(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20240509BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240509BHJP
B60C 3/00 20060101ALI20240509BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240509BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240509BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C1/00 A
B60C3/00 Z
C08K3/36
C08L21/00
C08L9/00
(21)【出願番号】P 2020028214
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 健次
(72)【発明者】
【氏名】中島 郭葵
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-206651(JP,A)
【文献】国際公開第2013/014949(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104130465(CN,A)
【文献】国際公開第2017/126633(WO,A1)
【文献】特表2004-530004(JP,A)
【文献】特開2006-232916(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176476(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
B60C 3/00
B60C 11/00
C08K 3/36
C08L 9/00
C08L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備えたタイヤであって、
前記トレッドはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、
前記ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、軟化剤を43質量部以上含有し、
前記ゴム組成物は、0℃における複素弾性率(MPa)(0℃E*)に対する-30℃におけるtanδ(-30℃tanδ)の比(-30℃tanδ/0℃E*)が0.120~0.500であり、
タイヤをリムに組み込み、内圧を250kPa以上とした際のタイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)、(2)、または(3)のいずれかを満たすタイヤ。
Wt<225 かつ Dt≧59.078×Wt^0.460 ・・・(1)
225≦Wt<235 かつ Dt≧59.078×Wt^0.620-967.673 ・・・(2)
235≦Wt かつ Dt≧Wt^0.6+750 ・・・(3)
【請求項2】
前記ゴム組成物が
、ゴム成分100質量部に対し、シリカを
55質量部以上含有する、請求項
1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム組成物が
、ゴム成分100質量部に対し、樹脂成分を
12質量部以上含有する、請求項1
または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
トレッドを備えたタイヤであって、
前記トレッドはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、
前記ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、シリカを55質量部以上含有し、
前記ゴム組成物は、0℃における複素弾性率(MPa)(0℃E*)に対する-30℃におけるtanδ(-30℃tanδ)の比(-30℃tanδ/0℃E*)が0.120~0.500であり、
タイヤをリムに組み込み、内圧を250kPa以上とした際のタイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)、(2)、または(3)のいずれかを満たすタイヤ。
Wt<225 かつ Dt≧59.078×Wt^0.460 ・・・(1)
225≦Wt<235 かつ Dt≧59.078×Wt^0.620-967.673 ・・・(2)
235≦Wt かつ Dt≧Wt^0.6+750 ・・・(3)
【請求項5】
前記ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、樹脂成分を12質量部以上含有する、請求項4記載のタイヤ。
【請求項6】
トレッドを備えたタイヤであって、
前記トレッドはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、
前記ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、樹脂成分を12質量部以上含有し、
前記ゴム組成物は、0℃における複素弾性率(MPa)(0℃E*)に対する-30℃におけるtanδ(-30℃tanδ)の比(-30℃tanδ/0℃E*)が0.120~0.500であり、
タイヤをリムに組み込み、内圧を250kPa以上とした際のタイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)、(2)、または(3)のいずれかを満たすタイヤ。
Wt<225 かつ Dt≧59.078×Wt^0.460 ・・・(1)
225≦Wt<235 かつ Dt≧59.078×Wt^0.620-967.673 ・・・(2)
235≦Wt かつ Dt≧Wt^0.6+750 ・・・(3)
【請求項7】
前記ゴム成分がイソプレン系ゴムを含有する、請求項1
~6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム成分がブタジエンゴムを含有する、請求項1
~7のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、軟化剤を
48質量部以上含有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、窒素吸着比表面積が140m
2/g以上のシリカを
55質量部以上含有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記タイヤが冬用タイヤである、請求項1~
10のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷上性能が改善されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来よりもタイヤの接地幅に対して、タイヤの外径を大きくすることで低燃費性を向上させたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような幅狭大口径のタイヤではタイヤの接地面積が小さくなるため、氷上性能(氷上でのグリップ性能)の担保が難しいという問題がある。
