(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20240409BHJP
B26D 3/16 20060101ALI20240409BHJP
B26D 7/12 20060101ALI20240409BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20240409BHJP
B26D 1/14 20060101ALI20240409BHJP
B26D 7/08 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A47K10/16 D
A47K10/16 A
B26D3/16 E
B26D7/12
B26D7/18 E
B26D1/14 H
B26D7/08 Z
(21)【出願番号】P 2020055445
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0070744(US,A1)
【文献】国際公開第2019/016666(WO,A1)
【文献】特開2006-007415(JP,A)
【文献】特開2001-113492(JP,A)
【文献】特開2014-108476(JP,A)
【文献】特開2003-057451(JP,A)
【文献】特開2004-141974(JP,A)
【文献】特開2005-074587(JP,A)
【文献】特開平10-315185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0047705(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/00-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のログをトイレットロールに切り分ける切断装置であって、
外周縁の刃先と、前記刃先で切り込まれて形成される前記ログの切断面に一部の径方向領域が接触する側面とを有し、前記側面の中心軸まわりに回転しながら前記ログを切り分ける切断部と、
支持台に植えられた毛が前記側面の前記径方向領域に摺接するブラシと、
前記切断部の前記刃先を研磨するグラインダーと、を備え、
前記ブラシが、前記グラインダーに対して、前記切断部の回転方向下流側に隣接して配置され
、
前記グラインダーを所定のタイミングで作動させて前記刃先を研磨しながら前記ログを切断する
ことを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記刃先の摩耗に応じて前記中心軸の側に後退する前記刃先が、切断される前記ログの中心線に対して一定の相対位置をとるように、前記ログに対する前記切断部の位置を調整する位置調整機構を有し、
前記ブラシは、前記刃先の前記後退に応じて、前記刃先に対して一定の相対位置をとる支持部材に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記刃先の摩耗に応じて前記中心軸の側に後退する前記刃先が、切断される前記ログの中心線に対して一定の相対位置をとるように、前記ログに対する前記切断部の位置を調整する位置調整機構を有し、
前記ブラシは、前記ログの前記中心線に対する位置が一定となるように固定され、
前記ブラシは、前記刃先が前記グラインダーで研磨されたことのない新品の前記切断部において前記ログの前記切断面が前記側面に接触する前記径方向領域である新品領域を含んで前記新品領域よりも内周側の領域であって、前記グラインダーで前記刃先が研磨されて摩耗したときに前記ログの前記切断面が前記側面に接触する前記径方向領域である摩耗領域に跨がる領域に摺接する
ことを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項4】
前記ブラシに対して前記切断部の回転方向下流側に配置され、前記ブラシの前記支持台に植えられた前記毛が前記側面に向く姿勢を保持するサポート部材を備えた
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の切断装置。
【請求項5】
前記ブラシの前記支持台を介して前記毛を前記側面へ向けて付勢する押付部を備えた
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の切断装置。
【請求項6】
前記切断部は、前記中心軸に沿って搬送される前記ログを切り分ける
