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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】加熱器
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/24 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
A47J36/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023026734
(22)【出願日】2023-02-22
(65)【公開番号】P2023124842
(43)【公開日】2023-09-06
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2022028515
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 信幸
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 健
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録実用新案第20-0281410(KR,Y1)
【文献】韓国登録特許第10-0686311(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0125920(KR,A)
【文献】実開平06-079430(JP,U)
【文献】実開平01-175640(JP,U)
【文献】特開平06-343560(JP,A)
【文献】特開平07-213431(JP,A)
【文献】特開平10-328033(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第0116941(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 36/24
A47J 37/06
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に食品を収容可能なパウチを含むレトルト食品を加熱するための加熱器であって、
内部に第1の発熱体を備え、その一面に前記レトルト食品に接触して前記レトルト食品を加熱する第1の加熱面が形成された直方体状の第1壁部と、
内部に第2の発熱体を備え、その一面に前記レトルト食品に接触して前記レトルト食品を加熱する第2の加熱面が形成された直方体状の第2壁部であって、前記第2壁部は、前記第2の加熱面が前記第1の加熱面に対して所定間隔を空けて対向した状態で配設されている、前記第2壁部と、
前記第1の加熱面及び第2の加熱面の発熱量を制御する制御部と、を備え、
前記第1壁部と前記第2壁部との間に形成されて前記レトルト食品の少なくとも一部を収容可能な収容空間は、前記レトルト食品を加熱する際、その外周囲の少なくとも2面が前記加熱器の外部に開放されている、
加熱器。
【請求項2】
前記収容空間は、その外周囲のうちの底面を除く3面が前記加熱器の外部に開放されている、
請求項1に記載の加熱器。
【請求項3】
前記第1壁部は、第1壁部本体と、前記第1の加熱面を構成する第1加熱プレートと、前記第1壁部本体と前記第1加熱プレートとの間に配設され前記第1加熱プレートを前記第2壁部の第2の加熱面に近接する方向に付勢する第1付勢部材と、を備え、
前記第2壁部は、第2壁部本体と、前記第2の加熱面を構成する第2加熱プレートと、前記第2壁部本体と前記第2加熱プレートとの間に配設され前記第2加熱プレートを前記第1壁部の第1の加熱面に近接する方向に付勢する第2付勢部材と、を備える、
請求項1に記載の加熱器。
【請求項4】
前記第1加熱プレート及び前記第2加熱プレートは、前記第1付勢部材又は前記第2付勢部材の付勢力に抗して、互いに離間する方向にそれぞれ3~6mm移動可能である、
請求項3に記載の加熱器。
【請求項5】
前記第1加熱プレートの前記第1の加熱面とは反対側の面及び前記第2加熱プレートの前記第2の加熱面とは反対側の面の少なくとも一方に検知面が当接している温度センサをさらに備える、
請求項3に記載の加熱器。
【請求項6】
前記収容空間内に収容された前記レトルト食品の温度を検出するための温度センサと、
前記レトルト食品を加熱する際の目標温度を段階的に選択可能な温度入力部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記温度入力部の入力結果と前記温度センサの検出結果とに基づき、前記第1の発熱体及び第2の発熱体の発熱量を段階的に制御する、
請求項1に記載の加熱器。
【請求項7】
前記第1壁部又は前記第2壁部の上面の外縁部の少なくとも1箇所に、前記第1壁部又は前記第2壁部の上面から前記第1壁部又は前記第2壁部の上面に隣接する他の一面へ延在するように配設されたランプをさらに備える、
請求項1に記載の加熱器。
【請求項8】
前記第1の発熱体及び前記第2の発熱体の少なくとも一方が、電極に接続された透光性の導電膜と、第1の加熱面及び第2の加熱面の少なくとも一方を構成する透光性の加熱プレートと、前記透光性の加熱プレートの裏側に位置する面に形成された窓と、を備え、前記収容空間に収容される前記レトルト食品が前記窓を介して視認可能である、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の加熱器。
【請求項9】
前記第1壁部と前記第2壁部とは、少なくとも一方の壁部が他方の壁部から離れる方向に傾斜して配置され、前記第1の加熱面と前記第2の加熱面のなす角は、30~50°である、
請求項1に記載の加熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レトルト食品を加熱することが可能な加熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、調理済みの食品等をパウチ内部に収容したレトルト食品(pre-packaged food)が広く利用されている。このようなレトルト食品は、加温した後に食されるのが一般的であり、加温の方法としては、例えば湯煎を用いてパウチごと加温する方法が知られている。
【0003】
また、レトルト食品を加温するための装置として、例えば下記特許文献1に記載されたもののように、開口部から挿入されたレトルト食品をその一面から押圧することで熱板の間に挟持し、この熱板をヒータで加熱することでレトルト食品を加温するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平06-079430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような、湯煎を用いることなくレトルト食品を加温する装置は、速やかに加温を開始できることに加え、鍋等を準備する必要もないため利便性が高いという利点がある。しかしながら、上記特許文献1のもののように、レトルト食品を装置の上部に設けられた開口部から挿入する構造のものは、加温可能なレトルト食品のサイズが開口部のサイズやその深さに依存する。また、開口部が比較的狭いため、内部の掃除を含めたメンテナンス性が低い。
