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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】安全タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20240509BHJP
   B60C 17/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B60C19/00 G
B60C17/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020012459
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021116027
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早苗 隆平
(72)【発明者】
【氏名】中島 郭葵
(72)【発明者】
【氏名】吉住 拓真
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/054211(WO,A1)
【文献】特許第6594504(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/207422(WO,A1)
【文献】特開2010-111172(JP,A)
【文献】特開2015-020671(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0322142(US,A1)
【文献】米国特許第08977422(US,B1)
【文献】特開2018-027777(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054227(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 17/00
B60C 19/00
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接触するトレッドと、
前記トレッドの端に連なり、前記トレッドよりも径方向内側に位置する一対のサイドウォールと、
前記サイドウォールよりも径方向内側に位置する一対のビードと、
前記トレッド及び前記一対のサイドウォールの内側において、一方のビードと他方のビードとを架け渡すカーカスと、
軸方向において前記カーカスの内側に位置し、径方向において前記ビードの外側に位置する一対の補強層と、
少なくとも一方のサイドウォールと前記カーカスとの間に位置する電子部品と
を備え、
前記補強層が、その中央部において厚く、前記中央部から径方向外端に向かって先細りであり、前記中央部から径方向内端に向かって先細りであり、
前記補強層の最大厚さが6.0mm以上8.0mm以下であり、
前記補強層の複素弾性率が前記サイドウォールの複素弾性率よりも大きく、
前記補強層の損失正接が前記サイドウォールの損失正接よりも小さく、
径方向において、前記補強層の最大厚さ位置から外向きに断面高さの5%離れた位置から、前記最大厚さ位置から内向きに断面高さの5%離れた位置までのゾーンに、前記電子部品が配置される、安全タイヤ。
【請求項2】
前記電子部品の内側に位置する前記補強層の厚さと前記補強層の複素弾性率との積の、前記電子部品の外側に位置する前記サイドウォールの厚さと前記サイドウォールの複素弾性率との積に対する比が、4以上である、請求項1に記載の安全タイヤ。
【請求項3】
前記電子部品の外側に位置する前記サイドウォールの厚さと前記サイドウォールの損失正接との積と、前記電子部品の内側に位置する補強層の厚さと前記補強層の損失正接との積との和が、1.1以下である、請求項1又は2に記載の安全タイヤ。
【請求項4】
前記補強層の複素弾性率が7.0MPa以上17.0MPa以下であり、
前記補強層の損失正接が0.08以下である、請求項1から3のいずれかに記載の安全タイヤ。
【請求項5】
前記サイドウォールの複素弾性率が3.0MPa以上7.0MPa以下であり、
前記サイドウォールの損失正接が0.12以下である、請求項1から4のいずれかに記載の安全タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全タイヤに関する。詳細には、本発明は、パンクした状態でも所定の速度で一定距離走行できる安全タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造管理、顧客情報、走行履歴等のデータを管理するために、RFID(Radio Frequency Identification)タグのような電子部品をタイヤに内蔵することが提案されている。そこで、電子部品をタイヤに内蔵する技術について様々な検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/054211号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品に記憶されたデータの読み取りを考慮して、タイヤの最大幅位置付近で、外面に近い部分に、電子部品を配置することが検討される。走行状態では、この部分の変形の程度は大きく、この部分に電子部品を配置すると、耐久性の低下や、電子部品の破損を招く恐れがある。