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の切断装置。
【請求項7】
前記切断部は、前記中心軸とは異なるとともに前記中心軸に沿う回転軸まわりに公転しながら前記ログを切り分ける
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の切断装置。
【請求項8】
前記切断部の前記刃先に対して前記中心軸とは反対側の外周側に配置され、前記切断部の前記刃先に対して空気を噴射して前記刃先を冷却するノズルを備えた
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の切断装置。
【請求項9】
前記ブラシの前記毛は、難溶性である
ことを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の切断装置。
【請求項10】
円筒状のログをトイレットロールに切り分ける切断工程を有するトイレットロールの製造方法であって、
前記切断工程では、請求項1~9の何れか1項に記載の切断装置を用いて前記ログを切り分ける
ことを特徴とするトイレットロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のログをトイレットロールに切り分ける切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙製品を製造するには、紙材を切断する切断工程が必要である。
トイレットロール(ロール状のトイレットペーパー)を製造する場合、長さのあるロール状のログ(紙管)を製品長さに切断する切断工程があり、切断工程では、切断装置に装備された回転するナイフのブレードによってログを製品長さに切断する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、製造効率を高めるためには、切断装置においてナイフを高速回転させて短時間で切断することが望まれる。しかし、切断対象のログは所定の直径があるため、ログを切断するには、ナイフをログ内に深く進入させる必要があり、ログの広い切断面にナイフの側面が摺接することになる。
【0005】
このため、ナイフを高速回転させると、ナイフのブレードの温度上昇やブレード先端の摩耗が激しくなり、短い稼働時間でもログを適正に切断できなくなる。そこで、ブレードを冷却する冷却装置や、ブレード先端を研磨する研磨装置を装備した切断装置も開発されている。
【0006】
一方、ナイフの刃先や側面にナイフの周囲に浮遊する異物等が付着すると、ログの切断面に傷がついたり、製品に異物が付着したりして、トイレットロールの製品品質を低下させるおそれがある。異物には、切断時に発生する紙粉も含まれるが、研磨装置を装備した切断装置の場合、研磨に用いる研磨材から離脱した砥粒等も含まれる。
【0007】
本件は、このような課題に着目して創案されたもので、ロール状のログをトイレットロールの製品長さに切断する切断装置において、切断用のナイフに付着する異物等を除去してトイレットロールの製品品質を向上させることができるようにすることを第1の目的とする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用及び効果であって、従来の技術では得られない作用及び効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件の切断装置は、円筒状のログをトイレットロールに切り分ける切断装置であって、外周縁の刃先と、前記刃先で切り込まれて形成される前記ログの切断面に一部の径方向領域が接触する側面とを有し、前記側面の中心軸まわりに回転しながら前記ログを切り分ける切断部と、支持台に植えられた毛が前記側面の前記径方向領域に摺接するブラシと、を備えたことを特徴としている。
【0009】
前記切断部の前記刃先を研磨するグラインダーを備えたことが好ましい。
前記刃先の摩耗に応じて前記中心軸の側に後退する前記刃先が、切断される前記ログの中心線に対して一定の相対位置をとるように、前記ログに対する前記切断部の位置を調整する位置調整機構を有し、前記ブラシは、前記刃先の前記後退に応じて、前記刃先に対して一定の相対位置をとる支持部材に固定されていることが好ましい。
