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特許7490610核酸分析および定量化のための方法ならびにシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】核酸分析および定量化のための方法ならびにシステム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240520BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240520BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240520BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALN20240520BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALN20240520BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12N15/09 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6844 Z
【請求項の数】 21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021061372
(22)【出願日】2021-03-31
(62)【分割の表示】P 2019521723の分割
【原出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2021118692
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】62/423,601
(32)【優先日】2016-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518337142
【氏名又は名称】コンビナティ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】5823 Newton Dribe Carlsbad,California 92008 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ザヤック,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】フン,ジュ-スン
(72)【発明者】
【氏名】キング,ハワード グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】コックス,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】デュエック,メーガン
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/162779(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/170109(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/023616(WO,A2)
【文献】米国特許第09213042(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0009101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/00
C12Q 1/00- 3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子を分析するためのシステムであって、前記システムは、
複数の区画を含むデバイスを受け入れるように構成されるサポートユニットであって、ここで、前記複数の区画の1つの区画は、少なくとも1つの障壁にわたって加えられた圧力差の下で、ガスに対して少なくとも部分的に浸透性があるガス透過性障壁を通る、前記1つの区画から前記1つの区画の外部の環境へのガスフローを可能にするように構成され、ここで、前記1つの区画は、前記核酸分子を含む核酸試料を含有するように構成される、サポートユニットと、
前記1つの区画と熱的連通する熱ユニットであって、ここで、前記熱ユニットは、前記核酸試料を加熱にさらすように構成される、熱ユニットと、
前記1つの区画に動作可能に結合された検出器と、
前記熱ユニットおよび前記検出器に動作可能に結合された1つ以上のコンピュータプロセッサであって、ここで、前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、
(i)前記核酸試料を加熱にさらすように前記熱ユニットに指示すること、
(ii)前記核酸試料が前記加熱にさらされている間、前記1つの区画から1以上の信号を検出
するために前記検出器を使用すること、および
(iii)前記核酸分子の融点を示すデータをもたらすために、(ii)で検出された前記1以上の信号を処理すること、
を行うように個々にまたはまとめてプログラムされる、1つ以上のコンピュータプロセッサと、
を含む、
システム。
【請求項2】
前記核酸分子を前記複数の区画へと向けるように構成される流体流動装置をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記流体流動装置は、前記複数の区画内のガスを、前記少なくとも1つのガス透過性障壁を通って前記外部の環境へと流すために、前記少なくとも1つのガス透過性障壁にわたって圧力差を加えるように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、核酸試料または前記核酸分子を前記複数の区画に充填するよう前記流体流動装置に指示するように、個々にまたはまとめてプログラムされる、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、核酸試料の増幅産物として前記核酸分子をもたらすのに十分な条件下で、前記核酸試料に対して核酸増幅反応を行うよう前記熱ユニットに指示するように、個々にまたはまとめてプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記核酸試料に対して前記核酸増幅反応を行うことは、前記核酸試料の前記核酸分子の少なくとも部分集合の内部転写されたスペーサー領域の少なくとも一部を増幅することを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、前記1以上の信号を収集するために、前記1つの区画を画像化するよう前記検出器に指示するように、個々にまたはまとめてプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、前記1つの区画における前記核酸分子について信号対温度データを生成するために、前記1以上の信号を使用するように、個々にまたはまとめてプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのガス透過性障壁はポリマー材料を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのガス透過性障壁は実質的に光学的に透明である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのガス透過性障壁は、約50μmから約200μmの厚さを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記デバイスは、少なくとも1つの入口、少なくとも1つの出口、および複数の吸い上げ開口部を含む少なくとも1つのマイクロチャネルをさらに含み、ここで、前記1つの区画は、前記複数の吸い上げ開口部の1つの吸い上げ開口部によって、前記少なくとも1つのマイクロチャネルと流体連通する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのガス透過性障壁は、前記1つの区画、前記1つの吸い上げ開口部、および前記少なくとも1つのマイクロチャネルを覆うように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数の区画は、約1,000から約20,000の区画を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
核酸配列を含む核酸分子を分析するためのシステムであって、前記システムは、
複数の区画を含むデバイスを受け入れるように構成されるサポートユニットであって、ここで、前記複数の区画の1つの区画は、少なくとも1つの障壁にわたって加えられた圧力差の下で、ガスに対して少なくとも部分的に浸透性があるガス透過性障壁を通る、前記1つの区画から前記1つの区画の外部の環境へのガスフローを可能にするように構成され、ここで、前記1つの区画は、前記核酸分子を含む核酸試料を含有するように構成される、サポートユニットと、
前記1つの区画に動作可能に結合された検出器と、
前記検出器に動作可能に結合された1つ以上のコンピュータプロセッサであって、ここで、前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、
(i)前記核酸配列を含む前記核酸分子が核酸増幅反応を受けている間、前記1つの区画から1以上の信号を検出するために前記検出器を使用すること、および
(ii)前記核酸配列の増幅産物数を示すデータをもたらすために、(i)で検出された前記1以上の信号を処理すること、
を行うように、個々にまたはまとめてプログラムされる、1つ以上のコンピュータプロセッサと、
を含む、
システム。
【請求項16】
前記核酸分子を前記1つの区画へと向けるように構成される流体流動装置をさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記流体流動装置は、前記複数の区画内のガスを、前記少なくとも1つのガス透過性障壁を通って前記外部の環境へと流すために、前記少なくとも1つのガス透過性障壁にわたって圧力差を加えるように構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、前記1以上の信号を検出するために前記1つの区画を画像化するよう前記検出器に指示するように、個々にまたはまとめてプログラムされる、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、2以上の波長で蛍光発光を検出するよう前記検出器に指示するように、個々にまたはまとめてプログラムされる、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、前記1つの区画の光強度を判定するよう、個々にまたはまとめてプログラムされ、ここで、前記光強度が前記1つの区画における増幅産物の量に比例する、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、前記核酸分子を前記1つの区画に充填するよう前記流体流動装置に指示するように、個々にまたはまとめてプログラムされ、ここで、充填中、前記1つの区画内のガスは、前記1つの区画から前記1つの区画の外部の環境への流れを受ける、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本発明は、2016年11月17日に出願された米国仮特許出願62/423,601の利益を主張し、これは引用によって本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
<特許に係る政府の権利の陳述>
本発明は、国立衛生研究所によって与えられた中小企業技術革新研究プログラム認可番号1R43OD023028-01および1R43HG009640の下で政府の支援をうけて作られた。米国政府は本発明に一定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体デバイスは、小規模に流体を扱う構造を含むデバイスである。典型的には、マイクロ流体デバイスはサブミリメートル規模で動作し、マイクロリットル、ナノリットル、またはより少ない量の流体を扱う。マイクロ流体デバイスにおいて、主なファウリング機構(fouling mechanism)は、マイクロ構造の内部に閉じ込められた空気、すなわち気泡である。このことは、熱可塑性プラスチックのガス透過率が非常に低いので、マイクロ流体構造を作製するために熱可塑性材料を使用するときに、特に問題となり得る。
【0004】
閉じ込められた空気によるファウリングを避けるために、以前のマイクロ流体構造は、熱可塑性材料を使用して単純な直線チャネル設計または分岐チャンネル設計を使用するか、あるいは、エラストマーなどの高いガス透過率材料を使用してデバイスを製造する。しかしながら、単純設計は、マイクロ流体デバイスの可能性のある機能性を制限し、エラストマー材料は製造すること、特に大規模に製造することが難しくかつ高価である。
【0005】
マイクロ流体構造の1つの用途は、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)にある。dPCRは、多くの区画のアレイを提供するマイクロ流体構造の各区画において、1以下の核酸鋳型まで核酸試料を希釈し、アレイにわたってPCR反応を実行する。その核酸鋳型が成功裡にPCR増幅された区画を数えて、その結果にポアソン統計を適用することによって、標的核酸が定量化される。未知試料のPCR増幅の割合を1セットの既知のqPCR基準の割合と比較することにより鋳型が数量化される、一般的な定量的リアルタイムPCR(qPCR)とは異なり、dPCRは、より高い感度、より高い精度、およびより大きな再現性を示すことが分かった。
【0006】
ゲノムの研究者および臨床医にとって、dPCRは、珍しい突然変異の検出、コピー数多型の定量化、および次世代の配列決定ライブラリの定量化において特に強力である。無細胞DNAおよびウイルス量の定量化を用いる液体細胞診のための臨床の環境における潜在的な用途はさらに、dPCR技術の価値を上昇させる。既存のdPCRソリューションは、エラストマーのバルブアレイ、シリコン貫通アプローチ(silicon through-hole approaches)、および油滴のマイクロ流体のカプセル化(microfluidic encapsulation of droplets in oil)を使用してきた。利用可能なdPCRプラットフォームの数の増えているにもかかわらず、dPCRは、PCR増幅サイクルの数の計数を当てにするより古いqPCR技術と比較されたときに不利な立場であった。処理能力、使いやすさ、性能、およびコストの組み合わせは、dPCRの市場における採用の獲得に対する主な障壁である。
【発明の概要】
【0007】
核酸を増幅および定量化すること、および、例えば、病原体(例えば、細菌)などのターゲット(例えば、実際のターゲットまたは疑わしいターゲット)の有無を検出することに役立ち得る方法およびシステムが本明細書において提供される。本開示は、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)の使用によって、試料の調製、試料の増幅、および試料の分析を可能にし得る方法、システム、ならびにデバイスを提供する。これによって、核酸が、他のシステムおよび方法と比較して、低いコストおよび低い複雑性で、増幅され、かつ定量化され得る。
【0008】
現在の開示の方法およびシステムは、核酸(例えば、デオキシリボ核酸、DNA)配列変異体を検知するための高分解能融解(HRM)分析を使用することができる。本開示のHRM方法は、場合によっては増幅後の処理工程なしで、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの核酸増幅を用いるシームレス統合によってすべて完了する、単一のヌクレオチド分解能を用いる配列依存性融解曲線を作製できる。広範囲のPCRと結び付けられて、本開示のHRM方法およびシステムは、同定できる配列変異体の幅を大幅に拡張できる。
【0009】
現在利用可能な融解曲線アプローチに関連する様々な制限が本明細書において認識される。従来の大量のPCR/HRM分析設計は、遺伝子分析および後成的分析におけるいくつかの重要なニーズを対処する際に制限されることもある。1つの重要な制限は、PCR阻害剤または過剰なバックグラウンドヒトDNAの干渉による不適正な感度である。他の需要な制限は、異種集団中の複数の配列変異体を詳細に分析し、かつ正確に各変異体を定量化する能力がないことである。
【0010】
珍しい対立遺伝子変異体の絶対量および相対的な対立遺伝子の比率を判定する必要性が本明細書において認識される。感染症では、微小病原体負荷の正確な検出および同定、ならびに感染と定着または汚染とを区別する混合された微生物群の定量的分離は、試料に共存する変異体を定量的に識別する重要性をさらに強調する。
【0011】
本開示は、HRM分析と、デジタルPCR(dPCR)における絶対的な定量化とを統合するデジタルHRM分析プラットフォームを提供する。これは、単一分子レベルおよびハイスループット様式の綿密な分析をもたらすことができる。
【0012】
一態様では、本開示は、複数の区画を含むデバイスを提供することを含む、複数の核酸分子を分析する方法を提供し、ここで、複数の区画の少なくとも部分集合は複数の核酸分子を含み、複数の区画の少なくとも部分集合の各区画は、複数の区画の少なくとも部分集合を外部環境から分離する少なくとも1つの障壁を通って、複数の区画の少なくとも部分集合から複数の区画の少なくとも部分集合の外部の環境へのガスフローを可能にするよう構成され;複数の区画の少なくとも部分集合を制御された熱にさらしている間、複数の区画の少なくとも部分集合から信号を収集し;ならびに、複数の区画の少なくとも部分集合における複数の核酸分子の少なくとも部分集合の融点を示すデータをもたらすために、収集された信号を処理する。
【0013】
いくつかの実施形態では、方法は、複数の核酸分子を含むデバイスをもたらす前に、核酸試料の増幅産物として複数の核酸分子をもたらすのに十分な条件下で、核酸試料に対して核酸増幅反応を実施することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、核酸増幅反応を実施する前に、複数の核酸試料を複数の区画の少なくとも部分集合に充填する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、複数の区画の少なくとも部分集合において核酸増幅反応が実施される。いくつかの実施形態では、核酸試料に対して核酸増幅反応を実施することは、核酸試料の核酸分子の少なくとも部分集合の内部転写されたスペーサー領域の少なくとも一部を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、核酸増幅反応は、プライマー、デオキシリボヌクレオチド、緩衝液、補助因子、インターカレート色素、およびポリメラーゼからなる群から選択された1つ以上の試薬を使用する。いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬はフルオロフォアまたは蛍光標識を含む。いくつかの実施形態では、方法は、核酸試料に対して核酸増幅反応を実施する前に、核酸試料の核酸分子の少なくとも部分集合をインターカレート色素と接触させる工程をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数の区画の少なくとも部分集合を制御された熱にさらしている間、複数の区画の少なくとも部分集合からの信号の収集が複数の時点にわたって実施される。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数の区画の少なくとも部分集合を制御された熱にさらしている間、複数の区画の少なくとも部分集合からの信号の収集は、複数の区画の少なくとも部分集合を画像化して信号を収集することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、収集した信号を処理することは、複数の区画の少なくとも部分集合における複数の核酸分子の少なくとも部分集合についての信号対温度データを生成するための信号を使用することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、複数の核酸分子は、病原体を含有するか、または含有することが疑わしい試料に由来する。いくつかの実施形態では、病原体は少なくとも1つの細菌である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細菌は、炭疽菌、セレウス菌、バチルス・ハロデュランス、根状菌、バシラス・ポリミキサ、故草菌、バチルス・チューリンゲンシス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・カプラエ、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・レンタス、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス、スタフィロコッカス・サプロフィティクス、スタフィロコッカス・キシローサス、ざ瘡菌、エンテロコッカス・フェカーリス、放線菌門、アルファプロテオバクテリア、バクテロイデス門、ベータプロテオバクテリア、クラミジア、イプシロンプロテオバクテリア、ファーミキューテス、ガンマプロテオバクテリア、スピロヘータ目、およびテネリクテス門からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、方法は、複数の核酸分子を含むデバイスを提供する前に、少なくとも1つの細菌から複数の核酸分子またはその部分集合を単離または抽出することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、複数の区画の少なくとも部分集合の各区画における病原体の有無を判定する融点を示すデータを使用することをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数の核酸分子が由来する試料は、生体試料である。いくつかの実施形態では、生体試料は、血液、尿、精液、粘液、および唾液からなる群から選択された体液を含む。他の実施形態では、複数の核酸分子に由来する試料は環境試料である。
【0019】
いくつかの実施形態では、デバイスを提供することは、複数の区画に複数の核酸分子を充填することをさらに含み、ここで、充填中に、複数の区画の少なくとも部分集合におけるガスは、複数の区画の少なくとも部分集合から複数の区画の少なくとも部分集合の外部の環境への流れを受ける。
【0020】
いくつかの実施形態では、障壁は、ポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は熱可塑性材料である。いくつかの実施形態では、障壁は、障壁にわたって加えられた圧力差の下で、ガスに対して少なくとも部分的に浸透性がある。いくつかの実施形態では、障壁は実質的に光学的に透明である。いくつかの実施形態では、障壁は、約50μmから約200μmの厚さを有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも1つの入口、少なくとも1つの出口、および複数の吸い上げ開口部を含む少なくとも1つのマイクロチャネルを含み、ここで、複数の区画の少なくとも部分集合の各々は、複数の吸い上げ開口部によって、少なくとも1つのマイクロチャネルと流体連通される。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数の区画は、約1,000から約20,000の区画を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、複数の核酸分子はデオキシリボ核酸分子である。他の実施形態では、複数の核酸分子はリボ核酸分子である。
【0024】
