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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】広角レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20240418BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G02B13/04
G02B13/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023521485
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2023000242
(87)【国際公開番号】W WO2023166851
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2022033818
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512131977
【氏名又は名称】横浜リーディングデザイン合資会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145861
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 薫
(72)【発明者】
【氏名】末永 豊
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0049872(KR,A)
【文献】特表2006-505820(JP,A)
【文献】国際公開第2022/226957(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111399179(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101210996(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101140352(CN,A)
【文献】特開2006-119324(JP,A)
【文献】特開2007-33476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から光路順に、
全体として負屈折力のレンズであって、前記物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズからなる第1レンズ群と、
光学素子からなる第2レンズ群と、
2枚以内の正屈折力のレンズからなる第3レンズ群と、
1枚の負屈折力のレンズからなる第4レンズ群と、のみから構成され、
前記光学素子は、前記光路順に、前記物体側に対して凸面の第1光学面と、前記第1光学面からの光路を折り曲げる第2光学面と、前記物体側に対して凹面の第3光学面と、を有し、
前記第1光学面、前記第2光学面、及び前記第3光学面は、一体成型され、
全体で6面以上の非球面を有し、
以下の条件式(1)を満足することを特徴とする広角レンズ。
0.35<f/(FNo×d2)<1.0 (1)
ここで、
fは、前記広角レンズ全体の焦点距離、
FNoは、前記広角レンズのFナンバー、
d2は、前記第2レンズ群全体の光軸上の厚み、
である。
【請求項2】
物体側から光路順に、
全体として負屈折力のレンズであって、前記物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズからなる第1レンズ群と、
光学素子からなる第2レンズ群と、
2枚以内の正屈折力のレンズからなる第3レンズ群と、
1枚の負屈折力のレンズからなる第4レンズ群と、のみから構成され、
前記光学素子は、前記光路順に、前記物体側に対して凸面の第1光学面と、前記第1光学面からの光路を折り曲げる第2光学面と、前記物体側に対して凹面の第3光学面と、を有し、
前記第1光学面、前記第2光学面、及び前記第3光学面は、一体成型され、
全体で6面以上の非球面を有し、
以下の条件式(2)、(3)を満足することを特徴とする広角レンズ。
0.9<R1/f<2.1 (2)
-1.9<R2/f<-0.9 (3)
ここで、
R1は、前記第2レンズ群の物体側の面の曲率半径、
R2は、前記第2レンズ群の像側の面の曲率半径、
fは、前記広角レンズ全体の焦点距離、
である。
【請求項3】
物体側から光路順に、
全体として負屈折力のレンズであって、前記物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズからなる第1レンズ群と、
光学素子からなる第2レンズ群と、
2枚以内の正屈折力のレンズからなる第3レンズ群と、
1枚の負屈折力のレンズからなる第4レンズ群と、のみから構成され、
前記光学素子は、前記光路順に、前記物体側に対して凸面の第1光学面と、前記第1光学面からの光路を折り曲げる第2光学面と、前記物体側に対して凹面の第3光学面と、を有し、
前記第1光学面、前記第2光学面、及び前記第3光学面は、一体成型され、
全体で6面以上の非球面を有し、
以下の条件式(5)を満足することを特徴とする広角レンズ。