前記刃先の摩耗に応じて前記中心軸の側に後退する前記刃先が、切断される前記ログの中心線に対して一定の相対位置をとるように、前記ログに対する前記切断部の位置を調整する位置調整機構を有し、前記ブラシは、前記ログの前記中心線に対する位置が一定となるように固定され、前記ブラシは、前記刃先が前記グラインダーで研磨されたことのない新品の前記切断部において前記ログの前記切断面が前記側面に接触する前記径方向領域である新品領域を含んで前記新品領域よりも内周側の領域であって、前記グラインダーで前記刃先が研磨されて摩耗したときに前記ログの前記切断面が前記側面に接触する前記径方向領域である摩耗領域に跨がる領域に摺接することが好ましい。
前記ブラシに対して前記切断部の回転方向下流側に配置され、前記ブラシの前記支持台に植えられた前記毛が前記側面に向く姿勢を保持するサポート部材を備えたことが好ましい。
前記ブラシの前記支持台を介して前記毛を前記側面へ向けて付勢する押付部を備えたことが好ましい。
前記切断部は、前記中心軸に沿って搬送される前記ログを切り分けることが好ましい。
前記切断部は、前記中心軸とは異なるとともに前記中心軸に沿う回転軸まわりに公転しながら前記ログを切り分けることが好ましい。
前記切断部の前記刃先に対して前記中心軸とは反対側の外周側に配置され、前記切断部の前記刃先に対して空気を噴射して前記刃先を冷却するノズルを備えたことが好ましい。
前記ブラシの前記毛は、難溶性であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本件によれば、ロール状のログを製品長さに切断する際に、切断用のブレードに付着する異物等を除去できるため、トイレットロールの製品品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る切断装置を示す側面図である。
【
図2】
図1の切断装置によるログの切断状況を示す断面図(
図1のA-A矢視断面図)である。
【
図3】
図1の切断装置に装備されたグラインダーを示す断面図(
図1のB-B矢視断面図)である。
【
図4】
図1の切断装置に装備されたブラシ,サポート部材,エアノズルを示す図であり、(a)は
図1のC-C矢視断面図、(b)は
図4(a)のD方向矢視図、(c)は
図4(a)のE方向矢視図である。
【
図5】実施形態に係るトイレットロールの製造工程を示す模式的斜視図である。
【
図6】
図5の製造工程のうちの切断工程を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態としての切断装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
以下の説明では、まず、切断装置を用いたトイレットロール(ロール状のトイレットペーパー)の製造工程について説明し、その後、切断装置について説明する。
【0013】
[1]トイレットロールの製造工程
まず、
図5を参照して、本実施形態に係る切断装置を用いたトイレットロールの製造工程を説明する。
図5に示すように、製造工程は、ログ形成工程10と、切断工程20と、包装工程30と、箱詰め工程40とを備えている。各工程では、それぞれ以下の処理を行う。
示す模式図である。
【0014】
[1-1]ログ形成工程
ログ形成工程10では、幅広原紙2が大径に捲回されたジャンボロール1から幅広原紙2を送り出し、ワインダー11により長尺芯管に巻き取ることにより、幅広のロール状衛生用紙であるログ3を得る。このログ3は、製品のトイレットロール4と同一径であるが、長さはジャンボロール1と等しい長さである。
【0015】
[1-2]切断工程
切断工程20では、まず、ログ3を、一旦、アキュームレーター21に蓄積する。
次いで、複数本(この例では2本)のログ3を並走するように順次送り出し、切断装置としてのログソー50によって製品長さにカットして、トイレットロール4を得る。なお、並走させるログの数は限定されるものではなく、例えば4本とする場合もある。
【0016】
本実施形態では、
図6に示すように、ログソー50は、中間部を支持体22に連結された回転軸S1のまわりに回転可能に支持された直線棒状の支持アーム23と、支持アーム23の両端部23aにそれぞれ装備された2つのブレード51とを備えている。支持アーム23が回転軸S1のまわりに回転しつつ、ブレード51がその中心軸CL1のまわりに回転しながら、即ち、ブレード51が回転軸S1のまわりに公転(旋回)しつつ中心軸CL1のまわりに自転しながら、ログ3を切り分ける。
なお、ここでは、ログソー50は180度位相をずらして2つ備えられるが、例えば支持アーム23を回転軸S1から放射状に三本出して各端部23aにログソー50を装備して、合計3つのログソー50を装備するなど、支持アーム23の形状やログソー50の数は限定されない。