他の態様では、本開示は複数の核酸分子を分析するための方法を提供し、該方法は:複数の区画を含むデバイスを提供することであって、ここで、複数の区画の少なくとも部分集合は複数の核酸分子を含み、ここで、複数の区画の少なくとも部分集合の各区画は、複数の区画の少なくとも部分集合を外部環境から分離する少なくとも1つの障壁を通る、複数の区画の少なくとも部分集合から複数の区画の少なくとも部分集合の外部の環境へのガスフローを可能にするように構成され;複数の核酸分子の少なくとも部分集合から増幅産物を生成するために、複数の核酸分子を使用して、複数の区画の少なくとも部分集合を、核酸増幅反応を行なうのに十分な条件にさらし;複数の区画の少なくとも部分集合を条件にさらしている間、複数の時点にわたって複数の区画の少なくとも部分集合から信号を収集し;および、複数の区画の少なくとも部分集合における、核酸分子の数を判定するために信号を処理することを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、複数の区画の少なくとも部分集合を、核酸増幅反応を行なうのに十分な条件にさらすことは、熱サイクルを行うことを含み、および信号を収集することは、複数の区画の少なくとも部分集合の各区画から1回の熱サイクル当たり1回より多く信号を収集することを含む。いくつかの実施形態では、熱サイクルは、変性段階、伸長段階、およびアニーリング段階を含む。いくつかの実施形態では、熱サイクルはフラットブロックサーマルサイクラー(flat block thermal cycler)を用いて行なわれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、核酸増幅反応は、プライマー、デオキシリボヌクレオチド、緩衝液、補助因子、インターカレート色素、およびポリメラーゼからなる群から選択された1つ以上の試薬を使用する。いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬はフルオロフォアまたは蛍光標識を含む。いくつかの実施形態では、複数の時点にわたって複数の区画の少なくとも部分集合から信号を収集することは、信号を収集するために複数の区画の少なくとも部分集合を画像化することを含む。いくつかの実施形態では、複数の区画の少なくとも部分集合は、同時に画像化される。いくつかの実施形態では、画像化は、2以上の波長で蛍光発光を検出する検出器を用いて行われる。いくつかの実施形態では、複数の区画の少なくとも部分集合における核酸分子の数を判定するために信号を処理することは、複数の区画の少なくとも部分集合の各区画の光強度の判定を含み、ここで、光強度は、複数の区画の少なくとも部分集合の各々における増幅産物の量に比例する。
【0027】
いくつかの実施形態では、複数の核酸分子を含むデバイスを提供することは、さらに複数の区画に複数の核酸分子を充填することを含み、ここで、充填中、複数の区画の少なくとも部分集合におけるガスは、複数の区画の少なくとも部分集合から複数の区画の少なくとも部分集合の外部の環境への流れを受ける。
【0028】
いくつかの実施形態では、障壁はポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は熱可塑性材料である。いくつかの実施形態では、障壁は、障壁にわたって加えられた圧力差の下で、ガスに対して少なくとも部分的に浸透性がある。いくつかの実施形態では、障壁は実質的に光学的に透明である。いくつかの実施形態では、障壁は、約50μmから約200μmの厚さを有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも1つの入口、少なくとも1つの出口、および複数の吸い上げ開口部を含む少なくとも1つのマイクロチャネルを含み、ここで、複数の区画の少なくとも部分集合の各々は、複数の吸い上げ開口部によって少なくとも1つのマイクロチャネルと流体連通される。
【0030】
いくつかの実施形態では、複数の区画は、約1,000から約20,000の区画を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、複数の核酸分子はデオキシリボ核酸分子である。他の実施形態では、複数の核酸分子はリボ核酸分子である。
【0032】
さらなる態様では、本開示は複数の核酸分子を分析するシステムを提供し、該システムは:複数の区画を含むデバイスを受け入れるように構成されるサポートユニットであって、ここで、複数の区画の少なくとも部分集合の各区画は、複数の区画の少なくとも部分集合を外部環境から分離する少なくとも1つの障壁を通る、複数の区画の少なくとも部分集合から複数の区画の少なくとも部分集合の外部の環境へのガスフローを可能にするように構成されるサポートユニットと;複数の時点にわたって、複数の区画の少なくとも部分集合から信号を収集するように構成される検出器と;検出器に動作可能に結合された1つ以上のコンピュータプロセッサであって、ここで1つ以上のコンピュータプロセッサは、:(i)複数の核酸分子の少なくとも部分集合から増幅産物を生成するために、複数の核酸分子を使用して、複数の区画の少なくとも部分集合を、核酸増幅反応を行なうのに十分な条件にさらし;(ii)(i)において複数の区画の少なくとも部分集合を条件にさらしている間、複数の時点にわたって、検出器によって複数の区画の少なくとも部分集合から収集された信号を受信し;および(iii)複数の区画の少なくとも部分集合における核酸分子の数を判定するために信号を処理するように、個別にまたはまとめてプログラムされる1つ以上のコンピュータプロセッサを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、システムは、複数の核酸分子を複数の区画へと向けるように構成される流体流動装置をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のコンピュータプロセッサは、複数の区画に複数の核酸分子を充填するために、流体流動装置を向けるように個別にまたはまとめてプログラムされる。
【0034】
他の態様では、本開示は複数の核酸分子を分析するためのシステムを提供し、該システムは:複数の区画を含むデバイスを受け入れるように構成されるサポートユニットであって、ここで、複数の区画の少なくとも部分集合の各区画は、複数の区画の少なくとも部分集合を外部環境から分離する少なくとも1つの障壁を通る、複数の区画の少なくとも部分集合から複数の区画の少なくとも部分集合の外部の環境へのガスフローを可能にするように構成されるサポートユニットと;複数の区画の少なくとも部分集合を、制御された加熱にさらすように構成される熱ユニットと;複数の区画の少なくとも部分集合から信号を収集するように構成された検出器と;ならびに、熱ユニットおよび検出器に動作可能に結合された1つ以上のコンピュータプロセッサであって、ここで、1つ以上のコンピュータプロセッサは:(i)複数の区画の少なくとも部分集合を、制御された加熱にさらすために熱ユニットを向け;(ii)複数の区画の少なくとも部分集合が制御された加熱にさらされる間、複数の区画の少なくとも部分集合から収集された信号を検出器によって受信し;および(iii)複数の区画の少なくとも部分集合における複数の核酸分子の少なくとも部分集合の融点を示すデータをもたらすために、(ii)において収集された信号を処理するように個別にまたはまとめてプログラムされる、1つ以上のコンピュータプロセッサを含む、システム。
【0035】
いくつかの実施形態では、システムは、複数の核酸分子を複数の区画へと向けるように構成される流体流動装置をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のコンピュータプロセッサは、複数の区分に複数の核酸分子を充填するために流体流動装置を向けるよう、個別にまたはまとめてプログラムされる。
【0036】
現在の開示の他の態様は、1つ以上のコンピュータプロセッサによる実行時、上記の方法または本明細書の他の場所に記載の方法のいずれかを実施する、マシン実行可能コードを含む非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。
【0037】
本開示の他の態様は、1つ以上のコンピュータプロセッサおよびそれに結合されたコンピュータメモリを含むシステムを提供する。コンピュータメモリはマシン実行可能コードを含み、1つ以上のコンピュータプロセッサによる実行時に、上記の方法または本明細書の他の場所に記載される方法のいずれかを実施する。
【0038】
本開示のさらなる態様および利益は、以下の詳細な説明から、当業者に容易に明らかとなり、ここでは、本開示の例示的な実施形態のみが示され、記載される。以下の記載から分かるように、本開示は他のおよび異なる実施形態であってもよく、そのそれぞれの詳細は、全てが本開示から逸脱することなく、様々な明白な点において修正が可能である。それに応じて、図面と説明は本質的に例示的なものと見なされるべきであって、限定的として見なされるべきではない。
【0039】
<引用による組み込み>
本明細書で言及される公開物、特許、および特許出願はすべて、あたかも個々の公開物、特許あるいは特許出願がそれぞれ参照により組み込まれるように具体的かつ個々に示されるのと同じ程度、参照により本明細書に組込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の新規な特徴はとりわけ添付の請求項で説明される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が例示的実施形態を明記する以下の詳細な説明と、以下の添付図面(または本明細書における「図」)とを引用することによって得られる。
図1】マイクロ流体構造の例を例証する。図1のAは、上から見下ろした構造を示し、図1Bは構造の断面を例証する。
図2】マイクロ流体デバイス内の、マイクロチャンバー、吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルの例となる構成を概略的に例示する。図2のAは、平行なサブチャネルおよび1つ以上のクロスチャネルがマイクロチャンバーの格子を形成するために使用される実施形態を示す。図2のBは、曲がりくねったパターンの単一のマイクロチャネルがマイクロチャンバーの六角格子を形成する実施形態を示す。
図3】例示的マイクロ流体デバイスの使用のための方法を示す。図3のAは、試薬を低圧で加える工程を示す。図3のBは、分配およびガス放出させるために、マイクロ流体デバイスにわたって圧力差を加える工程を示す。図3のCは、マイクロチャネルをきれいにするために流体を低圧で加える工程を示す。図3のDは、方法の完了後のシステムの状態を示す。
図4】マイクロ流体デバイスの製造の方法を概略的に例証する。
図5】マイクロ流体デバイスと共に利用される典型的なデジタルPCRプロセスを概略的に例証する。
図6】単一のマシンにおける、核酸の増幅および定量化の方法を実施するためのマシンを概略的に例証する。
図7】本明細書において提供された方法を実施するようにプログラムされるか、そうでなければ構成される例示的なコンピュータ制御システムを概略的に例証する。
図8】マイクロ流体デバイスおよび試料の分配を示す。図8のAは、熱可塑性プラスチックを微小成形することにより形成されたマイクロ流体デバイスを示す。図8のBは、試料の分配プロセスの蛍光画像を示す。
図9】核酸試料の処理のための例示的システムを示す。
図10】平均しておよそ1つの核酸鋳型のコピー(nucleic acid template copy)を含む区画、および核酸鋳型のコピーがゼロである区画(鋳型がない対照、すなわちNTC)の核酸増幅の2色(1色が試料信号を表わし、もう1色が正規化信号を表わす)の蛍光検出を示す。図10のAは、増幅後の1つ区画当たりのコピーがゼロであること(NTC)を示し;図10のBは、1つ区画当たりおよそ1つのコピーを含む区画の核酸増幅を示し;図10のCは、両方の蛍光色のNTCの蛍光強度のプロットを示し;図10のDは、増幅された試料の両方の蛍光色の蛍光強度のプロットを示す。
図11】定量のデジタルポリメラーゼ連鎖反応(qdPCR)プロセスの表現を示す。図11のAは、典型的なマイクロ流体デバイスの区画の表現を示し;図11のBは、典型的なデバイスの各区画における試料の増幅動態を示し;図11のCは、図11のBで示された増幅動態に適用されるqdPCRプロセスの結果を示す。
図12】試料処理および/または分析のためのデバイスを示す;図12のAはデバイスを示し;図12のBは、デバイスの1つの反応アレイ内の区画の一部の構成を説明する。
図13】装置に流体制御を提供するために使用される空圧ユニットと共に、試料の処理および/または分析のためのデバイスの略図を例証する。
図14】フラットブロック熱サイクルユニットを概略的に例証し;図14のAは、フラットブロック熱サイクルユニットを例証し;図14のBは、追加のエアークランプを有する図14のAのフラットブロック熱サイクルユニットを例証し、エアークランプが、図12のAのデバイスなどのデバイスが熱サイクルユニットにロードされ得るようにクランプが開かれる。
図15】熱的、光学的、空気圧的、および機械的ユニットを含む、試料の処理および/または分析のための完全なqdPCRシステムを例証する。
図16】試料の処理および/または分析のためのqdPCRを実施する方法を例証する。
図17A】核酸分子の処理のための例示的システムを示す。図17Aは、核酸分子の処理のための例示的システム全体を示す。
図17B】核酸分子の処理のための例示的システムを示す。図17Bは、画像化する成分および試料の処理および/または分析のためのデバイスを含む、例示的システムの一部を示す。
図18】試料の処理および/または分析に有用なデバイスにおいて、様々な条件の下での区画の部分集合の増幅後に撮られたサンプル画像を示す。
図19図17A-17Bの例示的システムを使用して得られ、図18の画像に対応する試料のqdPCRデータを示す。
図20A】試料の処理および/または分析に有用なデバイスの差次的充填を示す。図20Aは、異なる数の核酸分子を含むデバイスにおける区画の部分集合の画像を示す。
図20B】試料の処理および/または分析に有用なデバイスの差次的充填を示す。図20Bは、図20Aの画像のポアソン分析を示す。
図21】試料の処理および/または分析に有用な、異なるように充填されたデバイスについての画像および対応する密度ならびに区画占有を示す。
図22A】高解像度融解(HRM)分析を概略的に例示する。図22Aは、デジタルHRM分析とバルクHRM分析との違いを例証する。
図22B】高解像度融解(HRM)分析を概略的に例示する。図22Bは、区画の占有を判定するための、異なる細菌の種およびそれらの使用についてのHRM曲線を示す。
図23A】様々な細菌の種についてのHRMデータを示す。図23Aは、様々な細菌についての16Sおよび内部転写スペーサー(ITS)複合誘導体HRM曲線を示す。
図23B】様々な細菌の種についてのHRMデータを示す。図23Bは、バチルス属の異なる種についてのHRM曲線を示す。
図23C】様々な細菌の種についてのHRMデータを示す。図23Cは、ブドウ球菌属の異なる種についてのHRM曲線を示す。
図23D】様々な細菌の種についてのHRMデータを示す。図23Dは、肺炎球菌の異なる種についてのITS HRM曲線を示す。
図23E】様々な細菌の種についてのHRMデータを示す。図23Eは、門によって組織化された異なる細菌の種についてのITS配列相同性のヒートマップを示す。
図24】HRM分析を概略的に例証する。図24のAは、複数のDNA分子を含む試料からのDNAの分配を例証し;図24のBは、様々な理論的区画集団に対応する温度依存性蛍光シグナルを示す。
図25】様々な条件下で得られた、試料の処理および/または分析に有用なデバイスにおける区画の部分集合のHRM分析中に撮られたサンプル画像を示す。
図26図25の画像に対応する試料のHRMデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の様々な実施形態が本明細書において示され且つ記載されているが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものであることは、当業者には明らかであろう。当業者であれば、多くの変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく想到できる。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替が、利用され得ることを理解されたい。
【0042】
本明細書において使用されるように、用語「増幅」および「増幅する」は、交換可能に使用され、一般的に核酸の1つ以上のコピーまたは「増幅産物」を生成することを指す。例えば、そのような増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または等温増幅を使用していてもよい。
【0043】
本明細書において使用されるように、用語「核酸」は通常、任意の長さのヌクレオチド(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、100、500、または1000のヌクレオチド)の高分子形態、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらのアナログのいずれかを指す。核酸は、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(TO)、およびウラシル(U)、またはそれらの変異体から選択された1つ以上のサブユニットを含んでもよい。ヌクレオチドは、A、C、G、T、あるいはU、またはそれらの変異体を含み得る。ヌクレオチドは、成長している核酸鎖へと組み込まれ得る任意のサブユニットを含み得る。そのようなサブユニットは、A、C、G、T、もしくはU、またはより相補的なA、C、G、T、もしくはUの1つに特異的な、あるいはプリン(すなわち、AもしくはG、またはそれらの変異体)あるいはピリミジン(すなわちC、T、もしくはU、またはそれらの変異体)に相補的な、任意の他のサブユニットであってもよい。いくつかの例では、核酸は一本鎖または二本鎖であってもよく、場合によっては、核酸分子は環状である。核酸の非限定的な例は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む。核酸は、遺伝子または遺伝子断片のコード領域またはノンコーディング領域、連鎖解析から定義された遺伝子座、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換え核酸、分枝核酸、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーを含み得る。核酸は、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなど、1つ以上の修飾されたヌクレオチドを含み得る。
【0044】
本明細書で使用されるように、用語「ポリメラーゼ連鎖反応試薬」あるいは「PCR試薬」は交換可能に使用され、一般的に、核酸増幅反応(例えば、DNA増幅)を完了するのに必要な試薬を含む組成物を指し、そのような試薬の非限定的な例では、標的核酸に対して特異性を有するプライマーセットあるいはプライミングサイト(例えば、ニック)、ポリメラーゼ、適切な緩衝液、補助因子(例えば二価カチオンおよび一価カチオン)、dNTP、ならびに他の酵素を含む。PCR試薬はまた、プローブ、インジケータ、ならびにプローブおよびインジケータを含む分子を含み得る。
【0045】
本明細書で使用されるように、用語「プローブ」は、、一般的に、検出可能な部分を含む分子を指し、その有無は、増幅産物の有無を検知するために使用され得る。検出可能な部分の非限定的な例は、放射標識、安定同位体標識、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、比色標識、または任意のそれらの組み合わせを含み得る。
【0046】
本明細書において使用されるように、用語「伸長」は、一般的に、鋳型指向性の様式(template directed fashion)の、核酸へのヌクレオチドの組み込みを指す。伸長は酵素の助けを借りて生じることもある。例えば、伸長はポリメラーゼの助けを借りて生じることもある。伸長が生じ得る条件としては、伸長が達成される温度を一般的に指す「伸長温度」、および伸長が起こるために割り当てられた時間の量を一般的に指す「伸長時間」が挙げられる。
【0047】
本明細書で使用されるように、用語「指示薬分子」は、一般的に、検出可能な部分を含む分子を指し、その有無は、試料分配を示すために使用され得る。検出可能な部分の非限定的な例は、放射標識、安定同位体標識、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、比色標識、または任意のそれらの組み合わせを含むこともある。
【0048】
用語「試料」は、一般的に、明細書において使用されるように、核酸分子を含有するか、または含有することが疑わしい試料を指す。核酸分子は、例えば、細菌などの細胞の試料または生体中にあるか、あるいはそれに由来し得る。例えば、試料は、1つ以上の核酸分子を含む生体試料であってもよい。生体試料は、血液(例えば全血)、血漿、血清、尿、唾液、粘膜の排出物、唾液、便、および涙からなる群から選択される1つ以上の構成要素から得られる(例えば、抽出または単離される)か、またはそれらを含み得る。生体試料は、液体試料または組織試料(例えば皮膚試料)であってもよい。試料は、全血などの無細胞の体液から得ることができる。無細胞の体液からの試料は、無細胞DNAおよび/または無細胞RNAを含み得る。試料は、循環腫瘍細胞を含んでもよい。試料は被験体から得られ、そこに含まれた核酸の分析は診断目的に使用される。あるいは、試料は、環境試料(例えば、土、廃棄物、周囲空気など)、工業試料(例えば、任意の工業プロセスからの試料)、および食物試料(例えば、乳製品、野菜製品、および肉製品)であってもよい。
【0049】
本明細書において使用されるように、用語「流体」は、一般的に、液体またはガスを指す。液体は定められた形状を維持することができず、観察可能な時間枠(observable time frame)の間に流れて、それが入れられる容器を満たす。したがって、流体は、流れることができる適切な粘度を有し得る。2以上の流体が存在する場合、各流体は、当業者によって、本質的に任意の流体(液体、ガスなど)から独立して選択されてもよい。
【0050】
本明細書において使用されるように、用語「分配」は、一般的に、部分への分割もしくは分散を指し、シェアする。例えば、分配された試料は、他の試料から単離された試料である。試料の分配を可能にする構造の例は、ウェルおよびマイクロチャンバーを含む。
【0051】
本明細書において使用されるように、用語「マイクロ流体の」は、一般的に、少なくとも1つのマイクロチャネル、複数の吸い上げ開口部、およびマイクロチャンバーのアレイを含む、チップ、エリア、デバイス、物品、またはシステムを指す。マイクロチャネルは、約10ミリメートル(mm)以下、約5mm以下、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1.5mm以下、約1mm以下、約750マイクロメーター(μm)以下、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、またはそれより小さい断面の寸法を有し得る。
【0052】
本明細書で使用されるように、用語「深さ」は、一般的に、マイクロチャネル、吸い上げ開口部、あるいは区画(例えば、マイクロチャンバー)の底から、マイクロチャネル、複数の吸い上げ開口部、および、区画(例えば、マイクロチャンバー)のアレイをキャップする薄膜までの測定された距離を指す。
【0053】
本明細書において使用されるように、用語「断面」または「断面の」は交換可能に使用され、一般的に、特徴の長寸法に対して実質的に垂直である、マイクロチャネルまたは吸い上げ開口部の寸法または面積を指し得る。
【0054】
本開示は、熱可塑性材料などのポリマー材料から形成されたマイクロ流体デバイスを含み、および圧力が解放される時にガスバリアとして機能しながら、加圧ガス放出を可能にするための薄膜を取り込むことを含むシステムの使用を含む、方法を記載する。マイクロ流体構造を形成する熱可塑性プラスチックの使用は、安価で高度にスケーラブルな射出成形プロセスの使用を可能にし、薄膜は、加圧によって放出する能力を提供して、そのような薄膜を取り込まない一部のマイクロ流体構造に存在するファウリング問題を回避することができる。
【0055】
