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特許7488999エアジェット織機の異常検知方法及びエアジェット織機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】エアジェット織機の異常検知方法及びエアジェット織機
(51)【国際特許分類】
   D03D 47/30 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
D03D47/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020073198
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169672
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-07-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】八木 大輔
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-240249(JP,A)
【文献】国際公開第2017/076600(WO,A1)
【文献】特開2019-105005(JP,A)
【文献】特開平04-241135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 47/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインノズル及びサブノズルからのエア噴射により緯糸飛走経路を経て緯入れされる緯糸の飛走状態を、前記緯糸飛走経路に設けられた飛走センサで検知するエアジェット織機における異常検知方法であって、
複数の前記メインノズルのうち選択されたいずれか1つの前記エア噴射によりそれぞれ引き出された複数の緯糸が、共通の前記サブノズルからの前記エア噴射により共通の前記緯糸飛走経路を経て緯入れされ、
前記サブノズルの各群に対応して配設されているサブバルブの開度は所定の値に設定した状態であり、
前記緯糸の緯糸測長貯留部からの解除タイミングと、前記飛走センサの緯糸検出信号に基づく緯糸到達タイミングとの差であるバイアス角について、前記複数の緯糸それぞれについての前記バイアス角が所定の閾値を超えたときに、サブバルブ系統に生じた異常があることを検知する
エアジェット織機における異常検知方法。
【請求項2】
前記飛走センサは、前記緯糸飛走経路における織幅の下流側の織端に設けられたエンドセンサと、前記緯糸飛走経路における織幅の中央よりも前記メインノズルとは反対側であって、前記エンドセンサよりも上流側に設けられた織幅内センサであり、
前記エンドセンサの位置における前記バイアス角としての織端バイアス角と、前記織幅内センサの位置における前記バイアス角としての織幅内バイアス角とについて、前記複数の緯糸それぞれについての前記織端バイアス角および/または前記織幅内バイアス角が前記所定の閾値を超えたときに、前記サブバルブ系統に生じた異常があることを検知する
請求項1に記載のエアジェット織機における異常検知方法。
【請求項3】
前記織端バイアス角と前記織幅内バイアス角とのうち、前記織幅内バイアス角が前記所定の閾値を超えたとき、前記織幅内センサの上流側の前記サブバルブ系統に生じた異常があることを検知する
請求項2に記載のエアジェット織機における異常検知方法。
【請求項4】
前記織端バイアス角と前記織幅内バイアス角とのうち、前記織端バイアス角が前記所定の閾値を超えたとき、前記織幅内センサの下流側の前記サブバルブ系統に生じた異常があることを検知する
請求項2に記載のエアジェット織機における異常検知方法。
【請求項5】
前記複数の緯糸について、前記バイアス角が前記所定の閾値を超える変化が前記複数の緯糸で一致しないとき、前記サブバルブ系統以外に生じた前記異常があることを検知する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のエアジェット織機における異常検知方法。
【請求項6】
メインノズル及びサブノズルからのエア噴射により、緯糸飛走経路を経て緯入れされる緯糸の飛走状態を、前記緯糸飛走経路に設けられた飛走センサで検知するエアジェット織機であって、
サブバルブ系統に生じる異常を検知する制御部を備え、
前記制御部は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の異常検知方法を実行することにより、前記サブバルブ系統に生じた異常があることを検知する
エアジェット織機。
【請求項7】
前記制御部から指示された内容を報知する報知部を更に備え、
前記報知部は、前記制御部において検知された前記サブバルブ系統の前記異常の内容を報知する
請求項に記載のエアジェット織機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアジェット織機の異常検知方法及びエアジェット織機に関する。
【背景技術】
【0002】
エアジェット織機は、給糸部の緯糸を緯糸測長貯留部において貯留し、貯留された緯糸をメインノズルにより解除して緯入れを開始し、緯入れされた緯糸をサブノズルにより織幅内に搬送し、緯入れを終了するように構成されている。
【0003】
この種のエアジェット織機は、圧縮エアをメインノズルとサブノズルから噴射して緯糸の飛走を制御しており、適切なエア噴射が重要である。したがって、圧縮エアをノズルに供給するバルブを適切に管理する必要がある。例えば、特許文献1には、タンクの減圧特性から、エアジェット織機のバルブ異常を検知する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-83016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアジェット織機のバルブの異常としては、(1)バルブが開放状態のままになり常時エアが噴射した状態になる場合、(2)バルブの開放がうまくいかずエア噴射ができないか全開状態にならない場合、の二つの場合がある。(1)のバルブが開放状態のままになる場合はエア漏れが発生するため、上述した特許文献1の手法によりエア漏れを検知することができる。
【0006】
一方、(2)において、サブノズルにエアを供給するサブバルブが適切に開かない状態であると、サブノズルからのエア噴射が減少する。しかし、メインノズルからのエア噴射圧を増大させることで、緯糸を端部まで飛走させることが可能になっている。
【0007】
このため、緯入れの安定性に影響を与えるサブノズルからのエア噴射について、異常があることを検知することが難しくなっている。したがって、エアジェット織機において、メインノズルからのエア噴射の制御にかかわらず、サブバルブ系統に生じた異常を検知できることが望まれている。ここで、サブバルブ系統とはサブバルブ、サブノズル及びその配管であり、サブバルブ系統に生じた異常とは、サブバルブ、サブノズル及びその配管に生じた不具合をさす。
