(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240408BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240408BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240408BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/01
C09K5/14 101E
(21)【出願番号】P 2021087326
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 也実
(72)【発明者】
【氏名】山田 邦弘
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-082816(JP,A)
【文献】国際公開第2020/137332(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/034508(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 3/01
C09K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃における動粘度が10~1,000,000mm
2/sのケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(A)成分中のアルケニル基1個に対して、当該成分中のケイ素原子に結合した水素原子の個数が0.5~5.0個となる量、
(C)融点が-20~70℃の、ガリウム及びガリウム合金からなる群より選択される1種以上:
3,000~12,000質量部、
(D)平均粒径が0.1~100μmの熱伝導性充填剤:10~1,000質量部、
(E)白金族金属触媒、
(F)
平均粒径1~100nmのパラジウム粉、
並びに、
(G-1)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン:0.1~500質量部
【化1】
(式(1)中、R
1は独立に脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の炭素数1~10の一価炭化水素基を表し、R
2は独立にアルキル基、アルケニル基又はアシル基である。また、aは5~100の整数であり、bは1~3の整数である。)
を含む熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
(F)成分の量が、(A)成分100質量部に対して0.00001~1.0質量部である
請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項3】
(F)成分が、パラジウム以外の担体に担持されている
請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項4】
担体が、シリカである
請求項3に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項5】
更に、(G-2)下記一般式(2):
【化2】
(式(2)中、R
3は独立に炭素原子数6~16のアルキル基であり、R
4は独立に非置換又は置換の炭素原子数1~8の1価炭化水素基であり、R
5は独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、c+dの和は1~3の整数である。)
で表されるアルコキシシラン化合物を、(A)成分100質量部に対し0.1~100質量部含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項6】
更に、(G-3)トリフルオロプロピルトリメトキシシランを(A)成分100質量部に対し0.1~100質量部含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項7】
更に、(H)アセチレン化合物、窒素化合物、有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物からなる群より選択される1種以上の付加反応制御剤を、(A)成分100質量部に対して0.1~5質量部含む
請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項8】
(C)成分が、組成物中に1~200μmの粒子状に分散している
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シリコーン組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板上に実装される発熱性電子部品、例えば、CPU等のICパッケージは、使用時の発熱による温度上昇によって性能が低下したり破損したりすることがあるため、従来、ICパッケージと放熱フィンを有する放熱部材との間に、熱伝導性が良好な熱伝導性シートを配置したり、熱伝導性グリースを適用して、前記ICパッケージ等から生じる熱を効率よく放熱部材に伝導して放熱させることが実施されている。しかしながら、電子部品等の高性能化に伴い、その発熱量が益々増加する傾向にあり、従来のものよりも更に熱伝導性に優れた材料・部材の開発が求められている。
【0003】