【0005】
パンクした状態でも所定の速度で一定距離走行できるタイヤとして、安全タイヤがある。この安全タイヤは、サイドウォールの内側であって、カーカスのさらに内側に補強層を備える。この補強層は、略三ケ月形状の断面形状を有し、タイヤの最大幅付近で最大の厚さを示す。この安全タイヤでは、乗り心地の向上の観点から薄い補強層を採用する傾向にあり、データの読み取りを考慮して最大幅位置付近に電子部品を配置した場合、耐久性の低下や、電子部品の破損を招くことが懸念されている。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、耐久性への影響を抑えるとともに、電子部品の破損リスクの低減を図りながら、電子部品に記憶されたデータの読み取り性の向上が達成される、安全タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る安全タイヤは、路面と接触するトレッドと、前記トレッドの端に連なり、前記トレッドよりも径方向内側に位置する一対のサイドウォールと、前記サイドウォールよりも径方向内側に位置する一対のビードと、前記トレッド及び前記一対のサイドウォールの内側において、一方のビードと他方のビードとを架け渡すカーカスと、軸方向において前記カーカスの内側に位置し、径方向において前記ビードの外側に位置する一対の補強層と、少なくとも一方のサイドウォールと前記カーカスとの間に位置する電子部品とを備える。前記補強層は、その中央部において厚く、前記中央部から径方向外端に向かって先細りであり、前記中央部から径方向内端に向かって先細りである。前記補強層の複素弾性率は前記サイドウォールの複素弾性率よりも大きく、前記補強層の損失正接は前記サイドウォールの損失正接よりも小さい。径方向において、前記補強層の最大厚さ位置から外向きに断面高さの5%離れた位置から、前記最大厚さ位置から内向きに断面高さの5%離れた位置までのゾーンに、前記電子部品が配置される。
【0008】
好ましくは、この安全タイヤでは、前記電子部品の内側に位置する前記補強層の厚さと前記補強層の複素弾性率との積の、前記電子部品の外側に位置する前記サイドウォールの厚さと前記サイドウォールの複素弾性率との積に対する比は、4以上である。
【0009】
好ましくは、この安全タイヤでは、前記電子部品の外側に位置する前記サイドウォールの厚さと前記サイドウォールの損失正接との積と、前記電子部品の内側に位置する補強層の厚さと前記補強層の損失正接との積との和は、1.1以下である。
【0010】
好ましくは、この安全タイヤでは、前記補強層の複素弾性率は7.0MPa以上17.0MPa以下であり、前記補強層の損失正接は0.08以下である。
【0011】
好ましくは、この安全タイヤでは、前記サイドウォールの複素弾性率は3.0MPa以上7.0MPa以下であり、前記サイドウォールの損失正接は0.12以下である。
【0012】
好ましくは、この安全タイヤでは、前記補強層の最大厚さは6.0mm以上10.0mm以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る安全タイヤでは、耐久性への影響を抑えるとともに、電子部品の破損リスクの低減を図りながら、電子部品に記憶されたデータの読み取り性の向上が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る安全タイヤの一例が示された断面図である。
図2図2は、安全タイヤの一部が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0016】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。本開示では、特に言及がない限り、タイヤの各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0017】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0018】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤの正規内圧は、例えば、180kPaである。
【0019】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。乗用車用タイヤの正規荷重は、例えば、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0020】
本開示において、タイヤのサイド部とは、路面と接触するトレッド部と、リムに嵌め合わされるビード部との間を架け渡す、タイヤの部位を意味する。
【0021】
