(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】リハビリテーション支援装置
(51)【国際特許分類】
G16H 20/30 20180101AFI20240411BHJP
【FI】
G16H20/30
(21)【出願番号】P 2020073413
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2019130747
(32)【優先日】2019-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517115857
【氏名又は名称】高橋 智子
(74)【代理人】
【識別番号】100102680
【氏名又は名称】原田 忠則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智子
(72)【発明者】
【氏名】原田 忠則
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-197330(JP,A)
【文献】特開2014-018570(JP,A)
【文献】特開2008-123507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ひとを識別させる利用者識別子と、利用者の動作外観から得られた複数の要素からなる身体機能評価情報と、該身体機能評価
情報を取得した区域を示す区域識別子と、身体機能評価情報を取得した時期を示す身体機能評価時期情報と、利用者が受けていたリハビリテーションの施術内容を表すリハビリテーション施術情報と、該リハビリテーションの施術を行った時期を示すリハビリテーション施術時期情報と、利用者の生体から測定された複数の要素からなる生体情報と、該生体情報を取得した区域を示す生体情報取得区域識別子と、該生体情報を取得した時期を示す生体情報時期情報と、を含む個人リハビリテーション実績情報を、複数の利用者について記憶するリハビリテーション実績情報記録部と、
検索基準者を特定するための情報を入力し、該検索基準者を決定する検索基準者決定部と、
該リハビリテーション実績情報記録部に記録され、かつ該検索基準者決定部で決定した検索基準者を識別する利用者識別子を有する個人リハビリテーション実績情報のうち、近時に記録されたリハビリテーション施術情報と近時に記録された身体機能評価情報と該身体機能評価情報に対応する区域識別子とを含む検索基準データと、該リハビリテーション実績情報記録部に個人リハビリテーション実績情報として記録されたリハビリテーション施術情報と身体機能評価情報とを含む被検索対象データ群と、の間で比較して、被検索対象データ群のうち該検索基準データを構成する身体機能評価情報とリハビリテーション施術情報との時期前後関係が同じ関係になるものであって、データ間距離が所定値以下となる個人リハビリテーション実績情報を抽出する同一類似実績情報抽出部と、
該同一類似実績情報抽出部において抽出された個人リハビリテーション実績情報が含む身体機能評価情報と、リハビリテーション施術情報と、生体情報とに基づいて、検索基準者生体情報提供者の将来に渡る身体状況について、レポートを作成する将来予測レポート作成部と、
を具備することを特徴とするリハビリテーション支援装置。
【請求項2】
更に、第一の職種から第二の職種に職種を変更する際に求められる職業訓練計画情報を記録する職業訓練計画記録部を具備し、
前記リハビリテーション実績情報記録部が記録する個人リハビリテーション実績情報には、さらに前記身体機能評価情報を得た時期に従事した職種に係る就業職種情報を含むとともに、
前記将来予測レポート作成部は、前記
同一類似実績情報抽出部から得られた他人の個人リハビリテーション実績情報のうち、職種が変遷したものについては、変遷前の職種を第一の職種、変遷後の職種を第二の職種とする検索鍵に基づいて該職業訓練計画記録部を検索し、これらに対応した職業訓練計画情報を前記レポートに付加して提供すること、
を特徴とする請求項1に記載のリハビリテーション支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリテーションを要する者や将来リハビリテーションを要することになる者(以下、単に「被術者」という。)が現在受けている若しくは将来受けることになるリハビリテーションのなかで、日々継続する不安を低減させ、被術者のリハビリテーションに対するインセンティブを維持するためのリハビリテーション支援装置に係る。
【0002】
本発明では、同じ被術者であっても異なる環境においては異なる身体機能状況が観察される現象に着目する。詳しくは、本発明には、理学療法士・作業療法士などがするリハビリテーション施術内容とともに、施術者の生体情報・身体機能評価情報が時系列で記録されているリハビリテーション実績情報記録部を備え、ここに被術者の生体状況・身体機能評価情報と類似するデータがあったときにはそのデータを提示することで、リハビリテーションを受けている者の将来の回復した姿を暗示させ、それを糧にしてリハビリテーションへのインセンティブ向上を図るものとしたリハビリテーション支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
(1. 本発明の着想に寄与した発明者による社会的事項の認識)
(1.1. 本発明に至る社会的状況)
加速する少子化に伴い、我が国の高齢化はとどまることがない。未曾有の老若人口構成比に適応した新たな社会国家の仕組み作りは喫緊の課題となっている。また、高齢化の副次的現象として脳血管疾患者数も全国で117万9千人に上り、その医療費は実に1兆8千億円にも迫る高額に至っている。
【0004】
これを発明者らが居住する埼玉県のみに着目すると、脳血管疾患者数は未だ1万2千人強に留まる。このうち寝たきりに至らず日常活動への復帰を期待しうる者は、概ね6割にあたる7千人程度である。
【0005】
もっともこれは、現時点での高齢者率(全人口のうちに高齢者が占める率)が全国で27.3%であるのに対し、埼玉県においては22.7%と低率に止まっているからである。
【0006】
埼玉県には、首都圏中で最もベットタウン的性格が強い、今後も低出生数傾向が持続すると見込まれる等、顕著な特徴がある。このため、埼玉県の高齢者率は今後飛躍的な伸びを示し、十数年以内には全国的でも一位二位に至ることが予測されている。
【0007】
このことは、我が国にやがて到来する未曾有の老若人口構成比に適した新たなリハビリテーションの産業構造を、早期に確立しておかなければならないことを意味している。
【0008】
(1.2. 現状のおける発明者らの社会的問題意識)
発明者らは、(a)人間がもつ潜在的な社会・環境適応力に期待し、人間が人間であらんと希望してこれを実現しようとする精神的活力を活用することにより、(b)運動機能回復から経済活動に至る連鎖的構造を意識しつつ、社会再参画を目指す高齢者・脳血管疾患者を支援し、(d)もって高齢化社会における社会構造モデルを実現することが必要であると考えている。
【0009】
更に、自由主義社会において生活する我々個々人にとって、現在は健常者と同等であったり障碍の程度が軽微であったりしたとしても、将来障碍が発生し、若しくは現在の障碍が進行したときに、職種の変更をも受け入れなければならないこともあろう。このことは被用者である個人ばかりでなく、雇用者も意識する場面が増えるであろうと発明者らは推測している。
【0010】
(1.3. 現社会における関係者の意識に関する発明者らの認識)
ところでリハビリテーション科目には、即効性があるものばかりでなく、疾患が拡大することを抑制するものや、時間をかけて改善を図るような遅効的なものも含まれている。
【0011】
上記のような社会的状況のなかで個々人は、自分の身体機能が将来どのように向上していくのかについて、具体的にイメージできる充分に説明を受けられないでいる。自分が現在行っているリハビリテーションを続けるとどのような変化が顕れるのか、どのように疾患の弊害が改善されていくものなのか、そもそも現状を維持できるだけなのかなど、具体性を感じられないのである。このことは、より多くの質的・抽象的な説明を受け続けたとしても変わらない。
【0012】
リハビリテーションを受ける者(被術者)の視点に身を置いて案ずれば、リハビリテーションを長く続けるにつれ、「本当にこのままこのリハビリテーションを続けていれば、快方に向かうのだろうか?」「やがてはもとのやりたい仕事に復帰できるのだろうか?」と、多くの疑問を抱えていくことになる。すなわち、個々人にとってはリハビリテーションを受けること自体が不安材料となってしまい、リハビリテーション参加のインセンティブが低下することになる。
【0013】
被術者を雇用する者にとっても同様である。雇用者が被用者(被術者)のアビリティを把握するには、理学療法士等の説明に頼らざるをえない。被用者がリハビリテーションによってどのような改善がされているのか、もとの職種を実践できるようになるにはどの程度の時間がかかるのか、そもそも現在リハビリテーションにかけている時間は必要なものなのかなどについて、言葉だけが頼りである。これでは、被用者の具体的な行く末を観念できず、その従業者の職種を替えた方がよいのかどうか、計画生産量を維持するためには新たな雇用に頼るべきなのかなど、様々な不安要素を抱えたままとなってしまう。
【0014】
このように、関係者双方にとって不安定な状況が続くと相互不信に陥り、必要なコミュニケーションにも弊害が生じる。この状況が障碍者にとっても雇用者にとっても好ましくないことは、勿論である。
【0015】
発明者らはこのような状況を認識し、障碍者がリハビリテーションを続け、かつ有意義な雇用状況を保つには、具体的な将来を想像できるようにすることが肝要であり、これがすべての関係者に安心感を与え、かつリハビリテーションのインセンティブに繋がると考えている。
【0016】
勿論、現実が必ずしも思うようにならないことは世の常である。しかし、そのような場合でも「自分が抱く未来図をどのように修正すれば次善の未来を迎えることができるのか?」を具体的に観念できることはリハビリテーションのインセンティブ維持にとって重要である。
【0017】
ひとが将来における身体機能の改善を具体的に観念するためには、定性的な物語に拠るよりも定量的な指標に拠るのが望ましい。数値で代表される定量的指標に拠るならば、その指標は客観的であり、曖昧性は排除され、ひいては曖昧なコミュニケーションによる話者相互の不信感を低減させることができるからである。
【0018】
(2. 本発明に係る背景技術)
(2.1. 社会問題解決のための技術的分野の絞り込み)
上記の社会的問題意識のもと、発明者らは特許文献1において高齢者・脳血管疾患者のリハビリテーションの場を栽培工場に求め、ここで利用する建物内作業者活動管理装置などを提案した。
【0019】
この工場は、少なくともリハビリテーションの状況を把握する簡便な情報収集・分析技術を実装している。確かにこの発明によれば、労働時における運動機能状況を把握することは可能となる。
【0020】
しかし、工場労働において使用する運動機能は、ひとの持つ運動機能の一部に限られることが多い。
【0021】
このため、上記問題意識に対応するには、労働時における運動機能の把握に限られず、広く一般的な行動の状況把握、並びにリハビリテーションによる効果予測を定量的に把握する補完的手段に求めることになる。
【0022】
(2.2. 本発明に係る背景技術)
リハビリテーションをめぐる基礎的技術として、特許文献2のような提案がある。特許文献2に開示された発明は、リハビリテーション科目等を決定するための資料として日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)に着目し、これを評価する指標には複数の種類があることを念頭においている。現実のリハビリテーションでは、バーセル・インデックス(BI:Barthel Index)と、機能的自立評価法(FIM:Functional Independence Measure)とが混在していることを前提として、訓練者の動きを時間とともに検知したモーション情報からその訓練者の評価値を算出し、データベースに記録した過去の評価値との比較からリハビリ計画を作成するリハビリテーション支援装置が開示されている。更に、前記モーション情報を、複数のリハビリテーション施設からの情報を時系列にデータベースに記録して共用可能とすることで、リハビリテーションの連携の効率化・適切実施を図っている。
【0023】
(2.3. その他の周辺的技術)
ほかに、リハビリテーション訓練に利用できる支援装置として、非特許文献1にはリハビリテーション器具と、その副産物とでもいうべきリハビリテーション情報の収集技術が開示されている。
【0024】
また、特許文献3並びに非特許文献2の文献には、被術者の体幹に3次元加速度センサを装着し、このセンサから得らえる情報を経時的に蓄積し、リハビリテーションの進度を数値的な指標で客観的に把握する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】特願2018-199662号
【文献】特開2015-159935号公報
【文献】特開2009-17895号公報
【非特許文献】
【0026】
【文献】本田技研工業株式会社、「Honda|Honda歩行アシスト|歩行アシストとは」、[online]、掲載開始時不明、本田技研工業株式会社ホームページ[令和1年7月5日検索]、インターネット(URL:https://www.honda.co.jp/walking-assist/about/)
【文献】兵庫医療大学 リハビリテーション学部 香川真二、「加速度計を用いた歩行障害に対する測定と評価」、バイオメカニズム学会誌、バイオメカニズム学会、Vol.34、No.4(2010)、p.286~290、総合学術電子ジャーナルサイト「J-STAGE」ホームページ[令和2年4月13日検索]、インターネット(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/34/4/34_286/_pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
(1. 前記特許文献1に開示された発明に係る課題)
前述のとおり、特許文献1に開示された発明では、個々のリハビリテーション被術者の身体機能データを取得できる点は格別、単独では被術者のインセンティブ向上、被用者・雇用者間コミュニケーションの深化を図ることまで考慮されていない。このため、被術者の意思が主導牽引する積極的で明るいリハビリテーションを行うことまでを期待することはできない。
【0028】
(2. 前記特許文献2に開示された発明に係る課題)
特許文献2に開示された発明は、リハビリテーション施設毎の評価指標の相違を補正するためのリハビリ指標変換部を具備する。他のリハビリテーション施設において採られたリハビリ指標であっても特定のリハビリテーション施設において利用するリハビリ指標に変換すれば、そのリハビリテーション施設でも他の施設で採られた多くのデータを利用できるようになり、より確実なリハビリテーション設計を可能としている。
【0029】
そして、同特許文献では、自宅・職場においても同様の装置構成によりデータを採取できるとしている(同文献
図12、段落番号0072等)。
【0030】
確かに、一般的なリハビリテーション施設であれば、比較的自由空間においてリハビリテーションを行うことができるように設計されている。よって、異なる施設において取得した情報であっても指標基準を単一のルールで変換しさえすれば、これを相互に利用することは可能であろう。
【0031】
しかし、自宅・職場においては必ずしもそのまま利用できるとまではいえない。
【0032】
