(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】細胞性及び体液性免疫を達成するためのヒト間葉系幹細胞を使用する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240521BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240521BHJP
A61K 35/28 20150101ALN20240521BHJP
A61P 9/00 20060101ALN20240521BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20240521BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240521BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
G01N33/53 Y
G01N33/68
A61K35/28
A61P9/00
A61P29/00
A61P43/00
C12Q1/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022065222
(22)【出願日】2022-04-11
(62)【分割の表示】P 2019524319の分割
【原出願日】2017-11-10
【審査請求日】2022-05-10
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518274272
【氏名又は名称】ロングエバーオン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ハレ, ジョシュア エム.
(72)【発明者】
【氏名】ランディン, アナ マリー
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特許第7276664(JP,B2)
【文献】特表2013-536860(JP,A)
【文献】特表2016-516985(JP,A)
【文献】特表2011-523858(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0110689(US,A1)
【文献】Thomas E ICHIM et al.,Placental mesenchymal and cord blood stem cell therapy for dilated cardiomyopathy,Reproductive BioMedicine Online,2008年01月,Vol. 16, No. 6,pp. 898-905,DOI: 10.1016/S1472-6483(10)60159-9
【文献】Emerson C. PERIN et al.,A Phase II Dose-Escalation Study of Allogeneic Mesenchymal Precursor Cells in Patients With Ischemic or Nonischemic Heart Failure,Circulation Research,2015年08月28日,Vol. 117, No. 6,pp. 576-584,DOI: 10.1161/CIRCRESAHA.115.306332
【文献】Joshua M. HARE et al.,Comparison of Allogeneic vs Autologous Bone Marrow - Derived Mesenchymal Stem Cells Delivered by Transendocardial Injection in Patients With Ischemic Cardiomyopathy,JAMA,2012年12月12日,Vol. 308, No. 22,pp. 2369-2379,DOI: 10.1001/jama.2012.25321
【文献】Samuel GOLPANIAN et al.,Rationale and design of the allogeneiC human mesenchymal stem cells (hMSC) in patients with aging fRAilTy via intravenoUS delivery (CRATUS) study: A phase I/II, randomized, blinded and placebo controlled trial to evaluate the safety and potential efficacy of allogeneic human mesenchymal stem cell infusion in patients with aging frailty,Oncotarget,2016年02月25日,Vol. 7, No. 11,pp. 11899-11912,DOI: 10.18632/oncotarget.7727
【文献】Lorena MARTINEZ-GAMBOA et al.,Role of the spleen in peripheral memory B-cell homeostasis in patients with autoimmune thrombocytopenia purpura,Clinical Immunology,2009年02月,Vol. 130, No. 2,p.199-212,DOI: 10.1016/j.clim.2008.09.009
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト間葉系幹細胞の投与による非虚血性拡張型心筋症の治療が有効であるかどうか治療後に決定するための、血清中の疲弊B細胞(CD19
+、CD27
-、IgD
-)のレベル、血清中のスイッチメモリーB細胞(CD19
+、CD27
high、IgD
-)のレベル、血清中の細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベル、血清中の早期活性化T細胞(CD3
+、CD69
+)のレベル、血清中の慢性活性化T細胞(CD3
+、CD25
+)のレベル、血清中のTemra細胞(CD45RA
+、CCR7
-)のレベル、及び血清中のTNF-α濃度のインビトロでの使用。
【請求項2】
ヒト間葉系幹細胞の投与による加齢による脆弱の治療が有効であるかどうか治療後に決定するための、血清中の疲弊B細胞(CD19
+、CD27
-、IgD
-)のレベル、血清中のスイッチメモリーB細胞(CD19
+、CD27
high、IgD
-)のレベル、血清中の細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベル、血清中の早期活性化T細胞(CD3
+、CD69
+)のレベル、血清中の慢性活性化T細胞(CD3
+、CD25
+)のレベル、血清中のTemra細胞(CD45RA
+、CCR7
-)のレベル、血清中のCD4
+:CD8
+T細胞比、及び血清中のTNF-α濃度のインビトロでの使用。
【請求項3】
(A)治療後の血清における疲弊B細胞(CD19
+、CD27
-、IgD
-)のレベルは、治療前の血清における疲弊B細胞のレベルと比較して少なくとも25%減少している、
(B)治療後の血清におけるスイッチメモリーB細胞(CD19
+、CD27
high、IgD
-)のレベルは、治療前の血清におけるスイッチメモリーB細胞のレベルと比較して少なくとも100%増加している、
(C)治療後の血清における細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベルは、治療前の血清における細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベルと比較して少なくとも30%減少している、
(D)治療後の血清における早期活性化T細胞(CD3
+、CD69
+)のレベルは、治療前の血清における早期活性化T細胞のレベルと比較して少なくとも30%減少している、
(E)治療後の血清における慢性活性化T細胞(CD3
+、CD25
+)のレベルは、治療前の血清における慢性活性化T細胞のレベルと比較して少なくとも70%減少している、
(F)治療後の血清におけるTemra細胞(CD45RA
+、CCR7
-)のレベルは、治療前の血清におけるTemra細胞のレベルと比較して少なくとも40%減少している、及び/又は
(G)治療後の血清におけるTNF-α濃度は、治療前の血清におけるTNF-α濃度と比較して少なくとも80%減少している
場合に、前記治療が有効であると決定される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
(A)治療後の血清における疲弊B細胞(CD19
+、CD27
-、IgD
-)のレベルは、治療前の血清における疲弊B細胞のレベルと比較して少なくとも10%減少している、
(B)治療後の血清におけるスイッチメモリーB細胞(CD19
+、CD27
high、IgD
-)のレベルは、治療前の血清におけるスイッチメモリーB細胞のレベルと比較して少なくとも75%増加している、
(C)治療後の血清における細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベルは、治療前の血清における細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベルと比較して少なくとも60%減少している、
(D)治療後の血清における早期活性化T細胞(CD3
+、CD69
+)のレベルは、治療前の血清における早期活性化T細胞のレベルと比較して少なくとも30%減少している、
(E)治療後の血清における慢性活性化T細胞(CD3
+、CD25
+)のレベルは、治療前の血清における慢性活性化T細胞のレベルと比較して少なくとも75%減少している、
(F)治療後の血清におけるTemra細胞(CD45RA
+、CCR7
-)のレベルは、治療前の血清におけるTemra細胞のレベルと比較して少なくとも20%減少している、
(G)治療後の血清におけるCD4
+:CD8
+T細胞比は、治療前の血清におけるCD4
+:CD8
+T細胞比と比較して少なくとも100%増加している、及び/又は
(H)治療後の血清におけるTNF-α濃度は、治療前の血清におけるTNF-α濃度と比較して少なくとも50%減少している
場合に、前記治療が有効であると決定される、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記血清がヒト対象由来である、請求項
1、2又は4に記載の使用。
【請求項6】
前記血清が炎症を示すヒト対象由来である、請求項2又は4に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、非虚血性拡張型心筋症を患う対象において、細胞性及び体液性免疫を達成するために治療有効量の同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する方法に関する。本発明また、加齢による脆弱の症状を患う対象において、細胞性及び体液性免疫を達成するために治療有効量の同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]加齢による脆弱及び加齢に伴う炎症(inflammaging)
加齢による脆弱は、個体の全体的な健康状態及び健康に関する非常に懸念される問題を提起し、多系統生理的調節異常の症候群として特徴付けられる。加齢による脆弱は、脱力、低い身体活動、運動能力の低下、疲労、及び意図しない体重減少を特徴とする高齢者症候群である。Yao,X.ら、Clinics in Geriatric Medicine、27(1):79~87(2011)を参照。さらに、加齢による脆弱と炎症との間の直接的相関を示す多くの研究がある。Hubbard,R.E.ら、Biogerontology、11(5):635~641(2010)を参照。