本開示においては、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の複素弾性率及び損失正接(tanδとも称される。)は、JIS K6394の規定に準拠し、粘弾性スペクトロメーターを用いて下記の条件にて測定される。
初期歪み=10%
振幅=±1%
周波数=10Hz
変形モード=引張
測定温度=70℃
この測定では、各要素のゴム組成物を加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)からサンプリングされる試験片が用いられる。ゴムシートの作製では、ゴムシート作製に一般的に使用されるプレス成形機が用いられ、ゴムシート作製のための加熱温度は165℃、加熱時間は10分に設定される。
【0022】
本開示において、架橋ゴムとは、ゴム組成物を加圧及び加熱して得られるゴム組成物の成形体である。ゴム組成物は、バンバリーミキサー等の混錬機において、基材ゴム及び薬品を混合することにより得られる未架橋状態のゴムである。架橋ゴムは加硫ゴムとも称され、ゴム組成物は未加硫ゴムとも称される。
【0023】
基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)が例示される。薬品としては、カーボンブラックやシリカのような補強剤、アロマチックオイル等のような可塑剤、酸化亜鉛等のような充填剤、ステアリン酸のような滑剤、老化防止剤、加工助剤、硫黄及び加硫促進剤が例示される。詳述しないが、基材ゴム及び薬品の選定、選定した薬品の含有量等は、ゴム組成物が適用される要素の仕様に応じて、適宜決められる。
【0024】
図1は、本開示の一実施形態に係る安全タイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一例を示す。この安全タイヤ2は、乗用車に装着される。
【0025】
本開示において、安全タイヤ2とは、パンクした状態でも所定の速度で一定距離走行できる空気入りタイヤを意味する。具体的には、安全タイヤ2とは、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を0kPaに調整し、正規荷重の60%の縦荷重をタイヤにかけて、22℃以上28℃以下の範囲で温度を調整した雰囲気で、1.7mの外径を有するドラム(図示されず)の外周面上で、76km/hの速度で、タイヤを走行させたとき、正規状態でのタイヤの断面高さの、20%以上の断面高さを保持した状態で少なくとも80km走行できるタイヤを意味する。
【0026】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。図1においてタイヤ2は、リムR(正規リム)に組まれており、正規状態にある。
【0027】
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0028】
図1において、符号PWはタイヤ2の軸方向外端である。一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離は、このタイヤ2の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。この外端PWは、このタイヤ2が最大幅を示す位置(以下、このタイヤ2の最大幅位置)である。外端PWは、タイヤ2の外面の輪郭に基づいて特定される。模様や文字等の装飾が外面にある場合、この外端PWは、この装飾がないと仮定して得られる仮想外面の輪郭に基づいて特定される。
【0029】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、一対のチェーファー18、インナーライナー20、一対の補強層22及び電子部品24を備える。
【0030】
トレッド4は、その外面の一部、すなわちトレッド面26において路面と接触する。トレッド4には、溝28が刻まれる。トレッド4は、耐摩耗性、グリップ性能等が考慮された架橋ゴムからなる。
【0031】
図1において、符号PCはトレッド面26と赤道面との交点である。この交点PCはタイヤ2の赤道である。赤道PCはタイヤ2の径方向外端でもある。赤道面上に溝28が位置する場合には、溝28がないと仮定して得られる仮想トレッド面の輪郭に基づいて赤道PCは特定される。両矢印Hは、ビードベースラインから赤道PCまでの径方向距離である。この径方向距離Hは、タイヤ2の断面高さ(JATMA等参照)である。
【0032】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4よりも径方向内側に位置する。サイドウォール6は、トレッド4の端からクリンチ8に向かって延びる。サイドウォール6は、耐カット性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0033】
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。クリンチ8は、リムRと接触する。クリンチ8は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0034】