労働や通常居室で円滑な生活ができる健常者においても、職場環境や生活空間での家具配置状況などが筋肉痛や脊椎の歪みを生じさせ、体調に様々な故障を生じさせることはよく知られている。そして、影響の大小はあれども、同じ家に住む家族には、同部位の整形外科的疾患が起こりやすいことも知られていることである。このことは、普段の労働・生活環境では必ずしも筋肉・関節に理想的な動作を求められておらず、幾分偏った筋肉・関節の使い方が求められている証左である。
【0033】
自宅・職場は、その場所での活動目的に適した空間造りがされていて、自由空間とは異なるのである。そして、このなかで生活する者の生体情報には、環境に依存した異なる影響が含まれているといわなければならないのである。
【0034】
現代のリハビリテーションは、活動の自立、介護認定級の軽化を図るものであるところ、介護認定は、いくつかの設問の他、基本動作の目視検査により行われる。このこともあって、リハビリテーションの施術内容は、特定の筋肉・特定の関節の筋力・可動範囲などの強化・拡大・矯正を図る科目が主となっている。すなわちこれは、特定の筋肉・関節への分析的なアプローチということができる。
【0035】
しかし、労働や通常居室で使用する筋肉・関節は複数の筋肉・関節を総合的かつ連携して動かすのが普通である一方、その発生させるべき筋力の範囲や関節可動範囲は限定的な範囲で済むことが多い。すなわち従来のような特定の筋肉・関節に着目するリハビリテーションのみに依ったリハビリテーションが、直ちに通常の労働や居室での生活を円滑にするとまでは言えないのである。
【0036】
このように、異なる環境下での評価指標の変換を経たとはいえ、職場・自宅環境における情報まで一律に扱うことができない。特許文献2に示された発明では、このような環境による負荷偏重の影響がある場合に、どのように取り扱うべきかまで検討されているとはいえないのである。
【0037】
ところで、リハビリテーションにおいては身体機能評価情報と被術者の主観的身体負担との不一致に係る懸念がある。ここで、身体機能評価情報と生体情報との不一致が生じる典型的な場面について、
図11を用いて説明する。
図11は、個人差によって身体機能評価値と生体情報とが不一致を生じる状況があることを概念的に説明した図である。
【0038】
この図では、他人には無理をしてでも良く見せようとする性向の甲と、他人の目があっても無理をしない性向の乙とを比較して示している。すなわち、甲氏は、身体機能評価をされる際、トレーナの目があるために、無理をしてでも指示された動きをしようとする(1182-1)。これに対し、乙氏は、トレーナの目があっても無理をせずにできるところまでしか動かそうとしない(1182-2)。すると、トレーナの目からは両者とも同じような動きしかしないように見えるので、同じ評価値になる(1183)。
【0039】
しかし、甲と乙の性向の違いから、その身体機能評価がされたときの現実の体への負担の度合いは異なる。甲には大きい負担が生じている(1184-1)のに対し、乙には僅かな負担しか生じていないのである(1184-2)。
【0040】
これは即ち、定常的に業務を遂行する上で、身体機能評価に頼っていては被術者本人の負担まで把握できないことを表している。現実の負担は素直に生体情報に表れ、この情報が被術者の主観的負担に直結していると考えてよい。
【0041】
即ち身体機能評価だけに頼ると、被術者の主観的負担を無視する結果となる。そして上述の場合には、甲氏は継続する業務のなかで、早期に絶望感を抱きやすくなり、リハビリテーションを続けるインセンティブが低下しかねないという懸念が生じるのである。
【0042】
(3. 前記特許文献3並びに非特許文献2に開示された発明に係る課題)
一方、インセンティブの観点からすると、特許文献3並びに非特許文献2に開示された技術は極めて有効である。これらの文献には、被術者の体幹に3次元加速度センサを装着し、このセンサから得らえる情報を経時的に蓄積し、リハビリテーションの進度を数値的な指標で客観的に把握する技術が開示されている。
【0043】
確かに、この技術によれば、客観的数値指標が表示されるため、これを被術者が閲覧すればリハビリテーションの進度を把握することができるようになる。そして、この数値指標に少しでも向上の兆しがあれば、その数値指標自体が被術者にとってリハビリテーションのインセンティブになることは間違いない。
【0044】
しかし、リハビリテーションが行われる場所が常に同じ場所であれば同様の数値指標が得られるであろうと推測されるが、異なる場所でも同様の指標が得られるというわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0045】
(1. 課題を解決するための手段の概要)
一般論ではあるが、我が国国民は勤勉であって、仕事に生きがいを見出すことが多いことは前記特許文献1でも指摘したところである。本発明は、このような我が国国民の精神的特徴を意識しつつ、上記各課題の低減を図るものであり、その目的とするところは、特定人の生活を総合的に把握し、そのひとの業務・生活のパターンを参酌し、円滑で生きがいのある生活を復元できるリハビリテーションの設計に寄与しつつ、被術者のリハビリテーションに対するインセンティブ向上を図り、ひいては労働における雇用者・被用者の信頼関係を良好に維持するリハビリテーション支援装置を提供することにある。
【0046】
(2. 課題を解決するための手段の説明)
次に、課題を解決するための手段について説明する。なお、本節では各請求項に基づいて説明するが、データ構造について
図3を用いて説明する。もっとも、図を用いるのは理解促進のためであり、発明を実施するにあたり実装されるデータベースのテーブル構造等が直ちにこれに限定・拘束されるものではない。
【0047】
(3.1. 請求項1に記載の発明について)
請求項1に記載の発明は、リハビリテーション実績情報記録部と、検索基準者決定部と、同一類似実績情報抽出部と、将来予測レポート作成部と、を具備するリハビリテーション支援装置に係る。
【0048】
[リハビリテーション実績情報記録部]
ここで、リハビリテーション実績情報記録部が記録するリハビリテーション実績情報(351)には、複数の利用者に係る個人リハビリテーション実績情報(352)を記録する。
【0049】
個人リハビリテーション実績情報(352)には、少なくともひとを識別させる利用者識別子(354-2)と、生体情報(356)と、身体機能評価情報(353)と、区域識別子(DiD)と、身体機能評価時期情報(TS)と、リハビリテーション施術情報(355)と、リハビリテーション施術時期情報を含む。
【0050】
利用者識別子(354-2)とは、個々人を弁別するための識別子である。
【0051】
身体機能評価情報(353)とは、一の利用者が特定の環境において活動するにあたり、身体を動かせる程度について、第三者が下した評価に係る情報である。身体機能評価情報には、身体機能評価時期情報が組合わされる。身体機能評価時期情報は、身体機能評価情報に係る評価がいつの身体機能についてされたものなのかを把握できるように作用する。なお、利用者身体機能評価時期情報は、1回のリハビリテーションが身体機能に奏功する時間幅を考慮するならば、時分秒までの高精度を要しない。
【0052】
生体情報(356)とは、利用者の生体から測定された複数の要素からなる情報である。即ち、生体情報とは、ひとの身体から本人の意思に基づかずに物理的観察により一回の測定で得られる物理量を要素とする情報であって、2以上の異なる種類の要素をもつものをいう。
【0053】
生体情報を身体機能評価情報と比較すると、ともに可動域に関連する情報となっている。もっとも、身体機能評価情報はその可動限界に連関するのに対し、生体情報は本人が物理的に無理をしているかどうかに強く連関する点で異なる。すなわち、生体情報は身体的負荷に係るものであって、主観的負担に合う傾向にあることから、本人の物理的努力の程度を表すように作用する。
【0054】
区域識別子とは、上記生体情報若しくは上記身体機能評価情報を取得した位置・場所・空間等の区域を示す識別子である。
【0055】
リハビリテーション施術情報(355)とは、利用者が受けていたリハビリテーションの施術内容を記述した情報である。このリハビリテーション施術情報には、リハビリテーション施術時期情報が組合わされる。リハビリテーション施術時期情報は、リハビリテーション施術情報係るリハビリテーションがいつの施術についてのものかを把握できるように作用する。なお、リハビリテーション施術時期情報も、1回のリハビリテーションが身体機能に奏功する時間幅を考慮するならば、時分秒までの高精度を要しない。
【0056】
リハビリテーション実績情報記録部には複数の利用者にかかる個人リハビリテーション実績情報が記録されることで、類似の身体機能状況にあったリハビリテーション被術者が身体機能を回復するまでの一連の状況を把握でき、利用者が自分の将来を想像する情報源となるように作用する。
【0057】
[検索基準者決定部]
検索基準者決定部は、レポートを得る対象者を特定するための情報を入力し、これより検索基準者となる利用者を、ひいてはその利用者の個人リハビリテーション実績情報を特定するようになっている。
【0058】
[同一類似実績情報抽出部]
同一類似実績情報抽出部は、被検索データ群から、検索データと同一若しくは類似する個人リハビリテーション実績情報を抽出する。ここで、検索基準データと被検索対象データ群とは以下のように取り扱う。
【0059】
・ 検索基準データ
検索基準データは、前記リハビリテーション実績情報記録部に記録され、かつ前記検索基準者決定部で定められた利用者の利用者識別子をもつ個人リハビリテーション実績情報のうち、近時に記録されたリハビリテーション施術情報と近時に記録された身体機能評価情報若しくは生体情報とを含む情報集合のことである。検索基準データとは、検索基準であるデータそのものを意味する。
【0060】
検索基準として近時に記録された生体情報乃至身体機能評価情報を採ったことで、利用者の現状に係るデータ若しくは最も現状に近いデータを把握するように作用する。
【0061】
・ 被検索対象データ群
被検索対象とは、前記リハビリテーション実績情報記録部に記録された個人リハビリテーション実績情報であって、上記検索基準データに基づく検索をする対象のことをいう。被検索対象データ群とは、検索される対象となるデータの集合体のことである。
【0062】
上記検索基準データは個々人のリハビリテーション実績情報を単位としているのに対し、被検索対象については複数の他人のリハビリテーション実績情報を対象に含んでいる。本明細書では、検索される対象の複数人性を迅速に理解できるようにするために、被検索対象データ「群」と称している。
【0063】
同一類似実績情報抽出部は、前記リハビリテーション実績情報記録部が複数人の個人リハビリテーション実績情報を記録していることから、他人の過去のリハビリテーション実績を抽出するように作用する。
【0064】
なお、更に検索にあたっては、被検査データ群のうち該検索データを構成する身体機能評価情報とリハビリテーション施術情報との時期の前後関係が同じ関係になるものとする。時期の前後は、個人リハビリテーション実績情報に含まれる各時期情報を用いて決定する。
【0065】
[将来予測レポート作成部]
将来予測レポート作成部は、上記同一類似実績情報抽出部において抽出された個人リハビリテーション実績情報が含む身体機能評価情報と、リハビリテーション施術情報と、生体情報とに基づいて、検索基準者生体情報提供者の将来に渡る身体状況について、所定の形式に整えて閲覧可能なレポートを作成するようになっている。
【0066】
これにより、将来に不安をもつ利用者が「自分は今後どのようになっていくのだろう?」という不安を緩和する手掛かりを伝えるように作用する。また、生体情報もレポート作成の基礎としていることから、身体機能評価情報に基づく外観からだけでは不明な主観的負担も参酌したレポートを作成できるようになっている。
【0067】
(3.2. 請求項2に記載の発明について)
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明に加え、職業訓練計画記録部を具備したうえで、リハビリテーション実績情報記録部と将来予測レポート作成部とに一部機能を追加する。
【0068】
[職業訓練計画記録部]
ここで、職業訓練計画記録部は、第一の職種から他の第二の職種に職種変更する際に必要な職業訓練をどのようにするかを記述する職業訓練計画情報を記録する。
【0069】
[リハビリテーション実績情報記録部]
リハビリテーション実績情報記録部に記録する個人リハビリテーション実績情報には、さらに前記身体機能評価情報を得た時期に従事した職種も含むようになっている。
【0070】
将来予測レポート作成部は、前記同一類似実績情報抽出部から得られた個人リハビリテーション実績情報のうち、職種が変遷しているものについては、変遷前の職種を第一の職種、変遷後の職種を第二の職種とする検索鍵に基づいて上記職業訓練計画記録部を検索し、これらに対応した職業訓練計画情報を前記レポートに付加して提供するようになっている。
【発明の効果】
【0071】
(1. 請求項1に記載の発明の効果)
請求項1に記載の発明は、参照対象となっている者の近時の生体情報若しくは評価情報に基づいて、既に登録されている具体的な他人の例を検索でき、そのデータを参照対象者等が見やすい形式で提示することにより、どのようなリハビリテーションをすると、どのくらいの期間で、どういう状態に向上するのか、逆に、どのようなリハビリテーションをすると、どのくらいの期間で、どういう状態に低下してしまうのか、を具体的な状態で認知させることができる。
【0072】
ひとは、将来についての見通しがつきにくいときに不安を感じ、その不安期間が長引くと、現状を打開しようとする意欲を減退させてしまうのが常であるところ、本発明によれば、このようなひとの精神的傾向を背景に、本発明は被術者の不安感を解放することができ、積極的なリハビリテーションへのインセンティブを維持することができる。
【0073】
また、検索基準データとしてリハビリテーション実績情報記録部に記録されている情報を用いているので、リハビリテーション実績情報の加速的な蓄積を促進する。
【0074】
(2. 請求項2に記載の発明の効果)
請求項2に記載の発明によれば、類似の身体状態にある他人の就業状況並びに、職業を変更する場合の職業訓練計画情報を把握することができるようになる。これにより、単に将来予測として身体機能を示唆するばかりでなく、現在から将来にわたる就業でどのような影響があるのか、他人はどのようにその影響を回避したのか、仮に職種を変えるならばどのようなことをしなければならなくなるのかを、早いうちから把握できるようになる。このため、リハビリテーション被術者の不安解放を更に進めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態に係る全体構成図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係るリハビリテーション実績情報記録部に記録するデータ・テーブル構造説明図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係るリハビリテーション実績情報記録部に記録するデータ構造説明図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態に係るリハビリテーション実績情報検索に係る処理説明図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態に係るリハビリテーション実績情報検索まわりでの処理順序説明図である。
【
図6】
図6は、第2の実施の形態に係る全体構成図である。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態に係るリハビリテーション実績情報記録部に記録するデータ・テーブル構造説明図である。
