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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】撥水剤組成物及び繊維処理剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20240509BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C09K3/18 104
D06M15/643
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022556894
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2021037262
(87)【国際公開番号】W WO2022080243
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2020173861
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱嶋 優太
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-217575(JP,A)
【文献】特開2012-057000(JP,A)
【文献】特開平07-305053(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090797(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/18
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
D06M13/00- 15/715
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(1)
【化1】
(式中、R1は互いに独立に、炭素数1~20の非置換1価炭化水素基であり、a/b=0.5~1.5である。)
で表されるトリアルキルシロキシシリケート:100質量部、
(B)下記式(2)
【化2】
(式中、R2は互いに独立に、炭素数1~20の非置換1価炭化水素基、R3は互いに独立に、水酸基及び炭素数1~4のアルコキシ基から選ばれる基、cは3~5,000、dは0~50である。)
で表される、分子内に水酸基又はアルコキシ基を少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン:1~100質量部、
(C)下記一般式(3)
M(OX)4 (3)
(式中、Mはチタン又はジルコニウム、Xは互いに独立に、炭素数1~8のアルキル基である。)
で表される、テトラアルコキシチタニウム、テトラアルコキシジルコニウム及びこれらの加水分解物から選ばれる1種以上:10~300質量部、及び
(D)有機溶剤:100~30,000質量部
を含有する撥水剤組成物。
【請求項2】
さらに、(E)下記式(4)
【化3】
(R4は互いに独立に炭素数1~20の非置換1価炭化水素基、eは10~3,000である。)
で表されるオルガノポリシロキサン:3~300質量部、
を含有する請求項1記載の撥水剤組成物。
【請求項3】
(C)成分が、テトラプロポキシチタニウム、テトラブトキシチタニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム及びこれらの加水分解物から選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の撥水剤組成物。
【請求項4】
フッ素化合物を含有しない、請求項1~3のいずれか1項記載の撥水剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の撥水剤組成物を含む繊維処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水剤組成物及び繊維処理剤に関する。詳細には、繊維に高い撥水性を付与することが可能な、シリコーン系化合物からなる撥水剤組成物、及びこの組成物を含有する繊維処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然繊維、合成繊維、皮革、紙等に撥水性を付与する方法として、シリコーン系撥水剤が使用されてきた。特に、シリコーン系撥水剤のうち撥水性能が良好なものとしてトリアルキルシリケートとアルコキシチタンを含有したものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
加水分解性基含有ポリオルガノシロキサンと、テトラアルコキシチタンやテトラアルコキシジルコニウム等の金属アルコキシドとを含有したシリコーン系撥水剤が提案されている(特許文献2)。さらに、処理物の着色を防止するため、トリアルキルシリケートとジルコニウム化合物とを利用した撥水剤が提案されている(特許文献3)。繊維製品に撥水剤組成物を使用する場合、洗濯後にもその撥水性が維持されることが望ましい。しかしながら、上記特許文献1~3には、洗濯後の撥水性について記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3973184号公報
【文献】特許第3496976号公報
【文献】特許第4726647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、撥水性付与効果に優れ、かつ処理後の繊維に対して良好な柔軟性を付与することができる撥水剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、洗濯後にも良好な撥水性を維持することが可能な撥水剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を解決すべく検討を進めた結果、下記(A)~(D)成分を含有する撥水剤組成物が、繊維に対し高い撥水性、良好な柔軟性を付与することが可能であることを見出した。また、本発明の撥水剤組成物を繊維に処理すると、洗濯後にも良好な撥水性を維持することが可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は撥水剤組成物及び繊維処理剤を提供する。
1.(A)下記平均組成式(1)
【化1】
(式中、R1は互いに独立に、炭素数1~20の非置換1価炭化水素基であり、a/b=0.5~1.5である。)
で表されるトリアルキルシロキシシリケート:100質量部、
(B)下記式(2)
【化2】
(式中、R2は互いに独立に、炭素数1~20の非置換1価炭化水素基、R3は互いに独立に、水酸基及び炭素数1~4のアルコキシ基から選ばれる基、cは3~5,000、dは0~50である。)
で表される、分子内に水酸基又はアルコキシ基を少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン:1~100質量部、
(C)下記一般式(3)
M(OX)4 (3)