【0008】
本開示は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、サブバルブ系統に生じた異常を検知することが可能なエアジェット織機の異常検知方法及びエアジェット織機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示におけるエアジェット織機における異常検知方法は、メインノズル及びサブノズルからのエア噴射により緯糸飛走経路を経て緯入れされる緯糸の飛走状態を、緯糸飛走経路に設けられた飛走センサで検知するエアジェット織機における異常検知方法であって、複数のメインノズルのうち選択されたいずれか1つのエア噴射によりそれぞれ引き出された複数の緯糸が、共通のサブノズルからのエア噴射により共通の緯糸飛走経路を経て緯入れされ、サブノズルの各群に対応して配設されているサブバルブの開度は所定の値に設定した状態であり、緯糸の緯糸測長貯留部からの解除タイミングと、飛走センサの緯糸検出信号に基づく緯糸到達タイミングとの差であるバイアス角について、複数の緯糸それぞれについてのバイアス角が所定の閾値を超えたときに、サブバルブ系統に生じた異常があることを検知する。
【0010】
本開示におけるエアジェット織機は、複数のメインノズルのうち選択されたいずれか1つのエア噴射によりそれぞれ引き出された複数の緯糸が、共通のサブノズルからのエア噴射により共通の緯糸飛走経路を経て緯入れされ、複数の緯糸の飛走状態を、緯糸飛走経路に設けられた飛走センサで検知するエアジェット織機であって、サブバルブの異常を検知する制御部と、異常を報知する報知部と、を備え、制御部は、緯糸測長貯留部からの緯糸解除タイミングと、飛走センサの緯糸検出信号に基づく緯糸到達タイミングとの差であるバイアス角について、複数の緯糸それぞれについてのバイアス角が所定の閾値を超えたときに、サブバルブ系統に生じた異常があることを検知する。制御部から指示された内容を報知する報知部を更に備え、報知部は、制御部において検知された異常の内容を報知する。
【0011】
飛走センサは、緯糸飛走経路における織幅の下流側の織端に設けられたエンドセンサと、緯糸飛走経路における織幅の中央よりもメインノズルとは反対側であって、エンドセンサよりも上流側に設けられた織幅内センサであり、エンドセンサの位置におけるバイアス角としての織端バイアス角と、織幅内センサの位置におけるバイアス角としての織幅内バイアス角とについて、複数の緯糸それぞれについての織端バイアス角および/または織幅内バイアス角が所定の閾値を超えたときに、サブバルブ系統に生じた異常があることを検知する。
【0013】
織端バイアス角と織幅内バイアス角とのうち、織幅内バイアス角が所定の閾値を超えたとき、織幅内センサの上流側のサブバルブ系統に生じた異常があることを検知する。
【0014】
織端バイアス角と織幅内バイアス角とのうち、織端バイアス角が所定の閾値を超えたとき、織幅内センサの下流側のサブバルブ系統に生じた異常があることを検知する。
【0015】
織幅内バイアス角と織端バイアス角とが所定の閾値を超えたとき、織幅内センサの直前のサブバルブ系統に生じた異常があることを検知する。
【0016】
複数の緯糸ついて、バイアス角が所定の閾値を超える変化が複数の緯糸で一致しないとき、サブバルブ系統以外に生じた異常があることを検知する。
【発明の効果】
【0017】
このエアジェット織機の異常検知方法及びエアジェット織機によれば、サブバルブ系統に生じた異常を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1における飛走曲線と解除曲線から算出されるバイアス角を説明する説明図である。
図3】実施の形態1におけるバイアス角の変化の様子を説明する説明図である。
図4】実施の形態1におけるバイアス角の変化の様子を説明する説明図である。
図5】実施の形態1におけるバイアス角の変化の様子を説明する説明図である。
図6】実施の形態1における異常検知の処理手順を示すフローチャートである。
図7】実施の形態1における設定画面を説明する説明図である。
図8】実施の形態1における設定画面の自動入力を説明する説明図である。
図9】実施の形態1における設定画面の自動入力後の状態を説明する説明図である。
図10】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
図11】実施の形態1における警告画面を説明する説明図である。
図12】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
図13】実施の形態1における警告画面を説明する説明図である。
図14】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
図15】実施の形態1における警告画面を説明する説明図である。
図16】実施の形態1における設定画面を説明する説明図である。
図17】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
図18】実施の形態1における情報画面を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、エアジェット織機及びその異常検知方法の実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0020】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置100の構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入装置100の構成を示すブロック図である。なお、本明細書では、緯糸を経糸開口内に緯入れし、緯糸を搬送する緯入れ方向に対し、緯入れ方向と反対側を上流、緯入れ方向側を下流とする。また、圧縮エアの流れる方向に対し、源流側を上流、源流と反対側を下流とする。
【0021】
[緯入装置100の構成]
図1に示される緯入装置100は、主に、制御部110、第1メイン系統MA、第2メイン系統MB、サブ系統S、筬150、及び飛走センサ170、を備える。なお、図1に示す緯入装置100は、第1メイン系統MAと第2メイン系統MBとの2組のメイン系統を有する2色緯入装置を具体例として示すが、3組以上のメイン系統を有する多色緯入装置であってもよい。
【0022】