【
図8】
図8は、リハビリテーション施設において稼働させる生体情報等取得装置の構成例である。
【
図9】
図9は、第1の実施の形態に係る動作フロー図である。
【
図10】
図10は、第2の実施の形態に係る動作フロー図である。
【
図11】
図11は、個人差によって生じる身体機能評価値と生体情報との不一致が発生する状況を示す、客観・主観不一致発生状況説明図である。
【
図12】
図12は、類似評価関数としてCNN(Convolutional Neural Network)を用いた場合の階層説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明を実施するための形態の説明は、以下の目次に従う。
―――――― 目次 ――――――
(1. 図面の表記について)
(3. 第1の実施の形態について)
(3.1. 本実施の形態に係る構成)
(3.1.1. リハビリテーション支援装置に生体情報等を送信する装置に係る構成)
(3.1.2. リハビリテーション支援装置に係る構成)
(3.2. 本実施の形態に係る動作)
(3.2.1. リハビリテーション実績情報記録段階)
(3.2.2. リハビリテーション実績情報抽出段階)
(3.3. 補足的事項)
(3.3.1. 実装する被検索対象について)
(3.3.2. リハビリテーション施術者を特定する情報の活用)
(3.3.3. リハビリテーション施設等を特定する情報の活用)
(3.3.4. テーブル定義に係る他の実装)
(3.3.5. 生体情報に係る記録乃至類似の判定について)
(4. 第2の実施の形態について)
(4.1. 本実施の形態の概要)
(4.2. 本実施の形態に係る構成)
(4.3. 本実施の形態に係る動作)
(4.3.1. リハビリテーション実績情報記録段階)
(4.3.2. 職種記録段階)
(4.3.3. 転職支援段階)
(4.3.4. 動作・運用に係る補足的事項)
(5. 実社会における利用態様)
(5.1. デーサービス施設等での利用可能性(施設の再設計))
(5.2. 就業施設における利用可能性)
(5.2.1. 就労継続支援B型利用時の管理業務利用可能性)
(5.2.2. 就業施設における人事可能性)
(5.2.3. 人材紹介業務での利用可能性)
(5.3. 医師の診断利用可能性)
(6. その他)
(6.1. リハビリテーション実績情報記録部への他の情報記録)
(6.1.1. 食事内容・摂取サプリメント内容)
(6.1.2. リハビリテーション補助具利用情報)
(6.1.2.1. 概要)
(6.1.2.2. 補助具例)
(6.1.2.3. 補助具利用のための実装)
(6.1.2.3.1. リハビリテーション施術内容情報に関連付ける場合)
(6.1.2.3.2. 身体機能評価情報に関連付ける場合)
(6.1.2.3.3. 生体情報に関連付ける場合)
(6.2. 類似評価関数の他の実装例)
(6.2.1. CNNを用いる類似評価関数)
(6.2.2. 入力と出力の選択について)
(6.2.3. 他の階層定義)
(6.2.4. パラメータの学習について)
(6.3. 生体情報への追加的記録)
(6.4. 個人生体情報集約部の実装)
【0077】
―――――― 本文 ――――――
(1. 図面の表記)
以下の説明では同時に多数の図面を参照することがあるので、可読性向上のため、図面中の符号は下2桁を 除く先頭の数値が図面番号を表す表記法を採る。また、可能な限り、同一・類似の作用を有する部位については下2桁を同じ数値に揃えている。たとえば、「リハビリテーション施術内容入力部(609)」ならば
図6を、「リハビリテーション施術内容入力部(309)」ならば
図3を、それぞれ主に参照した説明になっている。
【0078】
(3. 第1の実施の形態について)
第1の実施の形態を、
図1乃至
図5、
図8、並びに
図9を用いて説明する。
【0079】
(3.1. 本実施の形態に係る構成)
(3.1.1. リハビリテーション支援装置に生体情報等を送る装置の構成)
リハビリテーション支援装置をサーバとして構成する場合、クライアント側に、生体情報を取得する装置が必要となる。そこで、第1の実施の形態に係るリハビリテーション支援装置を説明するのに先立ち、リハビリテーション施設において生体情報を取得する装置の構成例について、
図8を用いて説明する。勿論、この生体情報取得装置は、職場、自宅にも設置することができる。
【0080】
通常、リハビリテーション施設においては、被術者(876)とトレーナ(878)とがチームを組み、トレーナの監視・指導の下で被術者はリハビリテーション・トレーニングを行う。勿論、ひとりの被術者をひとりのトレーナが看る必要はなく、複数の被術者をひとりのトレーナが看ても、ひとりの被術者を複数のトレーナが看ても構わない。
【0081】
[構内ネットワーク(872)]
同一のリハビリテーション施設内には、構内ネットワーク(872)を設けるのが通常である。構内の各種機器は、このネットワークに有線若しくは無線によって接続され、相互通信を行うことができるようになっている。
【0082】
構内ネットワーク(872)には、すくなくともひとつの個人生体情報集約部とゲートウェイ(874)が接続され、構内で得られた生体情報等を外部の依頼に応じて、もしくは外部に対して必要に応じて、送信することができるようになっている。そして、その宛先は、後述するリハビリテーション支援装置となっている。
【0083】
[各部センサ(877)]
各部センサ(877)は被術者(876)に装着され、被術者の生体情報を得られるようになっている。
【0084】
脚部センサ(877-1)は、被術者(876)のズボンに取り付けられ、主として足の筋電を測定するようになっている。そして、得られた情報を後述する個人生体情報集約部1(875-1)に送るようになっている。筋電は筋肉内部から直接採電してもよいが、たとえば、弾力性に富み、脚皮膚表面に密着する生地でできた肌着の皮膚側に電極素材を埋め込み、ここから採電するようにすれば、被術者の負担が軽減される。
【0085】
血流センサ(877-2)は、被術者(876)の上着袖付近に取り付けられ、主として血流に係る生体情報を取得るようになっている。血流に係る情報としては、上下血圧、脈拍数、爪表面から動脈血酸素飽和度(SpO2)などを取得することができる。そして、得られた情報は他のセンサと同様に、個人生体情報集約部1(875-1)に送るようになっている。
【0086】
心拍センサ(877-3)は、被術者(876)の上着胸部付近に取り付けられ、主として心臓付近からの生体情報を取得るようになっている。心臓に係る情報としては、心電などを取得することができる。ここでも、得られた情報は他のセンサと同様に、個人生体情報集約部1(875-1)に送るようになっている。
【0087】
生体情報を取得するセンサとして、体幹や脚等に装着した加速度センサを含めてもよい。体幹等に装着した加速度センサから得られる情報には、歩行時における体幹の傾度ばかりでなく、揺れ成分も含まれている。容易に想像できるように、運動障碍があるとその影響が歩行時の体幹の上下動、左右揺れ、並びに傾倒の程度となって表れるため、加速度センサから得られる情報は間接的ながら、物理的に直接得られる筋電等の情報にも劣らない有意義なデータである。
【0088】
もちろん、体幹等の加速度は、意識的に変えることも可能ではあるものの、変えようと意識したところで障碍の影響はそこに顕在するものであるから、この加速度もまた生体情報ということができる。
【0089】
なお、加速度センサに三次元加速度センサを用いることができれば、それだけでも3つの生体情報を得ることになり、相当に個性が現れた情報源とすることができる。もっとも、同一のリハビリテーション場所においては測定条件をできるだけ揺らぎのないものとするため、加速度に影響を与る履物は同じものを使用することが望ましい。勿論、素足でのリハビリをする場合には、特にこの点に注意する必要はない。
【0090】
[個人生体情報集約部(875)]
個人生体情報集約部(875)は、あらかじめ関連付けられた各部センサ(877)からの情報を得て、構内ネットワーク(872)を介して、これを集約サーバ(873)に送るようになっている。いわゆるアクセス・ポイントとして作用する。よって、個人生体情報集約部と各部センサとの間の接続は、有線によるもの、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)等の無線通信によるもの、赤外線通信によるものなど、通信ができるのであれば、その規格は問わない。
【0091】
なお、同じリハビリテーション施設構内であっても、居室とトレーニング場所が分離されている場合や、居室により家具配置環境が異なる場合には、これらを分割・独立した異なる区域として把握しておくのが好ましい。本装置は環境の異なる環境若しくは異なる空間配置では同じ動作でも異なる生体情報が得られる点に着目しているため、その環境の相違を装置が認識できるようにするためである。
【0092】
この場合、集約部を複数設け、個人生体情報集約部1(875-1)、個人生体情報集約部2(875-2)・・・のように、それぞれの空間ごとに個人生体情報集約部を設ければよい。加えて、これらから生体情報を得られたときに、何等か手段によって区域識別子を付加できるようにする。このように区域を分割・独立しておく場合には、個人生体情報集約部とセンサ部との間の通信には、赤外線通信を用いると混信を避けやすいので、設計上有利である。
【0093】
一方、区域識別子を生体情報に紐づけるには、後述する集約サーバ(873)において個人生体情報集約部に情報を送出する旨のポーリングを行ったときにこれを行えばよい。また、個人生体情報集約部(875)が、受けた生体情報に、自らの区域を示す識別子を紐づけて集約サーバに送出するのでも構わない。
【0094】
[集約サーバ(873)]
集約サーバ(873)は、構内ネットワーク(872)に接続され、個人生体情報集約部(875)から受けた生体情報を、ゲートウェイ(874)を介してリハビリテーション支援装置に送るようになっている。区域識別子を生体情報に紐づけるには前述のような手段の他、集約サーバ(873)で生体情報を集約する際に当該施設に割り振られた区域識別子(854)を併せるようにしても構わない。
【0095】
この際、リハビリテーション支援装置の負荷軽減を図るため、時系列に得られる生体情報は、予め定められた期間、集約サーバ中に記録蓄積しておき、意味ある単位にまとまったところでこれをまとめてリハビリテーション支援装置に送出するようにするのが好ましい。意味ある単位の時間として、一日単位であったり、被術者の帰宅後であったりなど、さまざまな選択をすることができる。
【0096】
集約サーバを対象にその施設での統計を取れば、リハビリテーション支援装置(サーバ)に参照要求をせずに必要な稼働レポートを生成することができるようになる。
【0097】
勿論、リハビリテーション支援装置自体の負荷が無視できる程度に軽い場合には、上記のようにまとめて送信するのでなくても、適宜個人生体情報集約部から直接ゲートウェイを介してリハビリテーション支援装置に生体情報を送出しても構わない。この場合、上記集約サーバで付していた区域識別子は個人生体情報集約部で付することになる。
【0098】
すなわち、集約サーバは構成上必須とまではいえないものの、集約サーバにおいて更に集計する機能を実装すれば、施設毎の情報集約・稼働状況のレポート作成など様々な機能拡張が容易になるので、可能であればこれを実装するのが望ましい。
【0099】
[トレーナ用情報端末(879)]
各利用者についてリハビリテーションを担当するトレーナ(878)には、必要なときにトレーナ用情報端末(879)を持たせることにする。
【0100】
トレーナ用情報端末(879)は、トレーナに、担当する被術者(876)についての身体機能評価を入力させ、入力されたデータをリハビリテーション支援装置(サーバ)に送ることができるようになっている。この際、その身体機能評価がどこで行われたものなのかは重要であるので、データをリハビリテーション支援装置(サーバ)に送るにあたっては、区域識別子も併せて送ることができるようにするのが望ましい。もっとも、大抵の場合、リハビリテーション施術をした際には、身体機能評価を行う。身体機能評価をする以上、これに区域識別子が付されているので、リハビリテーション施術情報に区域識別子を付する意味合いは薄いといえる。
【0101】
(3.1.2. リハビリテーション支援装置に係る構成)
次に第1の実施の形態に係るリハビリテーション支援装置について、
図1を用いて説明する。本実施の形態におけるリハビリテーション支援装置はサーバとして機能するものであって、利用者生体情報等入力部(101)、リハビリテーション施術内容入力部(109)、リハビリテーション実績情報記録部(102)、検索基準者決定部(103)、リハビリテーション実績情報検索部(104)、将来予測レポート作成部(105)を具備する。
【0102】
[利用者生体情報等入力部(101)]
利用者生体情報等入力部(101)は、ネットワークからの要求を受け、外部環境より少なくとも利用者識別子(111)・区域識別子(112)・生体情報(113)・身体機能評価情報(116)を取得するようになっている。そして、得た情報について、少なくともこれらを適宜に組み合わせ、後述するリハビリテーション実績情報記録部(102)に記録を求めるようになっている。具体的には、リハビリテーション実績情報記録部(102)がSQLデータベースである場合には、INSERT文若しくはUPDATE文を生成し、これをリハビリテーション実績情報記録部(102)に発行するようになっている。
【0103】
この際、サーバ外部から記録要求を受けるに先立ち、本リハビリテーション支援装置との間で、セキュリティ維持を図ることが望ましい。具体的には利用者生体情報等入力部(101)に、生体情報取得・送信情報端末との間で認証をする機構を実装すればよい。
【0104】
ここで被術者について記録される情報には、少なくとも生体情報と身体機能評価情報とがある。これらの記録にあたっては、他の記録との前後関係が把握できる情報を併せて記録させるようにする。すなわち、生体情報等取得装置が2回の異なる機会に生体情報を受け取ったときに、その計測時の前後が判別できればよい。たとえば、これらのデータを受信した日時、記録要求を発行した日時、生体情報等取得装置が生体情報を受け取った日時、シーケンシャルに増加するレコードIDなど、いずれもが選択肢となりうる。
【0105】
サーバ外部から受け取る情報のフォーマットについては、特にひとが読みやすい形式であるかどうかを問わない。
【0106】
[リハビリテーション施術内容入力部(109)]
リハビリテーション施術内容入力部(109)は、ネットワークからの要求を受け、外部環境にあって理学療法士などが操作する情報機器から、少なくとも利用者識別子(115)とリハビリテーション施術内容情報(117)を取得して、この内容をリハビリテーション実績情報記録部(102)に記録を求めるようになっている。ここで、リハビリテーション施術内容情報(117)はそのリハビリテーション被術者自身、リハビリテーション施術者、若しくは情報機器操作を代わってする者等、どの主体による入力であっても構わない。また、リハビリテーション施術内容情報(117)は、施術内容を予め定められたコードによってコード化されているか、平文テキストであるかを問わない。
【0107】
具体的には、リハビリテーション実績情報記録部(102)にSQLデータベースに実装する場合には、記録処理を要求するINSERT文若しくはUPDATE文を生成、これを発行するようにすればよい。
【0108】
個人リハビリテーション実績情報は一利用者にかかるリハビリテーション実績情報であっても、時間とともに蓄積していくものであるから、各情報を複数個記録することになる。このため、前記生体情報の記録と同様に、時系列の前後関係が把握できるようにタイムスタンプを記録するのが望ましい。
