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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】肘掛け付き椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/54 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
A47C7/54 G
A47C7/54 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019238787
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021106681
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】松本 佑太
(72)【発明者】
【氏名】南 星治
(72)【発明者】
【氏名】春田 大輔
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-097348(JP,A)
【文献】特表2008-535565(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0007024(US,A1)
【文献】特開2005-204706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肘掛けの下面に、椅子の部材を操作するための操作レバーが、水平動可能に取り付けられている椅子であって、
前記操作レバーは、左右外向きの引き操作によって動くように水平回動自在又はスライド自在に装着されている、
椅子。
【請求項2】
肘掛けの下面に、椅子の部材を操作するための操作レバーが、水平動可能に取り付けられている椅子であって、
前記肘掛けは、上向きに開口した肘本体と、前記肘本体の内部に配置したベース板と、前記ベース板に水平回動可能に連結されたてこ部材と、前記肘本体の下面に配置した前記操作レバーとを備えており、前記操作レバーとてこ部材とがビスで連結されており、前記肘本体と前記ベース板とに、前記ビスの移動を許容する長穴が空いている、
子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、肘掛けを備えた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子には、座の高さを調節するための操作レバーや後傾制御用の操作レバーなどを備えているが、これらの操作レバーを肘掛けに取り付けることが行われている。例えば特許文献1には、肘掛けの前部下面に、左右長手の軸心回りに回動するように操作レバーを設けて、操作レバーを上向きに引き操作する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-10937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、操作レバーを回動操作するにおいて、操作力を軽くするには回動ストロークをできるだけ大きくすることが好ましいが、ストロークを大きくすると操作レバーの先端が肘掛けの下方に大きく突出するため、人目に付きやすい問題や、物が引っ掛かりやすいという問題がある。或いは、指先がレバーに届かずに操作しにくくなるおそれも懸念される(特に、一般に女性は男性に比べて手が小さいため、指先が届かずに操作しにくくなりやすいといえる)。
【0005】
また、人が椅子に腰掛けたり椅子から立ったりするに際して、肘掛けを手でしっかりと掴んで身体を支えることがあるが、操作レバーが回動式であると、肘掛けを手でしっかりと掴んだときに誤って操作レバーを引いてしまうおそれもある。
【0006】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、
「肘掛けの下面に、椅子の部材を操作するための操作レバーが、水平動可能に取り付けられている」
という基本構成になっている。
【0008】
そして、請求項1の発明は、上記基本構成において、
「前記操作レバーは、左右外向きの引き操作によって動くように水平回動自在又はスライド自在に装着されている」
という構成になっている。
【0009】
また、請求項の発明は、上記基本構成において、
「前記肘掛けは、上向きに開口した肘本体と、前記肘本体の内部に配置したベース板と、前記ベース板に水平回動可能に連結されたてこ部材と、前記肘本体の下面に配置した前記操作レバーとを備えており、前記操作レバーと前記てこ部材とがビスで連結されており、前記肘本体と前記ベース板とに、前記ビスの移動を許容する長穴が空いている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明では、操作レバーは肘掛けの下面に沿って水平移動するため、指を掛けるだけの下向き突出量があれば足りる。従って、操作レバーをできるだけ人目に触れないようにして美観を向上できる。