【0006】
上述の課題を考慮して、本開示は、簡易な構造で様々なサイズのレトルト食品を加温することが可能な加熱器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係る加熱器は、内部に食品を収容可能なパウチを含むレトルト食品を加熱するための加熱器であって、内部に第1の発熱体を備え、その一面に前記レトルト食品に接触して前記レトルト食品を加熱する第1の加熱面が形成された直方体状の第1壁部と、内部に第2の発熱体を備え、その一面に前記レトルト食品に接触して前記レトルト食品を加熱する第2の加熱面が形成された直方体状の第2壁部であって、前記第2壁部は、前記第2の加熱面が前記第1の加熱面に対して所定間隔を空けて対向した状態で配設されている、前記第2壁部と、前記第1の加熱面及び第2の加熱面の発熱量を制御する制御部と、を含み、前記第1壁部と前記第2壁部との間に形成されて前記レトルト食品の少なくとも一部を収容可能な収容空間は、その外周囲の少なくとも2面が前記加熱器の外部に開放されている。
【0008】
このような加熱器においては、収容空間の外周囲の2面以上が開放しているため、種々の大きさのレトルト食品の出し入れや収容空間内の清掃が容易に行える。
【0009】
本開示の第2の態様に係る加熱器は、上記本開示の第1の態様に係る加熱器において、前記収容空間は、その外周囲のうちの底面を除く3面が前記加熱器の外部に開放されている。
【0010】
このような加熱器においては、収容空間の底面を除く3面が開放しているため、種々の大きさのレトルト食品の出し入れや収容空間内の清掃がさらに容易に行える。
【0011】
本開示の第3の態様に係る加熱器は、上記本開示の第1又は第2の態様に係る加熱器において、前記第1壁部は、第1壁部本体と、前記第1の加熱面を構成する第1加熱プレートと、前記第1壁部本体と前記第1加熱プレートとの間に配設され前記第1加熱プレートを前記第2壁部の第2の加熱面に近接する方向に付勢する第1付勢部材と、を含み、前記第2壁部は、第2壁部本体と、前記第2の加熱面を構成する第2加熱プレートと、前記第2壁部本体と前記第2加熱プレートとの間に配設され前記第2加熱プレートを前記第1壁部の第1の加熱面に近接する方向に付勢する第2付勢部材と、を含む。
【0012】
このような加熱器においては、加熱プレートが付勢部材により移動可能に支持されているため、パウチ内に大きな具材等が封入されたレトルト食品を加熱する場合にも、当該具材の形状を崩さずに加熱することができる。
【0013】
本開示の第4の態様に係る加熱器は、上記本開示の第3の態様に係る加熱器において、前記第1加熱プレート及び前記第2加熱プレートは、前記第1付勢部材又は前記第2付勢部材の付勢力に抗して、互いに離間する方向にそれぞれ3~6mm移動可能である。
【0014】
このような加熱器においては、レトルト食品が収容された際にレトルト食品の形状に沿って加熱面を移動させることができる。
【0015】
本開示の第5の形態に係る加熱器は、上記本開示の第3又は第4の態様に係る加熱器において、前記第1加熱プレートの前記第1の加熱面とは反対側の面及び前記第2加熱プレートの前記第2の加熱面とは反対側の面の少なくとも一方に検知面が当接している温度センサをさらに含む。
【0016】
このような加熱器においては、加熱プレートの温度に基づいてレトルト食品の温度を検出するため、レトルト食品の局所的な温度変化の影響を受けにくい、高精度な温度検出が可能となる。
【0017】
本開示の第6の態様に係る加熱器は、上記本開示の第1乃至第5のいずれかの態様に係る加熱器において、前記収容空間内に収容された前記レトルト食品の温度を検出するための温度センサと、前記レトルト食品を加熱する際の目標温度を段階的に選択可能な温度入力部と、をさらに含み、前記制御部は、前記温度入力部の入力結果と前記温度センサの検出結果とに基づき、前記第1の発熱体及び第2の発熱体の発熱量を段階的に制御する。
【0018】
このような加熱器においては、ユーザが温度入力部を介して入力した目標温度に合わせてレトルト食品の加熱温度を調節できるため、例えばベビーフードのような低温加熱が好ましいものも簡単に加熱できる。また、温度を指定すれば自動で所望の温度まで加熱することができ、利便性が向上する。
【0019】
本開示の第7の態様に係る加熱器は、上記本開示の第1乃至第6のいずれかの態様に係る加熱器において、前記第1壁部又は前記第2壁部の上面の外縁部の少なくとも1箇所に、前記第1壁部又は前記第2壁部の上面から前記第1壁部又は前記第2壁部の上面に隣接する他の一面へ延在するように配設されたランプをさらに含む。
【0020】
このような加熱器においては、ランプの点灯状態が複数の方向から視認できるようになり、ランプの点灯状態によって表現される加熱器の状態がユーザに伝わりやすくなる。
【0021】
本開示の第8の態様に係る加熱器は、上記本開示の第1乃至第7のいずれかの態様に係る加熱器において、前記第1の発熱体及び前記第2の発熱体の少なくとも一方が、電極に接続された透光性の導電膜と、第1の加熱面及び第2の加熱面の少なくとも一方を構成する透光性の加熱プレートと、前記透光性の加熱プレートの裏側に位置する面に形成された窓と、を含み、前記収容空間に収容される前記レトルト食品が前記窓を介して視認可能である。
【0022】
このような加熱器においては、加熱中のレトルト食品のパウチ表面を加熱したまま視認でき、加熱中に商品種類を確認できる。
【0023】
本開示の第9の態様に係る加熱器は、上記本開示の第1乃至第8の態様に係る加熱器において、前記第1壁部と前記第2壁部とは、少なくとも一方の壁部が他方の壁部から離れる方向に傾斜して配置され、前記第1の加熱面と前記第2の加熱面のなす角は、30~50°である。
【0024】
このような加熱器においては、収容空間にレトルト食品を折り畳んだ状態で収容できるため、加熱器自体をさらに小型化することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の加熱器によれば、簡易な構造で、様々なサイズのレトルト食品を加温することが可能な加熱器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る加熱器の一例を示す概略斜視図である。
図2図1に示す加熱器を分解した状態を示した分解斜視図である。
図3図1に示す加熱器にレトルト食品を上方から挿入する際の作動状態の一例を示す説明図である。
図4図1に示す加熱器を用いて異なる大きさのレトルト食品を加熱する状態の一例を示す説明図である。
図5】本開示の第2の実施の形態に係る加熱器の一例を示す概略斜視図である。
図6図5に示す加熱器における第1の発熱体を分解した状態を示した分解斜視図である。
