(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】収縮を改善した螺旋状ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/88 20060101AFI20240426BHJP
A61F 2/91 20130101ALI20240426BHJP
【FI】
A61F2/88
A61F2/91
(21)【出願番号】P 2022546385
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 IB2020000165
(87)【国際公開番号】W WO2021165714
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-09-30
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511245271
【氏名又は名称】メディノール リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDINOL LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】弁理士法人MM&A
(72)【発明者】
【氏名】リヒター、ヨーラム
(72)【発明者】
【氏名】ベロブロヴィ、イゴール
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/045101(WO,A1)
【文献】米国特許第06331189(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/88
A61F 2/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内デバイス(100)であって、
前記血管内デバイスは、管状形状を有し、前記血管内デバイス(100)の長手方向(L)に沿って第1端(105a)から第2端(105b)に延在する連続要素(105)を含み、
前記連続要素(105)は、収縮された送達時直径及び拡張された留置時直径を有し、前記血管内
デバイス(100)の螺旋方向(H)に配向された複数の巻線(115)を有し、
前記巻線(115)は、複数の支柱(120)及び複数のループ(125)を含む起伏パターンを有し、前記ループ(125)は、約180度のターンを有する起伏パターンの部分であり、前記ループ(125)の各端は、
第1端及び第2端を有する支柱(120)の
一端(120c)に連結され
ることで対の支柱(122)を形成し、
前記螺旋方向(H)における隣接ループ(125)は、前記長手方
向に垂直な
軸に対して軸方向にオフセットして
、位置合わせ(A)のジグザグ状パターンを形成し、
少なくとも1つの支柱(120)は、湾曲支柱であると共に、前記収縮された送達時直径において、前記湾曲支柱(120)の長手方向に沿った湾曲パターン(130)を有
し、
前記湾曲パターン(130)は、第1湾曲領域(135a)及び第2湾曲領域(135b)を含み、前記第1湾曲領域(135a)及び前記第2湾曲領域(135b)は、前記湾曲支柱(120)の各端から前記湾曲支柱(120)の中間部に向かって延在する互いに反対向きの湾曲部を有し、
前記隣接ループの位置合わせのジグザグ状パターンは、前記螺旋方向において前記第1湾曲領域及び前記第2湾曲領域に隣接するループが、送達時直径において前記第1湾曲領域及び前記第2湾曲領域に位置合わせされてこれら湾曲領域内にそれぞれ収納されて収納構成を形成するように配置される
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の血管内デバイス(100)において、
前記湾曲支柱(120)の長さが、凹状カーブと凸状カーブとを有す
る
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項3】
請求項2に記載の血管内デバイス(100)において、
前記第1湾曲領域(135a)は、前記対の支柱(122)に連結された前記ループ(125)の端から延在し、
前記湾曲支柱(120)の前記第1湾曲領域(135a)は、前記対(122)の対向する支柱に向かって内側に湾曲し、
前記第2湾曲領域(135b)は、前記対(122)の前記対向する支柱から外側に湾曲し、
前記湾曲支柱(120)は、前記
血管内デバイス(100)の収縮中に、前記第1湾曲領域(135a)及び前記第2湾曲領域(135b)が実質的に真っ直ぐにならないように、前記収縮された送達時直径及び前記拡張された留置時において、前記湾曲パターン(130)を維持する
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項4】
請求項
1に記載の血管内デバイス(100)において、
前記対の支柱(122)における前記支柱(120)は、異なる長さを有し、それにより、前記隣接ループ(125)の位置合わせ(A)のジグザグ状パターンを形成するのに寄与し、
前記対の支柱(122)は、前記螺旋方向(H)における隣接支柱が異なる長さを有するように長い支柱(120a)及び短い支柱(120b)を含み、
前記長い支柱(120a)は、前記短い支柱(120b)の支柱長よりも長い支柱長を有する
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項5】
請求項
4に記載の血管内デバイス(100)において、
前記長い支柱(120a)及び前記短い支柱(120b)の少なくとも一方は、その長手方向に沿って前記湾曲パターン(130)を有する
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項6】
請求項
5に記載の血管内デバイス(100)において、
前記対の支柱(122)における前記長い支柱(120a)は、前記第1湾曲領域(135a)及び前記第2湾曲領域(135b)を有し、
前記対の支柱(122)における前記短い支柱(120b)は、直線状であり、前記第1湾曲領域(135a)及び前記第2湾曲領域(135b)を有さず、
前記長い支柱(120a)における前記第1湾曲領域(135a)は、前記短い支柱(120b)に向かって内側に湾曲して前記湾曲パターン(130)を形成する
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項7】
請求項
5に記載の血管内デバイス(100)において、
前記対の支柱(122)における前記長い支柱(120a)及び前記短い支柱(120b)のそれぞれは、前記第1湾曲領域(135a)及び前記第2湾曲領域(135b)を有し、
前記長い支柱(120a)における前記第1湾曲領域(135a)と前記短い支柱(120b)における前記第1湾曲領域(135a)は互いに向かって内側に湾曲して前記湾曲パターン(130)を形成する
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項8】
請求項
1に記載の血管内デバイス(100)において、
前記収納構成は、前記血管内デバイス(100)が前記収縮された送達時直径に収縮されたとき、前記螺旋方向(H)において前記第1湾曲領域(135a)及び前記第2湾曲領域(135b)に隣接するループ(125d、125e)が、前記第1湾曲領域(135a)及び前記第2湾曲領域(135b)に実質的に接触するように構成されている
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項9】
請求項1に記載の血管内デバイス(100)において、
前記少なくとも1つの支柱(120)は、変化する幅を有し、
前記支柱(120)の中間部付近の幅は、前記支柱(120)の端付近の幅よりも小さく、
前記ループ(125)の幅は、前記支柱(120)の任意の部分の幅よりも大きい
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項10】
請求項1に記載の血管内デバイス(100)において、
前記複数の巻線(115)の各々の巻線は、相互接続されて間にセル(117)を形成する第1バンド(115A)及び第2バンド(115B)を含む2つの相互接続されたバンド(115A、115B)を備える
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項11】
請求項
10に記載の血管内デバイス(100)において、
前記第2バンド(115B)に相互接続された前記第1バンド(115A)は、前記巻線(115)における前記第2バンド(115B)と位相ずれしており、
隣接する巻線(115)における非相互接続の隣接する第1バンド(115A)及び第2バンド(115B)は同相である
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項12】
請求項
10に記載の血管内デバイス(100)において、
前記連続要素(105)は、前記長手方向(L)において各巻線(115)の2つの相互接続バンド(115A、115B)を相互接続するリンク(119)をさらに含み、
前記リンク(119)は、湾曲部を有さない直線状のコネクタであり、前記2つの相互接続バンド(115A、115B)の間の隙間内に延在する
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項13】
請求項
12に記載の血管内デバイス(100)において、
前記巻線(115)を形成するために、前記リンク(119)は、前記長手方向(L)において隣接するループ(125)で前記第1バンド(115A)及び第2バンド(115B)を接続し、取付ループ(126)を形成する
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項14】
請求項
13に記載の血管内デバイス(100)において、
前記取付ループ(126)は、前記隙間が最小となるループ(125b)であり、
前記リンク(119)による前記巻線(115)の前記第1バンド(115A)及び前記第2バンド(115B)の接続は、前記第1バンド(115A)及び前記第2バンド(115B)に接する前記取付ループ(126、125b)において前記隙間が最小となる
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項15】
請求項
14に記載の血管内デバイス(100)において、
前記リンク(119)は、6つのループ(125)毎に配置されて前記取付ループ(126)を形成し、前記第1バンド(115A)及び第2バンド(115B)を相互接続する
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項16】
請求項2に記載の血管内デバイス(100)において、
前記血管内デバイスは、前記第1端(105a)に位置する第1エンドリング(110A)と、前記連続要素(105)の前記第2端(105b)に位置する第2エンドリング(105b)とをさらに備え、
前記第1エンドリング(110A)及び前記第2エンドリング(110B)は、隣接する前記巻線(115)から延在し、
前記第1エンドリング(110A)及び前記第2エンドリング(110B)は、周方向(C)に配向されており、前記長手方向(L)に対して前記血管内デバイス(100)の長手方向端(100a、100b)において直角状シリンダを形成している
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項17】
請求項
16に記載の血管内デバイス(100)において、
各エンドリング(110A、110B)は、前記長手方向(L)において相互接続された1つ又は複数の周方向端バンド(140A、140B、145A、145B)を含むと共に、前記対の支柱(122)に接続されたループ(125)の前記起伏パターンを含み、
前記1つ又は複数の周方向端バンド(140A、140B、145A、145B)は、前記周方向(C)において軸方向にオフセットしたループ(125)を形成するための異なる長さを有する支柱(120)を含む
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項18】
請求項
16に記載の血管内デバイス(100)において、
各エンドリング(110A、110B)は、前記位置合わせ(A)のジグザグ状パターンを有する少なくとも1つのループ(125)を含むと共に、前記湾曲パターン(130)を有する少なくとも1つの湾曲支柱(120)を含み、
前記血管内デバイス(100)が前記収縮された送達時直径に収縮されるとき、前記少なくとも1つのループ(125)は、前記周方向(C)において隣接する前記少なくとも1つの湾曲支柱(120)の前記第1湾曲領域(135a)及び前記第2湾曲領域(135b)のうちの1つに位置合わせされるように配置される
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項19】
請求項1に記載の血管内デバイス(100)において、
前記血管内デバイス(100)に対してエレクトロスピニングされたポリマー材料をさらに含み、
前記ポリマー材料が薬剤を含む
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項20】
請求項1に記載の血管内デバイス(100)において、
前記複数の巻線(115)における各々の巻線は、単一のバンド(115A又は115B)である
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項21】
請求項
17に記載の血管内デバイス(100)において、
前記巻線(115)における隣接ループの位置合わせ(A)のジグザグ状パターンは、均一なジグザグ形状を形成し、
軸方向にオフセットされた前記第1及び第2エンドリング(110A、110B)のループ(125)は不均一なジグザグ形状を形成し、
前記第1及び第2エンドリング(110A、110B)のループ(125)は波状の縁を形成する
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項22】
請求項
17に記載の血管内デバイス(100)において、
