(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ロータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/32 20060101AFI20240509BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240509BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240509BHJP
【FI】
H02K1/32 Z
H02K9/19 B
F16H57/04 G
(21)【出願番号】P 2023510672
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022007850
(87)【国際公開番号】W WO2022209480
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2021058434
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】古田 泰也
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-115217(JP,A)
【文献】特開2010-4618(JP,A)
【文献】特開2012-235546(JP,A)
【文献】特開2009-219186(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049394(WO,A1)
【文献】特開2009-261214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/32
H02K 9/19
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアと、
前記ロータコアの軸方向の一方側の端面に設けられる第1エンドプレートと、
前記ロータコアの前記軸方向の他方側の端面に設けられる第2エンドプレートと、
前記ロータコアの径方向内側において前記ロータコアと隣接するように設けられているとともに前記ロータコアを固定する円筒部を含むロータハブと、を備え、
前記ロータコアは、前記軸方向に沿って延びるように設けられ、前記ロータコアを冷却する第1冷却用オイルが流通する複数のオイル流路を含み、
前記ロータハブの前記円筒部の前記軸方向の一方側の端部は、前記第1エンドプレートとかしめられる複数のかしめ部と、前記ロータコアの周方向において前記複数のかしめ部の各々の両側に前記かしめ部と隣接するように配置される複数の一対の切り欠き部と、を含み、
前記第1エンドプレートは、前記周方向において、前記円筒部の前記かしめ部が配置されていない位置に対応する第1位置に設けられるとともに、前記複数のオイル流路のうち第1オイル流路と接続され、かつ、前記第1エンドプレートの内周縁近傍に設けられる孔または切り欠きにより構成される第1開口部を含み、
前記第2エンドプレートは、前記周方向において、前記円筒部の前記かしめ部が配置されている位置に対応する第2位置に設けられるとともに、前記複数のオイル流路のうち前記第1オイル流路以外の第2オイル流路と接続され、かつ、前記第2エンドプレートの内周縁近傍に設けられる孔または切り欠きにより構成される第2開口部を含む、ロータ。
【請求項2】
前記第1オイル流路は、前記第1位置に設けられ、前記ロータコアの内周縁の切り欠きが前記円筒部により径方向内側から塞がれることによって形成される軸方向に沿って延びる第1の孔により構成され、前記第1エンドプレートの前記第1開口部に接続されている、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記第2オイル流路は、前記第2位置に設けられ、前記ロータコアの内周縁の切り欠きが前記円筒部により径方向内側から塞がれることによって形成される軸方向に沿って延びる第2の孔により構成され、前記第2エンドプレートの前記第2開口部に接続されている、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
前記第1開口部は、前記第1エンドプレートの内周縁に設けられる第1切り欠きと、前記ロータハブの外径側の端部とにより囲まれる孔により構成されている。請求項1~3のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項5】