図7】本開示の第3の実施の形態に係る加熱器の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0028】
<第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る加熱器の一例を示す概略斜視図である。また、図2は、図1に示す加熱器を分解した状態を示した分解斜視図である。本開示の第1の実施の形態に係る加熱器1は、レトルト食品PF(図3参照)を加熱(加温)するためのものであって、図1及び図2に示すように、所定の間隔を空けて対向するように配設された、その外観が直方体状の一対の壁部(第1壁部及び第2壁部の一例)10、20を少なくとも含む。なお、以下においては、図1に示す矢印Xが示す方向を前後方向とし、以下同様に、矢印Yが示す方向を左右方向、矢印Zが示す方向を上下方向として説明を行うものとする。また、前述の「直方体状」とは、全ての角部が直角であるものだけに限らず、その一部の面が傾斜していたり、角部の一部が面取りされていたりするものを含む。
【0029】
一対の壁部10、20は、その間に被加熱対象としてのレトルト食品PFが挿入される収容空間Sを挟んで並列に配設されていてよい。より好ましくは、一対の壁部10、20は実質的に平行となるように配設されているとよい。また、本実施の形態に係る加熱器1が加熱するレトルト食品PFとしては、内部に食品等を収容可能なパウチ(pouch、小袋)P(図3参照)を含むものであればよく、そのサイズや内容物については特に制限されない。また、パウチPとしては、例えば合成樹脂製のフィルムや金属箔(例えばアルミニウム箔)等を積層した包装材の周囲を封止して内部に食品を封入する空間を設けたものを採用することができる。また、このパウチPは自立式のものであっても非自立式のものであってもよい。以下、加熱器1を前方から見た場合の収容空間Sの左側に位置するものを第1壁部10と、収容空間Sの右側に位置するものを第2壁部20とそれぞれ呼ぶこととする。
【0030】
第1壁部10は、特に図2に示すように、その内部に第1の発熱体12を有し、左右方向に沿った所定の肉厚を有する板状の部材で構成することができる。この第1壁部10は、第1壁部本体11と、第1の発熱体12とを含むことができる。
【0031】
第1壁部本体11は、第1の発熱体12の少なくとも一部を収容するものであって、合成樹脂等によって形成されていてよい。本実施の形態の第1壁部本体11は、後述する第2壁部本体21、前方筐体31、後方筐体32及び底部筐体33と共に、加熱器1の筐体を構成するものであってよい。また、この第1壁部本体11は、例えば第1の発熱体12の上部と左側面とを覆うように屈曲した板状体で構成することができる。
【0032】
第1の発熱体12は、その一面に収容空間Sに収容されたレトルト食品PFに接触してレトルト食品PFを加熱する第1の加熱面を含み、且つその内部に熱源を備えたものであってよい。この第1の発熱体12は、第1の加熱面を構成する第1加熱プレート13と、熱源を構成する第1のヒータ14と、第1加熱プレート13及び第1のヒータ14を支持する第1のカバー部材15と、を含むことができる。
【0033】
第1加熱プレート13は、熱伝導率の高い材料、例えば鉄、アルミニウムあるいはこれらの合金で構成された板状体で構成することができる。この第1加熱プレート13の収容空間Sに面した表面が第1加熱面として機能する。また、第1加熱プレート13の外周囲には、第1のカバー部材15に固定される固定片13Aが裏面側に(すなわち図2中の左方向に向かって)立設していてよい。
【0034】
第1のヒータ14は、第1加熱プレート13と同様の形状を備える矩形状のヒータで構成することができる。この第1のヒータ14には、例えばポリイミドヒータ、内部にニクロム線が配策されたラバーヒータ等を採用することができる。また、第1のヒータ14は、第1加熱プレート13の裏面(図2における左側の面)に接触あるいは近接するように設けられていてよい。通電により第1のヒータ14から発生する熱は、第1加熱プレート13を介して収容空間Sに挿入されたレトルト食品PFに伝達される。
【0035】
第1のカバー部材15は、第1加熱プレート13及び第1のヒータ14を支持するための部材であって、矩形状の部材で構成することができる。この第1のカバー部材15が第1加熱プレート13の固定片13Aに固定されることで、第1のヒータ14と第1加熱プレート13の相対位置が固定できる。第1のカバー部材15には、耐熱性の材料、例えばマイカや耐熱樹脂を用いることができる。
【0036】
上述の構成を含む第1の発熱体12の第1の加熱面の大きさは、収容空間Sを画定する壁面に対して一回り小さく設定されている。これにより、第1の加熱面の端縁と収容空間Sの端縁との間には、第1の加熱面が存在しない余白部分M1が設けられていてよい。この余白部分は、収容空間Sの外周囲のうち、少なくともその前方と、上方と、後方とに設けられていてよく、その長さは5~15mm、例えば10mm程度であってよい。このような余白部分M1を設けることにより、加熱器1の動作中にユーザが誤って加熱面に触れることを抑制できる。
【0037】
第2壁部20は、第1壁部10と収容空間Sを挟んで対称に配設されたものであり、その具体的な構成は、第1壁部10と同様のものとすることができる。すなわち、この第2壁部20は、その内部に第2の発熱体22を有し、左右方向に沿った所定の肉厚を有する板状の部材で構成することができる。この第2壁部20は、第2壁部本体21と、第2の発熱体22とを含むことができる。また、第2の発熱体22は、外周囲に固定片23Aを有しその表面が収容空間Sに収容されたレトルト食品PFに接触してレトルト食品PFを加熱する第2の加熱面として機能する第2加熱プレート23と、第2加熱プレート23の裏面側に設けられ熱源として機能する第2のヒータ24と、第2のヒータ24の裏面側に取り付けられて第2加熱プレート23及び第2のヒータ24を支持する第2のカバー部材25と、を含むことができる。上述した第2壁部20の各構成要素は、第1壁部10の対応する構成要素と、その設置の向きが異なる点以外は同様であってよい。そこで、第2壁部20の上述した各構成要素の詳細な構造等は第1壁部10において説明した内容を援用し、ここではその説明を省略するものとする。
【0038】
第1壁部10の第1壁部本体11と第1の発熱体12との間、及び第2壁部20の第2壁部本体21と第2の発熱体22との間には、第1及び第2発熱体12、22を収容空間S側に付勢する第1及び第2付勢部材16、26を配設することができる。詳しくは、第1付勢部材16は、第1加熱プレート13を第2壁部20の第2の加熱面に近接する方向に付勢し、第2付勢部材26は、第2加熱プレート23を第1壁部10の第1の加熱面に近接する方向に付勢するものであってよい。この第1及び第2付勢部材16、26としては、種々の付勢手段を採用できるが、本実施の形態においてはコイルスプリングを採用している。この第1及び第2付勢部材16、26は、一端部を第1及び第2壁部本体11、21の内側面に、他端部を第1及び第2の発熱体12、22の裏面、すなわち第1及び第2のカバー部材15、25の裏面の適所にそれぞれ接触するよう配設することができる。