【0003】
[0003]免疫老化は、加齢に伴う炎症として知られた、低グレード、慢性全身炎症性状態によって特徴付けられる。Franceshi,C.ら、Annals of the New York Academy of Sciences、908:244~254(2000)を参照。加齢及び加齢による脆弱において見られる炎症性状態又は慢性炎症がこのように増大することは、免疫調節異常並びに先天性及び適応性免疫の両方の複雑なリモデリングをもたらす。免疫老化において、T細胞及びB細胞の守備範囲はゆがめられ、結果としてCD45ra(TEMRA)を再発現しているCD8+Tエフェクターメモリー細胞及びCD19+後期/疲弊したメモリーB細胞が増加し、並びにCD8+ナイーブT細胞及びスイッチメモリーB細胞(switched memory B cells)(CD27+)が減少する。Blomberg,B.B.ら、Immunologic Research、57(1~3):354~360(2013); Colonna-Romano,G.ら、Mechanisms of Ageing and Development、130(10):681~690(2009);及びKoch S.ら、Immunity & Ageing:5:6(2008)を参照。T細胞及びB細胞の守備範囲におけるこのようなシフトは、難治性又は効率の悪い免疫状態をもたらす。全身性炎症(TNF-α、IL-6、IL-8、INFγ及びCRP)の加齢に伴う増加は、B細胞機能障害を誘導することはよく知られている。
【0004】
[0004]加齢に伴う炎症は、免疫の変化と老齢期に共通の多数の疾患及び状態(加齢による脆弱のような)との関連性を示唆しているため、かなりの注目を集めている。サイトカイン及び急性期タンパク質のような血中炎症性メディエータは、加齢とともに増加することが観察されている低グレード炎症マーカーである。これらの炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-6)は、外来性の抗原及びワクチンに対する防御抗体を作るB細胞の能力を損なう。この障害を受けたB細胞応答は、アイソタイプをIgMから二次アイソタイプ(IgG、IgA、又はIgE)にスイッチする免疫グロブリンの能力である低減されたクラススイッチ組換え(CSR)によって測定される。エフェクター機能がアイソタイプ毎に異なるので、免疫グロブリンアイソタイプスイッチングは適切な免疫応答にとって極めて重要である。CSR及び体細胞超変異(SHM)において中心となって働くのは、Aicda遺伝子によってコードされる、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)という酵素である。CSR及びSHMにおけるAIDの基本的機能は、免疫グロブリンのスイッチ領域及び可変領域でシトシンをウラシルに変換することによってDNAを切断することである。Tcfe2a(E2A)遺伝子によってコードされるE47は、Eタンパク質としても知られた、クラスI塩基性へリックス-ループ-へリックス(bHLH)タンパク質に属する転写因子である。E47が発現しないと、B細胞特異的転写因子のEBF1(早期B細胞因子)及びPax-5(ペアードボックスタンパク質)は発現しない。E47及びPax-5の両者は、B細胞系統及び成熟B細胞機能の早期発生において重要な転写因子である。Hagman J.ら、Immunity、27(1):8~10(2007); Horcher M.ら、Immunity、14(6):779~790(2001);Riley R.L.ら、Seminars in Immunology、17(5):330~336(2005)を参照。Pax-5遺伝子は、B細胞分化の全ステージで発現されるが最終的に分化したB細胞では発現されないB細胞系統特異的活性化因子タンパク質(BSAP)をコードする。Pax-5は、B系統の不適当な遺伝子を抑制し、B細胞特異的遺伝子を活性化することによってB細胞のコミットメントを制御することから、B細胞ゲートキーパーであり、コミットメントしたプロB細胞から成熟B細胞ステージまでのBリンパ系統においてのみ発現される。B細胞特異的転写因子であるPax-5は、早期B細胞発生及びB細胞系統のコミットメントにおいて非常に重要であるばかりでなく、CSRにも関わっている。
【0005】
[0005]産生されたTNF-αの量は、(1)システムの炎症の量に依存し、(2)マイトジェン又は抗原で刺激される同一のB細胞の能力を損なうことがヒトにおいても示された。Frasca, D.ら、Journal of Immunology、188(1):279~286(2012)を参照。したがって、加齢による脆弱を患う対象の免疫応答は、多数の原因のために損なわれている。
【0006】
[0006]非虚血性拡張型心筋症(NIDCM)
非虚血性拡張型心筋症(NIDCM)は、現在の治療法がない、多くの場合最終的に心臓移植になる進行性の障害である。Felker, G.M.ら、The New England Journal of Medicine、342:1077~84(2000)、及びKirklin,J.K.ら、J.Heart Lung Transplant.、35:407~412(2016)を参照。NIDCMは、根底の病因として免疫調節異常の主要な要素を有する障害である。Efthimiadis,I.ら、Hippokratia、15:335~342(2011)、及びMeng,X.ら、Nature Reviews Cardiology、13:167~79(2016)を参照。心臓疾患のための細胞ベースの療法は、同種療法を開発する上で大きな課題と機会を伴う、評価を受けている有望な新しい治療戦略である。Patel,A.N.ら、Lancet、387:2412~21(2016);Assmus,B.ら、The New England Journal of Medicine、355:1222~32(2006);Hare,J.M.ら、J.Am.Coll.Cardiol.、54:2277~86(2009);Heldman,A.W.ら、JAMA、311:62~73(2014);Perin,E.C.ら、JAMA、307:1717~26(2012);Golpanian,S.ら、Physiol.Rev.、96:1127~68(2016);及びHare,J.M.ら、JAMA、308:2369~79(2012)を参照。
【0007】
[0007]間葉系幹細胞
間葉系幹細胞は、損傷部位に移動することができる多能性細胞であり、主要な組織適合複合体クラスII(MHC-II)分子を検出可能なほどには発現せず、MHC-I分子を低レベルで発現することによって免疫特権も有する。Le Blanc,K.ら、Lancet、371(9624):1579~1586(2008)、及びKlyushnenkova E.ら、J.Biomed.Sci.、12(1):47~57(2005)を参照。したがって、同種間葉系幹細胞は、治療及び再生医療に非常に有望であり、複数の疾患過程に対する臨床試験において高い安全性及び有効性プロファイルを有することが繰り返し示されてきた。Hare,J.M.ら、Journal of the American College of Cardiology、54(24):2277~2286(2009);Hare,J.M.ら、Tex.Heart Inst.J.、36(2):145~147(2009);及びLalu,M.M.ら、PloS One、7(10):e47559(2012)を参照。同種間葉系幹細胞はまた、患者への移植後に悪性形質転換を受けないことが示されている。Togel F.ら、American Journal of Physiology Renal Physiology、289(1):F31~F42(2005)を参照。間葉系幹細胞を用いた治療は、重症の移植片対宿主疾患を改善し、虚血性急性腎不全を予防し、糖尿病における膵島及び腎糸球体の修復に寄与し、劇症肝不全を回復に向かわせ、損傷した肺組織を再生し、敗血症を軽減し、及び心筋梗塞後にリモデリングを逆転し、及び心筋機能を改善することが示されている。Le Blanc K.ら、Lancet、371(9624):1579~1586(2008);Hare,J.M.ら、Journal of the American College of Cardiology、54(24):2277~2286(2009);Togel F.ら、American Journal of Physiology Renal Physiology、289(1):F31~F42(2005);Lee R.H.ら、PNAS、103(46):17438~17442(2006);Parekkadan,B.ら、PloS One、2(9):e941(2007);Ishizawa K.ら、FEBS Letters、556(1~3):249~252(2004);Nemeth K.ら、Nature Medicine、15(1):42~49(2009);Iso Y.ら、Biochem.Biophys.Res.Comm.、354(3):700~706(2007);Schuleri K.H.ら、Eur.Hearth J.、30(22):2722~2732(2009);及びHeldman A.W.ら、JAMA、311(1):62~73(2014)を参照。さらに、間葉系幹細胞は、組織工学において使用するための複数の細胞タイプの潜在的な供給源でもある。Gong Z.ら、Methods in Mol.Bio.、698:279~294(2011);Price,A.P.ら、Tissue Engineering Part A、16(8):2581~2591(2010);及びTogel F.ら、Organogenesis、7(2):96~100(2011)を参照。
【0008】
[0008]間葉系幹細胞は、免疫調節性の能力を有する。間葉系幹細胞は、免疫抑制毒性の兆候なしに、炎症並びにリンパ球及び骨髄由来免疫細胞のサイトカイン産生を制御し、及び低免疫原性である。Bernardo M.E.ら、Cell Stem Cell、13(4):392~402(2013)を参照。
【0009】
[0009]間葉系幹細胞は、中胚葉起源の細胞ばかりでなく、内胚葉及び外胚葉起源の細胞へ分化する能力も有する。Le Blanc K.ら、Exp.Hematol.、31(10):890~896(2003)を参照。例えば、インビトロでは、気道増殖培地で培養された間葉系幹細胞は分化して肺特異的上皮マーカー、例えば、サーファクタントタンパク質C、Clara細胞分泌タンパク質、及び甲状腺転写因子1を発現する。Jiang Y.ら、Nature、418(6893):41~49(2002)及びKotton D.N.ら、Development、128(24):5181~5188(2001)を参照。
【0010】
