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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】分析装置のカラムオーブン
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/54 20060101AFI20240501BHJP
   G01N 30/60 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G01N30/54 E
G01N30/60 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021502384
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020008165
(87)【国際公開番号】W WO2020175651
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019034845
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】野上 真
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】秋枝 大介
(72)【発明者】
【氏名】西木 健一郎
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/199335(WO,A1)
【文献】特開2011-252719(JP,A)
【文献】特開2000-111536(JP,A)
【文献】特表2007-527015(JP,A)
【文献】特表2013-517511(JP,A)
【文献】特表2014-521983(JP,A)
【文献】実開昭62-145150(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/54,30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートブロックと、
分析カラムと、前記分析カラムと接触し前記ヒートブロックから伝熱された熱を前記分析カラムに伝熱するカラムヒートブロックと、を有するカラムカートリッジと、
前記ヒートブロックに熱を供給する熱源と、
前記カラムカートリッジを取り付け及び取り外し可能なカラムチェンジ機構と、
を備え、
前記熱源は、前記カラムカートリッジが前記カラムチェンジ機構に取り付けられた状態で、前記カラムカートリッジが有する前記分析カラムを温調することを特徴とする分析装置のカラムオーブン。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置のカラムオーブンにおいて、
前記熱源は、複数の前記カラムカートリッジが配置されるシートヒータであることを特徴とする分析装置のカラムオーブン。
【請求項3】
請求項1に記載の分析装置のカラムオーブンにおいて、
前記熱源は、前記カラムカートリッジ毎に設けられていることを特徴とする分析装置のカラムオーブン。
【請求項4】
請求項1に記載の分析装置のカラムオーブンにおいて、
前記カラムチェンジ機構は、前記分析カラムに少なくとも試料を送液する配管と、前記配管を支持する可動コネクタフェラルと、少なくとも前記可動コネクタフェラルを支持する固定底板とを有し、前記カラムカートリッジが前記カラムチェンジ機構に取り付けられた状態で、前記ヒートブロックの上面は、前記固定底板の上面より下方に位置することを特徴とする分析装置のカラムオーブン。
【請求項5】
請求項1に記載の分析装置のカラムオーブンにおいて、
前記カラムチェンジ機構は、固定部と、移動可能な可動部とを有し、前記固定部と可動部との間に、前記カラムカートリッジが配置され、前記可動部が移動され前記カラムカートリッジが前記固定部に押しつけられて前記カラムカートリッジが前記カラムチェンジ機構に取り付けられ、前記可動部が前記カラムカートリッジから離間する方向に移動されて前記カラムカートリッジが前記カラムチェンジ機構から開放されて取り外されることを特徴とする分析装置のカラムオーブン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を分析する分析装置のカラムオーブンに関する。
【背景技術】
【0002】
分析カラムを用いた分析方法としてクロマトグラフィーがある。分析カラム(単にカラムとも記載する)はシリカゲルやポリマーゲル等の母材に、各種官能基が結合した粒子の充填材を、円筒状の細長い容器に高圧で充填したものである。
【0003】
クロマトグラフィーは、物質が固定相とこれに接して流れる移動相との親和力(相互作用)の違いから一定の比率で分布し、その比率が物質によって異なることを利用して各物質を分離する方法である。