前記第2開口部は、前記第2エンドプレートの内周縁に設けられる第2切り欠きと、前記ロータハブの外径側の端部とにより囲まれる孔により構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項6】
前記かしめ部は、前記円筒部の端部が径方向外側に向かって押し倒されるとともに前記第1エンドプレートの内周縁にかしめられることによって形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項7】
前記ロータハブは、前記円筒部の前記軸方向の一方側の前記端部と接合されるフランジ部を含み、
前記円筒部の前記端部のうち前記フランジ部と接合される接合部分は、前記周方向において、前記切り欠き部を挟んで前記複数のかしめ部の各々と隣り合うように周状に複数配置されている、請求項1~6までのいずれか1項に記載のロータ。
【請求項8】
前記フランジ部は、前記周方向において前記第2位置に対応する位置に配置されるとともに前記かしめ部の径方向内側において前記かしめ部と隣接するように設けられ、前記かしめ部をかしめる際に用いられる治具を逃がすための孔または切り欠きにより構成される複数の第3開口部を含む、請求項7に記載のロータ。
【請求項9】
前記複数の第3開口部の各々は、前記円筒部の径方向内側において前記円筒部と係合するクラッチ部を冷却する第2冷却用オイルを通過させる開口を兼ねている、請求項8に記載のロータ。
【請求項10】
前記円筒部は、前記円筒部の径方向内側に設けられるクラッチ部に向かって突出するとともに前記軸方向に沿って延びるように設けられ、前記クラッチ部と係合する複数のスプライン部を含み、
前記複数のスプライン部の各々は、前記軸方向の一方側の端部において前記フランジ部と当接するように設けられている、請求項7~9のいずれか1項に記載のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータハブを備えるロータが知られている。このような、ロータは、たとえば、特開2019-115217号公報に開示されている。
【0003】
特開2019-115217号公報に記載のロータは、ロータコアと、ロータコアの端面を押さえるためのエンドプレートと、ロータコアおよびエンドプレートが取り付けられるロータシャフトと、を備える。軸方向の一方側のエンドプレートの内周面には、複数の切り欠き部が設けられている。ロータシャフトは、ロータコアに取り付けられる中空円筒状の取付部(ロータハブ)を含む。上記取付部の端部には、薄肉部(エンドプレート側に突出する凸部)が設けられている。この薄肉部がエンドプレートの上記切り欠き部にかしめられることにより、かしめ部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特開2019-115217号公報には記載されていないが、ロータコアを冷却するための冷却用オイルが流通するオイル流路が、ロータコアの内周縁近傍において軸方向に延びるように設けられる場合がある。この場合、エンドプレート側に突出するかしめ部により上記オイル流路の軸方向端部が塞がれることによって、冷却用オイルがロータコアの外部に排出されないことが考えられる。したがって、ロータハブがエンドプレートにかしめられる場合に、ロータコアのオイル流路を流通する冷却用オイルを容易に外部に排出することが可能なロータが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ロータハブがエンドプレートにかしめられる場合に、ロータコアのオイル流路を流通する冷却用オイルを容易に外部に排出することが可能なロータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるロータは、ロータコアと、ロータコアの軸方向の一方側の端面に設けられる第1エンドプレートと、ロータコアの軸方向の他方側の端面に設けられる第2エンドプレートと、ロータコアの径方向内側においてロータコアと隣接するように設けられているとともにロータコアを固定する円筒部を含むロータハブと、を備え、ロータコアは、軸方向に沿って延びるように設けられ、ロータコアを冷却する第1冷却用オイルが流通する複数のオイル流路を含み、ロータハブの円筒部の軸方向の一方側の端部は、第1エンドプレートとかしめられる複数のかしめ部と、ロータコアの周方向において複数のかしめ部の各々の両側にかしめ部と隣接するように配置される複数の一対の切り欠き部と、を含み、第1エンドプレートは、周方向において、円筒部のかしめ部が配置されていない位置に対応する第1位置に設けられるとともに、複数のオイル流路のうち第1オイル流路と接続され、かつ、第1エンドプレートの内周縁近傍に設けられる孔または切り欠きにより構成される第1開口部を含み、第2エンドプレートは、周方向において、円筒部のかしめ部が配置されている位置に対応する第2位置に設けられるとともに、複数のオイル流路のうち第1オイル流路以外の第2オイル流路と接続され、かつ、第2エンドプレートの内周縁近傍に設けられる孔または切り欠きにより構成される第2開口部を含む。なお、内周縁近傍とは、内周縁そのものと内周縁の付近との両方を含む意味である。