前記連続要素(105)の起伏パターンによって囲まれると共に、前記第1及び第2エンドリング(110A、110B)のうちの1つの起伏パターンによって囲まれた少なくとも1つの遷移セル(150、155a、155b)をさらに含む
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項23】
請求項
1に記載の血管内デバイス(100)において、
前記連続要素(105)の前記支柱(120)の全てが、前記湾曲パターン(130)を有する湾曲支柱である
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項24】
請求項
1に記載の血管内デバイス(100)において、
前記連続要素(105)の前記支柱(120)の少なくとも1つは、前記湾曲パターン(130)を有する湾曲支柱であり、残りの支柱(120)は、前記湾曲パターン(130)を有さない直線状支柱である
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項25】
請求項
17に記載の血管内デバイス(100)において、前記第1及び第2エンドリング(110A、110B)の前記支柱(120)の全てが、直線状支柱である
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項26】
請求項
18に記載の血管内デバイス(100)において、
前記第1及び第2エンドリング(110A、110B)の前記支柱(120)の全てが、前記湾曲パターン(130)を有する湾曲支柱である
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項27】
請求項
18に記載の血管内デバイス(100)において、
前記第1及び第2エンドリング(110A、110B)の前記支柱(120)の少なくとも1つは、前記湾曲パターン(130)を有する湾曲支柱であり、残りの支柱(120)は、前記湾曲パターン(130)を有さない直線状支柱である
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項28】
請求項1に記載の血管内デバイス(100)において、
前記湾曲支柱(120)の長手方向に沿った前記湾曲パターン(130)は、1つの湾曲領域(135a、135b)と、1つの直線状領域とを含む
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【請求項29】
請求項1に記載の血管内デバイス(100)において、
前記血管内デバイス(100)は、末梢ステント、冠動脈ステント、及びステントグラフト装置のうちの1つである
ことを特徴とする血管内デバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、米国非仮出願第16/794359号(2020年2月19日出願)の優先権及び利益を主張し、当該出願の全体は相互参照によりここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、例えば冠状動脈疾患(CAD:coronary artery disease)の結果として狭窄又は閉塞された管腔を開放し、血流を回復させ、及び/又は管腔の開通性を維持するために、例えば血管といった体内の管腔内に留置されるステントのような管腔内血管内デバイスに関する。より具体的には、本発明は、圧縮された又は収縮された形態及び/又は拡大・拡張された形態を有する血管内デバイス(ステントを含む。)に関する。
【背景技術】
【0003】
当該技術分野では様々なステントが知られている。典型的には、ステントは、メッシュ状の金属構造体であり、形状が管状であり、より小さな、拡張されていない直径から、より大きな、拡張された直径に拡張可能である。留置のために、ステントは、収縮された、拡張していない直径でカテーテルに保持された状態で、カテーテルの遠位部分に設けられることが通常である。その内部を摺動可能に延在するガイドワイヤによって案内されるカテーテルを使用して、拡張されていないステントは、血管又は胃腸系を通って意図された留置部位、例えば、血管又は冠状動脈に送達される。一旦ステントが意図された留置部位に到達すると、ステントは、典型的には、例えばステント内側のバルーンを膨張させることによる力によって、又は、例えば自己拡張型ステントの周囲からスリーブを除去してステントを径方向に拡張可能とすることでステントを自己拡張させることによって、径方向に拡張される。いずれの場合も、拡張したステントは管腔が再狭窄することに対抗し、それによって管腔の開通性を維持する。
【0004】
ステントは、金属製のチューブ又は平らなシートにステントパターンをレーザ切断することによって製造可能である。後者の場合、その後、シートは巻かれて、溶接、機械的係止又は他の方法により固定されてステントの管状構造を形成する。
【0005】
ある種のステントは、螺旋状又はコイル状ステントとして知られている。そのようなステントのデザインは、例えば、米国特許第6503270号及び第6355059号に記載されている。これらの全体は、参照により本明細書に組み込まれる。このステントのデザインは、コイルが、巻かれたストリップのセルから形成される螺旋状ステントとして構成され、セルは、ループに接続された支柱の交互配置から形成された一連の屈曲部を含む蛇行パターンを形成する。他の同様の螺旋状に巻かれたステント構造は、例えば、米国特許第8382821号、第9456910号、第9155639号、第9039755号、第9603731号に記載されているステントデザインのようなものとして、当該技術分野において知られており、これらの全体は、参照により本明細書に組み込まれる。これらのステントデザインは、平らな又は管状の金属からコイルが形成されると共に、各セルが、螺旋状に巻かれたコイルの波形パターンから形成される螺旋状ステントとして構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術のステントでは、長手方向(又は軸方向)の可撓性と径方向の強度の間にはトレードオフが存在することが通常である。さらには、狭い曲がりくねった脈管構造(例えば、小さな側枝)を通ってステントがより容易に送達されるように、及び、血管内において制御された埋込みの前に、ステントがカテーテルに対して移動しない又は早期に外れないように、カテーテルにおいてステントを強固に圧縮又は収縮する能力との間にもトレードオフが存在する。また、一般に、従来技術のステントデザインでは、ステントが拡張された際、ステントが血管の管腔を十分に支持するように十分な径方向強度を提供することと、血管の自然な曲率に容易に適合可能なように長手方向の十分な可撓性を提供することとの間にトレードオフが存在する。
【0007】
先行技術のステントにおける収縮又は圧縮された直径は、隣接する支柱、隣接するループ及び/又はそれらの組合せの間の干渉のために制限される。加えて、自己拡張可能なステントでは、隣接する支柱及び/又はループ間の干渉は、ステントが展開した際、完全に拡張することを妨げ得る高い応力/歪みの集中を支柱の一部にもたらす可能性がある。例えば、より小さい外径を実現しようとする試みにおいて、自己拡張型ステントがその弾性限界を超えて圧縮される場合、ステントは、永久変形に起因して、その所望の展開拡張径に戻らないであろう。
【0008】
従って、当該分野では、十分な径方向強度、高度の長手方向可撓性、及び血管の自然な湾曲及び動きに対する順応性を同時に備えるステントに関する継続的なニーズが存在する。並びに、小径の又は曲がりくねった管腔(例えば、冠状血管構造における側枝)を介する送達の向上を可能とする縮小された圧縮形態と、大径の管腔(例えば、冠状血管構造における主枝)における展開(留置)を可能とする拡大・拡張形態とを備えると共に、ステントの各部における低い応力/歪みの分布を維持するステントに関する継続的なニーズが存在する。そのため、従来のステントと比較して任意の臨床状況で使用することを可能としつつ、ステントに沿った最適な応力/歪み分布を達成するために、拡大された拡張時直径及び縮小された収縮時直径を有するステントのニーズが存在する。また、低減された収縮形態及び低減された応力/歪み集中を実現すると共に、隣接する支柱間の有害な相互作用を最小化するために、圧縮形態において隣接する支柱及び/又はループ間の干渉を制限するニーズが存在する。隣接する支柱間の有害な相互作用を最小化することには、例えば、(a)隣接する支柱間の接触によって引き起こされるステントコーティングの損傷を減少させること、(b)隣接する支柱間に挟まれるバルーンの材料によるバルーンカテーテルのバルーンの損傷の可能性を減少させること、(c)隣接する支柱間の相互作用に起因して支柱に加えられる応力を減少させること、及び/又は、(d)支柱対支柱の相互作用を減らすことにより収縮に必要な力を減少させることが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、拡大された拡張時直径及び/又は減少された収縮時直径を有するステントに関する。ステントは、収縮状態において、従来のステントと比較して、減少された外径を有する。本発明のステントは、ステントの収縮形状における湾曲支柱デザインを有し、このデザインは、任意の従来のステントの収縮時外径と比較して、収縮時外径を減少させる。収縮時直径の減少は臨床的に非常に重要であり、収縮の改善を可能にする。
【0010】
本発明に係るステントは、螺旋状に巻かれたループに接続された支柱の起伏(波状)パターンを有する連続要素を含む。一実施形態において、ステントの少なくとも1つの支柱は、ステントの少なくとも収縮状態の支柱デザインにおいて、1つ又は複数の湾曲部、カーブ又は起伏を有する。例えば、湾曲支柱デザインは、対向する凸状部及び凹状部に面する第1及び第2の湾曲した、カーブした又は角度付けされた領域を含むことができる。これらの対向する湾曲部又は角度は、支柱に沿った1つ又は複数の位置で互いに接続する。ステントが収縮(圧縮)されると、ループ(湾曲部(例えば、第1又は第2湾曲領域)に対向して位置合わせされている)は、対向する湾曲領域に近い所望の距離だけ移動されて、収納(入れ子)配置(nestled arrangement)を形成することで、従来のステントよりも小さい所望の収縮時直径を実現する。例えば、ループ及び対向する湾曲領域は、互いに実質的に接触するように移動又は収縮されてもよい。ここでの実質的な接触とは、ループと、対向する支柱の湾曲領域とが接触している状態又は近接している状態として定義される。ステントの収縮形態における収納構成は、従来のステントよりも低い収縮形状を有利に実現する。支柱内の湾曲領域が、収縮姿勢において、対向するループが収納される(入れ子で配置される)空間を形成するためである。本発明の湾曲支柱は、起伏を有する任意のステントデザインと共に利用することができる。
【0011】
1つ又は複数の支柱は、1つ又は複数の湾曲領域を含むことができる。湾曲領域は、収縮された送達時直径の要求に応じて、ステントの長さ方向に沿って分布される。一実施形態において、湾曲パターンは、第1湾曲領域及び第2湾曲領域を含むことができる。第1湾曲領域及び第2湾曲領域は、湾曲支柱の長さが、凹状カーブと凸状カーブとを有するように、湾曲支柱の各端から湾曲支柱の中間部に向かって対向して延在する。一実施形態において、連続要素の全ての支柱は、湾曲支柱とすることができる。別の実施形態において、連続要素は、支柱のいくつかが湾曲支柱であり、支柱のいくつかが直線状支柱であるように、混合支柱デザインを有することができる。さらに別の実施形態において、連続要素は湾曲支柱を含まない。この実施形態では、連続要素に接続された第1及び第2エンドリングが、湾曲支柱を有してもよい。
【0012】
螺旋方向における隣接ループは、長手方向に垂直な垂直軸に対して軸方向にオフセットして、ループを螺旋方向における隣接支柱の端に位置合わせさせる隣接ループの位置合わせのジグザグ状パターンを形成してもよい。一実施形態において、隣接ループの位置合わせのジグザグ状パターンは、血管内デバイスが収縮された送達時直径まで収縮されると、螺旋方向において第1湾曲領域及び第2湾曲領域に隣接するループが、第1湾曲領域及び第2湾曲領域に対して位置合わせされてこれら湾曲領域内にそれぞれ収納されて収納(入れ子)配置を形成するように配置される。収納構成は、ステントが送達時直径に収縮されたときに、螺旋方向において第1及び第2湾曲領域に隣接するループが、第1及び第2湾曲領域とそれぞれ接触又は近接するようなものであってもよい。
【0013】
支柱は、他の支柱とは異なる長さを有してもよい。一実施形態において、対の支柱は、様々な長さを含み、それにより、隣接ループの位置合わせのジグザグ状パターンに寄与する。対の支柱は、螺旋方向における隣接支柱が、異なる長さを有するように長い支柱と短い支柱とを含んでもよい。
【0014】
支柱は、異なる幅を有してもよい。例えば、支柱の中間部付近の幅は、支柱の端付近の幅よりも小さくすることができる。その逆も可能である。この実施形態では、ループの幅は、支柱の任意の部分の幅より大きくてもよい。
【0015】
ステントは、管状形状を有し、ステントの長手方向に沿って第1端から第2端まで延びる連続要素を含む。連続要素は、収縮された送達時直径及び拡張された留置時直径を有する複数の巻線を含むことができる。巻線は、特定用途に必要な任意の数のバンドを含んでもよい。例えば、巻線は、単一のバンドを含んでもよく、或いは、相互接続されることで巻線内にセルを形成することが可能な2つ、3つ又は4つ以上のバンドを必要に応じて含んでもよい。本明細書に記載された本発明の特徴には、拡大された拡張時直径及び/又は減少された収縮時直径に寄与する特徴が含まれるが、本発明の特徴は、任意の数のバンドを巻線に有するステントデザインに適用可能であることを理解されたい。例示的な一実施形態において、複数の巻線の各々の巻線は、相互接続されて間にセルを形成すると共に、ステントの螺旋方向に配向された第1バンド及び第2バンドを含む2つの相互接続されたバンドを備える。第1バンド及び第2バンドは、複数の支柱及び複数のループを含む起伏(波状)パターンを有してもよい。ループは、約180度のターンを有する起伏パターンの部分である。ループの各端は、支柱の端に連結されて対の支柱を形成する。
【0016】
