(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/304 648K
H01L21/304 647Z
H01L21/304 647A
H01L21/304 643C
H01L21/304 643Z
(21)【出願番号】P 2020094672
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】東 克栄
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 晃久
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】塚原 隆太
(72)【発明者】
【氏名】温井 宏樹
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-072439(JP,A)
【文献】特開2007-335815(JP,A)
【文献】特開2017-188540(JP,A)
【文献】特開2019-080003(JP,A)
【文献】特開平05-149242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0187561(US,A1)
【文献】特開2001-127034(JP,A)
【文献】特開2017-046017(JP,A)
【文献】特開2017-191919(JP,A)
【文献】特開平07-122485(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0031196(KR,A)
【文献】特開2011-104562(JP,A)
【文献】特開2004-273801(JP,A)
【文献】特開2004-193329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する保持工程と、
水を含む処理液およびイソプロピルアルコールを、それぞれ第1供給管および第2供給管を通じて混合管に供給し、前記処理液および前記イソプロピルアルコールが混合された混合液を、前記混合管を通じてノズルから、前記基板に吐出
して前記基板からパーティクルを除去する洗浄工程と、
前記
洗浄工程の後に、前記処理液および前記イソプロピルアルコールのいずれか一方である置換液を供給して前記混合管における前記混合液を前記置換液で押し出して前記ノズルから吐出させ、前記混合液を前記置換液に置換する置換工程と、
前記洗浄工程の後に、前記基板を乾燥させる乾燥工程と
を備え
、
前記置換工程は、前記洗浄工程の後、前記乾燥工程が終了するまでに開始され、前記置換工程にて、平面視において前記基板よりも外側の待避位置に前記ノズルを移動させた状態で、前記置換液を供給して前記混合液を前記置換液に置換する、基板処理方法。
【請求項2】
基板を保持する保持工程と、
水を含む処理液およびイソプロピルアルコールを、それぞれ第1供給管および第2供給管を通じて混合管に供給し、前記処理液および前記イソプロピルアルコールが混合された混合液を、前記混合管を通じてノズルから、前記基板に吐出して前記基板からパーティクルを除去する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後に、前記処理液および前記イソプロピルアルコールのいずれか一方である置換液を供給して前記混合管における前記混合液を前記置換液で押し出して前記ノズルから吐出させ、前記混合液を前記置換液に置換する置換工程と、
前記洗浄工程の後に、前記基板を乾燥させる乾燥工程と
を備え、
前記置換工程は、前記洗浄工程の後、前記乾燥工程が終了するまでに開始され、
前記置換液は、前記処理液である、基板処理方法。
【請求項3】
基板を保持する保持工程と、
水を含む処理液およびイソプロピルアルコールを、それぞれ第1供給管および第2供給管を通じて混合管に供給し、前記処理液および前記イソプロピルアルコールが混合された混合液を、前記混合管を通じてノズルから、前記基板に吐出する混合液供給工程と、
前記混合液供給工程の後に、前記処理液および前記イソプロピルアルコールのいずれか一方である置換液を供給して前記混合管における前記混合液を前記置換液で押し出して前記ノズルから吐出させ、前記混合液を前記置換液に置換する置換工程と、
を備え、
前記置換工程では、前記混合液供給工程の後、基準時間内に前記混合液が供給されないときに、前記置換液を供給して前記混合管における前記混合液を前記置換液に置換し、
前記基準時間は、前記混合液における前記イソプロピルアルコールの濃度が高いほど、短く設定される、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1
または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記混合管における気泡を気泡検出部で検出する検出工程をさらに備え、
前記置換工程では、前記気泡検出部によって検出された気泡の量が許容量よりも大きいときに、前記置換液を供給して、前記混合管における前記混合液を前記置換液に置換する、基板処理方法。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記混合液は、前記処理液と前記イソプロピルアルコールとを混合することにより生じた気泡を含んでいる、基板処理方法。
【請求項6】
基板を保持する保持工程と、
水を含む処理液およびイソプロピルアルコールを、それぞれ第1供給管および第2供給管を通じて混合管に供給し、前記処理液および前記イソプロピルアルコールが混合された混合液を、前記混合管を通じてノズルから、前記基板に吐出して前記基板からパーティクルを除去する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後に、前記処理液および前記イソプロピルアルコールのいずれか一方である置換液を供給して前記混合管における前記混合液を前記置換液で押し出して前記ノズルから吐出させ、前記混合液を前記置換液に置換する置換工程と
を備え、
前記置換工程において、前記置換液の供給および停止を繰り返して、前記混合液を前記置換液に置換する、基板処理方法。
【請求項7】
請求項1
、請求項2、請求項4および請求項6のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記置換工程において、前記
洗浄工程における前記混合液の流量よりも大きい流量で前記置換液を供給する、基板処理方法。
【請求項8】
基板を保持する基板保持部と、
ノズルと、水を含む処理液が供給される第1供給管と、イソプロピルアルコールが供給される第2供給管と、前記第1供給管から供給された前記処理液と、前記第2供給管から供給された前記イソプロピルアルコールとの混合液を前記ノズルに供給する混合管とを含む混合液供給部と、
前記ノズルを移動させるノズル駆動部と、
前記ノズルか
ら前記混合液
を吐出
させて前記基板からパーティクルを除去した後に、前記処理液および前記イソプロピルアルコールのいずれか一方である置換液を前記混合管に供給して、前記混合管における前記混合液を前記置換液で押し出して前記ノズルから吐出させ、前記混合液を前記置換液で置換するように、前記混合液供給部を制御する制御部と
を備え
、
前記制御部は、前記パーティクルを除去した後に前記基板を乾燥させる乾燥処理を行い、前記置換液による置換を、前記混合液供給部による前記混合液の供給の後、前記乾燥処理が終了するまでに開始し、前記置換にて、平面視において前記基板よりも外側の待避位置に前記ノズルを移動させた状態で、前記置換液を供給して前記混合液を前記置換液に置換するように前記ノズル駆動部および前記混合液供給部を制御する、基板処理装置。
【請求項9】
基板を保持する基板保持部と、
ノズルと、水を含む処理液が供給される第1供給管と、イソプロピルアルコールが供給される第2供給管と、前記第1供給管から供給された前記処理液と、前記第2供給管から供給された前記イソプロピルアルコールとの混合液を前記ノズルに供給する混合管とを含む混合液供給部と、
前記ノズルから前記混合液を吐出させて前記基板からパーティクルを除去した後に、前記処理液および前記イソプロピルアルコールのいずれか一方である置換液を前記混合管に供給して、前記混合管における前記混合液を前記置換液で押し出して前記ノズルから吐出させ、前記混合液を前記置換液で置換するように、前記混合液供給部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記パーティクルを除去した後に前記基板を乾燥させる乾燥処理を行い、前記置換液による置換を、前記混合液供給部による前記混合液の供給の後、前記乾燥処理が終了するまでに開始するように前記混合液供給部を制御し、
前記置換液は、前記処理液である、基板処理装置。
【請求項10】
基板を保持する基板保持部と、
ノズルと、水を含む処理液が供給される第1供給管と、イソプロピルアルコールが供給される第2供給管と、前記第1供給管から供給された前記処理液と、前記第2供給管から供給された前記イソプロピルアルコールとの混合液を前記ノズルに供給する混合管とを含む混合液供給部と、
前記ノズルからの前記混合液の吐出が終了してから、前記処理液および前記イソプロピルアルコールのいずれか一方である置換液を前記混合管に供給して、前記混合管における前記混合液を前記置換液で押し出して前記ノズルから吐出させ、前記混合液を前記置換液で置換するように、前記混合液供給部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記混合液供給部による前記混合液の供給の後、基準時間内に前記混合液が供給されないときに、前記置換液を供給して前記混合管における前記混合液を前記置換液に置換するように前記混合液供給部を制御し、
前記基準時間は、前記混合液における前記イソプロピルアルコールの濃度が高いほど、短く設定される、基板処理装置。
【請求項11】
基板を保持する基板保持部と、
ノズルと、水を含む処理液が供給される第1供給管と、イソプロピルアルコールが供給される第2供給管と、前記第1供給管から供給された前記処理液と、前記第2供給管から供給された前記イソプロピルアルコールとの混合液を前記ノズルに供給する混合管とを
含む混合液供給部と、
前記ノズルから前記混合液を吐出させて、前記基板からパーティクルを除去した後に、前記処理液および前記イソプロピルアルコールのいずれか一方である置換液を前記混合管に供給して、前記混合管における前記混合液を前記置換液で押し出して前記ノズルから吐出させ、前記混合液を前記置換液で置換するように、前記混合液供給部を制御する制御部と
を備え、
制御部は、前記パーティクルを除去した後に、前記置換液の供給および停止を繰り返して、前記混合液を前記置換液に置換するように前記混合液供給部を制御する、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられている。この基板処理装置は、搬入された未処理の基板に対して、例えば、薬液等に基づく処理、基板を洗浄する洗浄処理、および、基板を乾燥させる乾燥処理等の各種処理を行う。そして、処理済みの基板が基板処理装置から搬出され、次の未処理の基板が基板処理装置に搬入される。このように基板処理装置は、順次に基板に対して1枚ずつ一連の処理を行う。
【0003】
このような基板処理装置の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1では、基板処理装置は、洗浄処理として、イソプロピルアルコール(IPA)と純水との混合液の液滴を基板の主面に噴出し、基板の主面を洗浄している。具体的には、基板処理装置は、基板を保持する保持部と、IPAを供給する供給管と、純水を供給する供給管と、両供給管が合流する混合管と、混合管の先端に設けられるノズルとを備える。また、各供給管には、バルブが設けられる。両バルブが開くことにより、IPAおよび純水がそれぞれ供給管を通じて混合管に供給される。そして、IPAおよび純水の混合液が混合管を通じてノズルから基板へと吐出される。また、ノズルは二流体ノズルであって、混合液のみならず気体も供給される。このノズルは微細な液滴状に混合液を噴出する。基板に液滴状の混合液が噴出されることにより、基板に対する洗浄処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板処理装置が洗浄処理を終了する際には、IPA、純水および気体の供給を停止させる。これにより、ノズルからの混合液の噴出が停止する。このとき、混合液は混合管内で静止する。ところで、イソプロピルアルコールと純水とが混合すると、当該混合液に気泡が生じ得る。この気泡は時間の経過とともに増加し得るので、ノズルからの混合液の噴出の停止中において、混合管の内部の気泡の量は時間の経過とともに増加し得る。