【0008】
この発明の一の局面によるロータでは、上記のように、第1エンドプレートは、周方向において、円筒部のかしめ部が配置されていない位置に対応する第1位置に設けられるとともに第1オイル流路と接続される第1開口部を含み、第2エンドプレートは、周方向において、円筒部のかしめ部が配置されている位置に対応する第2位置に設けられるとともに第2オイル流路と接続される第2開口部を含む。これにより、かしめ部が配置されていない位置に対応する第1位置においては、第1エンドプレートの第1開口部がかしめ部により軸方向から覆われる(塞がれる)ことがないので、第1オイル流路を流通する第1冷却用オイルを第1開口部から外部に排出することができる。また、かしめ部が第2オイル流路を軸方向から覆う(塞ぐ)ような位置に設けられている場合にも、第2オイル流路を流通する第1冷却用オイルを、かしめ部とは反対側の第2エンドプレートの第2開口部から排出することができる。その結果、ロータハブが第1エンドプレートにかしめられる場合に、ロータコアのオイル流路を流通する第1冷却用オイルを容易に外部に排出することができる。
【0009】
また、複数のかしめ部の各々の周方向の両側にかしめ部と隣接するように配置される複数の一対の切り欠き部が設けられていることによって、かしめ部をかしめる(径方向外側に押し倒すように変形させる)ことに起因して、円筒部の端部のうちかしめ部の周方向の両側の部分において径方向に引っ張り応力が生じるのを防止することができる。また、切り欠き部が設けられることによって、かしめによる荷重が加わる領域が小さくなるので、荷重を加えるための装置(設備)を小型化することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロータハブがエンドプレートにかしめられる場合に、ロータコアのオイル流路を流通する冷却用オイルを容易に外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態による回転電機の構成を示す断面図である。
【
図2】一実施形態によるロータコアの構成を示す平面図である。
【
図3】一実施形態によるロータ(ロータハブ)の構成を示す平面図である。
【
図4】一実施形態によるかしめ部が設けられていない周方向位置(位置P1)におけるロータの断面図である。
【
図5】一実施形態によるかしめ部が設けられている周方向位置(位置P2)におけるロータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1~
図5を参照して、本実施形態によるロータ100について説明する。
【0014】
本願明細書では、「軸方向」とは、ロータ100の回転軸線C(
図2参照)に沿った方向を意味し、図中のZ方向を意味する。また、「径方向」とは、ロータ100の径方向(R1方向またはR2方向)を意味し、「周方向」は、ロータ100の周方向(E1方向またはE2方向)を意味する。
【0015】
図1に示すように、ロータ100は、ステータ101と共に回転電機102を構成する。また、ロータ100およびステータ101は、それぞれ、円環状に形成されている。そして、ロータ100は、ステータ101の径方向内側においてステータ101と対向するように配置されている。すなわち、本実施形態では、回転電機102は、インナーロータ型の回転電機として構成されている。また、ロータ100は、ギア等の回転力伝達部材を介してエンジンや車軸等に接続されているロータシャフト(図示せず)を備えている。ロータコア1は、ロータシャフトの回転力が伝達され、回転軸線C(
図2参照)回りに回転される。たとえば、回転電機102は、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成されており、車両に搭載されるように構成されている。
【0016】