この構造のための1つの使用は、マイクロチャネルによって接続され、例えば、熱可塑性プラスチックから形成された、行き止まりのマイクロチャンバーのアレイを組み込むマイクロ流体の設計である。この設計は、マイクロチャンバーのアレイへ試薬を分配するために、例えば、デジタルPCR(dPCR)または定量のdPCR(qdPCR)用途において使用でき、それによって、核酸を定量化するために、あるいは高解像度融解(HRM)分析においてマイクロチャンバーのアレイ中で分配された核酸の量および特性を分析するために使用される。
【0056】
<試料を分析するためのマイクロ流体デバイス>
一態様では、本開示は、試料を分析および/または処理するためのマイクロ流体デバイスを含むシステムを使用する方法を提供する。デバイスは、入口および出口に接続されたマイクロチャネルを含み得る。マイクロ流体デバイスはまた、複数のマイクロチャンバーおよび複数の吸い上げ開口部を含み得る。複数のマイクロチャンバーは、複数の吸い上げ開口部によってマイクロチャネルに接続され得る。マイクロ流体デバイスは、マイクロチャネル、マイクロチャンバー、および吸い上げ開口部をキャップして密閉する(例えば、気密封止する)熱可塑性の薄膜を含み得る。熱可塑性の薄膜は、圧力差が熱可塑性の薄膜を横切って加えられるとき、少なくとも部分的にガス透過性であってもよい。
【0057】
図1のAおよびBは、本開示の特定の実施形態にかかるマイクロ流体構造の例を示す。図1のAは、上から見た例示的マイクロ流体デバイスを示す。マイクロ流体デバイスは、入口(120)および出口(130)を有するマイクロチャネル(110)を含む。マイクロチャネルは、複数の吸い上げ開口部(101B)-(109B)に接続される。複数の吸い上げ開口部は、マイクロチャネルを複数のマイクロチャンバー(101A)-(109A)に接続する。図1のBは、A-A’で印された破線に沿う、単一のマイクロチャンバーの断面図を示す。単一のマイクロチャンバー(101A)は、吸い上げ開口部(101B)によってマイクロチャネル(110)に接続される。マイクロ流体デバイス本体(140)は、硬質プラスチック材料(例えば熱可塑性材料)から形成されてもよい。マイクロ流体デバイスのマイクロ構造は、薄膜(150)によってキャップされ、密閉され得る。薄膜(150)は、小さい圧力差が膜を横切って加えられる時に非ガス透過性であり、大きい圧力差が膜を横切って加えられる時にガス透過性であり得る。これによって、圧力がマイクロ流体デバイスの内部構造に加えられる時に、薄膜(150)を介してガス放出することを可能にし得る。あるいは、真空がマイクロ流体デバイスの外部に適用される時にガス放出が起こり得る。
【0058】
薄膜のガス透過性は、高圧により引き起こされ得る。圧力誘起のガス透過性薄膜はマイクロチャンバーのアレイまたはその部分集合を覆い、マイクロチャネルおよび吸い上げ開口部は非ガス透過性膜によって覆われてもよい。あるいは、圧力誘起のガス透過性薄膜は、マイクロチャンバーのアレイまたはその部分集合、および吸い上げ開口部を覆い、マイクロチャネルは非ガス透過性膜によって覆われてもよい。あるいは、圧力誘起のガス透過性薄膜は、マイクロチャンバーのアレイまたはその集合部分、吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルを覆ってもよい。薄膜の厚さは、約500マイクロメーター(μm)以下、約250μm以下、約200μm以下、約150μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約25μm以下、またはそれより薄くてもよい。薄膜の厚さは、約0.1μmから約200μm、または約0.5μmから約150μmであり得る。例えば、薄膜の厚さは、約50μmから約200μmであり得る。いくつかの実施形態では、薄膜の厚さは、約100μmから約200μmであり得る。例えば、薄膜の厚さは、約100μmから約150μmである。一例では、薄膜はおよそ100μmの厚さである。膜の厚さは、とりわけ、薄膜の製造可能性、薄膜の空気透過度、ガス放出される各区画の体積、利用可能な圧力、および/または吸い上げプロセスを完了する所望の時間によって選択され得る。
【0059】
マイクロ流体デバイスは、マイクロチャンバーの単一のアレイを含むこともある。あるいは、マイクロ流体デバイスは、マイクロチャンバーの多数のアレイを含むこともあり、マイクロチャンバーの各アレイは、他のアレイから隔離される。マイクロチャンバーのアレイは、一列で、格子構成で、交互のパターンで、または任意の他の構成で配置されてもよい。マイクロ流体デバイスは、マイクロチャンバーの、少なくとも約1つ、少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、またはさらに多くのアレイを有し得る。マイクロチャンバーのアレイは、同一であってもよい。マイクロ流体デバイスは、同一でない、マイクロチャンバーの多数のアレイを含むこともある。マイクロチャンバーのアレイは、すべて同じ外部寸法(すなわち、マイクロチャンバーのアレイの全ての特徴を包含する、マイクロチャンバーのアレイの長さおよび幅)を有するか、またはマイクロチャンバーのアレイは様々な外部寸法を有してもよい。
【0060】
マイクロチャンバーのアレイは、最大で、約100mm、約75mm、約50mm、約40mm、約30mm、約20mm、約10mm、約8mm、約6mm、約4mm、約2mm、約1mm、またはそれより小さい幅を有してもよい。マイクロチャンバーのアレイは、最大で、約50mm、約40mm、約30mm、約20mm、約10mm、約8mm、約6mm、約4mm、約2mm、1mm、またはそれ未満の長さを有してもよい。幅は、約1mmから100mm、または10mmから50mmであってもよい。長さは、約1mmから50mm、または5mmから20mmであってもよい。
【0061】
いくつかの実施例では、マイクロチャンバーのアレイは、約100mmの幅および約40mmの長さを有し得る。いくつかの実施例では、マイクロチャンバーのアレイは、約80mmの幅および約30mmの長さを有し得る。いくつかの実施例では、マイクロチャンバーのアレイは、約60mmの幅および約25mmの長さを有し得る。いくつかの実施例では、マイクロチャンバーのアレイは、約40mmの幅および約15mmの長さを有し得る。いくつかの実施例では、マイクロチャンバーのアレイは、約30mmの幅および約10mmの長さを有し得る。いくつかの実施例では、マイクロチャンバーのアレイは、約20mmの幅および約8mmの長さを有し得る。いくつかの実施例では、マイクロチャンバーのアレイは、約10mmの幅および約4mmの長さを有し得る。外部寸法は、所望のマイクロチャンバーの総数、各マイクロチャンバーの寸法、および製造可能性に関する各マイクロチャンバー間の最小距離によって決定されてもよい。
【0062】
マイクロチャネルは、マイクロ流体デバイスの長寸法に対して、実質的に平行または実質的に垂直であり得る。あるいは、マイクロチャネルは、マイクロ流体デバイスの長寸法に対して、実質的に平行でも実質的に垂直でもないこともある。マイクロチャネルとマイクロ流体デバイス長寸法との間の角度は、少なくとも約5°、少なくとも約10°、少なくとも約15°、少なくとも約20°、少なくとも約30°、少なくとも約40°、少なくとも約50°、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約90°、少なくとも約100°、少なくとも約110°、少なくとも約120°、少なくとも約130°、少なくとも約140°、少なくとも約150°、少なくとも約160°、または少なくとも約170°であり得る。マイクロチャネルは、単一の長いチャネルであってよい。マイクロチャネルは、屈曲、曲線、または角度を有し得る。マイクロチャネルは、100mm以下、約75mm以下、約50mm以下、約40mm以下、約30mm以下、約20mm以下、約10mm以下、約8mm以下、約6mm以下、約4mm以下、約2mm以下、またはそれ未満の長寸法を有することもある。マイクロチャネルの長さは、マイクロ流体デバイスの外部の長さあるいは幅により制限され得る。マイクロチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下、またはそれ未満の深さを有することもある。マイクロチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下、またはそれ未満の断面の寸法(例えば幅)を有することもある。
【0063】
いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約10μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、マイクロチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約10μmであってもよい。マイクロチャネルの断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、三角形、正方形、または長方形を含む、任意の適切な断面形状であり得る。マイクロチャネルの断面積は、マイクロチャネルの長さに沿って一定であり得る。あるいは、またはさらに、マイクロチャネルの断面積は、マイクロチャネルの長さに沿って変動し得る。マイクロチャネルの断面積は、約50%から150%、約60%から125%、約70%から120%、約80%から115%、約90%から110%、約95%から100%、または約98%から102%の間で変動してもよい。マイクロチャネルの断面積は、約10,000平方マイクロメートル(μm)以下、約7,500μm以下、約5,000μm以下、約2,500μm以下、約1,000μm以下、約750μm以下、約500μm以下、約400μm以下、約300μm以下、約200μm以下、約100μm以下、またはそれ未満であってもよい。
【0064】
マイクロチャネルは、単一の入口および単一の出口を有し得る。あるいは、マイクロチャネルは、多数の入口、多数の出口、または多数の入口と多数の出口を有してもよい。入口および出口は同じ直径を有するか、またはそれらは異なる直径を有することもある。入口および出口は、約2.5ミリメートル(mm)以下、約2mm以下、約1.5mm以下、約1mm以下、約0.5mm以下、またはそれ未満の直径を有してもよい。
【0065】
マイクロチャンバーのアレイは、少なくとも約1,000のマイクロチャンバー、少なくとも約5,000のマイクロチャンバー、少なくとも約10,000のマイクロチャンバー、少なくとも約20,000のマイクロチャンバー、少なくとも約30,000のマイクロチャンバー、少なくとも約40,000のマイクロチャンバー、少なくとも約50,000のマイクロチャンバー、少なくとも約100,000のマイクロチャンバー、またはそれより多くのマイクロチャンバーを有してもよい。いくつかの例では、マイクロ流体デバイスは約10,000から約30,000のマイクロチャンバーを有し得る。いくつかの例では、マイクロ流体デバイスは約15,000から約25,000のマイクロチャンバーを有し得る。マイクロチャンバーは、円筒形、半球形、または円筒形と半球形の組み合わせであり得る。マイクロチャンバーは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約15μm以下、またはそれ未満の直径を有してもよい。マイクロチャンバーの深さは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約15μm以下、またはそれ未満であってもよい。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約30μmの直径および約100μmの深さを有し得る。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約35μmの直径および約80μmの深さを有し得る。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約40μmの直径および約70μmの深さを有し得る。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約50μmの直径および約60μmの深さを有し得る。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約60μmの直径および約40μmの深さを有有し得る。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約80μmの直径および約35μmの深さを有し得る。いくつかの例では、マイクロチャンバーは、約100μmの直径および約30μmの深さを有し得る。マイクロチャンバーおよびマイクロチャネルは、同じ深さを有し得る。あるいは、マイクロチャンバーおよびマイクロチャネルは、異なる深さを有し得る。
【0066】
吸い上げ開口部の長さは一定であり得る。あるいは、吸い上げ開口部の長さは変動してもよい。吸い上げ開口部は、約150μm以下、約100μm以下、約50μm以下、約25μm以下、約10μm以下、約5μm以下、またはそれ未満の長寸法を有してもよい。吸い上げ開口部の深さは、約50μm以下、約25μm以下、約10μm以下、約5μm以下、またはそれ未満であってもよい。吸い上げ開口部は、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下、約5μm以下、またはそれ未満の断面の幅を有してもよい。
【0067】
いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約50μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約40μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約30μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約20μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約10μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約50μm、深さ約5μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約40μm、深さ約50μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約30μm、深さ約50μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約20μm、深さ約50μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約10μm、深さ約50μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約5μm、深さ約50μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約40μm、深さ約40μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約30μm、深さ約30μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約20μm、深さ約20μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約10μm、深さ約10μmであり得る。いくつかの例では、吸い上げ開口部の断面の寸法は、幅約5μm、深さ約5μmであり得る。吸い上げ開口部の断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、三角形、正方形、または長方形を含む、任意の適切な断面形状であり得る。吸い上げ開口部の断面積は、吸い上げ開口部の長さに沿って一定であり得る。あるいは、またはさらに、吸い上げ開口部の断面積は、吸い上げ開口部の長さに沿って変動してもよい。吸い上げ開口部の断面積は、マイクロチャネルへの接続部において、マイクロチャンバーへの接続部における吸い上げ開口部の断面積より大きくてもよい。あるいは、マイクロチャンバーへの接続部における吸い上げ開口部の断面積は、マイクロチャネルへの接続部における吸い上げ開口部の断面積より大きくてもよい。吸い上げ開口部の断面積は、約50%から150%、約60%から125%、約70%から120%、約80%から115%、約90%から110%、約95%から100%、または約98%から102%の間で変動してもよい。吸い上げ開口部の断面積は、約2,500μm以下、約1,000μm以下、約750μm以下、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約25μm以下、またはそれ未満であってもよい。マイクロチャネルへの接続部における吸い上げ開口部の断面積は、マイクロチャネルの断面積以下であってもよい。マイクロチャネルへの接続部における吸い上げ開口部の断面積は、マイクロチャネルの断面積の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下、約1%以下、または約0.5%以下であってもよい。
【0068】
吸い上げ開口部は、マイクロチャネルに対して実質的に垂直であってもよい。あるいは、吸い上げ開口部は、マイクロチャネルに対して実質的に垂直でなくてもよい。吸い上げ開口部とマイクロチャネルとの間の角度は、少なくとも約5°、少なくとも約10°、少なくとも約15°、少なくとも約20°、少なくとも約30°、少なくとも約40°、少なくとも約50°、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約90°、少なくとも約100°、少なくとも約110°、少なくとも約120°、少なくとも約130°、少なくとも約140°、少なくとも約150°、少なくとも約160°、または少なくとも約170°であってもよい。
【0069】
マイクロチャンバーは様々なパターンで構成され得る。図2のAおよびBは、マイクロチャンバー、吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルの構成の典型的なパターンを例示する。多数のマイクロチャネルが使用され得るか、または単一のマイクロチャネルが使用され得る。いくつかの実施形態では、マイクロチャネルはサブチャネルの群を含むこともある。サブチャネルの群は、1つ以上のクロスチャネルによって接続されて得る。これらの実施形態のいくつかでは、マイクロチャンバーのアレイがマイクロチャンバーの格子を形成するように、サブチャネルは実質的に互いに平行であり得る。図2のAは、平行なサブチャネル(230)および1つ以上のクロスチャネル(220)がマイクロチャンバーの格子を形成するために使用される実施形態を例証する。
【0070】
マイクロチャンバーは、マイクロチャンバーの六角格子を形成するように構成され、曲線状のまたは角度のあるサブチャネルがマイクロチャンバーを接続する。マイクロチャンバーの六角格子はまた、マイクロ流体デバイスにわたって曲がりくねったパターン(240)を形成するマイクロチャネルによってなど、単一のマイクロチャネルによって形成され、接続されてもよい。図2のBは、曲がりくねったパターンの単一のマイクロチャネルがマイクロチャンバーの六角格子を形成する実施形態を例証する。曲がりくねった構造で配置されたマイクロチャンバーの別の実施例は、図12Bで示される。
【0071】
サブチャネルの長さは一定であり得る。あるいは、サブチャネルの長さは変動し得る。サブチャネルは、100mm以下、約75mm以下、約50mm以下、約40mm以下、約30mm以下、約20mm以下、約10mm以下、約8mm以下、約6mm以下、約4mm以下、約2mm以下、またはそれ未満の長寸法を有し得る。サブチャネルの長さは、マイクロ流体デバイスの外部の長さあるいは幅により制限され得る。サブチャネルはマイクロチャネルと同じ断面の寸法を有してもよい。あるいは、サブチャネルはマイクロチャネルとは異なる断面の寸法を有してもよい。サブチャネルはマイクロチャネルと同じ深さ、および異なる断面の寸法を有してもよい。あるいは、サブチャネルはマイクロチャネルと同じ断面の寸法、および異なる深さを有してもよい。例えば、サブチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約15μm以下、またはそれ未満の深さを有し得る。サブチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下、またはそれ未満の断面の幅を有し得る。
【0072】
いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約10μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、サブチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約10μmであってもよい。サブチャネルの断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、三角形、正方形、または長方形を含む、任意の適切な断面形状であり得る。サブチャネルの断面形状は、マイクロチャネルの断面形状と異なり得る。サブチャネルの断面形状は、マイクロチャネルの断面形状と同じであり得る。サブチャネルの断面積は、サブチャネルの長さに沿って一定であり得る。あるいは、またはさらに、サブチャネルの断面積は、マイクロチャネルの長さに沿って変動し得る。サブチャネルの断面積は、約50%から150%、約60%から125%、約70%から120%、約80%から115%、約90%から110%、約95%から100%、または約98%から102%の間で変動してもよい。サブチャネルの断面積は、約10,000μm以下、約7,500μm以下、約5,000μm以下、約2,500μm以下、約1,000μm以下、約750μm以下、約500μm以下、約400μm以下、約300μm以下、約200μm以下、約100μm以下、またはそれ未満であってもよい。サブチャネルの断面積は、マイクロチャネルの断面積と同じであり得る。サブチャネルの断面積は、マイクロチャネルの断面積の面積以下であり得る。例えば、サブチャネルの断面積は、マイクロチャネル断面積の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約20%以下、またはそれ未満であってもよい。
【0073】
クロスチャネルの長さは、一定であり得る。あるいは、クロスチャネルの長さは変動し得る。クロスチャネルは、約100mm以下、約75mm以下、約50mm以下、約40mm以下、約30mm以下、約20mm以下、約10mm以下、約8mm以下、約6mm以下、約4mm以下、約2mm以下、またはそれ未満の長寸法を有してもよい。クロスチャネルの長さは、マイクロ流体デバイスの外部の長さまたは幅によって制限され得る。クロスチャネルはマイクロチャネルと同じ断面の寸法を有してもよい。あるいは、クロスチャネルはマイクロチャネルとは異なる断面の寸法を有してもよい。クロスチャネルはマイクロチャネルと同じ深さ、および異なる断面の寸法を有してもよい。あるいは、クロスチャネルはマイクロチャネルと同じ断面の寸法、および異なる深さを有してもよい。例えば、クロスチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約15μm以下、またはそれ未満の深さを有してもよい。クロスチャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下、またはそれ未満の断面の幅を有してもよい。
【0074】
いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約10μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約100μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約80μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約60μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約40μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約20μmであってもよい。いくつかの例では、クロスチャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約10μmであってもよい。