【0017】
切断時には、ログ3はその軸方向に沿って搬送されてログソー50に送り込まれ、ログソー50のブレード51を回転させつつ、支持アーム23が支持体22の回転軸S1を中心に回転しながら、ログ3に切り込んで切断を行う。切断が完了したら、ログ3は軸方向に製品長さ分だけ進み、この間、支持アーム23は180度回転して、もう一方のログソー50を用いて、ログ3に切り込んで切断を行う。これを繰り返して、各ログ3の切断を完了する。
【0018】
[1-3]包装工程
図5に示すように、包装工程30では、ログソー50によりカットして得られたトイレットロール4は、例えば、8~24個(4~12個×2段)を1組として包装袋5に挿入し、開口部を封着して包装体6とする。
【0019】
[1-4]箱詰め工程
箱詰め工程40では、複数個の包装体6を一組として段ボール箱7に箱詰めして箱詰め体8として、出荷する。
【0020】
[2]切断装置(ログソー)
円筒状のログ3をトイレットロール4に切り分ける切断装置としてのログソー50は、
図1に示すように、ディスク型のナイフブレード51(切断部、以下、単に、ブレード51ともいう)と、ブレード51の外周縁の刃先51aを研磨するグラインダー60と、ブレード51の側面に摺接するブラシ70と、ブラシ70の姿勢を保持するサポート部材80と、ブレード51の刃先51aに冷却用の空気を噴射するエアノズル90とを備えている。
【0021】
[2-1]ブレード
支持アーム23の端部23aには、端部23aからさらに外方に突出するように、第1支持部材52が締結部材等によって固定されている。ブレード51は、第1支持部材52の先端部に装備され、図示しないモータによって高速で回転駆動される。また、
図2に示すように、ブレード51は、ブレード51の各側面(ブレード面)51bが、搬送されるログ3の中心線CL2に対して直交する向きになるように配置される。
【0022】
また、ブレード51は、ログ3の切断にあたっては、支持アーム23は図示しない回転機構によって
図1に白抜き矢印A1で示すように回転駆動されながら、矢印A2で示すように回転駆動されるブレード51をログ3の一側(例えば
図1中右方)から他側(例えば
図1中左方)へ移動させて切断を実施する。
【0023】
[2-2]グラインダー
支持アーム23の端部23aには、さらに、第2支持部材53が取り付けられており、第2支持部材53にはブラケット(支持部材)54が取り付けられている。
グラインダー60は、
図1,
図3に示すように、ブレード51の刃先51aの一側(
図1中の手前側)を研磨する第1回転砥石61と、ブレード51の刃先51aの他側(
図1中の奥側)を研磨する第2回転砥石62とを備え、何れの回転砥石61,62もブラケット54に可動に取り付けられたステー63に支持されて装備されている。回転砥石61,62は、ステー63が移動することによりブレード51の刃先51aと接触し、従動回転しながら刃先51aを研磨する。
【0024】
各ステー63は、回転砥石61,62がブレード51の刃先51aに接触する状態と、回転砥石61,62がブレード51の刃先51aから離隔した状態との間で、図示しないアクチュエータによって、例えば
図3に白抜き矢印A5で示すように移動されるようになっている。本実施形態では、各ステー63は、前回の研磨が終了してから予め設定された時間が経過すると、所定時間だけ回転砥石61,62をブレード51の刃先51aに接触するように移動して刃先51aの研磨を行い、その後、回転砥石61,62を刃先51aから離隔させるように移動する。
【0025】
ブレード51の刃先51aは、ログ3の切断に伴って摩耗して鈍っていくが、上記のようにグラインダー60が所定のタイミングで作動してブレード51の刃先51aを研磨するので、刃先51aの鈍りが抑制され、良好な切れ味が維持される。これにより、ログ3の切断で形成される切断面を滑らかにすることができ、トイレットロール4の良好な製品品質を確保できるようになっている。
【0026】
[2-3]ブラシ
ブラシ70は、
図1に示すように、グラインダー60に対して、ブレード51の回転方向下流側に隣接して配置されている。ブラシ70は、
