(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ゴルフクラブのシャフトのフィッティング装置
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20240514BHJP
A63B 53/00 20150101ALI20240514BHJP
【FI】
A63B69/36 541S
A63B69/36 541W
A63B53/00 B
(21)【出願番号】P 2020076396
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 弘祐
(72)【発明者】
【氏名】植田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 佑斗
(72)【発明者】
【氏名】南家 健太
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-217423(JP,A)
【文献】特開2013-208362(JP,A)
【文献】特開2017-170105(JP,A)
【文献】特開2006-174870(JP,A)
【文献】特開2017-200590(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0179454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00-69/40
A63B 53/00-53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出する解析部と、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する画面作成部と、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出する調整部と
を備え、
前記調整部は、前記要望データとして、より硬いシャフトを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値を全て大きくする、或いは、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの手元側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを大きくすることにより、前記調整剛性指標を導出し、
前記画面作成部は、前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する、
フィッティング装置。
【請求項2】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出する解析部と、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する画面作成部と、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出する調整部と
を備え、
前記調整部は、前記要望データとして、より柔らかいシャフトを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値を全て小さくする、或いは、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの手元側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを小さくすることにより、前記調整剛性指標を導出
し、
前記画面作成部は、前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する、
フィッティング装置。
【請求項3】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出する解析部と、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する画面作成部と、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出する調整部と
を備え、
前記調整部は、前記要望データとして、ボールの方向性を左に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを小さくすることにより、前記調整剛性指標を導出
し、
前記画面作成部は、前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する、
フィッティング装置。
【請求項4】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出する解析部と、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する画面作成部と、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出する調整部と
を備え、
前記調整部は、前記要望データとして、ボールの方向性を左に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の複数の位置における前記剛性値のみを小さくし、このとき、前記複数の位置における前記剛性値を異なるレベルだけ小さくすることにより、前記調整剛性指標を導出
し、
前記画面作成部は、前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する、
フィッティング装置。
【請求項5】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出する解析部と、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する画面作成部と、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出する調整部と
を備え、
前記調整部は、前記要望データとして、ボールの方向性を右に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを大きくすることにより、前記調整剛性指標を導出
し、
前記画面作成部は、前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する、
フィッティング装置。
【請求項6】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出する解析部と、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する画面作成部と、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出する調整部と
を備え、
前記調整部は、前記要望データとして、ボールの方向性を右に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の複数の位置における前記剛性値のみを大きくし、このとき、前記複数の位置における前記剛性値を異なるレベルだけ大きくすることにより、前記調整剛性指標を導出
し、
前記画面作成部は、前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する、
フィッティング装置。
【請求項7】
前記剛性指標は、前記シャフトの少なくとも3つの位置における剛性値を含む、
請求項1から
6のいずれかに記載のフィッティング装置。
【請求項8】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出することと、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出することと、