【0075】
クロスチャネルの断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、三角形、正方形、または長方形を含む、任意の適切な断面形状であり得る。クロスチャネルの断面形状は、マイクロチャネルの断面形状と異なってもよい。クロスチャネルの断面形状は、マイクロチャネルの断面形状と同じであってもよい。クロスチャネルの断面積は、クロスチャネルの長さ以下で一定であってもよい。あるいは、またはさらに、クロスチャネルの断面積は、マイクロチャネルの長さ以下で変動してもよい。クロスチャネルの断面積は、約50%から150%、約60%から125%、約70%から120%、約80%から115%、約90%から110%、約95%から100%、または約98%から102%の間で変動してもよい。クロスチャネルの断面積は、約10,000μm以下、約7,500μm以下、約5,000μm以下、約2,500μm以下、約1,000μm以下、約750μm以下、約500μm以下、約400μm以下、約300μm以下、約200μm以下、約100μm以下、またはそれ未満であってもよい。クロスチャネルの断面積は、マイクロチャネルの断面積と同じであってもよい。あるいは、クロスチャネルの断面積は、マイクロチャネルの断面積の面積より小さくてもよい。クロスチャネルの断面積は、マイクロチャネルの断面積の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約20%以下、またはそれ未満であってもよい。
【0076】
<マイクロ流体デバイスを製造するための方法>
本開示の方法およびシステムに有用なマイクロ流体デバイスは、任意の有用な方法によって製造され得る。例えば、デバイスの製造は、熱可塑性プラスチックを射出成形してマイクロ流体構造を作り出すことを含み得る。マイクロ流体構造は、マイクロチャネル、複数のマイクロチャンバー、および複数の吸い上げ開口部を含み得る。複数のマイクロチャンバーは、複数の吸い上げ開口部によってマイクロチャネルに接続され得る。マイクロチャネルは、入口および出口を含み得る。熱可塑性の薄膜は、マイクロ流体構造をキャップするために適用されてもよい。熱可塑性の薄膜は、圧力差が熱可塑性の薄膜を横切って加えられるとき、少なくとも部分的にガス透過性であってもよい。
【0077】
熱可塑性の薄膜は、射出成形によって形成されてもよい。熱可塑性の薄膜は、熱接合によってマイクロ流体構造に適用されてもよい。あるいは、またはさらに、薄膜は化学結合によって適用されてもよい。熱可塑性の薄膜は、マイクロ流体デバイスを形成するために、射出成形プロセスの一環として、およびそのプロセスの間に形成され得る。
【0078】
マイクロ流体デバイスの本体および薄膜は、同じ材料を含むこともある。あるいは、マイクロ流体デバイスの本体および薄膜は、異なる材料を含むこともある。マイクロ流体デバイスの本体および薄膜は、熱可塑性プラスチックを含むこともある。熱可塑性プラスチックの例として、限定されないが、シクロオレフィンポリマー、アクリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ナイロン、ポリ乳酸、ポリベンゾイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、またはそれらの任意の派生物を含む。マイクロ流体デバイスは、ホモポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合わせを含むこともある。マイクロ流体デバイスは非弾性材料から形成されてもよい。あるいは、またはさらに、マイクロ流体デバイスは弾性材料から形成されてもよい。
【0079】
熱可塑性プラスチックおよび薄膜の両方は、シクロオレフィンポリマーから構成されてもよい。1つの適切な熱可塑性プラスチックは、Zeonor 1430R(Zeon Chemical、日本)であり、1つの適切な薄膜はZeonox 1060R(Zeon Chemical、日本)である。薄膜は、低圧では非ガス透過性であり、圧力下では少なくとも部分的にガス透過性である材料を含み得る。
【0080】
本開示のマイクロ流体デバイスの入口および出口は、機械的穿孔によって形成され得る。または、入口および出口は、熱可塑性プラスチックを融解、溶解、またはエッチングすることによって形成される。
【0081】
図4は、試料の処理および/または分析に有用なデバイスの製造の方法を例証する。図4では、射出成形プロセス(401)がマイクロ流体構造を形成するために使用される。マイクロ流体構造は、図1のAおよびBに示されるように、吸い上げ開口部を介して少なくとも1つのマイクロチャネルに接続されるマイクロチャンバーのアレイを含む。マイクロ流体構造は、薄膜によってキャップされる。キャッピングプロセスでは、マイクロ構造の少なくとも1つの側面の開口部は、マイクロ構造を閉じるおよび密閉するために覆われる。キャッピングは、射出成形されたマイクロ流体構造に薄膜を適用するプロセス(402)によって実施され得る。あるいは、キャッピングは、射出成形プロセス(401)の一部として薄膜の形成することによって実施され得る。
【0082】
別の例として、射出成形によって形成されるマイクロ構造の文脈で記載されるが、他の微細加工技術によって形成されたマイクロ流体デバイスもまた、上記のようなガス放出を可能にするためのそのような薄い熱可塑性プラスチックフィルムの使用から利益を得ることができる。そのような技術は、他の微細加工技術と同様に、微細加工、マイクロリソグラフィー、およびホットエンボスを含む。
【0083】
本開示のデバイスは、消耗デバイス(例えば、単一の試料の分析および/または処理などの単一使用のために設計された)または、再使用可能なデバイス(例えば、複数の試料の分析および/または処理などの複数の使用のために設計された)であってもよい。デバイスにおける包含物としての材料の選択は、デバイスが1回以上使用されるかどうかを反映し得る。例えば、消耗デバイスは、再使用可能なデバイスより高価ではない材料を含み得る。同様に、製造プロセスは、デバイスの使用に合わせて調節することができる。例えば、消費可能なデバイスのための作製プロセスは、より少ない廃棄物を生産すること、および/またはより少ないあるいはより安価な工程を含み得る。再使用可能なデバイスは、同じデバイスを使用して複数の試料の分析および/または処理を容易にするため、洗浄可能および/または滅菌可能であり得る。例えば、再使用可能なデバイスは、滅菌に適切な高温に耐えることができる材料を含み得る。消耗デバイスはそのような材料を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0084】
<試料を分析する方法>
一態様では、本開示は、核酸分子などの試料を分析するためにマイクロ流体デバイスを使用するための方法を提供する。核酸分子は、細菌などの病原体を含有するか、または含有する疑いがある試料中にあるかまたはそれに由来し得る。その方法は、本明細書に記載されるように、マイクロ流体デバイスを提供する工程を含み得る。デバイスはマイクロチャネルを含み得る。マイクロチャネルは、入口および出口に接続されたマイクロチャネルを含み得る。マイクロ流体デバイスは、複数の吸い上げ開口部によってマイクロチャネルに接続された複数のマイクロチャンバーをさらに含んでもよい。マイクロ流体デバイスは、薄膜がマイクロチャネル、複数のマイクロチャンバー、および複数の吸い上げ開口部をキャップするように、マイクロ流体デバイスの表面に隣接して配された薄膜(例えば、熱可塑性の薄膜)によって密閉され得る。試薬および/または試料は、入口または出口に加えられることもある。マイクロ流体デバイスは、試薬および/または試料とマイクロ流体デバイスとの間に第1の圧力差を提供し、試薬および/または試料をマイクロ流体デバイスへと流れさせることによって充填され得る。試薬および/または試料は、マイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間に第2の圧力差を加え、複数のマイクロチャンバーへと試薬および/または試料を移動させ、複数のマイクロチャンバー内のガスを薄膜通過させることによって、マイクロチャンバーへと分配され得る。第2の圧力差は、第1の圧力差よりも大きい場合もある。入口と出口との間の第3の圧力差は、流体をマイクロチャンバーへと導入することなく、その流体をマイクロチャネルへと導入するために加えられ得る。第3の圧力差は、第2の圧力差よりも小さい場合もある。試薬は、試料の前、試料の後、または試料と同時に添加され得る。試薬もまた、別の方法によってデバイスの1つ以上の区画において提供される。例えば、試薬は、薄膜を用いて1つ以上の区画を覆う前に、1つ以上の区画内に置かれ得る。
【0085】
デバイスの入口および出口は、空気圧ポンプまたは真空システムと流体連通され得る。空気圧ポンプまたは真空システムは、あるいは本開示のシステムの構成要素であるか、またはそれとは別であってもよい。試料および/または試薬の充填および分配は、マイクロ流体デバイスの様々な特徴にわたって圧力差を加えることによって行うことができる。試料および/または試薬の充填および分配は、試料および/または試薬を単離するために、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間のバルブを使用せず行うことができる。例えば、マイクロチャネルの充填は、充填される試料および/または試薬とマイクロチャネルとの間に圧力差を加えることによって行われ得る。この圧力差は、試料および/または試薬を加圧することによって、あるいはマイクロチャネルに真空を適用することによって達成され得る。マイクロチャンバーの充填は、マイクロチャネルとマイクロチャンバーとの間に圧力差を加えることによって行うことができる。これは、マイクロチャネルを加圧することによって、またはマイクロチャンバーに真空を適用することによって達成され得る。試料および/または試薬の分配は、流体とマイクロチャネルとの間に圧力差を加えることによって行うことができる。この圧力差は、流体を加圧することによって、またはマイクロチャネルに真空を適用することによって達成され得る。
【0086】
薄膜は、様々な加えられた圧力差の下で、様々な透過性の特性を有することができる。例えば、薄膜は、より小さな程度の圧力差であり得る第1の圧力差および第3の圧力差(例えば、低圧)において、非ガス透過性であってもよい。薄膜は、大きな程度の圧力差であり得る第2の圧力差(例えば、高圧)において、少なくとも部分的にガス透過性であってもよい。第1の圧力差および第3の圧力差は同じであってもよいし、または異なっていてもよい。第1の圧力差は、入口あるいは出口における試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力の差であり得る。マイクロ流体デバイスの充填中に、試薬の圧力は、マイクロ流体デバイスの圧力よりも高いこともある。マイクロ流体デバイスの充填中に、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力差(例えば、低圧)は、約8ポンド/平方インチ(psi)以下、約6psi以下、約4psi以下、約2psi以下、約1psi以下、またはそれ未満であってもよい。いくつかの例では、マイクロ流体デバイスの充填中に、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力差は、約1psiから約8psiであってもよい。いくつかの例では、マイクロ流体デバイスの充填中に、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力差は、約1psiから約6psiであってもよい。いくつかの例では、マイクロ流体デバイスの充填中に、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力差は、約1psiから約4psiであってもよい。マイクロ流体デバイスは、約20分以下、約15分以下、約10分以下、約5分以下、約3分以下、約2分以下、約1分以下、またはそれ未満の時間、試薬とマイクロ流体デバイスとの間に圧力差を加えることよって充填されることもある。
【0087】
充填されたマイクロ流体デバイスは、マイクロチャネル、吸い上げ開口部、マイクロチャンバー、または任意のそれらの組み合わせにおいて、試料または1つ以上の試薬を有することができる。マイクロチャンバーへの試料または1つ以上の試薬の再充填(backfilling)は、マイクロ流体デバイスを充填する際に発生するか、または第2の圧力差を加えている間に発生し得る。第2の圧力差(例えば、高圧)は、マイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間の圧力の差に相当し得る。第2の圧力差を加えている間に、高圧ドメイン中の第1の流体は、より低い圧力ドメイン中の第2の流体を、薄膜を通ってマイクロ流体デバイスから外へ押し出すことができる。第1および第2の流体は、液体または気体を含み得る。液体は、水性混合物または油性混合物を含んでもよい。第2の圧力差はマイクロチャネルを加圧することによって達成され得る。あるいは、またはさらに、第2の圧力差は、マイクロチャンバーに真空を適用することによって達成され得る。第2の圧力差を加えている間に、マイクロチャネル中の試料および/または試薬はマイクロチャンバーへと流れることができる。さらに、第2の圧力差を加えている間に、吸い上げ開口部、マイクロチャンバー、マイクロチャネル内に閉じ込められガスは、薄膜を通って放出され得る。マイクロチャンバーの再充填およびガス放出中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は、約6psi以上、約8psi以上、約10psi以上、約12psi以上、約14psi以上、約16psi以上、約18psi以上、約20psi以上、またはそれより大きくてもよい。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約20psiである。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約18psiである。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約16psiである。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約14psiである。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約12psiである。いくつかの例では、マイクロチャンバーの再充填中に、マイクロチャンバーとマイクロチャネルとの間の圧力差は約8psiから約10psiである。マイクロチャンバーは、約5分以上、約10分以上、約15分以上、約20分以上、約25分以上、約30分以上、またはそれを超える時間、圧力差を加えることによって、再充填およびガス放出され得る。
【0088】
試料および/または試薬は、マイクロチャネルから過剰な試料および/または試薬を取り除くことによって分配され得る。マイクロチャネルから過剰な試料および/または試薬を取り除くことは、1つのマイクロチャンバー中の試薬および/または試料が、吸い上げ開口部を介して、マイクロチャネルおよび他のマイクロチャンバーへと拡散することを妨げることができる。マイクロチャネル内の過剰な試料および/または試薬は、マイクロチャネルの入口または出口に流体を導入することによって取り除くことができる。流体の圧力は、マイクロチャネルの圧力よりも高くてもよく、それによって、流体とマイクロチャネルとの間に圧力差を生じさせる。流体は、酸素、窒素、二酸化炭素、空気、貴ガス、または任意のそれらの組み合わせであってもよい。試料の分配中に、流体とマイクロチャネルとの間の圧力差は、約8psi以下、約6psi以下、約4psi以下、約2psi以下、約1psi以下、またはそれ未満であってもよい。いくつかの例では、試料および/または試薬の分配中に、流体とマイクロチャネルとの間の圧力差は、約1psiから約8psiである。いくつかの例では、試料および/または試薬の分配中に、流体とマイクロチャネルとの間の圧力差は、約1psiから約6psiである。いくつかの例では、試料および/または試薬の分配中に、流体とマイクロチャネルとの間の圧力差は、約1psiから約4psiである。試料および/または試薬は、約20分以下、約15分以下、約10分以下、約5分以下、約3分以下、約2分以下、約1分以下、またはそれ未満の時間、流体とマイクロチャネルとの間に圧力差を加えることによって分配され得る。
【0089】
図3のA-Dは、図1のAに示されるマイクロ流体デバイスを使用するための方法を例証する。図3のAでは、入口(120)で空気圧ポンプ(300)を介して低圧が試薬に加えられ、マイクロチャネル(110)へと試薬を押し進め、それによって、吸い上げ開口部を介してマイクロチャンバーを充填する。圧力は、試薬をマイクロチャネルを通って流れさせ、それによって吸い上げ開口部を介してマイクロチャンバーへと流れさせる。この時間において、気泡(301)などのガス気泡は、マイクロチャンバー、吸い上げ開口部、またはマイクロチャネル内に残ることもある。低圧を加えることによる充填は、マイクロチャンバー、吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルが試薬で実質的に充填されるまで継続され得る。試薬は、ポリメラーゼ連鎖反応で使用される試薬であってもよい。試薬は、マイクロ流体デバイスの1つのマイクロチャンバー当たり、試薬中に1つだけのPCR鋳型しか存在しないように希釈され得る。例えば、デバイスの複数の区画の少なくとも部分集合の各区画は、最大で1つの核酸分子を含むことができる。いくつかの例において、デバイスの複数の区画の部分集合の各区画は、ただ1つの核酸分子を含むことができる。
【0090】
図3のBにおいて、空気圧ポンプ(300)は、入口(120)および出口(130)の両方に接続され、そして高圧が加えられる。高圧は試薬を介して伝えられ、気泡(301)などのガス気泡に加えられる。高圧の影響下では、薄膜(150)はガス透過性となり、気泡(301)は薄膜(150)を介して放出することができる。この高圧を加えることにより、マイクロチャンバー、吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルにはガス気泡が実質的にない状態となり、それによってファウリングを避けることができる。
【0091】
図3のCにおいて、流体は、入口(120)において、空気圧ポンプ(300)を介してガスに低圧を加えることによって再導入される。空気圧は、ガスが薄膜を通って放出することを可能にするのに十分ではないか、またはガス気泡を吸い上げ開口部およびマイクロチャンバーへと押し進めるのに十分高くない場合もある。代わりに、ガスは、各マイクロチャンバーおよび吸い上げ開口部において単離された試薬を残しつつ、マイクロチャネルから試薬の取り除くことができる。ガスは空気であってもよい。あるいは、ガスは、窒素、二酸化炭素、または貴ガスなどの不活性ガスであってもよい。そのようなガスは、試薬と空気の成分ガスとの間の反応を避けるために使用され得る。
【0092】
図3のDは、図3のCで低圧が加えられた後のシステムの状態を例証する。低圧ガスが加えられた後、マイクロチャネルから試薬が取り除かれ得る一方、マイクロチャンバーおよび吸い上げ開口部は試薬で充填されたままであってもよい。試薬は、吸い上げ開口部により生じる毛管力および高い表面張力により、マイクロチャンバー内で静止したままであり得る。毛管力および高い表面張力は、試薬がマイクロチャネルへと流れるのを防止し、試薬の蒸発を最小限にすることができる。図3のA-3のDに関して記載されるものと同様のプロセスは、デバイス内の試料を分配するために使用され得る。
【0093】
試料の分配は、試薬内の指示薬の存在により確認することができる。指示薬は、検出可能な部分を含む分子を含み得る。検出可能な部分は、放射性種、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、比色標識、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。放射性種の非限定的な例は、3H、14C、22Na、32P、33P、35S、42K、45Ca、59Fe、123I、124I、125I、131I、または203Hgを含む。蛍光標識の非限定的な例は、蛍光タンパク質、光学活性色素(例えば、蛍光色素)、有機金属のフルオロフォア、またはそれらの任意の組み合わせを含む。化学発光標識の非限定的な例は、ウミホタルルシフェラーゼ、ガウシアルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、およびホタルルシフェラーゼなどのルシフェラーゼのクラスの酵素を含む。酵素標識の非限定的な例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、または他の周知の標識を含む。
【0094】
指示薬分子は蛍光分子であってもよい。蛍光分子は、蛍光タンパク質、蛍光色素、および有機金属のフルオロフォアを含んでもよい。指示薬分子は、タンパク質フルオロフォアであってもよい。タンパク質フルオロフォアは、緑色蛍光タンパク質、(GFP、スペクトルの緑色領域で蛍光を発する蛍光タンパク質、通常500-550ナノメートルの波長を有する光を発する)、シアン蛍光タンパク質(CFP、スペクトルのシアン領域で蛍光を発する蛍光タンパク質、通常450-500ナノメートルの波長を有する光を発する)、赤色蛍光タンパク質(RFP、スペクトルの赤色領域で蛍光を発する蛍光タンパク質、通常600-650ナノメートルの波長を有する光を発する)を含み得る。タンパク質フルオロフォアの非限定的な例は、AcGFP,AcGFP1,AmCyan,AmCyan1,AQ143,AsRed2,Azami Green,Azurite,BFP,Cerulean,CFP,CGFP,Citrine,copGFP,CyPet,dKeima-Tandem,DsRed,dsRed-Express,DsRed-Monomer,DsRed2,dTomato,dTomato-Tandem,EBFP,EBFP2,ECFP,EGFP,Emerald,EosFP,EYFP,GFP,HcRed-Tandem,HcRed1,JRed、Katuska、Kusabira Orange、Kusabira Orange2、mApple、mBanana、mCerulean、mCFP、mCherry、mCitrine、mECFP、mEmerald、mGrape1、mGrape2、mHoneydew、Midori-Ishi Cyan、mKeima、mKO、mOrange、mOrange2、mPlum、mRaspberry、mRFP1、mRuby、mStrawberry、mTagBFP、mTangerine、mTeal、mTomato、mTurquoise、mWasabi、PhiYFP、ReAsH、Sapphire、Superfolder GFP、T-Sapphire、TagCFP、TagGFP、TagRFP、TagRFP-T、TagYFP、tdTomato、Topaz、TurboGFP、Venus、YFP、YPet、ZsGreen、およびZsYellow1の突然変異体およびスペクトル変異体(spectral variant)を含む。
【0095】
