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特許7484196付加硬化型シリコーン粘着剤組成物およびその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】付加硬化型シリコーン粘着剤組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/07 20060101AFI20240509BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20240509BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240509BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20240509BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240509BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20240509BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20240509BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240509BHJP
【FI】
C09J183/07
C08L83/07
C08L83/05
C09J183/05
C09J11/04
C09J9/02
C09J7/20
C09J7/38
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020016200
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021123620
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 滉平
(72)【発明者】
【氏名】北川 太一
(72)【発明者】
【氏名】松本 展明
(72)【発明者】
【氏名】小材 利之
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124417(WO,A1)
【文献】特開2009-030028(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065398(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/040383(WO,A1)
【文献】特開2019-019241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/20,7/38,
9/02,11/04,
183/05,183/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)重量平均分子量が500~30,000、かつ、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が(B)成分100gあたり0.001~1.000molである、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン:5~500質量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基の合計に対して(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.1~5.0倍モルとなる量、および
(D)白金族金属系触媒
のみを含有し、非架橋性のオルガノポリシロキサンレジンを含まず、(i)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個ずつ有するシロキサン、(ii)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサン、(iii)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシランもしくはシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物、および(iv)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシランもしくはオルガノシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着促進剤を含まないことを特徴とする付加硬化型シリコーン粘着剤組成物。
【請求項2】
(A)ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)重量平均分子量が500~30,000であり、かつ、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が(B)成分100gあたり0.001~1.000molである、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン:5~500質量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基の合計に対して(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.1~5.0倍モルとなる量、
(D)白金族金属系触媒、および
(E)有機溶剤:前記(A)成分100質量部に対して、1~10,000質量部
のみを含有し、非架橋性のオルガノポリシロキサンレジンを含まず、(i)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個ずつ有するシロキサン、(ii)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサン、(iii)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシランもしくはシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物、および(iv)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシランもしくはオルガノシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着促進剤を含まないことを特徴とする付加硬化型シリコーン粘着剤組成物。
【請求項3】
(A)ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)重量平均分子量が500~30,000であり、かつ、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が(B)成分100gあたり0.001~1.000molである、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン:5~500質量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基の合計に対して(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.1~5.0倍モルとなる量、
(D)白金族金属系触媒、および
(F)帯電防止剤:前記(A)成分100質量部に対して、0.001~10質量部
のみを含有し、非架橋性のオルガノポリシロキサンレジンを含まず、(i)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個ずつ有するシロキサン、(ii)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサン、(iii)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシランもしくはシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物、および(iv)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシランもしくはオルガノシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着促進剤を含まないことを特徴とする付加硬化型シリコーン粘着剤組成物。
【請求項4】