前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと
をコンピュータに実行させ
、
前記調整剛性指標を導出することは、前記要望データとして、より硬いシャフトを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値を全て大きくする、或いは、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの手元側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを大きくすることにより、前記調整剛性指標を導出することを含む、
フィッティングプログラム。
【請求項9】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出することと、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出することと、
前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと
をコンピュータに実行させ、
前記調整剛性指標を導出することは、前記要望データとして、より柔らかいシャフトを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値を全て小さくする、或いは、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの手元側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを小さくすることにより、前記調整剛性指標を導出することを含む、フィッティングプログラム。
【請求項10】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出することと、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出することと、
前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと
をコンピュータに実行させ、
前記調整剛性指標を導出することは、前記要望データとして、ボールの方向性を左に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを小さくすることにより、前記調整剛性指標を導出することを含む、フィッティングプログラム。
【請求項11】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出することと、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出することと、
前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと
をコンピュータに実行させ、
前記調整剛性指標を導出することは、前記要望データとして、ボールの方向性を左に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の複数の位置における前記剛性値のみを小さくし、このとき、前記複数の位置における前記剛性値を異なるレベルだけ小さくすることにより、前記調整剛性指標を導出することを含む、フィッティングプログラム。
【請求項12】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出することと、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出することと、
前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと
をコンピュータに実行させ、
前記調整剛性指標を導出することは、前記要望データとして、ボールの方向性を右に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを大きくすることにより、前記調整剛性指標を導出することを含む、フィッティングプログラム。
【請求項13】
ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出することと、
前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと、
前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出することと、
前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと
をコンピュータに実行させ、
前記調整剛性指標を導出することは、前記要望データとして、ボールの方向性を右に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の複数の位置における前記剛性値のみを大きくし、このとき、前記複数の位置における前記剛性値を異なるレベルだけ大きくすることにより、前記調整剛性指標を導出することを含む、フィッティングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルファーに適したゴルフクラブのシャフトをフィッティングするためのフィッティング装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴルファーがゴルフスイングをする様子を計測機器により計測し、このときの計測データに基づいて、ゴルファーに適したゴルフクラブを選択する様々なフィッティング方法が提案されている。特許文献1には、計測データに基づいて、ゴルファーに適したゴルフクラブの特性値を算出し、そのような特性値に合致するゴルフクラブをゴルファーに推奨するフィッティング方法が開示されている。特許文献1では、ゴルファーに適したゴルフクラブの特性値の1つとして、ゴルファーに適したインターナショナル・フレックス・コード(IFC)と呼ばれる指標が算出される。IFCは、本出願人により広く提案されているシャフトの特性を示す公知の指標である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、ゴルファーに適したIFCを算出し、これに合致するシャフトを提案することができるものの、そのようなシャフトが必ずしもゴルファーの要望にぴったりと合うとは限らない。例えば、ゴルファーは、システムにより提案される理想的なシャフトよりも、自身のフィーリングを重視してシャフトを選択することを望むかもしれない。しかしながら、特許文献1のシステムは、このようなゴルファーの要望に十分に応えることができなかった。
【0005】
本発明は、ゴルファーの要望をより満たすシャフトを提案することができるフィッティング装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点に係るフィッティング装置は、ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出する解析部と、前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する画面作成部と、前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出する調整部とを備える。前記画面作成部は、前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成する。
【0007】
第2観点に係るフィッティング装置は、第1観点に係るフィッティング装置であって、前記調整部は、前記要望データとして、より硬いシャフトを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値を全て大きくする、或いは、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの手元側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを大きくすることにより、前記調整剛性指標を導出する。