【0004】
液体クロマトグラフィーは、移動相として液体を用いる。一般的に液体クロマトグラフィーでピーク形状のよい結果を得るためには、カラムを最適温度に温調することが必要である。カラム内の移動相の温度が上昇するにつれて、移動相の粘度が減少することで圧力が減少する。
【0005】
このため、配管およびカラム内での試料の拡散が抑えられるとともに、保持時間が短くなることにより、ピーク形状のよい結果を得ることが可能である。そのため、液体クロマトグラフィーのカラムは、カラムオーブン庫内に保持し、カラムの温調が必須である。
【0006】
一般的なカラムの温調方法は、カラムの前段の移動相が送液される流路配管の外側に熱源を設置し、移動相を温調するプレヒート機構と、カラムオーブン内を空調する機構により、カラムの温調が行われる。
【0007】
特許文献1には、それぞれが別個の熱ゾーンに位置して、個々に制御された熱電チップの1つにより個々に微調整され、それぞれが1つまたは複数のカラムを保持するような構造である熱伝導性の複数の溝を収容するカラムモジュールが公開されている。特許文献1では、別個の熱ゾーンに位置して、複数のカラムを保持する場合、熱電チップの1つにより複数のカラムが温調されることになる。
【0008】
特許文献2には、ハウジングに少なくとも1本目のカラムと2本目のカラムが搭載され、それぞれのカラムに外部から配管が接続できるカラムカートリッジが公開されている。また、カートリッジごとに認識可能なバーコードやRFIDTAGを搭載し、カートリッジ内の温度、送液圧力および送液流量等のデータを管理できる機能を有する。特許文献2では、ひとつのカートリッジに少なくとも1本目のカラムと2本目のカラムが搭載されるため、少なくとも2本のカラムごとにカラムカートリッジを取扱うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6194310号公報
【文献】WO2012/058515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の技術では、複数のカラムを温調する場合、1つの熱ゾーン内では、1つの熱電チップにより複数の熱伝導性の溝が温調され、カラムオーブン内を空調する機構により、複数のカラムの温調が行われる。1つの熱電チップからの空調により、複数のカラムを温調することになることから、複数のカラムが平均した温度とならず、カラムによっては温調の隔たりが生じる可能性がある。
【0011】
特許文献2に記載の技術では、複数のカラムを温調する場合、ハウジングに複数本のカラムが搭載され、それぞれのカラムに外部から配管が接続できるカラムカートリッジ内を温調することになる。この場合、カートリッジ内のカラムの1本が性能劣化または詰まった場合に、そのカラムを交換する場合、カートリッジごと交換する必要があり、まだ使用可能なカラムを破棄する無駄が生じる。省資源、低コスト化に反することになる。また、カートリッジごとに認識可能なバーコードやRFIDTAGを搭載するため、カラム1本ずつの管理はできない。
【0012】
本発明の目的は、カラムオーブンに複数のカラムを搭載した場合に、カラム1本ごとに効率的な熱伝導ができ、カラムを保持するカラムカートリッジを認識でき、カラムを1本ごとに容易に交換可能な分析装置のカラムオーブンを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0014】
分析カラムと、前記分析カラムに伝熱する熱源とを備える分析装置のカラムオーブンにおいて、前記分析カラムを有するカラムカートリッジと、前記カラムカートリッジを取り付け及び取り外し可能なカラムチェンジ機構と、を備え、前記熱源は、前記カラムカートリッジが前記カラムチェンジ機構に取り付けられた状態で、前記カラムカートリッジが有する前記分析カラムを温調する。
【発明の効果】
【0015】
分析カラムと、前記分析カラムに伝熱する熱源とを備える分析装置のカラムオーブンにおいて、ヒートブロックと、分析カラムと、前記分析カラムと接触し前記ヒートブロックから伝熱された熱を前記分析カラムに伝熱するカラムヒートブロックと、を有するカラムカートリッジと、前記ヒートブロックに熱を供給する熱源と、前記カラムカートリッジを取り付け及び取り外し可能なカラムチェンジ機構と、を備え、前記熱源は、前記カラムカートリッジが前記カラムチェンジ機構に取り付けられた状態で、前記カラムカートリッジが有する前記分析カラムを温調する。


【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1におけるカラムオーブン(カラム温調部)100の構造説明図である。
図2】カラムチェンジ機構の説明図である。
図3】カラムヒートブロック構造の説明図である。
図4A】カラムカートリッジの上面概略斜視図である。