【0039】
図3は、図1に示す加熱器にレトルト食品を上方から挿入する際の作動状態の一例を示す説明図であって、図3(A)はレトルト食品が収容空間に挿入される前の状態を示し、図3(B)はレトルト食品が収容空間に挿入された後の状態を示したものである。第1及び第2付勢部材16、26が上述の構成を含むことにより、第1及び第2の発熱体12、22は、収容空間S側に常時付勢された状態となる。このように収容空間S側に付勢された第1及び第2の発熱体12、22は、収容空間S内にレトルト食品PFが収容されていない状態において、第1及び第2壁部本体11、21の収容空間S側の端面11A、21Aに対して所定の長さだけ収容空間S側に突出していてよい。この第1及び第2の発熱体12、22のそれぞれの突出長さW1は、図3(A)に示すように、例えば3~6mm、好ましくは4~5mm、より好ましくは4.5mm程度であってよい。そして、第1及び第2の発熱体12、22は、この突出長さW1の分だけ、第1及び第2付勢部材16、26の付勢力に抗して互いに離間する方向に移動することができる。
【0040】
収容空間S内に突出する第1及び第2加熱プレート13、23の外周囲の、固定片13A、23Aが立設された角部のうち、収容空間Sの底部側に位置するものを除く角部には、面取りやフィレット等の加工が施されていると好ましい。このような加工を行うことで、収容空間S内にレトルト食品PFを挿入する際、角部にパウチPが引っ掛かることがなくなり、ユーザエクスペリエンスが向上する。
【0041】
加えて、収容空間Sの左右方向における幅W2は、レトルト食品PFの一般的な幅等に合わせて適宜調整されていてよい。具体的には、収容空間Sの幅W2は、17~27mmの間で適宜調整することができる。具体例を挙げれば、収容空間Sの幅W2を22mmに設定し、上述した第1及び第2の発熱体12、22のそれぞれの突出長さW1を4.5mmとした場合、第1及び第2の加熱面間の距離は最小で13mm、最大で22mmとなる。前述のように、第1及び第2の加熱面間の距離を13~22mmに調整することにより、本実施の形態に係る加熱器1は、少なくともその肉厚W3が13~22mmまでのレトルト食品PFであれば第1及び第2の加熱面の間に確実に挟むことができ、これを加熱することができるといえる。なお、レトルト食品PFはパウチPが比較的柔軟であることから、載置した際に内容物からの内圧に起因して外側へ広がるように変位する傾向がある。したがって、レトルト食品PFの肉厚W3が13mmに満たない場合であっても、加熱器1による加熱は可能である場合がある。
【0042】
また、第1及び第2付勢部材16、26は、第1及び第2の発熱体12、22の複数の異なる位置を押圧するように配設されていると好ましい。具体的には、図2に示すように、第1及び第2のカバー部材15、25の上下方向における中央部であって且つ前後方向に所定の間隔を空けた2箇所を付勢するように配設することができる。このように、第1及び第2付勢部材16、26によって第1及び第2の発熱体12、22が複数個所で付勢される構造を採用すると、収容空間Sにレトルト食品PFが挿入された際、第1及び第2加熱プレート13、23がパウチPの表面形状に追従して傾斜できるようになる。これにより、例えば収容された食品(具体的にはその具材)の形状に起因してパウチP表面に起伏がある場合であっても、第1及び加熱面はその起伏に沿って傾斜して接触するようになり、加熱面とパウチPとの接触面積を大きく確保することができる。これに関連して、第1及び第2の加熱プレート13の外周囲には、当該第1及び第2の加熱プレート13が傾斜できるように僅かな隙間が形成されているとよい。なお、第1及び第2付勢部材16、26の配置や数は上述のものに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0043】
また、第1壁部10及び第2壁部20の少なくとも一方には、収容空間Sに収容されたレトルト食品PFの温度を検出するための温度センサ17、27を設けることができる。本実施の形態においては、第1壁部10及び第2壁部20の両方に、それぞれ第1の温度センサ17及び第2の温度センサ27を設けたものを例示する。第1及び第2の温度センサ17、27は、第1及び第2のカバー部材15、25の上下方向及び前後方向の中央部に設けられた温度センサ取付部15M、25Mに取り付けられ、その検知面17A、27A(図3(A)参照)が、第1加熱プレート13の第1の加熱面として機能する表面とは反対側の裏面、及び、第2加熱プレート23の第2の加熱面として機能する表面とは反対側の裏面に当接しているとよい。本実施の形態に係る温度センサ17、27の検知面17A、27Aは、第1及び第2のヒータ14、24及び第1及び第2のカバー部材15、25にそれぞれ設けられた貫通穴14H、24H、15H、25Hを介して第1及び第2加熱プレート13、23の裏面に当接している。なお、温度センサ取付部15M及び貫通穴15Hは図2では他の部材に隠れて視認できない位置にあるため、符号の図示を省略している。
【0044】
さらに、第1壁部10及び第2壁部20には、第1及び第2の温度センサ17、27に隣接する位置に、第1及び第2のヒータ14、24の温度を測定するための第1のヒータ温度センサ18及び第2のヒータ温度センサ28を設けることができる。この第1及び第2のヒータ温度センサ18、28は、主に第1及び第2の発熱体12、22の熱暴走の発生の有無を監視するために設けられたものであってよい。第1及び第2のヒータ温度センサ18、28の検知面18A、28Aは、第1及び第2のヒータ14、24の裏面に接触することで第1及び第2のヒータ14、24の温度を測定することができるものであってよい。第1及び第2のヒータ温度センサ18、28及び上述した第1及び第2の温度センサ17、27には、例えば熱電対や測温抵抗体等の周知の温度センサを採用することができる。なお、検知面18Aは図2では他の部材に隠れて視認できない位置にあるため、符号の図示を省略している。
【0045】
本実施の形態に係る加熱器1は、上述した第1及び第2壁部10、20に加えて、第1及び第2壁部10、20の前方部分、後方部分及び底部分を覆う3つの筐体31、32、33をさらに含むことができる。このうち、前方筐体31及び後方筐体32は、図2に示すように、略U字状に成形された、例えば第1及び第2壁部本体11、21と同様の材料からなる部材で形成することができる。この前方筐体31及び後方筐体32のU字状に開口した前部開口31A及び後部開口32Aは、第1及び第2壁部10、20に取り付けられた際に収容空間Sに連通する大きさに予め調整されている。
【0046】
底部筐体33は、加熱器1の底面に配設され、各隅部に複数個(例えば4個)の脚33Aが取り付けられた、例えば第1及び第2壁部本体11、21と同様の材料等からなる部材で形成することができる。この底部筐体33上には、第1及び第2の発熱体12、22を動作させることで第1及び第2の加熱面の発熱量を制御する制御部40の主制御基板41を配設されていてよい。