【0006】
このように気泡が増加すると、次に基板処理装置がノズルから混合液を噴出する際に、当該気泡に起因して、種々の不具合を生じさせる。例えば、気泡のまわりにパーティクルが集まる等の諸要因により、基板上にパーティクルを付着させるおそれがある。また、気泡により混合液の流量低下を招いてしまう。そして、ノズルとして二流体ノズルが採用される場合には、この混合液の流量低下により、二流体ノズルに供給される気体に対する混合液の割合が低下する。その結果、混合液の液滴の勢いが増加し、基板にダメージを与えてしまう。
【0007】
そこで、本願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、混合液中の気泡に起因した不具合の発生を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基板処理方法の第1の態様は、基板を保持する保持工程と、水を含む処理液およびイソプロピルアルコールを、それぞれ第1供給管および第2供給管を通じて混合管に供給し、前記処理液および前記イソプロピルアルコールが混合された混合液を、前記混合管を通じてノズルから、前記基板に吐出する混合液供給工程と、前記混合液供給工程の後に、前記処理液および前記イソプロピルアルコールのいずれか一方である置換液を供給して前記混合管における前記混合液を前記置換液で押し出して前記ノズルから吐出させ、前記混合液を前記置換液に置換する置換工程と、を備える。
【0009】
基板処理方法の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記混合液供給工程の後に、前記基板を乾燥させる乾燥工程をさらに備え、前記置換工程は、前記混合液供給工程の後、前記乾燥工程が終了するまでに開始される。
【0010】
基板処理方法の第3の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記置換工程では、前記混合液供給工程の後、基準時間内に前記混合液が供給されないときに、前記置換液を供給して前記混合管における前記混合液を前記置換液に置換する。
【0011】
基板処理方法の第4の態様は、第3の態様にかかる基板処理方法であって、前記基準時間は、前記混合液における前記イソプロピルアルコールの濃度が高いほど、短く設定される。
【0012】
基板処理方法の第5の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記混合管における気泡を気泡検出部で検出する検出工程をさらに備え、前記置換工程では、前記気泡検出部によって検出された気泡の量が許容量よりも大きいときに、前記置換液を供給して、前記混合管における前記混合液を前記混合液を前記置換液に置換する。
【0013】
基板処理方法の第6の態様は、第1から第5のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記混合液は、前記処理液と前記イソプロピルアルコールとを混合することにより生じた気泡を含んでいる。
【0014】
基板処理方法の第7の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記置換工程にて、平面視において前記基板よりも外側の待避位置に前記ノズルを移動させた状態で、前記置換液を供給して前記混合液を前記置換液に置換する。
【0015】
基板処理方法の第8の態様は、第1から第7のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記置換工程において、前記置換液の供給および停止を繰り返して、前記混合液を前記置換液に置換する。
【0016】
基板処理方法の第9の態様は、第1から第8のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記置換工程において、前記混合液供給工程における前記混合液の流量よりも大きい流量で前記置換液を供給する。
【0017】
基板処理方法の第10の態様は、第1から第9のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記置換液は、前記処理液である。
【0018】
基板処理装置の第1の態様は、基板を保持する基板保持部と、ノズルと、水を含む処理液が供給される第1供給管と、イソプロピルアルコールが供給される第2供給管と、前記第1供給管から供給された前記処理液と、前記第2供給管から供給された前記イソプロピルアルコールとの混合液を前記ノズルに供給する混合管とを含む混合液供給部と、前記ノズルからの前記混合液の吐出が終了してから、前記処理液および前記イソプロピルアルコールのいずれか一方である置換液を前記混合管に供給して、前記混合管における前記混合液を前記置換液で押し出して前記ノズルから吐出させ、前記混合液を前記置換液で置換するように、前記混合液供給部を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0019】
基板処理方法の第1の態様および基板処理装置の第1の態様によれば、混合液供給工程により、混合管の内部には、処理液およびイソプロピルアルコールの混合液が含まれる。この混合液には、処理液およびイソプロピルアルコールに対する気体の溶解度の差に起因して、気泡が生じ得る。この気泡の量は時間の経過とともに増加するので、混合液供給工程後の時間経過に伴って、気泡の量が増加し得る。
【0020】
置換工程では、混合液供給工程の後に、混合管の内部の混合液が置換液に置換される。したがって、混合管の内部における気泡の発生を抑制できる。ひいては、次の混合液供給工程において、気泡に起因した不具合の発生を抑制できる。
【0021】
基板処理方法の第2の態様によれば、混合液供給工程の後、早いタイミングで置換工程が行われる。よって、気泡の量が小さい状態で、置換液が混合液および気泡を押し出してノズルから吐出させる。気泡の量が小さいので、気泡をノズルから排出させやすい。
【0022】
基板処理方法の第3の態様によれば、混合液供給工程の後の基準時間内に混合液が供給されないときに、混合管の内部の混合液が置換液に置換される。よって、基準時間の経過によって気泡の量が大きくなるような場合に、混合管の内部の混合液が置換液に置換される。
【0023】
基板処理方法の第4の態様によれば、不要な置換工程の実行を抑制できる。
【0024】
基板処理方法の第5の態様によれば、置換工程では、気泡の量が許容量よりも大きい場合、混合管の内部の混合液が置換液に置換される。したがって、以後の混合管の内部における気泡の発生を抑制できる。ひいては、次の混合液供給工程における気泡に起因した不具合の発生を抑制できる。また、気泡を検出しているので、不要な押し出し処理の実行をより確実に抑制できる。
【0025】
基板処理方法の第6の態様によれば、基板への不要な混合液および置換液の供給を回避できる。
【0026】
基板処理方法の第7の態様によれば、混合管内の気泡をより適切に排出できる。
【0027】
基板処理方法の第8の態様によれば、混合管内の気泡をより適切に排出できる。
【0028】
基板処理方法の第9の態様によれば、イソプロピルアルコールよりも溶解度の小さい水を含む処理液を置換液として採用している。これによれば、混合液が混合管の内部の処理液を押し出して排出する際に、混合液と処理液との境界で気泡が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】基板処理装置の全体構成の一例を概略的に示す図である。
【
図2】第1の実施の形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す側面図である。
【
図3】ノズルの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
【
図4】混合液供給部の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図5】薬液供給部の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図6】制御部の構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図7】基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】押し出し処理の要否判断の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図9】基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】基板処理の各ステップを時系列的に示す図である。
【
図11】ノズルの吐出流量の一例を示すグラフである。
【
図12】混合管に設けられた供給バルブの開閉の一例を示すタイミングチャートである。
【
図13】第2の実施の形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す側面図である。
【
図14】処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略および構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0031】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0032】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0033】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0034】
<第1の実施の形態>
<基板処理装置の概略構成>
図1は、基板処理装置100の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図1で示されるように、基板処理装置100は、例えば、基板の一例としての半導体基板(ウエハ)Wの表面に付着した有機系の残渣を除去する処理に用いることができる枚葉式の装置である。有機系の残渣としては、例えば、基板Wの表面に不純物を注入するイオン注入処理等の後において基板Wの表面に残っている不要になったレジスト、あるいは基板Wの表面のうちの外周部の近傍に付着しているレジスト等に由来する有機系のゴミ等、が含まれる。また、基板処理装置100は無機系の残渣除去および基板Wのエッチングにも用いることができる。
【0035】
基板処理装置100は、収容器としての複数のキャリアCを保持する収容器保持機構としてのロードポートLPと、基板Wを処理する複数(この実施の形態では、12台)の処理ユニット10とを含む。具体的には、例えば、平面的に配置されている4台の処理ユニット10でそれぞれ構成されている3組の処理ユニット10が、鉛直方向に積層するように配置されている。
【0036】
基板処理装置100は、さらに、例えば、インデクサロボットIRと、センターロボットCRと、制御部90とを含む。インデクサロボットIRは、例えば、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送することができる。センターロボットCRは、例えば、インデクサロボットIRと各処理ユニット10との間で基板Wを搬送することができる。制御部90は、例えば、基板処理装置100に備えられた各部の動作およびバルブの開閉等を制御することができる。
【0037】
ここでは、
図1で示されるように、ロードポートLPと各処理ユニット10とは、水平方向に間隔を空けて配置されている。ロードポートLPにおいて、複数枚の基板Wを収容する複数のキャリアCは、平面視したときに水平な配列方向Dに沿って配列されている。ロードポートLPは、基板Wを搬入する搬入部として機能する。ここで、インデクサロボットIRは、例えば、キャリアCから基板載置部110に複数枚の基板Wを1枚ずつ搬送することができるとともに、基板載置部110からキャリアCに複数枚の基板Wを1枚ずつ搬送することができる。基板載置部110は、基板Wを載置する載置台を含む。