(式中、Mはチタン又はジルコニウム、Xは互いに独立に、炭素数1~8のアルキル基である。)
で表される、テトラアルコキシチタニウム、テトラアルコキシジルコニウム及びこれらの加水分解物から選ばれる1種以上:10~300質量部、及び
(D)有機溶剤:100~30,000質量部
を含有する撥水剤組成物。
2.さらに、(E)下記式(4)
【化3】
(R4は互いに独立に炭素数1~20の非置換1価炭化水素基、eは10~3,000である。)
で表されるオルガノポリシロキサン:3~300質量部、
を含有する1記載の撥水剤組成物。
3.(C)成分が、テトラプロポキシチタニウム、テトラブトキシチタニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム及びこれらの加水分解物から選ばれる1種以上である1又は2記載の撥水剤組成物。
4.フッ素化合物を含有しない、1~3のいずれかに記載の撥水剤組成物。
5.1~4のいずれかに記載の撥水剤組成物を含む繊維処理剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の撥水剤組成物は、繊維に対し高い撥水性、良好な柔軟性を付与することが可能である。さらに、本発明の撥水剤組成物を繊維に処理すると、洗濯後にも良好な撥水性を維持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、下記平均組成式(1)
【化4】
(式中、R1は互いに独立に、炭素数1~20の非置換1価炭化水素基であり、a/b=0.5~1.5である。)
で表されるトリアルキルシロキシシリケートであり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0010】
1は互いに独立に、炭素数1~20の非置換1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、テトラデシル基、オクタデシル基等のアルキル基:ビニル基、アリル基、5-ヘキセニル基、オレイル基等のアルケニル基:フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。中でも、メチル基、フェニル基が好ましく、撥水性の面からメチル基がより好ましい。
【0011】
a/b=0.5~1.5であり、0.6~1.4が好ましい。a/bが0.5未満であると、(D)成分である有機溶剤に対する溶解性が乏しくなり、a/bが1.5を超えると撥水性が低下する。
【0012】
(A)成分は、例えばトリオルガノクロロシラン、トリオルガノヒドロキシシラン、ヘキサオルガノジシロキシシラン、水ガラス、アルキルポリシリケート等を加水分解させる公知の方法で得ることができる。なお、加水分解後の生成物(A)として、R1に一部水酸基が残存するが、本発明においては、R1に残存水酸基を含んでもよい。(A)成分の残存水酸基量は、(A)成分の0.1~12質量%が好ましく、0.2~10質量%がより好ましい。残存水酸基量を測定する方法としては、その化学反応性を用いた方法が幾つか開示されている。本発明においては、基質(シラノール基含有量の測定対象物)を脱水トルエンに溶解した後、グリニャール試薬(CH3MgI)と反応させ、下記反応によって発生したメタンを定量することによりシラノール基含有量を求める。
【数1】
【0013】
(A)成分の重量平均分子量は500~10,000が好ましく、1,000~8,000がより好ましい。重量平均分子量は、通常、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。本発明におけるGPCの測定条件は以下の通りである。
[GPC測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:0.3mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
TSKgel SuperHM-N(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2500(6.0mmI.D.×15cm×1)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(試料濃度0.2質量%のトルエン溶液)
【0014】
[(B)成分]
本発明の(B)成分は、下記式(2)
【化5】
(式中、R2は互いに独立に、炭素数1~20の非置換1価炭化水素基、R3は互いに独立に、水酸基及び炭素数1~4のアルコキシ基から選ばれる基、cは3~5,000、dは0~50である。)
で表される、分子内に水酸基又はアルコキシ基を少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサンであり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。なお、式中のシロキサン単位の結合順序は問わない。
【0015】
2は互いに独立に、炭素数1~20の非置換1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、テトラデシル基、オクタデシル基等のアルキル基:ビニル基、アリル基、5-ヘキセニル基、オレイル基等のアルケニル基:フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。中でも、これらのうち、メチル基、フェニル基が好ましく、メチル基が撥水性の面から特に好ましい。
【0016】
3は互いに独立に、水酸基及び炭素数1~4のアルコキシ基から選ばれる基であり、水酸基、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、水酸基がより好ましい。
【0017】
cは3~5,000であり、3~4,500が好ましく、5~4,000がより好ましい。dは0~50であり、0~30が好ましく、0~15がより好ましい。なお、dが1以上となることもある。
【0018】
(B)成分としては、例えば下記式で示す化合物が挙げられる。
【化6】
(式中、c,dは上記と同じである。)
【0019】
(B)成分の量は、(A)成分100質量部に対して、1~100質量部であり、2~80質量部が好ましく、5~50質量部がより好ましい。
【0020】
[(C)成分]
本発明の(C)成分は、M(OX)4 (3)
(式中、Mはチタン又はジルコニウム、Xは互いに独立に、炭素数1~8のアルキル基である。)
で表される、テトラアルコキシチタニウム、テトラアルコキシジルコニウム及びこれらの加水分解物から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
Xとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。これらのうち、安定性の面からプロピル基、ブチル基が好ましい。
【0022】
(C)成分の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