(A)ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)重量平均分子量が500~30,000であり、かつ、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が(B)成分100gあたり0.001~1.000molである、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン:5~500質量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基の合計に対して(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.1~5.0倍モルとなる量、
(D)白金族金属系触媒、
(E)有機溶剤:前記(A)成分100質量部に対して、1~10,000質量部、および
(F)帯電防止剤:前記(A)成分100質量部に対して、0.001~10質量部
のみを含有し、非架橋性のオルガノポリシロキサンレジンを含まず、(i)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個ずつ有するシロキサン、(ii)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサン、(iii)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシランもしくはシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物、および(iv)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシランもしくはオルガノシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着促進剤を含まないことを特徴とする付加硬化型シリコーン粘着剤組成物。
【請求項5】
(A)ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)重量平均分子量が500~30,000であり、かつ、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が(B)成分100gあたり0.001~1.000molである、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン:5~500質量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基の合計に対して(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.1~5.0倍モルとなる量、
(D)白金族金属系触媒、および
(G)反応制御剤:前記(A)成分100質量部に対して、0.01~5.0質量部
のみを含有し、非架橋性のオルガノポリシロキサンレジンを含まず、(i)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個ずつ有するシロキサン、(ii)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサン、(iii)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシランもしくはシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物、および(iv)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシランもしくはオルガノシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着促進剤を含まないことを特徴とする付加硬化型シリコーン粘着剤組成物。
【請求項6】
(A)ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)重量平均分子量が500~30,000であり、かつ、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が(B)成分100gあたり0.001~1.000molである、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン:5~500質量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基の合計に対して(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.1~5.0倍モルとなる量、
(D)白金族金属系触媒、
(E)有機溶剤:前記(A)成分100質量部に対して、1~10,000質量部、
(G)反応制御剤:前記(A)成分100質量部に対して、0.01~5.0質量部
のみを含有し、非架橋性のオルガノポリシロキサンレジンを含まず、(i)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個ずつ有するシロキサン、(ii)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサン、(iii)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシランもしくはシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物、および(iv)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシランもしくはオルガノシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着促進剤を含まないことを特徴とする付加硬化型シリコーン粘着剤組成物。
【請求項7】
(A)ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)重量平均分子量が500~30,000であり、かつ、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が(B)成分100gあたり0.001~1.000molである、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン:5~500質量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基の合計に対して(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.1~5.0倍モルとなる量、
(D)白金族金属系触媒、および
(F)帯電防止剤:前記(A)成分100質量部に対して、0.001~10質量部、
(G)反応制御剤:前記(A)成分100質量部に対して、0.01~5.0質量部
のみを含有し、非架橋性のオルガノポリシロキサンレジンを含まず、(i)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個ずつ有するシロキサン、(ii)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサン、(iii)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシランもしくはシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物、および(iv)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシランもしくはオルガノシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着促進剤を含まないことを特徴とする付加硬化型シリコーン粘着剤組成物。
【請求項8】
(A)ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)重量平均分子量が500~30,000であり、かつ、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が(B)成分100gあたり0.001~1.000molである、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン:5~500質量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基の合計に対して(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.1~5.0倍モルとなる量、