【0038】
センターロボットCRは、例えば、基板載置部110から各処理ユニット10に複数枚の基板Wを1枚ずつ搬送することができるとともに、各処理ユニット10から基板載置部110に複数枚の基板Wを1枚ずつ搬送することができる。また、例えば、センターロボットCRは、必要に応じて複数の処理ユニット10の間において基板Wを搬送することができる。インデクサロボットIR、基板載置部110およびセンターロボットCRは、基板Wを搬入部(ロードポートLP)から受け取り、処理ユニット10に受け渡す基板受渡部として機能する。
【0039】
図1の例では、インデクサロボットIRは、平面視U字状のハンドHを有している。ここでは、インデクサロボットIRは2つのハンドHを有する。2つのハンドHは、互いに異なる高さに配置される。各ハンドHは基板Wを水平な姿勢で支持することができる。インデクサロボットIRはハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させることができる。さらに、インデクサロボットIRは、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することで、ハンドHの向きを変更することができる。インデクサロボットIRは、受渡位置(
図1でインデクサロボットIRが描かれている位置)を通る経路において配列方向Dに沿って移動する。受渡位置は、平面視したときにインデクサロボットIRと基板載置部110とが配列方向Dに直交する方向において対向する位置である。インデクサロボットIRは、任意のキャリアCおよび基板載置部110にそれぞれハンドHを対向させることができる。ここで、例えば、インデクサロボットIRはハンドHを移動させることにより、キャリアCに基板Wを搬入する搬入動作と、キャリアCから基板Wを搬出する搬出動作とを行うことができる。また、例えば、インデクサロボットIRは受渡位置においてハンドHを移動させることにより、基板載置部110に基板Wを搬入する搬入動作と、基板載置部110ら基板Wを搬出する搬出動作とを行うことができる。
【0040】
図1の例では、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと同様に、平面視U字状のハンドHを有している。ここでは、センターロボットCRは2つのハンドHを有する。2つのハンドHは、互いに異なる高さに配置される。各ハンドHは基板Wを水平な姿勢で支持することができる。センターロボットCRは各ハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させることができる。さらに、センターロボットCRは、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することで、ハンドHの向きを変更することができる。センターロボットCRは、平面視したときに、複数台の処理ユニット10に取り囲まれている。センターロボットCRは、任意の処理ユニット10および基板載置部110のいずれかにハンドHを対向させることができる。ここで、例えば、センターロボットCRはハンドHを移動させることにより、各処理ユニット10に基板Wを搬入する搬入動作と、各処理ユニット10から基板Wを搬出する搬出動作とを行うことができる。また、例えば、センターロボットCRはハンドHを移動させることにより、基板載置部110に基板Wを搬入する搬入動作と、基板載置部110から基板Wを搬出する搬出動作とを行うことができる。
【0041】
未処理の基板WはキャリアCからインデクサロボットIRによって取り出され、基板載置部110を経由してセンターロボットCRに受け渡される。センターロボットCRはこの未処理の基板Wを処理ユニット10に搬入する。処理ユニット10は基板Wに対して処理を行う。処理済みの基板WはセンターロボットCRによって処理ユニット10から取り出され、必要に応じて他の処理ユニット10を経由した上で、基板載置部110を介してインデクサロボットIRに受け渡される。インデクサロボットIRは処理済みの基板WをキャリアCに搬入する。以上により、基板Wに対する処理が行われる。
【0042】
<処理ユニット>
図2は、処理ユニット10の構成の一例を概略的に示す側面図である。処理ユニット10は、基板保持部の一例であるスピンチャック20と、混合液供給部30と、薬液供給部70と、リンス液供給部80と、処理カップ40とを備える。
【0043】
<スピンチャック>
スピンチャック20は、基板Wを水平姿勢に保持する。水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢をいう。スピンチャック20は、鉛直方向に沿って延びる回転軸24の上端に水平姿勢で固定された円板形状のスピンベース21を備える。スピンベース21の下方には回転軸24を回転させるスピンモータ22が設けられる。スピンモータ22は、回転軸24を介してスピンベース21を水平面内にて回転させる。また、スピンモータ22および回転軸24の周囲を取り囲むように筒状のカバー部材23が設けられている。
【0044】
円板形状のスピンベース21の外径は、スピンチャック20に保持される円形の基板Wの径よりも若干大きい。よって、スピンベース21は、保持すべき基板Wの下面の全面と対向する上面21aを有している。
【0045】
スピンベース21の上面21aの周縁部には複数(本実施形態では4本)のチャックピン26が立設されている。複数のチャックピン26は、円形の基板Wの周縁に対応する円周上に沿って均等な間隔を空けて(本実施形態のように4個のチャックピン26であれば90°間隔にて)配置されている。各チャックピン26は、基板Wの周縁に当接する保持位置と、基板Wの周縁から離れた開放位置と間で駆動可能に設けられている。複数のチャックピン26は、スピンベース21内に収容された図示省略のリンク機構によって連動して駆動される。スピンチャック20は、複数のチャックピン26をそれぞれの当接位置で停止させることにより、当該基板Wをスピンベース21の上方で上面21aに近接した水平姿勢にて保持することができるとともに(
図2参照)、複数のチャックピン26をそれぞれの開放位置で停止させることにより、基板Wの保持を解除することができる。
【0046】
スピンモータ22はカバー部材23によって囲まれている。カバー部材23の上端部はスピンベース21の直下に位置している。カバー部材23の上端部には、カバー部材23から外方へほぼ水平に張り出し、さらに下方に屈曲して延びる鍔状部材25が設けられている。複数のチャックピン26による把持によってスピンチャック20が基板Wを保持した状態にて、スピンモータ22が回転軸24を回転させることにより、基板Wの中心を通る鉛直方向に沿った回転軸線CXまわりに基板Wを回転させることができる。なお、スピンモータ22の駆動は制御部90によって制御される。
【0047】
<混合液供給部>
混合液供給部30は、スピンチャック20に保持されている基板Wに向けて、混合液(後述)を供給する。ここでは、混合液供給部30は、混合液にガスを衝突させて混合液の液滴を生成して、これを噴出するノズル31を備える。
【0048】
図3は、ノズル31の構成の一例を概略的に示す縦断面図である。ノズル31は、そのケーシング外で、混合液にガスを衝突させて混合液の液滴を生成する、所謂、外部混合型の二流体ノズルであり、ケーシングを構成する外筒301と、外筒301に内嵌された内筒302と、を備える。
【0049】
外筒301および内筒302は、いずれも、円筒状の外形を呈し、中心軸Lを共有する同軸状に配置されている。また、外筒301の下端面301aは、中心軸Lと直交するリング状の面となっている。
【0050】
内筒302には、中心軸Lに沿う直線状の内部空間303が形成されている。この内部空間303は、内筒302の下端で円形に開口する。内部空間303の上端には、後述の混合管323(
図4も参照)が、接続されている。混合管323から供給された混合液は、内部空間303に流入し、その下端の開口304から吐出(中心軸Lに沿って下向きに吐出)される。つまり、内部空間303は、混合液の流路であり、開口304は、混合液の吐出口である。以下において、内部空間303を「混合液流路303」ともいう。また、内部空間303の下端の開口304を「混合液吐出口304」ともいう。
【0051】
内筒302は、大径部分302aと、その下方に連続して設けられ、大径部分302aよりも外径が小さい小径部分302bと、を備える。内筒302の外側に嵌められる外筒301の内径は、大径部分302aの外径と等しく、外筒301は、その下端部分を除いてほぼ一定の内径を有している。したがって、小径部分302bの外壁と外筒301の内壁との間には間隙305が形成される。この間隙305は、中心軸Lを中心とした断面リング状の空間であり、外筒301の下端でリング状(すなわち、混合液吐出口304を取り囲むリング状)に開口する。
【0052】
間隙305の上端付近には、外筒301の内外面を貫通して設けられたL字型の導入管306の一端が、連通している。この導入管306の他端には、後述のガス供給源335(
図4も参照)と接続されたガス供給管331が、接続されている。ガス供給源335からガス供給管331および導入管306を介して供給されたガスは、間隙305に流入し、その下端の開口307から吐出される。つまり、間隙305は、ガスの流路であり、開口307はガスの吐出口である。以下において、間隙305を「ガス流路305」ともいう。また、間隙305の下端の開口307を「ガス吐出口307」ともいう。
【0053】
小径部分302bの下端付近には、その外周面から径方向外方に向けて張り出すフランジ308が形成される。フランジ308には、これを貫通する貫通孔309が形成されており、ガス流路305に流入したガスは、この貫通孔309を通過する際に流れる方向を変換されて、中心軸Lのまわりを旋回するように流れる旋回流とされる。
【0054】
小径部分302bにおける、フランジ308が形成されている部分よりも下側の部分には、フランジ308の下側面から中心軸Lに沿って突出する円筒状の短筒部310が形成されている。短筒部310は、その中心軸が中心軸Lと一致するように配置されている。短筒部310の外径は、外筒301の下端面301aの内縁径よりも小さく、短筒部310の下端面と外筒301の下端面301aとの間には、中心軸Lを取り囲むリング状の開口307が形成される。この開口307が、間隙(すなわち、ガス流路)305を外部空間に連通させる開口(すなわち、ガス吐出口)307を形成する。
【0055】
ガス流路305に流入したガスは、フランジ308に形成された貫通孔309を通過する際に旋回流とされて、短筒部310の周囲の空間311に流入する。ここで、外筒301の内壁面における、短筒部310の周りを取り囲む部分は、下方に向かうにしたがって内径が小さくなる縮径形状に形成されている。したがって、短筒部310の周囲の空間311に流入したガスの旋回流は、当該空間311内で、旋回するにつれ中心軸Lに近づく渦巻き状の気流となって、ガス吐出口307から吐出される。ガス吐出口307から吐出された渦巻き状の気流は、混合液吐出口304から中心軸Lに沿って吐出される混合液を取り囲むように流れて、中心軸L上のある点Fに収束するように進む。以下において、この点Fを「収束点F」ともいう。
【0056】
混合液吐出口304から混合液が吐出されるとともに、ガス吐出口307からガスが吐出されると、ノズル31の外部空間(具体的には、収束点Fおよびその付近)において、混合液とガスとが衝突して混合されて、混合液が微細な液滴となる。すなわち、混合液の液滴が生成される。生成された混合液の液滴は、ガスの気流によって加速されて噴流となる。すなわち、収束点Fの下方において、ガスは、旋回するにつれ中心軸Lから遠ざかりつつ下方に向かう渦巻き状の気流となっており、液滴は、この気流によって加速されることによって、基板Wに向けて噴射される。
【0057】
図4は、混合液供給部30の構成の一例を概略的に示す図である。ノズル31には、これに混合液を供給する配管系である混合液配管系32が接続されている。混合液配管系32は、第1供給管321と、第2供給管322と、混合管323と、混合部324とを含んでいる。