第1メイン系統MAは、給糸部120A、緯糸測長貯留部130A、緯入れノズル140A、を備える。第2メイン系統MBは、給糸部120B、緯糸測長貯留部130B、緯入れノズル140B、を備える。制御部110には、CPU111と、ファンクションパネル112とが設けられている。CPU111は、緯入装置100における各種の制御を実行し、特に、異常検知方法を実行することによりサブバルブ系統に生じた異常を検知する。ファンクションパネル112は、異常を報知する報知部であり、表示機能及び入力機能を有し、CPU111から指示された内容に基づいて各種情報を表示し、入力された情報をCPU111に伝達する。
【0023】
第1メイン系統MAにおいて、給糸部120Aは、緯糸測長貯留部130Aの上流側に設けられ、緯糸YAを保持している。給糸部120Aの緯糸YAは、緯糸測長貯留部130Aにより引き出される。
【0024】
緯糸測長貯留部130Aには、貯留ドラム131Aと、緯糸係止ピン132Aと、バルーンセンサ133Aとが設けられている。貯留ドラム131Aは、給糸部120Aの緯糸YAを引き出し、巻き付けられた状態で貯留する。緯糸係止ピン132A及びバルーンセンサ133Aは、貯留ドラム131Aの周囲に配設されている。バルーンセンサ133Aは、緯糸係止ピン132Aに対して緯糸YAの解除方向側に並べて配置されている。
【0025】
緯糸係止ピン132Aは、制御部110に予め設定された織機回転角度において、貯留ドラム131Aに貯留された緯糸YAを解除する。緯糸係止ピン132Aによる緯糸YAの解除が行われるタイミングは、緯入れ開始タイミングである。
【0026】
バルーンセンサ133Aは、緯入れ中に貯留ドラム131Aから解除される緯糸YAを検出し、制御部110に緯糸解除信号を発信する。制御部110は、予め設定された回数の緯糸解除信号を受信すると、緯糸係止ピン132Aを作動する。本実施の形態では、緯糸解除信号の受信に関して予め設定された回数として、3回を想定している。緯糸係止ピン132Aは、貯留ドラム131Aから解除される緯糸YAを係止し、緯入れを終了させる。
【0027】
緯糸係止ピン132Aが緯糸YAを係止するための作動タイミングは、織幅TLに相当する長さの緯糸YAを貯留ドラム131Aに貯留するために要する巻き付け回数に応じて設定されている。本実施形態では、貯留ドラム131Aに3巻された緯糸YAの長さが織幅TLに相当するため、制御部110は、緯糸係止ピン132Aの緯糸解除信号を3回受信すると、緯糸YAを係止する動作信号を緯糸係止ピン132Aに発信するように設定されている。緯糸係止ピン132Aの緯糸検出信号は、貯留ドラム131Aからの緯糸YAの解除信号であり、制御部110において、エンコーダから得られる織機回転角度信号に基づき、緯糸解除タイミングとして認識される。
【0028】
緯入れノズル140Aは、タンデムノズル141Aと、メインノズル142Aとを有する。タンデムノズル141Aは、圧縮エアの噴射により、貯留ドラム131Aの緯糸YAを引き出す。メインノズル142Aは、圧縮エアの噴射により、緯糸YAを筬150の緯糸飛走経路150aに緯入れする。
【0029】
タンデムノズル141Aの上流側には、緯入れ終了前に、飛走する緯糸YAを制動するブレーキ147Aが設けられている。
【0030】
メインノズル142Aは、配管P146Aを介してメインバルブ146Aに接続されている。メインバルブ146Aは、配管P144Aを介してメインタンク144Aに接続されている。タンデムノズル141Aは、配管P145Aを介してタンデムバルブ145Aに接続されている。タンデムバルブ145Aは、配管P144Aを介してメインバルブ146Aと共通のメインタンク144Aに接続されている。メインタンク144Aは、織布工場に設置されたエアコンプレッサから供給された圧縮エアが、メインレギュレータ143Aにより設定圧力に調整され、配管P143Aを介して供給されて貯蔵される。
【0031】
第2メイン系統MBにおいても、第1メイン系統MAと同様にして、緯入れノズル140Bにおいて、圧縮エアの噴射により、貯留ドラム131Bの緯糸YBを引き出し、緯糸YBを筬150の緯糸飛走経路150aに緯入れする。なお、第2メイン系統MBにおいて、第1メイン系統MAと同様な構成と動作についての重複した詳細説明を省略する。なお、第1メイン系統MAと第2メイン系統MBとにおいて、メインレギュレータ143Aと143B、メインタンク144Aと144B等は、複数系統のものをいずれか一系統に集約し、共通して使用することも可能である。
【0032】
筬150は、第1メイン系統MAの緯入れノズル140A及び第2メイン系統MBの緯入れノズル140Bの下流側に配設され、複数の筬羽から構成され、緯糸飛走経路150aを備える。緯糸飛走経路150aに沿って、サブノズル160を構成する複数のノズルと、飛走センサ170とが配置されている。
【0033】
サブ系統Sにおいて、サブノズル160は、筬150の緯糸飛走経路150aに沿って配設され、複数のノズルにより構成されている。サブノズル160は、一例として6群に分けられ、各群は、4本のノズルにより構成されている。サブノズル160の各群に対応して6個のサブバルブ165が配設されている。サブノズル160は、それぞれ配管166を介して各群のサブバルブ165に接続されている。各群のサブバルブ165は、共通のサブタンク164に接続されている。ここで、サブノズル160、サブバルブ165、及び配管166は、サブバルブ系統SVを構成している。
【0034】
サブタンク164は、配管163によりサブレギュレータ162に接続されている。また、サブレギュレータ162は、配管161により、メインレギュレータ143Aとメインタンク144A間の配管P143Aに接続されている。このため、サブタンク164は、メインレギュレータ143A経由で、サブレギュレータ162により設定圧力に調整された圧縮エアが貯蔵される。
【0035】
飛走センサ170は、織幅内センサ171と、エンドセンサ172とを備える。織幅内センサ171は、エンドセンサ172よりも上流側であって、緯糸飛走経路150aにおける織幅TLの中央よりもメインノズル142A及び142Bとは反対側に配置され、到達した緯糸YA及びYBを光学的に検出する。織幅内センサ171は、緯糸YA及びYBを検出して生成した緯糸検出信号を制御部110に伝達する。織幅内センサ171による緯糸検出信号は、制御部110において、エンコーダから得られる織機回転角度信号に基づき、緯入れされた緯糸YA及びYBの先端が織幅内センサ171の設置位置に到達した緯糸中間到達タイミングISとして認識される。
【0036】
エンドセンサ172は、緯糸飛走経路150aの下流側であって、織幅TLよりも下流側に配置され、光学的に到達した緯糸YA及びYBを検出する。エンドセンサ172は、緯糸YA及びYBを検出して生成した緯糸検出信号を制御部110に伝達する。エンドセンサ172による緯糸検出信号は、緯糸YA及びYBの到達信号であり、制御部110において、エンコーダから得られる織機回転角度信号に基づき緯入れ終了タイミングIEとして認識される。
【0037】