(D)白金族金属系触媒、
(E)有機溶剤:前記(A)成分100質量部に対して、1~10,000質量部、および
(F)帯電防止剤:前記(A)成分100質量部に対して、0.001~10質量部
(G)反応制御剤:前記(A)成分100質量部に対して、0.01~5.0質量部
のみを含有し、非架橋性のオルガノポリシロキサンレジンを含まず、(i)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個ずつ有するシロキサン、(ii)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサン、(iii)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシランもしくはシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物、および(iv)一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基とケイ素原子結合エポキシ基含有一価有機基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシランもしくはオルガノシロキサンと、一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個ずつ有するオルガノシロキサンの混合物もしくは反応混合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着促進剤を含まないことを特徴とする付加硬化型シリコーン粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物を硬化させてなるシリコーン硬化物。
【請求項10】
粘着力が0.001MPa以上である請求項9記載のシリコーン硬化物。
【請求項11】
引張強度が0.3MPa以上である請求項9または10記載のシリコーン硬化物。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項記載のシリコーン硬化物からなる粘着剤。
【請求項13】
請求項9~11のいずれか1項記載のシリコーン硬化物からなる粘着シート。
【請求項14】
請求項9~11のいずれか1項記載のシリコーン硬化物からなる微小構造体転写用スタンプ。
【請求項15】
少なくとも1つの凸状構造を有する請求項14記載の微小構造体転写用スタンプ。
【請求項16】
請求項14または15記載の微小構造体転写用スタンプを備えた微小構造体転写装置。
【請求項17】
請求項9~11のいずれか1項記載のシリコーン硬化物からなる粘着剤層を有する微小構造体保持基板。
【請求項18】
請求項17記載の微小構造体保持基板を備えた微小構造体転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型シリコーン粘着剤組成物およびその硬化物に関し、さらに詳述すると、微小物体の一時的な仮固定材に好適に使用できる、付加硬化型シリコーン粘着剤組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、ディスプレイ、車載部品等に代表されるようなエレクトロニクス機器には、高性能化のみならず、省スペース化、省エネルギー化も同時に求められている。そのような社会的要請に応じ、搭載される電気電子部品も益々小型化・微細化しており、その組立工程も年々複雑化し、困難になっている。
【0003】
微細化が進む半導体デバイスの一例として、マイクロLEDが挙げられる。
マイクロLEDは、数μm~数十μm程度と極めて微細であるため、一般的なLED用のボンダー等では移送することが困難である。そこで、マイクロLEDを移送するための仮固定材として、シリコーン粘着剤組成物を基材等の上で硬化・成型した粘着性物品が利用される。
【0004】
この用途に用いる粘着材料としてシリコーンエラストマーが知られており、加熱硬化型のシリコーン系粘着剤が多く提案されている(特許文献1~3)。
しかし、これらの粘着剤は、主に粘着テープ向けに開発されており、粘着性付与剤として架橋に関与しない固体レジン成分が含まれている。未架橋のレジン成分は糊移りの原因となり、マイクロ・トランスファー・プリンティング材料として使用した際に材料が素子等に残存するおそれがある。
さらに、これらの材料の強度は十分でなく、成型時や素子等を移送時に凝集破壊する可能性もある。
【0005】
そのため、架橋に関与しない固体レジン成分を含まずに十分な粘着力と強度を有する付加硬化型粘着シリコーン材料が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5825738号公報
【文献】特許第2631098号公報
【文献】特許第5234064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、仮固定材として優れた粘着性を有し、材料成分の移行が極めて少ない硬化物を与える付加硬化型シリコーン粘着剤組成物およびその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ビニル基を有するオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ビニル基を有するポリシロキサンレジンを用いることで、MQレジン(M単位およびQ単位からなるポリシロキサン)のような非架橋性レジン成分を含まなくとも良好な粘着性を有する硬化物を与える付加硬化型シリコーン粘着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. (A)ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン:5~500質量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:組成物中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基の合計に対して(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.1~5.0倍モルとなる量、および
(D)白金族金属系触媒
を含有し、非架橋性のオルガノポリシロキサンレジンを含まないことを特徴とする付加硬化型シリコーン粘着剤組成物、
2. (E)有機溶剤を、前記(A)成分100質量部に対して、1~10,000質量部含む1の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物、
3. (F)帯電防止剤を、前記(A)成分100質量部に対して、0.001~10質量部含む1または2の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物、
4. (G)反応制御剤を、前記(A)成分100質量部に対して、0.01~5.0質量部含有する1~3のいずれかの付加硬化型シリコーン粘着剤組成物、
5. 1~4のいずれかの付加硬化型シリコーン粘着剤組成物を硬化させてなるシリコーン硬化物、
6. 粘着力が0.001MPa以上である5のシリコーン硬化物、
7. 引張強度が0.3MPa以上である5または6のシリコーン硬化物、
8. 5~7のいずれかのシリコーン硬化物からなる粘着剤、
9. 5~7のいずれかのシリコーン硬化物からなる粘着シート、
10. 5~7のいずれかのシリコーン硬化物からなる微小構造体転写用スタンプ、
11. 少なくとも1つの凸状構造を有する10の微小構造体転写用スタンプ、
12. 10または11の微小構造体転写用スタンプを備えた微小構造体転写装置、
13. 5~7のいずれかのシリコーン硬化物からなる粘着剤層を有する微小構造体保持基板、
14. 13の微小構造体保持基板を備えた微小構造体転写装置
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物の硬化物は、仮固定材として優れた粘着性を有し、剥離した際の材料移行が極めて少ない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の微小構造体転写用スタンプの一例を示す概略図である。
図2】本発明の微小構造体転写用スタンプの一例を示す概略図である。
図3】本発明の微小構造体転写用スタンプの製造方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る付加硬化型シリコーン粘着剤組成物は、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン
(B)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(D)白金族金属系触媒
を含有することを特徴とする。
【0013】
(A)オルガノポリシロキサン
(A)成分は、本組成物の架橋成分であり、25℃における粘度が0.01~1,000Pa・s、好ましくは0.05~500Pa・sであり、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。25℃における粘度が0.01Pa・s未満であると、硬化物の粘着力が低くなり、1,000Pa・sを超えると、作業性が悪化する。なお、上記粘度は回転粘度計による測定値(以下、同様とする)である。
このようなオルガノポリシロキサンは、上記粘度とアルケニル基含有量を満たすものであれば、特に限定されるものではなく、公知のオルガノポリシロキサンを使用することができ、その構造も直鎖状でも分岐状でもよく、また異なる粘度を有する2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物でもよい。
【0014】
ケイ素原子と結合するアルケニル基は、特に限定されるものではないが、炭素数2~10のアルケニル基が好ましく、炭素数2~8のアルケニル基がより好ましい。
その具体例としては、ビニル、アリル、1-ブテニル、1-ヘキセニル基等が挙げられる。これら中でも、合成のし易さやコストの面からビニル基が好ましい。
なお、アルケニル基は、オルガノポリシロキサンの分子鎖の末端、途中のいずれに存在してもよいが、柔軟性の面では両末端にのみ存在することが好ましい。
【0015】
ケイ素原子と結合するアルケニル基以外の有機基は、特に限定されるものではないが、炭素数1~20の1価炭化水素基が好ましく、炭素数1~10の1価炭化水素基がより好ましい。
その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-ドデシル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。
また、これらの炭化水素基の水素原子の一部または全部は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換されていてもよく、その具体例としては、フルオロメチル基、ブロモエチル基、クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換1価炭化水素基が挙げられる。
これらの中でも、合成のし易さやコストの面から90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
したがって、(A)成分は、両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサンが特に好ましい。なお、(A)成分は、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
このような(A)成分の具体例としては、下記式で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
【化1】
(式中、Meは、メチル基を意味する。以下、同様。)
【0018】
(B)オルガノポリシロキサンレジン
(B)成分は、アルケニル基を有する架橋性レジンであり、硬化物の硬度や強度を向上させると同時に、硬化物に粘着性を発現させる役割を有する。
一般的なシリコーン粘着剤は、非架橋性レジンを配合することにより粘着性を付与している。このような粘着剤を素子等の仮固定材として利用すると、架橋構造に取り込まれていない非架橋性レジンが素子上へ移行してしまう。
これに対し、本発明の組成物で使用する(B)成分は、アルケニル基を有しており、硬化時に架橋構造に取り込まれるため、硬化物を仮固定材として使用した際に素子への材料移行を極めて少なくすることができる。
【0019】
(B)成分の重量平均分子量は、500~30,000が好ましく、1,000~20,000がより好ましい。このような範囲であると、組成物の作業性と硬化物の粘着力が良好となる。なお、重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)における標準ポリスチレン換算値である。
【0020】
(B)成分中、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量は、(B)成分100gあたり0.001~1.000molが好ましく、0.010~0.500molがより好ましい。この範囲であると、硬化物の粘着力と機械物性が良好となる。
【0021】
(B)成分は、RSiO3/2(ここで、Rは、置換または非置換の1価単価水素基を表す。)で表される三官能性シロキサン単位(即ち、オルガノシルセスキオキサン単位)およびSiO4/2で表される四官能性シロキサン単位の少なくとも一種の分岐形成単位を含有することが好ましい。
また、(B)成分のオルガノポリシロキサンレジンは、単官能性シロキサン単位(即ち、トリオルガノシロキシ単位)および/または二官能性シロキサン単位(即ち、ジオルガノシロキサン単位)を任意に含むことができるが、RSiO3/2単位およびSiO4/2単位の合計の含有量は、好ましくは(B)成分のオルガノポリシロキサン樹脂中の全シロキサン単位の10モル%以上、より好ましくは20~90モル%である。
【0022】
上記RSiO3/2単位において、Rで表される置換または非置換の1価炭化水素基としては、炭素原子数1~10のものが好ましく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;ビニル、アリル(2-プロペニル)、1-プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル基等のアルケニル基(本明細書ではアルケニル基を、シクロアルケニル基を包含する意味で使用する。);フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ビフェニリル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル基等のアラルキル基;メチルベンジル基等のアルカリール基などが挙げられる。
また、これらの炭化水素基の1個以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、またはシアノ基などで置換されていてもよく、そのような置換炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、2-ブロモエチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
【0023】
このような(B)成分としては、例えば、R1 3SiO1/2単位とR12SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、R1 3SiO1/2単位とR1 2SiO2/2単位とR12SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、R1 3SiO1/2単位とR1 22SiO1/2単位とR1 2SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、R1 3SiO1/2単位とR1 22SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、R1 22SiO1/2単位とR1 2SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、R12SiO2/2単位とR1SiO3/2単位および/またはR2SiO3/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0024】
上記式中、R1は、不飽和脂肪族結合を有しない置換または非置換の1価炭化水素基であり、例えば、上記Rで例示した1価炭化水素基の内、アルケニル基以外の基が挙げられる。特に、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル基等のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが好ましい。
2は、アルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、へプテニル基等が挙げられる。
【0025】