-0.80<f/fL4<-0.15 (5)
ここで、
fは、前記広角レンズ全体の焦点距離、
fL4は、前記第4レンズ群の焦点距離、
である。
【請求項4】
前記第1レンズ群は、前記全体として負屈折力のレンズであって、前記物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズのみからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の広角レンズ。
【請求項5】
4面以上の非球面は、回転対称非球面であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の広角レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広角レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
小型な光学系が、特許文献1と特許文献2に開示されている。これらの光学系では、光路中に配置した光学素子によって、光路を折り曲げている。その結果、光学素子よりも物体側の光路(以下、「物体側光路」という)と、光学素子よりも像側の光路(以下、「像側光路」という)が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-181635号公報
【文献】特開2005-215165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の光学系では、物体側光路の長さは十分に短い。しかしながら、像側光路の長さは十分に短いとは言えない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、高い結像性能を有すると共に、物体側光路の長さだけでなく、像側光路の長さも十分に短い広角レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の広角レンズの態様は、物体側から光路順に、全体として負屈折力のレンズからなる第1レンズ群と、光学素子を含む第2レンズ群と、2枚以内の正屈折力のレンズからなる第3レンズ群と、1枚の負屈折力のレンズからなる第4レンズ群と、のみから構成され、第1レンズ群は、物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズを含み、光学素子は、光路順に、物体側に対して凸面の第1光学面と、第1光学面からの光路を折り曲げる第2光学面と、物体側に対して凹面の第3光学面と、を有し、第1光学面、第2光学面、及び第3光学面は、一体成型され、全体で6面以上の非球面を有する。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の広角レンズの態様は、第1レンズ群は、物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズのみからなる。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の広角レンズの態様は、4面以上の非球面は、回転対称非球面である。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の広角レンズの態様は、各レンズ群を構成する全てのレンズ及び光学素子は、プラスチック製である。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の広角レンズの態様は、以下の条件式(1)を満足する。
0.35<f/(FNo×d2)<1.0 (1)
ここで、
fは、広角レンズ全体の焦点距離、
FNoは、広角レンズのFナンバー、
d2は、第2レンズ群全体の光軸上の厚み、
である。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の広角レンズの態様は、以下の条件式(2)、(3)を満足する。
0.9<R1/f<2.1 (2)
-1.9<R2/f<-0.9 (3)
ここで、
R1は、第2レンズ群の物体側の面の曲率半径、
R2は、第2レンズ群の像側の面の曲率半径、
fは、広角レンズ全体の焦点距離、
である。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の広角レンズの態様は、以下の条件式(4)を満足する。
-0.55<f/fL1<-0.15 (4)
ここで、
fは、広角レンズ全体の焦点距離、
fL1は、第1レンズ群の焦点距離、
である。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の広角レンズの態様は、以下の条件式(5)を満足する。
-0.80<f/fL4<-0.15 (5)
ここで、
fは、広角レンズ全体の焦点距離、
fL4は、第4レンズ群の焦点距離、
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る広角レンズよれば、高い結像性能を有すると共に、物体側光路の長さだけでなく、像側光路の長さも十分に短い広角レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の広角レンズのレンズ断面図である。
