出装置 図12
  • 特許-吐出装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】吐出装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/20 20060101AFI20240404BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20240404BHJP
   A61H 9/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A47K3/20
A47K3/00 F
A47K3/00 E
A47K3/00 K
A61H9/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020155733
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049502
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-103381(JP,A)
【文献】特開2017-169799(JP,A)
【文献】特開2008-043464(JP,A)
【文献】特開2019-150334(JP,A)
【文献】特開2017-064099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00-4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴流を吐出する第1流路と、
前記噴流よりも左右方向幅が広く扁平な膜状流であって、前記噴流と合流して対象に到達する膜状流を吐出する第2流路とを備える、吐出装置。
【請求項2】
前記第1流路および前記第2流路は、浴槽のフランジ部に固定され、
前記噴流および前記膜状流は、入浴者の肩に到達する請求項1に記載の吐出装置。
【請求項3】
前記噴流は、流量と進行方向の少なくとも一方が時間的に変化する変化噴流である請求項1から2のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項4】
合流前において、前記噴流の上下幅は、前記膜状流の上下幅よりも大きい請求項1から3のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項5】
合流前において、前記噴流は、前記第1流路から離れるに従って前記膜状流に接近する請求項1から4のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項6】
合流前において、前記噴流の流速は、前記膜状流の流速と実質的に等しい請求項1から5のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項7】
前後方向において、前記第1流路の出口孔は、前記第2流路の吐出口と同じ位置から後方の位置の範囲に配置される請求項1から6のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項8】
前記第1流路の出口孔の近傍に前記噴流に前記膜状流を合流させるための合流室が設けられる請求項1から7のいずれか1項に記載の吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、噴流を噴射する吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の噴射口から噴流を噴射する装置が知られている。例えば、特許文献1には、ノズルの噴流噴射口から噴流を勢いよく噴射して噴流を肩に当てることで肩のマッサージをする肩マッサージ装置が記載されている。特許文献1に記載の装置では、噴流を噴射するノズルの他に、当該噴流の周囲に環状の膜流を形成するための膜流吐出口をノズルの噴流噴射口の回りに設けている。この装置では、噴流噴射口から噴流を勢いよく噴射して噴流を肩に当てるとき、膜流吐出口から噴流を囲むように環状の膜流を吐出して噴流の回りを膜流で囲む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-103381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、所定機能を発揮する水流を吐出する吐出装置を検討し、次の新たな認識を得た。強い水勢を広範囲に吐水することを考えた場合、特許文献1に記載の装置では、膜流に囲まれた範囲にしか噴流は届かず、また噴流自体も当たっていない部位や当たっていない瞬間が生まれてしまい、強く広範囲に水流を当てることができない。