【0011】
また、肘掛けは人の肘を載せるという機能からしてある程度の左右幅があることから、操作レバーの作動ストロークを大きくすることができるため、モーメント(或いはテコ作用)を利用して操作レバーを軽快に操作できる。また、肘掛けの下面には広いスペースを確保できるため、ワイヤーケーブルのような連動部材の引っ張り代を容易に確保できる点でも有益である。
【0012】
更に、指が短くても、指先を側方から肘掛けの下方に入り込ませることは問題なく行えるため、指短い人であっても、操作レバーに問題なく指を掛けることができる。この面でも操作性に優れている。
【0013】
また、椅子に腰掛けたり椅子から立ったりするに際して肘を手でしっかりと掴んだときに手先が操作レバーに触れても、操作レバーは肘掛けの下面に向けて押されるだけで、操作レバーが動くことはない。従って、意図しない誤作動を防止できる。
【0014】
操作レバーは、肘掛けの下面に前後スライド可能に配置することも可能であるが、請求項のように左右方向の外側に引く構成を採用すると、手先を自然に動かして操作レバーを操作できる。従って、操作性に優れている。
【0015】
請求項の構成では、てこ部材はベース板に取り付けられているため、機構部材をユニット化して組み付け性を向上できると共に、肘掛けの設計の自由性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る椅子の外観を示す図で、(A)は前方からの見た斜視図、(B)は側面図、(C)は後ろから見た斜視図である。
図2】(A)(B)は一部部材を分離した斜視図、(B)は骨組みを示す斜視図である。
図3】(A)は背シェル体と傾動フレームとの分離斜視図、(B)は傾動フレームの斜視図である。
図4】背シェル体の斜視図である。
図5】(A)は椅子を下方から見た斜視図、(B)は肘掛けの分離斜視図、(C)肘掛けの底面図である。
図6】(A)は肘掛けと傾動フレームと背シェル体との分離斜視図、(B)は肘掛けの分離斜視図である。
図7】(A)(B)とも肘掛けの取り付け構造を示す分離斜視図である。
図8】(A)は肘掛けの分離斜視図、(B)は肘当てを取り外した状態での平面図である。
図9】(A)は機構部の斜視図、(B)は機構部の分離斜視図である。
図10】機構部の斜視図である。
図11】(A)は傾動フレームの下面を示す底面図、(B)は機構部の分離斜視図である。
図12】昇降機構は傾動制御機構との一部分離斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本願では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用しているが、これは、椅子に普通に腰掛けた人から見た状態を基準にしている。正面図は着座した人と対向した方向である。
【0018】
(1).椅子の概略
まず、主として図1図4を参照して、椅子の概略を説明する。図1のとおり、椅子は、主要要素として、脚装置1、座2、背もたれ3を備えており、背もたれ3の上方にヘッドレスト4を配置している。また、本実施形態の椅子は、肘掛け5を標準品として装備している。脚装置1は、ガスシリンダより成る脚支柱6と放射方向に延びる枝部とを有しており、各枝部の先端にはキャスタを設けている。脚支柱6の上端には、上向きに開口した略箱状のベース7が固定されている。
【0019】
図2(B)に示すように、ベース7の前端部には、樹脂製やアルミダイキャスト製のフロントブロック8がボルトで固定されており、フロントブロック8には、左右一対のフロントリンク9がフロント軸を介して後傾動可能に取り付けられている。
【0020】
同じく図2(B)に明示するように、ベース7の左右両側には、傾動フレーム10の前向きアーム部11が配置されており、前向きアーム部11が中空軸(図示せず)によってベース7に後傾動自在に連結されている。また、傾動フレーム10の後部に左右の支柱部12を設けており、支柱部12に背もたれ3と肘掛け5とが取り付けられている。
【0021】
傾動フレーム10を構成する前向きアーム部11の前端部は、既述のとおり左右長手の中空軸を介してベース7に連結されており、従って、背もたれ3は傾動フレーム10の前端部を中心にして後傾動する。そして、中空軸にはばね手段の一例としてのトーションバー(図示せず)が内蔵されており、傾動フレーム10は、トーションバーの弾性に抗して後傾動する。
【0022】
例えば図4に示すように、傾動フレーム10において、左右の支柱部12には、平面視で後ろに膨らむ(前に凹む)ように緩く湾曲した下ステー13と上ステー14とが一体に繋がっており、左右支柱部12と上下ステー部13,14とによって傾動フレーム10の基部が構成されて、基部の左右両端部に、別体の前向きアーム部11が固定されている(前向きアーム部11を基部に一体に形成してもよい。)。傾動フレーム10の基部と前向きアーム部11とは、それぞれアルミダイキャスト品であるが、樹脂製品も採用可能である。