図4に示すように、ブレード51の刃先51aを含む一側(手前側)のブレード面51bを清掃する第1ブラシ71と、ブレード51の刃先51aを含む他側(奥側)のブレード面51bを清掃する第2ブラシ72とを備えている。第1ブラシ71は直接ブラケット54に固定され、第2ブラシ72は、ブラケット54にボルト締結等によって固定された補助ブラケット(支持部材)55に固定されている。
【0027】
何れのブラシ71,72も、ブラケット54,55に固定されたベース部材73,74と、ベース部材73,74に支持されたブラシ本体75と、ベース部材73,74とブラシ本体75との間に介装されブラシ本体75を背面からブレード面51bに押し付ける押付機構(押付部)76とを備え、ブレード51を挟んで対向して配設されている。
【0028】
ベース部材73,74は、何れも、棒状の部材であって、一端部をブラケット54,55にボルト締結等によって固定され、中央部から他端部にわたって,ブラシ本体75を支持するブラシ支持部73a,74aが設けられている。ブラシ支持部73a,74aには、ブラシ本体75の取付用シャフト75cが挿通される挿通孔73b,74bが長手方向に離隔して穿設されている。
【0029】
ブラシ本体75は、ベースプレート(支持台)75aの一面(前面)に、多数のブラシ毛(単に、「毛」ともいう)75bが植設されて構成され、ベースプレート75aの他面(背面)に、取付用シャフト75cがそれぞれ2本突設されている。各取付用シャフト75cの突出端部には外周に雌ねじ部75dが形成されている。取付用シャフト75cは、挿通孔73b,74bに挿通されて、挿通孔73b,74bから突出した端部の雌ねじ部75dに、ナット(ここではダブルナット)77を螺合されて、ベース部材73,74に係止される。
【0030】
押付機構76は、コイルバネが用いられたばね部材76aを備え、ばね部材76aは、取付用シャフト75cの外周に配置され、ベースプレート75aの他面(背面)と、ベース部材73,74の前面との互いに対向する二面間に介装される。ブラシ本体75が取り付けられたベース部材73,74をブラケット54,55に固定すると、ばね部材76aが圧縮状態となって、ベースプレート75aの背面を押圧してブラシ毛75bをブレード面51bに向けて付勢する。これにより、ブラシ毛75bの先端がブレード面51bに圧接される。
なお、ブラシ毛75bには、摩擦熱によって溶融し難い難溶性の高い材料が適しており、本実施形態では、獣毛が用いられている。
【0031】
また、ブラシ毛75bは、刃先51aを含むブレード面51bの所定の領域を含んで清掃できるように、ブレード51の径方向に延在してブレード面51bに摺接している。この所定の領域とは、ログ3がブレード51によって切断される際にログ3の切断面(
図1に二点鎖線の円C1で示す)がブレード面51bに摺接するブレード面51bの径方向領域であり、
図1に二点鎖線で示す円C2の外側の径方向領域RAである。
【0032】
このようにして、ブラシ71,72のブラシ本体75のブラシ毛75bの先端部を、刃先51aを含むブレード面51bの所定の領域(径方向領域RA)に圧接させることで、ブレード51の側面51bの所定の領域に付着した異物が除去され、ログ3の切断面への異物の付着が抑制されるようになっている。
【0033】
特に、グラインダー60でブレード51の刃先51aを研磨すると、回転砥石61,62の研磨剤(砥材)から離脱した砥粒や刃先の研磨粉が発生し、こうした異物がブレード面51bに付着することになるが、ブラシ70が、グラインダー60に対して、ブレード51の回転方向下流側に隣接して配置されているので、こうした異物がログ3の切断面に進む前に、未然に除去することができる。
【0034】
[2-4]サポート部材
また、ブラシ本体75は、ブレード51の回転によってブレード面51bに摺接するブラシ毛75bを通じて回転方向への力を加えられる。そこで、ブラシ本体75がブレード51の回転によってブレード51から受ける力に対向するように、ブラシ本体75の一側(ブレード51の回転方向下流側)にはサポート部材80が当接され、ブラシ本体75がブレード51から受ける回転方向への力による倒れが抑制され、ブラシ毛75bがブレード面51bに適正に正対する姿勢を保持して摺接するようになっている。
【0035】
サポート部材80は、細長い板状の部材であり、各ベース部材73,74のブラシ支持部73a,74aに、ブラシ本体75の長手方向に離隔して2つずつ備えられている。各サポート部材80は、基端部をブラシ支持部73a,74aの一側面(ブレード51の回転方向下流側の面)に固定され、先端部をブラシ本体75のベースプレート75aの一側面(ブレード51の回転方向下流側の面)に当接させている。