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置する。前述したように、クリンチ8はサイドウォール6よりも径方向内側に位置する。ビード10は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。
【0035】
ビード10は、コア30と、エイペックス32とを備える。コア30はリング状である。コア30はスチール製ワイヤーを含む。エイペックス32は、コア30の径方向外側に位置する。エイペックス32は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。図1に示されるように、エイペックス32は径方向外向きに先細りである。
【0036】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード10と他方のビード10とを架け渡す。カーカス12は、ラジアル構造を有する。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ34を備える。このタイヤ2のカーカス12は、2枚のカーカスプライ34で構成される。
【0037】
内面側のカーカスプライ34(以下、第一カーカスプライ36)は、それぞれのビード10の周りにて折り返される。第一カーカスプライ36は、一方のコア30と他方のコア30とを架け渡す第一プライ本体36aと、この第一プライ本体36aに連なりそれぞれのコア30の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の第一折り返し部36bとを含む。
【0038】
外面側のカーカスプライ34(以下、第二カーカスプライ38)は、それぞれのビード10の周りにて折り返される。第二カーカスプライ38は、一方のコア30と他方のコア30とを架け渡す第二プライ本体38aと、この第二プライ本体38aに連なりそれぞれのコア30の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の第二折り返し部38bとを含む。
【0039】
このタイヤ2では、第一折り返し部36bの端は第二プライ本体38aとベルト14との間に挟まれる。第二折り返し部38bの端は、径方向において、エイペックス32の外端とコア30との間に位置する。このカーカス12は、ウルトラハイターンアップ構造を有する。
【0040】
図示されないが、それぞれのカーカスプライ34は並列された多数のコードを含む。これらコードは赤道面と交差する。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがカーカスプライ34のコードとして用いられる。この有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維及びレーヨン繊維が挙げられる。
【0041】
ベルト14は、トレッド4の径方向内側において、カーカス12と積層される。ベルト14は径方向に積層された少なくとも2層のベルトプライ40で構成される。
【0042】
このタイヤ2のベルト14は、2層のベルトプライ40からなる。図示されないが、この2層のベルトプライ40はそれぞれ、並列された多数のコードを含む。これらコードは赤道面に対して傾斜する。コードの材質はスチールである。
【0043】
バンド16は、径方向においてトレッド4の内側に位置する。このバンド16は、径方向においてトレッド4とベルト14との間に位置する。このタイヤ2のバンド16は、ベルト14全体を覆うフルバンド42と、このフルバンド42の端部を覆う一対のエッジバンド44とで構成される。このバンド16がフルバンド42のみで構成されてもよく、一対のエッジバンド44のみで構成されてもよい。
【0044】
図示されないが、バンド16はコードを含む。フルバンド42及びエッジバンド44のそれぞれにおいて、コードは周方向に螺旋状に巻かれる。有機繊維からなるコードがバンド16のコードとして用いられる。
【0045】
それぞれのチェーファー18は、ビード10の径方向内側に位置する。チェーファー18はリムRと接触する。このタイヤ2のチェーファー18は布とこの布に含浸したゴムとからなる。
【0046】
インナーライナー20は、カーカス12及び補強層22の内側に位置する。インナーライナー20は、タイヤ2の内面を構成する。インナーライナー20は、気体透過性の低い架橋ゴムからなる。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0047】
それぞれの補強層22は、軸方向において、サイドウォール6の内側に位置する。補強層22は、軸方向において、カーカス12の内側に位置する。補強層22は、径方向において、ビード10の外側に位置する。補強層22は、剛性及び低発熱性が考慮された架橋ゴムからなる。図1に示されるように、この補強層22は、その中央部において厚く、中央部から径方向外端に向かって先細りであり、中央部から径方向内端に向かって先細りである。