【0023】
座2は、図1(B)に一部を示す樹脂製の座板15にクッション体を張った構造になっており、座板15は、その下方に配置された座受けシェル体16に取り付けられている。そして、座受けシェル体16の前部は既述のフロントリンク9に左右長手のピンで連結されて、座受けシェル体16の後部は、傾動フレーム10の前向きアーム11に上向き突設したリアリンク17に左右長手のピンで連結されている。従って、背もたれ3が後傾すると、座2も後退しつつ後傾する。
【0024】
図3に示すように、背もたれ3は、合成樹脂製の下部シェル体18及び上部シェル体19とから成る背シェル体20を備えており、図2(A)に示すように、背シェル体20の前面にクッション体21が配置されている。背シェル体20とクッション体21との全体が、袋状の表皮材(図示せず)によって覆われている。図1,2等において表皮材は省略している。なお、本実施形態では背シェル体を上下のシェル18,19で構成したが、全体を一体の構成としてもよい。
【0025】
例えば図3に明示されているように、下部シェル体18の下部は手前に張り出しており、図4に示すように、左右の張り出し部の前端に、下方に開口した蟻溝状の雌形レール部22を形成している一方、傾動フレーム10における支柱部12の後面に、雌形レール部22が上から嵌合する蟻ホゾ状の雄形レール部23を一体に形成している。
【0026】
また、図3に示すように、傾動フレーム10の上ステー14には、左右長手の位置決め突起24と上下に開口した左右長手の溝枠体25とが形成されている一方、下部シェル体18の下面には、位置決め突起24と溝枠体25とが嵌合する下向き凹所26を形成している。そして、上ステー14と下部シェル体18とは、左右に離れて配置された複数本(3本)のボルトで締結されている。図3にボルト挿通穴28が現れており、ボルトは、下部シェル体18に配置されたナットにねじ込まれる。
【0027】
結局、下部シェル体18は(或いは背もたれ3は)、雌雄レール部22,23との嵌め合わせ等によって姿勢保持された状態で、ボルトで上ステー14に締結されている。ボルトは下方からねじ込まれているため、頭が人目に触れることはない。なお、溝枠体25には、図2(A)(B)に表示したランバーパッド29を上下動操作するためのレバー30(図3(B)参照)が装着されている。
【0028】
図3(B)に示すように、傾動フレーム10の下ステー13は断面逆L形になっており、その下面にセンターカバー31及びサイドカバー32を配置することにより、下ステー13に前向きに開口した横長凹部が形成されている。センターカバー32はビス33によって下ステー13に固定され、サイドカバー32は、下ステー13に係止されると共にセンターカバー25で押さえ保持されている。サイドカバー32は前向きアーム11の下面も覆っている。
【0029】
(2).肘掛けの基本構造
次に、主として図5~8を参照して肘掛け5を説明する。まず、基本構造を説明する。図5(B)に示すように、肘掛け5は、傾動フレーム10の支柱部12に装着された肘本体36と、肘本体36に中蓋37を介して装着された肘パッド38とを有している。肘本体36はアルミ製又は樹脂製であり、上向きに開口した前後長手の容器状の形態を成している。そして、内部に操作機構部が配置されている(この点は後述する。)。
【0030】
既述のとおり、支柱部12は中空構造になっており、図6,7に示すように、肘本体36には、有底筒状の中継ホルダー39を介して支柱部12に入り込むボス体40が一体に形成されている。正確には、支柱部12は、やや前後方向に長い角筒状(台形状)の形態であるため、中継ホルダー39とボス体40も、やや前後方向に長い角形になっている。
【0031】
中継ホルダー39は支柱部12の上面に重なるフランジ41を有しており、支柱部12の後面に重なる後面部に上下2か所のタップ穴43が形成されて、このタップ穴43に、支柱部12の後面に形成された雄形レール部23に後ろから貫通した前向きボルト(ビス)44が螺合している。従って、中継ホルダー39は、前向きボルト44によって支柱部12に 固定されている。
【0032】
ボス部40には、下向きボルト(ビス)45が挿通されるボルト挿通穴46と、ワイヤーケーブルが挿通される上逃がし穴47とが開口している。そして、ボス部40の下面は中継ホルダー39の底部39aに上から重なっており、中継ホルダー39の底部39aに、下向きボルト45が螺合するナット48を回転不能に保持するナット保持溝49と、ワイヤーケーブルを挿通する下逃がし穴50とが形成されている。従って、肘本体36は、下向きボルト45によって中継ホルダー39に固定されている。
【0033】
