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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】皮膚洗浄用スプレー剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20240415BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240415BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/02
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/42
A61K8/55
A61K8/86
A61Q19/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019119216
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2020007304
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2018122524
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】山本 航平
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-044180(JP,A)
【文献】特開平11-310514(JP,A)
【文献】特開2000-273485(JP,A)
【文献】特開2015-199684(JP,A)
【文献】特開2019-059679(JP,A)
【文献】Extra Cool Shampoo, MINTEL GNPD [ONLINE], 2017.06,[検索日 2023.04.27],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.4882745)
【文献】Facial Wash, MINTEL GNPD [ONLINE], 2013.04,[検索日 2023.04.27],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.2142817)
【文献】クレンジングに付加価値を与える機能性エステル,FRAGRANCE JOURNAL,日本,フレグランスジャーナル社,2016年07月15日,433,51-55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/39
A61K 8/02
A61K 8/36
A61K 8/37
A61K 8/42
A61K 8/55
A61K 8/86
A61Q 19/10
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び/又は天然界面活性剤と(B)ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルとを含有し、ポンプ式スプレー容器に収容され、噴霧により洗浄対象部位に塗布後、水で洗い流すように用いられ、化粧落としとして用いられるものではない、皮膚洗浄用スプレー剤。
【請求項2】
前記ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルが、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールである、請求項に記載の皮膚洗浄用スプレー剤。
【請求項3】
前記(A)成分の含有量が0.025~2重量%である、請求項1又は2に記載の皮膚洗浄用スプレー剤。
【請求項4】
前記(A)成分の含有量が0.025~0.9重量%である、請求項1~のいずれかに記載の皮膚洗浄用スプレー剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接的に肌へ噴霧して使用する皮膚洗浄用スプレー剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚を洗浄し、肌を清潔に保つことを目的とした製品として、洗顔料、ボディソープ、シャンプー等の様々な皮膚洗浄料組成物が提供されている。皮膚洗浄料組成物が皮膚を洗浄する機構においては、界面活性剤が汚れに吸着して汚れと水との間の表面張力を小さくし、摩擦による機械力も相まって、汚れを水中に浮き上がらせる。このような洗浄機構を有効に作用させるには、界面活性剤を臨界ミセル濃度以上で配合することが必要である。
【0003】
一方で、界面活性剤による洗浄力が強すぎることで皮膚刺激の原因となり、その結果、乾燥肌とはじめとする肌トラブルが引き起こされているといった現状もある。このため、肌への作用をマイルドにすることを目的として、洗浄成分の組み合わせや配合量等を工夫する処方が種々提案されている。中でも、洗浄時に形成される泡が、肌と指とが直接触れて発生する摩擦を軽減すると認識されていることから、気泡力、泡持ち力等の泡質を向上させる処方は、肌への作用をマイルドにする処方として優れているというのが一般常識となっている。
【0004】
このため、近年では、ポンプフォーマータイプの皮膚洗浄料が種々提案されており、簡単に良質な泡が得られる手軽さだけでなく、肌への優しさも注目されている。具体的には、特許文献1に、フォーマー容器と、このフォーマー容器に充填されてなる液体皮膚洗浄剤組成物とからなる液体皮膚洗浄剤製品であって、上記液体皮膚洗浄剤組成物が、(A)炭素数7~21の直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を有する特定の脂肪酸塩を3~10質量%と、(B)特定の塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリル酸及び/又はアクリルアミドとの共重合体と、(C)糖アルコールとを含有し、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)が20~250である液体皮膚洗浄剤製品が開示されている。