図4B】カラムカートリッジの下面概略斜視図である。
図4C】カラムカートリッジの概略断面図である。
図5】可動フェラル機構の概略構成図である。
図6A】カラム交換作業手順の説明図である。
図6B】カラム交換作業手順の説明図である。
図6C】カラム交換作業手順の説明図である。
図6D】カラム交換作業手順の説明図である。
図6E】カラム交換作業手順の説明図である。
図7】カラム筐体の概略斜視図である。
図8】実施例2におけるカラムヒートブロックの説明図である。
図9A】実施例1におけるカラムとヒートブロックの説明図である。
図9B】実施例1におけるカラムとヒートブロックの説明図である。
図10A】実施例3におけるカラムとヒートブロックの説明図である。
図10B】実施例3におけるカラムとヒートブロックの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明の実施例は、液体クロマトグラフィー(HPLC)を主な対象としているが、本発明は、分析装置全般に適用可能なものである。例えば、ガスクロマトグラフィー、超高速液体クロマトグラフィー、HPLC/MSおよびカラム分離部を備える臨床検査装置にも本発明は適用することができる。
【0019】
一般的なHPLCは、送液ポンプと、インジェクタと、分析カラムと、分析カラムを温調するカラムオーブンと、送液ポンプとインジェクタと分析カラムを繋ぐ配管からなる。
【0020】
本発明の装置全体の構成は、複数のHPLC流路を、HPLC流路を切替えるストリームセレクトバルブを介して、1つの検出に結合し、相互に分析を実施できるマルチHPLC装置である。各HPLC流路は、同一の構成からなり、並列に配置される。分析カラムの平衡化工程、溶離工程、洗浄工程のおよびインジェクタの洗浄工程の時間を調整し、常に各HPLCストリームから目的成分が検出器に導入し、検出器の待機時間がないようにする。
【0021】
本発明は、複数の分析カラムを保持できるカラムオーブンに関する発明である。
【実施例
【0022】
(実施例1)
以下、本発明の実施例1について図1から図7を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1は、実施例1におけるカラムオーブン(カラム温調部)100の構造説明図である。図1において、カラム温調部100は、ヒートブロック101と、カラム102と、カラムヒートブロック103と、カラムカートリッジ104と、カラムチェンジ機構105(固定部105Aと移動可能な可動部105Bとを有する)と、カラムカートリッジ断熱材106と、熱源部107と、温度センサ108と、サーマルプロテクタ109と、制御部110と、ファン111と、ヒートシンク112とを備えている。カラムヒートブロック103は、カラムカートリッジ104に形成された開口部に配置され、ヒートブロック101と接触している。つまり、ヒートブロック101は、カラムカートリッジ104に形成された開口部に配置されたカラムヒートブロック103を介してカラム102に接触している。
【0024】
ヒートブロック101は、複数の凸構造を有する。また、ヒートブロック101の材質は、本発明の実施例1では、アルミニウムを用いるが、銅、鉄、ステンレス及びチタンでもよい。また、ヒートブロック101は同材質の一体ものでもよく、それぞれ材質が異なるものを接続してもよい。
【0025】
カラム102は、シリカゲルやポリマーゲル等の母材の表面に、各種官能基が結合した粒子の充填材を、円筒状の細長い容器に高圧で充填されおり、官能基と測定対象物質との相互作用で吸着・脱着することで特定の保持時間で溶出させることで分離を行う。本実施例1では、シリカゲルを母材として、官能基として逆相クロマトグラフィモードであるODSカラム(0.5mmID×50mmL、粒子径2.6μL)を用いた。
【0026】
カラム102の分離モードは他のものでもよく、例えば、順相クロマトグラフィモード、HILICクロマトグラフィモード、イオン交換クロマトグラフィモード、ゲル濾過クロマトグラフィモード、アフィニティクロマトグラフィモード、イムノアフニティクロマトグラフィモードでもよい。その他、ガスクロマトグラフィー用のカラムにも適応可能である。
【0027】
カラムカートリッジ104は、長さ75mm、幅20mm、高さ34mm、材質PPEX樹脂の直方体形状であり、カラムヒートブロック103およびカラム102から構成される。本実施例1のカラム102は、0.5mmID×50mmLを用いたが、カラムカートリッジ104の内部の形状を変更することにより、内径0.3-1.0mmID、長さ10-70mmLまで収容することが可能である。
【0028】
カラムヒートブロック103は同形状のものを用いることが可能である。
【0029】