【0109】
なお、ここで記録するタイムスタンプは、INSERT文を発行するときの時刻など一定のイベントが起きた際のものとすることもできるし、リハビリテーション施術内容入力部(109)にリハビリテーション施術内容を記録させようとした操作者が任意でこれを登録できるようにしてもよい。INSERT文の発行時とすれば、入力項目の簡易化が図れる。一方、任意入力とすれば、理学療法士が一日の訪問リハビリテーションを行ったあと、事務所に帰ってからその日のリハビリテーション被術者の内容をまとめて登録することなどが可能となる。勿論、これらを選択できるようにしてもよい。
【0110】
また、リハビリテーション施術内容入力部(109)は、登録者と通信をするにあたり、http/https通信によりHTML文書を表示させ、この画面インターフェースを介して入力項目をガイドしてもよい。この場合、リハビリテーション施術内容入力部(109)は、Apache Tomcat(商標)などを用いてhttp/httpsのサーバ・コンテナを構成するように実装すれば足りる。そして、通信対象機器は、前記トレーナ用情報端末(879)で代用してもよいし、図示しない他のコンピュータとしてもよい。
【0111】
勿論、いわゆるスマートフォンのアプリケーションを外部情報端末として用いるのであれば、スマートフォンのアプリケーション側でこのインタラクティブ・ユーザ・インターフェースを実装し、リハビリテーション施術内容入力部(609)は、単に情報を入力し、リハビリテーション実績情報記録部(102)にそのまま記録を求めるようにしてもよい。
【0112】
[リハビリテーション実績情報記録部(102)]
リハビリテーション実績情報記録部(102)は、複数のリハビリテーション被術者に係る個人リハビリテーション実績情報を記録する。そして、個人リハビリテーション実績情報には、少なくとも生体情報と、身体機能評価情報と、リハビリテーション施術情報とを含んでいる。生体情報並びにリハビリテーション施術情報は、それぞれ時の前後を弁別できるように記録される。時の前後を弁別するために、たとえば本実施の形態では、日時データを採っている。もっとも、血圧は分単位での変動がみられるものの、一般に生体情報は総じて日単位・週単位でしか傾向は変わらないので、前後判別のための情報に時分秒程の精度は不要である。
【0113】
リハビリテーション実績情報記録部(102)においてする記録態様例について、
図2を用いて説明する。
図2は、リハビリテーション実績情報記録部(102)での記録管理に、リレーショナル・データベースであるSQLサーバを利用した場合のレコード定義例を示している。
【0114】
この例においては、1回の生体情報の測定結果を得るごとに基準テーブル(261)にレコードが追加されるように実装されている。そしてひとつのレコードには、少なくとも利用者識別子(233)、並びに区域識別子(234)を記録している。本実施の形態にあっては、タイムスタンプとして、たとえば生体情報の測定開始時刻を記録している。
【0115】
利用者識別子(233)は、そのレコードがどの被術者に係るものかを示す。即ち、利用者識別子は個人リハビリテーション実績情報がいずれの利用者に係るものであるのかを弁別できる手掛かりとして作用する。
【0116】
区域識別子(234)は、測定が行われた場所を示す識別子である。この識別子によって、ペアとして送られてくる生体情報等が、どこで得られたものなのかを示すことになる。同じ体調の者であっても測定環境によって生体情報・身体機能評価情報に偏位が生じるところ、家具の配置、労働場所などが予め決まっているところでは、同じ体調の者は同じような偏位をもつ生体情報を発する傾向が強い。この点に着目すれば、リハビリテーション実績情報記録部(102)に同じ区域IDをもって記録された測定情報は、他人の個人リハビリテーション実績情報に含まれるものであっても、同様の偏位をもち、比較対象データの軽重を判別できるように作用する。
【0117】
このレコードは、一回の測定がされたときに、その都度追加されるようになっている。
【0118】
一方、各測定機会に取得される生体情報には、一般に、拡張期血圧・収縮期血圧、脈拍数、動脈血酸素飽和度、筋電など、複数の要素が含まれている。1レコードは、これら全ての要素をカラムとして含んでも、選択した一部に限ったカラムであっても構わない。
【0119】
ところで、1回の測定で取得できるものであっても、施設によっては同じ種類の情報を捕れないこともあるので、記録の仕方は柔軟であることが必要である。そこで、本実施の形態では、生体情報については別に測定値テーブル(262)を用意して、ここに生体情報の種類とその値をひとつのレコードで記録するように実装している。これにより各施設における取得情報種類の相違に拘わらず、1テーブルで管理できるようになっている。そして、前記基準テーブル(261)中のレコードID(RCID)へのポインタを用意することで、測定毎の生体情報の記録ができるようになっている。
【0120】
測定値テーブル(262)には、単に生体情報を管理するばかりでなく、身体機能評価情報も管理できるようになっている。
【0121】
本実施の形態においては、このような柔軟性を図るため、実測した生体情報であるのか、評価情報であるのかを弁別するためにひとつのレコードのなかには、情報項目名のほかにフラグビット(238)を設けている。フラグビット中に少なくとも実測値(図中では「実」と表記)若しくは評価値(図中では「評」と表記)の別を記録しておけば、その情報内容が何かを弁別できるようになる。
【0122】
測定値テーブル(262)に記録された各情報は、どこで取得したものなのかを把握する必要がある。このため、たとえば、測定値テーブル(262)には、BaseRIDカラムを設け、これと基準テーブル(261)のRCID(レコードID)を記録することでリレーションをとっている。これにより、リンクされた基準テーブル中のRCIDが示すレコードに併せて記録された区域識別子(234)、タイムスタンプとの連携がとれるので、取得した生体情報、並びに取得した身体機能評価情報が、いつ、どこで取得したものなのかを把握できるようになる。
【0123】
なお、本例では、実測した生体情報とひとの評価を経た身体機能評価情報とを同じテーブルに記録しているが、これらを生体情報のみを記録するテーブルと身体機能評価情報のみを記録するテーブルとに分離して、独立に記録するようにしてもよい。
【0124】
リハビリテーション施術内容テーブル(264)は、リハビリテーション施術内容について記録するテーブルである。リハビリテーション施術内容は、予め定められたコードで記録しても、図に示すような文字列表記で記録しても構わない。
【0125】
もっとも、各リハビリテーション施術内容レコードについて、その記録がどの利用者のものであって、いつのものであるのかを記録する必要がある。上記測定値テーブル(262)に記録した測定値がどのようなリハビリテーションを行っているときに獲得できたのかを把握するためである。具体的には、どの利用者のリハビリテーション施術内容であるかを把握するために、そのレコードには利用者識別子(233)を記録しておけばよい。この識別子によって、基準テーブル(261)を介して測定値データとの時間的前後関係を把握できるようになるからである。
【0126】
また、そのデータの時間的前後関係を把握できるようにするために、たとえば、タイムスタンプを入れておく。これにより、特定の利用者について、測定された生体情報とリハビリテーション施術内容とが時系列に整理できるようになる。
【0127】
[検索基準者決定部(103)]
検索基準者決定部(103)は、将来予測レポートを得る対象者を特定するための情報、すなわち、利用者識別子自体、若しくは利用者識別子を特定できる情報を入力するようになっている。そして、入力した情報に基づいて利用者識別子を特定するようになっている。なお、これを入力する者は被術者であるかどうかを問わない。
【0128】
検索基準者決定部(103)についても、前記リハビリテーション施術内容入力部と同様に、通信をするにあたり、http/https通信によりHTML文書を表示させ、この画面インターフェースを介して入力項目をガイドしてもよい。この場合も、検索基準者決定部(103)は、サーバ・コンテナを実装すればよい。そして、通信対象機器は、前記トレーナ用情報端末(879)としてもよいし、図示しない他のコンピュータとしてもよい。
【0129】
利用者識別子を特定できる情報とは、たとえば居所・氏名の組み合わせ、郵便番号・氏名の組み合わせ、ログイン名・パスワードの組み合わせ、リハビリテーション施設識別子とログイン名の組み合わせ、特定のリハビリテーション施設を示す区域識別子・ログイン名・パスワードの組み合わせ、個々人が使用する機器に割り振られた識別子など、どのようなものであってもよい。
【0130】
検索基準者決定部(103)は、このような利用者識別子を特定できる情報に基づいて、装置利用を許す者を登録したデータベース(図示せず)を参照して、被術者の識別子を特定するようになっている。
【0131】
なお、本装置を、リハビリテーション施術者が被術者について検討する際に閲覧するような用い方をする場合には、リハビリテーション施術者を利用許諾者とし、その担当する秘術者を特定するように実装する。この場合、検索基準者決定部(103)はこの被術者の利用者識別子を決定するようにすればよい。勿論、このためには、ログイン画面・検索基準者の決定画面など複数ステップにわたる画面を表示させて決定していくように実装すればよい。具体的には、検索基準者決定部(103)は、認証データベース(図示せず)を参照し、その操作者が本装置を利用する資格があるかどうかを把握したうえで、操作を許された者である場合には、その検索基準者を特定する利用者識別子を決定する。
【0132】
ところで、検索基準者決定部(103)は、閲覧したい他人の情報の特定にも用いられる。具体的にはリハビリテーション実績情報検索部で検索された結果が複数にかかるとき、いずれの情報を参照したいのかを操作者に選択させるため、リストを形成してこれを情報端末(図示せず)に提示できるようになっている。
【0133】
個人情報保護の観点から、ここでは特定される情報からは直ちにいずれの者にかかるものかを特定することはできないようになっているのが望ましい。提示するリストには他人特定のための識別子として利用者識別子を含めるのではなく、リストの何番目に挙げられた者かなどの直接には個人を特定できない識別子を選択肢として送出されるようにすればよい。そして、得られた識別子に基づいて利用者識別子を決定し、リハビリテーション実績情報記録部から個人リハビリテーション実績情報を取得するようにすればよい。
【0134】
[リハビリテーション実績情報検索部(104)]
リハビリテーション実績情報検索部(104)は、前記検索基準者決定部(103)からの要求を受け、この指定された利用者の近時の生体情報若しくは身体機能評価情報と類似する生体情報若しくは身体機能評価情報を含む個人リハビリテーション実績情報をリハビリテーション実績情報記録部(102)より抽出するようになっている。
【0135】
近時の生体情報若しくは身体機能評価情報としては、その者につき前記リハビリテーション実績情報記録部(102)に最後に記録された情報を用いるのが好ましい。
【0136】
もっとも、最後に記録された情報には必要な情報要素が不足していた、最後の記録の際には偶々他の傷病があったなど、満足できる精度で類似判定をすることができない特段の事情があれば、それ以前のもので代用してもよい。
【0137】
代用する場合でも、できる限り直近の情報を用いるのが好ましい。これが現在の身体的状態に近い情報だからである。この特段の事情の有無は、次述する類似評価関数によってデータ間距離を計算できるかどうかで判断することができる。また、リハビリテーション実績情報記録部(102)に一時的な傷病があったときに記録をする図示しない一時的阻害状態記録フィールドを設け、そこに記載があるかどうかを参照すればよい。
【0138】
ここで、「類似」の判定について触れる。この点、少なくとも複数の値からなる情報Aと、複数の値からなる情報Bとを引数とする類似評価関数を実装し、その出力値を距離とみて、その距離が一定の値以下になったとき、これをもって「情報Aと情報Bとが類似する」と判定すればよい。
【0139】
・ 類似評価関数について
類似評価関数については、さまざまな実装を想定できるが、本リハビリテーション支援装置において最適なものとして、たとえば以下のような性質をもたせることができる。
【0140】
[1] 操作する利用者が最後に記録したリハビリテーション実績情報のうち、リハビリテーション施術内容が、他人の過去のリハビリテーション施術内容と同一ではない場合、もしくは施術部位に一致するところがない場合には「非類似」として大きな値の距離を返す。
[2] 操作する利用者が最後に記録したリハビリテーション実績情報のうち、リハビリテーション施術内容が記録された時を境に前1か月の身体機能評価情報の各項目の平均値と、他人の過去のリハビリテーション施術内容が記録された時を境に前1か月の身体機能評価情報の項目ごとの平均値との差を二乗平均した値を上記[1]の距離の値に加える。
[3] 操作する利用者が最後に記録したリハビリテーション実績情報のうち、リハビリテーション施術内容が記録された時を境に後1か月の身体機能評価情報の各項目の平均値と、他人の過去のリハビリテーション施術内容が記録された時を境に後1か月の身体機能評価情報の項目ごとの平均値との差を二乗平均した値に1を超える値を乗算した値を上記[1]の距離の値に加える。1を超える値を乗算して重畳したのは、リハビリテーション施術後の身体機能評価を重視するためである。
[4] 上記[2][3]で演算対象とする身体機能評価情報は、区域識別子が同じもの、若しくは同一人が身体機能評価をしたときに同じ結果が出る場所に係る区域識別子が紐づけられたものを対象とする。
【0141】
言い換えれば、この関数は、操作する利用者が最後に記録したリハビリテーション実績情報のうち、リハビリテーション施術内容が記録された時を境に前1か月の身体機能評価情報の各項目の平均値を情報Aとして、また、他人の過去のリハビリテーション施術内容が記録された時を境に前1か月の身体機能評価情報の項目ごとの平均値を情報Bとして、情報Aと情報Bとの距離を求めるものであるということになる。更に、被検索対象となる身体機能評価情報は環境が同一乃至同様の区域識別子を持つものでフィルターした後に演算を行うものとなっている。
【0142】
このような関数では、リハビリテーション施術内容を基調として、施術後の身体機能向上を重視した距離を定義することができるようになる。なお、ここで、利用者がリハビリテーション被術直後であると、その後の身体機能評価情報はないので、[3]にかかる演算を無視して距離を定義してもよい。このような関数は、SQLデータベースの場合、Stored Procedureと呼ばれる技法を用いて実装することができる。
【0143】
勿論、上記関数は例示したものであって、たとえば各項目の平均値で比較するところを、リハビリテーション施術直後の身体機能評価情報は大きい重みづけをするような値で各項目値を計算して距離を計算するなどの演算にすることもできる。これら関数の選択は、現在の利用者の就業内容によって変更するなどの実装法もあり得る。
【0144】
・ リハビリテーション実績情報検索部の周辺処理
次にリハビリテーション実績情報検索部周辺の処理内容について、
図4を用いて更に具体的に説明する。
図4はリハビリテーション実績情報検索部が個人リハビリテーション実績情報のどの要素をどのように比較して同一・類似情報を抽出するかを説明する説明図である。ここでは、検索基準者も被検索対象も、リハビリテーション実績情報記録部(102)に記録されているものとして説明を行う。