【0008】
第3観点に係るフィッティング装置は、第1観点又は第2観点に係るフィッティング装置であって、前記調整部は、前記要望データとして、より柔らかいシャフトを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値を全て小さくする、或いは、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの手元側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを小さくすることにより、前記調整剛性指標を導出する。
【0009】
第4観点に係るフィッティング装置は、第1観点から第3観点のいずれかに係るフィッティング装置であって、前記調整部は、前記要望データとして、ボールの方向性を左に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを小さくすることにより、前記調整剛性指標を導出する。
【0010】
第5観点に係るフィッティング装置は、第1観点から第3観点のいずれかに係るフィッティング装置であって、前記調整部は、前記要望データとして、ボールの方向性を左に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の複数の位置における前記剛性値のみを小さくし、このとき、前記複数の位置における前記剛性値を異なるレベルだけ小さくすることにより、前記調整剛性指標を導出する。
【0011】
第6観点に係るフィッティング装置は、第1観点から第5観点のいずれかに係るフィッティング装置であって、前記調整部は、前記要望データとして、ボールの方向性を右に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の1又は複数の位置における前記剛性値のみを大きくすることにより、前記調整剛性指標を導出する。
【0012】
第7観点に係るフィッティング装置は、第1観点から第5観点のいずれかに係るフィッティング装置であって、前記調整部は、前記要望データとして、ボールの方向性を右に向けることを要望する旨を示すデータが入力された場合に、前記最適剛性指標に含まれる前記複数の剛性値のうち、前記シャフトの先端側の複数の位置における前記剛性値のみを大きくし、このとき、前記複数の位置における前記剛性値を異なるレベルだけ大きくすることにより、前記調整剛性指標を導出する。
【0013】
第8観点に係るフィッティング装置は、第1観点から第7観点のいずれかに係るフィッティング装置であって、前記剛性指標は、前記シャフトの少なくとも3つの位置における剛性値を含む。
【0014】
第9観点に係るフィッティングプログラムは、ゴルファーによるゴルフスイングを計測機器により計測した計測データに基づいて、ゴルフクラブに含まれるシャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、前記ゴルファーに適した前記剛性指標である最適剛性指標を導出することと、前記最適剛性指標及び前記最適剛性指標に合致するシャフトである候補シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することと、前記候補シャフトを含むゴルフクラブの試打結果に基づく前記ゴルファーの要望を示す要望データの入力を受け付け、前記要望データに応じて、前記最適剛性指標を調整した調整剛性指標を導出することと、前記調整剛性指標及び前記調整剛性指標に合致するシャフトである推奨シャフトの少なくとも一方を表示する画面を作成することとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
上記観点によれば、ゴルファーの要望をより満たすシャフトを提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフィッティング装置(コンピュータ)を備えるフィッティングシステムの全体構成図。
【
図2】
図1のフィッティングシステムの電気的構成を示す機能ブロック図。
【
図3】フィッティング処理の流れを示すフローチャート。
【
図4】インターナショナル・フレックス・コード(IFC)を説明する図。
【
図5】ゴルフスイング中のシャフトの曲げを説明する図。
【
図6】ゴルフスイングの解析結果を表示する解析結果画面の例。
【
図7】最適剛性指標及び候補シャフトを表示するシャフト選択画面の例。
【
図8】最適剛性指標、候補シャフト及び候補シャフトの剛性指標を表示するシャフト選択画面の例。
【
図9】調整剛性指標及び推奨シャフトを表示するシャフト選択画面の例。
【
図10】調整剛性指標及び推奨シャフトを表示するシャフト選択画面の別の例。
【
図11】調整剛性指標及び推奨シャフトを表示するシャフト選択画面のさらに別の例。
【
図12】調整剛性指標及び推奨シャフトを表示するシャフト選択画面のさらに別の例。
【
図13】調整剛性指標、推奨シャフト及び推奨シャフトの剛性指標を表示するシャフト選択画面の例。
【
図14】調整剛性指標、推奨シャフト及び推奨シャフトの剛性指標を表示するシャフト選択画面の別の例。
【
図15】調整剛性指標、推奨シャフト及び推奨シャフトの剛性指標を表示するシャフト選択画面のさらに別の例。
【
図16】調整剛性指標、推奨シャフト及び推奨シャフトの剛性指標を表示するシャフト選択画面のさらに別の例。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブのシャフトのフィッティング装置及びプログラムについて説明する。
【0018】
<1.フィッティングシステムの概略構成>
図1に、本実施形態に係るゴルフクラブのシャフトのフィッティング装置としてのコンピュータ1を含むフィッティングシステム100の全体構成図を示し、
図2に、その電気的構成を示す。フィッティングシステム100は、ゴルフクラブの多数のシャフトの中からゴルファーGに適した1又は複数本のシャフトを選択する、言い換えると、ゴルファーGに1又は複数本のシャフトをフィッティングするためのシステムである。フィッティングは、ゴルファーGが、1又は複数本の試打用のゴルフクラブ(ゴルファーGが普段使用しているゴルフクラブを含み得る。以下、テストクラブと呼ぶ)4を試打しながら、最終的にゴルファーGに推奨されるべき、ゴルファーGに適したシャフト(以下、推奨シャフトという)を決定することで実施される。このとき、好ましくは、フィッターと呼ばれる専門のスタッフが、ゴルファーGがテストクラブ4を試打する様子を観察しながら、シャフトのフィッティングを適宜ナビゲートする。
【0019】
フィッティングシステム100は、ゴルファーGがテストクラブ4を試打する様子を計測する計測機器2を含む。コンピュータ1は、計測機器2により収集された計測データを解析し、ゴルフスイングの解析及びシャフトのフィッティングを行う。ユーザーは、コンピュータ1から提示されるゴルファーGによるゴルフスイングの解析結果を参考にしながら、フィッティングを進める。なお、ここでいうユーザーとは、ゴルフスイングの解析結果及びフィッティングの結果を必要とする者の総称であり、主としてゴルファーGが想定されるが、フィッターがいる場合にはフィッターも含まれ得る。コンピュータ1は、計測データに基づくゴルフスイングの解析結果をユーザーに向けて表示するとともに、計測データに基づくフィッティングの結果についても、ユーザーに向けて表示する。
【0020】
以下、計測機器2及びコンピュータ1の構成について説明した後、フィッティングシステム100を用いて実施されるシャフトのフィッティングの流れについて説明する。
【0021】
<2.各部の構成>
<2-1.計測機器>