【0005】
また、スタッドレスタイヤのトレッド配合は、氷上性能を向上させるために、剛性が低く、やわらかい配合を採用することが一般的であるが、タイヤ剛性が低下することにより、操縦安定性能が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、氷上性能が改善されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、タイヤの断面幅およびタイヤの外径が所定の要件を満たすタイヤにおいて、トレッドゴムの粘弾性を特定の条件とすることにより、氷上性能が改善されたタイヤが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ゴム組成物は、0℃における複素弾性率(MPa)(0℃E*)に対する-30℃におけるtanδ(-30℃tanδ)の比(-30℃tanδ/0℃E*)が0.120~0.500であり、タイヤをリムに組み込み、内圧を250kPa以上とした際のタイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)、(2)、または(3)のいずれかを満たすタイヤ、
Wt<225 かつ Dt≧59.078×Wt^0.460 ・・・(1)
225≦Wt<235 かつ Dt≧59.078×Wt^0.620-967.673 ・・・(2)
235≦Wt かつ Dt≧Wt^0.6+750 ・・・(3)
〔2〕前記ゴム成分がイソプレン系ゴムを含有する、〔1〕記載のタイヤ、
〔3〕前記ゴム成分がブタジエンゴムを含有する、〔1〕または〔2〕記載のタイヤ、
〔4〕前記ゴム組成物がシリカを含有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔5〕前記ゴム組成物が樹脂成分を含有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔6〕前記ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、軟化剤を40質量部以上含有する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔7〕前記ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、窒素吸着比表面積が140m2/g以上のシリカを50質量部以上含有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔8〕前記タイヤが冬用タイヤである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のタイヤ、に関する。
【発明の効果】
【0009】
タイヤの断面幅およびタイヤの外径が所定の要件を満たし、かつトレッドゴムの粘弾性を特定の条件とした本発明のタイヤは、氷上性能が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のタイヤは、タイヤをリムに組み込み、内圧を250kPa以上とした際のタイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)、(2)、または(3)のいずれかを満たすことを特徴とする。
Wt<225 かつ Dt≧59.078×Wt^0.460 ・・・(1)
225≦Wt<235 かつ Dt≧59.078×Wt^0.620-967.673 ・・・(2)
235≦Wt かつ Dt≧Wt^0.6+750 ・・・(3)
【0011】
タイヤ断面幅およびタイヤ外径が上記の要件を満たすことで、通常走行時の発熱性を緩和させることができ、低燃費性能を向上させることができる。
【0012】
また、本開示のタイヤは、さらに、トレッドを構成するゴム組成物の0℃における複素弾性率(MPa)(0℃E*)に対する-30℃におけるtanδ(-30℃tanδ)の比(-30℃tanδ/0℃E*)が0.120~0.500であることを特徴とする。このことにより、得られたタイヤは、氷上性能が改善される。その理由については、理論に拘束されることは意図しないが、以下のように考えられる。
【0013】
損失正接tanδは、歪みが与えられる過程で消費されたエネルギーの大きさを示し、この消費されたエネルギーは熱に変わる。tanδの値が大きいほど損失されるエネルギーが大きくなるため、ヒステリシス摩擦が大きくなり、グリップ力は向上する。しかしながら、tanδが大きすぎると、氷上路面においてはトレッドゴムの発熱よって氷を解かし、水を発生させることでトレッドゴムと路面との接触面積が低下し、グリップ力が低下してしまう。
【0014】
複素弾性率E*は、周期的に与えられた歪みに対する応力を示す。E*の値が大きいほど剛性が高く、操縦安定性能が向上するが、E*の値が大きすぎると、減衰性が低下し、乗り心地が悪くなる傾向がある。
【0015】
前記ゴム組成物の0℃E*に対する-30℃tanδの比(-30℃tanδ/0℃E*)が上記の要件を満たすことにより、得られるゴム組成物の剛性およびグリップ性能がバランス良く両立可能となると考えられる。そしてそのようなゴム組成物により構成されたトレッドを備えるタイヤは、トレッドゴムに対する力の伝播が良好であり、氷上のグリップ力も最大限に発揮できるため、氷上性能が改善されると考えられる。
【0016】
本開示における「-30℃tanδ」は、温度-30℃、周波数10Hz、伸長歪み2.5%の条件下での損失正接tanδを指す。前記ゴム組成物の-30℃tanδは、2.40以下が好ましく、2.20以下がより好ましく、2.10以下がさらに好ましい。前記の関係式(1)、(2)、または(3)のいずれかを満たす幅狭大口径のタイヤでは、幅狭で失った分のグリップ力を補填するため、通常のタイヤよりtanδの値を大きくする必要がある。一方、接地面積が小さくなっても一定の負荷能力を維持するために、充填空気圧を高くする必要がある。その結果、除水効果が向上し、トレッドゴムと路面との接地面積を確保しやすくなる。これらのことから、かかる高tanδの領域においても、氷上のグリップ性能を確保することができる。また、前記ゴム組成物の-30℃tanδは、氷上性能の観点から、0.51以上が好ましく、0.54以上がより好ましく、0.57以上がさらに好ましい。
【0017】
本開示における「0℃E*」は、温度0℃、周波数10Hz、伸長歪み2.5%の条件下での複素弾性率E*を指す。前記ゴム組成物の0℃E*は、3.0MPa以上が好ましく、3.2MPa以上がより好ましい。また、前記ゴム組成物の0℃E*は、4.3MPa以下が好ましく、4.2MPa以下がより好ましい。
【0018】
前記ゴム組成物は、0℃E*(MPa)に対する-30℃tanδの比(-30℃tanδ/0℃E*)が、0.120以上であり、0.125以上が好ましく、0.150以上がより好ましく、0.170がさらに好ましい。また、-30℃tanδ/0℃E*は、0.500以下であり、0.480以下が好ましく、0.450以下がより好ましい。