【0048】
図1において、両矢印tは補強層22の厚さである。符号PMは、補強層22の外面上の特定の位置を表す。補強層22の厚さtは、その内面の法線に沿って計測される、補強層の内面から外面までの距離によって表され、位置PMにおいて、最大の厚さtmを示す。位置PMは、補強層22の最大厚さ位置とも称される。
【0049】
このタイヤ2では、補強層22の最大厚さ位置PMがタイヤ2の最大幅位置PW付近に位置するように、補強層22の形状は整えられる。最大幅位置PW付近とは、最大幅位置PWから径方向外向きに断面高さHの10%離れた位置から、最大幅位置PWから径方向内向きに断面高さHの10%離れた位置までのゾーンを意味する。
【0050】
パンクによって内圧が低下した状態、すなわちパンク状態において、このタイヤ2が装着された車両(図示されず)の支持に、補強層22は貢献する。この観点から、補強層22の最大の厚さtmは6.0mm以上が好ましく、6.5mm以上がより好ましく、7.0mm以上がさらに好ましい。乗り心地の向上の観点から、この補強層22の最大の厚さtmは10.0mm以下が好ましく、9.0mm以下がより好ましく、8.0mm以下がさらに好ましい。
【0051】
このタイヤ2では、一方のサイド部Sに電子部品24が設けられる。図1に示されるように、このタイヤ2では、電子部品24は一方のサイドウォール6とカーカス12との間に位置する。このタイヤ2では、左右のサイド部Sそれぞれに電子部品24が設けられてもよい。この場合、このタイヤ2は一対の電子部品24を備える。
【0052】
電子部品24としては、REIDタグ、圧力センサ、温度センサ、加速度センサ及び磁気センサが挙げられる。このタイヤ2では、電子部品24はRFIDタグである。詳述しないが、RFIDタグは、送受信回路、制御回路、メモリ等をチップ化した半導体と、アンテナとから構成される小型軽量の電子部品24である。RFIDタグは、質問電波を受信すると、これを電気エネルギーとして使用し、メモリ内の諸データを応答電波として発信する。このRFIDタグは、受動式無線周波数識別トランスポンダの一種である。
【0053】
図1において、実線LMは補強層22の最大厚さ位置PMを通り軸方向に延びる直線である。実線LMsは、実線LMから径方向外向きに距離h1離れた位置において軸方向に延びる直線である。実線LMuは、実線LMから径方向内向きに距離h2離れた位置において軸方向に延びる直線である。このタイヤ2では、実線LMsから実線LMuまでのゾーンに電子部品24は配置される。
【0054】
このタイヤ2では、距離h1及び距離h2は断面高さHの5%である。このタイヤ2では、径方向において、補強層22の最大厚さ位置PMから外向きに断面高さHの5%離れた位置から、最大厚さ位置PMから内向きに断面高さHの5%離れた位置までのゾーン(以下、配置ゾーンとも称される。)に、電子部品24が配置される。しかもこの電子部品24はカーカス12の外側であって、サイドウォール6の内側に位置する。この電子部品24は、サイド部Sにおいて、外面に近い位置に配置される。この電子部品24の配置は、電子部品24に記憶されたデータの読み取り性の向上に貢献する。
【0055】
タイヤ2において、最大幅位置PW付近で外面に近い部分の変形の程度は大きい。このため、前述の配置ゾーンで、しかも外面に近い位置に電子部品24を配置すると、耐久性の低下や、電子部品24の破損を招く恐れがある。前述したように、このタイヤ2では、乗り心地の向上の観点から、補強層22の最大の厚さtmが、好ましくは10.0mm以下、より好ましくは9.0mm以下、さらに好ましくは8.0mm以下に設定される。このタイヤ2では、軸方向においてカーカス12の内側に補強層22が位置するものの、乗り心地の向上の観点から、薄い補強層22が用いられるため、この電子部品24の配置が、耐久性の低下や、電子部品24の破損を招くことが懸念される。
【0056】
このタイヤ2では、電子部品24の内側に位置する補強層22の複素弾性率Erはこの電子部品24の外側に位置するサイドウォール6の複素弾性率Esよりも大きく、この補強層22の損失正接LTrはサイドウォール6の損失正接LTsよりも小さい。
【0057】
このタイヤ2では、高い複素弾性率Erを有する補強層22がサイド部Sの変形を抑え、低い複素弾性率Esを有するサイドウォール6がサイド部Sの変形に追従して変形するので、サイド部Sの変形により電子部品24に作用する力が効果的に低減される。さらに、補強層22が高い複素弾性率Erを有する上に、低い損失正接LTrを有するので、電子部品24の内側における発熱が効果的に抑えられる。そして、高い損失正接LTsを有するサイドウォール6が外側に配置されるので、電子部品24の外側では温度が上昇しにくい。このタイヤ2では、電子部品24の周囲の温度上昇が効果的に抑えられる。
【0058】
このタイヤ2では、電子部品24の外側とその内側における剛性及び発熱性が考慮されるので、電子部品24の配置による耐久性への影響が抑えられるとともに、電子部品24の破損リスクの低減が図られる。このタイヤ2では、耐久性への影響を抑えるとともに、電子部品24の破損リスクの低減を図りながら、電子部品24に記憶されたデータの読み取り性の向上が達成される。