また、特許文献2には、(a)脂肪酸塩を2~9質量%、(b)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインを0.5~4質量%、(c)2価アルコールの1種類または2種類以上を1~10質量%を含有し、かつ、(a)成分と(b)成分の配合量(質量%)の和(a)+(b)が3~10質量%、配合量比(b)/(a)が0.1~0.5である洗浄剤をフォーマー容器に充填したことを特徴とする皮膚洗浄剤組成物が開示されている。さらに、特許文献3には、(a)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインと、(b)炭素数5~25の脂肪酸から形成され且つ特定組成の高級脂肪酸石鹸4~15質量%と、を含有するフォーマー容器で吐出される洗浄料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/003114号
【文献】特開2016-098182号公報
【文献】国際公開第2017/081897号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポンプフォーマータイプの皮膚洗浄料組成物は、界面活性剤の配合量が比較的少なく、その点で、固形状や半固形状の皮膚洗浄料組成物に比べて皮膚への刺激は低減されている傾向にあると考えられる。一方で、ポンプフォーマータイプの皮膚洗浄料組成物は、泡の状態で吐出されることが大前提となっているため、気泡力を発揮させるために必要な最低
限の界面活性剤を配合することがその構成上不可避となっている。
【0007】
近年、肌に優しい洗顔への意識はますます高まってきている。それと共に、時短スキンケアにも注目が集まり、敏感肌にも優しく、且つ素早く洗浄可能な皮膚洗浄料が期待されている。
【0008】
メイク落とし(クレンジング)を目的とした皮膚洗浄料を除く、皮脂や汗等の体液や汚れ等の除去を目的とした皮膚洗浄料は様々創出されているが、どの皮膚洗浄料も例外なく、肌へ適用する前に泡立てることを前提としており、また、洗浄前によく泡立てることは、肌への摩擦を和らげる点で好ましいということも常識化している。泡は、肌と手との間に介在することで物理的摩擦を和らげることができるものの、泡自体が肌にこすりつけられるため、それ自体が物理的摩擦を生じさせ、肌への刺激になっていることには変わりない。このように、従前と同様の使用方法では、皮膚洗浄料の肌への負担の低減には限度がある。
【0009】
そこで本発明は、従来と異なる方法で使用される皮膚洗浄料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、肌への刺激をより軽減させるため、肌への適用に際して予め泡立てることなく、直接的に皮膚洗浄料組成物を肌へ噴霧して適用するという斬新な用途の着想に至った。さらに、界面活性剤に両親媒性エステルを共存させることによって、予め泡立てなくても効果的に洗浄力が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)界面活性剤と(B)両親媒性エステルとを含有し、噴霧式容器に収容された、皮膚洗浄用スプレー剤。
項2. 前記噴霧式容器がポンプ式スプレー容器である、項1に記載の皮膚洗浄用スプレー剤。
項3. 前記噴霧式容器がエアゾール式スプレー容器である、項1に記載の皮膚洗浄用スプレー剤。
項4. 前記(B)成分が、ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルおよび(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10よりなる群から選ばれる、項1~3のいずれかに記載の皮膚洗浄用スプレー剤。
項5. 前記ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルが、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールである、項4に記載の皮膚洗浄用スプレー剤。
項6. 前記(A)成分の含有量が0.025~2重量%である、請求項1~5のいずれかに記載の皮膚洗浄用スプレー剤。
項7. 前記(A)成分の含有量が0.025~0.9重量%である、項1~6のいずれかに記載の皮膚洗浄用スプレー剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皮膚洗浄料組成物の皮膚刺激性が低減されつつも優れた洗浄力を発揮することができるため、肌への適用に際して予め泡立てる従来の用途とは異なり、直接的に皮膚洗浄料組成物を肌へ噴霧して適用するという新たな用途を提供することができる。予め泡立てずに洗浄可能であるため、皮膚洗浄用液体組成物における界面活性剤の配合量を、従前の皮膚洗浄用液体組成物に含まれる配合量よりも大幅に低減させることができ、これによってより一層皮膚刺激性を低減させることも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は、(A)界面活性剤(以下、(A)成分と表記することがある)と(B)両親媒性エステル(以下、(B)成分と表記することがある)とを含有し、噴霧式容器に収容されていることを特徴とする。以下、本発明の皮膚洗浄用スプレー剤について詳述する。
【0014】
(A)界面活性剤
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は、(A)成分として界面活性剤を含有する。界面活性剤としては特に限定されないが、皮膚への刺激を抑制する観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、天然界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、天然界面活性剤の中から1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0015】
本発明に使用されるアニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型等の界面活性剤が挙げられる。
【0016】