【0036】
[2-5]エアノズル
エアノズル90は、
図1,4に示すように、補助ブラケット55に固定されて、ブレード51の刃先51aの先端方向と左右斜め両側方向から刃先51aに向けて3個装備されている。エアノズル90は、何れも、図示しないコンプレッサから供給された常温又は冷却された圧縮空気を、刃先51aの近傍に噴射して冷却する。これにより、ブレード51の高速回転によって刃先51a及びその周辺の摩擦熱による昇温が抑制されるようになっている。
【0037】
[2-6]位置調整機構
ブレード51の刃先51aは、グラインダー60による研磨に応じて摩耗し、回転中心側に次第に後退していく。そこで、例えば
図1に白抜き矢印A3で示すように、支持アーム23に対する第1支持部材52の位置を調整可能な位置調整機構(図示略)が設けられている。刃先51aが摩耗により回転中心側に後退していくと、第1支持部材52を支持アーム23に対してブレード51の回転中心側に突出するように移動させて、切断時に刃先51aがログ3に対して適正な位置をとるようになっている。
【0038】
また、このような刃先51aの摩耗による回転中心側への後退に応じて、グラインダー60の回転砥石61,62も刃先51aとの相対位置が変化する。そこで、例えば
図1に白抜き矢印A4で示すように、第2支持部材53に対するブラケット54の位置を調整可能な位置調整機構(図示略)が設けられ、ブラケット54が刃先51aに対して一定の相対位置をとるようになっている。刃先51aが摩耗により回転中心側に後退していくと、ブラケット54を第2支持部材53に対してブレード51の回転中心側に突出するように移動させて、グラインダー60の回転砥石61,62が刃先51aに対して適正な相対位置をとるようになっている。
【0039】
また、ブラケット54に取り付けられたブラシ70,サポート部材80,エアノズル90もグラインダー60と一体に移動し、ブレード51に対して適正な位置を保持するようになっている。例えばブラシ70は、刃先51aが摩耗しても、各ブラシ71,72のブラシ本体75のブラシ毛75bの先端部が、刃先51aを含むブレード面51bの所定の領域(径方向領域RA)に圧接し、ログ3の切断面への異物の付着を抑制する。また、エアノズル90は、刃先51aが摩耗しても、刃先51aに対して適正な位置を保持し、刃先51aの近傍に噴射して冷却する。
【0040】
[3]作用及び効果
本件に係る切断装置(ログソー)60は、上記のように構成されているので、ログ3の切断スピードを上げて生産性を高めながらも、トイレットロール4の良好な製品品質を確保できるようになる。
【0041】
つまり、ログ3の切断スピードを上げるには、支持アーム23の回転速度を高めて、ログ3への切り込みスピードを高めることが必要であるが、グラインダー60を所定のタイミングで作動させてブレード51の刃先51aを研磨しながらログ3を切断するので、ブレード51の刃先51aの切れ味が常時良好に保持され、ログ3への切り込みスピードを高め易くなる。
【0042】
また、ブラシ70の各ブラシ71,72のブラシ本体75のブラシ毛75bの先端部が、刃先51aを含むブレード面51bの所定の領域(径方向領域RA)に圧接し、この領域に付着した異物を除去するので、ログ3の切断面への異物の付着が抑制され、ログ3の切断面が汚れたり傷付いたりすることを抑えて、トイレットロール4の良好な製品品質を確保することができる。
【0043】
特に、グラインダー60でブレード51の刃先51aを研磨すると、回転砥石61,62の研磨剤(砥材)から離脱した砥粒や刃先の研磨粉が発生するが、このような異物に対しても、ブラシ70が除去するので、刃先51aの研磨に起因して発生する異物のログ3の切断面への付着も抑制され、トイレットロール4の製品品質の確保に寄与する。
【0044】
また、ブラシ本体75がブレード51の回転によってブレード51から回転方向への力を受けるが、ブラシ本体75は、ブレード51の回転方向下流側から当接するサポート部材80で支持されているため、回転方向への力によるブラシ本体75の倒れが抑制され、ブラシ毛75bがブレード面51bに適正に摺接する。これにより、ログ3の切断面への異物の付着を確実に抑制できる。
【0045】
さらに、エアノズル90が圧縮空気をブレード51の刃先51aの近傍に噴射して冷却するので、ブレード51の高速回転によって刃先51a及びその周辺の摩擦熱による昇温が抑制される。これにより、刃先51a及びその周辺の昇温による剛性低下が抑制され、刃先51aの変形とうによる切れ味の低下が抑制されて、ログ3の切断面を滑らかなものにでき、トイレットロール4の製品品質の確保に寄与する。