【0058】
第1供給管321の上流端は第1処理液供給源3214に接続されており、第1供給管321の下流端は混合部324に接続されている。第1処理液供給源3214は、第1処理液の供給源である。第1処理液は、水を含む処理液であり、例えば、純水(Deionized water:DIW)または二酸化炭素水(CO2水)である。以下では、第1処理液として純水を採用して説明する。
【0059】
第1供給管321には、供給バルブ3211が設けられている。供給バルブ3211は第1供給管321の流路の開閉を切り替える。
図4に例示されるように、第1供給管321には、流量調整バルブ3212および流量計3213が設けられてもよい。流量調整バルブ3212は、第1供給管321を流れる純水の流量を調整する。流量計3213は、第1供給管321を流れる純水の流量を検出する。
【0060】
第2供給管322の上流端は第2処理液供給源3224に接続されており、第2供給管322の下流端は混合部324に接続されている。第2処理液供給源3224は、第2処理液の供給源である。第2処理液は、第1処理液とは異なる種類の処理液であって、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)である。以下では、第2処理液としてIPAを採用して説明する。
【0061】
第2供給管322には、供給バルブ3221が設けられている。供給バルブ3221は第2供給管322の流路の開閉を切り替える。
図4に例示されるように、第2供給管322には、流量調整バルブ3222および流量計3223が設けられてもよい。流量調整バルブ3222は、第2供給管322を流れるIPAの流量を調整する。流量計3223は、第2供給管322を流れる第2処理液の流量を検出する。
【0062】
混合部324は、第1供給管321から供給される純水と、第2供給管322から供給されるIPAとを混合する。混合部324は例えばミキシングバルブである。
【0063】
混合管323の上流端は混合部324に接続されており、混合管323の下流端はノズル31(具体的には、内部空間303の上端)に接続されている。混合部324からの混合液は混合管323を流れてノズル31に供給される。
図4の例では、混合管323には、供給バルブ3231が設けられている。供給バルブ3231は混合管323の流路の開閉を切り替える。
【0064】
ノズル31には、これにガスを供給する配管系であるガス配管系33も接続されている。ガス配管系33はガス供給管331を含んでいる。ガス供給管331の下流端はノズル31(具体的には、ノズル31の導入管306)に接続されており、ガス供給管331の上流端はガス供給源335に接続されている。ガス供給源335は、ガス(ここでは、例えば、窒素(N2)ガス)を供給する供給源である。もっとも、ガス供給源335は、窒素ガス以外のガス(例えば、窒素ガス以外の各種の不活性ガス、乾燥空気、等)を供給するものであってもよい。
【0065】
ガス供給管331には、供給バルブ332が設けられている。供給バルブ332はガス供給管331の流路の開閉を切り替える。
図4に例示されるように、ガス供給管331には、流量調整部333およびフィルタ334が設けられてもよい。流量調整部333は、ガス供給管331を流れるガスの流量を調整する。流量調整部333は例えばマスフローコントローラである。フィルタ334は、ガス供給管331を流れるガスの不純物を除去する。
【0066】
上記の構成において、供給バルブ3211、供給バルブ3221、供給バルブ3231および供給バルブ332が開くと、第1処理液供給源3214から供給される純水、および、第2処理液供給源3224から供給されるIPAの混合液と、ガス供給源335から供給される窒素ガスとが、ノズル31に供給される。そして、ノズル31で混合液と窒素ガスとが混合されて、混合液が微細な液滴となり、この液滴が噴流となって、ノズル31から噴出される。
【0067】
混合液供給部30は、供給バルブ3211、供給バルブ3221、供給バルブ3231および供給バルブ332の開閉状態を適宜に制御することにより、純水またはIPAを単独で基板Wに供給することもできる。例えば、供給バルブ3221および供給バルブ332が閉じた状態で、供給バルブ3211および供給バルブ3231が開くことにより、ノズル31から液柱状の純水が吐出される。また、この状態で供給バルブ332が開くと、ノズル31から液滴状の純水が噴出される。同様に、供給バルブ3211および供給バルブ332が閉じた状態で、供給バルブ3221および供給バルブ3231が開くことにより、ノズル31から液柱状のIPAが吐出される。また、この状態で供給バルブ332が開くと、ノズル31から液滴状のIPAが噴出される。
【0068】
供給バルブ3211、供給バルブ3221、供給バルブ3231および供給バルブ332の各々は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90の制御下で開閉される。流量計3213および流量計3223の各々も、制御部90と電気的に接続されており、各々の検出結果が制御部90に出力される。流量調整バルブ3212および流量調整バルブ3222の各々も、制御部90と電気的に接続されている。制御部90は流量計3213の検出結果に基づいて、流量調整バルブ3212の開度を制御し、流量計3223の検出結果に基づいて、流量調整バルブ3222の開度を制御する。これにより、純水およびIPAの流量が調整される。流量調整部333は制御部90と電気的に接続されており、制御部90の制御下で、ガスの流量を調整する。以上のようにして、ノズル31からの処理液の吐出態様(具体的には、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出される処理液の種類、吐出流量、吐出される液滴の勢い、等)は、制御部90によって制御される。
【0069】
再び
図2を参照して、ノズル31は、その吐出方向(中心軸L)が鉛直方向に沿って配置される。なお、ノズル31は、その吐出方向が鉛直方向に対して傾斜するように、配置されてもよい。例えば、ノズル31は、平面視において、基板Wの中央部よりも離れた位置から基板Wの中央部に向かって混合液を噴出できるように、傾斜して配置されてもよい。
【0070】
また、ノズル31は、水平に延在するアーム34の先端部に取り付けられている。アーム34の基端部は、軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢で配置された昇降軸35の上端に連結されている。昇降軸35は、ノズル基台36に配設されている。
【0071】
ノズル基台36には、ノズル31を移動させるためのノズル駆動部37が配設されている。ノズル駆動部37は、例えば、昇降軸35をその軸線まわりに回転させる回転駆動部(例えば、サーボモータ)と、昇降軸35をその軸線に沿って昇降させる昇降駆動部(例えば、ステッピングモータ)と、を含んで構成される。ノズル駆動部37が昇降軸35を回動させると、ノズル31が、水平面内の円弧軌道に沿って移動し、ノズル駆動部37が昇降軸35を昇降させると、ノズル31が、基板Wの上面と近接離間する方向に移動する。
【0072】
ノズル駆動部37は、回転駆動部および昇降駆動部の駆動により、ノズル31を処理位置と待避位置との間で移動させる。処理位置は、ノズル31が基板Wの上面に向かって処理液を吐出する位置である。待避位置は、ノズル31が基板Wの上面に向かって処理液を吐出しない位置であって、基板Wの搬送経路と干渉しない位置である。より具体的には、待避位置は、例えば、平面視において基板Wよりも外側の位置である。
図2の例では、待避位置で停止したノズル31を二点鎖線で示している。
【0073】
ノズル駆動部37は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90の制御下で動作する。つまり、ノズル31の位置は、制御部90によって制御される。
【0074】
<待機ポッド>
処理ユニット10は、
図2に示されるように、待機ポッド39を含んでいる。待機ポッド39はノズル31の待避位置の鉛直下方に設けられている。待機ポッド39は、例えば鉛直上方に開口する箱状の形状を有しており、ノズル31から吐出された処理液を受け止める。
【0075】
<薬液供給部>
図2の例では、処理ユニット10は薬液供給部70を含んでいる。薬液供給部70はノズル71を含む。ノズル71は例えば一流体ノズルであり、スピンチャック20によって保持された基板Wに向かって薬液を吐出する。
図5は、薬液供給部70の構成の一例を概略的に示す図である。ノズル71には、これに薬液を供給する配管系である薬液配管系72が接続されている。薬液配管系72は薬液供給管721を含む。薬液供給管721の上流端は薬液供給源725に接続されており、薬液供給管721の下流端はノズル71に接続されている。薬液供給源725は薬液の供給源である。薬液は、例えば、希フッ酸(dHF)、または、有機物の除去用の薬液等であってもよい。
【0076】
薬液供給管721には、供給バルブ722が設けられている。供給バルブ722は薬液供給管721の流路の開閉を切り替える。
図5に例示されるように、薬液供給管721には、流量調整バルブ723および流量計724が設けられてもよい。流量調整バルブ723は、薬液供給管721を流れる薬液の流量を調整する。流量計724は、薬液供給管721を流れる薬液の流量を検出する。
【0077】
供給バルブ722が開くと、薬液供給源725から薬液(ここでは希フッ酸)が薬液供給管721を流れてノズル71に供給され、ノズル71から吐出される。
【0078】
供給バルブ722は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90の制御下で開閉される。流量計724は、制御部90と電気的に接続されており、その検出結果は制御部90に出力される。流量調整バルブ723は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90は流量計724の検出結果に基づいて、流量調整バルブ723の開度を制御する。これにより、薬液の流量が調整される。以上のように、ノズル71からの薬液の吐出態様(具体的には、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出流量、等)は、制御部90によって制御される。
【0079】
再び
図2を参照して、ノズル71は、水平に延在するアーム74の先端部に取り付けられている。アーム74の基端部は、軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢で配置された昇降軸75の上端に連結されている。昇降軸75は、ノズル基台76に配設されている。
【0080】
ノズル基台76には、ノズル71を移動させるためのノズル駆動部77が配設されている。ノズル駆動部77は、例えば、昇降軸75をその軸線まわりに回転させる回転駆動部(例えば、サーボモータ)と、昇降軸75をその軸線に沿って昇降させる昇降駆動部(例えば、ステッピングモータ)と、を含んで構成される。ノズル駆動部77が昇降軸75を回動させると、ノズル71が、水平面内の円弧軌道に沿って移動し、ノズル駆動部77が昇降軸75を昇降させると、ノズル71が、基板Wの上面と近接離間する方向に移動する。
【0081】
ノズル駆動部77は、回転駆動部および昇降駆動部の駆動により、ノズル71を処理位置と待避位置との間で移動させる。処理位置は、ノズル71が基板Wの上面に向かって薬液を吐出する位置であり、待避位置は、ノズル71が基板Wの上面に向かって薬液を吐出しない位置であって、基板Wの搬送経路と干渉しない位置である。
【0082】
ノズル駆動部77は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90の制御下で動作する。つまり、ノズル71の位置は、制御部90によって制御される。
【0083】
なお、
図2の例では、ノズル71はアーム74に取り付けられているものの、ノズル71がアーム34の先端に取り付けられてもよい。つまり、ノズル71がノズル31と一体に移動してもよい。この場合、アーム74、昇降軸75、ノズル基台76およびノズル駆動部77は不要である。
【0084】
<リンス液供給部>