カルボン酸型の界面活性剤としては、具体的には、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数6~22の飽和又は不飽和脂肪酸;オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ココイル基等の炭素数8~24の飽和又は不飽和のN-アシル基を有するN-アシルアミノ酸(カルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤)が挙げられる。カルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤におけるN-アシルアミノ酸としては、N-アシルサルコシン、N-アシルアスパラギン酸、N-アシルグルタミン酸、ラウロイルメチル-β-アラニン等が挙げられる。より具体的なカルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤としては、N-ラウロイルサルコシン、N-ラウロイルアスパラギン酸、ココイルグルタミン酸、ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム等が挙げられる。
【0017】
スルホン酸型の界面活性剤としては、具体的には、ココイルイセチオン酸等の炭素数6~22の脂肪酸とイセチオン酸のエステル;ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等の炭素数6~22のアルキルスルホン酸;アルキルベンゼンスルホン酸等の炭素数10~16のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸;オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ココイル基等の炭素数8~24の飽和又は不飽和のN-アシル基を有するN-アシル-N-メチルタウリン(スルホン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤)が挙げられる。より具体的なスルホン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤としては、N-ミリストイル-N-メチルタウリン、N-ラウロイルメチルタウリン、ココイルメチルタウリン等が挙げられる。
【0018】
硫酸エステル型の界面活性剤としては、具体的には、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸等の炭素数10~22の飽和又は不飽和脂肪酸と硫酸のエステル等が挙げられる。リン酸エステル型の界面活性剤としては、具体的には、ラウリルリン酸等の炭素数8~24の飽和又は不飽和脂肪酸とリン酸のエステル等が挙げられる。
【0019】
なお、これらのアニオン性界面活性剤は、塩の形態であってもよく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;トリエタノールアミン(TEA)塩;アンモニウム塩等の形態をとることができる。
【0020】
これらのアニオン性界面活性剤の中でも、皮膚刺激低減性及び洗浄力をより良好に得る観点から、好ましくはカルボン酸型の界面活性剤及びスルホン酸型の界面活性剤が挙げられ、より好ましくは、ラウリン酸、N-ラウロイルアスパラギン酸、ココイルグルタミン酸、ココイルメチルタウリン及びこれらの塩が挙げられ、さらに好ましくは、ラウリン酸ナトリウム、N-ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ココイルメチルタウリンナトリウムが挙げられる。さらにこれらの中でも、皮膚刺激低減性を一層良好に得る観点から、好ましくは炭素数8~24の飽和又は不飽和のアシル基を有するN-アシルグルタミン酸及び炭素数8~22の脂肪酸アミドスルホン酸及びこれらの塩が挙げられ、より好ましくはココイルグルタミン酸、ココイルメチルタウリン及びこれらの塩が挙げられ、さらに好ましくはココイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ココイルメチルタウリンナトリウムが挙げられ、また、洗浄力を一層良好に得る観点から、好ましくは炭素数8~24の飽和又は不飽和のアシル基を有するN-アシルアスパラギン酸が挙げられ、より好ましくはN-ラウロイルアスパラギン酸が挙げられ、さらに好ましくはN-ラウロイルアスパラギン酸ナトリウムが挙げられる。
【0021】
これらのアニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明に使用される非イオン性界面活性剤としては、例えば、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型、アルカノールアミド型、アルキルグリコシド型、アルコール型等の界面活性剤が挙げられる。
【0023】
エステル型の界面活性剤としては、具体的には、ジラウリン酸グリコール、モノステアリン酸グリコール、ジステアリン酸グリコール、モノラウリン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル等の炭素数8~20の飽和又は不飽和脂肪酸とグリセリンのモノ又はジエステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0024】
エーテル型の界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
【0025】
エステル・エーテル型の界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0026】
アルカノールアミド型の界面活性剤としては、具体的には、コカミドDEA(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド)、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
【0027】
アルキルグリコシド型界面活性剤としては、具体的には、オクチルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド等が挙げられる。