メインノズル142A及び142B、筬150、並びにサブノズル160は、図示されないスレイ上に配設され、エアジェット織機の前後方向に往復揺動される。また、給糸部120A及び120B、緯糸測長貯留部130A及び130B、タンデムノズル141A及び141B、並びにブレーキ147A及び147Bは、図示されないエアジェット織機のフレーム又は床面に取り付けられたブラケットに固定されている。
【0038】
以上の構成において、第1メイン系統MAのメインバルブ146A、タンデムバルブ145A、ブレーキ147A、及び第2メイン系統MBのメインバルブ146B、タンデムバルブ145B、ブレーキ147B、並びにサブバルブ165は、制御部110により、作動タイミングと作動期間が制御される。そして、複数のメインノズル142Aと142Bとのうち選択されたいずれか1つのエア噴射によりそれぞれ引き出された複数の緯糸YAと緯糸YBとが、共通のサブノズル160からのエア噴射により、共通の緯糸飛走経路150aを経て緯入れされる。
【0039】
第1メイン系統MAでは、タンデムバルブ145A及びメインバルブ146Aは、緯糸係止ピン132Aが作動する緯入れ開始タイミングよりも早いタイミングで制御部110から作動指令信号が与えられ、メインノズル142A及びタンデムノズル141Aから圧縮エアが噴射される。ブレーキ147Aは、緯糸係止ピン132Aが作動して貯留ドラム131Aの緯糸YAを係止する緯入れ終了タイミングIEよりも早い時期に、制御部110から作動指令信号が出力される。ブレーキ147Aは、高速で飛走する緯糸YAを制動して緯糸YAの飛走速度を低下させ、緯入れ終了タイミングIEにおける緯糸YAの衝撃を緩和する。
【0040】
第2メイン系統MBでは、タンデムバルブ145B及びメインバルブ146Bは、緯糸係止ピン132Bが作動する緯入れ開始タイミングよりも早いタイミングで制御部110から作動指令信号が与えられ、メインノズル142B及びタンデムノズル141Bから圧縮エアが噴射される。ブレーキ147Bは、緯糸係止ピン132Bが作動して貯留ドラム131Bの緯糸YBを係止する緯入れ終了タイミングIEよりも早い時期に、制御部110から作動指令信号が出力される。ブレーキ147Bは、高速で飛走する緯糸YBを制動して緯糸YBの飛走速度を低下させ、緯入れ終了タイミングIEにおける緯糸YBの衝撃を緩和する。
【0041】
以上の説明において、緯入装置100は2組の第1メイン系統MAと第2メイン系統MBとが具体例として示されているが、3組以上のメイン系統(MA,MB,MC、…)が配設された多色緯入装置として構成してもよい。また、多色緯入装置の概念には、複数の緯糸としての緯糸YA及びYBが異なる色である場合だけでなく、緯糸YA及びYBとに同じ色を使用する場合も含まれる。なお、サブ系統Sは、2組以上のメイン系統MA,MB,…に対して共通に使用される。
【0042】
[異常検知の原理]
次に、実施の形態1における緯入装置100の異常検知の原理について、図2以降を参照して説明する。なお、実施の形態1の前提として、メインバルブ146A及びメインバルブ146Bの開度は自動設定であり、サブバルブ165の開度は所定の値に設定した状態であるとする。
【0043】
まず、図2を参照してバイアス角について説明する。図2は、実施の形態1における飛走曲線と解除曲線から算出されるバイアス角を説明する説明図である。バイアス角は、緯糸測長貯留部130A及び130Bからの緯糸解除タイミングと、飛走センサ170の緯糸検出信号に基づく緯糸到達タイミングとの差を意味する。
【0044】
図2において、横軸は織機回転角度、縦軸は織幅TL内の緯入れ方向位置である。この図2では、多色のうちの第1色の緯糸YAについて、解除曲線(1)と飛走曲線(1)を示している。
【0045】
図2において、解除曲線(1)は、緯糸YAについての緯糸解除タイミングを示している。この解除曲線(1)は、ほぼ直線の特性を示している。飛走曲線(1)は、緯糸YAの実測した飛走状態を示している。この飛走曲線(1)は、緯糸YAについて、織幅内センサ171の位置とエンドセンサ172の位置の間でブレーキ147Aが作動し、ブレーキ作動以後に緯糸YAの速度が低下して傾きが緩やかになった様子を示している。また、図示しないが、第2色の緯糸YBについても、同様な解除曲線(2)と飛走曲線(2)とを得ることができる。なお、この実施の形態1の説明では、緯糸YAと緯糸YBとが異色であっても同色であっても、緯糸YAの側を第1色、緯糸YBの側を第2色と呼ぶことにする。
【0046】
ここで、織幅内センサ171の位置における、解除曲線(1)と飛走曲線(1)との横軸方向のずれであるタイミング差が、織幅内バイアス角である。以下、この織幅内バイアス角のことをTiバイアスと呼ぶ。同様に、エンドセンサ172の位置における、解除曲線(1)と飛走曲線(1)との横軸方向のずれであるタイミング差が、織端バイアス角である。以下、この織端バイアス角のことをTWバイアスと呼ぶ。
【0047】
次に、図3から図5を参照して、サブバルブ系統SVの搬送能力(以下、「サブ系搬送能力」とする)とバイアス角とが、異常の有無に応じて変化するパターンを説明する。ここで、サブバルブ系統SVとは、サブノズル160、サブバルブ165、及びその配管166であり、サブバルブ系統SVに生じた異常とは、サブノズル160、サブバルブ165、及びその配管166に生じた不具合をさす。この実施の形態1では、サブ系搬送能力とバイアス角との変化のパターンに応じて、サブバルブ系統SVに異常が生じた領域を特定することを説明する。なお、ここでは、多色が2色である場合を具体例にする。
【0048】
図3は、実施の形態1におけるバイアス角の変化の様子を説明する説明図である。織幅内センサ171の上流側のサブバルブ系統SVに何らかの異常があると、図3のようにバイアス角が変化する。
【0049】
図3において、実線で示されるTWバイアスは、第1色のTWバイアス(1)と第2色のTWバイアス(2)との平均である。ここで、サブ系搬送能力の変化にかかわらず、TWバイアスの変化は小さい。実線で示されるTiバイアスは、第1色のTiバイアス(1)と第2色のTiバイアス(2)との平均である。ここで、サブ系搬送能力の変化に伴い、Tiバイアスは大きく変化している。なお、バイアス角の変化については、バルブ標準開度におけるバイアス角の範囲を基準として、後述するように、上限と下限を所定の閾値と定め、この閾値を超えたときに異常があると判定することができる。
【0050】
この図3の場合、織幅内センサ171位置のTiバイアス角に異常が認められるため、織幅内センサ171の上流に存在するサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに異常があると考えられる。すなわち、制御部110は、織幅内センサ171の上流のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに何らかの異常が生じたことを検知する。