【0145】
リハビリテーション実績情報検索部(104)は、前記検索基準者決定部(103)からの要求を受けると、その指定事項を用いて、リハビリテーション実績情報記録部(102)に記録されている個人リハビリテーション実績情報を特定する。この情報のなかには、リハビリテーション施術情報(455-1)と身体機能評価情報乃至生体情報(453-1)が含まれている。
【0146】
次に、最後に記録されたリハビリテーション施術情報(455-1)を含み、更にこれに前後する身体機能評価情報乃至生体情報(453-1)のうち、少なくとも身体機能評価情報を併せ、これを検索基準データとして用いることにする。この際、身体機能評価情報乃至生体情報(453-1)には、これらと紐づけられた区域識別子(452-1)がある。そこで、これら、リハビリテーション施術情報(455-1)と身体機能評価情報乃至生体情報(453-1)に加え、区域識別子(452-1)を組として類似評価関数の片側入力とする。
【0147】
検索の際には、被検索対象となる他人の個人リハビリテーション実績情報のうち同じ種類の情報を他方の入力として類似すると判断されるものを抽出する処理を行うことになる。
【0148】
・ リハビリテーション施術情報に着目した類似判断
ここで、類似評価関数におけるリハビリテーション施術情報(455-1)の扱いについて付言する。リハビリテーション施術情報は、完全一致したものでなくても、要部が一致していれば抽出できる類似評価関数にするのが望ましい。たとえば、リハビリテーション施術情報をテキストで記録している場合、「左腓腹筋ストレッチ」が引数のひとつとしたとして、「左腓腹筋伸縮運動訓練」が近距離にあるものと判断できるようにする。これによりトレーナが異なる際の表現の違いを吸収できるようになる。勿論、リハビリテーション施術情報を予めコード化しておけば表現に幅は生まれないので、全部一致のみを抽出できればそれで充分である。要部の一致を検出するには、検索鍵を形態素分析し、分析の結果、そこに含まれているリハビリテーション施術にかかる用語が全て含まれているかどうかで判断すれば足りる。
【0149】
・ 「最後に記録」された情報を利用する意義
ひとは直近の状況を強く意識する。「最後に記録」された情報は、もっとも不安な時期である現在の状況を表しており、これを基準にすることが最も関心を寄せるべき他人の個人リハビリテーション実績情報にたどり着くことができるからである。
【0150】
・ 検索基準者としてリハビリテーション実績情報記録部の記録データを利用する意義
ところで、検索基準者となる情報を単に外部から指定するのではなく、一旦リハビリテーション実績情報記録部(102)に記録された情報を用いているのでこの点について付言する。このように取り扱ったのは、
(1) 検索で必要になる情報はリハビリテーション施術内容を主たる鍵になるにしても、身体機能評価情報若しくは生体情報を伴わなければ参考になるリハビリテーション実績情報が得られないこと、
(2) そのような情報があるのであれば積極的にリハビリテーション実績情報として記録しておく方が有意義な情報の蓄積が促進されること、
(3) リハビリテーション施術情報だけみても、被術者の継続する生活のなかでの行動を俯瞰することができないこと、
が理由である。
【0151】
・ 身体機能評価情報と生体情報との取り扱い
前述の通り、類似評価を行うには類似評価関数を用いる際、身体機能評価情報を主として距離を計算するが、生体情報は補助的なものと扱うことができる。この点は
図11を用いて既述したところであるが、身体機能評価情報が同じでも個々人の主観的負担は異なる。このため、主観的評価を重視するのであれば上記類似評価関数で生体情報取り入れた処理をし、これを軽視するのであれば、上記類似評価関数で生体情報の差異が距離に現れる程度を下げるようなものにすればよい。
【0152】
・ 小結
斯くして、リハビリテーション実績情報検索部(104)は、検索基準者決定部(103)で受けた検索指示により、リハビリテーション実績情報記録部(102)において、同一・類似の身体機能評価情報若しくは生体情報を持つ個人リハビリテーション実績情報を抽出する(484)。
【0153】
[将来予測レポート作成部(105)]
将来予測レポート作成部(105)は、リハビリテーション実績情報検索部(104)で検索抽出した個人リハビリテーション実績情報に基づいて、その検索基準となった生体情報の被獲得者について将来予測される身体的状況の経緯を看取しやすい形式に整理したうえで、これを表示乃至印刷するなどして、可視化するようになっている。
【0154】
また、将来予測レポートに自分にかかるリハビリテーションの効果軌跡を提示して、リハビリテーション時のみの感触でなく、具体的な生活のなかでどのように身体機能が向上しているのかを把握させるようにしてもよい。
【0155】
(3.2. 本実施の形態に係る動作)
次に、本実施の形態にかかる動作について、便宜上、リハビリテーション実績情報の記録段階と抽出段階とに分けて説明する。
【0156】
(3.2.1. リハビリテーション実績情報記録段階)
データとして記録したい被術者(利用者)の生体情報並びに利用者識別子は、前述のようなリハビリテーション施設、デーサービス施設、デーケア施設、職場、その他において、生体情報を取得できるようにセンサを備えた被術者から得られる。各部センサ(877)から得られた生体情報は個人生体情報集約部1(875-1)を介し、さらに構内ネットワーク(872)を通して集約サーバ(873)に集約される。
【0157】
そして、トレーナ(878)がトレーナ用情報端末(879)から記録を指示した場合には、集約サーバ(873)は、集約した生体情報を、このリハビリテーション施設に唯一割り振られた区域識別子(854)を伴って、リハビリテーション支援装置に送出する。この際、ゲートウェイ(874)は、特定したリハビリテーション支援装置として特定されたアドレスのデバイスへのルーティングをしてネットワーク外部に送出する。この点は、通常のネットワークが行うのと同様である。
【0158】
リハビリテーション施設では、利用者は必要な生体情報を取得できるようにするために、各部センサを装着する。そして、医師・理学療法士などの専門家が立てたリハビリテーション・メニューに従ってリハビリテーションを受ける。理学療法士等は、リハビリテーションを行う際に、被術者の健康状態を意識するので、この時点で測定した生体情報を記録させるように指示すればよい。
【0159】
ネットワークを介して前記ゲートウェイ(874)から送られた情報は、利用者生体情報等入力部(101)に到達する。この情報には、生体情報(113)が含まれていることは勿論、区域識別子(112)並びにその生体情報を発した利用者を識別する利用者識別子(111)が含まれている。
【0160】
こうして利用者生体情報等入力部(101)が受けた生体情報等は、ここでリハビリテーション実績情報記録部(102)に記録できる形式に変換される。そして、利用者生体情報等入力部(101)は、これをリハビリテーション実績情報記録部(102)に記録するように指示する。この指示に従ってリハビリテーション実績情報記録部(102)には、
図2を用いて前述したとおり、基準テーブル(261)並びに測定値テーブル(262)に、生体情報が記録される。
【0161】
これと並行して、もしくは前後して、トレーナ(878)もしくはその指示を受けるなどして利用者のリハビリテーション施術内容を登録しようとする者は、図示しない情報機器からリハビリテーション施術内容入力部(109)に接続し、利用者にかかるリハビリテーション施術内容を記録するように本リハビリテーション支援装置に指示をする。この指示に従ってリハビリテーション実績情報記録部(102)には、
図2を用いて前述したとおり、リハビリテーション施術情報が記録される。
【0162】
なお、その登録にかかる利用者を特定するために利用者識別子(115)を指定するが、ここでの利用者識別子は上記利用者生体情報取得に係った利用者の識別子を一致させておく必要がある。このため、利用者識別子は、利用者ごとに電磁的記録カードを作成して、このカードに利用者識別子を記録しておき、これをそのまま入力情報とするように実装すれば、使い勝手が向上する。
【0163】
以上説明したように、各利用者の生体情報等は、リハビリテーション支援装置中のリハビリテーション実績情報記録部(102)に記録されることになる。
【0164】
(3.2.2. リハビリテーション実績情報抽出段階)
将来に不安がある被術者は、その被術者と同様の状況を経験した他人のリハビリテーション施術内容とその施術前後後の状況を強く知りたいと思うものである。ここでは、リハビリテーション開始後、回復に不安をもった利用者がリハビリテーション施設において、本リハビリテーション支援装置を用いるというシナリオを仮定して説明する。なお、本装置の動作について、構成から説明するときには
図1を、データを中心に説明するときには
図5を、構成上の動作順序を中心に説明するときには
図9を、それぞれ用いる。
【0165】
また、本装置中、情報端末と装置との間の通信は、検索基準者決定部(103)が制御するように実装するものとして説明する。
【0166】
本装置はリハビリテーション施術者、リハビリテーション施設の管理者・運営者なども閲覧したい場合にも利便性がある。これらの者が本装置を利用する場合にも、秘術者と同様に操作すればよい。この場合の装置操作手順や装置動作は秘術者がするのと概ね同様であるので、説明を割愛する。
【0167】
[検索基準者決定ステップ]
当然ながら、本装置は個人にかかる機微情報を扱うのであるから、まずは、いわゆるログイン処理を介して利用可能な者かどうかを認証する。具体的には自分に類似する他人の個人リハビリテーション実績情報を検索したい者は、図示しない端末装置から本装置に対して接続を要求する(S0901)。これに対して、利用者識別子・パスワードなどを組みにしたログイン情報を操作者に求めるため、検索基準者決定部は、情報端末に対してログイン要求を送信する(S0902)。操作者は、この要求に対して情報端末からログイン操作をする(S0903)。
【0168】
図示しない情報端末からのログイン情報に基づいて検索基準者決定部(103)は認証(S0904)を行う。
【0169】
この認証で合格すると次に、行いたい操作の選択を促す操作要求を行う(S0905)。
【0170】
操作要求を受けた情報端末は表示パネルなどを通して操作者に操作を促すので、これに対し、例えば操作者は、先例照会を求める(S0906)。この要求が検索基準者決定部に到達すると、同検索基準者決定部は、前記認証の際に確定した利用者識別子を伴ってリハビリテーション実績情報検索部(504)に対し、類似データを持つ個人リハビリテーション実績情報の検索を求める(S0907)。
【0171】
前記検索要求があると、リハビリテーション実績情報検索部(504)がこれに応える。この点、
図5を用いて詳述する。
【0172】
検索基準者決定部(503)が決定した利用者識別子に基づいて、リハビリテーション実績情報検索部(504)は、その個人リハビリテーション実績情報の取得をリハビリテーション実績情報記録部(502)に求め、その結果を得る(504-1)。
【0173】
リハビリテーション実績情報記録部(502)から得られた個人リハビリテーション実績情報(552)には、最後のリハビリテーション施術情報、並びに最後に記録された身体機能評価情報若しくは生体情報が含まれている(504-2)。リハビリテーション実績情報検索部(504)は、類似評価関数を用いてこれらリハビリテーション施術情報等に類似する他人の個人リハビリテーション実績情報を検索することになる。リハビリテーション施術情報には併せてその施術を行った時期情報が含まれており、かつ身体機能評価情報若しくは生体情報にもその評価時期乃至測定時期の情報が含まれているので、これらの前後関係は把握できる。このため、リハビリテーション施術情報のあとに身体機能評価情報若しくは生体情報があるという時間的前後関係も検索の条件として用いる。
【0174】
すなわち検索対象として特定された個人リハビリテーション実績情報のうち、最後のリハビリテーション施術情報を含むひとつ以上のリハビリテーション施術情報と、最後の身体機能評価情報若しくは生体情報を含むひとつ以上の身体機能評価情報若しくは生体情報のそれぞれ対応する時期の順に同一・類似の他人の個人リハビリテーション実績情報が抽出されることになる(504-3)。
【0175】
以上のようにして類似する個人リハビリテーション実績情報の検索ができたら(S0908)、その結果である個人リハビリテーション実績情報は将来予測レポート作成部(505)に送られる(S0913)。以下、
図9を中心とした説明に戻る。
【0176】
この際、類似する他人の個人リハビリテーション実績情報が複数にかかる場合には、これらを検索基準者決定部に提示する(S0909)とともに、検索基準者決定部から情報端末上にリスト形式にして提示し、操作者に選択を求める(S0910)。
【0177】
リスト表示に当たっては個人情報の取り扱いに注意する必要がある。ここで得られる情報は機微情報であるために、高々職種の遷移とリハビリテーション施術内容程度の提示にとどめておくのが望ましい。
【0178】
次に、操作者がいずれの個人リハビリテーション実績情報かを選択すると、これを検索基準者決定部に送信し(S0911)、その選択に基づいて検索基準者決定部は、リハビリテーション実績情報検索部に対してその個人にかかるリハビリテーション実績の総情報を求める(S0912)。
【0179】
これに応えてリハビリテーション実績情報検索部は、リハビリテーション実績情報記録部に記録された類似個人リハビリテーション実績情報を選択、この内容を整理情報として将来予測レポート作成部に引き渡す(S0913)。
【0180】
将来予測レポート作成部(505)は、こうして抽出された個人リハビリテーション実績情報に基づいて、その他人に係る個人リハビリテーション実績情報を見やすい形で表示する(S0914)。
【0181】
なお、ここでもリハビリテーションにかかる情報は、いわゆる機微情報に該当するため、個人情報保護の観点から、表示の際には、その他人が誰なのか、どこに住んでいるのかなどがわからないようにして表示する。即ち、将来予測レポート部が表示する情報は抽出された個人リハビリテーション実績情報全てでなくてもよく、リハビリテーション被術者の将来を予測させるのに必要なものに限るべきである。
【0182】
また、表示の際には、見易さを重視するため、単なる文字情報だけではなく、状況を把握しやくいイラストや三次元モデル表示などで表現するとよい。
【0183】
以上のように動作させることで、自分の将来に不安を持つ被術者は先例を具体的に把握できるために、その不安の程度を劇的に低減させることができるようになる。
【0184】
(3.3. 補足的事項)
(3.3.1. 実装する被検索対象について)
上述の説明では、リハビリテーション実績情報検索部(104)による同一・類似の個人リハビリテーション実績情報抽出において類似検索の手掛かりとして用いるのはリハビリテーション施術情報のほか、身体機能評価情報若しくは生体情報としている。これは、身体機能評価情報若しくは生体情報のいずれを検索要素としても構わないことを意味しているが、いずれをもって検索するのがよいのか、また、どのようにして両者を検索対象にするべきかについて、ここではその設計上のメルクマールを詳述する。
【0185】
まず、検索する者がどのような立場にあるのかによって、身体機能評価情報若しくは生体情報のいずれかを選択するというメルクマールが想定される。
【0186】
つまり、リハビリテーション施術者など医学的見地から本装置を利用する者は生体情報が示す意味について深い理解がある。このために、リハビリテーション施術情報とともに生体情報を検索基準データとして利用することで、施術者自身の計画設計上の参考情報が得られることになる。