さて、傾動フレーム10は既述のとおりアルミダイキャスト品であり、支柱部12は筒状に形成されているが、支柱部12の深さは深くなっているのに対して、ボス部40の高さはさほど必要ないため、中継ホルダー39が存在しないと、ボス部40は支柱部12に挿通した水平状のボルトで直接固定せねばならず、すると、ボルトの頭が外側に露出して美観を悪化させてしまう。
【0034】
これに対して実施形態のように中継ホルダー39を使用すると、中継ホルダー39を固定する前向きボルト44の頭は背もたれ3を構成する背シェル体20(下部シェル体18)によって隠れていると共に、中継ホルダー39にボス部40を固定する下向きボルト45の頭はボス部40の内部に隠れていて外部から視認できないため、美観を悪化させることなく肘本体36を支柱部12に固定できる。なお、中継ホルダー39には、ナット48を装着することに代えてタップ穴を形成してもよい。逆に、前向きボルト44が螺合するナットを中継ホルダー39に装着してもよい。
【0035】
(3).肘掛けの作動機構部
既述のとおり、椅子はガスシリンダより成る脚支柱6を有しており、従って、脚支柱6を伸縮操作して座2及び背もたれ3の高さを調節できる。また、椅子は、背もたれ3を傾動自在なフリー状態と特定角度に保持されたロック状態とに切り替える傾動制御機構を備えている。これら、高さ調節機構と傾動制御機構とは、チューブにワイヤーを摺動自在に挿通したワイヤーケーブルを介して行われる。
【0036】
他方、図5(A)に示すように、右の肘掛け5の下面には第1操作レバー51を水平回動可能に装着し、左の肘掛け5の下面には第2操作レバー52を水平回動可能に装着しており、第1操作レバー51によって傾動制御用の第1ワイヤーを操作し、第2操作レバー52によって昇降操作用の第2ワイヤーの操作を行うようにしている(左右逆の関係であってもよい。)。次に、操作レバー51,52によってワイヤーを引く作動機構部を説明する。なお、左右の作動機構部は対称になっているだけで構造は同じであるので、右の肘掛け5を取り上げて説明する。
【0037】
図8に明示するように、作動機構部は、肘本体36の凹所に配置された前後長手で浅皿状のベース板53を備えており、ベース板53には、前後方向に長いてこ部材(リンクプレート)54、その後端を中心にして水平回動するように支軸(ビス)55で連結されている。ベース板53は、後端寄り部位がビス56によって肘本体36に固定されている。また、ベース板53は、その前部が位置決めピン57と位置決め穴58との嵌め合わせによってずれ不能に保持されている。
【0038】
てこ部材54は樹脂成型品又はダイキャスト品若しくは板金加工品であり、ニュートラル状態で、先端が座2の側に寄るように平面視で傾斜姿勢になっている。そして、第1操作レバー51とてこ部材54の先端寄り部位とが、前後2本のビス59によって固定されている。ビス59は、第1操作レバー51に上向き突設した段付きボス部60にねじ込まれており、段付きボス部60は、肘本体36及びベース板53に形成された長穴61に貫通している。ビス59は請求項に記載したビスであり、ボス部60を介して長穴61に挿通されている。長穴61は支軸55を中心とする円弧に形成されている。
【0039】
従って、第1操作レバー51に指先を当てて座2と反対方向(外側)に引くと、第1操作レバー51は水平回動する。てこ部材54は、内側に傾斜したニュートラル姿勢に戻るように、ばね62によってベース板53に引かれている。
【0040】
ベース板53には、傾動操作用の第1ワイヤーケーブル63aの一端部が係止されている。すなわち、第1ワイヤーケーブル63aは、チューブ64とこれに挿通したワイヤー65とを備えて、チューブ64の一端に係止具66を固定してワイヤー65の一端にボール67を固定しており、第1ワイヤーケーブル63aの一端部は前後長手の姿勢でベース板53のうち座2に近い内側に配置されているが、係止具66をベース板53に形成されたホルダー部53aにずれ不能に装着し、ボール67をてこ部材54に形成された内向き張り出し部54aに係止している。
【0041】
図8(B)に示すように、係止具66には環状溝66aが形成されている一方、ホルダー部53aには環状溝66aが嵌まり込むリブ53bを形成しており、これによって係止具66はずれ不能に保持されている。また、てこ部材54の内向き張り出し部54aには、ボール67が上から嵌まるボール保持穴68と、ボール保持穴68と連通したワイヤー通過溝69とが形成されており、ワイヤー通過溝69を周方向に切り込むことにより、ボール67を上向き抜け不能に保持している。
【0042】
第1ワイヤーケーブル63aは、肘本体36のボス部40に設けた上逃がし穴47と中継ホルダー39に設けた下逃がし穴50とを通って支柱部12の内部に至り、それから、支柱部12の下端部に形成した通路穴70(図11(A)参照)を通ってベース8の上方に至っている。換言すると、第1ワイヤーケーブル63aは、支柱部12から中継ホルダー39とボス部40とを通って肘本体36の内部に引き込まれている。
【0043】