【0051】
図4は、実施の形態1におけるバイアス角の変化の様子を説明する説明図である。織幅内センサ171の下流側のサブバルブ系統SVに異常があると図4のようにバイアス角が変化する。
【0052】
図4において、実線で示されるTWバイアスは、第1色のTWバイアス(1)と第2色のTWバイアス(2)との平均である。ここで、サブ系搬送能力の変化に伴い、TWバイアスは大きく変化している。一方、実線で示されるTiバイアスは、第1色のTiバイアス(1)と第2色のTiバイアス(2)との平均であり、サブ系搬送能力の変化にかかわらずTiバイアスの変化は小さい。
【0053】
この図4の場合、エンドセンサ172位置のTWバイアスに異常が認められるため、織幅内センサ171とエンドセンサ172の間に存在するサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに異常があると考えられる。すなわち、制御部110は、織幅内センサ171とエンドセンサ172の間のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに何らかの異常が生じたことを検知する。
【0054】
図5は、実施の形態1におけるバイアス角の変化の様子を説明する説明図である。織幅内センサ171の直前のサブ系搬送能力に異常があると図5のようにバイアス角が変化する。
【0055】
図5において、実線で示されるTWバイアスは、第1色のTWバイアス(1)と第2色のTWバイアス(2)との平均である。ここで、サブ系搬送能力の変化に伴い、TWバイアスは大きく変化している。実線で示されるTiバイアスは、第1色のTiバイアス(1)と第2色のTiバイアス(2)との平均である。ここで、サブ系搬送能力の変化に伴い、Tiバイアスも大きく変化している。
【0056】
この図5の場合、織幅内センサ171の位置のTiバイアスとエンドセンサ172位置のTWバイアス角の両方に異常が認められるため、織幅内センサ171の直前の上流付近に存在するサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに異常があると考えられる。すなわち、制御部110は、織幅内センサ171の直前の上流付近のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに何らかの異常が生じたことを検知する。
【0057】
[異常検知の手順]
次に、実施の形態1における緯入装置100の異常検知方法の処理手順について、図6を参照して説明する。図6は、実施の形態1における異常検知の処理手順を示すフローチャートである。
【0058】
ステップS101において、制御部110は、ファンクションパネル112からの入力値または実測値を用い、異常検知のための各種パラメータを設定する。このパラメータとしては、第1色と第2色のTWバイアスとTiバイアスそれぞれについて、目標値、下限値、上限値が該当する。なお、上限値と下限値は、上述した判定のための閾値に相当する。この後、処理がステップS102へと進む。
【0059】
ステップS102において、制御部110は、図2に示した解除曲線と飛走曲線とから、第1色と第2色のTWバイアスとTiバイアスを取得する。この後、処理がステップS103へと進む。
【0060】
ステップS103において、制御部110は、TWバイアスとTiバイアスの変化が、多色の各色で一致しているか否かを判定する。
【0061】
TWバイアスとTiバイアスの変化が、多色の各色で一致していない場合、処理がステップS104へと進む。ステップS104において、制御部110は、TWバイアスとTiバイアスの変化が多色の各色で一致していないため、サブバルブ系統SV以外の異常と判定する。この後、処理がステップS111へと進む。
【0062】
一方、ステップS103において、TWバイアスとTiバイアスの変化が、多色の各色で一致していると判定された場合、サブバルブ系統SVのいずれかの部位に異常が生じており、その異常の箇所を特定するため、処理がステップS105へと進む。ステップS105において、制御部110は、Tiバイアスが閾値を超えているかを判定する。Tiバイアスが閾値を超えていると判定された場合、処理はステップS106へと進む。ステップS106において、制御部110は、TWバイアスが閾値を超えているかを判定する。
【0063】
一方、ステップS105において、Tiバイアスが閾値を超えていないと判定されれば処理はステップS107へと進む。ステップS107において、制御部110は、TWバイアスが閾値を超えているかを判定する。
【0064】
ステップS106においてTWバイアスが閾値を超えていないと判定されれば、Tiバイアスのみが閾値を超えているため、処理がステップS108に進む。ステップS108において、制御部110は、織幅内センサ171の上流のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに何らかの異常が生じたことを検知する。この後、処理がステップS111へと進む。
【0065】
ステップS106においてTWバイアスが閾値を超えていると判定されれば、TiバイアスとTWバイアスの両方が閾値を超えているため、ステップS109に進む。ステップS109において、制御部110は、織幅内センサ171の直前の上流付近のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに何らかの異常が生じたことを検知する。この後、処理がステップS111へと進む。
【0066】
ステップS107においてTWバイアスが閾値を超えていると判定されれば、TWバイアスのみが閾値を超えているため、ステップS110に進む。ステップS110において、制御部110は、織幅内センサ171とエンドセンサ172の間のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに何らかの異常が生じたことを検知する。この後、処理がステップS111へと進む。
【0067】
ステップS111において、制御部110は、バイアス角に基づいて判定した異常の内容を、ファンクションパネル112に表示し、必要に応じて警告を発する。この後、処理がステップS112へと進む。
【0068】
一方、ステップS107においてTWバイアスが閾値を超えていないと判断されれば、ステップS105においてTiバイアスが閾値を超えていないと判断されており、TiバイアスとTWバイアスとが共に閾値を超えていないため、処理がステップS112へと進む。
【0069】
ステップS112において、制御部110は、製織を継続するか終了するかを判断する。製織を終了する場合、図6のフローチャートの処理が終了する。一方、製織を継続する場合、処理がステップS102に戻る。すなわち、制御部110は、製織終了まで、緯入装置100の異常検知として、ステップS102~S111の処理を繰り返し実行する。