ステントは、長手方向において各巻線の2つの相互接続バンドを相互接続するリンクをさらに含んでもよい。各巻線の2つの相互接続バンドは、直接接続により相互接続されてもよい。一実施形態において、リンクは、湾曲部を有さない直線状のコネクタであってもよく、また2つの相互接続バンドの間の隙間内に延在してもよい。リンク及び/又は直接接続による巻線の第1及び第2バンドの接続は、第1及び第2バンドに接するループにおいて、相互接続バンド間の隙間が最小距離となる場所で行ってもよい。巻線の第1及び第2バンドを接続させるループは、取付ループと呼ぶことができる。
【0017】
別の実施形態において、ステントは、前記第1端に位置する第1エンドリングと、前記連続要素の前記第2端に位置する第2エンドリングとを備えてもよい。第1及び第2エンドリングは、隣接する巻線から延在してもよい。第1及び第2エンドリングは、ステントの長手方向端において直角状シリンダを形成してもよい。各エンドリングは、長手方向に相互接続された1つ又は複数の周方向端バンドを含んでもよく、また、対の支柱に接続されたループの前記起伏パターンを含んでもよい。連続要素の巻線と同様に、周方向端バンドは、リンク及び/又は直接接続により相互接続されてもよい。一実施形態において、連続要素の巻線と、第1及び第2エンドリングとの間の遷移部は、連続要素並びに第1及び第2エンドリングの一方とにより形成された少なくとも1つの遷移セルを含んでもよい。
【0018】
また、連続要素と同様に、一実施形態において、第1及び第2エンドリングの支柱は、異なる長さを有し、周方向において軸方向にオフセットしたループを形成してもよい。これに代えて又はこれに加えて、連続要素の支柱で説明したのと同様に、第1及び第2エンドリングの支柱は、支柱の長さ方向に沿って、異なる幅を有してもよい。これに代えて又はこれに加えて、第1及び第2エンドリングのループは、支柱のあらゆる部位の幅とは異なる幅(例えば、より大きな又はより小さな幅)を有してもよい。
【0019】
第1及び第2エンドリングは、同様に、少なくとも1つの湾曲支柱を含んでもよい。ステントが送達時直径に収縮(圧縮)されると、少なくとも1つのループが、周方向においてループに隣接する湾曲支柱の第1及び第2湾曲領域の1つに位置合わせされてその中に収納されるように配置される。一実施形態において、第1及び第2エンドリングの全ての支柱は、湾曲支柱としてもよい。別の実施形態において、第1及び第2エンドリングは、支柱のいくつかが湾曲支柱であり、支柱のいくつかが直線状支柱である混合支柱デザインを有することができる。さらに別の実施形態において、第1及び第2エンドリングは、湾曲支柱を有しておらず、直線状支柱を有している。
【0020】
本明細書で開示された本発明は、冠状動脈ステントに関し得る。しかしながら、本明細書に開示された実施形態によるデバイスは、非冠動脈用途、例えば、末梢ステント、脳ステント又は他の非冠状動脈用途のためのステントとして有用であり得る。冠状動脈用途のために、ステントは、8~50mmの長さで変化し、1.5~6mmの展開直径を有してもよい。また、冠状動脈用途のために、ステントは、より少ない相互接続(例えばリンク又は直接接続)及びそれに伴うより大きなセルを備えるセルデザインを有してもよい。これにより、側枝へのアクセスを増加するために十分大きなセルを有するステントを実現して、多数の側枝を有する曲がりくねった冠状血管での使用に有利とすることができる。ステントのセルは、実質的にステントの全長に沿って、又は少なくともステントの本体(端部を除く)に沿って、同じ又は類似の大きさとすることで、全体としての同様の側枝へのアクセスを提供してもよい。相互接続の間隔又は数は、目標ステント直径又は所望のセルサイズに依存し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る切断加工後の構成のステントの平面図である。
【
図2】
図1のステントの連続構造における閉塞セルの拡大図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係るステントのループに接続された対の支柱の部分拡大図である。
【
図4】
図3の実施形態に係るステントの3次元モデルを、第1斜視方向から及び切断加工後の構成において示す図である。
【
図5】
図4のステントの3次元モデルを、第2斜視方向から及び切断加工後の構成において示す図である。
【
図6】
図4のステントの3次元モデルを、前記第1斜視方向から及び切断加工後の構成において示す図である。
【
図7】
図5のステントの3次元モデルを、前記第2斜視方向から及び切断加工後の構成において示す図である。
【
図8】
図4のステントの3次元モデルを、第3斜視方向から及び切断加工後の構成において示す図である。
【
図9】
図8のステントの3次元モデルを、前記第3斜視方向から及び切断加工後の構成において示す図である。
【
図10】
図4のステントを、収縮された送達形態で示す図である。
【
図11】
図5のステントを、収縮された送達形態で示す図である。
【
図12】
図6のステントを、収縮された送達形態で示す図である。
【
図13】
図7のステントを、収縮された送達形態で示す図である。
【
図14】
図8のステントを、収縮された送達形態で示す図である。
【
図15】
図9のステントを、収縮された送達形態で示す図である。
【
図16】
図4のステントを、拡大された展開形態で示す図である。
【
図17】
図5のステントを、拡大された展開形態で示す図である。
【
図18】
図6のステントを、拡大された展開形態で示す図である。
【
図19】
図7のステントを、拡大された展開形態で示す図である。
【
図20】
図8のステントを、拡大された展開形態で示す図である。
【
図21】
図9のステントを、拡大された展開形態で示す図である。
【
図22】本発明の実施形態のいずれかに係るステント(収縮状態であり且つポリマーコーティングがなされている。)を管状の状態で示す図である。
【
図23】
図22のステント(径方向に拡張状態であり且つポリマーコーティングがなされている。)を管状の状態で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明はステントに関し、特に、本発明のステントは、有利に設計された、曲がりくねった又は波状の支柱のパターンを提供することにより、既存のステントを改善する。支柱はループに接続され、ループは、減少した収縮形態及び/又は拡大した拡張形態をもたらすと共に、ステントに沿った最適な応力/ひずみ分布を実現する。ステントは、長手方向に可撓性を有すると共に、径方向に剛性であってもよい。ここで、長手方向の可撓性は、ステントの長手方向に延在するステントの軸の周りで屈曲するステントの能力として定義される。ループは、約180度ターン(すなわちUターン)を有する蛇行パターンの部分として定義される一方、支柱は、180度未満のターンの蛇行パターンの部分である。ループの各端部は支柱の端部に接続され、各ループは一対の支柱に接続されて、蛇行パターン又は波状パターンの1つの凹凸を形成する。
【0023】
本発明の特徴は、従来のステントと比較して、拡大された展開形状における増加された展開時外径及び/又は減少された収縮時外径を有するステントを、個別に又は組み合わせて有利に提供することである。
【0024】
具体的には、一実施形態では、ステントの蛇行形状の又は波状のパターンは、ステントの収縮状態において隣接するループ間の干渉を有利に制限又は回避するために、螺旋状に配向される。螺旋状配向により、隣接するループは、ステントの長手方向に垂直な軸に対して軸方向に有利にオフセットして、ジグザグ状パターンを形成する。螺旋状配向のジグザグ状パターンは、螺旋方向において隣接するループが扇状又は波状(scalloped)の縁又は輪郭を有さない均一なジグザグ状であってもよい。螺旋方向における隣接するループの位置合わせの代わりに、ジグザグ状パターンは、ステントの螺旋方向において隣り合うスタットループを有利に位置合わせ可能となる。これにより、収縮状態において隣接するループ間の干渉の一部を回避することが可能となる。ループは、隣接する支柱の端部と位置合わせされて配置されてもよい。ループは大きな回転半径を有するので、収縮状態のループの直径は依然として制限され、ループは、ステントの収縮状態における最大の部分である。
【0025】
波形パターンのループは、長さが異なる2つの支柱に接続されて、ステントの波形パターンが、交互に長い支柱と短い支柱とを含むようにしてもよい。また、支柱の長さを異ならせるこの配置は、ステントの収縮状態において隣接するループ間の干渉を有利に制限又は回避する。長い及び短い支柱の交互パターンは、横軸、すなわちステントの長手方向に垂直な軸に関して、隣接するループのジグザグ状又はオフセットパターンを有利に発生させることにより、ステントの縮小された収縮形状に寄与する。隣接するループのジグザグ状パターンは、収縮状態における隣接するループ間の干渉を有利に回避する。
【0026】
収縮形状を減少させることに加えて、支柱の長さを異ならせる構成は、拡大された拡張状態を可能にするという利点をさらに提供する。より長い支柱の長さは、展開されたときに、より短い支柱よりもより大きな直径に拡張することを可能にする。長い支柱及び短い支柱の交互配置を有するステントを提供し、各ループは、1つの長い支柱及び1つの短い支柱に接続されることにより、本発明のステントは、(長い支柱のために)拡大された拡張状態に有利に拡張し得ると共に、(少なくとも部分的には、ジグザグ状パターンに寄与する短い支柱のために)減少した収縮状態に有利に収縮することができる。また、長い支柱及び短い支柱の交互配置は、ステントの可撓性、並びに足場(scaffolding)及び血管壁の被覆に有利に寄与する又はこれらを向上する。
【0027】
異なる支柱の長さの配置は、ステントの特定用途に依存してもよく、また、ランダムに又は繰り返しの周期的パターンで変化してもよい。例えば、支柱の1つの対若しくはいくつかの対又は全ての対は、異なる長さの2つの支柱(例えば、1つの長い支柱及び1つの短い支柱)を有してもよい。支柱の1つ対又はいくつかの対が異なる長さの支柱を有する場合、支柱の残りの対は、同じ長さの2つの支柱を有してもよい。また、例えば、支柱の長さは、異なる支柱の対の間で相違してもよい。例えば、ある対の長い支柱は、他の対の長い支柱に対して異なる長さを有してもよく、及び/又はある対の短い支柱は、他の対の短い支柱に対して異なる長さを有してもよい。エンドリングにおける支柱の長さは、連続部分の支柱の長さに対して、同一の又は異なるパターンで相違させることができる。一実施形態において、エンドリングの支柱は、異なる長さを有していなくてもよい(すなわち、同じ長さであってもよい)一方、連続部分の少なくとも1つの支柱は、異なる長さを有してもよい。或いは、エンドリングの少なくとも1つの支柱は、異なる長さを有していてもよい一方、連続部分の支柱は、同じ長さを有していてもよい。
【0028】
本発明のステントの支柱は、1つ又は複数の湾曲部、例えば、支柱の各端部から、支柱の交点(例えば、支柱の中間部)に向かって、対向する湾曲で延在する第1及び第2湾曲部を有してもよい。一実施形態において、支柱は、特に収縮状態において、支柱が、支柱の一端から他端に向かって真っ直ぐではなく又は直線上でないように、湾曲し、カーブし又はアーチ状である。ループに接続された支柱の対に関し、ループに最も近い支柱の湾曲部の湾曲は、対における対向する支柱に向かって内側に(例えば凹状に)湾曲し得る一方、ループから最も通り支柱の湾曲部の湾曲は、対における対向する支柱から外側に(例えば凸状に)湾曲し得る。これにより、支柱は、凹状の屈曲部と凸状の屈曲部を有する。支柱の湾曲デザインは、ループの端に接続された支柱の端が、当該ループの中心に向かって内側に屈曲し、そして、ループの中心から外側に離れる湾曲構造としてもよい。支柱のこの湾曲パターンが存在して、収縮状態又は非拡張状態で維持されると共に、ステントの展開状態又は拡張状態で及び状態遷移の間、維持されて、湾曲部は実質的に真っ直ぐにならない。支柱における湾曲パターンは、ステントが収縮状態の際に安定状態又は収納状態である隣接するループが入り込むための空間又は中空部を形成する。これは、収縮状態において、ステントの緊密な収納又は圧縮を有利に可能とする。湾曲した支柱パターンは、ステントが収縮状態に圧縮されている際、螺旋方向においてループに隣接する又は対向するステントの湾曲部(例えば凹部)にループが収納されることを可能とする。これにより、減少された収縮状態を有利に実現する。収縮状態における少なくとも1つの湾曲支柱を有する本発明のステントは、収縮時又は収縮中に実質的に直線状である又は実質的に直線状となる支柱を有する従来のステントの収縮時直径よりも小さな収縮時直径を有する。なぜならば、直線状の又は実質的に直線状の支柱では、本発明の有利な収納構成を許容しないためである。
【0029】
湾曲した支柱の数及び/又は配置は、湾曲した支柱の数が、ステントの収縮した、送達時の直径に反比例するステントの特定用途に依存してもよい。例えば、冠状血管用のステントは、周辺用のステントよりもより湾曲した支柱を有してもよい。なぜならば、冠状血管の生体構造は周辺血管の生体構造よりも狭く、そのため、周辺血管の生体構造での使用に必要な収縮形状よりも小さな収縮形状が必要となるためである。収縮された及び/又は拡張された構成において、本発明に係るステントは、非湾曲の又は真っ直ぐな/直線状の支柱、長い及び/又は短い支柱のための湾曲した支柱、異なる長さの支柱、並びに、同一の又は類似する長さの支柱(いくつかの支柱は、真っ直ぐな/直線状の支柱であり、その他は湾曲している)の任意の組合せを有してもよい。また、ステントは、ランダムなパターンで又は均一なパターンの繰り返しで、そのような異なる支柱長さを有してもよい。
【0030】
ステントの収縮形態において、少なくともいくつかの支柱が湾曲している一方、他の支柱は、均一又はランダムなパターンで湾曲していないこと(すなわち、真っ直ぐであること)が可能である。例えば長い支柱だけが湾曲していると言ったように、例えば交互の支柱が湾曲する。別の実施形態において、ステントの端部付近の支柱は湾曲しない一方、残りの支柱が曲がっていてもよい(これらの逆も可能である)。一対の支柱において対向する複数の支柱(すなわち、2つの連続する支柱)がそれぞれ1つ又は複数の湾曲部を有する一実施形態において、対向する支柱の湾曲部は、位相ずれ(例えば鏡像)をしていてもよいが、他の実施形態では必要ない。別の実施形態において、ステントの実質的に全ての支柱は、ステントの少なくとも収縮状態において、1つ又は複数の湾曲部を含み、全ての又は実質的に全ての支柱は真っ直ぐではない。「実質的に全ての支柱」は、ステントの支柱の約75%以上と定義することができる。