【0187】
これに対し、被術者など医学的造詣には浅いものの、将来の見掛け上の状態に強い興味を持つ者であれば、無味乾燥な生体情報よりも身体機能評価情報の方に興味がある。このため、リハビリテーション施術情報とともに身体機能評価情報を検索基準データに用いることで、秘術者の不安解消・人生設計上の参考情報が得られることになる。
【0188】
勿論、類似評価関数(481)の演算処理実装如何によって、両者を混在させることができる。本装置に情報が多く蓄積すると、身体機能評価情報若しくは生体情報のみによる抽出条件による絞り込みをしても、結果が多く出てしまうので、これを絞り込むには、検索条件が多くなるほうがより絞り込みが効率的にできるようになる。
【0189】
よって、そのような場合には、類似評価関数の設定によって、また検索するものの選択によって、絞り込んだ結果数を減らすことができるようになる。
【0190】
(3.3.2. リハビリテーション施術者を特定する情報の活用)
リハビリテーション実績情報の要素であるリハビリテーション施術情報に、リハビリテーション施術者を特定する情報を含めておくこともできる。同様に、身体機能評価情報にもリハビリテーション施術者を特定する情報を含めておくこともできる。
【0191】
このようにしたうえで、検索する者がこの情報を参酌することで、リハビリテーション施術情報に係る個人的記述技法等の相違を第三者が把握する手がかりを得ることができるようになる。
【0192】
また、リハビリテーション施設の責任者がそこに就労しているリハビリテーション施術者の評価をしたい場合に、その施術者を特定して状況を把握するなど、補助的な利用法が可能となる。
【0193】
(3.3.3. リハビリテーション施設等を特定する情報の活用)
リハビリテーション実績情報の要素であるリハビリテーション施術情報に、リハビリテーション施設を特定する情報を含めておくこともできる。同様に、身体機能評価情報にもリハビリテーション施術を特定する情報を含めておくこともできる。
【0194】
このようにしたうえで、リハビリテーション実績情報検索部(504)が他人の個人リハビリテーション実績情報を検索する際に、リハビリテーション施設情報を条件に加えることで、より確実かつ不安解消に役立つ他人事例を提示できるようになる。
【0195】
(3.3.4. テーブル定義に係る他の実装)
上述のとおり、測定値テーブル(262)の各レコードは、基準テーブル(261)とリレーションをとっている。これは、その測定値レコードがどの区域で取得されたのかを把握すること、かつ、その測定値が誰のものに係るのかを把握するためである。
言い換えれば、測定値情報について、誰のもので、どこで採られたものなのかを把握できるのでれば、基準テーブル(261)と測定値テーブル(262)との間で直接リレーションを採る必要はない。
【0196】
たとえば、測定値テーブルに、利用者識別子(PID)と区域識別子(RGNID)、並びにその測定・評価時期(TimeStamp)のカラムも備えるようになっていれば、特定の利用者について、基準テーブル(261)上の同カラムと対比させれば時系列の把握ができ、単一テーブルのみで類似評価をすることができるようになる。このようにすることで、基準テーブルと測定値テーブルとを別データベースに分離設置することができ、リハビリテーション支援装置のシステムとしてのスケーラビリティを高めることができる。
【0197】
身体機能評価情報と、生体情報とがそれぞれ区域識別子と紐づけられ、かつ、これらとリハビリテーション施術情報とがそれぞれ時期の前後が判別できる状態で記録されていれば、テーブル構成などに拘泥することはない。実装に際して併せて具備する機能を実現しやすいように記録をすればよいのである。
【0198】
(3.3.5. 生体情報に係る記録乃至類似の判定について)
生体情報は数値で記述されているために、数値差が所定範囲内にあるかどうかで類否判定をすることになる。よって、生体情報をもって類似の判定をする類似評価関数の入力には、生の生体情報ではなく、カテゴライズの前処理を経たものを用いてもよい。たとえば、血圧値について、80~82、82~84など、所定の幅を持った血圧値帯にインデックスをつけて入力とし、これに隣接する血圧値帯を類似と評価するようにしてもよい。
【0199】
(4. 第2の実施の形態について)
次に、第2の実施の形態について
図6、
図7を用いて説明する。
【0200】
(4.1. 第2の実施の形態の概要)
本実施の形態は、予測できる将来の身体機能評価若しくは生体情報を手掛かりにして、将来どのような職業・職種であれば継続できるのかを把握するとともに、その職種を選択するにはどのような訓練が必要なのかを、示唆できるようにしたものである。これにより、被術者の不安を早期に解消するという本願発明の趣旨に沿い、単に類似の身体機能評価を有する他人の事例紹介に留まらず、幅広い職業・職種の選択肢を提示して、その困難性や将来的な身体機能の変遷を意識したガイダンスができるようになる。
【0201】
もっとも、前述の通り、外観的に身体機能が十分で運動・作業も可能であると認められても、主観的に相当無理をしていると感じていて、そのような無理を続けられないと思うひともある。一方で、外観的には動作に困難が伴うように認められても、内心ではこの程度の無理は問題なく続けられると思うひともある。
【0202】
本実施の形態は、このような主観的負担のバラツキをも考慮して、職種選択の支援に供する点に意義がある。
【0203】
(4.2. 本実施の形態に係る構成)
本実施の形態は、第1の実施の形態におけるリハビリテーション支援装置と同じく、利用者生体情報入力部(601)、リハビリテーション施術内容入力部(609)、検索基準者決定部(603)を具備する。これらの作用は概ね同様であるので、これら各部の説明は省略する。
【0204】
同様に、リハビリテーション実績情報記録部(602)、リハビリテーション実績情報検索部(604)、将来予測レポート作成部(605)も具備し、さらに、職種情報入力部(610)を具備する。
【0205】
[リハビリテーション実績情報記録部(602)]
リハビリテーション実績情報記録部(602)は、複数のリハビリテーション被術者に係る個人リハビリテーション実績情報を記録する。そして、個人リハビリテーション実績情報には、少なくとも生体情報と、身体機能評価情報と、リハビリテーション施術情報とを含んでいる点で第1の実施の形態と同様である。さらに、生体情報並びにリハビリテーション施術情報に、それぞれ時の前後を弁別できるように記録される点も同様である。
【0206】
もっとも、リハビリテーション実績情報記録部(602)に記録されている個人リハビリテーション実績情報には更に、職種情報が含まれている。通常、職種情報は職種テーブル(764)によって管理する。
【0207】
ここで職種とは、使う身体部位や、身体機能・程度が異なるかどうかの視点で分類した仕事の種類のことをいう。
【0208】
たとえば、植物工場においては、播種、育苗、生育、接木、搬送、異常発見などの作業があるが、これらはそれぞれ使う身体機能・程度が異なるので、この程度を基準として分類すればよい。もちろん、これらとは異なるスキルが求められる、会計・総務人事なども異なる職種として分類することになる。
【0209】
職種テーブル(764)は、被術者が従事している業務を記録するデータ・テーブルである。このテーブルは、特にいずれかの他のテーブル中のレコードとリレーションをとる必要はないが、被術者を特定するための利用者識別子(PID)カラムなどは必要である。
【0210】
職種テーブルが管理するレコードは主として職種情報を記録するが、更に本実施の形態では、利用者識別子(PID)の他、区域識別子(RGNID)、職種、時期情報を含めてある。この時期情報はその被術者がそのレコードに記載されている職種に就業した日に係る情報とするのが望ましい。また、その記録に係る職種について就業したことは勿論、離職したことも把握できるようにすべきである。
【0211】
この点、このテーブル設計上、時期情報の実装技法にはいくつもの選択肢がある。たとえば、
[1] ひとつの職種を記録するレコードに、職種を表す情報と、その職種従事を始めた時期情報を記録し、離職した時期情報は含めない選択肢、
[2] ひとつの職種を記録するレコードに、職種を表す情報を記録し、このレコードにリレーションを介して他テーブルのレコードに、その職種従事を始めた時期情報と、離職した時期情報と、を記録する選択肢、
[3] ひとつの職種を記録するレコードに、職種を表す情報と、その職種従事を始めた時期情報と、離職した時期情報と、を記録する選択肢、
など、さまざまな実装が採りうる。
【0212】
[1]の実装によれば、多くの領域をとらずに済ませるので、装置構成をコンパクトにすることができるようになる。
【0213】
[2]の実装によれば、職種情報の記録手法に柔軟性を持たせることができる。たとえば実装によっては、職種の詳細な説明に係る情報を併せて含めることが容易になる。
【0214】
[3]の実装によれば、同じレコードに就業日と離職日とが含まれているので、そのレコードが示す職種に就業していたことがこの期間を参照すれば把握でき、また、図中「null(ヌル)」で示したように、離職日カラムを未記録にしておけば、現在その職種に就業中であることがわかる。また、特定の利用者識別子について、離職日に未記録のレコードがない者の場合は、現在職に就いていないことを表すことになる。さらに、異なるレコード間で、就業日~離職日の期間が重複するようであれば、同時に複数の職種に従事している「兼務」の状態であったことが管理可能となる。
【0215】
以上みてきたように、[3]の技法が、設計上かつ直観的に理解容易であるために、以下ではこの実装に基づいて説明する。
【0216】
[リハビリテーション実績情報検索部(604)]
リハビリテーション実績情報検索部(604)は、検索基準者決定部(603)からの要求を受け、この指定された利用者の直近の生体情報若しくは身体機能評価情報と類似する生体情報若しくは身体機能評価情報を含む個人リハビリテーション実績情報をリハビリテーション実績情報記録部(602)より抽出を要求するようになっている。そして、この要求により抽出された個人リハビリテーション実績情報に含まれる、職種情報と身体機能評価情報若しくは生体情報とを手掛かりにして、後述する職業訓練計画記録部(608)に当該手掛かりと類似する職種から将来就業可能な職種とそのための訓練内容について抽出するように要求する。斯くして得られる職業訓練内容は、後述する将来予測レポート作成部(605)に引き渡さるようになっている。
【0217】
ここでも、「類似する」の意義は第1の実施の形態と同様である。すなわち、「情報Aと情報Bとが類似する」とは、少なくとも複数の値からなる情報Aと、複数の値からなる情報Bとを間の距離をみて、その距離が一定の値以下になることをいう。
【0218】
第2の実施の形態に係る本リハビリテーション支援装置における類似評価関数についても様々な実装を想定できるが、最適なものとして例えば以下のような性質を持たせることができる。
【0219】
[1] 操作する利用者が最後に記録した職種情報が、他人の過去の職種情報と同一でない場合には「非類似」として大きな値の距離を返す。
[2] 操作する利用者が最後に記録したリハビリテーション実績情報のうち、リハビリテーション施術内容が、他人の過去のリハビリテーション施術内容と同一ではない場合、もしくは施術部位に一致するところがない場合にも「非類似」として大きな値の距離を返す。
[3] 操作する利用者が最後に記録したリハビリテーション実績情報のうち、リハビリテーション施術内容が記録された時を境に前1か月の身体機能評価情報の各項目の平均値と、他人の過去のリハビリテーション施術内容が記録された時を境に前1か月の身体機能評価情報の項目ごとの平均値との差を二乗平均した値を距離の値に加える。
[4] 操作する利用者が最後に記録したリハビリテーション実績情報のうち、リハビリテーション施術内容が記録された時を境に後1か月の身体機能評価情報の各項目の平均値と、他人の過去のリハビリテーション施術内容が記録された時を境に後1か月の身体機能評価情報の項目ごとの平均値との差を二乗平均した値に1を超える値を乗算した値を距離の値に加える。
[5] 操作する利用者が最後に記録したリハビリテーション実績情報のうち、リハビリテーション施術内容が記録された時を境に前1か月の生体情報の各項目の平均値と、他人の過去のリハビリテーション施術内容が記録された時を境に前1か月の生体情報の項目ごとの平均値との差を二乗平均した値を距離の値に加える。
[6] さらに、操作する利用者が最後に記録したリハビリテーション実績情報のうち、リハビリテーション施術内容が記録された時を境に後1か月の生体情報の各項目の平均値と、他人の過去のリハビリテーション施術内容が記録された時を境に後1か月の生体情報の項目ごとの平均値との差を二乗平均した値に1を超える値を乗算した値を距離の値に加える。
【0220】
現実に仕事を完遂できる能力があるかどうかは身体機能評価情報に強く表れる傾向があるのに対し、本人がそれを苦しいと考えるかどうかは生体情報に強く表れる傾向がある。すなわち、上記類似評価関数はこのような他人の外観による評価は勿論であるが、それに加え、本人の感じ方も含めて類似する他人の先行状況を抽出することができるようになる点で、意義がある。
【0221】
そして勿論、本類似評価関数は、リハビリテーション施術内容を基調として、施術後の身体機能向上を重視した距離を求めることができるようになっている。なお、ここで、利用者がリハビリテーション被術直後であって、その後の身体機能評価情報がないのであれば、[4][6]にかかる演算を無視して距離を演算する類似評価関数を用いてもよい。このような関数も、SQLデータベースの場合、Stored Procedureと呼ばれる技法を用いて実装することができる。
【0222】
勿論、上記関数は例示したものであって、たとえば各項目の平均値で比較するところを、リハビリテーション施術直後の身体機能評価情報は大きい重みづけをして各項目値を計算し、その距離を計算するなどの演算にすることもできる。これら関数の選択は、現在の利用者の就業内容によって変更するなどの実装法もあり得る。
【0223】
[将来予測レポート作成部(605)]
将来予測レポート作成部(605)は、リハビリテーション実績情報検索部(604)で検索抽出した個人リハビリテーション実績情報に基づいて、その検索基準となった生体情報の被獲得者について将来予測される身体的状況の変化、その先従事できる職業候補、並びに仮に現在の職業からその候補職業に転職するならばどのような訓練が必要かという説明等を看取しやすい形式に整理したうえで、これを表示乃至印刷するなどし、操作者等に認識させることができるようになっている。
【0224】
[職業訓練計画記録部(608)]
職業訓練計画記録部(608)は、2つの職業情報と、職業訓練内容説明を対にした記録部である。2つの職業情報とは、転職前の職業と、転職後の職業とを表す。職業訓練内容説明とは、転職前の職業から転職後の職業に職種を替える際に必要となる訓練内容を表す。
【0225】
勿論、転職後の職業だけを記録して、そこで必要な技能のみを記述する装置とすることもできる。しかし、転職前後の職種で職業訓練内容説明ができるようにすることで、キャリアを替える大変さ、求められる身体機能の新たな改善などが提示できるようになる。このことは、被術者により安心感を与えるとともに、より強い勇気を与える糧となりうる。よって、可能なかぎり、転職前の職業情報を含めることが望ましい。
【0226】
[職種情報入力部(610)]
職種情報入力部(610)は、外部環境と通信し、職種に係る情報を入力し、前記リハビリテーション実績情報記録部(602)に対し、その中に保持する職種テーブルにその内容の記録を求めるようになっている。