【0028】
アルコール型の界面活性剤としては、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0029】
これらの非イオン性界面活性剤の中でも、皮膚刺激低減性及び洗浄力をより良好に得る観点から、好ましくは、エステル・エーテル型の界面活性剤及びアルカノールアミド型の界面活性剤が挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びコカミドDEAが挙げられ、さらに好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0030】
これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明に使用される両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン型、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、アミンオキシド型等の界面活性剤が例示される。
【0032】
アルキルベタイン型の界面活性剤としては、具体的には、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン等が挙げられる。
【0033】
脂肪酸アミドプロピルベタイン型両性界面活性剤としては、具体的には、コカミドプロピルベタイン等のアミドベタイン(アミノ酸系両性界面活性剤)、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン等のスルホベタイン等が挙げられる。
【0034】
アミンオキシド型両性界面活性剤としては、具体的には、ラウリルジメチルアミンN‐オキシド、オレイルジメチルアミンN‐オキシド等が挙げられる。
【0035】
なお、これらの両性界面活性剤は、塩の形態であってもよく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;トリエタノールアミン(TEA)塩;アンモニウム塩等の形態をとることができる。
【0036】
これらの両性界面活性剤の中でも、皮膚刺激低減性及び洗浄力をより良好に得る観点から、好ましくは脂肪酸アミドプロピルベタイン型界面活性剤が挙げられ、より好ましくはコカミドプロピルベタイン等のアミドベタイン(アミノ酸系両性界面活性剤)が挙げられ、さらに好ましくはコカミドプロピルベタインが挙げられる。
【0037】
これらの両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
本発明に使用される天然界面活性剤としては、レシチン及びリゾレシチン;キラヤサポニン、ダイズサポニン、ユッカサポニン、エンジュサポニン、ビートサポニン、アズキサポニン、ニンジンサポニン、茶種サポニン、ヘチマサポニン、ツボクササポニンなどのサポニン等が挙げられる。
【0039】
レシチンは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールなどのリン脂質と、トリグリセリド、脂肪酸、植物油からの炭水化物などの成分との混合物であり、医薬品、医薬部外品、化粧品において公知の成分である。
【0040】
レシチンとしては、動植物由来の天然レシチン(例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン等)そのものであってもよいし、天然レシチンの化学処理物であってもよいし、天然レシチンの精製物であってもよい。天然レシチンの化学処理物としては、水素添加処理により得られた水素添加レシチン(例えば、完全水素添加レシチンや部分水素添加レシチン)、水酸化処理により得られた水酸化レシチン等が挙げられる。天然レシチンの精製物としては、アセトン等の溶剤によりホスファチジルコリンの含有量を高めたレシチンが挙げられる。
【0041】
リゾレシチンとしては、上記のレシチン(天然レシチン、天然レシチンの化学処理物、天然レシチンの精製物)のリゾ体が挙げられる。リゾレシチンは、レシチンをホスホリパーゼA2などの酵素による加水分解(溶解)でホスファチジルコリンの2位の脂肪酸が除去された構造を有する。
【0042】
これらの天然界面活性剤の中でも、皮膚刺激低減性及び洗浄力をより良好に得る観点から、好ましくはレシチン及びリゾレシチン並びにサポニンが挙げられ、より好ましくはレシチン及びリゾレシチンが挙げられ、さらに好ましくはリゾレシチンが挙げられる。
【0043】
これらの天然界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤における(A)成分の含有量は特に限定されず、付与すべき洗浄力に応じて適宜決定することができる。本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は、物理的摩擦を皮膚に与えることなく洗浄することが可能であるため、皮膚洗浄用スプレー剤における界面活性剤の配合量を、従前の皮膚洗浄用液体組成物に含まれる配合量よりも大幅に低減させることができ、本来的には有効な洗浄力を発揮できないような少量の界面活性剤量であっても効果的に洗浄力を発揮することができる。このような観点から、本発明の皮膚洗浄用スプレー剤における(A)成分の含有量としては、好ましくは0.025~2重量%、より好ましくは0.025~1.5重量%以下、さらに好ましくは0.025~1重量%以下、特に好ましくは0.025~0.9重量%以下が挙げられる。このように界面活性剤量が少量であることより、皮膚刺激性を各段に低減することができる。また、より優れた洗浄力を得る観点からは、(A)成分の上記含有量の範囲の下限としては、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましい。
【0045】
(B)両親媒性エステル
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は、(B)成分として両親媒性エステルを含有する。(B)成分は単独で洗浄作用を示さないが、(A)成分と共存させることによって、低刺激性を維持しながら皮膚洗浄用スプレー剤の洗浄力を向上させることができる。