テトラプロポキシチタニウム、テトラブトキシチタニウム、テトラオクトキシチタニウム、及びこれらの加水分解物、テトラブトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラオクトキシジルコニウム、及びこれらの加水分解物。中でも、触媒活性と安定性の面から、テトラプロポキシチタニウム、テトラブトキシチタニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム及びこれらの加水分解物。
【0023】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し10~300質量部であり、20~200質量部が好ましい。(C)成分の配合量が10質量部未満であると、架橋効果が弱くなり撥水性が低下する。(C)成分の配合量が300質量部を超えると撥水剤組成物の保存安定性が低下する。
【0024】
[(D)成分]
本発明の(D)成分は有機溶剤であり、上記(A)、(B)、(C)成分を溶解、好ましくは均一溶解させるものである。(D)成分としては、プロパノール、ブタノール等の1価アルコール類;プロピレングリコール等の2価アルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等の揮発性オルガノポリシロキサン類等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、作業性、乾燥性の面から、イソプロパノール、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、又は沸点200℃以下のイソパラフィンが好ましい。
【0025】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、100~30,000質量部であり、150~10,000質量部が好ましい。(D)成分の配合量が100質量部未満であると撥水剤組成物の保存安定性が低下し、30,000質量部を超えると被処理物の撥水性が低下する。
【0026】
[(E)成分]
本発明の撥水剤組成物には、上記必須成分の他に、柔軟性向上の点から、下記(E)成分を配合することが好ましい。
本発明の(E)成分は、下記式(4)
【化7】
(R4は互いに独立に炭素数1~20の非置換1価炭化水素基、eは10~3,000である。)で表されるオルガノポリシロキサンであり、(E)成分は1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
4は互いに独立に炭素数1~20の非置換1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、テトラデシル基、オクタデシル基等のアルキル基:ビニル基、アリル基、5-ヘキセニル基、オレイル基等のアルケニル基:フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。中でも、メチル基、フェニル基が好ましく、メチル基が撥水性の面からより好ましい。eは10~3,000であり、40~2,000が好ましく、50~1,000がより好ましい。
【0028】
(E)成分としては、例えば下記式で示す化合物が挙げられる。
【化8】
(式中、eは上記と同じ、nは0~300である。)
【0029】
(E)成分を配合する場合、その配合量は、(A)成分100質量部に対し、3~300質量部であり、10~300質量部が好ましく、30~250質量部がさらに好ましい。
【0030】
[撥水剤組成物]
本発明の撥水剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の増粘剤、顔料、染料、浸透剤、帯電防止剤、消泡剤、難燃剤、抗菌剤、防腐剤、架橋剤、密着性向上剤や、他のシリコーンオイル、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を適宜配合することができる。
【0031】
本発明の撥水剤組成物の調製方法は特に限定されず、上記必須成分及び任意成分を混合すればよい。
【0032】
本発明の撥水剤組成物は、繊維、紙、金属、木材、ゴム、プラスチック、ガラス等各種基材表面に処理して使用されるが、基材への塗布方法としては、浸漬法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、はけ塗り法等、従来公知の各種塗装法が可能である。
【0033】
また、組成物の塗布量は特に制限されないが、通常、塗布量が撥水剤組成物として0.1~200g/m2となる量が好ましく、1~100g/m2となる量がより好ましい。塗布後、乾燥だけで皮膜を得ることができ、該乾燥は、有機溶剤が揮発する条件であればよく、室温の場合には1時間~348時間、加熱する場合には50~180℃で1~30分程度の乾燥でよい。
【0034】
[繊維処理剤]
本発明の撥水剤組成物は、処理後の繊維表面が優れた撥水性を有することから、繊維処理剤の有効成分として有用である。該組成物は、そのまま繊維処理剤としても、繊維処理剤中に、例えば0.01~99質量%の範囲で適宜配合してもよい。ここで、繊維処理剤中の他の成分としては、防しわ剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱剤等の繊維用薬剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、金属粉顔料、レオロジーコントロール剤、硬化促進剤、消臭剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0035】
繊維を処理する場合は繊維処理剤を希釈して用いてもよく、繊維を処理する繊維処理剤希釈液中の撥水剤組成物の配合量は、固形分として0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0036】
本発明の繊維処理剤は、綿、絹、麻、ウール、アンゴラ、モヘア等の天然繊維はもとより、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウレタン、スパンデックス等の合成繊維及びこれらを用いた繊維製品に対しても全て有効である。またその形態、形状にも制限はなく、ステープル、フィラメント、トウ、糸等のような原材料形状に限らず、織物、編み物、詰め綿、不織布、紙、シート、フィルム等の多様な加工形態のものも本発明の繊維処理剤の処理可能な対象となる。
【0037】
本発明の撥水剤組成物は、繊維以外の基材にも適用可能である。該撥水剤組成物を塗布する対象となる基材としては、コンクリート、軽量コンクリート、軽量気泡コンクリート(ALC)、モルタル、種々のセメント板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、レンガ、瓦、タイル、石等の無機質の多孔質材料が挙げられる。また、珪藻土、粘土、漆喰等を主材料とする壁や、紙、木、皮革等の有機質の多孔質材料にも使用することができる。
【実施例
【0038】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。実施例において示す「%」は特に明示しない限り、質量%を示す。
【0039】