【0227】
職種に係る情報の入力は前記リハビリテーション施術内容入力部におけるのと同様に、入力する者が操作する情報端末とインタラクティブに交信し、記録する内容を確定し、前記リハビリテーション実績情報記録部(602)に記録させるようにすれば、使い勝手が向上する。また、同様に、いわゆるスマートフォンのアプリケーションを外部情報端末として用いてもよい。
【0228】
(3.3. 本実施の形態に係る動作)
次に、本実施の形態の動作について説明する。
【0229】
(3.3.1. リハビリテーション実績情報記録段階)
本実施の形態において、身体機能評価情報と生体情報の収集とその転送、収集した身体機能評価情報と生体情報をリハビリテーション実績情報記録部(602)に記録する動作については、前記実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0230】
(3.3.2. 職種記録段階)
本実施の形態においては、職業(職種)を記録する工程が必要になるので、この点について説明する。ここは概ね、リハビリテーション施術情報の記録に類似する。
【0231】
前述のとおり、本実施の形態において、職種テーブル(764)には利用者識別子、区域識別子、就業日、離職日の各カラムが設けられている。そして他とのリレーションは利用者識別子、並びに区域識別子を通じて採ることができるので、利用者識別子、乃至区域識別子さえ間違わないようにしておけば、特段にトレーナやリハビリテーション施設管理者によってのみ記録する必要はない。
【0232】
[就業記録操作]
まず、職種を記録させる者(以下、「職種記録者」とする。)が特定の利用者について就業を記録する場合について説明する。
【0233】
職種記録者は、図示しない情報端末から本リハビリテーション支援装置の職種情報入力部(610)に接続を試みる。この操作による場合には、職種情報入力部(610)は、誰の就職について入力するのかを確定させる必要があるために、
[1] 利用者本人の場合には、ログイン操作を経て、ログインに成功した場合には、自分についての更新権限があるものとして、その利用者識別子を確定する。
[2] 利用者以外の者の場合には、ログイン操作を経て権限を確認、その後誰の情報について更新するのかを決定するための入力画面を表示させるHTML文書を端末に送付し、これに同情報端末からあった応答からその操作対象となる利用者について更新権限があるかを判別し、更新権限があると認められた場合には、その対象とした利用者について更新権限があるものとして、その利用者識別子を確定する。
【0234】
次に職種情報入力部(610)は職業情報等の入力を促すHTML文書を情報端末に送付する。このHTML文書には、職種情報と、時期情報にかかる入力ができるように、例えば<input>タグを伴う入力指示情報が含めればよい。
【0235】
これに従い、職種記録者は情報端末から、少なくとも職種情報と、就業開始日を入力する。この情報はsubmit操作をすることで、職種情報入力部(610)に到達するので、これに基づいて、例えばINSERT文を発行、リハビリテーション実績情報記録部中の職種テーブルに、新たなレコードが追加され、その記録がされるようになる。この情報が新規の就業を示すものであるときには、離職日情報をnullのまま放置すればよい。
【0236】
[離職記録操作]
次に職種記録者が特定の利用者についての離職を記録する場合について説明する。ここでも誰の離職について入力するのかを確定させる必要がある。このため、前記就職を記録する手順と同様に、ログイン等の処理を行えばよい。
【0237】
記録対象となる利用者の識別子が確定したならば、職種テーブル(764)のレコードのうち、離職日情報が記録されていないものについて離職日を記録する。離職日情報が記録されていないレコードが複数ある場合には、いずれかを選択させるHTML文書を送信、これへの応答によって離職日を記録すべきレコードを特定する。
【0238】
具体的には、職種情報入力部(610)がリハビリテーション実績情報記録部(602)に記録対象とする利用者にかかる検索要求を発行する。リハビリテーション実績情報記録部(602)はこの要求に対し、その利用者にかかる個人リハビリテーション実績情報の一部として、利用者識別子が当該利用者に一致する職種テーブル中のレコードを検索し、その結果を職種情報入力部(610)に返せばよい。
【0239】
そしてこの際、抽出できたレコードがひとつだけであれば、職種情報入力部(610)はリハビリテーション実績情報記録部(602)に、当該レコードに離職日を記録するUPDATE要求をして離職日を記録する。
【0240】
また、抽出できたレコードが複数あるときには、職種情報入力部(610)は一旦情報端末にいずれの職種について離職した記録をしたいのかを問い合わせ、リハビリテーション実績情報記録部(602)にその回答で指定された職種が記録されているレコードについて、当該レコードに離職日を記録するUPDATE要求を発行して離職日を記録する。
【0241】
なお、上記の就業記録操作・離職記録操作の選択について、職種記録者の操作する情報端末から職種情報入力部への接続があったとき、その接続要求の中にパラメータを含め、パラメータに従って操作ごとの独立したページを表示させるようにしてもよいし、独立した要求URLを割り当ててもよい。このようにすれば、就業記録・離職記録の操作ごとに独立してログインさせることが可能となる。勿論、ログイン処理を先に行ったのちにメニューを表示させて、就業記録操作・離職記録操作の操作選択をさせてもよい。
【0242】
(3.3.3. 転職支援段階)
次に、利用者が将来を案じて職種変更を検討する際に参考情報を得る場面を想定し、本装置が転職支援をする動作について、
図10を用いて説明する。
【0243】
被術者でもある利用者は、図示しない情報端末から本リハビリテーション支援装置の検索基準者決定部(603)に接続を試みる。この際、ログイン処理を行い、利用を許可された者のみがこの後の処理を続けることができる。すなわち、接続要求(S1001)、ログイン要求(S1002)、ログイン処理(S1003)、認証(S1004)までの動作手順は第一の実施の形態と同様であり、これらの説明を援用する。
【0244】
認証が完了し、情報端末を操作している者が本装置の利用を許された者であることが把握できたとき、次に本リハビリテーション支援装置は操作要求を行う(S1005)。この操作要求には、自らの就業情報入力にかかる選択肢のほか、転職支援にかかる選択肢も含まれている。
【0245】
操作者が職業支援を求めるときには、情報端末での選択操作によって、当該情報端末から検索基準者決定部に、選択肢指定情報が発信される(S1030)。これを受けた検索基準者決定部は、その操作者の利用者識別子を伴ってリハビリテーション実績情報検索部(604)に、類似情報の抽出を求める(S1007)。この時点で、ログイン処理時に、若しくは別途指定した自分を示す利用者識別子を確定させているので、検索基準者決定部(603)はリハビリテーション実績情報検索部(604)にその利用者識別子を伴うことができる。
【0246】
次にリハビリテーション実績情報検索部(604)は、受けた利用者識別子を手掛かりにしてその利用者に係る個人リハビリテーション実績情報を取得する。そしてこれを手掛かりにして、他人に係る類似する個人リハビリテーション実績情報を取得する(S1008)。ここで類似性を判定する類似評価関数は、同一の職種を経ていない他人の個人リハビリテーション実績情報は非類似と判断するので、少なくとも同一の職種を経た他人の情報が含まれていることになる。加えて、類似評価関数は、身体機能評価情報間距離を含めているので、ここで抽出される他人の個人リハビリテーション実績情報には、自分の現状と類似する状況にある者が含まれることになる。
【0247】
このようにして得られた類似データをリハビリテーション実績情報検索部(604)は、検索基準者決定部に伝達する(S1009)。これを受けた検索基準者決定部は、操作者に対し、リスト化し、いずれのデータを把握したいのか、その選択を促す(S1010)。この際、前記類似評価関数の出力する距離値の小さい順にリスト化すれば、操作者の把握が容易になり、利便性が高まる。
【0248】
操作者が情報端末から個別参照する他人を特定すると、情報端末はその特定した情報を検索基準者決定部に送出する(S1011)。そして、これを受けた検索基準者決定部は、この特定された情報が対応する利用者識別子を決定したうえで、その利用者識別子にかかる個人リハビリテーション実績情報をリハビリテーション実績情報検索部に要求する(S1012)。
【0249】
リハビリテーション実績情報検索部は、特定された個人リハビリテーション実績情報において記録される就業情報を時系列に把握したのち、操作者が指定する利用者の現在就業している就業職種(以下、「基準就業職種」という。)と、同じ他人の就業情報とその後の就業職種(以下、「次期就業職種」という。)と、を把握する(S1021)。
【0250】
これに基づいてリハビリテーション実績情報検索部は、さらに職業訓練計画記録部に基準就業職種から次期就業職種に移行するにはどのような訓練が必要かという訓練情報の提供を求める(S1022)。
【0251】
職業訓練計画記録部は、基準就業職種と次期就業職種とから、この転職に必要な訓練情報を抽出し(S1023)、その抽出結果をリハビリテーション実績情報検索部に返送する(S1024)。
【0252】
これを受けたリハビリテーション実績情報検索部は、受けた訓練情報と先に把握した個人リハビリテーション実績情報とを組み合わせ、将来予測レポート作成部にこれらの情報を提示し(S1025)、操作者が見やすいレポート形式に整備して、操作者が閲覧している情報端末にこれを提示する(S1026)。
【0253】
以上の手順に沿った動作をすることにより、リハビリテーション被術者である利用者は、自分の状況に類似した他人の先例を把握でき、勇気を得られるようになるとともに、現在受けているリハビリテーションの成果を想起でき、被術の意識を高めたまま維持できるようになる。
【0254】
(3.3.4. 動作・運用に係る補足的事項)
就業記録について補足する。たとえば、数日就業しただけで更に他の職種に異動したときに、これを就業実績とみるのは無理がある。このため、このような就業情報は検索できないようにレコード中に除外フラグを設ける、短期間の就業記録は削除する、などの対応をすることが望ましい。
【0255】
(5. 実社会における利用態様)
(5.1. デーサービス施設等での利用可能性(施設の再設計))
上記説明では、生体情報の取得区域として、リハビリテーション施設を例に採ったが、リハビリテーションを行う区域でなくても有用である。近時、介護保険の給付対象となっているデーサービス施設や、デーケア施設においてもこのような生体情報の取得は有用である。
【0256】
たとえば、デーサービス施設やデーケア施設においては多くの家具や設備が置かれているが、これらがひとの運動機能の視点でも最適な位置にあるかどうかを判断したいときがある。このようなときには、施設利用者に同様のセンサをつけてもらい、かつ施設にも生体情報集約装置を配置してもらい、現実に生体情報を取得してみる。そして、その利用者の他の施設での生体情報を比較するようにすると、その施設での構造的特徴や不具合、他の施設からの運動機能視点による偏差・異変などを察知できるようになる。
【0257】
(5.2. 就業場所における利用可能性)
(5.2.1. 就労継続支援B型利用時の管理業務利用可能性)
近時、厚生労働省は就労継続支援B型事業を対象とした就労系障害福祉サービスを提供している。
【0258】
このサービスを利用するにあたり、就業施設運営者は就業者毎・月毎に就労報告書を作成する必要がある。就業施設で実作業を伴った際の生体情報等を得られる本装置を用いれば、信頼性の高い就労報告書が作成され、制度本来の適正な運用に寄与することができる。
【0259】
更に、就業施設にとっても、支援装置において蓄積したリハビリテーション実績情報の表示フォーマットを変更するだけで、かかる報告書を作成することができ、就業施設の業務負担の軽減に資することになる。この場合の具体的な実装は、将来予測レポート作成部(105)若しくは将来予測レポート作成部(605)の作成する報告書が、求められる就労報告書形式になるようにすればよい。
【0260】
(5.2.2. 就業施設における人事利用可能性)
他のリハビリテーション施設における平常時の生体情報乃至身体機能評価情報が継続的にリハビリテーション実績情報記録部に登録されていくので、就業施設においても、直近の他のリハビリテーション施設情報に基づく将来予測レポートから、近未来の影響予測を得ることができる。これを活用すれば、早い時点から必要な新たな就労者を募集することも可能となり、より安定した生産計画を企てることができるようになる。
【0261】
(5.2.3. 人材紹介業務での利用可能性)
就労者が必要な就業施設において、将来必要な就労者の身体機能の特徴を指定すれば、これを満たす他のリハビリテーション施設に属する被術者を検索することができる。すなわち、人材紹介業務においても、本支援装置を利用することが可能となる。
【0262】
具体的には、リハビリテーション実績情報検索部に、類似評価関数の逆関数をもって、リハビリテーション実績情報を検索する機能を付する。ここで逆関数は、就業施設において求める身体機能評価情報乃至生体情報を入力に、リハビリテーション施設での身体機能評価情報乃至生体情報が出力になるような関数である。すなわち、この逆関数によって、就業施設で求められる身体機能評価情報乃至生体情報から、リハビリテーション施設における身体機能評価情報乃至生体情報を予測することになる。これにより、逆関数を実装したリハビリテーション実績情報検索部で、求められる被術者を的確に検索できるようになるわけである。
【0263】
もっとも、この場合、個人情報保護の観点での導入検討が求められる。すなわち、上記逆関数を備えた本装置を人材紹介業務で活用するにあたっては、許諾を得た個々の被術者を対象とし、プライバシの問題を回避するのが望ましい。具体的には、リハビリテーション実績情報記録部中に、利用者識別子をもつ個人を管理する管理テーブルがあれば、これに「人材紹介許諾カラム」を設ける。そして、許諾した者についてはこのカラムにチェックをいれておき、このカラムにチェックが入っているものを対象に上記就業紹介の対象者とするように検索するように構成すればよい。
【0264】
(5.3. 医師の診断利用可能性)
我が国に限らず、医師の人数は限られており、患者ひとりあたりに費やす時間は限られている。よって、医師は理学療法士等の支援を受けながら診断を行うことになるが、それでも現実に患者の主観までを正確に読み取ることまでを期待するには無理がある。
【0265】
本発明に係る装置によれば、患者ごとの性向も含めた情報が集約されているので、将来予測レポート作成部において作成するレポートを、医師レポート用にフォーマットを整えればよい。これを見た医師は的確な判断ができるようになる。
【0266】
これにより、医者に対し「調子が良い」との報告をする患者が、無理を感じて次第に治療から離れ、ひいては病状を悪化させるような事例を低減させることが可能となる。
【0267】
(6. その他)
(6.1. リハビリテーション実績情報記録部への他の情報記録)
前記いずれの実施の形態においても、リハビリテーション実績情報記録部への記録内容について、他の情報を併せて記録することを拒まない。以下に他の記録情報を例示する。
【0268】
(6.1.1. 食事内容・摂取サプリメント内容)
たとえば、リハビリテーション実績情報記録部(102)が記録する個人リハビリテーション実績情報として、更に食事内容・摂取サプリメント内容を記録することもできる。
【0269】