【0005】
本開示の目的の1つは、高い水勢を有し、広範囲に吐水することができる吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の吐出装置は、噴流を吐出する第1流路と、噴流よりも左右方向幅が広く扁平な膜状流であって、噴流と合流して対象に到達する膜状流を吐出する第2流路とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の吐出システムを側方から見た構成図である。
図2】実施形態の吐出装置の斜視図である。
図3図2のA-A線に沿った断面図である。
図4図2のB-B線に沿った断面図である。
図5図4の合流室の拡大図である。
図6】実施形態の合流室の吐液口の開口形状を示す模式図である。
図7】合流室の吐液口の開口形状の第2例を示す模式図である。
図8】合流室の吐液口の開口形状の第3例を示す模式図である。
図9】合流室の吐液口の開口形状の第4例を示す模式図である。
図10】実施形態の第1吐出部の平面図である。
図11】実施形態の第1吐出部の噴射流路の拡大図である。
図12】実施形態の第1吐出部の噴射流路の流れの状態を示す平面図である。
図13】実施形態の噴流と膜状流の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素の一部を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書で言及する構造及び形状に、言及している内容に厳密に一致する構造及び形状のみでなく、寸法誤差、製造誤差等の誤差の分だけずれた構造及び形状も含む。各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0009】
第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられる。この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって本開示の構成が限定されるものではない。以下の実施形態は、本開示の内容理解を助けるために例示するものであり、本開示の構成を限定するものではない。
【0010】
本開示の吐出装置の用途に限定はなく、各種の装置に適用できる。一例として本開示の吐出装置は、以下の用途に適用できる。本開示の吐出装置は、対象に吐水して汚れを減らす装置に適用できる。この吐水の対象としては、食器等の器具、浴槽、洗面槽等の水回り器具、車両等の機械、建物等の構造物などが挙げられる。本開示の吐出装置は、地面、植物等に散水する装置に適用できる。本開示の吐出装置は、対象に吐水してマッサージ感等の刺激を与える装置に適用できる。実施形態の説明では、本開示の吐出装置を、入浴者に到達する水流を吐出する装置に適用した例を示す。
【0011】
[実施形態]
図1図4を参照する。本開示の実施形態は吐出装置10である。吐出装置10は、浴室設備の浴槽16に用いられる。浴室設備は、この他にも、浴室壁、洗い場床等を備える。浴槽16は、吐出装置10から吐出される噴流Jと膜状流Fとを受けることが可能な槽体の一例となる。
【0012】
説明の便宜上、図示のように、平面上において、吐出装置10の吐出方向に沿った平面上の前後方向をX方向といい、平面上で前後方向に直交する左右方向をY方向といい、鉛直な上下方向をZ方向という。X方向、Y方向およびZ方向は互いに直交する。これらは厳密に直交している場合に限らず、ほぼ直交している場合も含む。吐出装置10の短手方向は、X方向に一致しており、吐出装置10の長手方向は、Y方向に一致している。このような方向の表記は吐出装置10の使用姿勢を制限するものではなく、吐出装置10は用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0013】
吐出装置10は、浴槽16のフランジ部14に固定される板状の基体部12を備える。実施形態のフランジ部14は、浴槽16の上端開口の周縁部を構成する。先ず、吐出装置10の全体構成を説明する。
【0014】
吐出装置10は、基体部12に支持され、互いに異なる形態で液体を吐出する複数の吐出部を備える。実施形態の吐出装置10は、基体部12に支持される第1吐出部30と、第2吐出部68と、合流室28とを有する。吐出装置10は、第2吐出部68の上部に配置される上部ユニット78を備える。上部ユニット78は基体部12に支持される。図1では、これらの構成要素を縦断面で示している。