[実施例1]
(A)下記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート(重量平均分子量3,500、a/b=0.75)(A-1):100質量部、
【化9】
(B)下記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン(B-1):8.33質量部、
【化10】
(C)(C-1)日本曹達社製、B-4(商品名)(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):166.67質量部、及び
(D)イソプロパノール:225質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0040】
[実施例2]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート(A-1):100質量部、
(B)上記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン(B-1):8.33質量部、
(C)(C-2)ZA-65(商品名)マツモトファインケミカル社製、(テトラブトキシジルコニウム):200質量部、及び
(D)イソプロパノール:225質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0041】
[実施例3]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート(A-1):100質量部、
(B)下記式(B-2)で表されるオルガノポリシロキサン(B-2):10質量部、
【化11】
(C)日本曹達社製、B-4(商品名)(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):155質量部、及び
(D)トルエン:166.67質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0042】
[実施例4]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート(A-1):100質量部、
(B)上記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン(B-1):8.33質量部、
(C)(C-1)B-4(商品名)日本曹達社製(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):166.67質量部、
(D)イソプロパノール:225質量部、及び
(E)下記式(E-1)
【化12】
で表される、オルガノポリシロキサン(E-1):166.67質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0043】
[実施例5]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート(A-1):100質量部、
(B)上記式(B-2)で表されるオルガノポリシロキサン(B-2):10質量部、
(C)(C-1)日本曹達社製、B-4(商品名)(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):153.69質量部、
(D)トルエン:166.67質量部、及び
(E)上記式(E-1)で表されるオルガノポリシロキサン:166.67質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0044】
[実施例6]
(A)下記式(A-2)
【化13】
で表されるトリメチルシリケート(重量平均分子量4,000、a/b=1.2)
(A-2):100質量部、
(B)成分 上記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン:8.33質量部、
(C)(C-1)日本曹達社製、B-4(商品名)(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):166.67質量部、
(D)トルエン:166.67質量部、及び
(E)上記式(E-1)で表されるオルガノポリシロキサン:166.67質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0045】
[実施例7]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート:100質量部、
(B)下記式(B-3)
【化14】
で表されるオルガノポリシロキサン:20質量部、
(C)(C-1)日本曹達社製、B-4(商品名)(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):166.67質量部、
(D)イソプロパノール:225質量部、及び
(E)上記式(E-1)で表されるオルガノポリシロキサン:166.67質量部、
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0046】
[実施例8]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート(A-1):100質量部、
(B)下記式(B-4)
【化15】
で表されるオルガノポリシロキサン(B-4):8.33質量部、
(C)(C-1)日本曹達社製、B-4(商品名)(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):166.67質量部、
(D)トルエン:225質量部、及び
(E)上記式(E-1)で表されるオルガノポリシロキサン:166.67質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0047】
[実施例9]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート:100質量部、
(B)上記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン:8.33質量部、
(C)(C-2)ZA-65(商品名)マツモトファインケミカル社製:166.67質量部、
(D)イソプロパノール:225質量部、及び
(E)上記式(E-1)で表されるオルガノポリシロキサン:166.67質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0048】
[実施例10]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート:100質量部、
(B)上記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン:8.33質量部、
(C)(C-1)B-4(商品名)日本曹達社製(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):166.67質量部、
(D)イソプロパノール:225質量部、及び