【0019】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、JATMAであれば“標準リム”、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”である。
【0020】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。
【0021】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”である。
【0022】
「最大負荷能力」は、JATMA規格で定められる使用条件下で、そのロードインデックス(LI)を有するタイヤに対応する最高空気圧(kPa)を充填した時の負荷能力値(kg)である。
【0023】
本開示の一実施形態であるタイヤの作製手順について、以下に詳細に説明する。但し、以下の記載は本開示を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0024】
<ゴム成分>
本開示に係るゴム組成物は、ゴム成分としてイソプレン系ゴムを含有することが好ましく、イソプレン系ゴムおよびブタジエンゴム(BR)を含有することがより好ましい。またゴム成分は、イソプレン系ゴムおよびBRのみからなるゴム成分としてもよい。
【0025】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
NRとしては、特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
【0027】
イソプレン系を含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、複素弾性率の観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上が特に好ましい。一方、トレッド部での減衰性の確保の観点からは、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
【0028】
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス含量(シス-1,4結合含量)が50%未満のBR(ローシスBR)、シス含量が90%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでも、変性BRが好適に使用される。これらのBRは、宇部興産(株)、住友化学(株)、JSR(株)、ランクセス(株)等より市販されているものを使用することができる。これらのBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
希土類系BRは、ゴム工業において一般的に用いられているもの使用することができる。希土類系BRの合成(重合)に使用する希土類元素系触媒は、公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒が挙げられる。なかでも、高シス含量、低ビニル含量のBRが得られる観点から、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が好ましい。
【0030】
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。
【0031】
変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)や、ブタジエンゴムの活性末端に縮合アルコキシシラン化合物を有するブタジエンゴム(シリカ用変性BR)等が挙げられる。
【0032】
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、30万以上が好ましく、35万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性等の観点からは、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0033】
BRを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、35質量%以上が特に好ましい。また、該含有量は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましく、65質量%以下が特に好ましい。
【0034】
変性BRを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、35質量%以上が特に好ましい。また、該含有量は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましく、65質量%以下が特に好ましい。
【0035】
(その他のゴム成分)
本開示に係るゴム成分として、前記のイソプレン系ゴムおよびBR以外のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、ゴム工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。これらその他のゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
<補強用充填剤>
本開示に係るゴム組成物は、補強用充填剤として、シリカを含有することが好ましく、さらにカーボンブラックやその他の補強用充填剤を含有してもよい。補強用充填剤は、カーボンブラックおよびシリカを含むことが好ましく、カーボンブラックおよびシリカのみからなる補強用充填剤としてもよい。
【0037】
(シリカ)
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性およびトレッド部での減衰性の確保の観点から、140m2/g以上が好ましく、150m2/g以上がより好ましく、160m2/g以上がさらに好ましく、170m2/g以上が特に好ましい。また、発熱性および加工性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0039】
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、氷上性能の観点から、30質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、55質量部以上が特に好ましい。また、ゴムの比重を低減させ軽量化を図る観点、およびトレッド部の発熱を抑制する観点からは、105質量部以下が好ましく、95質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましく、85質量部以下が特に好ましい。
【0040】
(シランカップリング剤)