従来の熱伝導性シートは、手軽にマウント・装着することができるという作業・工程上の利点を有する。また、熱伝導性グリースの場合は、CPU、放熱部材等の表面の凹凸に影響されることなく、前記凹凸に追随して、前記両者間に隙間を生じせしめることなく、前記両者を密着させることができ、界面熱抵抗が小さいという利点がある。しかし、熱伝導性シート及び熱伝導性グリースは、ともに熱伝導性を付与するため熱伝導性充填剤を配合して得られるが、熱伝導性シートの場合は、その製造工程における作業性・加工性に支障をきたさないようにするために、また、熱伝導性グリースの場合は、発熱性電子部品等へシリンジ等を用いて塗工する際の作業性に問題が生じないように、そのみかけ粘度の上限を一定限度に抑制する必要があるために、いずれの場合においても熱伝導性充填剤の配合量の上限は制限され、十分な熱伝導性効果が得られないという欠点があった。
【0004】
そこで、熱伝導性ペースト内に低融点金属を配合する方法(特許文献1:特開平7-207160号公報、特許文献2:特開平8-53664号公報)、液体金属を三相複合体中に固定し、安定化する働きをする粒状材料(特許文献3:特開2002-121292号公報)等が提案されている。しかしながら、これら低融点金属を用いた熱伝導性材料は、塗工部以外の部品を汚染し、また、長時間にわたって使用すると油状物が漏出してくる等の問題があった。それらを解決するために付加硬化型シリコーン中にガリウム及び/又はガリウム合金を分散させる方法(特許文献4:特許第4551074号公報)が提案されているが、組成物の厚みが大きい場合、熱伝導率が低いため十分に満足できるものではなかった。また、その熱伝導率を上げる方法(特許文献5:特許第4913874号公報及び特許文献6:特許第5640945号公報)が提案されているが、硬化時にひび割れやボイドが発生しやすく十分な性能が発揮できなかった。
【0005】
また、従来の付加硬化型シリコーン組成物は、系内に存在する水分及び白金触媒を代表とするヒドロシリル化触媒の共存下でハイドロジェンポリシロキサンに由来するSi-H基の水素が脱離することにより、系内に水素ガスの気泡が発生し、硬化物中にてボイドとなることにより熱伝導性を損なう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-207160号公報
【文献】特開平8-53664号公報
【文献】特開2002-121292号公報
【文献】特許第4551074号公報
【文献】特許第4913874号公報
【文献】特許第5640945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、熱伝導特性に優れた材料が必要にして十分な量配合され、かつ前記材料が微粒子の状態で樹脂成分からなるマトリックス中に、均一に分散し、ひび割れやボイドがなく、かつ良好な熱伝導性を有する硬化物となる熱伝導性シリコーン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、低融点のガリウム及び/またはその合金、熱伝導性充填剤及びパラジウム粉を付加硬化型シリコーン組成物に配合することにより、前記ガリウム及び/またはその合金が微粒子状態で均一に分散した組成物が容易に得られ、前記組成物を加熱処理して硬化物とする工程において、ひび割れやボイドの発生が抑制可能であり、それにより得られた硬化物は、高い放熱性能を実現可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物を提供するものである。
【0010】
<1>
(A)25℃における動粘度が10~1,000,000mm
2/sのケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(A)成分中のアルケニル基1個に対して、当該成分中のケイ素原子に結合した水素原子の個数が0.5~5.0個となる量、
(C)融点が-20~70℃の、ガリウム及びガリウム合金からなる群より選択される1種以上:300~20,000質量部、
(D)平均粒径が0.1~100μmの熱伝導性充填剤:10~1,000質量部、
(E)白金族金属触媒、
(F)パラジウム粉、
並びに、
(G-1)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン:0.1~500質量部
【化1】
(式(1)中、R
1は独立に脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の炭素数1~10の一価炭化水素基を表し、R
2は独立にアルキル基、アルケニル基又はアシル基である。また、aは5~100の整数であり、bは1~3の整数である。)
を含む熱伝導性シリコーン組成物。
<2>
(F)成分が、平均粒径1~100nmのパラジウム粉である<1>に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
<3>
(F)成分の量が、(A)成分100質量部に対して0.00001~1.0質量部である<1>又は<2>に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
<4>
(F)成分が、パラジウム以外の担体に担持されている<1>~<3>のいずれか1つに記載の熱伝導性シリコーン組成物。
<5>
担体が、シリカである<4>に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
<6>
更に、(G-2)下記一般式(2):
【化2】
(式(2)中、R
3は独立に炭素原子数6~16のアルキル基であり、R
4は独立に非置換又は置換の炭素原子数1~8の1価炭化水素基であり、R
5は独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、c+dの和は1~3の整数である。)