【0015】
第1吐出部30は、給液路22から供給される液体Wを出口孔38から噴流Jとして吐き出す噴射流路32を有する。噴射流路32は第1流路を例示している。この例の噴流Jは、進行方向に直交する断面(以下、単に「断面」という)が、略矩形、略楕円形等である棒状流である。この例の噴流Jは、流量と進行方向の少なくとも一方が時間的に変化する運動噴流である。液体Wは、加熱水、非加熱水およびこれらを混合した液体に例示される。噴射流路32については後述する。
【0016】
第2吐出部68は、給液路22から供給される液体Wを吐出口72から膜状流Fとして吐き出す吐出流路70を有する。吐出流路70は、噴流Jよりも左右方向幅が広く扁平な膜状流であって、噴流Jと合流して対象に到達する膜状流Fを吐出する。吐出流路70は、第2流路を例示している。吐出流路70の吐出口72は、吐出装置10の前面部に開口し、前向きに膜状流Fを吐き出す。膜状流Fは、噴流Jよりも左右方向幅が広い扁平な膜状流である。この例の膜状流Fの断面は、Y方向に長く、Z方向に薄く、X方向に進行する。
【0017】
噴射流路32および吐出流路70は、浴槽16のフランジ部14に固定される。噴流Jおよび膜状流Fは、互いに合流して統合流Mとなって対象の入浴者8に到達する。実施形態では、噴射流路32および吐出流路70は、入浴者8の首よりも下方において、統合流Mが入浴者8の肩に到達するように構成されている。
【0018】
噴流Jおよび膜状流Fは、吐出装置10と入浴者8との間で互いに合流してもよい。吐出装置10と入浴者8との距離が短い場合でも、入浴者8に到達する前に、噴流Jが膜状流Fに合流することが望ましい。そこで、実施形態の吐出装置10では、噴射流路32の出口孔38の近傍に噴流Jに膜状流Fを合流させるための合流室28が設けられている。
【0019】
上部ユニット78は、照明部80および枕部92を有する。照明部80は、吐出装置10の前面部から光Eを出力し、例えば、膜状流Fに光Eを照射して、視覚を通じて入浴者8にリラックス効果を与えうる。枕部92は、吐出装置10の上面に設けられており、入浴者8が頭を載せることが可能な形状と性質とを有している。
【0020】
吐出装置10は、吐出システム18に用いられる。吐出システム18は、噴射対象の液体Wを貯留する貯留槽20と、貯留槽20から吐出装置10に液体Wを供給する給液路22と、給液路22の途中に設けられるポンプ24と、ポンプ24を制御する制御部26と、を備える。実施形態の貯留槽20は、噴射対象の液体Wとして浴槽水を貯留する浴槽16である。ポンプ24は、制御部26による制御のもと、貯留槽20から吸引した液体Wを圧送することによって、給液路22を通して吐出装置10に液体Wを供給する。制御部26は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアとソフトウェアを組み合わせたコンピュータである。
【0021】
吐出装置10は、給液路22から供給される液体Wを各種形態の吐水として浴槽16内に吐き出す。実施形態の吐出装置10は、噴射流路32から、液体の単相流の噴流Jを噴射し、吐出流路70から膜状流Fを吐出する。実施形態の吐出装置10は、ポンプ24によって給液路22を循環する浴槽水を噴射する。実施形態の噴流Jは、入浴者8の身体、特に、浴槽16内において座位姿勢にある入浴者8の背中等に背面側から当てることができる。これにより、入浴者8にマッサージ効果を付与できる。
【0022】
図2を参照する。この図は、吐出装置10を斜め前方から視た図である。浴槽16のフランジ部14には、吐出装置10を取り付けるための平坦な領域が形成されている。図2に示すように、吐出装置10を、左右方向の中央をX方向に通るA-A線に沿った側断面を図3に示す。吐出装置10を、噴射流路32の左右方向の中央をX方向に通るB-B線に沿った側断面を図4に示す。吐出装置10の前面には、後述する吐液するための吐液口28cが開口している。
【0023】
図3を参照する。この図には、主に第2吐出部68と吐出流路70とが示されている。吐出装置10は、基体部12よりも上の部分と、基体部12から下の部分とに分離できる。
【0024】
基体部12は、フランジ部14の貫通孔14hを貫通して給液路22から液体の供給を受ける中空筒状の受液部12kを有する。受液部12kの外周には、受液部12kを環囲する中空筒状の接続筒部12mが固定される。接続筒部12mの下部には給液路22が接続される。基体部12は、フランジ部14の上側に延在する平坦部12fと、接続筒部12mの外周に螺合する配管接続部材22jとの間にフランジ部14を挟んで固定される。