[00010]インビボ研究は、ヒト間葉系幹細胞が、ヒツジ胎仔に移植されると、筋細胞及び心筋細胞を含む様々な細胞タイプへの部位特異的分化を受けることを示した。Airey J.A.ら、Circulation、109(11):1401~1407(2004)を参照。これらの間葉系幹細胞は、免疫抑制されていない免疫適格性宿主において、移植後、複数の組織において13カ月間も持続し得る。齧歯動物、イヌ、ヤギ、及びヒヒを使用した他のインビボ研究は、同様に、ヒト間葉系幹細胞異種移植片がレシピエントにおいてリンパ球増殖又は全身性同種抗体産生を誘発しないことを実証している。Klyushnenkova E.ら、J.Biomed.Sci.、12(1):47~57(2005);Aggarwal S.ら、Blood、105(4):1815~22(2005);Augello A.ら、Arthritis and Rheumatism、56(4):1175~86(2007);Bartholomew A.ら、Exp Hematol.、30(1):42~48(2002);Dokic J.ら、European Journal of Immunology、43(7):1862~72(2013);Gerdoni E.ら、Annals of Neurology、61(3):219~227(2007);Lee S.H.ら、Respiratory Research、11:16(2010);Urban V.S.ら、Stem Cells、26(1):244~253 (2008);Yang H.ら、PloS One、8(7):e69129(2013);Zappia E.ら、Blood、106(5):1755~1761(2005);Bonfield T.L.ら、American Journal of Physiology Lung Cellular and Molecular Physiology、299(6):L760~70(2010);Glenn J.D.ら、World Journal of Stem Cells.、6(5):526~39(2014);Guo K.ら、Frontiers in Cell and Developmental Biology、2:8(2014);Puissant B.ら、British Journal of Haematology、129(1):118~129(2005);及びSun L.ら、Stem Cells 27(6):1421~32(2009)を参照。全体的に見て、同種の安全性及び有効性のこれらの反復された研究結果は、間葉系幹細胞を組織再生の成功のための同種移植片として使用するための考えを固める。
【0011】
[00011]しかし、安全な治療薬であるにもかかわらず、間葉系幹細胞は、抗体産生並びにB細胞の増殖及び成熟に対して抑制効果を発揮すると文献に報告されている。Uccelli,A.ら、Trends in Immunology、28(5):219~226(2007)を参照。間葉系幹細胞は、また、抗原提示細胞の生成及び機能を阻害すると報告されている。Hoogduijn M.J.ら、Int.Immunopharmacology、10(12):1496~1500(2010)を参照。最終的に、間葉系幹細胞は、CD4+及びCD8+T細胞の増殖を抑制すると報告されている。Ghannam S.ら、Stem Cell Res.&Ther.、1:2(2010)を参照。最終的に、いくつかの前臨床データは、自己間葉系幹細胞の投与と比較して、同種間葉系幹細胞の投与による免疫学的クリアランスの危険性が高いことを示す。例えば、Huang,X.P.ら、Circulation、122:2419~29(2010)を参照。
【発明の概要】
【0012】
[00012]驚いたことに、間葉系幹細胞が免疫系の側面に抑制効果を及ぼすという報告にもかかわらず、本発明人は、対象における非虚血性拡張型心筋症を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を見いだした。本発明人はまた、対象における加齢による脆弱の症状を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を見いだした。本発明人は、血清中の疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)のレベル、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)のレベル、細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベル、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)のレベル、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)のレベル、Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)のレベル、CD4+:CD8+T細胞比、及びTNF-α濃度を含むがこれに限定されるものではない非虚血性拡張型心筋症及び加齢による脆弱に対して特異的ないくつかのバイオマーカーを同定した。
【0013】
[00013]本発明の一態様は、対象における非虚血性拡張型心筋症を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中の疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中の疲弊B細胞の数と比較して少なくとも25%減少し、それによって非虚血性拡張型心筋症を治療する、方法に関する。
【0014】
[00014]本発明の他の態様は、対象における非虚血性拡張型心筋症を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中のスイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中のスイッチメモリーB細胞の数と比較して少なくとも100%増加し、それによって非虚血性拡張型心筋症を治療する、方法に関する。
【0015】
[00015]本発明の他の態様は、対象における非虚血性拡張型心筋症を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中の細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中の細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数と比較して少なくとも30%減少し、それによって非虚血性拡張型心筋症を治療する、方法に関する。
【0016】
[00016]本発明の他の態様は、対象における非虚血性拡張型心筋症を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中の早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中の早期活性化T細胞の数と比較して少なくとも30%減少し、それによって非虚血性拡張型心筋症を治療する、方法に関する。
【0017】
[00017]本発明の他の態様は、対象における非虚血性拡張型心筋症を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中の慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中の慢性活性化T細胞の数と比較して少なくとも70%減少し、それによって非虚血性拡張型心筋症を治療する、方法に関する。
【0018】
[00018]本発明の他の態様は、対象における非虚血性拡張型心筋症を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中のTemra細胞(CD45RA+、CCR7-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中のTemra細胞の数と比較して少なくとも40%減少し、それによって非虚血性拡張型心筋症を治療する、方法に関する。
【0019】
[00019]本発明の他の態様は、対象における非虚血性拡張型心筋症を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記対象の血清試料中のTNF-α濃度は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の前記対象の血清試料中のTNF-α濃度と比較して少なくとも80%減少し、それによって非虚血性拡張型心筋症を治療する、方法に関する。
【0020】
[00020]本発明の他の態様は、対象における加齢による脆弱の症状を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中の疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中の疲弊B細胞の数と比較して少なくとも10%減少し、それによって加齢による脆弱の症状を治療する、方法に関する。
【0021】
[00021]本発明の他の態様は、対象における加齢による脆弱の症状を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中のスイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中のスイッチメモリーB細胞の数と比較して少なくとも75%増加し、それによって加齢による脆弱の症状を治療する、方法に関する。
【0022】
[00022]本発明の他の態様は、対象における加齢による脆弱の症状を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中の細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中の細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数と比較して少なくとも60%減少し、それによって加齢による脆弱の症状を治療する、方法に関する。
【0023】
[00023]本発明の他の態様は、対象における加齢による脆弱の症状を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中の早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中の早期活性化T細胞の数と比較して少なくとも30%減少し、それによって加齢による脆弱の症状を治療する、方法に関する。
【0024】
[00024]本発明の他の態様は、対象における加齢による脆弱の症状を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中の慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中の慢性活性化T細胞の数と比較して少なくとも75%減少し、それによって加齢による脆弱の症状を治療する、方法に関する。
【0025】
[00025]本発明の他の態様は、対象における加齢による脆弱の症状を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中のTemra細胞(CD45RA+、CCR7-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中のTemra細胞の数と比較して少なくとも20%減少し、それによって加齢による脆弱の症状を治療する、方法に関する。
【0026】
[00026]本発明の他の態様は、対象における加齢による脆弱の症状を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中のTNF-α濃度は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中のTNF-α濃度と比較して少なくとも50%減少し、それによって加齢による脆弱の症状を治療する、方法に関する。
【0027】
[00027]本発明の他の態様は、対象における加齢による脆弱の症状を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象の血清試料中のCD4+:CD8+T細胞比は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中のCD4+:CD8+T細胞比と比較して少なくとも100%増加し、それによって加齢による脆弱の症状を治療する、方法に関する。
【0028】
[00028]本発明の一実施形態では、対象はヒトである。本発明の別の実施形態では、対象は加齢に伴う炎症を示しているヒトである。
【0029】
[00029]本発明の一実施形態では、間葉系幹細胞は骨髄由来の間葉系幹細胞である。本発明の一実施形態では、間葉系幹細胞はSTRO-1を発現していない。本発明の別の実施形態では、間葉系幹細胞はCD45を発現していない。本発明の別の実施形態では、間葉系幹細胞は線維芽細胞表面マーカーを発現していない、又は線維芽細胞形態を有していない。本発明の別の実施形態では、間葉系幹細胞は遺伝子操作されていない。
【0030】