で表されるアルコキシシラン化合物を、(A)成分100質量部に対し0.1~100質量部含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の熱伝導性シリコーン組成物。
<7>
更に、(G-3)トリフルオロプロピルトリメトキシシランを(A)成分100質量部に対し0.1~100質量部含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の熱伝導性シリコーン組成物。
<8>
更に、(H)有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物からなる群より選択される1種以上の付加反応制御剤を、(A)成分100質量部に対して0.1~5質量部含む<1>~<7>のいずれか1つに記載の熱伝導性シリコーン組成物。
<9>
(C)成分が、組成物中に1~200μmの粒子状に分散している<1>~<8>のいずれか1つに記載の熱伝導性シリコーン組成物。
<10>
<1>~<9>のいずれか1つに記載の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、硬化前においてはグリース状であるので、CPU等の発熱性電子部品上に塗工する際の作業性が良好であり、さらに放熱部材を圧接させる際に、両者の表面の凹凸に追従して、両者間に隙間を生じることなく両者を密着できることから、界面熱抵抗が生じることがない。また、本発明の熱伝導性シリコーン組成物を付加反応によって硬化する加熱処理工程において、ひび割れだけでなく、系内における脱水素反応により生じた水素に起因するボイドを抑制することが可能となり、得られる硬化物は高い放熱性を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[熱伝導性シリコーン組成物]
<(A)オルガノポリシロキサン>
本発明組成物の(A)成分は、ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンであり、本発明の付加反応硬化系における主剤(べースポリマー)である。
【0013】
(A)成分の25℃での動粘度は10~1,000,000mm2/sの範囲であり、好ましくは50~500,000mm2/sである。動粘度が10mm2/s未満であると硬化物が脆くなりひび割れが入りやすくなり、1,000,000mm2/sより大きいと組成物の粘度が上がりすぎてしまい取り扱いにくくなる。
なお、本発明において、動粘度はオストワルド粘度計による25℃の値である。
【0014】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状が挙げられるが、特に好ましくは直鎖状である。
【0015】
(A)成分中のケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基の数は、1分子中2個以上であればよく、好ましくは2~10個、より好ましくは2~5個である。
この脂肪族不飽和炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、1-ヘキセニル基等のアルケニル基が例示されるが、合成の容易さ、コストの面からビニル基が好ましい。この脂肪族不飽和炭化水素基は、分子鎖末端のケイ素原子、また分子鎖途中のケイ素原子のいずれに結合していてもよいが、得られる硬化物の柔軟性がよいものとするため、分子鎖末端のケイ素原子にのみ結合して存在することが好ましい。
【0016】
ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基以外のケイ素原子に結合する基としては、例えば、非置換又は置換の一価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。そして、合成面及び経済性の点から、これらのうち、90%以上がメチル基であることが好ましい。
【0017】
このようなオルガノポリシロキサンの好適な具体例としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等が挙げられ、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
<(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン>
本発明組成物の(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(以下、「Si-H基」という)を、1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、上記(A)成分の架橋剤として作用するものである。即ち、この(B)成分中のSi-H基が、後記(E)成分の白金系触媒の作用により、(A)成分中のアルケニル基とヒドロシリル化反応により付加して、架橋結合を有する3次元網状構造を有する架橋硬化物を与える。
【0019】
(B)成分のSi-H基の数は、1分子中に2個以上であり、2~30個であることが好ましい。(B)成分の分子構造は、上記要件を満たすものであれば特に限定されず、従来公知の、例えば、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状(樹脂状)等のいずれであってもよい。1分子中のケイ素原子数(又は重合度)が、通常、3~1,000個、好ましくは5~400個、より好ましくは10~300個、更に好ましくは10~100個、特に好ましくは10~60個のものが好ましい。
【0020】