図8に示すように、ベース板53の左右両側部にはサイド係合爪53cを上向きに突設し、ベース板53の後端部にリア係合突起53dを設けている。中蓋37は、これら係合爪53cと係合突起53dを利用して前後左右にずれ不能に装着されている。
【0044】
以上の説明のとおり、本実施形態では、操作レバー51,52は肘掛け5の下面に水平回動自在に配置されているため、操作レバー51,52は指先が掛かる程度の下向き突出量があればよい。従って、操作レバー51,52をできるだけ目立たなくしてスッキリとしたデザインを実現できる。
【0045】
また、肘本体36の内部を作動機構部としてフルに使用することが可能であり、てこ部材54の前後長さを十分に確保できると共に、肘掛け5はある程度の左右幅を有していて操作レバー51,52の回動ストロークを大きくできるため、てこ作用を十分に利用してワイヤー65の引き操作を軽快に行える。
【0046】
また、椅子に腰掛けたり離席したりするに際して、肘掛け5を強く掴んだときに操作レバー51,52に指先が当たっても操作レバー51,52が回動することはないため、傾動制御や高さ調節等の誤作動を引き起こすことはない。特に、実施形態では、操作レバー51,52の指当て部は先端が座2の側に寄るように平面視で傾斜していることにより、肘掛け5を手で掴んだときに指先が操作レバー51,52に当たりにくくなっているため、操作レバー51,52の誤操作防止を確実化かできて好適である。
【0047】
本実施形態では、左右の肘掛け5にそれぞれ操作レバー51,52を設けたが、片方の肘掛け5のみに操作レバーを設けることも可能である。
【0048】
(4).昇降制御機構部、傾動制御機構部
既述のとおり、本願発明では、高さ調節のための操作レバーと傾動制御操作のための操作レバーとを肘掛け5に設けたが、念のため、昇降制御機構部と傾動制御機構部とを簡単に説明しておく。
【0049】
図8~11から理解できるように、前向きアーム11が固定された中空軸73がベース板53に回転自在に保持されており、中空軸73に配置されたトーションバー(図示せず)がセンターブロック部74(図12参照)に固定されている。センターブロック部74の後面にロック溝75(図12参照)が上下複数段形成されている一方、ベース7に、ロック溝75に後ろから係脱可能なロックプレート76が水平回動自在に配置されている。ロックプレート76は上下の保持板77で上下動不能に保持されていると共に、ワンウエイ式制動部78によって水平回動操作できるようになっている。
【0050】
ワンウエイ式制動部78は、ワイヤー65の引き操作を繰り返すと、ロックプレート76を前進位置に保持する状態と、後退位置に保持する状態とに交互に切り替わるようになっている。ワンウエイ式制動部78はユニット化されており、ビス79でベース7に固定されている。また、保持板77もビス80でベース7に固定されている。
【0051】
昇降制御機構部は、ベース7にずれ不能に装着されたケーブルホルダー81と、脚支柱6のプッシュバルブ82を上から押す第1リンクレバー83と、第1リンクレバー83を回動させる第2リンクレバー84とを有しており、第2ワイヤーケーブル63bの係止具66はケーブルホルダー81にずれ不能に保持されて、第2ワイヤーケーブル63のボール67は第2リンクレバー84の下端部に係合している。
【0052】
そして、第2ワイヤーケーブル63bのワイヤー65が引かれると、第2リンクレバー84が左右長手の支軸84aを支点にして回動すると共に、第1リンクレバー83が前後長手の支軸84aを支点にして回動し、これにより、第1リンクレバー83でプッシュパルブ82が押される。
【0053】
例えば図9に示すように、ワイヤーケーブル63a,63bはベース7を覆うカバー85の手前から上向きに引き出されており、図11(A)に示すように、下ステー13の横長凹部を介して支柱部12の通路穴70に引き込まれている。そこで、傾動フレーム10のうち下ステー13と前向きアーム11との連結部には、ワイヤーケーブル63a,63bを通すための切り欠き86を形成している。また、支柱部12の下端部には下方に開口した凹所87が形成されており、凹所87や切り欠き86は、図5(A)のとおりサイドカバー32で覆われている。従って、ワイヤーケーブル63a,63bの挿通作業を容易に行える。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本願発明は椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0055】
2 座
5 肘掛け
10 傾動フレーム
12 支柱部
36 肘本体
39 中継ホルダー
40 ボス部
51,52 操作レバー
53 ベース板
54 てこ部材
59 ビス
61 長穴
63a,63b ワイヤーケーブル
64 チューブ
65 ワイヤー
67 ボール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12