[00030]本発明の別の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は単一用量で投与される。本発明の別の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は複数の用量、例えば2つ以上の用量で投与される。本発明の別の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は少なくとも年1回投与される。
【0031】
[00031]一実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は全身に投与される。本発明の一実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は点滴又は直接注射によって投与される。本発明の一実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、静脈内に、動脈内に、筋肉注射で、腹腔内に、皮下に、皮内に、経口で、経心内膜で、又は鼻腔内に投与される。さらなる実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は静脈内に投与される。さらなる実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は筋肉注射で投与される。
【0032】
[00032]本発明の一実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は約20×106個の間葉系幹細胞の用量で投与される。本発明の別の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は約100×106個の間葉系幹細胞の用量で投与される。本発明の別の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は約200×106個の間葉系幹細胞の用量で投与される。
【0033】
[00033]本発明の一実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団がヒトドナーから得られ、及び同種間葉系幹細胞の単離された集団を対象に投与する前に、対象へのヒトドナーのMHCマッチングのステップは用いられない。
【0034】
[00034]本発明の他の態様は、対象における細胞性及び体液性免疫状態を評価する方法であって、
(1)対象が以前に非虚血性拡張型心筋症の治療を必要としており、対象に初期用量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を投与したという決定に基づいて、評価のために選択された対象から血清試料を得るステップと、
(2)(i)アッセイされるバイオマーカー(複数可)を検出するために、特異的に結合する1つ又は複数の抗体と血清試料を接触させ、(ii)1つ又は複数のアッセイ結果を提供するためにそれぞれの抗体への、アッセイされる各バイオマーカーの結合を示す1つ又は複数のアッセイ結果を生成するアッセイ機器へ、対象から得た血清試料を導入することによって、疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)、細胞内TNF-αを発現しているB細胞、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)、Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)、及び血清TNF-αからなる群から選択される非虚血性拡張型心筋症マーカーを検出するために構成された1つ又は複数のアッセイを行うステップと、
(3)アッセイ機器によって生成されたアッセイ結果(複数可)を対象の免疫状態と関連付けるステップであって、アッセイ結果(複数可)に基づいて免疫状態の1つ又は複数の将来の変化の可能性を対象に割り当てることを含むステップと、
(4)対象が割り当てられている個体の所定の部分集団に基づいて対象を治療するステップであって、同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団の1つ又は複数の追加用量の投与を含むステップと
を含む方法に関する。
【0035】
[00035]本発明の他の態様は、対象における細胞性及び体液性免疫状態を評価する方法であって、
(1)対象が以前に加齢による脆弱の症状の治療を必要としており、対象に初期用量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を投与したという決定に基づいて、評価のために選択された対象から血清試料を得るステップと、
(2)(i)アッセイされるバイオマーカー(複数可)を検出するために、特異的に結合する1つ又は複数の抗体と血清試料を接触させ、(ii)1つ又は複数のアッセイ結果を提供するためにそれぞれの抗体への、アッセイされる各バイオマーカーの結合を示す1つ又は複数のアッセイ結果を生成するアッセイ機器へ、対象から得た血清試料を導入することによって、疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)、細胞内TNF-αを発現しているB細胞、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)、Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)、CD4+:CD8+T細胞比、及び血清TNF-αからなる群から選択される加齢による脆弱マーカーを検出するために構成された1つ又は複数のアッセイを行うステップと、
(3)アッセイ機器によって生成されたアッセイ結果(複数可)を対象の免疫状態と関連付けるステップであって、アッセイ結果(複数可)に基づいて免疫状態の1つ又は複数の将来の変化の可能性を対象に割り当てることを含むステップと、
(4)対象が割り当てられている個体の所定の部分集団に基づいて対象を治療するステップであって、同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団の1つ又は複数の追加用量の投与を含むステップと
を含む方法に関する。
【0036】
[00036]本発明の一実施形態では、免疫状態の1つ又は複数の将来の変化は、疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)の数の増加、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)の数の減少、細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数の増加、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)の数の増加、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)の数の増加、Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)の数の増加、CD4+:CD8+T細胞比の減少、及び血清TNF-αの増加、のうちの1つ又は複数を含む。
【0037】
[00037]本発明の他の態様は、対象における非虚血性拡張型心筋症の治療の有効性を決定するインビトロの方法であって、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団の対象への投与前後に対象から得られた血清中の、疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)、細胞内TNF-αを発現しているB細胞、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)、Temra細胞s(CD45RA+、CCR7-)、及びTNF-α濃度からなる群から選択される1つ又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、単離されたヒト間葉系幹細胞の集団の投与前後に得られた血清中の1つ又は複数のバイオマーカーのレベルを比較するステップとを含み、治療が、
(1)疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の疲弊B細胞の数と比較して少なくとも25%減少している、
(2)スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前のスイッチメモリーB細胞の数と比較して少なくとも100%増加している、
(3)細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数と比較して少なくとも30%減少している、
(4)早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の早期活性化T細胞の数と比較して少なくとも30%減少している、
(5)慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の慢性活性化T細胞の数と比較して少なくとも70%減少している、
(6)Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前のTemra細胞の数と比較して少なくとも40%減少している、及び/又は
(7)対象の血清試料中のTNF-α濃度は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中のTNF-α濃度と比較して少なくとも80%減少している
場合に有効である、インビトロの方法に関する。
【0038】
[00038]本発明の他の態様は、対象における加齢による脆弱の症状の治療の有効性を決定するインビトロの方法であって、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団の対象への投与前後に対象から得られた血清中の、疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)、細胞内TNF-αを発現しているB細胞、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)、Temra細胞s(CD45RA+、CCR7-)、CD4+:CD8+T細胞比、及びTNF-α濃度からなる群から選択される1つ又は複数のバイオマーカーのレベルを決定するステップと、単離されたヒト間葉系幹細胞の集団の投与前後に得られた血清中の1つ又は複数のバイオマーカーのレベルを比較するステップとを含み、治療が、
(1)疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の疲弊B細胞の数と比較して少なくとも10%減少している、
(2)スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前のスイッチメモリーB細胞の数と比較して少なくとも75%増加している、
(3)細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数と比較して少なくとも60%減少している、
(4)早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の早期活性化T細胞の数と比較して少なくとも30%減少している、
(5)慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の慢性活性化T細胞の数と比較して少なくとも75%減少している、
(6)Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)の数は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前のTemra細胞の数と比較して少なくとも20%減少している、