【0047】
また、この主制御基板41の上部には、主制御基板41と収容空間Sとを区画するための仕切り板34(図3参照)が配設されていてよい。この仕切り板34は、底部筐体33と略平行に延在する板状体で構成することができ、その上面は収容空間Sの底面として機能することができる。したがって、この仕切り板34の上面は、前部開口31Aの下面及び後部開口32Aの下面と同一面状に位置していると、これらの部材間にゴミ等が溜まりにくく、清掃作業が容易となり好ましい。加えて、収容空間S内にレトルト食品PFを収容した際にレトルト食品PFの一部を前部開口31Aあるいは後部開口32Aから収容空間S外に露出させた場合において、レトルト食品PFの一辺を実質的に水平に支持することができるため、安定した加熱を実行できる。なお、図2においては仕切り板34の図示を省略している。
【0048】
本実施の形態に係る加熱器1に含まれる制御部40は、上述した通り、第1及び第2の加熱面からの発熱量を制御するものであって、主制御基板41を含むものであってよい。この主制御基板41は、主に第1及び第2の発熱体12、22に含まれる第1及び第2のヒータ14、24に接続されて第1及び第2の発熱体12、22による発熱量を制御することができるものである。これに関連して、主制御基板41は、第1及び第2の温度センサ17、27や第1及び第2のヒータ温度センサ18、28にも接続されているとよい。第1及び第2のヒータ14、24に電力を供給するために、主制御基板41はその先端に電源プラグを有する電源コード42に接続されていてよい。また、主制御基板41は、各種の制御を行う際に用いられるコンデンサや抵抗といった種々の電子部品が実装されていてよい。
【0049】
前方筐体31の右側表面には、加熱器1を動作させるためのスイッチが配設されていてよい。このスイッチとしては、例えば加熱器1のON/OFFを切り替え可能な電源スイッチ43と、加熱器1を用いてレトルト食品PFを加熱する際の目標温度を設定可能な温度設定スイッチ(温度入力部の一例)44とを含むことができる。この電源スイッチ43及び温度設定スイッチ44とは、前方筐体31の裏面に配設された制御部40の一部としてのスイッチ実装基板45に実装されていてよく、このスイッチ実装基板45は主制御基板41に連結されていてよい。
【0050】
温度設定スイッチ44は、レトルト食品PF加熱時の目標温度を段階的に選択することが可能なものとすることができる。具体的には、温度設定スイッチ44を操作することにより、(例えば、100℃、85℃、70℃、55℃といったように)予め定められた目標温度の中から所望の温度を選択できるようにするとよい。なお、予め定められる目標温度の数及び温度は、上記に限定されず、適宜変更することができる。ただし、目標温度として上述した55℃のように比較的低温の目標温度が設定されていると、ベビーフードのように低温加熱が必要なものの加熱も簡単に行えるため、より好ましい。
【0051】
上記に関連して、温度設定スイッチ44の上部には、少なくとも上述した温度設定スイッチ44を操作することにより選択された目標温度を表示可能な表示部46が設けられていてよい。本実施の形態に係る表示部46としては、選択可能な目標温度に対応する数(例えば4個)のLEDランプで構成されているものが例示されている。なお、この表示部46には、LEDランプ以外にも、例えば液晶モニタ等の他の表示手段を採用することができる。この表示部46を設けることにより、選択された目標温度を一見して把握することが可能となる。
【0052】
本実施の形態では、加熱器を動作させるスイッチとして、電源スイッチ43と温度設定スイッチ44とを例示したが、本開示のスイッチはこれら2つのみに限定されない。例えば、レトルト食品PFの加熱をより精度良く実施するために、レトルト食品PFの容量を入力することが可能なスイッチを採用することもできる。
【0053】
また、ユーザへ加熱器1の作動状態や第1及び第2加熱プレート13、23の温度を報知するために、加熱器1の筐体の適所にランプ47を配設するとよい。本実施の形態に係るランプ47は、第1及び第2加熱プレート13、23が高温である場合に点灯する警告灯としての機能を有するものであってよい。
【0054】
本実施の形態のランプ47は、その視認性を向上させるために、第2壁部20の上面の前端から前方筐体31の第2壁部20側の上端部へ延びるように配設している。ランプ47を前述のように配設すると、加熱器1の上面側と前面側のいずれから見てもランプ47を視認できる。したがって、例えば第1及び第2加熱プレート13、23が高温であることを報知するためにランプ47が点灯している場合に、ユーザがランプ47の点灯状態を見落とすことがほとんどない。したがって、高温の第1及び第2加熱プレート13、23にユーザが誤って触れてしまうといった事故を抑制することができる。
【0055】
本実施の形態では、ランプ47を第2壁部20の前端部分に1つ配置した場合を例示したが、上述した効果が期待できるものであれば、ランプ47の配置や形状、個数等は適宜変更することができる。具体的には、ランプ47は、第1壁部10又は第2壁部20の上面の外縁部の少なくとも1箇所に、第1壁部10又は第2壁部20の上面から第1壁部10又は第2壁部20の上面に隣接する他の一面へ延在するように配設されていればよい。
【0056】
上述した一連の構成を含む加熱器1は、図1に示すように、第1及び第2壁部10、20に挟まれた矩形状の収容空間Sの外周囲のうち、底面を除く3面が加熱器1の外部に開放されている。この開放した3面は、それぞれ上部開口30、前部開口31A及び後部開口32Aとなっている。そして、加熱器1を用いてレトルト食品PFを加熱する際には、レトルト食品PFを上述の上部開口30、前部開口31A及び後部開口32Aのいずれかから挿入することで、加熱器1の収容空間S内に収容することができる。
【0057】
図4は、図1に示す加熱器を用いて異なる大きさのレトルト食品を加熱する状態の一例を示す説明図であって、図4(A)は比較的大きなレトルト食品が挿入された状態を示し、図4(B)は比較的小さなレトルト食品が挿入された状態を示したものである。本実施の形態に係る加熱器1は、図4に示すように、大きさの異なる種々のレトルト食品PF1、PF2を加熱することができる。
【0058】
具体的には、例えば図4(A)に示すように、収容空間Sのいずれかの一辺よりも少なくともその一辺が長いレトルト食品(以下、「大きなレトルト食品」という)PF1を加熱する場合には、この大きなレトルト食品PF1は上部開口30、前部開口31A及び後部開口32Aのいずれかから収容空間S内に挿入することで、上下位置を特に考慮することなく、パウチPと第1及び第2の加熱面とが十分に接触した状態で大きなレトルト食品PF1の大部分を収容空間S内に収容することができる。このとき、大きなレトルト食品PF1のパウチPの一部は収容空間S内に収容されることなく、上部開口30、前部開口31A及び後部開口32Aのいずれかから加熱器1外に露出している。そのため、加熱器1による加熱が完了した際には、この露出している部分をレトルト食品PFを保持するための持ち手として利用することができ、大きなレトルト食品PF1を容易に収容空間S外に取り出すことができる。