Si-H基以外のケイ素原子に結合する基としては、好ましくは炭素数が1~10、より好ましくは1~6の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられ、これらのうち、合成の容易さ、コストの面からメチル基が好ましい。
【0021】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基・片末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖片末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基・片末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)HSiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH3)2SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH3)2SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH3)2SiO2/2単位と(C6H5)3SiO1/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位と(C6H5)2SiO2/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH3)2SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0022】
(B)成分の配合量は、(A)成分中のケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基1個に対して、(B)成分中のSi-H基の個数が0.5~5.0個となる量であり、0.7~3.0の範囲が好ましい。(B)成分の配合量が上記下限未満であると組成を十分に網状化できないためグリースが十分に硬化せず、上記上限を超えると得られる熱伝導性シリコーン組成物が硬くなりすぎ信頼性が悪くなる場合があり、また、発泡が起こりやすくなる。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
<(C)ガリウム及び/又はその合金>
本発明組成物の(C)成分は、融点が-20~70℃の、ガリウム及び/又はその合金である。該(C)成分は、本発明組成物から得られる硬化物に良好な熱伝導性を付与するために配合される成分であり、この成分の配合が本発明の特徴をなすものである。
【0024】
この(C)成分の融点は、上記のとおり、-20~70℃の範囲とすることが必要である。本発明に使用するためには物理的には-20℃以下のものでも使用できるが、融点が-20℃未満のものを入手するのは困難であり経済的に好ましくなく、また逆に、70℃を超えると組成物調製工程において速やかに融解しないため、作業性に劣る結果となる。よって、前記のとおり、(C)成分の融点は-20~70℃の範囲が適切な範囲である。特に、-19~50℃の範囲内のものが、本発明組成物の調製が容易であり、好ましい。
【0025】
金属ガリウムの融点は29.8℃である。また、代表的なガリウム合金としては、例えば、ガリウム-インジウム合金;例えば、Ga-In(質量比=75.4:24.6、融点=15.7℃)、ガリウム-スズ合金、ガリウム-スズ-亜鉛合金;例えば、Ga-Sn-Zn(質量比=82:12:6、融点=17℃)、ガリウム-インジウム-スズ合金;例えば、Ga-In-Sn(質量比=68.5:21.5:10、融点=-19℃や、質量比=62:25:13、融点=5.0℃や、質量比=21.5:16.0:62.5、融点=10.7℃)、ガリウム-インジウム-ビスマス-スズ合金;例えば、Ga-In-Bi-Sn(質量比=9.4:47.3:24.7:18.6、融点=48.0℃)等が挙げられる。
【0026】
この(C)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
未硬化状態の本発明組成物中に存在するガリウム及び/又はその合金の液状微粒子又は固体微粒子の形状は、略球状であり、不定形のものが含まれていてもよい。また、その平均粒径が、通常、1~200μm、特に5~150μmであることが好ましく、更に好ましくは10~100μmである。前記平均粒径が小さすぎると組成物の粘度が高くなりすぎるため、伸展性が乏しいものとなるので塗工作業性に問題があり、また、逆に大きすぎると組成物が不均一となるため発熱性電子部品等への薄膜状の塗布が困難となる。なお、前記形状及び平均粒径、更に組成物中での分散状態は、上記のとおり、組成物調製後に速やかに低温下で保存されることから、発熱性電子部品等への塗工工程まで維持することができる。なお、この平均粒径は、硬化前の組成物を2枚のスライドガラスで挟み込み、株式会社キーエンス社製のVR-3000で観察することにより算出した。即ち、この測定器により撮影した画像の中から、ランダムに10個の粒子を選び、それぞれの粒径を計測し、それらの平均値を算出した。
【0027】
この(C)成分の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、300~20,000質量部であり、特に好ましくは2,000~15,000質量部であり、更に好ましくは3,000~12,000である。前記配合量が300質量部未満であると熱伝導率が低くなり、組成物が厚い場合、十分な放熱性能が得られない。20,000質量部より多いと均一組成物とすることが困難となり、また、組成物の粘度が高すぎるものとなるため、伸展性があるグリース状のものとして組成物を得ることができない場合がある。