【0059】
図2には、図1に示されたタイヤ2のサイド部Sが示される。図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0060】
図2において、符号PEは電子部品24の径方向中心位置を表す。実線LEは、電子部本の径方向中心位置PEを通り、軸方向に延びる直線である。両矢印trで表される長さは、補強層22の厚さである。この厚さtrは、実線LEに沿って計測される。この厚さtrは、電子部品24の内側に位置する補強層22の厚さである。両矢印tsで表される長さは、サイドウォール6の厚さである。この厚さtsは、実線LEに沿って計測される。この厚さtsは、電子部品24の外側に位置するサイドウォール6の厚さである。
【0061】
図2に示されるように、このタイヤ2では、厚さtrを有する補強層22が電子部品24の内側に位置し、この補強層22は複素弾性率Er及び損失正接LTrを有する。このタイヤ2では、厚さtsを有するサイドウォール6が電子部品24の外側に位置し、このサイドウォール6は複素弾性率Es及び損失正接LTsを有する。
【0062】
このタイヤ2では、好ましくは、電子部品24の外側及び内側における剛性が電子部品24の外側の厚さ及び内側の厚さを考慮してコントロールされる。具体的には、電子部品24の内側に位置する補強層22の厚さtrと補強層22の複素弾性率Erとの積tr・Erの、電子部品24の外側に位置するサイドウォール6の厚さtsとサイドウォール6の複素弾性率Esとの積ts・Esに対する比((tr・Er)/(ts・Es))は4以上が好ましい。これにより、電子部品24の外側と内側との剛性バランスが効果的に整えられる。このタイヤ2では、電子部品24の配置による耐久性への影響が抑えられるとともに、電子部品24の破損リスクの低減が図られる。この観点から、この比((tr・Er)/(ts・Es))は5以上がより好ましく、6以上がさらに好ましい。良好な乗り心地が維持される観点から、この比((tr・Er)/(ts・Es))は、8以下が好ましく、7以下がより好ましい。
【0063】
このタイヤ2では、好ましくは、電子部品24の外側及び内側における発熱性が電子部品24の外側の厚さ及び内側の厚さを考慮してコントロールされる。具体的には、電子部品24の外側に位置するサイドウォール6の厚さtsとサイドウォール6の損失正接LTsとの積ts・LTsと、電子部品24の内側に位置する補強層22の厚さtrと補強層22の損失正接LTrとの積tr・LTrとの和((ts・LTs)+(tr・LTr))は1.1以下が好ましい。これにより、電子部品24の周囲において変形に伴う発熱が効果的に抑えられる。このタイヤ2では、電子部品24の配置による耐久性への影響が抑えられるとともに、電子部品24の破損リスクの低減が図られる。この観点から、この和((ts・LTs)+(tr・LTr))は、0.9以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましい。サイド部Sの剛性確保の観点から、この和((ts・LTs)+(tr・LTr))は、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。
【0064】
このタイヤ2では、電子部品24の外側及び内側における剛性及び発熱性が効果的にコントロールできる観点から、電子部品24の内側に位置する補強層22の厚さtrと補強層22の複素弾性率Erとの積tr・Erの、電子部品24の外側に位置するサイドウォール6の厚さtsとサイドウォール6の複素弾性率Esとの積ts・Esに対する比((tr・Er)/(ts・Es))は4以上であり、電子部品24の外側に位置するサイドウォール6の厚さtsとサイドウォール6の損失正接LTsとの積ts・LTsと、電子部品24の内側に位置する補強層22の厚さtrと補強層22の損失正接LTrとの積tr・LTrとの和((ts・LTs)+(tr・LTr))は1.1以下であるのがより好ましい。
【0065】
このタイヤ2では、補強層22の複素弾性率Erは7.0MPa以上17.0MPa以下が好ましい。複素弾性率Erが7.0MPa以上に設定されることにより、補強層22がサイド部Sの剛性確保に貢献する。このタイヤ2では、耐久性の向上が図られるとともに、電子部品24の破損の発生が抑えられる。この観点から、複素弾性率Erは8.0MPa以上がより好ましく、9.0MPa以上がさらに好ましい。この複素弾性率Erが17.0MPa以下に設定されることにより、補強層22による乗り心地への影響が抑えられる。この観点から、この複素弾性率Erは16.0MPa以下がより好ましく、15.0MPa以下がさらに好ましい。
【0066】
