(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/875 20180101AFI20240524BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240524BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240524BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20240524BHJP
【FI】
F24F11/875
F25B1/00 321C
F25B1/00 303
F24F110:10
F24F110:20
(21)【出願番号】P 2020155993
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】舛谷 乙彦
(72)【発明者】
【氏名】植松 峻一
(72)【発明者】
【氏名】金森 庸浩
(72)【発明者】
【氏名】野間 富之
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-099021(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166541(WO,A1)
【文献】特開2018-065419(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0298855(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
F25B 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、前記圧縮機に接続された四方弁と、前記四方弁と接続された室外熱交換器と、前記室外熱交換器と接続された膨張弁と、前記膨張弁と接続された室内熱交換器と、前記室内熱交換器と接続された前記四方弁と、前記圧縮機の吸入管と前記四方弁との間に設けられた冷媒の流路切り替え装置と、前記圧縮機
が発生する熱を熱源とする蓄熱槽と、前記蓄熱槽と冷媒が熱交換する熱交換回路と、前記流路切り替え装置から前記熱交換回路を経由して前記圧縮機の吸入口へ接続する回路と、室内温度を検出する室内温度検出手段と、室内湿度を検出する室内湿度検出手段と、目標湿度を設定する目標湿度設定手段とを備えた空気調和機であって、除湿運転時に室内湿度検出手段で検出した室内湿度が目標湿度1を下回った状態を所定の時間継続すると、前記熱交換回路に流れるように前記流路切り替え装置を動作させ、冷媒の流路を切り替える制御を行うことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
除湿運転時に前記室内温度検出手段で検出した室内温度が所定の温度1を下回った状態を所定の時間継続すると、前記切り替え装置を動作させることを特徴とする、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
除湿運転時に室内湿度検出手段で検出した室内湿度が所定の湿度2を上回った際に、前記切り替え装置を動作させないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項4】
除湿運転時に前記室内温度検出手段で検出した室内温度が所定の温度2を上回った際に、前記切り替え装置を動作させないことを特徴とする、請求項1 から3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記切り替え装置を動作する制御が行われた後、所定の時間は同制御を行わないことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機を熱源とする蓄熱槽と、四方弁と圧縮機の吸入口との間に蓄熱槽への冷媒の流路切り替え装置を備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプ式空気調和機による室内湿度の低下を目的とした冷房運転(以下、除湿運転と呼称)時、室内湿度を低下させる為、室内の熱交換器温度を室内空気の露点温度以下まで低下させ、除湿運転を行っている。しかしながら、室内湿度の低下に伴い、室内温度が過剰に低下した時、快適性を損なうという問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の除湿運転時においても、室内温度が一定の温度を下回った状態を所定の時間継続すると、圧縮機を停止し(以下、サーモオフ運転と呼称)室温の過剰な低下を抑制しているが、目標の室内湿度に到達する前に圧縮機が停止し、室内湿度を低下させることが出来ないことや、圧縮機が停止することで、室内の熱交換器温度が室内空気の露点以上になり、熱交換器に付着している水分が室内空気に再び蒸発し、湿度が上がってしまう現象(以下湿度戻りと呼称)が発生してしまっていた。本開示は、従来技術の有するこれらの問題点を解決する為のものであり、除湿運転時において、除湿運転を維持したまま室内温度の低下を抑制することによって、快適な湿度と温度を維持する運転を行うことができる空気調和機を提供することを目的としている。
【0005】