【0070】
[設定画面の設定と情報表示(1)]
次に、実施の形態1における緯入装置100の異常検知を実行する際のファンクションパネル112の設定画面の具体例を図7により説明する。図7は、実施の形態1における設定画面112Pを説明する説明図である。
【0071】
図7に示す設定画面112Pは、警告範囲自動補正スイッチ(a)、エンドセンサ172の計測値TWの警告オンオフ切り替えスイッチ(b)、TWバイアスの警告オンオフ切り替えスイッチ(c)、Tiバイアスの警告オンオフ切り替えスイッチ(d)、第1色の計測値TWの下限値(e)、第1色の計測値TWの上限値(f)、第1色の計測値TWの実測値(g)、第2色の計測値TWの下限値(h)、第2色の計測値TWの上限値(i)、第2色の計測値TWの実測値(j)、第1色のTWバイアスの下限値(k)、第1色のTWバイアスの上限値(m)、第1色のTWバイアスの実測値(n)、第2色のTWバイアスの下限値(o)、第2色のTWバイアスの上限値(p)、第2色のTWバイアスの実測値(q)、第1色のTiバイアスの下限値(r)、第1色のTiバイアスの上限値(s)、第1色のTiバイアスの実測値(t)、第2色のTiバイアスの下限値(u)、第2色のTiバイアスの上限値(v)、及び第2色のTiバイアスの実測値(w)についての画面表示、選択操作、及び入力が可能である。
【0072】
この設定画面112Pにおいて、(e)、(f)、(h)、(i)、(k)、(m)、(o)、(p)、(r)、(s)、(u)、及び(v)は、目標範囲の上限値及び下限値として、数値の手動入力が可能である。一方、この設定画面112Pにおいて、警告範囲自動補正スイッチ(a)が押されると、制御部110は、現時点で測定されている実測値(g)、(j)、(n)、(q)、(t)、及び(w)を読み込み、実測値を中心として、目標範囲の上限値と下限値とを自動入力する。
【0073】
設定画面112Pにおける自動入力について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、実施の形態1における設定画面112Pの自動入力を説明する説明図である。図9は、実施の形態1における設定画面112Pの自動入力後の状態を説明する説明図である。
【0074】
サブノズル160の噴射圧が適正な状態に保たれているとき、図8の設定画面112Pにおいて、警告範囲自動補正スイッチ(a)が押されると、第1色の計測値TWの実測値(g)の値「240」、第2色の計測値TWの実測値(j)の値「240」、第1色のTWバイアスの実測値(n)の値「5.0」、第2色のTWバイアスの実測値(q)の値「5.3」、第1色のTiバイアスの実測値(t)の値「3.4」、第2色のTiバイアスの実測値(w)の値「3.8」を、制御部110が読み込む。
【0075】
そして、制御部110は、読み込んだ実測値を基準にして、下限値と上限値とを以下の図9の設定画面112Pに示す具体例のように設定する。なお、基準値に対する下限と上限の範囲は任意の値に定めることができる。
【0076】
制御部110は、第1色の計測値TWの実測値(g)の値「240」を基準にして第1色計測値TW下限値(e)を基準値-25の215に設定し、第1色計測値TW上限値(f)を基準値+25の265に設定する。同様に、制御部110は、第2色の計測値TWの実測値(j)の値「240」を基準にして第2色計測値TW下限値(h)を基準値-25の215に設定し、第3色計測値TW上限値(i)を基準値+25の265に設定する。
【0077】
同様に、制御部110は、第1色のTWバイアス実測値(n)の値「5.0」を基準にして、第1色TWバイアス下限値(k)を基準値と等しい5.0に設定し、第1色TWバイアス上限値(m)を基準値+2.0の7.0に設定する。同様に、制御部110は、第2色のTWバイアス実測値(q)の値「5.3」を基準にして、第2色TWバイアス下限値(o)を基準値と等しい5.3に設定し、第2色TWバイアス上限値(p)を基準値+2.0の7.3に設定する。
【0078】
同様に、制御部110は、第1色のTiバイアス実測値(t)の値「3.4」を基準にして、第1色Tiバイアス下限値(r)を基準値と等しい3.4に設定し、第1色Tiバイアス上限値(s)を基準値+1.0の4.4に設定する。同様に、制御部110は、第2色のTiバイアス実測値(w)の値「3.8」を基準にして、第2色Tiバイアス下限値(u)を基準値と等しい3.8に設定し、第2色Tiバイアス上限値(v)を基準値+1.0の4.8に設定する。なお、ここに用いた数値は一例であり変更が可能である。
【0079】
次に、実施の形態1における緯入装置100の異常検知を実行する際に、異常ありと判定された場合のファンクションパネル112の情報表示について、表示の具体例を図10図15を用いて説明する。
【0080】
図10図11を用いて、異常が検知された場合のファンクションパネル112の情報表示の様子を説明する。図10は、実施の形態1における情報画面112P1を説明する説明図である。図11は、実施の形態1における警告画面112P2を説明する説明図である。
【0081】
緯入装置100の動作時において、図10の情報画面112P1に示すように、第1色のTiバイアス実測値(t)と、第2色のTiバイアス実測値(w)とが上限値を超えた状態を具体例として示す。この図10に示す状態は、図6のフローチャートにおけるステップS109の異常検知状態に該当する。このため、制御部110は、織幅内センサ171の直前の上流付近のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに何らかの異常があることを、図11の警告画面112P2によりユーザまたは管理者に報知する。例えば、制御部110内のCPU111は、図11に示すように、「カラー1、カラー2のTiバイアスが許容範囲を超えました。織幅内センサの上流側のサブバルブ系統に異常が発生した可能性があります。サブバルブ、サブノズル、配管系統を確認して下さい。」などメッセージを含む警告画面112P2をファンクションパネル112に表示するよう制御する。また、制御部110内のCPU111は、ファンクションパネル112に、警告画面112P2を情報画面112P1と切り替え表示するか、または、情報画面112P1の上にポップアップ表示により警告画面112P2を表示するように制御する。
【0082】
図12図13を用いて、異常が検知された場合のファンクションパネル112の情報表示の他の様子を説明する。図12は、実施の形態1における情報画面112P1を説明する説明図である。図13は、実施の形態1における警告画面112P2を説明する説明図である。
【0083】