【0046】
本発明において、両親媒性エステルは、日本薬局方一般試験法に定められた方法による測定で、導電率70~110μs/mに調整されたイオン交換水に常温で2質量%以上溶解し、かつ、油剤であるイソノナン酸イソトリデシル(日清オイリオグループ社製、サラコス913)にも常温(25℃)で10質量%以上溶解するものであり、エステル系界面活性剤は除かれる。
【0047】
両親媒性エステルとしては特に限定されないが、皮膚刺激低減性及び洗浄力をより良好に得る観点から、ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステル及び(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10よりなる群から選ばれるものであることが好ましい。両親媒性エステルとしては、ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステル及び(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10の中からいずれかを単独で使用してもよく、また両方を組み合わせて使用してもよい。これらの両親媒性エステルの中でも、皮膚刺激低減性及び洗浄力をより良好に得る観点から、ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルがより好ましい。
【0048】
本発明に使用されるジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルは、ジカルボン酸とポリオキシアルキレンアルキルエーテルとのジエステル化合物である。ジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルのジエステル化合物を構成するジカルボン酸の具体例としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、ペメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アセトンジカルボン酸、フタル酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸などが挙げられる。また、ジエステル化合物を構成するポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンモ
ノアルキルエーテルなどが挙げられ、より具体的には、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0049】
これらのジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルの中でも、皮膚刺激低減性及び洗浄力をより良好に得る観点から、好ましくは、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸とジエチレングリコールモノエチルエーテルとのジエステル化合物、具体的には、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第13版,第1巻,CTFA,2010年,p.331):BIS-ETHOXYDIGLYCOL CYCLOHEXANE 1,4-DICARBOXYLATEで表記される、シクロへキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールと称される化合物、及びコハク酸とジエチレングリコールモノエチルエーテルとのジエステル化合物、具体的には、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第13版,第1巻,CTFA,2010年,p.331-332):BIS-ETHOXYDIGLYCOL SUCCINATEで表記される、コハク酸ビスエトキシジグリコールと称される化合物が挙げられ、より好ましくは、シクロへキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールが挙げられる。
【0050】
また、本発明において、前記シクロへキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールの具体例としては、例えば、日本精化株式会社製の「Neosolue-Aqulio(商品名)」等が挙げられる。また、前記コハク酸ビスエトキシジグリコールの具体例としては、例えば、高級アルコール工業株式会社製の「ハイアクオスター DCS(商品名)」等が挙げられる。
【0051】
これらのジカルボン酸ビス(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)エステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
本発明に使用される(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10としては、特に限定されないが、例えば、日本精化株式会社製の「Neosolue-Aqua(商品名)」、「Neosolue-AquaS(商品名)」等が挙げられる。
【0053】
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤における(B)成分の含有量としては特に限定されないが、例えば0.1重量%以上が挙げられる。洗浄力をより良好に得る観点から、(B)成分の含有量としては好ましくは0.5重量%以上が挙げられる。(B)成分の含有量の範囲の上限は特に限定されないが、皮膚洗浄用スプレー剤の安定性等の観点から、例えば5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下が挙げられる。
【0054】
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤において、(A)成分と(B)成分との比率は特に限定されず、上記の各含有量により定まるが、皮膚刺激低減性及び洗浄力をより良好に得る観点から、(A)成分1重量部に対して(B)成分が例えば0.1~100重量部、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.5~5重量部が挙げられる。