計測機器2は、ゴルフ用品の販売店やゴルフスクール等の専門の場所において、ゴルファーGが試打を行う打席に導入されており、打席に立つゴルファーGのショット(ゴルフスイング)を計測する。計測機器2により計測された計測データは、計測機器2に接続されているコンピュータ1に送信される。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係る計測機器2は、慣性センサユニット3及びカメラシステム5を含む。ただし、計測機器2の構成は、これに限られず、ゴルファーGによるゴルフスイングを解析するのに適した計測データを計測可能なものであれば、特に限定されない。ゴルファーGは、カメラシステム5が据え置かれている打席において、慣性センサユニット3が取り付けられているテストクラブ4の試打を行う。テストクラブ4は、一般的なゴルフクラブであり、シャフト40と、シャフト40の一端に設けられたヘッド41と、シャフト40の他端に設けられたグリップ42とを含む。
【0023】
<2-1-1.慣性センサユニット>
慣性センサユニット3は、
図1に示す通り、テストクラブ4のグリップ42におけるヘッド41と反対側の端部に取り付けられており、ゴルフスイング中のテストクラブ4の挙動を計測する。ただし、慣性センサユニット3は、ヘッド41やシャフト40等の別の箇所に取り付けることもできる。慣性センサユニット3は、ゴルファーGのスイング動作の妨げとならないよう、小型且つ軽量に構成されている。慣性センサユニット3は、テストクラブ4に対して着脱自在であってもよいし、取り外し不能に固定されていてもよい。
【0024】
図2に示すように、慣性センサユニット3には、加速度センサ31、角速度センサ32及び地磁気センサ33が搭載されている。これらのセンサ31~33は、それぞれ、これらのセンサ31~33の取付位置を原点とするxyz局所座標系での加速度a
x,a
y,a
z、角速度ω
x,ω
y,ω
z及び地磁気m
x,m
y,m
zのデータを検出する三軸センサである。慣性センサユニット3には、これらのセンサ31~33から出力される計測データを外部のコンピュータ1に送信するための通信装置34も搭載されている。なお、本実施形態では、通信装置34は、スイング動作の妨げにならないように無線式であるが、ケーブルを介して有線式にコンピュータ1に接続するようにしてもよい。
【0025】
<2-1-2.カメラシステム>
図1及び
図2に示す通り、カメラシステム5は、複数台のカメラ51及び52と、複数台のストロボ53、53、54及び54とを備えており、ストロボ式の撮影を行う。カメラ51は、インパクト前後のヘッド41及びボール60の様子を上方から撮影できるように、ゴルファーGの正面側において支持台57に固定されており、アドレス時のボール60の斜め上方に配置されている。ストロボ53及び53も、支持台57に固定されており、カメラ51の下方に配置されている。また、カメラ52は、カメラ51とは異なる位置からインパクト前後のヘッド41及びボール60の様子を撮影できるように、ゴルファーGの正面側においてアドレス時のボール60の前方に配置されている。ストロボ54及び54は、カメラ52の左右に配置されている。ヘッド41及びボール60には、カメラ51及び52により撮影された画像データからヘッド41及びボール60の挙動を抽出し易いように、適宜、点状、線状等の形状のマーカーが付されている。
【0026】
また、カメラシステム5は、投光器55A及び55Bと、受光器56A及び56Bとを備えており、投光器55A及び受光器56Aが1つのタイミングセンサを構成し、投光器55B及び受光器56Bがもう1つのタイミングセンサを構成している。これらのタイミングセンサにより生成されるタイミング信号は、ストロボ53、53、54及び54の発光及びそれに続くカメラ51及び52の撮影のタイミングを決定するのに使用される。
【0027】
さらに、カメラシステム5は、以上の装置51~56Bの動作を制御するための制御装置50も備えている。制御装置50は、CPU、ROM及びRAM等を有しており、以上の装置51~56Bの他、コンピュータ1の通信部15にも接続されている。
【0028】
投光器55A及び55Bは、ゴルファーGの正面側の地面付近において、カメラ51の下方に配置されている。一方、受光器56A及び56Bは、打席に立つゴルファーGの足のつま先付近に配置されている。投光器55A及び受光器56Aは、ゴルファーGの背から腹に向かう方向に概ね平行な直線上に配置されており、互いに対向している。投光器55B及び受光器56Bについても同様である。投光器55A及び55Bは、ゴルフスイング中、常時、それぞれ受光器56A及び56Bに向けて光を照射しており、受光器56A及び56Bがこれを受光する。しかし、テストクラブ4が投光器55A及び55Bと受光器56A及び56Bとの間を通過するタイミングでは、投光器55A及び55Bからの光がテストクラブ4により遮られるため、受光器56A及び56Bはこれを受光することができない。受光器56A及び56Bはこのタイミングを検出し、これを受けてタイミング信号を生成する。制御装置50は、タイミング信号が生成された時刻を基準とする所定のタイミングで、ストロボ53、53、54及び54に発光を命令するとともに、カメラ51及び52に撮影を命令する。カメラ51及び52により撮影された画像データは、計測データとして制御装置50に送信され、制御装置50からさらにコンピュータ1に送信される。
【0029】
<2-2.コンピュータ>
コンピュータ1は、その名のとおり、ハードウェアとしては汎用のコンピュータであり、例えば、デスクトップ型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォンとして実現される。
図2に示す通り、コンピュータ1には、本実施形態に係るフィッティングプログラムであるプログラム13aがインストールされている。プログラム13aは、コンピュータ1が読み取り可能なCD-ROM等の記録媒体から、或いはコンピュータ1が接続されるローカルエリアネットワーク(LAN)やインターネット等の通信ネットワーク上の別のコンピュータから取得される。プログラム13aは、計測機器2から送信されてくる計測データに基づいて、シャフトのフィッティングを支援するためのソフトウェアであり、コンピュータ1に後述する動作を実行させる。
【0030】
コンピュータ1は、ディスプレイ11、入力部12、記憶部13、制御部14及び通信部15を備える。これらの部11~15は、互いにバス線等の通信線16を介して接続されており、相互に通信可能である。ディスプレイ11は、コンピュータ1の本体(制御部14等を収容する筐体)に一体的に組み込まれていても、外付けであってもよい。
【0031】
記憶部13は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置から構成される。記憶部13内には、プログラム13aが格納されている他、計測機器2から送信されてくる計測データが保存される。また、記憶部13内には、シャフトデータベース(DB)17が格納されている。シャフトDB17には、多数のシャフトの各種仕様(後述するIFCを構成するランク値K1~K4を含む)を示す情報が、シャフトの種類を特定する情報に関連付けて格納されている。
【0032】
制御部14は、CPU、ROM及びRAM等から構成される。制御部14は、記憶部13内のプログラム13aを読み出して実行することにより、仮想的に解析部14a、画面作成部14b及び調整部14cとして動作する。各部14a~14cの動作の詳細については、後述する。通信部15は、LANやインターネット等の通信ネットワークとの接続を確立する通信インターフェースとして機能し、この通信ネットワークを介して、計測機器2を含む外部のデバイスとの間でのデータ通信を可能にする。入力部12は、マウス、キーボード、タッチパネル等から構成され、コンピュータ1に対するユーザーからの操作を受け付ける。ディスプレイ11は、液晶ディスプレイ等で構成され、制御部14によるゴルフスイングの解析結果及びフィッティングの結果を含む各種情報をユーザーに対し表示する。
【0033】
<3.シャフトのフィッティング>