【0031】
螺旋方向に隣接するループのジグザグ状パターンと組み合わせた湾曲支柱のデザインは、隣接するループの端部と螺旋方向において位置合わせすることを可能とする。その結果、ステントが収縮形状に圧縮されている際、ループは、隣接する支柱の(例えば凹状の)湾曲部(隣接するループに対して内側に湾曲する)に対して(螺旋方向に)有利に位置合わせすること又は収納することが可能となる。ループ(そのターン半径のためステントパターンにおける最大部分である)は、隣接する支柱の(例えば凹状の)湾曲部に対して有利に収納される。そのため、ステントの収縮形状はさらに縮小し、隣接するループ間の干渉が回避されると共に、ループと隣接する支柱との間の干渉が減少する。従って、隣接するループのジグザグ状パターンは、隣り合うループにより生じる干渉を最小化することにより、収縮形状を縮小させる一方、湾曲支柱のデザインは、ループと隣接する支柱との干渉をさらに最小化することにより、収縮形状をさらに縮小させる。支柱の湾曲部が、隣接するループを少なくとも部分的に包囲するので(例えばループの一端からループの中間部まで包囲するので)、ループと隣接する支柱との間の干渉は減少する。湾曲支柱のデザインは、支柱の湾曲部(螺旋方向において、隣接するループと対向する)が、隣接するループに対して相補的な形状を有し、ループが、隣り合う支柱の対向する湾曲部との間で、相補的な又は鍵と鍵穴の(lock-and-key)係合をすることを可能にする。従って、湾曲部分が、隣接するループに有利に適合し、隣接するループを収納するので、本発明の収縮形状はさらに縮小される。そのため、支柱の湾曲部分は、ステントの収縮形状において、湾曲支柱パターン(及び真っ直ぐではない又は直線状ではない)を有利に維持する。
【0032】
ステントに付与された応力/ひずみ力を再分配してステントの永久変形を防止しつつ、ステントの完全な膨張又は完全な圧縮を可能にすることで、ステントに沿った最適な応力/ひずみ分布がさらに有利に達成され得る。ステントに付与された応力/歪みは、ステントの異なる部分の相対的な強度又は可撓性を変化させることによって(例えば、応力/歪みの力をループから離れる方向に再分配することによって)、有利に再分配することができる。例えば、ステントの異なる部分を形成するために使用される材料の量は、当該部分の相対的強度又は可撓性を変化させるように変えることができる。ステント部分の強度又は可撓性のこの変化の達成は、ループ部分の厚さ又は幅を増加させて、支柱部分に対するこれらの部分の強度を増加させ、それによって、ループ部分から離れる応力/歪み力を再分配することによって実現可能である。これに代えて又はこれに加えて、両端から支柱の中間部に向かって支柱の幅を徐々に減少して、ループ部分から離れてステントの支柱部分の中間部分に向かって応力/歪み力をさらに再分配する。
【0033】
一実施形態において、ステントは、ポリマー材料を含んでもよい。ポリマー材料は、ステント上にエレクトロスピニングしてもよい。ポリマー材料は、ステントの複数の巻線の少なくとも2つを相互接続してもよい。ポリマー材料は、生分解性ポリマーであってもよいし、或いは別のポリマーであってもよい。一実施形態において、ポリマー材料は、その中に埋め込まれた薬物をさらに含んでもよい。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係るステント100を切断された形態で示すものであり、便宜上、長手方向に開いた平面図としている。使用に際し、ステント100は、管状の形状を有し、押出されたチューブ、又は管状の形状に巻かれた平らなシートから製造され得る。所望のステントのデザイン又はパターンは、押出しチューブに対してレーザ切断することで実現されてもよいし、或いは、平らなシートに対してレーザ切断又は化学的エッチングを行った上で、管状にすることで実現されてもよい。
図1のステント100は、切断された状態で示されており、ステント100が形成された際(すなわち製造された際)の中性的な形状であり、送達時直径まで収縮されておらず、留置時の展開直径まで拡張もされていない。
【0035】
ステント100は、ステント100の長手方向Lに沿って第1端105aから第2端105bまで延びる連続要素105を有する管状構造体である。連続要素105は、ステント100の螺旋方向Hに沿って螺旋状に配置されている。
図1に示すように、一実施形態において、連続的な管状構造体は、それぞれ第1端105a及び第2端105bから延在するように配置された第1エンドリング110a及び第2エンドリング110bを有する。第1及び第2エンドリング110A、110Bは、ステント100の円周の周りにおいて円周方向Cに延在する。ステント100の長手方向の端部100a、100bにおいて、第1及び第2エンドリング110a、110bは、長手方向Lに対して略直角又は90°に配置されて直角状シリンダを形成する。第1及び第2エンドリング110a、110bに対して略直角とは、連続要素105の螺旋方向よりも90°に近い角度の向きを意味する。別の実施形態(図示せず)において、ステント100は、第1及び第2エンドリング110a、110bを有さない連続要素105であり、ステント100の長手方向端100a、100bが第1端105a及び第2端105bであり、ステントの長手方向に対して直角のシリンダを形成しない。
【0036】
連続要素105は、複数の巻線115を含む。巻線115は、巻線115がステント100の長手方向Lに対して斜めの角度で配向されるように、第1端105aと第2端105bとの間で螺旋方向Hに連続的に配向されている。各巻線115は、1つ又は複数のバンドを含んでもよい。
図1に示された例示的な実施形態において、各巻線115は、相互接続された第1バンド115Aと第2バンド115Bとを含み、これにより、2つの相互接続バンド115A、115Bを形成する。第1バンド115A及び第2バンド115Bは、相互に接続されてその間にセル117を形成すると共に、セル117が第1端105aと第2端105bとの間にセルの螺旋を形成するようにステント100の螺旋方向Hに配向される。セル117によって占められる領域は、相互接続バンド115A、115Bの間の開放空間又はギャップである。
【0037】
第1バンド115A及び第2バンド115Bは、螺旋方向Hにおいて互いに略平行に延在するジグザグ状又は波状のパターンを有する。第1バンド115A及び第2バンド115Bの起伏は、山125a及び谷125bと呼ぶループ125のパターンによって互いに接続された支柱120を含む。
【0038】
ループ125は、約180度のターン(すなわちUターン)を有する起伏パターンの部分である一方、支柱120はそうではない。1つ又は複数の支柱120は、例えば180度未満のターンを有する1つ又は複数の湾曲部(例えば、1つ又は複数の湾曲領域)を有してもよい。支柱120のいくつかは、湾曲部を有さなくてもよい(すなわち、真っ直ぐな又は直線状の部材であってもよい。)。ループ125の各端は、支柱120の端に連結されており、それにより、ループ125に接続された対の支柱122を形成する。対の支柱122は、共通のループに接続された2つの支柱であり、巻線115内の螺旋方向Hにおいて互いに隣接している。
【0039】
湾曲した支柱デザインを有する支柱120の数及び/又は位置は、特定用途に応じて変化し得る。屈曲した支柱120をより多く有するステント100は、収縮形態の縮小効果がより大きくなる。なぜならば、本発明の湾曲支柱は、隣接するループ125と支柱120との間において(例えば、
図2及び
図3に示す第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bにおいて)、螺旋方向Hでの緊密な収納を可能にすると共に、隣接するループ150間の干渉(又は接触)を防止するためである。例えば、一般に、冠状血管の生体構造は、周辺血管の生体構造よりも狭く曲がりくねった血管を含む。そのため、冠状血管内に留置するためのステント100は、周辺血管内に留置するためのステント100よりも、湾曲した支柱デザインを伴うより多くの支柱120を有してもよい。湾曲支柱/直線状支柱を混ぜたデザインを有する一実施形態において、湾曲していない(すなわち直線状の)支柱120は、ステント100の長手方向端100a、100bにおいて又はその付近に配置することができる。例えば、第1エンドリング110A及び第2エンドリング110B及び又は巻線115において、連続要素105の第1端105a及び第2端105bに配置することができる。これに代えて又はこれに加えて、湾曲していない(すなわち直線状の)支柱120は、ステント100全体に亘ってランダムに又は均一に配置されてもよい。
【0040】
ループ125は、第1バンド115A及び第2バンド115Bの各々の螺旋方向Hにおいて山125a及び谷125bが交互に現れるパターンで配置されるジグザグ状パターンを形成する。山125aは、巻線115の対向する相互接続バンド115A、115Bに向かって湾曲するループ125であり、それがため、セル117の外側ループ125aである。谷125bは、巻線115の対向する相互接続バンド115A、115Bから離れるように湾曲するループ125であり、それがため、セル117の内側ループ125bである。谷125bは、相互接続バンド115A、115Bによって囲まれたセル117の中心に対して、長手方向Lに沿って、山125aよりも近い。セル117の中心は、第1バンド115A及び第2バンド115Bを相互接続してセル117を規定する2つの相互接続点の間に延在する点軸Pに沿った点である。ステントの各巻線115における相互接続の数、種類、及び/又は位置は、規則的な又は均一な間隔(例えば、
図1に示す螺旋状に隣接する谷125bの3番目の対毎)であってもよく、或いは、ランダムな間隔であってもよく、また、特定用途(例えば、冠動脈又は末梢血管の用途)に依存してもよい。相互接続部の一部又は全部は、ステント100の長手方向Lに沿って実質的に長手方向に延在してもよいが、他の方向(例えば、周方向及び/又は螺旋状)に沿って延在又は配向されてもよい。
【0041】
図1に示すように、巻線115における2つの相互接続バンド115A、115Bは、互いに実質的に位相がずれていてもよい。その場合、長手方向Lに沿って、第1バンド115A及び第2バンド115Bの山125aが互いに実質的に位置合わせされる又は互いに対向すると共に、第1バンド115A及び第2バンド115Bの谷125bが互いに実質的に位置合わせされる又は互いに対向する。この位相ずれの実施形態において、巻線115における第1バンド115A及び第2バンド115Bの位置合わせされた谷125bの間における(長手方向Lに沿った)セル117の長さに亘る距離(すなわち、開放空間又はギャップ)は、巻線115における第1バンド115A及び第2バンド115Bの位置合わせされた山125aの間におけるセル117の長さに亘る距離よりも短い。別の実施形態(図示せず)において、巻線115内の2つの相互接続バンド115A、115Bは、互いに実質的に同相であってもよい。その場合、長手方向Lに沿って、第1バンド115Aの山125aが第2バンド115Bの谷125bと実質的に位置合わせされる又は互いに対向する。別の実施形態において、ステント100は、巻線115内において位相が混合された相互接続バンド115A、115Bを有してもよい。その場合、巻線115内の一部又は少なくとも1つの相互接続バンド115A、115Bは、互いに位相がずれていてもよく、また、残りの巻線115内における残りの相互接続バンド115A、115Bが互いに実質的に同相とすることができる。
【0042】
図1に示すように、巻線115内の第1バンド115A及び隣接する巻線115内の第2バンド115Bは、互いに実質的に同相であってもよい。その場合、長手方向Lに沿って、第1バンド115Aの山125aが、隣接する巻線115における第2バンド115Bの谷125bと実質的に位置合わせされてもよい又は互いに対向してもよい。別の実施形態(図示せず)において、巻線115内の第1バンド115A及び隣接する巻線115内の第2バンド115Bは、互いに実質的に位相がずれていてもよい。その場合、長手方向Lに沿って、第1バンド115Aの山125aが、隣接する巻線115における第2バンド115Bの山125aと実質的に位置合わせされる又は互いに対向すると共に、第1バンド115Aの谷125bが、隣接する巻線115における第2バンド115Bの谷125bと実質的に位置合わせされる又は互いに対向する。さらに別の実施形態において、ステント100は、位相が混合された隣り合う巻線115を有してもよい。その場合、巻線115内の一部又は少なくとも1つの第1バンド115A及び隣り合う巻線115内の第2バンド115Bは、互いに同相でもよく、また、残りの隣接する巻線115における隣接する第1バンド115A及び第2バンド115Bは、互いに位相がずれていてもよい。
【0043】
ループ125は、
図1に示す実施形態の長手方向Lに対する垂直軸に対して軸方向にオフセットしている。ループ125の頂点(外側先端)は、隣接するループ125に接続された端において、隣接する又は対向する支柱120の端と位置合わせされている。螺旋方向Hにおいて隣り合うループの位置合わせAのジグザグ状パターンは、
図2において特定される。
図2において、ループ125の頂点125cは、螺旋方向Hにおいて、隣接する支柱120の端120cに位置合わせされる。位置合わせの他のジグザグ状パターンが、本発明のステント100に組み込まれてもよい。その際、ステント100の複数の巻線115は、位置合わせにおける一定のジグザグ状パターンを有してもよく、或いは、位置合わせにおける異なるジグザグ状パターン(例えば、異なる巻線115におけるもの、及び/又は同一の巻線115におけるもの)を有してもよい。
【0044】
図1において、対の支柱122は、共通のループ125に接続された異なる長さの2つの支柱120を含む。例えば、対の支柱122は、1つの長い支柱120aと1つの短い支柱120bとを含み、長い支柱120aの長さは、短い支柱120bの長さよりも長い。
図1において、長い支柱120a及び短い支柱120bの長さは、螺旋方向Hにおいて隣接するループ125が、ステント100の長手方向Lに対する垂直軸に対して軸方向にオフセットして、隣接するループの位置合わせAにおけるジグザグ状パターンを形成するような大きさである。ここで、(例えばその頂点125cにおいて)ループ125が、隣接する支柱120の端120cと位置合わせされるように配置されている。