【0059】
他方、例えば図4(B)に示すように、ベビーフードが収容されたパウチのように、そのうちの最も長い一辺の長さが収容空間Sのいずれの一辺よりも短いようなレトルト食品(以下、「小さいレトルト食品」という)PF2を加熱する場合には、上部開口30から収容空間S内に挿入すると小さいレトルト食品PF2のパウチP2全体が収容空間S内に入り込んでしまい、加熱器1からの取り出しが困難となり得る。しかしながら、本実施の形態に係る加熱器1は、上部開口30のみならず前部開口31A及び後部開口32Aをも含むため、小さいレトルト食品PF2を加熱する際はそのパウチP2の一部をこの前部開口31Aまたは後部開口32Aから加熱器1外に露出した状態で収容空間S内に挿入することができる。これにより、小さいレトルト食品PF2の加熱を可能としつつ加熱後の取り出しも簡単にできるようになる。
【0060】
本実施の形態に係る加熱器1は収容空間Sの外周囲の3面が外部に開放しているため、この収容空間Sへ挿入されるレトルト食品PFは、複数の向きで挿入され収容され得る。具体的には、例えば上述した大きなレトルト食品PF1(あるいは当該大きなレトルト食品PF1よりもさらに大きなレトルト食品)を加熱するにあたり、図4(A)に示したような、その長辺が上下方向に延在する向きとして収容空間S内に挿入することに代えて、その長辺が前後方向に延在する向きとして収容空間S内に挿入することもできる。この際、大きなレトルト食品PF1の長手方向中央部分が収容空間S内に位置するように調整すると、パウチP1内の最も食品が多く存在する部分に第1及び第2の加熱面を接触させることができ、より効率よくパウチP内の食品を加熱することができる。
【0061】
また、本実施の形態に係る加熱器1においては、収容空間S内にどのような大きさのレトルト食品PFが挿入された場合であっても、その加熱温度の制御を精度良く行う必要がある。そこで、本実施の形態に係る加熱器1においては、図4に示すように、第1及び第2の温度センサ17、27の検知面17A、27Aが第1及び第2加熱プレート13、23の裏面に当接し、第1及び第2加熱プレート13、23の温度を検知することで、レトルト食品PFの温度を推定する方法を採用している。当該推定を行うために、第1及び第2加熱プレート13、23の温度とレトルト食品PFの温度の相関関係を事前に計測して温度推定テーブルを作成しておくとよい。
【0062】
本実施の形態において、収容空間Sは、矩形状の空間で構成され、外周囲のうちその底面を除く3面が開放したものを例示したが、収容空間Sの外周囲のうち、少なくとも2面が開放していればよい。具体的にいえば、例えば上部開口30と前部開口31Aの2面や、上部開口30と後部開口32Aの2面、あるいは前部開口31Aと後部開口32Aの2面が開放していてもよい。また、主制御基板41の配置変更等は必要となるが、収容空間Sの底部が開放していてもよい。このように、収容空間Sの外周囲の2面以上を開放することで、開放している面が1つのみの場合に比べて、様々なサイズのレトルト食品の加熱が可能となる。
【0063】
次に、主に図3を参照して本実施の形態に係る加熱器1を用いてレトルト食品PFを加熱するプロセスについて簡単に説明する。初めに、図3(A)に示すように、被加熱対象物としてのレトルト食品PFを図中の矢印方向へ移動させ、加熱器1の上部開口30から収容空間S内へ挿入する。レトルト食品PFが収容空間Sへ挿入される過程で、第1及び第2の加熱面を構成する第1及び第2加熱プレート13、14は、レトルト食品PFのパウチPにより、第1及び第2付勢部材16、26の付勢力に抗して左右方向に押し広げられるように移動する。レトルト食品PFの収容空間Sへの挿入が完了すると、第1及び第2加熱プレート13、23は、図3(B)に示すように、第1及び第2付勢部材16、26からの付勢力によってパウチPに押し付けられた状態となる。
【0064】
図3(B)に示す状態とした後、ユーザが電源スイッチ43を操作し且つ温度設定スイッチ44を操作して所望の目標温度が設定されると、制御部40は、温度設定スイッチ44からの入力結果と、第1及び第2の温度センサ17、27の検出結果に基づいて、第1及び第2のヒータ14、24への通電を制御する。これにより、第1の発熱体12及び第2の発熱体22の発熱量が設定された目標温度に合わせて段階的に制御され、レトルト食品PFの目標温度への加温が実施される。このとき、制御部40は、好ましくは第1及び第2のヒータ温度センサ18、28の検出結果をも考慮して、第1及び第2のヒータ14、24への通電量を制御するようにしてもよい。
【0065】
レトルト食品PFが設定された目標温度に到達する等、所定の加熱終了状態を検知すると、制御部40は、第1及び第2のヒータ14、24への通電を停止し、図示しない報知手段(例えばスピーカーや照明)を用いて加熱が終了したことをユーザに報知する。ユーザは、加熱が終了したレトルト食品PFの収容空間S外に露出しているパウチPの一部を持って引き上げることで、レトルト食品PFを加熱器1から簡単に取り出すことができるであろう。
【0066】
以上説明した通り、本実施の形態に係る加熱器1によれば、加熱したいレトルト食品PFを収容空間Sに挿入し、目標温度を設定して動作させるだけで、レトルト食品PFを目標温度まで簡単に加熱することができる。加えて、本実施の形態に係る加熱器1は、収容空間Sの外周囲の2面以上が開放されているため、種々の大きさのレトルト食品の加熱が可能であると共に、その出し入れが容易に行える。加えて、収容空間S内へのアクセスが容易なため、内部の清掃も簡単であり、メンテナンス性が高い。
【0067】
なお、上記第1の実施の形態に係る加熱器1においては、第1及び第2壁部10、20が第1及び第2付勢部材16、26を含み、第1及び第2の発熱体12、22が左右方向に移動可能なものを例示したが、第1及び第2付勢部材16、26は有していなくてもよい。この場合は第1及び第2の加熱面が第1及び第2壁部10、20に固定されることとなるが、レトルト食品PFのパウチPは比較的柔軟な包装材からなるのが一般的なため、収容空間Sに収容した際には自重により左右方向に広がって第1及び第2の加熱面に接触させることができる。したがって、第1及び第2の加熱面が固定されていたとしても、市販されているレトルト食品PFの多くを加熱することが可能な加熱器を提供することができる。この加熱器であれば、その内部に可動部材がないため、メンテナンス性はさらに向上する。なお、この時の第1及び第2の加熱面の距離は、13~22mmの範囲の任意の距離、例えば16mmに調整されるとよい。
【0068】
<第2の実施の形態>