カラムカートリッジ104は、少なくとも一箇所の凹構造の切込み構造(開口部)を有し、ヒートブロック101の凸構造に接触可能な構造を有する。これにより、カラム102はカラムヒートブロック103と接触することで温調される。ヒートブロック101とカラム102は直接接触してもよい。その場合は、円筒状であるカラム102との接触面積が大きくなるように、ヒートブロック101の凸構造の接触部分は湾曲構造になっていることが望ましい。
【0030】
カラムカートリッジ104とカラムヒートブロック103は、本実施例1ではエプトシーラの材質からなる断熱材106で隔てられている。断熱材106はグラスウールやナイロンでもよい。
【0031】
カラム102の温調について説明する。制御部110を介し、熱源部107としてヒータ(図示せず(カラム1本あたり10W、DC24V駆動))および温度センサ108としてサーミスタ(図示せず)がヒートブロック101に接続されている。PID制御方式でフィードバック制御によりヒートブロック101の温度を40°Cから70°Cにすることで、ヒートブロック101、カラムヒートブロック103を介し、カラム102の温度を40°Cから70°Cに温調する。
【0032】
本実施例1では熱源部107としてヒータを用いたが、ペルチェ素子を用いてもよい。本実施例1ではフィードバック制御としてPID方式を用いたが、ON/OFF制御でもよく、PI制御でもよい。本実施例1では、温度センサ108としてサーミスタを用いたが、熱電対でもよく、白金測熱抵抗体でもよい。同じく、本実施例1では温度センサ108の接続箇所はヒートブロック101の温度を測定しフィードバックしたが、ヒートブロック101、カラムヒートブロック103、カラム102のいずれかを測定してもよい。
【0033】
この場合、複数のカラムオーブン100に複数のカラム102を搭載した場合、ヒートブロック101の凸部、カラムヒートブロック103、カラム102のいずれかを測定しフィードバックすることになるため、制御部110が複雑になる。カラム102の温度の温度正確性は±1°Cで制御可能である。サーマルプロテクタ109は熱源部107に接続されており、設定温度である90°C以上になるとヒータがオフになり温調が停止する。
【0034】
カラム102の冷却時には、制御部110と接続された80mm×80mm、厚み25mmのファン112がONとなり、ヒートブロック101の冷却が開始される。ヒートブロック101には、冷却効率をあげるため、アルミまたは銅のヒートシンク112を備えてもよい。
【0035】
カラムカートリッジ104は、断熱材106により、カラムヒートブロック103と隔てられているために、カラムヒートブロック103の温度が70°Cになった場合でもカートリッジ104の表面温度は70°Cまで上昇しない構造となっている。
【0036】
後述するように、図1の左側に示したカラムチェンジ機構105は、可動部105Bであり、図1の左右方向に移動可能であり、左右のカラムチェンジ機構105の固定部105Aと可動部105Bとの間にカラムカートリッジ104を固定することができる。カラムチェンジ機構105に固定したカラムカートリッジ104をカラムチェンジ機構105から開放する場合は、左側の可動部105Bを図1の左方向に移動し、カラムチェンジ機構105による固定を解除する。これにより、カラムカートリッジ104をカラムチェンジ機構105から容易に開放することができ、カラムカートリッジリ104をカラムチェンジ機構105に容易に取付け及び取り外しを行うことができる。カラムカートリッジリ104をカラムチェンジ機構105に取付けたときは、ヒートブロック101から直接又はカラムヒートブロック103を介してカラム102に熱が伝熱され、カラム102を温調することができる。
【0037】
次に、カラムチェンジ機構105について図2および図3を用いて説明する。図2及び図3は、カラムチェンジ機構105の説明図である。図2において、カラムチェンジ機構105は、フェラル206、可動フェラルコネクタ207、配管208、ファスナ引手209、ファスナ金具210、カラムカートリッジ押さえ211、スライドガイド212、RFIDリーダー214、固定壁215、カラムチェンジャ断熱材216、固定底板217、受皿218および固定金具219を備える。配管208は、可動コネクタフェラル207に支持されている。
【0038】
また、固定底板217は、フェラル206、可動フェラルコネクタ207、配管208、ファスナ引手209、ファスナ金具210、カラムカートリッジ押さえ211、スライドガイド212、RFIDリーダー214、固定壁215、カラムチェンジャ断熱材216、受皿218および固定金具219を支持している。
【0039】
配管208から試料等がカラムチェンジ機構105を介してカラム102に送液される。また、試料等がカラム102からカラムチェンジ機構105の配管208に送液される。
【0040】