【0045】
ステント100は、ステント100の残りの支柱120又は対の支柱122とは異なる長さを有する少なくとも1つの支柱120又は一対の支柱(122)を備えている。或いは、別の実施形態(図示せず)において、本発明のステントは、全て同じ長さの支柱を含んでもよい。
図1に示す実施形態において、長い支柱120a及び短い支柱120bは、螺旋方向Hにおいて交互に配置されている。支柱の長さは、第1及び第2エンドリング110a、110bにおいて同様に変化させてもよい。
図1に示す実施形態において、第1及び第2エンドリング110a、110bの少なくとも1つの支柱120は、第1及び第2エンドリング110a、110bの残りの支柱120とは異なる長さを有し、連続要素105の少なくとも1つの支柱120は、連続要素105内の残りの支柱120とは異なる長さを有する。
【0046】
図1のステント100は、ステント100の収縮形態の縮小を容易にする湾曲支柱デザインを有する少なくとも1つの支柱120を含む。 湾曲支柱のデザイン又はパターンは、支柱の長手方向に沿って1つ又は複数の湾曲部を有する少なくとも1つの支柱を含む。支柱の長さが複数の湾曲部を含む場合、
図1に示すように、少なくとも1つの支柱120は、ループ125によって連結された対の支柱122が、湾曲したパターン、構造又は形状130を形成するように互いに対向する少なくとも2つの湾曲部を含む。ステント100の収縮形態において、少なくとも2つの対向する湾曲部を有する少なくとも1つの支柱120の湾曲支柱デザインは、螺旋方向Hにおいて隣接するループ125(例えば、
図2の下側ループ125d及び上側ループ125e)が、2つの対向する湾曲部のそれぞれに収容することを許容し、それにより、減少された収縮時直径を実現する。これに代えて又はこれに加えて、ステント100の少なくとも1つの支柱120は、支柱120の長手方向に沿って湾曲形状130を形成することができる。これにより、ステント100の収縮態様において、螺旋方向Hにおける少なくとも1つの隣接するループ125(例えば、上側又は下側ループ125)が、支柱120の対向する湾曲部に収納されて、これにより、減少された収縮時直径を実現する。一実施形態(図示せず)において、少なくとも1つの支柱120は、支柱120が、支柱120の長手方向に沿った第1セクションに1つのカーブを有する一方、支柱120の残りの長さが、真っ直ぐである又は直線状である(すなわち、カーブが存在しない)湾曲支柱デザインを含む。これにより、螺旋方向Hにおいて隣接するループ125(例えば、上側又は下側ループ125)は、ステント100の収縮態様において、支柱120の湾曲した第1セクション内に収納される。(任意の又は全ての実施形態における)ステント100の少なくとも1つの支柱120における1つ又は複数の湾曲部は、ステント100の収縮態様において維持される。これにより、ステントが圧縮されている際又は収縮中に、1つ又は複数の湾曲部が実質的に真っ直ぐになることはなく、それにより、ステント100の収納構成及び減少された収縮時形状を実現する。
【0047】
図2は、
図1のステント100の連続要素105の密閉されたセル117の拡大図を示すものであり、ここで湾曲支柱デザインはより明確に識別可能である。少なくとも1つの支柱120の湾曲支柱デザインは、支柱120の各端120cから支柱120の中間部に向かって反対方向に延びる第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bを含む。ここで、各端120cは、ループ125に連続する支柱120の部分である。湾曲領域135a、135bの一方は凸状であることが好ましく、湾曲領域135a、135bの他方は凹状であることが好ましい。例えば、湾曲支柱デザインを伴う少なくとも1つの支柱120を有する対の支柱122において、支柱120の第1湾曲領域135aは、対の支柱122に結合されたループ125の端から延在し、対の支柱122における対向する支柱120に向かって内側に(例えば凹状に)湾曲して、湾曲構造130を形成する。支柱120の第2湾曲領域135bは、支柱120の中間部から、隣接するループ125の端まで実質的に長手方向Lに延在する。ここで、第2湾曲領域135bは、対122の対向する支柱120から外側に(例えば凸状に)湾曲して湾曲構造130を形成する。湾曲支柱デザイン(例えば、第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135b)は、螺旋方向Hにおいて隣接するループ125(例えば125d、125e)のための空間、隙間又は領域/容積を生成して、ステント100が圧縮されたとき又は収縮されて送達形態にあるとき、この生成された空間に係合させる(すなわち、湾曲領域135a、135bに収納させる)。例えば、収納構成は、ステントが収縮されると、第1湾曲領域135aと第1湾曲領域135aの下方(螺旋方向H)の隣接するループ125dが互いに近づくことで、収縮された送達態様において、下方の隣接するループ125dが第1湾曲領域135aに収納される配置である。同様に、ステントが収縮されると、第2湾曲領域135bと第2湾曲領域135bの上方(螺旋方向H)の隣接するループ125eが互いに近づくことで、収縮された送達態様において、上方の隣接するループ125eが第2湾曲領域135bに収納される。
図2に示すように、ステント100の切断された形態では、第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bは、(長手方向Lに対する垂直軸に沿って)隣接する下側及び上側ループ125d、125eに対してそれぞれ位置合わせすることができる(但し、収納はされない。)。同様に、ステント100が拡張され、留置され又は展開された形態において、第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bは、(長手方向Lに対する垂直軸に沿って)隣接する下側及び上側ループ125d、125eに対してそれぞれ位置合わせすることができる(但し、収納はされない。)。
【0048】
ステント100の収縮形態において、下側及び上側の隣接ループ125d、125eに収納されるように位置合わせ及び構成されている第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bは、
図2においてクロスハッチングで示されている。
図2に示すように、支柱120の一端において、第1湾曲領域135aは、螺旋方向Hにおいて下方の隣接ループ125dの頂点125cと位置合わせされる一方、支柱120の中間部の近くにおいて、第1湾曲領域135aは、下方の隣接ループ125dの一端に位置合わせされて、第1湾曲領域135aは、隣接する(例えば下側の)ループ125dと位置合わせされる。従って、螺旋方向Hにおける隣接ループ125は、長手方向Lに対する垂直軸に関して軸方向にオフセットされている、すなわちジグザグ状である。螺旋方向Hにおける隣接ループの位置合わせAのジグザグ状パターンは、ステント100が収縮形状まで収縮されたときに隣接ループ125間の重複が回避又は制限されるようにジグザグ状にされており、それにより、減少された収縮時直径を可能にする。また、隣接ループの位置合わせAのジグザグ状パターンは、ステント100が収縮形態まで収縮されたとき、隣接ループ125が、隣接する支柱120のそれぞれの対向する湾曲領域135a、135bと(長手方向Lに対する垂直軸に沿って)位置合わせされるように配置され、ループ125が、それぞれの対向する湾曲領域135a、135bの中に収納されて、それにより、収縮時直径をさらに減少させるものである。一実施形態において、収納構成は、少なくとも1つのループ125が、螺旋方向Hにおける対向する湾曲領域135a、135bと実質的に相補的な係合を行うものであってもよい。収納構成は、ステントが収縮態様にある際、少なくとも1つのループ125が、対向する湾曲領域135a、135bと接触して(又はそれに近い状態で)収納されるものであってもよい。
【0049】
収縮中又はステント100が収縮形態にある際、第1湾曲領域135及び第2湾曲領域135bは、実質的に真っ直ぐではなく、第1湾曲領域135及び第2湾曲領域135bは、それぞれの湾曲パターンを維持し、ステント100の減少された収縮時形状を可能にする。本発明の任意の又は全ての実施形態において、少なくとも1つの支柱120の第1湾曲領域135a及び/又は第2湾曲領域135bは、ステント100が収縮されているとき又はステント100が収縮態様にあるとき、湾曲されなければならない(例えば、湾曲状態を維持し又はより湾曲しなければならない。)。従って、螺旋方向Hの少なくとも1つの隣接ループ125は、対向する又はそれぞれの第1湾曲領域135a及び/又は第2湾曲領域135bを収納するように構成され、それにより、ステント100の収縮時直径を減少させる。一実施形態において、第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bは、ステント100の収縮時直径及び拡張時直径の際に湾曲される(すなわち真っ直ぐではない)。別の実施形態において、拡大された拡張時直径を実現するため、第1湾曲領域135a及び/又は第2湾曲領域135bは、ステント100の拡張及び展開形態において、より湾曲した収縮形態と比較してより真っ直ぐとなるように又は完全に真っ直ぐとなるように、実質的に真っ直ぐになってもよい。支柱120は、拡張形態において実質的に真っ直ぐであってもよく、及び/又は、支柱120は可撓性を有するため、収縮形態においてより湾曲するものであってもよい。
【0050】
第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bの湾曲量は、特定用途に依存してもよい。第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bにおけるより高い屈曲性は、収縮形態の縮小度合いをより大きくし得るため、周辺の用途と比較して冠状動脈の用途において好ましい。湾曲量は、第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bそれぞれの曲率角度(curvature angle)として定義されてもよい。曲率角度は、第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bにおける支柱120の湾曲によって形成され、ステント100の収縮形態において、隣接ループを内部に収納可能な隙間、空間又は中空をもたらす。曲率角度は、支柱120における1つ又は複数の湾曲部によって形成される隙間、空間又は中空の最大高さ137(
図3)をもたらす。曲率角度は、90度未満且つ0度よりも大きいものであり、35度よりも大きくてもよい。支柱120の第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bの湾曲量は同一であっても異なっていてもよい。また、異なる支柱120の湾曲量は同一であっても異なっていてもよい。一実施形態において、湾曲部の高さ137(
図3)(すなわち、第1湾曲領域135a及び/又は第2湾曲領域135bの湾曲によって形成される隙間又は空間の最大高さ137)は、0ミクロンより大きく、約150ミクロン未満であり、好ましくは少なくとも30ミクロンである。これに代えて又はこれに加えて、湾曲部の高さ137は、ループ125の幅(例えば、湾曲領域135a、135bの湾曲により形成される空間内に収納されるように構成された部分におけるループ125の幅)と実質的に同じか又は等しくてもよい。或いは、湾曲部の高さ137は、ループ125の幅139(
図3)の約半分としてもよい。
【0051】
同様に、湾曲支柱デザインを有する支柱120の数及び/又は位置は、特定用途に応じて変化し得る。ステント100は、図に示す実施形態では、第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bの少なくとも1つの湾曲支柱デザインを有する少なくとも1つの支柱100を含む。
図1及び
図2に示す実施形態において、例えば、湾曲/直線状の混合支柱デザインが交互のパターンで示されており、このデザインでは、対の支柱122それぞれが、反対方向に第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bを有する長い支柱120aと、直線状の短い支柱120bとを有する。
図1及び
図2に示す実施形態において、連続要素105は、湾曲した長い支柱120aと直線状の短い支柱120bとの交互パターンを含む一方、エンドリング110A、110Bの支柱120は、直線状であり湾曲していない。しかしながら、他の実施形態において及び特定用途に必要とされるように、エンドリング110A、110Bは、湾曲支柱デザインを有する少なくとも1つの支柱120を含んでもよい。また、交互パターンを有する他の実施形態において、短い支柱120bは湾曲支柱デザインを含み、長い支柱120aは直線状であってもよく、或いは、対の支柱122における支柱120の両方(例えば、長い支柱120a及び短い支柱120b)が、湾曲支柱デザインを有してもよい。
【0052】
図1及び
図2に示す実施形態において、第1バンド115A及び第2バンド115Bは互いに接続されて、少なくとも1つのリンク119によってセル117を形成する。リンク119は、ステント100の長手方向Lに延在し、及び/又は対角線方向(図示せず)に延在して、2つの相互接続バンド115A、115Bを形成し、セル117を包囲するコネクタ又は交差支柱(cross-strut)である。リンク119は、第1バンド115A及び第2バンド115Bの間の隙間内に延びることで、セル117を閉塞又は形成する。リンク119は、可撓性のコネクタであってもよく、それにより、ステント100が血管の生体構造の湾曲に適合することを可能にする。