ところで、市販のレトルト食品PFの中には、パウチPの表面に内容物の種類や調理方法(例えば加熱時間や加熱温度)が直接印字されているものがある。このようなレトルト食品PFを加熱する際、加熱を中断することなくパウチP表面の印字内容を確認することができれば、加熱温度の確認や加熱を行ったユーザ以外の他のユーザによる加熱中のパウチPの内容物の把握ができ、利便性がより向上する。そこで、以下には本開示の第2の実施の形態として、加熱中のレトルト食品PFのパウチP表面を、加熱を中断することなく視認することを可能とした加熱器1Aについて説明を行う。なお、本実施の形態に係る加熱器1Aは、第1及び第2壁部50、60の構造を除き、第1の実施の形態に係る加熱器1と同様の構成を備えるものであるため、第1の実施の形態に係る加熱器1と同様の構成からなる部分には第1の実施の形態に係る加熱器1で用いたものと同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態に係る加熱器1とは異なる構成を中心に説明を行うものとする。
【0069】
図5は、本開示の第2の実施の形態に係る加熱器の一例を示す概略斜視図である。本実施の形態に係る加熱器1Aは、図5に示すように、所定の間隔を空けて対向するように配設された、その外観が直方体状の第1及び第2壁部50、60を含む。第1壁部50及び第2壁部60は、収容空間Sを挟んで対向するように配置されている点以外は同様の構成を含むものである。
【0070】
第1及び第2壁部50、60は、図5に示すように、その内部に第1及び第2の発熱体52、62を有し、左右方向に沿った所定の肉厚を有する板状の部材で構成することができる。第1及び第2壁部50、60は、第1及び第2壁部本体51、61と、第1及び第2の発熱体52、62とをそれぞれ含むことができる。
【0071】
第1及び第2壁部本体51、61は、第1及び第2の発熱体52、62の少なくとも一部を収容するものであって、合成樹脂等によって形成されていてよい。第1及び第2壁部本体51、61は、前方筐体31、後方筐体32及び底部筐体33と共に、加熱器1Aの筐体を構成するものであってよい。また、この第1及び第2壁部本体51、61の、加熱器1Aの左側面あるいは右側面を構成する部分の略中央部には、開口部51W、61Wがそれぞれ設けられていてよい。この開口部51W、61Wの形状は、第1及び第2の発熱体52、62の外形形状に対応した、例えば矩形状のものであってよい。なお、開口部51Wは図5では他の部材に隠れて視認できない位置にあるため、符号の図示を省略している。
【0072】
第1及び第2の発熱体52、62は、外観が略直方体状の部材であって、収容空間Sに隣接する面がそれぞれ第1及び第2の加熱面として機能するものであってよい。この第1及び第2の発熱体52、62は、設置の向きが異なる点以外は同様の構成を備えているものであるので、以下には両者を代表して第1の発熱体52の詳細な構成についてのみ説明する。
【0073】
図6は、図5に示す加熱器における第1の発熱体を分解した状態を示した分解斜視図である。第1の発熱体52は、図6に示すように、少なくともガラスヒータ54と、ガラスヒータ54を支持するカバー部材55と、を含むことができる。
【0074】
ガラスヒータ54は、透光性を有する矩形状のガラス板の表面及び裏面の少なくとも一方に透光性の導電膜を蒸着したもので構成することができる。このガラスヒータ54に含まれるガラス板は、収容空間Sへ挿入されるレトルト食品PFに接触する接触面を含むことから、第1の加熱面を有する加熱プレートとして機能し得る。このガラス板には、例えば石英ガラス、ホウケイ酸ガラスあるいはソーダガラスを採用することができる。
【0075】
カバー部材55は、少なくともガラスヒータ54を支持することが可能な所定の肉厚を有する額縁状の部材であってよい。このカバー部材55に包囲された領域が、加熱器1Aの外部から収容空間S内を視認するための窓として機能し得る。カバー部材55は、上述した第1のカバー部材15等と同様に、耐熱性の材料で構成することができる。また、このカバー部材55は、額縁状のカバー部材本体55Aと、カバー部材本体55Aの下部に取り付け可能なカバー部材底部55Bとを含むものであってよい。
【0076】
カバー部材本体55Aは、額縁状に構成されると共に、その内面の収容空間Sに近い側の面に沿ってガラスヒータ54が挿入支持されるガラスヒータ支持溝55Cが設けられたものとすることができる。また、このガラスヒータ支持溝55Cが設けられた側の反対側には、加熱器1Aの外側に近い側の面に沿って後述する透明ガラス59が挿入され支持される透明ガラス支持溝55Dが設けられていてよい。このカバー部材本体55Aの各支持溝にガラスヒータ54と透明ガラス59とが挿入されたとき、ガラスヒータ54と透明ガラス59との間には空気層からなる断熱空間55Sが画定され得る。
【0077】
カバー部材底部55Bは、カバー部材本体55Aの下部に取り付けられることで、カバー部材本体55Aの各支持溝に挿入されたガラスヒータ54及び透明ガラス59等を固定するものであってよい。また、ガラスヒータ支持溝55C及びカバー部材底部55Bのガラスヒータ54に接触する部分の適所には、ガラスヒータ54の導電膜に接続される図示しない電極が設けられていてよい。
【0078】
透明ガラス59は、カバー部材本体55Aの透明ガラス支持溝55Dに支持されるものであってよい。この透明ガラス59は、第1の発熱体52が第1壁部本体51に取り付けられた状態において、第1壁部本体51の開口部51Wから外部に露出し得るものである。この透明ガラス59には、ガラスヒータ54のガラス板と同様の材料を用いることができる。
【0079】
上記構成を備えることにより、カバー部材55に包囲された領域は、収容空間Sに近い側から遠ざかる方向に向かって、透光性のガラスヒータ54と、断熱空間55Sと、透明ガラス59とが順に配設されることになる。前述のものはいずれも透光性を有しているため、ユーザは、第1壁部本体11の外側から視認したとき、カバー部材55に包囲された領域を介して収容空間S及び収容空間S内に収容されたレトルト食品PFのパウチP表面を視認することが可能となる。また、ガラスヒータ54と透明ガラス59との間に断熱空間55Sが設けられていることにより、透明ガラス59にガラスヒータ54からの熱が伝わり難くなり、透明ガラス59に触れたユーザが火傷することを防止できる。
【0080】
また、第1壁部本体51と第1の発熱体52との間には、第1の発熱体52を収容空間S側に付勢する1乃至複数(本実施の形態においては2つ)の第1付勢部材56を配設することができる。この第1付勢部材56は、例えばコイルスプリングで構成することができ、ガラスヒータ54を第2壁部50側に付勢するものであってよい。この第1付勢部材56は、一端部を第1壁部本体51の開口部51Wの周囲の内側面に、他端部をカバー部材55に設けられたスプリング支持部55Eにそれぞれ接触するよう配設することができる。
【0081】