緯入装置100の動作時において、図12の情報画面112P1に示すように、第1色のTWバイアス実測値(n)と、第2色のTWバイアス実測値(q)とが上限値を超えた状態を具体例として示す。この図12に示す状態は、図6のフローチャートにおけるステップS110の異常検知状態に該当する。このため、制御部110は、織幅内センサ171の下流側のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに何らかの異常があることを、図13の警告画面112P2によりユーザまたは管理者に報知する。
【0084】
例えば、制御部110内のCPU111は、図13に示すように、「カラー1、カラー2のTWバイアスが許容範囲を超えました。織幅内センサの下流側のサブバルブ系統に異常が発生した可能性があります。サブバルブ、サブノズル、配管系統を確認して下さい。」などメッセージを含む警告画面112P2をファンクションパネル112に表示するよう制御する。また、制御部110内のCPU111は、ファンクションパネル112に、警告画面112P2を情報画面112P1と切り替え表示するか、または、情報画面112P1の上にポップアップ表示により警告画面112P2を表示するように制御する。
【0085】
図14図15を用いて、異常が検知された場合のファンクションパネル112の情報表示の更に他の様子を説明する。図14は、実施の形態1における情報画面112P1を説明する説明図である。図15は、実施の形態1における警告画面112P2を説明する説明図である。
【0086】
緯入装置100の動作時において、図14の情報画面112P1に示すように、第1色のみでTiバイアス実測値(t)が上限値を超えた状態を具体例として示す。この図14に示す状態は、図6のフローチャートにおけるステップS104の異常検知状態に該当する。このため、制御部110は、サブバルブ系統SV以外、例えば第1色の緯糸YAに何らかの異常があることを、図15の警告画面112P2によりユーザまたは管理者に報知する。
【0087】
例えば、制御部110内のCPU111は、図15に示すように、「カラー1のTiバイアスが許容範囲を超えました。サブバルブ系統以外に異常が発生している可能性があります。カラー1の緯糸を確認して下さい。」などメッセージを含む警告画面112P2をファンクションパネル112に表示するよう制御する。なお、4色以上の緯糸を使用する場合は、いずれか2色のTWバイアスとTiバイアスの変化により、同様に緯糸における異常の有無を検知することができる。
【0088】
[設定画面の設定と情報表示(2)]
次に、実施の形態1における緯入装置100の異常検知を実行する際のファンクションパネル112の設定画面の具体例を図16により説明する。図16は、実施の形態1における設定画面112P3を説明する説明図である。以下の説明では、メインバルブ146A及び146Bの開度の制御によってメインノズル142A及び142Bの噴射圧が自動制御されるだけでなく、設定によりサブバルブ165の開度の制御によってサブノズル160の噴射圧についても自動制御が可能に構成されている。
【0089】
図16に示す設定画面112P3は、カラー毎の目標TWの値(a)、カラー毎のメインノズル142A及び142Bの噴射圧制御のオン/オフ設定(b)、カラー毎のメインノズル142A及び142Bの噴射圧範囲(c)、メインノズル142A及び142Bの噴射圧の制御周期(d)、サブノズル160の噴射圧の制御に使用されるTiバイアスのカラー選択(e)、目標Tiバイアスの値(f)、サブノズル160の噴射圧の制御有無(g)、サブノズル160の噴射圧の制御範囲(h)、サブノズル160の噴射圧の制御周期(i)についての設定が可能である。
【0090】
図16の設定画面112P3の設定が完了すると、制御部110は、例えばカラー毎に±1°の範囲で、目標TWに合うようにメインノズル142A及び142Bの噴射圧を制御する。このときのフィードバック制御は、指定された制御周期で実行される。そして、制御部110は、このときのメインノズル142A及び142Bの噴射圧を、設定されたメインノズル142A及び142Bの噴射圧範囲を超えないように制御する。
【0091】
ここで、図16の(e)で選択したカラーのTiバイアスの平均値が目標Tiバイアスより小さければ、制御部110は、サブノズル160の噴射圧を、所定量、例えば0.01MPa下げる。一方、選択したカラーのTiバイアスの平均値が目標Tiバイアスより大きければ、サブノズル160の噴射圧を、所定量、例えば0.01MPa上げる。この際の、目標Tiバイアスの許容範囲は、例えば、目標値±0.5°とする。このときのフィードバック制御は、指定された制御周期で制御部110により実行される。そして、制御部110は、このときのサブノズル160の噴射圧を、設定されたメインノズル142A及び142Bの噴射圧範囲を超えないように制御する。
【0092】
次に、図17図18を用いて、異常が検知された場合のファンクションパネル112の情報表示の様子を説明する。
【0093】
緯入装置100の動作時において、サブノズル160の噴射圧を自動制御しない場合においてサブバルブ165のいずれかの箇所に異常が生じた場合における情報画面112P4の一例を、図17を用いて説明する。図17は、実施の形態1における情報画面112P4を説明する説明図である。図17の(a)~(w)の各項目は、図7図10の(a)~(w)と同一内容の項目であり、重複した説明を省略する。そして、図17の(x)は第1カラーのメインノズル142Aの噴射圧を表示し、図17の(y)は第2カラーのメインノズル142Bの噴射圧を表示し、図17の(z)はサブノズル160の噴射圧を表示している。
【0094】
図17に示す情報画面112P4では、第1色のTiバイアス実測値(t)が上限値(s)を超えており、かつ、第2色のTiバイアス実測値(w)が上限値(v)を超えた状態を示している。この図17に示す状態は、図6のフローチャートにおけるステップS109の異常検知状態に該当し、織幅内センサ171の直前の上流付近のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに何らかの異常があることを示している。
【0095】
一方、緯入装置100の動作時において、サブノズル160の噴射圧を自動制御する場合においてサブバルブ165のいずれかの箇所に異常が生じた場合における情報画面112P5の一例について、図18を用いて説明する。図18は、実施の形態1における情報画面112P5を説明する説明図である。図18の(a)~(z)の各項目は、図17と同一内容の項目であり、重複した説明を省略する。
【0096】
図18に示す情報画面112P5では、サブノズル160の噴射圧制御を実行することにより、図17に示した情報画面112P4と比較して、第1色のTiバイアス実測値(t)と第2色のTiバイアス実測値(w)が小さくなっている。但し、サブノズル160の噴射圧(z)が、制御範囲の上限(図16の(h)参照)に達しており、これ以上はサブノズル160の噴射圧を上げることはできない。この状態において、第1色のTiバイアス実測値(t)が上限値(s)を超えており、かつ、第2色のTiバイアス実測値(w)が上限値(v)を超えている。したがって、この図18に示す状態は、図6のフローチャートにおけるステップS109の異常検知状態に該当し、織幅内センサ171の直前の上流付近のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに何らかの異常があることを示している。