図2の例では、処理ユニット10はリンス液供給部80を含んでいる。リンス液供給部80はノズル81を含む。ノズル81は例えば一流体ノズルであり、基板Wの上面にリンス液を吐出する。ノズル81は、スピンチャック20によって保持された基板Wよりも上方空間において、基板Wと鉛直方向で向かい合う位置に設けられている。ノズル81は、比較的面積の大きな下面を有しており、当該下面が基板Wの上面と向かい合って配置される。ノズル81の下面は例えば平面視で円形状を有しており、その径は例えば基板Wの径の半分以上である。
【0085】
ノズル81には、これにリンス液を供給する配管系であるリンス液配管系82が接続されている。リンス液配管系82はリンス液供給管821を含む。リンス液供給管821の上流端はリンス液供給源825に接続されており、リンス液供給管821の下流端はノズル81に接続されている。リンス液供給源825はリンス液の供給源である。リンス液は、例えば第1処理液(ここでは純水)よりも揮発性の高い処理液であり、例えばIPAである。以下では、リンス液としてIPAを採用して説明する。
【0086】
リンス液供給管821には、供給バルブ822が設けられている。供給バルブ822はリンス液供給管821の流路の開閉を切り替える。
図2に例示されるように、リンス液供給管821には、流量調整バルブ823および流量計824が設けられてもよい。流量調整バルブ823は、リンス液供給管821を流れるIPAの流量を調整する。流量計824は、リンス液供給管821を流れるIPAの流量を検出する。
【0087】
供給バルブ822が開くと、リンス液供給源825からIPAがリンス液供給管821を流れてノズル81に供給され、ノズル81から吐出される。
【0088】
供給バルブ822は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90の制御下で開閉される。流量計824も、制御部90と電気的に接続されており、その検出結果は制御部90に出力される。流量調整バルブ823は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90は流量計824の検出結果に基づいて、流量調整バルブ823の開度を制御する。これにより、IPAの流量が調整される。以上のように、ノズル81からのリンス液の吐出態様(具体的には、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出流量、等)は、制御部90によって制御される。
【0089】
ノズル81は、ノズル駆動部83によって移動する。ノズル駆動部83は、ノズル81を昇降させる昇降駆動部(例えばステッピングモータ)を含んでいる。ノズル駆動部83は制御部90と電気的に接続されており、ノズル81を、基板Wの上面と近接離間する方向に移動させる。つまり、ノズル81の位置は制御部90によって制御される。ノズル駆動部83は、基板Wの上面に近い処理位置と、基板Wの上面から離れた待避位置との間でノズル81を移動させる。処理位置は、ノズル81が基板Wの上面にIPAを吐出する位置である。待避位置は、ノズル81が基板Wの上面にIPAを吐出しない位置であり、基板Wの搬送経路と干渉しない位置である。ノズル81はノズル駆動部83によって水平に移動してもよい。
【0090】
<処理カップ>
処理カップ40は、スピンチャック20に保持されて回転される基板Wから飛散する処理液を受け止める。
【0091】
処理カップ40は、互いに独立して昇降可能な内カップ41、中カップ42および外カップ43を含む。内カップ41は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この内カップ41は、平面視円環状の底部44と、底部44の内周縁から上方に立ち上がる円筒状の内壁部45と、底部44の外周縁から上方に立ち上がる円筒状の外壁部46と、内壁部45と外壁部46との間から立ち上がり、上端部が滑らかな円弧を描きつつ中心側(スピンチャック20に保持される基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる第1案内部47と、第1案内部47と外壁部46との間から上方に立ち上がる円筒状の中壁部48とを一体的に含んでいる。
【0092】
内壁部45は、内カップ41が最も上昇された状態で、カバー部材23と鍔状部材25との間に適当な隙間を保って収容されるような長さに形成されている。中壁部48は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中カップ42の後述する第2案内部52と処理液分離壁53との間に適当な隙間を保って収容されるような長さに形成されている。
【0093】
第1案内部47は、滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部47bを有している。また、内壁部45と第1案内部47との間は、使用済みの処理液を集めて廃棄するための廃棄溝49とされている。第1案内部47と中壁部48との間は、使用済みの処理液を集めて回収するための円環状の内側回収溝50とされている。さらに、中壁部48と外壁部46との間は、内側回収溝50とは種類の異なる処理液を集めて回収するための円環状の外側回収溝51とされている。
【0094】
廃棄溝49には、この廃棄溝49に集められた処理液を排出するとともに、廃棄溝49内を強制的に排気するための図示省略の排気液機構が接続されている。排気液機構は、例えば、廃棄溝49の周方向に沿って等間隔で4つ設けられている。また、内側回収溝50および外側回収溝51には、内側回収溝50および外側回収溝51にそれぞれ集められた処理液を処理ユニット1の外部に設けられた回収タンクに回収するための回収機構(いずれも図示省略)が接続されている。なお、内側回収溝50および外側回収溝51の底部は、水平方向に対して微少角度だけ傾斜しており、その最も低くなる位置に回収機構が接続されている。これにより、内側回収溝50および外側回収溝51に流れ込んだ処理液が円滑に回収される。
【0095】
中カップ42は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この中カップ42は、第2案内部52と、この第2案内部52に連結された円筒状の処理液分離壁53とを一体的に含んでいる。
【0096】
第2案内部52は、内カップ41の第1案内部47の外側において、第1案内部47の下端部と同軸円筒状をなす下端部52aと、下端部52aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部52bと、上端部52bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部52cとを有している。下端部52aは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、第1案内部47と中壁部48との間に適当な隙間を保って内側回収溝50内に収容される。また、上端部52bは、内カップ41の第1案内部47の上端部47bと上下方向に重なるように設けられ、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、第1案内部47の上端部47bに対してごく微小な間隔を保って近接する。さらに、上端部52bの先端を下方に折り返して形成される折返し部52cは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、折返し部52cが第1案内部47の上端部47bの先端と水平方向に重なるような長さとされている。
【0097】
また、第2案内部52の上端部52bは、下方ほど肉厚が厚くなるように形成されており、処理液分離壁53は上端部52bの下端外周縁部から下方に延びるように設けられた円筒形状を有している。処理液分離壁53は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中壁部48と外カップ43との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。
【0098】
外カップ43は、中カップ42の第2案内部52の外側において、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有している。この外カップ43は、第3案内部としての機能を有する。外カップ43は、第2案内部52の下端部52aと同軸円筒状をなす下端部43aと、下端部43aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部43bと、上端部43bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部43cとを有している。
【0099】
下端部43aは、内カップ41と外カップ43とが最も近接した状態で、中カップ42の処理液分離壁53と内カップ41の外壁部46との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。また、上端部43bは、中カップ42の第2案内部52と上下方向に重なるように設けられ、中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、第2案内部52の上端部52bに対してごく微小な間隔を保って近接する。さらに、上端部43bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部43cは、中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、折返し部43cが第2案内部52の折返し部52cと水平方向に重なるように形成されている。
【0100】
また、内カップ41、中カップ42および外カップ43は互いに独立して昇降可能とされている。すなわち、内カップ41、中カップ42および外カップ43のそれぞれには個別にカップ昇降機構(図示省略)が設けられており、それによって別個独立して昇降される。このようなカップ昇降機構としては、例えばボールネジ機構やエアシリンダなどの公知の種々の機構を採用することができる。
【0101】
また、処理カップ40内の気体を外部に排気する排気構造が処理カップ40に設けられていてもよい。
【0102】
<制御部90>
制御部90は、基板処理装置100内の各部の動作を制御する。
図6は、制御部90の構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同一である。すなわち、制御部90は、各種演算処理を行うCPUなどの処理部91と、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM(Random Access Memory)などの一時的な記憶媒体92と、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM(Rea Only Memory)および制御用ソフトウェアまたはデータなどを記憶しておく磁気ディスクなどである非一時的な記憶媒体93とを備えて構成される。制御部90の処理部91が所定の処理プログラムを実行することによって、基板処理装置100の各動作機構が制御部90に制御され、基板処理装置100における処理が進行する。なお、制御部90において実現される一部あるいは全部の機能部は、専用の論理回路等でハードウェア的に実現されてもよい。また、制御部90の記憶媒体92には、基板処理装置100の処理内容を定めた処理レシピが記憶されている。
【0103】
図6の例では、制御部90と処理ユニット10の内の各部との接続が示されている。制御部90は、スピンチャック20、混合液供給部30、薬液供給部70、リンス液供給部80および処理カップ40を制御する。制御部90は、基板Wに対する処理の手順を規定した手順情報(処理レシピを含む)に基づいて、これらの各部を動作させることにより、基板Wに対する一連の処理が進行する。基板Wに対する処理の手順を規定した手順情報は、例えば、基板処理装置100よりも上流側の装置によって制御部90に通知されてもよく、あるいは、作業員が不図示のユーザインターフェースを介して制御部90に入力してもよい。
【0104】
<基板処理の流れ>