指示薬分子は蛍光色素であり得る。蛍光色素の非制限的な例は、SYBR green;SYBR blue;DAPI;ヨウ化プロピジウム(propidium iodine);Hoeste;SYBR gold;臭化エチジウム;アクリジン;プロフラビン;アクリジンオレンジ;アクリフラビン;フルオロクマニン(fluorcoumanin);エリプチシン;ダウノマイシン;クロロキン、ジスタマイシンD;クロモマイシン;ホミジウム;ミトラマイシン;ルテニウムポリピリジル;アントラマイシン;フェナントリジンおよびアクリジン;ヨウ化プロピジウム;ヨウ化ヘキシジウム(hexidium iodide);ジヒドロエチジウム;エチジウムモノアジド;ACMA;Hoechst 33258;Hoechst 33342;Hoechst 34580;DAPI;アクリジンオレンジ;7-AAD;アクチノマイシンD;LDS751;ヒドロキシスチルバミジン;SYTOX Blue;SYTOX Green;SYTOX Orange;POPO-1;POPO-3;YOYO-1;YOYO-3;TOTO-1;TOTO-3;JOJO-1;LOLO-1;BOBO-1;BOBO-3;PO-PRO-1;PO-PRO-3;BO-PRO-1;BO-PRO-3;TO-PRO-1;TO-PRO-3;TO-PRO-5;JO-PRO-1;LO-PRO-1;YO-PRO-1;YO-PRO-3;PicoGreen;OliGreen;RiboGreen;SYBR Gold;SYBR Green I;SYBR Green II;SYBR DX;SYTO-40、SYTO-41、SYTO-42、SYTO-43、SYTO-44、およびSYTO-45(青);SYTO-13、SYTO-16、SYTO-24、SYTO-21、SYTO-23、SYTO-12、SYTO-11、SYTO-20、SYTO-22、SYTO-15、SYTO-14、およびSYTO-25(緑);SYTO-81、SYTO-80、SYTO-82、SYTO-83、SYTO-84、およびSYTO-85(オレンジ);SYTO-64、SYTO-17、SYTO-59、SYTO-61、SYTO-62、SYTO-60、およびSYTO-63(赤);フルオレセイン;フルオレセインイソチオシアネート(FITC);イソチオシアン酸テトラメチルローダミン(TRITC);ローダミン;テトラメチルローダミン;R-フィコエリトリン;Cy-2;Cy-3;Cy-3.5;Cy-5;Cy5.5;;Cy-7;テキサスレッド;Phar-Red;アロフィコシアニン(APC);Sybr Green I;Sybr Green II;Sybr Gold;CellTracker Green;7-AAD;エチジウムホモダイマーI;エチジウムホモダイマーII;エチジウムホモダイマーIII;ウンベリフェロン;エオシン;緑色蛍光タンパク質;エリトロシン;クマリン;メチルクマリン;ピレン;マラカイトグリーン;スチルベン;ルシファーイエロー;カスケードブルー(cascade blue);ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン;ダンシルクロリド;ユウロピウムおよびテルビウムを含むものなどの蛍光性ランタニド錯体、カルボキシ・テトラクロロ・フルオレセイン;5および/または)6-カルボキシ・フルオレセイン(FAM);5- (または6-)ヨードアセトアミドフルオレセイン;5-{[2(および3)-5-(アセチルメルカプト)-スクシニル]アミノ}フルオレセイン(SAMSA-フルオレセイン);リサミンローダミンBスルホニルクロリド;5および/または6カルボキシローダミン(ROX);7-アミノ-メチル-クマリン;7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸(AMCA);BODIPY フルオロフォア;8-メトキシピレン-1;3;6-トリスルホン酸三ナトリウム塩;3;6-ジスルホン酸塩-4-アミノ-ナフタルイミド;フィコビリンタンパク質;AlexaFluor350,405,430,488,532,546,555,568,594,610,633,635,647,660,680,700,750,および790の色素;DyLight350,405,488,550,594,633,650,680,755,および80の0色素;ならびに、他のフルオロフォアを含む。
【0096】
指示薬分子は、有機金属のフルオロフォアであり得る。有機金属のフルオロフォアの非限定的な例は、ランタニドイオンキレートを含み、ランタニドイオンキレートの非限定的な例は、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(lll)、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(5-アミノ-1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(lll)、およびLumi4-Tbクリプテートを含む。
【0097】
信号は、マイクロ流体デバイス、またはその複数の区画(例えば、マイクロチャンバー)の部分集合から収集され得る(例えば、画像が撮られる)。信号の収集は、デバイスまたはその複数の区画の部分集合の画像を撮ることを含み得る。信号(例えば、画像)は、単一のマイクロチャンバー、マイクロチャンバーのアレイ、またはマイクロチャンバーの複数のアレイから同時に収集できる。信号は、マイクロ流体デバイスの本体を介して、マイクロ流体デバイスの薄膜を介して、または両方を介して、収集され得る。マイクロ流体デバイスの本体は、実質的に光学的に透明であってもよい。あるいは、マイクロ流体デバイスの本体は、実質的に、光学的に不透明であってもよい。同様に、薄膜は実質的に光学的に透明であってもよい。あるいは、マイクロ流体デバイスの本体は、実質的に、光学的に不透明であってもよい。
【0098】
信号は、任意の有用な時に、任意の有用な頻度で、マイクロ流体デバイスまたはその複数の区画の部分集合から収集することができる。例えば、信号(例えば、画像)は、試薬または試料でマイクロ流体デバイスを充填する前に収集されてもよい。信号はまた、試薬または試料でマイクロ流体デバイスを充填している間に収集されてもよい。あるいは、またはさらに、信号は、試薬または試料でマイクロ流体デバイスを充填した後に収集されてもよい。例えば、信号は、試薬または試料の分配を確認するために収集され得る。反応の産物(例えば、増幅産物)をモニターするために、反応(例えば、核酸増幅反応)の間に信号が収集されてもよい。同様に、デバイスまたはその複数の区画の部分集合の制御された加熱中(例えば、高解像度融解分析中に)に信号が収集されてもよい。特定の時点など、所定の間隔で信号が収集されてもよい。あるいは、またはさらに、映像は、マイクロ流体デバイスまたはその複数の区画の部分集合から撮られてもよい。所定の間隔は、反応中、少なくとも300秒毎、少なくとも240秒毎、少なくとも180秒毎、少なくとも120秒毎、少なくとも90秒毎、少なくとも60秒毎、少なくとも30秒毎、少なくとも15秒毎、少なくとも10秒毎、少なくとも5秒毎、少なくとも4秒毎、少なくとも3秒毎、少なくとも2秒毎、少なくとも1秒毎、またはより頻繁に信号を収集すること(例えば、画像を撮ること)を含み得る。本明細書に記載されるように、信号はさらに、プロセッサからの指示に応じて収集されてもよい。
【0099】
マイクロ流体デバイスの使用に関する本明細書に記載された方法は、試料からの複数の核酸分子の増幅を含み得る。マイクロ流体デバイスは、核酸分子、増幅反応に必要な成分(例えばプライマー、ポリメラーゼ、およびデオキシリボヌクレオチド)、指示薬分子、ならびに増幅プローブなどの1つ以上増幅試薬で充填され得る。本明細書に記載されるように、増幅反応は、複数のマイクロチャンバーまたはその部分集合の熱サイクルを含み得る。核酸増幅の検出は、マイクロ流体デバイスの複数のマイクロチャンバーあるいはその部分集合から信号を収集すること(例えば、画像化)によって行われ得る。核酸分子は、核酸分子がうまく増幅されたマイクロチャンバーを数え、ポアソン統計を適用することによって、定量化され得る。核酸分子の量もまた、増幅反応の全体にわたって、様々な時点で収集された信号を処理することによって定量化され得る。例えば、核酸増幅反応の各熱サイクル(例えば、各増幅サイクル)中に、1つ以上の信号が収集され得、その信号は、例えばリアルタイムあるいは定量的ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCRまたはqPCR)と同様に増幅率を判定するために使用され得る。核酸増幅および定量化は、単一の統合ユニットで、例えば、所定の区画あるいはデバイスの複数の区画の部分集合内において、実施され得る。
【0100】
様々な核酸増幅反応は、試料中の核酸分子を増幅して増幅産物を生成するために使用され得る。核酸標的の増幅は、線形、指数関数的、またはそれらの組み合わせであってもよい。核酸の増幅方法の非限定的な例は、プライマー伸長、ポリメラーゼ連鎖反応、逆転写、等温増幅、リガーゼ連鎖反応、ヘリカーゼ依存性増幅、不斉増幅、ローリングサークル増幅、および多置換増幅を含む。増幅反応の増幅産物は、DNAまたはRNAであり得る。DNA分子を含む試料については、任意のDNA増幅方法が使用され得る。DNA増幅方法としては、限定されないが、PCR、リアルタイムPCR、アセンブリPCR、非対称PCR、デジタルPCR、ダイヤルアウトPCR(dial-out PCR)、ヘリカーゼ依存性PCR(helicase-dependent PCR)、ネステッドPCR、ホットスタートPCR、逆PCR、メチル化特異的PCR、ミニプライマーPCR(miniprimer PCR)、マルチプレックスPCR、重複伸長PCR、熱非対称インターレースPCR(thermal asymmetric interlaced PCR)、タッチダウンPCR、およびリガーゼ連鎖反応が挙げられる。DNA増幅は、線形、指数関数、またはその任意の組み合わせであってもよい。本明細書に記載されるように、DNA増幅もまた、デジタルPCR(dPCR)、リアルタイム定量的PCR(qPCR)、あるいは定量的デジタルPCR(qdPCR)を用いて達成され得る。
【0101】
核酸増幅に必要な試薬は、重合酵素、リバースプライマー、フォワードプライマー、および増幅プローブを含み得る。重合酵素の例としては、限定されることなく、核酸ポリメラーゼ、転写酵素、またはリガーゼ(すなわち、結合の形成を触媒する酵素)が挙げられる。重合酵素は、自然発生のものか、または合成されたものでもよい。ポリメラーゼの例は、DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼ、熱安定性ポリメラーゼ、野生型ポリメラーゼ、修飾されたポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼΦ29(phi29)DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ Pwoポリメラーゼ、VENTポリメラーゼ、DEEPVENTポリメラーゼ、Ex-Taqポリメラーゼ、LA-Tawポリメラーゼ、Ssoポリメラーゼ Pocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、Mthポリメラーゼ ES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Tcaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Platinum Taqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、PfuTuboポリメラーゼ、Pyrobestポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、3’5’エキソヌクレアーゼ活性を有するクレノウ断片ポリメラーゼ、および変異体、修飾した産物ならびにその誘導体を含む。ホットスタートポリメラーゼについては、約2分間から10分間、約92℃から95℃の温度での変性工程が必要とされ得る。
【0102】
核酸増幅反応は、増幅プローブを含み得る。増幅プローブは配列特異的オリゴヌクレオチドプローブであってもよい。増幅プローブは、増幅産物とハイブリダイズされたときに、光学活性であってもよい。増幅プローブは、核酸増幅が進行するにつれてのみ検知できる。核酸分子を含む複数の区画から収集された信号(例えば、光学信号)の強度は、区画に含まれる増幅産物の量に比例し得る。例えば、特定の区画から収集された信号は、特定の区画における増幅産物の量に比例し得る。プローブは、本明細書に記載される光学活性な検出可能な部分(例えば、色素)のいずれかに連結され得、さらに、関連する色素の光学活性を遮断できるクエンチャーを含むことができる。検出可能な部分として有用であり得るプローブの非限定的な例は、TaqManプローブ、TaqMan Tamaraプローブ、TaqMan MGBプローブ、Lionプローブ、ロックト核酸プローブ、あるいは分子ビーコンを含む。プローブの光学活性を遮断するのに有用であり得るクエンチャーの非限定的な例は、Black Hole Quencher(BHQ)、Iowa Black FQおよびRQクエンチャー、または内部ZENクエンチャーを含む。あるいは、またはさらに、プローブまたはクエンチャーは、本開示の方法の文脈において有用な任意の既知のプローブであってもよい。
【0103】
増幅プローブは、二重標識蛍光プローブであってもよい。二重標識プローブは、核酸に連結された、蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーを含み得る。蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーは、互いに近接して配置されてもよい。蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーの接近によって、蛍光レポーターの光学活性が遮断されることもある。二重標識プローブは、増幅されるべき核酸分子に結合することができる。増幅中に、蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーは、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性により切断されることもある。増幅プローブから蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーを切断することは、蛍光レポーターにその光学活性を回復させ、検出を可能にし得る。二重標識の蛍光プローブは、約450ナノメートル(nm)、500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、またはそれより高い励起波長の最大値、および約500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、またはそれより高い発光波長の最大値を有する5’蛍光レポーターを含み得る。二重標識の蛍光プローブはまた、3’蛍光クエンチャーを含んでもよい。蛍光クエンチャーは、約380nmから550nm、390nmから625nm 470nmから560nm 480nmから580nm、550nmから650nm、550nmから750nm、または620nmから730nmの間の蛍光の発光波長を消光することもある。
【0104】
デバイスのマイクロチャンバー内で行なわれる核酸増幅反応は、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンバー、またその部分集合の熱サイクルを含むことができる。熱サイクルは、マイクロ流体デバイスに加熱または冷却を加えることよって、マイクロ流体デバイスの温度を制御することを含み得る。加熱方法もしくは冷却方法は、抵抗加熱もしくは抵抗冷却、放射加熱もしくは放射冷却、伝導加熱もしくは伝導冷却、対流加熱もしくは対流冷却、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。熱サイクルは、ある期間にわたって核酸分子を変性させるのに十分高い温度でマイクロチャンバーをインキュベートし、その後、伸長期間にわたって伸長温度でマイクロチャンバーをインキュベートするサイクルを含み得る。熱サイクルはまた、アニーリング期間にわたって、アニーリング温度で、核酸分子にプライマーをアニールするのに十分な温度で、マイクロチャンバーをインキュベートするサイクルを含み得る。変性温度は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および所望の反応条件に応じて変動することもある。変性温度は、約80°Cから約110°Cであり得る。変性温度は、約85°Cから約105°Cであり得る。変性温度は、約90°Cから約100°Cであり得る。変性温度は、約90°Cから約98°Cであり得る。変性温度は、約92°Cから約95°Cであり得る。変性温度は、少なくとも約80°C、少なくとも約81°C、少なくとも約82°C、少なくとも約83°C、少なくとも約84°C、少なくとも約85°C、少なくとも約86°C、少なくとも約87°C、少なくとも約88°C、少なくとも約89°C、少なくとも約90°C、少なくとも約91°C、少なくとも約92°C、少なくとも約93°C、少なくとも約94°C、少なくとも約95°C、少なくとも約96°C、少なくとも約97°C、少なくとも約98°C、少なくとも約99°C、少なくとも約100°C、またはそれより高くてもよい。
【0105】
変性の期間は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および所望の反応条件に応じて変動することもある。変性の期間は、約300秒以下、240秒以下、180秒以下、120秒以下、90秒以下、60秒以下、55秒以下、50秒以下、45秒以下、40秒以下、35秒以下、30秒以下、25秒以下、20秒以下、15秒以下、10秒以下、5秒以下、2秒以下、または1秒以下であってもよい。あるいは、変性の期間は、わずか約120秒、90秒、60秒、55秒、50秒、45秒、40秒、35秒、30秒、25秒、20秒、15秒、10秒、5秒、2秒、または1秒であってもよい。
【0106】
伸長温度は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および所望の反応条件に応じて変動することもある。伸長温度は約30°Cから約80°Cであり得る。伸長温度は約35°Cから約75°Cであり得る。伸長温度は約45°Cから約65°Cであり得る。伸長温度は約55°Cから約65°Cであり得る。伸長温度は約40°Cから約60°Cであり得る。伸長温度は、少なくとも約35°C、少なくとも約36°C、少なくとも約37°C、少なくとも約38°C、少なくとも約39°C、少なくとも約40°C、少なくとも約41°C、少なくとも約42°C、少なくとも約43°C、少なくとも約44°C、少なくとも約45°C、少なくとも約46°C、少なくとも約47°C、少なくとも約48°C、少なくとも約49°C、少なくとも約50°C、少なくとも約51°C、少なくとも約52°C、少なくとも約53°C、少なくとも約54°C、少なくとも約55°C、少なくとも約56°C、少なくとも約57°C、少なくとも約58°C、少なくとも約59°C、少なくとも約60°C、少なくとも約61°C、少なくとも約62°C、少なくとも約63°C、少なくとも約64°C、少なくとも約65°C、少なくとも約66°C、少なくとも約67°C、少なくとも約68°C、少なくとも約69°C、少なくとも約70°C、少なくとも約71℃、少なくとも約72℃、少なくとも約73℃、少なくとも約74℃、少なくとも約75℃、少なくとも約76℃、少なくとも約77℃、少なくとも約78℃、少なくとも約79℃、または少なくとも約80℃であってもよい。
【0107】
伸長時間は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および所望の反応条件に応じて変動することもある。伸長時間は、約300秒以下、240秒以下、180秒以下、120秒以下、90秒以下、60秒以下、55秒以下、50秒以下、45秒以下、40秒以下、35秒以下、30秒以下、25秒以下、20秒以下、15秒以下、10秒以下、5秒以下、2秒以下、または1秒以下であってもよい。あるいは、伸長時間は、わずか約120秒、90秒、60秒、55秒、50秒、45秒、40秒、35秒、30秒、25秒、20秒、15秒、10秒、5秒、2秒、または1秒であってもよい。
【0108】
アニーリング温度は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および所望の反応条件に応じて変動することもある。アニーリング温度は約30°Cから約80°Cであり得る。アニーリング温度は約35°Cから約75°Cであり得る。アニーリング温度は約45°Cから約65°Cであり得る。アニーリング温度は約55°Cから約65°Cであり得る。アニーリング温度は約40°Cから約60°Cであり得る。アニーリング温度は、少なくとも約35°C、少なくとも約36°C、少なくとも約37°C、少なくとも約38°C、少なくとも約39°C、少なくとも約40°C、少なくとも約41°C、少なくとも約42°C、少なくとも約43°C、少なくとも約44°C、少なくとも約45°C、少なくとも約46°C、少なくとも約47°C、少なくとも約48°C、少なくとも約49°C、少なくとも約50°C、少なくとも約51°C、少なくとも約52°C、少なくとも約53°C、少なくとも約54°C、少なくとも約55°C、少なくとも約56°C、少なくとも約57°C、少なくとも約58°C、少なくとも約59°C、少なくとも約60°C、少なくとも約61°C、少なくとも約62°C、少なくとも約63°C、少なくとも約64°C、少なくとも約65°C、少なくとも約66°C、少なくとも約67°C、少なくとも約68°C、少なくとも約69°C、少なくとも約70°C、少なくとも約71℃、少なくとも約72℃、少なくとも約73℃、少なくとも約74℃、少なくとも約75℃、少なくとも約76℃、少なくとも約77℃、少なくとも約78℃、少なくとも約79℃、または少なくとも約80℃であってもよい。
【0109】
アニーリング時間は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および所望の反応条件に応じて変動することもある。アニーリング期間は、約300秒以下、240秒以下、180秒以下、120秒以下、90秒以下、60秒以下、55秒以下、50秒以下、45秒以下、40秒以下、35秒以下、30秒以下、25秒以下、20秒以下、15秒以下、10秒以下、5秒以下、2秒以下、または1秒以下であってもよい。あるいは、アニーリング期間は、わずか約120秒、90秒、60秒、55秒、50秒、45秒、40秒、35秒、30秒、25秒、20秒、15秒、10秒、5秒、2秒、または1秒であってもよい。
【0110】
核酸増幅は、熱サイクルの多数のサイクル(例えば、多数の増幅サイクル)を含み得る。任意の適切な数のサイクルが実施され得る。実施されるサイクルの数は、約5サイクルよりも多い、約10サイクルよりも多い、約15サイクルよりも多い、約20サイクルよりも多い、約30サイクルよりも多い、約40サイクルよりも多い、約50サイクルよりも多い、約60サイクルよりも多い、約70サイクルよりも多い、約80サイクルよりも多い、約90サイクルよりも多い、約100サイクルよりも多いか、またはそれ以上であってもよい。実施されるサイクルの数は、検出可能な増幅産物を得るのに必要なサイクルの数に依拠し得る。例えば、PCR(例えば、dPCR、qPCR、あるいはqdPCR)の間の核酸増幅を検知するのに必要なサイクル数は、約100以下、約90以下、約80以下、約70以下、約60以下、約50以下、約40以下、約30以下、約20以下、約15以下、約10以下、約5以下のサイクル、またはそれより少なくてもよい。
【0111】
検出可能な量の増幅産物を達成するための時間は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、使用される増幅反応、使用される増幅サイクル数、および所望の反応条件に応じて変動することもある。検出可能な量の増幅産物を達成するための時間は、約120分以下、90分以下、60分以下、50分以下、40分以下、30分以下、20分以下、10分以下、または5分以下であってもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、ランピングレート(すなわちマイクロチャンバーがある温度から別の温度に移行する速度)は、増幅にとって重要である。例えば、増幅反応が検出可能な量の増幅産物がもたらす温度および時間は、ランピングレートに応じて変動することもある。ランピングレートは、増幅中に使用される、時間、温度、または時間および温度の両方に影響を与え得る。ランピングレートは、サイクル間で一定であってもよいか、サイクル間に変動してもよい。ランピングレートは、処理されている試料に基づいて調整され得る。例えば、最適なランピングレートは、ロバストで効率的な増幅方法を提供するために選択され得る。