【0097】
すなわち、緯入装置100の動作時において、図17に示すサブノズル160の噴射圧を自動制御しない場合と、図18に示すサブノズル160の噴射圧を自動制御する場合のいずれの制御状態であってもサブバルブ165に生じた異常を検知することができる。
【0098】
以上説明したように、実施の形態1によれば、以下に示す効果を得ることができる。
数のメインノズル142Aと142Bのうち選択されたいずれか1つのエア噴射によりそれぞれ引き出された複数の緯糸YAと緯糸YBとが、共通のサブノズル160からのエア噴射により共通の緯糸飛走経路150aを経て複数の緯糸YA及びYBが緯入れされる際に、サブノズルの各群に対応して配設されているサブバルブの開度は所定の値に設定した状態であり、緯糸測長貯留部130A及び130Bからの緯糸解除タイミングと、飛走センサ170の緯糸検出信号に基づく緯糸到達タイミングとの差であるバイアス角について、複数の緯糸YA及びYBそれぞれについてのバイアス角がサブ系搬送能力に応じて所定の閾値を超えたときに、サブバルブ系統SVに生じた異常があることを検知することができる。
【0099】
走センサ170として、緯糸飛走経路150aにおける織幅の下流側の織端に設けられたエンドセンサ172と、緯糸飛走経路150aにおける織幅の中央よりもメインノズル142A及び142Bとは反対側であって、エンドセンサ172よりも上流側に設けられた織幅内センサ171を設ける。そして、複数の緯糸それぞれについて、エンドセンサ172の位置におけるTWバイアスおよび/または織幅内センサ171の位置におけるTiバイアスが、サブ系搬送能力に応じて所定の閾値を超えたとき、サブバルブ系統SVに生じた異常があることを検知することができる。
【0101】
数の緯糸それぞれについてのTWバイアスとTiバイアスとのうち、Tiバイアスがサブ系搬送能力に応じて所定の閾値を超えたとき、織幅内センサ171の上流側のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに生じた異常があることを検知することができる。
【0102】
数の緯糸それぞれについてのTWバイアスとTiバイアスとのうち、TWバイアスがサブ系搬送能力に応じて所定の閾値を超えたとき、織幅内センサ171の下流側のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに生じた異常があることを検知することができる。
【0103】
数の緯糸それぞれについてのTiバイアスとTWバイアスとがサブ系搬送能力に応じて所定の閾値を超えたとき、織幅内センサ171の直前のサブノズル160に対応するサブバルブ系統SVに生じた異常があることを検知することができる。
【0104】
数のメインノズル142Aと142Bエア噴射によりそれぞれ引き出された緯糸YAと緯糸YBとが、共通のサブノズル160からのエア噴射により共通の緯糸飛走経路150aを経て緯入れされる場合、複数の緯糸YAとYBの双方についてサブ系搬送能力に応じてバイアス角が所定の閾値を超えたときはサブバルブ系統SVに異常があると検知することができ、複数の緯糸YA及びYBついてサブ系搬送能力に応じてバイアス角が所定の閾値を超える変化が複数の緯糸で一致しないときにはサブバルブ系統SV以外に異常があると検知することができる。
【0105】
[その他の実施の形態]
本実施の形態1における変形例を以下に説明する。
以上の説明では、織幅TLに対応して各色で織幅内センサ171とエンドセンサ172を用いてバイアス角の異常を判定していたが、各色で織幅内センサ171とエンドセンサ172のいずれか1個のみを使用してバイアス角に生じた異常を検知することも可能である。その場合には、1個のみのセンサの周辺の領域のサブノズル160に対応するサブ系搬送能力に生じた異常を検知することができる。
【0106】
飛走センサ170を織幅内センサ171とエンドセンサ172を各色で各1個として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各色で織幅内センサ171を複数設けることで、サブ系搬送能力の異常発生位置をより細かく把握することが可能である。
【0107】
以上の説明において、制御部110を単一のものとして示したが、動作を制御する制御部と、異常を検知する制御部とを分離して構成することも可能である。また、ファンクションパネル112は、緯入装置100に近い位置に配置される場合に限られず、緯入装置100と離れた位置に通信手段を介して設置されていてもよい。例えば、複数の緯入装置100を集中管理する管理端末にファンクションパネル112を設けることも可能である。
【0108】
ファンクションパネル112の表示画面に代えて、または、ファンクションパネル112の表示画面に加えて、警告表示用のランプの発光、または、ブザーやサイレンの吹鳴によって、異常の検知結果を報知するようにしてもよい。また、異常の検知結果の報知は、緯入装置100の近傍だけでなく、上述した管理端末に対して報知を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0109】
100 緯入装置、110 制御部、111 CPU、112 ファンクションパネル、120A 給糸部、120B 給糸部、130A 緯糸測長貯留部、130B 緯糸測長貯留部、131A 貯留ドラム、131B 貯留ドラム、132A 緯糸係止ピン、132B 緯糸係止ピン、133A バルーンセンサ、133B バルーンセンサ、140A 緯入れノズル、140B 緯入れノズル、141A タンデムノズル、141B タンデムノズル、142A メインノズル、142B メインノズル、143A メインレギュレータ、143B メインレギュレータ、144A メインタンク、144B メインタンク、145A タンデムバルブ、145B タンデムバルブ、146A メインバルブ、146B メインバルブ、147A ブレーキ、147B ブレーキ、150 筬、150a 緯糸飛走経路、160 サブノズル、161 配管、162 サブレギュレータ、163 配管、164 サブタンク、165 サブバルブ、166 配管、170 飛走センサ、171 織幅内センサ、172 エンドセンサ、MA 第1メイン系統、MB 第2メイン系統、S サブ系統、SV サブバルブ系統、TL 織幅、YA 緯糸、YB 緯糸。
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