【0028】
<(D)熱伝導性充填剤>
本発明組成物には、前記(C)成分とともに、従来から公知の熱伝導性シート又は熱伝導性グリースに配合される(D)熱伝導性充填剤(但し、(C)成分を除く)を配合することが必要である。
【0029】
この(D)成分としては、熱伝導率が良好なものであれば特に限定されず、従来から公知のものを全て使用することができ、例えば、アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末、窒化硼素粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化珪素粉末、銅粉末、ダイヤモンド粉末、ニッケル粉末、亜鉛粉末、ステンレス粉末、カーボン粉末等が挙げられる。また、この(D)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
特に、入手のしやすさ、経済的な観点から、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末が特に好ましい。
【0030】
(D)成分の平均粒径としては、0.1~100μmであり、好ましくは1~20μmの範囲内とするのがよい。前記平均粒径が小さすぎると、得られる組成物の粘度が高くなりすぎるので伸展性の乏しいものとなる。また、逆に大きすぎると、均一な組成物を得ることが困難となる。なお、この平均粒径はマイクロトラックMT3300EX(日機装株式会社製)により測定した体積基準の体積平均径[MV]である。
【0031】
(D)成分の充填量は、(A)成分100質量部に対して10~1,000質量部の範囲であり、好ましくは50~500質量部の範囲がよい。(D)成分の配合量が(A)成分100質量部に対して10質量部より少ないと、ガリウム及び/又はその合金が前記(A)中又は(A)成分と後述の(G)成分との混合物中に均一に分散せず、1,000質量部より多いと組成物の粘度が高くなり伸展性があるグリース状のものとして組成物を得ることができない。
【0032】
<(E)白金族金属触媒>
本発明組成物の(E)成分の白金族金属触媒は、上記(A)成分中のケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基と上記(B)成分中のSi-Hとの付加反応を促進し、本発明組成物から3次元網状状態の架橋硬化物を与えるために配合される成分である。
ただし、(E)成分の白金族金属触媒に、後述する(F)成分のパラジウム粉は含まれない。
【0033】
この(E)成分としては、通常のヒドロシリル化反応に用いられる公知のものを全て使用することができ、例えば、白金金属(白金黒)、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、白金配位化合物等が挙げられる。(E)成分の配合量は、本発明組成物を硬化させるに必要な有効量であればよく、特に制限されないが、例えば、白金原子として(A)成分の質量に対して、通常、0.1~500ppm程度とすることが好ましく、より好ましくは1~200ppmである。
【0034】
<(F)パラジウム粉>
本発明組成物の(F)成分は、パラジウム粉であり、系内で発生する水素を吸収させ、ボイドを抑制するために配合される成分である。
【0035】
(F)成分のパラジウム粉の平均粒径は、配合時の取り扱い及び水素吸着効率の点から、1~100nmが好ましく、5~70nmが特に好ましい。該平均粒径は、日機装株式会社製ナノトラックUPA-EX150により測定した体積基準の累積平均径である。
【0036】
(F)成分の配合量は、ボイド抑制効果及び熱伝導経路の形成の点から、(A)成分100質量部に対して、0.00001~1.0質量部であることが好ましく、0.0005~0.1質量部の範囲であることが特に好ましい。
【0037】
(F)成分の配合方法としては特に制限はなく、(F)成分をそのままの状態で組成物に添加、分散させてもよい。また、フュームドシリカ、湿式シリカ、結晶性シリカ及び溶融シリカ等のシリカに代表される担体に(F)成分を担持させたものを配合してもよく、(F)成分を溶剤に分散させた上で組成物に添加してもよい。さらに、(F)成分を3本ロールミル等の装置を用いてオルガノポリシロキサン等に均一に分散させて得られたペースト状態の混合物を組成物中に添加してもよい。担体(例えば、結晶性シリカ)の平均粒径は日機装株式会社製マイクロトラックMT3300EXにより測定した体積基準の累積平均径である。
(F)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
<(G-1)表面処理剤>
本発明組成物には、組成物調製時に(C)成分のガリウム及び/又はその合金を疎水化処理し、且つ前記(C)成分の(A)成分のオルガノポリシロキサンとの濡れ性を向上させ、前記(C)成分を微粒子として、前記(A)成分からなるマトリックス中に均一に分散させることを目的として下記一般式(1)で示されるポリシロキサンを(G-1)表面処理剤として配合する。
【0039】
また、この(G-1)成分は、上記(D)成分の熱伝導性充填剤も、同様にその表面の濡れ性を向上させて、その均一分散性を良好なものとする作用をも有する。
【0040】
(G-1)成分は、下記一般式(1)
【化3】
(式(1)中、R
1は独立に脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の炭素数1~10の一価炭化水素基を表し、R
2は独立にアルキル基、アルケニル基又はアシル基である。また、aは5~100の整数であり、bは1~3の整数である。)
で表される、分子鎖の片末端が加水分解性基で封鎖されたポリシロキサンであり、25℃における動粘度が10~10,000mm