図1に示す実施形態において、リンク119は、湾曲部がない真っ直ぐな又は直線状のコネクタである。或いは、別の実施形態(図示せず)において、リンク119は、1つ又は複数のループ又は湾曲部を有していてもよい。或いは、いくつかのリンク119が、直線状コネクタである一方、ステント100内の他のリンク119は、ループ又は湾曲部を有していてもよい。或いは、リンク119に代えて、第1バンド115A及び第2バンド115Bは互いに直接接続されて、リンク119なしにセル117を形成してもよい。別の実施形態において、ステント100は、巻線115において、リンク119と、第1バンド115A及び第2バンド115Bを相互接続する直接接続との組合せを有してもよい。他の相互接続及び直接接続を実現することも可能であり、本発明の範囲に含まれる。例えば、溶接、接着剤、金属コネクタ、ポリマー材料、又は、任意の形態の物理的結合手段若しくはその他の固定手段、インターロック手段若しくは接続手段である。
図2に示すように、相互接続が配置されるループ125は、取付ループ126と称し、相互接続が配置されていないループ125は、フリーループ127と称することができる。
【0053】
相互接続(例えば、リンク119及び/又は直接接続)の数、種類、及び/又は位置(例えば間隔又は配置)は、特定用途(例えば、冠状又は末梢血管の用途)に依存させてもよい。相互接続は、セル117の寸法及び形状を決定する。
図1及び
図2に示す例示的な実施形態において、巻線115内の第1バンド115A及び第2バンド115Bは、例えば、6つのループ125毎に(又は3つの谷125b毎に)リンク119によって接続される。従って、
図1及び
図2に示す例示的な実施形態において、各セル117は、(取付ループ126の間の)2つのリンク119、12の支柱120、及び10のフリーループ127によって囲まれている。また、例えば、
図2に示すように、取付ループ126は谷125bであり、リンク119は、第1バンド115Aの谷125bの頂点と第2バンド115Bの谷125bの頂点とを接続するように配置され、長手方向Lに沿って位置合わせされる。そのため、この実施形態では、リンク119は、第1バンド115A及び第2バンド115Bの間の隙間又は距離が最小となる位置で第1バンド115A及び第2バンド115Bを連結するように構成されている。従って、(2つの相互接続バンド115A、115Bの間の最大距離に及ぶことがあり得るリンクと比較して)より短いリンク119をもたらす。他の実施形態において、相互接続(すなわち、リンク119又は直接接続)の数、間隔及び/又は位置は、
図1及び
図2に示すものとは異なってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、リンク119は、互いに同一の幅を有してもよく、及び/又は第1バンド115A及び第2バンド115B又はその一部と同じ幅を有してもよい。或いは、リンク119は、特定用途のために適切であるように、異なる幅を有してもよい。例えば、第1バンド115A及び第2バンド115B(又はその任意の部分)よりも小さい幅を有してもよく、或いは、リンク119相互で異なる幅を有してもよい。より狭い幅を有するリンク119は、より広い幅を有するリンク119よりもステントに大きな可撓性を与える一方、より広い幅のリンク119は、ステントに対して、より大きな構造的完全性及び剛性をもたらす。リンク119は、リンクの長手方向に沿って均一な厚さを有してもよく、或いは可変の厚さを有してもよい。また、いくつかの実施形態において、複数のリンク119は、均一の又はランダムな間隔で、同一の長さ又は異なる長さを有する。冠状動脈ステント用の一実施形態において、リンク119は、0.05mm~0.15mmの間で長さを相違させてもよく、また、0.03mm~0.07mmの間で幅を相違させてもよい。周辺血管ステント用の他の実施形態において、リンク119は、0.5mm~1.0mmの間で長さを相違させてもよく、また、0.05mm~0.1mmの間で幅を相違させてもよい。リンク119の長さ及び幅は、ステントの用途(例えば、冠状血管用又は周辺血管用)、展開の種類(例えば、バルーン拡張型又は自己拡張型)及び/又はステントの目標直径に依存させてもよい。
【0055】
同様に、支柱120の長さ及び幅は、ステントの用途(例えば、冠状血管用又は周辺血管用)、展開の種類(例えば、バルーン拡張型又は自己拡張型)及び/又はステントの目標直径に依存させてもよい。全ての又はいくつかの支柱120は、互いに同じ幅及び/又は長さを有してもよく、或いは互いに異なる幅及び/又は長さを有してもよい。冠状動脈ステント用の一実施形態において、支柱120は、0.5mm~1.5mmの間で長さを相違させてもよく、また、0.04mm~0.1mmの間で幅を相違させてもよい。周辺血管ステント用の他の実施形態において、支柱120は、1.3mm~2.5mmの間で長さを相違させてもよく、また、0.08mm~0.14mmの間で幅を相違させてもよい。また、全ての又はいくつかの支柱120は、支柱120の一端から他端までの単一の幅を有してもよく、或いは、全ての又はいくつかの支柱120は、支柱120の一端から他端までの複数の幅を有してもよい。(支柱の長手方向に沿った任意の部分において)支柱120は、ループ125と同じ又は異なる幅を有することができる。
【0056】
図3は、本発明の別の実施形態に係るステント100のループ125に接続された対の支柱122の部分拡大図である。本発明のいくつかの実施形態において、対の支柱122の各支柱120は、湾曲支柱デザインを有しつつ同じ長さであってもよい。
図3に示す一実施形態において、対の支柱122における長い支柱120a及び短い支柱120bのそれぞれは、第1湾曲領域135a及び第2湾曲領域135bの湾曲支柱デザインを有し、ループ125を介して互いに接続される。長い支柱120aの湾曲支柱デザイン135a、135bは、対122における短い支柱120bの湾曲支柱デザイン135a、135bの実質的な鏡像(又は位相ずれしたもの)である。
図3に示す湾曲支柱デザインを伴う対の支柱122を有する実施形態において、湾曲支柱デザインを伴う対の支柱122は、直線状支柱デザインを伴う対の支柱122を伴う交互の又は他の均一な構成としてもよく、或いは、ランダムパターンな構成としてもよい。しかしながら、本発明の範囲又は精神から逸脱することなしに、湾曲支柱デザインは、対122における1つの支柱120のみに存在してもよく、及び/又は、対の支柱122は、それぞれ同じ長さであってもよい。
図3に示す実施形態のステントは、上述したような特徴、及び/又は、
図1及び
図2に示す実施形態に関連して説明したような特徴の全ての又はいくつかを任意の組合せで有してもよい。
図3は、支柱120a、120bが一端から他端までの異なる幅を有し、ループ125が、支柱120a、120bのいずれの場所よりも広い幅を有することで、ステント100に付与された応力/歪みの集中を、ループ125から離れて支柱120に向かうように最適に再分配する実施形態を示す。
図3に示すように、ループ125の幅139は約98ミクロンである一方、支柱120a、120bの幅は約79~83ミクロンの範囲で変化する。支柱120a、120bの幅は、支柱の両端から中間部に向かって徐々に減少又はテーパして、応力/歪み力をループ125から離れる方向に且つ支柱120a、120bの中間部に向かって再分配することができる。
【0057】
図1に戻り、連続要素105の第1端105a及び第2端105bは、ステント100の長手方向端100a、100bに第1及び第2エンドリング110a、110bを有する。第1エンドリング110Aは、長手方向Lにおいて相互接続された少なくとも1つの第1周方向端バンド140Aと少なくとも1つの第2周方向端バンド140Bとを有することで、ステント100の長手方向端100aに2つの相互接続周方向端バンド140A、140Bを形成することができる。同様に、第2エンドリング110Bは、長手方向Lにおいて相互接続された少なくとも1つの第1周方向端バンド145Aと少なくとも1つの第2周方向端バンド145Bとを有することで、ステント100の他方の長手方向端100bに2つの相互接続周方向端バンド145A、145Bを形成する。2つの相互接続周方向端バンド140A、140B、145A、145Bの両方は、巻線115の第1バンド115A及び第2バンド115Bと実質的に類似しているが、相違する点として、2つの相互接続周方向端バンド140A、140B、145A、145Bのそれぞれが、周方向Cにおいて、ステント100の円周の周りに配向されており、螺旋方向Hに配置されていない。周方向Cにおける2つの相互接続周方向端バンド140A、140B、145A、145Bは、ステント100の長手方向Lに対して(直角又は90°をなす)直角状シリンダで略配向された第1及び第2エンドリング110a、110bを形成する。ステント100の(エンドリング100A、100Bにおける)長手方向端100a、100bは、直線状の断面形状を有してもよい。(例えば、周方向Cにおける隣接ループの不均一なジグザグ状又はオフセットパターンのために)ステント100の長手方向端100a、100bが真っ直ぐでない場合、長手方向端100a、100bは、不均一である(例えば、波状の縁を有する)。これはランダム又は周期的なパターンであってもよい。
【0058】
共通の特徴に関して、エンドリング110A、110Bは、連続要素105に関して説明したのと同じ方法で、以下に例示する特徴の1つ又は複数を有する。すなわち、対の支柱に連結されたループの波状パターン(同相若しくは非位相の配向を含む。)、可変の(若しくは非可変の)支柱長さ、隣接ループのジグザグ状若しくはオフセットパターン、湾曲支柱デザイン(例えば、ループと支柱の湾曲領域の間の位置合わせ及び収納構成)、応力/歪み力の再分配(例えば、可変の支柱の幅、及び/若しくは、支柱の幅に対して相違する幅を有するループ)、セルのデザイン(リンク及び/若しくは直接接続の数及び/若しくは配置の間隔を含む。)、並びに/又は、連続要素105に関して上述したような他の任意の特徴、実施形態若しくは構成の任意の組合せである。
【0059】
第1及び第2エンドリング110a、110bは、それらに隣接する巻線115から延在する。連続要素105の巻線115から第1及び/又は第2エンドリング110A、110Bへの遷移部(transition)は、遷移セルと呼ぶ1つ又は複数のセルを生じさせ得る。遷移セルは、ステント100の他のセル(例えばセル117)とは異なっていてもよく、その相違点は、遷移セルは、第1及び/又は第2バンド115、115Bの波形パターン(すなわち、支柱及び/又はループ)の少なくとも一部により形成又は包囲されると共に、第1及び/又は第2周方向端バンド140A、140B、145A、145Bの波形パターン(すなわち、支柱及び/又はループ)の少なくとも一部により形成又は包囲される点である。従って、遷移セルは、連続要素105のみではなく且つ第1及び/又は第2エンドリング110A、110Bのみではなく、連続要素105並びに第1及び/又は第2エンドリング110A、110Bの両方により囲まれる。
【0060】
また、遷移セルによって囲まれた領域は、連続要素105のセル117によって囲まれた領域、及び/又は2つの相互接続周方向端バンド140A、140B、145A、145Bの間に形成されたセルによって囲まれた領域よりも寸法及び/又は形状が異なってもよい。第1エンドリング110A及び隣接する巻線115の間の1つ又は複数の遷移セルと、第2エンドリング110B及び隣接する巻線115の間の1つ又は複数の遷移セルは、例えば、数、寸法、形状、向き、位置、及び/又は相互接続の種類(例えば、リンク若しくは直接接続)に関して、同じであっても異なっていてもよい。また、第1エンドリング110A及び隣接する巻線115の間に複数の遷移セルを有する一実施形態において、複数の遷移セルは、相互に同じであっても異なっていてもよい。同様に、第2エンドリング110B及び隣接する巻線115の間の複数の遷移セルは、相互に同じであっても異なっていてもよい。
【0061】
図1は、例示的な第1、第2及び第3遷移セル150、155a、155bを示しているが、異なる寸法及び/又は構成を有する他の遷移セルは、連続要素105と第1又は第2エンドリング110A、110Bとの間に遷移セルが形成される限り、本発明の範囲内にある。連続要素105と第1又は第2エンドリング110A、110Bとの間の遷移は、
図1に示す例示的な第1、第2及び第3遷移セル150、155a、155b又は他の遷移セル(図示せず)の任意の1つ又は組合せを含むことができる。遷移セル150、155a、155bを境界とする支柱は、特定用途に望まれるように、連続要素105と第1又は第2エンドリング110A、110Bとの間の遷移において、所望の領域サイズを包囲するために、及び/又はステント100に所望の可撓性又は構造的剛性を付与するために、同じ又は可変の長さを有することができる。 遷移セル150、155a、155bの支柱の全部又はいくつかは、湾曲支柱デザイン、隣接ループのジグザグ状若しくはオフセットパターン、並びに/又はループから離れる応力/歪み集中の再分配(例えば、可変の幅を有する支柱、及び/若しくは、支柱よりも広い幅のループによるもの)を含むことができ、これらを含まないことも可能である。
【0062】
第1遷移セル150は、第1エンドリング110Aと、連続要素105の隣接する巻線115との間に形成される。第1遷移セル150は、第1バンド115A、第2バンド115B及び第1周方向端バンド140Aの波状パターンの一部によって囲まれている。第1遷移セル150は、第1周方向端バンド140A(例えばその支柱)と第1バンド115A(例えばその谷125bの頂点)との間の相互接続160(例えば直接接続)により囲まれる。また、第1遷移セル150は、第1バンド115A(例えばその谷125bの頂点)と第2バンド115B(例えばその谷125bの頂点)との間の相互接続162(例えばリンク119)によっても囲まれる。さらに、第1遷移セル150は、第2バンド115B(例えばその支柱120)と第1周方向端バンド140A(例えばその山の頂点)との間の相互接続164(例えば直接接続)によっても囲まれる。
図1に示す例示的な実施形態において、第1遷移セル150の境界は、第1バンド115Aの5つのフリーループ125によって接続された第1バンド115Aの6つの支柱120と、第2バンド115Bの1つの支柱120と、第1周方向端バンド140Aの5つのループによって接続された第1周方向端バンド140Aの6つの支柱とによって形成される。
【0063】