(E)下記式(E-2)
【化16】
で表されるオルガノポリシロキサン(E-2):170質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0049】
[実施例11]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート:100質量部、
(B)上記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン:8.33質量部、
(C)(C-1)日本曹達社製、B-4(商品名)(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):166.67質量部、
(D)トルエン:225質量部、及び
(E)下記式(E-3)
【化17】
で表されるオルガノポリシロキサン(E-3):80質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0050】
[比較例1]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート:100質量部、
(B)上記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン:8.33質量部、及び
(D)トルエン:225質量部、
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0051】
[比較例2]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート:100質量部、
(C)(C-1)日本曹達社製、B-4(商品名):166.67質量部、及び
(D)トルエン:225質量部、
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0052】
[比較例3]
(B)上記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(C)(C-1)日本曹達社製、B-4(商品名)(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):166.67質量部、及び
(D)トルエン:225質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0053】
[比較例4]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート:100質量部、
(B)上記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン:8.33質量部、
(D)トルエン:225質量部、及び
(E)上記式(E-1)で表されるオルガノポリシロキサン:166.67質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0054】
[比較例5]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート:100質量部、
(B)上記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン:10質量部、
(C)(C-1)日本曹達社製、B-4(商品名)(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):1.00質量部、及び
(D)トルエン:225質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0055】
[比較例6]
(A)上記式(A-1)で表されるトリメチルシリケート:100質量部、
(B)上記式(B-1)で表されるオルガノポリシロキサン:0.05質量部、
(C)(C-1)日本曹達社製、B-4(商品名)(テトラブトキシチタニウムの加水分解縮合物):150質量部、及び
(D)トルエン:225質量部
を混合し、撥水剤組成物を得た。
【0056】
得られた撥水剤組成物について、以下に示す評価試験を実施した。結果を表中に併記する。
【0057】
[評価試験]
1.柔軟性
上記撥水剤組成物にトルエンを加えて撹拌し、(A)成分と(B)成分の合計が1.5%となるように希釈して試験液を調製した。この試験液にポリエステル/綿ブロード布(65%/35%)を10秒間浸漬した後、絞り率100%の条件でロールを用いて絞り、150℃で2分間乾燥して柔軟性評価用の処理布を作製した。この処理布について、3人のパネラーが手触りし、未処理布と比較して、柔軟性を下記評点で評価し、結果をパネラー3人の合計点に基づき、下記評価基準で示す。
<評点>
3点:未処理布と比較して触り心地が非常に良好である
2点:未処理布と比較して触り心地が良好である
1点:未処理布と触り心地が同等である
0点:未処理布と比較して触り心地が悪い
<評価基準>
◎:合計7点以上
○:合計5~6点
△:合計3~4点
×:合計2点以下
【0058】
2.撥水性
上記撥水剤組成物にトルエンを加えて撹拌し、(A)成分と(B)成分の合計が1.5%となるように希釈して試験液を調製した。この試験液に、ポリエステル/綿ブロード布(65%/35%)を10秒間浸漬した後、絞り率100%の条件でロールを用いて絞り、150℃で2分間乾燥して評価用の処理布を作製した。この処理布について、JIS-L1092のスプレー法に準じて試験をした。結果は目視にて下記の等級で評価した。
撥水性:状態
5:表面に付着湿潤のないもの
4:表面にわずかに付着湿潤を示すもの
3:表面に部分的湿潤を示すもの
2:表面に湿潤を示すもの
1:表面全体に湿潤を示すもの
0:表裏両面が完全に湿潤を示すもの
【0059】
3.洗濯後撥水性
上記撥水剤組成物にトルエンを加えて撹拌し、(A)成分と(B)成分の合計が1.5%となるように希釈して試験液を調製した。この試験液に、ポリエステル/綿ブロード布(65%/35%)を10秒間浸漬した後、絞り率100%の条件でロールを用いて絞り、150℃で2分間乾燥して評価用の処理布を作製した。その後、本処理布を、JIS L0217 103に準拠した手法により、洗濯機による洗濯を一回行った。この処理布について、JIS-L1092のスプレー法に準じて試験をした。結果は目視にて下記の等級で評価した。
撥水性:状態
5:表面に付着湿潤のないもの
4:表面にわずかに付着湿潤を示すもの
3:表面に部分的湿潤を示すもの
2:表面に湿潤を示すもの
1:表面全体に湿潤を示すもの
0:表裏両面が完全に湿潤を示すもの
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
上表に示した通り、本発明の撥水剤組成物は、撥水性付与効果に優れており、処理布の柔軟性も良好である。さらに洗濯後にも良好な撥水性を維持することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の撥水剤組成物は、撥水性付与効果に優れており、繊維処理剤として使用すると、処理布の柔軟性も良好である。さらに、洗濯後にも良好な撥水性を維持することが可能である。