(7)対象の血清試料中のTNF-α濃度は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中のTNF-α濃度と比較して少なくとも50%減少している、及び/又は、
(8)対象の血清試料中のCD4+:CD8+T細胞比は、単離された同種ヒト間葉系幹細胞の集団を投与する前の対象の血清試料中のCD4+:CD8+T細胞比と比較して少なくとも100%増加している
場合に有効である、インビトロの方法に関する。
【0039】
[00039]本発明他の態様は、非虚血性拡張型心筋症の治療に有効であるかどうか決定するための、血清中の疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)のレベル、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)のレベル、細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベル、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)のレベル、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)のレベル、Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)のレベル、及びTNF-α濃度のインビトロでの使用に関する。
【0040】
[00040]本発明の他の態様は、加齢による脆弱の治療に有効であるかどうか決定するための、血清中の疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)のレベル、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)のレベル、細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベル、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)のレベル、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)のレベル、Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)のレベル、CD4+:CD8+T細胞比、及びTNF-α濃度のインビトロでの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】脆弱を有する高齢者を治療するための同種間葉系幹細胞の使用を研究するランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験のコンソートダイアグラムの図である。
【
図2】脆弱を有する高齢者を治療するための同種間葉系幹細胞の使用を研究するランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験に登録された対象のベースライン患者特性を提供する図である。
【
図3】同種ヒト間葉系幹細胞を投与された高齢の対象においてTNF-αが減少することを示す図である。
【
図4】同種ヒト間葉系幹細胞を投与された高齢の対象においてCD69を発現している早期活性化T細胞が減少することを示す図である。
【
図5】同種ヒト間葉系幹細胞を投与された高齢の対象においてCD25を発現している慢性/後期活性化T細胞の数が減少することを示す図である。
【
図6】同種ヒト間葉系幹細胞を投与された高齢の対象におけるCD8+T細胞の測定を示す図である。
【
図7】同種ヒト間葉系幹細胞を投与された高齢の対象におけるCD4
+/CD8
+T細胞の比の増加を示す図である。
【
図8】ヒト間葉系幹細胞の点滴を2回受けた加齢による脆弱を有する患者における免疫老化スコア増加を示す図である。
【
図9】ベースラインの血清TNF-αとベースラインの細胞内(IC)TNF-αを発現しているB細胞との間の相関を示す図である。
【
図10】若い対照のベースライン、低TNF:IC TNFのベースライン、及び高TNF:ICTNFのベースラインにおいてIC TNF-αを発現しているB細胞の%を提供する図である。
【
図11】若い対照のベースライン、低TNF:スイッチメモリーB細胞のベースライン、及び高TNF:スイッチメモリーB細胞のベースラインにおけるスイッチメモリーB細胞の%を提供する図である。
【
図12】若い対照のベースライン、低TNF:疲弊B細胞のベースライン、及び高TNF:疲弊B細胞のベースラインにおける疲弊B細胞の%を提供する図である。
【
図13】若い対照のベースライン、低TNF:Temra細胞のベースライン、及び高TNF:Temra細胞のベースラインにおけるTemra細胞の%を提供する図である。
【
図14】若い対照のベースライン、低TNF:CD4:CD8のベースライン、及び高TNF:CD4:CD8のベースラインにおけるCD4
+/CD8
+T細胞比を提供する図である。
【
図15】プラセボ対照、低TNF-α、及び高TNF-αにおける血清TNF-αの絶対変化pg/mlを提供する図である。
【
図16】ベースラインの血清TNF-αと血清TNF-αの変化との間の相関を示す図である。
【
図17】プラセボ対照、低TNF-α、及び高TNF-αにおけるIC TNF-αを発現しているB細胞の絶対変化を示す図である。
【
図18】血清TNF-αとIC TNF-αを発現しているB細胞の変化との間の相関を示す図である。
【
図19】プラセボ対照、低TNF-α、及び高TNF-αにおけるスイッチメモリーB細胞の%の絶対変化を示す図である。
【
図20】プラセボ対照、低TNF-α、及び高TNF-αにおける疲弊B細胞の%の絶対変化を示す図である。
【
図21】プラセボ対照、低TNF-α、及び高TNF-αにおけるTemraT細胞の%の絶対変化を示す図である。
【
図22】血清TNF-αの変化とTemraT細胞の変化との間の相関を示す図である。
【
図23】プラセボ対照、低TNF-α、及び高TNF-αにおけるCD4
+/CD8
+T細胞比の絶対変化を示す図である。
【
図24】CD4
+/CD8
+T細胞比の変化とTemraT細胞の変化との間の相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[00065]ある特定の実施形態では、本発明は、対象における非虚血性拡張型心筋症を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を対象にする。実施例は、同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団をインビボで投与すると、対象におけるスイッチメモリーB細胞の割合が増加し、疲弊B細胞が減少することを実証する。実施例はまた、単離された同種ヒト間葉系幹細胞をインビボで投与すると、対象におけるCD4+:CD8+T細胞比が改善することを実証する。また、実施例に示すように、血清中の細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベル、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)のレベル、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)のレベル、Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)のレベル、及びTNF-α濃度は、同種ヒト間葉系幹細胞の点滴を受けた対象では低減する。これらの予期されない結果から、本発明人らは、単離された同種ヒト間葉系幹細胞が、慢性炎症において一般的に上昇したいくつかの免疫学的マーカーを有利に変化させることを明らかにした。共存症の感染性疾患の危険性が高い対象においては、免疫能力の回復は、臨床的に関連性がある。
【0043】
[00066]他の実施形態では、本発明は、対象における加齢による脆弱の症状を治療する方法であって、治療有効量の同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を対象にする。実施例は、同種ヒト間葉系幹細胞の単離された集団をインビボで投与すると、対象におけるスイッチメモリーB細胞の割合が増加し、疲弊B細胞が減少することを実証する。実施例はまた、単離された同種ヒト間葉系幹細胞をインビボで投与すると、対象におけるCD4+:CD8+T細胞比が改善することを実証する。また、実施例に示すように、血清中の細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベル、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)のレベル、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)のレベル、Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)のレベル、及びTNF-α濃度は、同種ヒト間葉系幹細胞の点滴を受けた対象では低減する。これらの予期されない結果から、本発明人らは、単離された同種ヒト間葉系幹細胞が、加齢による脆弱においてよく見られる特性である加齢に伴う炎症を効果的に減少させることを明らかにした。
【0044】
[00067]定義
実施形態は、提示された理論的態様なしで実施されてもよい。さらに、理論的態様は、実施形態が提示されたいかなる理論によっても拘束されないことを理解して提示されている。
【0045】
[00068]断りがない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。一般に用いられる辞書で定義されるような用語は、関連技術の文脈における意味と一致した意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書において明示的に定義されない限り、理想化された又は過度に形式的な意味に解釈されない。
【0046】
[00069]本明細書で用いられる用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、限定の意図はない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が別の方法で明確に示されない限り、複数形を含むことを意図する。さらに、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、又はそれらの異形の用語が詳細な説明及び/又は特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限りにおいて、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の方法で包括的であることが意図される。
【0047】
[00070]本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、その範囲内にあるそれぞれの独立した値をそれぞれ示す簡略化された方法として機能することを意図しており、それぞれの独立した値は、本明細書にそれぞれが記載されるかのように、本明細書内に含まれる。本明細書で提示された任意及びすべての例又は例示的な言葉(例えば「~のような」)は、特に主張されていない限り、本発明をより明確にするのであって、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書の言葉は、本発明の実践に必須の請求されない要素を示すものと解釈してはならない。
【0048】
[00071]「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるか、すなわち測定システムの限界に部分的に依存するであろう。例えば、「約」は、当技術分野の慣行により、1又は1を超える標準偏差内を意味することができる。あるいは、「約」は、被参照値の±10%の範囲を意味することができる。