従って、本開示の目的は、上記問題を解決するもので、除湿運転時における快適性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における空気調和機は、除湿運転時に、圧縮機、四方弁、室外熱交換器、膨張弁、室内熱交換器、四方弁の順に冷媒が流れるように接続した冷凍サイクルと、室内温度を検出する室内温度検出手段と、室内湿度を検出する室内湿度度検出手段と、目標湿度を設定する目標湿度設定手段と、四方弁と圧縮機の吸入口との間に冷媒の流路切り替え装置と、圧縮機を熱源とする蓄熱槽と、冷媒が蓄熱槽と熱交換した後に圧縮機の吸入口へ接続する回路を備えた空気調和機であって、室内湿度検出手段が所定の湿度を下回った状態を所定の時間継続すると、蓄熱槽と熱交換する冷媒回路に流れるように切り替え装置を動作し、冷媒の流れを切り替える制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示における空気調和機は、切り替え装置で冷媒の流れを切り替え、蓄熱槽と熱交換する回路に冷媒を流すことで、室内熱交換器での熱交換量を減少させることができ、室温の低下を抑制することで、サーモオフ運転になることを防ぎ、除湿運転を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態にかかる冷媒切り替え装置を備えた空気調和機の冷凍サイクルの構成を示す図
【
図2】
図1の空気調和機の通常除湿運転動作及び冷媒の流れを示す模式図
【
図3】
図1の空気調和機の除湿運転時に切り替え装置を動作し、冷媒流れを切り替えた際の冷媒の流れを示す模式図
【
図4】
図1の空気調和機の除湿運転時に切り替え装置を動作した際の冷房能力の変化の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、除湿運転時に、圧縮機、四方弁、室外熱交換器、膨張弁、室内熱交換器、四方弁の順に冷媒が流れるように接続した冷凍サイクルと、室内温度を検出する室内温度検出手段と、室内湿度を検出する室内湿度検出手段と、目標湿度を設定する目標湿度設定手段と、四方弁と圧縮機の吸入口との間に冷媒の流路切り替え装置と、圧縮機を熱源とする蓄熱槽と、冷媒が蓄熱槽と熱交換した後に圧縮機の吸入口へ接続する回路と、を備えた空気調和機であって、室内湿度検出手段が目標湿度近傍の所定の湿度1(例えば、目標湿度+5%)を下回った状態を所定の時間継続すると、冷媒が蓄熱槽と熱交換した後に圧縮機の吸入口へ接続する回路に流れるように、切り替え装置を動作し、冷媒の流れを切り替える制御を行うようにしている。
【0010】
このように構成された空気調和機は、切り替え装置で冷媒の流れを切り替えるようにしたことで、冷媒を蓄熱槽と熱交換した後に圧縮機の吸入口へ接続する回路に流すことで、室内熱交換器での熱交換量を減少させることができ、室温の低下を抑制することで、サーモオフ運転になることを防ぎ、除湿運転を継続させることができる。
【0011】
第2の発明は、除湿運転時に室内温度が所定の温度1(例えば、初期室温-10℃)を下回った状態を所定の時間継続すると、切り替え装置を動作し、冷媒の流れを切り替える制御を行うようにすることで、室温の過剰な低下を抑制することが出来る。
【0012】
第3の発明は、除湿運転時に室内湿度が所定の湿度2(例えば、相対湿度70%)を上回った際に、前記切り替え装置を動作させないよう構成されている。
【0013】
第4の発明は、除湿運転時に室内温度が所定の温度2(例えば、初期室温-5℃)を上回った際に、前記切り替え装置を動作させないよう構成されている。
【0014】
第5の発明は、前記切り替え装置を動作する制御が行われた後、所定の時間(例えば、10分間)行わないことで、過度に切り替え装置が動作することなく切り替え装置の耐久性を確保できる。
【0015】
以下、本実施形態について、図面を用いて具体的に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0016】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0017】
(実施の形態1)
まず、空気調和機の全体構成について
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和機の冷凍サイクルの構成を示す図である。
【0018】
本実施形態に係る空気調和機の冷凍サイクルは、室外機1と室内機2が、接続配管30a、30bによって接続されることで構成されている。室外機1は、圧縮機3と、四方弁4と、膨張弁5と、室外熱交換器6と、プロペラファン7と、を備えている。室内機2は、室内熱交換器8と、貫流ファン9と、を備えている。
【0019】
室内熱交換器8は、貫流ファン9により室内機2の内部に吸込まれた室内空気と、室内熱交換器8の内部を流れる冷媒との間で熱交換を行う。室内熱交換器8における室内空気と冷媒との熱交換により、冷房時には熱交換により冷却された空気が室内に吹き出される一方、暖房時には熱交換により暖められた空気が室内に吹き出される。
【0020】
なお、圧縮機3、四方弁4、膨張弁5、プロペラファン7、貫流ファン9、流路切り替え装置20等は制御装置(例えばマイコン)に電気的に接続され、制御装置により制御されて動作を行う。
【0021】
上記構成の本実施の形態にかかる冷凍サイクル装置において、各部品の相互の接続関係と機能を、除湿運転時を例にとり冷媒の流れと共に説明する。
【0022】