2/sである。なお、この動粘度はオストワルド粘度計により25℃で測定した値である。
【0041】
上記一般式(1)中のR1は、炭素数が1~10、好ましくは1~6の、脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の一価の炭化水素基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられ、これらのうち、合成の容易さ、コストの面からメチル基が好ましい。
【0042】
上記一般式(1)中のR2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基が挙げられる。これらの中では、特に、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0043】
(G-1)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~500質量部の範囲であり、好ましくは1~300質量部、より好ましくは10~250質量部である。該配合量が上記下限未満であると、(C)成分および(D)成分が十分に分散せず均一な組成物とならず、上記上限を超えると相対的に(A)成分が少なくなるため得られる組成物が硬化しにくくなり、組成物がCPU等のデバイスに塗布された後にずれが生じることにより熱伝導性能が著しく低下する場合がある。
【0044】
<その他の成分>
上記必須成分に加えて、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、必要により、下記成分を配合してもよい。
<(H)付加反応制御剤>
本発明組成物の(H)成分の付加反応制御剤は、必要により配合される成分で、室温における上記白金系触媒の作用にヒドロシリル化反応を抑制し、本発明組成物の可使時間(シェルフライフ、ポットライフ)を確保して、発熱性電子部品等への塗工作業に支障をきたさないように配合される成分である。
【0045】
この(H)成分としては、通常の付加反応硬化型シリコーン組成物に用いられる公知の付加反応制御剤を全て使用することができ、例えば、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、3-ブチン-1-オール等のアセチレン化合物や、各種窒素化合物、有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。
【0046】
この(H)成分の配合量は、上記(E)成分の使用量によっても異なり、一概にいえないが、ヒドロシリル化反応の進行を抑制することができる有効量であればよく、特に制限されない。本発明組成物の十分な可使時間の確保及び硬化性の点から、(A)成分100質量部に対して、通常、0.1~5質量部程度とすることがよい。なお、この(H)成分は、組成物中への分散性を向上させるため、必要に応じて、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール等の有機溶剤で希釈して使用することもできる。
なお、(H)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
また、本発明組成物には、更に(G-2)成分として、以下のアルコキシシランを配合してもよい。
(G-2)下記一般式(2):
【化4】
(式(2)中、R
3は独立に炭素原子数6~16のアルキル基であり、R
4は独立に非置換又は置換の炭素原子数1~8の1価炭化水素基であり、R
5は独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、c+dの和は1~3の整数である。)
【0048】
上記一般式(2)中のR3としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。炭素原子数が6未満であると上記(C)成分及び(D)成分の濡れ性の向上が充分でなく、16を超えると該(G-2)成分のオルガノシランが常温で固化するので、取り扱いが不便な上、得られた組成物の低温特性が低下する。
【0049】
また、上記一般式(2)中のR4としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;2-フェニルエチル基、2-メチル-2-フェニルエチル基等のアラルキル基;3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-(ナノフルオロブチル)エチル基、2-(へプタデカフルオロオクチル)エチル基、p-クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。これらの中では、特に、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0050】
また、上記一般式(2)中のR5としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。これらの中では、特に、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0051】
この(G-2)成分の好適な具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【化5】
【0052】
なお、この(G-2)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。また、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上であれば組成物の粘度が所望の範囲となりやすく、100質量部より多いと、ウェッター効果が増大することがなく不経済であるため0.1~100質量部の範囲が良い。より好ましくは1~50質量部である。