図2】第1実施例の広角レンズのレンズ断面図である。
図3】第1実施例の広角レンズの収差図である。
図4】第2実施例の広角レンズのレンズ断面図である。
図5】第2実施例の広角レンズの収差図である。
図6】第3実施例の広角レンズのレンズ断面図である。
図7】第3実施例の広角レンズの収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態の広角レンズは、物体側から光路順に、全体として負屈折力のレンズからなる第1レンズ群と、光学素子を含む第2レンズ群と、2枚以内の正屈折力のレンズからなる第3レンズ群と、1枚の負屈折力のレンズからなる第4レンズ群と、のみから構成され、第1レンズ群は、物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズを含み、光学素子は、光路順に、物体側に対して凸面の第1光学面と、第1光学面からの光路を折り曲げる第2光学面と、物体側に対して凹面の第3光学面と、を有し、第1光学面、第2光学面、及び第3光学面は、一体成型され、全体で6面以上の非球面を有する。
【0017】
図1は、本実施形態の広角レンズのレンズ断面図である。広角レンズは、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、からなる。本実施形態の広角レンズでは、4つのレンズ群によって、像面Iに物体の光学像が形成される。
【0018】
第1レンズ群G1は、全体として負屈折力のレンズからなり、負屈折力のメニスカスレンズを含む。本実施形態の広角レンズでは、第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズL1からなる。よって、第1レンズ群G1に負屈折力を持たせることができる。
【0019】
第2レンズ群G2は、光学素子Pを含む。本実施形態の広角レンズでは、第2レンズ群G2は、光学素子Pからなる。
【0020】
光学素子Pは、光路順に、第1光学面r1と、第2光学面r2と、第3光学面r3と、を有する。第1光学面r1と第3光学面r3では、光が屈折される。第2光学面r2では、光は反射される。
【0021】
第2光学面r2は平面で、反射面として機能する。よって、第2光学面r2では、第1光学面r1からの光路が折り曲げられる。物体側光路と像側光路が形成される。光学素子Pより物体側には、第1レンズ群G1しか配置されていない。よって、物体側光路の長さを短くすることができる。すなわち、物体側光路に沿う方向において、第2レンズ群G2の厚みを薄くすることができる。その結果、光学系を小型にすることができる。
【0022】
第1光学面r1は物体側に対して凸面で、第3光学面r3は物体側に対して凹面である。よって、光学素子Pに正屈折力を持たせることができる。その結果、第2レンズ群G2に正屈折力を持たせることができる。
【0023】
上述のように、第1レンズ群G1には、負屈折力を持たせることができる。第2レンズ群G2に負屈折力を持たせることができると、屈折力の並びが、物体側から順に、負屈折力、正屈折力となる。この場合、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とで、レトロフォーカスタイプの光学系が形成される。
【0024】
レトロフォーカスタイプの光学系は、広い画角と長いバックフォーカスを有する。よって、本実施形態の広角レンズでも、広い画角と十分な長さのバックフォーカスを容易に確保することができる。
【0025】
バックフォーカスを十分に確保することができると、第2レンズ群G2の像側に、広い空間が形成される。そのため、この空間に、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4を配置することができる。
【0026】
第3レンズ群G3は、2枚以内の正屈折力のレンズからなり、第4レンズ群G4は1枚の負屈折力のレンズからなる。この場合、第3レンズ群G3に用いるレンズと第4レンズ群G4に用いるレンズの合計は3枚以内になるので、第3レンズ群G3の厚みと第4レンズ群G4の厚みを薄くすることができる。第3レンズ群G3の厚みと第4レンズ群G4は光学素子Pより像側に配置されているので、像側光路の長さを短くすることができる。
【0027】
本実施形態の広角レンズでは、第3レンズ群G3は両凸レンズL2からなり、第4レンズ群G4は像側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズL3からなる。第3レンズ群G3に用いるレンズと第4レンズ群G4に用いるレンズの合計は2枚になるので、像側光路の長さを短くすることができる。
【0028】
第2レンズ群の像側に、正屈折力のレンズと負屈折力のレンズが配置されるので、色収差を良好に補正することができる。本実施形態の広角レンズでは、両凸レンズL2と負屈折力のメニスカスレンズL3とで、色収差を良好に補正することができる。
【0029】
光学素子Pは、無色透明な材料で形成することができる。無色透明な材料として、ガラス又は樹脂を用いることができる。
【0030】
上述のように、光学素子Pでは、第2光学面r2は反射面として機能する。全反射を利用する場合、材料の表面をそのまま第2光学面r2に用いれば良い。全反射を利用しない場合、材料の表面に反射膜を形成し、この面を第2光学面r2に用いれば良い。