さらに具体的には、例えば、(CH33SiO1/2単位と(CH2=CH)SiO3/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位と(CH2=CH)SiO3/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH33SiO1/2単位と(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、これらのメチル基の一部がフェニル基で置換されたもの等が挙げられる。
【0026】
(B)成分の具体例としては、以下の平均単位式で表されるものが挙げられる。式中、Viはビニル基を表す(以下、同様)。
(Me3SiO1/20.35(ViMe2SiO1/20.1(SiO4/20.55
(Me3SiO1/20.4(ViMe2SiO1/20.1(SiO4/20.5
(ViMeSiO)0.4(Me2SiO)0.15(MeSiO3/20.45
(ViMe2SiO1/20.2(Me2SiO)0.25(MeSiO3/20.55
(Me3SiO1/20.2(ViMe2SiO1/20.05(MeSiO3/20.75
【0027】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、5~500質量部であるが、10~400質量部が好ましい。(B)成分が5質量部未満の場合、仮固定材として十分な粘着性が得られず、450質量部を超えると、粘着性が発現しない。
なお、(B)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)成分は、1分子中に少なくとも2個(通常、2~300個)、好ましくは3個以上(例えば、3~150個程度)のケイ素原子に結合する水素原子(即ち、SiH基)を含有するものであり、直鎖状、分岐状、環状、或いは三次元網状構造の樹脂状物のいずれでもよい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中のケイ素原子数(即ち、重合度)が、通常、2~300個、好ましくは3~200個程度のものであればよい。
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの代表例としては、例えば、下記平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
a3 bSiO(4-a-b)/2・・・(1)
(式中、R3は、それぞれ独立して、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の1価炭化水素基であり、aおよびbは、0<a<2、0.8≦b≦2かつ0.8<a+b≦3となる数、好ましくは0.05≦a≦1、1.5≦b≦2かつ1.8≦a+b≦2.7となる数である。)
【0029】
上記R3の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基としては、炭素原子数1~10のものが好ましく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ビフェニリル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル基等のアラルキル基;メチルベンジル基等のアルカリール基や、これらの炭化水素基の1個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、またはシアノ基などで置換された、クロロメチル、2-ブロモエチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
これらの中でも、炭素原子数が1~7のものが好ましく、メチル基等の炭素原子数1~3のアルキル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基がより好ましい。
【0030】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,8-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン等のシロキサンオリゴマー;メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等;R3 2(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意にR3 3SiO1/2単位、R3 2SiO2/2単位、R3(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位またはR3SiO3/2単位を含み得るシリコーンレジン(但し、式中、R3は上記と同じ意味を表す。)などや、上記の例示化合物においてメチル基の一部がエチル基、n-プロピル基等のその他のアルキル基および/またはフェニル基で置換されたものなどが挙げられる。
【0031】
本発明の組成物に用いるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、公知の方法で得ることができ、例えば、R3SiHCl2およびR3 2SiHCl(式中、R3は上記と同じ意味を表す。)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを共加水分解し、またはこのクロロシランとR3 3SiClおよびR3 2SiCl2(式中、R3は上記と同じ意味を表す。)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを組み合わせて共加水分解して得ることができる。また、本発明の組成物に用いるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、このように共加水分解して得られたポリシロキサンをさらに平衡化反応に供して得られた生成物でもよい。
【0032】
(C)成分の量は、(A)成分と(B)成分のオルガノポリシロキサンが有するケイ素原子結合アルケニル基の合計1個当たり、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)が、0.1~5.0個であるが、0.2~2.0個となるような量が好ましい。
なお、(C)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
(D)白金族金属系触媒
(D)成分の白金族金属系触媒は、(A)成分および(B)成分のアルケニル基と(C)成分のSi-H基との間の付加反応を促進するものであればよく、従来公知のものを使用することができるが、中でも、白金および白金化合物から選ばれる触媒が好ましい。
触媒の具体例としては、白金(白金黒を含む。)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・H2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O(但し、式中のnは0~6の整数であり、好ましくは0または6である。)等の塩化白金、塩化白金酸、塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸;塩化白金酸とオレフィンとの錯体;白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム-オレフィン錯体、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸または塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサンとの錯体などが挙げられ、これらは、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
(D)成分の配合量は、触媒としての有効量であり、(A)成分および(B)成分と、(C)成分の反応を進行できる量であればよく、希望する硬化速度に応じて適宜調整すればよい。
特に、(A)成分の質量に対して、白金族金属原子に換算した質量基準で0.1~10,000ppmとなる量が好ましく、1~5,000ppmとなる量がより好ましい。(D)成分の配合量が上記範囲であると、より効率のよい触媒作用が期待できる。
【0035】
(E)有機溶剤
本発明のシリコーン組成物は、上記(A)~(D)成分の所定量を配合することによって得られる無溶媒型の組成物とすることもできるが、必要により有機溶剤で希釈した溶剤型組成物として使用することもできる。有機溶剤で希釈することで、塗工作業性の改善、スピンコーターでの塗布性向上や膜厚制御、塗工皮膜の厚さや表面の仕上がり状態など塗工皮膜状態の改善など実用上の利点が得られる。
【0036】