ヒートブロック101は設定温度で温調され、ヒートブロック101には複数本のカラムカートリッジ104を設置することができ、カラムカートリッジ104内のカラムヒートブロック103と接触し、カラムカートリッジ104内を温調する。例えば、ヒートブロック101に5本のカラムカートリッジ104を設置する場合について図3を用いて説明する。
【0041】
図3において、ヒートブロック101はベース板303とアルミブロック302を備える。ベース板303とアルミブロック302との材質はアルミニウムであり、ベース板303の大きさは350mm×30mm×4mm、アルミブロック302の大きさは、20mm×14mm×10mmであり、アルミブロック302は50mmピッチ間隔でベース板303の上に均等に配置される。アルミブロック302は温調時にはカラムヒートブロック104と接触し、カラムヒートブロック104はカラム102と接触する。シートヒータ300は、複数のカラムカートリッジ104を配置可能なシート状に形成されている。
【0042】
このため、熱源であるシートヒータ300(熱源107に対応する)で加熱されたヒートブロック101から複数のカラム102に熱が伝わり、温調することができる。本実施例1ではシートヒータ300としたが、もちろんラバーヒータやセラミックヒータ、カートリッジヒータでもよい。また、アルミブロック302も銅や鉄でも良い。図示しないが、カラム102と接続される配管208を熱源で温調するプレヒート方式を併用してもよい。この場合、カラム102と接続される直前の配管208をシートヒータ等の熱源でカラムと同温度になるように温調しておき、その配管に送液されたHPLC溶液を送液する。このことでカラム102に送液されるHPLC溶液とカラム102との温度差が小さくなることにより、カラム分離の再現性が向上する。
【0043】
カラムカートリッジ104について図4A図4B図4Cを用いて説明する。図4Aはカラムカートリッジ104の上面斜視図であり、図4Bはカラムカートリッジ104の下面斜視図であり、図4Cはカラムカートリッジ104の断面図である。
【0044】
図4A図4B図4Cにおいて、カラムカートリッジ104は、カラムカートリッジ上部401と、カラムカートリッジ下部402と、カラム102と、カラムを断熱するカラムカートリッジ断熱材106と、カラムヒートブロック103と、ネジ406を備える。
【0045】
長さ75mm、幅20mm、高さ10mmのPEEK樹脂材で直方体形状であるカラムカートリッジ上部401と、長さ75mm、幅20mm、高さ24mmのPEEK樹脂材で直方体形状であるカラムカートリッジ下部402は、カラム102の表面温度の上昇を抑え、カラム交換の際に火傷等のユーザーの安全を考慮し、PEEK材で製作される。そして、カラム102を上下で挟み込むようにカラムカートリッジ上部401とカラムカートリッジ下部402とがネジ406で固定されている。
【0046】
もちろん、カラムカートリッジ104の材質は断熱性のあるPPSの樹脂でも構わない。カラムカートリッジ上部401とカラムカートリッジ下部402は上下でカラム102を押さえ込む構造になっているが左右で押さえ込む構造でもよい。
【0047】
カラムカートリッジ断熱材106は、材質としてエプトシーラを用いており、カラムヒートブロック103と接していないカラムを覆うように配置され、放熱を防ぐ。カートリッジ断熱材106の材質は、グラスウールやナイロンであってもよい。カラムカートリッジ上部401とカラムカートリッジ下部402で挟み込まれたカラム102は、カラムカートリッジ104の接続部から両端とも5mm以上内側に位置する構造になっており、カラム交換の際に火傷等のユーザーの安全を考慮し、ユーザーが高温部である可能性のあるカラム102の先端に接触しない構造になっている。
【0048】
図4Cに示すように、カラムヒートブロック103は、上部は筒状のカラム102を収納できるように筒状に窪んでおり、下部はヒートブロック(アルミブロック)302に接するように底面中央部から直方体が突き出た構造となっている。この直方体とヒートブロック(アルミブロック)302は加熱面を平面で接続してもよいが、熱伝導効率を向上させるために、階段状の段差を設けて加熱面の表面積を大きくしてもよい。また、上記加熱面の構造は直方体でなくてもよく、円筒状や、コイル状であってもよい。
【0049】
図4Bに示すように、カラムカートリッジ下部402の底面はカラムヒートブロック103が配置される開口部を有し、カラムヒートブロック103を囲う構造になっており、カラムカートリッジ下部402の底面(図4Bでは上面)は、カラムヒートブロック103の底面(図4Bでは上面)より少なくとも12mm以上底部(図4Bでは上部)方向に長い構造になっている。つまり、カラムヒートブロック103のカラム102と接触する面とは反対側の面は、カラムカートリッジ下部402の底面より、少なくとも12mm小さい。言い換えれば、カラムカートリッジ下部402の底面は、カラムヒートブロック103の底面より少なくとも12mm突出している。