このタイヤ2では、補強層22の損失正接LTrは0.08以下が好ましい。これにより、補強層22における発熱が効果的に抑えられる。サイド部Sが適切な温度で維持されるので、発熱による耐久性への影響及び電子部品24の通信障害の発生が抑えられる。この観点から、損失正接LTrは0.07以下がより好ましく、0.06以下がさらに好ましい。発熱性の観点においては、損失正接は小さいほど好ましいので、この補強層22の損失正接LTrの好ましい下限値は設定されない。
【0067】
このタイヤ2では、耐久性への影響を抑えるとともに、電子部品24の破損リスクの低減を図りながら、電子部品24に記憶されたデータの読み取り性の向上が達成される観点から、補強層22の複素弾性率Erが7.0MPa以上17.0MPa以下であり、補強層22の損失正接LTrが0.08以下であるのがより好ましい。
【0068】
このタイヤ2では、サイドウォール6の複素弾性率Esは3.0MPa以上7.0MPa以下が好ましい。複素弾性率Esが3.0MPa以上に設定されることにより、サイドウォール6がサイド部Sの剛性確保に貢献する。このタイヤ2では、耐久性の向上が図られるとともに、電子部品24の破損の発生が抑えられる。この観点から、複素弾性率Esは3.2MPa以上がより好ましく、3.5MPa以上がさらに好ましい。この複素弾性率Esが7.0MPa以下に設定されることにより、サイドウォール6による乗り心地への影響が抑えられる。この観点から、この複素弾性率Esは6.0MPa以下がより好ましく、5.0MPa以下がさらに好ましい。
【0069】
このタイヤ2では、サイドウォール6の損失正接LTsは0.12以下が好ましい。これにより、サイドウォール6における発熱が効果的に抑えられる。サイド部Sが適切な温度で維持されるので、発熱による耐久性への影響及び電子部品24の通信障害の発生が抑えられる。この観点から、損失正接LTsは0.10以下がより好ましく、0.08以下がさらに好ましい。発熱性の観点においては、損失正接は小さいほど好ましいので、このサイドウォール6の損失正接LTsの好ましい下限値は設定されない。
【0070】
このタイヤ2では、耐久性への影響を抑えるとともに、電子部品24の破損リスクの低減を図りながら、電子部品24に記憶されたデータの読み取り性の向上が達成される観点から、サイドウォール6の複素弾性率Esは3.0MPa以上7.0MPa以下であり、サイドウォール6の損失正接LTsが0.12以下であるのがより好ましい。
【0071】
前述したように、このタイヤ2では、電子部品24の内側に位置する補強層22の複素弾性率Erはこの電子部品24の外側に位置するサイドウォール6の複素弾性率Esよりも大きい。このタイヤ2では、耐久性への影響を抑えるとともに、電子部品24の破損リスクの低減を図りながら、電子部品24に記憶されたデータの読み取り性の向上が達成される観点から、補強層22の複素弾性率Erとサイドウォール6の複素弾性率Esとの差(Er-Es)は、3.0MPa以上が好ましく、4.0MPa以上がより好ましく、5.0MPa以上がさらに好ましい。この差(Er-Es)は、8.0MPa以下が好ましく、7.0MPa以下がより好ましく、6.0MPa以下がさらに好ましい。
【0072】
前述したように、このタイヤ2では、電子部品24の内側に位置する補強層22の損失正接LTrはこの電子部品24の外側に位置するサイドウォール6の損失正接LTsよりも小さい。このタイヤ2では、耐久性への影響を抑えるとともに、電子部品24の破損リスクの低減を図りながら、電子部品24に記憶されたデータの読み取り性の向上が達成される観点から、サイドウォール6の損失正接LTsと補強層22の損失正接LTrとの差(LTs-LTr)は、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上がさらに好ましい。
【0073】
以上説明したように、本発明によれば、耐久性への影響を抑えるとともに、電子部品24の破損リスクの低減を図りながら、電子部品24に記憶されたデータの読み取り性の向上が達成される、安全タイヤ2が得られる。
【実施例
【0074】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
[ゴム組成物の準備]
サイドウォール及び補強層のために下記の表1に示された6種類のゴム組成物(A~F)を準備した。それぞれのゴム組成物について、ゴム組成物を加圧及び加熱してシート状の架橋ゴムを作製し、複素弾性率Eと損失正接LTを測定した。その結果が、下記の表1に示されている。各組成物に含まれる配合成分は次の通りである。
NR(天然ゴム):TSR20
BR(ブチルゴム):宇部興産社製の「UBEPOL BR150B」
CB(カーボンブラック):昭和キャボット社製のN550
ZnO(酸化亜鉛):三井金属鉱業社製の「亜鉛華1号」
ステアリン酸:日油社製の「椿」
オイル:出光興産社製の「ダイアナプロセス AH-24」
ワックス:大内新興化学工業社製の「サンノック N」
老化防止剤A:大内新興化学工業社製の「ノクラック 6C」
老化防止剤B:大内新興化学工業社製の「ノクラック RD」
硫黄:鶴見化学工業社製の「不溶性硫黄」
加硫促進剤:三新化学工業社製の「サンセラー NS-G」
【0076】
【表1】