図7は、基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。初期的には、処理ユニット10内のノズル31、ノズル71、ノズル81および処理カップ40は各々の待避位置で停止している。
【0105】
センターロボットCRは未処理の基板Wを処理ユニット10に搬入してスピンチャック20上に載置し、スピンチャック20が基板Wを保持する(ステップS1:保持工程に相当)。具体的には、スピンチャック20は一群のチャックピン26によって基板Wを保持する。これによって、基板Wが水平姿勢で保持された状態となる。
【0106】
スピンチャック20に基板Wが保持されると、スピンチャック20の回転が開始され、これによって、スピンチャック20によって保持された基板Wが、水平姿勢で回転開始される(ステップS2)。この基板Wの回転は後述のステップS6の終了まで継続される。
【0107】
また、基板処理において基板Wの周縁から飛散する処理液を受け止めるために、処理カップ40が必要に応じて上昇する。基板処理においては、基板Wに供給される処理液の種類に応じて、適宜に上昇させるカップが切り替えられるものの、この点は本実施の形態の本質とは異なるので、以下では、その説明を省略する。
【0108】
次に、薬液処理が行われる(ステップS3)。例えば、ノズル駆動部77により、ノズル71が、基板Wよりも上方の処理位置に移動する。次に、供給バルブ722が開くことにより、ノズル71から薬液(例えば希フッ酸)が回転中の基板Wの上面に吐出される。基板Wの上面に着液した薬液は遠心力を受けて基板Wの周縁側に移動して、当該周縁から外側に飛散する。薬液が基板Wの上面に作用することにより、基板Wに対する薬液処理が行われる。
【0109】
例えば、薬液の供給開始から第1所定時間が経過すると、供給バルブ722が閉じる。これにより、ノズル71からの薬液の吐出が停止する。次に、ノズル駆動部77により、ノズル71が待避位置へ移動する。
【0110】
次に、リンス処理が行われる(ステップS4)。具体的な一例として、まず、ノズル駆動部37により、ノズル31が処理位置に下降する。次に、供給バルブ3211および供給バルブ3231が開く。これにより、水を含む第1処理液(ここでは純水)がノズル31から回転中の基板Wの上面に吐出される。これにより、基板Wの上面の薬液が純水に置換される。なお、リンス処理(ステップS4)は省略されても構わない。
【0111】
例えば、純水の供給開始から第2所定時間が経過すると、液滴処理が行われる(ステップS5:混合液供給工程に相当)。液滴処理においては、供給バルブ3211、供給バルブ3221、供給バルブ3231および供給バルブ332が開く。これにより、純水およびIPAがそれぞれ第1供給管321および第2供給管322を通じて混合部324に供給され、混合部324からの混合液が混合管323を通じてノズル31に供給される。また、窒素ガスがノズル31に供給される。これにより、ノズル31において、混合液と窒素ガスとが混合されて混合液の液滴が生成され、ノズル31から、回転中の基板Wの上面に当該混合液の液滴が噴出される。
【0112】
当該混合液の流量は例えば数百mL/分(例えば100mL/分)程度に設定される。また、当該混合液におけるIPAの濃度は、例えば、10vol%以上40vol%以下に設定される。これにより、液滴処理によって基板Wの上面のパーティクルを適切に除去することができる。
【0113】
この液滴処理においては、混合液の液滴の吐出と並行して、ノズル駆動部37が、ノズル31を、スピンベース21上の基板Wの上面と非接触状態で近接する水平面内において、基板Wの回転方向と交差する方向に沿って移動させる。具体的には、ノズル駆動部37は、ノズル31から吐出された液滴の噴流が基板Wの上面中央部に衝突する第1位置と、ノズル31から吐出された液滴の噴流が基板Wの上面周縁部に衝突する第2位置とを結ぶ円弧軌道に沿って、ノズル31を往復移動させる。基板Wが回転している状態で、ノズル31が第1位置と第2位置との間を往復移動すると、ノズル31から吐出される混合液の液滴の着液位置が、基板Wの上面の全域を移動(走査(スキャン))し、基板Wの上面内の全ての位置に、混合液の液滴が衝突する。すなわち、基板Wの上面の全域に、混合液の液滴が供給される。
【0114】
例えば、混合液の液滴の供給開始から第3所定時間が経過すると、供給バルブ3211、供給バルブ3221、供給バルブ3231および供給バルブ332を閉じる。これにより、混合液の液滴の噴出が停止する。次に、ノズル駆動部37により、ノズル31が待避位置に移動する。
【0115】
次に、乾燥処理が行われる(ステップS6:乾燥工程に相当)。乾燥処理とは、基板Wを乾燥させる処理である。例えば、まず、ノズル駆動部83により、ノズル81が処理位置に移動する。次に、供給バルブ822が開く。これにより、高い揮発性を有するリンス液(ここではIPA)がノズル81から回転中の基板Wの上面に吐出される。基板Wの上面に着液したIPAは遠心力を受けて基板Wの周縁へ移動し、当該周縁から外側に飛散する。これにより、基板Wの上面の混合液がIPAに置換される。
【0116】
例えば、IPAの供給開始から第4所定時間が経過すると、供給バルブ822が閉じる。これにより、IPAの吐出が停止する。次に、ノズル駆動部83により、ノズル81が待避位置に上昇する。
【0117】
次に、スピンチャック20の回転速度が、高速の回転速度(例えば、液滴処理時の回転速度よりも高速の回転速度)に上昇される。これによって、基板Wに残存しているIPAが振り切られて基板Wから除去され、基板Wが乾燥される(所謂、スピンドライ)。上述のように、基板Wの上面には揮発性の高いIPAが存在しており、スピンドライによって容易にIPAが蒸発する。これにより、ウォーターマークの発生を抑制できる。なお、乾燥処理において、必ずしもIPAを供給する必要はない。つまり、IPAの供給を省略して、基板Wの高速回転により基板Wを乾燥させてもよい。
【0118】
スピンチャック20が高速の回転速度で回転され始めてから第5所定時間が経過すると、スピンチャック20の回転が停止される。また、処理カップ40が下降する。
【0119】
次に、センターロボットCRが、当該基板Wを処理ユニット10から搬出する(ステップS7)。以上で、当該基板Wに対する一連の処理が終了する。
【0120】
上述のステップS1からステップS7の一連の処理が順次に基板Wに対して行われることにより、処理ユニット10において、複数の基板Wが1枚ずつ処理される。
【0121】
<気泡の発生>
ところで、混合液には気泡が生じ得る。これは、異なる2種の液体に対する気体(例えば空気)の溶解度の差に起因する、と考えられる。以下に具体的に説明する。
【0122】
ここで、第1溶解度を有する第1液体と、第1溶解度よりも小さい第2溶解度を有する第2液体とを含む混合液に対する気体の溶解度について説明する。この混合液に対する気体の溶解度は、第1溶解度と、第2溶解度と、混合液における第1液体および第2液体の濃度とに応じて決定される。ここで、仮想溶解度を導入して混合液に対する気体の溶解度を説明する。仮想溶解度とは、第1溶解度、第2溶解度および濃度を用いて線形比例で算出される溶解度である。例えば、混合液における第1液体の濃度を第1濃度と呼び、混合液における第2液体の濃度を第2濃度と呼ぶと、仮想溶解度は、(第1溶解度)×(第1濃度)+(第2溶解度)×(第2濃度)で表される。混合液に対する気体の溶解度は、この仮想溶解度よりも小さくなることが知られている。
【0123】
したがって、例えば、気体がそれぞれ第1液体および第2液体に飽和状態で溶け込んでいる場合、第1液体と第2液体とを混合すると、溶け込んだ一部の気体が気泡として現出する。具体的には、混合液に対する溶解度と仮想溶解度との差分に相当する量だけ、気体が現出することになる。
【0124】
つまり、純水とIPAとを混合すると、溶解度の差異により、混合液には気泡が生じ得る。ところで、第2処理液供給源3224には、IPAを貯留するタンクが設けられ、このタンク内の上部空間に不活性ガス(例えば窒素ガス)が供給される場合がある。この場合、タンク内に貯留されたIPAは窒素ガスによって押圧され、当該押圧力を受けてIPAがタンクから第2供給管322に供給される。この場合、IPAには窒素ガスが溶解するので、純水とIPAとの混合により、混合液には窒素ガスが気泡として現出し得る。
【0125】
出願人が液滴処理(ステップS5)の後の混合管323の内部を確認すると、混合液におけるIPAの濃度が高くなるほど、発生する気泡の量が増加することを確認した。つまり、IPAに対する気体の溶存度が高いために、当該IPAに溶存する気体が混合液で現出したものと考えられる。また、IPAの濃度が高いほど、混合液中の気泡の量は時間の経過とともに増加することが確認された。つまり、ノズル31が待避位置で停止している期間において、気泡の量は時間の経過とともに増加した。
【0126】
したがって、処理ユニット10が液滴処理を終了してから、次に液滴処理を開始するまでの時間が長い場合には、混合部324および混合管323の内部における気泡の量が大きくなってしまう場合がある。
【0127】
気泡の量が大きくなると、次の液滴処理では、当該気泡に起因して、不具合が発生する可能性がある。例えば、気泡のまわりにパーティクルが集まる等の諸要因により、基板Wの上面にパーティクルを付着させるおそれがある。また、気泡に起因して混合液の流量が低下することもある。混合液の流量が低下すると、混合液の流量に対する窒素ガスの流量が相対的に大きくなり、結果として、混合液の液滴の流速が高くなり、基板Wにダメージを与え得る。
【0128】
そこで、このような気泡の発生を抑制するために、混合液におけるIPAの濃度を小さく設定することが考えられる。しかしながら、IPAの濃度低下により、液滴処理によるパーティクル除去性能が低下する。よって、IPAの濃度はある程度必要である。例えば、混合液におけるIPAの濃度が10vol%以上かつ40vol%以下に設定されると、パーティクル除去性能を高めることができる。その一方で、IPAの濃度が高くなると、上述のように、ノズル31が待避位置で停止している時間において、時間の経過とともに混合液中に多くの気泡が発生し、当該気泡に起因して次の液滴処理において不具合が生じる。
【0129】
<押し出し処理(置換工程)>
そこで、本実施の形態では、混合液中の気泡の発生を抑制するために、液滴処理が終了してから次の液滴処理が開始するまでに、押し出し処理を行う。押し出し処理とは、純水およびIPAのいずれか一方の処理液(以下、置換液と呼ぶ)を供給し、混合部324および混合管323の内部の混合液を当該置換液で押し出して、ノズル31から吐出させる処理である。この押し出し処理は、例えば、ノズル31が待避位置で停止した状態で行われる。これによれば、ノズル31から吐出される混合液は待機ポッド39で受け止められて、回収または廃棄される。
【0130】
この押し出し処理により、混合部324および混合管323の内部の混合液を置換液に置換する。置換液は単液であるので、これらの内部での気泡の発生を抑制することができる。
【0131】
図9は、基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9の例では、制御部90は液滴処理(ステップS5)の直後に、押し出し処理(ステップS8:置換工程に相当)を実行する。
図9の例では、押し出し処理(ステップS8)を乾燥処理(ステップS6)と並行して行っている。
【0132】
この押し出し処理では、混合液供給部30は、例えば、置換液として純水を供給する。具体的には、供給バルブ3221および供給バルブ332を閉じた状態で、供給バルブ3211および供給バルブ3231が開く。これにより、純水が第1供給管321から混合部324に供給される。純水の供給により、混合部234および混合管323の内部の混合液が純水によって押し出されて、ノズル31から待機ポッド39に吐出される。よって、混合部324および混合管323の内部の混合液はその上流側から順次に純水に置換される。混合液が全て吐出されると、続けて純水がノズル31から吐出される。
【0133】
例えば、純水の供給開始から第5所定時間が経過すると、供給バルブ3211および供給バルブ3231が閉じる。これにより、純水の供給が停止する。第5所定時間は、混合部324および混合管323の内部の混合液が純水に置換されるのに十分な時間に設定される。
【0134】