【0053】
また、本発明組成物には、更に場合によっては、(G-3)成分としてトリフルオロプロピルトリメトキシシランを配合してもよい。また、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上であれば組成物の粘度が所望の範囲となりやすく、100質量部より多いと、ウェッター効果が増大することがなく不経済であるため0.1~100質量部の範囲がよい。より好ましくは1~50質量部である。
尚、(G-1)成分、(G-2)成分、(G-3)成分は、それぞれ単独で使用してもよいし、組み合わせてもよい。
【0054】
<上記以外の任意成分>
本発明組成物には、上記した(A)~(H)成分以外に、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等の、従来公知の酸化防止剤を必要に応じて含有してもよい。さらに、接着助剤、離型剤、染料、顔料、難燃剤、沈降防止剤、及び/又はチクソ性向上剤等を必要に応じて配合することができる。
【0055】
<組成物の粘度>
本発明のシリコーン組成物は、作業性の点で、25℃にて測定される粘度が、10~1,000Pa・sの範囲がよく、より好ましくは30~400Pa・sである。なお、この粘度はスパイラル粘度計PC-ITL(株式会社マルコム社製)により25℃で測定した値である。
【0056】
[本発明組成物の調製]
発明の熱伝導性シリコーン組成物は、
(i)前記(A)、前記(C)、前記(D)、前記(F)及び前記(G-1)、並びに、含有する場合は、前記(G-2)成分及び(G-3)成分を、20~120℃の範囲内の温度であり、かつ、前記(C)成分の融点以上である温度で混練して均一な混合物(i)を得る工程;
(ii)混合物(i)の混練を停止して、混合物(i)の温度を前記(C)成分の融点未満にまで冷却し混合物(ii)を得る工程;及び
(iii)前記(B)成分と前記(E)成分と、含有する場合は前記(H)成分と、場合により他の成分とを、混合物(ii)に追加して、前記(C)成分の融点未満の温度で混練して均一な混合物(iii)を得る工程
を有する製造方法によって得ることができるが本記載に限るものではない。
【0057】
前記(i)工程において、(C)成分のガリウム及び/又はその合金の液状物、(D)成分の熱伝導性充填剤、及び(F)パラジウム粉は、(A)成分と、(G-1)と、(G-2)及び(G-3)成分のいずれか又はそれら2種以上とを組み合わせた混合液中に均一に分散される。
【0058】
前記工程(ii)における降温操作乃至冷却操作は速やかに行われることが好ましい。該工程(ii)において、(A)成分と、(G-1)と、(G-2)及び(G-3)成分のいずれか又はそれら2種以上とを組み合わせた混合液からなるマトリックス中に均一に分散された液状微粒子又は固体微粒子状態の(C)成分は、その平均粒径及び前記分散状態を保持する。
【0059】
前記工程(iii)もできるだけ短時間で終了させることが好ましい。該工程(iii)の終了時点において、(C)成分の微粒子の前記分散状態に、実質上、変化が生じることはない。そして、該工程(iii)の終了後は、生成した組成物を容器内に収容し、速やかに約-30~-10℃、好ましくは-25~-15℃の温度の冷凍庫、冷凍室等で保存するのがよい。また、その輸送等においても冷凍設備を備えた車両等を用いるのがよい。このように低温下で保管・輸送することにより、例えば長期間の保存によっても、本発明組成物の組成及び分散状態を安定して保持することができる。
【0060】
本発明の組成物を硬化させる場合は80~180℃の温度に30~240分程度保持することにより行うことができる。本発明の組成物は、圧力を掛けながら硬化させてもかまわない。また、硬化後に後硬化を行ってもかまわない。
本発明の組成物の硬化物は、発熱性電子部品と放熱部材との間に介在させて熱伝導性層を形成するための熱伝導性硬化物として使用することができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
下記実施例及び比較例において用いられる(A)~(H)成分を下記に示す。なお、粘度はスパイラル粘度計PC-ITL(株式会社マルコム社製)を用いて測定した値であり、動粘度はオストワルド粘度計(柴田科学株式会社製)を用いて測定した値である。
【0062】
(A)成分:
25℃における動粘度が下記のとおりである両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン;
(A-1)動粘度:100mm2/s
(A-2)動粘度:600mm2/s
(A-3)動粘度:30,000mm2/s
【0063】
(B)成分:
(B-1)下記構造式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化6】
(B-2)下記構造式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化7】
(B-3)下記構造式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化8】
【0064】
(C)成分:
(C-1)金属ガリウム(融点=29.8℃)
(C-2)Ga-In合金(質量比=75.4:24.6、融点=15.7℃)
(C-3)Ga-In-Sn合金(質量比=68.5:21.5:10、融点=-19℃)
(C-4)Ga-In-Sn合金(質量比=62:25:13、融点=5.0℃)