【0025】
基体部12よりも上には、下側部材66と、上側部材67と、中間壁部64と、通路筒部62とが設けられる。下側部材66は、前後よりも左右に長い箱状の部材で、前後方向の中間に下向きに凹む下側凹部66bと、フランジ部14を突き抜けて下方に突出する中空筒状の突出管部66dとを有する。突出管部66dは、受液部12kの内周に着脱可能に嵌合する。
【0026】
中間壁部64は、下側凹部66bに収容され、下側凹部66bの空間と上部の空間とを仕切る。中間壁部64には、上下に延びる中空筒状の通路筒部62が設けられる。上側部材67は、下側部材66の上部を覆う前後よりも左右に長い箱状の部材で、前後方向の中間に上向きに凹む上側凹部67bを有する。上側凹部67bの下流側に吐出流路70が構成される。
【0027】
噴射流路32および吐出流路70に、給液路22から供給される液体Wの導入通路60を説明する。図3に示すように、導入通路60は、上流側から下流側に向かって連設される第1通路60a、第2通路60b、第3通路60cおよび第4通路60eを含む。第1通路60aは、突出管部66dの中空部を上下に延びる筒状の通路であり、給液路22の下流側に連通する。第2通路60bは、下側凹部66bに設けられる通路であり、第1通路60aの下流側に連通する。第3通路60cは、通路筒部62の中空部を上下に延びる筒状の通路であり、第2通路60bの下流側に連通する。第4通路60eは、上側凹部67bの上部空間であり、前後よりも左右に長く、上下に薄い空間である。第4通路60eは、第3通路60cの下流側に連通する。
【0028】
給液路22から供給された液体W1は、第1通路60aを下から上に進行し、第2通路60bに流入して前後左右に広がる。第2通路60bに流入した液体W1は、第3通路60cを下から上に進行し、第4通路60eに流入し、特に左右に広がる。第4通路60eに流入した液体W1の一部は、液体W2として吐出流路70に供給される。第4通路60eに流入した液体W1の他の一部は、液体W3として噴射流路32に供給される(図4を参照)。吐出流路70は、前方視で上下よりも左右に幅広い断面に、液体W2を絞って、吐出口72から膜状流Fを吐出する。
【0029】
図4を参照する。この図には、主に、第1吐出部30の噴射流路32と第2吐出部68の吐出流路70とが示されている。第1吐出部30は、左右よりも上下に小さい上面視で矩形の箱状を呈し、入口流路40および合流部44を含む。第1吐出部30は、吐出流路70の直下に配置される。上側凹部67bの第4通路60eに流入した液体W1の一部は、液体W3として、上側凹部67bに設けられた分流筒部33の分流路34aを上から下に進行する。液体W3は、分流路34aから中空筒状の中継筒部34の中空部34bを通じて、入口流路40の天井に設けられた入口孔37から第1吐出部30に流入する。第1吐出部30は、入口孔37から流入する液体W3を噴流Jに変化させ、出口孔38から噴射する。出口孔38と吐出口72の直ぐ下流側には噴流Jに膜状流Fを合流させるための合流室28が設けられている。合流室28は、出口孔38の近傍に設けられてもよい。
【0030】
図5を参照する。合流室28は、噴射流路32の出口孔38と吐出流路70の吐出口72の下流側に連設された合流空間28aを有する。合流室28は、合流空間28aの周囲を規定する周壁を有する。合流室28の上流側には第1吐出部30の噴射流路32の出口孔38と、第2吐出部68の吐出流路70の吐出口72とが開口する。第2吐出部68は、第1吐出部30の上に連設されており、吐出口72は、出口孔38の直上に配置されている。合流室28の下流側に統合流Mの出口として吐液口28cが設けられている。
【0031】
実施形態では、噴流Jと膜状流Fは、合流室28で合流し統合流Mを形成する。合流室28には、噴流Jの通路と、膜状流Fの通路とを隔てる壁が設けられていない。噴流Jは、噴射流路32の出口孔38から下流に離れる(前方に進行する)に従って膜状流Fに接近する。合流室28において、左右方向から視た噴流Jの進行方向と膜状流Fの進行方向とが為す角は、一例として1°以上で5°以下の範囲に設定される。
【0032】
実施形態では、合流前において、噴流Jの上下幅は、膜状流Fの上下幅よりも大きい。例えば、上下幅および左右幅が5mm程度の噴流Jを肩に当てることにより、肩に刺激感のある噴流Jを出しつつ、肩全体を温められる。この観点から、噴流Jの上下幅は、例えば3mm以上で20mm以下の範囲であってもよい。