【0113】
図5は、上記のマイクロ流体デバイスと共に利用されるデジタルPCRプロセスを例証する。工程(501)において、試薬は図3のA-図3のDに示されるように分配される。工程(502)において、試薬は、マイクロチャンバーにおける試薬に対してPCR反応を実行するために熱サイクルにさらされる。この工程は、例えば、フラットブロックサーマルサイクラーを使用して実施されてもよい。工程(503)において、画像の取得は、どのマイクロチャンバーがうまくPCR反応を実行したか判定するために実施される。画像の取得は、例えば、3色プローブ検出ユニットを使用して実施されてもよい。工程(504)で、ポアソン統計が、工程(503)で判定されたマイクロチャンバーの計算に適用され、陽性のチャンバーの生の数を核酸濃度に変換する。
【0114】
複数の核酸分子を分析するための方法は、本明細書に記載されるような複数の区画を含むデバイスを提供することを含み得る。複数の区画の少なくとも部分集合は、複数の核酸分子(例えば、デオキシリボ核酸またはリボ核酸分子)を含み得る。複数の区画の部分集合の各区画は、区画を外部環境から分離する少なくとも1つの障壁を通る、区画から区画の外部の環境へのガスフローを可能にするように構成され得る。その後、複数の区画の部分集合は、複数の核酸分子の少なくとも部分集合から増幅産物を生成するために、複数の核酸分子を使用して、核酸増幅反応を行なうのに十分な条件にさらされ得る。複数の区画の部分集合がこれらの条件にさらされている間、信号は、複数の時点にわたって、複数の区画の部分集合から収集され得る。その後、複数の区画から収集された信号は、複数の区画の部分集合中の核酸分子の数を判定するために処理され得る。増幅反応が進行中である間、あるいは増幅反応が完成した後、信号処理は行なわれ得る。
【0115】
本明細書に記載されるように、複数の区画の部分集合を、核酸増幅反応を行なうのに十分な条件にさらすことは熱サイクルを含み得る。熱サイクルは、変性段階、伸張段階、およびアニーリング段階を含み得、温度および期間の任意の有用な組み合わせを含み得る。任意の有用な数の熱サイクルが実施され得る。例えば、増幅反応が進行中の間に信号が処理されている場合、熱サイクリングプロセスを制御するプロセッサは、熱サイクリングが終わるようにプログラムされた後に閾値に到達することができる。あるいは、ユーザーは、増幅および信号収集のプロセスを行なうシステムと相互に作用し、所定の数のサイクルの後に熱サイクルを終了することを選択することができる。熱サイクルは、フラットブロックサーマルサイクラーまたは任意の他の有用な温度制御装置を使用して実施されてもよい。
【0116】
複数の区画の部分集合から信号を収集することは、熱サイクルごとに、1つの区画当たり1つを超える信号の収集を含み得る。例えば、信号は、各アニーリング段階中、各伸張段階中、各変性段階中、またはその任意の組み合わせ中に収集されてもよい。あるいは、方法を実行するシステムは、予め定められた複数の時点で信号を収集するようにプログラムされてもよい。これらの時点は、等間隔(例えば、5秒毎)であるか、または予め定められたパターン(例えば、最初の100秒間は5秒毎、その後、20秒毎または任意の他の有用なパターン)に従ってもよい。本明細書に記載されるように、信号の収集は画像化を含み得る。検出器は、デバイスの複数の区画の部分集合のすべてを同時に画像化するように構成され得る。画像化のための検出器は、2以上の波長で蛍光発光を検知することができる。そのような検出器は、様々な出発核酸分子(例えば、鋳型)に対応する核酸増幅産物を測定することができる。例えば、2つの異なる核酸分子を含む試料は、2つの異なるプライマーにさらされ得、その各々は、異なる検出可能な標識(例えば、色素または蛍光プローブ)を含み、異なる核酸分子に特異的である。様々な検出可能な標識は、様々な波長で蛍光信号を発することができ、その各々は同じ検出器によって検出できる。複数の区画の部分集合中の核酸分子の数の判定は、各区画における増幅産物の量に比例する各区画の光強度を判定することを含む。
【0117】
本明細書に記載されるように、核酸増幅反応は1つ以上試薬を含む。例えば、プライマー、デオキシリボヌクレオチド、緩衝液、補助因子、インターカレート色素、およびポリメラーゼなどの試薬が使用されてもよい。これらの試薬は、試料がデバイスに充填される前、その後 またはそれと同時に、デバイスに充填され得る。複数の核酸分子は、制御された流体流動(例えば、図3のA-3のDに関して記載されるように)を使用して、デバイスの複数の区画に充填されてもよい。複数の区画の部分集合中のガスは、区画から外部環境までの流れにさらされてもよい。例えば、本明細書に記載されるように、核酸分子を含む試料でデバイスまたはその複数の区画の部分集合を充填することは、区画から障壁を通ったガス放出を引き起こすことができる。
【0118】
核酸分子を分析する方法で使用されるデバイスは、本明細書に記載される任意の特徴を有し得る。デバイスの障壁は、熱可塑性材料などのポリマー材料を含むか、または薄膜であってもよい。障壁は、実質的に光学的に透明であり得る。障壁は、約50μmから約200μm(例えば、約50μm、100μm、150μm、または200μm)の厚さを有し得る。デバイスは、少なくとも1つの入口、少なくとも1つの出口、および複数の吸い上げ開口部を含む少なくとも1つのマイクロチャネルを含み得る。複数の区画の部分集合は、複数の吸い上げ開口部によって、マイクロチャネルと流体連通され得る。複数の区画は、約1,000から約20,000の区画(例えば、少なくとも約1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、10,000、15,000、または20,000の区画)を含み得る。
【0119】
図11は、上記のマイクロ流体デバイスと共に利用される定量的デジタルPCRプロセスを例証する。図11のAは、典型的なマイクロ流体デバイスの区画の部分集合の表示を示す。ある区画では、核酸鋳型は存在しない;他の区画では、1つ以上鋳型が存在する。図11のBは、典型的なデバイスの各区画における試料の増幅動態を例証する。図11のBに例証されるように、存在する異なる数の核酸鋳型を有する区画は、異なる増幅動態を示す。鋳型のない区画は増幅しない。そうでなければ、他の区画と比較してより多くの存在する鋳型を有する場合、区画はより速く増幅する。各縦方向の破線は、合計5つの増幅サイクルに対する単一の増幅サイクルを表わす。5つのサイクルが例証されるが、方法の特定の特徴および/またはシステムの構造に応じて任意の数のサイクルが実施され得る。例えば、より広範な数の鋳型が任意の所定の区画の中に潜在的に存在する時、より多くのサイクルが絶対的な定量化を提供するために必要とされ得るため、任意の所定の区画の中に潜在的に存在し得る核酸分子の数、使用された試薬、および他の反応条件は、必要なサイクルの数に影響を及ぼし得る。図11のCは、図11のBに示す増幅動態に適用されたqdPCRプロセスの結果を例証する。具体的には、図11Cは、図11のBで示される5つのPCR増幅サイクル中に測定された増幅動態に基づいて、各区画に存在すると計算された核酸鋳型の数を例証する。
【0120】
図16は、本明細書に記載されるデバイスを使用して、qdPCRを実施する方法を例証する。工程(1601)において、デバイスの複数の区画またはその部分集合に、1つ以上試薬が充填される。試薬および/または試料の充填は、例えば、本明細書に記載されるように実施され得る。場合によっては、試薬は、区画上に薄膜を配置する(例えば、デバイスの密閉)前に、(例えば、自動化された機械的プロセスを使用して)区画またはデバイスの別の部分に配置されてもよい。例えば、試薬パケット、ブリスターパック、ゲル、または他のそのような構成要素は、デバイスを密閉する前に区画に置かれてもよい。本明細書に記載されるように、複数の核酸分子を含む試料もまた添加され得る。
【0121】
工程(1602)において、デバイスはqdPCRを実施するためのシステムにロードされてもよい。例えば、デバイスは、加熱ブロックなどの熱ユニット上に物理的に置かれて、空気式固定装置で定位置に固定されるか、または分析システムのハウジング中のスロット、溝、あるいはくぼみに置かれ得る。レジストレーションマークおよび/またはメカニカルキーは、デバイスの配置を容易にすることができる。デバイスは、配置および分析のためのデバイスを連続した順序に並べる機械的な充填ユニットにロードされ得る。場合によっては、デバイスが分析システム内に置かれた後、工程(1601)および試薬がデバイスに充填される前に、工程(1602)が実施される。そのようなシステムは、本明細書に記載されるように、試薬をデバイスに充填させるための、流体流動装置、および/または貯槽、ポンプ、バルブ、ならびにメーターを含む他の機械的および流動性の構成要素を含み得る。
【0122】
工程(1603)において、核酸増幅反応は、デバイスの複数の区画の部分集合またはその部分集合に充填された複数の核酸を使用して実施される。本明細書に記載されるように、増幅反応は、1つ以上熱サイクルを含み得る。例えば、PCR増幅反応は、変性段階、アニーリング段階、および伸長段階を含み得る。増幅サイクルは、約60から180秒間続き得る(例えば、変性温度で30秒と、アニーリング温度/伸長温度で120秒とで、約150秒)。さらなる工程および/または異なる期間が使用されてもよい。
【0123】
工程(1604)において、信号は、デバイスの複数の区画の部分集合における各区画から収集される。例えば、画像は、区画から得られ、光学信号が測定され得る。画像化は、例えば、熱ユニットをスキャンするために光学ユニット移動させることによって、光学ユニットをスキャンするために熱ユニットを移動させることによって、またはデバイスまたはその複数の区画の部分集合の画像化を可能にするために、光学ユニットおよび熱ユニットの両方を移動させることによって、実施され得る。全デバイスの信号は、(例えば、1つ以上カメラなどの1つ以上の検出器を使用して、または全デバイスから一度に信号を収集するように構成された単一の検出器を使用して)一度に収集されるか、あるいは、信号は、(例えば、デバイスの複数の区画の部分集合に対応する)デバイスの一部のみから一度に収集され得る。前者の場合、熱ユニットのスキャンおよび/または検出器は必要とされないこともある。信号は、例えば、各サイクル中に増幅動態の推定値を提供するために増幅中に1回以上収集されてもよい。場合によっては、信号は、増幅サイクル完了後に起こった増幅の量を判定するために、各増幅サイクルの後に一度だけ収集され得る。信号の収集は、デバイスの複数の区画の部分集合の画像化を含み得る。画像化は、二本鎖核酸とインターカレートする蛍光色素を使用して、または相補的配列と反応した後にのみ蛍光を発する、クエンチされたDNAプローブの使用することよって実施され得る。いずれの場合も、蛍光プローブに適した励起光源を用いて区画を照らすことによって、またはどの区画が蛍光を発するかおよび蛍光強度を判定することによって、画像化が実施され得る。場合によっては、工程(1603)および(1604)は、核酸増幅反応(例えば、熱サイクル)の間に、収集される(例えば、画像化)信号を用いて平行して実施され得る。
【0124】
工程(1605)において、デバイスの複数の区画の部分集合の各区画における増幅動態は、工程(1604)で収集された信号に基づいて判定される。増幅率の判定によって、複数の区画の部分集合の各区画に含まれた核酸分子のもとの数が推定され得る。例えば、図11のBでは、区画のアレイの増幅動態は、5つの増幅サイクルに対応して示される。アレイ中の各区画に対応する核酸分子の数は、図11のCに示され、例えば、背景強度を超える蛍光の量を測定することによって、およびそれを多くの核酸分子(例えば、鋳型)と関連づけることによって判定され得る。そのような例において、もともとより多くの核酸分子を含んでいた区画は、より迅速に増幅し、したがって検出可能な蛍光をより早く生成する。蛍光が検出可能になる時間(例えば、増幅サイクル)が早くなればなるほど、より多くの鋳型が区画にもともと存在していた。したがって、存在する核酸分子の数は、蛍光が初めて検出可能になる時に完了したサイクルの数、または残っているサイクルの数によって判定され得る。増幅動態を判定する他の方法も適用されてもよい。それぞれにおいて、最終の測定は、収集した信号の量、信号が検出されるタイミング、および/または信号生成の増加率に基づいた各区画中にもともと存在する鋳型の数である。
【0125】
工程(1606)において、デバイスの複数の区画の部分集合中に存在する核酸分子の合計数は、複数の区画の部分集合の各区画中にもともと存在する核酸分子の数を合計することによって判定される。
【0126】
工程(1607)において、デバイスは、qdPCRを実施するためのシステムからアンロードされる。デバイスをアンロード(例えば、取り除く)ことは、工程(1601)の充填手順または異なる手順の反映を含み得る。例えば、手動でロードされたデバイスは、機械的積み込み装置によって自動的にアンロードされるか、または他の方法で(例えば、真空のピックアンドプレイスシステムによって)アンロードされ得る。その後、そのプロセスは別のデバイスを用いて反復され得る。
【0127】
<核酸試料の熱力学的分析のための方法>
本開示は、試料の熱力学的分析のための方法を提供する。例えば、本明細書に記載されるデバイスは、高解像度融解(HRM)分析に使用され得る。複数の核酸分子を分析するための方法は、本明細書に記載されるような複数の区画を含むデバイスを提供することを含み得る。複数の区画の少なくとも部分集合は、複数の核酸分子(例えばデオキシリボ核酸またはリボ核酸分子)を含み得る。複数の区画の部分集合の各区画は、区画を外部環境から分離する少なくとも1つの障壁を通る、区画から区画の外部の環境へのガスフローを可能にするように構成され得る。その後、複数の区画の部分集合は制御された加熱にさらされ得る。複数の区画の部分集合がこれらの条件にさらされている間、信号は、例えば、複数の時点にわたって、複数の区画の部分集合から収集され得る。その後、複数の区画から集められた信号は、複数の区画の部分集合における複数の核酸分子の少なくとも部分集合の融点を示すデータをもたらすために処理され得る。制御された加熱が進行している間、または制御された加熱が完了した後、信号の処理が行われ得る。
【0128】
方法は、核酸試料の増幅産物として複数の核酸分子をもたらすのに十分な条件下で、核酸試料に対して(例えば、本明細書に記載されるように)核酸増幅反応を実施することをさらに含み得る。増幅反応は、複数の区画の部分集合において実施され得る。例えば、核酸分子を含む試料は、核酸増幅反応を実施する前に複数の区画の部分集合に充填され得る。増幅反応の実施は、複数の区画の部分集合の制御された加熱を実施するために使用される同じ熱ユニット(例えば、ヒーター)を用いて、複数の区画の部分集合を熱することを含み得る。増幅反応は、1つ以上プライマー、デオキシリボヌクレオチド、緩衝液、補助因子、インターカレート色素 およびポリメラーゼ、またはその任意の組み合わせなどの1つ以上の試薬を含み得る。試薬は、フルオロフォアまたは蛍光標識のなどの検出可能な標識を含み得る。いくつかの例では、増幅反応を実施する前に、少なくとも核酸試料の核酸分子の部分集合をインターカレート色素と接触させることは有用であり得る。
【0129】
デバイスの複数の区画の部分集合の制御された加熱は、任意の有用な速度で、任意の有用な温度範囲にわたって実施され得る。例えば、制御された加熱は、少なくとも約25C、約30°C、約35°C、約40°C、約45°C、約50°C、約55°C、約60°C、約65°C、約70°C、約75°C、約80°C、約85°C、約90°C、あるいは約95°C、またはそれ以上の、より低い温度で実施されてもよい。制御された加熱は、少なくとも約35°C、約40°C、約45°C、約50°C、約55°C、約60°C、約65°C、約70°C、約75°C、約80°C、約85°C、約90°C、約91°C、約92°C、約93°C、約94°C、約95°C、約96°C、約97°C、約98°C、約99°C、あるいは約100°C、またはそれ以上の、より高い温度で実施されてもよい。温度は、任意の有用な増分によって上昇させることができる。例えば、温度は、少なくとも約0.01°C、約0.05°C、約0.1°C、約0.2°C、約0.3°C、約0.4°C、約0.5°C、約1°C、約2°C、約3°C、約4°C、約5°C、あるいは約10°C、またはそれ以上上昇させることができる。制御された加熱はまた、不均等な間隔での温度増分にわたって生じてもよい。例えば、温度は、核酸分子の有意な融解が予期される範囲にわたって約0.1°C(例えば、細粒測定)、および核酸分子の有意な融解が期待されない範囲にわたって約1°C(例えば、粗粒測定)上昇させることができる。制御された加熱は、少なくとも約0.0001°C/秒、約0.002°C/秒、約0.0003°C/秒、約0.004°C/秒、0.005°C/秒、約0.0006°C/秒、約0.0007°C/秒、約0.0008°C/秒、約0.0009°C/秒、約0.001°C/秒、約0.0002°C/秒、約0.003°C/秒、約0.0004°C/秒、約0.0005°C/秒、約0.006°C/秒、約0.007°C/秒、約0.008°C/秒、約0.009°C/秒、約0.01°C/秒、約0.02°C/秒、約0.03°C/秒、約0.04°C/秒、約0.05°C/秒、約0.06°C/秒、約0.07°C/秒、約0.08°C/秒、約0.09°C/秒、約0.1°C/秒、約0.2°C/秒、約0.3°C/秒、0.4°C/秒、約0.5°C/秒、約0.6°C/秒、約0.7°C/秒、約0.8°C/秒、約0.9°C/秒、約1°C/秒、約2°C/秒、約3°C/秒、約4°C/秒、および約5°C/秒、またはそれ以上など、任意の有用な速度で実施されてもよい。制御された加熱プロセスを実行する熱ユニット(例えば、ヒーター)は、任意の有用な期間にわたって所定温度を維持することができる。例えば、所定の温度は、少なくとも約1秒、約2秒、約3秒、約4秒、約5秒、約6秒、約7秒、約8秒、約9秒、約10秒、約15秒、約20秒、約25秒、約30秒、約45秒、約60秒、約70秒、約80秒、約90秒、約100秒、約110秒、約120秒、約130秒、約140秒、約150秒、約160秒、約170秒、約180秒、約190秒、約200秒、約210秒、約220秒、約230秒、約240秒、約250秒、または約300秒、あるいはそれより長い間、維持され得る。
【0130】
信号は、任意の所望の時点で複数の区画の部分集合から収集され得る。例えば、信号は、少なくとも約1秒毎、約2秒毎、約3秒毎、約4秒毎、約5秒毎、約6秒毎、約7秒毎、約8秒毎、約9秒毎、約10秒毎、約20秒毎、約30秒毎、約45秒毎、約60秒毎、約70秒毎、約80毎、約90秒、約100秒、約110秒、約120秒、約130秒、約140秒、約150秒、約160秒、約170秒、約180秒、約190秒、約200秒、約210秒毎、約220秒毎、約230秒毎、約240秒毎、約250秒毎、約300秒毎、またはそれより多く収集されてもよい。信号は、温度間隔毎に1回以上収集され得る。例えば、信号は、次の温度間隔に温度上昇させる前、温度間隔の終わりに収集され得る。本明細書に記載されるように、信号の収集は画像化を含み得る。収集した信号を処理することは、複数の区画の部分集合における複数の核酸分子の部分集合についての信号対温度のデータを生成する信号を使用することを含み得る。
【0131】
該方法で分析された複数の核酸分子は、病原体を含有しているか、または含有していることが疑わしい試料に由来し得る。病原体は、少なくとも1つの細菌であってもよい。細菌は、制限されないが、炭疽菌、セレウス菌、バチルス・ハロデュランス、根状菌、バシラス・ポリミキサ、故草菌、バチルス・チューリンゲンシス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・カプラエ、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・レンタス、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス、スタフィロコッカス・サプロフィティクス、スタフィロコッカス・キシローサス、ざ瘡菌、エンテロコッカス・フェカーリス、放線菌門、アルファプロテオバクテリア、バクテロイデス門、ベータプロテオバクテリア、クラミジア、イプシロンプロテオバクテリア、ファーミキューテス、ガンマプロテオバクテリア、スピロヘータ目、およびテネリキューテスからなる群から選択され得る。方法は、細菌から核酸分子を単離または抽出するためのさらなる処理工程を含み得る。核酸試料に対して核酸増幅反応を実施することは、少なくとも核酸試料の核酸分子の部分集合の内部転写スペーサー領域の一部を増幅することを含み得る。あるいは、またはさらに、リボソームRNA(例えば、16S)の増幅が生じてもよい。
【0132】
本明細書に記載される方法で使用される試料は、生体試料であり得る。生体試料は、血液、尿、精液、粘液、唾液、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される体液を含み得る。あるいは、本明細書に記載されるように、試料は環境試料であり得る。
【0133】
該方法は、デバイスの複数の区画に複数の核酸分子を充填する工程をさらに含み得、ここで、充填中に、複数の核酸分子を含む複数の区画の部分集合中のガスが、複数の区画の部分集合から外部環境への流れを受ける。
【0134】
核酸分子を分析する方法で使用されるデバイスは、本明細書に記載される任意の特徴を有し得る。デバイスの障壁は、熱可塑性材料などのポリマー材料を含むか、または薄膜であってもよい。障壁は、実質的に光学的に透明であり得る。障壁は、約50μmから約200μm(例えば、約50μm、100μm、150μm、または200μm)の厚さを有し得る。デバイスは、少なくとも1つの入口、少なくとも1つの出口、および複数の吸い上げ開口部を含む少なくとも1つのマイクロチャネルを含み得る。複数の区画の部分集合は、複数の吸い上げ開口部によって、マイクロチャネルと流体連通され得る。複数の区画は、約1,000から約20,000の区画(例えば、約1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、10,000、15,000、または20,000の区画)を含み得る。
【0135】
図22A-22Bは、高解像度融解(HRM)分析を概略的に例証する。図22Aは、デジタルHRM分析とバルクHRM分析との違いを例証する。上のパネルに示されるように、デジタルHRM分析では、各区画は最大で1つの標的DNA分子を含み、様々な細菌の融解曲線が分解される。下のパネルは、単一で、非可微分の融解曲線が不均質な試料から測定される、バルクHRM分析を示す。図22Bは、多数の異なる細菌の種を含む混合試料についてのHRM曲線を示す。黄色ブドウ球菌、フェカリス菌、およびざ瘡菌の明確なヘリシティー曲線(helicity curves)が上のパネルで示され、下のパネルはポアソン統計を使用して、区画の占有を決定するためのそれらの使用を示す。
【0136】
図23のA-23のEは、様々な細菌の種についてのHRMデータを示す。図23のAは、89の異なる細菌について、16Sおよび内部転写スペーサー(ITS)複合誘導体HRM曲線を示す。顕著に、細菌核酸分子のITS領域に対応する融解曲線は、16SリボソームRNAに対応する融解曲線よりも広い温度範囲およびより大きな曲線多様性を示す。図23のBは、バチルス属の7つの異なる種についてのHRM曲線を示す。図23のCは、ブドウ球菌属の9つの異なる種についてのHRM曲線を示す。図23Dは、肺炎球菌の5つの異なる種についてのHRM曲線を示す。図23Eは、門によって組織化された153の異なる細菌の種についてのITS配列相同性のヒートマップを示す。
【0137】
図24のA-24のBは、HRM分析を概略的に例証する。図24のAは、複数のヒトgDNAおよびHIVプロウィルスDNA分子を含むバルクPCR反応で増幅された試料からのDNAの分配を例証する。区画毎に、DNAの平均約30億のg塩基対があるように、HIVプロウィルスDNAが乱されないように、試料が分配される。図24のBは、PCRが生じる区画についての仮想HRM分析を示す。各パネルは、様々な理論的区画集団に対応する温度依存性蛍光シグナルを示す。左端のパネルは、5つのアンプリコンすべてを含む区画の仮想信号を例証し;中央のパネルは、アンプリコン1、2および4だけを含む区画の仮想信号を例証し;また、右端のパネルは、アンプリコン2および5だけを含む区画の仮想信号を例証する。