(C-5)金属インジウム(融点=156.2℃)<比較用>
【0065】
(D)成分:
(D-1)アルミナ粉末(平均粒径:8.2μm)
(D-2)酸化亜鉛粉末(平均粒径:1.0μm)
【0066】
(E)成分:
(E-1)白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン(両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたもの、動粘度:600mm2/s)溶液(白金原子含有量:1質量%)
【0067】
(F)成分:
(F-1)パラジウム粉(平均粒径:5nm)
(F-2)1.0質量%パラジウム担持結晶性シリカ(パラジウム粉の平均粒径:2nm、結晶性シリカの平均粒径:5μm)
(F-3)0.5質量%パラジウム担持乾式シリカ(パラジウム粉の平均粒径:7nm、乾式シリカのBET比表面積:130m2/g)
【0068】
(G)成分:
(G-1)下記構造式で表される動粘度32mm
2/sの片末端トリメトキシシリル基封鎖ジメチルポリシロキサン
【化9】
(G-2)構造式 C
10H
21Si(OCH
3)
3で表されるオルガノシラン
(G-3)トリフルオロプロピルトリメトキシシラン
なお、組成物の調製の手順において、「(G)成分」とは、表1又は表2に記載されたそれぞれの例において使用される(G-1)、(G-2)及び(G-3)をまとめたものを表す。
【0069】
(H)成分:
(H-1)1-エチニルー1-シクロヘキサノール
【0070】
[実施例1~6、比較例1~6]
<組成物の調製>
表1及び2に記載の組成比で各成分を採取し、次のとおりにして、組成物を調製した。
内容積250ミリリットルのコンディショニングミキサー(株式会社シンキー製、商品名:あわとり練太郎)に(A)成分、(C)成分、(D)成分、(F)成分及び(G)成分を加え、70℃に昇温し該温度を維持しつつ5分間混練した。次いで、混練を停止し、25℃になるまで冷却した。
次に、(A)成分、(C)成分、(D)成分、(F)成分及び(G)成分の混合物に、(B)成分、(E)成分及び(H)成分を加え、25℃で均一になるように混練して各組成物を調製した。
【0071】
<粘度の測定>
組成物の絶対粘度の測定は、株式会社マルコム社製の型番PC-1TL(10rpm)で、いずれも25℃にて行った。
【0072】
<動粘度の測定>
組成物の動粘度の測定は、オストワルド粘度計(柴田科学株式会社製)で、いずれも25℃にて行った。
【0073】
<熱伝導率の測定>
上記で得られた各組成物を3cm厚の型に流し込みキッチン用ラップをかぶせて京都電子工業(株)社製のModel QTM-500で測定した。
【0074】
<(C)成分の粒径測定>
上記で得られた各組成物0.1gを2枚のスライドガラスで挟み込み、株式会社キーエンス社製のVR-3000で撮影した画像の中から、ランダムに10個の粒子を選び、それぞれの粒径を計測し、それらの平均値を算出した。
【0075】
<熱抵抗の測定>
上記で得られた各組成物を15mm×15mm×1mm厚のNiプレートの間に挟み込み、137.9kPaの圧力をかけながら150℃で60分間加熱硬化させ、熱抵抗測定用の試験片を作製し、熱抵抗測定器(NETZSCH社製モデル:LFA447)を用いて測定した。
【0076】
<ボイド試験>
5×7cmの2枚のスライドガラスに各組成物0.1gを挟み込み、150℃に加熱したホットプレート上で1kgfの荷重をかけながら1時間加熱硬化させた。25℃に冷却後、スライドガラスに挟まれた硬化物を目視及びマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製:モデルVR-3000)にて観察を行った。
[評価]
・目視で、ひび割れが観察された:×
・マイクロスコープにて、直径0.5mm以上の円形状のボイド(空隙)が1個以上観察された:×
・目視及びマイクロスコープの観察でひび割れ及び直径0.5mm以上の円形状のボイド(空隙)が全く観察されない:○
【0077】
<(D)成分の粒径測定>
熱伝導性充填剤の平均粒径は、日機装株式会社製マイクロトラックMT3300EXにより測定した体積基準の累積平均径である。
【0078】
<(F)成分の粒径測定>
パラジウム粉の平均粒径は、日機装株式会社製ナノトラックUPA-EX150により測定した体積基準の累積平均径である。また、担体である結晶性シリカの平均粒径は日機装株式会社製マイクロトラックMT3300EXにより測定した体積基準の累積平均径である。
【0079】
【0080】
【0081】
表1及び表2の結果より、本発明の要件を満たす実施例1~6の熱伝導性シリコーン組成物では、均一なグリース状の組成物を得ることができ、熱伝導性充填剤である(C)成分が微粒子状態で均一に分散し、硬化後のひび割れ及びボイドが抑制可能であり、それにより得られた硬化物は、高い放熱性能を実現可能である。
一方で、パラジウム粉を含有しない比較例1及びH/Viが高すぎる比較例2では、系中で発生した水素によるボイドが見られた。また、H/Viが低すぎる比較例3では、組成物が硬化しない問題が発生し、(C)成分含有量の少ない比較例4では、十分な放熱性能が確保できなかった。更に、(C)成分の含有量が多すぎる比較例5及び(C)成分の融点が高すぎる比較例6では、グリース状の均一な組成物が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、良好な熱伝導を有し、硬化物中にひび割れ及びボイドが発生しないことから低熱抵抗が達成可能であり、例えばCPU等のICパッケージと放熱フィンを有する放熱部材との間に使用することで、効率的に除熱することが可能である。