【0049】
[00072]用量、期間及び対象
「治療有効量」は、B細胞又はT細胞依存性免疫応答を促進する量を意味する。そのような応答は、有意なレベルのIgG及びオプソニン活性を引き出す能力によって特徴付けられる。対象に投与される用量及び用量の数(例えば単一又は複数の用量)は、投与経路、患者の状態及び特性(性別、年齢、体重、健康状態、サイズ)、症状の程度、同時治療、治療の頻度及び所望の効果などを含む様々な因子に応じて変わる。
【0050】
[00073]本発明の一実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は単一用量で投与される。別の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は複数の用量、例えば2つ以上の用量で投与される。他の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は少なくとも年1回投与される。
【0051】
[00074]本発明の別の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団の投与は、例えば、同種間葉系幹細胞の単離された集団の最初の投与後の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、若しくは18カ月に反復され、又は、同種間葉系幹細胞の単離された集団の最初の投与後2~4、2~6、2~8、2~10、3~4、3~6、3~8、3~10、4~6、4~8、4~10、6~8、6~10、6~12、又は12~18カ月の間に反復される。
【0052】
[00075]本発明の一実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、約1×106、2×106、5×106、10×106、20×106、30×106、40×106、50×106、60×106、70×106、80×106、90×106、100×106、110×106、120×106、130×106、140×106、150×106、160×106、170×106、180×106、190×106、200×106、300×106、400×106、500×106、又は10×107個の間葉系幹細胞の用量で投与される。さらなる実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、約20×106個の間葉系幹細胞の用量で投与される。さらなる実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、約100×106個の間葉系幹細胞の用量で投与される。さらにさらなる実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、約200×106個の間葉系幹細胞の用量で投与される。さらなる実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、約1~400×106、10~400×106、100~400×106、20~200×106、20~400×106、0.1~5×106、0.1~10×106、0.1~100×106、1~50×106、1~100×106、0.01~10×106又は0.01~100×106個の間葉系幹細胞の用量で投与される。
【0053】
[00076]一部の実施形態では、治療有効量の同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象においてCD4+:CD8+T細胞の比を増加させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の比と比較して少なくとも2、3、4、5、又は6倍CD4+:CD8+T細胞の比を増加させ、すなわち、CD4+:CD8+T細胞の比は少なくとも100%、200%、300%、400%、又は500%増加する。
【0054】
[00077]一部の実施形態では、治療有効量の同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象においてスイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)の数を増加させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の数と比較して少なくとも2、3、4、又は5倍スイッチメモリーB細胞の数を増加させ、すなわち、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)の数は少なくとも100%、200%、300%、又は400%増加する。他の実施形態では、スイッチメモリーB細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前のスイッチメモリーB細胞の数と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%増加する。
【0055】
[00078]一部の実施形態では、治療有効量の同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象において細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前のそのようなB細胞の数と比較して少なくとも2、3、4、5、又は6倍、数を減少させる。他の実施形態では、細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、又は60%減少する。
【0056】
[00079]一部の実施形態では、治療有効量の同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象において疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)の数を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の数と比較して少なくとも2又は3倍、疲弊B細胞の数を減少させる。他の実施形態では、疲弊B細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の疲弊B細胞の数と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%減少する。
【0057】
[00080]一部の実施形態では、治療有効量の同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象において早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)の数を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の数と比較して少なくとも2又は3倍、早期活性化T細胞の数を減少させる。他の実施形態では、早期活性化T細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の早期活性化T細胞の数と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%減少する。
【0058】
[00081]一部の実施形態では、治療有効量の同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象において慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)の数を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の数と比較して少なくとも2又は3倍、慢性活性化T細胞の数を減少させる。他の実施形態では、慢性活性化T細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の慢性活性化T細胞の数と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%減少する。
【0059】
[00082]一部の実施形態では、治療有効量の同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象においてTemra細胞(CD45RA+、CCR7-)の数を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の数と比較して少なくとも2又は3倍、Temra細胞の数を減少させる。他の実施形態では、Temra細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前のそのようなTemra細胞の数と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%減少する。
【0060】
[00083]一部の実施形態では、治療有効量の同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象の血清試料中のTNF-α濃度を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前のTNF-α濃度と比較して少なくとも2又は3倍、TNF-α濃度を減少させる。他の実施形態では、TNF-αの濃度は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前のTNF-αの濃度と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%減少する。
【0061】
[00084]本発明の他の態様は、対象が同種間葉系幹細胞の単離された集団の投与から利益を受けるかどうかを判断するために対象の細胞性及び体液性免疫状態を評価する方法、及びバイオマーカーデータに基づいて対象の所定の部分集団を治療する方法を含む。例えば、疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)、細胞内TNF-αを発現しているB細胞、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)、Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)、及び血清TNF-αからなる群から選択される非虚血性拡張型心筋症マーカーを検出するために1つ又は複数のアッセイを行うことができた。同様に、疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)、細胞内TNF-αを発現しているB細胞、早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)、慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)、Temra細胞(CD45RA+、CCR7-)、CD4+:CD8+T細胞比、及び血清TNF-αからなる群から選択される加齢による脆弱マーカーを検出するために1つ又は複数のアッセイを行うことができた。
【0062】
[00085]一部の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象においてCD4+:CD8+T細胞の比を増加させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の比と比較して少なくとも2、3、4、5、又は6倍CD4+:CD8+T細胞の比を増加させ、すなわち、CD4+:CD8+T細胞の比は少なくとも100%、200%、300%、400%、又は500%増加する場合、治療は有効であると実証される。
【0063】