【0050】
カラム交換の際に火傷等のユーザーの安全を考慮し、ユーザーが高温部である可能性のあるカラムヒートブロック103の底面に接触できない構造になっている。
【0051】
カラムカートリッジ下部402の底部の片側は切込みが、もう一方の片側は切込みが無い構造となっており、前述したカラムチェンジ機構105の固定底板217の上部空間から接触可能なヒートブロック(アルミベース)302に、一方向のみ、はめ込むことが出来る構造となっている。このことでカラム交換時には、カラムカートリッジ104の設置方向が一方向にのみ設置可能となるため、カラム102の入口(IN)方向と、出口(OUT)方向を正しい位置に設置することができる。
【0052】
固定底板217はスライドガイド212(図2に示す)を有し、カラム102の交換時にカラムカートリッジ104を設置し、スライドすることができる。また、カラム102の種類によって、カラムカートリッジ下部402の底部の横幅に対しての長さの異なる構造をカラム種類ごとに設けることで、正しいカラム102が設置できる構造となっている。
【0053】
カラムカートリッジ下部402とスライドガイド212の接合部の構造は、横幅に対する長さを特定な構造にする以外にも、円形や楕円形の構造をカラム102の種類ごとに設け、嵌めあいによってカラム102の種類を識別できるようにしてもよい。
【0054】
ヒートブロック(アルミブロック)302は、固定底面217の上面より、少なくとも12mm以上下部(下方)に位置するような構造になっている。カラム交換の際に火傷等のユーザーの安全を考慮し、ユーザーが高温部である可能性のあるカラムヒートブロック103の底面に接触しない構造になっている。
【0055】
カラムカートリッジ104の側面にはRFIDタグ411が備わっており、カラム交換時にRFIDリーダー214により読込みされ、カラム102の種類や製造番号等ステータスを確認する。制御部(制御PC)110により使用回数を計上し、制御部110の表示部等によりカラム交換時期を知らせる。カラム102の交換の際、交換されるカラム102には使用済の記録が書き込まれ、再利用を防止する。
【0056】
次に、可動フェラルコネクタ207について図5を用いて説明する。図5は可動フェラルコネクタ207がカラムカートリッジ104に最も押付けられた際の状態を示す図である。
【0057】
図5において、可動フェラルコネクタ207は、フェラル206、可動コネクタ筐体502、配管押さえ503、内側部材504、外側部材505、止め輪506、板バネ507、バネザガネ508、ストッパ509、配管208を備える。可動フェラルコネクタ筐体502は円筒状であり、内側は中心軸から内径が異なる4段階の円筒状の空間が設けられている。可動フェラルコネクタ筐体502内側の内径の最も小さい円筒状の空間には配管208が配置され、配管押さえ503で押さえられている。
【0058】
可動フェラルコネクタ筐体502内側の内径の2番目に小さい円筒状の空間には、板バネ507が配置され、カラム102固定時には圧縮され、押し付け力となる。可動フェラルコネクタ筐体502内側の内径の3番目に小さい円筒状の空間には、バネザガネ508が配置され、バネザガネ508に接し、配管押さえ503を押さえるように内側部材504が配置されている。外側部材505は内側部材504を押さえるように配置されている。可動フェラルコネクタ筐体502内側の内径の最も大きい円筒状の空間には、ストッパ509が配置され、カラム102固定時の最も押し込んだ状態で外側部材505がストッパ509に接して、外側部材505の動きが停止することで、規定位置より押し込まれ各部材が破損しない構造となっている。
【0059】
可動フェラルコネクタ筐体502内側の内径の最も大きい円筒状の空間のカラム102側には、止め輪506が配置され、カラム102交換時の押し込まない状態で外側部材505が止め輪506に接して、外側部材505の動きが停止することで、可動フェラルコネクタ筐体502から外側部材505が飛び出さない構造となっている。
【0060】
外側部材505の先端にはフェラル206が配置される。配管押さえ503、内側部材504、外側部材505の中心部は配管208が通るように空間が設けられ、配管押さえ503により締め付けられることで配管208は固定される。また、フェラル206も締め付けられることで配管208に固定され、フェラル206から配管208の突き出し量も決まる。
【0061】
カラム102の接続部はテーパ構造になっており、カラム102固定時には、配管208先端とテーパ構造の先端および、フェラル206とテーパ構造が密着することでシールすることができる。カラム102の出口(OUT)側の可動フェラルコネクタ207が左右対称に設けられており、こちら側の可動コネクタ筐体502は、固定金具219(図2参照)を用いて固定壁215に固定される。固定壁215は固定底板217に接続され、固定底板217の下方はカラムチェンジャ断熱材216が、ヒートブロック101と固定底板217を隔てるように配置され、固定底板217、固定壁215および可動フェラルコネクタ207にヒートブロック101からの熱が伝わりにくい構造になっている。