【0031】
光学素子Pは、単体で形成されていると良い。この場合、第1光学面r1、第2光学面r2、及び第3光学面r3は、一体で成型される。3つの光学面を一体で成型すると、第1光学面r1と第2光学面r2で生じる偏心の増大、第1光学面r1と第3光学面r3で生じる偏心の増大、及び第2光学面r2と第3光学面r3で生じる偏心の増大を、各々抑制することができる。その結果、偏心による結像性能の低下を防止することができる。
【0032】
本実施形態の広角レンズは、全体で6面以上の非球面を有する。6面以上の非球面を用いることで、高い結像性能を確保することができる。
【0033】
非球面は、光軸を回転軸とする回転対称面にすることができる。回転対称面にすることで、レンズ面を高い精度で形成することができる。その結果、高い結像性能を確保することができる。また、光学系の製造コストを低減することができる。
【0034】
開口絞りは、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間、又は、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間に配置することができる。
【0035】
本実施形態の広角レンズでは、第1レンズ群は、物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズのみからなる。
【0036】
第1レンズ群がメニスカスレンズのみからなることで、第1レンズ群に大きな屈折力を持たせても、屈折力を分散させることができる。そのため、収差の発生を抑制することができる。また、メニスカスレンズが1枚の場合、第1レンズ群の厚みを薄くすることができる。その結果、光学系を小型にすることができる。
【0037】
本実施形態の広角レンズでは、4面以上の非球面は、回転対称非球面である。
【0038】
回転対称非球面を用いることで、高い結像性能を確保することができる。回転対称非球面は、変曲点を持たない面にすることができる。このようにすることで、精度の高いレンズ面を得ることができる。そのため、光学系の製造コストを低減することができる。
【0039】
本実施形態の広角レンズでは、非球面と球面を組み合わせることができる。球面は2面使用することができる。製造コストの観点では、非球面は変曲点を持たない面であることが好ましい。しかしながら、より高い結像性の確保の観点から、変曲点を持つ非球面の使用は許容できる。
【0040】
本実施形態の広角レンズでは、各レンズ群を構成する全てのレンズ及び光学素子は、プラスチック製である。
【0041】
レンズ及び光学素子をプラスチック製にすることで、光学系を軽量にすることができると共に、光学系の製造コストを低減することができる。
【0042】
本実施形態の広角レンズは、以下の条件式(1)を満足する。
0.35<f/(FNo×d2)<1.0 (1)
ここで、
fは、広角レンズ全体の焦点距離、
FNoは、広角レンズのFナンバー、
d2は、第2レンズ群全体の光軸上の厚み、
である。
【0043】
条件式(1)の下限値より小さいと、光学系全体の大きさが大きくなってしまう。条件式(1)の上限値より大きいと、光路の折り曲げが困難となる。
【0044】
本実施形態の広角レンズは、以下の条件式(2)、(3)を満足する。
0.9<R1/f<2.1 (2)
-1.9<R2/f<-0.9 (3)
ここで、
R1は、第2レンズ群の物体側の面の曲率半径、
R2は、第2レンズ群の像側の面の曲率半径、
fは、広角レンズ全体の焦点距離、
である。
【0045】
条件式(2)の下限値より小さいと、負の球面収差が大きく発生するので補正困難となる。条件式(2)上限値より大きいと、第1レンズ群に因る正の球面収差を打ち消すことができなくなるので球面収差が悪化する。
【0046】
条件式(3)の下限値より小さいと、球面収差が大きく発生するので補正困難となる。条件式(3)の上限値より大きいと、第4レンズ群に因る正の球面収差を打ち消すことができなくなるので球面収差が悪化する。
【0047】
本実施形態の広角レンズは、以下の条件式(4)を満足する。
-0.55<f/fL1<-0.15 (4)
ここで、
fは、広角レンズ全体の焦点距離、
fL1は、第1レンズ群の焦点距離、
である。
【0048】
条件式(4)の下限値より小さいと、球面収差が悪化すると同時に光学系全体の長さが長くなり過ぎる。条件式(4)の上限値より大きいと、レトロフォーカスの効果が薄れるので大きな画角の像高の収差が悪化する。
【0049】
本実施形態の広角レンズは、以下の条件式(5)を満足する。
-0.80<f/fL4<-0.15 (5)
ここで、
fは、広角レンズ全体の焦点距離、
fL4は、第4レンズ群の焦点距離、
である。
【0050】
条件式(5)の下限値より小さいと、第1レンズ群で発生するコマ収差とのバランスが崩れるのでコマ収差が悪化する。条件式(5)の上限値より大きいと、やはり第1レンズ群で発生するコマ収差とのバランスが崩れるのでコマ収差が悪化する。
【0051】
広角レンズの実施例を、図面に基づいて説明する。ただし、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0052】