第2遷移セル155aは、第1遷移セル150と実質的に同様であるが、第2エンドリング110Bと、連続要素105の隣接する巻線115との間に形成される。第2遷移セル155aは、第1バンド115A、第2バンド115B及び第1周方向端バンド145Aの波状パターンの一部によって囲まれている。第2遷移セル155aは、第1周方向端バンド145A(例えばその支柱)と第2バンド115B(例えばその谷125bの頂点)との間の相互接続170(例えば直接接続)により囲まれる。第2遷移セル155aは、第1バンド115A(例えばその谷125bの頂点)と第2バンド115B(例えばその谷125bの頂点)との間の相互接続172(例えばリンク119)によっても囲まれる。また、第2遷移セル155aは、第1バンド115A(例えばその支柱120)と第1周方向端バンド145A(例えばその山の頂点)との間の相互接続174(例えば直接接続)により囲まれる。 第2遷移セル155aの境界は、第2バンド125の5つのフリーループ125によって接続された第2バンド115Bの6つの支柱120と、第1バンド115Aの1つの支柱120と、第1周方向端バンド145Aの5つのループによって接続された第1周方向端バンド145Aの6つの支柱とによって形成される。
【0064】
第3遷移セル155bは、第2エンドリング110Bと、連続要素105の隣接する巻線115との間に形成される。第3遷移セル155bは、第2バンド115B、第1周方向端バンド145A及び第2周方向端バンド145Bの波状パターンの一部によって囲まれている。第3遷移セル155bは、第1周方向端バンド145A(例えばその谷の頂点)と第2周方向端バンド145B(例えばその谷の頂点)との間の相互接続176(例えばリンク)により囲まれる。第3遷移セル155bは、第2バンド115B(例えばその谷125bの頂点)と第2周方向端バンド140B(例えばその谷の頂点)との間の相互接続178(例えばリンク)によっても囲まれる。また、第3遷移セル155bは、第1周方向端バンド145A(例えばその支柱)と第2バンド115B(例えばその谷125bの頂点)との間の相互接続170(例えば直接接続)により囲まれる。 第3遷移セル155bの境界は、第2周方向端バンド145Bの5つのフリーループ125によって接続された第2周方向端バンド145Bの6つの支柱120と、3つのループ125によって接続された第2バンド115Bの4つの支柱120と、第1周方向端バンド145Aの2つのループによって接続された第1周方向端バンド145Aの3つの支柱とによって形成される。別の実施形態(図示せず)において、第3遷移セル155bと同様の遷移セルは、第1エンドリング110Aと隣接する巻線115との間に同様に形成されてもよく、この遷移セルは、第1バンド115A、第1周方向端バンド140a及び第2周方向端バンド140bによって囲まれてもよい。
【0065】
本明細書に開示される実施形態によるステントは、冠状動脈用又は非冠状動脈用用途(例えば、末梢ステント、脳ステント又は他の非冠状動脈適用)に有用であり得る。冠状動脈用途のために、ステントは、6~60mmの範囲の長さで変化してもよく、拡張及び展開時の外径が1.5~5.5mmの範囲であり、収縮及び送達時の外径が0.7~1.2mmの範囲である。非冠状動脈用途(例えば周辺血管用途)のために、ステントは、20~250mmの範囲の長さで変化してもよく、拡張及び展開時の外径が3~8mmの範囲であり、収縮及び送達時の外径が0.7~2.0mmの範囲である。また、冠状動脈用途のために、ステントは、より少ない相互接続(例えばリンク又は直接接続)及びそれに伴うより大きなセルを備えるセルデザインを有してもよい。これにより、側枝へのアクセスを増加するために十分大きなセルを有するステントを実現して、多数の側枝を有する曲がりくねった冠状血管での使用に有利とすることができる。ステントのセルは、実質的にステントの全長に沿って、又は少なくともステントの本体(端部を除く)に沿って、同じ又は類似の大きさとすることで、全体としての同様の側枝へのアクセス及び支持を提供する。
図1に示す例示的な実施形態において、ステント100の各巻線115は、3つの相互接続及び9つの山又は頂部125aを有する。しかしながら、特定の用途及び所望のステント寸法のために、相互接続又は山に関する任意の他の数を選択することができる。例えば、別の実施形態において、各巻線は、2つの相互接続と6つの山又は頂部とを有してもよく、これにより、より小径のステントを形成することができる。
【0066】
図4~
図21は、
図3に示す実施形態に係るステント100の3次元を示している。
図4~
図9は、異なる視点からのステント100の切断形態を示し、
図10~
図15は、異なる視点からのステント100の収縮された送達形態を示し、
図16~
図21は、異なる視点からのステント100の拡張された展開形態を示す。
【0067】
本明細書に記載される本発明の特徴は、個々に又は組み合わせて、従来のステントと比較して拡大された拡張時外径及び/又は減少された収縮時外径を有利に実現する。例えば、長い支柱と短い支柱の組合せを有する本発明の実施形態において、拡大された拡張時直径は、長い支柱によって実現され得る。減少された収縮時直径は、例えば、ステントの収縮形態における収納構成に寄与する湾曲支柱デザインによって実現され得る。これに代えて又はこれに加えて、減少された収縮時直径にさらに寄与し得る他の特徴には、例えば、螺旋状に配向された巻線及び/又は長さの異なる支柱から生じ得るループのジグザグ状又はオフセットパターンが含まれる。また、従来のステントと比較して、本発明のステントは、隣接する支柱間の距離を有利に最大化し、それにより、ステント、ステントコーティング及び/又は内部バルーンに有害であり得る支柱間の干渉を最小化する。
【0068】
図4~
図21に示す実施形態は、
図1及び
図2に示す実施形態と実質的に同様であるが、相違点として、連続要素105並びに第1及び第2エンドリング110a、110bの全ての支柱120が、第1及び第2湾曲領域135a、135bの湾曲支柱デザインを有している。なお、本発明の実施形態のいずれにおいても、例えば、特定の用途及び/又は所望の拡張時若しくは収縮時のステント直径サイズに依存して、ステント100は、全ての、いくつかの又は1つの支柱に湾曲支柱デザインを含むことができることに留意されたい。
【0069】
また、
図1と同様に、
図4~
図21に示す実施形態は、2つの相互接続バンド115A、115Bを含む巻線115と、ステント100の長手方向端100a、100bにおける2つの相互接続された周方向端バンド140a、140b、145a、145bとを含む。
図1に関して説明したのと同様に、
図4~
図21に示す実施形態は、螺旋方向Hにおける隣接ループ125のジグザグ状又はオフセットパターンを示していると共に、長さの異なる支柱120a~120bを示している。
図1と同様に、
図4~
図21は、セル117及びリンク119のセルデザインを示しているが、上述したように、リンク119の一部又は全部は、直接接続又は他の接続手段によって置き換えられてもよい。
図4~
図21のステント100は、上述したような応力/歪みの集中の最適な再分配を含むことができ、例えば、全ての、いくつかの又は1つのループ125は、支柱120よりも広い幅を有してもよく、及び/又は、支柱120のいくつか又は1つは、支柱の長手方向に沿って幅を相違させることができる。さらに、
図4~
図21の実施形態は、上述したように、1つ又は複数の遷移セルを含んでもよい。例えば、第3遷移セル155bは、
図4、
図6、
図8~10、
図12、
図14~
図16、
図18、
図20、
図21に示されている。
図4~
図21のステント100は、本明細書に記載される他の実施形態のいずれかと同様に、本明細書に記載されている特徴の1つ、いくつか又は全てを有することができる。
【0070】
図4~
図9は、ステント100を切断状態で示す図である。ステント100の切断された構成は、チューブにおいてレーザ切断されたとき、又は平坦な金属シートにおいてレーザ切断若しくは化学的にエッチングされた後、ロールさせて管状として固定されたとき、ステント100の製造された形状である。
図4~
図9の例示的な切断形態としてのステント100の外径は、
図16~
図21の拡張及び展開された形態よりも小さく、
図10~
図15の収縮された送達形態よりも大きいが、本発明のステントは、切断された形態のために任意の所望の外径に切断され得ることが理解されよう。
【0071】
図4~
図9に示すように、ステント100の少なくとも1つの支柱120は、第1及び第2湾曲領域135a、135bの湾曲支柱デザインを含む。また、
図4~
図9に示すように、螺旋方向Hのループ125は、重複しない関係(例えばジグザグ状)で配置される。すなわち、ループ125は、螺旋方向Hにおいて支柱120と位置合わせされる。特に、支柱120の湾曲領域135a、135bは、螺旋方向Hにおいて隣接ループ125と位置合わせされる。切断された形態では、ループ125は、ループ125が対向する湾曲領域135a、135b内に未だ収納されないように、湾曲領域135a、135bから離れた状態で位置決めされる。
【0072】
図10~
図15は、収縮された送達形態(又は部分的に収縮された形態)におけるステント100を示す。収縮された(又は部分的に収縮された)形態におけるステント100の外径は、拡張された展開形態よりも小さい。収縮形態において、ステント100がカテーテル(バルーン又は拡張可能な部材等)に対して収縮されると、支柱120は互いに接近する。これに代えて又はこれに加えて、ステント100が収縮形態に圧縮された際、ループ125の曲率半径は減少してもよい。
【0073】
図10~
図15に示すように、ステント100の少なくとも1つの支柱120は、第1及び第2湾曲領域135a、135bの湾曲支柱デザインを含む。ループ125は、支柱120の湾曲領域135a、135bと位置合わせされるいるので、収縮工程は、隣接する支柱120において相補的形状を有して対向する湾曲領域135a、135bに向かって螺旋方向Hにループ125を移動させ、これにより、収納構成を実現する。ステント100は、収縮形態において実現された収納構成のために、従来のステントよりもしっかりと収縮することができる。収縮中又は収縮状態の際、湾曲領域135a、135bは、実質的に真っ直ぐにはならない。具体的には、隣接ループ125が収納される空間を湾曲領域135a、135bが形成するので、ステント100は、従来のステントよりも緊密に収縮することができる。生成された空間は、対の支柱122の間の内部距離が支柱120の内側湾曲部で減少する湾曲形状130をもたらす。
図10~
図15に示すように、ループ125は、緊密に収縮又は圧縮されて第1又は第2湾曲領域135a、135bと接触する又は接触しそうになる。ループ125は、隣接ループからオフセットする(螺旋方向Hにオフセットループを形成する)ことで、ループ125は、上方のループに対して接近し、下方のループに対して離れて配置され又はその逆であり、従って隣接ループ125間の干渉は回避される。
【0074】
一実施形態において、第1及び/又は第2湾曲領域135a、135bは、切断時の態様(又は拡張時の態様)と同一の湾曲量を維持する。従って、(ガイドカテーテルに対して)収縮中又は収縮態様において、支柱120が互いに接近する際、第1及び/又は第2湾曲領域135a、135bの湾曲は変化しない。別の実施形態において、収縮中又は収縮態様の際、第1及び/又は第2湾曲領域135a、135bをより湾曲させることで、第1及び/又は第2湾曲領域135a、135bの曲率が大きくなり、それにより、ステント100の収縮時直径をさらに減少させる。さらに別の実施形態において、収縮中又は収縮態様の際、第1及び/又は第2湾曲領域135a、135bをより湾曲させずに、湾曲量の少なくとも一部を維持することで、実質的に真っ直ぐにさせない。それにより、支柱及びループの収納構成を可能とする。
【0075】
図16~
図21は、拡張された展開形態(又は部分的な拡張形態)におけるステント100を示す。拡張された(又は部分的に拡張された)形態におけるステント100の外径は、収縮された送達形態よりも大きい。
図16~
図21に示す実施形態において、ステント100は、拡張又は展開されて3.0mmの外径となるが、特定用途に応じた他の外径も可能である。展開形態において、ステント100は、カテーテルのバルーン又は拡張可能な部材のようなガイドカテーテルによって拡張されるか、又は自己拡張するので、支柱120は、ループ125の曲率半径が増大するように互いに離れるように移動する。
【0076】
図16~
図21に示すように、ステント100の少なくとも1つの支柱120は、第1及び第2湾曲領域135a、135bの湾曲支柱デザインを含む。また、
図16~
図21に示すように、螺旋方向Hにおいてループ125は、重ならない(例えば、ジグザグ状の)関係のままであり、ループ125は、支柱120の湾曲領域135a、135bに対して(但し、これらから離れるように)位置合わせされる。
【0077】
一実施形態において、第1及び/又は第2湾曲領域135a、135bは、切断時の態様又は収縮時の態様と同一の湾曲量を維持する。従って、収縮中又は収縮態様において、支柱120が互いに離れる際、第1及び/又は第2湾曲領域135a、135bの湾曲は変化しない。別の実施形態において、拡張中又は拡張態様の際、第1及び/又は第2湾曲領域135a、135bをより湾曲させることで、第1及び/又は第2湾曲領域135a、135bの曲率が大きくなる。さらに別の実施形態において、拡張中又は拡張態様の際、第1及び/又は第2湾曲領域135a、135bをより湾曲させずに、湾曲量の少なくとも一部を維持することで、実質的に真っ直ぐにさせない。さらに別の実施形態において、拡張中又は拡張態様の際、第1及び/又は第2湾曲領域135a、135bは、真っ直ぐに又は実質的に真っ直ぐになり、それにより、ステント100の拡張時直径をさらに拡大する。
【0078】
図22~