使用可能な有機溶剤は、シリコーンを溶解できる化合物であればいずれのものでもよく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系化合物;ヘキサン、ヘプタン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル化合物などが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤を用いる場合、その配合量としては、(A)成分100質量部に対して1~10,000質量部が好ましく、10~5,000質量部がより好ましい。1質量部未満では希釈による利点が得られない場合があり、10,000質量部を超えると塗布後の膜厚が薄くなり過ぎてしまう場合がある。
【0037】
(F)帯電防止剤
本発明の組成物には、表面抵抗率を低下させ、材料に帯電防止性を付与する目的で(F)成分として帯電防止剤を添加してもよい。
帯電防止剤としては、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩、またはイオン液体が挙げられる。ここで、イオン液体とは、室温(25℃)で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、特に融点が50℃以下のものをいうが、融点-100~30℃のものが好ましく、-50~20℃のものがより好ましい。このようなイオン液体は、蒸気圧がない(不揮発性)、高耐熱性、不燃性、化学的安定である等の特性を有する。
【0038】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらの具体例としては、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiAsF6、LiCl、NaSCN、KSCN、NaCl、NaI、KI等のアルカリ金属塩;Ca(ClO42、Ba(ClO42等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。
これらの中でも、低抵抗値と溶解度の点から、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiAsF6、LiCl等のリチウム塩が好ましく、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22がより好ましい。
【0039】
イオン液体は、4級アンモニウムカチオンとアニオンとからなる。この4級アンモニウムカチオンは、イミダゾリウム、ピリジニウムまたは式:R6 4+[式中、R6は、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1~20の有機基である。]で表されるカチオンのいずれかの形態である。
【0040】
上記R6で表される有機基の具体例としては、炭素原子数1~20の一価炭化水素基、アルコキシアルキル基等が挙げられ、より具体的には、メチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;エトキシエチル基(-CH2CH2OCH2CH3)等のアルコキシアルキル基などが挙げられる。なお、R6で表される有機基のうちの2個が結合して環状構造を形成してもよく、この場合には2個のR6が一緒になって2価の有機基を形成する。この2価の有機基の主鎖は、炭素のみで構成されていてもよいし、その中に酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、例えば、2価炭化水素基[例えば、炭素原子数3~10のアルキレン基]、式:-(CH2c-O-(CH2d-[式中、cは1~5の整数であり、dは1~5の整数であり、c+dは4~10の整数である。]等が挙げられる。
【0041】
上記R6 4+で表されるカチオンの具体例としては、メチルトリn-オクチルアンモニウムカチオン、エトキシエチルメチルピロリジニウムカチオン、エトキシエチルメチルモルホリニウムカチオン等が挙げられる。
上記アニオンとしては、特に制限はないが、例えば、AlCl4 -、Al3Cl10 -、Al2Cl7 -、ClO4 -、PF6 -、BF4 -、CF3SO3 -、(CF3SO22-、(CF3SO23-が好ましく、PF6 -、BF4 -、CF3SO3 -、(CF3SO22-がより好ましい。
【0042】
(F)成分を用いる場合、その配合量は、帯電防止性および耐熱性の観点から、上記(A)成分100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、0.005~10質量部がより好ましい。
なお、帯電防止剤は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(F)成分を含む本発明の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物から得られる硬化物の帯電防止性能としては、スタチックオネストメーター(シシド静電気(株)製)を用いて、硬化物の表面にコロナ放電により静電気を6kVチャージした後、その帯電圧が半分になる時間(半減期)が、2分以内であることが好ましく、1分以内であることがより好ましい。
【0044】
(G)反応制御剤
本発明の組成物には、室温での硬化反応を抑え、シェルフライフ、ポットライフを延長させる目的で、(G)成分として反応制御剤を配合してもよい。
反応制御剤としては、(D)成分の触媒活性を抑制できるものであればよく、従来公知の反応制御剤を使用することができる。
その具体例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール,3-ブチン-1-オール等のアセチレンアルコール化合物;各種窒素化合物;有機リン化合物;オキシム化合物;有機クロロ化合物などが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。これらの中でも、金属への腐食性の無いアセチレンアルコール化合物が好ましい。
【0045】
(G)成分を用いる場合、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.001~5質量部が好ましく、0.01~1質量部がより好ましい。反応制御剤の配合量が、0.001質量部未満であると、十分なシェルフライフ、ポットライフが得られないことがあり、5質量部を超えると、組成物の硬化性が低下することがある。
なお、反応制御剤は、シリコーン樹脂への分散性を良くするためにトルエン、キシレン、イソプロピルアルコール等の有機溶剤で希釈して使用してもよい。
【0046】
なお、本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、色材(顔料または染料)、シランカップリング剤、接着助剤、重合禁止剤、酸化防止剤、耐光性安定剤である紫外線吸収剤、光安定化剤等の添加剤を配合することができる。
また、本発明の組成物は、その他の樹脂組成物と適宜混合して使用することもできる。
【0047】
本発明の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物は、上記(A)~(D)成分、および必要に応じてその他の成分を、任意の順序で混合し、撹拌等して得ることができる。各成分を混合・撹拌する工程については特に限定されない。
組成物の形態は、1液タイプ、2液タイプのいずれでもよく1液タイプの組成物であれば冷蔵または冷凍することにより長期保存することができ、2液タイプの組成物であれば、常温で長期保存することができる。
【0048】
例えば、(A)~(G)成分を含む1液タイプの組成物は、ゲートミキサー(井上製作所(株)製、商品名:プラネタリミキサー)に、(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分を取り、室温にて30分間混合し、次に、(G)成分を加えて室温にて30分間混合した後、(C)成分を加え室温にて30分間混合することで得ることができる。
【0049】
一方、全体として(A)~(G)成分を含む2液タイプの組成物は、(A)成分、(C)成分、(D)成分の組み合わせ、および(B)成分、(C)成分、(D)成分の組み合わせのみ共存させなければ、任意の組み合わせで構成することができる。例えば、ゲートミキサーに、(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分を取り、室温にて30分間加熱混合し、得られる組成物をA材とし、ゲートミキサーに、(A)成分、(C)成分および(G)成分を取り、室温で30分間混合し、得られた組成物をB材とすれば、A材、B材の2液タイプの組成物を得ることができる。