これによれば、混合液が純水に置換されるので、以後の気泡の発生を抑制することができる。したがって、次に液滴処理を行う場合に、気泡に起因した不具合の発生を抑制することができる。
【0135】
なお、上述の例では、押し出し処理を開始するトリガとして、液滴処理の終了以外の条件を採用していない。つまり、液滴処理が終了するたびに、常に押し出し処理を行っている。これによれば、確実に次の液滴処理での気泡に起因した不具合の発生を抑制することができる。ただし、押し出し処理は常に必要とは限らない。なぜなら、液滴処理の終了から次の液滴処理の開始までの時間が短い場合には、気泡の量はさほど増加しないからである。
【0136】
そこで、制御部90は、液滴処理の終了後、基準時間Tref内に混合液を基板Wに供給しないとき、つまり、次の液滴処理を行わないときに、押し出し処理を行う。一方で、基準時間Tref内に次の液滴処理を行うときには、押し出し処理を行わない。
【0137】
図8は、この押し出し処理の要否判断の一例を概略的に示すフローチャートである。まず、制御部90は、液滴処理の終了から次の液滴処理の開始までの時間(以下、液滴待機時間T1と呼ぶ)を取得する(ステップS11)。液滴待機時間T1は、例えば、基板Wに対する処理の手順を規定した手順情報に含まれている。当該手順情報は、例えば、基板処理装置100よりも上流側の装置から制御部90に通知されたり、あるいは、作業員による入力によって制御部90に通知される。
【0138】
次に、制御部90は、液滴待機時間T1が基準時間Tref以上であるか否かを判断する(ステップS12)。基準時間Trefは例えば予め設定されており、具体的には、数分(例えば5分程度)に設定される。
【0139】
液滴待機時間T1が基準時間Tref以上であるときには、制御部90は押し出し処理が必要であると判断する(ステップS13)。一方で、液滴待機時間T1が基準時間Tref未満であるときには、押し出し処理は不要であると判断する(ステップS14)。
【0140】
図10は、基板処理の各ステップを時系列的に示す図である。
図10の例では、各ステップS1~S8が実行されるタイミングを示している。
図10の例では、3枚の基板Wである基板W1、基板W2、基板W3に対する基板処理が示されている。
【0141】
図10の例では、基板W1に対してステップS1からステップS7の基板処理が実行され、続けて、次の基板W2に対して同様の基板処理が実行される。つまり、
図10の例では、基板W2に対する基板処理が基板W1に対する基板処理と連続的に行われる。よって、基板W1に対する基板処理の終了から次の基板W2に対する基板処理の開始までの時間は非常に短い。
【0142】
この場合、基板W1に対する液滴処理(ステップS5)の終了から次の基板W2に対する液滴処理(ステップS5)の開始までの液滴待機時間T1は基準時間Trefよりも短くなる。よって、この液滴待機時間T1において、押し出し処理(ステップS8)は行われていない。つまり、液滴待機時間T1が基準時間Trefよりも短いので、押し出し処理を行わなくても、次の基板W2に対する液滴処理(ステップS5)の開始時点における気泡の量は比較的に小さい。よって、押し出し処理を行わなくても、液滴処理を適切に行うことができる。また、押し出し処理を行わないことで、置換液(ここでは純水)の消費量を低減させることができる。
【0143】
一方で、
図10の例では、基板W2の基板処理の後、所定の時間間隔を経て、基板W3に対する基板処理が実行されている。つまり、
図10の例では、基板W2に対する基板処理の終了から次の基板W3に対する基板処理の開始までの時間は比較的に長い。
【0144】
例えば、基板処理装置100は、規定枚数の基板Wを1単位として基板処理を実行する場合がある。この規定枚数は、例えば、ロードポートLPに搬入されるキャリアC内に含まれる基板Wの枚数に設定され得る。この1単位内の基板Wに対する基板処理は連続して行われ、当該単位内の最後の基板W(例えば基板W2)に対する基板処理が終了すると、所定の時間間隔を経て、次の単位の最初の基板W(例えば基板W3)に対する基板処理が開始される場合がある。
【0145】
このような場合には、基板W2に対する液滴処理(ステップS5)の終了から次の基板W3に対する液滴処理(ステップS5)の開始までの液滴待機時間T1が、基準時間Trefよりも長くなることがある。この場合、この液滴待機時間T1において押し出し処理(ステップS8)が実行される。
図10の例では、基板W2に対する乾燥処理(ステップS6)と並行して、押し出し処理(ステップS8)が実行される。これにより、混合部324および混合管323の内部の混合液を純水で置換することができる。よって、混合液に起因した気泡の発生を抑制することができる。
【0146】
したがって、基板W3に対する液滴処理(ステップS5)において気泡に起因した不具合の発生を抑制できる。より具体的には、押し出し処理が行われていない場合に比べて、基板Wの上面に残留するパーティクルの個数を約半減させることができた。また、混合液の流量低下に起因した基板Wへのダメージも低減できる。
【0147】
以上のように、混合液供給部30が混合液の供給を終了してから、基準時間Tref内に混合液が供給されない場合には、押し出し処理が行われる。これにより、混合部324よび混合管323の内部における気泡の発生を抑制できる。ひいては、次の液滴処理において、気泡に起因した不具合の発生を抑制することができる。
【0148】
また、上述の例では、混合液供給部30は押し出し処理(ステップS8)において、ノズル31が待避位置で停止した状態で、置換液(ここでは純水)を混合部324に供給する。これによれば、混合液および純水は待機ポッド39に吐出され、基板Wには吐出されない。よって、基板Wに対する不要な処理液(ここでは純水)の供給を回避できる。また、液滴処理の後に速やかに、基板Wに対する次の処理(ここでは乾燥処理)を開始することができる。
【0149】
また、上述の例では、混合液供給部30は押し出し処理(ステップS8)において、ガスをノズル31に供給していない。これによれば、ガスの消費量を低減させることができる。
【0150】
<置換液>
水に対する酸素の溶解度はIPAに対する酸素の溶解度よりも高く、水に対する窒素の溶解度はIPAに対する窒素の溶解度よりも高い。よって、空気は水よりもIPAに多く溶解することが可能である。
【0151】
上述の例では、押し出し処理(ステップS8)において、置換液として、水を含む第1処理液(ここでは純水)を採用している。つまり、溶解度の大きいIPAではなく、溶解度の小さい純水を採用している。この押し出し処理によれば、混合部324および混合管323の内部は、溶解度の小さい純水で満たされる。
【0152】
この状態で、混合液供給部30が純水およびIPAを混合部324に供給すると、混合液が混合部324および混合管323の内部の純水を押し出してノズル31から吐出させる。このとき、混合液と純水との界面でも気泡が生じ得るものの、純水の溶解度は小さいので、比較的に気泡は生じにくい。
【0153】
他方、押し出し処理(ステップS8)において、置換液としてIPAを採用することも可能である。この場合でも、混合部324および混合管323の内部の混合液を置換液(IPA)に置換できるので、気泡の発生を抑制できる。
【0154】
しかしながら、この状態で、混合液供給部30が純水およびIPAを混合部324に供給すると、混合液が混合部324および混合管323の内部のIPAを押し出してノズル31から吐出させる。このとき、混合液は、溶解度の高いIPAを押し出すので、混合液とIPAとの界面で気泡が発生する可能性がある。
【0155】
したがって、気泡の発生を低減するという観点では、押し出し処理(ステップS8)において、置換液として第1処理液(ここでは純水)を採用することが望ましい。これにより、上記の気泡の発生を抑制できる。
【0156】
<流量>
さて、液滴処理の後の混合部324および混合管323の内部では、混合液が存在しているので、気泡が生じ得る。そして、押し出し処理では、置換液(ここでは純水)が混合液を押し出してノズル31から吐出させる。このとき、混合液中の気泡も混合液および純水の流れにしたがって移動して、ノズル31から吐出される。しかしながら、一部の気泡が残留する可能性もある。
【0157】
そこで、押し出し処理における置換液の流量を高く設定するとよい。
図11は、ノズル31からの吐出流量の一例を示すグラフである。
図11に例示されるように、押し出し処理(ステップS8)における置換液の流量は、液滴処理(ステップS5)における混合液の流量よりも高く設定されてもよい。置換液の流量は混合液の流量の例えば2倍以上、例えば、250mL/分程度に設定される。
【0158】
このように押し出し処理における置換液の流量が高く設定されることにより、押し出し処理において当該気泡に作用する力が大きくなり、当該気泡をノズル31側へと移動させやすくなる。よって、当該気泡をより適切に排出することができる。
【0159】
<供給バルブの開閉>
押し出し処理において、混合管323に設けられた供給バルブ3231の開閉を繰り返し切り替えてもよい。
図12は、供給バルブ3231の開閉の一例を示すタイミングチャートである。
図12の例では、液滴処理(ステップS5)において、供給バルブ3231が比較的長期間に亘って開状態を維持するのに対して、押し出し処理(ステップS8)において、供給バルブ3231は開閉を繰り返し切り替える。
【0160】
この開閉の切り替えによって、供給バルブ3231は振動する。この振動は、混合管323から混合部324およびノズル31にも伝達する。よって、これらの内部に気泡が生じていた場合、当該振動が気泡にも作用し、各内部において当該振動に応じて気泡が移動する。よって、気泡が各内部の段差(例えば継手等の段差)で静止していたとしても、当該気泡が振動によって当該段差から移動し、置換液の流れに乗ってノズル31から排出される。したがって、気泡をより適切にノズル31から排出することができる。
【0161】
なお、押し出し処理において、第1供給管321に設けられた供給バルブ3211は開閉を繰り返し切り替えることなく開状態を維持してもよい。あるいは、供給バルブ3211の開閉を繰り返し切り替えてもよい。
【0162】
<押し出し処理のタイミング>
図10を参照して、押し出し処理(ステップS8)は、液滴処理(ステップS5)の終了から次の液滴処理(ステップS5)の開始までに実行されればよい。つまり、押し出し処理(ステップS8)は、液滴待機時間T1が経過するまでに実行されればよい。
【0163】
例えば、押し出し処理(ステップS8)は、次の基板W(例えば基板W3)に対する基板処理中に実行してもよい。例えば、
図10の二点鎖線で示されるように、押し出し処理(ステップS8)を、次の基板W3に対する薬液処理(ステップS3)と並行して行ってもよい。この場合でも、押し出し処理(ステップS8)により気泡を排出できるので、基板W3に対する液滴処理(ステップS5)を適切に行うことができる。
【0164】
ただし、液滴待機時間T1において、時間の経過とともに気泡の量が増加するので、遅いタイミングで押し出し処理を行うと、気泡の排出がやや困難となり得る。よって、より早いタイミングで押し出し処理を行うことが望ましい。例えば、押し出し処理を、次の基板W3の搬入(ステップS1)までに開始することが望ましい。
【0165】
例えば、基板W2が処理ユニット10から搬出された後、次の基板W3が処理ユニット10に搬入されるまでのアイドル期間において、押し出し処理(ステップS8)が実行されてもよい。
図10の例では、この押し出し処理(ステップS8)を、基板W2の搬出(ステップS7)と、次の基板W3の搬入(ステップS1)との間における二点鎖線のブロックで示している。これによれば、より早いタイミングで押し出し処理(ステップS8)を行うので、気泡がより少ない状態で押し出し処理(ステップS8)を行うことができる。よって、押し出し処理において、気泡をより適切に排出することができる。
【0166】
さらに望ましくは、基板W2に対する乾燥処理(ステップS6)の終了までに、押し出し処理(ステップS8)を開始するとよい。これによれば、さらに早いタイミングで押し出し処理(ステップS8)を行うことになるので、気泡をさらに適切に排出することができる。
【0167】
なお、上述の押し出し処理の実行タイミングの説明では、基準時間Trefが示された