【0138】
<試料を分析するためのシステム>
一態様では、本開示は、複数の核酸分子を分析するために、(例えば、本明細書に記載される)マイクロ流体デバイスを使用するためのシステムを提供する。システムは、複数の区画を含むデバイスを受け入れるように構成されたサポートユニットを含み得る。デバイスの複数の区画の部分集合の各区画は、複数の区画の部分集合を外部環境から分離する少なくとも1つの障壁を通る、区画から区画の外部の環境へのガスフローを可能にするように構成され得る。システムはまた、複数の時点にわたって、デバイスの複数の区画の部分集合から信号を収集するように構成された検出器を含み得る。システムはまた、検出器に動作可能に結合された1つ以上のコンピュータプロセッサを含み得る。本明細書に記載されるように、複数の核酸分子の少なくとも部分集合から増幅産物を生成するために、複数の核酸分子を使用して、複数の区画の部分集合を、核酸増幅反応を行なうのに十分な条件にさらすように、1つ以上コンピュータプロセッサが個々にまたはまとめてプログラムされ得る。増幅反応が進行している間、1つ以上のコンピュータプロセッサもまた、複数の時点にわたって、検出器によって複数の区画の部分集合から収集された信号を受信するようにプログラムされ得る。信号が収集され、検出器で保存されて、プロセッサに所定の時間に送られるか、または信号が収集される時にプロセッサに提供されてもよい。1つ以上のコンピュータプロセッサは、複数の区画の部分集合からの信号の収集を命令するようにプログラムされてもよい。さらに、それらは、複数の区画の部分集合中の核酸分子の数を判定するために、収集した信号を処理するようにプログラムされてもよい。システムは、複数の核酸分子を複数の区画へと向けるように構成される流体流動装置(例えば、空気圧ユニット)をさらに含み得る。1つ以上のコンピュータプロセッサは、複数の区画に複数の核酸分子を充填するために流体流動装置を向けるよう個々にまたはまとめてプログラムされ得る。
【0139】
本開示はまた、複数の核酸分子を含有するか、または含有することが疑わしい試料を分析するために、(例えば、本明細書に記載されよるうな)マイクロ流体デバイスを使用するためのシステムを提供する。そのような分析は、試料中のDNAなどの核酸分子の解離特性の熱力学的評価を含み得る。熱力学的評価は、DNAの融点およびDNA分子の個々の鎖の結合強度の決定を含み得る。
【0140】
上記のように、システムは、サポートユニットおよび検出器を含み得る。システムは、複数の区画の部分集合を制御された加熱にさらすように構成された熱ユニットをさらに含み得る。システムはまた、検出器に動作可能に結合された1つ以上のコンピュータプロセッサ含み得る。1つ以上のコンピュータプロセッサは、複数の区画の部分集合を制御された加熱にさらすために、熱ユニットを向けるよう個々にまたはまとめてプログラムされ得る。1つ以上のコンピュータプロセッサもまた、複数の区画の部分集合が制御された加熱にさらされている間、検出器によって複数の区画の部分集合から取集された信号を受信するようにプログラムされ得る。さらに、それらは、複数の区画の部分集合の融点を示すデータをもたらすために収集した信号を処理するようにプログラムされ得る。システムは、複数の核酸分子を複数の区画へと向けるように構成される流体流動装置(例えば、空気圧ユニット)をさらに含み得る。1つ以上のコンピュータプロセッサは、複数の区画に複数の核酸分子を充填するために、流体流動装置を向けるよう個々にまたはまとめてプログラムされ得る。
【0141】
システムは、1つ以上のマイクロ流体デバイスを保持するために構成された、移送ステージ、プラットフォーム、スロット、または溝などのサポートユニットを含み得る。マイクロ流体デバイスは、入口および出口を有するマイクロチャネル、複数の吸い上げ開口部によってマイクロチャネルに接続された複数のマイクロチャンバー、ならびにマイクロ流体デバイスをキャッピングするか、または覆う薄膜(例えば、熱可塑性の薄膜)含み得る。その装置は、マイクロ流体デバイスと流体連通する空気圧ユニットを含んでもよい。空気圧ユニットは、試薬をマイクロ流体デバイスへと充填し、マイクロチャンバーへとその試薬を分配することができる。システムは、複数のマイクロチャンバーと熱的連通する熱ユニットを含み得る。熱ユニットは、マイクロチャンバーの温度を制御し、マイクロチャンバーを熱サイクルすることができる。システムは、デバイスのマイクロチャンバーまたはその部分集合から信号を収集するための検出器を含み得る。その検出器は、複数のマイクロチャンバーを画像化できる光学ユニットであってもよい。システムはまた、サポートユニット、空気圧ユニット、熱ユニット、および検出器(例えば、光学的ユニット)に結合された1つ以上のコンピュータプロセッサを含んでもよい。1つ以上のコンピュータプロセッサは、(i)マイクロ流体デバイスに試薬を充填して、複数のマイクロチャンバーに試薬を配分するために空気圧ユニットを指示し、(ii)複数のマイクロチャンバーを熱サイクルするために熱ユニットを指示し、および(iii)複数のマイクロチャンバーから信号を収集(例えば、画像化)するために検出器(例えば、光学ユニット)を指示するようにプログラムされ得る。
【0142】
サポートユニットは、マイクロ流体デバイスを入れ(input)、マイクロ流体デバイスを保持し、マイクロ流体デバイスを出す(output)ように構成されることもある。サポートユニットは、1つ以上の座標において静止していてもよい。あるいは、またはさらに、サポートユニットは、X方向、Y方向、Z方向、またはそれらの任意の組み合わせで移動可能であってもよい。サポートユニットは、単一のマイクロ流体デバイスを保持可能であってもよい。あるいは、またはさらに、移送ステージは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10つ、またはそれより多いマイクロ流体デバイスを保持可能であってもよい。
【0143】
空気圧ユニットは、マイクロ流体デバイスの入口および出口と流体連通するように構成され得る。空気圧ユニットは、多数の入口および多数の出口に接続可能な多数の接続点を有することもある。空気圧ユニットは、一度にマイクロチャンバーの単一のアレイを、または相前後してマイクロチャンバーの多数のアレイを、充填、再充填、および分配することができる。空気圧ユニットは、真空ユニットをさらに含むことができる。空気圧ユニットは、マイクロ流体デバイスに圧上昇をもたらすか、またはマイクロ流体デバイスに真空をもたらし得る。
【0144】
熱ユニットは、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンバーと熱的連通するように構成されてもよい。熱ユニットは、マイクロチャンバーの単一のアレイの温度を制御するように、またはマイクロチャンバーの多数のアレイの温度の制御するように構成され得る。熱制御ユニットはマイクロチャンバーの全てのアレイにわたって同じ熱的プログラムを実施するか、またはマイクロチャンバーの異なるアレイで異なる熱的プログラムを実施することができる。熱ユニットは、熱サイクルおよび制御された加熱の両方を実行するように構成され得る。あるいは、システムは複数の熱ユニットを含むことができ、その各々は、熱サイクルおよび制御した加熱などの別々の熱プロセスを実行するように構成される。
【0145】
検出器は、デバイスの複数の区画の全部またはその部分集合から信号を収集するように構成されてもよい。例えば、検出器は、光、インピーダンス、または任意の他の有用な信号タイプを収集することができる。検出器は光学ユニットであり得る。光学ユニットは、多波長の光を放出および検出するように構成されることもある。発光波長は、使用される指示薬および増幅プローブの励起波長に相当することもある。放出光は、約450nm、500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、または任意のそれらの組み合わせの最大強度を有する波長を含んでもよい。検出光は、約500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、または任意のそれらの組み合わせの最大強度を有する波長を含んでもよい。光学ユニットは、1、2、3、または4以上の光の波長を放出するように構成され得る。光学ユニットは、1、2、3、または4以上の光の波長を検出するように構成され得る。光の放出された波長は、指示薬分子の励起波長に相当し得る。光の別の放出された波長は、増幅プローブの励起波長に相当し得る。1つの光の検出された波長は、指示薬分子の発光波長に相当し得る。光の別の検出された波長は、マイクロチャンバー内の反応を検出するために使用される増幅プローブに相当し得る。光学ユニットは、マイクロチャンバーの部分集合またはマイクロチャンバーのアレイのセクションを画像化するように構成され得る。あるいは、またはさらに、光学ユニットは、単一画像におけるマイクロチャンバーの全アレイを画像化することができる。
【0146】
図6は、単一のマシンにおいて、図5のプロセスを実施するためのマシン(600)を例証する。マシン(600)は空気圧ユニット(601)を含み、それは、ポンプおよびマニホールドを含み、かつZ方向に移動させることができ、図3のA-図3のDに記載されるような圧力の印加を実施するように動作可能であり得る。マシン(600)はまた、マイクロ流体デバイスを熱的にサイクルさせ、それによってポリメラーゼ連鎖反応を引き起こすために、フラットブロックサーマルサイクラーなどの熱ユニット(602)を含む。マシン(600)は、マイクロ流体デバイス中のどのマイクロチャンバーがPCR反応をうまく実行しているかを光学的に判定することができる、落射蛍光の光学ユニットなどの光学ユニット(603)をさらに含む。光学ユニット(603)は、成功したマイクロチャンバーの生カウントを核酸濃度に変換するためにポアソン統計を使用するプロセッサ(604)にこの情報を供給する。サポートユニット(605)(例えば、移送ステージ)は、様々なユニット間で所定のマイクロ流体デバイスを移動させ、かつ複数のマイクロ流体デバイスを同時に取り扱うために使用され得る。この機能を単一のマシンへ組み込むことと組み合わせられて、上記マイクロ流体デバイスは、dPCRの他の実施よりも、dPCRに関するコスト、ワークフローの複雑さ、および空間要求を低減させる。
【0147】
図12のAは、本開示の1つの実施形態にかかるデバイスを例証する。デバイスは8つの独立した反応アレイを有し、その各々は独立して試薬で充填され得る。各反応アレイは、20,000の個別の区画を有する。図12のBは、デバイスの1つの反応アレイ内の区画の一部の構成を例証する。この例証は、充填導管の曲がりくねった経路、および充填導管から生じる(stemming off)充填されるべき区画のクローズアップした図を示す。各円形は、0、1、またはそれより多くの核酸鋳型を含有する試薬で充填され得る個々の区画を表わし、これは、本明細書に記載されるように個々に増幅され、分析される。
【0148】
図13は、装置に流体制御を提供するために使用される空気圧ユニットと共に、デバイスの略図を例証する。各ポートは、デバイス(1300)上の8つの(この実施形態において)反応アレイのうちの1つに流体界面を提供する。本明細書に記載されるように、各反応アレイの入口および出口で適用された一連の低圧と高圧は、反応アレイ内の区画に試薬を充填する。空気圧ユニット(1301)は、これらの圧力の印加を制御し、電子圧力調整器(1302)、少なくとも2つのバルブ(1303および1304)を含む。より多くのバルブを組みこむことができる(例えば、各反応アレイの別々の充填をもたらすために)。デバイスは、本開示のシステム内の配向および位置合わせ(デバイス頂部のタブ(1305)など)を補助するためにメカニカルキーを含んでもよいし、またはレジストレーションマーク(図示せず)などの視覚的な特徴を含んでもよい。
【0149】
図14Aは、本開示の実施形態で使用されるフラットブロック熱サイクル装置を例証する。フラットブロック熱サイクル装置は、本開示の実施形態に従ってPCR増幅サイクルを可能にするための熱制御を提供する。エアークランプがフラットブロックに直接取り付けられ得るように、フラットブロックはネジ穴(図示せず)を含む。これは、例えば、本明細書に記載されるように、デバイス内に含有される試料および試薬の熱サイクルのためにフラットブロックにデバイスを固定することができる。
【0150】
図4Bは、追加のエアークランプ(1402)を有する図4Aのフラットブロック熱サイクルユニット(1401)を例証し、クランプが、図12Aのデバイスなどのデバイス(1403)を熱ユニットにロードすることができるように開けられる。例証において、デバイス(1403)は、PCR増幅サイクルのために統合された熱ユニット/クランプシステムにロードされる。装置(1403)を熱ユニット/クランプシステムに充填した後、空気圧駆動を介して空気圧を加えてエアークランプ(1402)で固定し、デバイスを適所に保持することができる。空気圧駆動は、図13に関する上記の空気圧ユニットに統合されてもよく、または別々の空気圧システムであってもよい。空気圧ユニットが統合されたシステムにおいて、空のデバイスが熱サイクル装置中に置かれ、デバイスがブロック上の定位置に留まりながら、試薬が充填され得る。試薬および/または試料の充填もまた、例えば増幅のために、試薬/試料の充填装置がシステムにロードされる前に、別々の空気圧ユニットを用いて実行され得る。
【0151】
図15は、本開示の実施形態で使用される完全なqdPCRシステム(150)を例証する。システム(1500)は、熱ユニット(1501)、光学ユニット(1502)(構成要素(1502A、1502B、および1502C)を含む)、空気圧ユニット(1503)、ならびに機械ユニット(1504)を含む。各ユニットは、本開示の実施形態に従って、qdPCRプロセスを実施するために他のユニットと連携する。
【0152】
熱ユニット(1501)は、試薬および/または試料の充填デバイス、またはその複数の区画の部分集合の熱サイクルおよび/または制御された加熱を提供する。熱ユニット(1501)は、デバイスを熱サイクルおよび/または制御された加熱にさらす能力を提供する。本明細書に記載されるように、熱サイクルは変性段階、アニーリング段階、および伸長段階を含みうる。単一のPCR増幅サイクルが、例えば、約60~120秒の間に起こり得る。温度の他のプロファイルもまた、本開示にかかる実施形態において使用されてもよい。例えば、熱ユニット(1501)は、さらなる変化なしに、デバイスを、PCR増幅反応の産物を保管することを可能にする保持温度に加熱するように構成され得る。本明細書に記載されるように、熱ユニット(1501)もまた、制御された加熱(例えば、高解像度融解分析)を実施するように構成され得る。熱ユニット(1501)は、温度調整ユニット、温度プローブ、回路類、および他の有用な構成要素などの構成要素を含み得る。熱ユニット(1501)は、デバイスを支持するためのサポートユニットを含むことができ、デバイスを熱ユニット(1501)に固定するためにエアークランプ(1505)を組み込むことができる。
【0153】
光学ユニット(1502)は、増幅または制御された加熱プロセスの間、前、および/または後に、デバイスあるいはその複数の区画の部分集合の画像化を提供する。光学ユニット(1502)は、各区画を、例えば、1つの増幅サイクル毎に少なくとも1回、画像化するように構成され得る。本明細書に記載されるように、各区画は、より頻繁に(例えば、増幅サイクル毎に2回、または増幅サイクル毎に10回)画像化され得る。光学ユニット(1502)もまた、制御された加熱プロセス中に、複数の時点で、各区画を画像化するように構成され得る。
【0154】
光学ユニット(1502)は、部分的に(例えば、各画像における区画の5x5グリッドを画像化する)、全体として、またはアレイ毎に(例えば、単一画像における所定のアレイ中の20,000の区画をすべて画像化する)デバイスを画像化することができる。光学ユニット(1502)が1枚の画像でデバイス全体を画像化することができる場合、光学ユニット(1502)を移動させる必要はないかもしれない。部分的な画像化については、光学ユニット(1502)は、それ自体をデバイスに向け(例えば、メカニカルキーまたはレジストレーションマークを使用して)、その後、デバイスの区画にわたってスキャンするように構成され得る。あるいは、光学ユニット(1502)は定位置に固定され得、熱ユニット(1501)は光学ユニット(1502)が各区画または区画の群を画像化できるようにするために移動させることができる。光学ユニット(1502)は、デバイス上に印刷されたレジストレーションマークを使用して、それ自身を方向付けるように構成されてもよい。光学ユニット(1502)は、熱ユニット(1501)の位置によって、または光学ユニット(1502)、熱ユニット(1501)、および任意の関連する取扱装置の位置決めによって、配向され得る。本明細書に記載されるように、光学ユニット(1502)は、光源(1502A)、励起フィルター(1502B)、ダイクロイックミラー(1502C)、放射フィルター(1502D)、焦点レンズ(1502E)、および画像センサー(1502F)を含む。
【0155】
空気圧ユニット(1503)は、デバイスの流体処理および/または固定のための機能性を提供する。同じ空気圧ユニット(1503)は、流体処理/試薬充填の機能、および熱ユニット(1501)上に取り付けられたエアークランプ(1505)のためのエアークランプ機能の両方をデバイスへ提供することができる。あるいは、空気圧ユニット(1503)は、単にエアークランプ(1505)のためのクランピング機能を提供し、別々の空気圧ユニット(図示せず)はデバイスに試薬充填を提供する。
【0156】
機械ユニット(1504)は、様々な構成要素のメカニカルハンドリングおよび移動を提供する。例証された実施形態では、機械ユニット(1504)は、デバイスの区画にわたって光学ユニット(1502)をスキャンする能力を提供する。この実施形態では、機械ユニット(1504)は、光学ユニット(1502)を次の撮像位置に移動させて、それを画像化することを可能にし、その後、すべての区画が映像化されるまで、プロセスを繰り返す。このプロセスは、所望の増幅サイクルの数およびサイクル毎の画像の数、および/または対象となる制御された加熱プロセスに応じて、必要なだけ多く繰り返され得る。機械ユニット(1504)は、光学ユニット(1502)の代わりに熱ユニット(1501)を移動させることができる。例えば、光学ユニット(1502)によって画像が撮られ得るように、機械ユニット(1504)は撮像位置に熱ユニット(1501)を移動させることができ、その後、熱ユニット(1501)は新しい撮像位置の画像化を可能にするために再び移動させられ得る。このプロセスは、必要に応じて繰り返されてもよい。機械ユニット(1504)は、qdPCRプロセスの実施に先立って、熱ユニット(1501)にそれをロードするため、あるいはqdPCRプロセスの完了後に、熱ユニット(1501)から自動的にそれをアンロードするために、デバイスのメカニカルハンドリングなどのさらなる機能を提供することができる。
【0157】
本開示のシステムは、1つ以上の熱ユニット(1501)、光学ユニット(1502)、空気圧ユニット(1503)、および機械ユニット(1504)の複数の例を含み得、かつ複数のデバイスを同時に処理できるか、また様々なデバイス上の様々な工程を順に実施することを可能にし得る自動化システムを提供するために、同じシステムに組み込まれ得る。加えて、システムは、光学ユニット(1502)によって検出された増幅動態の分析を実行するために、または本開示に関する上記の他の分析機能のために、プロセッサを組み込むことができる。
【0158】
図17A-17Bは、核酸分子の処理のための例示的なシステムを示す。図17Aは、コンピュータプロセッサ(1702)、熱ユニット(1703)、およびカメラ(1704)に結合されたユーザー・インタフェース(1701)を含む、核酸分子を処理するための例示的システム全体を示す。図17Bは、デバイス(1708)の上のカメラ(1704)、LEDエミッター/ヒートシンク(1705)、フィルターキューブ(1706)、およびシャッター(1707)を例証するクローズアップ画像を示す。
【0159】
本開示の範囲は、本明細書に記載された特定の実施形態によって限定されることはない。実際に、本明細書に記載されたものだけではなく、本開示の他の様々な実施形態および変形形態が、前述の説明および添付の図面から当業者には明らかとなるだろう。
【0160】
例えば、dPCR 用途も文脈で記載されるが、ガスまたは他の流体を介して単離される液体で満たされた、多数の隔離されたマイクロチャンバーを必要とし得る他のマイクロ流体デバイスは、薄い熱可塑性プラスチック膜の使用から利益を得て、ガス放出がガスファウリングを回避することができる一方で、製造可能性およびコストに関する利益も提供することができる。PCRとは別に、ループ介在等温増幅(loop mediated isothermal amplification)などの他の核酸増幅方法は、本開示の実施形態にしたがって特定の核酸配列のデジタル検出を実施するのに適用され得る。マイクロチャンバーはまた、単一の細胞を単離するために使用されることができ、吸い上げ開口部は、単離される細胞の直径に近くなるように設計される。吸い上げ開口部が血液細胞のサイズよりはるかに小さい場合、本明細書に記載された方法は、例えば、全血の血漿を分離するために使用され得る。
【0161】
<核酸試料を分析するためのコンピュータシステム>
本開示は、本開示の方法を実施するようにプログラムされるコンピュータ制御システムを提供する。図7は、試料の分配、増幅、および検出を含む、核酸試料を処理および分析のためにプログラムされ得るか、またはそうでなければ構成され得るコンピュータシステム(701)を示す。コンピュータシステム(701)は、本開示の方法およびシステムの様々な態様を調節することができる。コンピュータシステム(701)は、ユーザーの電子デバイス、またはその電子デバイスに対して遠隔的に位置することができるコンピュータシステムであってもよい。電子デバイスは、モバイル電子デバイスであてもよい。
【0162】
コンピューターシステム(701)は、中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサ」及び「コンピュータプロセッサ」とも称される)(705)を含み、これは、シングルコア又はマルチコアのプロセッサ、または並行処理のための複数のプロセッサであり得る。コンピュータシステム(701)は、メモリまたは記憶場所(710)(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶装置(715)(例えば、ハードディスク)、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インターフェース(720)(例えば、ネットワークアダプタ)、ならびにキャッシュ、他のメモリ、データ記憶装置、および/または電子ディスプレイアダプターなどの周辺デバイス(725)も含む。メモリ(710)、記憶装置(715)、インターフェース(720)、および周辺デバイス(725)は、マザーボードなどの通信バス(実線)を通じて、CPU(705)と通信する。記憶装置(715)は、データを保存するためのデータ記憶装置(またはデータリポジトリ)であってもよい。コンピュータシステム(701)は、通信インターフェース(720)の助けを借りてコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)(730)に動作可能に連結される。ネットワーク(730)は、インターネット、インターネットおよび/またはエクストラネット、あるいはインターネットと通信することができるイントラネットおよび/またはエクストラネットであってもよい。ネットワーク(730)は、場合によっては、電気通信および/またはデータネットワークであってもよい。ネットワーク(730)は、クラウドコンピューティングのような分散コンピューティングを可能にし得る1つ以上のコンピュータサーバを含むことができる。ネットワーク(730)は、場合によっては、コンピュータシステム(701)の助けを借りて、コンピュータシステム(701)に連結されたデバイスがクライアントまたはサーバとして動作することを可能にし得るピアツーピアネットワークを実装することができる。