また、ロータ100は、ロータコア1を備える。ロータコア1は、複数の電磁鋼板1aが積層されることにより構成されている。また、ロータコア1は、電磁鋼板1aの積層方向(Z方向)に延びる複数の磁石挿入孔2を含む。複数の磁石挿入孔2の各々には、永久磁石2aが配置(挿入)されている。
【0017】
図2に示すように、磁石挿入孔2は、ロータコア1に複数(本実施形態では32個)設けられている。すなわち、回転電機102は、埋込永久磁石型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)として構成されている。
【0018】
具体的には、ロータコア1は、周方向に隣り合う一対の磁石挿入孔2を含む磁極を形成する複数の磁極形成部2bを含む。磁極形成部2bは、ロータコア1において、回転軸線C方向から見て、周方向に沿って、等角度間隔に16個設けられている。また、磁極形成部2bにおける一対の磁石挿入孔2は、径方向内側(R1側)に凸のV字状に配置されている。
【0019】
また、
図1に示すように、ロータ100は、軸方向の一方側(Z1側)の端面1bに設けられるエンドプレート3aを備える。また、ロータ100は、軸方向の他方側(Z2側)の端面1cに設けられるエンドプレート3bを備える。エンドプレート3aおよびエンドプレート3bの各々は、磁石挿入孔2から永久磁石2aが飛び出すのを防止するために設けられている。なお、エンドプレート3aおよびエンドプレート3bは、それぞれ、請求の範囲の「第1エンドプレート」および「第2エンドプレート」の一例である。
【0020】
また、ロータ100は、ロータハブ4を備える。ロータハブ4は、円筒部40を含む。円筒部40は、ロータコア1の径方向内側(R1側)においてロータコア1と隣接するように設けられている。ロータコア1を固定する円筒部40は、円筒状に形成されている。
【0021】
また、ロータハブ4は、円筒部40の軸方向の一方側(Z1側)の端部41と溶接(接合)されるフランジ部42を含む。フランジ部42は、回転電機102のクラッチ部103を軸方向の一方側(Z1側)から覆うように設けられている。フランジ部42は、軸方向と交差するようにフランジ状に延びるように設けられている。なお、クラッチ部103は、円筒部40の径方向内側において円筒部40(後述するスプライン部41g)と係合するように設けられている。
【0022】
また、円筒部40は、軸方向の他方側(Z2側)からロータコア1を支持するように設けられる支持部43を含む。支持部43は、ロータコア1の内周縁1d(
図2参照)近傍から径方向外側に延びるように設けられている。
【0023】
また、
図2に示すように、ロータコア1は、軸方向に沿って延びるように設けられ、ロータコア1を冷却する冷却用オイル90(
図4および
図5の破線矢印参照)が流通する複数のオイル流路5を含む。複数のオイル流路5は、ロータコア1の内周縁1dに設けられ、軸方向に沿って延びるように設けられる切り欠きにより構成されている。具体的には、オイル流路5は、ロータコア1の内周縁1dの切り欠きが円筒部40により径方向内側から塞がれることによって形成される軸方向に沿って延びる孔により構成される。なお、冷却用オイル90は、請求の範囲の「第1冷却用オイル」の一例である。
【0024】
図3に示すように、ロータハブ4の円筒部40の軸方向の一方側(Z1側)の端部41は、エンドプレート3aとかしめられる複数のかしめ部41aを含む。また、端部41は、周方向において、複数のかしめ部41aの各々の両側にかしめ部41aと隣接するように配置される複数の一対の切り欠き部41bを含む。本実施形態では、かしめ部41aは、円筒部40の端部41が径方向外側に向かって押し倒される(
図5参照)とともにエンドプレート3aの内周縁3cにかしめられることによって形成されている。これにより、円筒部40の端部41を径方向外側に向かって押し倒すだけで、容易に、かしめ部41aを形成することができる。
【0025】
これにより、複数のかしめ部41aの各々の周方向の両側にかしめ部41aと隣接するように配置される複数の一対の切り欠き部41bが設けられていることによって、かしめ部41aをかしめる(径方向外側に押し倒すように変形させる)ことに起因して、円筒部40の端部41のうちかしめ部41aの周方向の両側の部分において径方向に引っ張り応力が生じるのを防止することができる。また、切り欠き部41bが設けられることによって、かしめによる荷重が加わる領域が小さくなるので、荷重を加えるための装置(設備)を小型化することができる。
【0026】