[00086]一部の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象においてスイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)の数を増加させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の数と比較して少なくとも2、3、4、又は5倍スイッチメモリーB細胞の数を増加させ、すなわち、スイッチメモリーB細胞(CD19+、CD27high、IgD-)の数は少なくとも100%、200%、300%、又は400%増加する場合、治療は有効であると実証される。他の実施形態では、スイッチメモリーB細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前のスイッチメモリーB細胞の数と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%増加する。
【0064】
[00087]一部の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象において細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数と比較して少なくとも2、3、4、5、又は6倍、数を減少させる場合、治療は有効であると実証される。他の実施形態では、細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の細胞内TNF-αを発現しているB細胞の数と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、又は60%減少する。
【0065】
[00088]一部の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象において疲弊B細胞(CD19+、CD27-、IgD-)の数を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の数と比較して少なくとも2又は3倍、疲弊B細胞の数を減少させる場合、治療は有効であると実証される。他の実施形態では、疲弊B細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の疲弊B細胞の数と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%減少する。
【0066】
[00089]一部の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象において早期活性化T細胞(CD3+、CD69+)の数を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の数と比較して少なくとも2又は3倍、早期活性化T細胞の数を減少させる場合、治療は有効であると実証される。他の実施形態では、早期活性化T細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の早期活性化T細胞の数と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%減少する。
【0067】
[00090]一部の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象において慢性活性化T細胞(CD3+、CD25+)の数を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の数と比較して少なくとも2又は3倍、慢性活性化T細胞の数を減少させる場合、治療は有効であると実証される。他の実施形態では、慢性活性化T細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の慢性活性化T細胞の数と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%減少する。
【0068】
[00091]一部の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象においてTemra細胞(CD45RA+、CCR7-)の数を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前の数と比較して少なくとも2又は3倍、Temra細胞の数を減少させる場合、治療は有効であると実証される。他の実施形態では、Temra細胞の数は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前のそのようなTemra細胞の数と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%減少する。
【0069】
[00092]一部の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、対象の血清試料中のTNF-α濃度を減少させるのに十分であり、例えば同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前のTNF-α濃度と比較して少なくとも2又は3倍、TNF-α濃度を減少させる場合、治療は有効であると実証される。他の実施形態では、TNF-αの濃度は、同種間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前のTNF-αの濃度と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%減少する。
【0070】
[00093]組成物の「投与」は、経口投与、注射、点滴、非経口、静脈内、粘膜、舌下腺、筋肉内、皮内、鼻内、腹腔内、動脈内、皮下吸収又は他の既知の技術と組み合わせた任意の方法によって達成されてもよい。本発明の一実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は全身に投与される。本発明の別の実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は点滴又は直接注射によって投与される。本発明の一実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は、筋肉注射で、静脈内に、動脈内に、腹腔内に、皮下に、皮内に、経口で、経心内膜で、又は鼻腔内に投与される。さらなる実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は筋肉注射で投与される。さらなる実施形態では、同種間葉系幹細胞の単離された集団は静脈内に投与される。
【0071】
[00094]本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト、並びに野生動物、家庭内動物、及び農場動物のような非ヒト脊椎動物を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、用語は65歳以上の高齢者、又は60~95歳の高齢者のようなヒトを表す。一部の実施形態では、ヒト対象は加齢による脆弱の症状を示す。一部の実施形態では、ヒト対象は加齢に伴う炎症を示す。
【0072】
[00095]「同種」という用語は、「レシピエント宿主」となる動物と同一の動物種であるが、1つ又は複数の遺伝子座において遺伝的に異なる細胞を表す。これは通常、ある動物から同種の別の同一でない動物に移植された細胞に適用される。
【0073】
[00096]本明細書で使用される場合、「それを必要とする」という語句は、対象が特定の方法又は治療を必要としていると同定されたことを意味する。一部の実施形態では、同定は任意の診断の手段によることができる。本明細書に記載の任意の方法及び治療では、対象はそれを必要としている可能性がある。一部の実施形態では、対象は環境内にいるか、又は特定の疾患、障害、又は状態がよく見られる環境に移動しているであろう。
【0074】
[00097]細胞は、本明細書である種のマーカーに対してポジティブ又はネガティブであると称される。例えば、細胞はCD45に対してネガティブであることがあり、これはCD45-とも称され得る。上付文字表記「-」は、上付き文字にリンクされたマーカーに対してネガティブである細胞を表す。一方、「+」を有するマーカーは、そのマーカーに対してポジティブである細胞を表す。例えば、「CD8+」と称される細胞は、CD8に対してポジティブである。「+」もまた、マーカーをポジティブとして称するために使用され得る。「-」もまた、マーカーをネガティブとして称するために使用され得る。
【0075】
[00098]本明細書で使用される場合、「幹細胞」という用語は、ある種の条件下で長期間、又は成人幹細胞の場合には生物の寿命を通してそれ自体増殖する能力を有する、胚、胎児、又は成人由来の細胞を表す。幹細胞はまた体の組織や器官を構成する特殊な細胞を生み出すことができる。
【0076】
[00099]間葉系幹細胞は、サイトカインのような生物活性因子からの様々な影響によって、間葉系組織又は結合組織(すなわち、特化された要素を支持する体の組織;特に脂肪、骨性、軟骨性、弾力性、及び線維性結合組織)の任意の種類の特定のタイプに分化することができる、とりわけ骨髄、血液、真皮、及び骨膜に見られる形成性の多能性芽細胞である。
【0077】
[000100]間葉系幹細胞を単離及び/又は精製するある種の方法は本明細書に記載されており、当技術分野で既知である。一部の実施形態では、間葉系幹細胞は成人ヒトの骨髄から単離される。一部の実施形態では、細胞は密度勾配を通過して望ましくない細胞タイプが除外される。細胞を蒔き、適した培地で培養することができる。一部の実施形態では、細胞を少なくとも1日又は約3~約7日培養し、非付着性細胞を除去する。次いで付着性細胞を蒔き、増殖させる。
【0078】
[000101]幹細胞を単離及び培養する他の方法も既知である。胎盤は間葉系幹細胞の容易に入手可能な優れた供給源である。さらに、間葉系幹細胞は脂肪組織から誘導することができ、骨髄間質細胞は他の組織に存在すると推察される。成人幹細胞が由来し得る臓器には劇的な定性的及び定量的な違いがあるが、細胞間の初期の違いは比較的表面的であり、細胞が示す類似の範囲の柔軟性によってバランスがとられている可能性がある。
【0079】
[000102]すべての間葉系細胞系統の前駆体としての機能を果たす、均質なヒト間葉系幹細胞組成物が提供される。間葉系幹細胞は、固有のモノクローナル抗体で識別される特定の細胞表面マーカーによって識別される。均質な間葉系幹細胞組成物は、造血細胞又は分化した間葉系細胞のいずれかに関連したマーカーを含まない接着性の骨髄細胞又は骨膜細胞のポジティブ選択により得られる。これらの単離された間葉系細胞集団は、間葉系幹細胞のみに関連するエピトープ特性を示し、分化することなく培養下で再生する能力を有し、インビトロで誘導されるか又は炎症部位にインビボで置かれると特定の間葉系系統に分化する能力を有する。
【0080】
[000103]本明細書で開示された組成物、方法、及びキットのためのヒト間葉系幹細胞を得るために、多能性間葉系幹細胞は、骨髄又は他の間葉系幹細胞供給源中の他の細胞から分離される。骨髄細胞を腸骨稜、大腿骨、脛骨、脊椎、肋骨、又は他の髄腔から得てもよい。ヒト間葉系幹細胞の他のスペースは、胚卵黄嚢、胎盤、臍帯、胎児及び青年の皮膚、及び血液を含む。
【0081】
[000104]一部の実施形態では、ヒト間葉系幹細胞はマーカーの非存在によって同定される。例えば、本発明で有用なヒト間葉系幹細胞は、STRO-1に対してネガティブ及び/又はCD45に対してネガティブのヒト間葉系幹細胞を含む。同様に、本発明で有用なヒト間葉系幹細胞は、線維芽細胞表面マーカーを発現しない、又は線維芽細胞形態を有するヒト間葉系幹細胞を含む。
【0082】
[000105]免疫応答を高める方法