【0055】
他の成分
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、製剤化等に必要とされる他の基剤や添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、炭素数1~5の低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、及び多価アルコール(エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール(1,3-BG)、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)等の水性基剤;防腐剤(メチルパラベン、プロピ
ルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸等)、着香剤(シトラール、1,8-シオネール、シトロネラール、ファルネソール等)、着色剤(タール色素(褐色201号、青色201号、黄色4号、黄色403号等)、カカオ色素、クロロフィル、酸化アルミニウム等)、粘稠剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、架橋型アクリル酸重合体、カルボキシビニルポリマー、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン等)、pH調整剤(リン酸、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)、湿潤剤(dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、D-ソルビトール液、マクロゴール等)、安定化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エデト酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、L-アルギニン、L-アスパラギン酸、DL-アラニン、グリシン、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン、ローズマリー抽出物等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。これらの基材や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの基材や添加剤の含有量は、製剤形態等に応じて適宜設定することができる。
【0056】
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の薬理成分を含有していてもよい。このような薬理成分としては、例えば、ビタミン類(ビタミンA類、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB5類、ビタミンB6類、ビタミンB12類、ビタミンC類、ビタミンD類、ビタミンK類、ナイアシン類、葉酸、ビオチン、リコペン等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン等)、局所麻酔剤(プロカイン、テトラカイン、ブピバカイン、メピバカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等)、抗炎症剤(インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)、血行促進成分(ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等)、清涼化剤(メントール、カンフル、ボルネオール、ハッカ水、ハッカ油等)、ムコ多糖類(コンドロイチン硫酸ナトリウム、グルコサミン等)等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの薬理成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬理成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0057】
形態
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤の形態は、常温で液状又はジェル状である。また、本発明の皮膚洗浄用スプレー剤の粘度としては、20℃において10000mPa・s以下、好ましくは5000mPa・s以下が挙げられる。なお、粘度は、BL粘度計(ロ-ターNo3、6rpm、20℃)によって測定される値である。
【0058】
容器
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤を収容する容器については、噴霧式容器であることを限度として特に限定されない。なお、本発明における噴霧式容器は、内容物をミスト状態で吐出するものであり、皮膚洗浄剤組成物を泡状態で吐出するポンプフォーマー容器とは異なる。
【0059】
本発明においては、このように皮膚洗浄用スプレー剤を噴霧式容器に収容することにより、肌への適用の前に泡立てることなく、皮膚洗浄用スプレー剤が噴霧により直接的に肌に塗布される。従って、肌への塗布が手軽であり且つ塗布時における手等による物理摩擦を回避することができる。噴霧式容器としては、非エアゾール式スプレー容器であるポンプ式スプレー容器、及び、エアゾール式スプレー容器が挙げられる。噴霧式容器の口径(ノズル内径)としては、例えば0.01~3mmφ、好ましくは0.1~1mmφが挙げられる。噴霧式容器がポンプ式スプレー容器である場合の1プッシュあたりの噴射量としては、例えば0.05~1.2g、好ましくは0.1~0.3gが挙げられる。
【0060】
用途