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、モメンティブ社製のNXT-Z30、NXT-Z45、NXT-Z60、NXT-Z100、エボニックデグサ社製のSi363等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル基を有するシランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ基を有するシランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ基を有するシランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。なかでも、スルフィド基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、およびチオエステル基を有するシランカップリング剤が好ましく、スルフィド基を有するシランカップリング剤がより好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
シランカップリング剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、シリカの分散性を高める観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましく、4.0質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能の低下を防止する観点からは、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
【0042】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、具体的にはN110、N115、N120、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐候性や補強性の観点から、40m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましく、60m2/g以上がさらに好ましい。また、分散性および低燃費性能の観点からは、250m2/g以下が好ましく、200m2/g以下がより好ましく、150m2/g以下がさらに好ましく、90m2/g以下がさらに好ましく、70m2/g以下がさらに好ましく、50m2/g以下が特に好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217-2「ゴム用カーボンブラック基本特性-第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」のA法に準じて測定される値である。
【0044】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐候性や補強性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、トレッド部の発熱抑制の観点からは、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
【0045】
(その他の補強用充填剤)
シリカおよびカーボンブラック以外の補強用充填剤としては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、タルク、クレー等この分野で一般的に使用される補強用充填剤をいずれも用いることができる。なかでもクレーが好ましい。これらの補強用充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
補強用充填剤のゴム成分100質量部に対する合計含有量は、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、50質量部以上が特に好ましい。また、該含有量は、110質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、95質量部以下がさらに好ましく、90質量部以下が特に好ましい。
【0047】
補強用充填剤の合計100質量%中のシリカの含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましい。また、該シリカの含有率は、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。
【0048】
<軟化剤>
本開示に係るゴム組成物は、氷上性能を向上させるために、軟化剤を配合することが好ましい。軟化剤としては、例えば、樹脂成分、オイル、液状ゴム等が挙げられる。-30℃tanδおよび0℃E*は、前記の軟化剤の配合量により適宜調整することができる。
【0049】
樹脂成分としては、特に限定されないが、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。なかでも、石油樹脂およびテルペン系樹脂が好ましい。これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
石油樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、C5C9系石油樹脂が挙げられる。
【0051】
本明細書において「C5系石油樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0052】
本明細書において「芳香族系石油樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、
クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、アリゾナケミカル社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0053】
本明細書において「C5C9系石油樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0054】
前記テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
【0055】
樹脂成分の軟化点は、操縦安定性能の観点から、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましい。また、加工性、ゴム成分とフィラーとの分散性向上という観点からは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度として定義され得る。
【0056】
樹脂成分を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、氷上性能の観点から、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、12質量部以上が特に好ましい。また、発熱性抑制の観点からは、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましく、30質量部以下が特に好ましい。