【0046】
また、ブレード51の刃先51aの摩耗に応じて、ブラケット54の位置が調整されるので、刃先51aが摩耗しても、グラインダー60の回転砥石61,62が刃先51aに対して適正な相対位置をとることができ、刃先51aを適切に研磨することができる。
【0047】
同様に、ブラシ70やエアノズル90も、刃先51aが摩耗してもブレード面51bや刃先51aに対して適正な相対位置をとることができる。
これにより、刃先51aが摩耗しても、ブラシ70は、各ブラシ71,72のブラシ本体75のブラシ毛75bの先端部が、刃先51aを含むブレード面51bの所定の領域(径方向領域RA)に圧接し、ログ3の切断面への異物の付着を確実に抑制し、エアノズル90は、刃先51aの近傍に圧縮空気を噴射して刃先51aの近傍を適切に冷却する。
【0048】
また、ブラシ毛75bには、摩擦熱によって溶融し難い難溶性の高い材料(本実施形態では、獣毛)が適用されているので、ブラシ毛75bが摩擦熱で溶融するのを抑えることができ、ブラシ本体75の耐久性を向上させることができる。
【0049】
[4]その他
以上、本件に係る実施形態を説明したが、切断装置の構成は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々変更して実施することができる。
【0050】
例えば、上記の実施形態では、ブラシ70等が固定されたブラケット(支持部材)54が、刃先51aの摩耗による後退に応じて、刃先51aに対して一定の相対位置をとるように、位置調整機構が備えられているが、ブラシ70が切断対象のログ3の中心線CLに対する位置が一定となるように固定されている場合、ブレード51の刃先51aの摩耗による後退を考慮して、以下のようにブラシ70を構成することが好ましい。
【0051】
つまり、各ブラシ71,72のブラシ毛75bのブレード面51bへの摺接領域が、ブレード51の刃先51aがグラインダー60で研磨されたことのない新品の状態において、ブレード51においてログ3の切断面がブレード面51bに接触する径方向領域(新品領域)を含み、且つ、この新品領域よりも内周側の領域であって、グラインダー60で刃先51aが研磨されて摩耗したときにログ3の切断面がブレード面51bに接触する径方向領域である摩耗領域に跨がる領域を含むように設定する。
【0052】
これにより、ブレード51の刃先51aがグラインダー60の研磨で摩耗していっても、ブラシ70を移動させることなく、ブレード51におけるログ3の切断面が接触する領域にブラシ毛75bを摺接させることができ、ログ3の切断面に異物が付着することを抑制することができる。
また、上記実施形態では、ブレード51の刃先51aを研磨するグラインダー60が装備されており、研磨で発生する異物の除去にブラシ70は好適であるが、グラインダー60を装備しない場合にも、ブレード51に異物が付着するおそれがあり、ブラシ70はこうした異物の除去にも有効である。
【符号の説明】
【0053】
1 ジャンボロール
2 幅広原紙
3 ログ
4 トイレットロール(トイレットペーパー)
5 包装袋
6 包装体
7 段ボール箱
8 箱詰め体
10 ログ形成工程
11 ワインダー
20 切断工程
21 アキュームレーター
22 支持体
23 支持アーム
23a 支持アーム23の端部
30 包装工程
40 箱詰め工程
50 切断装置としてのログソー
51 ブレード(切断部、ナイフブレード)
51a ブレード51の刃先
51b ブレード51の側面(ブレード面)
52 第1支持部材
53 第2支持部材
54 ブラケット(支持部材)
55 補助ブラケット(支持部材)
60 グラインダー
61 第1回転砥石
62 第2回転砥石
63 ステー
70 ブラシ
71 第1ブラシ
72 第2ブラシ
73,74 ベース部材
73a,74a ブラシ支持部
73b,74b 挿通孔
75 ブラシ本体
75a ベースプレート(支持台)
75b ブラシ毛(毛)
75c 取付用シャフト
75d 雌ねじ部
76 押付機構(押付部)
76a ばね部材
77 ナット(ダブルナット)
80 サポート部材
90 エアノズル
C1 ログ3の切断面を示す円
C2 ログ3の切断面が摺接する径方向領域を示す円
CL1 ブレード51の中心軸
CL2 ログ3の中心線
RA 径方向領域
S1 支持アーム23の回転軸