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は、皮膚の油脂、汗などの体液や汚れ等を除去するために用いられるものであり、化粧落とし(クレンジング)として用いられるものではない。本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は、水で薄めることなく、泡立てずにそのまま皮膚に塗布することで使用する。1回当たりの使用量としては、界面活性剤の濃度及び汚れの程度等にもよるが、例えば洗顔に用いる場合0.5~3g、好ましくは1~2gが挙げられる。
【0061】
より具体的には、皮膚洗浄用スプレー剤を手に取ることなく、直接的に噴霧式容器から噴霧により洗浄対象部位に塗布することができる。このように、皮膚洗浄用スプレー剤を直接的に洗浄対象部位に塗布することで、洗浄対象部位の皮膚と手との間に生じる摩擦や、洗浄部位の皮膚と気泡と間に生じる摩擦といった物理的摩擦を一切与えることなく、液流の機械力を利用するだけで洗浄することが可能になる。本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は、洗浄力に優れた処方であるため、このように物理的摩擦を与えずに液流の機械力を利用して洗浄することで、洗浄時における肌への負担が顕著に軽減され極めて優しい洗浄方法が可能となる。このように泡立てない洗浄方法は、素早い洗浄を可能とし、界面活性剤が少なく肌に優しいことも実感しやすく、肌に優しい洗浄を追及する意識が高い消費者の満足感も得られやすくなる。なお、本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は、前述のような肌に物理的摩擦を与えない洗浄方法に特に適しているが、皮膚洗浄用スプレー剤を洗浄対象部位に塗布した後に手等を用いてこすり洗いする使用方法を除外するものではない。
【0062】
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤の洗浄対象部位としては、あらゆる身体部位の洗浄が可能であるため特に制限されず、例えば、手、髪、頭皮、体、顔等が挙げられる。本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は噴霧により洗浄対象部位に塗布されるため、塗布容易性の観点からは、髪、頭皮、体への使用において好適である。また、本発明の皮膚洗浄用スプレー剤が予め泡立てることなく優れた洗浄力を発揮することができるため、刺激に対して敏感な顔への使用において好適である。
【0063】
洗浄後、皮膚洗浄用スプレー剤は、水で洗い流すことができる。水で洗い流す場合は、通常の洗顔と同様に行えばよいが、肌への負担を軽減させる観点からは、手による摩擦を与えないように水流の機械力を利用して洗い流すことが好ましい。
【0064】
また、本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は、界面活性剤濃度を極端に低くすることができるため、この場合、洗浄後に洗い流さなくてもよい。このため、本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は、病院における清拭用途、エステサロンや美容院における洗顔等皮膚洗浄施術用途、及び災害用品用途等でも好適である。洗い流さない場合、タオルやティッシュ等の吸水性基材を用いて洗浄部位に残存した皮膚洗浄用スプレー剤を吸い取って除去してもよい。
【0065】
製造方法
本発明の皮膚洗浄用スプレー剤は、前述する(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて配合される他の成分等を混合して、所定の形態に調製された後、噴霧式容器に収容されることによって製造される。噴霧式容器としてエアゾール式スプレー容器に収容され
る場合は、ガス等の噴霧剤と共に収容されて製造される。
【実施例
【0066】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
表1~4に示す組成の皮膚洗浄用スプレー剤を調製した。表1~4に示す各成分の詳細は以下の通りである。なお、表1~4に示す皮膚洗浄用スプレー剤は液状であり、20℃における粘度(BL粘度計(ブルックフィールド社製B型粘度計)ロ-ターNo3、6rpmによって測定)は、いずれも5000mPa・s以下の範囲にあった。
・ラウリン酸ナトリウム(日油株式会社製「ノンサールLN-1」(商品名)
・ココイルグルタミン酸TEA(味の素株式会社製「アミソフトCT-12S(商品名)」)
・ココイルメチルタウリンNa(日油株式会社製「ダイヤポンK-SF(商品名)」)
・N-ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム液(20重量%)(旭化成ファインケミカル株式会社製「アミノフォーマー FLDS-L(商品名)」)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸(花王株式会社製「カオーアキポRLM-45(商品名)」)
・コカミドDEA(川研ファインケミカル株式会社製「アミゾールCDE-G(商品名)」)
・PEG-60水添ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;日光ケミカルズ株式会社製 「NIKKOL HCO-60(商品名)」)
・モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(花王株式会社製 レオドールTW-S120V)
・グリセリンモノ-2-エチルヘキシルエーテル(SEPPIC社製「sensiva
SC 50 JP(商品名)」)
・コカミドプロピルベタイン(川研ファインケミカル株式会社製「ソフタゾリンCPB(商品名)」)
・ラウリルヒドロキシスルホベタイン液(30重量%)(花王株式会社製「アンヒトール20HD(商品名)」)
・リゾレシチン(協和発酵バイオ株式会社製「リゾレシチン協和(商品名)」)
・キラヤエキス(丸善製薬株式会社製「キラヤ抽出液BG」、サポニン含量5重量%)
・シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール(日本精化株式会社製「Neosolue-Aqulio(商品名)」)