【0163】
CPU(705)は、プログラムまたはソフトウェアで具体化され得る一連の機械可読命令を実行することができる。その命令は、メモリ(710)などの記憶場所に保存され得る。その命令は、CPU(705)へと向けられ、本開示の方法を実行するためのCPU(705)を引き続きプログラムするか、そうでなければ構成することができる。CPU(705)によって実行される動作の例は、フェッチ、デコード、実行、ライトバックを含み得る。
【0164】
CPU(705)は、集積回路など回路の一部であり得る。システム(701)の1つ以上の他の構成要素は、回路に含まれてもよい。場合によっては、その回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0165】
記憶装置(715)は、ドライバー、ライブラリ、および保存プログラムなどのファイルを保存することができる。記憶装置(715)は、ユーザーデータ、例えばユーザーの好み、およびユーザープログラムを記憶できる。コンピュータシステム(701)は、場合によっては、イントラネットまたはインターネットを通じてコンピュータシステム(701)と通信するリモートサーバー上に位置付けられるなど、コンピュータシステム(701)の外部にある、1つ以上のさらなるデータ記憶装置を含み得る。
【0166】
コンピューターシステム(701)は、ネットワーク(730)を通じて1つ以上のリモートコンピュータシステムと通信することができる。例えば、コンピュータシステム(701)は、ユーザー(例えば、サービス提供会社)のリモートコンピュータシステムと通信できる。リモートコンピュータシステムの例は、パーソナルコンピュータ(例えば、持ち運び可能なPC)、スレートまたはタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、Android-enabledデバイス、Blackberry(登録商標))、あるいは携帯情報端末を含む。ユーザーは、ネットワーク(730)を介してコンピュータシステム(701)にアクセスできる。
【0167】
本明細書に記載されるような方法は、例えば、メモリ(710)または電子記憶装置(715)の上など、コンピューターシステム(701)の電子記憶装置の場所に保存された機械(例えば、コンピュータープロセッサ)実行可能コードによって実施することができる。いくつかの実施形態では、マシン実行可能なコードまたはマシン読み取り可能なコードは、ソフトウェアの形態で提供され得る。使用中に、コードはプロセッサ(705)によって実行され得る。場合によっては、コードは、プロセッサー(705)によって、記憶装置(715)から検索され、容易なアクセスのためにメモリ(710)に記憶されてもよい。いくつかの状況では、電子記憶装置(715)を排除することができ、マシン実行可能命令はメモリ(710)に記憶される。
【0168】
コードは、コードを実行するのに適したプロセッサを有する機械と共に使用するために予めコンパイルされ、かつ構成され得るか、または、実行時間中にコンパイルされ得る。コードは、予めコンパイルされた様式またはコンパイルされたままの様式でコードを実行できるように選択できる、プログラミング言語で提供されてもよい。
【0169】
一態様では、本開示は、1つ以上のコンピュータプロセッサによる実行時に、核酸試料を増幅して定量化するために、マイクロ流体デバイスを形成するための方法を実施する、マシン実行可能コードを含む非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。該方法は:少なくとも1つのマイクロチャネル、複数のマイクロチャンバー、および複数の吸い上げ開口部を含むマイクロ流体構造を作製するために、熱可塑性の射出成形する工程であって、ここで、複数のマイクロチャンバーが複数の吸い上げ開口部によって、少なくとも1つのマイクロチャネルに接続される、工程と;少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を形成する工程であって、ここで、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口が少なくともマイクロチャネルと流体連通される、工程と;マイクロ流体構造をキャップするために熱可塑性の薄膜を適用する工程であって、ここで、熱可塑性の薄膜は少なくとも部分的に圧力差に対してガス透過性であり、熱可塑性の薄膜を横切って適用される、工程と、を含む方法。
【0170】
一態様では、本開示は、1つ以上のコンピュータプロセッサによる実行時に、核酸試料を分析して定量化するための方法を実施する、マシン実行可能コードを含む非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。方法は:複数のマイクロチャンバーを含むマイクロ流体デバイスを提供する工程と;本明細書に記載されるように(例えば、空気圧ユニットまたは流体流動装置および一連の圧力差を使用して)、試料および/または1つ以上の試薬でマイクロ流体デバイスを充填する工程と;周期的に(例えば、増幅反応のために熱サイクル)および/または制御された強化で(例えば、高解像度融解あるいは他の熱力学分析のために)、デバイスの複数のマイクロチャンバーまたはその部分集合を加熱する工程と;増幅反応もしくは制御された加熱中、あるいはこれらのプロセスの進行中もしくは完了後に、複数のマイクロチャンバーまたは部分集合から信号を収集する工程と;複数の区画の部分集合における核酸分子の数を判定するため、および/または複数の区画の部分集合における複数の核酸分子またはその部分集合に対応する融点を示すデータをもたらすために、複数のマイクロチャンバーから収集された信号を処理する工程のうち、1つ以上を含む、方法。1つ以上のプロセッサもまた、デバイスのマイクロチャンバーまたはその部分集合を試料および/または試薬で充填する方法を実施するようにプログラムされ得る。該方法は:少なくとも1つのマイクロチャネルを含むマイクロ流体デバイスを提供する工程であって、ここで、少なくとも1つのマイクロチャネルは少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含み、およびここで、マイクロ流体デバイスは複数の吸い上げ開口部によってマイクロチャネルに接続された複数のマイクロチャンバーと、熱可塑性の薄膜がマイクロチャネル、複数のマイクロチャンバー、ならびに複数の吸い上げ開口部をキャップするようにマイクロ流体デバイスの表面に隣接して配された熱可塑性の薄膜と、をさらに含む、工程と;少なくとも1つの入口または少なくとも1つの出口で試薬を提供する工程と;試料および/または試薬とマイクロ流体デバイスとの間に第1の圧力差を提供することによって、マイクロ流体デバイスを充填する工程であって、ここで、第1の圧力差は試料および/または試薬をマイクロ流体デバイス内に流れさせる、工程と;試料および/または試薬を複数のマイクロチャンバー内へ移動させるため、ならびに複数のマイクロチャンバー内のガスを、複数のマイクロチャンバー、複数の吸い上げ開口部、およびマイクロチャネルをキャップするか覆う熱可塑性の薄膜を通過させるために、マイクロチャネルと複数のマイクロチャンバーとの間に第2の圧力差を加える工程であって、ここで、第2の圧力差は第1の圧力差より大きい、工程と;マイクロチャンバーへ流体を導入せずに、マイクロチャネルへ流体を導入するために少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口との間に第3の圧力差を適用する工程であって、ここで、第3の圧力差は第2の圧力差より小さい、工程と、を含む、方法。
【0171】
コンピューターシステム(701)などの、本明細書で提供されるシステムおよび方法の態様は、プログラミングの際に具現化され得る。技術の様々な態様は、典型的にマシン(またはプロセッサ)実行可能コードおよび/または一種のマシン可読媒体上で保持されるか、あるいはその中で具体化される関連データの形態で「産物」または「製品」として考えられ得る。マシン実行可能コードは、メモリ(例えば、リードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)またはハードディスクなどの電子記憶装置に記憶することができる。「記憶」型の媒体は、ソフトウェアプログラミングに関するいかなる時にも非一時的な記憶を提供し得る、様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどの、コンピュータ、プロセッサなどの有形メモリ、またはそれらの関連ユニットあるいはモジュールのいずれかまたはすべてを含むことができる。ソフトウェアのすべてまたは一部は、インターネットまたは様々な他の通信ネットワークを介して時々通信される。そのような通信は、例えば、1つのコンピュータまたはプロセッサから別のコンピュータまたはプロセッサへの、例えば、管理サーバまたはホストコンピューターからアプリケーションサーバーのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアのロードを可能にし得る。したがって、ソフトウェア要素を保持しうる別のタイプの媒体には、ローカルデバイス間の有線および光陸上通信線ネットワーク、および様々なエアリンクを介して使用されるような、光、電気、および電磁波が含まれる。有線または無線リンク、光リンクなどの、このような波を運ぶ物理的要素もまた、ソフトウェアを保持する媒体とみなしてもよい。本明細書に使用されるように、非一時的な有形「記憶」媒体に限定されない限り、コンピュータまたはマシンの「可読媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサに命令を提供する際に関与する任意の媒体を指す。
【0172】
従って、コンピュータ実行可能コードなどの機械可読媒体は、有形記憶媒体、キャリア波媒体、または物理送信媒体を含むがこれらに限定されない、多くの形態をとってもよい。不揮発性ストレージ媒体は、例えば、図面に示されるデータベースなどを実装するために使用され得るような、任意のコンピュータ(複数可)などにおける、記憶装置のいずれかなどの光学ディスクまたは磁気ディスクを含む。揮発性ストレージ媒体は、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリのような動的メモリを含む。有形送信媒体は、同軸ケーブル;コンピュータシステム内のバスを含むワイヤーを含む、銅線及び光ファイバーを含んでいる。搬送波送信媒体は、無線周波(RF)および赤外線(IR)データ通信中に生成されたものなどの、電気信号または電磁気信号、あるいは音波または光波の形態をとり得る。したがって、コンピュータ可読媒体の共通の形式は、例えば:フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の磁気媒体、CD-ROM、DVDもしくはDVD-ROM、他の光学媒体、パンチカード、紙テープ(paper tame)、穴のパターンを有する他の物理的な記憶媒体、RAM、ROM、PROMおよびEPROM、FLASH-EPROM、他のメモリチップもしくはカートリッジ、データもしくは命令を運ぶ搬送波、そのような搬送波を伝達するケーブルもしくはリンク、またはコンピュータがプログラミングのコードおよび/もしくはデータを読み取りうる他の媒体を含む。コンピュータ可読媒体のこれらの形態の多くは、実行のためにプロセッサに1つ以上の命令の1つ以上の配列を運ぶことに関係し得る。
【0173】
コンピュータシステム(701)は、例えば、上皮組織の深さプロファイルを提供するためのユーザーインターフェース(UI)(740)を含む電子ディスプレイ(735)を含むか、またはそれと通信できる。UIの例としては、限定しないが、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)およびウェブベースのユーザーインターフェースを含む。
【0174】
本開示の方法およびシステムは、1つ以上のアルゴリズムによって実施することができる。アルゴリズムは、中央処理装置(705)による実行時に、ソフトウェアによって実施され得る。アルゴリズムは、例えば、本明細書において提供されるシステムまたは実施の方法を調節できる。
【0175】
本開示の好ましい実施形態が、本明細書に示され、記載されているが、このような実施形態がほんの一例として提供されることは当業者にとって明白である。多数の変形、変更、および置換は、本明細書に記載される本発明から逸脱することなく、当業者によって想到されこととなる。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用され得ることを理解されたい。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、この請求項とその均等物の範囲内の方法、および構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。
【0176】
実施例1:試薬分配の実証
試薬の分配を、標準的な顕微鏡スライドの寸法を使用して組み立てられたマイクロ流体デバイスを使用して実証する。マイクロ流体デバイスの合計寸法は、幅1インチ、長さ3インチ、および厚さ0.6インチである。そのデバイスは、4つの異なるマイクロチャンバーアレイの設計、および全部で8つの異なるマイクロチャンバーのアレイを含む。図8のAは、8ユニットのデバイス、および4つのアレイの設計のうちの1つの拡大斜視図を示す。マイクロ流体デバイスを、シクロオレフィンポリマー(COP)、Zeonor 790R(Zeon Chemicals, Japan)から成型し、そして100μmのCOP薄膜、Zeonox ZF14(Zeon Chemicals, Japan)を用いて熱接合することで密閉した。示される拡大されたマイクロ流体のセグメントは、吸い上げ開口部によりマイクロチャンバーに接続される、曲がりくねったマイクロチャネルを有する。マイクロチャンバーは格子構成である。マイクロチャンバーおよびマイクロチャネルの深さは40μmであり、吸い上げ開口部の深さは10μmである。各隔離されたマイクロ流体のセグメントは、入口および出口のチャネルを有する。膜をマイクロ流体デバイスの基部に熱的に結合する前に、入口および出口のチャネルに、機械的に穴をあける。入口および出口のチャネルの直径は、1.6mmである。
【0177】
図8のBは、試薬の充填、マイクロチャンバーの再充填、および分配の蛍光画像を示す。マイクロ流体デバイスを充填する前に、2マイクロリットル(μL)の4キロダルトン(kDa)のフルオレセイン結合デキストラン(fluorescein conjugated dextran)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を入口に分注する。その後、マイクロ流体デバイスを空気圧制御装置と接触させる。空気圧制御装置は、3分間、入口に4psiの圧力を印加することにより、マイクロ流体デバイスのマイクロチャネルを充填する。マイクロチャンバーは、20分間、10psiまで、入口および出口の両方を加圧することにより充填される。その後、試薬は、マイクロ流体デバイスの入口から4psiで空気を流すことにより分配されて、試薬がマイクロチャネルから取り除かれる。
【0178】
図20Aは、一連のデバイスの差次的なウイルス負荷(viral loading)に対応する画像を示す。パネルは、区画毎に、5、0.5、0.05、および0.005の核酸コピーを含む区画の画像を含む。これらの画像は、熱サイクルの後に撮られ、FAMおよびROXのフルオロフォアのための蛍光撮像装置を利用して画像化された。図20Bは、Image J のソフトフェアおよびImage R のソフトフェアを使用した図20Aの画像の対応するポアソン分析を示す。同様に、図21は一連のデバイスの差次的な充填に対応する画像を示す。パネルは、区画毎に、10、1.0、0.1、および0.01の核酸コピーを含む区画の画像を含む。右端のパネルは、各デバイスに対応する、密度および区分占有を示す。
【0179】
実施例2:dPCRのための単一の機器のワークフロー
マイクロ流体デバイスにおける核酸の増幅および定量化のための方法は、単一の機器で実施され得る。その機器によって、試薬の分配、熱サイクル、画像の取得、およびデータの分析が可能であり得る。図9は、単一の機器のワークフローが可能なプロトタイプの機器を示す。その機器は、一度に最大で4つのデバイスを収容し、そして同時の画像の取得および熱サイクルが可能となるように設計されている。その機器は、試薬を分配するための空気圧ユニット、温度を制御して熱サイクルするための熱ユニット、画像化するための光学ユニット、およびスキャンニングユニットを含む。光学ユニットは、2つの蛍光イメージング機能を有し、そしてFAMおよびROXのフルオロフォアの発光波長にそれぞれ相当する、およそ520nmおよび600nmの蛍光発光を検出することができる。光学ユニットは、25mm×25mmの視野、および0.14の開口数(NA)を有する。
【0180】
単一の機器のワークフローは、レポーターとしてTaqManプローブを活用する、確立されたqPCRアッセイを使用して試験され得る。簡潔に言えば、核酸試料はPCR試薬と共に混合される。PCR試薬は、フォワードプライマー、リバースプライマー、TaqManプローブ、およびROX指示薬を含む。フォワードプライマーの配列は、5’-GCC TCA ATA AAG CTT GCC TTG-3’である。リバースプライマーの配列は、5’-GGG GCG CAC TGC TAG AGA-3’である。TaqManプローブの配列は、5’-[FAM]-CCA GAG TCA CAC AAC AGA CGG GCA CA-[BHQ1]-3’である。核酸試料およびPCR試薬は、上記プロトコル後に、マイクロ流体デバイス内に充填および分配される。PCR増幅は、マイクロチャンバーの温度を95℃に上げ、そして10分間その温度を保持し、続いて、マイクロチャンバーの温度を95℃から59℃まで、毎秒2.4℃の速さで下げて、1分間59℃で保持した後、温度を95℃に戻すサイクルを40回行うことによって実施される。図10のA-Dは、区画あたりおよそ1つの核酸鋳型のコピーを含む試料と、PCR増幅後の区画あたり核酸鋳型のコピーがゼロの区画(鋳型がない対照、すなわちNTC)の蛍光画像、および区画あたりおよそ1つの核酸コピーを含む試料と、PCR増幅後のNTC区画の蛍光強度のプロットを示す。図10のAは、核酸鋳型を含まない、分配された試料の蛍光画像を示し、各灰色のドットは、PCR試薬を含む単一のマイクロチャンバーを表わす。画像は、およそ575nmの光を用いて各マイクロチャンバー内でROX指示薬を励起させることによって、および600nmで最大発光を有する発光スペクトルを画像化することによって撮られる。図10のBは、PCR増幅後の、区画当たりおよそ1つの核酸鋳型のコピーを含む分配された試料を示す。PCR増幅後、映像化は、FAMプローブからのROX指示薬および発光の両方を含むROX指示薬およびマイクロチャンバーを含むマイクロチャンバーを示す。FAMプローブは、およそ495nmの励起波長、およびおよそ520nmの発光波長の最大値を有する。個々のマイクロチャンバーは、ROX指示薬、FAMプローブ、およびBHQ-1クエンチャーを含む。図10のAと同様に、各灰色のドットは、核酸鋳型を持たない分配された試料を含むマイクロチャンバーを表わす。白いドットは、うまく増幅された核酸試料を含むマイクロチャンバーを表わす。PCR増幅が成功すると、FAMフルオロフォアおよびBHQ-1クエンチャーを、TaqManプローブから切断してもよく、結果として検出可能な蛍光シグナルがもたらされる。図10のCおよびDは、分配され増幅されたマイクロ流体デバイスの各マイクロチャンバーに関するROX蛍光強度としてのFAM蛍光強度の2次元散布図をそれぞれ示す。図10のCは、区画当たり核酸鋳型がゼロである試料を示しており、様々なROX蛍光強度にわたって優勢的に一定なFAM蛍光強度が結果としてもたらされる。図10のDは、区画当たりおよそ1つの核酸鋳型のコピーを含む試料を示しており、区画内の増幅信号の存在が原因で、ROX蛍光強度に応じて変動するFAM蛍光強度が結果としてもたらされる。
【0181】
実施例3:qdPCR
既知のPCR試薬キットが2つの試薬混合物を調製するために使用され、第1の試薬混合物は、第2の試薬混合物の10倍の標的の量を有した。試薬はデバイスの2つの隣接したユニットに充填され、既製のコントローラーおよびカスタムインターフェースジグ(custom interface jig)を使用して空気圧で調整された。その後、デバイス(1708)は取り除かれ、図17A-17Bのシステム内に置かれた。デバイス(1708)は、良好な熱接触のためにガラス片によって標準フラットブロックサーマルサイクラー(1703)上で保持された。デバイス(1708)は、標準96-61°Cx40 PCRプロトコルを使用して、40回熱サイクルされた。各サイクル(11-40サイクル)の低温工程(61°C)の間、画像がカメラ(1704)を使用して自動的に撮られた。20サイクルで撮られた1列目の画像、30サイクルで撮られた2列目の画像、40サイクルで撮られた3列目の画像が図18に示される。上の列の画像は1つの区画当たり10コピー率での充填に相当し、下の列は区画当たり1つのコピーに相当する。カスタムImageJ pluginは、30サイクルの画像の各々において10倍画像セットの53の選択されたポイントについての平均強度データを抽出するために使用された。これらのデータは図19に図示され、バックグラウンド変動に対して標準化される。
【0182】
実施例4:HRM分析
既知の試薬キットは2つの試薬混合物を調製するために使用され、第1の試薬混合物は、第2の試薬混合物の10倍の標的の量を有する。試薬はデバイスの2つの隣接したユニットに充填され、既製のコントローラーおよびカスタムインターフェースジグを使用して空気圧で調整された。その後、デバイス(1708)は取り除かれ、図17A-17Bのシステム内に置かれた。デバイス(1708)は、良好な熱接触のためにガラス片によって標準フラットブロックサーマルサイクラー(1703)上で保持された。デバイス(1708)は、dPCR工程を完了するために、標準96-61°Cx40 PCRプロトコルを使用して40回熱サイクルされた。熱ユニット(1703)が約0.1°C/sの速度で温度を約60°Cから約90°Cに上昇させるにつれて、カメラ(1704)は5秒毎にデバイスで連続的に画像化した。約70°Cで撮られた1列目の画像、約80°Cで撮られた2列目の画像、約90°Cで撮られた3列目の画像が図25に示される。上の列の画像は区画当たり10のコピー率での充填に相当し、下の列は区画当たり1つのコピーに相当する。カスタムImageJ pluginは、10倍画像セットの54の選択されたポイントについての平均強度データを抽出するために使用された。これらのデータは図26に図示される。
【0183】
本発明の好ましい実施形態が本明細書で示され記載されてきたが、そのような実施形態がほんの一例としてしか提供されていないということが当業者にとって明白である。本発明が本明細書内で提供された特定の実施例により限定されることは、意図されていない。本発明は前述の明細書を参照して記載されている一方、本明細書における実施形態の説明および例示は限定的な意味で解釈されることは意図されていない。当業者であれば、多くの変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく思いつくだろう。さらに、本発明の全ての態様は、様々な条件および変数に依存する、本明細書で述べられた特定の描写、構成、または相対的比率に限定されないことが理解されるだろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用され得ることが理解されなければならない。したがって、本発明は、任意のそのような代替案、修正、変形、または同等物にも及ぶことが考えられる。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、この請求項とその均等物の範囲内の方法、および構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20A
図20B
図21
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図24
図25
図26