【0077】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表3に示された仕様を備えた安全タイヤ(タイヤサイズ=245/40R18)を得た。電子部品には、3mm×3mm×0.4mmのICチップの両側に30mmのアンテナが設けられたRFIDタグが用いられた。
【0078】
この実施例1では、補強層のためのゴム組成物にはゴム組成物Eが用いられた。サイドウォールのゴム組成物には、ゴム組成物Bが用いられた。
【0079】
この実施例1では、電子部品は配置ゾーン内に配置された。このことが、下記の表3の位置の欄に「Y」で表されている。この実施例1では、補強層の最大厚み位置PMがタイヤの最大幅位置PWと径方向において略一致するように、補強層の形状が整えられた。
【0080】
この実施例1では、電子部品の内側に位置する補強層の厚さtrは8.0mmであった。電子部品の外側に位置するサイドウォールの厚さtsは、3.0mmであった。
【0081】
この実施例1では、補強層の厚さtrと複素弾性率Erとの積の、サイドウォールの厚さtsと複素弾性率Esとの積に対する比((tr・Er)/(ts・Es))は、6.86であった。サイドウォールの厚さtsと損失正接LTsとの積と、補強層の厚さtrと損失正接LTrとの積との和((ts・LTs)+(tr・LTr))は、0.86であった。
【0082】
[実施例2-4及び比較例1-4]
補強層のゴム組成物及びサイドウォールのゴム組成物を下記の表2及び3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-4及び比較例1-4のタイヤを得た。
【0083】
[比較例5-6]
電子部品の配置位置を変えた他は実施例1と同様にして、比較例5-6のタイヤを得た。比較例5では、電子部品は、配置ゾーンの径方向外側、具体的には、トレッドとサイドウォールとの境界付近であって、カーカスと補強層との間に配置された。このことが、下記の表3の位置の欄に「OS」で表されている。比較例6では、電子部品は、配置ゾーンの径方向内側、具体的には、リムのフランジの径方向外側であって、クリンチとカーカスとの間に配置された。このことが、下記の表3の位置の欄に「IS」で表されている。ベルト及びバンドの端が近接するため、トレッドとサイドウォールとの境界付近であって、サイドウォールとカーカスとの間に電子部品を配置することは検討しなかった。
【0084】
[実施例5-8]
補強層の厚さtrを下記の表4に示される通りとした他は実施例2と同様にして、実施例5-8のタイヤを得た。
【0085】
[耐久性]
試作タイヤをリム(サイズ=18×8J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を200kPaに調整した。このタイヤを試験車両(排気量3500ccの前輪駆動車)の全輪に装着し、この試験車両を一般道で走行させた。10000km走行後、タイヤの損傷状況を確認した。その結果が、下記の表2-4に示されている。損傷の発生がなかった場合が「G」で、損傷の発生が確認された場合が「NG」で表されている。
【0086】
[データの読み取り性]
前述の耐久性評価の前後で、試験車両に装着した4本のタイヤそれぞれについて、データ読み取り可能位置の数を調査した。測定位置は、図2において円で示された3か所(x、y及びz)とした。それぞれの測定位置に、電子部品に対する送受信機を設置して、データの読み取りが可能かどうかを確認し、データの読み取り可能位置の数を得た。
耐久性評価前のデータ読み取り可能位置の数に対する、耐久性評価直後のデータ読み取り可能位置の数の比を算出し、4本のタイヤの平均値を得た。その結果が、下記の格付けで下記の表2-4に示されている。
A・・・平均値が60%以上である。
B・・・平均値が50%以上60%未満である。
C・・・平均値が0%を超え50%未満である。
D・・・平均値が0%である(温度の影響又は電子部品の破損により、全ての測定点においてデータの読み取りができなかった。)。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
表2-4に示されているように、実施例では、耐久性への影響を抑えるとともに、電子部品の破損リスクの低減を図りながら、電子部品に記憶されたデータの読み取り性の向上が達成されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明された、耐久性への影響を抑えるとともに、電子部品の破損リスクの低減を図りながら、電子部品に記憶されたデータの読み取り性の向上を達成させるための技術は種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0092】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・クリンチ
10・・・ビード
12・・・カーカス
20・・・インナーライナー
22・・・補強層
24・・・電子部品
36・・・第一カーカスプライ
38・・・第二カーカスプライ
図1
図2