・コハク酸ビスエトキシジグリコール(高級アルコール工業株式会社製「ハイアクオスター DCS(商品名)」)
【0068】
<洗浄力評価>
調製した皮膚洗浄用スプレー剤について、化粧品評価専門パネラー10名が洗浄力評価を行った。具体的には、各皮膚洗浄用スプレー剤をポンプ式スプレー容器(竹本容器株式会社製「Z-155-C110(商品名)」1プッシュあたりの噴射量は0.15g)に収容し、1.5gを顔に直接的に噴霧することで塗布した。5秒程度放置し、その後、手が顔に触れないように水で洗い流した。タオルで顔を抑えて水を吸い取った後、肌の汚れ落ち感を以下の指標に基づいて官能評価することで採点した。
【0069】
5点:汚れ落ちがしっかり感じられた
4点:汚れ落ちが感じられた
3点:どちらでもない
2点:汚れ落ちがあまり感じられない
1点:汚れ落ちが全く感じられない
【0070】
パネラー10名の獲得スコアを合計し、以下の分類により洗浄力の程度を評価した。結果を表1~4に示す。
◎:45点以上
○:40点以上45点未満
△:35点以上40点未満
×:35点未満
【0071】
<つっぱり感評価(肌刺激性の官能評価)>
調製した皮膚洗浄用スプレー剤について、化粧品評価専門パネラー10名がつっぱり感評価を行った。具体的には、各皮膚洗浄用スプレー剤をポンプ式スプレー容器(竹本容器株式会社製「Z-155-C110(商品名)」(1プッシュあたりの噴射量は0.15g)に収容し、1.5gを顔に直接的に噴霧することで塗布した。5秒程度放置し、その後、手が顔に触れないように水で洗い流した。タオルで顔を抑えて水を吸い取った後、つっぱり感を以下の指標に基づいて官能評価することで採点した。
【0072】
5点:つっぱり感を全く感じない
4点:つっぱり感をほとんど感じない
3点:つっぱり感をわずかしか感じない
2点:つっぱり感を感じる
1点:つっぱり感を強く感じる
【0073】
パネラー10名の獲得スコアを合計し、以下の分類によりつっぱり感の程度を評価した。結果を表3~4に示す。
◎:45点以上
○:40点以上45点未満
△:35点以上40点未満
×:35点未満
【0074】
<培養表皮皮膚刺激試験(肌刺激性のin vitro評価)>
調製した皮膚洗浄用スプレー剤について、以下の通りに培養表皮皮膚刺激試験を行った。
1.培養表皮モデルLabCyte EPI-MODEL24の準備
アッセイ培地を温め、24ウェルアッセイプレートに0.5mLずつ添加した。培養表皮モデルLabCyte EPI-MODEL24(ロット番号:LCE24-180226-A)を、アッセイ培地を添加した24ウェルアッセイプレートに移した。培養カップ底面に気泡が無いことを確認し、CO2インキュベーターに入れ被験物質暴露まで1時
間以上静置した。
【0075】
2.被験物質の適用及び洗浄
表皮モデル24個のうち、12個を使用した(残りは本試験まで前培養を続けた)。24ウェルアッセイプレートをCO2インキュベーターから取り出した。アッセイ培地を温
め、24ウェルアッセイプレート第3行に1.0mLずつ添加した。被験物質(各皮膚洗浄用スプレー剤)をポンプ式スプレー容器を用いずに培養カップの培養表皮に25μL滴下し、全体にいきわたらせて暴露した。暴露後1分、5分、10分経過時に被験物質を吸引除去し、カップ内の培養表皮モデルをリン酸緩衝液(PBS)で洗浄し、24ウェルアッセイプレート第3行に移した。
【0076】
3.MTT試験
MTT試験は、細胞内に取り込まれたMTT[3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromi
de]が細胞内にあるミトコンドリアの脱水素酵素によって還元されて生じるフォルマザン色素を、有機溶媒により抽出して570nmの吸光度を測定することで生細胞率を計測する方法である。
【0077】
MTT培地を終濃度0.5mg/mLで10mL調製した。MTT培地を温め、24ウェルアッセイプレート第4行に0.5mLずつ添加した。培養表皮モデルを24ウェルアッセイプレート第4行に移し、CO2インキュベーターに入れて、3時間MTT反応を行った。MTT反応終了後、培養皮膚をピンセットでつまんで取り出し、1.5mLマイクロチューブに移した。マイクロチューブにイソプロパノール300μLを入れて培養表皮モデルを完全に浸漬した。その後2時間静置し、マイクロチューブをボルテックスにかけ、色素を抽出した。抽出液(200mL)を96ウェルプレートの各ウェルに入れた。また、ブランク(陰性対照)として、A1にイソプロパノール200μLを入れた。マイクロプレートリーダーで570nm、650nmの吸光度を測定した。570nmの吸光度から650nmの吸光度を差し引いた値を測定値とし、下記式より被験物質の生細胞率を計算した。
【0078】
【数1】
【0079】
生細胞率を以下の基準に基づいて分類し、肌刺激性を評価した。結果を表3~4に示す。
◎:90%以上
○:75%以上90%未満
△:65%以上75%未満
×:50%以上65%未満
××:50%未満
【0080】
表1~4に示すとおり、界面活性剤を単独で0.025~2重量%の濃度で含む皮膚洗浄用スプレー剤(比較例1~10)では洗浄力が認められなかった。これに対し、単独では洗浄力を示さない両親媒性エステル(比較例11~15)を0.025~2重量%の界面活性剤とともに含む皮膚洗浄用スプレー剤(実施例1~20)では、噴霧式容器から噴霧により直接肌に塗布するだけで、物理的摩擦を一切与えることなく、液流の機械力を利用するだけで優れた洗浄力が得られた。つまり、肌に優しい洗浄が可能であることが示された。
【0081】
なお、参考例1~3に示すように界面活性剤を単独で2重量%超含む皮膚洗浄用スプレー剤も、噴霧により直接肌に塗布するだけで優れた洗浄力が得られる。一方で、参考例1~3に示される界面活性剤濃度による皮膚刺激を考慮し、実施例9~20に示されるように界面活性剤濃度を2重量%以下にすると、洗浄力だけでなく優れた低刺激性も奏された。つまり、噴霧により直接肌に塗布する皮膚洗浄用スプレー剤の界面活性剤濃度を0.025~2重量%とすることで、物理的にも化学的にも肌に優しい洗浄が可能となることが示された。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】