続いて、フィッティングシステム100を用いて実施されるシャフトのフィッティングの流れについて説明する。
図3は、シャフトのフィッティング中に、コンピュータ1により実行されるフィッティング処理の流れを示すフローチャートである。
【0034】
まず、ユーザーが入力部12を操作してコンピュータ1に試打を行う旨を入力した(ステップS1)後、ゴルファーGがテストクラブ4を打席において試打する。このとき、ゴルファーGによるゴルフスイングは、1本のテストクラブ4に対し1又は複数回実施される。計測機器2は、ゴルファーGによるゴルフスイングを計測した計測データを収集する。一方、コンピュータ1の解析部14aは、ユーザーから入力部12を介して試打を行う旨の入力を受け付けると(ステップS1でyes)、通信部15を介して計測機器2から計測データを取得する(ステップS2)。より具体的には、テストクラブ4がスイングされ、ボール60が打撃されると、このゴルフスイング時の少なくともアドレスからからフィニッシュまでの間のグリップ42の加速度ax,ay,az、角速度ωx,ωy,ωz及び地磁気mx,my,mzの時系列データが、慣性センサユニット3により計測される。これらの時系列データは、計測データとして、慣性センサユニット3からコンピュータ1に送信され、解析部14aがこれを受信し、記憶部13内に格納する。また、慣性センサユニット3による計測と並行して、カメラシステム5が、このゴルフスイング時のインパクト前後のヘッド41及びボール60の近傍の様子を写す画像データを撮影する。これらの画像データも、計測データとして、制御装置50を介してコンピュータ1に送信され、解析部14aがこれを受信し、記憶部13内に格納する。
【0035】
続くステップS3では、解析部14aが、ゴルフスイング1打分の計測データが記憶部13内に格納される度に、当該計測データを解析する。より具体的には、解析部14aは、記憶部13内の計測データに基づいて、ゴルフスイングを解析し、ゴルファーGのゴルフスイングの特性を表す値(以下、スイング特性値という)を導出する。本実施形態では、スイング特性値として、インパクト直前のヘッドスピード、インパクト直後のボールスピード、ミート率、上下打ち出し角、バックスピン量、左右打ち出し角(左右振れ角ともいう)、サイドスピン量、左右方向の飛距離(左右ブレともいう)、キャリーのみの飛距離、キャリー及びランの合計の飛距離、フェースの開き量、ヘッド41の軌道角、及びフェース面上における打点(左右の打点)が算出される。また、スイング特性値として、ボール60の軌道も算出される。ただし、これらは例示であり、ここで挙げたスイング特性値の全てが導出される必要はないし、他のスイング特性値が導出されてもよい。なお、上記のような計測データに基づく上記のようなスイング特性値の導出方法としては、様々知られているため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0036】
また、ステップS3では、解析部14aは、記憶部13内の計測データに基づいて、シャフトの複数の位置における剛性値を含む剛性指標であって、ゴルファーGに適した剛性指標(以下、最適剛性指標という)を導出する。本実施形態でいうシャフトの剛性指標は、シャフトの複数の位置における曲げ剛性の分布(以下、EI分布ということがある)として評価される。本実施形態に係るEI分布は、定量的に数値を用いて表現され、より具体的には、インターナショナル・フレックス・コード(IFC)を用いて表現される。ここで、このIFCについて説明する。なお、IFCは、本出願人により広く提案されているシャフトの特性を示す公知の指標であり、例えば、特許文献1をはじめとして、既に様々な文献で詳しく説明されている。従って、ここで改めて説明する必要は必ずしもないが、参考のため、ここでも簡単に説明を行う。
【0037】
IFCは、
図4に示す通り、シャフトの延びる方向に沿った4つの位置H1~H4におけるシャフトの曲げ剛性をそれぞれ0~9の1桁の数値で表し、この4つの数値をシャフトの延びる方向に沿って配列したコードである。より具体的には、シャフトのバット端からチップ端に向かってこの順に概ね一定間隔で、4つの測定点H1~H4が定義される。例えば、シャフトのチップ端から36インチの箇所を測定点H1とし、26インチの箇所を測定点H2とし、16インチの箇所を測定点H3とし、6インチの箇所を測定点H4とすることができる。そして、これらの4つの測定点H1~H4のそれぞれにおける曲げ剛性の値(以下、EI値ということがある)J
1~J
4が計測される。
【0038】
次に、以上の4つの測定点H1~H4におけるEI値J1~J4を、それぞれ10段階のランク値K1~K4に変換する。具体的には、ランク値K1~K4は、それぞれの測定点H1~H4用に用意された変換規則に従って、EI値J1~J4から算出することができる。そして、このようにして測定点H1~H4にそれぞれ付与された4つのランク値K1~K4を、よりバット側に対応する値がより左に、よりチップ側に対応する値がより右にくるように配列する。こうして得られた4桁のコードが、IFCである。IFCでは、各桁の数値が大きい程、対応する位置での剛性が高いことを意味する。
【0039】
ステップS3では、以上の通り、最適剛性指標として、ゴルファーGに適したIFCが導出される。そのために、まず、解析部14aは、記憶部13内に格納された計測データに基づいて、第1~第4特徴量F1~F4を算出する。第1~第4特徴量F1~F4は、それぞれゴルファーGに適したEI値J1~J4である最適EI値JS1~JS4、ひいてはゴルファーGに適したランク値K1~K4である最適ランク値KS1~KS4を決定するための指標である。なお、上述したことから明らかであるが、最適ランク値KS1~KS4を左から右に並べた数字列が、本実施形態の最適剛性指標(IFC)である。本実施形態では、第1~第4特徴量F1~F4として、それぞれ最適EI値JS1~JS4と相関を有する以下のような特徴量が算出される。ただし、最適剛性指標を決定するための指標(特徴量)は、これに限定されない。
【0040】
第1特徴量F1は、トップ付近のコック方向の角速度ωyの傾きであり、例えばトップから50ms前の角速度ωyと、トップから50ms後の角速度ωyとの和で表すことができる。
【0041】
第2特徴量F2は、トップから、角速度ωyが最大となる時点までの当該角速度ωyの平均値である。第2特徴量F2は、まず、トップからインパクトまでの間で角速度ωyが最大となる時点を求め、トップからこの時点までの角速度ωyの累積値を、トップからこの時点までの時間で除することにより算出される。
【0042】
第3特徴量F3は、角速度ωyが最大となる時点からインパクトまでの当該角速度ωyの平均値である。第3特徴量F3は、角速度ωyが最大となる時点からインパクトまでの角速度ωyの累積値を、角速度ωyが最大となる時点からインパクトまでの時間で除することにより算出される。
【0043】
第4特徴量F4は、トップからインパクトまでの角速度ωyの平均値であり、トップからインパクトまでの角速度ωyの累積値を、トップからインパクトまでの時間で除することにより算出される。
【0044】
ところで、ゴルフスイング中、ゴルフクラブのシャフトには、その先端に比較的重量が大きいヘッドが存在するため、その慣性により曲げが生じる。この曲げは、ゴルフスイングの全過程において、シャフトの同一箇所に生じるのではなく、
図5に示されるように、トップからインパクトに向けてシャフトの手元側から先端側に伝わる。換言すれば、トップからインパクトに向けてゴルフスイングが進行するに従って、シャフトにおける曲げの位置が当該シャフトの手元側から先端側に移動する。
【0045】
より具体的には、アドレスからテイクバックを行い、トップに至った時点(
図5において(1)で示される時点)では、シャフトの手元付近に曲げが生じる。ついで、切り返しを行い、ダウンスイング初期(
図5において(2)で示される時点)に至ると、曲げはシャフトの先端側にやや移動する。さらに、ゴルファーの腕が水平になる時点(