【0057】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、重ナフテン系オイル等が挙げられる。
【0058】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、20質量部以上が特に好ましい。また、低燃費性能および複素弾性率の観点からは、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
【0059】
液状ゴムとしては、例えば、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状スチレンイソプレンゴム(液状SIR)、液状ファルネセンゴム等が挙げられ、液状ファルネセンゴムが好ましい。これらの液状ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
液状ファルネセンゴムは、ファルネセンの単独重合体(ファルネセン単独重合体)であってもよいし、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体(ファルネセン-ビニルモノマー共重合体)であってもよい。ビニルモノマーとしては、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、tert-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン、3級アミノ基含有ジフェニルエチレンなどの芳香族ビニル化合物や、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物などが挙げられる。なかでも、スチレン、ブタジエンが好ましい。すなわち、ファルネセン-ビニルモノマー共重合体としては、ファルネセンとスチレンとの共重合体(ファルネセン-スチレン共重合体)、ファルネセンとブタジエンとの共重合体(ファルネセン-ブタジエン共重合体)が好ましい。ファルネセン-スチレン共重合体を配合することで、操縦安定性能の改善効果を高めることができ、ファルネセン-ブタジエン共重合体を配合することで、氷上性能および耐摩耗性能の改善効果を高めることができる。
【0061】
液状ゴムを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、5質量部以上が特に好ましい。また、液状ゴムの含有量は、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0062】
軟化剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量(複数の軟化剤を併用する場合は全ての合計量)は、氷上性能の観点から、32質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、43質量部以上がさらに好ましく、48質量部以上が特に好ましい。また、加工性の観点からは、140質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましく、80質量部以下が特に好ましい。
【0063】
<その他の配合剤>
本開示に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、ワックス、加工助剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
【0064】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0065】
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。これらの加工助剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加工助剤としては、例えば、Schill&Seilacher社、パフォーマンスアディティブス社等より市販されているものを使用することができる。
【0066】
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
【0067】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0068】
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0069】
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられ、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N-4-メチル-2-ペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤、および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のキノリン系老化防止剤が好ましい。これらの老化防止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0071】
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0072】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。また、劣化防止の観点からは、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
【0073】
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレキシス社等より市販されているものを使用することができる。
【0074】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これらの加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、およびグアニジン系加硫促進剤が好ましく、これらを併用することがより好ましい。
【0075】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
【0076】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0077】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジンが好ましい。
【0078】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、該含有量は、8質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、6質量部以下がさらに好ましい。
【0079】