【0062】
カラムチェンジ機構105でのカラム交換作業手順について図6A図6B図6C図6D図6Eを用いて説明する。
【0063】
カラムカートリッジ204の設置方法は、1)初期状態(図6A)、2)カラムカートリッジ104の設置工程(図6B)、3)カラムカートリッジ104の押付け工程(図6C)、4)ファスナ引っ掛け工程(図6D)、5)固定工程(図6E)の工程からなる。
【0064】
図6Aに示すように、1)初期状態においては、カラムチェンジ機構105には、カラムカートリッジ104は設置されていない。2)カラムカートリッジ104の設置工程では、固定底板217上部の空間から接触可能なヒートブロック101に、一方向からカラムカートリッジ104をはめ込む。
【0065】
次に、3)カラムカートリッジ104の押付け工程では、作業者により可動部105Bのファスナ引手209の固定レバー220を回転させてファスナ引手209の固定を解除しながら、可動フェラルコネクタ207を固定底板217に設けられたスライドガイド212に沿って、可動部105Bを図6Cの左から右方向に移動させて、カラムカートリッジ104を右方向に移動し、右側の固定部105Aに押し付ける。ファスナ引手209の固定レバー220の回転運動を、平衡運動に変換することで、可動フェラルコネクタ207とカラムカートリッジ104とを右側の固定部105Aに押付ける。
【0066】
4)ファスナ引っ掛け工程では、右側の固定部105Aのファスナ金具210に、左側の可動部105Bのファスナ引手209を回転させ、引掛ける。3)カラムカートリッジ104の押付け工程と、4)ファスナ引掛け工程は、一連の動作として実施可能である。
【0067】
次に、5)固定工程で、固定レバー220を押してファスナ引手209を固定することにより、カラム104をカラムチェンジ機構105に固定する。カラムチェンジ機構105は、可動フェラルコネクタ207の構造によるシール方法により、配管208に高流量で移動相が送液された場合でも、耐圧を維持することができる。
【0068】
カラム102の取り外しは、上述した1)初期状態)、2)カラムカートリッジ104の設置工程、3)カラムカートリッジ104の押付け工程、4)ファスナ引っ掛け工程、5)固定工程を逆の順序で行うことにより、実行することができる。
【0069】
つまり、固定レバー220を図6Eの右方向に回転させて、ファスナ引手209の固定を解除し、ファスナ引手209をファスナ金具210から外し、図6Dの左方向に回転させ、左側の可動部105Bに戻し、図6Cの状態とする。そして、左側の可動部105Bをカラムカートリッジ104から離間するように、図6Cの左方向(離間する方向)にスライド(移動)して、左右の固定部105A及び可動部105Bに固定されていたカラムカートリッジ104を開放する。これにより、開放されたカラムカートリッジ104を容易に取り出すことができる。
【0070】
本実施例1では、250μL/minで送液した場合、約100MPaの圧力がカラム102に付加されるが、可動フェラルコネクタ207とカラム102の接続部から移動相が漏れることなく、耐圧を維持する機構である。
【0071】
カラムオーブン100の安全機構について図7を用いて説明する。
【0072】
図7において、カラムオーブン筐体701には、カラムチェンジ機構105が搭載され、カラムオーブン庫内の温調を保つために、カラムオーブンカバー702が設置されている。カラムオーブンカバー702の外壁には、取っ手703が設置され、手前から奥にカラムオーブンカバー702を開閉することができる。カラムオーブン庫内には温度センサを内蔵したインターロック機構705が備わっており、設定温度である40°C以上の場合にはカラムオーブンカバー702の開閉はできない機構になっている。開閉可否はカラムオーブンカバー702の外壁に備わったLED704点灯により、目視で開閉の可否を確認することができる。
【0073】
このように本発明の実施例1のカラムオーブン100により、カラムオーブン100に複数のカラム102を搭載した場合でも、カラム102ごとに効率的な熱伝導を可能とし、かつカラムカートリッジ104ごとに認識可能な機構を搭載することでカラム102ごとに設定温度、時間を管理できる。
【0074】
つまり、カラムオーブン100に複数のカラム102を搭載した場合に、カラム102の1本ごとに効率的な熱伝導ができ、カラム102を保持するカラムカートリッジ104を認識でき、カラム102を1本ごとに容易に交換可能な機構を有する分析装置のカラムオーブンを実現することができる。