各実施例の収差図について説明する。図3(a)、図5(a)、図7(a)は、球面収差を示す図である。球面収差図では、縦軸に相対的な入射高を示し、横軸に収差量を示している。図中、FはF線(波長486nm)を示し、dはd線(波長588nm)を示し、CはC線(波長656nm)を示している。
【0053】
図3(b)、図5(b)、図7(b)は、非点収差を示す図である。非点収差図では、縦軸に物体側からの主光線の入射角(半画角)を示し、横軸に収差量を示している。実線はメリディオナル像面Mの収差を示し、点線はサジタル像面Sの収差を示している。
【0054】
図3(c)、図3(d)、図5(c)、図5(d)、図7(c)、図7(d)は、入射角が0°のときのコマ収差を示している。図3(c)、図5(c)、図7(c)は、メリディオナル方向のコマ収差を示している。図3(d)、図5(d)、図7(d)は、サジタル方向のコマ収差を示している。
【0055】
図3(e)、図3(f)、図5(e)、図5(f)、図7(e)、図7(f)は、入射角が38°のときのコマ収差を示している。図3(e)、図5(e)、図7(e)は、メリディオナル方向のコマ収差を示している。図3(f)、図5(f)、図7(f)は、サジタル方向のコマ収差を示している。
【0056】
コマ収差図では、縦軸は収差量を示し、横軸は距離を示している。
【0057】
(第1実施例)
第1実施例の広角レンズについて、図2図3を用いて説明する。図2は、本発明による第1実施例の広角レンズを示す図である。図3は、本発明による第1実施例の広角レンズの収差を示す図である。
【0058】
第1実施例の広角レンズは、物体側から光路順に、負屈折力を有する第1レンズ群G1と、正屈折力を有する第2レンズ群G2と、正屈折力を有する第3レンズ群G3と、負屈折力を有する第4レンズ群G4と、を有する。
【0059】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズL1を有する。第2レンズ群G2は、光学素子Pを有する。第3レンズ群G3は、両凸レンズL2を有する。第4レンズ群G4は、像側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズL3を有する。
【0060】
光学素子Pは、樹脂で形成されている。光学素子Pは、第1光学面と、第2光学面と、第3光学面と、を有する。第1光学面はr3で示され、第2光学面はr4で示され、第3光学面はr5で示されている。
【0061】
第2光学面は、物体側に対して凸の面である。第2光学面は、平面である。第3光学面は、物体側に対して凹の面である。第2光学面では、全反射によって光が反射される。
【0062】
非球面は、メニスカスレンズL1の両面、両凸レンズL2の両面、メニスカスレンズL3の両面に設けられている。全ての非球面は、回転対称非球面である。
【0063】
(第2実施例)
第2実施例の広角レンズについて、図4図5を用いて説明する。図4は、本発明による第2実施例の広角レンズを示す図である。図5は、本発明による第2実施例の広角レンズの収差図である。
【0064】
第2実施例の広角レンズは、物体側から光路順に、負屈折力を有する第1レンズ群G1と、正屈折力を有する第2レンズ群G2と、正屈折力を有する第3レンズ群G3と、負屈折力を有する第4レンズ群G4と、を有する。
【0065】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズL1を有する。第2レンズ群G2は、光学素子Pを有する。第3レンズ群G3は、両凸レンズL2を有する。第4レンズ群G4は、像側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズL3を有する。
【0066】
光学素子Pは、樹脂で形成されている。光学素子Pは、第1光学面と、第2光学面と、第3光学面と、を有する。第1光学面はr3で示され、第2光学面はr4で示され、第3光学面はr5で示されている。
【0067】
第2光学面は、物体側に対して凸の面である。第2光学面は、平面である。第3光学面は、物体側に対して凹の面である。第2光学面では、全反射によって光が反射される。
【0068】
非球面は、メニスカスレンズL1の両面、両凸レンズL2の両面、メニスカスレンズL3の両面に設けられている。全ての非球面は、回転対称非球面である。
【0069】
(第3実施例)
第3実施例の広角レンズについて、図6図7を用いて説明する。図6は、本発明による第3実施例の広角レンズを示す図である。図7は、本発明による第3実施例の広角レンズの収差図である。
【0070】
第3実施例の広角レンズは、物体側から光路順に、負屈折力を有する第1レンズ群G1と、正屈折力を有する第2レンズ群G2と、正屈折力を有する第3レンズ群G3と、負屈折力を有する第4レンズ群G4と、を有する。
【0071】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズL1を有する。第2レンズ群G2は、光学素子Pを有する。第3レンズ群G3は、両凸レンズL2と、両凸レンズL3と、を有する。第4レンズ群G4は、像側に凸面を向けた負屈折力のメニスカスレンズL4を有する。
【0072】