【0033】
入浴者8に到達する前に吐水を合流させることが望ましい。このため、実施形態では、前後方向において、噴射流路32の出口孔38は、吐出流路70の吐出口72と同じ位置からそれよりも後方に配置される。
【0034】
合流後の噴流Jと膜状流Fは分離、突抜を減らすことが望ましい。このため、実施形態では、合流前において、噴流Jの流速は、膜状流Fの流速と実質的に等しくなるように構成されている。実質的に等しいとは、噴流Jの流速と膜状流Fの流速とが等速である場合と、流速の差が測定誤差等の誤差の範囲より小さい場合とを含む。
【0035】
吐液口28cから吐出される統合流Mの断面は、吐液口28cの前側から視た開口形状に対応し、実質的に開口形状と等しい。図6図9は、吐液口28cの前側から視た開口形状を示している。図6は、実施形態の吐液口28cを示し、図7図9は、別例として第2例、第3例、第4例の吐液口28cを示す。
【0036】
図6を参照して、実施形態の吐液口28cを説明する。合流室28の吐液口28cは、主に噴流Jが吐出される第1矩形部28pと、主に膜状流Fが吐出される第2矩形部28sとが統合された開口形状を有する。図6に示すように、実施形態の合流室28の吐液口28cは、Y方向に離隔された2つの第1矩形部28pと、これらの上側に接続された第2矩形部28sとを有する。前方視で(X方向に視たとき)、第1矩形部28pは、左右幅と上下幅とが略等しい矩形を呈し、第2矩形部28sは、左右幅が上下幅よりも大幅に大きい横長の矩形を呈する。
【0037】
図7を参照して、第2例の吐液口28cを説明する。膜状流Fは、噴流Jの下側に統合されてもよい。図7の例では、吐液口28cは、Y方向に離隔された2つの第1矩形部28pと、これらの下側に接続された第2矩形部28sとを有する。この場合、第2吐出部68は第1吐出部30の下に連設される。
【0038】
図8を参照して、第3例の吐液口28cを説明する。膜状流Fの上下中心は、噴流Jの上下中心と同じ位置であってもよい。膜状流Fは、2つの噴流Jの間に統合されてもよい。図8の例では、吐液口28cは、Y方向に離隔された2つの第1矩形部28pと、これらの間に接続された第2矩形部28sとを有する。この場合、第2吐出部68は、2つの第1吐出部30の間であって、これらと同じ高さに設けられる。
【0039】
図9を参照し、第4例の吐液口28cを説明する。膜状流Fの上下幅は、噴流Jの上下幅よりも大きくてもよい。2つの噴流Jが膜状流Fの中に統合されてもよい。図9の例では、吐液口28cは、Y方向に離隔された2つの第1矩形部28pと、第1矩形部28pを囲むように配置された第2矩形部28sとを有する。この例では、第2矩形部28sの上下幅、左右幅は、第1矩形部28pの上下幅、左右幅よりも大きい。
【0040】
図10を参照して第1吐出部30および噴射流路32を説明する。この図は、第1吐出部30を、噴射流路32の上下中央を通る平面で切断した断面を示す。実施形態では、図10に示すように、基体部12には、複数(この例では2つ)の第1吐出部30がY方向に離隔して形成されている。2つの第1吐出部30は、基体部12のY方向中心線Cyに対して対称に配置されており、それぞれ同じ構成を有する。したがって、以下の説明は2つの第1吐出部30それぞれに適用される。この例では、中心線Cyは、平面視において、吐出装置10の外面部分の左右方向寸法を二等分する左右方向中心線であり、Y方向に直交し、X方向に平行である。
【0041】
図11を参照する。この図は、第1吐出部30の噴射流路32を拡大して示している。実施形態の噴射流路32には、液体W3が中継筒部34を介して入口孔37から下向きに供給される。噴射流路32は、給液路22から供給される液体W3を噴流Jとして噴射する。ここでの噴流Jとは、噴射流路32から外部に出るときの進行方向が、周期的、つまり、時間的に変化する噴流をいう。噴射流路32は、外部に出るときの噴流の噴射方向を方向Daから方向Dbの範囲で時間的に変化させることによって、噴流Jを噴射可能である。実施形態の噴射流路32は、噴流の噴射方向を平面内で揺動させることによって、噴流Jとして波状噴流を放射状に噴射する。
【0042】
この「波状」とは、噴射流路32から離れるに連れて、噴流Jがなす噴流軌跡の軌跡中心と直交する方向に周期的にうねる形状をいう。この「波状」には、物理的に厳密な波としての条件を満たす形状の他に、その形状に似た形状も含まれる。実施形態の噴射流路32は、空気中において噴流Jを噴射する。第1吐出部30は、静止した状態のまま噴流Jを噴射する流体素子を構成する。