【0050】
本発明の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物の粘度は、塗布時の成型性や作業性の観点から、回転粘度計を用いて23℃で測定した粘度で1,000Pa・s以下が好ましく、500Pa・s以下がより好ましく、100Pa・s以下がより一層好ましい。5,000Pa・sを超えると作業性が著しく悪くなる場合がある。
【0051】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化条件は、特に制限されるものではなく、公知の硬化性シリコーン組成物と同様の条件とすることができる。室温硬化でも、加熱硬化でもよく、好ましくは20~180℃、より好ましくは50~150℃の温度にて、好ましくは0.1~3時間、より好ましくは0.5~2時間反応させて硬化させる。
【0052】
本発明において、硬化物の粘着力は、移送物の剥離性と保持性とのバランスを考慮すると、0.001MPa以上が好ましく、0.005MPa以上がより好ましい。また、その上限は、移送物の剥離性と保持性とのバランスを考慮すると、1.0MPaが好ましく、0.5MPaがより好ましい。
本発明の組成物は、非架橋性のオルガノポリシロキサンレジンを含まず、硬化物の粘着力は先述したとおり(B)成分の量に大きく依存する。
【0053】
本発明の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物からなる硬化物は、成型時や素子等の微細部品の移送時に凝集破壊を起こさないようにすることを考慮すると、厚さ2.0mmでの引張強度(JIS-K6249:2003)0.3MPa以上が好ましく、0.5MPa以上がより好ましい。なお、その上限は特に限定されないが、本発明の組成物では、通常50MPa程度である。
【0054】
また、本発明の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物は、各種基材に塗布して硬化させることにより、粘着性物品として利用することができる。
基材としては、プラスチックフィルム、ガラス、金属等の任意の材質の基材を特に制限なく使用できる。
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等が挙げられる。
ガラスについても、厚みや種類などについて特に制限はなく、化学強化処理などをしたものでもよい。
なお、基材と粘着剤層の密着性を向上させるために、基材に予めプライマー処理、プラズマ処理等を施したものを用いてもよい。
【0055】
塗工方法は、例えば、スピンコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工等の公知の塗工方法から適宜選択して用いることができる。
【0056】
本発明の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物の硬化物の作製方法としては、型を用いたポッティングも可能である。
ポッティングにおける型へ流し込む際に気泡を巻き込むことがあるが、減圧により脱泡することができる。型としては、例えば、シリコンウエハー上にフォトレジストにより所望の凹凸をつけたレジスト型を用いることができる。
硬化後、型から硬化物を取り出したい場合には、組成物を流し込む前に容器に離型剤処理を施す方が好ましい。離型剤としてはフッ素系、シリコーン系等のものが使用可能である。
【0057】
図1,2に示されるように、本発明の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物の硬化物は、微小な素子や部品等を移送するための微小構造体転写用スタンプ100,101として利用することができる。
図1において、微小構造体転写用スタンプ100は、基材200上に本発明の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物の硬化物層300を有して構成されている。この場合、硬化物層300の大きさは、基材200に収まる大きさであればよく、全く同じ大きさでもよい。
基材200の材質には特に制限はなく、その具体例としては、プラスチックフィルム、ガラス、合成石英、金属等が挙げられる。厚みや種類などについても特に制限はなく、化学強化処理などをしたものでもよい。なお、基材と粘着剤層の密着性を向上させるために、基材に予めプライマー処理、プラズマ処理等を施したものを用いてもよい。微小構造体移送時の位置ずれを抑制し、移送精度を高めるためには、平坦度の高い合成石英を使用することが好ましい。
【0058】
基材200上に硬化物層300を作製する方法にも特に制限はなく、例えば、基材200上に未硬化の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物を直接塗布して硬化させる方法と、基材200上に付加硬化型シリコーン粘着剤組成物のシート状硬化物を貼り合せる方法のいずれでもよい。
基材200上に付加硬化型シリコーン粘着剤組成物を直接塗布して硬化させる方法では、基材200上へシリコーン粘着剤組成物を塗布後、紫外線照射により硬化することで微小構造体転写用スタンプ100を得ることができる。
塗布方法としては、例えば、スピンコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工等の公知の塗工方法から適宜選択して用いることができる。
また、これらの方法でシリコーン粘着剤組成物を基材に塗布後、プレス成型やコンプレッション成型等を行いながら紫外線照射により硬化させることで、平坦性の高い微小構造体転写用スタンプ100を得ることもできる。
【0059】
基材200上に付加硬化型シリコーン粘着剤組成物のシート状硬化物を貼り合せる方法では、材料をシート状に成型後、基材200に貼り合せることで微小構造体転写用スタンプ100を得ることができる。
付加硬化型シリコーン粘着剤組成物をシート状に成型する方法としては、例えば、ロール成形、プレス成型、トランスファー成型、コンプレッション成型等の成型方法から適宜選択して用いることができる。シート状硬化物は、ホコリ等の付着防止や硬化時の酸素阻害抑制のために、プラスチックフィルムに挟み込む形で成型することが好ましい。また、得られたシート状硬化物が所望よりも大きい場合、所望の大きさにカットすることも可能である。
また、シート状硬化物と基材200との密着性を上げるため、これらのいずれか、または両方の貼り合せ面にプラズマ処理、エキシマ処理、化学処理等を施してもよい。さらに、貼り合せ強度を向上させるために、粘着剤・接着剤等を使用してもよい。粘着剤・接着剤の具体例としては、シリコーン系、アクリル系、エポキシ系等のものが使用可能である。
貼り合せ方法としては、ロール貼り合せや真空プレス等を用いることができる。
【0060】
微小構造体転写用スタンプ100中のシリコーン粘着剤硬化物層300の厚さは、成型性や平坦性の観点から1μm~1cmが好ましく、10μm~5mmがより好ましい。
【0061】
一方、図2において、微小構造体転写用スタンプ101は、基材201上に本発明の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物の硬化物層310を有して構成される。基材201としては、基材200と同様のものを使用できる。シリコーン粘着剤硬化物層310は、表面に凸状構造311を有している。また、凸状構造311の下部には、ベース層312が設けられていてもよい。
基材201上に硬化物層310を作製する方法に特に制限はなく、例えば、基材201上にモールド成型等により直接硬化物層310を成型する方法と、基材201上に凸状構造311を有するシート状硬化物を貼り合せる方法が挙げられる。
【0062】
基材201上にモールド成型により直接シリコーン粘着剤硬化物層310を成型する方法では、図3に示されるように、基材201と型401の間に本発明のシリコーン粘着剤組成物を満たし、紫外線照射により硬化させた後、型401を脱型することで微小構造体転写用スタンプ101を得ることができる。
型401としては、例えば、シリコンウエハーや石英基板上にフォトレジストにより所望の凹凸をつけたレジスト型、付加硬化型樹脂にパターン露光して凹凸をつけた樹脂型等を用いることができる。樹脂型の場合、基材として各種プラスチックフィルムを用いることができる。
基材201と型401の間にシリコーン粘着剤組成物を満たす方法としては、基材201と型401のいずれか、もしくは両方にシリコーン粘着剤組成物を塗布してから貼り合せる方法が挙げられる。塗布方法や貼り合せ方法は上述の方法を用いることができる。塗布時に型401に微小な気泡が残る可能性があるが、真空貼り合せや減圧による脱泡により解決できる。