光学素子Pは、樹脂で形成されている。光学素子Pは、第1光学面と、第2光学面と、第3光学面と、を有する。第1光学面はr3で示され、第2光学面はr4で示され、第3光学面はr5で示されている。
【0073】
第2光学面は、物体側に対して凸の面である。第2光学面は、平面である。第3光学面は、物体側に対して凹の面である。第2光学面では、全反射によって光が反射される。
【0074】
非球面は、メニスカスレンズL1の両面、両凸レンズL2の両面、両凸レンズL3の両面、メニスカスレンズL4の両面に設けられている。全ての非球面は、回転対称非球面である。
【0075】
以下に、第1実施例のデータを示す。表には、左側から順に、面番号、曲率半径(r)、面間隔(d)、波長588nmでの屈折率(nd)、アッベ数(νd)を示している。*印は非球面を示している。
【0076】
曲率半径r、面間隔d、及びその他の長さの単位は「mm」である。しかし光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、単位は「mm」に限られるものではない。
【0077】
非球面形状は、光軸と垂直な方向の高さをr、高さrにおける光軸方向の変位量をz(r)、曲率をC、コーニック係数をk、非球面係数をA0、A2、A4、A6、A8、A10、…としたとき、以下の式で表される。
z(r)=(cr2)/[1+{1-(1+k)c2r2}1/2]
+A0+A2r2+A4r4+A6r6+A8r8+A10r10+…
Y方向の座標の値をy、X方向の座標の値をxとすると、rは以下の式で表される。
r={x2+y2}1/2
Y方向は、光軸と直交する方向である。X方向は、光軸方向とY方向の両方と直交する方向である。
また、非球面係数において、「E-n」(nは整数)は、「10-n」を示している。
【0078】
数値実施例1
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1* 5.420 0.250 1.59 29.9
2* 2.940 0.756
3* 3.799 2.400 1.53 57.1
4 ∞ 2.490 1.53 57.1
5* -4.818 0.050
6* 10.826 0.620 1.53 57.1
7* -10.131 2.186
8* -2.576 0.200 1.59 29.9
9* -550.423 1.225
像面 ∞

非球面データ
第1面
k=0.000
A2=0.000,A4=-1.142E-03,A6=-1.449E-04,A8=-3.122E-05,A10=-7.554E-06
第2面
k=0.000
A2=0.000,A4=9.505E-04,A6=-1.613E-04,A8=2.222E-04,A10=-7.094E-05
第3面
k=-0.015
A2=0.000,A4=-9.163E-04,A6=3.036E-05,A8=1.092E-05,A10=-7.252E-06
第5面
k=-0.013
A2=0.000,A4=-9.151E-04,A6=-6.432E-05,A8=-2.004E-07,A10=1.451E-06
第6面
k=0.000
A2=0.000,A4=-3.856E-04,A6=2.223E-06,A8=-2.815E-06,A10=-1.213E-06
第7面
k=0.000
A2=0.000,A4=1.273E-03 A6=-4.842E-05,A8=-6.390E-06,A10=5.598E-07
第8面
k=-0.305
A2=0.000,A4=-9.492E-04,A6=1.588E-04,A8=2.572E-05,A10=3.154E-06
第9面
k=0.000,A2=0.000,A4=1.459E-05,A6=1.345E-07,A8=-2.896E-08,A10=-5.196E-09

各種データ
f 3.63mm
Fno 1.17
ω 38°
【0079】
数値実施例2
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1* 12.217 0.230 1.53 56.3
2* 3.999 3.239
3* 4.885 2.500 1.53 57.1
4 ∞ 2.551 1.53 57.1
5* -4.934 0.050
6* 5.952 1.984 1.53 57.1
7* -16.639 2.126
8* -3.123 0.200 1.53 30.0
9* -30.474 0.337
像面 ∞

非球面データ
第1面
k=0.000
A2=0.000,A4=2.619E-04,A6=1.540E-05,A8=8.507E-06,A10=5.916E-08,A12=-2.389E-08
第2面
k=0.061
A2=0.000,A4=-2.581E-04,A6=-4.353E-05,A8=5.451E-06,A10=3.076E-06,A12=5.267E-08
第3面
k=-3.981E-03
A2=0.000,A4=-3.463E-03,A6=-2.546E-04,A8=-1.673E-05,A10=-2.546E-07,A12=2.474E-07
第5面
k=0.000
A2=0.000,A4=4.113E-04,A6=-1.708E-04,A8=-2.565E-05,A10=8.466E-08,A12=1.321E-06
第6面
k=0.000