【0043】
噴射流路32は、噴流Jを誘起する誘起流路36と、誘起流路36が誘起した噴流Jを外部に噴射する出口孔38とを備える。誘起流路36の流路中心線CL1はX方向に沿って延びる。噴射流路32の噴射方向を前側(図11の紙面左側)といい、それとは反対側を後側(図11の紙面右側)という。
【0044】
誘起流路36は、上流側から下流側に向けて配置された、入口流路40と、一対の中間流路42A、42Bと、合流部44とを含む。誘起流路36には、下流側に向かう液体の流れを分岐させる分岐部46が設けられる。分岐部46は、噴射流路32において液流を遮断する平面視で島状の第1の壁部として機能する。図11の分岐部46は、平面視で前面がX方向に凹む凹面で、後面がX方向に凸となる凸面である三日月形状を呈する。
【0045】
入口流路40は、誘起流路36の分岐部46よりも後側に設けられる。入口流路40の天井に開口する入口孔37を介して、液体W3が中継筒部34から下向きに流入する。
【0046】
一対の中間流路42A、42Bは、入口流路40の前側であって、分岐部46のY方向両側に設けられる。入口流路40に流入した液体W3は、分岐部46によってY方向に分けられ、一対の中間流路42A、42Bに流れる。つまり、一対の中間流路42A、42Bは、入口孔37から流入した液体W3の主流が2筋に分岐して流れる流路である。合流部44は、一対の中間流路42A、42Bの前側であって、分岐部46の前側に設けられる。一対の中間流路42A、42Bに分岐して流入した液体W3は、それぞれ合流部44で合流する。
【0047】
誘起流路36には、合流部44内にて下流側に向かう液体の流れを遮る出口側壁部48が設けられる。出口側壁部48は、誘起流路36の内部空間と外部空間とを隔てており、出口孔38は出口側壁部48をX方向に貫通している。
【0048】
出口孔38は、噴射流路32の下流側端部に形成され、第1吐出部30の外面部(前面部)に開口する。出口孔38は、その内幅寸法が誘起流路36の内幅寸法より小さく、前側に向かうに連れて、Y方向に徐々に広がる。
【0049】
図12を参照して噴射流路32の動作を説明する。図12では、噴射流路32における液体W3の主な流れを矢印で示す。入口流路40内に流入した液体は、第1内部噴流S1と第2内部噴流S2として分岐部46の両側部から合流部44に流入する。噴流S1、S2は、液体のランダム性に起因する揺らぎの影響を受けて、いずれか一方が他方よりも勢いの強い支配的な流れ(以下、支配流という)となり、他方は非支配流となる。図12は、第1内部噴流S1が支配流であり、第2内部噴流S2が非支配流である場合を示す。
【0050】
図12に示すように、支配流は、出口側壁部48に衝突するまで勢いを持って流れ、非支配流は、支配流との衝突によって流れを阻害される。支配流の一部Gは、合流部44内で折り返して非支配流と合流し、非支配流の勢いを徐々に増幅する。非支配流の勢いが増幅されると、非支配流であった第2内部噴流S2が支配流となり、支配流であった第1内部噴流S1が非支配流となる。このように、支配流と非支配流とは、周期的に切り替わる。
【0051】
第1内部噴流S1が支配流であるとき、出口孔38を通り抜ける液体は、Y方向の一方側(図中上側)に傾いた噴射方向Daに噴射され、第2内部噴流S2が支配流であるとき、出口孔38を通り抜ける液体は、Y方向の他方側(図中下側)に傾いた噴射方向Dbに噴射される。つまり、噴射方向が平面内の方向Daと方向Dbとの間で周期的に揺動して、前述の波状の噴流Jが噴射される。
【0052】
図13を参照して実施形態の噴流Jと膜状流Fの一例を説明する。実施形態の膜状流Fは、略一定の左右幅を有している。実施形態の噴流Jは、棒状流が平面内で揺動し、合流室28の吐液口28cから離れるに連れて、振幅が大きくなり周期的にうねる形状を有している。合流後の噴流Jと膜状流Fとは実質的に一体化された統合流Mとして空中を進行する。
【0053】
第1吐出部30および第2吐出部68を構成する部材は、ダイキャスト、モールド成型、プレス、マシニング等の公知の工法によって製造できる。これらの部材は複数の部材を接着、溶着等によって一体化されたものであってもよいし、3Dプリンタによって製造されてもよい。
【0054】
以上の吐出装置10の効果を説明する。吐出装置10は、噴流Jを吐出する噴射流路32と、噴流Jよりも左右方向幅が広く扁平な膜状流であって、噴流Jと合流して対象に到達する膜状流Fを吐出する吐出流路70とを備える。この構成によれば、液勢が強い噴流Jによって対象に強い作用を与え、幅広い膜状流Fにより対象の幅広い範囲に作用を及ぼすことができる。