また、かしめ部41aの周方向の幅W1は、切り欠き部41bの周方向の幅W2よりも大きい。なお、かしめ部41aの周方向の幅W1は、後述する開口部42bの周方向の幅W3および後述する開口部42cの幅W4よりも小さく、かつ、幅W3および幅W4の1/2よりも大きい。なお、開口部42bと開口部42cとは、互いに同一の形状を有している。すなわち、幅W3と幅W4とは、互いに同じ大きさである。
【0027】
ここで、
図4に示すように、エンドプレート3aは、周方向において、円筒部40のかしめ部41aが配置されていない位置に対応する位置P1に設けられるとともに、複数のオイル流路5のうち第1オイル流路5aと接続され、かつ、エンドプレート3aの内周縁3c近傍に設けられる開口部3dを含む。なお、位置P1および開口部3dは、それぞれ、請求の範囲の「第1位置」および「第1開口部」の一例である。また、
図3では、便宜上、開口部3dの個数の分だけ設けられる周方向上の位置である位置P1のうちの2つだけが図示されている。
【0028】
なお、本実施形態では、第1オイル流路5aは、位置P1に設けられ、ロータコア1の内周縁1dの切り欠きが円筒部40により径方向内側から塞がれることによって形成される軸方向に沿って延びる孔51aにより構成され、エンドプレート3aの開口部3dに接続されている。このように、ロータコア1の内周縁1dの切り欠きと円筒部40とにより、容易に、第1オイル流路5aを形成することができる。なお、孔51aは、「第1の孔」の一例である。また、本実施形態では、開口部3dは、エンドプレート3aの内周縁3cに設けられる切り欠き31cと、ロータハブ4の外径側の端部41とにより囲まれる孔により構成されている。これにより、エンドプレート3aの内周縁3cに設けられる切り欠き31cと、ロータハブ4の外径側の端部41とにより、容易に、開口部3dを形成することができる。なお、切り欠き31cは、請求の範囲の「第1切り欠き」の一例である。
【0029】
また、
図5に示すように、エンドプレート3bは、周方向において、円筒部40のかしめ部41aが配置されている位置に対応する位置P2に設けられるとともに、複数のオイル流路5のうち第1オイル流路5a以外の第2オイル流路5bと接続され、かつ、エンドプレート3bの内周縁3e近傍に設けられる開口部3fを含む。なお、位置P2および開口部3fは、それぞれ、請求の範囲の「第2位置」および「第2開口部」の一例である。また、
図3では、便宜上、かしめ部41aの個数の分だけ設けられる周方向上の位置である位置P2のうちの2つだけが図示されている。なお、本実施形態では、第2オイル流路5bは、位置P2に設けられ、ロータコア1の内周縁1dの切り欠きが円筒部40により径方向内側から塞がれることによって形成される軸方向に沿って延びる孔51bにより構成され、エンドプレート3bの開口部3fに接続されている。このように、ロータコア1の内周縁1dの切り欠きと円筒部40とにより、容易に、第2オイル流路5bを形成することができる。なお、孔51bは、「第2の孔」の一例である。また、本実施形態では、開口部3fは、エンドプレート3bの内周縁3eに設けられる切り欠き31eと、ロータハブ4の外径側の端部43aとにより囲まれる孔により構成されている。これにより、エンドプレート3bの内周縁3eに設けられる切り欠き31eと、ロータハブ4の外径側の端部43aとにより、容易に、開口部3fを形成することができる。なお、切り欠き31eは、請求の範囲の「第2切り欠き」の一例である。
【0030】
これにより、かしめ部41aが配置されていない位置に対応する位置P1においては、エンドプレート3aの開口部3dがかしめ部41aにより軸方向から覆われる(塞がれる)ことがないので、第1オイル流路5aを流通する冷却用オイル90を開口部3dから外部に排出することができる。また、かしめ部41aが第2オイル流路5bを軸方向から覆う(塞ぐ)ような位置に設けられている場合にも、第2オイル流路5bを流通する冷却用オイル90を、かしめ部41aとは反対側のエンドプレート3bの開口部3fから排出することができる。その結果、ロータハブ4がロータコア1にかしめられる場合に、ロータコア1のオイル流路5を流通する冷却用オイル90を容易に外部に排出することができる。
【0031】
また、開口部3dは、エンドプレート3aの内周縁3cに設けられる切り欠きにより構成されている。また、開口部3fは、エンドプレート3bの内周縁3eに設けられる切り欠きにより構成されている。これにより、開口部3dを、エンドプレート3aにおいて、容易に径方向内側に寄せて配置することが可能である。また、開口部3fを、エンドプレート3bにおいて、容易に径方向内側に寄せて配置することが可能である。
【0032】