図10を参照しているが、押し出し処理の開始トリガとして基準時間Trefを採用することは必須ではない。押し出し処理を液滴処理の終了後に常に行う場合であっても、押し出し処理は次の液滴処理の開始までに行えばよい。もちろん、気泡の排出を容易にするという意味で、上述のように、押し出し処理をより早いタイミングで行うことが望ましい。
【0168】
<混合管の容量>
混合管323の容量が大きくなるにつれて、混合管323の内部の混合液を置換液に置換するために必要な置換液の量が大きくなる。これにより、置換液の消費量が増加する。そこで、混合管323の容量は例えば20mL以下、好ましくは10mL以下となるように、設定されるとよい。これにより、置換液の消費量を低減させることができる。
【0169】
<基準時間の設定>
溶解度の高いIPAの濃度が高くなると、気泡の量が大きくなり得る。よって、IPAの濃度が高い場合に合わせて基準時間Trefを設定すると、基準時間Trefはより小さい値に設定される。この場合、液滴処理で吐出される混合液のIPA濃度が低くてもよければ、液滴待機時間T1が基準時間Tref以上であっても、次の液滴処理の開始時の気泡の量は許容量未満である可能性もある。この場合、不要な押し出し処理が実行される。
【0170】
一方で、IPA濃度が低い場合に合わせて基準時間Trefを設定すると、基準時間Trefはより大きい値に設定される。この場合、液滴処理で吐出される混合液のIPA濃度が高くなれば、液滴待機時間T1が基準時間Tref未満であっても、次の液滴処理の開始時の気泡の量が許容量を超える可能性もある。この場合、次の液滴処理において不具合が発生する。
【0171】
そこで、制御部90は、基準時間Trefを、液滴処理における混合液のIPA濃度が高いほど短く設定してもよい。例えば、基準時間Trefは、IPAの濃度の増加に対して階段状に短く設定されてもよく、あるいは、単調減少(例えば比例)に短く設定されてもよい。基準時間TrefとIPAの濃度との関係は、例えばテーブルまたは数式等で設定されてもよい。
【0172】
IPAの濃度の情報は基板の処理を規定する手順情報等に含まれる。制御部90は液滴処理に用いられる混合液におけるIPAの濃度の情報を手順情報から読み取り、当該IPAの濃度と上記関係とに基づいて、基準時間Trefを設定する。
【0173】
これによれば、不要な押し出し処理の実行を抑制しつつ、次の液滴処理における不具合の発生を抑制することができる。
【0174】
<配管系>
混合部324および混合管323は、その内部における段差または曲がり角が少なくなるように、設計されるとよい。これによれば、気泡が段差または曲がり角に引っかかることを抑制でき、気泡の排出を容易にすることができる。
【0175】
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、液滴待機時間T1に基づいて押し出し処理の要否を判断した。具体的には、液滴待機時間T1が、予め設定された基準時間Tref以上であるときに、押し出し処理が必要であると判断した。ところで、気泡の発生量にはばらつきがあるので、次の液滴処理における不具合をより確実に避けるためには、基準時間Trefを少し短く設定することが望ましい。しかしながら、このように基準時間Trefを短く設定すれば、気泡の発生量が小さい場合でも、押し出し処理が行われる場合がある。このような不要な押し出し処理は望ましくない。
【0176】
そこで、第2の実施の形態では、混合管323の内部に気泡が生じているかどうかをモニタし、その結果に基づいて押し出し処理の要否を判断する。以下、第2の実施の形態について述べる。
【0177】
第2の実施の形態にかかる基板処理装置100は第1の実施の形態と同様である。ただし、第2の実施の形態では、処理ユニット10の内部構成が相違する。
図13は、第2の実施の形態にかかる処理ユニット10の構成の一例を概略的に示す図である。第2の実施の形態にかかる処理ユニット10は、気泡検出部60の有無という点で、第1の実施の形態にかかる処理ユニット10と相違する。
【0178】
気泡検出部60は、混合管323の内部の混合液中に生じる気泡を検出する。例えば、気泡検出部60は光学的に当該気泡を検出する。より具体的な一例として、気泡検出部60はカメラ61を含む。カメラ61は、例えば固体撮像素子の一つであるCCD(Charge Coupled Device)と、レンズなどの光学系とを含む。
【0179】
カメラ61は、少なくともノズル31が待避位置で停止した状態での混合管323が撮像領域に含まれるように、配置される。撮像領域には、混合管323の全てが含まれる必要はなく、混合管323の長手方向の一部が含まれていればよい。カメラ61は当該撮像領域を撮像して、撮像画像データを取得する。カメラ61は撮像画像データを制御部90に出力する。
【0180】
混合管323は透明な部材によって構成される。よって、混合管323の内部の混合液の状態が外部から視認可能である。したがって、カメラ61によって取得される撮像画像データには、混合管323の内部の混合液が写っている。
【0181】
制御部90は当該撮像画像データを解析して、混合管323の内部の気泡を検出する。画像処理のアルゴリズムは特に制限されないが、簡単な一例を概説する。例えば、気泡が生じていない状態でカメラ61によって取得された撮像画像データを、参照画像データとして記憶媒体93に予め記憶しておく。なお、撮像画像データのうち、混合管323を含む領域のみを切り出し、当該領域を参照画像データとして記憶媒体93に予め記憶させてもよい。以下では、当該領域が参照画像データとして記憶されるものとする。
【0182】
制御部90は、液滴待機時間T1においてカメラ61によって取得された撮像画像データと、参照画像データとの比較に基づいて、気泡を検出する。例えば、制御部90は、撮像画像データのうち混合管323を含む領域を切り出し、当該領域と参照画像データとの差異を示す指標(例えば各画素の差の絶対値の総和)を算出する。制御部90は、当該指標が基準値よりも大きいときに、許容できない程度の気泡が生じていると判断する。
【0183】
なお、この例では、制御部90による画像解析機能およびカメラ61が気泡検出部60を構成しているといえる。もちろん、制御部90とは別の制御部が当該画像解析機能を有し、当該別の制御部およびカメラ61が気泡検出部60を構成してもよい。
【0184】
また、気泡検出部60は、必ずしもカメラ61を含む必要はない。例えば、気泡検出部60は、不図示の発光器および受光器を含んでいてもよい。発光器は混合管323の長手方向の一部に対して光を照射する。受光器は混合管323の当該一部に対して発光器とは反対側に設けられ、混合管323を透過した光を受光する。受光器が受光した光の光量は、混合管323の内部の気泡の量に応じて変動するので、当該光の光量に基づいて、気泡の発生を検出することができる。
【0185】
<基板処理>
処理ユニット10による基板処理に関する動作の一例は、第1の実施の形態と同様であり、例えば
図7のフローチャートと同様である。ただし、第2の実施の形態では、混合管323の内部において、気泡検出部60が、許容できない程度の気泡を検出したときに、押し出し処理が実行される。
【0186】
<押し出し処理>
図14は、処理ユニット10の動作の一例を示すフローチャートである。この一連の処理は、繰り返し実行される。例えば、制御部90は液滴処理(ステップS5)が終了したか否かを判断する(ステップS21)。液滴処理が未だ終了していないときには、制御部90は再びステップS21を実行する。
【0187】
液滴処理が終了しているときには、気泡検出部60は気泡の検出動作を開始する(ステップS22:検出工程)。具体的な一例として、カメラ61が撮像領域を所定時間ごとに撮像して順次に撮像画像データを取得し、当該撮像画像データを制御部90に出力する。制御部90は当該撮像画像データを解析して、気泡の量が許容量以上であるか否かを判断する(ステップS23)。当該許容量は、次の液滴処理において不具合が生じない程度の値であって、予め設定される。
【0188】
気泡の量が許容量未満であるときには、制御部90は、次の基板Wに対する液滴処理が開始されたか否かを判断する(ステップS25)。液滴処理が開始された場合には、この一連の処理を終了する。つまり、
図14の例では、液滴処理を実行している期間では、気泡の検出動作を行わない。逆に言えば、気泡の検出動作は液滴待機時間T1において行われる。これにより、不要な処理の実行を抑制することができる。
【0189】
液滴処理が未だ開始しない場合には、制御部90は、次に取得された撮像画像データについて、再びステップS23の判断を行う。つまり、制御部90は次の撮像画像データを解析し、当該撮像画像データについて、気泡の量が許容量以上であるか否かを判断する。
【0190】
気泡の量が許容量以上であるときには、混合液供給部30は押し出し処理を実行する(ステップS24)。この押し出し処理は、次の液滴処理を開始する前に実行される。つまり、押し出し処理は液滴待機時間T1において実行される。押し出し処理の実行により、混合部324および混合管323の内部の混合液および気泡が置換液(ここでは純水)によって押し出されてノズル31から吐出される。これにより、混合部324および混合管323の内部の混合液が純水に置換される。よって、以後の気泡の発生を抑制できる。次に、制御部90はステップS25を実行する。
【0191】
以上のように、第2の実施の形態では、混合液供給部30は、気泡検出部60の検出結果に応じて、押し出し処理を実行する。これによれば、実際に許容量を超える気泡が検出されたときに押し出し処理が行われる。この押し出し処理が行われることにより、次の液滴処理における不具合の発生を抑制することができる。また、許容量を超える気泡が検出されないときには、押し出し処理が実行されない。よって、不要な押し出し処理の実行も抑制することができる。
【0192】
以上のように、基板処理方法および基板処理装置100は詳細に説明されたが、上記の説明は、全ての局面において、例示であって、この基板処理装置がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施の形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【0193】
例えば、上述の例では、ノズル31は二流体ノズルであるものの、一流体ノズルであってもよい。この場合、ノズル31は、水を含む第1処理液とIPAとの混合液を、液柱状に吐出する。この場合でも、ノズル31が混合液の吐出を停止すると、混合部324および混合管323の内部において、時間の経過とともに気泡の量が増大し得る。この状態で、ノズル31が再び混合液を吐出すると、当該気泡により、ノズル31からの混合液が飛び散ったり、あるいは、気泡が吐出された瞬間の混合液の流量が少なくなって、基板Wの上面の一部で混合液に覆われない領域が生じたりする。このような不具合は好ましくなく、気泡の発生の抑制が望まれる。
【0194】
そこで、ノズル31が一流体ノズルであっても、処理ユニット10は第1または第2の実施の形態のように、液滴待機時間T1において押し出し処理を行う。これにより、気泡に起因した不具合の発生を抑制することができる。
【0195】
また、上述の例では、ノズル31は、鉛直方向に沿った吐出方向(中心軸L)に混合液を吐出するものの、必ずしもこれに限らない。ノズル31は、鉛直方向に対して傾斜した吐出方向(中心軸L)に混合液を噴出してもよい。
【0196】
また、第1の実施の形態の具体例では、制御部90は液滴待機時間T1を手順情報から読み出し、液滴待機時間T1が基準時間Tref以上であるときに、押し出し処理が必要であると判断している。しかしながら、押し出し工程の要否判断は必ずしもこれに限らない。例えば、制御部90は、液滴処理(ステップS5)が終了してからの経過時間を測定し、当該経過時間が基準時間Tref以上になったときに、押し出し工程が必要であると判断してもよい。経過時間は例えば不図示のタイマ回路によって測定できる。
【符号の説明】
【0197】
20 基板保持部(スピンチャック)
30 混合液供給部
31 ノズル
321 第1供給管
322 第2供給管
323 混合管
60 気泡検出部
90 制御部
100 基板処理装置
S1 保持工程(ステップ)
S5 混合液供給工程(ステップ)
S6 乾燥工程(ステップ)
S8 置換工程(ステップ)
Tref 基準時間
W 基板