【0055】
実施形態では、噴射流路32および吐出流路70は、浴槽16のフランジ部14に固定され、噴流Jおよび膜状流Fは、入浴者8の肩に到達する。この場合、噴流Jに膜状流Fが合流した統合流Mにより、入浴者8の肩に強い刺激感を与えながら、肩全体を暖めることができる。膜状流Fが肩にかかることで肩に水膜が形成され、噴流Jが当たった際の水はねが軽減される。
【0056】
実施形態では、噴流Jは、流量と進行方向の少なくとも一方が時間的に変化する変化噴流である。この場合、高刺激の噴流Jを広範囲に到達させることができる。入浴者8の肩にマッサージ感を与えることができる。
【0057】
実施形態では、合流前において、噴流Jの上下幅は、膜状流Fの上下幅よりも大きい。この場合、噴流Jの上下幅を大きくすることにより噴流Jの水勢を強くできる。
【0058】
実施形態では、合流前において、噴流Jは、噴射流路32から離れるに従って膜状流Fに接近する。この場合、合流後に噴流Jが膜状流Fから離れたり、噴流Jが膜状流Fを突き破ったりすることが少ない。
【0059】
実施形態では、合流前において、噴流Jの流速は、膜状流Fの流速と実質的に等しい。この場合、合流後に噴流Jが膜状流Fから離れたり、噴流Jが膜状流Fを突き破ることが少ない。
【0060】
実施形態では、前後方向において、噴射流路32の出口孔38は、吐出流路70の吐出口72と同じ位置から後方の位置の範囲に配置される。この場合、入浴者8に到達する前に吐水を合流させることができる。
【0061】
実施形態では、噴射流路32の出口孔38の近傍に噴流Jに膜状流Fを合流させるための合流室28が設けられる。この場合、入浴者8に到達する前に吐水を合流させることができる。
【0062】
各構成要素の他の変形例を説明する。
【0063】
実施形態の説明では、吐出装置10の上流側に給液路22の分岐を設けず、給液路22から供給される液体W1を吐出装置10の中で液体W2と液体W3とに分け、噴射流路32と吐出流路70とに供給する例を示した。この場合、給液路22と吐出装置10との接続箇所が少なくなり、配管作業が容易になる。
【0064】
吐出装置10の上流側で給液路22を分岐して噴射流路32および吐出流路70に、それぞれ液体Wを供給するようにしてもよい。この場合、給液路22の分岐点よりも下流側にバルブを設けることにより、噴射流路32と吐出流路70の一方に液体Wを供給し、他方に供給しないように制御できる。このバルブは開閉を切替えるものであってもよいし、給液路22からの液体Wを噴射流路32と吐出流路70の両方と一方の少なくともいずれかに切替える三方弁であってもよい。
【0065】
波状の噴流Jを誘起するメカニズムは、実施形態に示した例に限定されない。例えば、カルマン渦を生成して波状の運動噴流を誘起してもよいし、コアンダ効果を利用して波状の運動噴流を誘起してもよい。
【0066】
実施形態の説明では、吐出装置10が第1吐出部30と、第2吐出部68の2つの吐出部を有する例を示した。吐出装置10は3以上の吐出部を有してもよい。
【0067】
実施形態の説明では、噴射流路32の上側に吐出流路70が設けられる例を示した。噴射流路32と吐出流路70とは上下逆に配置されてもよい。
【0068】
以上、実施形態及び変形例を説明した。実施形態及び変形例を抽象化した技術的思想を理解するにあたり、その技術的思想は実施形態及び変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。前述した実施形態及び変形例は、いずれも具体例を示したものにすぎず、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。液体Wは、水に限らず洗剤などの薬剤を含んだ液体であってもかまわない。
【0069】
以上の構成要素の任意の組み合わせも、実施形態及び変形例を抽象化した技術的思想の態様として有効である。たとえば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形例に対して実施形態及び他の変形例の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 吐出装置、 14 フランジ部、 16 浴槽、 28 合流室、 32 噴射流路、 38 出口孔、 70 吐出流路、 72 吐出口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13