本開示のゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロール等の一般的なゴム工業で使用される公知の混練機で、前記各成分のうち、加硫剤および加硫促進剤以外の成分を混練りした後、これに、加硫剤および加硫促進剤を加えてさらに混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。例えば、混練工程では、80℃~170℃で1分間~30分間混練りし、加硫工程では、130℃~190℃で3分間~20分間加硫する。
【0080】
[タイヤ]
上記ゴム組成物から構成されるトレッドを備えたタイヤは、通常の方法により製造することができる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、サイド補強層の形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。
【0081】
本開示のタイヤは、特にカテゴリーは限定されないが、氷上性能に優れたタイヤであることから、スタッドレスタイヤ、スノータイヤ等の冬用タイヤや、オールシーズンタイヤとすることが好ましく、スタッドレスタイヤとすることがより好ましい。
【実施例】
【0082】
以下、本開示を実施例に基づいて説明するが、本開示はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
NR:TSR20
BR1:JSR(株)製のBR730(Nd系触媒を用いて合成したBR、シス-1,4結合含量:96.6質量%、Mw:58万)
BR2:日本ゼオン(株)製のBR1250H(スズ変性BR、開始剤としてリチウムを用いて重合、シス-1,4結合含量:40質量%、Mw:57万)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のダイアブラックN330(N2SA:79m2/g)
シリカ1:エボニックデグサ社製のULTRASIL(登録商標)VN3(N2SA:175m2/g)
シリカ2:Rhodia社製のZeosil 115GR(N2SA:110m2/g)
クレー:サウスイースタン・クレー社製のクラウンクレー(平均粒子径:0.6μm)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
オイル1:出光興産(株)製のダイアナプロセスNH-70S(芳香族系プロセスオイル)
オイル2:出光興産(株)製のダイアナプロセスPW-380(パラフィン系プロセスオイル)
樹脂成分1:ヤスハラケミカル(株)製のPX1150N(水素添加されていないポリテルペン樹脂、SP値:8.26、軟化点:115℃、Tg:65℃)
樹脂成分2:丸善石油化学(株)製のマルカレッツM M-890A(ジシクロペンタジエン樹脂、軟化点:105℃)
液状ゴム:後述の製造例1で製造した液状ファルネセンゴム(ファルネセン-スチレン共重合体)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
加工助剤:Schill&Seilacher社製のストラクトールWB16(脂肪酸エステルと脂肪酸金属塩の混合物)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
老化防止剤1:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:住友化学(株)製のアンチゲンRD(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(CBS、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーM-P(MBT、2-メルカプトベンゾチアゾール)
加硫促進剤3:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(DPG、1,3-ジフェニルグアニジン)
【0084】
製造例1:液状ファルネセンゴムの合成
乾燥し窒素置換した1Lの耐圧ステンレス容器にヘキサン500mL、THF46g、n-ブチルリチウム(n-BuLi)60mmolを加えた後、反応容器にヘキサン100mL、ファルネセン15g、スチレン285gの混合液を2時間かけて滴下しながら重合反応をおこなった。滴下終了後、2Mイソプロパノール/ヘキサン溶液を60mL滴下して反応を終了させた。反応液を1晩風乾し、さらに2日間減圧乾燥を行い、液状ファルネセンゴム300gを得た。重合転化率はほぼ100%であった。
【0085】
(実施例および比較例)
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度150~160℃になるまで1~10分間混練りし、混練物を得た。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間プレス加硫することで、試験用加硫ゴム組成物を作製した。
【0086】
表1に示す配合の未加硫ゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機でトレッドの形状に押し出し成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、表2に示すタイヤサイズ、タイヤ断面幅、およびタイヤ外径を有する試験用タイヤ1~6をそれぞれ製造、準備した。
【0087】
得られた試験用タイヤについて下記の評価を行った。評価結果を表3~6に示す。
【0088】
<tanδおよび複素弾性率E*測定>
各試験用加硫ゴム組成物(試験片サイズ:長さ10mm、幅1.7~2.0mm、厚さ1.4~1.5mm)について、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度-30℃、周波数10Hz、伸長歪み2.5%の条件下でtanδを測定した。また、各試験用加硫ゴム組成物について、温度0℃、周波数10Hz、伸長歪み2.5%の条件下で複素弾性率(E*)を測定した。結果は、表1の「-30℃tanδ」および「0℃E*」の欄に示した。
【0089】
<氷上性能(グリップ)>
各試験用タイヤおよび同タイヤサイズの夏用タイヤを排気量2000ccのFF乗用車の四輪にそれぞれ装着し、氷上路面のテストコースにて、速度30km/hで走行中にブレーキをかけてから停止するまでのタイムを測定した。結果は指数で表し、指数が大きいほど氷上におけるグリップ性能が良好であることを示す。指数は次の式で求め、基準比較例は、表3および表4では比較例2、表5および表6では比較例8とした。試験結果を表3~6に示す。
(氷上性能指数)=
(夏用タイヤの停止までのタイム-各試験用タイヤの停止までのタイム)/(夏用タイヤの停止までのタイム-基準比較例のタイヤの停止までのタイム)×100
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
表1~表6の結果より、タイヤの断面幅およびタイヤの外径が所定の要件を満たし、かつトレッドゴムの粘弾性を特定の条件とした本開示のタイヤは、氷上性能が改善されていることがわかる。