【0075】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。
【0076】
実施例2では、図8に示すように、カラム102ごとに熱源であるシートヒータ800を構成する構造になっている。実施例1と実施例2の相違は、実施例1では図3に示す通り、ベース板303に加熱部であるシートヒータ300を設けることで複数のカラム102を一括で温調することができる構造になっており、実施例2では、カラム102のそれぞれが配置されるシートヒータ800を複数備える点である。
【0077】
他の構成は、実施例1と実施例2とは同様となっている。
【0078】
実施例2において、実施例1と同様に、ヒートブロック101は温調時にはカラムヒートブロック103と接触し、カラムヒートブロック103はカラム102と接触する。このため、熱源であるシートヒータ800で加熱されたヒートブロック101からカラム102に熱が伝わり、温調することができる。
【0079】
本発明の実施例2では、空調による温度制御ではなく伝熱による温度制御のため、カラム102ごとに互いに異なった温度設定が可能である。
【0080】
本実施例2では、温度センサの接続箇所をヒートブロック101とし、ヒートブロック101の温度を測定しフィードバックする構成とすることが可能であるが、ヒートブロック101、カラムヒートブロック103、カラム102のいずれかの温度を測定するように温度センサを配置してもよい。カラム102の温度の温度正確性は±1°Cで制御可能である。
【0081】
実施例2によれば、実施例1と同様な効果を得ることができる他、複数のカラム102のそれぞれを個々のカラム102に応じた最適な温度に設定することができるという効果がある。
【0082】
実施例1及び実施例2では、図9A及び図9AのA-A’線に沿った断面を示す図9Bのように、円筒状のカラム102は、カラム102とほぼ同径の湾曲溝を上面に有するカラムヒートブロック103の上記湾曲面と接し、熱伝導によりカラム102が加熱される。
【0083】
ただし、カラム102とカラムヒートブロック103との接触面は、上記以外の形状とすることができる。
【0084】
(実施例3)
次に、実施例3について説明する。実施例3は、上述した実施例1及び実施例2におけるカラム102とカラムヒートブロック103との接触面の形状を図9A図9Bに示した形状とは異なる形状とする例である。実施例3のその他の構成は、実施例1または実施例2と同様となっている。
【0085】
図10A及び図10Bは、実施例3におけるカラム1001及びカラムヒートブロック1002を示す図である。図10Bは、図10AのB―B‘線に沿った断面図である。
【0086】
図10A及び図10Bに示す通り、カラム1001の底部1001dを平面状に加工し、上面に平面状の接続部1002uを有するカラムヒートブロック1002の上記接続部1002uと平面接触させる。
【0087】
カラム底部1001d、接続部1002uは、平面であることから加工精度を高くすることが可能であり、より伝熱の接触抵抗を低減し、カラム1001を効率よく加熱することができるという効果がある。
【0088】
なお、ヒートブロック101と、カラムヒートブロック103と、熱源部107はそれぞれ、熱源と総称することができる。
【符号の説明】
【0089】
100:カラムオーブン(カラム温調部)、101 :ヒートブロック、102 :カラム、103 :カラムヒートブロック、104 :カラムカートリッジ、105 :カラムチェンジ機構、105A:固定部、105B:可動部、106 :カラムカートリッジ断熱材、107 :熱源部、108 :温度センサ、109 :サーマルプロテクタ、110 :制御部、111 :ファン、112 :ヒートシンク、206:フェラル、207:可動フェラルコネクタ、208:配管、209:ファスナ引手、210:ファスナ金具、211:カラムカートリッジ押さえ、212:スライドガイド、214:RFIDリーダー、215:固定壁、216:カラムチェンジャ断熱材、217:固定底板、218:受皿、219:固定金具、220:固定レバー、300、800:シートヒータ、302:アルミブロック、303:ベース板、401:カラムカートリッジ上部、402:カラムカートリッジ下部、406:ネジ、411:RFIDタグ、502:可動コネクタ筐体、503:配管押さえ、504:内側部材、505:外側部材、506:止め輪、507:板バネ、508:バネザガネ、509:ストッパ、701:カラムオーブン筐体、702:カラムオーブンカバー、703:取っ手、704:LED、705:インターロック機構、1001:カラム、1001d:カラム底部、1002:カラムヒートブロック、1002u:接続部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B