上記のように、本発明は、対象の細胞性又は体液性免疫応答を高める方法であって、治療有効量のヒト間葉系幹細胞の単離された集団を対象に投与することを含む方法を対象にする。本発明の一部の実施形態では、間葉系幹細胞は遺伝子操作されていない。本発明の一部の実施形態では、間葉系幹細胞はヒトドナーから得られ、対象へのヒトドナーのMHCマッチングのステップは、ヒト間葉系幹細胞の単離された集団を投与する前に用いられない。
【0083】
[000106]本発明で使用するための組成物は、任意の適した方法を使用して製剤化されてもよい。標準の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を有する細胞の製剤は、医薬分野で日常的な方法を使用して行われてもよい。製剤の正確な特質は、投与される細胞及び投与の所望の経路を含むいくつかの因子に依存する。製剤の適したタイプは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、Mack Publishing Company、Eastern Pennsylvania、USAに十分に記載されている。
【0084】
[000107]組成物は、生理学的に許容される担体又は希釈剤と共に調製されてもよい。一般的に、そのような組成物は細胞の液体懸濁液として調製される。細胞は、薬学的に許容され活性成分と適合性のある賦形剤と混合されてもよい。適した賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールなど、及びそれらの組合せである。
【0085】
[000108]さらに、必要ならば、本発明の医薬組成物は、湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、及び/又は効果を高めるアジュバントのような少量の補助物質を含んでよい。本発明の一実施形態では、アジュバントはヒト血清アルブミン(HSA)を含む。
【0086】
[000109]1つの適した担体又は希釈剤はプラズマライト(PlasmaLyte)A(商標)である。これは静脈内投与のための無菌の非発熱性等張溶液である。各100mLは、526mgの塩化ナトリウム、USP(NaCl)、502mgのグルコン酸ナトリウム(C6H11NaO7)、368mgの酢酸ナトリウム三水和物、USP(C2H3NaO23H2O)、37mgの塩化カリウム、USP(KCl)、及び30mgの塩化マグネシウム、USP(MgCl26H2O)を含む。抗菌剤は含まない。pHは水酸化ナトリウムで調整する。pHは7.4(6.5~8.0)である。
【0087】
[000110]本発明の一実施形態では、間葉系幹細胞は遺伝子操作されていない。本発明の別の実施形態では、間葉系幹細胞は凍結保存されている。例えば、間葉系幹細胞を2%HSA及び5%DMSOを添加したヘスパン(Hespan)(登録商標)(0.9%塩化ナトリウム中6%ヘタスターチ)からなる凍結保護剤に懸濁し、次いで気相窒素フリーザーに配置するために凍結保存容器にアリコートすることができる。別の実施形態では、間葉系幹細胞は1%HSAを添加したプラズマライトA(商標)で提供されてもよい。
【実施例】
【0088】
実施例1 慢性非虚血性拡張型心筋症の治療
[000111]手短に言うと、37例の患者を同種又は自己のヒト間葉系幹細胞のいずれかを受けるように、1:1の比でランダム化した。University of Miami Hospitalで、2011年12月から2015年7月の間に患者を募集した。患者(55.8±11.2歳、32%女性)は、NOGAカテーテルによる10個の左心室部位に、経心内膜幹細胞注射(TESI)によってヒト間葉系幹細胞(1億)を受けた。治療した患者を、ベースライン、30日、3、6、及び12カ月に、免疫バイオマーカーについて評価した。
【0089】
[000112]患者集団
患者の適格性は、40%未満のEF、及び男性対象で5.9cmを超え、女性対象で5.6cmを超える左室拡張末期直径又は125mL/m2を超える左室拡張末期容積指標のいずれかのNIDCMの診断の確認後に決定された。37例の患者を自己ヒト間葉系幹細胞(hMSC)又は同種hMSCのいずれかに、1:1の比でランダム化した。34例の患者が試験の注射を受け、16例及び18例の患者がそれぞれ自己hMSC及び同種hMSCであった。3例の患者は、試験の注射を受けなかった。1例の患者は、治療前に同意を取り下げた。他の患者を募集したが、この患者は、自動埋込み可能なカルジオバータ-除細動器配置のために治療を受けず(n=1)、1例の患者は治療前に死亡した(n=1)。注射した参加者の平均年齢は55.8±11.2歳であり、29%が女性、及び35%がヒスパニック系であった。TESI前のNIDCM診断の平均年数は、同種患者で6.1±6.2年及び自己の患者で6.9±7.3年(グループ間、p=0.5)であった。50パーセントの患者は、NYHAクラスII症状を有しており、全体的なEFの平均ベースラインは26.5±9.64%、平均6MWTは422±86.8M、及びベースラインMLHFQスコア中央値は36(IQR18.0、64.0)であった。
【0090】
[000113]試験手順及びタイムライン
ベースライン評価は、化学及び血液学検査室、心エコー検査、並びに胸部、腹部及び骨盤コンピューター断層撮影スキャンを含んでいた。
【0091】
[000114]細胞療法のためのヒト間葉系幹細胞(hMSC)
すべての同種及び自己ヒト間葉系幹細胞は、University of Miami ISCIで製造された。例えば、Golpanian,S.ら、Physiol.Rev.、96:1127~68(2016)、及びMushtaq,M.ら、J.Cardio.Trans.Res.、7:769~80(2014)を参照。同種ヒト間葉系幹細胞は、平均年齢25.4±3.3歳のコーカサス人男性ドナーに由来し、TESIの時80~90%が生存していた。自己hMSCは、平均年齢58.0±9.9歳の11名の男性、及び平均年齢55.0±12.4歳の6名の女性に由来した。
【0092】
[000115]経心内膜幹細胞注射
注射部位は、TESI手順の安全性を優先し、及び利用可能な心筋領域全体に部位を分布させるために選択された。部位の選択についての検討には、心室尖部の回避、及び針を伸長する前のカテーテル安定性の最適化が含まれていた。
【0093】
[000116]免疫モニタリング
算出したパネル反応性抗体(cPRA)をベースライン及び6カ月に、Luminex 200を使用して測定した。血清TNF-αをヒトTNF-αELISA高感度キット(eBiosciences)を使用して測定した。リンパ球を活性化のT細胞マーカーについて染色した。後期/疲弊したT細胞、B細胞サブセット(スイッチメモリー及び後期/疲弊B細胞)及びB細胞によるTNF-α。すべての試料はLSR-Fortessa-HTS分析器(BD Pharmigen)を使用して取得し、FlowJo V10ソフトウェアで分析した。すなわち、すべてのリンパ球集団をフローサイトメトリーによって評価し、ゲートしたもの(CD19+でゲートしたB細胞パラメータ、及びCD3+でゲートしたT細胞パラメータ)からのパーセントで表した。
【0094】
[000117]cPRAの結果は、同種の67%及び自己レシピエントの92%が低cPRA(0~20%のcPRA)に対して反応を示さなかったことを示した。同種の27%及び自己の8%が中程度のcPRA(21~79%のcPRA)を有し、及び同種MSCを投与された1例の対象(7%)が高いcPRA応答を示した(+80%のcPRA)。
【0095】
[000118]TNF-αの上昇したベースラインレベルは、両グループにおいてベースラインから6カ月に減少した(同種:-10.6±1.6pg/ml、p<0.0001、自己:-6.8±1.4pg/ml、p<0.0001、表1;グループ間、p=0.05)。TemraT細胞(疲弊したT細胞表現型)は、両グループにおいて減少し、同種においてより大きく減少した(同種:-15.9±5.4%、p<0.0001、自己:-9.3±3.3%、p<0.0001、表1;グループ間、p=0.0111;表1)。ベースラインの抑制されたスイッチメモリーB細胞(抗体応答の予測バイオマーカー)の%は、両グループとも6カ月で有意に増加し、同種においてより大きく改善した(同種:+10.2±4.9%、p<0.0001に対して、自己:+4.3±3.9%、p=0.0014、グループ間、p<0.0001;表1)。最終的に、B23細胞における細胞内TNF-α発現も、両グループにおいて、ベースラインに対して6カ月で減少した(同種:-11.2±3.3%、p<0.0001、自己:-8.5±3.0%、p<0.0001;グループ間、p=0.174;表1)。一方、後期/疲弊B細胞は両グループにおいて有意に減少した(同種:-5.4±1.03%、p<0.0001、自己:-5.9±2.5%、p=0.003;グループ間の違い、p=0.57;表1)。早期T細胞活性化は(同種:-5.57±1.03%、p<0.0001、自己:-2.92±1.5%、p=0.02;グループ間、p=0.08;表1)、両グループにおいて同程度減少した。一方、後期/慢性T-細胞活性化は、いずれのグループにおいても有意に減少しなかった(同種:-2.3±1.3%、p=0.4、及び自己:-3.4±2.7%、p=0.7)。
【0096】
【0097】
実施例2 加齢による脆弱の症状の治療-試験1
[000119]Canadian Study of Health and Aging(CSHA)による脆弱の試験選択/除外基準を満たした60歳以上の30例の対象をランダム化した。10例の対象は1億個のMSCを受け、10例の対象は2億個のMSCを受け、及び10例の対象はプラセボを受けた。安全性及び有効性について対象を1年間追跡した。評価は少なくとも以下の、炎症性バイオマーカーの試験及び免疫学的効果のレビューを含んでいた。
図1はコンソートダイアグラムである。
図2はベースライン患者特性を提供する。
図3~7は同種ヒトMSCが免疫バイオマーカーに及ぼす影響を示す。
【0098】
[000120]
図3はヒトMSCを投与された対象においてTNF-αが減少することを示す。早期及び後期/慢性T細胞活性化の両者は、同種MSCの治療後に減少している。
図4はヒトMSCを投与された対象においてCD69を発現している早期活性化T細胞が減少することを示す。
図5はヒトMSCを投与された対象においてCD25を発現している慢性/後期活性化T細胞の数が減少することを示す。
図7はヒトMSCを投与された対象におけるCD4
+/CD8
+T細胞の比の増加を示す。
【0099】
実施例3 加齢による脆弱の症状の治療-試験2
[000121]15例の高齢の対象を非盲検試験に含め、2つの別々の点滴でヒト間葉系幹細胞を投与した。注入されたヒト間葉系幹細胞に対する応答を判定するために、様々な免疫バイオマーカーの変化について対象を評価した。これらの免疫バイオマーカーは、血清中の疲弊B細胞(CD19
+、CD27
-、IgD
-)のレベル、スイッチメモリーB細胞(CD19
+、CD27
high、IgD
-)のレベル、細胞内TNF-αを発現しているB細胞のレベル、早期活性化T細胞(CD3
+、CD69
+)のレベル、慢性活性化T細胞(CD3
+、CD25
+)のレベル、Temra細胞(CD45RA
+、CCR7
-)のレベル、CD4
+:CD8
+T細胞比、及びTNF-α濃度を含んでいた。最初の注射後6カ月、並びに2回目の注射後1、3、及び6カ月に対象を評価した。上記の各免疫バイオマーカーの測定値が表2~9に提供される。測定された免疫バイオマーカーにおいて増加又は減少が観察されたかどうかを示す、異なる時点で各患者において評価された各免疫バイオマーカーに割り当てられたスコアも表2~9に提供される。最終的に、表10は、異なる時点及び患者間の平均を含む各患者についての合計スコアである。表10の最後の列及び
図8に観察することができたように、免疫老化スコアは、ヒト間葉系幹細胞の最初の注射後に加齢による脆弱を有する対象において改善され、ヒト間葉系幹細胞の2回目の注射後に改善された状態を維持し続ける。
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