除湿運転の場合には、圧縮機3で圧縮された高圧のガス状冷媒は、四方弁4を通って室外熱交換器6に流れ、外気に放熱することで凝縮し、高圧の液状冷媒となる。液状冷媒は、膨張弁5の作用で減圧され、低温低圧の気液二相状態となり、接続配管30aを通じて室内機2へ流れる。室内機2に入った冷媒は、室内熱交換器8で室内空気の熱を吸熱することで蒸発する。
室内熱交換器8で蒸発した冷媒は、接続配管30bを通じて、室外機1へ戻り、四方弁4を通って再び圧縮機3で圧縮される。
【0023】
流路切り替え装置20は、一方が四方弁4と第5配管15で接続され、もう一方が第6配管16に接続され、さらにもう一方が第7配管17に接続されている。前述した制御装置を用いて流路切り替え装置20の開閉を制御することにより、四方弁4から第6配管16を通じて圧縮機3の吸入口へ流れる冷媒の経路と、四方弁4から第7配管17を通じて蓄熱槽21と熱交換する熱交換配管18を経て圧縮機3の吸入口へ流れる冷媒の経路とを、相互に切り替えることができる。
【0024】
次に、空気調和機の通常除湿時の動作及び冷媒の流れを、
図2の模式図を参照しながら説明する。図中、実線矢印は除湿運転での冷媒の流れを示している。
【0025】
通常除湿運転時には、四方弁4は第0配管10と第1配管11を連通させるように開閉制御され、流路切り替え装置20は第5配管15と第6配管16を連通させるように開閉制御される。この制御によれば、第7配管17や、蓄熱槽21と熱交換する熱交換配管18には冷媒が流れない。
【0026】
圧縮機3の吐出口から吐出された冷媒は、上述したように四方弁4から第1配管11を通って室外熱交換器6に至る。室外熱交換器12で室外空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室外熱交換器6を出て、第2配管12を通り膨張弁5に至る。膨張弁5で減圧した冷媒は、第3配管13を通って室内熱交換器8に至る。室内熱交換器8で室内空気と熱交換して蒸発した冷媒は、第4配管14を通って四方弁4に至った後、流路切り替え装置20を通り、第6配管16を介して圧縮機3の吸入口へと戻る。
【0027】
次に、空気調和機の冷房時に流路切り替え装置20を動作した場合の動作及び冷媒の流れを、
図3の模式図を参照しながら説明する。図中、実線矢印は流路を切り替えた際の運転での冷媒の流れを示している。
上述した通常除湿運転中には、室内温度検出手段によって検出された温度が一定温度近傍になると、圧縮機3の回転数を低下させ、室内熱交換器14での熱交換量を減少させることで室内温度が過剰に低下することを抑制するように制御が行われる。しかしながら、従来の機種では、熱交換量の下限値が圧縮機3の容積や許容回転数、室内熱交換器8のサイズに依存しており、熱交換量の下限値が室内の負荷よりも高い場合があった。このような場合、従来の機種では、除湿運転を継続できず、サーモオフ運転に移行し、室内温度が下がりすぎるのを防止していた為、目標設定湿度まで室内湿度を下げることが出来ないことや、湿度戻りが発生してしまっていた。
【0028】
そこで、上述した通常除湿運転時において、室内湿度が一定の温度を下回った状態を所定の時間継続すると、圧縮機3を停止させずに、流路切り替え装置20を動作させ、冷媒の流路の切り替えを行う。
【0029】
流路切り替え運転時には、四方弁4および流路切り替え装置20は第5配管15と第7配管17を連通させるように開閉制御される。この制御によれば、第6配管16には冷媒が流れない。
【0030】
圧縮機3の吐出口から吐出された冷媒は、上述したように四方弁4から第1配管11を通って室外熱交換器6に至る。室外熱交換器6で室外空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室外熱交換器6を出て、第2配管12を通り膨張弁5に至る。膨張弁5で減圧した冷媒は、第3配管13を通って室内熱交換器8に至る。室内熱交換器8で室内空気と熱交換して蒸発した冷媒は、第4配管14を通って四方弁4に至った後、流路切り替え装置20を通り、第7配管17および蓄熱槽21と熱交換する熱交換配管18を通り、圧縮機3の吸入口へと戻る。
【0031】
このように熱交換配管18を冷媒が通ることで、冷媒が蓄熱槽21と熱交換することによって、室内熱交換器8で熱交換される熱一部が蓄熱槽で熱交換されると共に、圧縮機3に吸入される冷媒の密度が低下し、冷媒の循環量が低下することで、従来に対し室内熱交換器8での熱交換量を減少させることができる。
【0032】
熱交換量を減少させることができるので、従来ではサーモオフ運転をしていた負荷の領域であっても、サーモオフ運転に入ることなく、除湿運転を継続させることによって、室内温度の低下を抑制しながら、快適な湿度を維持する運転を行うことができる
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、室内の空調を行う空気調和機等に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 室外機
2 室内機
3 圧縮機
4 四方弁
5 膨張弁
6 室外熱交換器
7 プロペラファン
8 室内熱交換器
9 貫流ファン
10 第0配管
11 第1配管
12 第2配管
13 第3配管
14 第4配管
15 第5配管
16 第6配管
17 第7配管
18 熱交換配管
20 流路切り替え装置
21 蓄熱槽
30a,30b 接続配管