これらの方法でシリコーン粘着剤組成物を基材に塗布後、プレス成型、コンプレッション成型、ロールプレス成型等を行いながら紫外線照射により硬化させることで、微小構造体転写用スタンプ101を得ることができる。
【0063】
また、別の方法として、シリコーン粘着剤組成物を所望のパターンを有するメッシュを用いてスクリーン印刷した後、紫外線照射により硬化させる方法でも微小構造体転写用スタンプ101を得ることができる。この際、本発明のシリコーン粘着剤組成物は形状保持性に優れるため、塗布後から硬化するまでに所望のパターン形状を損なうことはない。
【0064】
基材201上に、凸状構造311を有するシリコーン粘着剤シート状硬化物を貼り合せる方法では、シリコーン粘着剤組成物を、凸状構造311を有するシート状硬化物に成型後、基材201に貼り合せることで、微小構造体転写用スタンプ101を得ることができる。
付加硬化型シリコーン粘着剤組成物を、凸状構造311を有するシート状硬化物に成型する方法としては、型401と同様な凹凸を有する型を用いたロール成形、プレス成型、トランスファー成型、コンプレッション成型等の成型方法から適宜選択して用いることができる。
シート状硬化物は、ホコリ等の付着防止や硬化時の酸素阻害抑制のために、プラスチックフィルム等に挟み込んで成型することが好ましい。また、得られたシート状硬化物が所望よりも大きい場合、所望の大きさにカットすることも可能である。
さらに、シート状硬化物と基材201との密着性を上げるため、これらの貼り合せ面にプラズマ処理、エキシマ処理、化学処理等を施してもよい。また、貼り合せ強度を向上させるために、上述した各種粘着剤・接着剤等を使用してもよい。
貼り合せ方法としては、ロール貼り合せや真空プレス等を用いることができる。
【0065】
凸状構造311の大きさや配列は、移送対象の微小構造体の大きさや所望の配置に合わせて設計可能である。
凸状構造311の上面は平坦であり、また、その面形状に制限はなく、円形、楕円形、四角形等が挙げられる。四角形等の場合、エッジに丸みをつけても問題ない。凸状構造311の上面の幅は、0.1μm~1cmが好ましく、1μm~1mmがより好ましい。
また、凸状構造311の側面の形態にも制限はなく、垂直面、斜面等を問わない。
凸状構造311の高さは、0.1μm~1cmが好ましく、1μm~1mmがより好ましい。
空間を隔てて隣り合う凸状構造311同士のピッチ距離は、0.1μm~10cmが好ましく、1μm~1mmがより好ましい。
また、ベース層312の厚さは、0.1μm~1cmが好ましく、1μm~5mmがより好ましい。
【0066】
以上のような微小構造体転写用スタンプは、装置へ取り付けて微小構造体転写装置として利用できる。装置への取り付け方法に制限はないが、真空チャック、粘着剤シート等が挙げられる。微小構造体転写装置は、素子等の微小構造体を微小構造体転写用スタンプの粘着性によりピックアップし、所望の位置へ移動後、リリースすることで、微小構造体の移送を達成することが可能である。
【0067】
微小構造体の転写の具体例としては、レーザー光を用いて半導体素子のサファイア基板をGaN系化合物結晶層から剥離するレーザーリフトオフ(laser lift off、LLO)プロセスの際に、剥離した半導体素子の位置ずれが生じないように仮固定するための保持基板(ドナー基板)として、本発明の微小構造体転写用スタンプ100または101を使用することができる。この際、基材200および201としては、平坦度の高い合成石英を使用することが好ましい。
さらに、上記保持基板上に仮固定された半導体素子を選択的にピックアップするために、上記保持基板よりも粘着力の大きい微小構造体転写用スタンプ100または101を用いることができる。ここでピックアップした半導体素子を実装先基板上の所望の位置へ移動後、はんだ付けを行って半導体素子と実装先基板とを接合し、微小構造体転写用スタンプを半導体素子から剥離することにより、半導体素子の転写および基板への実装が達成される。
【0068】
移送物の剥離性と保持性とのバランスを考慮すると、上記保持基板における硬化物層300,310の粘着力は、0.001~2MPaが好ましく、0.002~1MPaがより好ましい。また、上記微小構造体転写用スタンプにおける硬化物層300,310の粘着力は、上記保持基板の粘着力よりも大きいことが好ましく、0.01MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上である。
【実施例
【0069】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、使用した各成分の化合物は以下のとおりである。
【0070】
(A)成分
(A-1)下記式で表される、25℃における粘度5Pa・sのオルガノポリシロキサン
【化2】
【0071】
(A-2)下記式で表される、25℃における粘度100Pa・sのオルガノポリシロキサン
【化3】
【0072】
(A-3)下記式で表される、25℃における粘度0.1Pa・sのオルガノポリシロキサン
【化4】
【0073】
(B)成分
(B-1)Me3SiO1/2:Me2ViSiO1/2:SiO4/2=0.35:0.10:0.55で表されるオルガノポリシロキサンレジン(重量平均分子量5,300、Si-Vi量0.085mol/100g)
(B-2)Me3SiO1/2:ViMe2SiO1/2:MeSiO3/2=0.20:0.05:0.75で表されるオルガノポリシロキサンレジン(重量平均分子量13,000、Si-Vi量0.059mol/100g)
【0074】
(C)成分
(C-1)下記式で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン
【化5】
【0075】
(D)成分
(D-1)白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液(両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が0.6Pa・sのジメチルポリシロキサンに溶解したもの。白金原子として1質量%含有。)
【0076】
(E)成分
(E-1)キシレン
(F)成分
(F-1)LiN(SO2CF32を20質量%含有するアジピン酸エステル
(G)成分
(G-1)1-エチニル-1-シクロヘキサノール
【0077】
[実施例1~11および比較例1,2]
ゲートミキサー(井上製作所(株)製、5Lプラネタリミキサー)に、(A)、(B)、(D)、(E)、(F)成分を表1に示す配合量で加え、室温にて30分間混合した。次に、(G)成分を表1,2に示す配合量で加え、室温にて30分間混合した。最後に、(C)成分を、表1に示す配合量で加え、均一になるように25℃にて30分間混合した。得られた各組成物について下記に示す方法にて各物性を測定した。結果を表1,2に併記する。なお、表1,2における組成物の粘度は回転粘度計を用いて23℃で測定した値である。
【0078】
〔硬化物の物性測定〕
調製したシリコーン組成物を、150℃で10分間プレス硬化し、更に150℃のオーブン中で20分間加熱した。なお、シートの厚みは2.0mmとした。硬化物の硬度、引張強度、切断時伸びはJIS-K6249:2003に準じて測定した。
硬化物の粘着性は、(株)島津製作所製小型卓上試験機EZ-SXにより測定した。具体的には、1mm厚の硬化物に1mm角SUS製プローブを1MPaで15秒間押し付けた後、200mm/minの速度で引っ張った際にかかる負荷を測定した値である。
硬化物の帯電防止性は、スタチックオネストメーター(シシド静電気(株)製)を用いて、2mm厚硬化物シート表面に、それぞれコロナ放電により静電気を6kVチャージした後、その帯電圧が半分になる時間(半減期)を測定した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1,2に示されるように、実施例1~11で調製した付加硬化型シリコーン粘着剤組成物は、適度な粘度を有していることがわかる。また、その硬化物は優れた粘着性と引張強度を有しており、素子等の微細部品を移送するための仮固定材として有用であることがわかる。また、実施例10および11は、F-1成分を配合したことにより、さらに帯電防止性に優れることがわかる。
一方、本発明の(B)成分を含まない比較例1は、粘着性と引張強度が不十分であり、B-1成分が本発明の範囲を外れて多すぎる比較例2では、組成物が固形化して取り扱いが困難となることがわかる。
【符号の説明】
【0082】
100,101 微小構造体転写用スタンプ
200,201 基材
300,310 硬化物層
311 凸状構造
312 ベース層
401 型
図1
図2
図3