図23は、本明細書に記載される実施形態のいずれかに基づき、任意のポリマー被覆200を備えたステント100を示している。ポリマー被覆200は、生分解性又は生体適合性ポリマーから製造されてもよく若しくはこれらを含んでもよく、及び/又は製剤中に薬物を含んでいてもよい。さらに、ポリマー被覆200は、繊維メッシュの形態であってもよい。ポリマー被覆200は、例えば、エレクトロスピニング、物理蒸着法(PVD)、化学気相成長法(CVD)、熱蒸着法、スパッタリング法、スプレーコーティング法、又は当該技術分野で公知の他の方法により適用することができる。ポリマー被覆200は、ステント100の全部又は一部に連続的又は非連続的に適用されてもよく、また、ステント100を埋設していてもいなくてもよい。一実施形態において、ポリマー被覆200は、隣接する巻線115の間の隙間、及び/又はセル117によって形成される隙間に適用されてもよいし、延在していてもよい。 ポリマー被覆200の弾性範囲(例えば、繊維のメッシュ)は、ステント100の拡張を可能にするのに十分であり、且つ、注入の間及び注入後に弾性限界に達することなく最大曲げを可能にするのに十分であることが好ましい。また、ポリマー被覆200は、血流及び栄養流が許容されるほど実質的に多孔質であってもよい。或いは、ポリマー被覆200は、ステント100が実質的に多孔質構造(すなわち、液密でない)であることを可能にするように、ステント100に適用されてもよい。ポリマー被覆200の多孔度は、実質的に液密であるグラフト装置又はステントグラフト装置に使用される移植材料の多孔度よりも実質的に大きい。或いは、ポリマー被覆200の材料は、完全に非多孔性であってもよいが、例えば、血液及び栄養流並びに/又は側枝アクセスのための開口部を含むように製造(例えば、穿刺)されてもよい。
【0079】
一実施形態において、ポリマー被覆200は、ステント100に対するポリマー材料の連続シートとして形成してもよい。連続シートは、ステントの外面を包囲する又はステントをその中に埋め込む多孔質シートであってもよい。ポリマー被覆200は、連続シート上に形成された細孔及び/又は開孔を通して多孔質化することができる。細孔及び/又は開孔は不規則な形状であってもなくてもよいし、ステント100全体に均一に分布していてもいなくてもよい。細孔及び/又は開孔は、ステント100の金属要素(例えば、支柱120及びループ125)を囲まない又は埋め込まない連続シートの部分に形成されてもよい。細孔の大きさは、2.0~500ミクロンの範囲であってもよく、開孔の大きさは、細孔よりも大きくてもよい。別の実施形態において、ポリマー被覆200は、流体が流れることを可能にする多孔質構造を有する繊維のメッシュであってもよい。繊維のメッシュは、それ自体多孔性であってもよいし、或いは、流体密でないステント100を提供するために可変距離(例えば、隙間)で配置されてもよい。ポリマーは、ステントにおける非接続の隣接する螺旋状巻線を相互接続してもよい。上記実施形態のいずれにおいても、ポリマーは、ステントの1つ又は複数の巻線を相互接続してもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーは、ステントの全ての巻線を相互接続する。ポリマー被覆200は、例えばカテーテル先端又はガイドワイヤ先端によって容易に穿孔されて、側方分岐アクセスを可能にしてもよい。ポリマー被覆200は、ステント100の金属部分間に適用されてもよく、及び/又はステント100の金属部分(例えばステントの支柱)に被覆されてもよい。当業者は、被覆方法として、例えば、米国特許第7959664号(名称「Flat Process of Drug Coating for Stents」)に記載されているような被覆方法を認識するであろう。同特許の開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
本発明のステントは、金属、ポリマー、他の可撓性材料及び/又は他の生体適合性材料から形成することができる。ステントは、ステンレス鋼、コバルトクロム(CoCr)、白金クロム、NiTinol(NiTi)又は他の既知の材料若しくは合金で構成することができる。本明細書に記載のステントのパターン又はデザインは、平坦な金属リボン又はフラットパネルにエッチング又はレーザ切断することで実現可能である。或いは、ステントは、ステントのパターン又はデザインがエッチングされ、又はレーザ切断されたチューブから製造してもよい。いずれの場合も、ステントは、本明細書に記載された実施形態に類似したパターンを有し、金属ワイヤに似ることとなる。ステントは、本明細書に記載されるステントのパターン又はデザインを有する平らなストリップ又はワイヤを螺旋状に巻き付けて形成されてもよいことも意図されている。一実施形態において、本発明は、ポリマーがステントを構造的に支持するが、ステントの長手方向及び/又はねじれ運動を制限しないように、ステントを生体適合性ポリマーで覆う又は埋め込むことで、高い径方向強度及び高い長手方向(すなわち、長さ方向)の可撓性を有するステントを形成することを意図している。
【0081】
本発明のステントは、バルーン拡張型であっても自己拡張型であってもよい。バルーン拡張型のステントシステムがステントを送達するために使用される場合、ステントは、カテーテル組立体の遠位端でバルーン上に収縮され、カテーテル組立体は、介入心臓学の分野で周知の技術を用いて、留置部位、例えば冠状動脈に送達される。次いで、バルーンを膨張させ、ステント内において径方向の力を作用させ、ステントをその作動直径まで拡張させる。或いは、ステントは自己拡張してもよく、その場合、ステントは、機械的手段、例えば、スリーブを使用して、留置部位への送達の前及びその間、制限された直径に保持される。ステントが留置部位に配置されると、スリーブは除去され、ステントはその作動直径まで拡張する。
【0082】
ステントは、セルステントデザインを提供するように配置され得る。同デザインにおいて、セルは、第1及び第2バンドの間、螺旋状バンドと周方向端バンドとの間、並びに/又は第1及び第2周方向端バンドの間に形成される。実施例のデザインは、米国特許第6723119号に記載されているが、これに限定されるものではない。同特許の開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。別の例示的なデザインは、米国特許第7141062号(「062」)に記載されているステントパターンである。062ステントは、それぞれがループ部分を有する3つの領域からなるセルと、各セルを形成する連結用の3つの関連付けられた点とを有する三角状セルを含む。そのようなセルの1つ又は複数の集まりは、ステントから螺旋状に巻かれ得るリボンに組み入れられてもよい。同様に、Israel他に対する米国特許第5733303号(「303」)に記載されているステント内のセルを、ステントに用いることができ、螺旋状に巻かれていてもよい。303特許は、4つの領域で形成されたセルを有するステントを開示している。各セルは、ループ部分と、各セルを形成する連結用の4つの関連付けられた点とを有し、また、正方形状セルとしても知られている。そのような正方形状セルは、本発明のステントの第1及び第2バンド並びにリンクによって形成することができる。これらのデザインの各々は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれている。当技術分野で知られている他の同様に適用可能なセルステントデザインには、ダイヤモンド状セル又は非ダイヤモンド状セル等があり、本発明の螺旋状ステントに容易に適用できる。
【0083】
ベースコーティング(basecoat)は、本発明のステントに適宜適用可能である。ベースコーティングは、ステントの金属構造に適用されると共に、任意のポリマー被覆又は材料を適用する前に適用される。ベースコーティングは、ステントに対する任意のポリマー材料の結合を促進し得る。ベースコーティングは、例えば、圧延、ディップコーティング、スプレーコーティング等の種々の手段を介してステントに適用又は固定され得る。ベースコーティングは、生体安定性又は生分解性ポリマーのようなポリマーであってもよい。ベースコーティングに使用される生体安定性ポリマーは、ポリウレタン又はアクリレート型ポリマーであってもよい。ベースコーティングに使用される生分解性ポリマーは、
図22~
図23のポリマー被覆200のようなステントを包むか又は埋め込むのに使用される生分解性ポリマーと同じであっても異なっていてもよい。ベースコーティングのためのポリマーは、特定の条件下では、ステントの金属構造に接着性を有するように選択される一方、ステントを包む又は埋め込むためのポリマーは、異なる条件下でベースコーティングに接着性を有するものであってもよい。ベースコーティングのためのポリマーは、ほとんどの溶媒に溶解することができるものであってもよく、ステントの展開の間及びその後のかなりの変形に耐えるのに十分な可撓性を有しなければならない。
【0084】
ステントを任意に包む又は埋め込むために使用されるポリマー(例えば
図22~
図23のポリマー)は、ステントの一部内に配置するか、又はステント全体に埋め込むことができ、ステント構造を部分的に又は全体的に支持することができる。ポリマーは、生体適合性材料から製造される。生体適合性材料は、耐久性ポリマー、例えばポリエステル、ポリ無水物、ポリエチレン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、シリコーン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリイミド、ポリビニルアルコール、アクリル重合体及びコポリマー、ポリエーテル、セルソックス、並びにそれらの組合せ又は他のポリマーとブレンド又はコポリマーの組合せのいずれかをすることができる。特に使用するのは、シリコーン骨格変性ポリカーボネートウレタン及び/又は膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であり得る。或いは、生体適合性材料は生分解性ポリマーであってもよい。ポリマーは、ポリマー繊維の多孔性メッシュであってもよい。ポリマーは、平滑筋細胞の増殖を阻害し、ステント留置部位における再狭窄(血管の再狭窄)を防止するのに役立つ抗増殖剤をさらに含んでいてもよい。薬物及びポリマーの組合せは、特定の手順及びポリマーの技術的特性の要件に応じて、所定の時間(例えば、30、60又は90日)に亘って制御された薬物溶出の利点をもたらす。薬物溶出は、例えば、ポリマー若しくはポリマー及び薬物のブレンド、ポリマーメッシュ寸法、繊維直径若しくは繊維構造、又は拡散係数に影響を及ぼす任意の構造的特徴の選択によって制御することができる。生分解性ポリマーは、予め決定された期間が経過して薬物溶出が完了した後に血管壁内で完全に生分解するように選択されてもよい。生分解性ポリマーは、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、トリメチレンカーボネート、ポリホスホエステル、ポリホスホエステル-ウレタン、ポリアミノ酸、ポリシアノアクリレート、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、ヒアルロン酸、並びにそれらの混合物及びコポリマーからなるグループから選択することができる。
【0085】
本発明に係るステントは、平滑筋細胞の遊走及び増殖を阻害又は減少させ、再狭窄を減少させる1つ又は複数の薬剤を任意に組み込むことができる。そのような薬剤の例としては、例えば、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムス(sirolimus)、エベロリムス(everolimus)、ゾタロリムス(zotarolimus)、リダフォロリムス(ridaforolimus)、バイオリムス(bioimus)、及びそれらの類似物が挙げられる。薬剤は、金属ステント(例えば、支柱及び/若しくはループ)並びに/又はポリマー材料若しくはコーティング(例えば、
図22~
図23のポリマー被覆200)に適用され得る。例えば、薬物は、ステント100及び/又はポリマー被覆200に対して部分的又は全体的なコーティングとして適用されてもよい。 金属ステントは、薬物を収容可能な異常部分(例えば、窪み、ウェル又は開孔)を有するように表面処理されてもよい。これに代えて又はこれに加えて、ポリマー材料は、薬物を収容可能な異常部分(例えば、窪み、ウェル又は開孔)を有してもよい。
【0086】
一実施形態において、薬物は、ステント及び/又はポリマーの標的領域上に選択的に「印刷」されてもよい。一実施形態において、薬物は、留置後に低い機械的歪みを受ける領域のみに限定及び/又は提供されてもよい。一実施形態において、薬物又は薬物/ポリマー配合物は、インクジェット技術を用いて堆積又は印刷される。インクジェット装置は、小さなオリフィスを有するインクジェットヘッドを含む。電圧がインクジェット装置に印加されると、同装置は、数ミリ秒の期間収縮し、所望の生成物(例えば、薬物又は薬物/ポリマー配合物)の小滴を放出する。液滴の直径は、調整可能及び変化される。インクジェットヘッド又は標的物体(例えばステント)を移動させることで、選択的で正確な生成物の堆積/印刷を提供する。
【0087】
ステントの構造のデザインは、新たな内膜成長及び組織中のステント支柱の「埋め込み」の後に、ステントが留置される血管の血管運動を妨害しないものであることが望ましい。この干渉の減少又は排除は、曲げ/ねじれに対するステントの機械的抵抗を減少させることにより(すなわち、ステント設計及び/又はポリマー被覆を介して)達成される。本明細書に記載の例示的なステント構造は、血管を径方向に支持するが、長手方向及びねじれ方向に最小の機械的制約を課す金属製ステントを提供する。すなわち、本発明のステントは、血管の横方向屈曲、ねじれ、伸び及び血管拡張/血管収縮に最小限の機械的制約を課す。
【0088】
また、本発明のステントの構造要素は、別の構造ではなく、本発明のステントの連続管状形状を形成するために(例えば、レーザ切断又は化学的エッチングを介して)互いに一体に形成されているが、他の特徴の中で、構造要素(例えば、相互接続バンド、支柱、ループ、リンク及び/又はエンドリング)は、特定及び説明を容易にするために別々に参照されていることにも留意されたい。また、異なる図面における同一の参照符号は、同じ特徴を示していることに留意されたい。
【0089】
上記の説明及び図面は、実施形態の例示的な例を表すに過ぎないことを理解すべきである。例えば、本明細書に記載の湾曲支柱デザインは、ステントの収縮時直径を減少させる収納構成に寄与するものであるが、巻き線内に任意の数のバンドを備えるステントを必要に応じて有する、任意の適切な管腔内血管内デバイス(例えば、ステント装置、グラフト装置又はステントグラフト装置)に組み込むことが可能である。読者の便宜上、上記説明は、可能な実施形態の代表的なサンプル、本発明の原理を教示するサンプルに焦点を当てた。他の実施形態は、異なる実施形態の部分の異なる組合せから生じることがあり得る。上記説明は、全ての可能なバリエーションを網羅的に列挙することを試みていない。