また、開口部3fの径方向外側の端部3gは、円筒部40の支持部43の径方向外側の端部43aよりも径方向外側に設けられている。これにより、開口部3fが支持部43により塞がれないので、開口部3fを介して冷却用オイル90を外部に排出することが可能である。
【0033】
また、
図4に示すように、円筒部40は、冷却用オイル90をクラッチ部103の第1クラッチ103aから第1オイル流路5aに導入するための孔部41cを含む。孔部41cは、複数の位置P1ごとに設けられている。孔部41cから第1オイル流路5aに導入された冷却用オイル90は、第1オイル流路5aを流通し、エンドプレート3aの開口部3dからロータコア1の外部に排出される。第1クラッチ103aは、軸方向において、エンドプレート3bの近傍の位置に設けられている。孔部41cは、第1クラッチ103aと径方向において対向する位置にe設けられている。具体的には、孔部41cは、ロータコア1の軸方向の他方側(Z2側)の部分と径方向において対向する位置に設けられている。
【0034】
また、
図5に示すように、円筒部40は、冷却用オイル90を第1クラッチ103aから第2オイル流路5bに導入するための孔部41dを含む。孔部41dは、複数の位置P2ごとに設けられている。孔部41dから第2オイル流路5bに導入された冷却用オイル90は、第2オイル流路5bを流通し、エンドプレート3bの開口部3fからロータコア1の外部に排出される。孔部41dは、第1クラッチ103aと径方向において対向する位置に設けられている。具体的には、孔部41dは、ロータコア1の軸方向の他方側(Z2側)の部分と径方向において対向する位置に設けられている。孔部41dは、軸方向において、孔部41cと略同じ位置に配置されている。
【0035】
また、
図3に示すように、円筒部40の端部41のうちフランジ部42と溶接される溶接部分41eは、周方向において、切り欠き部41bを挟んで複数のかしめ部41aの各々と隣り合うように周状に複数配置されている。言い換えると、溶接部分41eは、切り欠き部41bによって、かしめ部41aと分断されるように設けられている。なお、溶接部分41eは、請求の範囲の「接合部分」の一例である。
【0036】
これにより、かしめ部41aをかしめる際の応力に起因して、円筒部40の溶接部分41eとフランジ部42との溶接が引き剥がされるのを防止することができる。
【0037】
また、フランジ部42は、円筒部40の複数の溶接部分41eの各々に向かって径方向外側に突出するように設けられ、対応する溶接部分41eと溶接される複数の突出部42aを含む。これにより、突出部42aが設けられる周方向位置においてフランジ部42と円筒部40とを溶接することが可能であるとともに、突出部42aが設けられていない周方向位置においてフランジ部42と円筒部40とを離間させることが可能である。
【0038】
複数の突出部42a(溶接部分41e)の各々は、周方向において、位置P1および位置P2以外の位置に対応する位置P3に設けられている。具体的には、位置P3は、周方向に隣り合う位置P1と位置P2との間の位置に対応する位置である。なお、
図3では、便宜上、突出部42a(溶接部分41e)の個数の分だけ設けられる周方向上の位置である位置P3のうちの2つだけが図示されている。
【0039】
また、円筒部40は、ロータコア1のキー6(
図2参照)と係合する溝部41fを含む。溝部41fは、回転軸線Cを中心として、互いに対向する位置に2つ設けられている。なお、溝部41fが設けられている箇所においては、円筒部40とフランジ部42とは溶接されていない。
【0040】
また、フランジ部42は、周方向において位置P2に対応する位置に配置されるとともにかしめ部41aの径方向内側においてかしめ部41aと隣接するように設けられる複数の開口部42bを含む。開口部42bは、かしめ部41aをかしめる際に用いられる治具(図示せず)を逃がすための切り欠きにより構成されている。なお、開口部42bは、請求の範囲の「第3開口部」の一例である。
【0041】
これにより、かしめ用の治具を開口部42bに逃がしながらかしめ作業を行うことができるので、かしめ用の治具がフランジ部42と干渉するのを防止することができる。
【0042】
具体的には、複数の開口部42bの各々は、フランジ部42の外周縁42dに設けられている切り欠きにより構成されている。
【0043】
これにより、開口部42bが孔部により構成されている場合と異なり、径方向において、かしめ部41aと開口部42bとの間には障害物となる部分(すなわちフランジ部42の外周縁42d)が設けられないので、かしめ用の治具を容易に開口部42bに逃がすことが可能である。