図5において(3)で示される時点)では、曲げはシャフト中央よりも先端側に移動する。そして、インパクト直前(
図5において(4)で示される時点)では、曲げはシャフトの先端付近まで移動する。
【0046】
従って、第1~第4特徴量F1~F4は、それぞれゴルフスイング中のトップ付近からインパクト付近までの間の第1~第4区間における計測データに基づいて算出することができる。また、ここでの第1~第3区間は、この順に時間経過に沿った区間であり、互いに一部重複する又は重複することのない区間となっている。
【0047】
解析部14aは、第1~第4特徴量F1~F4に応じて、最適剛性指標(IFC)を選択する。本実施形態では、このとき、第1~第4特徴量F1~F4と、最適EI値JS1~JS4との相関関係を表す以下の近似式に基づいて、最適EI値JS1~JS4が算出される。
JS1=a1・F1+b1
JS2=a2・F2+b2
JS3=a3・F3+b3
JS4=a4・F4+b4
【0048】
上式中、a1~a4及びb1~b4は、実験により得られた多数のデータセットに基づく回帰分析により予め定められ、記憶部13内に予め記憶されている定数である。なお、a1~a4及びb1~b4の導出方法は、例えば、特許文献1や特開2013-226375号公報等に開示されているため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0049】
解析部14aは、第1~第4特徴量F1~F4を以上の近似式に代入することにより、最適EI値JS1~JS4を算出する。続いて、解析部14aは、予め定められている所定の変換規則に従って、最適EI値JS1~JS4をそれぞれ最適ランク値KS1~KS4に変換する。そして、最適ランク値KS1~KS4を結合することにより、最適剛性指標(IFC)が決定される。
【0050】
また、ステップS3では、解析部14aは、ゴルファーGに推奨されるべき推奨シャフトの候補として、最適剛性指標(IFC)に合致するシャフト(以下、候補シャフトという)を決定する。より具体的には、解析部14aは、シャフトDB17内を検索して、最適剛性指標に合致する1又は複数本のシャフトを候補シャフトとして抽出する。なお、本実施形態でいう「最適剛性指標に合致するシャフト」には、最適剛性指標と完全に同じ剛性指標(IFC)を有するシャフトだけではなく、最適剛性指標と類似する剛性指標(IFC)を有するシャフトも含まれ得る。シャフトDB17内のシャフトが最適剛性指標に合致するか否かは、例えば、以下の数1の式の通りに定義される一致度に基づいて決定される。この一致度は、シャフトDB17内のシャフトのランク値K
1~K
4と、最適剛性指標を構成する最適ランク値K
S1~K
S4との差の合計であり、値が小さいほど一致度が高い。なお、候補シャフトとしては、シャフトDB17内に登録されているシャフトの中で相対的に一致度が高い所定数のシャフトが特定されてもよいし、一定以上の一致度を有する全てのシャフトが特定されてもよい。
【数1】
【0051】
ステップS3で導出されたスイング特性値は、
図6に示すように、解析結果画面W1上に表示される(ステップS4)。解析結果画面W1は、画面作成部14bにより作成され、ディスプレイ11上に表示される。解析結果画面W1上には、スイング特性値を一覧表示するためのテーブルT1が配置されている。そして、ゴルフスイング1打分のスイング特性値が算出される度に、このテーブルT1にそれらのスイング特性値が入力される。テーブルT1内では、1打目のスイング特性値のセットが1行目に、2打目のスイング特性値のセットが2行目に表示され、3打目以降も同様である。テーブルT1の最下段の行には、複数回のゴルフスイングでのスイング特性値の平均値が表示される。また、テーブルT1の下には、以上のゴルフスイングに対応するボール60の軌道を表すグラフィックT2が表示される。グラフィックT2においては、ゴルフスイングの打数だけ、ボール60の軌道が表示される。
【0052】
ユーザーは、入力部12を操作することにより、ディスプレイ11上の画面を切り替えることができる。画面作成部14bは、ユーザーの操作を受けて、解析結果画面W1の他、シャフト選択画面W2を作成し、これをディスプレイ11上に表示させる(ステップS4)。シャフト選択画面W2上には、最適剛性指標及び候補シャフトの両方が表示される。
図7の例では、最適剛性指標(7755)は、領域A1に文字及びグラフィック表示され、候補シャフトは、領域A2内に一覧表示される。
【0053】
領域A2内では、候補シャフトの名称の隣に、当該候補シャフトを選択するボタンB1が表示される。画面作成部14bは、ユーザーによりボタンB1のいずれかが押下されたことを検知すると(ステップS5でyes)、シャフト選択画面W2を更新し、領域A1内に、当該ボタンB1に対応する候補シャフトの剛性指標(IFC)を表示させる(ステップS6)。
図8は、1つのボタンB1が押下されたときの画面W2の例である。同例では、領域A1内に、最適剛性指標(7755)に加え、選択された候補シャフトの剛性指標(6644)が表示される。
【0054】
ユーザーは、解析結果画面W1及びシャフト選択画面W2上のスイング特性値、最適剛性指標及び候補シャフトの剛性指標を見ながら、ゴルファーGによる次の試打用の新たなテストクラブ4を選択する。新たなテストクラブ4としては、1又は複数本の候補シャフト中から選択されるシャフトを有するゴルフクラブが選択される。
【0055】
新たなテストクラブ4の選択後、ユーザーは、入力部12を操作してコンピュータ1に次の試打を行う旨を入力する。なお、
図3に示す通り、ユーザーは、シャフト選択画面W2上で候補シャフトを選択することなく(ステップS5でno)、コンピュータ1に試打を行う旨を入力してもよい。試打を行う旨が入力された後、ゴルファーGは、新たなテストクラブ4を打席において試打する。このときも、ゴルファーGによるゴルフスイングは、1本のテストクラブ4に対し1又は複数回実施される。計測機器2は、ゴルファーGによる新たなテストクラブ4のゴルフスイングを計測した計測データを収集する。一方、解析部14aは、ユーザーから入力部12を介して試打を行う旨の入力を受け付けると(ステップS7でyes)、ステップS2と同様に、通信部15を介して計測機器2から計測データを取得し、記憶部13内に格納する(ステップS8)。その後のステップS9では、解析部14aが、ステップS3と同様に、記憶部13内の計測データを解析することにより、スイング特性値を導出する。また、ステップS9では、画面作成部14bが、ステップS4と同様に、新たに導出されたスイング特性値を解析結果画面W1上に表示させる。
【0056】
ユーザーは、解析結果画面W1上に表示される新たなスイング特性値を適宜参考にしつつ、候補シャフトの1つを含むテストクラブ4の試打結果に基づいて、最終的にゴルファーGに推奨されるべき推奨シャフトを決定するに当たってのゴルファーGの要望を決定する。ここでいうテストクラブ4の試打結果とは、典型的には、試打時のゴルファーGのフィーリングである。
【0057】
本実施形態では、ゴルファーGの要望として、以下の4つが検討される。
(要望1)試打したテストクラブ4の候補シャフトが柔らかい又は軽いと感じたため、より硬いシャフトを選択したい。
(要望2)試打したテストクラブ4の候補シャフトが硬い又は重いと感じたため、より柔らかいシャフトを選択したい。
(要望3)試打したテストクラブ4の候補シャフトでは、ボールの軌道が右に向かってしまい、もっとボールを捕まえたいと思うため、ボールの方向性がより左に向かうシャフトを選択したい。
(要望4)試打したテストクラブ4の候補シャフトでは、ボールの軌道が左に向かってしまい、もっとボールを逃がしたいと思うため、ボールの方向性がより右に向かうシャフトを選択したい。
【0058】
図7及び
図8に示す通り、シャフト選択画面W2上には、以上の要望1~4にそれぞれ対応するボタンB21~B24が表示されている。ユーザーは、入力部12を操作して、これらのボタンB21~B24のいずれかを押下することにより、ゴルファーGの要望を示すデータ(以下、要望データという)をコンピュータ1に入力することができる。