この場合、独立したテーブルを用意してこれに記録するようにすればよい。カラム構成も、少なくとも時期を示す情報と、利用者識別子と、食事内容・摂取サプリメント内容を示すテキスト乃至コードが含まれていればよい。食事内容・摂取サプリメント内容はそこに含まれる食材・栄養素によって、筋肉生成に影響があるのは当然である。食材・栄養素は筋力強化に役立つこともあれば、筋力減退を招くこともあるのであるから、可能な限り詳細情報が記録されるように実装することが求められる。
【0270】
なお、食事・サプリメント摂取の場所が直ちに身体機能等に反映されることは少ないので、区域識別子まで記録する必要はないが、複数のリハビリテーション施設での摂取物が重ならないようにメニューを柔軟に変更したいという要請に応えるのであれば、これを記録するように実装すればよい。
【0271】
また、前日の摂取内容によってトレーニングメニューを変えるのがよいと思考するリハビリテーション施術者にとっては、トレーニングメニューそのものを変更することになる。この様な要請に応えるのであれば、これを記録するように実装すればよい。
【0272】
この情報もまた、前記リハビリテーション実績情報検索部における類似評価関数の一入力として利用することができる。また、将来予測レポート作成においても、摂取すべき食事等の事例として挙げることができる。
【0273】
(6.1.2. 補助具利用情報)
(6.1.2.1. 概要)
また、リハビリテーション実績情報記録部(102)が記録する個人リハビリテーション実績情報に関連付けて、リハビリテーション時や就業時に使用した補助具を記録してもよい。補助具には、たとえば、義足、弾性体による筋力強化具、歩行アシストロボットなどが想定できる。
【0274】
(6.1.2.2. 補助具例)
ここで、リハビリテーションに歩行アシストロボットを利用する場合、その制御部分からは、多くの貴重な情報を得ることができる。この点、本田技研工業株式会社では、Honda歩行アシストを製品化しているので、これを利用した場合を想定して説明する。
【0275】
障害後急性期を終え、慢性期に移行した患者は、本来の歩き方を忘れてしまうことがある。このことが歩行を困難にする一因になっている。歩行アシストロボットは、この点に着目しており、高々15%程度の力ではあるものの、股関節部を中心に、正しい歩行パターンになるような力を患者に印加する。この力が脳に作用して、記憶の回復を促すように作用する。
【0276】
この歩行アシストロボットの文献(前記先行技術文献欄、非特許文献1参照)には、「歩行時の左右対称性・可動範囲・歩行速度などを計測し、その場で確認できます。さらに使用者ごとに計測履歴の参照や比較ができ、PCにて集計することも可能です。」と記載されている。すなわち、このロボットから得られたデータを、本支援装置で利用することができる。そして、このデータは、「本機器の計測結果に基づく数値は、装着者の足の動きを直接計測した数値ではなく、本機器の動きをもとに計測された参考値」(同文献記載)であるものの、身体機能評価情報と生体情報とを補間する情報であることには間違いなく、本支援装置としてより包括的かつきめ細かい生体情報を得られるものと期待できる。
【0277】
近時、「医福食農連携」が提唱されている(森田茂紀 編著、「デザイン農学概論」、初版、株式会社朝倉書店、2019年3月30日発行、p.144-154参照)。この分野に本支援装置を展開する場合、歩行アシストロボットを装着した被術者は見回り作業に割り当てられることで、高いリハビリテーション効果を期待できるようになる。
【0278】
(6.1.2.3. 補助具利用のための実装)
補助具情報は、前記リハビリテーション実績情報検索部における類似評価関数の一入力として利用することができる。また、将来予測レポート作成においても、摂取すべき食事等の事例として挙げることができる。
【0279】
リハビリテーション補助具利用情報については、いずれの場所で利用したのかという点に意義がある。すなわち、同一人であっても施設ごとに身体動作の外観は異なることが想定されるので、リハビリテーション補助具の利用は身体機能評価情報に大きく影響するからである。
【0280】
よって、このリハビリテーション補助具利用情報には少なくとも、他の種類の情報との前後関係が分かる時期を示す情報、補助具を特定するための補助具内容情報、利用者識別子若しくは利用者識別子を一意に特定できる情報、区域識別子若しくは区域識別子を一意に特定できる情報を含ませておく必要がある。
【0281】
個人リハビリテーション実績情報には複数の種類の情報を含んでおり、テーブルの実装状況によっては関連付ける情報によってその意義が異なってくるので、以下にそれぞれについて分節する。なお、これらの関連付けは排他的な選択肢ではなく、実装目的が重畳するのであれば、併用することができるものである。
【0282】
(6.1.2.3.1. リハビリテーション施術内容情報に関連付ける場合)
まず、リハビリテーション時に使用した補助具利用情報は、リハビリテーション施術内容情報に関連付けることができる。
【0283】
この情報は、リハビリテーション施術者のためのカルテとして利用することができることは勿論、就業時に使用した旨が把握できるので、リハビリテーション施術の際にどのような方針をとれば就業における障害の緩和に役立つかを検討する資料として用いることができるようになる。
【0284】
(6.1.2.3.2. 身体機能評価情報に関連付ける場合)
補助具の記録は、リハビリテーション実績情報記録部(102)が記録する個人リハビリテーション実績情報中の、身体機能評価情報と関連付けて記録してもよい。
【0285】
補助具利用情報を手掛かりにすれば、区域識別子が伴っているので、どのリハビリテーション施設若しくはどの就業場所で補助具を利用するのが適切なのかが明らかになる。これは施設管理者の施設改良資料などに利用可能となる。
【0286】
(6.1.2.3.3. 生体情報に関連付ける場合)
補助具の記録は、リハビリテーション実績情報記録部(102)が記録する個人リハビリテーション実績情報中の、生体情報と関連付けて記録してもよい。
生体情報は、被術者が意識しないで得られる情報であり、もっとも摂取した食事内容などの影響がある情報である。このため、この関連付けを行えば、利用者自身の日々の食生活管理が容易になることは勿論である。
【0287】
さらに、前記第2の実施の形態においてこの実装をすれば、食生活を変えることで就業内容を変更できることまでを把握できるようになるため、食生活を重視するか、就業を重視するかなど、多様な個々人の価値観に配慮した支援が可能になる。
【0288】
(6.2. 類似評価関数の他の実装例)
(6.2.1. CNNを用いる類似評価関数)
前記各実施の形態における類似評価関数には、ディープラーニングの技法を用いることができる。すなわち、類似評価関数はフィルター演算器とみることもできるので、
図12に示すような多階層のConvolutional Neural Network(以下、「CNN」という。)を実装し、この類似評価関数をCNNに置き換えることができる。
【0289】
この際、入力層(1292)に全引数を割り当てれば、距離出力層(1297)に類否判定結果を得ることができる。中間層1(1294)・中間層2(1296)はCNN中にあるので、特に意識する必要はない。また、各要素間を繋ぐブランチ1(1293)・ブランチ2(1295)についてもCNNが適宜自働調整するので特に実装にあたって意識する必要はない。
【0290】
このように構成することにより、引数に区域識別子が含んでいる以上、区域による特殊性を反映された距離を測定できるようになる。
【0291】
(6.2.2. 入力と出力の選択について)
CNNを類似評価関数に用いた場合、その入力層(1292)に入力するベクトル並びに出力層としての意味を持つ中間層2(1296)に出力するベクトルをどのように採るのかには様々な選択肢があるので、ここで一例を挙げる。勿論、これ以外のものを加えても構わない。
【0292】
[1] 第1例
入力=(リハビリテーション施設の身体評価情報)
出力=(就業施設における身体評価情報)若しくは(就業施設における生体情報)
[2] 第2例
入力=(リハビリテーション施設の身体評価情報)
出力=(就業施設における身体評価情報、および就業施設における生体情報)
[3] 第3例
入力=(リハビリテーション施設の生体情報)
出力=(就業施設における身体評価情報)若しくは(就業施設における生体情報)
[4] 第4例
入力=(リハビリテーション施設の生体情報)
出力=(就業施設における身体評価情報、および就業施設における生体情報)
[5] 第5例
入力=(リハビリテーション施設の身体評価情報及び生体情報)
出力=(就業施設における身体評価情報)若しくは(就業施設における生体情報)
[6] 第6例
入力=(リハビリテーション施設の身体評価情報及び生体情報)
出力=(就業施設における身体評価情報、および就業施設における生体情報)
[7] 第7例
上記第1例~第6例のうち、入力に区域識別子を追加したもの
[8] 第8例
上記第1例~第6例のうち、出力に区域識別子を追加したもの
[9] 第9例
上記第1例~第6例のうち、入力に区域識別子を追加し、かつ、出力に区域識別子を追加したもの
【0293】
上記のうち、入力に身体評価情報のみを選択した場合(第1例、第2例等)は、外見のみから情報を取得できるので、リハビリテーション施設における設備が簡易で済む。
【0294】
また、入力に生体情報を含んだものを選択した場合(第3例、第4例、第5例、第6例等)では、リハビリテーション被術者の主観的な点を重視した情報を基準にできるので、そのリハビリテーション被術者の性向に大きな影響を受けない情報収集が可能となる。
【0295】
なお、上記第1例~第6例においては区域識別子が含まれていないが、これらは区域識別子を選択子として利用することができる。すなわち、リハビリテーション施設からの情報を区域識別子で選択し、これを類似評価関数の入力にすればよい。この場合、類似評価関数はリハビリテーション施設毎に用意して、それぞれのリハビリテーション施設のものについての類似評価を行うようにすることになる。同様に、出力する就業施設の識別子を用意すれば、就業施設専用の類似評価を行うことができるようになる。
【0296】
その他、入力に年齢情報を加えることでより緻密な演算をすることもできる。
【0297】
(6.2.3. 他の階層定義)
前述の例では、2つの中間層を持たせているが、さらに別階層を追加することもできる。
たとえば、中間層2(1296)と距離出力層(1297)との間に、別階層を追加して、その入力に特定のリハビリテーション施設において測定できた生体情報、出力に、特定の事業所において測定できた生体情報を採ることができる。
【0298】
(6.2.4. パラメータの学習について)
入力と出力との間になんらかの相関がある場合に、これらを多く集めて学習すれば、これらを対応づけるCNN中のパラメータが次第に収斂するようになる。この点、前述(6.2.2. 入力と出力の選択について)において分類した第7例によれば、区域の特性を含めた汎用性の高い類似評価関数に育てることができるようになる。
【0299】
学習するにあたって、入力層と出力層との値は、いずれもリハビリテーション実績情報記録部に記録されている情報を用いれば足りる。よってCNN型の類似評価関数は、定期的かつ自動的に学習させるようにすれば、データの蓄積ととともに、その将来予測レポートの精度を向上させることができる。
【0300】
(6.3. 生体情報への追加的記録)
前記各実施の形態における生体情報に、後に別の生体情報を追加できるようにすると有利なことがある。たとえば、血液検査情報は、食事内容によって若干の変化が生じることはさておき、いずれのリハビリテーション施設において採取した血液からも同様な情報が得られる。このため、これを直近のリハビリテーション実績情報記録部(102)が記録する生体情報のうち、当該利用者にかかる直近の生体情報に計測した血液検査情報を含めるようにすることができる。これにより、より緻密で客観的な身体機能評価の予測が可能となる。
【0301】
(6.4. 個人生体情報集約部の実装)
上述の個人生体情報集約部を実装するにあたっては、近時広く普及しているスマートフォンを利用することも可能である。
【0302】
近時のスマートフォンには、Global Positioning System(GPS)機能をはじめとして、三次元加速度センサも標準的に搭載されていることが多い。すなわちスマートフォンは、上記実施の形態において説明した、生体情報を取得するためのセンサとしての加速度センサと、集約サーバに対して若しくはリハビリテーション実績情報記録部を擁するサーバに対して情報を送信する個人生体情報集約部と、を一体に具備した装置とすることができるので、アプリを実装すれば、被術者からの情報を取得する簡便な装置を実現することができる。
【0303】
勿論、この場合において、加速度以外の情報を取得するのであれば、スマートフォンの外部機器接続端子をホストモードとし、他の生体情報を取得するセンサをこれに接続するなどにより実装することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0304】
以上説明したように、本発明によれば、リハビリテーション被術者を心理的側面から支援することができるようになるため、医療・リハビリテーションの分野においての直接的利用が可能であることは勿論、就業内容は各製造業・サービス業を対象とできるため、消費者庁・厚労省が進めるプロジェクトである農業分野における障碍者就労を推進する分野においても有効に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0305】
図面中の符号は先頭の数値が図面番号を表す。なお、異なる図面においても下位2桁が同一のものは概ね同意義のものとなるように配番した。
【0306】
101 利用者生体情報等入力部
102 リハビリテーション実績情報記録部
103 検索基準者決定部
104 リハビリテーション実績情報検索部
105 将来予測レポート作成部
109 リハビリテーション施術内容入力部
111 利用者識別子
112 区域識別子
113 生体情報
115 利用者識別子
116 身体機能評価情報
117 リハビリテーション施術内容情報
233 利用者識別子
234 区域識別子
238 フラグビット
261 基準テーブル
262 測定値テーブル
264 リハビリテーション施術内容テーブル
309 リハビリテーション施術内容入力部
351 リハビリテーション実績情報
352 個人リハビリテーション実績情報
353 身体機能評価情報
354-2 利用者識別子
355 リハビリテーション施術情報
356 生体情報
452-1 区域識別子
453-1 生体情報
455-1 リハビリテーション施術情報
481 類似評価関数
502 リハビリテーション実績情報記録部
503 検索基準者決定部
504 リハビリテーション実績情報検索部
505 将来予測レポート作成部
552 個人リハビリテーション実績情報
601 利用者生体情報入力部
602 リハビリテーション実績情報記録部
603 検索基準者決定部
604 リハビリテーション実績情報検索部
605 将来予測レポート作成部
608 職業訓練計画記録部
609 リハビリテーション施術内容入力部
610 職種情報入力部
764 職種テーブル
854 区域識別子
872 構内ネットワーク
873 集約サーバ
874 ゲートウェイ
875 個人生体情報集約部
875-1 個人生体情報集約部1
875-2 個人生体情報集約部2
876 被術者
877 各部センサ
877-1 脚部センサ
877-2 血流センサ
877-3 心拍センサ
878 トレーナ
879 トレーナ用情報端末
1292 入力層
1293 ブランチ1
1294 中間層1
1295 ブランチ2
1296 中間層2
1297 距離出力層