【0044】
また、複数の開口部42bの各々は、クラッチ部103を冷却する冷却用オイル91を通過させる開口を兼ねている。なお、冷却用オイル91は、請求の範囲の「第2冷却用オイル」の一例である。
【0045】
これにより、クラッチ部103を冷却する冷却用オイル91を通過させる開口を開口部42bとは別個に形成する必要がないので、フランジ部42の構成を簡略化することができる。
【0046】
具体的には、複数の開口部42bの各々は、クラッチ部103の第2クラッチ103bを冷却する冷却用オイル91を通過させるように設けられている。第2クラッチ103bは、第1クラッチ103aの軸方向の一方側(Z1側)において、円筒部40と係合するように設けられている。なお、第2クラッチ103bは、WSC(Wet Start Clutch)モード(第1クラッチ103aの締結状態で第2クラッチ103bをスリップ制御させ、エンジンを動力源に含みながら走行する走行モード)において使用されるクラッチである。
【0047】
また、フランジ部42は、周方向において位置P1に対応する位置に配置され、冷却用オイル91を通過させる複数の開口部42cを含む。これにより、周方向における位置P1において、開口部42cを介して冷却用オイル91を外部に排出することが可能である。
【0048】
また、複数の開口部42cの各々は、開口部42bと同様に、フランジ部42の外周縁42dに設けられている切り欠きにより構成されている。
【0049】
開口部42bおよび開口部42cと、突出部42aとは、周方向において互いに交互に配置されている。具体的には、周方向において、開口部42b、突出部42a、開口部42c、突出部42a、開口部42b…の順に配置されている。すなわち、フランジ部42は、周方向において、突出部42a(後述するスプライン部41g)が設けられる位置以外の全ての位置において、開口部42bまたは開口部42cにより開口されている。
【0050】
また、
図1に示すように、円筒部40は、円筒部40の径方向内側に設けられるクラッチ部103に向かって突出するとともに軸方向に沿って延びるように設けられ、クラッチ部103と係合する複数のスプライン部41gを含む。複数のスプライン部41gの各々は、周方向において、円筒部40の溶接部分41eが設けられる位置P3に配置されている。
【0051】
複数のスプライン部41gの各々は、軸方向の一方側の端部41hにおいてフランジ部42と当接するように設けられている。
【0052】
これにより、フランジ部42がスプライン部41gにより軸方向の他方側から支持されるので、フランジ部42を安定的に固定することができる。
【0053】
具体的には、複数のスプライン部41gの各々は、端部41hにおいてフランジ部42の突出部42aと当接するように設けられている。すなわち、複数の突出部42aの各々は、軸方向から見て、対応するスプライン部41gと重なるように設けられている。
【0054】
これにより、フランジ部42の突出部42a同士の間に設けられる複数の開口部42bの各々は、軸方向から見て、周方向に隣り合うスプライン部41g同士の間の領域とオーバラップするように配置されている。また、フランジ部42の突出部42a同士の間に設けられる複数の開口部42cの各々も同様に、軸方向から見て、周方向に隣り合うスプライン部41g同士の間の領域とオーバラップするように配置されている。これらの結果、周方向に隣り合うスプライン部41g同士の間を流通する冷却用オイル91を、開口部42bおよび開口部42cから効率良く排出することが可能である。
【0055】
なお、スプライン部41gは、ブローチ加工によって形成されている。ブローチ加工とは、「ブローチ」とよばれる長い工具を使い、加工ワークの表面や内面を削る除去加工である。
【0056】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0057】