さらに、第1の発熱体52は、収容空間S内に挿入されたレトルト食品PFのパウチPに接触する検知面57Aを有する第1の温度センサ57と、ガラスヒータ54の裏面側に接触する検知面58Aを有する第1のヒータ温度センサ58とを含むことができる。第1のヒータ温度センサ58は、上述した第1の実施の形態に係る加熱器1の第1のヒータ温度センサ18と同様の構成を有していてよい。
【0082】
カバー部材本体55Aには、第1の温度センサ57及び第1のヒータ温度センサ58を取り付けるための温度センサ取り付け部55Mが設けられているとよい。この温度センサ取り付け部55Mは、収容空間S内に挿入されるレトルト食品PFに確実に接触でき、且つ収容空間S内の視認性を低下させないよう、カバー部材55の前後方向における中央部であって且つ上下方向における中央部よりも下方に配設されているとよい。なお、本実施の形態に係る第1の温度センサ57には、その検知面57Aをレトルト食品PFに直接接触させて温度を検知するものを例示したが、上述した第1の実施の形態に係る第1及び第2の温度センサ17、27と同様に、その検知面57Aがガラスヒータ54に含まれる加熱プレートの加熱面の裏側に当接するようにしてもよい。その場合は、第1の温度センサ57の検出結果からレトルト食品PFの温度を推定するために、上述した温度推定テーブルを予め準備しておくと良い。
【0083】
上述した構成を備える第1の発熱体52は、収容空間S内にレトルト食品PFが挿入されたことにより第1付勢部材56の付勢力に抗して押し広げられた際、透明ガラス59が配設された側の端部が、第1壁部本体51の開口部51Wから突出するように形成されていてよい。これに関連して、第1の発熱体52のカバー部材55の外形形状は、開口部51Wを通過可能な形状を有するとよい。このように、第1の発熱体52が移動した際に第1壁部本体51の開口部51Wから突出するように形成すると、使用状態でないときの加熱器1Aを小型にすることができる。
【0084】
以上説明した通り、本実施の形態に係る加熱器1Aによれば、第1及び第2壁部50、60に窓が形成されることにより、加熱中のレトルト食品PFのパウチP表面を、加熱を中断することなく視認することができるようになる。
【0085】
なお、本実施の形態に係る加熱器1Aにおいては、第1及び第2の発熱体52、62の両方にガラスヒータ54を含む構成を採用した場合を例示したが、第1及び第2の発熱体52、62のいずれか一方がガラスヒータ54を含む構成を有していればよい。したがって、例えば第2壁部60は第1の実施の形態に係る加熱器1の第2壁部20と同様の構成としてもよい。
【0086】
<第3の実施の形態>
上述した第1及び第2の実施の形態に係る加熱器1、1Aは、いずれも第1及び第2壁部が互いに実質的に平行となるよう、両壁部が並列に配設されており、レトルト食品PFのパウチPを2つの加熱面を用いて左右方向から挟持して加熱する構造を有するものである。しかし、本開示はこのような構造に限定されない。そこで、以下には本開示の第3の実施の形態として、第1及び第2壁部が平行でない加熱器1Bについて、説明を行う。
【0087】
図7は、本開示の第3の実施の形態に係る加熱器の一例を示す概略斜視図であって、図7(A)はレトルト食品を加熱する前の状態を示したものであり、図7(B)はレトルト食品を加熱している状態を示したものである。本実施の形態に係る加熱器1Bは、図7に示すように、内部に発熱体72、82を含み、レトルト食品に接触してレトルト食品PFを加熱する第1及び第2の加熱面が形成された第1及び第2壁部70、80が実質的に平行には配設されておらず、第1及び第2の加熱面の上方の端部が互いに離間する方向に傾斜して配設されている。
【0088】
本実施の形態に係る加熱器1Bの第1及び第2壁部70、80は、前述した第1の実施の形態に係る加熱器1の第1及び第2壁部10、20と同様に、第1及び第2壁部本体71、81と、第1及び第2の発熱体72、82とを含むものであってよい。そして、第1及び第2の発熱体72、82の互いに対向する面が第1及び第2の加熱面を構成してよい。また、第1及び第2壁部本体71、81は、略V字状に形成された前方筐体91及び後方筐体92と連結されて、加熱器1Bの筐体を構成していてよい。第1及び第2壁部70、80の詳細な構成については第1及び第2壁部10、20のものと概ね同様であるので、重複する記載を避けるためのここではその詳細な説明を省略する。
【0089】
上述した第1及び第2の加熱面は、図7(A)に示すように、その上側の端部が互いに離間するように延在しており、両加熱面のなす角度θは、例えば30~50°の範囲内で調整されていることが好ましい。このような角度範囲で第1及び第2の加熱面が取り付けられていることにより、本実施の形態に係る加熱器1Bの収容空間Sは、上方に向かって大きく解放された空間となっている。
【0090】
上述したように、平行でない第1及び第2の加熱面を含む加熱器1Bを用いてレトルト食品PFを加熱する場合には、図7(B)に示すように、レトルト食品PFの中央部分を折り曲げた状態で、収容空間Sに挿入するとよい。折り曲げられた状態で収容空間Sに挿入されたレトルト食品PFは、第1及び第2の加熱面上に載置された状態となり、第1及び第2の加熱面に接触している下側の一面が加熱される。
【0091】
上述した通り、本実施の形態に係る加熱器1Bによれば、第1及び第2の加熱面が傾斜した状態で取り付けられていることにより、レトルト食品PFは折り曲げられた状態で収容空間Sに収容される。これにより、加熱器1Bはレトルト食品PFを確実に保持しつつ、加熱することができる。また、加熱器1Bは、その加熱面上にレトルト食品PFの一方の面が載置できればレトルト食品PFの加熱は可能であるので、加熱器1B自体を小型化することができる。
【0092】
また、加熱器1Bのように、加熱面が傾斜して配設されたものの場合には、レトルト食品PFのパウチPの大きさに合わせて(例えば付勢部材等を用いて)加熱面を動作させる必要がないため、加熱器1Bの構造がシンプルになる。さらには、加熱面が情報に向かって大きく解放しているため、加熱面の掃除がより簡単に行える。
【0093】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0094】
1、1A、1B 加熱器
10、50、70 第1壁部
11、51、71 第1壁部本体
12、52、72 第1の発熱体
13 第1加熱プレート
16、56 第1の付勢部材
17、57 第1の温度センサ
20、60、80 第2壁部
21、61、81 第2壁部本体
22、62、82 第2の発熱体
23 第2加熱プレート
26 第2の付勢部材
27 第2の温度センサ
30 上部開口
31A 前部開口
32A 後部開口
40 制御部
41 主制御基板
43 電源スイッチ
44 温度設定スイッチ(温度入力部の一例)
46 表示部
47 ランプ
54 ガラスヒータ(導電膜及び加熱プレートの一例)
55 カバー部材(窓の一例)
59 透明ガラス
PF、PF1、PF2 レトルト食品
P、P1、P2 パウチ
S 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7