A2=0.000,A4=-1.013E-03,A6=7.391E-04,A8=-1.597E-04,A10=-3.815E-05,A12=1.202E-05
第7面
k=0.000
A2=0.000,A4=3.056E-03,A6=-2.937E-04,A8=-7.596E-05,A10=-3.376E-06,A12=4.252E-06
第8面
k=0.842
A2=0.000,A4=-8.148E-03,A6=-2.056E-04,A8=5.995E-05,A10=2.333E-05,A12=6.343E-06
第9面
k=0.000
A2=0.000,A4=7.904E-03,A6=-1.777E-03,A8=4.417E-05,A10=2.590E-05,A12=-2.600E-06

各種データ
f 3.63mm
Fno 1.17
ω 38°
【0080】
数値実施例3
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1* 11.488 0.220 1.59 29.9
2* 4.433 1.527
3* 5.010 2.090 1.53 56.3
4 ∞ 2.100 1.53 56.3
5* -3.760 0.042
6* 6.892 1.000 1.53 57.1
7* -15.705 0.024
8* 8.549 1.047 1.53 57.1
9* -7.953 1.241
10* -3.915 0.160 1.59 29.9
11* -80.000 0.339
像面 ∞

非球面データ
第1面
k=0.000
A2=-6.800E-03,A4=2.866E-03,A6=7.730E-05,A8=7.123E-06,A10=6.031E-07,A12=2.634E-08
第2面
k=0.000
A2=1.055E-03,A4=-1.805E-03,A6=-2.578E-05,A8=2.924E-05,A10=1.280E-06,A12=-5.736E-07
第3面
k=-12.648
A2=-3.775E-03,A4=-5.179E-03,A6=-1.526E-03,A8=-3.977E-04,A10=-3.727E-05,A12=2.297E-05
第5面
k=-1.584
A2=-2.705E-03,A4=-1.024E-03,A6=-1.380E-04,A8=4.881E-06,A10=1.706E-05,A12=1.073E-05
第6面
k=0.000
A2=6.710E-06,A4=-5.063E-05,A6=8.607E-06,A8=1.040E-05,A10=2.369E-06,A12=-1.259E-06
第7面
k=0.000
A2=-7.865E-03,A4=-4.201E-03,A6=-5.913E-04,A8=-6.098E-05,A10=-7.227E-06,A12=-2.020E-06
第8面
k=0.000
A2=1.689E-05,A4=-1.348E-04,A6=1.128E-04,A8=1.191E-06,A10=-1.150E-05,A12=2.256E-06
第9面
k=0.000
A2=-2.033E-05,A4=3.278E-04,A6=-7.891E-05,A8=-2.396E-05,A10=-4.442E-07,A12=1.758E-06
第10面
k=0.661
A2=-0.160,A4=-0.037,A6=7.012E-03,A8=4.418E-05,A10=-1.821E-04,A12=3.993E-06
第11面
k=0.0001
A2=9.563E-05,A4=5.880E-05,A6=5.524E-05,A8=4.167E-06,A10=-4.528E-09,A12=-1.678E-07

各種データ
f 2.88mm
Fno 1.11
ω 45°
【0081】
各パラメータの値を以下に掲げる。
第1実施例 第2実施例 第3実施例
f 3.63 3.63 2.88
FNo 1.17 1.17 1.11
d2 4.890 5.051 4.190
R1 3.799 4.885 5.010
R2 -4.818 -4.934 -3.760
fL1 -11.40 -11.30 -11.17
fL4 -4.421 -6.528 -3.032
【0082】
各実施例における条件式の値を以下に掲げる。
第1実施例 第2実施例 第3実施例
(1) 0.6346 0.6143 0.6193
(2) 1.0466 1.3457 1.7396
(3) -1.3272 -1.3592 -1.3056
(4) -0.3185 -0.3212 -0.2578
(5) -0.8211 -0.5561 -0.9499
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、高い結像性能を有すると共に、物体側光路の長さだけでなく、像側光路の長さも十分に短い広角レンズに適している。
【符号の説明】
【0085】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
L1、L2、L3、L4 レンズ
P 光学素子
r1 第1光学面
r2 第2光学面
r3 第3光学面
I 像面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7