たとえば、上記実施形態では、開口部3d(第1開口部)がエンドプレート3a(第1エンドプレート)の内周縁3cに設けられる切り欠きにより形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。開口部3dが、内周縁3cの付近に設けられた孔により構成されていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、開口部3f(第2開口部)がエンドプレート3b(第2エンドプレート)の内周縁3eに設けられる切り欠きにより形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。開口部3fが、内周縁3eの付近に設けられた孔により構成されていてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、ロータハブ4が、互いに別個に形成された円筒部40およびフランジ部42を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。円筒部40およびフランジ部42が一体的に形成されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、円筒部40の端部41とフランジ部42とが溶接により接合される例を示したが、本発明はこれに限られない。円筒部40の端部41とフランジ部42とが溶接以外(たとえば、接着剤による接着)によって接合されていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、開口部42b(第3開口部)および開口部42cの各々が、フランジ部42の外周縁42dに設けられる切り欠きにより構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。開口部42bおよび開口部42cの各々が、外周縁42dの付近に設けられる孔により構成されていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、フランジ部42に開口部42b(第3開口部)および開口部42cが設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第2クラッチ103bが設けられておらず第1クラッチ103aのみが設けられている場合には、フランジ部42に開口部42bおよび開口部42cが設けられていなくてもよい。また、かしめ用の治具を逃がすために、開口部42bおよび開口部42cのうち開口部42bのみがフランジ部42に設けられていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、開口部42b(第3開口部)が、冷却用オイル91(第2冷却用オイル)を通過させるための開口と、かしめ用の治具を逃がすための開口とを兼ねている例を示したが、本発明はこれに限られない。冷却用オイル91を通過させるための開口と、かしめ用の治具を逃がすための開口とが、別個に設けられていてもよい。
【0064】
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0065】
複数の第3開口部(42b)は、軸方向から見て、周方向に隣り合うスプライン部(41g)同士の間の領域とオーバラップするように配置されている。
【0066】
フランジ部(42)は、円筒部(40)の複数の接合部分(41e)の各々に向かって径方向外側に突出するように設けられ、対応する接合部分(41e)と接合される複数の突出部(42a)を含む。
【0067】
フランジ部(42)は、周方向において第1位置(P1)に対応する位置に配置され、第2冷却用オイル(91)を通過させる第4開口部(42c)を含む。
【0068】
第1開口部(3d)および第2開口部(3f)は、それぞれ、第1エンドプレート(3a)の内周縁(3c)および第2エンドプレート(3b)の内周縁(3e)に設けられている切り欠きにより構成されている。
【0069】
複数の第3開口部(42b)の各々は、フランジ部(42)の外周縁(42d)に設けられている切り欠きにより構成されている。
【符号の説明】
【0070】
1…ロータコア、1b…端面(一方側の端面)、1c…端面(他方側の端面)、3a…エンドプレート(第1エンドプレート)、3b…エンドプレート(第2エンドプレート)、3c…内周縁(第1エンドプレートの内周縁)、3d…開口部(第1開口部)、3e…内周縁(第2エンドプレートの内周縁)、3f…開口部(第2開口部)、4…ロータハブ、5…オイル流路、5a…第1オイル流路、5b…第2オイル流路、31c…切り欠き(第1切り欠き)、31e…切り欠き(第2切り欠き)、40…円筒部、41…端部(円筒部の端部)、41a…かしめ部、41b…切り欠き部、41e…溶接部分(接合部分)、41g…スプライン部、41h…端部(スプライン部の端部)、42…フランジ部、42b…開口部(第3開口部)、51a…孔(第1の孔)、51b…孔(第2の孔)、90…冷却用オイル(第1冷却用オイル)、91…冷却用オイル(第2冷却用オイル)、100…ロータ、103…クラッチ部、P1…位置(第1位置)、P2…位置(第2位置)