【0059】
コンピュータ1の調整部14cは、シャフト選択画面W2上のボタンB21~B24を介して、以上の要望1~4のうちの1つの要望に対応する要望データの入力を受け付ける(ステップS10~S13)。なお、
図3に示す通り、調整部14cは、ゴルファーGによる新たなテストクラブ4の試打が行われない場合にも(ステップS7でno)、要望データの入力を受け付けることができる。この場合、ステップS8及びステップS9も省略されるため、ユーザーは、候補シャフトの1つを含むテストクラブ4の試打結果を参考にすることなく、ゴルファーGの要望を決定する。その後、要望1に対応するボタンB21が選択された場合には、ステップS14が実行され、要望2に対応するボタンB24が選択された場合には、ステップS15が実行され、要望3に対応するボタンB22が選択された場合には、ステップS16が実行され、要望4に対応するボタンB23が選択された場合には、ステップS17が実行される。これらのステップS14~S17では、調整部14cは、ユーザーにより入力された要望データに応じて、最適剛性指標を調整した剛性指標(以下、調整剛性指標という)を導出する。
【0060】
要望1に対応するステップS14は、より硬いシャフトを要望する旨を示す要望データが入力された場合に実行される。本実施形態のステップS14では、調整部14cは、ステップS3で導出された最適剛性指標に含まれる複数の剛性値を全て大きくすることにより、調整剛性指標を導出する。この場合、例えば、調整剛性指標は、最適剛性指標を構成する最適ランク値KS1~KS4を全て1ずつ大きくした指標とすることができ、最適剛性指標(IFC)が7755であれば、調整剛性指標(IFC)は、8866となる。或いは、別の実施形態では、調整部14cは、ステップS3で導出された最適剛性指標に含まれる複数の剛性値のうち、シャフトの手元側の1又は複数の位置(全ての位置ではない)における剛性値のみを大きくすることにより、調整剛性指標を導出してもよい。この場合、例えば、調整剛性指標は、最適剛性指標を構成する最適ランク値KS1~KS4のうち手元側の1又は複数の値(全ての値ではない)を1ずつ大きくした指標とすることができ、最適剛性指標(IFC)が7755であれば、調整剛性指標(IFC)は、8755、8855又は8865となる。
【0061】
要望1が選択された場合に、以上のような調整剛性指標が算出されるのは、以下の理由からである。すなわち、本発明者らが検討したところによると、シャフトの硬さは、シャフトの手元側の部位の硬さに依存する。そのため、推奨シャフトとしては、少なくとも手元側の一部の剛性値を大きくしたシャフトを選択することが望ましい。なお、4桁のIFCであれば、手元側の2つの剛性値を大きくすることが望ましい。ただし、手元側の一部の剛性値のみが変更されると、シャフトの特性が全体的に変化し、フィーリングも大きく変化し得るため、シャフト全体の剛性値を変更することも望ましい。
【0062】
ステップS14では、調整部14cは、ゴルファーGに推奨されるべき推奨シャフトとして、調整剛性指標に合致するシャフトを決定する。より具体的には、調整部14cは、ステップS3と同様に、シャフトDB17内を検索して、調整剛性指標に合致する1又は複数本のシャフトを推奨シャフトとして抽出する。なお、本実施形態でいう「調整剛性指標に合致するシャフト」には、調整剛性指標と完全に同じ剛性指標(IFC)を有するシャフトだけではなく、調整剛性指標と類似する剛性指標(IFC)を有するシャフトも含まれ得る。シャフトDB17内のシャフトが調整剛性指標に合致するか否かは、例えば、数1の式の通りに定義される一致度に基づいて決定される。なお、推奨シャフトとしては、シャフトDB17内に登録されているシャフトの中で相対的に一致度が高い所定数のシャフトが特定されてもよいし、一定以上の一致度を有する全てのシャフトが特定されてもよい。
【0063】
また、要望2に対応するステップS15は、より柔らかいシャフトを要望する旨を示す要望データが入力された場合に実行される。本実施形態のステップS15では、調整部14cは、ステップS3で導出された最適剛性指標に含まれる複数の剛性値を全て小さくすることにより、調整剛性指標を導出する。この場合、例えば、調整剛性指標は、最適剛性指標を構成する最適ランク値KS1~KS4を全て1ずつ小さくした指標とすることができ、最適剛性指標(IFC)が7755であれば、調整剛性指標(IFC)は、6644となる。或いは、別の実施形態では、調整部14cは、ステップS3で導出された最適剛性指標に含まれる複数の剛性値のうち、シャフトの手元側の1又は複数の位置(全ての位置ではない)における剛性値のみを小さくすることにより、調整剛性指標を導出してもよい。この場合、例えば、調整剛性指標は、最適剛性指標を構成する最適ランク値KS1~KS4のうち手元側の1又は複数の値(全ての値ではない)を1ずつ小さくした指標とすることができ、最適剛性指標(IFC)が7755であれば、調整剛性指標(IFC)は、6755、6655又は6645となる。
【0064】
要望2が選択された場合に、以上のような調整剛性指標が算出されるのは、以下の理由からである。すなわち、本発明者らが検討したところによると、シャフトの柔らかさは、シャフトの手元側の部位の柔らかさに依存する。そのため、要望2を満たす推奨シャフトとしては、少なくとも手元側の一部の剛性値を小さくしたシャフトを選択することが望ましい。なお、4桁のIFCであれば、手元側の2つの剛性値を小さくすることが望ましい。ただし、手元側の一部の剛性値のみが変更されると、シャフトの特性が全体的に変化し、フィーリングも大きく変化し得るため、シャフト全体の剛性値を変更することも望ましい。
【0065】
ステップS15では、調整部14cは、ゴルファーGに推奨されるべき推奨シャフトとして、調整剛性指標に合致するシャフトを決定する。より具体的には、調整部14cは、ステップS14と同様に、シャフトDB17内を検索して、調整剛性指標に合致する1又は複数本のシャフトを推奨シャフトとして抽出する。
【0066】
要望3に対応するステップS16は、ボールをより捕まえるべく、ボールの方向性をより左に向けるシャフトを要望する旨を示す要望データが入力された場合に実行される。本実施形態のステップS16では、調整部14cは、ステップS3で導出された最適剛性指標に含まれる複数の剛性値のうち、シャフトの先端側の1又は複数の位置(全ての位置ではない)における剛性値のみを小さくすることにより、調整剛性指標を導出する。この場合、例えば、調整剛性指標は、最適剛性指標を構成する最適ランク値KS1~KS4のうち先端側の1又は複数の値(全ての値ではない)を1ずつ小さくした指標とすることができ、最適剛性指標(IFC)が7755であれば、調整剛性指標(IFC)は、7754、7744又は7644とすることができる。
【0067】
ただし、本実施形態では、調整部14cは、最適剛性指標に含まれる複数の剛性値のうち、シャフトの先端側の複数の位置(全ての位置ではない)における剛性値を異なるレベルだけ小さくすることにより、調整剛性指標を導出する。すなわち、シャフトの先端側の剛性値の変更の度合いに、傾斜をつける。この場合、例えば、調整剛性指標は、最適剛性指標を構成する最適ランク値KS1~KS4のうち先端側の2つの値を小さくした指標とし、このうち、最も先端側の値を2だけ小さくし、2番目に先端側の値を1だけ小さくした指標とすることができる。この例では、最適剛性指標(IFC)が7755であれば、調整剛性指標(IFC)は、7743となる。
【0068】
要望3が選択された場合に、以上のような調整剛性指標が算出されるのは、以下の理由からである。すなわち、本発明者らが検討したところによると、ボールの捕まりは、シャフトの先端の硬さに依存し、先端が柔らかい程、ボールが捕まり易くなる。そのため、要望3を満たす推奨シャフトとしては、先端側の一部の剛性値を小さくしたシャフトを選択することが望ましい。なお、4桁のIFCであれば、先端側の2つの剛性値を小さくすることが望ましい。また、先端側の複数の剛性値を小さくする場合には、シャフトの先端側の剛性値の変更の度合いに、傾斜をつけることもでき、このとき、先端側へ向かう程、変更の度合いが大きくなるように、傾斜をつけることもできる。
【0069】
ステップS16では、調整部14cは、ゴルファーGに推奨されるべき推奨シャフトとして、調整剛性指標に合致するシャフトを決定する。より具体的には、調整部14cは、ステップS14と同様に、シャフトDB17内を検索して、調整剛性指標に合致する1又は複数本のシャフトを推奨シャフトとして抽出する。
【0070】
要望4に対応するステップS17は、ボールをより逃がすべく、ボールの方向性をより右に向けるシャフトを要望する旨を示す要望データが入力された場合に実行される。本実施形態のステップS17では、調整部14cは、ステップS3で導出された最適剛性指標に含まれる複数の剛性値のうち、シャフトの先端側の1又は複数の位置(全ての位置ではない)における剛性値のみを大きくすることにより、調整剛性指標を導出する。この場合、例えば、調整剛性指標は、最適剛性指標を構成する最適ランク値KS1~KS4のうち先端側の1又は複数の値(全ての値ではない)を1ずつ大きくした指標とすることができ、最適剛性指標(IFC)が7755であれば、調整剛性指標(IFC)は、7756、7766又は7866とすることができる。
【0071】
ただし、本実施形態では、調整部14cは、最適剛性指標に含まれる複数の剛性値のうち、シャフトの先端側の複数の位置(全ての位置ではない)における剛性値を異なるレベルだけ大きくすることにより、調整剛性指標を導出する。すなわち、シャフトの先端側の剛性値の変更の度合いに、傾斜をつける。この場合、例えば、調整剛性指標は、最適剛性指標を構成する最適ランク値KS1~KS4のうち先端側の2つの値を大きくした指標とし、このうち、最も先端側の値を2だけ大きくし、2番目に先端側の値を1だけ大きくした指標とすることができる。この例では、最適剛性指標(IFC)が7755であれば、調整剛性指標(IFC)は、7767となる。
【0072】
要望4が選択された場合に、以上のような調整剛性指標が算出されるのは、以下の理由からである。すなわち、本発明者らが検討したところによると、シャフトの先端が硬い程、ボールが逃げ易くなる。そのため、要望4を満たす推奨シャフトとしては、先端側の一部の剛性値を大きくしたシャフトを選択することが望ましい。なお、4桁のIFCであれば、先端側の2つの剛性値を大きくすることが望ましい。また、先端側の複数の剛性値を大きくする場合には、シャフトの先端側の剛性値の変更の度合いに、傾斜をつけることもでき、このとき、先端側へ向かう程、変更の度合いが大きくなるように、傾斜をつけることもできる。
【0073】
ステップS17では、調整部14cは、ゴルファーGに推奨されるべき推奨シャフトとして、調整剛性指標に合致するシャフトを決定する。より具体的には、調整部14cは、ステップS14と同様に、シャフトDB17内を検索して、調整剛性指標に合致する1又は複数本のシャフトを推奨シャフトとして抽出する。
【0074】
ステップS14~S17に続くステップS18では、画面作成部14bは、シャフト選択画面W2を更新し、
図9~
図12に示すように、シャフト選択画面W2上に、調整剛性指標及び推奨シャフトの両方を表示させる。
図9~
図12は、それぞれ、要望1~4に対応する画面例である。これらの画面例では、
図7の例と同じく、調整剛性指標(8866、6644、7743、7767)は、領域A1に文字及びグラフィック表示され、推奨シャフトは、領域A2内に一覧表示される。
【0075】
領域A2内では、推奨シャフトの名称の隣に、当該推奨シャフトを選択するボタンB3が表示される。画面作成部14bは、ユーザーによりボタンB3のいずれかが押下されたことを検知すると、シャフト選択画面W2を更新し、
図13~
図16に示すように、領域A1内に、当該ボタンB3に対応する推奨シャフトの剛性指標(IFC)を表示させる。
図13~
図16は、それぞれ、要望1~4に対応する画面例であり、それぞれ、
図9~
図12の画面において、1つのボタンB3が押下されたときの画面W2の例である。
図13~
図16の例では、領域A1内に、調整剛性指標(8866、6644、7743、7767)に加え、選択された推奨シャフトの剛性指標(7755、7755、7755、7766)が表示される。
【0076】
以上のステップS18により、ユーザーは、調整剛性指標及び推奨シャフトを把握することができる。なお、調整剛性指標とは、ゴルファーGの要望も加味した上で、ゴルファーGに推奨されるべき剛性指標である。また、推奨シャフトとは、ゴルファーGの要望も加味した上で、ゴルファーGに推奨されるべきシャフトである。このような調整剛性指標に合致する推奨シャフトを含むゴルフクラブは、ショットの飛距離を増大させたり、左右ブレを減少させたりする等、ゴルフスイングを改善することができる。従って、ゴルファーGは、ゴルフスイングを改善しつつ、自身の要望をより満たすことができるシャフトを容易に選択することができる。ステップS18の後、フィッティング処理は、終了する。
【0077】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0078】
<4-1>
上記実施形態では、ゴルフスイングを計測する計測機器2として、慣性センサユニット3及びカメラシステム5が用いられた。しかしながら、計測機器2の構成はこれに限らず、適宜変更することができる。例えば、三次元モーションキャプチャーシステムや距離画像センサー等を用いてもよいし、ここで例示された又はその他の計測機器の中から複数種類の計測機器を適宜選択し、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0079】
<4-2>
上記実施形態では、シャフトの剛性指標として、曲げ剛性が評価されたが、これに代えて、ねじれ剛性を評価してもよい。ねじれ剛性の値(以下、GJ値ということがある)も、シャフトの延びる方向に沿った複数の位置において評価することができる。すなわち、シャフトの延びる方向に沿った複数の位置におけるねじれ剛性の分布を、シャフトの剛性指標としてもよい。この場合、最適剛性指標(すなわち、ゴルファーGに適したGJ値である最適GJ値)を決定するための指標(特徴量)としては、最適GJ値との相関が認められ、計測データから算出可能な任意の指標を用いることができる。このような指標としては、例えば、特開2014-212862号公報に記載されているような、以下の指標を用いることができる。
【0080】
(1)角速度ωyが最大となるときからインパクトまでの単位時間あたりの角速度ωxの変化量の大きさ
(2)トップ付近での角速度ωzの変化量
(3)トップからダウンスイング途中であって角速度ωyが最大となるときまでの角速度ωzの変化量の大きさ
【0081】
また、上記実施形態では、シャフトの剛性指標として、シャフトの4つの位置における剛性値から構成される指標が例示されたが、シャフトの3つの位置における剛性値から構成される指標であってもよいし、シャフトの2つの位置における剛性値から構成される指標であってもよいし、シャフトの5つ以上の位置における剛性値から構成される指標であってもよい。
【0082】
<4-3>
上記実施形態では、シャフト選択画面W2上に、最適剛性指標及び候補シャフトの両方が表示されたが、いずれか一方のみを表示することもできる。同様に、上記実施形態では、シャフト選択画面W2上に、調整剛性指標及び推奨シャフトの両方が表示されたが、いずれか一方のみを表示することもできる。
【符号の説明】
【0083】
100 フィッティングシステム
1 コンピュータ(フィッティング装置)
13a プログラム(フィッティングプログラム)
14a 解析部
14b 画面作成部
14c 調整部
2 計測機器
3 慣性センサユニット(計測機器)
4 テストクラブ
40 シャフト
41 ヘッド
42 グリップ
5 カメラシステム(計測機器)
G ゴルファー